(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記2層の高活性化エネルギー層のそれぞれにおいて、標準基板の上の前記保持層における有効水蒸気拡散率の、これと同じ標準基板上の前記高活性化エネルギー層における有効水蒸気拡散率に対する比率が、1未満である、請求項1に記載の多層構成要素。
前記バリアスタックが、少なくとも第一の層配列と少なくとも第二の層配列とを含み、それらそれぞれが2層の高活性化エネルギー層の間に挟み込まれた保持層からなっており、前記高活性化エネルギー層の一つが、前記第一の層配列と前記第二の層配列の両方に属している、請求項1に記載の多層構成要素。
空気および/または湿分の影響を受けやすい素子を含むデバイスであって、前記影響を受けやすい素子のための前面または背面封入材として、請求項1に記載の多層構成要素を含む、デバイス。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書において開示される教示の理解を深めるために、図面と組み合わせて、以下の記述を提供する。以下の考察では、その教示の特定の実施および実施形態に焦点を当てている。この焦点は、それらの教示の記述を助けるために提供するのであって、それらの教示の範囲や適用性を限定するものと解釈してはならない。
【0016】
本明細書で使用するとき、「含む(「comprises」、「comprising」、「includes」、「including」、「has」、「having」)という用語、またはそれらの他の各種変化形には、非排他的包含を含むことが意図されている。たとえば、一連の特徴を含む方法、物品または装置は、必ずしもそれらの特徴だけに限定されるものではなく、明言的に列記されていないか、またはそのような方法、物品または装置に固有のその他の特徴を含んでいてもよい。さらに、そうではないと明確に記載されていない限りにおいて、「または(or)」は、包含的or(inclusive−or)を指しており、排他的or(exclusive−or)を指すものではない。たとえば、条件AまたはBは以下のいずれか一つを満足させる:Aが真であり(存在する)且つBが偽である(存在しない)か、Aが偽であり(存在しない)且つBが真である(存在する)か、または、AおよびBの両方が真である(存在する)。
【0017】
さらに、不定冠詞の「a」および「an」が、本明細書において記述される構成要素および構成成分を記述するために採用されている。これは単に利便性のために使用されているのであって、本発明の範囲の一般的な意味を与えるためのものである。この記述は、一つまたは少なくとも一つを含むと読み取るべきであり、他の意味合いを有することが明白でない限りにおいて、その単数形に複数の形も含まれていることもあり、その逆もあり得る。たとえば、本明細書において単一の品目が記載されている場合、単一の品目に代えて二つ以上の品目を使用してもよい。同様にして、本明細書において二つ以上の品目が記載されている場合にも、その二つ以上の品目に対して、単一の品目を置き換えてもよい。
【0018】
別の定義をしない限りにおいて、本明細書において使用される技術用語および科学用語はすべて、本発明が属する分野における当業者が一般的に理解しているのと同じ意味合いを有している。材料、方法、および例は、説明のためだけのものであって、限定的な意味合いは有していない。本明細書において記載されていない範囲で、特定の材料および加工行為に関する詳細の多くは、通常のものであって、ルーフィングプロダクド(roofing product)技術および関連の製造技術の範囲に入る教科書その他の文献に見出すことができる。一実施形態においては、多層構成要素が、空気および/または湿分の影響を受けやすい素子、たとえば有機発光ダイオードまたは光電池を封入している。その多層構成要素には、有機ポリマー層と少なくとも1組のバリアスタックとを含むことができる。それぞれのバリアスタックは、2層の高活性化エネルギー層の間に挟み込まれた保持層からなる少なくとも一つの層配列を含むことができるが、ここで:
− 上記2層の高活性化エネルギー層のそれぞれにおいて、一方では、高活性化エネルギー層を用いてコーティングされた標準基板と、他方では、むき出し状態の場合のこれと同じ標準基板との間での水蒸気透過のための活性化エネルギーにおける差が、20kJ/mol以上であり;かつ
− 標準基板の上の保持層における有効水蒸気拡散率の、むき出し状態の場合のこれと同じ標準基板における水蒸気拡散率に対する比率が、0.1未満である。
【0019】
本発明の実施形態においては、以下の条件が単独または組み合わせて、取り入れられている:
− 2層の高活性化エネルギー層のそれぞれにおいて、高活性化エネルギー層を用いてコーティングされた標準基板と、コーティングされていないそれと同一の標準基板との間の活性化エネルギーにおける差が、20kJ/mol以上、たとえば25kJ/mol以上、30kJ/mol以上、または40kJ/mol以上であり;かつ
− 標準基板の上の保持層における有効水蒸気拡散率の、コーティングされていないそれと同一の標準基板における水蒸気拡散率に対する比率が、0.08未満、たとえば0.06未満、0.04未満、0.02未満、または0.01未満である。
【0020】
本発明の文脈においては、「影響を受けやすい素子の封入」という表現は、影響を受けやすい素子の少なくとも一部が、その影響を受けやすい素子が環境条件に曝露されないようにして、保護されているということを意味していると理解されたい。具体的には、その多層構成要素が、その影響を受けやすい素子を被覆していてもよいし、そうでなければ、その影響を受けやすい素子がその多層構成要素の上に蒸着されていてもよい。薄膜機能性素子、たとえばOLEDの影響を受けやすい層を保護する場合、その機能性素子中、たとえばOLEDの電極を構成しているスタックの中にバリアスタックが含まれていてもよい。本発明の文脈においては、多層構成要素は、相互に対して配置された層の集合体であるが、その素子を構成している層が相互の上に蒸着されている順序とは関係ないということに注意されたい。
