特許第5886946号(P5886946)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5886946銅、タングステンおよび多孔質低κ誘電体に対する増強された相溶性を有する半水溶性ポリマー除去組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5886946
(24)【登録日】2016年2月19日
(45)【発行日】2016年3月16日
(54)【発明の名称】銅、タングステンおよび多孔質低κ誘電体に対する増強された相溶性を有する半水溶性ポリマー除去組成物
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/42 20060101AFI20160303BHJP
   C11D 17/08 20060101ALI20160303BHJP
   H01L 21/027 20060101ALI20160303BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20160303BHJP
   C11D 3/20 20060101ALI20160303BHJP
   C11D 3/28 20060101ALI20160303BHJP
   C11D 3/43 20060101ALI20160303BHJP
   C11D 3/30 20060101ALI20160303BHJP
   C11D 1/88 20060101ALI20160303BHJP
   C11D 1/00 20060101ALI20160303BHJP
【FI】
   G03F7/42
   C11D17/08
   H01L21/30 572B
   H01L21/304 647A
   H01L21/304 647B
   H01L21/304 647Z
   C11D3/20
   C11D3/28
   C11D3/43
   C11D3/30
   C11D1/88
   C11D1/00
【請求項の数】29
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-513694(P2014-513694)
(86)(22)【出願日】2012年5月31日
(65)【公表番号】特表2014-523538(P2014-523538A)
(43)【公表日】2014年9月11日
(86)【国際出願番号】US2012040187
(87)【国際公開番号】WO2012166902
(87)【国際公開日】20121206
【審査請求日】2015年3月5日
(31)【優先権主張番号】61/519,902
(32)【優先日】2011年6月1日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503077143
【氏名又は名称】アバンター・パフォーマンス・マテリアルズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Avantor Performance Materials, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100116872
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 和子
(74)【代理人】
【識別番号】100107560
【弁理士】
【氏名又は名称】佐野 惣一郎
(72)【発明者】
【氏名】ゲミル ウィリアム アール.
(72)【発明者】
【氏名】ウェストウッド グレン
【審査官】 倉本 勝利
(56)【参考文献】
【文献】 特表2009−516360(JP,A)
【文献】 特表2009−515055(JP,A)
【文献】 特開2010−147476(JP,A)
【文献】 特表2007−526523(JP,A)
【文献】 特表2011−502281(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0234904(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F7/00;G03F7/004−7/18;7/26−7/42
H01L21/30−21/30、531@Z;
21/30,561−21/30,579;21/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ電子デバイスからエッチング処理後(PET)のポリマーフィルムを除去するための除去組成物であって、
