特許第5886970号(P5886970)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エム ケー エス インストルメンツ インコーポレーテッドの特許一覧

<>
  • 特許5886970-4チャンネルガス送出システム 図000002
  • 特許5886970-4チャンネルガス送出システム 図000003
  • 特許5886970-4チャンネルガス送出システム 図000004
  • 特許5886970-4チャンネルガス送出システム 図000005
  • 特許5886970-4チャンネルガス送出システム 図000006
  • 特許5886970-4チャンネルガス送出システム 図000007
  • 特許5886970-4チャンネルガス送出システム 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5886970
(24)【登録日】2016年2月19日
(45)【発行日】2016年3月16日
(54)【発明の名称】4チャンネルガス送出システム
(51)【国際特許分類】
   G05D 11/13 20060101AFI20160303BHJP
   G05D 7/06 20060101ALI20160303BHJP
   H01L 21/3065 20060101ALI20160303BHJP
   H01L 21/205 20060101ALI20160303BHJP
   H01L 21/31 20060101ALI20160303BHJP
   C23C 16/52 20060101ALN20160303BHJP
   C23C 14/54 20060101ALN20160303BHJP
【FI】
   G05D11/13 D
   G05D7/06 B
   H01L21/302 101G
   H01L21/205
   H01L21/31 F
   !C23C16/52
   !C23C14/54 B
【請求項の数】27
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-534611(P2014-534611)
(86)(22)【出願日】2012年9月28日
(65)【公表番号】特表2015-501465(P2015-501465A)
(43)【公表日】2015年1月15日
(86)【国際出願番号】US2012057799
(87)【国際公開番号】WO2013052364
(87)【国際公開日】20130411
【審査請求日】2014年5月30日
(31)【優先権主張番号】13/252,363
(32)【優先日】2011年10月4日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】592053963
【氏名又は名称】エム ケー エス インストルメンツ インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】MKS INSTRUMENTS,INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】ディン,ユンハ
【審査官】 稲垣 浩司
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−519648(JP,A)
【文献】 特表2008−538656(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 11/13
G05D 7/06
H01L 21/205
H01L 21/3065
H01L 21/31
C23C 14/54
C23C 16/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸気口チャンネルと、
4つの排気口チャンネルと、
4つの制御バルブであって、そのそれぞれが前記吸気口チャンネルから前記排気口チャンネルのうち対応する1つを通る流量を制御するように配置される4つの制御バルブと、
前記吸気口チャンネルから前記対応する排気口チャンネルを通る流量を制御することにより、
(a)第1の対の前記排気口チャンネルの第1の流量比と、
(b)第2の対の前記排気口チャンネルの第2の流量比と、
(c)前記第2の対の排気口チャンネルに対する前記第1の対の排気口チャンネルの第3の流量比と、
を制御する流量比制御システムと、
を備え、
前記第3の流量比は、少なくとも1対のバルブにそれぞれ印加される少なくとも1つのバイアス信号を生成することによって制御され、前記バイアス信号は、前記第3の流量比の所定の設定点と前記第3の流量比の計測値との関数であり、
前記流量比制御システムは、二重反対称最適制御モジュールを有することを特徴とする4チャンネルガス送出システム。
【請求項2】
それぞれが前記4つの排気口チャンネルを通る流量を検知するように配置される4つの流量センサをさらに有し、
3つの流量比全ての前記計測値は、前記流量センサによって検知された流量の関数であることを特徴とする請求項1に記載の4チャンネルガス送出システム。
【請求項3】
前記流量比制御システムは、前記第2の対の排気口チャンネルに対する前記第1の対の排気口チャンネルの流量を前記第3の比率設定点の関数として制御するように構成された反対称フィードバック制御構成を有することを特徴とする請求項2に記載の4チャンネルガス送出システム。
【請求項4】
前記流量比制御システムは、計測された前記第3の流量比を所定の設定点と等しく維持するように、前記第2の対の排気口チャンネルに対する前記第1の対の排気口チャンネルの前記第3の流量比を制御するフィードバック制御構成を有する、二重反対称最適制御モジュールを有することを特徴とする請求項1に記載の4チャンネルガス送出システム。
【請求項5】
前記二重反対称最適制御モジュールは、ソフトウェアとして実装されることを特徴とする請求項4に記載の4チャンネルガス送出システム。
【請求項6】
前記第3の流量比の設定点は、前記第1の対のフローチャンネルの流量比設定点の総和であることを特徴とする請求項1に記載の4チャンネルガス送出システム。
