(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ねじ締め用モータの回転を受けて回転する駆動ビットを備えたねじ締めユニットと、移動用ACサーボモータの回転を往復移動に変換してこの往復移動によりねじ締めユニットを前進後退させる移動ユニットと、前記駆動ビットに加わる負荷トルクを検出してこれが設定締付けトルク値に達する時またはその一定時間後にねじ締め用モータを停止させる締付けトルク制御部と、前記ねじ締め用モータ停止タイミングで相手部材にねじを締付ける際に駆動ビットに発生するせり上がり力を打ち消すべく移動用ACサーボモータから駆動ビットに付与される推力を測定または記憶する推力算出部と、を備えることを特徴とするねじ締め装置。
前記推力算出部は、相手部材に設定締付けトルク値であらかじめ締付けられたねじを増締めする際に駆動ビットがねじの駆動穴に嵌合する位置を保持する時の移動用ACサーボモータのフィードバック電流値であって、前記ねじ締め用モータ停止タイミングのフィードバック電流値から駆動ビットに付与される推力を算出する構成であることを特徴とする請求項1に記載のねじ締め装置。
前記推力算出部は、ねじを相手部材に設定締付けトルク値で締付けた状態から引き続いてねじを増締めする際に駆動ビットがねじの駆動穴に嵌合する位置を保持する時の移動用ACサーボモータのフィードバック電流値であって、前記ねじ締め用モータ停止タイミングのフィードバック電流値から駆動ビットに付与される推力を算出する構成であることを特徴とする請求項1に記載のねじ締め装置。
前記推力算出部は、駆動ビット交換時に算出される推力を初期推力として記憶し、この初期推力と任意のタイミングで算出される推力との比較から駆動ビットの摩耗を判定する駆動ビット摩耗検出部を備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のねじ締め装置。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態に係るねじ締め装置の一例として、ロボットの先端ユニットとして使用されるねじ締め装置を図面に基づき説明する。このねじ締め装置1は、
図1および
図2に示すようにロボットの先端アーム(図示せず)に固定される基台2aを備えた移動ユニット2を有している。この移動ユニット2の基台2aには、上部ブラケット2bと下部ブラケット2cとが取付けられている。前記上部ブラケット2bには、移動用ACサーボモータ2d(以下、移動用モータという)がその駆動軸2eを下方にしてかつ上部ブラケット2bを貫通するように取付けられている。また、前記移動用モータ2dにはパルスエンコーダ2fが連接されており、移動用モータ2dの現在位置が検出可能に構成されている。さらに、前記移動用モータ2dの駆動軸2eには第1連結具2gを介して下部ブラケット2cに回転可能に保持されたスクリュウシャフト2hが連結されている。このスクリュウシャフト2hは前記基台2aのほぼ全長にわたって延びるリニアガイド2jに摺動自在に案内された軸受台2kに螺合しており、移動用モータ2dの回転が軸受台2kの往復移動に変換される構成となっている。
【0016】
前記軸受台2kにはドライバ台3aが一体に取付けられており、このドライバ台3aにはねじ締めユニット3が一体に前進後退可能に固定されている。前記ねじ締めユニット3は、ドライバ台3aに取付けられたねじ締め用モータ3bを有し、このねじ締め用モータ3bの駆動軸3cは前記ドライバ台3aを貫通する構成となっている。また、前記ねじ締め用モータ3bの駆動軸3cには第2連結具3dを介して駆動ビット3eが連結されており、この駆動ビット3eがねじ締め用モータ3bの回転を受けて回転するように構成されている。さらに、この駆動ビット3eはその移動路上に開放可能に配置された一対のチャック爪(図示せず)を貫通し、これに保持されたねじ4の駆動穴4aに嵌合して、このねじ4を相手部材5の所定の締付位置にねじ込むように構成されている。
【0017】
前記移動用モータ2dは、位置情報と電流値とが指令値として供給されると、現在位置が前記位置情報に一致し、かつその電流値を超えないようにパワー供給を受け、後記パワー供給停止指令信号Sg12を受けるとパワー供給が停止されてブレーキ作動状態となるように構成されている。また、前記ねじ締め用モータ3bは後記ねじ締め用モータ駆動部11とアナログ接続されており、ねじ締め用モータ3bの負荷電流Wa(
図1参照)がアナログ情報としてねじ締め用モータ駆動部11で読み込まれてA−D変換されて、刻々記憶される構成となっている。
【0018】
