(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明の導電性接着剤組成物は、1分子あたり2個以上のエポキシ基を有し、常温で固体であるビスフェノール型エポキシ樹脂(A)、1分子あたり2個以上のエポキシ基を有し、常温で固体であるノボラック型エポキシ樹脂(B)、カルボキシル基を有する樹脂(C)及び導電性フィラー(D)を含有し、カルボキシル基を有する樹脂(C)が、カルボキシル基含有ポリウレタン樹脂(C−1)及びカルボキシル基含有ポリアクリル樹脂(C−2)からなる群から選択される少なくとも1つを含有することを特徴とするものである。このような本発明の導電性接着剤組成物によって形成される接着層は、硬化後の架橋密度が均一であり、なおかつ、高い架橋密度が得られるものである。これによって、耐湿性、耐水性、耐熱性、物理的強度、電気的性質等において優れた性質を有する接着層を形成することができる。また、加工時にブリードアウト等の問題を生じることもなく、優れた加工特性を有するものである。更に、仮接着後長期間保管した後にも熱プレスによる接着工程において良好な接着性能を保持することができる。
【0021】
(ビスフェノール型エポキシ樹脂(A)及びノボラック型エポキシ樹脂(B))
本発明において使用するエポキシ樹脂(A)は、1分子あたり2個以上のエポキシ基を有し、常温で固体であるビスフェノール型エポキシ樹脂である。常温で固体であるとは、25℃において無溶媒状態で流動性を有さない固体状態であることを意味する。上記接着層をノボラック型エポキシ樹脂のみからなるものとすると、密着性や成膜性が充分ではないという点で問題があるため、ビスフェノール型エポキシ樹脂(A)を必須とするものである。また、加工性良好なものとするため、常温で固形のものを使用することが必要となる。
【0022】
このようなビスフェノール型エポキシ樹脂(A)としては特に限定されず、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、テトラブロムビスフェノールA型エポキシ樹脂等が挙げられる。これらのエポキシ樹脂は、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのうち高接着性、耐熱性の点から、ビスフェノールA型エポキシ樹脂またはビスフェノールF型エポキシ樹脂を用いることが好ましい。
【0023】
上記ビスフェノール型エポキシ樹脂(A)としては、エポキシ当量が800〜10000であるものを使用することが好ましい。これによって、補強板との密着力がより向上するという点で好ましい。上記エポキシ当量の下限は、1000であることがより好ましく、1500であることが更に好ましい。上記エポキシ当量の上限は、5000であることがより好ましく、3000であることが更に好ましい。
【0024】
上記ビスフェノール型エポキシ樹脂(A)として使用することができる市販のエポキシ樹脂としては、EPICLON4050、7050、HM−091、HM−101(商品名、DIC株式会社製)、jER1003F、1004、1004AF、1004FS、1005F、1006FS、1007、1007FS、1009、1009F、1010、1055、1256、4250、4275、4004P、4005P、4007P、4010P(商品名、三菱化学株式会社製)等を挙げることができる。
【0025】
上記ノボラック型エポキシ樹脂(B)は、1分子あたり2個以上のエポキシ基を有し、常温で固体であるノボラック型エポキシ樹脂である。ノボラック型エポキシ樹脂は、エポキシ樹脂密度が高いものであるにもかかわらず、他のエポキシ樹脂との混和性も良好であり、かつ、エポキシ基間の反応性の差も小さいため、塗膜全体を均一に高架橋密度にすることができる。
上記ノボラック型エポキシ樹脂としては特に限定されず、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、α−ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、臭素化フェノールノボラック型エポキシ樹脂等を挙げることができる。これらのうち高接着性、耐熱性の点から、フェノールノボラック型エポキシ樹脂またはクレゾールノボラック型エポキシ樹脂を用いることが好ましい。
【0026】
上記ノボラック型エポキシ樹脂(B)は、エポキシ当量が90〜300であることが特に好ましい。これによって、樹脂の耐熱性が上がるという効果が得られる。上記エポキシ当量の下限は、150であることがより好ましく、170であることが更に好ましい。上記エポキシ当量の上限は、250であることがより好ましく、230であることが更に好ましい。
【0027】
上述したようなノボラック型エポキシ樹脂(B)として使用することができる市販のエポキシ樹脂としては、EPICLONN−660、N−665、N−670、N−673、N−680、N−695、N−655−EXP−S,N−662−EXP−S、N−665−EXP、N−665−EXP−S、N−672−EXP、N−670−EXP−S、N−685−EXP、N−673−80M、N−680−75M、N−690−75M、N−740、N−770、N−775、N−740−80M、N−770−70M、N−865、N−865−80M(商品名、DIC株式会社製)jER152、154、157S70(商品名、三菱化学株式会社製)YDPN−638、YDCN−700、YDCN−700−2、YDCN−700−3、YDCN−700−5、YDCN−700−7、YDCN−700−10、YDCN−704、YDCN−700−A(商品名、新日鐵化学株式会社製)等を挙げることができる。
【0028】
本発明の導電性接着剤組成物の導電性接着剤層は、上記ビスフェノール型エポキシ樹脂(A)とノボラック型エポキシ樹脂(B)とを、重量比85:15〜99:1の割合で含有するものであることが好ましい。上記比率のものとすることで、補強板への密着力を確保し、部品実装時のリフロー工程に耐え得る耐熱性を付与することができる。また、上記比率において99:1よりもビスフェノール型エポキシ樹脂(A)の割合が大きくなると、部品実装時のリフロー工程に耐えることが出来なくなるおそれがあるという点で好ましくなく、85:15よりもノボラック型エポキシ樹脂(B)の割合が大きくなると、被着体(Ni−SUS、SUS、金めっき電極、ポリイミド樹脂等)への密着力低下という点で好ましくない。
【0029】
なお、本明細書におけるエポキシ当量は、電位差滴定によって測定された値である。
【0030】
(カルボキシル基を有する樹脂(C))