【請求項7】
前記第1の流量比の設定点および前記第2の流量比の設定点は、各対のフローチャンネルそれぞれの流量比設定点の相対比率であることを特徴とする請求項1に記載の4チャンネルガス送出システム。
【請求項8】
前記排気口チャンネルを通る流量を計測し、各排気口チャンネルを通る計測流量を表す流量計測信号を供給するために配置される4つの流量計をさらに有し、
各バルブは、前記流量計測信号のうち少なくとも1つに応答することを特徴とする請求項1に記載の4チャンネルガス送出システム。
【請求項9】
3つの流量比全ての計測値は、前記4つの排気口チャンネルに関連付けられた前記流量計測信号の関数として決定されることを特徴とする請求項8に記載の4チャンネルガス送出システム。
【請求項10】
前記流量比制御システムは、前記排気口チャンネルを通る流量の前記第1、第2、および第3の流量比を維持するように、前記排気口チャンネルを通る質量流量の反対称最適制御を行うように構成された制御装置を含むことを特徴とする請求項1に記載の4チャンネルガス送出システム。
【請求項11】
前記制御装置は、前記バルブのそれぞれに対するバルブ制御信号を生成する3つの二重反対称最適(DAO)制御モジュールを有し、前記バルブはそれぞれ対応するバルブ制御信号に応答することを特徴とする請求項10に記載の4チャンネルガス送出システム。
【請求項12】
前記バイアス信号は、前記少なくとも1対のバルブに印加される前記バルブ制御信号に加えられることを特徴とする請求項11に記載の4チャンネルガス送出システム。
【請求項13】
第2のバイアス信号は、前記他方の対のバルブに印加されるバルブ制御信号に加えられることを特徴とする請求項12に記載の4チャンネルガス送出システム。
【請求項14】
前記バイアス信号の1つは、前記バルブのうち少なくとも1つを、許容可能な最大開放位置に維持するための最適バイアスであることを特徴とする請求項13に記載の4チャンネルガス送出システム。
【請求項15】
前記バルブは常開のバルブであり、
前記1つのバイアス信号は許容可能な最小バルブ電流であることを特徴とする請求項14に記載の4チャンネルガス送出システム。
【請求項16】
前記バルブは常閉のバルブであり、
前記1つのバイアス信号は、前記バルブを許容可能な最大開放位置に維持するために必要な、許容可能な最大バルブ電流であることを特徴とする請求項14に記載の4チャンネルガス送出システム。
【請求項17】
前記流量比制御システムは、前記吸気口チャンネルから前記4つの排気口チャンネルを通る流量の相対比率を制御するよう構成され配置される2つの二重対称最適(DAO)制御モジュールと、前記2つのDAO制御モジュールの流量比を制御するよう構成され配置される仮想DAO制御モジュールとを有することを特徴とする請求項1に記載の4チャンネルガス送出システム。
【請求項18】
前記仮想DAO制御モジュールは、前記DAO制御モジュールそれぞれに対するバイアス電流を、前記2つのDAO制御モジュールの流量比の関数として決定するよう構成され配置されることを特徴とする請求項17に記載の4チャンネルガス送出システム。
【請求項19】
前記仮想DAO制御モジュールの比率設定点は、名目上50%に設定されることを特徴とする請求項17に記載の4チャンネルガス送出システム。
【請求項20】
前記DAO制御モジュールのうち一方の比率設定点はr/(r+r)に設定され、rおよびrは、前記一方のDAO制御モジュールの対応する前記排気口チャンネルを通る流量の、総流量に対する比率であることを特徴とする請求項19に記載の4チャンネルガス送出システム。
【請求項21】
前記DAO制御モジュールのうち他方の比率設定点はr/(r+r)に設定され、rおよびrは、前記他方のDAO制御モジュールの対応する前記排気口チャンネルを通る流量の、総流量に対する比率であることを特徴とする請求項19に記載の4チャンネルガス送出システム。
【請求項22】
前記仮想DAO制御モジュールの比率設定点はr+rに設定され、rおよびrは、前記一方のDAO制御モジュールの対応する前記排気口チャンネルを通る流量の、総流量に対する比率であることを特徴とする請求項17に記載の4チャンネルガス送出システム。
【請求項23】
前記DAO制御モジュールのうち一方の前記排気口チャンネルそれぞれを通る流量が名目上同じであるように、前記一方の前記DAO制御モジュールの比率設定点は名目上50%に設定されることを特徴とする請求項22に記載の4チャンネルガス送出システム。
【請求項24】
前記一方のDAO制御モジュールの前記排気口チャンネルそれぞれを通る流量が名目上同じであるように、前記DAO制御モジュールのうち他方の比率設定点は名目上50%に設定されることを特徴とする請求項22に記載の4チャンネルガス送出システム。
【請求項25】
前記仮想DAO制御モジュールの比率設定点は、前記第1の対のフローチャンネルの流量比設定点の総和であることを特徴とする請求項17に記載の4チャンネルガス送出システム。
【請求項26】
前記DAO制御モジュールのうち一方の比率設定点は、前記第1の対のフローチャンネルの流量比設定点の相対比率であることを特徴とする請求項25に記載の4チャンネルガス送出システム。
【請求項27】
前記DAO制御モジュールのうち他方の比率設定点は、前記第2の対のフローチャンネルの流量比設定点の相対比率であることを特徴とする請求項25に記載の4チャンネルガス送出システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2011年10月4日に出願された米国特許出願第13/252,363号の利益を主張するものであり、同出願は、2002年1月4に出願された米国特許第6,766,260号、2004年3月9日に出願された米国特許第7,072,743号、2005年4月21日に出願された米国特許第7,621,290号、および2007年2月20日に出願された米国特許第7,673,645号の関連出願である。ここに本明細書の一部を構成するものとして米国特許出願第13/252,363号の内容を援用する。
【0002】