前記ねじ締め装置1は、前記移動ユニット2およびねじ締めユニット3の動作を制御する制御装置6を有している。この制御装置6は、主制御部7と、各種作動指令信号を出力する操作部8と、ねじ締めに必要な情報およびねじ締めユニット3の移動に必要な情報を記憶する記憶部9とを有している。前記操作部8は、ねじ締めモードキー8a、推力算出モードキー8bおよび設定モードキー8cを備えた操作画面を有し、ねじ締めモードキー8a、推力算出モードキー8bがタッチされると、それぞれねじ締めモード信号、推力算出モード信号が主制御部7に出力されるように構成されている。また、この操作部8は設定モードキー8cがタッチされる毎に、操作画面が縮小されてねじ締めに必要な情報の入力画面、ねじ締めユニット3の移動に必要な情報の入力画面、移動用モータ2dおよびねじ締め用モータ3bの精密な制御に必要となる各種制御パラメータの入力画面に切り替わり、当初の操作画面に戻る構成となっている。前記ねじ締めに必要な情報の入力画面では、主制御部7の後記ねじ締めモード時の動作中に呼出される仮締めトルク値に対応する仮締め設定電流値Is1、仮締め回転数N11,N12(ねじ締めモード時N11、推力算出モード時N12)、本締めトルク値すなわち設定締付けトルク値に対応する本締め設定電流値Is2、本締め回転数N2、ねじ4の種類等の情報(
図4参照)がテンキー(図示せず)から入力可能となっている。前記仮締め回転数N11,N12および本締め回転数N2は、N11<N12<N2の関係を保ち、それぞれねじ締め用モータ3bに高速低トルク、中速中トルク、低速高トルクの回転をもたらすように設定されている。また、前記ねじ締めユニット3の移動に必要な情報の入力画面では、主制御部7のねじ締めモード時および後記推力算出部12の推力算出モード時の動作中に呼出される待機位置P0、ねじ嵌合時推力Ft1、ねじ締め開始位置P1、仮締め推力(ねじ嵌合時推力よりも低い値)Ft2、本締め位置P4、本締め推力(仮締め推力Ft2よりも高い値)Ft3および仮推力Ft4(仮締め推力Ft2と同程度の値)並びに復帰時推力Ft5(
図4および
図7参照)がテンキーから入力可能となっている。前記各推力は移動用モータ2dに供給される電流値で規定されており、この電流値により移動用モータ2dの回転子(図示せず)に発生する回転力Frの反力Fcが
図3に示すようにスクリュウシャフト2hのねじ部傾斜面2haから軸受台2kのめねじ部斜面2kaに作用して前進方向の推力Ftが得られる構成となっている。
【0019】
前記記憶部9は前述の入力画面から入力される情報を相手部材5の種類ごとに、またその締付位置毎に記憶するように構成されている。また、この記憶部9は推力算出モード時に後記移動用モータ駆動部10から呼出されるフィードバック電流値We6(
図10参照)を1締付サイクル分記憶し、順次これを上書きして記憶するように構成されている。
【0020】
また、前記制御装置6は移動用ACサーボモータ駆動部10(以下、移動用モータ駆動部という)と、ねじ締め用モータ駆動部11と、推力算出部12と、ねじ供給装置(図示せず)の動作を制御するねじ供給装置駆動部13と、前述の移動用モータ2dおよびパルスエンコーダ2fが接続される入出力部14とを有している。なお、前記推力算出部12は駆動ビット3eの推力を検出するロードセルのような特別な測定装置を付属させた実測型の構成であってもよいが、本実施形態では移動用モータ2dのフィードバック電流値We6から推力を得る推定型をなし、主制御部7内で構成されている。
【0021】
前記主制御部7は、ねじ締めモード時には、
図4および
図9に示すように、次のステップS1〜S15の動作を行う。
S1)操作部8からのねじ締めモード信号Sg1が入力しているか否かを判断し、ねじ締めモード信号Sg1が入力してない時、この入力を待つ一方、ねじ締めモード信号Sg1が入力すると、ステップS2に移る。
S2)ねじ締めに必要な情報(仮締め設定電流値Is1、仮締め回転数N11、本締め設定電流値Is2、本締め回転数N2)を記憶部9から呼出し、これらをねじ締め用モータ駆動部11に供給する。
S3)ねじ締めユニット3の移動に必要な情報(待機位置P0、ねじ嵌合時推力Ft1、ねじ締め開始位置すなわち仮締め開始位置P1、仮締め推力Ft2、本締め位置P4、本締め推力Ft3、復帰時推力Ft5)を記憶部9から呼出し、これらを移動用モータ駆動部10に供給する。
S4)ねじ供給装置駆動部13に作動指令信号Sg2を出力する。
S5)移動用モータ駆動部10に 作動指令信号Sg3を出力する。
S6)ねじ締め用モータ駆動部11に作動指令信号Sg4を出力する。
S7)ねじ締め用モータ駆動部11から仮締め完了信号Sg5が入力しているか否かを判断し、仮締め完了信号Sg5が入力していない時、仮締め完了信号Sg5が入力するのを待つ一方、仮締め完了信号Sg5が入力している時、ステップ8に移る。
S8)移動用モータ駆動部に仮締め完了信号Sg5を出力する。
S9)ねじ締め用モータ駆動部11から本締め完了信号Sg6が入力しているか否かを判断し、本締め完了信号Sg6が入力している時、ステップS14にジャンプする一方、本締め完了信号Sg6が入力していない時、ステップS10に移る。
S10)ねじ締め用モータ駆動部11から締付NG信号Sg7が入力しているか否かを判断し、締付NG信号Sg7が入力してない時、ステップS9に戻る一方、締付NG信号Sg7が入力している時、S11に移る。
