特許第5886938号(P5886938)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5886938
(24)【登録日】2016年2月19日
(45)【発行日】2016年3月16日
(54)【発明の名称】結晶成長装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   C30B 29/48 20060101AFI20160303BHJP
【FI】
   C30B29/48
【請求項の数】16
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2014-503212(P2014-503212)
(86)(22)【出願日】2012年4月3日
(65)【公表番号】特表2014-511818(P2014-511818A)
(43)【公表日】2014年5月19日
(86)【国際出願番号】GB2012050746
(87)【国際公開番号】WO2012136990
(87)【国際公開日】20121011
【審査請求日】2014年12月26日
(31)【優先権主張番号】1105958.1
(32)【優先日】2011年4月8日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】513066122
【氏名又は名称】クロメック リミテッド
【氏名又は名称原語表記】KROMEK LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100136858
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100179589
【弁理士】
【氏名又は名称】酒匂 健吾
(72)【発明者】
【氏名】マックス ロビンソン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン トムリンソン ムリンズ
【審査官】 田中 則充
(56)【参考文献】
【文献】 特表2009−520676(JP,A)
【文献】 特開平09−223672(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C30B1/00−35/00
C23C16/00−16/56
H01L21/205
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
気相結晶成長装置であって、
少なくとも1つのソース容積部を画定する少なくとも1つのソースモジュール、少なくとも1つの成長容積部を画定する少なくとも1つの成長モジュール、及び少なくとも1つのマニホルド容積部を画定する少なくとも1つのマニホルドモジュールを有し、1つ以上のソースモジュール、マニホルドモジュール及び成長モジュールが協同で各ソース容積部と成長容積部との間にフローリストリクタを含む流体的に連続した外囲器容積部を画定するように構成された外囲器アセンブリと、
1つ以上のこのような外囲器アセンブリを格納する真空容器と、
前記真空容器を排気するためのエバキュエータと、
関連するフローリストリクタの前記ソース容積部側に位置し、選択的に開放可能に構成され、各ソース容積部と関連する、前記外囲器容積部と前記真空容器との間の流体連通路と、
前記流体連通路を選択的に制限するように構成された閉鎖機構と、
を備え、
前記流体連通路及び閉鎖機構は、関連するソースフローリストリクタのソース容積部側の前記外囲器容積部の各部分を取り囲むモジュールの壁に設けられた、取り外し可能に挿入可能な閉鎖構成部を有する開口部に設けられており、
また、取り外し可能に挿入可能な閉鎖構成部は、前記ソースフローリストリクタの成長容積部側の前記外囲器容積部の部分を取り囲むモジュールの壁に設けられており、
さらに、各取り外し可能に挿入可能な閉鎖構成部は、前記モジュールの壁に開口部を形成するソケット構成部に取り外し可能に且つ実質的に気密に受け入れるように構成されたプラグを備える、
装置。
【請求項2】
気相結晶成長装置であって、
少なくとも1つのソース容積部を画定する少なくとも1つのソースモジュール、少なくとも1つの成長容積部を画定する少なくとも1つの成長モジュール、及び少なくとも1つのマニホルド容積部を画定する少なくとも1つのマニホルドモジュールを有し、1つ以上のソースモジュール、マニホルドモジュール及び成長モジュールが協同で各ソース容積部と成長容積部との間にフローリストリクタを含む流体的に連続した外囲器容積部を画定するように構成された外囲器アセンブリと、
1つ以上のこのような外囲器アセンブリを格納する真空容器と、
前記真空容器を排気するためのエバキュエータと、
関連するフローリストリクタの前記ソース容積部側に位置し、選択的に開放可能に構成され、各ソース容積部と関連する、前記外囲器容積部と前記真空容器との間の流体連通路と、
前記流体連通路を選択的に制限するように構成された閉鎖機構と、
を備え、
前記流体連通路及び閉鎖機構は、前記外囲器容積部を形成するモジュールの1つ以上が選択的に組み立て及び全体から分解できるように構成することで提供される、
装置。
【請求項3】
前記流体連通路及び閉鎖機構は、関連するソースフローリストリクタのソース容積部側の前記外囲器容積部の各部分を取り囲むモジュールの壁に設けられた、取り外し可能に挿入可能な閉鎖構成部を有する開口部に設けられており、
また、取り外し可能に挿入可能な閉鎖構成部は、前記ソースフローリストリクタの成長容積部側の前記外囲器容積部の部分を取り囲むモジュールの壁に設けられており、
さらに、各取り外し可能に挿入可能な閉鎖構成部は、前記モジュールの壁に開口部を形成するソケット構成部に取り外し可能に且つ実質的に気密に受け入れるように構成されたプラグを備える、請求項2記載の装置。
【請求項4】
前記ソースモジュールは、前記関連するフローリストリクタから離して配置されたソースゾーンを画定し、
前記外囲器容積部と前記真空容器との間の流体連通路は、前記ソースゾーンと前記関連するフローリストリクタとの間に位置する前記外囲器容積部と前記真空容器との間の直接流体連通をもたらす、請求項1−3のいずれかに記載の装置。
【請求項5】
前記フローリストリクタの前記成長容積部側に位置し、選択的に開放可能に構成された前記外囲器容積部と前記真空容器との間の流体連通路と、
前記流体連通路を選択的に制限するように構成された閉鎖機構と、
をさらに備える、請求項1−4のいずれかに記載の装置。
【請求項6】
前記成長モジュールは、前記関連するフローリストリクタから離して配置された成長ゾーンを画定し、
前記外囲器容積部と前記真空容器との間の流体連通路は、前記成長ゾーンと前記フローリストリクタとの間に位置する前記外囲器容積部と前記真空容器との間の直接流体連通をもたらす、請求項1−5のいずれかに記載の装置。
【請求項7】
前記外囲器容積部と前記真空容器との間の前記流体連通路が前記外囲器の関連部分から前記真空容器への直接フローを可能にするために開放される開放構成、及び
前記流体連通路が前記外囲器の関連部分から前記真空容器への直接フローを制限するために選択的に制限される閉鎖構成、
を択一的に選択的に決定するように構成され、
前記開放構成及び閉鎖構成の切り替えを選択的に可逆的に実行するように構成された機械駆動の閉鎖機構を備える、
請求項1−6のいずれかに記載の装置。
【請求項8】
前記流体連通路及び閉鎖機構は、前記ソースゾーンの上流に排気オリフィスが設けられ、前記ソース材料は加熱時に固化する未固化状態で与えられ、そのため、前記オリフィスは加熱前の排気中には開放され、前記ソース容積部から前記未固化状態のソース材料を通過する流路が与えられるが、前記ソース材料が加熱により固化すると、前記流路が制限されるように、設けられる、請求項1−7のいずれかに記載の装置。
【請求項9】
前記モジュールは、使用前に前記流体的に連続した外囲器の組み立て及び分解を可能にする個別の取り外し可能な構成部として設けられ、
また前記モジュールは、組み立てられたとき、実質的に気密の外囲器容積部をもたらすように実質的に気密に組み立てられるように構成されている、請求項1−8のいずれかに記載の装置。
【請求項10】
前記モジュールは、離間した第1及び第2の端部の間に延在し内部容積部を画定する連続管状容器壁構造を備え、前記端部において隣接するモジュールと流体連通され、及び/又は閉鎖部若しくは部分閉鎖部が設けられ、
また前記モジュールはガラス管を備え、必要な場合に互いに協同するテーパ状のすりガラスシールを用いて隣接するモジュールに連結するように構成されている、請求項1−9
のいずれかに記載の装置。
【請求項11】
前記外囲器容積部は共通の成長ゾーンと連通する複数のソースゾーンを備える、請求項1−10のいずれかに記載の装置。
【請求項12】
気相結晶成長装置を準備する方法であって、