本開示は、全体として、半導体処理装置に関し、詳細には、汚染のない正確に計量された量のプロセスガスを、1つまたはそれ以上のプロセスツールの少なくとも2つの場所へと、所定の比率で送出するための流量比コントローラに関する。さらに詳細には、本開示は、単一のガスボックスからのフローを、1つまたはそれ以上のプロセスツールの4つの場所に、反対称最適性能により所定の比率で分割するシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0003】
本明細書で使用する「ガス」という用語と「蒸気」という用語が異なると考えられる場合、「ガス」は「蒸気」を含むものとする。
【0004】
半導体デバイスの製造では、多くの場合、真空チャンバ等のプロセスツールへの多種類のガスの送出を注意深く同期することと、正確に計測することが必要とされる。製造プロセスでは様々な方法が用いられており、多くの別個のプロセス工程が必要とされる。この工程として、例えば、半導体デバイスの清浄化、研磨、酸化、マスキング、エッチング、ドーピング、またはメタライジングが行われる。用いられる工程と、これらの工程の特定の順序および必要とされる材料は全て、特定のデバイスの製造に寄与する。
【0005】
したがって、ウェハ製造設備は、一般に、化学蒸着、プラズマ蒸着、プラズマエッチング、スパッタリング、および他の同様のガス製造プロセスが実施される領域を含むように構成される。プロセスツールには、化学蒸着反応器、真空スパッタリング機、プラズマエッチング機、プラズマ化学蒸着チャンバ、または任意の他のデバイス、装置、もしくはシステムのいずれであっても、様々なプロセスガスが供給されなければならない。ツールには、汚染のない正確に計測した量の純粋なガスが供給されなければならない。
【0006】
代表的なウェハ製造設備では、ガスは、配管または導管を介してガス送出システムに連結されたタンクに貯蔵される。このガス送出システムは、汚染のない正確に計測された量の純粋な不活性ガスまたは反応性ガスを、製造設備のタンクから、プロセスツールやチャンバに送出するためのガスボックスを含む。ガスボックスは、典型的には複数のガス流ラインを有し、ガス流ラインはそれぞれ流量計測ユニットを有する。この流量計測ユニットは、バルブ、圧力調整器および変換器、質量流量制御装置、フィルタまたは清浄器等を有してもよい。各ガスラインは、個別のガス供給源に連結するための固有の吸気口を有するが、全てのガス経路は、プロセスツールに連結するための、ガスボックスの単一の排気口につながっている。
【0007】
場合によっては、ガスボックスの排気口で合流したプロセスガスを、単一のプロセスツールの複数の場所に、または複数のプロセスツールに送出できるように、分割または分配することが望ましい。このような場合には、ガスボックスの単一の排気口を、2次流路またはフローチャンネルを通して複数の場所に連結する。用途によっては、例えば安全上の理由などの理由で上流圧力を大気圧未満(例えば、15PSIA未満)に維持する必要がある場合には、流量比コントローラを用いて、ガスボックスの排気口の1次フローを、予め選択された比率に従って、2次流路またはフローチャンネルに分割する。
【0008】
米国特許第6,766,260号に示された種類の流量比コントローラシステムは、初期設定後、所望の分割比に合わせて安定化を行うが、流量の安定化に時間を要し、用途によっては満足のいくものではないことがある。さらに、流量比コントローラシステムのバルブ前後の圧力降下がきわめて大きくなることがある。また、2次流路のうちの1つの下流閉塞に対処するには、制御装置システムの制御性能が低い。さらに、2次流路でのバルブの固定位置を最初に決定するのが困難であるため、設定が困難である。さらに、2つの2次流路用いる現在の実施例について、高流量バルブを固定バルブとし、低流量バルブを流量比を制御する被制御バルブとする必要がある。
【0009】
流量比コントローラシステムの用途のひとつは、「シャワーヘッド」へのガスの流量を制御することである。「シャワーヘッド」とは、半導体デバイスを製造するプロセスツールのプロセスチャンバに用いられる取付具であり、米国特許第7,072,743号に記載されているようなものである。各シャワーヘッド取付具には2つのガス排気口があり、一方は取付具中心(または内側の部分)に設けられた開口部で、他方は取付具外周(または外側の部分)に設けられた開口部である。シャワーヘッド取付具の外側部分にある開口部を通る流量は、チャンバ内で製造中のウェハの外側の部分または区域に影響を与え、内側部分にある開口部を通る流量は、製造中のウェハの内側の部分または区域に影響を与える。プロセス中のウェハにガスを均等に供給するためには、外側区域への流量が内側区域への流量より多いことが望ましい。このように、外側部分へのガスの流量に対する内側部分から供給されるガスの流量の比率を注意深く制御すると、ウェハに対してガスが均等に供給される。
【0010】
改良された流量比コントローラシステムは、2チャンネル流量比コントローラシステムまたは二重反対称最適(Dual Antisymmetric Optimal:DAO)流量比コントローラシステムと呼ばれ、本譲受人に譲渡された米国特許第7,621,290号に記載されている。同特許に記載されている実施例では、DAOアルゴリズムを用いて単一の質量流量を2つの流路に分割する。各流路は、流量計およびバルブを有する。流量比コントローラシステムの両バルブは、単一入力単一出力(Single Input, Single Output:SISO)制御装置と、インバーターと、2つの線型飽和器とを有するDAO制御装置によって、比率フィードバックループを通して制御される。SISO制御装置の出力は、2つのバルブに印加される前に分割され変更される。2つのバルブ制御コマンドは、2つの飽和限度の一方である許容可能な最大バルブコンダクタンス位置に対し、実際上反対称である。つまり、一方のバルブが、任意の時期に、許容可能な最大バルブコンダクタンス(開放)位置に保持されると同時に、他方のバルブが、流量比を維持するように能動的に制御される。これによって、DAO流量比コントローラは、ガス流量に対する圧力降下を最小にすることに寄与する。DAO流量比コントローラシステムの用途のひとつは、シャワーヘッド取付具の内側開口部および外側開口部の両方を通る総流量に対する、各開口部への流量の比率を制御することである。