S11)移動用モータ駆動部10に停止指令信号Sg8を出力する。
S12)操作部8に締付NG表示指令信号Sg9を出力する。
S13)移動用モータ駆動部10から待機位置復帰信号Sg10が入力しているか否かを判断し、これが入力していない時、待機位置復帰信号Sg10を待つ一方、待機位置復帰信号Sg10が入力している時、ステップS1に戻る。
S14)移動用モータ駆動部10に停止指令信号Sg8を出力する。
S15)操作部8に締付完了表示指令信号Sg11を出力して、ステップS13に戻る。
【0022】
前記移動用モータ駆動部10は、ねじ締めモード時、
図5および
図9に示すように次のステップSS1〜SS16の動作を行う。
SS1)移動用モータ駆動部作動指令信号Sg3が入力しているか否かを判断し、これが入力していない時、その入力を待つ一方、この作動指令信号Sg3が入力する時、ステップSS2に移る。
SS2)ねじ締め開始位置P1およびねじ嵌合時推力Ft1を呼出す。
SS3)ねじ締め開始位置P1およびねじ嵌合時推力Ft1が得られる電流値を指令値として移動用モータ2dに供給する。
SS4)移動用モータ2dの現在位置がねじ締め開始位置P1に達しているか否かを判断し、移動用モータ2dの現在位置がねじ締め開始位置P1に達していない時、ねじ締め開始位置P1に達するのを待つ一方、移動用モータ2dの現在位置がねじ締め開始位置P1に達している時、ステップSS5に移る。
SS5)本締め位置P4および仮締め推力Ft2を呼出す。
SS6)本締め位置P4および仮締め推力Ft2が得られる電流値を指令値として移動用モータ2dに供給する。
SS7)主制御部7から仮締め完了信号Sg5が入力しているか否かを判断し、仮締め完了信号Sg5が入力していない時、その入力を待つ一方、仮締め完了信号Sg5が入力している時、ステップSS8に移る。
SS8)本締め位置P4および本締め推力Ft3を呼出す。
SS9)本締め位置P4および本締め推力Ft3が得られる電流値を指令値として移動用モータ2dに供給する。
SS10)移動用モータ駆動部停止指令信号Sg8が入力しているか否かを判断し、この停止指令信号Sg8が入力していない時、その入力を待つ一方、この停止指令信号Sg8が入力している時、ステップSS11に移る。
SS11)移動用モータ2dにパワー供給停止指令信号Sg12を出力する。
SS12)移動用モータ2dの待機位置P0および待機位置P0に復帰する時の復帰時推力Ft5を呼出す。
SS13)移動用モータ2dに待機位置P0と、復帰時推力P0とを指令値として供給する。
SS14)移動用モータ2dの現在位置が待機位置P0に復帰しているか否かを判断し、移動用モータ2dの現在位置が待機位置P0に復帰していない時、その復帰を待つ一方、移動用モータ2dの現在位置が待機位置P0に復帰している時、ステップSS15に移る。
SS15)主制御部7に待機位置復帰信号Sg10を出力する。
SS16)エンド。
【0023】
前記ねじ締め用モータ駆動部11は、ねじ締めモード時、推力算出モード時のいずれであっても、
図6および
図9に示すように締付けトルク制御部11aを構成する次のステップST1〜ST14の動作を行う。
ST1)ねじ締め用モータ駆動部11の作動指令信号Sg4が入力しているか否かを判断し、この作動指令信号Sg4が入力していない時、その入力を待つ一方、この作動指令信号Sg4が入力している時、ステップST2に移る。
ST2)仮締め回転数N11(推力算出モード時、N12)、仮締め設定電流値Is1を呼出す。
ST3)ねじ締め用モータ3bに仮締め回転数N11(推力算出モード時、N12)に応じた電圧を供給する。(第1タイマ11bおよび第2タイマ11cを作動させる)
ST4)負荷電流Waが仮締め設定電流値Is1に達したか否かを判断し、負荷電流Waが仮締め設定電流値Is1に達している時、ステップST6にジャンプする一方、負荷電流Waが仮締め設定電流値Is1に達していない時、ステップST5に移る。
ST5)第1タイマ11bがタイムアップしたか否かを判断し、第1タイマ11bがタイムアップしてない時、ステップST4に戻る一方、第1タイマ11bがタイムアップしている時、ステップST10にジャンプする。
ST6)主制御部7に仮締め完了信号Sg5を出力するとともに、本締め回転数N2、本締め設定電流値Is2を呼出す。
ST7)ねじ締め用モータ3bに本締め回転数N2に応じた電圧を供給する。
ST8)ねじ締め用モータ3bの負荷電流Waが本締め設定電流値Is2に達したか否かを判断し、この負荷電流Waが本締め設定電流値Is2に達している時、ステップST12にジャンプする一方、この負荷電流Waが本締め設定電流値Is2に達していない時、ステップST9に移る。
ST9)第2タイマ11cがタイムアップしたか否かを判断し、第2タイマ11cがタイムアップしてない時、ステップST8に戻る一方、第2タイマ11cがタイムアップしている時、ステップST10に移る。