本発明の導電性接着剤組成物は、更に、カルボキシル基含有ポリウレタン樹脂(C−1)及びカルボキシル基含有ポリアクリル樹脂(C−2)からなる群から選択される少なくとも1つを含有することが好ましい。
すなわち、カルボキシル基とエポキシ基との反応によって硬化を行うものであることから、耐熱性の向上、被着体との密着力向上という点で好ましい性能が得られるものである。
また、カルボキシル基は鎖の末端に有するものであっても、側鎖として有するものであってもよいが、側鎖として有するものであることが好ましい。
【0031】
(カルボキシル基を有するポリウレタン樹脂(C−1))
上記カルボキシル基を有するポリウレタン樹脂(C−1)について、以下説明する。
カルボキシル基を有するポリウレタン樹脂(C−1)は、分子内にカルボキシル基を含有する樹脂であり、カルボキシル基を有するポリオール化合物(1)と、ポリオール(2)と必要に応じて短鎖ジオール化合物(3)と、必要に応じてポリアミン化合物(4)と、ポリイソシアネート化合物(5)とを反応させて得られる。このような反応に際して、ポリオール化合物(1)としてカルボキシル基を有するものを使用することで、カルボキシル基を有するポリウレタン樹脂(C−1)を好適に得ることができる。
【0032】
本明細書における「ポリウレタン」とは、ポリウレタン及びポリウレタン−ウレアの総称を意味する。なお、この「ポリウレタン」は、必要に応じてアミン成分を反応させたものであってもよい。また、本明細書における「活性水素含有基」とは、イソシアネート基との反応性を有する、活性水素を持った官能基を意味する。このような「活性水素含有基」の具体例としては、水酸基、メルカプト基、カルボキシル基、アミノ基などを挙げることができる。
【0033】
カルボキシル基を含有するポリオール化合物(1)は、少なくとも1のカルボキシル基と2以上の水酸基を含有する化合物である。具体例としては、ジメチロールプロパン酸、ジメチロールブタン酸などのジメチロールアルカン酸;ジメチロールアルカン酸のアルキレンオキシド低モル付加物(末端官能基定量による数平均分子量500未満);ジメチロールアルカン酸のε−カプロラクトン低モル付加物(末端官能基定量による数平均分子量500未満);ジメチロールアルカン酸の酸無水物とグリセリンとから誘導されるハーフエステル類;ジメチロールアルカン酸の水酸基と、不飽和結合を有するモノマーと、カルボキシル基及び不飽和結合を有するモノマーと、をフリーラジカル反応させて得られる化合物などを挙げることができる。なかでも、ジメチロールプロパン酸、及びジメチロールブタン酸などのジメチロールアルカン酸が、入手の容易さ、酸価の調整のしやすさなどの観点から好適である。ポリウレタン樹脂(C−1)中のポリオール化合物(1)の含有量は、得られるポリウレタン樹脂(C−1)のエポキシとの架橋による、耐熱性、耐久性の向上と、柔軟性、密着性との両立の観点から設定される。より具体的には、反応成分中のポリオール化合物(1)の含有量は、得られるポリウレタン樹脂(C−1)の酸価が3〜100mgKOH/gとなる量とすることが好ましい。
【0034】
上記ポリオール(2)は、2以上の水酸基を有する成分であり、好ましくは、数平均分子量500〜3000のものを使用することができる。なお、上記ポリオール(2)は、上記ポリオール化合物(1)に該当しないもののみを指す。
【0035】
上記ポリオール(2)としては特に限定されず、ウレタン合成に用いられている従来公知のポリオールを用いることができる。ポリオール(2)の具体例としては、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、及びその他のポリオールなどを挙げることができる。
【0036】
ポリエステルポリオールとしては、脂肪族系ジカルボン酸(例えば、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、グルタル酸、アゼライン酸など)及び/又は芳香族系ジカルボン酸(例えば、イソフタル酸、テレフタル酸など)と、低分子量グリコール(例えば、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,6−ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール,1,4−ビスヒドロキシメチルシクロヘキサンなど)と、を縮重合したものが例示される。
【0037】
このようなポリエステルポリオールの具体例としては、ポリエチレンアジペートジオール、ポリブチレンアジペートジオール、ポリヘキサメチレンアジペートジオール、ポリネオペンチルアジペートジオール、ポリエチレン/ブチレンアジペートジオール、ポリネオペンチル/ヘキシルアジペートジオール、ポリ−3−メチルペンタンアジペートジオール、ポリブチレンイソフタレートジオール、ポリカプロラクトンジオール、ポリ−3−メチルバレロラクトンジオールなどを挙げることができる。
【0038】
ポリエーテルポリオールの具体例としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、及びこれらのランダム/ブロック共重合体などを挙げることができる。
ポリカーボネートポリオールの具体例としては、ポリテトラメチレンカーボネートジオール、ポリペンタメチレンカーボネートジオール、ポリネオペンチルカーボネートジオール、ポリヘキサメチレンカーボネートジオール、ポリ(1,4−シクロヘキサンジメチレンカーボネート)ジオール、及びこれらのランダム/ブロック共重合体などを挙げることができる。
【0039】
その他のポリオールの具体例としては、ダイマージオール、ポリブタジエンポリオール及びその水素添加物、ポリイソプレンポリオール及びその水素添加物、アクリルポリオール、エポキシポリオール、ポリエーテルエステルポリオール、シロキサン変性ポリオール、α,ω−ポリメチルメタクリレートジオール、α,ω−ポリブチルメタクリレートジオールなどを挙げることができる。
【0040】
ポリオール(2)の数平均分子量(Mn、末端官能基定量による)は、特に限定されないが、500〜3,000であることが好ましい。ポリオール(2)の数平均分子量(Mn)が3,000超であると、ウレタン結合の凝集力が発現し難くなって機械特性が低下する傾向にある。また、数平均分子量が3,000超の結晶性ポリオールは、皮膜化した際に白化現象を引き起こす場合がある。なお、ポリオール(2)は、一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0041】
