特許第5886939号(P5886939)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5886939
(24)【登録日】2016年2月19日
(45)【発行日】2016年3月16日
(54)【発明の名称】リアクトルおよびそれを用いた電源装置
(51)【国際特許分類】
   H01F 37/00 20060101AFI20160303BHJP
   H02M 3/155 20060101ALI20160303BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20160303BHJP
【FI】
   H01F37/00 M
   H02M3/155 W
   H02M7/48 Z
   H01F37/00 C
   H02M3/155 Z
【請求項の数】13
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-504501(P2014-504501)
(86)(22)【出願日】2012年3月13日
(86)【国際出願番号】JP2012056367
(87)【国際公開番号】WO2013136428
(87)【国際公開日】20130919
【審査請求日】2014年6月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】東芝三菱電機産業システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木下 雅博
【審査官】 堀 拓也
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第06362986(US,B1)
【文献】 米国特許第05204809(US,A)
【文献】 特開2005−065384(JP,A)
【文献】 特開2011−223667(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 37/00
H02M 3/155
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
N台(ただし、Nは2以上の整数である)の電源(11〜14)と、
前記N台の電源(11〜14)を負荷(15)に対して並列接続するリアクトル(1)とを備え
前記リアクトル(1)は、
環状の鉄心(2)と、
前記鉄心(2)に別々に巻回されたN個のコイル(C1〜C4)とを含み
前記N個のコイル(C1〜C4)は前記鉄心(2)の周方向に順次配列され、前記N個のコイル(C1〜C4)の第1の電極から第2の電極への巻回方向は同じであり、
前記N個のコイル(C1〜C4)の第1の電極はそれぞれ前記N台の電源(11〜14)の出力端子に接続され、それらの第2の電極はともに前記負荷(15)に接続され
前記N台の電源(11〜14)から前記N個のコイル(C1〜C4)を介して前記負荷(15)に電流が流され、前記N個のコイル(C1〜C4)によって同じ方向の磁束が前記鉄心(2)内に生成され、
前記負荷(15)に流れる電流は前記N台の電源(11〜14)によって分担される、電源装置
【請求項2】
前記リアクトル(1)は、
さらに、それぞれ前記N個のコイル(C1〜C4)の第1の電極に接続されたN個の第1の端子(T1〜T4)と、
前記N個のコイル(C1〜C4)の第2の電極に接続された第2の端子(TO)とを含み
前記N個の第1の端子(T1〜T4)はそれぞれ前記N台の電源(11〜14)の出力端子に接続され、
前記第2の端子(TO)は前記負荷(15)に接続される、請求項1に記載の電源装置
【請求項3】
前記鉄心(2)は、
第1および第2の脚部(3,4)と、
前記第1および第2の脚部(3,4)の一方端部を磁気的に結合する第1のヨーク部(6)と、
前記第1および第2の脚部(3,4)の他方端部を磁気的に結合する第2のヨーク部(5)とを含み、
Nは偶数であり、
前記N個のコイル(C1〜C4)のうちのN/2個のコイル(C1,C2)は、前記第1の脚部(3)の一方端部側から他方端部側に向かって配列されて前記第1の脚部(3)に別々に巻回され、