【0011】
現在のウェハ製造では、同一のウェハを、異なるチャンバで同一のプロセスを用いて同時に製造することができる。各チャンバに入るガスの順序と流量も同一であるため、プロセスの各工程において各チャンバに同じ比率のガスを送出するよう制御する単一のガスボックスを有する統合制御システムを使用することで、コストが削減される。単一のガスボックスを使用して2つのチャンバにガスを供給することで、コストが大幅に削減され、装置に必要な専有面積も少なくて済む。さらに、進歩によりウェハのサイズが大きくなっており、ウェハ全体に及ぶガスを適切に制御するためには、複数のシャワーヘッド取付具が必要になる。しかしながら、プロセスの各工程中に適切な流量比が維持されているか確認することは困難である。
【0012】
3つ以上の流路を通るガスの流量比を制御する流量比コントローラシステムのひとつが、米国特許第7,673,645号に記載されている。この流量比コントローラは、マルチ反対称最適(Multiple Antisymmetric Optimal:MAO)アルゴリズムを用いて、単一の質量流量を複数(3以上)の流路に分割する。各流路には、ターゲット流量比設定点を得るために、線型飽和器と組み合わせたSISOフィードバック制御装置が設けられる。各バルブ制御コマンドは、他のバルブ制御コマンド全ての和に対して反対称であるので、MAO制御アルゴリズムにより、任意の時期に少なくとも1つのバルブが許容可能な最大開放位置にあることが保証され、これによって、流量比設定点の所与の組の最大総バルブコンダクタンスに関して最適解が得られる。このアプローチは、各流路を通して圧力降下を最小となる優れた制御を提供し、また、ほとんどの用途に問題なく利用できる。しかしながら、例えば、2つのシャワーヘッド取付具への総流量に対して、当該2つの取付具の内側開口部への流量比が実質的に同じであり、当該2つの取付具の外側開口部への流量比が実質的に同じであることが望ましい場合、流路の制御関数は、流路を通る流量が変化するたびに必ずしも正確に同じ応答時間で定まるわけではなく、制御が不正確になる。
【0013】
図1に、2つのシャワーヘッド取付具の内側開口部および外側開口部に同じ比率を供給するアプローチのひとつを示す。このハードウェアシステムは、2段に配置された3つの2チャンネル流量比コントローラユニット10A、10B、および10C(各ユニットの種類は米国特許第7,621,290号に記載されている)を有する。1段目は1つのユニット10Aを有する。ユニット10Aは、ガスボックスまたは他の供給源から流量Qtの総流量を受け取り、最初に、ホスト制御装置12によって設定される比率に従って、流量Qtの総流量を流量QaおよびQb(Qt=Qa+Qb)の2つのフローに分割する。2段目は2つの制御装置ユニット10Bおよび10Cを有する。ユニット10Bは、制御装置ユニット10Aから流量Qaの総流量を受け取り、ホスト制御装置12によって設定される比率に従って、流量Qaの総流量を流量Q1およびQ2(Qa=Q1+Q2)の2つのフローに分割する。同様に、ユニット10Cは、制御装置ユニット10Aから流量Qbの総流量を受け取り、ホスト制御装置12によって設定される比率に従って、流量Qbの総流量を流量Q3およびQ4(Qb=Q3+Q4)の2つのフローに分割する。この2段制御を利用して、Qa=Qb、Q1+Q2=Q3+Q4、および比率Q1/(Q1+Q2)=Q3/(Q3+Q4)となるように、2つのシャワーヘッド取付具(図示せず)へのガスの流量を両方とも同じ比率で制御する。これにより、各シャワーヘッド取付具の外側部分と内側部分への流量の比率が同じになる。各制御装置ユニット10は、固有の制御装置14を備える。制御装置14は、ホスト制御装置12によって指定されるプログラムされた比率を維持するように、流量センサ18によって生成される対応するセンサ信号に応じてバルブ16を制御する。このため、ホスト制御装置12を用いて3つのハードウェアユニット10を調整する必要がある。この構成はうまく機能する一方で、2段制御により各流路の圧力降下が増大し、最適なバルブコンダクタンスが低下する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】米国特許第4,369,031号
【特許文献2】米国特許第5,453,124号
【特許文献3】米国特許第6,333,272号
【特許文献4】米国特許第6,418,954号
【特許文献5】米国特許第6,418,994号
【特許文献6】米国特許第6,766,260号
【特許文献7】米国特許第6,792,166号
【特許文献8】米国特許第6,941,965号
【特許文献9】米国特許第7,007,707号
【特許文献10】米国特許第7,072,743号
【特許文献11】米国特許第7,143,774号
【特許文献12】米国特許第7,360,551号(米国特許出願公開第2006/0272703)
【特許文献13】米国特許第7,360,551号
【特許文献14】米国特許第7,424,894号
【特許文献15】米国特許第7,621,290号
【特許文献16】米国特許第7,673,645号
【特許文献17】米国特許出願公開第2002/0038669号
【特許文献18】米国特許出願公開第2006/0272703号
【特許文献19】米国特許出願公開第2007/0240778号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
