(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記一般式(1)で表されるジアミン化合物において、トリアジンの2つのNH基に接続するアミノアニリノ基が、4−アミノアニリノであることを特徴とする請求項1または2に記載のポリイミド。
前記ジアミン成分が、前記一般式(1)で表されるジアミン化合物として、2,4−ビス(4−アミノアニリノ)−6−アニリノ−1,3,5−トリアジンを含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリイミド。
請求項1〜7のいずれか1項に記載のポリイミドにより形成されたポリイミド層(a)と、前記ポリイミド層(a)に直接積層された金属層を含むことを特徴とする積層体。
請求項1〜7のいずれか1項に記載のポリイミドにより形成されたポリイミド層(a)と、前記ポリイミド層(a)に直接積層された接着剤層を含むことを特徴とする積層体。
前記ジアミン成分が、前記一般式(1)で表されるジアミン化合物として、2,4−ビス(4−アミノアニリノ)−6−アニリノ−1,3,5−トリアジンを含有することを特徴とする請求項10または11に記載のポリイミドの製造方法。
前記ジアミン成分が、前記一般式(1)で表されるジアミン化合物を、5モル%以上の割合で含むことを特徴とする請求項10〜12のいずれか1項に記載のポリイミドの製造方法。
前記ジアミン成分が、前記芳香族ジアミン化合物を、93.8モル%までの割合で含むことを特徴とする請求項10〜13のいずれか1項に記載のポリイミドの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0032】
概略的に述べれば、本出願において開示されるポリイミドフィルムは、少なくとも表面が、テトラカルボン酸二無水物成分と、下記一般式(1)で示されるジアミン化合物を含むジアミン成分とから得られるポリイミドにより形成されている。
【0033】
【化2】
ここで、R
1は水素原子または炭素数1〜12のアルキル基またはアリール基を示し、R
2は炭素数1〜12のアルキル基またはアリール基を示す。
【0034】
本発明は、次の第1〜第3の態様に大別される。
【0035】
本発明の第1の態様において、ポリイミドフィルムは、ポリイミド層(b)と、前記ポリイミド層(b)に接して積層されたポリイミド層(a)とを少なくとも有し、ここでポリイミド層(a)は、テトラカルボン酸二無水物成分と、前記一般式(1)で示されるジアミン化合物を含むジアミン成分とから得られるポリイミドである。尚、以下の説明において、テトラカルボン酸二無水物成分を、テトラカルボン酸成分または酸成分と簡略化して表記することがある。
【0036】
本発明の第2の態様において、ポリイミドフィルムは、接着剤層と直接積層される用途に使用されるポリイミドフィルムであって、ポリイミドは、テトラカルボン酸二無水物成分と、一般式(1)で示されるジアミン化合物を、0を超え100モル%、好ましくは5〜100モル%、さらに好ましくは10〜100モル%含むジアミン成分とを反応させて得られるポリイミドの単一層で形成されるポリイミドフィルムである。
【0037】
本発明の第3の態様において、ポリイミドフィルムは、接着剤層を介することなくフィルム表面にめっきによる金属層形成用途に用いられ、テトラカルボン酸二無水物成分と、前記一般式(1)で示されるジアミン化合物を10〜100モル%含むジアミン成分とを反応させ、好ましくは、加熱処理工程において、最高加熱温度が450℃以上となる条件で加熱処理して得られるポリイミドの単一層で形成されるフィルムである。
【0038】
以下、第1から第3の態様をそれぞれパート1〜3に分けて説明する。
【0039】
<<パート1>>
本発明の第1の態様を説明する。第1の態様は、ポリイミド層(b)と、前記ポリイミド層(b)に接して積層されたポリイミド層(a)とを少なくとも有する。ここで、ポリイミド層(a)とは、ポリイミドフィルムを形成している複数の層のうちポリイミド層(a)の部分をいう。また、ポリイミド層(b)とは、ポリイミドフィルムを形成している複数の層のうちポリイミド層(b)の部分をいう。以下の実施形態においても同様である。
【0040】
本発明におけるポリイミドフィルムは、ポリイミド層(a)とポリイミド層(b)の他に他の層を含んでも良い。この場合、多層ポリイミドフィルムとなる。ポリイミドフィルムが、ポリイミド層(b)の片面にポリイミド層(a)が積層された形態のみからなる場合には、2層のポリイミドフィルムとなる。また、ポリイミドフィルムが、ポリイミド層(b)の両面にポリイミド層(a)が積層された形態のみからなる場合には、3層のポリイミドフィルムとなる。
【0041】
また、「接して積層された」とは、ポリイミド層(a)がポリイミド層(b)の表面に接して積層された状態をいう。本発明のポリイミドフィルムを製造する過程において、積層されたポリイミド層(a)とポリイミド層(b)との接した部分(境界領域)が、それぞれのポリイミド層を形成するポリアミック酸溶液(a)と(b)によって化学的に変性され、あたかも中間層(組成が連続的に変化する傾斜層を含む)を形成する場合もある。この中間層を形成する形態も、本発明に含まれる。
【0042】
ここで、ポリイミド層(a)は、テトラカルボン酸二無水物成分と、一般式(1)で示されるジアミン化合物を含むジアミン成分とから得られるポリイミドである。また、ポリイミド層(b)は、ポリイミド層(a)の組成と同じかまたは異なる組成を有する。以下においては、ポリイミド層(b)の組成が、ポリイミド層(a)の組成とは異なる形態をもとに説明する。
【0043】
【化3】
式中、R
1は水素原子または炭素数1〜12のアルキル基またはアリール基を示し、R
2は炭素数1〜12のアルキル基またはアリール基を示す。
【0044】
ポリイミド層(a)は、後述するように接着剤層との密着性および/または金属層(湿式めっき、乾式めっき法による)との密着性に優れる。ポリイミド層(a)は、ポリイミドフィルムの片面に形成されても、両面に形成されてもよい。ポリイミドフィルムは、さらなる異なるポリイミド層を有していてもよいが、通常、ポリイミド層(b)とポリイミド層(a)(片面または両面)のみを有する。
【0045】
本態様のポリイミドフィルムは、ポリイミド層(b)が有する機械的特性や耐熱性等の優れた性質を保持しながら、ポリイミド層(a)により表面の性質(接着剤との接着性、金属層との密着性等)を改良できる点で有利である。また、ポリイミド層(a)は耐アルカリ性に優れる点でも有利である。
【0046】
ポリイミド層(a)の厚みは、任意に変えることができるが、本態様の特徴一つとして、ポリイミド層(b)の特性を大きく変えずに、ポリイミド層(b)の特性を生かしながら、フィルムの表面を改質することが可能である点も挙げられる。そのためには、ポリイミド層(a)の厚みが、ポリイミド層(b)の特性を大きく変えない程度が好ましく、例えば1μm以下、0.05〜1μmであることが好ましい。
【0047】
ポリイミドフィルムの厚みは特に限定されるものではないが、5〜120μm、好ましくは6〜75μm、さらに好ましくは7〜60μmである。
【0048】
第1の態様のポリイミドフィルムの製造方法は、ポリイミド層(a)とポリイミド層(b)が、直接接するように形成されれば特に限定されない。以下に詳述する好ましい方法の他に、例えば、ポリイミド層(a)前駆体溶液(ポリアミック酸)とポリイミド層(b)の前駆体溶液(ポリアミック酸)を共押出によって支持体上に流延し多層液膜を形成し、加熱乾燥して自己支持性フィルムを得た後、加熱してポリイミドを得る方法等も採用することができる。支持体上に流延する方法は、共押出に限定されない。また、この多層液膜を形成する形態は、後述する化学的にイミド化する方法にも適用することができる。
【0049】
ポリイミド層(a)を構成するポリイミド(a)が有機溶媒に可溶である場合には、ポリイミド層(a)を形成するために、前記ポリイミド層(a)前駆体溶液の代わりにポリイミド溶液(a)(ポリイミド(a)が有機溶媒に溶解している溶液をいう)を用いることができる。また、ポリイミド層(b)を構成するポリイミド(b)が有機溶媒に可溶である場合には、ポリイミド層(b)を形成するために、前記ポリイミド層(b)前駆体溶液の代わりにポリイミド溶液(b)(ポリイミド(b)が有機溶媒に溶解している溶液をいう)を用いることができる。
【0050】
さらに、ポリイミド層(a)を形成する材料が、ポリイミド層(a)前駆体溶液であり、ポリイミド層(b)を形成する材料が、ポリイミド溶液(b)とすることができる。また、ポリイミド層(a)を形成する材料が、ポリイミド溶液(a)であり、ポリイミド層(b)を形成する材料が、ポリイミド層(b)前駆体溶液とすることができる。
【0051】
以下に、好ましい方法として、ポリイミド層(a)を与える溶液を、自己支持性フィルムの表面に塗工する方法と共に、ポリイミド層(a)およびポリイミド層(b)について説明する。
【0052】
代表的には、本発明の第1の態様のポリイミドフィルムは、
ポリイミド層(b)を得ることができるポリアミック酸溶液(b)(ポリアミック酸+溶媒)を支持体上に流延し、これを加熱乾燥して自己支持性フィルムを得る工程と、
得られた自己支持性フィルムの片面または両面に、ポリイミド層(a)を得ることができるポリマー溶液(a)を塗工する工程と、
ポリマー溶液(a)が塗布された自己支持性フィルムを加熱する加熱処理工程と
を有する製造方法により得られる。従って、本発明の第1の態様のポリイミドフィルムは、好ましくは上記製造方法によって得られるポリイミドフィルムである。ここで、ポリマー溶液とは、ポリアミック酸溶液、ポリイミド溶液、またはポリアミック酸溶液とポリイミド溶液の混合物などをいう。
【0053】
塗工に用いるポリマー溶液(a)としては、ポリアミック酸溶液(a)が好ましく使用されるが、ポリイミド層(a)を構成するポリイミド(a)が有機溶媒に可溶である場合には、ポリイミド溶液(a)やポリイミド溶液(a)とポリアミック酸溶液(a)との混合溶液を用いることもできる。
【0054】
本発明のポリイミドフィルムのポリイミド層(b)は、熱イミド化および/または化学イミド化により得られるものであり、テトラカルボン酸成分およびジアミン成分の少なくとも一つが複数の化合物を含む場合には、ランダム共重合していても、ブロック共重合していてもよく、またはこれらの組み合わせの構造を有していてもよい。
【0055】
本発明のポリイミドフィルムのポリイミド層(a)も、テトラカルボン酸成分およびジアミン成分の少なくとも一つが複数の化合物を含む場合には、ランダム共重合していても、ブロック共重合していてもよく、またはこれらの組み合わせの構造を有していてもよい。
【0056】
本態様のポリイミドフィルムの製造方法の例を概略的に示すと、
(1)ポリイミド層(b)を得ることができるポリアミック酸溶液(ポリアミック酸溶液に必要に応じてイミド化触媒、脱水剤、離型助剤、無機微粒子などを選択して加えたポリアミック酸溶液組成物を含む)を支持体上に流延し、加熱乾燥して自己支持性フィルムを得る工程と、この自己支持性フィルムの片面または両面にポリアミック酸溶液(a)などのポリマー溶液(a)を塗布し、次いで、熱的に脱水環化、脱溶媒させてポリイミドフィルムを得る工程を有する方法(熱的にイミド化する熱イミド化法)、
(2)ポリイミド層(b)を得ることができる、イミド化触媒、環化触媒および脱水剤を加えたポリアミック酸溶液(さらに必要に応じて無機微粒子などを選択して加えたポリアミック酸溶液組成物を含む)を支持体上に流延し、化学的に脱水環化させて、必要に応じて加熱乾燥して自己支持性フィルムを得る工程と、この自己支持性フィルムの片面または両面にポリアミック酸溶液(a)などのポリマー溶液(a)を塗布し、次いで、これを加熱脱溶媒、イミド化することによりポリイミドフィルムを得る工程を有する方法(化学的にイミド化する化学イミド化法)、が挙げられる。
【0057】
<ポリイミド層(b)に用いられるテトラカルボン酸成分、ジアミン成分>
ポリイミド層(b)に用いられるテトラカルボン酸二無水物の具体例としては、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(s−BPDA)およびピロメリット酸二無水物(PMDA)が挙げられ、その他に、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(a−BPDA)、オキシジフタル酸二無水物、ジフェニルスルホン−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルフィド二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,3,3’,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、p−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、p−ビフェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、m−ターフェニル−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物、p−ターフェニル−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物、1,3−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、1,4−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、1,4−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ビフェニル二無水物、2,2−ビス〔(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル〕プロパン二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、4,4’−(2,2−ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物などを挙げることができる。これらは単独でも、2種以上を混合して用いることもできる。用いるテトラカルボン酸二無水物は、所望の特性などに応じて適宜選択することができる。
【0058】
テトラカルボン酸成分は、少なくともs−BPDAおよび/またはPMDAを含むことが好ましく、例えばテトラカルボン酸成分100モル%中に、s−BPDAを好ましくは50モル%以上、より好ましくは70モル%以上、特に好ましくは75モル%以上含む。これにより得られるポリイミドフィルムは機械的特性などに優れる。
【0059】
ポリイミド層(b)に用いられるジアミンの具体例としては、
1)パラフェニレンジアミン(1,4−ジアミノベンゼン;PPD)、1,3−ジアミノベンゼン、2,4−トルエンジアミン、2,5−トルエンジアミン、2,6−トルエンジアミンなどのベンゼン核1つのジアミン、
2)4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテルなどのジアミノジフェニルエーテル類、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジカルボキシ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、ビス(4−アミノフェニル)スルフィド、4,4’−ジアミノベンズアニリド、3,3’−ジクロロベンジジン、3,3’−ジメチルベンジジン、2,2’−ジメチルベンジジン、3,3’−ジメトキシベンジジン、2,2’−ジメトキシベンジジン、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジクロロベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,2−ビス(3−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホキシド、3,4’−ジアミノジフェニルスルホキシド、4,4’−ジアミノジフェニルスルホキシドなどのベンゼン核2つのジアミン、