前記N個のコイル(C1〜C4)のうちの他のN/2個のコイル(C3,C4)は、前記第2の脚部(4)の他方端部側から一方端部側に向かって配列されて前記第2の脚部(4)に別々に巻回されている、請求項1に記載の電源装置。
【請求項4】
前記N台の電源(11〜14)の各々は、第1の直流電圧を第2の直流電圧に変換するチョッパである、請求項に記載の電源装置。
【請求項5】
前記N台の電源の各々は、直流電圧を交流電圧に変換するインバータである、請求項に記載の電源装置。
【請求項6】
前記N台の電源の各々は、交流電圧を直流電圧に変換するコンバータである、請求項に記載の電源装置。
【請求項7】
N台(ただし、Nは2以上の整数である)の電源(41〜44)を負荷(45)に対して並列接続するリアクトル(31)であって、
環状の鉄心(32)と、
前記鉄心(32)に別々に巻回されたN個の第1のコイル(C11〜C14)およびN個の第2のコイル(C21〜C24)とを備え、
前記N個の第1のコイル(C11〜C14)の第1の電極はそれぞれ前記N台の電源(41〜44)の第1の出力端子に接続され、それらの第2の電極はともに前記負荷(45)の一方端子に接続され、
前記N個の第2のコイル(C21〜C24)の第1の電極はそれぞれ前記N台の電源(41〜44)の第2の出力端子に接続され、それらの第2の電極はともに前記負荷(45)の他方端子に接続され、
同じ電源に接続される第1および第2のコイル(C11とC21,C12とC22,C13とC23,またはC14とC24)はノーマルモードコイルを構成している、リアクトル。
【請求項8】
さらに、それぞれ前記N個の第1のコイル(C11〜C14)の第1の電極に接続されたN個の第1の端子(T11〜T14)と、
それぞれ前記N個の第2のコイル(C21〜C24)の第1の電極に接続されたN個の第2の端子(T21〜T24)と、
前記N個の第1のコイル(C11〜C14)の第2の電極に接続された第3の端子(TO1)と、
前記N個の第2のコイル(C21〜C24)の第2の電極に接続された第4の端子(TO2)とを備え、
前記N個の第1の端子(T11〜T14)はそれぞれ前記N台の電源(41〜44)の第1の出力端子に接続され、
前記N個の第2の端子(T21〜T24)はそれぞれ前記N台の電源(41〜44)の第2の出力端子に接続され、
前記第3の端子(TO1)は前記負荷(45)の一方端子に接続され、
前記第4の端子(TO2)は前記負荷(45)の他方端子に接続される、請求項7に記載のリアクトル。
【請求項9】
前記鉄心(32)は、第1および第2の脚部(33,34)と、それらを磁気的に結合するヨーク部(35,36)とを含み、
前記N個の第1のコイル(C11〜C14)は前記第1の脚部(33)に別々に巻回され、
前記N個の第2のコイル(C21〜C24)は前記第2の脚部(34)に別々に巻回され、
前記ノーマルモードコイルを構成する前記第1および第2のコイル(C11とC21,C12とC22,C13とC23,またはC14とC24)は互いに隣接して配置されている、請求項7に記載のリアクトル。
【請求項10】
請求項7に記載のリアクトル(31)と、
前記N台の電源(41〜44)とを備える、電源装置。
【請求項11】
前記N台の電源(41〜44)の各々は、第1の直流電圧を第2の直流電圧に変換するチョッパである、請求項10に記載の電源装置。
【請求項12】
前記N台の電源の各々は、直流電圧を交流電圧に変換するインバータである、請求項10に記載の電源装置。
【請求項13】
前記N台の電源の各々は、交流電圧を直流電圧に変換するコンバータである、請求項10に記載の電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はリアクトルおよびそれを用いた電源装置に関し、特に、複数の電源を負荷に対して並列接続するリアクトルと、それを用いた電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
