(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5886978
(24)【登録日】2016年2月19日
(45)【発行日】2016年3月16日
(54)【発明の名称】航空障害灯の制御方法ないしその方法を実施するためのウィンドパーク
(51)【国際特許分類】
F03D 80/00 20160101AFI20160303BHJP
B64F 1/20 20060101ALI20160303BHJP
【FI】
F03D11/00 Z
B64F1/20
【請求項の数】19
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2014-542766(P2014-542766)
(86)(22)【出願日】2012年11月9日
(65)【公表番号】特表2015-507713(P2015-507713A)
(43)【公表日】2015年3月12日
(86)【国際出願番号】EP2012072333
(87)【国際公開番号】WO2013075959
(87)【国際公開日】20130530
【審査請求日】2014年7月14日
(31)【優先権主張番号】102011086990.5
(32)【優先日】2011年11月23日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】512197272
【氏名又は名称】ヴォッベン プロパティーズ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】WOBBEN PROPERTIES GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100080816
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 朝道
(74)【代理人】
【識別番号】100098648
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 潔人
(74)【代理人】
【識別番号】100119415
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 充
(72)【発明者】
【氏名】ハルムス、シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】メラー、ゲルト
【審査官】
佐藤 秀之
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2010/133541(WO,A1)
【文献】
独国特許出願公開第10207824(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03D 80/00
B64F 1/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウィンドパークの航空障害灯を音響的監視により制御する方法であって、
前記ウィンドパークは、マイクロフォン構成体を備える音響的監視装置を有しており、
前記マイクロフォン構成体は、前記ウィンドパークの周辺からの音響信号を記録し、該音響信号は、前記マイクロフォン構成体と接続された信号処理装置で処理され、
前記ウィンドパークの少なくとも1つの風力発電装置の航空障害灯装置をスイッチオンするためのスイッチ装置が設けられており、該スイッチ装置は前記信号処理装置と接続されており、該信号処理装置により制御され、
前記信号処理装置は、前記音響的監視装置により飛行物体の音響信号が検知される場合、および/または所定の音響信号(例えば正弦波音響)が前記飛行物体のノイズにより重畳および/または歪曲される場合に、前記スイッチ装置に対して前記航空障害灯のスイッチオンをさせる、方法。
【請求項2】
前記マイクロフォン構成体は、前記風力発電装置のナセル上に配置されている、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記音響的監視装置には、能動的または受動的なフィルタ装置および/または信号処理装置が配設されており、
該フィルタ装置および/または信号処理装置によって、ウィンドパークないし風力発電装置の周辺からの音響的音響事象が、マイクロフォンにより記録された信号からろ波除去される、ことを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記マイクロフォン構成体は、少なくとも2つのマイクロフォンから成り、
当該マイクロフォンは、互いに所定の間隔をおいて風力発電装置のナセルの異なる側に配置されている、ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記ウィンドパークは、当該ウィンドパークの周縁部に立つN個の風力発電装置と、当該ウィンドパークの周縁部には立っていないM個の風力発電装置を有しており、
前記ウィンドパークの周縁部に立つ風力発電装置にだけ音響的監視装置が装備されている、ことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
ウィンドパークの少なくとも1つの風力発電装置には二次レーダ装置が装備されており、該二次レーダ装置によって、高度情報および/または位置情報が含まれているトランスポンダ信号が受信可能であり、
該トランスポンダ信号が所定の情報内容を有する場合、前記ウィンドパークの風力発電装置の航空障害灯装置がスイッチオンされる、ことを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記二次レーダ装置が、所定の値より高いという高度データを有する高度情報を含むトランスポンダ信号を受信し、同時に相応のノイズ信号が前記音響的監視装置により検出されない場合、風力発電装置の航空障害灯装置はスイッチオフされたままであり、それにもかかわらず、前記マイクロフォン構成体により飛行物体のノイズが検知される場合、前記航空障害灯装置はスイッチオンされる、ことを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記音響的監視装置により、飛行物体の近似的位置特定も可能である、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記音響的監視装置により飛行物体のノイズが検知されるが、同時にトランスポンダ信号は受信されない場合、相応の情報が空域監視ステーションに出力される、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
マイクロフォン構成体(単数ないし複数)が取り付けられた風力発電装置にスピーカが装備されており、該スピーカにより飛行物体の典型的なノイズが形成可能であり、これにより時折、前記マイクロフォン構成体ないし音響的に検出システムをテストし、