少なくとも1つのソース容積部を画定する少なくとも1つのソースモジュール、少なくとも1つの成長容積部を画定する少なくとも1つの成長モジュール、及び少なくとも1つのマニホルド容積部を画定する少なくとも1つのマニホルドモジュールを有し、1つ以上のソースモジュール、マニホルドモジュール及び成長モジュールが協同して各ソース容積部と成長容積部との間にフローリストリクタを含む流体的に連続した外囲器容積部を画定するように構成された外囲器アセンブリを準備するステップ、
各ソース容積部内にソースゾーンを画定し、その中に成長材料のソースを準備するステップ、
各成長容積部内に成長ゾーンを画定し、必要に応じその中に種結晶を準備するステップ、
1つ以上のこのような外囲器アセンブリを真空容器内に配置し、各外囲器アセンブリが関連するフローリストリクタのソース容積部側の位置に、各ソース容積部と関連する前記外囲器容積部と真空容器との間の流体連通路を与えるように構成されるステップ、
前記真空容器を排気するステップ、
各ソース容積部と前記真空容器との間の前記流体連通を次の成長段階動作のために選択的に制限するように構成された閉鎖機構を操作するステップ、
を備え、
取り外し可能に挿入可能な閉鎖構成部を有する開口部が前記外囲器容積部を取り囲むモジュールの壁に設けられており、
また前記方法は、さらに、
排気段階中に前記真空容器と前記外囲器容積部の該当部分との間の直接流体連通を提供するために前記取り外し可能に挿入可能な閉鎖構成部を取り外すステップ、
及び
排気段階の終了時に成長段階に備えて、前記取り外し可能に挿入可能な閉鎖構成部を前記真空容器と前記外囲器容積部の該当部分との間の直接流体連通が制限されるように挿入するステップを備える、方法。
【請求項13】
気相結晶成長装置を準備する方法であって、
少なくとも1つのソース容積部を画定する少なくとも1つのソースモジュール、少なくとも1つの成長容積部を画定する少なくとも1つの成長モジュール、及び少なくとも1つのマニホルド容積部を画定する少なくとも1つのマニホルドモジュールを有し、1つ以上のソースモジュール、マニホルドモジュール及び成長モジュールが協同して各ソース容積部と成長容積部との間にフローリストリクタを含む流体的に連続した外囲器容積部を画定するように構成された外囲器アセンブリを準備するステップ、
各ソース容積部内にソースゾーンを画定し、その中に成長材料のソースを準備するステップ、
各成長容積部内に成長ゾーンを画定し、必要に応じその中に種結晶を準備するステップ、
1つ以上のこのような外囲器アセンブリを真空容器内に配置し、各外囲器アセンブリが関連するフローリストリクタのソース容積部側の位置に、各ソース容積部と関連する前記外囲器容積部と真空容器との間の流体連通路を与えるように構成されるステップ、
前記真空容器を排気するステップ、
各ソース容積部と前記真空容器との間の前記流体連通を次の成長段階動作のために選択的に制限するように構成された閉鎖機構を操作するステップ、
を備え、
前記外囲器容積部を構成するモジュールの1つ以上が選択的に組み立て及び全体から分解できるように構成されており、
また前記方法は、さらに、
排気段階中に前記モジュールを分解し、それによって前記分解されたモジュールにより画定されていた前記外囲器容積部の部分を真空容器と直接流体連通するように位置させるステップ、及び
排気段階の終了時に成長段階に備えて、前記モジュールを再び組み立て、それによって前記真空容器と前記外囲器容積部の部分との間の直接流体連通を制限するステップを備える、方法。
【請求項14】
取り外し可能に挿入可能な閉鎖構成部を有する開口部が前記外囲器容積部を取り囲むモジュールの壁に設けられており、
また前記方法は、さらに、
排気段階中に前記真空容器と前記外囲器容積部の該当部分との間の直接流体連通を提供するために前記取り外し可能に挿入可能な閉鎖構成部を取り外すステップ、
及び
排気段階の終了時に成長段階に備えて、前記取り外し可能に挿入可能な閉鎖構成部を前記真空容器と前記外囲器容積部の該当部分との間の直接流体連通が制限されるように挿入するステップを備える、請求項13記載の方法。
【請求項15】
排気オリフィスが前記ソースゾーンの上流のソースモジュールに設けられている請求項12−14のいずれかに記載の方法において、
前記方法は、ソース材料が排気段階中加熱されていないときには当該材料を通過するフローを許容するが、成長段階に備えて加熱されるときには本質的に固化してフローを制限する形で、ソース材料を供給するステップを備え、
その結果、各ソース容積部と真空容器との間の選択的な流体連通を構成する閉鎖機構を次の成長段階動作のために操作するステップは、前記成長段階のためにソースを加熱することを備える、方法。
【請求項16】
初期の排気段階において請求項1−11のいずれかに記載の装置を準備するステップと、成長段階における前記装置の次の動作を備え、
該成長段階における前記装置の次の動作は、
ソース材料を適切な蒸発温度に加熱するステップ、
前記成長ゾーン及び該当する場合には種結晶を適切な成長温度に加熱するステップ、
前記ソースゾーンから前記成長ゾーンへの物理気相輸送を促進し、前記成長ゾーンでバルク結晶材料を成長させるために同じ状態を維持するステップ、
を備える、気相結晶成長方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単結晶材料、特に高エネルギー物理学応用のための単結晶半導体材料の気相結晶成長装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
単結晶材料は多数の重要な用途を有する。例えば、テルル化カドミウム(CdTe)及びテルル化カドミウム亜鉛(CZT)のバルク半導体は、特に手荷物検査、医用画像及び宇宙探査に使用されるX線及びガンマ線検出器として有用である。
【0003】
多くの用途において、大きく厚い単結晶を最適な均一性及び最低の不純物で高速に形成し得ることが望ましい。
【0004】
従来、単結晶は、結晶を融液から成長させるブリッジマン法、熱移動法(THM)、勾配固化法(GF)又は他の液相若しくはセルフシーディング(self-seeding)気相結晶成長方法などの直接固化技術を使って形成されている。これらの従来の方法では、高品質の結晶を一貫して形成することが難しく、また25mm又は50mmより大きい直径を有する単結晶を形成することが難しい。特に、これらの既知の結晶形成方法では、転移、サブグレインバウンダリ及び双晶を形成しやすい。高圧ブリッジマン法においては、パイプ形成の潜在的な問題もある。これらの問題はCdTe結晶を形成する際の特定の問題である。亜鉛を含有させてCZTを形成すると、亜鉛は格子を強めるので、これらの問題がある程度軽減されるが、凝固界面に亜鉛が偏析して段階的な軸方向組成プロファイルを生じ得る。しかしながら、CZTの成長にはより高い温度が要求され、これは望ましくない。また、このプロセスは融液内の過剰テルルのために沈殿物及び含有物を形成する傾向がある。テルル含有物は数十ミクロンの大きさにすることができ、これは検出器用途にとって重要である。さらに、各含有物と関連する転移クラウドが存在し、これが結晶からなる検出器の性能に影響を与える。
【0005】
特許文献1は物理気相成長技術を使用する結晶の形成方法を開示している。この方法は、マルチチューブ物理気相輸送(MTPVT)として知られている。この方法によれば、成長ゾーンを画定し、例えばその中に成長すべき材料のシンク又は種結晶を設ける。成長ゾーンにおいて例えばシンク又は種結晶上に結晶を成長させるために、気相材料を成長ゾーンに供給し、材料の核生成に続いて成長を生じさせる。
【0006】
特定の場合には、成長管の成長ゾーンは、所要の元素又は化合物を含む1つ以上のソース管内の1つ以上のソース貯蔵所に、取り外し可能なマニホルド(交差部材という)に組み込まれたフローリストリクタを介して接続される。これはソース貯蔵所から成長ゾーンへの蒸気の輸送を可能にする。結晶成長は、任意選択で、成長管内に位置するペデスタル上の適切なシンク又は種結晶上で行われる。使用中、ソース貯蔵所は、交差部材を介して成長ゾーンへ輸送されるそれぞれの成分の蒸気を生成するために加熱される。
【0007】
成長中、ソースゾーン及び成長ゾーンの温度は独立に制御可能であり、両ゾーンは熱的に絶縁される。従って、ソースゾーンは適切な蒸発温度に、成長ゾーンは適切な成長温度に維持することができる。交差部材は、望ましくない凝縮を防止するためにソース温度より高い温度に維持する必要がある。質量輸送を制御できないほど小さなソース−成長温度差を必要とすることなく制御可能にするために、ソースゾーンと成長ゾーンとの間にフローリストリクタが必要とされる。
【0008】
