(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5886942
(24)【登録日】2016年2月19日
(45)【発行日】2016年3月16日
(54)【発明の名称】開扉保持装置及びそれを備えたドアヒンジ装置
(51)【国際特許分類】
E05F 3/22 20060101AFI20160303BHJP
E05D 7/086 20060101ALI20160303BHJP
E05C 17/50 20060101ALI20160303BHJP
【FI】
E05F3/22 A
E05D7/086
E05C17/50
【請求項の数】10
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-509972(P2014-509972)
(86)(22)【出願日】2012年4月11日
(86)【国際出願番号】JP2012059930
(87)【国際公開番号】WO2013153639
(87)【国際公開日】20131017
【審査請求日】2014年8月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000227386
【氏名又は名称】日東工器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083895
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100175983
【弁理士】
【氏名又は名称】海老 裕介
(72)【発明者】
【氏名】風間 保夫
【審査官】
家田 政明
(56)【参考文献】
【文献】
特許第2918298(JP,B2)
【文献】
特開2009−062809(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05F 1/00−17/00
E05C 17/50
E05D 7/086
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドア及びドア枠の一方に固定される、第1軸線を有するピボット軸と、
該ドア及びドア枠の他方に取り付けられるピボット受け装置であって、該ピボット軸を受け入れるピボット孔を有し、ドアの開閉動に伴い、該ピボット軸が該第1軸線を中心に、該ピボット孔に対して相対的に回動可能とするピボット受け装置と
を有するドアヒンジ装置において、開扉位置にされたドアを開扉位置に保持するための開扉保持装置であって、
該ピボット軸に取り付けられ、ドアの開閉動に伴い、該ピボット軸と共に該ピボット孔に対する該第1軸線を中心とする相対的回動を行う第1係合部材であって、該第1軸線を基準として半径方向外側に突出する係合突起を有する第1係合部材と、
該ドア及びドア枠の他方に取り付けられ、該ドアの開閉動に伴い該第1係合部材が該相対的回動を生じるときに、該第1係合部材の該相対的回動における該係合突起の円弧状の移動経路の外側で該第1軸線に平行な第2軸線の周りで枢動可能に取り付けられ、該係合突起の移動径路上に位置するようにバネ付勢される第2係合部材であって、該ドアが開動されて該開扉位置に近づくときに該係合突起が当該第2係合部材に対して相対的に摺動係合しながら該バネ付勢力に抗して該第2係合部材を該移動経路外に枢動して、該第1係合部材が進むのを許容すると共に該ドアが該開扉位置に達したときには該バネ付勢力により該移動経路上に位置するようになされ、該ドアが該開扉位置から閉扉しようとしたときには該係合突起と係合して該第1係合部材の該相対的回動を止め、それによりドアを該開扉位置に保持する第2係合部材と
を有し、
該第2係合部材は、該ドアが該開扉位置に近づくときに該係合突起によって摺動係合される摺動係合面と、該ドアが該開扉位置から閉扉しようとしたときに該係合突起と係合して該第1係合部材の動きを止める係止面とを有し、該摺動係合面は該ドアが該開扉位置に近づくときに該係合突起から該第2係合部材を該バネ付勢力に抗して枢動するように作用する第1の力を受け、該係止面は該ドアが該開扉位置から閉扉しようとするときに該係合突起から該第2係合部材を該バネ力に抗して枢動するように作用する第2の力を受け、該第2の力の作用線が該第1の力の作用線よりも該第2軸線の近くを通るように形状付けられている、開扉保持装置。