【0021】
本発明の目的に関して、水蒸気保持層が2層の水蒸気透過のための高活性化エネルギー層の間に挟み込まれたサンドイッチ構造を含む少なくとも1組のバリアスタックを存在させることによって、影響を受けやすい素子の中へのポリマー層からの水蒸気の移行を制限し、遅らせることが可能となる。第一には、水蒸気が高活性化エネルギー層の中に浸透することが困難である。第二には、その保持層が水蒸気を貯蔵する。バリアスタックを特定のサンドイッチ配列とすることによって、保持層の中に水蒸気を捕捉させることが極めて容易となる。その理由は、バリアスタックの第一の高活性化エネルギー層を通過することが可能であった水蒸気が、保持層の中に入り、そのバリアスタックの第二の高活性化エネルギー層が同様に、水蒸気がその保持層から抜ける可能性を大いに制限して、水蒸気のほとんどが、保持層の中に捕捉されている状態になるからである。したがって、影響を受けやすい素子の中への水蒸気の透過が、大いに低減され、遅らせられる。
【0022】
固体状媒体を通過する気体の透過性は、アレニウスの法則で記述することが可能な、熱的に活性化されたプロセスである:
【数1】
[式中、
Pは、透過度であり;
P
0は、その系に特有の透過定数であり;
kは、ボルツマン定数であり;
Tは、温度であり;かつ
E
aは、透過のための活性化エネルギーである。]
【0023】
式(1)から、透過度Pを温度Tの関数として測定することによって、活性化エネルギーE
aを求めることが可能である。むき出しの基板の活性化エネルギーを求め、層を用いてコーティングされた基板の活性化エネルギーと比較することも可能である。
【0024】
さらに、透過度Pは次式で与えられる:
P=SD (2)
[式中、
Sは、溶解度であるか、または基板の上の層の場合においては有効溶解度であり、かつ
Dは、拡散率であるか、または基板の上の層の場合においては有効拡散率である。]
【0025】
溶解度は、気体が固体状媒体の中に存在する傾向を表すが、それに対して拡散率は、固体状媒体の中における気体の移行速度を表す。上記の式(1)および(2)から、活性化エネルギーE
aには、溶解度と拡散率の両方が取り込まれていることになる。実際のところ、単一のポリマー膜または単分子層の場合においては、溶解度の効果が拡散率の効果を圧倒している。しかしながら、多層スタックの場合においては、拡散率の効果が重要となり、さらには圧倒的になることもある。
【0026】
本発明においては、高い水蒸気透過のための総括活性化エネルギーを有するバリアスタックが提供され、その中央層が低い水蒸気拡散率を有する保持層であるサンドイッチ構造のために、拡散率の影響が高くなっている。保持層の中の水蒸気濃度が高くなると、保持層の中での水蒸気拡散率が低下して有利となりうる。この保持効果は、水蒸気とその保持層の構成材料との間の特定の親和力、たとえば化学親和力、極性親和力、より一般的には電気的親和力によるか、特にファンデルワールス相互作用によるものとすることができる。そのために、バリアスタックの内部における水蒸気の拡散時間を、顕著に長くすることが可能である。
【0027】
本発明の文脈においては、むき出しであるか、または層を用いてコーティングされているかには関係なく、基板中における水蒸気透過についての活性化エネルギーは、各種の温湿度条件下での、基板(むき出しであるかまたはコーティングされた)を通過する水蒸気移行速度すなわちWVTRを測定することによって求められる。公知のように、透過度Pは、WVTRに比例する。次いで、式(1)を使用して、活性化エネルギーE
aを推定するが、それは、1/Tの関数としてのLn(WVTR)の変動を表す、直線の勾配(または、その関数の微分値)から得られる。実際のところ、WVTR測定は、MOCON AQUATRANシステムを使用して実施することができる。WVTR値が、MOCONシステムの検出限界より低い場合には、通常のカルシウム試験法によってそれらを求めてもよい。
【0028】
本発明の文脈においては、基板の上に位置する層の中の水蒸気の有効拡散率は、その多層構成要素を組み込む予定のデバイスの作動範囲内の所定の温度において、各種の時間で、その基板から層の中へと拡散する水蒸気の量を測定することによって求める。さらに、基板における水蒸気の拡散率は、デバイスの作動範囲の内にある所定の温度において、各種の時間で、その基板の中へと拡散する水蒸気の量を測定することによって求める。これらの測定は、特に、MOCON AQUATRANシステムを使用して実施すればよい。二つの拡散率の間の比較をするためには、同一の温湿度条件下でその二つの拡散率を求めるための測定を実施しなければならない。
【0029】
本発明のその他の実施形態を以下に記述するが、それらは、単独で取り入れても、あるいは各種の技術的に可能な組合せで取り入れてもよい。
【0030】
一実施形態においては、2層の高活性化エネルギー層のそれぞれにおいて、標準基板の上の保持層における有効水蒸気拡散率の、それと同一の標準基板の上の高活性化エネルギー層内における有効水蒸気拡散率に対する比率が、1未満、0.1未満、0.08未満、0.06未満、0.04未満、0.02未満、またはさらに0.01未満である。したがって、保持層における好ましい水蒸気の貯蔵率が存在する。
【0031】
一実施形態においては、2層の高活性化エネルギー層のそれぞれにおいて、高活性化エネルギー層を用いてコーティングされた標準基板の水蒸気透過のための活性化エネルギーの方が、保持層を用いてコーティングされた標準基板の活性化エネルギーよりも高い。このことが、バリアスタックの第一の高活性化エネルギー層を通過するのに成功した水蒸気の保持層における捕捉を促進させ、バリアスタックの第二の高活性化エネルギー層が、その水蒸気が保持層から抜け出す可能性を大いに制限している。