ST10)ねじ締め用モータ3bへの電圧供給を停止する。第1,タイマ11bおよび第2タイマ11cをリセットする。
ST11)締付NG信号Sg7を主制御部7に出力して、ステップST14にジャンプする。
ST12)ねじ締め用モータ3bへの電圧供給を停止する。第1,タイマ11bおよび第2タイマ11cをリセットする。
ST13)本締め完了信号Sg6を主制御部7に出力する。
ST14)エンド。
【0024】
前記推力算出部12は、本発明の要部をなし、主制御部7の一部として構成されているもので、
図7および
図9に示すように、次のステップSP1〜SP13の動作を行う。
SP1)操作部8からの推力算出モード信号Sg21が入力しているか否かを判断し、この推力算出モード信号Sg21が入力していない時、その入力を待つ一方、推力算出モード信号Sg21が入力している時、ステップSP2に移る。
SP2)増締めに必要な情報(仮締め設定電流値Is1、仮締め回転数N12、本締め設定電流値Is2、本締め回転数N2)を記憶部9から呼出し、これらをねじ締め用モータ駆動部11に供給する。
SP3)待機位置P0、本締め位置P4および仮推力Ft4並びに復帰時推力Ft5を記憶部9から呼出し、これらを移動用モータ駆動部10に供給する。
SP4)移動用モータ駆動部10に推力算出指令信号Sg23を出力する。
SP5)ねじ締め用モータ駆動部11に作動指令信号Sg24を出力する。
SP6)ねじ締め用モータ駆動部11から仮締め完了信号Sg5が入力しているか否かを判断し、この仮締め完了信号Sg5が入力していない時、その入力を待つ一方、仮締め完了信号Sg5が入力している時、ステップSP7に移る。
SP7) 移動用モータ駆動部10に仮締め完了信号Sg5を出力する。
SP8)移動用モータ駆動部10から出力されるフィードバック電流値We6を呼出し、記憶する。
SP9)ねじ締め用モータ駆動部11から本締め完了信号Sg6が入力しているか否かを判断し、この本締め完了信号Sg6が入力していない時、ステップSP8に戻る一方、本締め完了信号Sg6が入力している時、ステップSP10に移る。
SP10)移動用モータ駆動部10に本締め完了信号Sg6を出力する。
SP11)最終に記憶されたフィードバック電流値We6(Imf)から一定安全率を見た電流値を算出し、これを本締め推力として本締め設定電流値Is2とともに記憶する。
SP12)移動用モータ駆動部10から待機位置復帰信号Sg10が入力しているか否かを判断し、待機位置復帰信号Sg10が入力してない時、その入力を待つ一方、待機位置復帰信号Sg10が入力している時、ステップSP13に移る。
SP13)エンド。
【0025】
また、前記移動用モータ駆動部10は、推力算出モード時には、
図8および
図9に示すように次のステップSQ1〜SQ13の動作を行う。
SQ1)主制御部7からの推力算出指令信号Sg23が入力しているか否かを判断し、この推力算出指令信号Sg23が入力していない時、その入力を待つ一方、推力算出指令信号Sg23が入力している時、ステップSQ2に移る。
SQ2)本締め位置P4および仮推力Ft4を呼出す。
SQ3)本締め位置P4および仮推力Ft4が得られる電流値を指令値として移動用モータ2dに供給する。
SQ4)主制御部7から仮締め完了信号Sg5が入力しているか否かを判断し、この仮締め完了信号Sg5が入力していない時、その入力を待つ一方、仮締め完了信号Sg5が入力している時、ステップSQ5に移る。
SQ5)移動用モータ2dの目標位置を移動用モータ2dの現在位置とする(移動用モータ2dを無回転状態に維持する)。
SQ6)移動用モータ2dのフィードバック電流値We6を主制御部7に出力する。
SQ7)主制御部7から本締め完了信号Sg6が入力しているか否かを判断し、本締め完了信号Sg6が入力していない時、ステップSQ6に戻る一方、本締め完了信号Sg6が入力している時、ステップSQ8に移る。
SQ8)移動用モータ2dへパワー供給停止指令信号Sg12を出力する。
SQ9)移動用モータ2dの 待機位置P0および復帰時推力Ft5を呼出す。
SQ10)移動用モータ2dに待機位置P0および復帰時推力Ft5を指令値として供給する。
SQ11)移動用モータ2dの現在位置が待機位置P0に復帰しているか否かを判断し、移動用モータ2dの現在位置が待機位置P0に復帰していない時、待機位置P0に復帰するのを待つ一方、移動用モータ2dが待機位置P0に復帰している時、ステップSQ12に移る。
SQ12)主制御部7に待機位置復帰信号Sg10を出力する。
SQ13)エンド。
【0026】
前記移動用モータ駆動部10と移動用モータ2dまたはパルスエンコーダ2fとは、データ通信で情報が授受されており、移動用モータ駆動部10は主制御部7からねじ締めユニット3の移動に必要な情報を受けると、この情報を一時記憶するように構成されている。また、前記ねじ締め用モータ駆動部11は主制御部7からねじ締めに必要な情報を受けると、この情報を一時記憶するように構成されている。
【0027】
上記ねじ締め装置1では、