そのために前記スピーカには相応の信号源が配設されており、該信号源には飛行物体の典型的なノイズが記憶されている、ことを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記マイクロフォン構成体には音響的データバンクが配設されており、該データバンクには、種々の飛行物体のノイズ、音響信号またはそれらの周波数スペクトルが記憶されており、音響信号が受信されると、マイクロフォン構成体により記録された音響信号と、メモリに記憶されたデータセットないし信号との比較が行われる、ことを特徴とする請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
ウィンドパークの風力発電装置の全ての航空障害灯装置は中央コンピュータを介して制御され、
該コンピュータはウィンドパークの風力発電装置に、または風力発電装置内に配置されており、
前記中央コンピュータは前記マイクロフォン構成体と接続されており、飛行物体の音響的検出に基づいてウィンドパークの航空障害灯装置がスイッチオンされる場合には当該航空障害灯装置をスイッチオンする、ことを特徴とする請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記ウィンドパークの前記中央コンピュータは前記レーダ装置とも接続されており、航空障害灯装置のスイッチオンをトリガすべきトランスポンダ信号を受信する場合には、当該航空障害灯装置をスイッチオンする、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記ウィンドパークの風力発電装置にはスピーカが装備されており、該スピーカによって飛行物体または風力発電装置の典型的なノイズが形成可能であり、
前記スピーカは、マイクロフォン構成体が配置されている風力発電装置に配置されている、ことを特徴とする請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記マイクロフォンまたは前記マイクロフォン構成体のマイクロフォンには固体伝搬音遮断部が設けられており、これにより風力発電装置自体の音響信号は抑圧される、ことを特徴とする請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記ウィンドパークの風力発電装置には音響信号源が装備されており、該音響信号源によって所定の音響信号が発生され、
前記マイクロフォン構成体が、前記スピーカの所定の音響信号を十分な品質で記録する限り、前記航空障害灯装置はスイッチオンされず、ないしスイッチオフされたままであり、
前記音響信号が、別のノイズによって埋没する場合、または監視装置による前記音響信号の確実な識別および/または受信がもはや確定できない程に歪曲される場合、前記風力発電装置ないし前記ウィンドパークの風力発電装置の前記航空障害灯装置はスイッチオンされる、ことを特徴とする請求項1から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記マイクロフォン構成体のマイクロフォン(単数または複数)は、風力発電装置のナセル内に配置されている、請求項1から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
風力発電装置またはウィンドパークの航空障害灯を、請求項1から17のいずれか一項に記載の方法にしたがって制御ないしスイッチオンまたはスイッチオフするための、風力発電装置の音響的監視装置の使用法。
【請求項19】
請求項1から17のいずれか一項に記載の方法を実施するための1つまたは複数の風力発電装置から成るウィンドパーク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空障害灯の制御方法ないしその方法を実施するためのウィンドパークに関する。
【背景技術】
【0002】
風力発電装置の航空障害灯を制御するために既に多数の提案が行われている。
【0003】
例えば特定の地理的領域にある風力発電装置の航空障害物照明灯(短く「航空障害灯」とも称される)を、それぞれの時刻に応じて常時スイッチオンまたはスイッチオフしておくことが公知である。
【0004】
複数の風力発電装置から成るウィンドパークにレーダ装置を装備し、これによりウィンドパークの近傍に存在する(そして例えばウィンドパークに衝突するコースにある)飛行物体、例えば飛行機等を発見し、航空障害灯のスイッチオンによってウィンドパークへの注意を喚起することが既に提案されている。
【0005】
本発明は、従来技術としての国際特許出願WO2010/133541から出発するものである。
【0006】
前記出願の内容は本願の内容でもあり、前記出願は、いわゆる二次レーダをウィンドパークに装備することを開示する。すなわちウィンドパークの少なくとも1つの風力発電装置は、例えば飛行機または航空管制センターのトランスポンダ信号を受信し、評価することができる。ここでトランスポンダ信号は、航空では典型的ないわゆる「DF17信号」であり、この信号は高度情報も含む。高度情報が、飛行物体とウィンドパークとの衝突を確実に排除できる場合には、航空障害灯はスイッチオフされたままである。これは例えば、トランスポンダ信号が30,000ftの高度情報を含む場合である。
【0007】
しかしトランスポンダ信号が、飛行物体からウィンドパークまでの格段に小さな距離、例えば1,000ftの高度情報を含む場合、ウィンドパークの航空障害灯がスイッチオンされ、これによりウィンドパークの全ての航空障害灯が作動され、これにより飛行物体に対して、ウィンドパークの風力発電装置がどこに存在するかを光学的ないし視覚的に明確にする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】WO2010/133541
【特許文献2】WO2010/010043
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
WO2010/133541による前記解決手段は既に非常に良好で安全でコスト的にも好ましい解決手段であるが、それでもなお誤動作が完全には排除されていない。
【0010】
本発明の課題は、WO2010/133541から公知のシステムを、とりわけ二次レーダが損傷した場合、または完全に故障した場合、または飛行物体のトランスポンダ信号送信ユニットが故障した場合に対して改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、この課題を請求項1の特徴によって解決する。有利な改善形態は従属請求項に記載されている。
本発明の第1の視点(形態1)によれば、ウィンドパークの航空障害灯を音響的監視により制御する方法、または1つ以上の風力発電装置から成るウィンドパークであって、前記ウィンドパークは、マイクロフォン構成体を備える音響的監視装置を有しており、前記マイクロフォン構成体は、前記ウィンドパークの周辺からの音響信号、ノイズ等を記録し、該音響信号は、前記マイクロフォン構成体と接続された信号処理装置で処理され、前記ウィンドパークの少なくとも1つの風力発電装置の航空障害灯装置をスイッチオンするためのスイッチ装置が設けられており、該スイッチ装置は前記信号処理装置と接続されており、該信号処理装置により制御され、前記信号処理装置は、前記音響的監視装置により飛行物体、例えば飛行機またはヘリコプター、の音響信号が検知される場合、および/または所定の音響信号(例えば正弦波音響)が前記飛行物体のノイズにより重畳および/または歪曲される場合に、前記スイッチ装置に対して前記航空障害灯のスイッチオンをさせる、方法またはウィンドパークが提供される。