(a)約5重量%〜約49重量%の水、
(b)約2重量%〜約20重量%のエチレングリコール、
(c)約30重量%〜約70重量%の1以上のグリコールエーテル溶媒、
(d)約0.5重量%〜約20重量%のモルホリノプロピルアミン
(e)メチルベンゾトリアゾールおよびトリルトリアゾールからなる群から選択される約0.1重量%〜約0.5重量%の腐食抑制剤化合物、ならびに任意の1以上の以下の成分、
(f)組成物中に存在するとき、約0.01重量%〜約1重量%の量の1以上の金属イオンキレート剤、
(g)組成物中に存在するとき、約0.5重量%〜約40重量%の量の1以上の他の極性有機溶媒、
(h)組成物中に存在するとき、約2重量%〜約12重量%の量の1以上の第三級アミン、
(i)組成物中に存在するとき、約0.01重量%〜10重量%の量の1以上のカテコールまたはアルキルカテコール、および
(j)組成物中に存在するとき、約0.01重量%〜1重量%の量の1以上の界面活性剤、
を含む組成物。
【請求項2】
前記組成物が、5−メチルベンゾトリアゾール、3−モルホリノプロピルアミンおよびエチレングリコールブチルエーテルを含有する、請求項1に記載の除去組成物。
【請求項3】
前記組成物が、第三級アミンを含有し、前記第三級アミンがトリエタノールアミンである、請求項1に記載の除去組成物。
【請求項4】
前記組成物が、第三級アミンを含有し、前記第三級アミンがトリエタノールアミンである、請求項1に記載の除去組成物。
【請求項5】
前記組成物が、金属イオンキレート剤を含有し、前記金属イオンキレート剤がtrans−1,2−シクロヘキサンジアミン四酢酸である、請求項3に記載の除去組成物。
【請求項6】
前記組成物が、金属イオンキレート剤を含有し、前記金属イオンキレート剤がtrans−1,2−シクロヘキサンジアミン四酢酸である、請求項4に記載の除去組成物。
【請求項7】
前記組成物が、他の極性有機溶媒を含有し、前記他の極性有機溶媒がN−メチルピロリドンである、請求項5に記載の除去組成物。
【請求項8】
前記組成物が、他の極性有機溶媒を含有し、前記他の極性有機溶媒がN−メチルピロリドンである、請求項6に記載の除去組成物。
【請求項9】
前記組成物が、カテコールまたはアルキルカテコールを含有する、請求項1に記載の除去組成物。
【請求項10】
前記組成物が、4−t−ブチルカテコールを含有する、請求項9に記載の除去組成物。
【請求項11】
約20.9%の水、約20%のN−メチルピロリドン、約46.5%のエチレングリコールブチルエーテル、約5%のエチレングリコール、約6%のトリエタノールアミン、約1.5%のモルホリノプロピルアミン、および約0.1%のメチルベンゾトリアゾールを含む、請求項1に記載の除去組成物。
【請求項12】
約20.75%の水、約20%のN−メチルピロリドン、約46.5%のエチレングリコールブチルエーテル、約5%のエチレングリコール、約6%のトリエタノールアミン、約1.5%のモルホリノプロピルアミン、約0.1%のtrans−1,2−シクロヘキサンジアミン四酢酸、n−ドデシル基を有する約0.05%の双極性ピロリドン環状界面活性剤および約0.1%のメチルベンゾトリアゾールを含む、請求項1に記載の除去組成物。
【請求項13】
約19.95%の水、約60.7%のエチレングリコールブチルエーテル、約10%のエチレングリコール、約9%のモルホリノプロピルアミン、約0.1%のtrans−1,2−シクロヘキサンジアミン四酢酸、n−ドデシル基を有する約0.05%の双極性ピロリドン環状界面活性剤および約0.2%のメチルベンゾトリアゾールを含む、請求項1に記載の除去組成物。
【請求項14】
約20.0%の水、約19.2%のn−メチルピロリジノン、約44.7%のエチレングリコールブチルエーテル、約4.8%のエチレングリコール、約1.4%のモルホリノプロピルアミン、約0.1%のメチルベンゾトリアゾールならびにカテコールおよびアルキルカテコールから選択される、約4%のアルミニウム腐食抑制剤を含む、請求項1に記載の除去組成物。
【請求項15】
マイクロ電子デバイスからエッチング処理後(PET)のポリマーフィルムを除去するのに効果的な時間および温度で請求項1に記載の組成物と前記マイクロ電子デバイスとを接触させる工程を含む、マイクロ電子デバイスからエッチング処理後(PET)のポリマーフィルムの除去プロセス。
【請求項16】
マイクロ電子デバイスからエッチング処理後(PET)のポリマーフィルムを除去するのに効果的な時間および温度で請求項2に記載の組成物と前記マイクロ電子デバイスとを接触させる工程を含む、マイクロ電子デバイスからエッチング処理後(PET)のポリマーフィルムの除去プロセス。