図9に示すように通常の締付作業を行う場合、操作部8の操作画面のねじ締めモードキー8aがタッチされ、主制御部7にねじ締めモード信号Sg1が出力される。このねじ締めモード信号Sg1により、ねじ締め用モータ駆動部11に仮締め設定電流値Is1、仮締め回転数N11、本締め設定電流値Is2および本締め回転数N2が、また移動用モータ駆動部10には待機位置P0、ねじ嵌合時推力Ft1、ねじ締め開始位置(仮締め開始位置)P1、仮締め推力Ft2、本締め位置P4および本締め推力Ft3並びに復帰時推力Ft5が供給される(ステップS1〜S3参照)。続いて、ねじ供給装置駆動部13に作動指令信号Sg2が出力され(ステップS4参照)、ねじ供給装置が作動して、ねじ4が駆動ビット3eの移動路上に配置された一対のチャック爪まで供給され、このチャック爪に保持される。その後、ねじ締め用モータ駆動部11、移動用モータ駆動部10それぞれに作動指令信号Sg4,Sg3が出力される(ステップS5およびS6参照)。
【0028】
前記ねじ締め用モータ駆動部11では、その作動指令信号Sg4を受けると、仮締め回転数N11および仮締め設定電流値Is1が呼出される(ステップST1およびST2参照)。続いて、ねじ締め用モータ3bに仮締め回転数N11に対応した所定の電圧が供給され(ステップST3参照)、ねじ締め用モータ3bは仮締め回転数N11(高速低トルク)で回転し(
図10中、信号波形Wd1参照)、この回転を受けて駆動ビット3eが回転する。これとともに、ねじ締め用モータ3bの負荷電流Waが仮締め設定電流値Is1に達したか否かの判断が行われる(ステップST4参照)。この時、第1タイマ11bおよび第2タイマ11cが作動して、仮締め不良および本締め不良の判定が開始される。また、前記移動用モータ駆動部10では、その作動指令信号Sg3を受けると、ねじ嵌合時推力Ft1およびねじ締め開始位置P1が呼出される(ステップSS1およびSS2参照)。続いて、ねじ締め開始位置P1とねじ嵌合時推力Ft1が得られる電流値とが指令値として移動用モータ2dに供給され(ステップSS3参照)、移動用モータ2dはねじ締め開始位置P1を目標位置として、前記電流値が得られるようにパワー供給を受けて回転する。この移動用モータ2dの回転を受けて、スクリュウシャフト2hが回転し、これに螺合する軸受台2kが前記電流値、すなわちねじ嵌合時推力Ft1を保持しながらねじ締め開始位置P1まで前進する(
図10中、信号波形We1参照)。この軸受台2kの前進により、この軸受台2kと一体のドライバ台3aに保持されたねじ締めユニット3の駆動ビット3eが待機位置P0から前進し、チャック爪に保持されたねじ4がねじ締め開始位置P1に押出される。
【0029】
この間、
図11に示すように駆動ビット3eの回転方向の力Frがねじ4の駆動穴4aの傾斜面4aaに作用することにより、駆動ビット3eにはねじ4の駆動穴4aから離脱する方向のせり上がり力の垂直成分Fco(以下、カムアウト力という)が作用するが、移動用モータ2dの回転によりもたらされる推力Ft(
図3参照)、すなわちねじ嵌合時推力Ft1により打ち消される。また、移動用モータ駆動部10では移動用モータ2dの現在位置がねじ締め開始位置P1に達したか否かが判断されており(ステップSS4参照)、この現在位置がねじ締め開始位置P1に達すると、本締め位置P4および仮締め推力Ft2が呼出される(ステップSS5参照)。続いて、移動用モータ2dに本締め位置P4と仮締め推力Ft2とが得られる電流値が供給され(ステップSS6参照)、移動用モータ2dは仮締め推力Ft2を保持して回転する(
図10中、信号波形We2参照)。この移動用モータ2dの回転を受けて、軸受台2kおよびこれと一体の駆動ビット3eとは前進するので、駆動ビット3eと嵌合するねじ4はその頭部が被締結部材15に着座するまで、すなわち仮締め完了時まで仮締め推力Ft2が付加されながらねじ込まれる。
【0030】
その後、ねじ締め用モータ3bの負荷電流Waが仮締め設定電流値Is1に達するまでは、第1タイマ11bがタイムアップしたか否かが判断され(ステップST5参照)、前記第1タイマ11bがタイムアップしている時にはねじ締め用モータ3bへの電圧供給が停止され、締付けNG信号Sg7が主制御部7に出力される(ステップST10およびST11参照)。同時に、第1タイマ11bおよび第2タイマ11cがリセットされ、仮締め不良判定および本締め不良判定が終了する。また、前記ねじ締め用モータ3bの負荷電流Waが仮締め設定電流値Is1に達する時、仮締めが完了し、ねじ締め用モータ駆動部11から主制御部7に仮締め完了信号Sg5が出力される。この仮締め完了時、すなわち駆動ビット3eが仮締め完了位置P2に位置する時、本締め回転数N2および本締め設定電流Is2が呼出され、ねじ締め用モータ3bを低速高トルクの本締め回転数N2に切り替えるように電圧が供給される(ステップST6およびST7並びに