負荷容量がチョッパの出力よりも大きい場合でも、複数台のチョッパを負荷に対して並列接続すれば、負荷を運転することができる。この場合、複数台のチョッパで負荷電流を均等に分担する必要がある。また、各チョッパと負荷の間にリアクトルを接続して、チョッパ間のスイッチングのタイミングや出力インピーダンスの差の影響を抑制する必要がある(たとえば、特開平9−215322号公報(特許文献1)、特開2006−271102号公報(特許文献2)参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−215322号公報
【特許文献2】特開2006−271102号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来は、各チョッパ毎にリアクトルを設けていたので、チョッパと同数のリアクトルが必要となり、装置が大型化し、高価格になるという問題があった(図5図12参照)。
【0005】
それゆえに、この発明の主たる目的は、小型で低価格のリアクトルと、それを用いた電源装置とを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る電源装置は、N台(ただし、Nは2以上の整数である)の電源と、N台の電源を負荷に対して並列接続するリアクトルとを備えたものである。リアクトルは、環状の鉄心と、鉄心に別々に巻回されたN個のコイルとを含むN個のコイルは鉄心の周方向に順次配列され、N個のコイルの第1の電極から第2の電極への巻回方向は同じである。N個のコイルの第1の電極はそれぞれN台の電源の出力端子に接続され、それらの第2の電極はともに負荷に接続される。N台の電源からN個のコイルを介して負荷に電流が流され、N個のコイルによって同じ方向の磁束が鉄心内に生成される。負荷に流れる電流はN台の電源によって分担される。
【0007】
好ましくは、リアクトルは、さらに、それぞれN個のコイルの第1の電極に接続されたN個の第1の端子と、N個のコイルの第2の電極に接続された第2の端子とを含む。N個の第1の端子はそれぞれN台の電源の出力端子に接続され、第2の端子は負荷に接続される。
また好ましくは、鉄心は、第1および第2の脚部と、第1および第2の脚部の一方端部を磁気的に結合する第1のヨーク部と、第1および第2の脚部の他方端部を磁気的に結合する第2のヨーク部とを含む。Nは偶数である。N個のコイルのうちのN/2個のコイルは、第1の脚部の一方端部側から他方端部側に向かって配列されて第1の脚部に別々に巻回される。N個のコイルのうちの他のN/2個のコイルは、第2の脚部の他方端部側から一方端部側に向かって配列されて第2の脚部に別々に巻回されている。
【0008】
また、この発明に係るリアクトルは、N台(ただし、Nは2以上の整数である)の電源を負荷に対して並列接続するリアクトルであって、環状の鉄心と、鉄心に別々に巻回されたN個の第1のコイルおよびN個の第2のコイルとを備えたものである。N個の第1のコイルの第1の電極はそれぞれN台の電源の第1の出力端子に接続され、それらの第2の電極はともに負荷の一方端子に接続される。N個の第2のコイルの第1の電極はそれぞれN台の電源の第2の出力端子に接続され、それらの第2の電極はともに負荷の他方端子に接続される。同じ電源に接続される第1および第2のコイルはノーマルモードコイルを構成している。
【0009】
好ましくは、さらに、それぞれN個の第1のコイルの第1の電極に接続されたN個の第1の端子と、それぞれN個の第2のコイルの第1の電極に接続されたN個の第2の端子と、N個の第1のコイルの第2の電極に接続された第3の端子と、N個の第2のコイルの第2の電極に接続された第4の端子とを備える。N個の第1の端子はそれぞれN台の電源の第1の出力端子に接続され、N個の第2の端子はそれぞれN台の電源の第2の出力端子に接続される。第3の端子は負荷の一方端子に接続され、第4の端子は負荷の他方端子に接続される。
【0010】
また好ましくは、鉄心は、第1および第2の脚部と、それらを磁気的に結合するヨーク部とを含む。N個の第1のコイルは第1の脚部に別々に巻回され、N個の第2のコイルは第2の脚部に別々に巻回される。ノーマルモードコイルを構成する第1および第2のコイルは互いに隣接して配置されている。
【0011】