【請求項2】
該係合突起によって係合されないときの該第2係合部材に、該バネ付勢力に抗するように係合して、該第2係合部材の該摺動係合面及び該係止面が該移動経路上に位置するようにするストッパを有する請求項1に記載の開扉装置。
【請求項3】
該第2係合部材が該ストッパと係合された状態で変位可能とされ、該係合突起が該第2係合部材の該係止面と係合するときの当該ピボット軸の回動位置を調節可能とした請求項2に記載の開扉保持装置。
【請求項4】
該第1軸線から該第2軸線よりも離れた位置で該第1及び該第2軸線に対して平行にされた第3軸線の周りで角度調節可能にして該ドア及びドア枠の該他方に固定された固定用基板に取り付けられた係合部材ホルダを有し、該第2係合部材が第1軸線と該第3軸線との間の位置とされた該第2軸線の周りで枢動可能として該係合部材ホルダに枢着されている請求項3に記載の開扉保持装置。
【請求項5】
該係合部材ホルダに並行して該固定用基板に固定されたバネ収納筒部を有し、該バネがコイルバネとされて該バネ収納筒部内に収納され、該係合部材ホルダは該第3軸線よりも該ピボット軸寄りの位置を該バネ収納筒部に隣接する側から該バネ収納筒部から離れた側に貫通する第1ネジ穴と、該第3軸線よりも該ピボット軸から離れた位置を該バネ収納筒部に隣接する側から該バネ収納筒部から離れた側に貫通する第2ネジ穴と、該第1ネジ穴に螺合され先端が該バネ収納筒部に係合する第1調節ネジと、該第2ネジ穴に螺合され先端が該バネ収納筒部に係合する第2調節ネジとを有し、該第1及び第2調節ネジの該第1及び第2ネジ穴との螺合位置を調節することにより該係合部材ホルダを該第3軸線の所要の角度位置とすることができるようにした請求項4に記載の開扉保持装置。
【請求項6】
該バネ収納筒部の該係合部材ホルダに隣接する側面を有し、該側面が、該係合部材ホルダに平行な面に対して該係合部材ホルダから離れる方向に傾斜する傾斜面を有し、該係合部材ホルダの該第3軸線の周りでの回動を可能とした請求項5に記載の開扉保持装置。
【請求項7】
該ピボット受け装置が、該ドア及びドア枠の該他方に固定される固定用基板と、
該固定用基板に固定された開扉保持用本体と、
を有し、
該開扉保持用本体が該バネ収納筒部を有し、
係合部材ホルダが該開扉保持用本体に該第3軸線の周りで枢動可能に取り付けられ、
該第1係合部材が、該開扉保持用本体に該第1軸線の周りで枢動可能に取り付けられている請求項6に記載の開扉保持装置。
【請求項8】
該第1係合部材が該ピボット受け装置に回動可能に取り付けられ、該ピボット軸と該第1軸線に沿って整合され、該ピボット軸に対して相対的に回転しないように連結されている請求項1に記載の開扉保持装置。
【請求項9】
該第1係合部材が該第1係合部材の軸線に沿って伸びる小径部を有し、該ピボット軸が筒状とされ、該小径部が該ピボット軸内に同軸状に挿入され連結されるようにした請求項8に記載の開扉保持装置。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれかに記載の開扉保持装置を備えるドアヒンジ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はドアヒンジ装置に係り、特に、ドアを開扉状態に保持する機能を備えたドアヒンジ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ドアの上部及び下部に上下方向で整合した一対のピボットを設け、この一対のピボットを上部及び下部ドア枠に設けたピボット受け装置に回動可能に取り付ける形式のドアヒンジ装置において、開扉位置にされたドアをその開扉位置に保持するようにした開扉保持装置を備えたドアヒンジ装置が開発されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2918