図10中、信号波形Wd2参照)。この仮締め完了信号Sg5により、移動用モータ駆動部10に仮締め完了信号Sg5が出力されるので、移動用モータ駆動部10では本締め位置P4および本締め推力Ft3が呼出される(ステップSS8参照)。続いて、移動用モータ2dには本締め位置P4と本締め推力Ft3が得られる電流値とが指令値として供給され(ステップSS9参照)、移動用モータ2dは本締め推力Ft3を保持して回転する(
図10中、信号波形We3参照)。この移動用モータ2dの回転を受けて、軸受台2kおよび駆動ビット3eが本締め推力Ft3を保持しながら本締め位置P4に向かって前進する。
【0031】
前記軸受台2kが移動用モータ2dの回転を受けて前進する間に、ねじ締め用モータ駆動部11ではねじ締め用モータ3bの負荷電流Waが本締め設定電流値Is2に達したか否かの判断が行われており(ステップST8参照)、この負荷電流Waが本締め設定電流値Is2に達してない時には、第2タイマ11cがタイムアップしたか否かが判断される(ステップST9参照)。この判断において、第2タイマ11cがタイムアップしてない時には、前述のステップST8の判断が繰り返される。また、前記ステップST9の判断において前記第2タイマ11cがタイムアップしている時には、ねじ締め用モータ3bへの電圧供給が停止され、締付けNG信号Sg7が主制御部7に出力される(ステップST10およびST11参照)。
【0032】
前記軸受台2kが移動用モータ2dの回転を受けて前進する間に、ねじ締め用モータ3bの負荷電流Waが本締め設定電流値Is2に達すると、すなわち駆動ビット3eが本締め完了位置P3に位置する時、ねじ締め用モータ3bへの電圧供給が停止され、ねじ締め用モータ3bは停止して、本締めが完了し、本締め完了信号Sg6が主制御部7に出力される(ステップST12およびST13参照)。同時に、第1タイマ11bおよび第2タイマ11cがリセットされ、仮締め不良判定および本締め不良判定は終了する。
【0033】
前記主制御部7は、前記本締め完了信号Sg6が入力すると、前記移動用モータ駆動部10にその停止指令信号Sg8を出力するとともに操作部8に締付完了表示指令信号Sg11を出力する(ステップS14およびS15参照)。そのため、移動用モータ駆動部10はこの停止指令信号Sg8を受けて、移動用モータ2dにパワー供給停止指令信号Sg12を出力し、移動用モータ2dへのパワー供給が停止される(ステップSS10およびSS11参照)。続いて、移動用モータ駆動部10では移動用モータ2dの待機位置P0および復帰時推力Ft5が呼出されて、この待機位置P0および復帰時推力Ft5が指令値として移動用モータ2dに供給される(ステップSS12およびSS13参照)。そのため、移動用モータ2dは待機位置P0に復帰するように、また前記復帰時推力Ft5が得られるようにパワー供給を受けて回転するので、軸受台2kおよびねじ締めユニット3の駆動ビット3eは復帰時推力Ft5を保持しながら待機位置P0に復帰する(
図10中、信号波形We4参照)。これにともなって、主制御部7に待機位置復帰信号Sg10が出力され(ステップSS14およびSS15参照)、この待機位置復帰信号Sg10の入力が主制御部7で確認され(ステップS13参照)、一連の締付作業が終了する。
【0034】
次に、本発明の要部の推力算出部12の動作を説明する。通常の締付作業に先立って本締め推力を算出する場合、ねじ4により設定締付けトルク値で締結された被締結部材5aを持つ相手部材5が駆動ビット3eの下方に配置される(
図1および
図10参照)。その後、操作部8の操作画面中の推力算出モードキー8bがタッチされると、推力算出モード信号Sg21が出力される。この推力算出モード信号Sg21により、ねじ締め用モータ駆動部11に仮締め設定電流値Is1、仮締め回転数N12、本締め設定電流値Is2および本締め回転数N2が、また移動用モータ駆動部10には待機位置P0、本締め位置P4および仮推力Ft4並びに復帰時推力Ft5が供給される(ステップSP1〜SP3参照)。続いて、ねじ締め用モータ駆動部11、移動用モータ駆動部10に、それぞれ作動指令信号Sg24,推力算出指令信号Sg23が出力される(ステップSP4およびSP5参照)。
【0035】
前記ねじ締め用モータ駆動部11では、その作動指令信号Sg24を受けると、仮締め回転数N12および仮締め設定電流値Is1が呼出されて、通常の締付作業と同様にねじ締め用モータ3bに仮締め回転数N12に対応した所定の電圧が供給される(ステップST1〜ST3参照)。そのため、ねじ締め用モータ3bは仮締め回転数N12(中速中トルク)で回転し(
図10中、信号波形Wd3参照)、この回転を受けて駆動ビット3eが回転する。これとともに、ねじ締め用モータ3bの負荷電流Waが仮締め設定電流値Is1に達したか否かの判断が行われる(ステップST4参照)。また、移動用モータ駆動部10では推力算出指令信号Sg23を受けると、本締め位置P4および仮推力Ft4が呼出され、これらが得られる電流値が指令値として移動用モータ2dに供給され(ステップSQ1〜SQ3参照)、移動用モータ2dは前記電流値が得られるようにパワー供給を受けて仮推力Ft4を保持しながら回転する(