したがって、反対称最適制御を用い、かつ4つの流路全ての応答時間を実質的に同じにすることで、各流路を通して圧力降下を最小にしつつ各流路に相対流量を送出する流量比コントローラシステムを提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本明細書に記載する教示の一様態によれば、4チャンネルガス送出システムは、吸気口チャンネルと、4つの排気口チャンネルと、4つの流量センサと、4つの制御バルブとを有し、各バルブは、吸気口チャンネルから対応する1つの排気口チャンネルを通る流量を制御するように配置される。ガス送出システムは、流量比制御システムをさらに有し、流量比制御システムは、(a)第1の対の排気口チャンネルにおける第1の流量比、(b)第2の対の排気口チャンネルにおける第2の流量比、および(c)第2の対の排気口チャンネルに対する第1の対の排気口チャンネルにおける第3の流量比を制御するよう、吸気口チャンネルから対応する排気口チャンネルを通る流量を制御するように構成され、第3の流量比は、少なくとも1対のバルブにそれぞれ適用される少なくとも1つのバイアス信号を生成することよって制御され、バイアス信号は、第3の流量比の所定の設定点と第3の流量比の計測値との関数である。
【0017】
本明細書に記載する教示の別の様態によれば、4チャンネルガス送出システムは、吸気口チャンネルと、4つの排気口チャンネルと、4つの制御バルブとを有する。各バルブは、吸気口チャンネルから対応する1つの排気口チャンネルを通る流量を制御するように配置される。このガス送出システムは、流量比制御システムをさらに有する。この流量比制御システムは、吸気口チャンネルから4つの排気口チャンネルを通る流量の相対比率を制御するよう、各制御バルブを制御するよう構成され配置される2つの二重対称最適(Dual Antisymmetric Optimal:DAO)制御モジュールと、2つのDAO制御モジュールの流量の比率を制御するよう構成され配置される仮想DAO制御モジュールとを有する。
【0018】
本明細書に記載する教示のさらに別の様態によれば、4チャンネルガス送出システムは、吸気口チャンネルから4つの排気口チャンネルを通る流量を制御するシステムであって、流量比制御システムを有し、流量比制御システムは、吸気口チャンネルから4つの排気口チャンネルを通る流量の相対比率を制御するように構成され配置される2つの二重対称最適(Dual Antisymmetric Optimal:DAO)制御モジュールと、2つのDAO制御モジュールを通る流量の比率の関数として、2つのDAO制御モジュールそれぞれに対するバイアス制御信号を生成するよう構成され配置されるバイアス制御信号生成器とを有する。
【0019】
本明細書に記載する教示のさらに別の様態によれば、多チャンネルガス送出システムは、吸気口チャンネルから4つの排気口チャンネルを通る流量を制御するシステムであって、流量比制御システムを有し、流量比制御システムは、吸気口チャンネルから4つの排気口チャンネルを通る流量の相対比率を制御するよう構成され配置される2つの二重対称最適(Dual Antisymmetric Optimal:DAO)制御モジュールと、2つのDAO制御モジュールを通る流量の比率の関数として、2つのDAO制御モジュールそれぞれに対する制御信号を生成するよう構成され配置される信号生成器とを有する。
【0020】
本明細書に記載する教示のさらに別の様態によれば、2つの二重対称最適(Dual Antisymmetric Optimal:DAO)制御モジュールを用いて、吸気口チャンネルから4つの排気口チャンネルを通る流量の相対比率を制御するように、4つの制御バルブを制御する方法であって、当該方法は、2つのDAO制御モジュールを通る流量の比率の関数として、2つのDAO制御モジュールそれぞれに対するバイアス制御信号を生成するステップを含む。
【0021】
本明細書に記載する教示のさらに別の様態によれば、2つの二重対称最適(Dual Antisymmetric Optimal:DAO)制御モジュールを用いて、吸気口チャンネルから4つの排気口チャンネルを通る流量の相対比率を制御するように、4つの制御バルブを制御する方法が提供される。この方法は、2つのDAO制御モジュールを通る流量の比率の関数として、2つのDAO制御モジュールそれぞれに対するバイアス制御信号を生成するステップを含む。
【0022】
上記の様態ならびに他の構成要素、ステップ、特徴、目的、利益、および利点は、後述する例示の実施形態の詳細な説明、添付図面、および特許請求の範囲を検討することによって明らかになるであろう。
【0023】
以下の図面は実施形態の例を開示するものであり、全ての実施例を説明するものではない。追加または代替として他の実施例を用いてもよい。スペースの節約、または、より効果的な図示のために、明白な詳細または不要な詳細は省略する場合がある。反対に、実施形態によっては、開示される詳細の全てを省略して実施してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、4つの2次流路に対して流量比制御を行う流量比コントローラシステムに係る従来技術のアプローチを示すブロック図である。
図2図2は、本明細書に記載する教示を組み込んだガス送出システムの一実施形態を示すブロック図である。
図3図3は、図2に示す種類のガス送出システムの一実施形態を詳細に示した概要図である。
図4図4は、図3の実施形態の2次流路うち2つを通る流量の比率を制御するための、好ましい二重反対称最適制御アルゴリズムの機能的ブロック図であり、図中、両バルブは同じバイアス電流で制御され、図示される2つのバルブの2つのバルブ制御コマンドは、許容可能な最大バルブコンダクタンスに対して実際上反対称である。
図5図5は、図4の実施形態の機能的ブロック図であり、図6および7に示され図6および7に関して説明される実施形態と関連して説明される、図3の実施形態を実施するために用いられるDAO制御モジュールの入力と出力を示す図である。
図6図6は、4つの2次フローチャンネルに対する流量比制御方法の一実施形態を示す、図3のシステムの機能的ブロック図である。
図7図7は、4つの2次フローチャンネルに対する流量比制御方法の第2の実施形態を示す、図3のシステムの機能的ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
例示の実施形態を以下に示す。追加または代替として他の実施形態を用いてもよい。スペースの節約、または、より効果的な説明のために、明白な詳細または不要な詳細は省略する場合がある。反対に、実施形態によっては、開示されている詳細の全てを省略して実施してもよい。