なお、ポリウレタン樹脂(C−1)を得るための反応成分として、必要に応じて、短鎖ジオール成分(3)と、必要に応じてポリアミン成分(4)を用いることも好ましい。これによりポリウレタン樹脂の硬さ、粘度などの制御が容易になる。短鎖ジオール成分(3)の具体例としては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,6−ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコールなどの脂肪族グリコール及びそのアルキレンオキシド低モル付加物(末端官能基定量による数平均分子量500未満);1,4−ビスヒドロキシメチルシクロヘキサン、2−メチル−1,1−シクロヘキサンジメタノールなどの脂環式グリコール及びそのアルキレンオキシド低モル付加物(数平均分子量500未満、同上);キシリレングリコールなどの芳香族グリコール及びそのアルキレンオキシド低モル付加物(数平均分子量500未満、同上);ビスフェノールA、チオビスフェノール、スルホンビスフェノールなどのビスフェノール及びそのアルキレンオキシド低モル付加物(数平均分子量500未満、同上);C1〜C18のアルキルジエタノールアミンなどのアルキルジアルカノールアミンなどを挙げることができる。
【0042】
ポリアミン化合物(4)の具体例としては、短鎖のものとしては、メチレンジアミン、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、オクタメチレンジアミンなどの脂肪族ジアミン化合物;フェニレンジアミン、3,3’−ジクロロ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−メチレンビス(フェニルアミン)、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルホンなどの芳香族ジアミン化合物;シクロペンチルジアミン、シクロヘキシルジアミン、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、イソホロンジアミンなどの脂環式ジアミン化合物などを挙げることができる。さらには、ヒドラジン、カルボジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、フタル酸ジヒドラジドなどのヒドラジン類を、ジアミン化合物(4)として用いることができる。また長鎖のものとしては、長鎖アルキレンジアミン、ポリオキシアルキレンジアミン、末端アミンポリアミド、シロキサン変性ポリアミン類などを挙げることができる。これらのポリアミン化合物(4)は、一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0043】
ポリイソシアネート化合物(5)としては、ポリウレタンの製造に用いられている従来公知のポリイソシアネートを用いることができる。ポリイソシアネート(5)の具体例としては、トルエン−2,4−ジイソシアネート、4−メトキシ−1,3−フェニレンジイソシアネート、4−イソプロピル−1,3−フェニレンジイソシアネート、4−クロル−1,3−フェニレンジイソシアネート、4−ブトキシ−1,3−フェニレンジイソシアネート、2,4−ジイソシアネートジフェニルエーテル、4,4’−メチレンビス(フェニレンイソシアネート)(MDI)、ジュリレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート、ベンジジンジイソシアネート、o−ニトロベンジジンジイソシアネート、4,4’−ジイソシアネートジベンジルなどの芳香族ジイソシアネート;メチレンジイソシアネート、1,4−テトラメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、1,10−デカメチレンジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネート;1,4−シクロヘキシレンジイソシアネート、4,4−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,5−テトラヒドロナフタレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添MDI、水添XDIなどの脂環式ジイソシアネート;これらのジイソシアネートと、低分子量のポリオール又はポリアミンとを、末端がイソシアネートとなるように反応させて得られるポリウレタンプレポリマーなどを挙げることができる。耐候性に優れたポリマー組成物を得るといった観点からは、脂肪族ジイソシアネート、及び脂環式ジイソシアネートが好ましい。
【0044】
上記カルボキシル基を有するポリオール化合物(1)と、ポリオール(2)と必要に応じて短鎖ジオール化合物(3)と、必要に応じてポリアミン化合物(4)等の活性水素基(但し、(1)のカルボキシル基を含まない)に対するポリイソシアネート化合物(5)のイソシアネート基との当量比は、0.5〜1.5であることが好ましい。上記範囲内とすることで、耐熱性、機械強度の高いウレタンが得られる点で好ましい。
【0045】
また、末端部に封鎖基を有するものであってもよい。すなわち、イソシアネート基過剰で反応させることによって、イソシアネート末端を形成させ、そのイソシアネート末端をモノ官能基化合物と反応させることによって末端封鎖したものであってもよい。
【0046】
(ポリウレタン樹脂(C−1)の製造方法)
ポリウレタン樹脂(C−1)は、従来公知のポリウレタンの製造方法により製造することができる。具体的には、先ず、分子内に活性水素を含まない有機溶剤の存在下又は不存在下、カルボキシル基を含有するポリオール化合物(1)と、ポリオール(2)と、鎖伸長剤として必要に応じて用いられる短鎖ジオール化合物(3)と、必要に応じてポリアミン化合物(4)と、ポリイソシアネート(5)とからなる反応成分を反応させて反応物(例えばプレポリマー)を得る。反応成分は、一般的には末端イソシアネート基を有するプレポリマーが形成される配合組成とすればよい。また、ワンショット法又は多段法により、通常20〜150℃、好ましくは60〜110℃で、理論イソシアネート%となるまで反応させればよい。
【0047】
得られた反応物(プレポリマー)は、必要に応じて、ポリアミン化合物(4)を反応させて所望の分子量となるように鎖伸長させてもよい。また、カルボキシル基を含有するポリオール化合物(1)、ポリオール(2)、短鎖ジオール化合物(3)、及びポリアミン化合物(4)の合計の活性水素含有基(化合物(1)のカルボキシル基を除く)と、ポリイソシアネート化合物(5)のイソシアネート基(2)とを0.5〜1.5の当量比で反応させることが好ましい。
