特許第5886929号(P5886929)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5886929
(24)【登録日】2016年2月19日
(45)【発行日】2016年3月16日
(54)【発明の名称】撹拌装置
(51)【国際特許分類】
   B01F 7/18 20060101AFI20160303BHJP
   B01F 7/16 20060101ALI20160303BHJP
   B01F 15/00 20060101ALI20160303BHJP
【FI】
   B01F7/18 B
   B01F7/16 D
   B01F7/16 H
   B01F15/00 C
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-216038(P2014-216038)
(22)【出願日】2014年10月23日
【審査請求日】2014年10月23日
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000171919
【氏名又は名称】佐竹化学機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102749
【弁理士】
【氏名又は名称】澤木 紀一
(74)【代理人】
【識別番号】100081787
【弁理士】
【氏名又は名称】小山 輝晃
(72)【発明者】
【氏名】加藤 好一
【審査官】 柿沼 善一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−033236(JP,A)
【文献】 特開平08−187424(JP,A)
【文献】 特開2013−063362(JP,A)
【文献】 特開平07−108152(JP,A)
【文献】 特開2003−181408(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0223404(US,A1)
【文献】 特開2009−183896(JP,A)
【文献】 特開2004−176640(JP,A)
【文献】 特公昭56−021452(JP,B2)
【文献】 特開2002−018252(JP,A)
【文献】 特開2004−033810(JP,A)
【文献】 特開2003−164748(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01F 7/18
B01F 7/16
B01F 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体が撹拌される、円筒状の撹拌槽と、回転駆動軸と、該回転駆動軸に装着した、前記撹拌槽内に垂設される撹拌翼本体と、前記撹拌槽内に設けた、被接続体が接続される接続用軸とよりなり、
前記撹拌翼本体は、少なくとも2本の間隔を存して並列する支柱からなる回転軸の各支柱に、複数の平板状の傾斜羽根を互いに間隔を存して複数段に配列して固定し、該各支柱の上端部を連結して前記駆動軸に接続すると共に、該各支柱の下端に底面翼を設けることよりなり、
前記接続用軸は、被接続体を接続する接続部を有する棒体からなると共に、前記接続部に接続される被接続体は、前記撹拌翼本体の回転中心付近で、該撹拌翼本体の回転により上下方向の一様な流れが形成される所望の場所に位置され、
前記被接続体は、撹拌槽内で成長させる結晶であることを特徴とする撹拌装置。
【請求項2】
前記接続用軸を回転させる回転駆動装置を更に有することを特徴とする請求項1に記載の撹拌装置。
【請求項3】
前記接続用軸を上下動させる上下動装置を更に有することを特徴とする請求項1又は2に記載の撹拌装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は医薬品工業、食品工業、化学品工業等において、主に、高粘度液を対象としながら低粘度液まで広い範囲の液体を撹拌するのに好適な撹拌装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の撹拌装置としては、図4の如く螺線状のヘリカルリボン翼bを回転軸aに固着すると共に底面翼cを該ヘリカルリボン翼bに固定して効率的に中・高粘度の液体を撹拌するようにしたものが知られている。このような攪拌装置としては、例えば、特許文献1がある。
【0003】
かかるヘリカルリボン翼を用いた従来型の撹拌装置では、ある粘度域の液体を撹拌すると、図5及び図6に示したEの様な流れとなり、Vで示すような竜巻状の筋が発生して不充分な混合性能となり易く、良好な混合が行なわれないという問題がある。