【0032】
さらなる一実施形態においては、その保持層の幾何学的厚みが、2層の高活性化エネルギー層のそれぞれの幾何学的厚みよりも厚いか、またはその厚みに等しい。特定の一実施形態においては、2層の高活性化エネルギー層のそれぞれにおいて、保持層の幾何学的厚みの高活性化エネルギー層の幾何学的厚みに対する比率が、1.2以上である。しかしながら、バリアスタックを最適化させて、干渉フィルターを構成させようとするならば、光学的な観点から、保持層の幾何学的厚み対高活性化エネルギー層の幾何学的厚みの1.2未満の比率を強制してもよい。
【0033】
いくつかの実施形態においては、当該バリアスタックもしくは各バリアスタックのそれぞれの層が、5nm〜200nmの間、たとえば5nm〜100nmの間、および5nm〜70nmの間の幾何学的厚みを有している。一実施形態においては、その厚みを、少なくとも5nm、たとえば少なくとも10nm、少なくとも20nm、少なくとも40nm、またはさらには少なくとも100nmとすることができる。別の実施形態においては、その厚みを、200nm以下、たとえば150nm以下、120nm以下、100nm以下、またはさらには約80nm以下とすることができる。
【0034】
当該バリアスタックもしくは各バリアスタックのそれぞれの層は無機物であり、特に、金属、酸化物、ニトリドまたはオキシニトリドの層であってよい。それが酸化物、ニトリドまたはオキシニトリドの層である場合には、それがドープされていてもよい。一例としては、ZnO、Si
3N
4またはSiO
2層を、特にそれらの導電率を改良する目的で、アルミニウムによってドープしてもよい。当該バリアスタックもしくは各バリアスタックの層は、慣用される薄膜蒸着プロセスによって蒸着されていてもよいが、そのようなプロセスの非限定的な例としては、マグネトロンスパッタリング法;化学蒸着法(CVD)特にプラズマ化学蒸着法(PECVD);原子層蒸着法(ALD);またはそれらのプロセスの組合せが挙げられるが、選択される蒸着プロセスが、バリアスタックの中で、層毎に異なっていてもよい。
【0035】
一実施形態においては、その多層構成要素に、ポリマー層とバリアスタックとの間に位置する界面層が含まれる。この界面層は、たとえばアクリル樹脂またはエポキシ樹脂タイプの有機物層か、または有機−無機ハイブリッド層、特にその中では、たとえばシリカのSiO
xであってよい無機部分が、層の0%〜50容量%の間を占めている。この界面層は特に、平滑化層または平坦化層として機能している。界面層は、少なくとも1ミクロン、たとえば少なくとも2ミクロン、少なくとも3ミクロン、またはさらには少なくとも4ミクロンの厚みを有することが出来る。さらなる実施形態においては、その界面層が、10ミクロン以下、たとえば8ミクロン以下、または6ミクロン以下の厚みを有している。一実施形態においては、その界面層が、約1〜10ミクロン、たとえば4〜5ミクロンの厚みを有する、UV硬化させたアクリレート層である。
【0036】
別の実施形態においては、当該バリアスタックもしくは各バリアスタックを構成する層が、低い屈折率と高い屈折率を交互に有している。これらの構成層を適切な幾何学的厚みとすると、そのバリアスタックが干渉フィルターを構成することが可能であって、反射防止コーティングとして機能する。これは、輻射線集積または放出機能性素子、たとえばOLEDまたは光電池の前面封入として多層構成要素を使用する場合に特に役立つ。したがって、このことは、OLEDまたは光電池の場合においては、その機能性素子から抜き出される光束またはその機能性素子に到達する光束を確実に増やし、それによって、高いエネルギー変換効率を得ることが可能となる。特に最適化ソフトウェアの手段によって、バリアスタックの層の適切な幾何学的厚みを選択することが可能となる。
【0037】
別の実施形態においては、そのポリマー層および当該バリアスタックもしくは各バリアスタックが透明である。本発明の文脈においては、一つの層、または複数の層のスタックが、少なくとも意図された用途に有用な波長範囲の中で透明であるならば、それが透明であるとみなす。一例としては、多結晶シリコンに基づく光電池を含む光起電デバイスの場合においては、それぞれの透明層が、400nm〜1200nmの間の波長範囲(これは、このタイプの電池では有用な波長である)内で透明である。特定の一実施形態においては、当該バリアスタックもしくは各バリアスタックが薄膜のスタックであってもよく、その幾何学的厚みは、影響を受けやすい素子への出入り両方で、その多層構成要素を通過する輻射線の透過を、反射防止効果によって最大化されるように設計される。本発明の文脈においては、薄膜とは、1ミクロン未満の厚みを有する層を意味していると理解されたい。
【0038】
一実施形態においては、当該バリアスタックもしくは各バリアスタックには、少なくとも第一の層配列と少なくとも第二の層配列とが含まれ、それらそれぞれが2層の高活性化エネルギー層の間に挟み込まれた保持層からなっており、その高活性化エネルギー層の一つが、第一の層配列と第二の層配列の両方に属している。この構成は、バリアスタックが、2組のサンドイッチ構造に共通する高活性化エネルギー層を有する2組の交互配置されたサンドイッチ構造を含んでいるような場合に相当する。
【0039】
別の実施形態においては、その多層構成要素に、ポリマー層から始まり、有機中間層または有機−無機ハイブリッド中間層によって分離された少なくとも2組のバリアスタックが含まれる。たとえばポリアクリレート層であってよい、この中間層は、二つの機能を有している。第一には、そのことによって、その2組の無機のバリアスタックを機械的に分離して、それによりクラックの伝播を防止することによって、そのスタック全体の機械的挙動を改良することが可能となる。第二には、そのことによって、1組の無機バリアスタックから他の無機バリアスタックへと対応する欠陥が成長することを抑制することが可能となり、その結果、スタック全体において、水蒸気の透過経路の有効長を増大させることが可能となる。