ソース管、成長管及び交差部材を備える外囲器アセンブリが高真空容器内に配置される。外囲器アセンブリは、使用前に成長プロセス中に維持される比較的高品質の真空に排気される。外囲器アセンブリは、このアセンブリを内包する真空容器への蒸気種の有意な損失を防止するために、成長状態下において十分に気密にする必要がある。これは、一般的に、テーパ状のすりガラスシールを用いて接続される高純度石英製の構成要素を使用することによって達成される。
【0009】
ペデスタルと成長外囲器との間の環状空隙が別のフローリストリクタとして作用し、成長する結晶の上方の圧力を維持してソース材料の損失を比較的小さすることができる。この空隙は、成長段階の準備のために外囲器アセンブリを排気させることもできる。
【0010】
特許文献1に開示されたこのマルチチューブ物理気相輸送プロセスは、より均一で高品質の結晶を一貫して生成することができる。しかしながら、アセンブリを成長温度に加熱する前に、残留空気又は水蒸気がソース材料及び成長する結晶を汚染しないように、外囲器の全内部容積を成長管内の環状流路を経て排気する必要がある。制限された流路が関係していると仮定すると、ペデスタルの上流の容積部、特に他のフローリストリクタとソースとの間の容積部は有効に排気することが難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】欧州特許第1019568号
【発明の開示】
【0012】
本発明の一つの態様によれば、気相結晶成長装置が提供され、該装置は、
少なくとも1つのソース容積部を画定する少なくとも1つのソースモジュール、少なくとも1つの成長容積部を画定する少なくとも1つの成長モジュール、及び少なくとも1つのマニホルド容積部を画定する少なくとも1つのマニホルドモジュールを有し、1つ以上のソースモジュール、マニホルドモジュール及び成長モジュールが協同して、気相結晶成長用装置の動作使用時に、各ソース容積部と成長容積部との間にフローリストリクタを含む流体的に連続した外囲器容積部を画定するように構成された外囲器アセンブリと、
1つ以上のこのような外囲器アセンブリを格納する真空容器と、
前記真空容器を排気するためのエバキュエータと、
関連するフローリストリクタの前記ソース容積部側に位置し、選択的に開放可能、特に使用中における真空容器の排気中に開放し、排気中のソース容積部から真空容器への流路を画定するように構成され、各ソース容積部と関連する、前記外囲器容積部と前記真空容器との間の流体連通路と、
各ソース容積部と真空容器との間の前記流体連通路を、選択的に制限、好ましくは、必要に応じ、特に排気後の使用中に実質的に閉鎖するように構成された閉鎖機構と、
を備える。
【0013】
従って、本装置は、一般に、特許文献1に記載されているマルチチューブ物理気相輸送(MTPVT)のような物理気相輸送結晶成長システムである。本装置は、少なくとも1つのソース容積部及び成長容積部を含む外囲器アセンブリを構成し、この外囲器アセンブリは真空容器に取り囲まれ、使用のために比較的高い真空に排気される。各ソース容積部は少なくとも1つのソースゾーンを含み、このゾーンに結晶ゾーンにおける結晶成長に必要とされる1つ以上の元素又は化合物のソースを供給することができる。成長容積部は少なくとも1つの成長ゾーンを含み、このゾーンにおいて使用時の成長段階中に結晶を成長させることができる。1つ以上のソースモジュール、マニホルドモジュール及び成長モジュールは協同して流体的に連続した外囲器容積部を画定する。外囲器容積部は特に開口部が必要又は要求される場所を除いて実質的に閉鎖される。従って、1つ以上のソースモジュール、マニホルドモジュール及び成長モジュールは外囲器容積部を取り囲む外囲器の部分を構成し、各モジュールは組み立てられたとき協同して外囲器壁を構成するモジュール壁を有する。このような構成において、ソースゾーンは一般に外囲器容積部の第1の端部に位置し、成長ゾーンはそれから遠く離れた第2の端部に位置し、ソース容積部の残部、マニホルド容積部及び成長容積部の残部は一緒に、特許文献1に記載されている一般原則に従って、成長段階中、ソースゾーンと成長ゾーンとの間に、ソースゾーンから成長ゾーンへ蒸気を流すための流路を画定する。
【0014】
フローリストリクタは、ソースゾーンと成長ゾーンとの間の位置、例えばソース容積部内のソースゾーン又はマニホルド容積部の下流側の位置における流路内に設けられる。適切なフローリストリクタは、キャピラリ又は焼結石英ディスクを含む。フローリストリクタは、成長段階中に、質量輸送を制御できないほど小さなソース−成長温度差を必要とすることなく、制御できるようにするために必要とされるが、特許文献1に記載されているような従来のシステムでは、ソースの真空容器への排気が成長ゾーンの下流側の成長モジュール内の開口部を介してのみ行われるために、外囲器容積部の排気中、特にフローリストリクタとソースとの間の部分の排気中に、上述した問題が生じる。
【0015】
本発明によれば、この問題は、少なくとも各ソース容積部と真空容器との間で、関連するソースフローリストリクタの上流側の位置に、外囲器から出る追加の流体連通流路を設けるという独特の方法によって解決される。これらの追加の流路は、従来のシステムで得られる流路の場合より相当高いコンダクタンスの外囲器から出る流路を提供する。これらの追加の流路は選択的に動作可能な閉鎖機構と関連し、この閉鎖機構は、これらの流体連通流路を、真空容器及び外囲器容積部が排気される排気段階と、外囲器容積部内を十分な真空に設定後に行われる次の成長段階との間に、選択的に制限するように構成され、好ましい場合には実質的に閉鎖するように構成される。従って、これらの追加の流路は、排気中に、特に従来のように下流側開口部を介して排気することが難しいソースフローリストリクタの上流側の外囲器領域の排気を促進するために利用することができ、結晶成長を最適化するために所望の比較的高い真空の生成を促進することができるが、成長段階中は閉鎖して、成長段階中の蒸発種の真空容器への漏れ損失を最小にしながら、外囲器内を比較的高い真空に維持することができる。
【0016】
使用前に、真空容器は通常の如くエバキュエータを使って排気され、従って空気は外囲器容積部から除去され、次の結晶成長段階のために外囲器内に所望の比較的高い真空が生成される。しかしながら、外囲器容積部は、従来技術のように、ソース及び成長容積部の間に位置するフローリストリクタの下流側又は成長ゾーン側の開口部を介して排気されるだけではない(上流側又はソース側に高真空を生成することには、難しい問題が伴う)。それどころか、本発明の装置の動作は、排気された真空容器内の外囲器アセンブリの排気段階動作中に前記閉鎖機構が開放構成に設定され、その結果、少なくとも各ソース容積部と真空容器との間の流体連通が、各フローリストリクタのソース容積部側の外囲器容積部の部分と真空容器との間で、関連するフローリストリクタのソース容積部側に位置し、各ソース容積部と関連して設けられた外囲器容積部と真空容器との間の二次流体連通路によって、可能となることを特徴とする。
【0017】
これは、外囲器容積部の各フローリストリクタのソース容積部側の部分と真空容器との間に直接流体連通路を設け、そのフローリストリクタをバイパスさせることによって実行される。これらの二次流体連通路は、外囲器容積部におけるフローリストリクタのソース容積部側の任意の部分の入口又は出口に設けることができ、狭義にはソース容積部から直接流路を設けても、或いはより一般的には、外囲器容積部におけるフローリストリクタのソース容積部側の部分の残部、例えばソース容積部と連通するマニホルダ容積部におけるフローリストリクタのソース側部分を介して流路を設けてもよい。好ましくは、外囲器容積部から出る二次流体連通路はソースと関連するフローリストリクタとの間に設けられる。例えば、よく知られているように、ソースモジュールは、使用中に、ソースが供給されるソースゾーンを関連するフローリストリクタから離して画定することができ、その場合には外囲器容積部と真空容器との間の流体連通路は、ソースゾーンと関連フローリストリクタの間の位置で、外囲器容積部と真空容器の間の直接流体連通を構成することができる。
【0018】
このように、フローリストリクタをバイパスするソース容積部から出る流路が設けられる。これは、例えば特許文献1の場合のように、フローリストリクタの上流のソースゾーンの排気のために使用可能な流路がフローリストリクタ及び成長ゾーンを経由するだけである従来技術の場合に可能な排気中のコンダクタンスよりも相当高い外囲器から出るコンダクタンスを可能にする、排気段階における外囲器からの流路を提供する。従って、排気は、従来の装置で使用されている成長ゾーンの下流の成長モジュールの開口部を経由するだけの場合よりずっと急速に進む。特に、外囲器のフローリストリクタの上流(ソース)側部分の排気がより急速に進み、所望の高品質の真空の生成が促進される。
【0019】