3)1,3−ビス(3−アミノフェニル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェニル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェニル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェニル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)−4−トリフルオロメチルベンゼン、3,3’−ジアミノ−4−(4−フェニル)フェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジ(4−フェニルフェノキシ)ベンゾフェノン、1,3−ビス(3−アミノフェニルスルフィド)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェニルスルフィド)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェニルスルフィド)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェニルスルホン)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェニルスルホン)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェニルスルホン)ベンゼン、1,3−ビス〔2−(4−アミノフェニル)イソプロピル〕ベンゼン、1,4−ビス〔2−(3−アミノフェニル)イソプロピル〕ベンゼン、1,4−ビス〔2−(4−アミノフェニル)イソプロピル〕ベンゼンなどのベンゼン核3つのジアミン、
4)3,3’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、3,3’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス〔3−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、ビス〔3−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、ビス〔3−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕ケトン、ビス〔3−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕ケトン、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕ケトン、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕ケトン、ビス〔3−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕スルフィド、ビス〔3−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕スルフィド、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕スルフィド、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕スルフィド、ビス〔3−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔3−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔3−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕メタン、ビス〔3−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕メタン、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕メタン、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕メタン、2,2−ビス〔3−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔3−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔3−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス〔3−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパンなどのベンゼン核4つのジアミン、
などを挙げることができる。これらは単独でも、2種以上を混合して用いることもできる。用いるジアミンは、所望の特性などに応じて適宜選択することができる。
【0060】
ポリイミド層(b)に用いるジアミン成分は、好ましくはPPDおよびジアミノジフェニルエーテル類から選ばれるジアミン化合物を、より好ましくはPPD、4,4’−ジアミノジフェニルエーテルおよび3,4’−ジアミノジフェニルエーテルから選ばれる1種以上の化合物を、特に好ましくはPPDを、全ジアミン成分(=100モル%)中に50モル%以上、より好ましくは70モル%以上、特に好ましくは75モル%以上の量で含む。これにより得られるポリイミドフィルムは、機械的特性などに優れる。
【0061】
ポリイミド層(b)としては、中でも、s−BPDAと、PPDあるいは場合によりPPDおよび4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテルなどのジアミノジフェニルエーテル類とから製造されるポリイミドが好ましい。この場合、PPD/ジアミノジフェニルエーテル類(モル比)は100/0〜85/15であることが好ましい。
【0062】
また、PMDA、あるいはs−BPDAとPMDAとの組み合わせである芳香族テトラカルボン酸二無水物と、PPD、トリジン(オルト体、メタ体)あるいは4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテルなどのジアミノジフェニルエーテル類などの芳香族ジアミンとから製造されるポリイミドも好ましい。芳香族ジアミンとしては、PPD、あるいはPPD/ジアミノジフェニルエーテル類が90/10〜10/90である芳香族ジアミンが好ましい。この場合、s−BPDA/PMDAは0/100〜90/10であることが好ましい。
【0063】
また、PMDAと、PPDおよび4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテルなどのジアミノジフェニルエーテル類とから製造されるポリイミドも好ましい。この場合、ジアミノジフェニルエーテル類/PPDは90/10〜10/90であることが好ましい。
【0064】
<ポリイミド層(a)に用いられるテトラカルボン酸成分およびジアミン成分>
ポリイミド層(a)に用いられるテトラカルボン酸成分は、ポリイミド層(b)に用いられる上述のテトラカルボン酸成分が用いられ、好ましいものも同じである。
【0065】
ポリイミド層(a)に用いられるジアミン成分は、前述のとおり、一般式(1)で示されるジアミン化合物を含み、全ジアミン成分(=100モル%)中、好ましくは一般式(1)で示されるジアミン化合物を10〜100モル%、より好ましくは15〜100モル%、さらに好ましくは25〜100モル%の量で含む。
【0066】
ポリイミド層(a)は、5%重量減少温度(空気中、TGAにより測定)を考慮すると、ジアミン成分中の一般式(1)で示されるジアミン化合物の含有量は、好ましくは10〜50モル%の範囲、より好ましくは15〜40モル%の範囲、特に好ましくは17〜30モル%の範囲である。尚、5%重量減少温度は、フィルムの耐熱性、熱安定性を示す指標で、高い方が好ましい。
【0067】
ポリイミド層(a)に用いるジアミン成分は、一般式(1)のジアミン以外に、上記ポリイミド層(b)に用いるジアミン成分を用いることができ、好ましくはPPDおよびジアミノジフェニルエーテル類から選ばれるジアミン成分を、より好ましくはPPD、4,4’−ジアミノジフェニルエーテルおよび3,4’−ジアミノジフェニルエーテルから選ばれる1種以上を含むジアミン成分を用いることができる。これにより得られるポリイミドフィルムは機械的特性または熱特性などに優れる。
【0068】
ポリイミド層(a)としては、中でも、s−BPDAおよび/またはPMDAを含むテトラカルボン酸成分と、一般式(1)で示されるジアミン、または一般式(1)で示されるジアミンと、PPDや4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテルなどのジアミノジフェニルエーテル類を含むジアミン成分とから製造されるポリアミック酸から得られるポリイミドが好ましい。
【0069】
本発明のポリイミドは、特許文献3に示されるような−SO
3H、−COOHおよび−PO
3H
2からなる群から選択される少なくとも1種のプロトン伝導性官能基を含まないことが優れた耐熱性を有するために好ましい(他の態様においても同じ。)。
【0070】
一般式(1)で示されるジアミン化合物において、
R
1は水素原子または炭素数1〜12(好ましくは炭素数1〜10、さらに好ましくは炭素数1〜6)のアルキル基またはアリール基を示し、
R
2は炭素数1〜12(好ましくは炭素数1〜10、さらに好ましくは炭素数1〜6)のアルキル基またはアリール基を示し、R
1とR
2は異なっていても良く、同じであっても良い。
【0071】
R
1とR
2の炭素数1〜12のアルキル基またはアリール基としては、具体的にはメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、フェニル、ベンジル、ナフチル、メチルフェニル、ビフェニルなどが挙げられる。
【0072】
トリアジンの2つのNH基に接続するアミノアニリノ基は、4−アミノアニリノまたは3−アミノアニリノであり、同じであっても異なっていても良いが、4−アミノアニリノが好ましい。
【0073】
一般式(1)で示されるジアミン化合物としては、具体的には、2,4−ビス(4−アミノアニリノ)−6−アニリノ−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(3−アミノアニリノ)−6−アニリノ−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(4−アミノアニリノ)−6−ベンジルアミノ−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(3−アミノアニリノ)−6−ベンジルアミノ−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(4−アミノアニリノ)−6−ナフチルアミノ−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(4−アミノアニリノ)−6−ビフェニルアミノ−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(4−アミノアニリノ)−6−ジフェニルアミノ−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(3−アミノアニリノ)−6−ジフェニルアミノ−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(4−アミノアニリノ)−6−ジベンジルアミノ−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(4−アミノアニリノ)−6−ジナフチルアミノ−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(4−アミノアニリノ)−6−N−メチルアニリノ−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(4−アミノアニリノ)−6−N−メチルナフチルアミノ−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(4−アミノアニリノ)−6−メチルアミノ−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(3−アミノアニリノ)−6−メチルアミノ−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(4−アミノアニリノ)−6−エチルアミノ−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(3−アミノアニリノ)−6−エチルアミノ−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(4−アミノアニリノ)−6−ジメチルアミノ−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(3−アミノアニリノ)−6−ジメチルアミノ−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(4−アミノアニリノ)−6−ジエチルアミノ−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(4−アミノアニリノ)−6−ジブチルアミノ−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(4−アミノアニリノ)−6−アミノ−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(3−アミノアニリノ)−6−アミノ−1,3,5−トリアジンなどが挙げられる。
【0074】
<ポリアミック酸溶液、またはポリイミド溶液の調製>
ポリイミド層(b)を与えるためのポリアミック酸溶液(b)、およびポリイミド層(a)を与えるためのポリマー溶液としてのポリアミック酸溶液(a)またはポリイミド溶液(a)は、酸成分とジアミン成分とを、実質的に等モル或いはどちらかの成分を少し過剰にして、有機極性溶媒中で重合することにより得られる。
【0075】
ポリアミック酸溶液やポリイミド溶液を製造するための有機極性溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、ヘキサメチルスルホルアミドなどのアミド類、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシドなどのスルホキシド類、ジメチルスルホン、ジエチルスルホンなどのスルホン類を挙げることができる。これらの溶媒は単独で用いてもよく、混合して用いてもよい。
【0076】
ポリアミック酸溶液(a)、ポリアミック酸溶液(b)およびポリイミド溶液(a)をそれぞれ得るための重合反応を実施するに際して、有機極性溶媒中の全モノマーの濃度(ポリアミック酸溶液の固形分濃度)は、使用する目的や製造する目的に応じて適宜選択すればよい。例えば、塗工系の場合、ポリアミック酸溶液(b)は、有機極性溶媒中の全モノマーの濃度が、好ましくは5〜40質量%、さらに好ましくは6〜35質量%、特に好ましくは10〜30質量%であることが好ましい。ポリアミック酸溶液(a)およびポリイミド溶液(a)は、重合反応が可能で取り扱い易い範囲で適宜決定することができる。後述するように、塗工に用いるポリマー溶液(a)の固形分濃度が好ましくは1〜15質量%、より好ましくは2〜8質量%であるので、重合のときにこの程度の濃度になるように、重合時のモノマー濃度を決めてもよいし、高濃度で重合を行って、希釈して塗工液としてもよい。
【0077】
前で述べた支持体上に流延し多層液膜を形成する方式においては、有機極性溶媒中の全モノマーの濃度は、塗工系に比べて高いほうが好ましい。所望の特性を有するポリイミドフィルムを得るためには、塗工後キュアして多層フィルムを得る方法や、支持体上に流延し多層液膜を形成して後にキュアする方法など、最適な製膜プロセスを選択することができる。
【0078】
ポリイミド層を形成するための方法としては、3種以上のモノマー成分(酸成分とジアミン成分)を混合し共重合させてもよいし、複数のポリマー溶液を用意し、それらを混合しても良い。複数のポリマー溶液を用意し、それらを混合するとは、例えば、第1の酸成分と、第1のジアミン成分とから得るポリマー溶液(ドープ液)と、第2の酸成分と、第2のジアミン成分とから得るポリマー溶液(ドープ液)とを混合するような形態である。
【0079】
ポリアミック酸溶液(a)およびポリアミック酸溶液(b)の製造例の一例として、前記の芳香族テトラカルボン酸成分と芳香族ジアミン成分との重合反応を、例えば、それぞれを実質的に等モル或いはどちらかの成分(酸成分、或いはジアミン成分)を少し過剰にして混合し、反応温度100℃以下、好ましくは80℃以下にて約0.2〜60時間反応させることにより実施して、ポリアミック酸溶液を得ることができる。
【0080】