【請求項17】
マイクロ電子デバイスからエッチング処理後(PET)のポリマーフィルムを除去するのに効果的な時間および温度で請求項3に記載の組成物と前記マイクロ電子デバイスとを接触させる工程を含む、マイクロ電子デバイスからエッチング処理後(PET)のポリマーフィルムの除去プロセス。
【請求項18】
マイクロ電子デバイスからエッチング処理後(PET)のポリマーフィルムを除去するのに効果的な時間および温度で請求項4に記載の組成物と前記マイクロ電子デバイスとを接触させる工程を含む、マイクロ電子デバイスからエッチング処理後(PET)のポリマーフィルムの除去プロセス。
【請求項19】
マイクロ電子デバイスからエッチング処理後(PET)のポリマーフィルムを除去するのに効果的な時間および温度で請求項5に記載の組成物と前記マイクロ電子デバイスとを接触させる工程を含む、マイクロ電子デバイスからエッチング処理後(PET)のポリマーフィルムの除去プロセス。
【請求項20】
マイクロ電子デバイスからエッチング処理後(PET)のポリマーフィルムを除去するのに効果的な時間および温度で請求項6に記載の組成物と前記マイクロ電子デバイスとを接触させる工程を含む、マイクロ電子デバイスからエッチング処理後(PET)のポリマーフィルムの除去プロセス。
【請求項21】
マイクロ電子デバイスからエッチング処理後(PET)のポリマーフィルムを除去するのに効果的な時間および温度で請求項7に記載の組成物と前記マイクロ電子デバイスとを接触させる工程を含む、マイクロ電子デバイスからエッチング処理後(PET)のポリマーフィルムの除去プロセス。
【請求項22】
マイクロ電子デバイスからエッチング処理後(PET)のポリマーフィルムを除去するのに効果的な時間および温度で請求項8に記載の組成物と前記マイクロ電子デバイスとを接触させる工程を含む、マイクロ電子デバイスからエッチング処理後(PET)のポリマーフィルムの除去プロセス。
【請求項23】
マイクロ電子デバイスからエッチング処理後(PET)のポリマーフィルムを除去するのに効果的な時間および温度で請求項9に記載の組成物と前記マイクロ電子デバイスとを接触させる工程を含む、マイクロ電子デバイスからエッチング処理後(PET)のポリマーフィルムの除去プロセス。
【請求項24】
マイクロ電子デバイスからエッチング処理後(PET)のポリマーフィルムを除去するのに効果的な時間および温度で請求項10に記載の組成物と前記マイクロ電子デバイスとを接触させる工程を含む、マイクロ電子デバイスからエッチング処理後(PET)のポリマーフィルムの除去プロセス。
【請求項25】
マイクロ電子デバイスからエッチング処理後(PET)のポリマーフィルムを除去するのに効果的な時間および温度で請求項11に記載の組成物と前記マイクロ電子デバイスとを接触させる工程を含む、マイクロ電子デバイスからエッチング処理後(PET)のポリマーフィルムの除去プロセス。
【請求項26】
マイクロ電子デバイスからエッチング処理後(PET)のポリマーフィルムを除去するのに効果的な時間および温度で請求項12に記載の組成物と前記マイクロ電子デバイスとを接触させる工程を含む、マイクロ電子デバイスからエッチング処理後(PET)のポリマーフィルムの除去プロセス。
【請求項27】
マイクロ電子デバイスからエッチング処理後(PET)のポリマーフィルムを除去するのに効果的な時間および温度で請求項13に記載の組成物と前記マイクロ電子デバイスとを接触させる工程を含む、マイクロ電子デバイスからエッチング処理後(PET)のポリマーフィルムの除去プロセス。
【請求項28】
マイクロ電子デバイスからエッチング処理後(PET)のポリマーフィルムを除去するのに効果的な時間および温度で請求項14に記載の組成物と前記マイクロ電子デバイスとを接触させる工程を含む、マイクロ電子デバイスからエッチング処理後(PET)のポリマーフィルムの除去プロセス。
【請求項29】