本発明の第2の視点(形態18)によれば、風力発電装置またはウィンドパークの航空障害灯を制御ないしスイッチオンまたはスイッチオフするための、風力発電装置の音響的監視装置の使用が提供される。
本発明では以下の形態が可能である。
(形態1)ウィンドパークの航空障害灯を音響的監視により制御する方法、または1つ以上の風力発電装置から成るウィンドパークであって、前記ウィンドパークは、マイクロフォン構成体を備える音響的監視装置を有しており、前記マイクロフォン構成体は、前記ウィンドパークの周辺からの音響信号、ノイズ等を記録し、該音響信号は、前記マイクロフォン構成体と接続された信号処理装置で処理され、前記ウィンドパークの少なくとも1つの風力発電装置の航空障害灯装置をスイッチオンするためのスイッチ装置が設けられており、該スイッチ装置は前記信号処理装置と接続されており、該信号処理装置により制御され、前記信号処理装置は、前記音響的監視装置により飛行物体、例えば飛行機またはヘリコプター、の音響信号が検知される場合、および/または所定の音響信号(例えば正弦波音響)が前記飛行物体のノイズにより重畳および/または歪曲される場合に、前記スイッチ装置に対して前記航空障害灯のスイッチオンをさせる、方法またはウィンドパークが提供される。
(形態2)前記マイクロフォン構成体は、前記風力発電装置のナセル上に配置されていることが好ましい。
(形態3)前記音響的監視装置には、能動的または受動的なフィルタ装置および/または信号処理装置が配設されており、該フィルタ装置および/または信号処理装置によって、ウィンドパークないし風力発電装置の周辺からの音響的音響事象が、マイクロフォンにより記録された信号からろ波除去され、例えば前記音響事象は、風に起因するノイズ、および/または風力発電装置に起因するノイズ、および/またはウィンドパークまたは風力発電装置の底部にある車両に起因するノイズ等であることが好ましい。
(形態4)前記マイクロフォン構成体は、少なくとも2つのマイクロフォンから成り、当該マイクロフォンは、互いに所定の間隔をおいて配置されており、好ましくは風力発電装置のナセルの異なる側に配置されていることが好ましい。
(形態5)前記ウィンドパークは、当該ウィンドパークの周縁部に立つN個の風力発電装置と、当該ウィンドパークの周縁部には立っていないM個の風力発電装置を有しており、前記ウィンドパークの周縁部に立つ風力発電装置にだけ音響的監視装置が装備されていることが好ましい。
(形態6)ウィンドパークの少なくとも1つの風力発電装置には二次レーダ装置が装備されており、該二次レーダ装置によって、高度情報および/または例えば「北極」または「南極」等の位置情報が含まれているトランスポンダ信号が受信可能であり、該トランスポンダ信号が所定の情報内容、例えば30,000ftより格段に低い、例えば500から2,000ftであるという高度情報を有する場合、前記ウィンドパークの風力発電装置の航空障害灯装置がスイッチオンされることが好ましい。
(形態7)前記二次レーダ装置が、所定の値、例えば5,000ftより高いという高度データを有する高度情報を含むトランスポンダ信号を受信し、同時に相応のノイズ信号が前記音響的監視装置により検出されない場合、風力発電装置の航空障害灯装置はスイッチオフされたままであり、それにもかかわらず、前記マイクロフォン構成体により飛行物体のノイズが検知される場合、前記航空障害灯装置はスイッチオンされることが好ましい。
(形態8)前記音響的監視装置により、飛行物体の近似的位置特定も可能であることが好ましい。
(形態9)前記音響的監視装置により飛行物体のノイズが検知されるが、同時にトランスポンダ信号は受信されない場合、相応の情報、例えば電子的警告メッセージ、例えばEメール、SMS等が空域監視ステーションに出力されることが好ましい。
(形態10)風力発電装置、好ましくは例えばマイクロフォン構成体(単数ないし複数)が取り付けられた風力発電装置にスピーカが装備されており、該スピーカにより飛行物体の典型的なノイズが形成可能であり、これにより時折、前記マイクロフォン構成体ないし音響的に検出システムをテストし、そのために前記スピーカには相応の信号源が配設されており、該信号源には飛行物体の典型的なノイズが記憶されていることが好ましい。
(形態11)前記マイクロフォン構成体には音響的データバンクが配設されており、該データバンクには、種々の飛行物体のノイズ、音響信号またはそれらの周波数スペクトルが記憶されており、音響信号が受信されると、マイクロフォン構成体により記録された音響信号と、メモリに記憶されたデータセットないし信号との比較が行われることが好ましい。
(形態12)ウィンドパークの風力発電装置の全ての航空障害灯装置は中央コンピュータを介して制御され、該コンピュータは、好ましくはウィンドパークの風力発電装置に、または風力発電装置内に配置されており、前記中央コンピュータは前記マイクロフォン構成体と接続されており、飛行物体の音響的検出に基づいてウィンドパークの航空障害灯装置がスイッチオンされる場合には当該航空障害灯装置をスイッチオンすることが好ましい。
(形態13)前記ウィンドパークの前記中央コンピュータは前記レーダ装置とも接続されており、航空障害灯装置のスイッチオンをトリガすべきトランスポンダ信号を受信する場合には、当該航空障害灯装置をスイッチオンすることが好ましい。
(形態14)前記ウィンドパークの風力発電装置にはスピーカが装備されており、該スピーカによって飛行物体または風力発電装置の典型的な飛行ノイズが形成可能であり、前記スピーカは、好ましくはマイクロフォン構成体が配置されている風力発電装置に配置されていることが好ましい。
(形態15)前記マイクロフォンまたは前記マイクロフォン構成体のマイクロフォンには固体伝搬音遮断部が設けられており、これにより風力発電装置自体の音響信号は十分に抑圧されることが好ましい。
(形態16)前記ウィンドパークの風力発電装置には音響信号源が装備されており、該音響信号源によって所定の音響信号、例えば正弦波音響が発生され、前記マイクロフォン構成体が、前記スピーカの所定の音響信号を十分な品質で記録する限り、前記航空障害灯装置はスイッチオンされず、ないしスイッチオフされたままであり、前記音響信号が、例えば接近する飛行物体の別のノイズによって埋没する場合、または監視装置による前記音響信号の確実な識別および/または受信がもはや確定できない程に歪曲される場合、前記風力発電装置ないし前記ウィンドパークの風力発電装置の前記航空障害灯装置はスイッチオンされることが好ましい。
(形態17)前記マイクロフォン構成体のマイクロフォン(単数または複数)は、風力発電装置のナセル内に配置されていることが好ましい。