【0048】
上記のようにして得られるポリウレタン樹脂(C−1)の重量平均分子量(Mw)は1,000〜1,000,000であることが、ポリウレタンの柔軟性、密着性、耐熱性、及び塗工性能などの特性がより有効に発揮されるために好ましい。なお、本明細書における「重量平均分子量(Mw)」及び「数平均分子量(Mn)」とは、特に断らない限り、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定されるポリスチレン換算の値を意味する。
【0049】
本発明では、ウレタン合成において、必要に応じて触媒を使用できる。例えば、ジブチルチンラウレート、ジオクチルチンラウレート、スタナスオクトエート、オクチル酸亜鉛、テトラn−ブチルチタネートなどの金属と有機及び無機酸の塩、及び有機金属誘導体、トリエチルアミンなどの有機アミン、ジアザビシクロウンデセン系触媒などが挙げられる。
【0050】
ポリウレタン樹脂(C−1)は、溶剤を用いずに合成しても、有機溶剤を用いて合成してもよい。有機溶剤としては、イソシアネート基に対して不活性な有機溶剤、又はイソシアネート基に対して反応成分よりも低活性な有機溶剤を用いることができる。有機溶剤の具体例としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶剤;トルエン、キシレン、スワゾール(商品名、コスモ石油株式会社製)、ソルベッソ(商品名、エクソン化学株式会社製)などの芳香族系炭化水素溶剤;n−ヘキサンなどの脂肪族系炭化水素溶剤;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール系溶剤;ジオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチルなどのエステル系溶剤;エチレングリコールエチルエーテルアセテ−ト、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、エチル−3−エトキシプロピオネートなどのグリコールエーテルエステル系溶剤;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどのアミド系溶剤;N−メチル−2−ピロリドンなどのラクタム系溶剤などを挙げることができる。
【0051】
なお、ウレタン合成において、イソシアネート基がポリマー末端に残った場合、イソシアネート基の停止反応を行うことも好ましい。イソシアネート基の停止反応は、イソシアネート基との反応性を有する化合物を用いて行うことができる。このような化合物としては、モノアルコール、モノアミンなどの単官能性の化合物;イソシアネートに対して異なる反応性を有する二種の官能基を有する化合物を用いることができる。このような化合物の具体例としては、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、tert−ブチルアルコールなどのモノアルコール;モノエチルアミン、n−プロピルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、ジ−n−ブチルアミンなどのモノアミン;モノエタノールアミン、ジエタノールアミンなどのアルカノールアミンなどを挙げることができる。これらのなかでもアルカノールアミンが、反応制御が容易であるために好ましい。
【0052】
(アクリル系樹脂(C−2))
本発明において使用することができるアクリル系樹脂(C−2)は、分子内にカルボキシル基を含有する樹脂であり、エポキシ樹脂と架橋反応を生じる。このアクリル系樹脂(C−2)は、カルボキシル基を有する重合性モノマー(6)と、その他重合性モノマー(7)とを、ラジカル重合、カチオン重合、及びアニオン重合などの通常の重合法で重合させて得られる。
【0053】
カルボキシル基を有する重合性モノマー(6)としては、アクリル酸、メタクリル酸、カルボキシル基を有するアクリル酸エステル、例えば2−アクリロイロキシエチル−コハク酸、2−アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−アクリロイロキシエチル−フタル酸、カルボキシル基を有するメタクリル酸エステル、例えば2−メタクリロイロキシエチル−コハク酸、2−メタクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−メタクリロイロキシエチル−フタル酸などを使用することができ、これらの中で、反応性や入手のしやすさなどからアクリル酸及びメタクリル酸が好ましい(以下、「アクリル」と「メタクリル」を、併せて「(メタ)アクリル」とも記す)。
【0054】
その他重合性モノマー(7)としては、種々のものが使用できるが、(メタ)アクリル酸系モノマーが好適である。このような(メタ)アクリル酸系モノマーの具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、n−ラウリル(メタ)アクリレート、n−ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、N−(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミド等を挙げることができる。なお、その他重合性モノマー(7)としては、スチレン系モノマーやアクリロニトリル系モノマーも使用することができる。これらのモノマーは、一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0055】
アクリル系樹脂(C−2)は、酸価が高いほど架橋点が増加し、耐熱性が高まる。しかしながら、酸価が高すぎるアクリル系樹脂(C−2)を成分として得られる導電性接着剤組成物は、硬くなりすぎて柔軟性が低下したり、カルボキシル基がエポキシなどと反応しきれずに耐久性が低下したりする傾向にある。このため、アクリル系樹脂(C−2)の酸価は、3〜100mgKOH/gであることが好ましい。
【0056】