【0040】
本発明の文脈においては、その多層構成要素には、影響を受けやすい素子に向かうように意図されたポリマー層の面に沿った少なくとも1組のバリアスタックが含まれていてもよいし、および/または影響を受けやすい素子から遠ざかる方向に向かうように意図されたポリマー層の面に沿った少なくとも1組のバリアスタックが含まれていてもよい。
【0041】
多層構成要素のポリマー層は、基板、特に以下のものをベースとする層であってよい:ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリメチルメタクリレート、ポリアミド、ポリイミド、フルオロポリマー、たとえばエチレン−テトラフルオロエチレン(ETFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、エチレン−クロロトリフルオロエチレン(ECTFE)、およびフッ素化エチレン−プロピレンコポリマー(FEP)。
【0042】
一変形形態として、その多層構成要素のポリマー層が、硬質または軟質の基板を接着させるための積層中間層であってもよい。このポリマー積層中間層は、特に以下のものをベースとする層であってよい:ポリビニルブチラール(PVB)、エチレン−酢酸ビニル(EVA)、ポリエチレン(PE)、ポリ塩化ビニル(PVC)、熱可塑性ウレタン、アイオノマー、ポリオレフィンベースの接着剤、または熱可塑性シリコーン。
【0043】
本発明の別の主題は、空気および/または湿分の影響を受けやすい素子、たとえば有機発光ダイオードまたは光電池を封入するための、上述の多層構成要素の使用である。
【0044】
図1〜10においては、見やすくする目的で、層の相対的な厚みは厳密には守られていない。
【0045】
図1に示したOLEDデバイス10には、グレージング機能を有する前面基板1と、前面電極5、有機エレクトロルミネセント層のスタック6、および背面電極7を並置させることによって形成されたOLED12とが含まれる。このOLED12が、デバイス10の機能性素子である。前面基板1は、デバイス10から輻射線が抜き出される側に設置し、それは、透明なポリマーから、特に、一例としては、25ミクロン〜175ミクロンの間の幾何学的厚みを有するポリエチレンテレフタレート(PET)またはポリエチレンナフタレート(PEN)から作られている。いくつかの実施形態においては、基板1の厚みは、少なくとも25ミクロン、たとえば少なくとも50ミクロン、少なくとも75ミクロン、少なくとも100ミクロン、またはさらには少なくとも150ミクロンとすることができる。別の実施形態においては、基板1の厚みが、200ミクロン以下、たとえば175ミクロン以下、または150ミクロン以下である。
【0046】
前面電極5には、透明導電性コーティング、たとえばスズをドープしたインジウム酸化物(ITO)をベースとするもの、または銀の層を有するスタックが含まれる。有機物層6のスタックには、それら自体も電子注入層とホール注入層との間に挟み込まれている、電子輸送層とホール輸送層との間に挟み込まれた中央のエレクトロルミネセント層が含まれる。背面電極7は、特にそのOLEDデバイス10がTCOで作られて、前面放出と背面放出の両方であるような場合には、導電性材料、特に銀またはアルミニウムタイプの金属系材料で作られている。有機物層6ならびに電極5および7は、影響を受けやすい層であって、空気または湿分への曝露の影響で、それらの性質が劣化しやすい。特に水蒸気または酸素の存在下では、有機物層6の発光特性ならびに電極5および7の導電性能が劣化する場合がある。
【0047】
外部環境条件に曝露させたときに、それらの影響を受けやすい層を保護する目的で、デバイス10には、前面基板1と前面電極5との間に挿入されたバリアスタック2が含まれる。その中でバリアスタック2が、OLEDデバイスの内側に向くようにされている基板1の面1Aに対向するように配置されている、重ね合わせた基板1/バリアスタック2の組合せは、多層構成要素11を形成しているが、これは
図3に拡大して示されている。実際のところ、バリアスタック2の層は、ポリマー基板1の面1Aの上に、特にマグネトロンスパッタリング法によって、連続的に蒸着されている。前面電極5、有機物層6、および背面電極7は、後工程で蒸着される。
【0048】
この実施形態においては、バリアスタック2は、3層の透明薄層21、22、23のスタックからなっているが、それには、2層の高活性化エネルギー層21および23の間に挟み込まれた保持層22が含まれる。本発明においては、バリアスタック2が、それらの層への汚染化学種の移行、特に水蒸気の移行を制限し遅らせることによって、影響を受けやすい層5、6、7を保護するのに役立っている。いくつかの実施形態においては、そのバリアスタック2も最適化して、基板1と前面電極5との界面での反射防止効果により、OLED12から輻射線を良好に抜き出せるようになっている。OLED12によって放射される輻射線のロスは、基板1と前面電極5の構成材料の屈折率に差があるために、この界面で反射によって生じる場合がある。しかしながら、薄層21、22、23で交互に屈折率に高低をつけ、それらの層に適切な幾何学的厚みを与えることによって、バリアスタック2が干渉フィルターの役割を果たし、基板1と前面電極5との界面における反射防止機能を提供する。バリアスタック2の層のこれら適切な幾何学的厚みは、特に、最適化ソフトウェアを使用して選択することができる。
【0049】
図2には、薄膜太陽光電池モジュール20が
図1の多層構成要素11を備えている場合を示している。多層構成要素11のポリマー基板1が、モジュール20の前面基板を形成し、それが、太陽輻射線がこのモジュールの上に入射される側に位置しており、バリアスタック2は、モジュールの内側の方向に向かっている。モジュール20にはさらに、公知のように、支持機能を有する背面基板18が含まれるが、それは、透明であっても透明でなくてもよいが、適切な材料から作られている。