298号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許第2918298号における開扉保持装置では、上部及び下部の一方のドア枠に固定された第1ピボット軸に対しドアに固定された第2ピボット軸が同心状にして相対的に回転可能に嵌合され、ドア枠側の第1ピボット軸の円筒状外周面には係合突起が設けられ、ドア側には第1ピボット軸の外周面にバネ力により押圧されたローラ状の係合部材が設けられ、ドアの開閉動に伴って該係合部材が第1ピボット軸の外周面上を転動するようにし、ドアが開扉位置に至るときに、該係合部材が該係合突起を乗り越えるようにしている。開扉位置とされたドアは閉扉位置に向けて動こうとするとドアと共に動く上記係合部材が上記係合突起によって係止され、それにより、ドアの閉扉動が止められて開扉位置に保持される。この装置では、第1ピボット軸をその中心軸線の周りで所要の角度位置にして調節設定することにより、該第1ピボット軸の外周面の係合突起の位置を調節でき、それによりドアが保持される開扉位置を調整することができるようになっている。この開扉保持装置では、開扉位置に保持されたドアを閉扉するには、ドア側に設けられた係合部材を上記バネ力に抗してドア枠側に設けられた係合突起を乗り越えさせるだけの力をドアに加えればよいが、ドアを開扉位置にするときにも同様の力が必要となる。ドアを確実に開扉位置に保持するためには上記バネ力を一定以上としなければならず、このため、上記から分かるように、ドアを最終的に開扉位置にするときに大きな力をドアに加えることが必要となり、円滑な開扉の支障となる場合がある。
【0005】
本発明は、上記に鑑み、開扉するときには余り大きな力が必要なくしかも開扉した状態では閉扉しようとするドアを十分な保持力で開扉状態を保持することができるようにした開扉保持装置及びそれを備えたドアヒンジ装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、本発明は、
ドア及びドア枠の一方に固定される、第1軸線を有するピボット軸と、
該ドア及びドア枠の他方に取り付けられるピボット受け装置であって、該ピボット軸を受け入れるピボット孔を有し、ドアの開閉動に伴い、該ピボット軸が該第1軸線を中心に、該ピボット孔に対して相対的に回動可能とするピボット受け装置と
を有するドアヒンジ装置において、開扉位置にされたドアを開扉位置に保持するための開扉保持装置であって、
該ピボット軸に取り付けられ、ドアの開閉動に伴い、該ピボット軸と共に該ピボット孔に対する該第1軸線を中心とする相対的回動を行う第1係合部材であって、該第1軸線を基準として半径方向外側に突出する係合突起を有する第1係合部材と、
該ドア及びドア枠の他方に取り付けられ、該ドアの開閉動に伴い該第1係合部材が該相対的回動を生じるときに、該第1係合部材の該相対的回動における該係合突起の円弧状の移動経路の外側で該第1軸線に平行な第2軸線の周りで枢動可能に取り付けられ、該係合突起の移動径路上に位置するようにバネ付勢される第2係合部材であって、該ドアが開動されて該開扉位置に近づくときに該係合突起が当該第2係合部材に対して相対的に摺動係合しながら該バネ付勢力に抗して該第2係合部材を該移動経路外に枢動して、該第1係合部材が進むのを許容すると共に該ドアが該開扉位置に達したときには該バネ付勢力により該移動経路上に位置するようになされ、該ドアが該開扉位置から閉扉しようとしたときには該係合突起と係合して該該第1係合部材の該相対的回動を止め、それによりドアを該開扉位置に保持する第2係合部材と
を有し、
該第2係合部材は、該ドアが該開扉位置に近づくときに該係合突起によって摺動係合される摺動係合面と、該ドアが該開扉位置から閉扉しようとしたときに該係合突起と係合して該第1係合部材の動きを止める係止面とを有し、該摺動係合面は該係合突起によって該第2係合部材を該バネ付勢力に抗して枢動する第1の力を受け、該係止面は該第2係合部材を該バネ力に抗して枢動する第2の力を受け、該第2の力の作用線が該第1の力の作用線よりも該第2軸線の近くを通るように形状付けられている、開扉保持装置を提供する。