重合性モノマーとして、(メタ)アクリル酸と長鎖アルコールとのエステルを用いると、得られるアクリル系樹脂(C−2)のガラス転移点(Tg)が低下する傾向にある。このようなガラス転移点(Tg)の低いアクリル系樹脂(C−2)を用いると、柔軟性や密着性に優れた導電性接着剤組成物を得ることができる。一方、重合性モノマーとして、(メタ)アクリル酸と短鎖アルコールとのエステル、(メタ)アクリル酸、スチレン、又はアクリロニトリルを用いると、得られるアクリル系樹脂(C−2)のガラス転移点(Tg)が高まる傾向にある。このようなガラス転移点(Tg)の高いアクリル系樹脂(C−2)を用いると、耐熱性及び耐久性に優れた導電性接着剤組成物が得られる。すなわち、アクリル系樹脂(C−2)のガラス転移点(Tg)が適当な数値となるように、重合成分の種類や比率を選択することで、柔軟性、密着性、耐熱性、耐久性を得ることができる。具体的には、二種類以上の(メタ)アクリル酸系モノマーを二重結合含有成分として用いることが好ましい。また、アクリル系樹脂(C−2)のガラス転移点(Tg)は−20〜30℃であることが好ましい。アクリル系樹脂(C−2)のガラス転移点(Tg)が30℃超であると、柔軟性及び密着性が低下する傾向にある。一方、アクリル系樹脂(C−2)のガラス転移点(Tg)が−20℃未満であると、耐熱性及び耐久性が低下する傾向にある。
【0057】
(アクリル系樹脂(C−2)の製造方法)
アクリル系樹脂(C−2)は、カルボキシル基を有する重合性モノマー(6)と、その他重合性モノマー(7)とを、例えば、乳化重合、懸濁重合、溶液重合、又は塊状重合などの従来公知の重合方法によって重合することで得ることができる。例えば、溶液重合においては、重合開始剤の存在下、適当な溶剤中で重合成分を重合させればよい。
【0058】
溶液重合の際に用いる溶剤の種類は、重合反応に悪影響を及ぼさないものであれば特に限定されない。溶剤の具体例としては、水;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、n−ペンチルアルコール、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレンングリコールなどのアルコール系溶剤;石油エーテル、ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素系溶剤;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶剤;ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサンなどのエーテル系溶剤;メチルエチルケトン、2−ペンタノン、3−ペンタノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン、2−オクタノン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶剤;酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチルなどのエステル系溶剤;N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン(NMP)などのアミド系溶剤を挙げることができる。
溶剤の使用量は、重合反応の条件によって適宜決定される。通常、重合成分に対して質量比で0.1〜100倍程度、好ましくは0.2〜20倍程度である。なお、これらの溶剤は、一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0059】
重合開始剤としては、従来既知のものを用いることができる。重合開始剤の具体例としては、過酸化ベンゾイル、ジブチルパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイドなどの過酸化物類;アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)などのアゾ系重合開始剤を挙げることができる。これらの重合開始剤は、一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。重合開始剤の使用量は特に限定されないが、通常、重合成分に対して0.1〜10質量%程度である。
【0060】
重合反応の温度は、反応条件によって適宜設定される。通常は、室温(25℃)〜使用する溶剤の沸点以下の温度であればよい。また、得られるアクリル系樹脂(C−2)の重合度を調整するために、メルカプタン類などの連鎖移動剤やハイドロキノンなどの重合禁止剤を重合反応系に添加してもよい。
【0061】
このようして得られるアクリル系樹脂(C−2)の重量平均分子量(Mw)は、密着性、耐熱性、耐久性、相溶性、塗工性能などの諸性能を満足するためには、1,000〜1,500,000であることが好ましく、5,000〜1,000,000であることがさらに好ましい。
【0062】
(エポキシ樹脂とカルボキシル基含有樹脂との混合比)
本発明において、ビスフェノール型エポキシ樹脂(A)及びノボラック型エポキシ樹脂(B)の混合物と、ポリウレタン樹脂(C−1)及びアクリル系樹脂(C−2)との混合比は、70:30〜30:70であることが好ましい。上記範囲内のものとすることで、成膜性の付与、耐熱性の調整が容易になるという点で好ましい。
【0063】
(その他の成分)
本発明の導電性接着剤組成物は、上述した(A)、(B)及び(C)以外には、硬化反応に関与する成分を添加しないことが好ましい。すなわち、通常、エポキシ化合物と併用して使用されるエポキシ硬化剤は含有しないものとすることが好ましい。
【0064】
本発明の導電性接着剤組成物は、特に、フレキシブル配線基板における基板と導電性補強材との接着に特に好適に使用することができるものである。このような用途に使用する場合は、上述したエポキシ硬化剤を含有しないものとすることが好ましい。
【0065】
このような用途に関しては、以下、別途詳細に説明するが、仮接着を行った後で熱プレスによる接着を行うが、製造工程の都合上から、仮接着を行った後、熱プレスまでに長期間(一週間以上)保管される場合がある。このような場合に、仮接着による加熱によって硬化反応が開始し保管される間に急激に硬化反応が進行することで、熱プレスによる接着工程において、充分な接着強度が得られなくなる場合がある。
【0066】
これに対して、上記エポキシ硬化剤を配合しないことによって、このような問題を生じることがなく、仮接着後長期間保管した後に熱プレスによる接着工程に供しても、その接着工程通過後のピール強度が10N/cm以上という良好な接着性能を保持することができる点で好ましいものである。
【0067】