【0050】
背面基板18は、モジュール20の内側に向かったその面の上、すなわちそのモジュールに太陽輻射線が入射する側の上に、導電層17を担持しているが、それが、モジュール20の光電池13の背面電極を形成している。一例としては、層17が金属層であり、特に銀またはアルミニウムから作られている。背面電極を形成している層17の上には、太陽エネルギーを電気エネルギーに変換させるのに適した非晶質シリコンをベースとする吸収剤層16がある。吸収剤層16そのものの上には、湿分−影響を受けやすい導電層15があるが、それはたとえば、アルミニウムをドープされた酸化亜鉛(AZO)をベースとしていて、電池13の前面電極を形成している。したがって、モジュール20の光電池13は、層15、16および17のスタックによって形成されている。
【0051】
OLEDデバイス10の場合と同様に、モジュール20の中に組み込まれている多層構成要素11は、その下にある影響を受けやすい層15、16および17を、それらの層への汚染化学種の移行を制限し、遅らせるバリアスタック2によって効果的に保護することと、モジュール20の外側から吸収剤層16の中への輻射線の伝達を最適化させること、の両方に役立っている。
【0052】
図4に示した、多層構成要素の第二の実施形態においては、第一の実施形態の素子に類似の素子には、同一の参照番号に100を加えてある。この第二の実施形態に従う多層構成要素111は、空気および/または湿分の影響を受けやすい素子、たとえば光電池モジュールまたはOLEDデバイスを含むデバイスを装備することを目的としている。多層構成要素111には、透明ポリマー、特に、たとえば数百ミクロンの幾何学的厚みを有するポリエチレンテレフタレート(PET)またはポリエチレンナフタレート(PEN)から作られた基板101、および影響を受けやすい素子から離れる方向へ向けられた基板の面101Bの上のバリアスタック102が含まれる。したがって、この多層構成要素111は、そのバリアスタックが、影響を受けやすい素子から離れる方向へ向けられた基板の面の上に置かれていて、影響を受けやすい素子の方向に向けられた基板の面の上には置かれていないという点で、第一の実施形態の多層構成要素11とは異なっている。
【0053】
第一の実施形態の場合と同様に、そのバリアスタック102は、3層の薄い透明層121、122、123のスタックからなっており、それには、2層の高活性化エネルギー層121と123との間に挟み込まれた保持層122が含まれている。本発明においては、バリアスタック102が、汚染化学種、特に水蒸気の移行を制限し、遅らせるのに役立つ。一実施形態においては、そのバリアスタック102はさらに、バリアスタック102がポリマー基板101と空気との界面において反射防止機能を与えるのに適した、層121、122、123の幾何学的厚みおよび屈折率を有しているように設計されている。この界面にバリアスタック102が存在していることが、基板101の構成ポリマー材料の間で屈折率において大きな違いがあるためにこの界面で高レベルの反射が存在しているような場合に、この多層構成要素を通過する輻射線の伝送を最大化させるのに一段と有効である。
【0054】
図5に示した、多層構成要素の第三の実施形態においては、第一の実施形態の素子に類似の素子には、同一の参照番号に200を加えてある。この第三の実施形態に従う多層構成要素211は、空気および/または湿分の影響を受けやすい素子、たとえば光電池モジュールまたはOLEDデバイスを含むデバイスを装備することを目的としている。この多層構成要素211には、透明ポリマー、特に、たとえば、数百ミクロンの幾何学的厚みを有するポリエチレンテレフタレート(PET)またはポリエチレンナフタレート(PEN)から作られた基板201が含まれるが、ただし、それが、2組の3層バリアスタック202および202’(それぞれ、影響を受けやすい素子の方向に向けられた基板201の面201Aの上、および影響を受けやすい素子から離れる方向へ向けられた基板201の面201Bの上に蒸着されている)を含んでいる点で、前の実施形態の多層構成要素11および111とは異なっている。
【0055】
それら2組のバリアスタック202および202’のそれぞれが、3層の透明薄層221、222、223、または221’、222’、223’のスタックであって、それぞれ、2層の高活性化エネルギー層221、221’と223、223’との間に挟み込まれた保持層222、222’を有している。2組のバリアスタックを有する多層構成要素211は、その下にある影響を受けやすい層を汚染化学種、特に水蒸気から効果的に保護し、多層構成要素と空気との間の界面、および多層構成要素とその中で多層構成要素が一体化されているデバイスの下側層との間の界面の両方で、輻射線の反射を最小化している。
【0056】
図6および7に示した多層構成要素の第四の実施形態においては、第一の実施形態の素子と類似の素子には、同一の参照番号に300を加えてある。
【0057】
図6に示した太陽光電池モジュール320は、その吸収剤層316が黄銅鉱化合物、特にCISまたはCIGSをベースとしている点で、
図2のモジュール20とは異なっている。公知のように、その吸収剤がシリコンまたはテルル化カドミウムをベースとしている薄膜光電池モジュールは、スーパーストレートモード(superstrate mode)、すなわち前面基板から始めてデバイスを構成する層を連続的に蒸着させることによって製造されるが、それに対して、その吸収剤が黄銅鉱化合物をベースとしている薄膜光電池モジュールは、サブストレートモード(substrate mode)、すなわち、背面基板の上に電池を構成する層を連続的に蒸着させることによって製造される。次いで、従来法に従って、モジュールの前面電極と前面基板との間に位置するポリマー中間層を使用して積層することによって、黄銅鉱吸収剤を有するモジュールの組み立てを実施する。