【0007】
この開扉保持装置では、上記のように、開扉位置からドアが閉扉しようとするときに第2係合部材が受けるバネ付勢力に抗して当該第2係合部材を枢動しようとする第2の力の作用線が、開扉のときに第2係合部材が受けるバネ付勢力に抗して当該第2係合部材を枢動しようとする第1の力の作用線よりも第2軸線の近くを通るようにされているので、閉扉時に必要となる第2の力の方が、開扉時に必要となる第1の力よりも大きいものが必要となり、従って、開扉は比較的小さな力で行えるが、開扉位置から閉止しようするドアに対してはそれに抗する大きな力が働き、当該ドアを開扉位置に確実に保持することが可能となる。
【0008】
上記開扉装置においては、該係合突起によって係合されないときの該第2係合部材に、該バネ付勢力に抗するように係合して、該第2係合部材の該摺動係合面及び該係止面が該移動経路上に位置するようにするストッパを有すようにすることができる。具体的には、該バネ付勢力は、該第2係合部材を該ストッパに係合させた状態で該ストッパに押し付けるようにして設定することができ、その押し付け力を調整することにより該バネ付勢力を調整することができる。
【0009】
該第2係合部材が該ストッパと係合された状態で該第2係合部材を変位可能として、該係合突起が該第2係合部材の該係止面と係合するときの当該ピボット軸の回動位置を調節可能とすることができる。このようにすることにより、ドアの開扉保持角度を調節することが可能となる。
【0010】
この場合、該第1軸線から該第2軸線よりも離れた位置で該第1及び該第2軸線に対して平行にされた第3軸線の周りで角度調節可能にして該固定用基板に取り付けられた係合部材ホルダを有し、該第2係合部材が第1軸線と該第3軸線との間の位置とされた該第2軸線の周りで枢動可能として該係合部材ホルダに枢着されるようにすることができる。係合部材ホルダの第3軸線の周りでの角度調節をすることにより、第2係合部材の位置を調節できるようにするものである。
【0011】
この開扉保持装置は、更に、該係合部材ホルダに並行して該固定基板に固定されたバネ収納筒部を有し、該バネがコイルバネとして該バネ収納筒部内に収納され、該係合部材ホルダは該第3軸線よりも該ピボット軸寄りの位置を該バネ収納筒部に隣接する側から該バネ収納筒部から離れた側に貫通する第1ネジ穴と、該第3軸線よりも該ピボット軸から離れた位置を該バネ収納筒部に隣接する側から該バネ収納筒部から離れた側に貫通する第2ネジ穴と、該第1ネジ穴に螺合され先端が該バネ収納筒部に係合する第1調節ネジと、該第2ネジ穴に螺合され先端が該バネ収納筒部に係合する第2調節ネジとを有し、該第1及び第2調節ネジの該第1及び第2ネジ穴との螺合位置を調節することにより該係合部材ホルダを該第3軸線の所要の角度位置とすることができるようにすることができる。
【0012】
該バネ収納筒部の該係合部材ホルダに隣接する側面を有し、該側面が、該係合部材ホルダに平行な面に対して該係合部材ホルダから離れる方向に傾斜する傾斜面を有し、該係合部材ホルダの該第3軸線の周りでの回動を可能とすることができる。
【0013】
このような傾斜面を設けない場合、バネ収納筒部による干渉なしに係合部材ホルダを回動するためには、係合部材ホルダをバネ収納筒部から大きく離さなければならず、当該開扉保持装置が大きくしなければならないが、傾斜面を設けることにより、係合部材ホルダをバネ収納筒部に接近して設けることを可能とする。
【0014】
上記開扉保持装置は、より具体的には、
該ピボット受け装置が、該ドア及びドア枠の該他方に固定される固定用基板と、
該固定用基板に固定された開扉保持用本体と、
を有し、
該開扉保持用本体が該バネ収納筒部を有し、
係合部材ホルダが該開扉保持用本体に該第3軸線の周りで枢動可能に取り付けられ、
該第1係合部材が、該開扉保持本体に該第1軸線の周りで枢動可能に取り付けられるようにすることができる。
【0015】
該第1係合部材は、該ピボット受け装置に回動可能に取り付けられ、該ピボット軸と該第1軸線に沿って整合され、該ピボット軸に対して相対的に回転しないように結合されるようにすることができる。