【0026】
図2を参照すると、流量比コントローラ(Flow Ratio Controller:FRC)システム22は流量Qを受け取る。流量Qは1つ以上の供給源20から供給される総流量であり、4つの2次フローチャンネル24a、24b、24c、および24dに分割される必要がある。チャンネルのうち2つ、2aおよび2bは、シャワーヘッド取付具26aなどの第1の取付具(または1対の取付具)に連結され、他の2つのチャンネル24cおよび2dは、シャワーヘッド取付具26bなどの第2の取付具(または1対の取付具)に連結される。2つの取付具26aおよび26bは、単一のチャンバに設けられても、別々のチャンバに設けられてもよい。FRCシステム22は、流量比Q/(Q+Q)と流量比Q/(Q+Q)とを同じにし、かつ、流量比Q/(Q+Q)と流量比Q/(Q+Q)とを同じにするよう設計されることが好ましい。さらに、好ましい用途のひとつでは、許容可能な調節を行って、バルブの応答時間の差やチャンネルを通るフローの状態の差などの所定のシステム変数を調整することで、流量QとQが実質的に同じとなり、流量QとQが実質的に同じとなる。重要なのは、各流路の制御関数が、例えばFRCシステム22を通る初期流量によって生じる遷移などとして流路を通る流量が変化するたびに、実質的に同じ応答時間で定まることである。
【0027】
図3を参照すると、流量比コントローラ32は、4つの流路すなわちライン35−1、35−2、35−3、および35−4を有する。各流路は、センサ37およびバルブ38を有する。センサ37は、各流路を通る質量流量を制御するように対応するバルブ38を制御するために用いられる流量信号を生成する。このように、各流路のセンサ37およびバルブ38を一緒に用いて、各流路の出力質量流量Q、Q、Q、Qを制御する。よって、流量比は以下のように定義される。
mi=Qi/Q、i=1,2,3,4 (1)
ここで、rmiは、総流量に対するライン35−iの流量比であり、Qiは、ライン35−iを通る流量であり、Qは、以下のように定義された全ての流路35の総流量である。
=ΣQi=Q+Q+Q+Q(2)
式1および式2によれば、全ての流量比の和は1に等しく、これは以下のように表現できる。
Σrmi=rm1+rm2+rm3+rm4=1 (3)
フローチャンネルiの流量比設定点をrとして定義すると、全ての流量比設定点の和も1に等しくなる。すなわち、以下のようになる。
Σr=r+r+r+r=1 (4)
【0028】
図3は、4チャンネルFRCシステム32を有するガス送出システムの一実施形態を示している。システム32は、30として示す1つ以上の供給源からガスまたはガス混合物を受け取り、システム32の吸気口における総流量Qtを定義する。システム32は、各流量センサ37によって検知された流量に応じて4つのバルブ38全てを制御するよう構成された、専用FRC制御装置36を有する。システム32は、図1で達成された流量の比率を1段階で提供するよう構成され、各流路の制御関数が、流路を通る流量が変化するたびに、実質的に同じ応答時間で定まる。これは、ユニット32における一方の対のバルブを制御する第1のDAO制御モジュール、他方の対のバルブを制御する第2のDAO制御モジュール、および第1および第2のDAO制御モジュールにバイアス電流を供給する第3のDAO制御モジュールを採用することで達成される。制御装置36は、2対のバルブの流量比を制御するDAO制御を行うために必要な機能(ソフトウェアによることが好ましい)を提供するよう構成される。
【0029】
図4は、DAO制御モジュールによって制御される各対のバルブを制御する反対称フィードバック制御構成の一実施形態を示す機能的ブロック図である。比率r1=Q1/(Q1+Q2)がr3=Q3/(Q3+Q4)と実質的に同じになり、かつr2=Q2/(Q1+Q2)がr4=Q4/(Q3+Q4)と実質的に同じになるように、40として示されるフィードバック制御構成を用いて、システム32の対応する対のバルブを制御する。フィードバック制御システムは、専用FRC制御装置36(図3)でソフトウェアを走らせることによって作動することが好ましいが、他の形態で実施してもよい。このフィードバック制御構成は、DAO制御モジュール42を有する。モジュール42は、流量比rspについての設定点を表す信号を受け入れるための総和接合部44への入力と、フィードバック構成において計測された流量比rを表す信号を受け入れるための別の入力とを有する。各ユニットの総和接合部44は、設定点の比率rspと計測比率の入力rとの間のエラー信号を計算し、このエラー信号を単一入力単一出力(Single Input, Single Output:SISO)制御装置46に供給する。SISO制御装置46は、例えばPID制御装置であってもよい(他の種類の制御装置を用いることもできる)。制御装置46の出力は、第1の総和接合部48に接続するとともに、インバーター50を通って第2の総和接合部52に接続する。制御装置46の出力は、制御電流Iである。制御電流Iは総和接合部48に印加され、インバーター50によって変換された後、総和接合部52に印加される。一定のバイアス電流入力Iが、総和接合部48において信号Iに加えられ、総和接合部52において変換後の信号(−I)に加えられる。総和接合部48および52からの加算された信号は、それぞれ対応する線型飽和器(Linear SATurator:LSAT)54および56に印加される。線型飽和器54および56は、それぞれバルブ制御電流IおよびIを供給するために接続されている。バルブ制御電流IおよびIは、制御されている対のバルブであるバルブ58および60にそれぞれ印加される。バルブ58を通る流量は、対応する流量センサ62によって計測される。センサ62の出力は、バルブ58を通る流量Qを表す。同様に、バルブ60を通る流量は、対応する流量センサ64によって計測される。センサ64の出力は、バルブ60を通る流量Qを表す。2つの出力は比率計測ブロック66に供給され、そこで比率Q/(Q+Q)が計測される。この比率は、総和接合部44へのフィードバック経路に供給される計測比率rを表す。この出力信号rは、制御フィードバック構成として、総和接合部44において設定点rspから差し引かれる。