(形態18)風力発電装置またはウィンドパークの航空障害灯を制御ないしスイッチオンまたはスイッチオフするための、風力発電装置の音響的監視装置の使用が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明によれば、ウィンドパークのただ1つの風力発電装置および/または特定の風力発電装置および/またはウィンドパークの全ての風力発電装置にマイクロフォン構成体、すなわち音響的監視装置を装備することが提案される。ここでマイクロフォン構成体は、ただ1つのマイクロフォンまたはマイクロフォンアレイの形式の複数のマイクロフォン、すなわち1つの平面に所定の空間的配置で互いに配備されたx個のマイクロフォンを意味することもできる。マイクロフォン構成体によって本発明のウィンドパーク周囲の空域ないし状況が音響的に、擬似的な「音響カメラ」の形で監視される。
【0013】
このためにウィンドパーク周辺の全てのノイズが検出され、音響的監視装置の一部である信号処理部に供給される。
【0014】
所定のフィルタないし信号処理アルゴリズムを準備することにより、ここでは好ましくは、飛行物体の接近とはまったく関係のないことが確実であるノイズを考慮しないこと(またはノイズ全体から「計算で取り除くこと」)ができる。例えばとりわけ風が風力発電装置に当たることに起因する風切り音は、全く典型的なスペクトルを(通常は比較的高周波)有するが、飛行機のノイズないし典型的な周波数とは音響的に異なる特定のノイズ背景(ノイズパターン)も有している。例えば風切り音は、マイクロフォンのポップガード装置(Poppschutzeinrichtung)によって比較的確実にノイズ背景全体からろ波除去することができ、したがってこのような風切り音はマイクロフォンによってほとんど記録されない。しかしそのようなポップガードの場合、これらは耐候性にも優れて構成されているよう配慮されている。
【0015】
風力発電装置自体も、ロータブレードの調整および/またはアジマス調整(ヨー調整)、または風力発電装置の他の部品、例えばブレーキ等によってノイズの原因となり得る。
【0016】
マイクロフォン構成体およびそれに後置された信号処理部により、風力発電装置自体から発生するノイズ、または風力発電装置の一部に当たる風から発生するノイズ、または突風から発生するノイズだけが常に検出される場合、または風力発電装置の底部から発生するノイズ、例えば風力発電装置の近傍にある農業用車両または他の車両から発生するノイズも検出される場合、これは航空障害灯のスイッチオンには何ら作用しない。すなわちこのようなノイズではスイッチオンは行われない。
【0017】
しかしマイクロフォン構成体によって飛行物体、例えば飛行機またはヘリコプターのノイズが検出される場合、これが信号処理装置によって確定され、この信号処理装置が航空障害灯をスイッチオンするスイッチ装置を制御する場合には、航空障害灯がスイッチオンされる。そして航空障害灯は所定の時間、例えば10分間スイッチオンされたままであり、マイクロフォン構成体が以前と同じように飛行物体のノイズを検出しない限り、自動的に再びスイッチオフされる。そのような場合(飛行物体のノイズを検出する場合)、航空障害灯はさらなる時間の間、例えば10分間さらに作動を継続する。そしてマイクロフォン構成体が飛行物体のノイズをもはや確認できなければ、航空障害灯はスイッチオフされる。
【0018】
マイクロフォン構成体の信号処理部には記憶装置が配設されており、この記憶装置には飛行機の種々のスペクトルおよび/または飛行機の典型的なノイズが比較パラメータとして記憶されている。
【0019】
マイクロフォン構成体が飛行物体のノイズを検出すると直ちに、このノイズがメモリに記憶されたノイズと比較され、十分に一致する場合には航空障害灯のスイッチオンが行われる。
【0020】
あるいはまたはそれに加えて、マイクロフォン構成体により記録された飛行物体のノイズを、その周波数に関して、例えば周波数分析器により評価することができる。そして記録されたノイズの測定された周波数スペクトルが、対応の記憶された周波数スペクトルと比較され、十分に一致する場合には航空障害灯がスイッチオンされる。
【0021】
好ましくはマイクロフォン装置は、ウィンドパークの風力発電装置上に配置されており、この風力発電装置にはいずれにしろ既に二次レーダ装置、すなわち例えば「DF17信号」、すなわち例えば30,000ftの高度情報または例えば「北極」の位置情報を含む信号を受信するための装置が配置されている。
【0022】
好ましくはマイクロフォン構成体は、2つ以上のマイクロフォンから成り、これらのマイクロフォンは風力発電装置のナセルの異なる側に配置されている。現代の航空障害灯は通常、少なくとも2つのフラッシュ装置および/または照明装置(夜間障害灯のための赤色光、昼間障害灯のための白色光)から成り、これらも同様に風力発電装置のナセルの異なる側に配置されており、マイクロフォンも好ましくは信号照明装置、すなわち照明装置および/またはフラッシュ装置が配置されている場所に配置される。したがってマイクロフォンも、信号装置、すなわち照明装置(ランプ、フラッシュ等)を保持する対応の装置によって保持される。
【0023】
そして飛行物体が風力発電装置ないしウィンドパーク、すなわちウィンドパークの風力発電装置に接近し、マイクロフォン装置によって飛行物体のノイズが記録され、したがって測定されると、航空障害灯がスイッチオンされる。すなわち、トランスポンダ信号、すなわちDF17信号が受信され、この信号が例えば30,000ftの高度情報を含んでおり、この高度では飛行物体とウィンドパークとの間の関連性のある接近を確実に排除できる場合でもスイッチオンされる。
【0024】
二次レーダ装置がトランスポンダ信号、すなわち例えばDF17信号を受信し、この信号が航空障害灯をスイッチオンさせる場合にも、航空障害灯のスイッチオンが実現される。しかし同時にマイクロフォン装置によっても飛行物体の接近を音響的に検出することができ、これによりスイッチオン決定が確認される。しかし好ましくは、飛行物体の記録された音響信号、すなわちそのノイズが記録され、比較ノイズとしてマイクロフォン構成体の信号装置に配設されたメモリに記憶される。したがって本発明は、音響的監視を仮想的に「セルフラーニング」ないし適合することも可能である。なぜなら一度マイクロフォン構成体により検出された飛行機のノイズが、後の時点で(同じタイプの飛行機が再び風力発電装置ないしウィンドパークに接近する場合)再び検出されることが予想されるからであり、これにより音響的監視は、風力発電装置の場所ないしウィンドパークの場所において調節され、そこに記憶されたノイズスペクトルを相応に適合ないし拡張する。各ウィンドパークないし各風力発電装置は別の場所に立っており、ウィンドパークのノイズ背景ないしウィンドパーク内の風力発電装置のノイズ背景も、ウィンドパークの隣接施設または典型的な生活ノイズ(Zivilgeraeuschen)(例えば道路交通、鉄道交通等)に依存するだけではなく、ウィンドパークないし風力発電装置が設置された地理的プロフィールにも依存しているから、このようなセルフラーニング適合は非常に望ましいことである。
【0025】