次に、排気された真空容器内の外囲器アセンブリの成長段階動作中において、閉鎖機構は、直接流体連通路を経る材料損失を少なくとも許容できる低いレベルに十分に維持するために、各ソース容積部とフローリストリクタの上流の真空容器との間の二次流体連通路を制限し、好ましくはほぼ完全に閉じる構成に設定される。従って、成長段階動作中、外囲器はそれを取り囲む真空容器への蒸気種の有意な損失を防止するために、成長状態下において十分に気密にすることができる。
【0020】
外囲器アセンブリは次に成長段階において通常の如く動作し、例えば従来の装置で使用されているようにフローリストリクタ及び成長ゾーンの下流の成長モジュールの開口部を通してフローを生じさせる。
【0021】
従って、本発明の装置は、成長段階においては、例えば特許文献1の装置のように通常の如く動作し得るが、排気段階動作においてはより効率よく、例えばより急速に及び/又はより均一な低ベース圧力に排気することができる。本発明の装置によれば、外囲器容積部のフローリストリクタのソース側部分又は各部分と関連する選択的に閉鎖可能な流路を設けることによって、結晶成長前にすべてのゾーンの急速且つ高品質の排気と、結晶成長中、成長ゾーンを通り、出て行くフロー(貫流)を制御及び制限する実質的に気密の外囲器を得るという明らかに相反する要件を見事に満足する。
【0022】
本発明によれば、このような流路及び閉鎖機構は、少なくとも関連するフローリストリクタのソース側の外囲器容積部の部分又は各部分と関連して設けられる。なぜなら、外囲器容積部のこの部分は、排気段階中、フローリストリクタ及び成長ゾーンの下流の成長容積部の開口部を通して排気する従来装置の方法では、排気することが最も難しいためである。説明を簡単にするため、関連するフローリストリクタのソース側を、関連するフローリストリクタの「上流」側とみなし、反対側を「下流」側とみなす。これに関連して、「上流」及び「下流」は成長段階における通常のフロー方向を基準として使用される。また、この方向は、排気段階における排気のフロー方向と必ずしも一致しないことが明らかである。この用語が使用される場合には、適用可能な場合に慣例の成長段階中のフロー方向について言及されることに留意されたい。
【0023】
本発明は、外囲器容積部の他の部分、例えばフローリストリクタの下流の部分、即ちフローリストリクタの成長側の外囲器部分と関連する、従って成長容積部と関連する、他の流体連通路/選択的閉鎖機構を排除するものではない。成長容積部から出るこのような二次流体連通路は、成長サイトとフローリストリクタとの間に位置させるのが好ましい。例えば、よく知られているように、成長モジュールは関連するフローリストリクタから離れて位置する使用中の成長サイトとして作用する成長ゾーンを画定することができ、外囲器容積部と真空容器との間の流体連通路は、成長ゾーンとフローリストリクタの間に位置する外囲器容積部と真空容器との間の直接流体連通路を構成し、この連通路は閉鎖機構によって、例えば排気中の使用において選択的に開放可能に構成され、前記閉鎖機構は、必要に応じ、特に排気後の使用において、成長容積部と真空容器との間の流体連通路を選択的に制限するように、好ましくは実質的に閉じるように構成される。例えば、閉鎖可能な流路及び閉鎖機構は、外囲器容積部と真空容器の間の流体連通路をフローリストリクタと成長ゾーンの間の位置で選択的に閉じるために、フローリストリクタの下流のマニホルド容積部及び/又は成長ゾーンの上流の成長容積部に設けることができる。これも外囲器容積部の排気を支援する。
【0024】
流体連通路/選択的閉鎖機構をソース容積部又は各ソース容積部と関連して設けるのに加えて、外囲器容積部の他の部分と関連して設ける場合には、排気段階動作中及び成長動作中の上述の動作原理が同様に適用される。
【0025】
本発明の装置において選択的に動作可能な閉鎖機構を生成するには特に3つの機構が構想される。
【0026】
最初の2つの例示的機構により具体化される一般原則によれば、二次流路を選択的に開放及び制限/閉鎖するために、例えばユーザ制御の下で機械的に動作し得る可逆的閉鎖機構が構想される。
【0027】
これらの一般原則によれば、本装置は、
上で特定したような外囲器容積部と真空容器との間、特に少なくとも真空容器と、関連するフローリストリクタのソース容積部側に位置する各ソース容積部の部分との間の1つ以上の二次流体連通路が、例えば排気中の使用において、外囲器の関連部分から真空容器への直接フローを可能にするために開放される開放構成、及び
上で特定したような外囲器容積部と真空容器との間の前記1つ以上の二次流体連通路が、外囲器の関連部分から真空容器への直接フローを、例えば成長中の使用において、制限し、好ましくは実質的に阻止するために、選択的に制限され、好ましくは実質的に閉鎖される閉鎖構成、
を択一的に選択的に画定するように構成され、
機械駆動閉鎖機構が前記開放及び閉鎖構成の切り替えを選択的に可逆的に実行するように構成される。
【0028】
閉鎖機構は、例えば圧力容器の外部から適正にシールされた機械的フィードスルーを介して圧力容器の外部(排気された容積部の外)から操作しうるアクチュエータによって、使用中、機械的に駆動される。
【0029】
このように、開放構成では、外囲器容積部の関連部分は開放された二次流路を通して直接排気することができるが、閉鎖構成では、主流路は従来と同様にフローリストリクタ及び成長ゾーンを経て成長モジュールから出るものだけになる。従って、外囲器容積部は、排気段階においては本発明に特有の有利な方法で排気できる一方、次の成長段階においては通常の動作を許容することができる。
【0030】
第1に、取り外し可能に挿入可能な閉鎖構成部を有する開口部を、外囲器容積部を取り囲むモジュールの壁に設けることができる。例えば、少なくとも、取り外し可能に挿入可能な閉鎖構成部を有する開口部は、関連するソースフローリストリクタのソース容積部側に位置する外囲器容積部の部分を取り囲むモジュールの壁に設けることができる。例えば、少なくとも、取り外し可能に挿入可能な閉鎖構成部を有する開口部は、関連するソースフローリストリクタの上流のソースモジュール及び/又はマニホルドモジュールの壁に設けることができる。また、必要に応じ、取り外し可能に挿入可能な閉鎖構成部を有する開口部は、ソースフローリストリクタの成長容積部側の外囲器容積部の部分を取り囲むモジュールの壁に設けることができる。例えば、取り外し可能に挿入可能な閉鎖構成部を有する開口部は、ソースフローリストリクタの下流で成長ゾーンの上流のマニホルドモジュール及び/又は成長モジュールの壁に設けることができる。
【0031】
取り外し可能に挿入可能な閉鎖構成部を取り外すと、開口部が真空容器と外囲器容積の対応部分との間に直接流体連通を提供する。取り外し可能に挿入可能な閉鎖構成部が所定位置にある場合、このフローは制限され、好ましくは実質的に気密なシールが開口部に形成されるため、真空容器と外囲器容積部の対応部分との間の直接流体連通は実質的に制限され、好ましくは本質的にもはや可能ではなくなる。従って、取り外し可能に挿入可能な閉鎖構成部を取り外すと、外囲器容積部の対応部分を直接排気することができるが、取り外し可能に挿入可能な閉鎖構成部を所定の位置にすると、従来と同様に主流路はフローリストリクタ及び成長ゾーンを経て成長モジュールの出口に至るものだけになる。従って、外囲器容積部は排気段階において特有の有利な方法で排気できるが、次の成長段階において通常の動作を許容することができる。
【0032】
可能な実施形態では、取り外し可能に挿入可能な閉鎖構成部は、モジュールの壁に開口部を画定するソケット構成部に取り外し可能に且つ実質的に気密に受け入れるように構成されたプラグを備える。例えば、このプラグはモジュールの壁に開口部を画定する相補形状のソケット構成部に受け入れられるように構成されたテーパ突部を有する。例えば、プラグはガラスプラグとする。例えば、テーパ構成部とソケット構成部が実質的に気密シールをもたらすすりガラス接合部を画定する。
【0033】
開口部の選択的閉鎖は真空容器の外部から実行し得るのが望ましい。それゆえ、各取り外し可能に挿入可能な閉鎖構成部に、開口部からの取り外し及び開口部への挿入を実行するためのアクチュエータを設け、このアクチュエータを、真空容器内の真空を犠牲にすることなく真空容器の外部から操作可能に構成する。
【0034】
第2に、外囲器容積部を形成するモジュールの1つ以上、特に少なくともソースモジュールは、選択的に組み立て及び全体から分解することができ、組み立て時に実質的に気密を保つ接合部を設けるのが好ましい。モジュールを分解すると、それらが画定する外囲器容積部分が真空容器と直接流体連通する位置になる。排気段階において十分な排気フローが可能になる。モジュールを再び組立てると、このフローは成長段階のために制限される。特に好ましくは、各モジュール間の接合部に実質的に気密なシールが形成され、真空容器と外囲器容積部の対応部分との間の直接流体連通が実質的に制限され、本質的にもはや可能ではないようにする。例えば、ソースモジュールを組み立てるとき、その接合点にすりガラス接合部のようなほぼ気密の嵌め合い接合部が形成される。