また、この発明に係る電源装置は、上記リアクトルと、N台の電源とを備える。
好ましくは、N台の電源の各々は、第1の直流電圧を第2の直流電圧に変換するチョッパである。
【0012】
また好ましくは、N台の電源の各々は、直流電圧を交流電圧に変換するインバータである。
【0013】
また好ましくは、N台の電源の各々は、交流電圧を直流電圧に変換するコンバータである。
【発明の効果】
【0014】
この発明に係るリアクトルおよび電源装置では、環状の鉄心にN個のコイルが別々に巻回され、N個のコイルの第1の電極がそれぞれN台の電源の出力端子に接続され、それらの第2の電極がともに負荷に接続される。したがって、複数の電源に対して1個のリアクトルを設ければ足りるので、装置の小型化、低価格化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】この発明の実施の形態1によるリアクトルの要部を示す図である。
図2図1に示したリアクトルの構成を示す回路図である。
図3図2に示したリアクトルを用いた電源装置の構成を示す回路ブロック図である。
図4図3に示したチョッパの構成を示す回路図である。
図5】実施の形態1の比較例となる電源装置の構成を示す回路ブロック図である。
図6図5に示したリアクトルの構成を示す図である。
図7図6に示したリアクトルを示す回路図である。
図8】この発明の実施の形態2によるリアクトルの要部を示す図である。
図9図8に示したリアクトルの構成を示す回路図である。
図10図9に示したリアクトルを用いた電源装置の構成を示す回路ブロック図である。
図11図10に示したチョッパの構成を示す回路図である。
図12】実施の形態2の比較例となる電源装置の構成を示す回路ブロック図である。
図13図12に示したリアクトルの構成を示す図である。
図14図13に示したリアクトルを示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[実施の形態1]
本願の実施の形態1によるリアクトル1は、図1に示すように、四角形の環状の鉄心2と、複数(図1では4個)のコイルC1〜C4とを備える。鉄心2は、2本の脚部3,4と、2個のヨーク部5,6とを含む。2本の脚部3,4は、所定の距離を開けて互いに平行に設けられ、ヨーク部5の上に立設されている。脚部3,4の下端はヨーク部5に接合され、ヨーク部6は脚部3,4の上端に接合されている。脚部3,4は、ヨーク部5,6によって磁気的に結合されている。脚部3,4およびヨーク部5,6によって四角形の環状の磁路が形成されている。
【0017】
コイルC1〜C4は、環状の鉄心2の周方向(図1では左回り方向)に配列され、鉄心2に別々に巻回されている。コイルC1〜C4は、同じものであり、同じ導電線を、同じ巻方向(たとえば右巻き)に、同じ回数、巻回したものである。換言すると、コイルC1は脚部3の上側の部分に巻回され、コイルC2は脚部3の下側の部分に巻回される。また、コイルC3は脚部4の下側の部分に巻回され、コイルC4は脚部4の上側の部分に巻回される。
【0018】
脚部3の上方から見てコイルC1,C2の各々は所定の巻方向(たとえば右巻き)に巻回され、脚部4の下方から見てコイルC3,C4の各々は所定の巻方向(この場合は右巻き)に巻回されている。コイルC1〜C4の始端にはそれぞれ第1の電極A1〜A4が設けられ、コイルC1〜C4の終端にはそれぞれ第2の電極B1〜B4が設けられている。このリアクトル1では、コイルC1〜C4間の電磁結合の度合いが低く、漏れインダクタンスが大きくなっている。
【0019】
図2は、リアクトル1の構成を示す回路図である。図2において、リアクトル1は、鉄心2およびコイルC1〜C4に加え、4個の入力端子T1〜T4と、1個の出力端子TOとを備える。コイルC1〜C4の第1の電極A1〜A4はそれぞれ入力端子T1〜T4に接続され、第2の電極B1〜B4はともに出力端子TOに接続される。コイルC1〜C4の始端(第1の電極A1〜A4)は互いに同じ極性になるので、図2では、コイルC1〜C4の始端の各々に黒丸印が付されている。
【0020】