【0004】
かかる問題を解決する技術として、図7に示すような、2本の間隔を存して並列する支柱dからなる回転軸の各支柱dに、複数の平板状の傾斜羽根eを互に間隔を存して複数段に配列して固定し、該各支柱dの上端部を連結して駆動軸fに接続すると共に、該各支柱dの下端に底面翼gを設けた撹拌翼hがある(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013−75969号公報
【特許文献2】特許第3648279号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、これら従来の撹拌装置では、昇温、降温などの熱交換を行うためには、撹拌槽の外壁にしか伝熱面を有することが出来ず、より多くの熱交換を必要とする場合には、槽内への伝熱面の付与が困難であった。このため、熱交換性能に限界があり、また、該撹拌槽内の液体の加熱、冷却調整が難しかった。
【0007】
また、これら従来の撹拌装置では、撹拌槽内に添加する触媒粒子や添加物の撹拌対象物を、撹拌槽内を一様に流れる液体に添加できなかったので、該対象物を良好に攪拌することができず、また、撹拌物の添加調整が難しかった。
【0008】
さらに、これら従来の撹拌装置では、低粘度液を撹拌する場合に、槽内壁にバッフルを設けることが出来ず、従って、旋回流を主体とした流れしか形成できず、混合性能は極端に低下する問題があった。
【0009】
本発明はこれらの問題点を解消し、主に、高粘度液を対象としながら低粘度液まで広い範囲で良好な混合を行なうことができる撹拌装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記の目的を達成すべく、本発明の撹拌装置は、液体が撹拌される、円筒状の撹拌槽と、回転駆動軸と、該回転駆動軸に装着した、前記撹拌槽内に垂設される撹拌翼本体と、前記撹拌槽内に設けた、被接続体が接続される接続用軸とよりなり、前記撹拌翼本体は、少なくとも2本の間隔を存して並列する支柱からなる回転軸の各支柱に、複数の平板状の傾斜羽根を互いに間隔を存して複数段に配列して固定し、該各支柱の上端部を連結して前記駆動軸に接続すると共に、該各支柱の下端に底面翼を設けることよりなり、前記接続用軸は、被接続体を接続する接続部を有する棒体からなると共に、前記接続部に接続される被接続体は、前記撹拌翼本体の回転中心付近で、該撹拌翼本体の回転により上下方向の一様な流れが形成される所望の場所に位置され、前記被接続体は、撹拌槽内で成長させる結晶であることを特徴とする。
【0011】
また、前記接続用軸は、該軸を回転させる回転駆動装置、及び/又は、該軸を上下移動させる上下動装置を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、前記撹拌翼本体により撹拌槽内の液体を撹拌することにより、撹拌槽内に一様に、混合むらがなく、短時間で良好な撹拌を行なうことができる。また、該撹拌翼本体の回転中心付近に、極めて一様な流れを形成することが分かり、この極めて一様な流れの中に、被接続体を位置させるようにすることにより、従来では難しかった、槽内の液体の熱交換や撹拌対象物の添加などの様々な処理を非常に効果的にできるようになり、中・高粘度の液体を良好に撹拌することができるようになった。
【0013】
また、前記接続用軸を静止のみならず、回転、及び/又は、上下動させることにより、前記被接続体の位置や状態を、用途によって自由にコントロールし、該被接続体の処理を効果的に行えるようにすることができるようになる。
【0014】
また、前記被接続体として、例えば、翼を用いたような場合には、該翼を静止、若しくは回転駆動軸と逆に回すことで、効果的に、バッフル効果を働かせることができ、低粘度液から高粘度液までの良好な撹拌ができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の撹拌装置の説明用斜視図である。
図2】本発明の撹拌装置を模式図として表した説明縦断側面図である。
図3】本発明の撹拌装置のフローパターンを、接続用棒を省略した模式図として表した説明縦断側面図である。
図4】従来の撹拌装置の説明用一部截断側面図である。
図5】従来の撹拌装置のフローパターンを示す一部截断図である。
図6図5のXI−XI線截断図である。
図7】従来の他の攪拌装置の説明用斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明を実施するための形態の実施例を以下に示す。
【実施例1】
【0017】