【0035】
従って、外囲器を分解すると、フローリストリクタの上流の外囲器容積部の部分を直接排気することができるが、外囲器を組み立てると、このとき主流路は従来と同様にフローリストリクタ及び成長ゾーンを経て成長モジュール出口に至るものだけとなる。従って、外囲器容積部は、排気段階において本発明の独特の有利な方法で排気できる一方、次の成長段階において通常の動作を許容することができる。
【0036】
モジュールの選択的組み立て及び分解は真空容器の外部から実行できることが望ましい。それゆえ、モジュールの選択的組み立て及び分解を実行するために、真空容器内の真空を犠牲にすることなく真空容器の外部から操作可能に構成されたアクチュエータをシステムに設けると便利である。
【0037】
第3に、排気オリフィスをソースゾーンの上流のソースモジュールに設けることができる(ここでも、「上流」は成長モードにおける成長フロー方向に対して決まる)。これは、ソース材料の上方の容積部のための追加のポンピング路を提供することができる。成長段階における蒸発のための多くのソース材料は、最初に、加熱時に固化する傾向がある加熱前の未固化の粉末又はこれと同等の状態で与えられる。この未固化の状態では、ソース容積部から、まだ加熱されないで固化してないソース材料を通過する流路が存在するので、オリフィスは加熱前の排気中においては有効である。しかしながら、穴を適切な大きさにするとともにソースヒータを適切な温度勾配にすれば、ソース材料が加熱の間に固化されると、前記流路が制限されるので、加熱中のソース材料の例えば圧密化による固化により、成長動作段階中の損失がソース質量の小部分に低減される。
【0038】
実際上、この第3の代替例における閉鎖機構は、加熱時のソース材料の固有の挙動に基づくものである。これはある意味自己作動型である。適切な選択によって、加熱前に開であるが、加熱後(従って成長中)には、ソース材料により実質的に制限される一方、加熱前(従って排気中)には、ソース容積部と真空容器との間の流路として作用する、オリフィス/材料の組み合わせを提供することができる。
【0039】
原理上、本発明は、上述の機構のいずれか単独若しくはそれらの相互の組み合わせ及び/又は他の選択的に閉鎖可能な二次流路手段との組み合わせを包含する。実際上、上述の第1及び第2の機構も、同様に好ましい例において選択肢とすることができる。実際上、上記の第3の機構も、同様に好ましい例において、唯一の選択的に閉鎖可能な二次流路手段としてよりも、上述の最初の2つの機構の一方又は他方のような別の機構に対して相補的に使用される。
【0040】
選択的に閉鎖可能な二次流路機構が個別の取り外し可能なモジュールの設置を明確に必要とする場合を除いて、本発明は、協同で流体的に連続した外囲器容積部を画定するモジュールの少なくともいくつかが一体構造の一部分を構成する構成配置を排除しない。しかしながら、一般的に、好ましい例では、モジュールは、たとえ流体的に連続した外囲器の組み立て及び分解を本発明による選択的に閉鎖可能な二次流路を提供する手段として使用しなくても、使用前に例えばソース材料をロードするために、流体的に連続した外囲器の組み立て及び分解を可能にする個別の取り外し可能な構成部とする。このようなモジュールは組み立てたとき実質的に気密の外囲器容積部を提供するように、実質的に気密に組み立てられるように構成するのが好ましい。
【0041】
モジュールは、内部容積部を画定する容器壁を備え、例えば離間した第1の端部及び第2の端部の間を延在する連続した管状壁構造を有する細長の管状であり、第1及び第2の端部と隣接モジュールとの流体連通を生じさせ、及び/又は閉鎖又は部分閉鎖部が設けられると便利である。取り外し可能なモジュールを備える実施形態の場合には、隣接モジュールに取り付けられるこのような端部に、好ましくは実質的に気密に組み立て可能に構成された取付け接合部が設けられる。
【0042】
可能な実施形態では、モジュールは、必要な場合に相互に協同するテーパ状のすりガラスシールを用いて隣接モジュールに連結される、例えば高純度の石英ガラス製のガラス管を含み得る。このような実施形態では、ガラス管が真空容器への流路手段として取り外し可能に挿入可能な閉鎖構成部を有する二次開口部とともに設けられる場合には、取り外し可能に挿入可能な閉鎖構成部はテーパ状のガラス栓とし、栓と開口部に同様のすりガラスシールを設けると便利である。
【0043】
各ソースゾーン及び成長ゾーンには、ソースゾーンにおける蒸発、成長ゾーンへの気相輸送、及び成長ゾーンにおける種結晶又はターゲット材料の部分成長結晶等の成長基板上の結晶成長を促進するために、特許文献1に記載されている方法で熱的に分離されたこれらのゾーン内に独立の温度制御手段を設けることができる。
【0044】
種結晶基板は様々な材料から形成することができる。しかしながら、これらの種基板に好ましい材料はシリコン及び砒化ガリウムである。シリコン及び砒化ガリウム基板上に結晶を形成する利点は、これらの基板は優れた機械的強度を有するとともに許容可能な価格で市販されている点にある。この2つは、結晶材料を一貫して基板上に形成するのに役立つ(強度の小さい基板の場合には難しい)とともに、次の処理、使用及び輸送中に形成された材料の完全性を維持するのにも役立つ。
【0045】
このような種基板は結晶材料の所要のサイズに応じて任意の所要のサイズにすることができる。しかしながら、基板は25mmより大きい、好ましくは50mmより大きい、もっとも好ましくは150mm以上の直径を有するものとするのが好ましい。
【0046】
形成される結晶材料は、II―VI族半導体、例えばカドミウムテルル化物類(例えばテルル化カドミウム、テルル化カドミウム亜鉛(CZT)、テルル化カドミウムマグネシウム(CMT)及びそれらの合金)の半導体、例えばCd1-(a+b)MnaZnbTeを含むことができ、ここでa+b<1で、a及び/又はbは0にすることができる。
【0047】
結晶材料はバルク結晶、例えばバルク単結晶として形成するのが好ましい(これに関して、バルク結晶は厚さが500μm以上、好ましくは1mm以上のものを指す)。本発明の装置及び方法の利点は、高品質の大きなバルク結晶材料製品の生成を容易にすることにある。
【0048】
ソース温度(Tsource)及び基板温度(Tsub)は個別に制御される。ソース及び/又は基板温度の変化は、温度差(ΔT)の変化を生じる。例えば、ソース温度を増大させることにより温度差を増大させることによって、全体としての成長速度を増大することができる。
【0049】
一例として、テルル化カドミウムの場合には、典型的には、最低ソース温度は、材料の昇華を保証するため約450℃である。これより低い温度では、ほとんど昇華は起こらない。同様に、テルル化カドミウムの場合には、最低基板温度は約200℃である。成長温度及び昇華温度は蒸着(成長)する材料により決まることがわかる。例えば、ヨウ化水銀の成長温度は約100−150℃であり、昇華温度は約200−300℃である。最低及び最適ソース及び基板温度はそれに応じて変化する。
【0050】
上述したように流体的に連続した外囲器を協同して画定するモジュールは、使用中にソースゾーンから成長ゾーンへの蒸気輸送を行う少なくとも1つの流路を備え、これは特に特許文献1に記載されている物理気相輸送の原理の具体化に好んで使用されている。
【0051】
特に、これらの原理によれば、このように画定された流路又は各流路は、ソースゾーンと成長ゾーンの間の少なくとも2つの位置で直線から偏向し、例えばソースモジュールとマニホルドモジュールとの間の接合部またはその近傍と、マニホルドモジュールと成長モジュールとの間の接合部またはその近傍において、直線から偏向する。この偏向はソース及び成長ゾーン間の熱絶縁を維持するのに役立つ。この熱絶縁はソース及び成長ゾーン間の温度差を保証及び制御するのに役立ち、よって結晶成長の制御に役立つ。
【0052】
直線からの偏向は好ましくは5度以上、より好ましくは45度以上であり、多くの場合、90度に近づけるのが好都合であり、ソースモジュール、マニホルドモジュール及び成長モジュールは協同して、使用時にソースゾーンから成長ゾーンへの蒸気輸送を行うためのU字形流路を画定する。
【0053】
従って、好ましい例では、外囲器容積部を構成するモジュールはソースリム、成長リム、及び第1及び第2のリムを接続する流路を有する略U字形の管状外囲器を画定し、ソースリムはソース材料を収容するように構成され、成長リムは成長を支援するように構成される。ソースフローリストリクタは、第1及び第2のリムの間に設けられる。本発明は複数のこのような第1又は第2のリムを有する構成を許容する。
【0054】