前記マイクロ電子デバイスが低κ誘電体を有する、請求項15に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロエレクトロニクスの洗浄/除去組成物、ならびに半導体基板のエッチング処理後(PET)のポリマーフィルムおよびフォトレジストならびにエッチング・アッシング後の残留物を除去するためのそれらの使用に関する。組成物は、銅、タングステンおよび低κ誘電体との相溶性を維持しながら、優れたポリマーフィルム除去能力を示す。洗浄/除去組成物は多孔質低κ誘電体をエッチングも傷つけもせず、かつタングステンおよび窒化チタンと相溶性を有する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置は、無機基質をフォトレジストでコーティングする工程;フォトレジストフィルムを光照射および後続の現像によりパターニングする工程;当該パターニングしたフォトレジストフィルムをマスクとして用いて無機基質の露わになった領域をエッチングし、微細回路を形成する工程;ならびにパターニングしたフォトレジストフィルムを無機基質から除去する工程の手順により製造されている。あるいは、上述と同様の方法で、微細回路を形成したのち、パターニングしたフォトレジストフィルムはアッシングされ、次いで残留レジスト残渣は無機基質から除去される。
【0003】
先進の集積において、22nmのノード技術を超えて、金属のハードマスクはデバイス構造の製造に用いられ役立ってよい。そのハードマスクは典型的にはTiまたはTiNからできていて、下部層の比較的反応しやすい低κ誘電体物質、特に多孔質低κ誘電体に乾燥エッチングの選択性を与え、保護する。エッチングの残留物は、比較的不溶性の無機ポリマーであるTiOから構成されているので、非常に除去しがたいものであり得、このプロセスの不利な点の一つである。これらのポリマー化合物を除去する主な方法は、希薄なHFに基づく洗浄製剤を用いることである。そのような希薄なHFに基づく洗浄製剤の使用は、低κ誘電体上もしくはその周囲またはTiNと、結果的にTiNを剥離する低κ誘電体との接触部分で反応しやすい多孔質低κ誘電体および高密度二酸化ケイ素物質を傷つける結果としばしばなるだろう。これらの無機残留物の形成を抑制するため、ポリマーフィルムは、例えば、O.Jourbert,N.Posseme,T.Chevolleau,T.David,M.Darnonにより、UCPSS(2010年9月、ベルギーのオステンド)で、Q.T.Le,F.Drieskens,J.F.de Marneffe,T.Conard,m.Lux,H.Struyf,G.Vereeckeにより、UCPSS(2010年9月、ベルギーのオステンド)で、およびN.Posseme,R.Bouyssou,T.Chevolleau,T.David,V.Arnal,S.Chhun,C,Monget,E.Richard,D.Galpin, J.Guillan,L.Arnaud,D.Roy,M.Guillermet,J. Ramard,O.Joubert,C.Veroveにより、IITC(2009年、日本の北海道札幌)で開示されるように、CHプラズマ処理などのエッチング後のプラズマ処理を用いて、基質に用いられうる。このポリマーフィルムは、実質的にTiOのタイプの残留物の発生を排除する。しかしながら、エッチング処理後(PET)ポリマーフィルムは、エッチングプロセス後およびその後のメタライゼーションが生じうる前に除去されなければならない。
【0004】
多孔質低κ誘電体の開発は、近年は著しく進展している。誘電体の一般的な定義は、3.0未満のκ値である低κ誘電体および2.5未満のκ値である超低κ誘電体を包含する。超低κ誘電体物質は、実際、高多孔質であり、そしてその物質の構造フレーム作用の直接攻撃により、結果的にエッチングするか、その物質の細孔への化学的浸透により低κ誘電体の絶縁性特性を破壊するかにより化学処理から損傷をより受けやすい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
それゆえ、PETポリマーフィルムおよび残留物を除去し、下層の誘電体層、とりわけ低κ誘電体物質を損傷させず、または装置のメタライゼーションに損傷を与えない洗浄液を提供する必要がある。特に、エッチング/アッシング残留物、フォトレジスト、およびPETポリマーを除去し、下層の多孔質低κ誘電体層を損傷せず、またはメタライゼーション、特に銅およびタングステンのメタライゼーションに損傷を与えない洗浄組成物を提供するのが望ましい。
【0006】