図10中、信号波形We5参照)。この移動用モータ2dの回転を受けて、スクリュウシャフト2hが回転し、これに螺合する軸受台2kが仮推力Ft4を保持しながら本締め位置P4に向かって前進する。この軸受台2kの前進により、軸受台2kと一体のドライバ台3aに保持されたねじ締めユニット3の駆動ビット3eがチャック爪を押し開いて貫通して、ねじ締め開始位置P1を通過した後、相手部材5に締結されたねじ4の駆動穴4aに嵌合する。この時、駆動ビット3eはねじ締め用モータ3bの回転を受けて回転しているので、相手部材5に締付けられているねじ4が増締めされる。
【0036】
この増締めが進行する間に、ねじ締め用モータ駆動部11ではねじ締め用モータ3bの負荷電流Waが仮締め設定電流値Is1に達したか否かの判断が行われており(ステップST4参照)、前記増締めが進行するにともなって、ねじ締め用モータ3bの負荷電流Waが増加し、仮締め設定電流値IS1に達したことが検出される。これにより、ねじ締め用モータ駆動部11から主制御部7に仮締め完了信号Sg5が出力されるとともに、本締め回転数N2および本締め設定電流Is2が呼出され、ねじ締め用モータ3bを低速高トルクの本締め回転数N2に切り替えるように電圧が供給される(ステップST6およびST7並びに
図10中、信号波形Wd4参照)。この仮締め完了信号Sg5が移動用モータ駆動部10に出力されると、この時の移動用モータ2dの現在位置が移動用モータ2dの目標位置とされ、移動用モータが無回転の状態となる(SQ4およびSQ5参照)。そのため、移動用モータ2dにはその位置を保持するパワーが供給されるのみで、軸受台2kおよびこれと一体の駆動ビット3eはその位置で停止し、駆動ビット3eは推力を持たない状態となる。
【0037】
この間、ねじ締め用モータ3bは回転しているので、駆動ビット3eがねじ締め用モータ3bの回転力を受け、ねじ4を回転させようとする。そのため、駆動ビット3eの負荷トルク、すなわちねじ4の駆動穴4aに加わる回転力Frが上昇し、駆動ビット3eのカムアウト力Fcoが増大する。このカムアウト力Fcoが増大すると、駆動ビット3eがねじ4の駆動穴4aから離脱すべくせり上がろうとする(
図11参照)。これにより、この駆動ビット3eと一体の軸受部2kが上昇することとなるので、駆動ビット3eおよび軸受台2kの位置を保持するように、すなわちカムアウト力Fcoを打ち消すように移動用モータ2dにフィードバック制御が働く。そのため、移動用モータ2dには前述の位置を保持するために必要なフィードバック電流値We6が供給され、駆動ビット3eとねじ4の駆動穴4aとの嵌合が保持される。同時に、この時の移動用モータ2dに流れるフィードバック電流値We6が推力算出部12、すなわち主制御部7に出力されて、記憶部9に記憶される(ステップSQ6参照)。このフィードバック電流値We6がねじ締め用モータ駆動部11から本締め完了信号Sg6が出力されるまで繰り返し記憶され(ステップSQ7参照)、
図1および
図10に示す推力信号波形We6が得られる。
【0038】
この状態で、前記増締めがさらに進行して、ねじ締め用モータ3bの負荷電流Waが増大して本締め設定電流値Is2に達すると(
図1中、トルク信号波形Wa参照)、ねじ締め用モータ3bへの電圧供給が停止され、ねじ締め用モータ3bが停止するとともに、ねじ締め用モータ駆動部11から本締め完了信号Sg6が出力される(ステップST8、ST12およびST13参照)。この本締め完了信号Sg6が移動用モータ駆動部10に出力され、移動用モータ駆動部10は移動用モータ2dへパワー供給停止指令信号Sg12を出力するので、移動用モータ2dの現在位置の保持を中止し、移動用モータ2dへのパワーの供給が中止される(ステップSQ8参照)。その後、記憶部9に記憶された移動用モータ2dのフィードバック電流値We6のうち、最終に記憶されたフィードバック電流値、言い換えれば前述のねじ締め用モータ停止タイミングで検出されたフィードバック電流値、すなわちカムアウト力Fcoを打ち消すべく作用する推力Imfが呼出され、これに一定の安全率を見て算出された電流値が本締め推力として本締め設定電流Is2とともに記憶部9に記憶される(ステップSP11参照)。
【0039】
また、移動用モータ駆動部10では前記本締め完了信号Sg6を受けると、移動用モータ2dすなわち駆動ビット3eの待機位置P0と復帰時推力Ft5が呼出され、移動用モータ2dには待機位置P0に復帰する電流値が供給される(ステップSQ9およびSQ10参照)。そのため、移動用モータ2dは待機位置P0に復帰するように、また復帰時推力Ft5が得られるようにパワー供給を受けて回転するので(
図10中、信号波形We4参照)、軸受台2kおよびねじ締めユニット3は待機位置P0に復帰する。その後、移動用モータ2dの現在位置が待機位置P0に復帰するのを待って、主制御部7に待機位置復帰信号Sg10が出力される(ステップSQ11およびSQ12)。また、推力算出部12はこの待機位置復帰信号Sg10の入力を待って、推力算出動作を終了する(ステップSP12およびSP13参照)。