図3は、リアクトル1を備えた電源装置の構成を示す回路ブロック図である。図3において、電源装置は、直流電源10と、4台のチョッパ11〜14と、リアクトル1とを備える。チョッパ11〜14の電源端子11a〜14aは、ともに直流電源10の正極に接続される。チョッパ11〜14の基準電圧端子11b〜14bは、ともに直流電源10の負極に接続される。チョッパ11〜14の出力端子11c〜14cは、それぞれリアクトル1の入力端子T1〜T4に接続される。リアクトル1の出力端子TOは、負荷15の一方端子に接続される。負荷15の他方端子は、直流電源10の負極に接続される。直流電源10の負極は、基準電圧(たとえば、接地電圧)を受ける。
【0021】
チョッパ11〜14の各々は、直流電源10から直流電圧V1を受け、その直流電圧V1を所定の直流電圧V2に変換して負荷15に供給する。負荷15に流れる電流がチョッパ11〜14で均等に分担されるように、チョッパ11〜14が制御される。
【0022】
図4は、チョッパ11の構成を示す回路図である。図4において、チョッパ11は、トランジスタQ、ダイオードD、およびコイルCaを含む。トランジスタQのコレクタは入力端子11aに接続され、そのエミッタはコイルCaを介して出力端子11cに接続される。ダイオードDのアノードは基準電圧端子11bに接続され、そのカソードはトランジスタQのエミッタに接続される。
【0023】
トランジスタQがオンされると、直流電源10の正極からトランジスタQ、コイルCa,C1、および負荷15を介して直流電源10の負極に電流が流れ、コイルCa,C1に電磁エネルギーが蓄えられる。トランジスタQがオフされると、コイルCa,C1に蓄えられた電磁エネルギーにより、コイルCa,C1、負荷15、およびダイオードDの経路に電流が流れる。
【0024】
所定の周期でトランジスタQがオンおよびオフされる。1周期内におけるトランジスタQのオン時間を長くすれば負荷15に印加される電圧V2が上昇し、逆に、1周期内におけるトランジスタQのオン時間を短くすれば負荷15に印加される電圧V2が低下する。したがって、トランジスタQのオン時間を調整することにより、直流電源10の出力電圧V1を所望の直流電圧V2に変換して負荷15に供給することができる。
【0025】
他のチョッパ12〜14の各々もチョッパ11と同じ構成である。チョッパ11〜14のトランジスタQのオン時間を個別に微調整することにより、チョッパ11〜14で負荷電流を均等に分担することができる。
【0026】
この実施の形態1では、鉄心2に複数のコイルC1〜C4を別々に巻回し、コイルC1〜C4の第1の電極A1〜A4をそれぞれ複数のチョッパ11〜14の出力端子11c〜14cに接続し、コイルC1〜C4の第2の電極B1〜B4をともに負荷15に接続する。したがって、1個のリアクトル1によって複数のチョッパ11〜14を負荷15に並列接続することができ、装置の小型化、低価格化を図ることができる。
【0027】
なお、この実施の形態1では、チョッパ11〜14の各々にコイルCaを含ませたが、コイルCaを除去してもよい。この場合は、コイルC1〜C4がそれぞれチョッパ11〜14のコイルCaを兼ねることとなる。
【0028】
また、この実施の形態1では、直流電源10およびチョッパ11〜14を設けたが、これに限るものではなく、チョッパ11〜14の各々を直流電圧を交流電圧に変換するインバータで置換してもよい。また、直流電源10を交流電源で置換し、チョッパ11〜14の各々を交流電圧を直流電圧に変換するコンバータで置換してもよい。
【0029】
また、それぞれ3相に対応する3つのリアクトル1を使用し、各相毎にリアクトル1によって複数台のインバータを並列接続してもよい。
【0030】
また、この実施の形態1では、4個のコイルC1〜C4を1個の鉄心2に巻回したが、2個、3個、または5個以上のコイルを1個の鉄心に巻回し、2台、3台、または5台以上のチョッパ11を負荷15に対して並列接続してもよい。すなわち、N個(ただし、Nは2以上の整数である)のコイルを1個の鉄心に巻回し、N台のチョッパ11を負荷15に対して並列接続してもよい。
【0031】