改善された溶液は、表面からポリマーフィルムおよび残留物を除去する性能を有し、金属銅にできるだけ無害であり(エッチング速度<1.0A/min)、多孔質低κ誘電体をエッチングも損傷も与えず(屈折率とκ値のシフトにより測定)、そしてタングステンおよび窒化チタンと相溶性がなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のPETポリマー除去組成物はpH>9のpHにおいて塩基性(5%の水溶液)の半水溶液、溶媒およびアミンを含有する組成物であり、水、エチレングリコール、1以上のグリコールエーテル溶媒、モルホリノプロピルアミン、腐食阻害化合物(メチルベンゾトリアゾールまたはトリルトリアゾール)、および任意に1以上の他の極性有機溶媒、1以上の金属イオンキレート化合物、1以上の第三級アミン、アルミニウム腐食抑制剤などの1以上のカテコールまたはアルキル置換カテコール、および1以上の界面活性剤を含み、実質的にそれらからなりまたはそれらからなる。本発明の組成物は、マイクロ電子基板を洗浄するために用いられて、フォトレジスト、エッチング残留物およびPETポリマー、とりわけ、スズハードマスク、多孔質低κ誘電体フィルム、および銅またはタングステンメタライゼーションを含むマイクロ電子基板から除去する。マイクロ電子基板またはマイクロ電子基板装置の洗浄を行うため、本発明の組成物と、当該技術分野で公知の手段による洗浄を遂行するために一定の間かつ十分な温度で接触される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】段落0025に記載する未処置のウェーハ表面のSEM画像である。
図2】段落0025に記載する200:1のdHFディップで処置したウェーハ表面のSEM画像である。
図3】段落0025に記載する比較先行技術組成物で処置したウェーハ表面のSEM画像である。
図4】段落0025に記載する本発明の組成物で処置したウェーハ表面のSEM画像である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のPETポリマー除去組成物は、pH>9のpHにおいて塩基性の半水溶液、溶媒およびアミンを含有する組成物であり、水、エチレングリコール、1以上のグリコールエーテル溶媒、モルホリノプロピルアミン、腐食阻害化合物(メチルベンゾトリアゾールまたはトリルトリアゾール)、および任意に1以上の他の極性有機溶媒、1以上の金属イオンキレート化合物、1以上の第三級アミン、および1以上の界面活性剤を含み、実質的にそれらからなりまたはそれらからなる。これらの除去組成物は、>9のpH(5%の水溶液製剤)を有し、そして約5重量%〜約40重量%の水、約30重量%〜約70重量%の1以上のグリコールエーテル溶媒、約0.5重量%〜約20重量%のモルホリノプロピルアミン、約2重量%〜約20重量%のエチレングリコール、約0.1重量%〜約0.5重量%の腐食阻害化合物(メチルベンゾトリアゾールまたはトリルトリアゾールから選択される)、任意に5重量%〜約40重量%の1以上の他の極性有機溶媒、任意に約2重量%〜約12重量%の1以上の第三級アミン、任意に約0.01重量%〜約1重量%の1以上の金属イオンキレート化合物、任意に約0.01重量%〜約10重量%の1以上のカテコールまたはアルキル置換カテコール(アルミニウム腐食抑制剤として)、および任意に0.01重量%〜1重量%の1以上の界面活性剤化合物を含有するだろう。
【0010】
任意のグリコールエーテル化合物は、本発明の組成物において用いられてよい。好適なグリコールエーテルは、これらに限定されないが、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコールブチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、ジエチレングリコールブチルエーテル、ジエチレングリコールプロピルエーテル、トリエチレングリコールメチルエーテル、トリエチレングリコールエチルエーテル、トリエチレングリコールブチルエーテルおよびこれらの混合物を包含する。本発明の洗浄組成物中に存在するグリコールエーテル成分の量は、一般的に、組成物の約30重量%〜約70重量%、好ましくは約35重量%〜約65重量%、およびより好ましくは約40重量%〜約65重量%の範囲にあるだろう。
【0011】
一方、エチレングリコール成分は、除去組成物中に、約2重量%〜約20重量%の量で存在してよく、好ましい量は、約3重量%〜約15重量%、およびさらにより好ましい量は約5重量%〜約10重量%である。
【0012】
除去組成物の水成分は、一般的に、約5重量%〜約40重量%、好ましくは約10重量%〜約30重量%、より好ましくは約15重量%〜25重量%、およびなおより好ましくは約20重量%の量で除去組成物中に存在するだろう。
【0013】
本発明の除去組成物中の腐食抑制剤は、銅エッチング速度を減少するために用いられ、メチルベンゾトリアゾール、特に、5−メチルベンゾトリアゾールもしくは4−メチルベンゾトリアゾール、またはトリルトリアゾールを包含する。ベンゾトリアゾール自体、以下のデータおよび説明に示されるようなこれらの製剤中に用いられうる。