特に好ましい例では、例えばこのようなソースリム及び成長リムを画定するために、互いにほぼ平行に、例えば直立して配置されたソースモジュール及び成長モジュールと、それらの間に延在する交差部材を有するマニホルドモジュールが設けられる。
【0055】
好ましい例では、ソースゾーン及び成長ゾーンは、それぞれソースモジュール及び成長モジュールの互いに最も遠く離れており、マニホルドモジュールから最も遠く離れている端部に配置される。例えば、ソースゾーン及び成長ゾーンはそれぞれソースモジュール及び成長モジュールの下端部に配置され、ソース容積部及び成長容積部の残部がそこからほぼ上方に延在しマニホルドモジュールにより流動的に接合された流路を構成し、それによりソースゾーンから成長ゾーンへの最適な蒸気輸送が提供される。
【0056】
上述のように画定される外囲器容積部は複数のソースゾーンを備えることができ、各ソースゾーンは、蒸気輸送のための流路と関連し、これらの流路は1つに合流して、もしくは合流せずに、単一の成長ゾーンに隣接する共通の、もしくは個別の通路を有する。このようにして、複数のソースゾーンは共通の成長ゾーンの周囲、例えば半径方向又は片側の外方に延在させて、配置することができる。例えば、共通の成長ゾーン内で単結晶を形成するために2つの個別のソースが必要とされる場合には、外囲器容積部は、第1のマニホルド容積部を経て成長容積部に接続された第1のソース材料を含むソース容積部及び第2のマニホルド容積部を経て成長容積部に接続された第2のソース材料を含む他のソース容積部を備える。共通のマニホルドモジュールは、これらのマニホルド容積部を画定することができる。
【0057】
或いはまた、複数のソースゾーンは複数の個別の成長ゾーンと関連するものとし得る。複数の成長ゾーンの包含は、同じ又は異なる組成の複数の結晶の同時成長を可能にする。
【0058】
複数のソース容積部を設ける場合、それらのいずれか又はすべてに独立のフローリストリクタを設けることができる。
【0059】
このような複数のソースゾーンは、各ソースゾーンと関連する独立の温度制御手段により独立に活性化することができ、それによってそれぞれのソースゾーンから蒸気を所要の温度差で順次に又は同時に発生させることができる。加えて又は代わりに、温度プロファイルは、複数のソースを使用中、共通の温度プロファイル内に、互いに対して及び成長ゾーンに対して、所要の温度差を与えるように位置させるような適切な設定を行うことによって、変化させることができる。
【0060】
好ましい実施形態では、複数のソースゾーンは、異なる元素又は化合物のソース材料の組み合わせを収容するように構成することができ、例えば特許文献1に記載されているマルチチューブ物理気相輸送(MTPVT)のように、2元系、3元系又は他の多元系化合物の各元素又は化合物を提供する。
【0061】
ソース及び成長ゾーンは、従来既知のように、ソース材料及び種結晶を、例えば1つ以上のソース材料溜め(リザーバ)及び種材料の結晶溜めの形で備えるように構成すると便利である。1つ以上のソース材料溜めは、使用する処理条件に適合するガラス又は他の適切な表面又はペデスタル上に支持された固相の材料を含み、便利で効率的な蒸発を可能にする。
【0062】
複数のソースが設けられる場合には、蒸着される結晶材料の組成は成長中に変化させることができる。この制御はフローリストリクタの制御によって又はソース及び成長ゾーン間の温度勾配によって達成することができる。一例では、結晶材料は最初低い蒸着速度で蒸着され、その後蒸着は蒸着速度を増加するように制御される。
【0063】
本発明の他の態様によれば気相結晶成長装置を準備する方法が提供され、該方法は、
少なくとも1つのソース容積部を画定する少なくとも1つのソースモジュール、少なくとも1つの成長容積部を画定する少なくとも1つの成長モジュール、及び少なくとも1つのマニホルド容積部を画定する少なくとも1つのマニホルドモジュールを有し、1つ以上のソースモジュール、マニホルドモジュール及び成長モジュールが協同して各ソース容積部と成長容積部との間にフローリストリクタを含む流体的に連続した外囲器容積部を画定するように構成された外囲器アセンブリを準備するステップ、
各ソース容積部内にソースゾーンを画定し、その中に成長材料のソースを準備するステップ、
各成長容積部内に成長ゾーンを画定し、任意選択でその中に種結晶を準備するステップ、
1つ以上のこのような外囲器アセンブリを真空容器内に配置し、各外囲器アセンブリがフローリストリクタのソース容積部側の位置に、各ソース容積部と関連する前記外囲器容積部と真空容器との間の流体連通路を与えるように配置するステップ、
前記真空容器を排気するステップで、それにより前記フローリストリクタのソース容積側の位置に与えられたソース容積部と関連する流体連通路を経て各ソース容積部を少なくとも部分的に直接排気することによって前記外囲器容積部を排気するステップ、
各ソース容積部と前記真空容器との間の前記流体連通を次の成長段階動作のために選択的に制限し、好ましくは実質的に閉じるように構成された閉鎖機構を操作するステップ、
を備える。
【0064】
従って、このように、外囲器容積部は、排気段階中に、成長ゾーンの開口部を通る主流路を経て排気されるだけではない。特にソースゾーンと成長ゾーンの間に設けられるソースフローリストリクタの上流側の外囲器容積部の部分は、フローリストリクタを通る主流路だけでは排気されない(上流側又はソース側を高い真空にすることが困難という問題を伴う)。ところが、本方法は、フローリストリクタのソース容積部側に位置するソース容積部と関連する二次流体連通路を経て各ソース容積部を少なくとも部分的に直接排気するステップを含んでいるので、排気が促進される。特に、上流側、即ちフローリストリクタのソース側の外囲器部分の排気がより急速に進み、所望の高品質の真空の生成が促進される。
【0065】
しかしながら、次の成長動作段階中、フローリストリクタの上流の各ソース容積部と真空容器との間の二次流体連通路は、直接流体連通路を経る材料の損失を許容しうるほど低いレベルに維持するために、制限することができ、好ましくはほぼ完全に閉じることができる。従って、成長動作段階中、外囲器アセンブリは通常の如く動作し、例えばフローはフローリストリクタを経由し、従来の装置で使用されている成長ゾーンの下流の成長モジュールの開口部を経由することとなる。
【0066】
広義では、気相結晶成長装置を準備する本方法は、よく知られた方法による、次の結晶成長に備える排気段階終了までにおける、本発明の第1の態様の装置を動作させる方法である。本方法の好ましい特徴は、装置に関する上述の記載から類推することによって導き出せる。
【0067】
特に、本方法は、排気段階中に、少なくとも各ソース容積部と真空容器との間で関連するソースフローリストリクタの上流の位置に、外囲器からの追加の流路を設けること、排気段階の終了後で成長段階の前に、本発明の第1の態様に関して記載したように、前記流路を選択的に制限し、好ましくは実質的に閉じるように構成された選択的に動作可能な閉鎖機構を設けることを特徴とする。
【0068】
特に、装置に関する上述の記載から類推すると、本方法は、少なくとも関連するフローリストリクタの上流のソース容積部又は各ソース容積部に関連して流路及び閉鎖機構を設けるステップを備えるが、本発明は、外囲器容積部内の他の位置、例えばフローリストリクタの下流の位置に更なる閉鎖機構を設けることを排除しない。適切な位置は本発明の第1の態様に関連する記載から類推することによって理解される。
【0069】
特に、本発明の第1の態様の装置に関する上述の記載から類推すると、本発明の装置において選択的に動作可能な閉鎖を生成するには3つの模範的な機構が構想される。
【0070】
特に、本発明の第1の態様の装置に関する上述の記載から類推すると、最初の2つの模範的な機構により具体化される一般原則は、二次流路を選択的に開放及び制限/閉鎖するために、例えばユーザ制御の下で動作し得る、機械的に動作可能な可逆的閉鎖機構の原則である。
【0071】
これらの一般原則によれば、装置は上述した開放構成及び閉鎖構成を択一的に選択的に画定するように構成され、本方法は、前記開放構成及び閉鎖構成の切り替えを選択的に可逆的に実行するために、機械的に駆動される閉鎖機構を動作させるステップを備える。
【0072】
第1の例では、取り外し可能に挿入可能な閉鎖構成部を有する開口部が外囲器容積部を取り囲むモジュールの壁に設けられる。それから、本方法は、排気段階中に真空容器と外囲器容積部の該当部分との間に直接流体連通を提供するために取り外し可能に挿入可能な閉鎖構成部を取り外すステップ、及び排気段階の終了時に成長段階に備えて、取り外し可能に挿入可能な閉鎖構成部を、真空容器と外囲器容積部の該当部分との間の直接流体連通が例えば実質的に制限されるように、好ましくは実質的に可能ではなくなるように挿入するステップを備える。
【0073】