したがって例えば風力発電装置ないしウィンドパークが北ドイツの低地地方に立つ場合、または丘陵地帯に立つ場合、または音響的エコーが形成される起伏の厳しい山々/岩壁がある地域に立つ場合では、特定の飛行ノイズがまったく異なって聞こえ、ないし知覚されることが理解される。
【0026】
マイクロフォン構成体によって(すなわち音響的監視装置によって)飛行物体のノイズが検出される場合、既に述べたように風力発電装置ないしウィンドパークの風力発電装置の航空障害灯がスイッチオンされる。しかし同時にトランスポンダ信号が検出されない場合、または飛行物体の高度情報を含んだトランスポンダ信号が検出され、この信号からノイズ検出を推測できない場合、すなわちマイクロフォン構成体により測定されたノイズ信号がトランスポンダ信号ないし高度情報と意味のある一致に至らない場合、対応の情報、すなわち警告メッセージ、Eメール等が、例えば飛行管制センターまたはウィンドパークの保守ステーションに対して送信される。そしてこのような情報は、トランスポンダ信号受信装置の機能正常性を検査するために使用することもできる。
【0027】
マイクロフォン構成体による前記の音響的監視の代わりに、またはこれに加えて、風力発電装置ないしウィンドパークの周辺を、例えばカメラにより、好ましくは赤外線カメラにより、すなわちウィンドパーク周辺についての熱(温度)画像を形成することのできるカメラにより視覚的に監視することも可能である。このようなカメラによって所定のセクタ内に熱画像が検出されると直ちに、飛行物体の接近が推測される。このセクタは例えば所定の自立的に選択された水平線の上方の領域によって形成される。この場合、各測定された熱的事象が直ちに航空障害灯の1つのスイッチオンを引き起こすのではなく、熱的事象が所定の品質も有する場合に初めてスイッチオンされる。これは例えば鳥が風力発電装置の近傍にいる場合に、航空障害灯のスイッチオンを阻止するためである。
【0028】
ウィンドパークの周辺を音響的に監視する代わりに、またはそれに加えて、カメラ構成体によって監視することもできる。なぜなら、飛行機も固有の照明信号装置を有しており、この照明信号装置はとりわけ夜間でも良好に識別することができるから、自立的に設定された水平線の上方に、カメラによってさらに何が検出されるかに応じて、風力発電装置ないしウィンドパークの風力発電装置の航空障害灯装置をスイッチオンすることができる。
【0029】
以下、本発明の一実施形態を例として、添付図面を参照して詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明のナセルをロータハブの正面から見た図である。
【
図2】
図1の正面図のナセルを示す図であるが、ロータは異なる位置にある。
【
図3】
図1と2による本発明のナセルの側面図である。
【
図4】
図1から3の1つによる本発明のナセルの裏面図である。
【
図5】航空機のトランスポンダが故障した場合のバックアップシステムのフローチャートである。
【実施例】
【0031】
図1から4は、マイクロフォンの図示を除いてWO2010/010043から公知である。この出願の内容は、本願の対象としても取り入れられる。
【0032】
図1は、3つのロータブレード14を備えるハブカバー12を正面から見たナセル1を示し、ロータブレードはその根元領域だけが図示されている。ロータブレード14のうち1つは、いわゆる6時の位置にあり、ナセル1が配置されたタワーを隠している。別の2つのロータブレード14は10時の位置と2時の位置にあり、ナセル1の上部に配置された中央照明装置2を自由に見ることができる。中央照明装置2は回転灯として構成されている。左側と右側の照明装置は、
図1では10時ないし2時の位置にあるロータブレード14によって隠されている。
【0033】
図2によれば、ロータブレード14を有するロータは、
図1に対してさらに回転され、1つのロータブレード14はほぼ12時の位置にある。上を指すこのロータブレード14は中央照明装置2を隠している。その代わり、左側の照明装置4と右側の照明装置6が自由に見える。その他、ここでは略示されたタワー10も自由に見える。
【0034】
図3のナセル1の側面図から、右側照明装置6の位置が明確である。右側照明装置6はナセル1の長手方向に、すなわち
図3によれば右から左の方向において、ナセル1のほぼ中央に配置されている。これはナセル1の最も幅の広い箇所でもある。垂直方向で右照明装置6は、ナセル1の中心よりもやや高く配置されている。
図3では、ナセル1の上部に配置された中央照明装置が、観察者(紙面平面)に向いたロータブレード14によって隠されているが、側方の照明装置6は見ることができる。
【0035】
図4の裏面図からは3つ全ての照明装置2,4,6を見ることができる。中央照明装置2はナセル1の上部に配置されている。右側と左側の照明装置6,4は、
図4は裏面図であるので左と右に見えるが、ほぼ対向する側に配置されている。したがってナセル1は右側と左側の照明装置6,4のほぼ間に配置されている。その他、3つの照明装置2,4,6はナセル1の周囲のリング領域にほぼ配置されており、このリング領域はロータブレード面に対して平行の平面内に配置されている。その他、
図4では、ハッチ16が中央照明装置2の直ぐ後ろにあることが分かる。
【0036】
図1と4からも分かるように、風力発電装置には複数のマイクロフォン20,21および22が装備されている。これらのマイクロフォンは好ましくは、ちょうど照明装置2,4および6も配置されている箇所に位置決めされている。このことの利点は、そこにはいずれにしろ既に電気端子が存在しており、マイクロフォンを機械的に保持するための装置も形成されていることである。しかしとりわけ、飛行物体がナセルの後方部分に接近する場合に、飛行物体のノイズを音響的にいつでも確実に検出できる場所にマイクロフォンを配置することも有利である。しかしこのことは、飛行物体が側方からナセルに接近する場合に対しても、または正面から、すなわち飛行物体がロータに接近する場合に対しても当てはまる。正面からロータに接近する場合には、1つのロータブレードが2つのマイクロフォンを同時に覆い隠す時点がなく、したがって音響的に遮閉されることのないことが、マイクロフォンの配置によっても保証される。なぜなら特に
図2から分かるように、ロータ位置に関係なく、正面からマイクロフォン20,21または22の少なくとも1つを常に見ることができるからである。
【0037】
ナセル上のマイクロフォンの数を増やし、さらなる箇所にもマイクロフォンを配置することも容易に可能である。マイクロフォンの数を少なくし、例えばただ1つのマイクロフォン20だけによって動作することも、またはマイクロフォン21または22の1つだけによって動作することも可能である。風切り音がマイクロフォンダイヤフラムに、すなわちマイクロフォン内部に初めからまったく達しないようにするために、マイクロフォン20,21および/または22に通常のポップガード装置23を設けることができる。このポップガード装置は好ましくは耐候性に構成されており、マイクロフォンを天候の影響、例えば雨、湿気等に対して保護する。マイクロフォンの耐候性は、マイクロフォンが独立したハウジング内に格納されており、これにより湿気、雨、雹、雪等に対して確実に保護されることによっても形成できる。