本発明の実施例1を図1乃至図3によって説明する。なお、図1は、本発明の撹拌装置の説明用斜視図であり、図2は、本発明の撹拌装置を模式図として表した説明縦断側面図であり、図3は、本発明の撹拌装置のフローパターンを、接続用棒を省略した模式図として表した説明縦断側面図である。
【0018】
1は、本実施例1の撹拌装置、2は、該撹拌装置1の円筒状の撹拌槽、3は、回転駆動軸4に装着された撹拌翼本体、5は、被接続体6が接続される接続用軸を示す。
【0019】
前記撹拌翼本体3は、例えば、間隔を存して並列する2本の支柱3a、3aからなる回転軸と、該支柱3aの外側に多段に固定された傾斜羽根3bと、該支柱3a、3aの上端部を連結して固定したブラケット3cと、該支柱3a、3aの下端に設けた底面翼3dとからなり、該撹拌翼本体3は、前記ブラケット3cの中間部に固定した前記回転駆動軸4により撹拌槽2内に垂設され、前記底面翼3dが前記撹拌槽2の底面に近接するように保持されている。なお、前記支柱3aは、3本以上であってもよい。
【0020】
また、前記傾斜羽根3bは、例えば、平板状で、撹拌翼本体3の翼外径と撹拌槽2の内壁との隙間ができるだけ少なくなるよう該傾斜羽根3bの外側縁を該撹拌槽2の内周面に近接している。
【0021】
また、傾斜羽根3bの傾斜角度は水平面に対し15°乃至45°で、傾斜羽根3bの幅は前記翼外径の15%乃至25%であることが好ましく、多段に配列された該傾斜羽根3bの間隔は、水平に見て少し重なり合う程度としたので、撹拌液が撹拌翼本体3と共回り状態とならない。
【0022】
前記支柱3aの太さも、強度上から許される最小の太さとして、撹拌液が撹拌翼本体3と共回り状態となるのを防いでいる。
【0023】
前記底面翼3dは、例えば、平板を折り曲げた構造で、その下端が前記撹拌槽2の底面の形状に沿った形状とし、前記傾斜羽根3bの後方に垂直部3eを設けている。中心部では流れがあまり強くないので、垂直部の高さを低くして流れの停滞を防止している。
【0024】
前記接続用軸5は、例えば、下端に、前記被接続体6を、前記撹拌翼本体3の回転中心付近の所望の場所に位置させるための接続部5aを有する直線状の棒体からなる。そして、該接続用軸4は、例えば、中空に形成された前記回転駆動軸4内を貫通して、その下端の接続部5aが、前記槽内の液体中の所望の場所に位置するように垂設される。
【0025】
なお、前記撹拌翼本体3の回転中心付近とは、液体中の前記支柱3a、3a、前記ブラケット3c、前記底面翼3d間であり、特に、図3の斜線で表された範囲Dに示すように、槽中間部から液面下付近の間が好ましい。
【0026】
また、前記接続用軸5は、図示しない回転駆動装置により、該軸5の軸回りに回転自在に設けられている。
【0027】
また、前記接続用軸5は、図示しない上下動装置により、該軸5の軸方向に沿って上下動自在に設けられている。
【0028】
なお、前記接続用軸5に接続される被接続体6は、前記撹拌槽内の所望の場所に位置するように挿入されて様々な処理を行うあらゆる物が該当し、例えば、撹拌槽内の液体を加熱、冷却する熱源がある。
【0029】
また、該被接続体6としては、例えば、撹拌槽内の液体内に撹拌される触媒粒子や添加物などの撹拌対象物を収納した収納体がある。かかる収納体は、例えば、複数の微細孔を有し、該微細孔から、収納した前記撹拌対象物が所望の時間をかけて撹拌槽内に供給されるようになる。
【0030】
また、該被接続体6としては、例えば、多数の触媒粒子や添加物などを、例えば成形機などでプレスして所望の形状に形成した撹拌対象物がある。かかる撹拌対象物は、所望の時間をかけて徐々に、該所望の形状に形成された撹拌対象物の外周部分が剥がれて、前記触媒粒子や添加物などが触媒槽内に供給され、撹拌されるようになる。
【0031】
また、該被接続体6としては、例えば、槽内の液体に常時接触させて槽内の液体の反応を促す触媒や、槽内で成長させる結晶などがある。
【0032】
また、該被接続体6として、翼があり、低粘度液を撹拌する場合に、混合性能を高めることができるようになる。
【0033】
なお、図2においてLは撹拌液の上面を示し、該上面が一番高い場合でも傾斜羽根の上部が該上面から突出するように該傾斜羽根を多段にしてある。
【0034】
次に本発明の第1実施例の作用及び効果について説明する。
【0035】
本発明の撹拌翼本体3を回転駆動軸4により図1で示すA矢印の方向に回転させると、図3に示すように、傾斜羽根3bの作用により該傾斜羽根3b間の液体は下方向流となり、最下段でかき下げられた液体は中心方向へ押し出される流れとなり、中心部でその流れは、底面翼3dの垂直部3eにより、効率よく上昇流となり、槽中心部には、極めて一様な上昇流が形成されるようになる。