ポリイミド溶液(a)の製造例の一例として、前記の芳香族テトラカルボン酸成分と芳香族ジアミン成分との重合反応を、例えば、それぞれを実質的に等モル或いはどちらかの成分(酸成分、或いはジアミン成分)を少し過剰にして混合し、公知の方法でポリイミド溶液を得ることができ、例えば反応温度140℃以上、好ましくは160℃以上(好ましくは250℃以下、さらに230℃以下)にて約1〜60時間反応させることにより実施して、ポリイミド溶液を得ることができる。
【0081】
ポリアミック酸溶液(a)、ポリイミド溶液(a)およびポリアミック酸溶液(b)をそれぞれ得るための重合反応を実施するに際して、溶液粘度は、使用する目的(塗工、流延など)や製造する目的に応じて適宜選択すればよい。このポリアミック酸溶液を取り扱う作業性の面を考慮すると、ポリアミック酸溶液の30℃で測定した回転粘度は、約0.1〜5000ポイズ、特に0.5〜2000ポイズ、さらに好ましくは1〜2000ポイズ程度が好ましい。したがって、前記の重合反応は、生成するポリアミック酸が上記のような粘度を示す程度にまで実施することが望ましい。
【0082】
ポリアミック酸溶液には、熱イミド化であれば必要に応じて、イミド化触媒、有機リン含有化合物、無機微粒子などを加えてもよい。ポリアミック酸溶液には、化学イミド化であれば必要に応じて、環化触媒および脱水剤、無機微粒子などを加えてもよい。ポリイミド溶液には、必要に応じて、無機微粒子などを加えてもよい。
【0083】
イミド化触媒としては、置換もしくは非置換の含窒素複素環化合物、該含窒素複素環化合物のN−オキシド化合物、置換もしくは非置換のアミノ酸化合物、ヒドロキシル基を有する芳香族炭化水素化合物または芳香族複素環状化合物が挙げられ、特に1,2−ジメチルイミダゾール、N−メチルイミダゾール、N−ベンジル−2−メチルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、5−メチルベンズイミダゾールなどの低級アルキルイミダゾール、N−ベンジル−2−メチルイミダゾールなどのベンズイミダゾール、イソキノリン、3,5−ジメチルピリジン、3,4−ジメチルピリジン、2,5−ジメチルピリジン、2,4−ジメチルピリジン、4−n−プロピルピリジンなどの置換ピリジンなどを好適に使用することができる。イミド化触媒の使用量は、ポリアミド酸のアミド酸単位に対して0.01〜2倍当量、特に0.02〜1倍当量程度であることが好ましい。イミド化触媒を使用することによって、得られるポリイミドフィルムの物性、特に伸びや端裂抵抗が向上することがある。
【0084】
有機リン含有化合物としては、例えば、モノカプロイルリン酸エステル、モノオクチルリン酸エステル、モノラウリルリン酸エステル、モノミリスチルリン酸エステル、モノセチルリン酸エステル、モノステアリルリン酸エステル、トリエチレングリコールモノトリデシルエーテルのモノリン酸エステル、テトラエチレングリコールモノラウリルエーテルのモノリン酸エステル、ジエチレングリコールモノステアリルエーテルのモノリン酸エステル、ジカプロイルリン酸エステル、ジオクチルリン酸エステル、ジカプリルリン酸エステル、ジラウリルリン酸エステル、ジミリスチルリン酸エステル、ジセチルリン酸エステル、ジステアリルリン酸エステル、テトラエチレングリコールモノネオペンチルエーテルのジリン酸エステル、トリエチレングリコールモノトリデシルエーテルのジリン酸エステル、テトラエチレングリコールモノラウリルエーテルのジリン酸エステル、ジエチレングリコールモノステアリルエーテルのジリン酸エステル等のリン酸エステルや、これらリン酸エステルのアミン塩が挙げられる。アミンとしてはアンモニア、モノメチルアミン、モノエチルアミン、モノプロピルアミン、モノブチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等が挙げられる。
【0085】
環化触媒としては、トリメチルアミン、トリエチレンジアミンなどの脂肪族第3級アミン、ジメチルアニリンなどの芳香族第3級アミン、およびイソキノリン、ピリジン、α−ピコリン、β−ピコリンなどの複素環第3級アミンなどが挙げられる。
【0086】
脱水剤としては、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸などの脂肪族カルボン酸無水物、および無水安息香酸などの芳香族カルボン酸無水物などが挙げられる。
【0087】
無機微粒子としては、微粒子状の二酸化チタン粉末、二酸化ケイ素(シリカ)粉末、酸化マグネシウム粉末、酸化アルミニウム(アルミナ)粉末、酸化亜鉛粉末などの無機酸化物粉末、微粒子状の窒化ケイ素粉末、窒化チタン粉末などの無機窒化物粉末、炭化ケイ素粉末などの無機炭化物粉末、および微粒子状の炭酸カルシウム粉末、硫酸カルシウム粉末、硫酸バリウム粉末などの無機塩粉末を挙げることができる。これらの無機微粒子は二種以上を組合せて使用してもよい。これらの無機微粒子を均一に分散させるために、それ自体公知の手段を適用することができる。
【0088】
<ポリアミック酸溶液(b)の自己支持性フィルムの製造>
ポリアミック酸溶液(b)の自己支持性フィルムは、ポリアミック酸溶液(b)を支持体上に流延塗布し、自己支持性となる程度(通常のキュア工程前の段階を意味する)、例えば支持体上より剥離することができる程度にまで加熱して製造される。ポリアミック酸溶液(b)の固形分濃度は、製造に適した粘度範囲となる濃度であれば特に限定されないが、通常、好ましくは5〜40質量%、さらに好ましくは6〜35質量%、特に好ましくは10〜30質量%である。
【0089】
自己支持性フィルム作製時の加熱温度および加熱時間は適宜決めることができ、熱イミド化では、例えば、温度100〜180℃で1〜60分間程度加熱すればよい。
【0090】
支持体としては、ポリアミック酸溶液をキャストできるものであれば特に限定されないが、平滑な基材を用いることが好ましく、例えばステンレスなどの金属製のドラムやベルトなどが使用される。
【0091】
自己支持性フィルムは、支持体上より剥離することができる程度にまで溶媒が除去され、および/またはイミド化されていれば特に限定されないが、熱イミド化では、その加熱減量が20〜50質量%の範囲にあることが好ましく、加熱減量が20〜50質量%の範囲で且つイミド化率が7〜55%の範囲にあると、自己支持性フィルムの力学的性質が十分となる。また、自己支持性フィルムの加熱減量およびイミド化率が上記範囲内であれば、自己支持性フィルムの表面に塗工溶液を均一に、きれいに塗布しやすくなり、イミド化後に得られるポリイミドフィルムに発泡、亀裂、クレーズ、クラック、ひびワレなどの発生が観察されないために好ましい。
【0092】
ここで、自己支持性フィルムの加熱減量とは、自己支持性フィルムの質量W1とキュア後のフィルムの質量W2とから次式によって求めた値である。
【0093】
加熱減量(質量%)={(W1−W2)/W1}×100
【0094】
また、部分的にイミド化された自己支持性フィルムのイミド化率は、自己支持性フィルムと、そのフルキュア品(ポリイミドフィルム)のIRスペクトルをATR法で測定し、振動帯ピーク面積または高さの比を利用して算出することができる。振動帯ピークとしては、イミドカルボニル基の対称伸縮振動帯やベンゼン環骨格伸縮振動帯などを利用する。より具体的には、自己支持性フィルムと、そのフルキュアフィルム(ポリイミドフィルム)のFT−IRスペクトルを、日本分光製FT/IR6100を用いて、Geクリスタル、入射角45°の多重反射ATR法で測定し、1775cm
−1のイミドカルボニル基の非対称伸縮振動のピーク高さと1515cm
−1の芳香環の炭素−炭素対称伸縮振動のピーク高さの比を用いて、次式(1)によりイミド化率を算出した。
【0095】
イミド化率(%)={(X1/X2)/(Y1/Y2)}×100 (1)
但し、
X1:自己支持性フィルムの1775cm
−1のピーク高さ、
X2:自己支持性フィルムの1515cm
−1のピーク高さ、
Y1:フルキュアフィルムの1775cm
−1のピーク高さ、
Y2:フルキュアフィルムの1515cm
−1のピーク高さ、とする。
【0096】
<ポリマー溶液(a)の塗工>
次に、上述のようにして得られた自己支持性フィルムの片面または両面にポリマー溶液(a)(ポリアミック酸溶液(a)またはポリイミド溶液(a))を塗工する。
【0097】
ポリマー溶液(a)は、ポリマー成分以外に、本発明の特性を損なわない範囲で、他の添加成分を含んでいてもよく、例えばシランカップリング剤、チタンカップリング剤などの表面処理剤、シリコーン系、フッ素系、炭化水素系などの界面活性剤を含むことができる。また、それらの界面活性剤は、イミド化のための加熱処理工程の間に分解・揮発するものが好ましい。
【0098】
ポリマー溶液(a)の回転粘度(測定温度25℃で回転粘度計によって測定した溶液粘度)は、自己支持性フィルムに塗布できる粘度であればよく、0.5〜50000センチポイズ(mPa・s)であることが好ましい。ポリマー溶液(a)の固形分濃度は、好ましくは1〜15質量%、より好ましくは2〜8質量%となる割合である。重合の際に、この程度の濃度となるようにモノマー濃度を調節して反応させてもよいし、また固形分濃度の高い重合溶液を、適宜希釈して用いてもよい。
【0099】
前で述べた支持体上に流延し多層液膜を形成する方式においては、有機極性溶媒中の全モノマーの濃度は、塗工系に比べて高いほうが好ましい。
【0100】
ポリマー溶液(a)の塗布量は適宜決めることができる。特に、前述のポリイミド層(a)の好ましい厚みとなるように、決めることが好ましい。
【0101】
ポリマー溶液(a)は、公知の方法で自己支持性フィルムに塗布することができ、例えば、グラビアコート法、スピンコート法、シルクスクリーン法、ディップコート法、スプレーコート法、バーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法などの公知の塗布方法を挙げることができる。
【0102】
<加熱処理(イミド化)工程>
次いで、ポリマー溶液(a)の溶液を塗布した自己支持性フィルムを加熱処理してポリイミドフィルムを得る。接着性に優れるフィルムを得るためには、加熱処理工程における最高加熱温度が好ましくは350℃以上、好ましくは370℃以上、より好ましくは450℃以上、さらに好ましくは470℃以上、特に好ましくは490℃以上となるように加熱する。加熱温度の上限はポリイミドフィルムの特性が低下しない温度であれば良く、好ましくは600℃以下、より好ましくは590℃以下、さらに好ましくは550℃以下、さらに好ましくは540℃以下、さらに好ましくは530℃以下、最も好ましくは520℃以下である。
【0103】
加熱処理は、最初に約100℃〜400℃の温度においてポリマーのイミド化および溶媒の蒸発・除去を約0.05〜5時間、特に0.1〜3時間で徐々に行うことが適当である。特に、この加熱処理は段階的に、約100℃〜約170℃の比較的低い温度で約0.5〜30分間第一次加熱処理し、次いで170℃を超えて220℃以下の温度で約0.5〜30分間第二次加熱処理して、その後、220℃を越えて350℃未満の高温で約0.5〜30分間第三次加熱処理することが好ましい。最終的には、上述のとおり、350℃以上の高い温度で第四次高温加熱処理することが好ましい。また、この加熱プロセスは逐次的にも連続的にも行うことができる。
【0104】
上記製造方法において、加熱処理工程を、支持体上で行ってもよく、支持体上から剥がしておこなってもよい。
【0105】
工業的に製造する場合、イミド化のための加熱処理の際、キュア炉中においては、ピンテンタ、クリップ、枠などで、少なくとも長尺の自己支持性フィルムの長手方向に直角の方向、すなわちフィルムの幅方向の両端縁を固定し、必要に応じて幅方向、または長さ方向に拡縮して加熱処理を行っても良い。
【0106】
上述のようにして、得られた本発明のポリイミドフィルムは、そのポリマー溶液(a)を塗布した面を、さらに、サンドブラスト処理、コロナ処理、プラズマ処理、エッチング処理などを行っても良い。
【0108】
ポリイミドフィルムのポリマー溶液(a)の塗布側の面は、接着剤との接着性に優れている。そのため、ポリイミドフィルムのポリマー溶液(a)の塗布側の面に直接接着剤層を設けることができ、ポリイミドフィルムと接着剤層の初期の剥離強度に優れ、高温処理後でも剥離強度に優れ、剥離強度の低下が小さい、または向上する効果を有するポリイミド積層体を得ることができる。
【0109】
従って、本発明は、少なくとも片側の表面層を構成するポリイミド層(a)とベース層となるポリイミド層(b)を有するポリイミドフィルムと、前記ポリイミド層(a)に接して積層された接着剤層とを有するポリイミド積層体を提供する。
【0110】
積層される接着剤としては、電気・電子分野で使用されているポリイミド系、エポキシ系、アクリル系、ポリアミド系またはウレタン系などの耐熱性接着剤であれば特に制限はなく、例えばポリイミド系接着剤、エポキシ変性ポリイミド系接着剤、フェノール変性エポキシ樹脂接着剤、エポキシ変性アクリル樹脂系接着剤、エポキシ変性ポリアミド系接着剤などの耐熱性接着剤などが挙げられる。
【0111】
接着剤は、それ自体電子分野で実施されている任意の方法で設けることができ、例えばポリイミドフィルムのポリマー溶液(a)の塗布側の面に、接着剤溶液を塗布・乾燥してもよく、別途に形成したフィルム状接着剤を貼り合わせてもよい。
【0112】
ポリイミド積層体は、接着剤層を介して、さらにガラス基板、シリコンウエハーなどのセラミックス、金属箔、樹脂フィルム、炭素繊維、硝子繊維、樹脂繊維などの織物や不織布などの他の基材を積層することができる。他の基材は、加圧装置または加熱・加圧装置を用いて、ポリイミド積層体の接着剤層と直接積層することができる。
【0113】
他の基材は、好ましくは金属箔であり、金属箔としては、単一金属あるいは合金、例えば、銅、アルミニウム、金、銀、ニッケル、ステンレスの金属箔が挙げられるが、好適には圧延銅箔、電解銅箔などの銅箔が挙げられる。金属箔の厚さは特に制限はないが、0.1μm〜10mm、特に7〜60μmが好ましい。
【0114】
厚さ1〜10μmの極薄の基材(金属箔)を使用する場合は、取り扱い性を良くするために金属や樹脂のキャリアを備えるキャリア付き金属箔を用いることができる。
【0115】
従って、本発明は、さらにこのようにポリイミド層(a)とポリイミド層(b)を有するポリイミドフィルムと、ポリイミド層(a)の表面に積層された接着剤層と、この接着剤層を介して積層された他の基材を有する積層体、特に好ましくは他の基材として金属箔が積層されたポリイミド金属積層体を提供する。
【0116】
積層する際に使用される加圧装置または加熱・加圧装置としては、一対の圧着金属ロール(圧着部は金属製、セラミック溶射金属製のいずれでもよい)、ダブルベルトプレスおよびホットプレスが挙げられ、特に加圧下に熱圧着および冷却できるものが好ましく、その中でも特に液圧式のダブルベルトプレスが好ましい。
【0117】
ポリイミドフィルムのポリマー溶液(a)の塗布側の面は、接着性や密着性が良好であり、上記以外に感光性素材、熱圧着性素材などを直接積層することができる。
【0118】
<ポリイミド金属積層体(金属層直接形成)>
本態様のポリイミドフィルムは、金属層との密着性にも優れている。そのため、ポリイミドフィルムのポリマー溶液(a)の塗布側の面に、金属層を直接(即ち、接着剤層を介することなく、めっきにより)形成することができ、ポリイミドフィルムと金属層の初期の剥離強度に優れ、高温処理後でも剥離強度に優れ、剥離強度の低下が小さい、または、高温処理後の剥離強度が初期のそれよりも大きい剥離強度に優れたポリイミド金属積層体を得ることができる。
【0119】
この目的のためには、加熱処理(イミド化)工程において、最高加熱温度が好ましくは450℃以上、より好ましくは470℃以上となるように加熱する。
【0120】
このポリイミド金属積層体は、好ましくは、初期だけではなく、150℃での熱処理や、121℃、0.2MPa、100%RHでの熱処理後においても、剥離強度の低下しない優れた密着性を有する。
【0121】
従って本発明は、さらに、ポリイミド層(a)とポリイミド層(b)を有するポリイミドフィルムと、ポリイミド層(a)の表面に積層された金属層とを有するポリイミド金属積層体を提供する。
【0122】
金属層はめっきによりポリイミド層(a)の表面に形成することができる。めっき法としては、乾式めっき法であるメタライジング法、および湿式めっき法を挙げることができる。ここでいうメタライジング法は、湿式めっき法や金属箔の積層とは異なり、気相堆積法によって金属層を設ける方法であり、真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング、電子ビーム等の公知の方法を用いることができる。
【0123】