【0030】
4チャンネル流量比制御システム32の少なくとも2つの実施形態をさらに説明することに関連して、二重反対称制御モジュールを、3つの入力と2つの出力を有する図5に示す種類のブロックと考えるべきである。3つの入力は、ユーザが予め決定する望ましい流量比である流量比設定点rsp、流量センサで検知された出力流量によって計測された計測流量比r、および最適バイアス電流を設定するための最適バイアス電流Iである。最適バイアス電流Iは、常開のバルブについては許容可能な最小バルブ電流であり、常閉のバルブについては、バルブを最大開放状態に維持するための許容可能な最大バルブ電流である。出力電流IおよびIは、対応するバルブに印加されるバルブ制御電流である。
【0031】
図6および7に、本明細書に記載する教示に従って構成される4チャンネル流量比コントローラシステムの2つの実施形態を示す。流量比制御を1段階で行うために、図6および7に示す実施形態では、二重反対称最適制御の利点を組み込むために、図4および5に関連して示した種類のDAOモジュールを3つ利用する。ユニット制御装置36は、物理的なハードウェアが不要であるという点で仮想的である二重反対称最適制御アルゴリズム(図6の仮想DAOモジュール100および図7の仮想DAOモジュール110で示される)を有するように個別に構成される。その代わり、仮想DAOモジュールの2つの出力電流Io1およびIo2は、(1)ユーザが設定した設定点比率rsp.0と、(2)2つのチャンネルの計測流量、例えば総流量Q(センサ37−1、37−2、37−3、および37−4の全ての出力の和である関数)に対する、取付具の1つに設けられたセンサ37−1および37−2(図3)からの出力と、(3)最適バイアス電流Io0との関数として、ユニット制御装置36によって生成される。最適バイアス電流Io0は、上述のように、常開のバルブを利用する場合は許容可能な最小バルブ電流であり、常閉のバルブを利用する場合は最大値をとる。Io1およびIo2の値は、好ましくは、ユニット制御装置36で動作するソフトウェアにおいて決定される。この構成では、2つの電流Io1およびIo2は、図6の102と104および図7の112と114として示される物理分流器に、バイアス電流を供給する。これらの電流の1つは、上記の検討事項に従って決定される最適バイアス電流である。最適バイアス電流は、図6の102または104および図7の112または114として示される物理分流器に印加される。物理分流器は、最大開放状態の場合に最大流量が最小となるバルブ58または60を有する。このバルブが常開のバルブであれば、最適バイアス電流はゼロであり、このバルブが常閉のバルブであれば、最適バイアス電流は、そのバルブの最大バルブ制御電流である。図4に示すとおり、バイアス電流Io1およびIo2は、対応するDAO制御モジュール42の総和接合部48および52に印加される。
【0032】
図6に示す実施形態では、4チャンネル流量比コントローラシステム(図3に32として示す)は、名目上50%の流量が各チャンバや取付具に行き、仮想分流器の比率設定点がrsp.0=50%となるように、2つのチャンバや取付具に流量を均等に分配する。その後、各取付具の総流量に対する各取付具の一方の部分(例えば、シャワーヘッド取付具の外側部分)への流量の比率が各取付具で同じになるように、各流量を分配する。一般に、仮想分流器の比率設定点は、第1のチャンバまたは取付具に流れる第1の対のチャンネルの流量比設定点の和である。すなわち、以下のようになる。
sp.0=r+r(4)
【0033】
図6に示すとおり、分流器102によって、(1)r/(r+r)に等しい設定点比率rsp.11と、(2)Q/(Q+Q)に等しい(流量センサ62および64からの)計測流量比rm.11と、(3)仮想分流器100からのバイアス電流Io1との関数として、流量が分配される。同様に、分流器104によって、(1)r/(r3+r)に等しい設定点比率rsp.12と、(2)Q/(Q+Q)に等しい(当該分流器の流量センサ62および64からの)計測流量比rm.12と、(3)仮想分流器100からのバイアス電流Io2との関数として、流量が分配される。各物理分流器の出力は、各対のバルブ58および60を制御するための適切な駆動電流I、I、I、およびIを供給する。
【0034】
図7に示す第2の実施形態は、仮想分流器110を有する4チャンネル流量比コントローラユニット(図3に32として示す)である。仮想分流器110は、ユーザによって設定される比率設定点rsp.0に従って、フローを受け取る取付具やチャンバに流量を分配する。例えば、(a)分流器112などによって制御される2つのシャワーヘッドの外側部分と、(b)分流器114によって制御される2つのシャワーヘッドの内側部分とで流量が分配される場合、2つのバイアス電流出力Io1およびIo2は、(1)入力最適バイアス電流Io0と、(2)2つの比率rとrの和である比率に等しい設定点rsp.0と、(3)計測流量比(Q+Q)/Qに等しい計測比率rm0との関数である。分流器112は、2つの取付具またはチャンバの同じ部分に同じ流量を供給するものであるので、出力制御電流IおよびIは、(1)設定点比率rsp.11(50%に設定される)と、(2)計測流量比Q/(Q+Q)に等しい計測比率rm.11と、(3)仮想分流器110からのバイアス電流出力Io1との関数である。同様に、分流器114は、2つの取付具またはチャンバの同じ部分に同じ流量を供給するものであるので、出力制御電流IおよびIは、(1)設定点比率rsp.12(50%に設定される)と、(2)計測流量比Q/(Q+Q)に等しい計測比率rm.12と、(3)仮想分流器110からのバイアス電流出力Io2との関数である。各物理分流器の出力は、各対のバルブ58および60を制御するための適切な駆動電流I、I、I、およびIを供給する。
【0035】
なお、各取付具の各部分への実流量は、各流路のフローの状態や構成部品の差異を考慮に入れて調整される。したがって、上記の例ではこれらの差異を考慮して、一方の取付具の外側部分への流量に比べ、他方の取付具の外側部分への流量が実際は総流量の50%より多く、2つの分流器によって各取付具へと分割された流量が異なる場合がある。一般に、図7に示す分流器112の流量比設定点は、第1の対のフローチャンネルそれぞれの流量比設定点の相対比率である。すなわち、以下のようになる。