【0036】
そして、この極めて一様な上昇流中の所望の場所に前記被接続体6を位置させることにより、従来では難しかった、槽内の液体の熱交換や撹拌対象物の添加などの様々な処理を非常に効果的にできるようになった。
【0037】
また、前記被接続体を、回転、及び/又は、上下動させることにより、更に、様々な処理を効果的に行えるようになった。
【0038】
即ち、前記被接続体6が、例えば、熱源であれば、極めて一様に流れる液体を加熱・冷却することになるので、良好に液体を加熱することができると共に、前記撹拌槽内の液体の加熱、冷却の調整が容易になり、また、槽内の液体の状態把握、解析が容易になる。
【0039】
また、前記熱源の位置を、回転、及び/又は、上下動させて、該熱源の位置を自由にコントロールすることにより、槽内を更に、効果的に加熱、冷却できるようになる。
【0040】
また、被接続体6が、例えば、撹拌対象物を収納した収納体であれば、極めて一様に流れる液体に撹拌対象物を供給し撹拌させることができるので、良好に液体に被撹拌物を添加できると共に、流れる液体に加える被撹拌物量の微調整が容易となり、また、槽内の液体の状態把握、解析が容易になる。
【0041】
また、前記収納体の位置を、回転、及び/又は、上下動させて、該収納体の位置を自由にコントロールすることにより、流れる液体に更に、効果的に被撹拌物を添加できるようになる。
【0042】
また、被接続体6が、多数の触媒粒子や添加物などを、例えば成形機などでプレスして所望の形状に形成した撹拌対象物あれば、前記と同様に、極めて一様に流れる液体に撹拌対象物を供給し撹拌させることができるので、良好に液体に被撹拌物を添加できると共に、流れる液体に加える被撹拌物量の微調整が容易となり、また、槽内の液体の状態把握、解析が容易になる。
【0043】
また、前記撹拌対象物の位置を、回転、及び/又は、上下動させて、該撹拌対象物の位置を自由にコントロールすることにより、所望の形状の撹拌対象物を、所望の形状に変化させながら液体中に接触させることができるので、該撹拌対象物の状態把握、解析なども容易になる。
【0044】
また、被接続体6が、結晶であれば、この結晶も前記と同様に、極めて一様に流れる液体を作用させることができるので、結晶の育成が良好になる。
【0045】
また、該結晶の位置を、回転、及び/又は、上下動させて、該結晶の位置を自由にコントロールすることにより、育成に必要な流体作用の微調整も可能となる。
【0046】
また、被接続体6が、翼であれば、バッフル効果を働かせることができ、低粘度から高粘度液までの良好な撹拌ができるようになる。
【0047】
また、該翼を、前記回転駆動軸と独立して、回転、及び/又は、上下動させて、該翼を自由にコントロールすることにより、更に効果的に混合性能を上げることができるようになる。
【0048】
なお、前記所望の場所とは、例えば、前記ブラケット3c、前記底面翼3d間の、前記撹拌翼本体3の回転軸線上などがある。
【0049】
なお、本実施例では、撹拌翼本体3の回転方向を前記傾斜羽根3bが液体をかき下げる方向としたが、これは該傾斜羽根3bが液体をかき上げる方向に該撹拌翼本体3を回転させてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明の中・高粘度用撹拌装置は、医療品関係、食品関係等における分野において利用される。
【符号の説明】
【0051】
1 撹拌装置
2 撹拌槽
3 攪拌翼本体
3a 支柱
3b 傾斜羽根
3c ブラケット
3d 底面翼
3e 垂直部
4 回転駆動軸
5 接続用軸
5a 接続部
6 被接続体
【要約】
【課題】中・高粘度の液体を撹拌するのに好適な撹拌装置に関する。
【解決手段】
本発明の中・高粘度用撹拌装置1は、円筒状の撹拌槽2と、回転駆動軸4と、該回転駆動軸4に装着した、前記撹拌槽2内に垂設される撹拌翼本体3と、前記撹拌槽2内に設けた、被接続体6が接続される接続用軸5とよりなり、前記撹拌翼本体3は、少なくとも2本の間隔を存して並列する支柱3aからなる回転軸の各支柱3aに、複数の平板状の傾斜羽根3bを互いに間隔を存して複数段に配列して固定し、該各支柱3aの上端部を連結して前記駆動軸4に接続すると共に、該各支柱3aの下端に底面翼3dを設けることよりなり、前記接続用軸5は、被接続体6を接続する接続部を有する棒体からなると共に、前記接続部が前記撹拌翼本体3の回転中心付近の所望の場所に位置するように、該接続用軸5が槽内に設けられる。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7