メタライジング法に用いる金属としては、銅、ニッケル、クロム、マンガン、アルミニウム、鉄、モリブデン、コバルト、タングステン、バナジウム、チタン、タンタル等の金属、またはそれらの合金、或いはそれらの金属の酸化物、それらの金属の炭化物等を用いることができるが、特にこれらの材料に限定されない。メタライジング法により形成される金属層の厚さは、使用する目的に応じて適宜選択でき、好ましくは1〜1000nm、さらに好ましくは5nm〜500nmの範囲が、実用に適するために好ましい。
【0124】
メタライジング法により形成される金属層の層数は、使用する目的に応じて適宜選択でき、1層でも、2層でも、3層以上の多層でもよい。金属層を多層で形成する実施形態において、メタライジング法により、第1層(ポリイミドフィルムと直接接する層)をニッケル、クロム、マンガン、アルミニウム、鉄、モリブデン、コバルト、タングステン、バナジウム、チタン、タンタル等の金属、またはそれらの合金、或いはそれらの金属の酸化物、それらの金属の炭化物等で形成し、第2層を銅または銅の合金、或いはそれらの金属の酸化物、それらの金属の炭化物等で形成することが好ましい。さらに第2層の上に湿式めっき法により約1〜40μm程度の銅などの金属層を設けることができる。
【0125】
湿式めっき法を、本態様のポリイミドフィルム上に金属層を形成する方法として用いる場合、公知のめっき法を用いることができ、電解めっき、無電解めっきを挙げることができ、これらを組み合わせることができる。湿式めっき法に用いる金属としては、湿式めっき可能な金属であれば何ら制限されることはない。
【0126】
湿式めっき法より形成される金属層の厚さは、使用する目的に応じて適宜選択でき、好ましくは0.1〜50μm、さらに好ましくは1〜30μmの範囲が、実用に適するために好ましい。湿式めっき法により形成される金属層の層数は、使用する目的に応じて適宜選択でき、1層でも、2層でも、3層以上の多層でもよい。
【0127】
湿式めっき法としては特に制限はないが、公知の湿式めっきプロセスを用いることができ、例えば荏原ユージライト株式会社製エルフシードプロセスや、日鉱金属株式会社の表面処理プロセスであるキャタリストボンドプロセスを施した後に無電解銅めっきを行う方法など従来公知のものが挙げられる。
【0128】
エルフシードプロセス(荏原ユージライト株式会社)は、ポリイミドフィルム表面を改質し、触媒を付与、還元した後に無電解ニッケルめっきを行い、さらに無電解ニッケルめっき皮膜を活性化させるプロセスであり、プロセス後に電解銅めっきによって導電金属層を得ることができる。
【0129】
キャタリストボンドプロセス(日鉱金属株式会社)は、めっきの前処理プロセスであり、前処理により湿式めっき触媒であるパラジウムの吸着性を向上させ、プロセス後に触媒付与を施し、無電解および電解銅めっきによって導電金属層を得ることができる。
【0130】
以上のように、第1の態様として示したポリイミドフィルム、ポリイミド金属積層体(接着剤層を介してフィルムと金属層が積層された積層体、フィルム上に直接金属層が形成された積層体の両方を含む)およびポリイミド積層体は、プリント配線板、フレキシブルプリント基板、TAB用テープ、COF用テープあるいは金属配線など、また、金属配線、ICチップなどのチップ部材などのカバー基材、液晶ディスプレー、有機エレクトロルミネッセンスディスプレー、電子ペーパー、太陽電池などのベース基材等の電子部品や電子機器類の素材として用いることができる。
【0131】
ポリイミドフィルムの線膨張係数は、使用する目的に応じて適宜選択すれば良い。例えば、FPC、TAB、COFあるいは金属配線基材などの絶縁基板材料、金属配線、ICチップなどのチップ部材などのカバー基材などに用いる場合には、一般的には、ポリイミドフィルムの線膨張係数が金属配線やICチップなどのチップ部材の線膨張係数に近いことが好ましい。具体的には、MDおよびTDともに40ppm/℃以下であることが好ましく、0〜30ppm/℃であることがより好ましく、5〜25ppm/℃であることがさらに好ましく、8〜20ppm/℃であることが特に好ましい。
【0132】
また、COFやインターポーザーなど、用途によっては、ポリイミドフィルムの線膨張係数はガラスやシリコンの線膨張係数に近いことが好ましい。本発明によれば、線膨張係数が0〜10ppm/℃のポリイミドフィルムを得ることもできる。
【0133】
第1の態様のポリイミドフィルム、ポリイミド積層体およびポリイミド金属積層体について、開示事項を概略的にまとめると、次のとおりである。
1. ポリイミド層(b)を得ることができるポリアミック酸溶液(b)の自己支持性フィルムの片面又は両面に、ポリイミド層(a)を得ることができるポリマー溶液(a)を塗工し、加熱して得られるポリイミドフィルムであり、
ポリイミド層(a)は、テトラカルボン酸二無水物成分と、式(1)で示すジアミン化合物を含むジアミン成分とから得られるポリイミドであるポリイミドフィルム。
【0134】
【化4】
(但し、一般式(1)のR
1は水素原子または炭素数1〜12(例えば1〜10)のアルキル基またはアリール基を示し、R
2は炭素数1〜12(例えば1〜10)のアルキル基またはアリール基を示す。)
2. 式(1)で示すジアミン化合物は、2,4−ビス(4−アミノアニリノ)−6−アニリノ−1,3,5−トリアジンである上記1.記載のポリイミドフィルム。
3. ポリイミド層(a)は、ジアミン成分中、式(1)で示すジアミン化合物を10〜100モル%含む上記1又は2に記載のポリイミドフィルム。
4. ポリイミド層(a)は、ジアミン成分中、式(1)で示すジアミン化合物を25〜100モル%含む上記1又は2に記載のポリイミドフィルム。
5. ポリイミドフィルムは、最高加熱温度が350℃以上である上記1〜4のいずれか1項に記載のポリイミドフィルム。
6. ポリイミドフィルムは、最高加熱温度が450℃以上である上記1〜4のいずれか1項に記載のポリイミドフィルム。
7. ポリイミド層(a)は、ジアミン成分としてさらにフェニレンジアミン及び/又はジアミノジフェニルエーテルを含む上記1〜6のいずれか1項に記載のポリイミドフィルム。
8. ポリイミドフィルムは、ポリアミック酸溶液(a)を塗工して得られるポリイミド層(a)表面に直接接着層を積層する用途に用いる上記1〜7のいずれか1項に記載のポリイミドフィルム。
9. ポリイミド層(b)は、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物及び/又はピロメリット酸二無水物を含むテトラカルボン酸二無水物成分と、フェニレンジアミン及び/又はジアミノジフェニルエーテルを含むジアミン成分とから得られるポリイミドである上記1〜8のいずれか1項に記載のポリイミドフィルム。
10. ポリイミド層(a)を得ることができるポリマー溶液(a)は、ポリイミド層(a)を得ることができるポリアミック酸溶液(a)である上記1〜9のいずれか1項に記載のポリイミドフィルム。
11. 上記1〜10のいずれか1項に記載のポリイミドフィルムの塗工表面に、直接接着剤層を積層したことを特徴とするポリイミド積層体。
12. 上記1〜10のいずれか1項に記載のポリイミドフィルムの塗工表面に、接着層を介して金属層を積層したことを特徴とするポリイミド金属積層体。
13. 上記1〜10のいずれか1項に記載のポリイミドフィルムの前記ポリイミド層(a)の表面に、乾式または湿式めっきにより形成された金属層を有するポリイミド金属積層体。
【0135】
<<パート2>>
本発明の第2の態様を説明する。第2の態様は、接着剤層と直接積層用に用いるポリイミドフィルムであり、ポリイミドは、テトラカルボン酸二無水物成分と、一般式(1)で示されるジアミン化合物を、0を超え100モル%、好ましくは5〜100モル%、さらに好ましくは10〜100モル%含むジアミン成分とを反応させて得られることを特徴とするポリイミドフィルムに関する。
【0136】
【化5】
(式中、R
1は水素原子または炭素数1〜12のアルキル基またはアリール基を示し、R
2は炭素数1〜12のアルキル基またはアリール基を示す。)
【0137】
この態様のポリイミドフィルムは、全体が、第1の態様(パート1)で説明したポリイミド層(a)を構成する材料の単一層で構成されたフィルムに相当する。このパートにおいて特に言及しない場合、矛盾がないかぎりパート1の記載が参照される。
【0138】
本発明の第2の態様では、接着剤との接着性、特に熱処理後でも接着剤との接着性が優れるポリイミドフィルムを提供することができる。
【0139】
本態様では、接着剤との剥離強度に優れ、特に熱処理後でも接着剤との剥離強度に優れるポリイミドフィルムと接着剤との積層体を提供することができる。
【0140】
この態様のポリイミドフィルムは、熱イミド化および/または化学イミド化により得られるものであり、テトラカルボン酸成分とジアミン成分とを複数含む場合には、ランダム共重合していても、ブロック共重合していてもよく、またはこれらが併用されていてもよい。
【0141】
ポリイミドフィルムの厚みは特に限定されるものではないが、5〜120μm、好ましくは6〜75μm、さらに好ましくは7〜60μmである。
【0142】
本態様のポリイミドフィルムの製造方法の例を概略的に示すと、
(1)ポリアミック酸溶液、またはポリアミック酸溶液に必要に応じてイミド化触媒、脱水剤、離型助剤、無機微粒子などを選択して加えたポリアミック酸溶液組成物をフィルム状に支持体上に流延し、加熱乾燥して自己支持性フィルムを得た後、加熱により脱水環化、脱溶媒することによりポリイミドフィルムを得る方法;
(2)ポリアミック酸溶液に環化触媒および脱水剤を加え、さらに必要に応じて無機微粒子などを選択して加えたポリアミック酸溶液組成物をフィルム状に支持体上に流延し、化学的に脱水環化させて、必要に応じて加熱乾燥して自己支持性フィルムを得た後、これを加熱により脱溶媒、イミド化することによりポリイミドフィルムを得る方法;
(3)ポリイミドが有機溶媒に可溶の場合、離型助剤、無機微粒子などを選択して加えたポリイミド溶液組成物をフィルム状に支持体上に流延し、加熱乾燥などにより一部または全部の溶媒を除去した後、最高加熱温度に加熱することによりポリイミドフィルムを得る方法;
(4)ポリイミドが有機溶媒に可溶の場合、離型助剤、無機微粒子などを選択して加えたポリイミド溶液組成物をフィルム状に支持体上に流延し、加熱により溶媒を除去しながら最高加熱温度に加熱することによりポリイミドフィルムを得る方法、
が挙げられる。
【0143】
上記製造方法において、自己支持性フィルムを得た後、加熱処理工程において、加熱する温度としては、加熱最高温度を350℃以上、さらに450℃以上で行うことにより、熱処理後の剥離強度が優れる。
【0144】
上記製造方法において、最高加熱温度で加熱する場合、支持体上で行ってもよく、支持体上から剥がしておこなってもよい。
【0145】
ポリイミドフィルムはポリアミック酸より製造することが好ましい。
【0146】
以下にポリイミドに使用される原料と共に、製造方法を説明する。
【0147】
<テトラカルボン酸成分およびジアミン成分>
第2の態様のポリイミドフィルムの製造に用いられるテトラカルボン酸成分およびジアミン成分について説明する。
【0148】
テトラカルボン酸成分については、パート1で説明した第1の態様において、ポリイミド層(a)に用いられるテトラカルボン酸成分(即ちポリイミド層(b)に用いられるテトラカルボン酸と同じ)を用いることができる。また、好ましいものもポリイミド層(a)について記載されたものと同じである。
【0149】
ジアミン成分についても、パート1においてポリイミド層(a)に用いられるジアミン成分を用いることができる。また、好ましいものもポリイミド層(a)について記載されたものと同じである。
【0150】
ジアミン成分は、一般式(1)のジアミン以外に、他のジアミン成分を用いることができる。併用するジアミンの例は、第1の態様のポリイミド層(a)と同様に、第1の態様のポリイミド層(b)に用いられるジアミン成分を用いることができ、好ましくはPPDおよびジアミノジフェニルエーテル類から選ばれるジアミン成分を、より好ましくはPPD、4,4’−ジアミノジフェニルエーテルおよび3,4’−ジアミノジフェニルエーテルから選ばれる1種以上を含むジアミン成分を用いることができる。これにより得られるポリイミドフィルムは機械的特性または熱特性などに優れる。
【0151】
ポリイミド層(a)としては、中でも、s−BPDAおよびPMDAを含む酸成分と、一般式(1)で示されるジアミン、または一般式(1)で示されるジアミンと、PPDや4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテルなどのジアミノジフェニルエーテル類とから製造されるポリアミック酸から得られるポリイミドが好ましい。
【0152】
本発明のポリイミドは、特許文献3に示されるような−SO
3H、−COOHおよび−PO
3H
2からなる群から選択される少なくとも1種のプロトン伝導性官能基を含まないことが優れた耐熱性を有するために好ましい。
【0153】
本態様においては、一般式(1)で示されるジアミン化合物は、全ジアミン成分(=100モル%)中、0を超え100モル%、好ましくは5〜100モル%、さらに好ましくは10〜100モル%、好ましくは15〜100モル%、より好ましくは17〜100モル%の量で使用され、特定の実施形態においては25〜100モル%の量で使用することも好ましい。
【0154】
フィルムの5%重量減少温度に基づく耐熱性を考慮すると、ジアミン成分中に含まれる一般式(1)で示されるジアミン化合物は、10〜50モル%の範囲、さらに15〜40モル%の範囲、特に17〜30モル%の範囲が好ましい。
【0155】
<ポリアミック酸溶液またはポリイミド溶液の調製>
ポリアミック酸(ポリイミド前駆体)は、前記各成分を使用し、テトラカルボン酸成分とジアミン成分とを公知の方法で反応させて得ることができ、例えば略等モル量を、有機溶媒中で反応させてポリアミック酸の溶液(均一な溶液状態が保たれていれば一部がイミド化されていてもよい)を得ることができる。また、予めどちらかの成分が過剰である2種類以上のポリアミック酸を合成しておき、各ポリアミック酸溶液を一緒にした後、反応条件下で混合してもよい。このようにして得られたポリアミック酸溶液はそのまま、あるいは必要であれば溶媒を除去または加えて、自己支持性フィルムの製造に使用することができる。
【0156】
得られるポリイミドが有機溶媒に可溶の場合は、前記各成分を使用し、テトラカルボン酸成分とジアミン成分とを公知の方法で反応させて得ることができ、例えば略等モル量を、有機溶媒中で反応させてポリイミド溶液を得ることができる。また、予めどちらかの成分が過剰である2種類以上のポリイミドを合成しておき、各ポリイミド溶液を一緒にした後、反応条件下で混合してもよい。
【0157】
ポリアミック酸溶液またはポリイミド溶液の有機溶媒としては、公知の溶媒を用いることができ、例えばN−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミドなどが挙げられる。これらの有機溶媒は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0158】
ポリアミック酸とポリイミドの重合反応を実施するに際して、有機極性溶媒中の全モノマーの濃度は、使用する目的や製造する目的に応じて適宜選択すればよく、例えば、有機極性溶媒中の全モノマーの濃度が、10質量%〜30質量%、さらに15質量%〜27質量%、特に18質量%〜26質量%であることが好ましい。
【0159】
ポリアミック酸の製造例の一例として、前記の芳香族テトラカルボン酸成分と芳香族ジアミン成分との重合反応は、例えば、それぞれを実質的に等モル或いはどちらかの成分(酸成分、或いはジアミン成分)を少し過剰にして混合し、反応温度100℃以下、好ましくは80℃以下にて約0.2〜60時間反応させることにより実施して、ポリアミック酸溶液を得ることができる。
【0160】
ポリイミドの製造例の一例として、前記の芳香族テトラカルボン酸成分と芳香族ジアミン成分との重合反応は、例えば、それぞれを実質的に等モル或いはどちらかの成分(酸成分、或いはジアミン成分)を少し過剰にして混合し、公知の方法でポリイミド溶液を得ることができ、例えば反応温度140℃以上、好ましくは160℃以上(好ましくは250℃以下、さらに230℃以下)にて約1〜60時間反応させることによりポリイミド溶液を得ることができる。
【0161】
ポリアミック酸溶液には、熱イミド化であれば必要に応じて、イミド化触媒、有機リン含有化合物、無機微粒子などを加えてもよい。ポリアミック酸溶液には、化学イミド化であれば必要に応じて、環化触媒および脱水剤、無機微粒子などを加えてもよい。ポリイミド溶液には、有機リン含有化合物、無機微粒子などを加えてもよい。
【0162】
ここで、イミド化触媒、有機リン含有化合物、環化触媒、脱水剤、無機微粒子は、パート1で説明したものを使用することができる。また、無機微粒子の代わりに、有機溶媒に不溶なポリイミド微粒子を用いることもできる。