【0038】
しかしマイクロフォンをナセルの外部に配置する代わりに、マイクロフォン(単数ないし複数)をナセル内に格納することも可能である。このことの利点は、これにより自動的に良好な風保護および天候保護が得られることである。なぜならナセル内部では、すなわち発電機および風力発電装置の機械支持体のさらなる重要な部品が格納されている場所では、天候保護が既に行われているからである。ナセルハウジングが音を非常に良好に伝達する場合にはナセル内部に格納するのが特に有利である。これはナセルハウジングが金属、例えばアルミニウム板から作製されている場合である。すなわちこの場合、外部からの音響ノイズはナセルハウジングを介して、すなわちその壁を介して、場合により増幅さえされて伝達される。なぜならナセル全体は音響受信機の機能も有しており、したがってナセル壁は擬似的な音響ダイヤフラムであり、ナセル全体を介して記録されるノイズはナセルの内部へもさらに伝達されるからである。
【0039】
このような場合、本発明のマイクロフォン構成体を非常に簡単に、例えばナセル壁と結合した加速度センサとして構成することも考えられる。すなわち飛行物体が風力発電装置に接近すると、この飛行物体の音響によってナセル壁が、この飛行物体に対して典型的な形で所定のように運動し、この運動を歪みセンサまたは加速度センサにより非常に正確に測定することができる。したがって加速度センサまたは歪みセンサのこの特別の形態によっても、飛行物体に典型的なノイズを検出することができる。
【0040】
図7は例として、マイクロフォンと航空障害灯装置2の制御部とを備える本発明の音響的監視装置の簡単なブロック回路図を示す。ここから分かるようにマイクロフォン20にはポップガード23が設けられている。マイクロフォン20により記録されたノイズは、増幅器24で増幅され、または対応の装置24で処理され、この信号が信号処理装置25に供給される。この信号処理装置は、一方では周波数分析ユニットから成り、したがってマイクロフォン構成体により記録されたノイズから、記録されたノイズの対応の周波数パターンないし周波数スペクトルが求められ、および/または記録されたノイズ信号が時間的にブロックに分割され、信号処理装置25の結果がPC26にさらに伝送される。このPC26(パーソナルコンピュータまたは「CPU」中央演算ユニット)は、ウィンドパークのいわゆるSCADA計算機とすることができる。すなわちウィンドパークの中央コンピュータとすることができ、これを介して航空障害灯装置または他の装置の制御が行われる。コンピュータないしPC26または比較器では、信号処理の結果を、データバンク27からの比較値と比較することができる。例えばデータバンクには、真のノイズないしノイズパターン(サウンドファイル;音響データ)を記憶することも、および/または典型的な飛行物体の周波数パターンないし周波数スペクトルをファイルすることもできる。
【0041】
記録されたマイクロフォン20の信号とデータバンク27に記憶された信号との比較から、十分な一致が存在すれば、飛行物体の接近を比較的確実に導出することができ、PCは航空障害灯2のスイッチオンを行う。
【0042】
同時にPC26を二次レーダ装置28と接続することができ、この二次レーダ装置の基本構造は
図5と6に示されている。そのような二次レーダ装置は、既に述べた国際特許出願WO2010/133541から公知である。
【0043】
二次レーダ装置28によって、例えば100ftの比較的低い高度情報を有するDF17信号の受信が確認されると、このことも同様にPC26(ここではスイッチ装置の機能を有する)にさらに伝送され、このPC26は航空障害灯装置2をスイッチオンし、風力発電装置の場合によるさらなる航空障害灯装置をスイッチオンする。
【0044】
このことは、マイクロフォン装置23によって飛行物体の音響信号ないしノイズが検出されない場合でも行われる。
【0045】
さらに、マイクロフォン23によって飛行物体のノイズが検出され、飛行物体のノイズであると識別される場合には、二次レーダ装置を介して、接近または危険性を意味する飛行物体のDF信号(トランスポンダ信号)が得られない場合であっても、例えば「30,000ft」の高度情報を備えるDF17信号の場合であっても航空障害灯装置2のスイッチオンが行われる。
【0046】
したがってPCでは、信号処理装置25ないしレーダ装置28の信号入力の「OR」論理結合が行われる。
【0047】
飛行物体のノイズが受信され、同時に例えば100ftの比較的低い高度情報を備えるDF信号が受信される場合、いずれの場合でも航空障害灯装置2がスイッチオンされる。同時に記録されたノイズ(または周波数分析器で周波数分析した後のその周波数スペクトル)をパターンとしてデータバンク27に記憶することができる。これにより時間と共に、
図7の装置が実現されているウィンドパークないし風力発電装置の場所に対して適合されたノイズデータバンクが格納される。これにより、航空障害灯装置2を所定のノイズ事象に基づいてスイッチオンするか否かに関して、より信頼性のある決定を行うことができる。
【0048】
信号処理装置にはフィルタ機能を含めることもできる。このフィルタ機能により典型的な生活ノイズ、例えば風力発電装置の底部での交通、または風力発電装置の底部に存在するその他の装置によるノイズ、しかしとりわけ風力発電装置自体のノイズ、例えばピッチ駆動部に起因するノイズまたは風力発電装置のアジマス調整の際に生じるノイズが、マイクロフォン信号からろ波除去され、ないし計算的に除去される。典型的には生活ノイズは、風力発電装置自体に起因するノイズと同じように、飛行物体の周波数スペクトルとはまったく別の周波数スペクトルを有しており、
図7の装置により、風力発電装置自体に起因する典型的な周波数パターンないしノイズをデータバンク27に記憶することにより、この風力発電装置自体をさらに、固有のノイズないし周波数スペクトルデータバンクに拡張することができる。これによりさらに、ノイズが存在する場合には、それが航空障害灯装置2の作動、すなわちスイッチオンをトリガすべき事象であるか否かをさらに確実に予測することができる。
【0049】
図7から分かるようにスピーカ29を設けることもできる。このスピーカは、マイクロフォン20に対して所定の間隔、例えば約0.1から5mの所定の間隔でウィンドパーク内の風力発電装置のナセル上に配置される。そしてデータバンク(すなわちメモリ)27に記憶されたノイズをPC26にも供給することができ、このPCが対応の電気信号をスピーカ29にさらに送出できる場合には、このスピーカが、例えば飛行物体の典型的なノイズ、または風力発電装置のピッチまたはアジマス調整の際に発生する典型的なノイズを形成することができる。スピーカ装置29が例えばヘリコプターである飛行物体の典型的なノイズを形成する場合、このノイズがマイクロフォン20により受信され、相応に処理され、そして航空障害灯2に対するスイッチオン事象を引き起こさなければならないことになる。しかしマイクロフォン20が技術的問題を有する場合、または信号処理および評価装置の後続の段が技術的な機能不良を有する場合、このことはPC26(信号処理装置ないし音響的監視装置の一部でもある)で確実に識別され、対応の警告指示、例えばEメール、SMS等を飛行管制センターまたは風力発電装置の保守係に送信することができる。これにより保守係は、この技術的問題を詳細に検分することができ、場合により修理を行うことができる。