第2の例では、外囲器容積部を構成するモジュールの1つ以上、特に少なくともソースモジュールが外囲器全体を選択的に組み立て且つ分解できるように構成される。この場合には、本方法は、排気段階中に前記モジュールを分解し、それによって前記モジュールにより画定されていた外囲器容積部の部分を真空容器と直接流体連通する位置にするステップ、及び排気段階の終了時に成長段階に備えて、前記モジュールを再び組立て、それによって真空容器と外囲器容積部の該当部分との間の直接流体連通が例えば実質的に制限されるように、好ましくは実質的に可能ではなくなるようにするステップを備える。
【0074】
第3の例では、排気オリフィスがソースゾーンの上流のソースモジュールに設けられる。本方法は、ソース材料が、排気段階中加熱されないときには当該材料を通過するフロー(貫流)を許容するが、成長段階に備えて加熱されるときには本質的に固化してフローを制限する形で、ソース材料を供給するステップを備える。この場合には、各ソース容積部と真空容器との間の流体連通を選択的に制限、好ましくは実質的に閉じるように構成された閉鎖機構を次の成長段階動作のために操作するステップは、実際にはもともと成長段階のためのソースの加熱に特有なものである。
【0075】
本方法の他の好ましい特徴は、同様に本発明の第1の態様の装置に関して記載した特徴から類推される。
【0076】
本発明のもっと完全な態様においては、気相結晶成長方法は、初期の排気段階において本発明の第2の態様に従って装置を準備するステップを備え、成長段階における前記装置の次の動作は、
ソース材料を適切な蒸発温度に加熱するステップ、
成長ゾーン及び該当する場合には種結晶を適切な成長温度に加熱するステップ、
ソースゾーンから成長ゾーンへの物理気相輸送を促進し、前記成長ゾーンでバルク結晶材料を成長させるために同じ状態を維持するステップ、
を備える。
【0077】
従って、本方法によれば、成長段階において周知の物理気相輸送成長プロセスによって結晶材料の成長速度及び品質に関して大きな利点を得ることができる。バルク結晶材料は特許文献1に記載されているようなマルチチューブ物理気相輸送方法を使用して成長させるのが好ましい。本方法は物理気相成長方法を使用して高品質で大きなバルク結晶材料を急速に形成することができ、所要の厚さの材料を許容時間内に形成することができる。本方法の改良点は実質上排気段階の高速化及び/又は真空品質の向上であり、よってこれらの利点がさらに高まる。
【0078】
本発明は以下に添付図面の図1−5に関して例示的にのみ説明される。
【図面の簡単な説明】
【0079】
図1】従来の結晶構造成長用のマルチチューブ物理気相輸送装置を示す。
図2】本発明の一実施形態の原理に従って変更された結晶構造成長用のマルチチューブ物理気相輸送装置の一例を示し、排気段階における構成を示す。
図3】本発明の一実施形態の原理に従って変更された結晶構造成長用のマルチチューブ物理気相輸送装置の代替例を示し、排気段階における構成を示す。
図4図3のマルチチューブ物理気相輸送装置の成長段階における構成を示す。
図5】本発明の一実施形態の原理に従って変更された結晶構造成長用のマルチチューブ物理気相輸送装置の他の代替例を示し、排気段階の構成を示す。
【発明を実施するための形態】
【0080】
バルク単結晶材料形成用の適切な既知の装置は図1に示されている。この装置は、例えば特許文献1に開示されているマルチチューブ物理気相輸送プロセスを具体化したものである。
【0081】
例示の装置は、それぞれの下端部にソースゾーンを画定する1対の垂直配置のソース管(11)と、その下端部に成長ゾーンを画定する垂直配置の成長管(13)と、交差部材管(15)とからなる管状外囲器を備える。図示の実施形態では、第1のソース(S1)は第1のソースゾーンに設けられ、第2のソース(S2)は第2のソースゾーンに設けられる。従って、この実施形態は共通の交差部材を備える複数ソース、単一シンクの例であるが、これは適切な構成のソース/成長/交差部材モジュールの単なる一例にすぎない。
【0082】
例えば、ソース材料はテルル化カドミウムの種結晶上にテルル化カドミウム又はテルル化カドミウム亜鉛結晶を形成するテルル化カドミウム及びテルル化カドミウム亜鉛のソースとすることができる。しかしながら、多くの他の結晶を適切な種結晶上に成長させることができる。
【0083】
個別の独立に制御可能な垂直管状炉(12)がソース及び成長ゾーン用にそれぞれ設けられ、例えば各管状路は複数の加熱ゾーンを画定する。水平交差部材管(15)は必要に応じ交差部材ヒータ(16)により加熱することができる。或いはまた、単一のマルチゾーンヒータを設けて、これらの管状炉の被加熱ゾーンをこれらの被加熱ゾーンの長さに沿って所定の温度プロファイルを与えるように加熱するよう構成することができる。
【0084】
この実施形態におけるソース管、成長管及び交差部材は石英で製造され、このシステムは、交差部材と2つの垂直管との間のすりガラス接合部で分解可能であり、成長した結晶の取り出し及びソース材料の補充を可能にしている。
【0085】
アセンブリ全体は各ソースゾーンと成長ゾーンの間の流路を画定する石英外囲器容積部を構成する。キャピラリ又は焼結石英ディスクのようなフローリストリクタ(19)がこのようにソースゾーンと成長ゾーンの間に画定された各通路内に設けられ、例えば交差部材管により画定されるマニホルド容積部内に設けられる。フローリストリクタは、制御できないほど小さいソース−成長温度差を必要とすることなく質量輸送を制御することができるように、ソースゾーン及び成長ゾーンの間で必要とされる。
【0086】
真空ジャケットでシステム全体を取り囲む。
【0087】
このように画定された各流路は、垂直ソース管から水平交差部材へ通り、水平交差部材から垂直成長管へ通るので、それぞれ2つの個別の角度90°の偏向点を備える。よく知られるように、これは、ソース管と成長管を熱的に分離し、追加の機能のための場所、例えばソース及び成長ゾーンへの光学的アクセスを可能にする窓を介した現場モニタリングのための場所を提供することができ、パイロメータ又は他の光学診断装置等により成長する結晶の表面温度を測定することができる。
【0088】
成長は成長ゾーン内の基板上で行われる。好ましい例では、結晶(21)の成長は支持ペデスタル(25)上の成長ゾーンに保持される種結晶(23)上で行われる。いくつかの用途、例えば検出器用途に対しては、例えばテルル化カドミウム、テルル化カドミウム亜鉛(CZT)、テルル化カドミウムマグネシウム(CMT)及びそれらの合金といったバルク結晶材料が、大きな面積を有することが必要とされ得る。しかしながら、このような材料の場合には、十分に大きなサイズの種結晶を入手することができず、できても高いコストでしか入手できない。このような場合には、結晶材料をもっと容易に又は安価に入手し得る異なる種材料の種結晶、例えばシリコン又は砒化ガリウムの種結晶上に形成するのが望ましい。これは、蒸着する材料とは異なる材料の結晶からなる種結晶を使用し、その種結晶に中間層又は中間領域を設け、その上に本発明の装置を使用してバルク結晶材料を蒸着することによって達成される。
【0089】
成長は成長管内の石英ブロック(25)上に位置する基板上で行われ、このガラスブロックと石英外囲器との間の空隙が下流側フローリストリクタを形成し、成長領域の下流に環状フローを提供する。成長段階中、下流側フローリストリクタを通過するテールフローが、蒸気流を成長領域へ引き込む。排気段階中、環状テールフローが排気を助ける。この排気要件の結果に加え、過剰な前駆種の除去も可能になる。さもなければ、過剰な前駆種が成長する結晶の上方で増加し、蒸気輸送、成長速度及び成長する結晶の組成に影響を与える場合がある。
【0090】
様々なフローリストリクタが成長段階中に材料の損失を最小にするように働く。しかしながら、これらのフローリストリクタの存在は成長段階より前のシステムの排気を複雑にする。アセンブリを成長温度に加熱する前に、石英外囲器の全内部容積を排気して、残留空気又は水蒸気がソース材料及び成長する結晶を汚染しないようにする必要がある。この排気を実行するために利用可能な外囲器容積部から真空(排気)容積部への唯一の流路は、フローリストリクタ(19)を通る流路V及び成長管内の環状空隙を通るテールフローを経由するものだけである。ペデスタルの上流、特にフローリストリクタとソースとの間の外囲器容積部は制限された流路を含むために有効に排気することが難しい。これは長いポンピング時間をまねき、達成できる真空の品質を制限することになる。
【0091】
本発明はこの問題に対処するために、排気中は高い流量に選択的に開放し、成長中は低い又は無視しうる流量に選択的に制限することができる、外囲器容積部から真空(排気)容積部への二次流路を設ける。このような二次流路を設ける模範的な手段が図2−4に示されている。
【0092】