図5は、実施の形態1の比較例となる電源装置の構成を示す回路ブロック図であって、図3と対比される図である。図5を参照して、この電源装置が図3の電源装置と異なる点は、リアクトル1が4個のリアクトル21〜24で置換されている点である。リアクトル21〜24の第1の端子21a〜24aは、それぞれチョッパ11〜14の出力端子11c〜14cに接続される。リアクトル21〜24の第2の端子21b〜24bは、ともに負荷15の一方端子に接続される。
【0032】
図6はリアクトル21の構成を示す図であり、図7はリアクトル21を示す回路図であえる。図6および図7において、リアクトル21は、四角形の環状の鉄心25と、2個のコイルC5,C6と、第1の端子21aと、第2の端子21bとを備える。鉄心25は、2本の脚部26,27と、2個のヨーク部28,29とを含む。脚部26,27は、ヨーク部28,29によって磁気的に結合されている。脚部26,27およびヨーク部28,29によって四角形の環状の磁路が形成されている。
【0033】
コイルC5,C6は、それぞれ脚部26,27に独立に巻回されている。コイルC5の第1の電極は第1の端子21aに接続され、コイルC5の第2の電極はコイルC6の第1の電極に接続され、コイルC6の第2の電極は第2の端子21bに接続される。すなわち、コイルC5,C6は、第1および第2の端子21a,21b間に直列接続されて1つのコイルを構成している。リアクトル22〜24の各々は、リアクトル21と同じ構成である。
【0034】
したがって、比較例では、4つのチョッパ11〜14に対して4つのリアクトル21〜24を設けるので、装置が大型化し、高価格になるという問題がある。これに対して実施の形態1では、4つのチョッパ11〜14に対して1つのリアクトル1を設けるので、装置の小型化、低価格化を図ることができる。
【0035】
[実施の形態2]
本願の実施の形態2によるリアクトル31は、図8に示すように、四角形の環状の鉄心32と、複数(図8では8個)のコイルC11〜C14,C21〜C24とを備える。鉄心32は、2本の脚部33,34と、2個のヨーク部35,36とを含む。2本の脚部33,34は、所定の距離を開けて互いに平行に設けられ、ヨーク部35の上に立設されている。脚部33,34の下端はヨーク部35に接合され、ヨーク部36は脚部33,34の上端に接合されている。脚部33,34は、ヨーク部35,36によって磁気的に結合されている。脚部33,34およびヨーク部35,36によって四角形の環状の磁路が形成されている。
【0036】
コイルC11〜C14は、脚部33の上から下に向かう方向に順に配列されている。コイルC11〜C14は、脚部33に別々に巻回されている。コイルC11〜C14は、同じものであり、同じ導電線を、同じ巻方向(たとえば右巻き)に、同じ回数、巻回したものである。脚部33の上方から見てコイルC11〜C14の各々は所定の巻方向(たとえば右巻き)に巻回される。コイルC11〜C14の始端にはそれぞれ第1の電極A11〜A14が設けられ、コイルC11〜C14の終端にはそれぞれ第2の電極A21〜A24が設けられている。
【0037】
同様に、コイルC21〜C24は、脚部34の上から下に向かう方向に順に配列されている。コイルC21〜C24は、脚部34に別々に巻回されている。コイルC21〜C24は、同じものであり、同じ導電線を、同じ巻方向(たとえば右巻き)に、同じ回数、巻回したものである。脚部34の上方から見てコイルC21〜C24の各々は所定の巻方向(たとえば右巻き)に巻回される。コイルC21〜C24の始端にはそれぞれ第1の電極B11〜B14が設けられ、コイルC21〜C24の終端にはそれぞれ第2の電極B21〜B24が設けられている。
【0038】
コイルC11とC21,C12とC22,C13とC23,C14とC24は、それぞれ互いに隣接して設けられている。このリアクトル31では、コイルC11〜C14,C21〜C24間の電磁結合の度合いが低く、漏れインダクタンスが大きくなっている。
【0039】