【0050】
好ましくはPCにはプログラムが格納されており、このプログラムは、飛行物体に対する固有の音響的監視のテストを所定の時間内で、例えば一日に一回、常時繰り返し行う。
【0051】
好ましくはテスト結果がメモリに記憶され、記録収集の目的で中央センターにさらに伝送することができる。
【0052】
テスト装置により、すなわちPC26により、音響的監視にエラーがあることが確定される場合、常時のスイッチオン信号をセットすることもできる。これにより航空障害灯装置2は、音響的監視の故障が除去されるまで常時スイッチオンされたままとなる。
【0053】
図5と6は、すでに述べたように、WO2010/133541から公知の風力発電装置用レーダ装置の構成を示す。
【0054】
もちろん本発明の風力発電装置は、二次レーダ装置無しでも実施することができる。したがって音響的監視だけによって上空が監視され、これにより飛行物体が接近する場合には航空障害灯装置が確実にスイッチオンされる。
【0055】
しかし、図示のマイクロフォンにより行われる「音響的カメラ」の形の音響的監視は、ウィンドパークないし風力発電装置が
図5と6に開示されたような二次レーダ装置を有する場合には、いずれかの技術的理由から二次レーダ装置に常にエラーがある場合、または故障した場合に対しても、この二次レーダ装置が前記上空の音響的監視により、さらなるバックアップシステムを獲得し、より信頼性が高く構成される、という利点を有する。
【0056】
PC26により典型的なトランスポンダ信号、すなわち所望の高度情報(例えば30,000ftまたは100ft)を備える典型的なDF(とりわけDF17)信号が形成される場合、この信号をアンテナ30を介して送信することができる。このアンテナは、いずれにしろ既に二次レーダ装置が存在するウィンドパークの風力発電装置に配置することができる(しかしこのアンテナは、ウィンドパークの別の風力発電装置に配置することもできる)。
【0057】
通常の場合、二次レーダ装置28のアンテナ31は、音響的監視の場合と同じように、二次レーザ装置のセルフテストも可能なように対応のDF17信号、すなわちトランスポンダ信号を受信し、評価すべきである。
【0058】
上空の音響的監視によって、すなわち風力発電装置のマイクロフォン構成体によって、飛行物体の接近が確定され、これがウィンドパークの風力発電装置の航空障害灯装置のスイッチオンを引き起こす場合、このスイッチオン信号を周囲の別の風力発電装置に送信することもできる。すなわち、本発明のウィンドパークの一部ではない風力発電装置に送信することもできる。そしてこれらの風力発電装置も自身の航空障害灯装置をスイッチオンすることができる。
【0059】
風力発電装置のマイクロフォン21,22および22には、好ましくは特に良好な固体伝搬音遮断部が設けられており、これにより風力発電装置の固体伝搬音は可及的に僅かしかマイクロフォンに伝達されない。
【0060】
既に述べたように、マイクロフォン構成体の近傍にスピーカ(または音響信号発生器)が設置される場合、これを介して飛行物体に典型的なノイズを発生することができ、これによりマイクロフォン構成体と後続の信号処理部および信号評価部を、それらの正しい機能性について検査することができる。
【0061】
さらなる一可能性は、スピーカと信号をスピーカに供給する対応の信号源(例えば音響信号発生器)とによって、所定のノイズ(音響信号)、すなわち例えば所定の音量と周波数を備える正弦波音響(または掃引周波数信号)を常時スピーカにより形成することである。
【0062】
スピーカのこの正弦波信号がマイクロフォン構成体ないし後続の信号処理部により確実に識別される限り(これは正弦波信号に基づき非常に簡単に可能である)、航空障害灯はスイッチオンされない。しかしさらなるノイズがマイクロフォン構成体の周辺で発生する場合、例えば飛行機が接近し、この飛行物体ノイズがスピーカの正弦波信号と重畳される場合、航空障害灯がスイッチオンされる。スピーカの音響信号と飛行物体から発するさらなるノイズとが互いに所定の音量(および周波数位置)になると直ぐに、正弦波信号がマイクロフォン構成体の信号処理部によって、もはや簡単に識別されなくなる。または飛行物体のノイズが非常に大きい場合、正弦波信号はまったく識別されなくなる。これにより、音響信号をもはや確定できないことに基づいて、非常に簡単にスイッチオン信号が発生され、航空障害灯がスイッチオンされる。
【0063】
スピーカ(またはいずれかの別の音響形成装置)により形成される可聴信号は、飛行物体のノイズの典型的なスペクトル領域にあるスペクトルを特に有しており、したがって飛行物体、すなわち飛行機またはヘリコプターが接近すると、スピーカにより形成された音響信号がマイクロフォン装置により全く記録できないか、または高い割合で歪曲されて記録されることが比較的高い確率で予想できる。
【0064】
しかしスピーカにより形成される音響信号が、飛行物体のノイズに対して典型的な周波数とは全く別の周波数、または全く別の(複数)周波数を有することも有利である。
【0065】
さらなる一可能性は、スピーカによって単調な音響信号を形成するのではなく、「掃引周波数信号(Wobbelsignal)」、すなわち時間と共に周波数が例えば可聴周波数スペクトル内で常時変化する信号を形成することである。
【0066】
ここではスピーカが超音波または超低周波の領域にある信号を形成することができることも全く有利であり、対応してマイクロフォン構成体も可聴音領域からの音だけでなく、超低周波および超音波領域からの音も記録できるべきである。
【0067】
このことは、飛行物体の超低周波および超音波領域からの典型的周波数も同様に検出することができ、これにより飛行物体の接近を確実に導出し、とりわけ航空障害灯のスイッチオンを確実に行うことができるという利点を有する。
【0068】
したがって音響的スピーカ信号がマイクロフォンの周囲で別のノイズにより十分に埋没されると、このことも航空障害灯のスイッチオンを引き起こし得る。
【0069】
降雨の場合、とりわけ豪雨の場合、しかし雹の場合も、確実に近い確率で、そのような天候事象の障害ノイズはスピーカの音響的信号を、航空障害灯のスイッチオンの原因となり、スイッチオンが行われるまでに歪曲し、または埋没させる。このことは、本発明の音響的監視の特に高い感度を表すために意図的な状態であり得る。
【0070】
音響的信号をスピーカにより形成することの利点はまた、これにより音響的監視が連続運転で行われ、したがって音響的監視の機能性も常時検査することができることである。
【0071】