【0016】
具体的には、該第1係合部材が該第1係合部材の軸線に沿って伸びる小径部を有し、該ピボット軸が筒状とされ、該小径部が該ピボット軸内に同軸状に挿入され連結されるようにすることができる。
【0017】
本発明はまた、上述のような開扉保持装置を備えるドアヒンジ装置をも提供する。
【0018】
以下、本発明に係る開扉保持装置を備えたドアヒンジ装置の実施形態を、添付図面に基づき説明する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明に係る開扉保持装置を備えたドアヒンジ装置の実施形態を示す側面図であり、その主要部を
図3におけるI−I線に沿った断面で示す。
【0020】
【0021】
【
図3】
図1のIII-III線に沿った断面図である。
【0022】
【
図4】
図1のドアヒンジ装置が閉扉位置と開扉位置との間を動くときの構成要素の動きを示す図であり、(a)はドアが閉扉位置にあるとき、(b)はドアがほぼ45度開扉されたとき、(c)はドアが更に開扉されたとき、(d)はドアが開扉されたときを示している。
【0023】
【
図5】ドアの開閉位置の角度を変えるために第2係合部材を
図4に示す位置とは異なる位置としたドアヒンジを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1に示す本発明の実施形態に係るドアヒンジ装置10は、ドアDの上縁部D1に取り付けられるピボット軸装置12と、ドア枠Fに取り付けられ該ピボット軸装置12のピボット軸14を枢動可能に受け入れるピボット受け装置16とを有する。
【0025】
ピボット軸装置12は、ドアDの上縁部に固定される固定基板18と、該固定基板18に固定されピボット軸14を上下動可能に収納する支持筒20と、該ピボット軸14を該支持筒20内で上下動させるアーム装置22とを有する。このアーム装置は、ドアDをドア枠Fに取り付ける前はピボット軸14を支持筒20内に引き込んだ状態としておき、ドア枠Fに取り付けるときにはアーム22−1を矢印A方向に回動してピボット軸14を矢印Bの上方に突出させてピボット受け装置16内のピボット孔24内に挿入させ、その位置に保持する機能を有するものであり、例えば実公平6-10066号等で広く知られているのでここでは、その詳細の説明は省略する。
【0026】
ピボット受け装置16は、
図1に示すように、ドア枠Fにネジ28によって固定される固定用基板26と、固定用基板26の穴に圧入固定されて上記ピボット孔24を画定するピボット筒部30とを有し、ピボット軸装置12から延びるピボット軸14をピボット孔24内に回動自在に収納するようにされている。図示はしないが、上記と同様なピボット軸装置とピボット受け装置とが、ドアDの下縁部及び下部ドア枠部に上下方向で延びる軸線(特許請求の範囲の記載における第1軸線)X1に沿って整合して設けられ、ドアDが軸線X1を枢軸線として枢動するようにされている。
【0027】
本発明に係るドアヒンジ装置10では、ピボット受け装置16が、ドアDを所定角度位置の開扉位置にしたときに、その開扉位置に保持するための開扉保持装置32を有している。
図1乃至
図3に示すように、この開扉保持装置32は、ネジ33によって固定用基板26に固定されたブロック状の開扉保持用本体34を有する。開扉保持用本体34はピボット筒部30から上方に間隔を開けた位置で略水平に延びる軸受け部36を有しており、該軸受け部36にはピボット筒部30と第1軸線X1方向で整合された軸受け孔38が設けられている。軸受け孔38には第1係合部材40の回転軸42の大径部44が軸線X1を中心に回動自在に取り付けられている。第1係合部材40は、回転軸42の連結部47を受け入れて該回転軸42に対して回転しないように連結される連結部46と該連結部46の周縁部分から下方に延びる筒状部48とを有するキャップ状の部材とされ、該筒状部48は上述の支持筒20の上端外周部分の周りに相対的に回動可能に嵌合されている。回転軸42は第1軸線X1に沿って下方に延びる小径部50を有しており、その外周面に第1軸線X1方向に沿って延びるセレーション52が形成されており、対応するセレーション54が形成された、筒状のピボット軸14の内孔14-1内に挿入されて、該ピボット軸14と一緒に回動するようにされている。第1係合部材40の円筒状外周面40−1には小径のローラ62が第1軸線X1に平行に埋め込まれ、その一部が円筒状外周面40−1から突出するようにして当該第1係合部材40の係合突起62−1を形成している。