図9は、リアクトル31の構成を示す回路図である。図9において、リアクトル31は、鉄心32およびコイルC11〜C14,C21〜C24に加え、8個の入力端子T11〜T14,T21〜T24と、2個の出力端子TO1,TO2とを備える。コイルC11〜C14の第1の電極A11〜A14はそれぞれ入力端子T11〜T14に接続され、第2の電極A21〜A24はともに出力端子TO1に接続される。コイルC21〜C24の第1の電極B11〜B14はそれぞれ入力端子T21〜T24に接続され、第2の電極B21〜B24はともに出力端子TO2に接続される。
【0040】
コイルC11〜C14の始端(第1の電極A11〜A14)とコイルC21〜C24の終端(第2の電極B21〜B24)とは互いに同じ極性になるので、図では、コイルC11〜C14の始端およびコイルC21〜C24の終端の各々に黒丸印が付されている。コイルC11とC21,C12とC22,C13とC23,C14とC24は、それぞれノーマルモードコイルを構成する。
【0041】
図10は、リアクトル31を備えた電源装置の構成を示す回路ブロック図である。図10において、電源装置は、直流電源40と、4台のチョッパ41〜44と、リアクトル31とを備える。チョッパ41〜44の電源端子41a〜44aは、ともに直流電源40の正極に接続される。チョッパ41〜44の基準電圧端子41b〜44bは、ともに直流電源40の負極に接続される。
【0042】
チョッパ41〜44の第1の出力端子41c〜44cは、それぞれリアクトル31の入力端子T11〜T14に接続される。チョッパ41〜44の第2の出力端子41d〜44dは、それぞれリアクトル31の入力端子T21〜T24に接続される。リアクトル31の出力端子TO1は、負荷45の一方端子に接続される。リアクトル31の出力端子TO2は、負荷45の他方端子に接続される。直流電源40の負極は、基準電圧(たとえば、接地電圧)を受ける。
【0043】
チョッパ41〜44の各々は、直流電源40から直流電圧V1を受け、その直流電圧V1を所定の直流電圧V2に変換して負荷45に供給する。負荷45に流れる電流がチョッパ41〜44で均等に分担されるように、チョッパ41〜44が制御される。
【0044】
図11は、チョッパ41の構成を示す回路図である。図11において、チョッパ41は、トランジスタQ、ダイオードD、およびコイルCa,Cbを含む。トランジスタQのコレクタは入力端子41aに接続され、そのエミッタはコイルCaを介して第1の出力端子41cに接続される。ダイオードDのアノードは基準電圧端子41bに接続され、そのカソードはトランジスタQのエミッタに接続される。コイルCbは、基準電圧端子41bと第2の出力端子41dの間に接続される。
【0045】
トランジスタQがオンされると、直流電源10の正極からトランジスタQ、コイルCa,C11、負荷45、およびコイルC21,Cbを介して直流電源40の負極に電流が流れ、コイルCa,Cb,C11,C21に電磁エネルギーが蓄えられる。トランジスタQがオフされると、コイルCa,Cb,C11,C21に蓄えられた電磁エネルギーにより、コイルCa,C11、負荷45、コイルC21,Cb、ダイオードDの経路に電流が流れる。
【0046】
所定の周期でトランジスタQがオンおよびオフされる。1周期内におけるトランジスタQのオン時間を長くすれば負荷45に印加される電圧V2が上昇し、逆に、1周期内におけるトランジスタQのオン時間を短くすれば負荷45に印加される電圧V2が低下する。したがって、トランジスタQのオン時間を調整することにより、直流電源40の出力電圧V1を所望の直流電圧V2に変換して負荷45に供給することができる。
【0047】
他のチョッパ42〜44の各々もチョッパ41と同じ構成である。チョッパ41〜44のトランジスタQのオン時間を個別に微調整することにより、チョッパ41〜44で負荷電流を均等に分担することができる。
【0048】
この実施の形態2では、鉄心32に複数のコイルC11〜C14,C21〜C24を別々に巻回し、複数のコイルC11〜C14,C21〜C24を用いて複数のノーマルモードコイルを構成する。したがって、1個のリアクトル31によって複数のチョッパ41〜44を負荷45に並列接続することができ、装置の小型化、低価格化を図ることができる。
【0049】