sp.11=r/(r+r) (5)
また、分流器114の流量比設定点は、第2の対のフローチャンネルそれぞれの流量比設定点の相対比率である。すなわち、以下のようになる。
sp.12=r/(r+r) (6)
【0036】
また、図6および7の構成は、ユニット制御装置36が3つの二重反対称最適制御モジュール(図6の100または図7の110として示される1つの仮想分流器、および図6の102と104または図7の112と114として示される2つの物理分流器)を動作させるよう構成されることにより、二重反対称最適制御の利点を利用している。仮想分流器100または110は、図1の上流分流器10Aと同様の機能をもつが、図1の10Aと比べて、物理的なハードウェアが不要であるという点で仮想的である。その代わり、仮想DAOモジュール100または110の2つの出力電流Io1およびIo2は、(1)ユーザが設定した設定点比率rsp.0と、(2)対応するチャンネルの計測流量比と、(3)最適バイアス電流Io0との関数として、ユニット制御装置36に生成される。最適バイアス電流Io0は、上述のように、常開のバルブを利用する場合はゼロであり、常閉のバルブを利用する場合は最大値をとる。このように、Io1およびIo2の値は、ユニット制御装置36のDAOアルゴリズムによって決定できる。この構成では、仮想DAOモジュールからの2つの出力電流Io1およびIo2は、図6の102と104または図7の112と114として示される物理分流器に、バイアス電流を供給する。これらの電流の1つは、上記の検討事項に従って決定された最適バイアス電流である。最適バイアス電流は、図6の102もしくは104または図7の112もしくは114として示される分流器に印加される。分流器は、最大開放状態の場合に許容可能なコンダクタンスが最大であるバルブ58もしくは60を有する。このバルブが常開のバルブであれば、最適バイアス電流はゼロであり、バルブが常閉のバルブであれば、最適バイアス電流は最大バルブ制御電流である。図4に示すとおり、バイアス電流Io1およびIo2は、対応するDAO制御モジュール42の総和接合部48および52に印加される。したがって、図6および7のそれぞれにおいて、DAO構成における全てのSISO制御装置の出力が、各ユニットのバルブに印加される前に分配されかつ変更される。一方の分流器(図6の102または104および図7の112または114)に印加されるバルブ制御コマンドは、他方の分流器に印加されるバルブ制御コマンドに関して、実際上反対称である。これら2つのバルブコマンドが、2つの飽和限度の一方である許容可能な最大バルブコンダクタンス位置でそれぞれの線型飽和器を通過するので、一方のユニットの2つのバルブが、任意の時期に、許容可能な最大バルブコンダクタンス位置に保持されると同時に、他方のユニットが、実際の流量比を維持するように能動的に制御されるという正味の効果が得られる。したがって、反対称最適制御アルゴリズムにより、任意の時期に、許容可能な最大総バルブコンダクタンスが得られる。上述したように、総バルブコンダクタンスが最大であると、比率、流量、および上流圧力についての整定時間が短くなり、流量比コントローラの前後の圧力降下が小さくなる。このように、反対称最適制御アルゴリズムにより、流量比コントローラの制御性能が大幅に向上する。
【0037】
4チャンネルガス送出システムとして実施形態を説明してきたが、本明細書中に説明した原理は、少なくとも2つのDAO制御モジュールを採用するいかなる多チャンネルガス送出システムにも当てはまる。
【0038】
上述の構成要素、ステップ、特徴、目的、利益、および利点は単なる例示であり、そのいずれも、またそれらに関するいずれの議論も、いかなる方法においても保護の範囲を限定するものではない。他にも多くの実施形態が想定される。そのような実施形態には、構成要素、ステップ、特徴、目的、利益、および利点がより少なかったり多かったり、異なったりする実施例が含まれる。また、構成要素やステップが、異なる方法で配置されたり順序づけられたりする実施例も含まれる。
【0039】
特に明記しないかぎり、本明細書および添付する特許請求の範囲に記載する全ての計測値、値、定格、位置、大きさなどの仕様はおおよそのものであり、厳密なものではない。これらの仕様は、その仕様が関連する機能に適合し、また、その仕様が関連する技術分野において慣例的なものと適合する合理的な範囲を有するものとする。
【0040】
本開示には、引用した全ての論文、特許、特許出願、およびその他の出版物を援用する。
【0041】
「〜のための手段」という語句は、請求項において使用される場合、記載された対応する構造および材料、ならびにそれらと均等なものを包含するものとし、また、そのように解釈されるべきである。同様に、「〜のためのステップ」という語句は、請求項において使用される場合、記載された対応する行為、およびそれらと均等なことを包含するものとし、また、そのように解釈されるべきである。請求項にこれらの語句がない場合、その請求項は、対応する構造、材料、もしくは行為のいずれか、またはそれらと均等なものに限定されないものとし、また、限定されるように解釈されるべきではない。
【0042】
述べられた内容または示された内容はいずれも、特許請求の範囲に記載されているかどうかにかかわらず、いかなる構成要素、ステップ、特徴、目的、利益、利点、またはそれと均等なものを公共の用に供するものではなく、また、供するものと解釈されるべきではない。
【0043】
保護の範囲は、添付する特許請求の範囲によってのみ限定される。その範囲は、本明細書および付随する出願経過に照らして解釈されたとき、特許請求の範囲において使用される文言の通常の意味と一致するかぎり広く、かつ構造的および機能的に均等なものを全て包含するものとし、また、そのように解釈されるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7