【0028】
開扉保持装置32は、第1係合部材40の回動における係合突起62−1の円弧状の移動経路の外側で第1軸線X1に平行な第2軸線X2の周りで枢動可能に取り付けられた第2係合部材66を有し、該第2係合部材66はコイルバネ64(
図3)によって係合突起62−1の移動径路62−2上に位置するように付勢される。第2係合部材66は、ドアD(従って、ドアに固定されているピボット軸装置12)が
図4の(a)に示す閉扉位置から開動されて
図4の(d)に示す開扉位置に近づくときに(
図4の(c))係合突起62−1が当該第2係合部材66に対して摺動係合しながらコイルバネ64の付勢力に抗して第2係合部材66を上記移動経路外に枢動して進むのを許容すると共にドアDが開扉位置(
図4の(d))に達したときにはコイルバネ64の付勢力により移動経路上に位置するようになされ、ドアDが該開扉位置(
図4の(d))から閉扉しようとしたときには係合突起62−1と係合して係合突起62−1の動きを止め、それによりドアDを該開扉位置(
図4の(d))に保持する。
【0029】
第2係合部材66は、ドアDが開扉位置(
図4の(d))に近づくときに該係合突起62−1によって摺動係合される摺動係合面66−1と、ドアDが開扉位置から閉扉しようとしたときに係合突起62−1と係合して係合突起62−1の動きを止める係止面66−2とを備える係止部66−3及び該係止部66−3から延出するバネ受け部66−4を有する。摺動係合面66−1は係合突起62−1によって第2係合部材66をコイルバネ64の付勢力に抗して枢動する第1の力F1(
図4の(c))を受け、係止面66−2は第2係合部材66をバネ力に抗して枢動する第2の力F2を受けるようにされている。この場合の第2の力F2の作用線は第1の力F1の作用線よりも第2軸線X2の近くを通るようにされている。従って、係合突起62-1がコイルバネ64の付勢力に抗して第2係合部材66を押しのけるために必要とされる開扉時の第1力F1は、閉扉する時にコイルバネ64の付勢力に抗して第2係合部材66を押しのけるために必要とされる第2の力F2よりも小さいものとなる。このために、小さな力で開扉ができ、しかも、開扉したドアDは大きな力で開扉された状態に保持されることになる。
【0030】
図示の実施形態では、第2係合部材66は、開扉保持本体34に上記第2軸線X2に平行にされた第3軸線X3に沿って延びる軸68によって、開扉保持本体34に枢動可能に支持された係合部材ホルダ70の第1係合部材40に隣接する端部に第2軸線X2を中心に延びる軸72によって枢動可能に支持されている。また、コイルバネ64は、開扉保持本体34にバネ収納孔69が設けられて形成されたバネ収納筒部74内に収納され、バネ収納筒部74の端部開口74−1から延出して第2係合部材66のバネ受け部66-4に当接され、該バネ受け部66-4は、コイルバネ64が当接される面とは反対側の面が、開扉保持本体34に取り付けられたストッパ60と係合可能とされている。このストッパ60は、コイルバネ64によってバネ付勢される第2係合部材66と係合することにより、第2係合部材66の摺動係合面66−1と係止面66−2が、第1係合部40の外周面40-1に近接して、第1係合部材の40の係合突起62−1の移動径路62−2内に位置決めされるようにする。バネ収納筒部74の他方の端部開口74−2にはネジ係合されたバネ力調整部材74−3が設けられており、該バネ力調整部材74−3を回動することによりバネ収納筒部74に対して出し入れして、ストッパ60との間に挟むコイルバネ64の圧縮の程度を調整して、当該コイルバネ64の第2係合部材66に対するバネ力を調整できるようになっている。