【0014】
モルホリノプロピルアミンは、一般的に、約0.5重量%〜約20重量%、好ましくは約0.5重量%〜約15重量%、より好ましくは約1重量%〜約10重量%の量で、除去組成物中に存在するだろう。最も好ましいモルホリノプロピルアミンは、3−モルホリノプロピルアミンである。
【0015】
好適な金属イオンキレート化合物は、任意に、しかし好ましくは、除去組成物にも包含されてよい。存在するとき、金属イオンキレート化合物は、一般的に約0.01重量%〜約1重量%、好ましくは約0.05重量%〜1重量%、およびより好ましくは約0.1重量%〜約0.5重量%、最も好ましくは約0.1重量%〜約0.2重量%の量で除去組成物に存在するだろう。好適な金属イオンキレート剤の例は、これらに限定されないが、trans−1,2−シクロヘキサンジアミン四酢酸(CyDTA)、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、スズ酸塩、ピロリン酸塩、アルキリデン−ジホスホン酸誘導体(例えば、エタン−1−ヒドロキシ−1,1−ジホスホン酸)、エチレンジアミン、ジエチレントリアミンまたはトリエチレンテトラミン機能性部分を含有するホスホン酸塩(例えば、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)(EDTMP)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)、およびトリエチレンテトラミンヘキサ(メチレンホスホン酸))ならびにそれらの混合物を包含する。
【0016】
任意の他の好適な極性有機溶媒は、任意に本発明の組成物中に用いられてよい。好適な極性溶媒は、これらに限定されないが、スルホラン、N−メチル−1−ピロリジノン;ジメチルスルホキシド、ジメチルピペリドン、1−(2−ヒドロキシエチル)−2−ピロリジノン、および1−メチル−2−ピロリジノンおよびこれらの混合物を包含する。そのような他の極性有機溶媒は、本発明の除去組成物中に存在するとき、一般的に、5重量%〜約40重量%、好ましくは約10重量%〜約30重量%、およびより好ましくは約15重量%〜約25重量%および最も好ましくは約20重量%の量であるだろう。
【0017】
第三級アミン成分が除去組成物中に包含されるとき、一般的に、約2重量%〜約12重量%、好ましくは約4重量%〜約10重量%およびより好ましくは約5重量%〜約7重量%、最も好ましくは約6重量%の量で存在する。任意に好適な第三級アミンは、用いられてよく、限定されないが、トリエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、ジエタノールアミン、ヘキサメチレンテトラミンおよびこれらの混合物を包含する。
【0018】
本発明の洗浄組成物により洗浄されるマイクロ電子デバイスは、アルミニウムの存在を有し、そして洗浄組成物にさらされるとき、1以上のカテコールまたはアルキル置換カテコールは、アルミニウム腐食抑制剤として本発明の洗浄組成物中に存在するのが望ましい。任意の好適なカテコールまたはアルキル置換カテコールは、アルミニウム腐食抑制剤として用いられてよい。任意の好適なアルキルカテコールは、用いられてもよいが、そのアルキル基は好ましくは、1〜4個の炭素原子を含有するものである。そのようなアルミニウム腐食抑制剤の好適な例は、これらに限定されないが、3−メチルカテコール、4−メチルカテコール、3−エチルカテコール、4−エチルカテコール、3−n−プロピルカテコール、4−n−プロピルカテコール、および4−t−ブチルカテコールを包含する。アルミニウム腐食抑制剤は、好ましくは4−t−ブチルカテコールである。この任意のアルミニウム腐食阻害剤は、組成物の約0.01重量%〜約10重量%、好ましくは約0.1重量%〜約7重量%、より好ましくは約0.5重量%〜5重量%の量で本発明の組成物中に存在してよい。
【0019】
任意の好適な界面活性剤は、本発明の除去組成物に任意に用いられてよい。好適な界面活性剤の例は、これらに限定されないが、アセチレン性のジオール非イオン性界面活性剤(Surfynol(登録商標)61、Surfynol(登録商標)465(Air Products製))、非イオン性フッ素系界面活性剤(Zonyl(登録商標)FSH(E.I.DuPont製)、およびInternational Specialty Products製のSurfadone(登録商標)LP100およびSurfadone(登録商標)LP300界面活性剤)を包含する。LP100およびLP−300は、構造的に、n−オクチル(LP−100)またはn−ドデシル(LP−300)のいずれかの疎水性のアルキル基を有する双極性ピロリドン環からなる。双極性ピロリドン環界面活性剤は、好ましい。界面活性剤は除去組成物中に存在するとき、一般的に約0.01%〜約1重量%、好ましくは約0.01〜約0.5%およびより好ましくは約0.01%〜約0.05%、最も好ましくは約0.05%の量で存在するだろう。