なお、本発明において配合しないことが好ましい硬化剤とは、ポリウレタン樹脂とエポキシ樹脂との反応またはエポキシ樹脂同士の反応を促進させる目的で使用するものである。このような硬化剤としては、イソシアネート化合物、水酸基含有化合物、カルボジイミド化合物、オキサゾリン化合物、シラノール化合物、アジリジン化合物、酸無水物化合物、3級アミン化合物、ホスフィン化合物、イミダゾール化合物等を挙げることができるが、これに限定されることはない。なお、本発明の特徴である上記熱プレスによる接着工程後のピール強度が10N/cm以上という条件を満たす範囲であれば、上記硬化剤を添加させてもよい。このような配合量としては、例えば、(A)〜(C)成分の合計量に対して0.1重量%以下の範囲を挙げることができる。
【0068】
(導電性フィラー(D))
本発明の導電性接着剤組成物は、導電性フィラー(D)を含有する。上記導電性フィラー(D)としては特に限定されず、例えば、金属フィラー、金属被覆樹脂フィラー、カーボンフィラー及びそれらの混合物を使用することができる。上記金属フィラーとしては、銅粉、銀粉、ニッケル粉、銀コ−ト銅粉、金コート銅粉、銀コートニッケル粉、金コートニッケル粉があり、これら金属粉は、電解法、アトマイズ法、還元法により作成することができる。
また、特にフィラー同士の接触を得やすくするために、導電性フィラーの平均粒子径が3〜50μmとすることが好ましい。また、導電性フィラーの形状としては、球状、フレーク状、樹枝状、繊維状などが挙げられる。
上記導電性フィラー(D)は、接続抵抗、コストの観点から、銀粉、銀コート銅粉、銅粉からなる群より選択される少なくとも1であることが好ましい。
上記導電性フィラー(D)は、導電性接着剤組成物の全量に対して40〜90重量%の割合で含まれることが好ましい。
【0069】
また、導電性接着剤組成物には、耐ハンダリフロー性を劣化させない範囲で、シランカップリング剤、酸化防止剤、顔料、染料、粘着付与樹脂、可塑剤、紫外線吸収剤、消泡剤、レベリング調整剤,充填剤,難燃剤等を添加してもよい。
【0070】
(導電性接着剤組成物)
本発明の導電性接着剤組成物は、上述した各成分を反応させて導電性接着剤組成物を得た後、これを基材上に塗布して塗膜を形成することで、導電性接着剤として使用するものである。導電性接着剤組成物を基材上に塗布して塗膜を形成する際には、導電性接着剤組成物を溶媒中に溶解又は分散させた、これを基材上に塗布し、必要に応じて乾燥工程に供して塗膜を形成する製造方法等を採用することができる。
【0071】
(導電性接着フィルム)
本発明の導電性接着フィルムは、離型フィルムに導電性接着剤をコーティングすることにより作製することができる。なお、コーティング方法は特に限られないが、ダイコート、リップコート、コンマコートに代表されるコーティング機器等の公知の機器を用いることができる。また、離型フィルムに導電性接着剤をコーティングした後、必要に応じて乾燥工程に供しても良い。この場合の乾燥条件は、生産性の観点で最適な条件を設定すれば良い。
【0072】
離型フィルムは、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のベースフィルム上に、シリコン系または非シリコン系の離型剤を、導電性接着剤層が形成される側の表面に塗布されたものを使用することができる。なお、離型フィルムの厚みは特に限定されるものではなく、適宜使い易さを考慮して決定される。
【0073】
離型フィルム上に形成される導電性接着剤層の厚みは15〜100μmであることが好ましい。15μmより薄いと、埋め込み性が不十分になり、100μmより厚くなると、コスト的に不利であり薄膜化の要求に応えられなくなる。このような厚みのものとすることで、基材に凹凸が存在する場合に適度に流動することによって凹部を埋めるような形状に変形し、密着性よく接着することができる点で好ましい。
【0074】
(接着方法)
次に、本発明の導電性接着フィルムの使用方法について説明する。この導電性接着フィルムは、その用途を特に限定するものではないが、例えば、回路基板に補強板を接着するのに使用される。特に、補強板が導電性のものであるとき、この金属製補強板を接着させるだけでなく、回路基板本体におけるグランド電極と、この金属製補強板とを電気的に導通させる目的で使用される。
【0075】
なお、回路基板本体の材料としては、絶縁性を有し、絶縁層を形成することができる材料であればどのようなものでもよいが、その代表例としてポリイミド樹脂が挙げられる。
【0076】
導電性の補強板として、金属板を用いることが好ましく、金属板として、ステンレス板、鉄板、銅板またはアルミ板などを用いることができる。これらの中でもステンレス板を用いることがより好ましい。ステンレス板を用いることにより薄い板厚でも電子部品を支えるのに十分な強度を有する。導電性の補強板の厚さは、特に限定はされないが0.025〜2mmが好ましく、0.1〜0.5mmがより好ましい。導電性の補強板が、この範囲内にあれば、小型機器に内蔵が無理なく行え、また、実装された電子部品を支えるのに十分な強度を有する。
なお、ここでいう電子部品としては、コネクタやICの他、抵抗器、コンデンサー等のチップ部品などを挙げることができる。
【0077】
本発明の接着方法においては、上述した導電性接着フィルムを補強板又はフレキシブル基板である被接着基材(X)上に仮接着する工程(1)及び工程(1)によって得られた導電性接着フィルムを有する被接着基材(X)にフレキシブル基板又は補強板である被接着基材(Y)を重ね、熱プレスする工程(2)からなる接着方法である。
【0078】
上述した導電性接着フィルムは、特に、フレキシブル回路基板におけるフレキシブル基板と補強板との接着に好適に使用することができる。すなわち、引用文献4にも記載されているように、補強板として導電性である金属板等を使用し、これを導電性接着剤組成物でフレキシブル回路基板に接着することで、補強板による電磁波遮蔽能を得ることがおこなわれている。
【0079】
このような手法によって、補強板を接着する場合に良好な接着性能を得るという点で本発明の導電性接着フィルムは特に優れた効果を有する。すなわち、仮接着を行った後に一定期間保管したときに硬化反応が緩やかに進行するため、その後、熱プレスによる本接着を行う場合に接着性能が低下することがない。
【0080】
本発明の接着方法においては、まず、導電性接着フィルムを被接着基材(X)上に仮接着する。被接着基材(X)は、補強板であってもフレキシブル基板であってもいずれであってもよいが、補強板であることが好ましい。仮接着は、その条件を特に限定されるものではなく、導電性接着フィルムを被接着基材上に固定して、ずれることなく接着されるものであればよいが、点接着ではなく面接着とすることが好ましい。すなわち、接着面全面で仮接着することが好ましい。
【0081】