【0163】
<ポリアミック酸溶液の自己支持性フィルムの製造>
ポリアミック酸溶液の自己支持性フィルムは、ポリアミック酸溶液を支持体上に流延塗布し、自己支持性となる程度(通常のキュア工程前の段階を意味する)、例えば支持体上より剥離することができる程度にまで加熱して製造される。
【0164】
本発明において用いるポリアミック酸溶液の固形分濃度は、製造に適した粘度範囲となる濃度であれば特に限定されないが、通常、10質量%〜30質量%が好ましく、15質量%〜27質量%がより好ましく、18質量%〜26質量%がさらに好ましい。
【0165】
自己支持性フィルム作製時のその他の条件等は、パート1の<ポリアミック酸溶液(b)の自己支持性フィルムの製造>の項で説明した条件と同じである。
【0166】
ポリイミド溶液からポリイミドフィルムを製造する場合、上記のように自己支持性フィルムを経由することなく、また支持体から剥離することなく、次の加熱処理工程において、最高加熱温度で加熱してもよい。
【0167】
<加熱処理(イミド化)工程>
次いで、自己支持性フィルムを加熱処理してポリイミドフィルムを得る。加熱処理工程において、最高加熱温度が、好ましくは350℃以上、より好ましくは450℃以上、さらに好ましくは470℃以上となるように加熱する。加熱温度の上限はポリイミドフィルムの特性が低下しない温度であれば良く、好ましくは600℃以下、より好ましくは550℃以下、さらに好ましくは530℃以下、特に好ましくは520℃以下である。
【0168】
加熱処理は、最初に約100℃〜350℃未満の温度においてポリマーのイミド化および溶媒の蒸発・除去を約0.05〜5時間、特に0.1〜3時間で徐々に行うことが適当である。特に、この加熱処理は段階的に、約100℃〜約170℃の比較的低い温度で約0.5〜30分間第一次加熱処理し、次いで170℃を超えて220℃以下の温度で約0.5〜30分間第二次加熱処理して、その後、220℃を越えて350℃未満の高温で約0.5〜30分間第三次加熱処理することが好ましく、さらに350℃以上から600℃以下の高い温度で第四次高温加熱処理する必要がある。また、この加熱プロセスは逐次的にも連続的にも行うことができる。
【0169】
工業的に製造する場合、加熱処理の際、キュア炉中においては、ピンテンタ、クリップ、枠などで、少なくとも長尺の自己支持性フィルムの長手方向に直角の方向、すなわちフィルムの幅方向の両端縁を固定し、必要に応じて幅方向、または長さ方向に拡縮して加熱処理を行っても良い。
【0170】
上述のようにして、得られた本発明のポリイミドフィルムは、さらに、サンドブラスト処理、コロナ処理、プラズマ処理、エッチング処理などを行っても良い。
【0171】
上述のようにして、得られた本発明のポリイミドフィルムについて、全ジアミン成分中の一般式(1)のジアミン濃度が高い場合(例えば30質量%以上)、フィルムの外観が良好なポリイミドフィルムを得るためには、ポリイミドフィルムの厚みが厚い(例えば25μ以上)ほうが、薄い場合に比べて好ましい。
【0172】
また、テトラカルボン酸成分がPMDAであり、かつ、全ジアミン成分中の一般式(1)のジアミン濃度が高い場合(例えば80質量%以上)、フィルムの外観が良好なポリイミドフィルムを得るためには、加熱処理(イミド化)工程の最高加熱温度は低い(例えば300〜400℃)ほうが好ましい。
【0173】
<ポリイミドフィルム積層体>
ポリイミドフィルムの表面は、接着剤との接着性に優れている。従って、第1の態様のポリイミドフィルム(パート1で説明)と同様に、第2の態様のポリイミドフィルムを使用して、接着剤層を積層したポリイミド積層体およびさらに他の基材を積層した積層体を製造することができる。
【0174】
従って、本発明は、この第2の態様で説明した上記ポリイミドフィルムと、このポリイミドフィルムに接して積層された接着剤層とを有するポリイミド積層体を提供する。
【0175】
さらに本発明は、この第2の態様で説明した上記ポリイミドフィルムと、このポリイミドフィルムに接して積層された接着剤層と、この接着剤層を介して積層された他の基材を有する積層体、特に好ましくは他の基材として金属箔が積層されたポリイミド金属積層体を提供する。
【0176】
第2の態様のポリイミドフィルムの線膨張係数についても、第1の態様で説明した通りである。
【0177】
第2の態様の開示事項をまとめると次の通りである。
1. 接着剤層と直接積層用に用いるポリイミドフィルムであり、
このポリイミドフィルムを構成するポリイミドが、テトラカルボン酸二無水物成分と、一般式(1)で示されるジアミン化合物を、0を超え100モル%、好ましくは5〜100モル%、さらに好ましくは10〜100モル%含むジアミン成分とを反応させて得られることを特徴とするポリイミドフィルム。
【0178】
【化6】
(式中、R
1は水素原子または炭素数1〜12のアルキル基またはアリール基を示し、R
2は炭素数1〜12のアルキル基またはアリール基を示す。)
2. 一般式(1)で示されるジアミン化合物が、2,4−ビス(4−アミノアニリノ)−6−アニリノ−1,3,5−トリアジンであることを特徴とする上記1に記載のポリイミドフィルム。
3. 最高加熱温度が350℃以上である加熱工程を経て製造されたことを特徴とする上記1または2に記載のポリイミドフィルム。
4. 最高加熱温度が450℃以上である加熱工程を経て製造されたことを特徴とする上記1または2に記載のポリイミドフィルム。
5. 前記ジアミン成分が、さらにフェニレンジアミンまたはジアミノジフェニルエーテルを含むことを特徴とする上記1〜4のいずれかに記載のポリイミドフィルム。
6. 前記テトラカルボン酸二無水物成分が、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物および/またはピロメリット酸二無水物を含むことを特徴とする上記1〜5のいずれかに記載のポリイミドフィルム。
7. 上記1〜6のいずれかに記載のポリイミドフィルムと、このポリイミドフィルムに直接接して積層されている接着剤層とを有するポリイミド積層体。
8. 上記1〜6のいずれかに記載のポリイミドフィルムと、このポリイミドフィルムに直接接して積層されている接着剤層と、この接着剤層を介して積層された他の基材を有する積層体。特に好ましくは他の基材として金属箔が積層されたポリイミド金属積層体。
【0179】
<<パート3>>
本発明の第3の態様を説明する。第3の態様は、フィルム表面にめっきにより金属層を形成するために用いられるポリイミドフィルムに関する。第1の態様のポリイミドフィルムが、乾式または湿式めっきによる金属層の形成用に適していることは述べたとおりであるが、第3の態様によるポリイミドフィルムもこの用途に適している。
【0180】
第3の態様によるポリイミドフィルムは、第1の態様で説明したポリイミドフィルムと同様に多層で形成されるフィルムである。また、第3の態様によるポリイミドフィルムは、第2の態様で説明したポリイミドフィルムと同様に単一層で形成されるフィルムである。
【0181】
以下においては、単一層で形成されるフィルムについて説明する。ポリイミドは、テトラカルボン酸二無水物成分と、一般式(1)で示されるジアミン化合物を10〜100モル%含むジアミン成分とを反応させて得られることを特徴とするポリイミドフィルムに関する。ポリイミドフィルムは、好ましくは、加熱処理工程において、最高加熱温度が450℃以上となる条件で加熱処理して得られる。
【0182】
【化7】
(式中、R
1は水素原子または炭素数1〜12のアルキル基またはアリール基を示し、R
2は炭素数1〜12のアルキル基またはアリール基を示す。)
【0183】
本発明の第3の態様によれば、めっきにより金属層を設けた場合、初期だけではなく、150℃での熱処理や、121℃、0.2MPa、100%RHでの熱処理後においても、剥離強度の低下しない優れた密着性を有するポリイミドフィルムを提供できる。
【0184】
さらに、初期だけではなく、150℃での熱処理や、121℃、0.2MPa、100%RHでの処理後においても、剥離強度の低下しない優れた密着性を有する、めっきにより金属層を設けたポリイミド金属積層体を提供できる。
【0185】
ポリイミドフィルムが、単一のポリイミド層で形成されるフィルムである場合、ポリイミドの原料および自己支持性フィルムの製造までは、第2の態様における説明と同一である。従って、加熱処理工程のみを説明する。
【0186】
<加熱処理(イミド化)工程>
第3の態様においては、得られた自己支持性フィルムを、加熱処理工程において、最高加熱温度が、好ましくは450℃以上、より好ましくは470℃以上となるように加熱してポリイミドフィルムを得る。加熱温度の上限はポリイミドフィルムの特性が低下しない温度であれば良く、好ましくは600℃以下、より好ましくは550℃以下、さらに好ましくは530℃以下、特に好ましくは520℃以下である。
ればよい。
【0187】
加熱処理は、多段で加熱することができ、最初に約100℃〜400℃の温度においてポリマーのイミド化および溶媒の蒸発・除去を約0.05〜5時間、特に0.1〜3時間で徐々に行うことが適当である。特に、この加熱処理は段階的に、約100℃〜約170℃の比較的低い温度で約0.5〜30分間第一次加熱処理し、次いで170℃を超えて220℃以下の温度で約0.5〜30分間第二次加熱処理して、その後、220℃を越えて450℃未満の高温で約0.5〜30分間第三次加熱処理して、450℃〜550℃、好ましくは470〜530℃、さらに好ましくは480〜520℃の最高加熱温度で高温加熱処理する必要がある。また、この加熱プロセスは逐次的にも連続的にも行うことができる。
【0188】
工業的に製造する場合、加熱処理の際、キュア炉中においては、ピンテンタ、クリップ、枠などで、少なくとも長尺の自己支持性フィルムの長手方向に直角の方向、すなわちフィルムの幅方向の両端縁を固定し、必要に応じて幅方向、または長さ方向に拡縮して加熱処理を行っても良い。
【0189】
本発明のポリイミドフィルムの厚みは特に限定されるものではないが、3〜250μm程度、好ましくは4〜150μm程度、より好ましくは5〜125μm程度、さらに好ましくは5〜100μm程度である。
【0190】
本発明のポリイミドフィルムは、さらに、サンドブラスト処理、コロナ処理、プラズマ処理、エッチング処理などを行っても良い。
【0191】
<ポリイミド金属積層体、金属層形成工程>
本態様のポリイミドフィルムは、金属層との密着性に優れており、表面に金属層を形成してポリイミド金属積層体を製造することができる。本態様のポリイミドフィルムを使用する場合、めっきを施す面は、A面、またはB面のどちらであっても良い。
【0192】
めっきにより金属層を形成する方法として、乾式めっき法であるメタライジング法、湿式めっき法を挙げることができる。
【0193】
湿式めっき法およびメタライジング法については、パート1の<ポリイミド金属積層体(金属層直接形成)>において、詳述しており、そこで記載された方法に従って(好ましい条件、材料も同じ)、実施することができる。
【0194】
このようにして得られるポリイミドフィルムおよびポリイミド金属積層体は、プリント配線板、フレキシブルプリント基板、TAB用テープ、COF用テープあるいは金属配線など、また、金属配線、ICチップなどのチップ部材などのカバー基材、液晶ディスプレー、有機エレクトロルミネッセンスディスプレー、電子ペーパー、太陽電池などのベース基材等の電子部品や電子機器類の素材として用いることができる。
【0195】
また、ポリイミドフィルムの線膨張係数は、使用する目的に応じて適宜選択すれば良く、例えば、FPC、TAB、COFあるいは金属配線基材などの絶縁基板材料、金属配線、ICチップなどのチップ部材などのカバー基材などに用いる場合には、一般的には、ポリイミドフィルムの線膨張係数が金属配線やICチップなどのチップ部材の線膨張係数に近いことが好ましく、具体的には、MDおよびTDともに40ppm/℃以下であることが好ましく、0〜30ppm/℃であることがより好ましく、5〜25ppm/℃であることがさらに好ましく、8〜20ppm/℃であることが特に好ましい。
【0196】
第3の態様の開示事項をまとめると次のとおりである。
1. ポリイミド表面にめっきにより金属層を形成するために用いるポリイミドフィルムであり、
このポリイミドを構成するポリイミドが、テトラカルボン酸二無水物成分と、一般式(1)で示されるジアミン化合物を10〜100モル%含むジアミン成分とを反応させて得られ、加熱処理工程において、最高加熱温度が450℃以上となる条件で加熱処理して得られたことを特徴とするポリイミドフィルム。
【0197】
【化8】
(式中、R
1は水素原子または炭素数1〜12のアルキル基またはアリール基を示し、R
2は炭素数1〜12のアルキル基またはアリール基を示す。)
2. 一般式(1)で示すジアミン化合物が、2,4−ビス(4−アミノアニリノ)−6−アニリノ−1,3,5−トリアジンであることを特徴とする上記1に記載のポリイミドフィルム。
3. 前記ポリイミドが、ジアミン成分としてさらにフェニレンジアミン又はジアミノジフェニルエーテルを含むことを特徴とする上記1または2に記載のポリイミドフィルム。
4. 前記テトラカルボン酸二無水物成分が、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物および/またはピロメリット酸二無水物を含むテトラカルボン酸二無水物成分であることを特徴とする上記1〜3のいずれかに記載のポリイミドフィルム。
5. めっきは、乾式または湿式めっきであることを特徴とする上記1〜4のいずれかに記載のポリイミドフィルム。
6. 上記1〜5のいずれかに記載のポリイミドフィルムと、めっきにより形成された金属層とを有することを特徴とするポリイミド金属積層体。
【実施例】
【0198】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0199】
<評価方法>
ポリイミドフィルムの物性の評価は以下の方法に従って行った。
a)剥離強度は、90°ピールでの剥離強度であり、温度23℃、湿度50%の環境下で、50mm/分の剥離速度で測定した。
b)ポリイミドフィルムの表面は、ポリアミック酸溶液を支持体上にキャスティングしたときの空気側の面をA面とし、支持体側の面をB面とした。
c)表中のポリイミド積層体及びポリイミド金属積層体の剥離強度の欄において、ポリイミドと被着材との剥離モードを観察し、表中に以下の1)から4)の内容で表示した。剥離モードが良いか否かについては、「2)>1)>4)>3)」の順とした。
1)ポリイミド/接着剤の界面剥離(接着剤が白濁)と接着剤の凝集破壊の混合。
2)接着剤の凝集破壊。
3)ポリイミド/接着剤の界面剥離。
4)ポリイミド/接着剤の界面剥離で接着剤が白濁。
【0200】
(1)ポリイミド積層体A(カバーレイ)の剥離強度の測定
・ポリイミド積層体Aの作製:
ポリイミドフィルムの接着性を評価する面(実施例パートIにおいては、ポリアミック酸溶液の塗布面)に、株式会社有沢製作所製カバーレイCVA0525KAを180℃、3MPaで30分プレスして貼り合わせてポリイミド積層体Aを得た。
【0201】
・剥離強度の測定
ポリイミド積層体Aの剥離強度を測定し、初期剥離強度Aとした。また、ポリイミド積層体Aを、150℃の熱風乾燥機中で24時間処理し、その後剥離強度を測定し、耐熱後剥離強度Aとした。
【0202】
(2)ポリイミド金属積層体(湿式めっき法)の剥離強度の測定
・ポリイミド金属積層体の作製:
ポリイミドフィルム表面に、湿式めっきプロセス(荏原ユージライト株式会社製エルフシードプロセス)により、無電解ニッケルめっき層、電解銅めっき層の順に形成し、さらに65℃で30分間熱処理して、銅厚み10μmのポリイミド金属積層体を得た。
【0203】
・剥離強度の測定:
ポリイミド金属積層体の剥離強度を測定し、初期剥離強度A1とした。
【0204】
ポリイミド金属積層体を、150℃の熱風乾燥機中で24時間処理し、その後剥離強度を測定し、耐熱後剥離強度A2とした。
【0205】
ポリイミド金属積層体を、150℃の熱風乾燥機中で168時間処理し、その後剥離強度を測定し、耐熱後剥離強度A3とした。
【0206】
ポリイミド金属積層体をプレッシャークッカー試験装置を用いて、121℃、100%RH、0.2MPaの環境下で24時間処理し、その後剥離強度を測定し、クッカー剥離強度A4とした。
【0207】
ポリイミド金属積層体をプレッシャークッカー試験装置を用いて、121℃、100%RH、0.2MPaの環境下で96時間処理し、その後剥離強度を測定し、クッカー剥離強度A5とした。
【0208】
(3)ポリイミド金属積層体(乾式めっき法)の剥離強度の測定
・ポリイミド金属積層体の作製:
ポリイミドフィルムの塗工面に、常法のスパッタ法によって1層目の厚み25nmのNi/Cr(質量比:8/2)層と、さらに1層の上に2層目の厚み400nmの銅層を形成し、銅層の上に厚み20μmの銅めっき層を形成して、ポリイミド金属積層体を得た。
【0209】
・剥離強度の測定:
乾式めっき法により作成したポリイミド金属積層体の剥離強度の測定は、前で述べた湿式めっき法により得られたポリイミド金属積層体の剥離強度の測定と同様の方法で剥離強度を測定した。
【0210】
<<実施例パートI(パート1に対応する実施例)>>
【0211】
<ポリアミック酸溶液、塗工液の調製>
(ポリアミック酸溶液I−Aの調製)
重合槽に所定量のN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジアミン成分としてパラフェニレンジアミン(PPD)を加えた後、40℃で撹拌しながら、酸成分として3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(s−BPDA)をPPDと略等モルまで段階的に添加して反応させ、固形分濃度が18質量%であるポリアミック酸の重合溶液(ポリイミド前駆体溶液)を得た。そして、このポリアミック酸重合溶液に、ポリアミック酸100質量部に対して0.25質量部の割合でモノステアリルリン酸エステルトリエタノールアミン塩を添加し、均一に混合し、ポリアミック酸溶液I−Aを得た。ポリアミック酸溶液I−Aの30℃における回転粘度は180Pa・sであった。
【0212】
(ポリアミック酸溶液組成物I−Aの調製)
ポリアミック酸溶液I−Aに、さらにアミド酸単位に対して0.05当量のイミド化触媒として1,2−ジメチルイミダゾールを添加し、ポリアミック酸溶液組成物I−Aを得た。
【0213】
(ポリアミック酸溶液I−Bの調製と塗工液I−1の調製)
重合槽に所定量のN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジアミン成分として2,4−ビス(4−アミノアニリノ)−6−アニリノ−1,3,5−トリアジン(ATDA)を加えた。その後、40℃で撹拌しながら、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(s−BPDA)を全ジアミン成分と略等モルまで段階的に添加して反応させ、固形分濃度が18質量%であるポリアミック酸の重合溶液I−B(ポリイミド前駆体溶液)を得た。
【0214】
ポリアミック酸溶液I−BにDMAcを加え、固形分濃度を5質量%としたポリアミック酸の溶液(ポリイミド前駆体溶液)を塗工液I−1とした。
【0215】
(ポリアミック酸溶液I−Cの調製と塗工液I−2の調製)
重合槽に所定量のN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、パラフェニレンジアミン(PPD)、2,4−ビス(4−アミノアニリノ)−6−アニリノ−1,3,5−トリアジン(ATDA)を加えた。全ジアミン成分中、ATDAの量を70モル%とした。その後、40℃で撹拌しながら、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(s−BPDA)を全ジアミン成分と略等モルまで段階的に添加して反応させ、固形分濃度が18質量%であるポリアミック酸の重合溶液I−C(ポリイミド前駆体溶液)を得た。
【0216】
ポリアミック酸溶液I−CにDMAcを加え、固形分濃度を5質量%としたポリアミック酸の溶液(ポリイミド前駆体溶液)を塗工液I−2とした。
【0217】
(ポリアミック酸溶液I−Dの調製と塗工液I−3の調製)
全ジアミン成分中、ATDAの量を50モル%とした以外は、ポリアミック酸溶液I−Cの調製と同様にし、ポリアミック酸の重合溶液I−D(ポリイミド前駆体溶液)を得た。ポリアミック酸溶液I−DにDMAcを加え、固形分濃度を5質量%としたポリアミック酸の溶液(ポリイミド前駆体溶液)を塗工液I−3とした。
【0218】
(ポリアミック酸溶液I−Eの調製と塗工液I−4の調製)
全ジアミン成分中、ATDAの量を30モル%とした以外は、ポリアミック酸溶液I−Cの調製と同様にし、ポリアミック酸の重合溶液I−E(ポリイミド前駆体溶液)を得た。ポリアミック酸溶液I−EにDMAcを加え、固形分濃度を5質量%としたポリアミック酸の溶液(ポリイミド前駆体溶液)を塗工液I−4とした。
【0219】
(ポリアミック酸溶液I−Fの調製と塗工液I−5の調製)
全ジアミン成分中、ATDAの量を19モル%とした以外は、ポリアミック酸溶液I−Cの調製と同様にし、ポリアミック酸の重合溶液I−F(ポリイミド前駆体溶液)を得た。ポリアミック酸溶液I−FにDMAcを加え、固形分濃度を5質量%としたポリアミック酸の溶液(ポリイミド前駆体溶液)を塗工液I−5とした。
【0220】
(ポリアミック酸溶液I−Gの調製と塗工液I−6の調製)
重合槽に所定量のN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、2,4−ビス(4−アミノアニリノ)−6−アニリノ−1,3,5−トリアジン(ATDA)を加えた。その後、40℃で撹拌しながら、酸成分としてピロメリット酸二無水物(PMDA)を全ジアミン成分と略等モルまで段階的に添加して反応させ、固形分濃度が18質量%であるポリアミック酸の重合溶液I−G(ポリイミド前駆体溶液)を得た。ポリアミック酸溶液I−GにDMAcを加え、固形分濃度を5質量%としたポリアミック酸の溶液(ポリイミド前駆体溶液)を塗工液I−6とした。
【0221】
(ポリアミック酸溶液I−Hの調製と塗工液I−7の調製)
重合槽に所定量のN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、パラフェニレンジアミン(PPD)、2,4−ビス(4−アミノアニリノ)−6−アニリノ−1,3,5−トリアジン(ATDA)を加えた。全ジアミン成分中、ATDAの量を80モル%、PPDの量を20モル%とした。その後、40℃で撹拌しながら、ピロメリット酸二無水物(PMDA)を全ジアミン成分と略等モルまで段階的に添加して反応させ、固形分濃度が18質量%であるポリアミック酸の重合溶液I−H(ポリイミド前駆体溶液)を得た。ポリアミック酸溶液I−HにDMAcを加え、固形分濃度を5質量%としたポリアミック酸の溶液(ポリイミド前駆体溶液)を塗工液I−7とした。
【0222】
(ポリアミック酸溶液I−Iの調製と塗工液I−8の調製)
重合槽に所定量のN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジアミン成分として4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(DADE)、2,4−ビス(4−アミノアニリノ)−6−アニリノ−1,3,5−トリアジン(ATDA)を加えた。全ジアミン成分中、ATDAの量を80モル%、DADEの量を20モル%とした。その後、40℃で撹拌しながら、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(s−BPDA)、ピロメリット酸二無水物(PMDA)を全ジアミン成分と略等モルまで段階的に添加して反応させ、固形分濃度が18質量%であるポリアミック酸の重合溶液I−I(ポリイミド前駆体溶液)を得た。全酸二無水物成分中、s−BPDAの量を80モル%、PMDAの量を20モル%とした。ポリアミック酸溶液I−IにDMAcを加え、固形分濃度を5質量%としたポリアミック酸の溶液(ポリイミド前駆体溶液)を塗工液I−8とした。
【0223】
(参考実験:5%重量減少温度)
(i) ポリアミック酸溶液I−Bの自己支持性フィルムを得た後、150℃から約11分かけて370℃まで加熱処理する条件で、厚み35μmのポリイミドフィルムを作成し、TGAにより空気中、5%重量減少温度を測定した。
(測定結果) ポリアミック酸溶液I−Bより得られるポリイミド:455℃。
【0224】
(ii) ポリアミック酸溶液I−Fの自己支持性フィルムを得た後、150℃から約18分かけて490℃まで加熱処理する条件で、厚み35μmのポリイミドフィルムを作成し、TGAにより空気中,5%重量減少温度を測定した。
(測定結果) ポリアミック酸溶液I−Fより得られるポリイミド:562℃。
【0225】
上記よりポリアミック酸溶液I−Fより得られるポリイミドは5%重量減少温度が高いことが判明した。
【0226】
(実施例A1)
ポリアミック酸溶液組成物I−Aをガラス板上に薄膜状にキャストし、ホットプレートを用いて138℃で60秒加熱した後、ガラス板から剥離して、加熱減量が36.8質量%の自己支持性フィルムを得た。
【0227】
この自己支持性フィルムのA面に塗工液I−1をバーコーターNo.3で塗布し(塗布量:6g/m
2)、四辺をピンテンターで固定して、オーブンを用いて、150℃で50秒、210℃で50秒、370℃で50秒と段階的に加熱イミド化して、ポリイミドフィルム(PI−A1)を得た。
【0228】
ポリイミドフィルム(PI−A1)を用いて、評価方法の項で説明した方法により、A面(塗布面)にカバーレイを積層したポリイミド積層体A(PI−A1)を得た。ポリイミド積層体A(PI−A1)の剥離強度を測定し、結果を表A1に示す。
【0229】
以下の実施例においては記載を省略するが、特に明示しない限り、自己支持性フィルムの四辺をピンテンターで固定し、オーブンを用いて加熱処理を行った点は同じである。また、剥離強度についても、特に明示しない限り、以下の実施例においても、評価方法の項で説明した方法により、評価面(塗工液を塗布した面)にカバーレイを積層して得られたポリイミド積層体Aを用いて、剥離強度を測定した。各実施例の結果を表A(表A1および表A2)に示す。カバーレイを積層して得られたポリイミド積層体Aの名称は、ポリイミドフィルムの名称(PI−A1等)と同じ名称で、ポリイミド積層体A(PI−A1)等と表す。
【0230】
また、表A(表A1および表A2)に自己支持性フィルムの加熱減量、塗工液、塗布面(ポリイミドフィルムの接着材層との積層面)、得られたポリイミドフィルムの平均膜厚、その他の条件および結果を示す。
【0231】
(実施例A2)
実施例A1と同様にして得た自己支持性フィルムのB面を選択した以外は実施例A1と同様にしてポリイミドフィルム(PI−A2)を得た。
【0232】
(実施例A3)
実施例A1と同様にして得た自己支持性フィルムのA面に塗工液I−1をバーコーターNo.3で塗布し(塗布量:6g/m
2)、150℃で50秒、210℃で50秒、370℃で50秒、490℃で50秒と段階的に加熱イミド化して、ポリイミドフィルム(PI−A3)を得た。
【0233】
(実施例A4)
塗工液の塗布面にB面を選択した以外は実施例A3と同様にして、ポリイミドフィルム(PI−A4)を得た。
【0234】
(実施例A5)
実施例A1と同様にして得た自己支持性フィルムのA面に、塗工液I−2をバーコーターNo.3で塗布し(塗布量:6g/m
2)、150℃から370℃まで約11分かけて連続的に加熱イミド化して、ポリイミドフィルム(PI−A5)を得た。
【0235】
(実施例A6)
塗工液の塗布面にB面を選択した以外は、実施例A5と同様にして、ポリイミドフィルム(PI−A6)を得た。
【0236】
(実施例A7)
実施例A1と同様にして得た自己支持性フィルムのA面に、塗工液I−2をバーコーターNo.3で塗布し(塗布量:6g/m
2)、150℃から490℃まで約18分かけて連続的に加熱イミド化して、ポリイミドフィルム(PI−A7)を得た。
【0237】
(実施例A8)
塗工液の塗布面にB面を選択した以外は、実施例A7と同様にして、ポリイミドフィルム(PI−A8)を得た。
【0238】
(実施例A9)
実施例A1と同様にして得た自己支持性フィルムのA面に、塗工液I−3をバーコーターNo.3で塗布し(塗布量:6g/m
2)、150℃から370℃まで約11分かけて連続的に加熱イミド化して、ポリイミドフィルム(PI−A9)を得た。
【0239】
(実施例A10)
塗工液の塗布面にB面を選択した以外は、実施例A9と同様にして、ポリイミドフィルム(PI−A10)を得た。
【0240】
(実施例A11)
実施例A1と同様にして得た自己支持性フィルムのA面に、塗工液I−3をバーコーターNo.3で塗布し(塗布量:6g/m
2)、150℃から490℃まで約18分かけて連続的に加熱イミド化して、ポリイミドフィルム(PI−A11)を得た。
【0241】
(実施例A12)
塗工液の塗布面にB面を選択した以外は、実施例A11と同様にして、ポリイミドフィルム(PI−A12)を得た。
【0242】
(実施例A13)
実施例A1と同様にして得た自己支持性フィルムのA面に、塗工液I−4をバーコーターNo.3で塗布し(塗布量:6g/m
2)、150℃から370℃まで約11分かけて連続的に加熱イミド化して、ポリイミドフィルム(PI−A13)を得た。
【0243】
(実施例A14)
塗工液の塗布面にB面を選択した以外は、実施例A13と同様にして、ポリイミドフィルム(PI−A14)を得た。
【0244】
(実施例A15)
実施例A1と同様にして得た自己支持性フィルムのA面に、塗工液I−4をバーコーターNo.3で塗布し(塗布量:6g/m
2)、150℃から490℃まで約18分かけて連続的に加熱イミド化して、ポリイミドフィルム(PI−A15)を得た。
【0245】
(実施例A16)
塗工液の塗布面にB面を選択した以外は、実施例A15と同様にして、ポリイミドフィルム(PI−A16)を得た。
【0246】
(実施例A17)
ポリアミック酸溶液I−A(1,2−ジメチルイミダゾール添加なし)をガラス板上に薄膜状にキャストし、ホットプレートを用いて138℃で60秒加熱した後、ガラス板から剥離して、自己支持性フィルムを得た。この自己支持性フィルムのA面に塗工液I−4をバーコーターNo.3で塗布し(塗布量:6g/m
2)、150℃から370℃まで約11分かけて連続的に加熱イミド化して、ポリイミドフィルム(PI−A17)を得た。
【0247】
(実施例A18)
塗工液の塗布面にB面を選択した以外は、実施例A17と同様にして、ポリイミドフィルム(PI−A18)を得た。
【0248】
(実施例A19)
実施例A17と同様にして得た自己支持性フィルムのA面に、塗工液I−4をバーコーターNo.3で塗布し(塗布量:6g/m
2)、150℃から490℃まで約18分かけて連続的に加熱イミド化して、ポリイミドフィルム(PI−A19)を得た。
【0249】
(実施例A20)
塗工液の塗布面にB面を選択した以外は、実施例A19と同様にして、ポリイミドフィルム(PI−A20)を得た。
【0250】
(実施例A21)
実施例A1と同様にして得た自己支持性フィルムのA面に、塗工液I−5をバーコーターNo.3で塗布し(塗布量:6g/m
2)、150℃から370℃まで約11分かけて連続的に加熱イミド化して、ポリイミドフィルム(PI−A21)を得た。
【0251】
(実施例A22)
塗工液の塗布面にB面を選択した以外は、実施例A21と同様にして、ポリイミドフィルム(PI−A22)を得た。
【0252】
(実施例A23)
実施例A1と同様にして得た自己支持性フィルムのA面に、塗工液I−5をバーコーターNo.3で塗布し(塗布量:6g/m
2)150℃から490℃まで約18分かけて連続的に加熱イミド化して、ポリイミドフィルム(PI−A23)を得た。
【0253】
(実施例A24)
塗工液の塗布面にB面を選択した以外は、実施例A23と同様にして、ポリイミドフィルム(PI−A24)を得た。
【0254】
(実施例A25)
実施例A17と同様にして得た自己支持性フィルムのA面に、塗工液I−5をバーコーターNo.3で塗布し(塗布量:6g/m
2)、150℃から370℃まで約11分かけて連続的に加熱イミド化して、ポリイミドフィルム(PI−A25)を得た。
【0255】
(実施例A26)
塗工液の塗布面にB面を選択した以外は、実施例A25と同様にして、ポリイミドフィルム(PI−A26)を得た。
【0256】
(実施例A27)
実施例A17と同様にして得た自己支持性フィルムのA面に、塗工液I−5をバーコーターNo.3で塗布し(塗布量:6g/m
2)、四辺をピンテンターで固定して、オーブンを用いて、150℃から490℃まで約18分かけて連続的に加熱イミド化して、ポリイミドフィルム(PI−A27)を得た。
【0257】
(実施例A28)
塗工液の塗布面にB面を選択した以外は、実施例A27と同様にして、ポリイミドフィルム(PI−A28)を得た。
【0258】
(実施例A29)
実施例A1と同様にして得た自己支持性フィルムのA面に、塗工液I−6をバーコーターNo.3で塗布し(塗布量:6g/m
2)、150℃から370℃まで約11分かけて連続的に加熱イミド化して、ポリイミドフィルム(PI−A29)を得た。
【0259】
(実施例A30)
塗工液の塗布面にB面を選択した以外は、実施例A29と同様にして、ポリイミドフィルム(PI−A30)を得た。