図2−4で具体化されている原理は、本発明の原理に従って石英外囲器に取り外し可能なプラグを有する開口部を設け、(プラグを取り外すと)排気のための二次流路が提供されることにある。図2は、石英外囲器のソース領域に開口部を備える第1の構成を示し、排気段階における構成を示すものである。図3は、石英外囲器のソース及び成長領域に開口部を備える第2の構成を示し、排気段階における構成を示すものである。図4は、図3の構成の成長段階構成を示すものである。
【0093】
図示の装置は図1の装置と同様の原理を具体化している。石英管状外囲器は同様に、それぞれの下端部にソースゾーンを画定する1対の垂直配置のソース管(111)と、その下端部に成長ゾーンを画定する垂直配置の成長管(113)と、交差部材管(115)とからなる管状外囲器を備える。アセンブリ全体は各ソースゾーンと成長ゾーンの間に流路を画定する石英外囲器容積部を構成する。第1のソース(S1)は第1のソースゾーンに設けられ、第2のソース(S2)は第2のソースゾーンに設けられる。個別の垂直管状炉(112)がソース及び成長ゾーン用にそれぞれ設けられ、交差部材ヒータ(116)が交差部材管用に設けられる。交差部材管内のフローリストリクタ(119)が各ソースと成長ゾーンの間のフローを実質的に制限する。
【0094】
同様に、真空ジャケットでシステム全体を取り囲む。
【0095】
結晶(121)の成長は、成長段階において、支持ペデスタル(125)上の成長ゾーンに保持された種結晶(123)上で行われる。
【0096】
本装置は、排気のために、石英外囲器に取り外し可能なプラグ(135)を有する開口部(131)を設けることによって(プラグを取り外すと)外囲器容積部からの二次流路(F)を提供するように変更されている。図2において、開口部(131)が、ソースとそれぞれのフローリストリクトとの間の位置でソースの上方にこのような二次流路(F)を提供する。図3において、更なる開口部(132)がフローリストリクタの下流側の位置で成長ゾーンの上方に更なる流路を提供する。
【0097】
これらのプラグは、すり石英ソケットと定位置で嵌合して実質的に気密に接合するすり石英テーパの形をとることができる。両実施形態において、開口部/取り外し可能なプラグは交差部材に設けられる。しかしながら、本発明の原理は、それらは、排気する容積部のどこかに設ける必要があるだけで、例えばフローリストリクタの上流のソース容積部に関してソース管上のある位置、また図3の例ではフローリストリクタの下流の成長容積部に関して成長管上のある位置に、付加的に又は代替的に採用することができる。
【0098】
少なくともソース管の上方に、図3の好ましい例では成長管の上方にも、交差部材に取り外し可能なプラグを付加することによって、少なくともソースの上方の容積部の初期のポンプダウンを大幅に向上させることが可能になる。図2の例では、これは成長領域に対して若干の追加のポンピングをもたらす。図3の好ましい例では、成長領域に対して大幅に向上した追加のポンピングが追加の開口部を介して達成される。
【0099】
図2及び図3は、プラグが交差部材から取り外され、排気動作段階中に十分なポンピングが可能であることを示している。真空の完全性を犠牲にすることなく、外部真空容器の壁を貫通する適切な機械的フィードスルー(137)及びアクチュエータ(133)によって、外部真空容器への有意な材料損失を生じるソース温度に達する前の成長状態への温度勾配中に、プラグは元の位置に戻される。
【0100】
これは図4の構成で示され、ソースゾーン(及び図3の例では成長ゾーン)の二次開口部が成長動作段階のために閉じられる。このときソースゾーンから成長ゾーンへのフローは、本質的の従来と同様に方向Vであり、このフローは、図1の例の場合のように、フローリストリクタ(119)及び成長ゾーンの下流の成長モジュールの開口部を通ることとなる。従って、本発明の装置は成長段階において従来と同様に、例えば図1の装置と同様に動作するが、排気動作段階において大幅に効率良く排気できる。本発明の装置は、結晶成長前にすべてのゾーンの急速且つ高品質の排気と、結晶成長中に成長ゾーン通り、外に出ていくフローを制御及び制限する実質的に気密の外囲器を得るという明らかに相反する要件を見事に満たす。
【0101】
ソース、種及び石英ウェアのより効果的な脱ガスを可能にするために、プラグを元の位置に戻す前に、ソース材料の温度を、材料の有意な損失を防止することを条件として、できるだけ高い温度に到達可能にすることが有利である。
【0102】
ポンプダウンに対してもっとも問題となる容積部は、それぞれのフローリストリクタの上流のそれぞれのソース容積部であり、図2の実施形態のプラグ/開口部はこの容積部から出る二次流路(F)を与えるように設置される。成長管の若干の排気は成長ゾーンの開口部を通るテールフローにより生じ得る。しかしながら、多くの場合、図3の実施形態のように取り外し可能なプラグを交差部材に成長管の上方部で付加し、成長管の排気をさらに促進するのが望ましい。
【0103】
図示の実施形態において、追加の効果が、交差部材にソース管の上方部で付加された取り外し可能なプラグ/開口部の効果を補完するために活用される。ソース管の上流側端部の小さなオリフィスは、ソース材料を通るリークフローによる排気中に、ソース材料の上方の容積部に対して追加のポンピング通路を提供する。成長段階における蒸発のための多くのソースは、最初(加熱前)、粉末又はこれと同様の未固化の状態で供給され、加熱で固化する性質を持つ。この未固化の状態においては、ソース容積部から未加熱で未固化のソース材料を通るリークフロールートが存在するので、オリフィスは加熱前の排気中において有効である。しかしながら、適切なサイズの穴及びソースヒータに対する適切な温度勾配を使用すれば、加熱中のソース材料の圧密化により、一般に成長動作段階中のリークフロー損失がソース質量の非常に小さな割合に低減される。従って、これは、実際上、排気段階中の更なる二次流路を提供し、この二次流路は成長状態への温度勾配中に閉じることとなる。このようなリークフロー効果は任意選択で、適切に固化する材料について提供可能であり、ソースゾーン排気に対する主二次流路というよりも補助二次流路として認識される。
【0104】
図1−4に示す管は、成長した結晶の取り出し及びソース材料の補充を可能にするために、交差部材と2つの垂直管との間のすりガラス接合部で分解可能である。それゆえ、それぞれのフローリストリクタの上流のソース容積部からの二次流路を提供する代替手段を構想できる。ソース管、成長管及び交差部材管は排気段階中に簡単に取り外すこと(又は再び取り付けないこと)ができる。
【0105】
これは、成長状態への温度勾配中、外部真空容器への有意な材料損失を生じるソース温度に達する前に、外囲器アセンブリに再組み立てするために、真空完全性を犠牲にすることなく外部真空容器の壁を貫通する異なる構成の機械的フィードスルーを必要とする。
【0106】
このような構成は、図5に示され、交差部材が上昇した排気構成が示されている。当業者であれば、ソースから成長ゾーンへの実質的に気密の流路を完成するために交差部材を下降させた成長構成を予想することは容易である。
【0107】
この場合も同様に、図示の装置は図1の装置と同様の原理を具体化している。石英管状外囲器は同様に、それぞれの下端部にソースゾーンを画定する1対の垂直配置のソース管と、その下端部に成長ゾーンを画定する垂直配置の成長管と、交差部材管を備える。アセンブリ全体は各ソースゾーン及び成長ゾーンの間に流路を画定する石英外囲器容積部を構成する。第1のソースは第1のソースゾーンに設けられ、第2のソースは第2のソースゾーンに設けられる。個別の垂直管状炉がソース及び成長ゾーン用にそれぞれ設けられる。交差部材管内のフローリストリクタが各ソース及び成長ゾーンの間のフローを実質的に制限する。同様に、真空ジャケットでシステム全体を包囲する。
【0108】
これらの管はそれらの間のすりガラス接合部で取り外し可能である。交差部材を上昇及び下降する手段が設けられる。図5に示すように交差部材が上昇されると、ソース管及び成長管が外部の真空容器に開放され、初期ポンプダウンを向上させることができる。真空の完全性を犠牲にすることなく外部真空容器の壁を貫通する適切な機械的フィードスルーによって、成長状態への温度勾配中、外部真空容器への有意な材料損失を生じるソース温度に達する前に、交差部材を降下させる(図示せず)。従って、この場合にも、本発明の装置は、成長段階においては従来と同様に、例えば図1の装置と同様に動作するが、排気動作段階においては、成長プロセスを犠牲にすることなく大幅に効率良く排気する。
【0109】
このように、この実施形態は図2及び図4の実施形態とは、ソース管及び成長管を、排気中外部真空容器に選択的に開放するために使用する機構が相違する。別の方法で図2及び図4で具体化されている原理を適用することもできる。
図1
図2
図3
図4
図5