仮接着はプレス機で行うことができ、その接着条件としては、例えば、温度:120℃、時間:5秒、圧力:0.5MPaという条件を挙げることができる。
【0082】
上述した工程(1)によって導電性接着フィルムが仮接着された被接着基材(X)は、その後、ただちに工程(2)に供してもよいし、工程(2)に供する前に、1週間以上保管するものであってもよい。本発明の導電性接着剤組成物は、部分的に硬化させた後であっても、接着性能が低下しないため、この点で好ましいものである。
【0083】
工程(2)は、工程(1)によって得られた導電性接着フィルムを有する被接着基材(X)から導電性接着フィルム上の離型フィルムを剥がし、フレキシブル基板又は補強板である被接着基材(Y)を重ね、熱プレスする工程である。なお、被接着基材(X)と被接着基材(Y)は、一方が補強板で、一方がフレキシブル基板という関係になる。
【0084】
熱プレスは、通常の条件において行うことができ、例えば、1〜5MPa、140〜190℃、15〜90分という条件で行うことができる。
【0085】
(回路基板)
本発明の回路基板は、フレキシブル基板、導電性接着剤組成物及び導電性補強板をこの順に積層した部位を少なくとも一部に有する回路基板である。このような回路基板は、上述した接着方法によって接着されたものであってもよいし、その他の接着方法によって得られたものであってもよい。なお、このような回路基板の模式図を
図4に示す。
図4においては、回路基板と補強板が本発明の導電性接着剤組成物によって接着され、電気的にも接続されている。
【0086】
なお、上記回路基板においては、導電性補強板は、回路基板の一部においてのみ存在するものであることが好ましい。すなわち、電子部品を有する部分において補強板を有するものであることが好ましい。
【0087】
本発明の回路基板においては、上述したような補強板以外の面の少なくとも一部が、電磁波シールドフィルムによって被覆されたものであることが好ましい。即ち、電磁波シールドフィルムは、補強板以外の面の一部のみを被覆してもよく、補強板以外の面の全部を被覆してもよい。この場合において、電磁波シールドフィルムが、補強板の少なくとも一部と重ね合っていてもよい。これによって、回路基板全面において良好な電磁波シールド性能が得られる点で好ましい。なお、電磁波シールドフィルムとしては特に限定されないが、絶縁層・等方導電性接着剤層を有するもの、または絶縁層・金属層・異方導電性接着剤層を有するものが好ましい。
【実施例】
【0088】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例、比較例中の「部」及び「%」は、特に断らない限り質量基準である。
【0089】
(1)<ポリウレタン樹脂(C−1)の合成>
[合成例c1:カルボキシル基含有ポリウレタン(ウレタンウレア)]
攪拌機、還流冷却管、温度計、窒素吹き込み管、及びマンホールを備えた反応容器を用意した。反応容器の内部を窒素ガスで置換した後、ジメチロールプロピオン酸(DMPA)6.0g、ポリヘキサメチレンカーボネートジオール(商品名「プラクセルCD220」、ダイセル株式会社製、末端官能基定量による数平均分子量2000)100g、及びジメチルホルムアミド(DMF)59.0gを仕込んだ。次いで、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)31.9g(OH基に対してNCO基が2倍当量)を加え、樹脂のNCO基が理論値の4.0%となるまで90℃で反応を行ってウレタンプレポリマー溶液を得た。得られたウレタンプレポリマー溶液に、DMF298.5gを添加し、40℃に冷却した後、イソホロンジアミン(IPDA)16.1gを滴下して、ウレタンプレポリマーのNCO基と反応させた。赤外吸収スペクトル分析で測定される、遊離イソシアネート基による2,270cm−1の吸収が消失するまで攪拌して、酸価が16.4mgKOH/g、数平均分子量(Mn)が50,000、重量平均分子量(Mw)が105,000のポリウレタン樹脂(c1)のDMF溶液(固形分濃度30%)を得た。
【0090】
[合成例c2:カルボキシル基含有ポリウレタン(ウレア結合なし)]
攪拌機、還流冷却管、温度計、窒素吹き込み管、及びマンホールを備えた反応容器を用意した。反応容器の内部を窒素ガスで置換した後、DMPA6.0g、1,4−ブタンジオール6.0g、プラクセルCD220 100g、及びDMF139.1gを仕込んだ。次いで、HDI27.1g(OH基に対してNCO基が当量)を加え、赤外吸収スペクトル分析で測定される、遊離イソシアネート基による2,270cm−1の吸収が消失するまで90℃で攪拌した後、DMF185.5gを添加し、酸価が18.1mgKOH/g、数平均分子量(Mn)が52,000、重量平均分子量(Mw)が112,000のポリウレタン樹脂(c2)のDMF溶液(固形分濃度30%)を得た。ポリウレタン樹脂(c2)が、ウレア結合を有しないことを赤外吸収スペクトルにて確認した。
【0091】
[合成例c3:カルボキシル基含有ポリウレタン(ウレア結合あり)]
攪拌機、還流冷却管、温度計、窒素吹き込み管、及びマンホールを備えた反応容器を用意した。反応容器の内部を窒素ガスで置換した後、DMPA6.0g、プラクセルCD220 100g、DMF70.8gを仕込んだ。次いで、イソホロンジイソシアネート(IPDI)42.1g(OH基に対してNCO基が2倍当量)を加え、樹脂のNCO基が理論値の3.6%となるまで90℃で反応を行ってウレタンプレポリマー溶液を得た。得られたウレタンプレポリマー溶液に、DMF312.3gを添加し、40℃に冷却した後、IPDA16.1gを滴下して、ウレタンプレポリマーのNCO基と反応させた。赤外吸収スペクトル分析で測定される、遊離イソシアネート基による2,270cm−1の吸収が消失するまで攪拌して、酸価が15.3mgKOH/g、数平均分子量(Mn)が50,000、重量平均分子量(Mw)が102,000のポリウレタン樹脂(c3)のDMF溶液(固形分濃度30%)を得た。
【0092】
[比較合成例c4:カルボキシル基なし]
攪拌機、還流冷却管、温度計、窒素吹き込み管、及びマンホールを備えた反応容器を用意した。反応容器の内部を窒素ガスで置換した後、1,4−ブタンジオール4.0g、CD220 100g、及びDMF58.2gを仕込んだ。次いで、HDI31.7g(OH基に対してNCO基が2倍当量)を加え、樹脂のNCO基が理論値の4.1%となるまで90℃で反応を行ってウレタンプレポリマー溶液を得た。得られたウレタンプレポリマー溶液に、DMF295.8gを添加し、40℃に冷却した後、IPDA16.0gを滴下して、ウレタンプレポリマーのNCO基と反応させた。赤外吸収スペクトル分析で測定される、遊離イソシアネート基による2,270cm−1の吸収が消失するまで攪拌して、カルボキシル基を含有しない、数平均分子量(Mn)が52,000、重量平均分子量(Mw)が109,000のポリウレタン樹脂(c4)のDMF溶液(固形分濃度30%)を得た。