【0260】
(実施例A31)
実施例A1と同様にして得た自己支持性フィルムのA面に、塗工液I−6をバーコーターNo.3で塗布し(塗布量:6g/m
2)、四辺をピンテンターで固定して、オーブンを用いて、150℃から490℃まで約18分かけて連続的に加熱イミド化して、ポリイミドフィルム(PI−A31)を得た。
【0261】
(実施例A32)
塗工液の塗布面にB面を選択した以外は、実施例A31と同様にして、ポリイミドフィルム(PI−A32)を得た。
【0262】
(実施例A33)
実施例A1と同様にして得た自己支持性フィルムのA面に、塗工液I−7をバーコーターNo.3で塗布し(塗布量:6g/m
2)、150℃から370℃まで約11分かけて連続的に加熱イミド化して、ポリイミドフィルム(PI−A33)を得た。
【0263】
(実施例A34)
実施例A1と同様にして得た自己支持性フィルムのB面を、塗工液の塗布面に選択した以外は、実施例A33と同様にして、ポリイミドフィルム(PI−A34)を得た。
【0264】
(実施例A35)
実施例A1と同様にして得た自己支持性フィルムのA面に、塗工液I−7をバーコーターNo.3で塗布し(塗布量:6g/m
2)、150℃から490℃まで約18分かけて連続的に加熱イミド化して、ポリイミドフィルム(PI−A35)を得た。
【0265】
(実施例A36)
塗工液の塗布面にB面を選択した以外は、実施例A35と同様にして、ポリイミドフィルム(PI−A36)を得た。
【0266】
(実施例A37)
実施例A1と同様にして得た自己支持性フィルムのA面に、塗工液I−8をバーコーターNo.3で塗布し(塗布量:6g/m
2)、150℃から370℃まで約11分かけて連続的に加熱イミド化して、ポリイミドフィルム(PI−A37)を得た。
【0267】
(実施例A38)
塗工液の塗布面にB面を選択した以外は、実施例A37と同様にして、ポリイミドフィルム(PI−A38)を得た。
【0268】
(実施例A39)
実施例A1と同様にして得た自己支持性フィルムのA面に、塗工液I−8をバーコーターNo.3で塗布し(塗布量:6g/m
2)、150℃から490℃まで約18分かけて連続的に加熱イミド化して、ポリイミドフィルム(PI−A39)を得た。
【0269】
(実施例A40)
塗工液の塗布面にB面を選択した以外は、実施例A39と同様にして、ポリイミドフィルム(PI−A40)を得た。
【0270】
(比較例A1)
実施例A27と同様にして加熱減量が35.6質量%の自己支持性フィルムを得た。自己支持性フィルムにポリマー溶液を塗布することなく四辺をピンテンターで固定して、オーブンを用いて、150℃から490℃まで約18分かけて連続的に加熱イミド化してポリイミドフィルム(PI−A41)を得た。A面にカバーレイを積層して得られたポリイミド積層体A(PI−A41)から剥離強度を測定した。
【0271】
(比較例A2)
実施例A27と同様にして加熱減量が35.6質量%の自己支持性フィルムを得た。自己支持性フィルムにポリマー溶液を塗布することなく四辺をピンテンターで固定して、オーブンを用いて、150℃から490℃まで約18分かけて連続的に加熱イミド化してポリイミドフィルム(PI−A42)を得た。B面にカバーレイを積層して得られたポリイミド積層体A(PI−A42)から剥離強度を測定した。
【0272】
【表1】
【0273】
【表2】
【0274】
実施例において、
1)実施例A2〜A4,A25〜A28では全てポリイミド積層体Aの初期剥離強度が優れる。
2)実施例A1〜A4は、実施例A25〜A28と比べ、耐熱剥離強度が優れる。これは一般式(1)で示されるジアミンの含有量の影響と考える。
3)実施例A3とA4は、実施例A1とA2に比べ、耐熱剥離強度が優れる。これはフィルムの最高加熱温度の影響であると考える。
4)実施例A1〜A4ではフィルムのA面とB面の耐熱後の剥離強度は、B面の方が少し高い傾向を示す。
【0275】
さらに、実施例において明らかとなった主な内容を以下に示す。
5)ATDAを使用した場合は、使用していない場合に比べてポリイミド積層体Aの耐熱剥離強度が優れる。
6)初期の剥離強度に対する耐熱後の剥離強度の比(耐熱後の剥離強度/初期の剥離強度)がジアミン成分中のATDAの量が50−70モル%の場合には、約0.45〜3.1と特に大きい。
7)490℃でキュアを行った場合には、それぞれ、同一の面に塗布を行い、370℃でキュアを行った場合と比べ、耐熱剥離強度が優れる傾向を示す。
8)実施例A29〜A40(テトラカルボン酸成分がPMDA)では、耐熱後の剥離強度/初期の剥離強度が約1.9〜5.1と極めて大きく、耐熱後に剥離強度が大きく増加する。また、剥離モードも接着剤の凝集破壊であり、数値以上の接着性を有していると考えられる。
【0276】
<<実施例パートII(パート2に対応する実施例)>>
【0277】
(ポリアミック酸溶液II−Aの調製)
重合槽に所定量のN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、2,4−ビス(4−アミノアニリノ)−6−アニリノ−1,3,5−トリアジン(ATDA)を加えた。その後、40℃で撹拌しながら、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(s−BPDA)を全ジアミン成分と略等モルまで段階的に添加して反応させ、固形分濃度が18質量%であるポリアミック酸の重合溶液II−A(ポリイミド前駆体溶液)を得た。そして、このポリアミック酸の重合溶液II−Aに、ポリアミック酸100質量部に対して0.25質量部の割合でモノステアリルリン酸エステルトリエタノールアミン塩を添加し、均一に混合し、ポリアミック酸溶液II−Aを得た。ポリアミック酸溶液II−Aの30℃における回転粘度は170Pa・sであった。
【0278】
(ポリアミック酸溶液II−Bの調製)
重合槽に所定量のN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、パラフェニレンジアミン(PPD)、2,4−ビス(4−アミノアニリノ)−6−アニリノ−1,3,5−トリアジン(ATDA)を加えた。全ジアミン成分中、ATDAの量を30モル%とした。その後、40℃で撹拌しながら、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(s−BPDA)、を全ジアミン成分と略等モルまで段階的に添加して反応させ、固形分濃度が18質量%であるポリアミック酸の重合溶液II−B(ポリイミド前駆体溶液)を得た。そして、このポリアミック酸の重合溶液II−Bに、ポリアミック酸100質量部に対して0.25質量部の割合でモノステアリルリン酸エステルトリエタノールアミン塩を添加し、均一に混合し、ポリアミック酸溶液II−Bを得た。ポリアミック酸溶液II−Bの30℃における回転粘度は150Pa・sであった。
【0279】
(ポリアミック酸溶液II−Cの調製)
全ジアミン成分中、ATDAの量を19モル%とした以外は、ポリアミック酸溶液II−Bの調製と同様にし、ポリアミック酸溶液II−Cを得た。ポリアミック酸溶液II−Cの30℃における回転粘度は170Pa・sであった。
【0280】
(ポリアミック酸溶液II−Dの調製)
全ジアミン成分中、ATDAの量を10モル%とした以外は、ポリアミック酸溶液II−Bの調製と同様にし、ポリアミック酸溶液II−Dを得た。ポリアミック酸溶液II−Dの30℃における回転粘度は110Pa・sであった。
【0281】
(ポリアミック酸溶液II−Eの調製)
全ジアミン成分中、ATDAの量を6.2モル%とした以外は、ポリアミック酸溶液II−Bの調製と同様にし、ポリアミック酸溶液II−Eを得た。ポリアミック酸溶液II−Eの30℃における回転粘度は150Pa・sであった。
【0282】
(ポリアミック酸溶液II−Fの調製)
重合槽に所定量のN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、2,4−ビス(4−アミノアニリノ)−6−アニリノ−1,3,5−トリアジン(ATDA)を加えた。その後、40℃で撹拌しながら、ピロメリット酸二無水物(PMDA)を全ジアミン成分と略等モルまで段階的に添加して反応させ、固形分濃度が18質量%であるポリアミック酸の重合溶液II−F(ポリイミド前駆体溶液)を得た。そして、このポリアミック酸の重合溶液II−Fに、ポリアミック酸100質量部に対して0.25質量部の割合でモノステアリルリン酸エステルトリエタノールアミン塩を添加し、均一に混合し、ポリアミック酸溶液II−Fを得た。ポリアミック酸溶液II−Fの30℃における回転粘度は190Pa・sであった。
【0283】
(ポリアミック酸溶液II−Gの調製)
重合槽に所定量のN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、パラフェニレンジアミン(PPD)2,4−ビス(4−アミノアニリノ)−6−アニリノ−1,3,5−トリアジン(ATDA)を加えた。全ジアミン成分中、ATDAの量を80モル%とした。その後、40℃で撹拌しながら、ピロメリット酸二無水物(PMDA)を全ジアミン成分と略等モルまで段階的に添加して反応させ、固形分濃度が18質量%であるポリアミック酸の重合溶液II−G(ポリイミド前駆体溶液)を得た。そして、このポリアミック酸の重合溶液II−Gに、ポリアミック酸100質量部に対して0.25質量部の割合でモノステアリルリン酸エステルトリエタノールアミン塩を添加し、均一に混合し、ポリアミック酸溶液II−Gを得た。ポリアミック酸溶液II−Gの30℃における回転粘度は90Pa・sであった。
【0284】
(ポリアミック酸溶液II−Hの調製)
重合槽に所定量のN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(DADE)、2,4−ビス(4−アミノアニリノ)−6−アニリノ−1,3,5−トリアジン(ATDA)を加えた。全ジアミン成分中、ATDAの量を80モル%とした。その後、40℃で撹拌しながら、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(s−BPDA)、ピロメリット酸二無水物(PMDA)を全ジアミン成分と略等モルまで段階的に添加して反応させ、固形分濃度が18質量%であるポリアミック酸の重合溶液II−H(ポリイミド前駆体溶液)を得た。このとき、全酸二無水物成分中、s−BPDAの量を80モル%とした。そして、このポリアミック酸の重合溶液II−Hに、ポリアミック酸100質量部に対して0.25質量部の割合でモノステアリルリン酸エステルトリエタノールアミン塩を添加し、均一に混合し、ポリアミック酸溶液II−Hを得た。ポリアミック酸溶液II−Hの30℃における回転粘度は120Pa・sであった。
【0285】
(実施例B1)
ポリアミック酸溶液II−Aをガラス板上に薄膜状にキャストし、ホットプレートを用いて138℃で60秒加熱した後、ガラス板から剥離して、加熱減量が33.6質量%の自己支持性フィルムを得た。
【0286】
この自己支持性フィルムのA面を上とし、四辺をピンテンターで固定し、オーブンを用いて、150℃から370℃まで約11分で連続的に加熱イミド化して、ポリイミドフィルム(PI−B1)を得た。ポリイミドフィルム(PI−B1)を用いて、評価方法の項で説明した方法により、A面にカバーレイを積層したポリイミド積層体A(PI−B1)を得た。ポリイミド積層体A(PI−B1)の剥離強度を測定し、結果を表Bに示す。
【0287】
以下の実施例においては記載を省略するが、特に明示しない限り、自己支持性フィルムの四辺をピンテンターで固定し、オーブンを用いて加熱処理を行った点は同じである。また、剥離強度についても、特に明示しない限り、以下の実施例においても、評価方法の項で説明した方法により、評価面にカバーレイを積層して得られたポリイミド積層体Aを用いて、剥離強度を測定した。各実施例の結果を表Bに示す。カバーレイを積層して得られたポリイミド積層体Aの名称は、ポリイミドフィルムの名称(PI−B1等)と同じ名称で、ポリイミド積層体A(PI−B1)等と表す。
【0288】
また、表Bに自己支持性フィルムの加熱減量、得られたポリイミドフィルムの平均膜厚、ポリイミドフィルムの接着材層との積層面、その他の条件および結果を示す。
【0289】
(実施例B2)
実施例B1と同様にして得た自己支持性フィルムのB面を上とした以外は実施例B1と同様にして、ポリイミドフィルム(PI−B2)を得た。
【0290】
(実施例B3)
実施例B1と同様にして得た自己支持性フィルムのA面を上とし、150℃から490℃まで約18分で連続的に加熱イミド化して、ポリイミドフィルム(PI−B3)を得た。
【0291】
(実施例B4)
実施例B1と同様にして得た自己支持性フィルムのB面を上とした以外は実施例B3と同様にして、ポリイミドフィルム(PI−B4)を得た。
【0292】
(実施例B5)
ポリアミック酸溶液II−Bをガラス板上に薄膜状にキャストし、ホットプレートを用いて138℃で60秒加熱した後、ガラス板から剥離して、自己支持性フィルムを得た。この自己支持性フィルムのA面を上として、150℃から370℃まで約11分で連続的に加熱イミド化して、ポリイミドフィルム(PI−B5)を得た。
【0293】
(実施例B7)
実施例B5と同様にして得た自己支持性フィルムのA面を上とし、150℃から490℃まで約18分で連続的に加熱イミド化して、ポリイミドフィルム(PI−B7)を得た。
【0294】
(実施例B8)
実施例B5と同様にして得た自己支持性フィルムのB面を上とした以外は実施例B7と同様にして、ポリイミドフィルム(PI−B8)を得た。
【0295】
(実施例B9)
ポリアミック酸溶液II−Cをガラス板上に薄膜状にキャストし、ホットプレートを用いて138℃で210秒加熱した後、ガラス板から剥離して、自己支持性フィルムを得た。この自己支持性フィルムのA面を上として、150℃から370℃まで約11分で連続的に加熱イミド化して、ポリイミドフィルム(PI−B9)を得た。
【0296】
(実施例B10)
実施例B9と同様にして得た自己支持性フィルムのB面を上とした以外は実施例B9と同様にして、ポリイミドフィルム(PI−B10)を得た。
【0297】
(実施例B11)
実施例B9と同様にして得た自己支持性フィルムのA面を上とし、150℃から490℃まで約18分で連続的に加熱イミド化して、ポリイミドフィルム(PI−B11)を得た。
【0298】
(実施例B12)
実施例B9と同様にして得た自己支持性フィルムのB面を上とした以外は実施例B11と同様にして、ポリイミドフィルム(PI−B12)を得た。
【0299】
(実施例B13)
ポリアミック酸溶液II−Cをガラス板上に薄膜状にキャストし、ホットプレートを用いて138℃で60秒加熱した後、ガラス板から剥離して、自己支持性フィルムを得た。この自己支持性フィルムのB面を上とし、150℃から370℃まで約11分で連続的に加熱イミド化して、ポリイミドフィルム(PI−B13)を得た。このポリイミドフィルム(PI−B13)のA面(表Bに示すとおり)にカバーレイを積層してポリイミド積層体A(PI−B13)を得た。
【0300】
(実施例B14)
ポリイミドフィルム(PI−B14。PI−B13と同じフィルム)のB面にカバーレイを積層して、ポリイミド積層体A(PI−B14)を得た。
【0301】
(実施例B15)
実施例B13と同様にして自己支持性フィルムを得た。この自己支持性フィルムのB面を上とし、150℃から490℃まで約18分で連続的に加熱イミド化して、ポリイミドフィルム(PI−B15)を得た。このポリイミドフィルム(PI−B15)のA面(表Bに示すとおり)にカバーレイを積層して、ポリイミド積層体A(PI−B15)を得た。
【0302】
(実施例B16)
ポリイミドフィルム(PI−B16。PI−B15と同じフィルム)のB面にカバーレイを積層して、ポリイミド積層体A(PI−B16)を得た。
【0303】
(実施例B17)
ポリアミック酸溶液II−Dをガラス板上に薄膜状にキャストし、ホットプレートを用いて138℃で60秒加熱した後、ガラス板から剥離して、自己支持性フィルムを得た。この自己支持性フィルムのA面を上とし、150℃から370℃まで約11分で連続的に加熱イミド化して、ポリイミドフィルム(PI−B17)を得た。
【0304】
(実施例B18)
実施例B17と同様にして得た自己支持性フィルムのB面を上とした以外は実施例B17と同様にして、ポリイミドフィルム(PI−B18)を得た。
【0305】
(実施例B19)
実施例B17と同様にして得た自己支持性フィルムのA面を上とし、150℃から490℃まで約18分で連続的に加熱イミド化して、ポリイミドフィルム(PI−B19)を得た。
【0306】
(実施例B20)
実施例B17と同様にして得た自己支持性フィルムのB面を上とした以外は実施例B19と同様にして、ポリイミドフィルム(PI−B20)を得た。