【0031】
係合部材ホルダ70は、第3軸線X3よりも第1軸線X1寄りをバネ収納筒部74に隣接する側70−1から該バネ収納筒部74から離れた位置を貫通する第1ネジ穴70−3と、第3軸線X3よりも第1軸線X1から離れた位置をバネ収納筒部74に隣接する側70−1からバネ収納筒部74から離れた側70−2に貫通する第2ネジ穴70−4と、第1ネジ穴70−3に螺合され先端がバネ収納筒部74に係合する第1調節ネジ70−5と、第2ネジ穴70−4に螺合され先端がバネ収納筒部74に係合する第2調節ネジ70−6とを有し、第1及び第2調節ネジ70−5、70−6の第1及び第2ネジ穴70−3、70−4との螺合位置(軸線方向位置)を調節することにより係合部材ホルダ70を第3軸線X3に対して所要の角度位置とすることができるようになっている。図示の例では、バネ収納筒部74の係合部材ホルダ70に隣接する側に、
図3に示した係合部材ホルダ70の側面に平行な側面74−4、該平行な側面74−4に対する垂直線が第3軸線X3を通る該平行な側面74−4の端部(
図3で見て左端)74−5から該平行な側面74−4に対して傾斜した傾斜面74−6とが設けられ、該係合部材ホルダ70が第3軸線を中心に
図3の位置から当該係合部材ホルダ70が傾斜面74−6に当接する位置まで回動可能とされており、上述の第1及び第2調節ネジ70−5及び70−6によって当該係合部材ホルダ70を第3軸線X3に対して所要の角度に角度調節ができるようにされている。
【0032】
図4は、そのような角度位置の調整を行って係合部材ホルダ70を傾斜させた状態、
図5は係合部材ホルダ70をバネ収納筒部74に略平衡にした状態を示しており、これにより第2係合部材66の位置が変位して、係合突起62−1と第2係合部材66との係合位置が変化して、それによりドアの開扉角度を
図4の(d)及び
図5に示すように調節できるようになっている。
【0033】
以上で述べた実施形態から分かるように本発明に係るドアヒンジ装置はドアを開扉位置に保持するための装置を備えるものであり、
図4の(c)と(d)との比較から分かるように、開扉されたドアが閉扉しようとしたときに閉止を阻止しようとする第2係合部材66に係る第2の力F2の作用線は、開扉するときに開扉を阻止しようとする第2係合部材66に係る第1の力F1の作用線よりも第2係合部材66の回転中心軸線である第2軸線X2の近くを通るようになるために、閉扉時の第2の力F2は開扉時の第1の力F1に較べて大きなものが必要となる。すなわち、開扉は小さな力で行うことができ、しかも開扉したドアは大きな力で開扉位置に保持されることとなる。
【0034】
以上、本発明に係るドアヒンジの実施形態につき説明したが本発明はこれに限定されるものではない、例えば、ピボット軸装置をドア枠に、ピボット受け装置をドアに取り付けたり、本発明に係るドアヒンジをドアの下縁部及び下部ドア枠に設けたりすることができる。
【符号の説明】
【0035】
ドアD;上縁部D1;ドア枠F;第1軸線X1;第2軸線X2;第3軸線X3;第1の力F1;第2の力F2;ドアヒンジ装置10;ピボット軸装置12;ピボット軸14;内孔14-1;ピボット受け装置16;固定基板18;支持筒20;アーム装置22;ピボット孔24;ネジ28;固定用基板26;ピボット筒部30;開扉保持装置32;開扉保持用本体34;軸受け部36;第1係合部材40;円筒状外周面;40−1回転軸42;大径部44;連結部46、47;筒状部48;小径部50;セレーション52;セレーション54;係合突起62−1;コイルバネ64;経路62−2;第2係合部材66;摺動係合面66−1;係止面66−2;バネ受け部66-3;軸68;バネ収納孔69;係合部材ホルダ70;バネ収納筒部に隣接する側70−1;バネ収納筒部から離れた側70−2;第1ネジ穴70−3;第2ネジ穴70−4;第1調節ネジ70−5;第2調節ネジ70−6;軸72;バネ収納筒部74;端部開口74−1;端部開口74−2;バネ力調整部材74−3;平行な側面74−4;平行な側面の端部74−5;傾斜面74−6