【0093】
(2)<アクリル系樹脂(C−2)の合成>
[合成例c5:カルボキシル基含有アクリル系樹脂]
攪拌機、還流冷却管、温度計、窒素吹き込み管、及びマンホールを備えた反応容器を用意した。反応容器の内部を窒素ガスで置換した後、メチルエチルケトン(MEK)100gを仕込み、窒素雰囲気下で80℃に加熱した。メタクリル酸メチル5g、メタクリル酸2−エチルヘキシル65g、メタクリル酸n−ラウリル25g、メタクリル酸5g、及び2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)2gの混合物を用意した。混合物の1/3を反応容器内に添加し、残りを滴下ロートで1時間かけて反応容器内に滴下した。滴下後、そのままの状態で6時間反応させて、酸価が32.5mgKOH/g、重量平均分子量(Mw)が29,000、数平均分子量(Mn)が10,000、及びTgの計算値が−18.5℃のアクリル系樹脂(c5)の溶液(固形分濃度50%)を得た。
【0094】
[比較合成例c6:カルボキシル基なし]
攪拌機、還流冷却管、温度計、窒素吹き込み管、及びマンホールを備えた反応容器を用意した。反応容器の内部を窒素ガスで置換した後、メチルエチルケトン(MEK)100gを仕込み、窒素雰囲気下で80℃に加熱した。メタクリル酸メチル10g、メタクリル酸2−エチルヘキシル65g、メタクリル酸n−ラウリル25g、及び2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)2gの混合物を用意した。混合物の1/3を反応容器内に添加し、残りを滴下ロートで1時間かけて反応容器内に滴下した。滴下後、そのままの状態で6時間反応させて、重量平均分子量(Mw)が35,000、数平均分子量(Mn)が14,000、及びTgの計算値が−19.1℃のアクリル系樹脂(c6)の溶液(固形分濃度50%)を得た。
【0095】
(実施例フィルムサンプル製造方法)
各実施例、各参考例及び各比較例の導電性接着フィルムの製造方法について説明する。各材料を配合し、所定のペーストを作成する。これを、離型処理されたポリエチレンテレフタレートフィルム上に、ドクターブレイド(板状のヘラ)を用いてハンドコートし、100℃×3分の乾燥を行って導電性接着フィルムを作製した。なお、ドクターブレイドは、作製する導電性接着フィルムの厚みにより、1mil〜5mil品を適切に選択する。なお、1mil=1/1000インチ=25.4μmである。なお、各実施例、各参考例及び各比較例においては、導電性接着フィルムの厚みが所定の厚みとなるように各導電性接着フィルムを作製した。なお、導電性接着フィルムの厚みは、マイクロメータによって測定したものである。
【0096】
【表1】
【0097】
なお、表1中に示した各成分としては、以下、表2に記載したものを使用した。
また、硬化剤は、3級アミン化合物(三菱化学製、商品名jER3010)を使用した。
【0098】
【表2】
【0099】
表1中の導電性フィラーとしては、以下のものを使用した。
導電性フィラーD−1:銀粉(平均粒径12μm、福田金属箔粉工業株式会社製)
導電性フィラーD−2:銀コート銅粉(平均粒径20μm、福田金属箔粉工業株式会社製)
導電性フィラーD−3:銀コート銅粉(平均粒径25μm、福田金属箔粉工業株式会社製)
【0100】
(接着方法)
プレス機(温度:120℃、時間:5秒、圧力:0.5MPa)で補強板と導電性接着フィルムを熱圧着で仮接着し、導電性接着フィルム上のセパレーターフィルムを剥離し、フレキシブル基板に上記仮接着方法で仮接着後、さらにプレス機(温度:170℃、時間:30分、圧力:3MPa)で熱圧着する。
【0101】
(評価方法)
評価に当たっては、上述した仮接着後1時間以内に熱圧着を行った場合と、仮接着後に一週間保管した後に熱圧着を行った場合について、ピール強度、接続抵抗値、耐リフロー性、レジンフロー、信頼性試験に関して以下の方法で評価を行った。ここで、長期間保管することを想定して、23℃、60%RHに調温調湿した室内に一週間保管した。
【0102】
(ピール強度)
補強板との密着力を、90°ピール試験を用いて測定した。具体的には
図1に示すように、ステンレス板(幅10mm、長さ100mm)と、ポリイミド層と薄膜状の銅層とを有する銅張積層板におけるポリイミド層の表面側と本実施例の導電性接着フィルムを介して、上記実施形態の導電性接着フィルムの使用方法で説明したようにプレス接合した後、銅張積層板を垂直方向に引っ張り剥した。10N/cm以上であれば問題なく使用できる。
【0103】
(接続抵抗値)
上記の方法で作成した金属補強板付き回路基板について電気的評価を実施した。接続部の開口径が直径1.0mmのグランドを模擬したフレキシブルプリント基板に、導電性接着フィルムを補強板との間でプレス加工した際の金属補強板付き回路基板の接続抵抗(
図2の電極間)を測定した。なお、1Ω以下であればシールド性能が確保される。
【0104】
(耐リフロー性)
リフロー後の評価を行った。なお、リフローの温度条件としては、鉛フリーハンダを想定し、最高265℃の温度プロファイルを設定した。導電性接着フィルムを補強板との間でプレス加工した金属補強板付き回路基板の試験片を、IRリフローに5回通過させ、膨れの有無を観察した。
【0105】
(レジンフロー)
上記の方法で作成した金属補強板付き回路基板についてレジンフロー距離を測定した。作成した金属補強板付き回路基板を、補強板側から観察した際、補強板下からはみ出た導電性接着剤端と補強板端との距離を測定した。300μm以下であれば問題なく使用できる。
【0106】
(信頼性試験)
上記の方法で作成したピール試験用試験片と、接続抵抗測定用試験片とを高温高湿度環境下(85℃、85%)に1000時間放置した後、それぞれのピール強度と接続抵抗を測定した。
【0107】
評価した結果を下記表3に示す。
【0108】
【表3】
【0109】
表3の結果から、本発明の導電性接着剤組成物は、良好な物理的性質、電気的性質を有するものである。更に、仮接着後に長時間保管した後でも良好な接着性能を有するものである。更に、段差がある基材上に接着した場合でも良好な接着性能、電気導電性を得ることができるものである。