【0020】
アミン化合物を含有する、溶媒に基づく洗浄組成物の使用は、フォトレジストおよび/または残留物の形態でポリマーの除去に大規模に用いられている。これらの製剤は、典型的には、水を含有せず、一般的にアルミニウム技術を用いる半導体の製造において用いられる。銅技術の進行は、それらは典型的には銅をエッチングするであろうため、そのような先行技術の洗浄剤の利用を制限する。腐食抑制剤は一般的に、銅の相互接続部に損傷を与えるのを抑制するために用いられる。溶媒消費の減少の要求およびより環境にやさしい化学の要求が増加しているので、製剤に半水溶性化学を追及することが追い求められている。半水溶性製剤の場合、第一級アミンが存在するとき、腐食抑制剤は銅の相溶性を維持する必要がある。一般的に、この腐食抑制剤はベンゾトリアゾールである。ベンゾトリアゾールは、約1重量%の比較的高濃度で効果的である、この濃度レベルで、原料由来の少量の金属不純物は問題になる。この種の製剤において、銅腐食抑制剤としてベンゾトリアゾールの導入は、ポリマー性Cu−BZTの不溶性のフィルムは、特定の環境下で銅の表面に沈着しうるという新しい問題を生じることが分かった。これは結果的に、製造プロセスの次の手順において銅の沈着物を後で洗浄することにおいて、回路の破壊的失敗になるので、このことはあまり望ましくない。特別なアミンおよび低濃度の特別な腐食抑制剤の独特の組み合わせは銅に損傷を与えない製剤を生成すしうることは明らかでない。本発明の組成物は、エチレングリコールおよびグリコールエーテル溶媒を含有する半水溶性塩基性組成物中でモルホリノプロピルアミン(MPA)とメチルベンゾトリアゾール(MBT)またはトリルトリアゾール(TT)の独特の組み合わせを利用してこの問題を解決する。
【実施例】
【0021】
本発明の除去洗浄組成物の具体例として、好適な組成物の例を限定することなく、以下の例示に説明されており、そこにおける数値は重量%を表す。
【0022】
【表1】
【0023】
本発明の除去組成物の相溶性を、以下の例により説明する。表1の本発明の組成物における物質の65℃で20分間の処置後に、測定した。水洗を当該組成物の処置後に行った。金属フィルム(Cu、W、およびTiN)の厚さを4点プローブを用いて測定した。多孔質超低κ誘電体フィルムの厚さおよび屈折率(n)を、偏光解析法により測定した。誘電率(κ)をHgプローブを用いて測定した。表2中の組成物1、2および3は、表1に示す5−MBTを含有する組成物である。
【0024】
【表2】
【0025】
本発明の除去組成物中にモルホリノプロピルアミンを用いる独自性と非自明性を以下の実験により説明する。洗浄製剤中にアミンを使用すれば、当該組成物のポリマーの除去性能大きく増加し、特に、ポリマー残留物の除去において、第一級アミンは第二級アミンまたは第三級アミンより、より効果的である。半水溶性製剤中の第一級アミンの使用は、結果的に銅を腐食するだろう。それゆえ、腐食抑制剤は、水酸化物イオン(OH)または第一級アミン(NHR)のいずれかからの攻撃から銅表面を保護するため必要である。以下の実験を、第一級アミンおよび第二級アミンの例示物を用いて行い、その銅エッチング速度を65℃で20分の処置の間測定した。銅フィルムの厚さを、処置の前後に4点プローブ方法により測定した。当該組成物は、第一級アミン化合物の同一性を除き等しく、20.9重量%のH0、20%のNMP、46.5%のEGBE、6%のTEA、1.5%の第一級アミン、5%のEG、および0.1%の5−MBTを含有した。表3は、銅のエッチング速度を示す。
【0026】
【表3】
【0027】
MPAの使用は、優れた銅の相溶性を与え、ポリマーフィルムおよび残留物を溶解するのに有用な反応性第一級アミンを提供する。
【0028】
ベンゾトリアゾール(BZT)と比べて、5−MBTまたはTTを本発明のモルホリノプロピルアミン組成物に用いる独自性は、以下の実験により示されている。20.9重量%のH20、20%のNMP、46.5%のEGBE、6%のTEA、1.5%の第一級アミン、5%のEG、および0.1%の5−MBT、TT、またはBZTのいずれかを含有する等価組成物を、5−MBT、TT、またはBZTの有用性を試験するために用いた。表4は、第一級アミンと腐食抑制剤の関数としての銅エッチング速度を示す。