【0040】
以上のように、本実施形態におけるねじ締め装置1はねじ締め用モータ3bの回転を受けて回転する駆動ビット3eを備えたねじ締めユニット3と、移動用モータ2dの回転を往復移動に変換してこの往復移動によりねじ締めユニット3を前進後退させる移動ユニット2と、前記駆動ビット3eに加わる負荷トルクを検出してこれが設定締付けトルク値に達する時にねじ締め用モータ3bを停止させる締付けトルク制御部11aと、前記ねじ締め用モータ停止タイミングでの駆動ビットに発生するせり上がり力を打ち消すべく移動用モータ2dから駆動ビット3eに付与される推力を算出する推力算出部12と、を備えている。この構成により、駆動ビット3eに発生するカムアウト力Fcoを検出することができる。言い換えれば、このカムアウト力Fcoを打ち消すべく、移動用ACサーボモータ2dから駆動ビット3eに付与する推力を算出できるので、駆動ビット3eがねじ4の駆動穴4aから離脱するのを防止するために駆動ビット3eに付与される推力はできる限り小さく最適な推力とすることができる。これにより、駆動ビット3eはねじ4の駆動穴4aから離脱することがないばかりか、締付作業の際に相手部材5を過剰に押圧することもなくなるうえに、前述の推力の設定も自動的に行うことができる。また、この締付作業の際に、相手部材5がアルミ材であってねじ4としてタッピングねじ(図示せず)が使用されても、駆動ビット3eに過剰な推力が加わらないので、成形途中のめねじを破壊することもなく、高品質な締付けを行うことができる。また、前記推力算出部12は相手部材5に設定締付けトルク値であらかじめ締付けられたねじ4を増締めする際に駆動ビット3eがねじ4の駆動穴4aに嵌合する位置を保持する時の移動用ACサーボモータ2dのフィードバック電流値であって、前記ねじ締め用モータ停止タイミングのフィードバック電流値から駆動ビットに付与する推力を算出する構成であってもよい。この場合、締付完了時に駆動ビット3eがねじ4の駆動穴4aから離脱するのを防止できる推力を特別な測定装置を設けることなく算出することができる。
【0041】
本発明の応用例として、図示はしないが、前述の推力算出部に駆動ビット交換時に算出される推力を初期推力として記憶し、この初期推力と任意のタイミングで算出される推力との比較から駆動ビットの摩耗を判定するように構成された駆動ビット摩耗検出部(図示せず)を付加してもよい。この場合、駆動ビットの先端が摩耗すれば、駆動ビットとねじの駆動穴との係合関係も変化して推力が変化するので、この変化を前述の判定により即座に判定して駆動ビットの摩耗を検出することができる。
【0042】
なお、本発明の実施形態について説明したが、ねじ締め装置はロボットの先端ユニットに限定されるものではなく、据え置き型のねじ締め装置であってもよい。また、推力算出は一旦相手部材に締結されたねじを増締めする際に行われているが、相手部材にねじを設定締付けトルク値で締付けた状態で、引き続いて増締め作業を行って、その際に推力算出を行ってもよい。さらに、前述の本締め完了時のねじ締め用モータ停止タイミングはねじ締め用モータ3bの負荷電流Waが本締め設定電流値Is2に達してから一定時間後であってもよい(
図1中のトルク信号波形Wb参照)。この場合、被締結部材5aが軟質材でなる時には、締付けトルクの安定を待って本締め完了信号Sg6を出力することができる。また、ねじ締めユニットの駆動ビットに加わる負荷トルクの検出に際して、ねじ締め用モータの負荷電流が使用されているが、トルクセンサが使用されてもよいことはもちろんである。しかも、本実施形態ではねじ締めユニット3はドライバ台3aに直接固定されているが、本実施形態の移動ユニット2と同構造の移動ユニット(図示せず)を介してドライバ台3aに固定されてもよい。この場合、ドライバ台3aを任意の締付け高さ位置に停止できるので、任意の高さ位置での締付を行うことができる。その他、各部の具体的な構成は上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【解決手段】移動用ACサーボモータ2dの回転を往復移動に変換してこの往復移動により駆動ビット3eを前進後退させる移動ユニット2と、あらかじめ締付けられたねじを増締めする際に駆動ビットの位置を保持する時の移動用ACサーボモータ2dのフィードバック電流値We6であって、設定締付けトルク値での締付け完了時のフィードバック電流値We6から推力を算出する推力算出部12とを備え、締付け時に駆動ビット3eに発生するカムアウト力Fcoを検出し、このカムアウト力Fcoを打ち消す移動用ACサーボモータ2dから駆動ビット3eに付与する推力を算出する。そのため、駆動ビット3eがねじ4の駆動穴4aから離脱するのを防止するために駆動ビット3eに付与される推力をできる限り小さく最適な推力とする。