なお、この実施の形態2では、チョッパ41〜44の各々にコイルCa,Cbを含ませたが、コイルCa,Cbを除去してもよい。この場合は、コイルC11〜C14がそれぞれチョッパ41〜44のコイルCaを兼ね、コイルC21〜C24がそれぞれチョッパ41〜44のコイルCbを兼ねることとなる。
【0050】
また、この実施の形態2では、直流電源40およびチョッパ41〜44を設けたが、これに限るものではなく、チョッパ41〜44の各々を直流電圧を交流電圧に変換するインバータで置換してもよい。また、直流電源40を交流電源で置換し、チョッパ41〜44の各々を交流電圧を直流電圧に変換するコンバータで置換してもよい。
【0051】
また、それぞれ3相に対応する3つのリアクトル31を使用し、各相毎にリアクトル31によって複数台のインバータを並列接続してもよい。
【0052】
また、この実施の形態2では、4対のコイルC11〜C14,C21〜C24を1個の鉄心32に巻回したが、2対、3対、または5対以上のコイルを1個の鉄心に巻回し、2台、3台、または5台以上のチョッパを負荷45に対して並列接続してもよい。すなわち、N対(ただし、Nは2以上の整数である)のコイルを1個の鉄心に巻回し、N台のチョッパを負荷45に対して並列接続してもよい。
【0053】
図12は、実施の形態2の比較例となる電源装置の構成を示す回路ブロック図であって、図10と対比される図である。図12を参照して、この電源装置が図12の電源装置と異なる点は、リアクトル31が4つのノーマルモードリアクトル51〜54で置換されている点である。
【0054】
リアクトル51〜54の第1の端子51a〜54aは、それぞれチョッパ41〜44の第1の出力端子41c〜44cに接続される。リアクトル51〜54の第2の端子51b〜54bは、それぞれチョッパ41〜44の第2の出力端子41d〜44dに接続される。リアクトル41〜44の第3の端子41c〜44cは、ともに負荷45の一方端子に接続される。リアクトル41〜44の第4の端子41d〜44dは、ともに負荷45の他方端子に接続される。
【0055】
図13はリアクトル51の要部を示す図であり、図14はリアクトル51を示す回路図である。図13および図14において、リアクトル51は、四角形の環状の鉄心55と、2個のコイルC15,C25と、第1〜第4の端子51a〜51dとを備える。鉄心55は、2本の脚部56,57と、2個のヨーク部58,59とを含む。脚部56,57は、ヨーク部58,59によって磁気的に結合されている。脚部56,57およびヨーク部58,59によって四角形の環状の磁路が形成されている。
【0056】
コイルC15,C25は、それぞれ脚部56,57に独立に巻回されている。コイルC15の第1の電極A1は第1の端子1aに接続され、コイルC15の第2の電極A2は第3の端子51cに接続される。コイルC25の第1の電極B1は第2の端子51bに接続され、コイルC25の第2の電極B2は第4の端子51dに接続される。コイルC15,C25は、ノーマルモードコイルを構成している。リアクトル52〜54の各々は、リアクトル51と同じ構成である。
【0057】
したがって、比較例では、4つのチョッパ41〜44に対して4つのリアクトル51〜54を設けるので、装置が大型化し、高価格になるという問題がある。これに対して実施の形態2では、4つのチョッパ41〜44に対して1つのリアクトル31を設けるので、装置の小型化、低価格化を図ることができる。
【0058】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明でなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0059】
1,21〜24,31,51〜54 リアクトル、2,25,32,55 鉄心、3,4,26,27,33,34,56,57 脚部、5,6,28,29,35,36,58,59 ヨーク部、10,40 直流電源、11〜14,41〜44 チョッパ、15,45 負荷、A,B 電極、C コイル、D ダイオード、Q トランジスタ、T 端子。
図1
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図14