【0029】
【表4】
【0030】
MPAおよび5−MBTまたはTTの独特の組み合わせは、優れた銅の相溶性を与えたが、BZTまたは他のアミン(MIPAおよびMEAなど)との組成物は、優れた銅の相溶性を与えない。
【0031】
水溶液から銅上へのベンゾトリアゾールフィルムの沈着は、文献の広範囲に記載があり、比較的成熟した分野である。この文献のほとんどは、溶媒システムとは対照的に、水溶液中のベンゾトリアゾールおよびその誘導体の使用と関連する。本発明を開発したときの驚く知見は、できるだけ表面における未変性オキシドを除去し、初期の銅表面に近い表面を顕示する、銅サンプルの処置後、開示された組成物との処置の結果、不溶性フィルムが沈着したことである。このフィルム(写真参照)は、銅イオンおよび阻害剤分子からなる。この沈着は、金属イオンキレート剤(CyDTA)を包含していることにより抑制されうる。当該フィルムは主にCu2+および阻害剤からなるものを形成するだろう。金属イオンキレート剤の役割は製剤溶解性錯体としてCu2+を結合することであり、そして、これにより、Cu2+が不溶性錯体として阻害剤分子と錯形成することを予防する。
【0032】
先行技術と比較して本発明の組成物の独自性およびさらに有利な点は、以下の試験によっても実証される。金属銅の沈着したフィルムを有するシリコンウェーハを、室温で30分間、200:1のdHFディップで処理し、周囲条件で徐々に形成された任意の未変性の銅酸化物を除去した。撹拌棒を用いてビーカー中で当該処置を行った。この処置に続いて、ウェーハを水で洗浄し、その後以下の比較例および本発明組成物で30分間65℃で処置した。その後、不溶性の沈着が生じたときに、ウェーハをSEM画像として測定した。比較例の組成物は、米国特許出願公開第2010/0151610号(A1)の実施例3に示されている組成物(20%の水、2%のモルホリノプロピルアミン、2%のモノエタノールアミン、53%のジエチレングリコールモノブチルエーテルおよび1%のベンゾトリアゾールを含有する)だった。本発明の組成物は、本願の表1の組成物2であり、そこにおける腐食抑制剤は5−MBTであり、つまり20.75%の水、20%のNMP、20%のEGBE、5%のEG、6%のTEA、1.5%のMPA、0.1%のCyDTA、0.05%のLP−300および0.1%の5−MBTの組成物だった。ウェーハのSEM画像は、結果的に以下の観察結果だった。ウェーハ上の未処置の銅表面は図1に示すように、表面にポリマーフィルム画像がなかった。同様に、ウェーハを200:1のdHFディップで処理した後、図2に示すように、表面にポリマーフィルムのない画像だった。未変性のオキシドを除去し、その後先行技術の比較例の組成物で処置したウェーハの観察結果は、図3に示すようにSEM画像において著しく不要なポリマーフィルムを示した。対照的に、未変性のオキシドを除去し、その後本発明の組成物で処置したウェーハの観察結果は、図4に示すようにSEM画像においてポリマーフィルムを示さなかった。このように、先行技術の組成物は銅の腐食を予防するのに好適であるかもしれないが、不溶性フィルムの沈着を抑制できない。
【0033】
上記組成物が露出したアルミニウムを有するマイクロ電子デバイスを洗浄するために用いられるとき、カテコールまたはアルキルカテコールを含有する本発明の組成物の望ましさおよび利点は、以下の実施例で示される。ケイ素フィルム上に1600Aの厚さの、露出したアルミニウム層を有する1インチ×1インチ(2.54cm×2.54cm)の大きさのウェーハピースを、本発明の洗浄組成物を含有する撹拌棒(650rpm)を伴うビーカーに沈めた。用いられた組成物は、表1の組成物1、4、5、6および7であった。ウェーハピースを洗浄組成物に洗浄組成物に、65℃で30分間の間さらした。水洗浄を当該組成物において処置した後に行った。アルミニウム腐食(Alエッチング速度)を4点プローブを用いて決定した。Alエッチング速度の結果を表5において説明する。
【0034】
【表5】
【0035】
本発明は、本願明細書に記載されており、その具体的な実施形態を参照して、本願明細書に開示される本発明の概念の精神および範囲を逸脱せずに、変更、修正およびバリエーションはなされうる。したがって、添付する請求項の精神および範囲にあるものは、そのような変化、修正およびバリエーションを包含することを意図する。




図1
図2
図3
図4