【0058】
図6においては、その「太陽光電池モジュール320には、ガラスまたは透明ポリマーのいずれかで作製した前面基板301が含まれる。モジュール320にはさらに、モジュール320の内側に向かう方向に向けられた面の上に、モジュールの光電池313の背面電極を形成する導電層317を担持している背面基板318が含まれる。一例としては、層317が、モリブデンをベースとしている。
【0059】
背面電極を形成する層317上に、黄銅鉱化合物、特にCISまたはCIGSをベースとする吸収剤層316がある。吸収剤層316そのものの上には、ドープされていない本来のZnOの層(図示せず)と場合によっては組み合わされた硫化カドミウムCdSの層(これも図示せず)と、次いで、電池313の前面電極を形成する、たとえばアルミニウムをドープされた酸化亜鉛(AZO)をベースとする湿分−影響を受けやすい導電層315とがある。このようにして、モジュール320の光電池313は、層315、316および317のスタックによって形成される。
【0060】
前面基板301と背面基板318との間のモジュール320の機能層を接着するように設計されている、EVAで作られているポリマー積層中間層304は、電極315の上、前面基板101側に位置している。一変形形態として、その積層中間層304を、PVBまたは適切な性質を有する各種のその他の材料で作ってもよい。積層中間層304の中に貯蔵される可能性がある湿分から、湿分の影響を受けやすい層であるAZO層315を保護するために、モジュール320には、層304と315との間に挟み込まれたバリアスタック302が含まれている。
【0061】
積層中間層304とバリアスタック302とが重なりあって多層構成要素311を形成し、その中でバリアスタック302が、モジュールの内側に向かう方向に向けられている層304の面304Aに対向して位置している。第一の実施形態におけるように、バリアスタック302は、3層の透明な薄層321、322、323のスタックからなっており、これには、2層の高活性化エネルギー層321と323との間に挟み込まれた保持層322が含まれ、ここで、スタック302のそれぞれの薄層の幾何学的厚みが光学的な観点から、EVA積層中間層304と前面電極を形成しているAZO層315との間の界面における反射防止効果が得られるように最適化されている。この例においては、バリアスタック302の寄与により達成することが可能な反射の減少が、積層中間層とAZOとの間の屈折率の差が大きいために、特に大きいことに注目されたい。
【0062】
図7は、エレクトロクロミックデバイス330が、
図6の多層構成要素311を備えている場合を示している。
図7においては、
図6におけるのと類似の素子には、同一の参照番号が付けられている。デバイス330には、各種適切な透明材料で作られた、二つの基板301’および318’が含まれている。エレクトロクロミック系314は、基板301’と318’との間に位置している。そのエレクトロクロミック系314は、各種適切なタイプであってよい。それは特に、その中で2層の鉱物質エレクトロクロミック層が有機電解質によって分離されているハイブリッドエレクトロクロミック系と呼ばれているものであってもよいし、あるいはその中でエレクトロクロミック層および電解質が鉱物質層である全ソリッドステートエレクトロクロミック系であってもよい。
【0063】
そのタイプとは関係なく、そのエレクトロクロミック系314には、基板318’から始めて順に、透明電極317’(特にこれは、TCOで作られていてもよい)、エレクトロクロミック活性層のスタック316’、および第二の透明電極315’(これもまた、TCOで作られていてもよい)が含まれている。多層構成要素311のポリマー積層中間層304が、電極315’の上、基板301’に対向する位置にあり、多層構成要素311のバリアスタック302が、層304と315’との間に挟み込まれて、層315’を保護するようになっている。
【0064】
非限定的な一例として、上述の四つの実施形態において、それぞれのバリアスタックに、マグネトロンスパッタリング法によって蒸着された次の連続層が含まれている:Si
3N
4/ZnO/Si
3N
4。
【0065】
上述の実施形態からも明らかなように、水蒸気を保持するための少なくとも1組のサンドイッチ構造を有するバリアスタックを含む、本発明による多層構成要素によって、空気または湿分への曝露によってもたらされるいかなる劣化に対しても、より大きい抵抗性を有するデバイスを得ることが可能となった。そのバリアスタックを最適化させることが可能であるので、デバイスの活性層を出入りする輻射線の透過を妨害することなく、この改良された抵抗性が得られる。
【0066】
図8〜10には、バリアスタックの構造のために可能な、三つの変形形態が示されている。
【0067】
図8に示された変形形態においては、そのバリアスタック402には、相互に交錯された2組のサンドイッチ構造が含まれており、高活性化エネルギー層423がその2組のサンドイッチ構造で共有されている。より詳しくは、バリアスタック402が、層421〜425の5層のスタックからなっていて、これには2層の保持層422および424と、3層の高活性化エネルギー層421、423および425が含まれ、ここでそれぞれの保持層、422および424がそれぞれ、2層の高活性化エネルギー層の421と423、ならびに423と425との間にそれぞれ挟み込まれている。
【0068】
図9に示した変形形態においては、そのバリアスタック502に、2組の重ね合わせたサンドイッチ構造が含まれている。より詳しくは、そのバリアスタック502が、層521〜526の6層のスタックからなっていて、これには、2層の保持層522および525、ならびに4層の高活性化エネルギー層521、523、524および526が含まれ、ここで、それぞれの保持層522および525が、2層の高活性化エネルギー層521と523、および524と526の間にそれぞれ挟み込まれている。