【0307】
(実施例B21)
ポリアミック酸溶液II−Fをガラス板上に薄膜状にキャストし、ホットプレートを用いて138℃で160秒加熱した後、ガラス板から剥離して、自己支持性フィルムを得た。この自己支持性フィルムのA面を上とし、150℃から370℃まで約11分で連続的に加熱イミド化して、ポリイミドフィルム(PI−B21)を得た。
【0308】
(実施例B22)
実施例B21と同様にして得た自己支持性フィルムのB面を上とした以外は実施例B21と同様にして、ポリイミドフィルム(PI−B22)を得た。
【0309】
(実施例B25)
ポリアミック酸溶液II−Gをガラス板上に薄膜状にキャストし、ホットプレートを用いて138℃で160秒加熱した後、ガラス板から剥離して、自己支持性フィルムを得た。この自己支持性フィルムのA面を上とし、150℃から370℃まで約11分で連続的に加熱イミド化して、ポリイミドフィルム(PI−B25)を得た。
【0310】
(実施例B26)
実施例B23と同様にして得た自己支持性フィルムのB面を上とした以外は実施例B25と同様にして、ポリイミドフィルム(PI−B26)を得た。
【0311】
(実施例B29)
ポリアミック酸溶液II−Hをガラス板上に薄膜状にキャストし、ホットプレートを用いて138℃で210秒加熱した後、ガラス板から剥離して、自己支持性フィルムを得た。この自己支持性フィルムのA面を上とし、150℃から370℃まで約11分で連続的に加熱イミド化して、ポリイミドフィルム(PI−B29)を得た。
【0312】
(実施例B30)
実施例B27と同様にして得た自己支持性フィルムのB面を上とした以外は実施例B29と同様にして、ポリイミドフィルム(PI−B30)を得た。
【0313】
(実施例B31)
実施例B27と同様にして得た自己支持性フィルムのA面を上とし、150℃から490℃まで約18分で連続的に加熱イミド化して、ポリイミドフィルム(PI−B31)を得た。
【0314】
(実施例B32)
実施例B27と同様にして得た自己支持性フィルムのB面を上とした以外は実施例B31と同様にして、ポリイミドフィルム(PI−B32)を得た。
【0315】
(実施例B33)
ポリアミック酸溶液組成物II−Eをガラス板上に薄膜状にキャストし、ホットプレートを用いて138℃で60秒加熱した後、ガラス板から剥離して、加熱減量が35.6質量%の自己支持性フィルムを得た。
【0316】
この自己支持性フィルムのB面を上とし、四辺をピンテンターで固定して、オーブンを用いて、150℃で50秒、210℃で50秒、370℃で30分と段階的に加熱イミド化して、ポリイミドフィルム(PI−B33)を得た。このポリイミドフィルム(PI−B33)のA面(表Bに示すとおり)にカバーレイを積層したポリイミド積層体A(PI−B33)を得た。
【0317】
(実施例B34)
ポリイミドフィルム(PI−B34。PI−B33と同じもの)のB面にカバーレイを積層して、ポリイミド積層体A(PI−B34)を得た。
【0318】
(実施例B35)
比較例B1と同様にして得た自己支持性フィルムのB面を上とし、150℃、210℃、370℃、490℃までそれぞれの温度で50秒ずつ段階的に加熱イミド化して、ポリイミドフィルム(PI−B35)を得た。ポリイミドフィルム(PI−B35)のA面(表B記載のとおり)にカバーレイを積層して、ポリイミド積層体A(PI−B35)を得た。
【0319】
(実施例B36)
ポリイミドフィルム(PI−B36。PI−B35と同じもの)のB面にカバーレイを積層して、ポリイミド積層体A(PI−B36)を得た。
【0320】
(実施例B37)
ポリアミック酸溶液II−Cをガラス板上に薄膜状にキャストし、ホットプレートを用いて138℃で60秒加熱した後、ガラス板から剥離して自己支持性フィルムを得た。自己支持性フィルムの加熱減量は、36.1質量%であった。この自己支持性フィルムのA面を上とし、150℃から510℃まで約18分で連続的に加熱イミド化して、平均膜厚が12.5μmのポリイミドフィルム(PI−B37)を得た。
このポリイミドフィルム(PI−B37)のA面にカバーレイを積層してポリイミド積層体A(PI−B37)を得た。ポリイミド積層体A(PI−B37)の剥離強度は、初期Aが0.18kN/mであり、耐熱後Aが0.38kN/mであった。また、ポリイミド積層体A(PI−B37)の剥離強度モードは、初期Aが「3」であり、耐熱後Aが「3」であった。
【0321】
(実施例B38)
ポリイミドフィルム(PI−B38。PI−B37と同じフィルム)のB面にカバーレイを積層して、ポリイミド積層体A(PI−B38)を得た。ポリイミド積層体A(PI−B38)の剥離強度は、初期Aが0.24kN/mであり、耐熱後Aが0.50kN/mであった。また、ポリイミド積層体A(PI−B38)の剥離強度モードは、初期Aが「3」であり、耐熱後Aが「4」であった。
【0322】
(比較例B1)
ジアミン成分について、ATDAを使用せず、PPDを100モル%とした以外は、実施例B13と同様な方法でポリイミドフィルム(PI−B37)を得たその後、ポリイミドフィルム(PI−B37)のA面にカバーレイを積層して、ポリイミド積層体A(PI−B37)を得た。
【0323】
(比較例B2から比較例B4)
最高加熱温度およびカバーレイの積層面を表Bに示すように変更した以外は、比較例B1と同様な方法でポリイミドフィルムとポリイミド積層体Aを得た。
【0324】
【表3】
【0325】
実施例Bにおいて、
1)実施例B13及びB14と、実施例B15及びB16とを比較すると、耐熱剥離強度が優れる。これはフィルムの最高加熱温度の影響と考える。
2)実施例B1〜B36では、ポリイミド積層体Bの初期剥離強度が、同一温度でキュアし、同一面に接着剤を積層させた比較例のポリイミドフィルムのそれよりも優れる。これは一般式(1)で示されるジアミンの含有量の影響と考える。
3)実施例B1〜B36では、全てポリイミド積層体Bの耐熱剥離強度が、同一温度でキュアし、同一面に接着剤を積層させた比較例のポリイミドフィルムのそれよりも優れる。これは一般式(1)で示されるジアミンの含有量の影響と考える。
4)実施例B1〜B20では、耐熱後の剥離強度/初期の剥離強度が約0.26〜3.1と大きい。これは一般式(1)で示されるジアミンの含有量の影響と考える。
5)PMDAを酸成分として加えた実施例B21〜B32では、耐熱後の剥離強度/初期の剥離強度が約0.57〜1.06と大きい。また、剥離モードが全て接着剤の凝集破壊であり、数値以上の接着性を有していると考えられる。
【0326】
<<実施例パートIII(パート1および3に対応する実施例)>>
【0327】
(ポリアミック酸溶液III−Aの調製)
重合槽に所定量のN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、パラフェニレンジアミン(PPD)、2,4−ビス(4−アミノアニリノ)−6−アニリノ−1,3,5−トリアジン(ATDA)を加えた。全ジアミン成分中、ATDAの量を19モル%とした。その後、40℃で撹拌しながら、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(s−BPDA)を全ジアミン成分と略等モルまで段階的に添加して反応させ、固形分濃度が18質量%であるポリアミック酸の重合溶液(ポリイミド前駆体溶液)を得た。そして、このポリアミック酸重合溶液に、ポリアミック酸100質量部に対して0.25質量部の割合でモノステアリルリン酸エステルトリエタノールアミン塩を添加し、均一に混合し、ポリアミック酸溶液III−Aを得た。ポリアミック酸溶液III−Aの30℃における回転粘度は170Pa・sであった。
【0328】
(ポリアミック酸溶液III−Bの調製)
重合槽に所定量のN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、パラフェニレンジアミン(PPD)を加えた。その後、40℃で撹拌しながら、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(s−BPDA)を全ジアミン成分と略等モルまで段階的に添加して反応させ、固形分濃度が18質量%であるポリアミック酸の重合溶液(ポリイミド前駆体溶液)を得た。そして、このポリアミック酸重合溶液に、ポリアミック酸100質量部に対して0.25質量部の割合でモノステアリルリン酸エステルトリエタノールアミン塩を添加し、均一に混合し、ポリアミック酸溶液III−Bを得た。ポリアミック酸溶液III−Bの30℃における回転粘度は104Pa・sであった。
【0329】
(ポリアミック酸溶液III−Cの調製)
重合槽に所定量のN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、2,4−ビス(4−アミノアニリノ)−6−アニリノ−1,3,5−トリアジン(ATDA)を加えた。その後、40℃で撹拌しながら、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(s−BPDA)を全ジアミン成分と略等モルまで段階的に添加して反応させ、固形分濃度が18質量%であるポリアミック酸の重合溶液(ポリイミド前駆体溶液)を得た。ポリアミック酸溶液III−Cの30℃における回転粘度は107Pa・sであった。
【0330】
(塗工液III−1の調製)
ポリアミック酸溶液III−CにDMAcを固形分濃度が2.5wt%となるまで加えて希釈し、塗工液III−1とした。塗工液III−1の粘度は10.2mPa・sであった。
【0331】
(塗工液III−2の調製)
ポリアミック酸溶液III−Cとポリアミック酸溶液III−Bとを、モル比でポリアミック酸溶液III−Cの固形分/ポリアミック酸溶液III−Bの固形分=70/30となるように混合し、その後、全固形分濃度が2.5wt%となるまでDMAcを加えて希釈し、塗工液III−2とした。塗工液III−2の粘度は9.95mPa・sであった。
【0332】
(塗工液III−3の調製)
ポリアミック酸溶液III−Cとポリアミック酸溶液III−Bとを、モル比でポリアミック酸溶液III−Cの固形分/ポリアミック酸溶液III−Bの固形分=37/67となるように混合し、その後、全固形分濃度が2.5wt%となるまでDMAcを加えて希釈し、塗工液III−3とした。塗工液III−3の粘度は10.9mPa・sであった。
【0333】
(塗工液III−4の調製)
ポリアミック酸溶液III−Cとポリアミック酸溶液III−Bとを、モル比でポリアミック酸溶液III−Cの固形分/ポリアミック酸溶液III−Bの固形分=13/87となるように混合し、全固形分濃度が2.5wt%となるまでDMAcを加えて希釈し、塗工液III−4とした。塗工液III−4の粘度は11.0mPa・sであった。
【0334】
(実施例C1)
ポリアミック酸溶液III−BをTダイ金型のスリットから連続的にキャスティングし、乾燥炉中の平滑なベルト状の金属支持体上に押出して薄膜を形成し、145℃で所定時間加熱後、支持体から剥離して自己支持性フィルムを得た。得られた自己支持性フィルムの加熱減量は39.1質量%で、自己支持性フィルムのイミド化率はA面側が10.4%、B面側が16.7%であった。
【0335】
さらに自己支持性フィルムを連続的に搬送しながら、自己支持性フィルムのA面にダイコーターを用いて塗工液III−1を塗布し(塗布量:6g/m
2)、40℃の乾燥炉を通した。
【0336】
次いで、この自己支持性フィルムの幅方向の両端部を把持して連続加熱炉(キュア炉)へ挿入し、100℃から最高加熱温度が480℃となる条件で当該フィルムを加熱、イミド化して、長尺状ポリイミドフィルム(PI−C1)を製造した。
【0337】
ポリイミドフィルム(PI−C1)を用いて、評価方法の項で説明した湿式めっき法によりA面に金属を積層して、ポリイミド金属積層体(PI−C1)を得た。
【0338】
尚、以下の実施例においても、特に明示しない限り、金属層の積層面は、塗工液を塗布した面である。
【0339】
特に明示しない限り、以下の実施例においても、評価方法の項で説明した湿式めっき法または乾式めっき法により得られたポリイミド金属積層体を用いて、剥離強度を測定した。各実施例の結果を表C(表C1および表C2)に示す。カバーレイを積層して得られたポリイミド金属積層体の名称は、ポリイミドフィルムの名称(PI−C1等)と同じ名称で、ポリイミド金属積層体(PI−C1)等と表す。
【0340】
また、表C(表C1および表C2)に、塗工液、塗布面(金属層の積層面)、得られたポリイミドフィルムの平均膜厚、その他の条件および結果を示す。
【0341】
(実施例C2)
自己支持性フィルムのA面にダイコーターを用いて塗工液III−2を塗布した以外は実施例C1と同様にして、長尺状ポリイミドフィルム(PI−C2)を製造した。
【0342】
(実施例C3)
自己支持性フィルムのA面にダイコーターを用いて塗工液III−3を塗布した以外は実施例C1と同様にして、100℃から最高加熱温度が480℃となる条件で当該フィルムを加熱、イミド化して、長尺状ポリイミドフィルム(PI−C3)を製造した。
【0343】
(実施例C4)
自己支持性フィルムのA面にダイコーターを用いて塗工液III−4を塗布した以外は実施例C1と同様にして、100℃から最高加熱温度が480℃となる条件で当該フィルムを加熱、イミド化して、長尺状ポリイミドフィルム(PI−C4)を製造した。
【0344】
(実施例C5)
ポリアミック酸溶液III−BをTダイ金型のスリットから連続的にキャスティングし、乾燥炉中の平滑なベルト状の金属支持体上に押出して薄膜を形成し、145℃で所定時間加熱後、支持体から剥離して自己支持性フィルムを得た。得られた自己支持性フィルムの加熱減量は39.6質量%で、自己支持性フィルムのイミド化率はA面側が9.9%、B面側が17.2%であった。
【0345】
さらに自己支持性フィルムを連続的に搬送しながら、自己支持性フィルムのB面にダイコーターを用いて塗工液III−1を塗布し(塗布量:6g/m
2)、40℃の乾燥炉を通した。
【0346】
次いで、この自己支持性フィルムの幅方向の両端部を把持して連続加熱炉(キュア炉)へ挿入し、100℃から最高加熱温度が480℃となる条件で当該フィルムを加熱、イミド化して、長尺状ポリイミドフィルム(PI−C5)を製造した。
【0347】
(実施例C6)
自己支持性フィルムのB面にダイコーターを用いて塗工液III−2を塗布した以外は実施例C5と同様にして、長尺状ポリイミドフィルム(PI−C6)を製造した。
【0348】
(実施例C7)
自己支持性フィルムのB面にダイコーターを用いて塗工液III−3を塗布した以外は実施例C5と同様にして、長尺状ポリイミドフィルム(PI−C7)を製造した。
【0349】
(実施例C8)
自己支持性フィルムのB面にダイコーターを用いて塗工液III−4を塗布した以外は実施例C5と同様にして、長尺状ポリイミドフィルム(PI−C8)を製造した。
【0350】
(比較例C1)
自己支持性フィルムに塗工液の塗布を行わなかった以外は実施例C6と同様にして、100℃から最高加熱温度が490℃となる条件で当該フィルムを加熱、イミド化して、長尺状ポリイミドフィルム(PI−C9)を製造した。
【0351】
ポリイミドフィルム(PI−C9)を用いて湿式めっき法によりB面に金属を積層し、ポリイミド金属積層体(PI−C9)を得た。
【0352】
(参考例C1)
ポリアミック酸溶液III−Aをガラス板上に薄膜状にキャストし、ホットプレートを用いて138℃で60秒加熱後、ガラス板から剥離して、自己支持性フィルムを得た。この自己支持性フィルムのA面を上とし、四辺をピンテンターで固定し、オーブンを用いて、150℃から490℃まで約18分で連続的に加熱イミド化して、ポリイミドフィルム(PI−C10)を得た。
【0353】
ポリイミドフィルム(PI−C10)を用いて、湿式めっき法によりA面に金属を積層したポリイミド金属積層体(PI−C10)を得た。ポリイミド金属積層体(PI−C10)の剥離強度を測定し、結果を表C1に示す。
【0354】
(実施例C9〜16)
実施例C1〜8で得たポリイミドフィルムPI−C1〜C8を用いて、評価方法の項で説明した乾式めっき法により、塗工面に金属を積層して、ポリイミド金属積層体(PI−C11〜18)を得た。結果を表C2に示す。
【0355】
(比較例C2)
比較例C1で得たポリイミドフィルムPI−C9を用いて、評価方法の項で説明した乾式めっき法により、A面、またはB面に金属を積層して、ポリイミド金属積層体を得た。結果を表C2に示す。
【0356】
【表4】
【0357】
【表5】
【0358】
実施例において、
1)実施例C1〜C16では、全てポリイミド金属積層体の剥離強度がA1〜A5の全ての剥離試験において、比較例のどの値よりも優れる。これは一般式(1)で示されるジアミンの含有量の影響と考える。