【0069】
図10に示した変形形態においては、2組のバリアスタック602および602’が重ね合わされ、たとえばポリアクリレート層のような有機中間層603によって分離されている。この例においては、その2組のバリアスタック602または602’が、3層のスタックからなっていて、それぞれ、2層の無機高活性化エネルギー層621と623または621’と623’の間に挟み込まれた無機保持層622または622’を含んでいる。その有機中間層603は、スタック全体の機械的挙動を改良し、スタック全体における水蒸気透過経路の有効長を増大させるのに役立っている。
【実施例】
【0070】
ポリエチレンテレフタレート製のフレキシブルな基板の上に蒸着され、その基板(本明細書では「PET」で表す)のバリア蒸着表面上に0.125mmの幾何学的厚みの界面層を有するバリアスタックの例を、以下の表1に示す。一実施形態においては、その界面層が、約1〜10ミクロン、好ましくは4〜5ミクロンの間の厚みを有する、UV硬化させたアクリレート層である。その界面層が、ポリエチレンテレフタレートの表面を平坦化および平滑化させている。
【0071】
表1に示したスタックの性質は、以下の通りである:
− TL:%光線透過率(可視光域)、測定条件;65光源/観察角度2度;
− RL:%光線反射率(可視光域)、測定条件;65光源/観察角度2度;
− A:%吸光度(可視光域):ここで、
TL+RL+A=1;
− WVTR(水蒸気移行速度):水蒸気透過速度(単位:g/m
2・日)、測定;MOCON AQUATRANシステムを使用、37.8℃、相対湿度100%、8時間サイクル[注意:MOCONシステムの検出限界は5×10
−4g/m
2・日である]。
【0072】
【表1】
【0073】
本発明による実施例1においては、そのバリアスタックには、50nmの幾何学的厚みを有する2層のSi
3N
4層の間に挟み込まれた、50nmの幾何学的厚みを有する中央のZnO層が含まれている。
【0074】
一方では、むき出しの状態にある0.125mmの幾何学的厚みを有するPET標準基板における水蒸気透過のための活性化エネルギーと、他方では、例1の場合と同じ条件でその基板の上に蒸着された50nmの幾何学的厚みを有するSi
3N
4層を用いてコーティングされた、0.125mmの幾何学的厚みを有するPET標準基板における水蒸気透過のための活性化エネルギーとを、先に説明したように、MOCONシステムを使用し、各種の温湿度条件でWVTR測定を実施することにより求めた。Si
3N
4層を用いてコーティングされたPET標準基板の活性化エネルギーと、むき出しであるPET標準基板の活性化エネルギーとの差が、20kJ/molよりも大きいことが見出された。
【0075】
例3においては、PET基準物質、50nmのZnO層を用いてコーティングされたPET基準物質、および50nmのSi
3N
4層を用いてコーティングされたPET基準物質について、水蒸気透過のための活性化エネルギー(E
a(wv))を測定した。それらの結果を表2に示す。
【0076】
【表2】
【0077】
水蒸気透過のための活性化エネルギーにおける差は、PET基準物質における活性化エネルギーよりも、50nmのSi
3N
4層では、20kJ/molより大、より詳しくは77.9kJ/molの差であり、50nmのZnO層では20kJ/mol未満、より詳しくは14.9kJ/molの差であることが見出された。
【0078】
さらに、0.125mmの幾何学的厚みを有するPET標準基板の上に、例1の場合と同じ蒸着条件下で蒸着させた50nmの幾何学的厚みを有するSi
3N
4層の中へ拡散する水蒸気の量の測定を、MOCONシステムを使用して37.8℃、相対湿度100%で、時間を変えて実施した。同様にして、0.125mmの幾何学的厚みを有するPET標準基板の上に、例1の場合と同じ蒸着条件下で蒸着させた50nmの幾何学的厚みを有するZnO層の中へ拡散する水蒸気の量の測定を、MOCONシステムを使用して37.8℃、相対湿度100%で、時間を変えて実施した。PET標準基板上の中央のZnO層中での水蒸気の有効拡散率は、むき出しであるPET標準基板中での水蒸気拡散率よりもいずれも厳密に低く、PET標準基板の上のSi
3N
4層中での有効水蒸気拡散率よりも厳密に低いということが見出された。
【0079】
比較例2においては、そのバリアスタックには、50nmの幾何学的厚みを有する2層のSnZnO層の間に挟み込まれた、50nmの幾何学的厚みを有する中央のSi
3N
4層が含まれている。
【0080】
例2の場合と同じ条件下で基板の上に蒸着された、50nmの幾何学的厚みを有するSnZnO層を用いてコーティングされたPET標準基板の活性化エネルギーと、むき出しであるPET標準基板の活性化エネルギーとの差を、先に例1の場合に述べたようにして、求めた。この場合の活性化エネルギーの差が、20kJ/mol未満であることが見出された。
【0081】
例1および2のいずれでも、良好な光透過率(80%より大)および低い吸光度が得られた。いずれの場合でも、最終的なデバイスにおける、たとえばOLEDデバイスの場合におけるバリアスタックに対して設ける層の性質、ならびに使用する有機物層の厚みおよびタイプを組み入れることによって、バリアスタックの光学的性質をもっと微細に調節することも可能であろう。
【0082】
さらに、本発明による実施例1のバリアスタックによって、比較例2のバリアスタックのWVTRよりも、10倍も良好なWVTRを達成することも可能であるということも判るであろう。
【0083】
表1に記載の例のいずれにおいても、マグネトロンスパッタリング法によってそれらの層を蒸着した蒸着条件は次の通りである。
【0084】
【表3】
【0085】
本発明が、記述し、示した例に限定される訳ではない。
【0086】
特に、上述の例においては、当該バリアスタックもしくは各バリアスタックが透明である。いくつかの実施形態においては、少なくとも1組のバリアスタックを含む多層構成要素は、D65光源/観察角度2度の条件下において、少なくとも75%、たとえば少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも92%、またはさらには少なくとも94%の透明度を有している。一変形形態として、本発明による多層構成要素の少なくとも1組のバリアスタックが透明である必要はなく、特にその多層構成要素が、前面のみから放射する光電池またはOLEDの背面封入のため、または環境条件の影響を受けて劣化しやすいが、透明度条件は要求されていない素子の前面および/または背面封入のために使用される場合には、透明である必要はない。
【0087】
さらに、多層構成要素の当該バリアスタックもしくは各バリアスタックには、いかなる数の、3層以上の重ね合わせた層が含まれていてもよく、それらの層の化学的組成および厚みが、上述のものとは異なっていることもあり得る。バリアスタックのそれぞれの層は、金属の薄膜、または特にMO
x、MN
yもしくはMO
xN
yタイプの化学組成を有する酸化物、ニトリドもしくはオキシニトリドの薄膜であって、場合によっては水素化、炭酸化もしくはドープされていてもよいが、ここでMは、たとえばSi、Al、Sn、Zn、Zr、Ti、Hf、BiおよびTaまたはそれらの合金から選択される金属である。バリアスタックの層の所定の化学組成に対しては、それらの層のそれぞれの幾何学的厚みは、たとえば最適化ソフトウェアの手段により、その多層構成要素を通過する輻射線の透過率が最大になるように選択される。
【0088】
さらに、多層構成要素の層がポリマー層の上に蒸着される場合には、たとえばアクリル系またはエポキシ樹脂タイプまたは有機−無機ハイブリッドタイプの有機界面層が、特に平滑化または平坦化の機能を与える目的で、ポリマー層の上に予め置かれていてもよい。
【0089】
最後に、本発明による多層構成要素は、先に記述し示したOLED、光電池およびエレクトロクロミックデバイスに限定されることなく、空気および/または湿分の影響を受けやすい素子を含む各種のタイプのデバイスにおいて使用することができる。特に、本発明は、薄膜光電池を封入するために適用することが可能で、その吸収剤層が、非晶質もしくは微晶質ケイ素をベースとするか、またはテルル化カドミウムをベースとするか、またはたとえばCISもしくはCIGSのような黄銅鉱化合物をベースとする薄膜であってもよい。本発明はさらに、その有機吸収剤層が、特に環境条件の影響を受けやすい有機光電池を封入するため、またはp/n接点を形成する多結晶もしくは単結晶シリコンウェーハを含む光電池を封入するためにも適用することができる。本発明はさらに、感光性顔料を含むGraetzel電池(DSSC(色素増感太陽電池)とも呼ばれる)を作製するモジュールにも適用可能であるが、これの場合には、湿分に曝露させると、電極の劣化は別として、電解質の機能不全を起こして、望ましくない電気化学的反応の原因となる。本発明を適用することが可能な多層電子デバイスのその他の例としては以下のものが挙げられる:その能動部品が電極間に印加された電圧に応じて移動することが可能な帯電した顔料を含む、電子ディスプレイデバイス;ならびに、その能動部品が誘電体の間に挟み込まれた能動媒質を含み、ここで、その能動媒質がホストマトリックスとして機能する結晶格子から構成されている無機エレクトロルミネセントデバイス、特に、ルミネセンスを発生させる硫化物または酸化物、およびドーパント、たとえばZnS:MnもしくはSrS:Cu,Agをベースとするもの。
【0090】
ポリマー層および少なくとも1組の多層バリアスタックを含む、本発明による多層構成要素を組み立てるための方法には、そのバリアスタックの層を薄膜蒸着させることが含まれる。それらの層を蒸着させるための、可能な技術の一つは、マグネトロンスパッタリング法である。
【0091】
このプロセスにおいては、高真空中で、蒸着させる化学元素を含むターゲットの側でプラズマを発生させる。プラズマの活性種が、ターゲットに衝突して、前記化学元素を分裂させ、それが、基板の上に蒸着されて、所望の薄膜が形成される。このプロセスは、ターゲットから分裂した元素とプラズマの中に含まれる気体との化学反応から生ずる物質でその層が作製される場合には、「反応性(reactive)」プロセスと呼ばれる。このプロセスの大きな利点は、単一でかつ同一のラインで、各種のターゲットの下に基板を連続して通過させることによって、極めて複雑な多層スタックを蒸着させることが可能となるところにある。
【0092】
スパッタリング法によれば、パラメーター、たとえば蒸着チャンバ中の圧力、出力、および反応性ガスの性質および量を変更することによって、バリアスタックのある種の物理化学的特性、特に密度、化学量論および化学的組成を変化させることが可能となる。
【0093】
バリアスタックの層を蒸着させるためには、マグネトロンスパッタリング法以外の蒸着技術、特に化学蒸着法(CVD)、特にプラズマ化学蒸着法(PECVD)、原子層蒸着法(ALD)および蒸発法も考えられる。
【0094】
多層スタックの層は必ずしも、ポリマー層の上に蒸着しなければならない訳ではないことに注意されたい。したがって、一例としては、スーパーストレートモードで製造される
図1および2に示したデバイスの場合においては、そのバリアスタックの薄膜は、ポリマー基板1の上に連続的に蒸着されるが、それに対して、サブストレートモードで製造される
図6および7に示したデバイスの場合においては、そのバリアスタックの薄膜は、電極315の上に連続的に蒸着され、その後の工程で、ポリマー積層中間層がそのバリアスタックに加えられる。