しかしピッチ調整およびアジマス調整等の際の風力発電装置に典型的な固有ノイズのため、本発明の監視を設定する際には、スピーカ信号が他の信号により短時間に一度だけ埋没されても、航空障害灯が常に直ちにスイッチオンされないように配慮すべきである。ピッチ調整またはアジマス調整もいずれにしろ非常に短時間でだけ行われ、例えばピッチ調整は通常、5秒未満であり、アジマス調整に対しても同様のことが当てはまるから、音響的監視では検査アルゴリズムを配置することができる。この検査アルゴリズムは、どれだけの時間でスピーカ信号が本発明のマイクロフォン構成体ないし信号処理部により全く識別されないか、または強く歪曲されて識別されるかを検査する。
【0072】
例えばスピーカ信号が所定の時間の間、例えば5秒未満の間、歪曲される場合、かなり確実に風力発電装置自体に起因するノイズ事象を推定することができ、したがって航空障害灯装置はスイッチオフされたままであり、したがってこの装置はスイッチオンされない。しかしスピーカ信号の音響的影響の時間的長さが所定の時間、例えば5秒または10秒、15秒等を超える場合、航空障害灯がスイッチオンされる。なぜならスピーカ信号のそのように長い音響的影響ないし音響的埋没は、風力発電装置自体からは発生しないノイズ事象によるものであると推定できるからである。
【0073】
飛行物体が接近する場合、これは、通常の音量であれば、比較的長い時間に亘って、例えば20秒超、しばしば数分に亘って、すでに前もって音響的に知覚されるのが普通である。
【0074】
既に述べたように、マイクロフォン構成体によって接近する飛行物体の位置特定を行うことも全く望ましいことである。
【0075】
マイクロフォン構成体が例えば3つのマイクロフォンを有する場合、飛行物体の到来する音の伝搬時間および伝搬時間差から、どちらの側から飛行物体が風力発電装置ないしウィンドパークに接近しているかを、予め近似的に推定することができる。
【0076】
しかし上空全体を監視するのではなく、とりわけ風力発電装置の底部側に向いた上空を監視するのではなく、ナセルを中心に実質的に制限された空域を監視することが望まれる。この空域はナセルからの仮想水平線を基準にして約±15から45°、好ましくは±15゜に制限される。
【0077】
その理由は、まさにこの領域から、風力発電装置に危険なやり方で接近し得る飛行物体が予想されるからである。
【0078】
しかしもちろん無指向性のマイクロフォンによって、風力発電装置自体の周囲の上空全体を音響的に監視することもできる。
【0079】
しかし全く特定の部分だけ、例えばナセル周囲の前記360°の円形リング(ストライプ)だけを監視すべき場合、この領域を特別に高精度に監視する指向性マイクロフォンを使用することもできる。この場合は、定置の指向性マイクロフォンを使用するだけでなく、電動台の上に存在しており、したがって360゜の平面全体を常時スウィープし、したがって水平線を音響的事象について、いわば「スキャン」する指向性マイクロフォンを使用することもできる。
【0080】
本発明の実現のためには、マイクロフォンがカーディオイド(単一指向性)ないしスーパーカーディオイド指向特性(Nieren- bzw. Supernieren-Richtcharakteristik)を有し、これらのマイクロフォンのうちの複数、例えば3つ以上がナセル上に配置されていると特に好適である。これにより非常に良好に地平線(ここで地平線は、ハブの高さを基準にする)±15゜が音響ノイズおよび事象について監視される。
【0081】
しかし飛行物体の位置特定を改善するために、マイクロフォン信号をさらに詳細に処理し、これにより、位置特定された飛行物体の正確な位置を比較的精確に特定することができる。
【0082】
マイクロフォン構成体は、風力発電装置全体を音響的に監視するために使用することもできる。いずれの場合も、風力発電装置のいずれにしろ可聴の音響的事象が、ナセルの領域においてマイクロフォン構成体により記録される。そしてマイクロフォン構成体が、記憶装置および/または対応の(例えば人がいる)センターとのデータ通信装置にも接続されていれば、マイクロフォン構成体により記録されたノイズをそこで聴取し、相応に評価することができる。
【0083】
このような場合、マイクロフォン構成体が、センターとの非常通信線路として使用されることも考えられる。なぜなら、風力発電装置のナセル内に保守要員等が滞在しており、窮地に陥っている場合、彼らはこのようにしてマイクロフォン構成体を介してさらにセンターと、とりわけサービスセンターと通信接続することができ、自分の状態について注意を喚起することができるからである。
【0084】
既に述べたように、本発明の音響的監視装置は主に、飛行物体、例えば飛行機またはヘリコプターがそもそも接近しているのかどうかをまず第一に識別するために用いられる。
【0085】
音響的監視装置の調整によって場合により、飛行物体の位置を位置特定、すなわち位置検出することも可能である。
【0086】
そして飛行物体が風力発電装置またはウィンドパークに接近する場合、この飛行物体が原因となる音量、そして音響的監視装置によりマイクロフォン構成体によって記録され、評価される音量は定常的に増大する。
【0087】
さらなる本発明の一変形例では、飛行物体の音量が増大する場合、航空障害灯の制御も変化させることができる。
【0088】
通常、風力発電装置の航空障害灯はフラッシュランプから成り、このフラッシュランプは所定のリズムで閃光を形成する。または航空障害灯は、所定のリズムで、全く特定の時間の間、スイッチオンおよびオフされるランプから成り、これは例えば「1秒スイッチオン、1秒スイッチオフ、1秒スイッチオン、1秒スイッチオフ等」のリズムである。
【0089】
ここで航空障害灯では昼間照明のために通常は白色光の発光手段が使用され、これに対して夜間航空障害灯のためには通常、赤色光により動作される。
【0090】
そして既に述べたように、飛行物体が音響的監視装置に接近し、そのときに音量が変化する場合、すなわち増大する場合、音量の相応の上昇と共に航空障害灯も変化させることは非常に簡単に可能である。すなわち例えば音量の上昇と共に閃光/点灯/消灯リズムを変化させるか、閃光周波数ないし点灯/消灯周波数を高め、および/または音量の上昇と共に(音量は比較的簡単に信号処理装置で確定することができる)航空障害灯の明るさを変化させるのである。このことは例えば飛行物体の音量の上昇と共に、発光手段の発光強度を対応して増大することにより行われる。
【0091】
さらなる一措置は、場合により種々の発光手段、すなわち赤色光と白色光(赤色フラッシュ/白色フラッシュ)を交互にスイッチオンすることである。これは特に夜間に、飛行物体の飛行機パイロットに対して非常に大きな注意を引き起こすこととなる。なぜなら白色光は通常、非常に明るく、したがって見過ごすことはほとんどあり得ないからである。
【0092】
例えばPC内のプログラムにより航空障害灯の発光手段の前記制御を行うことができる。これは、音響的監視装置のマイクロフォン構成体により測定される所定の音量値に、所定の発光事象、例えば閃光ないし点灯/消灯周波数、および/または発光手段の発光強度を割り当てることにより行われる。
【符号の説明】
【0093】
1 ナセル
2 中央照明装置
4 左側照明装置
6 右側照明装置
12 ハブカバー
14 ロータブレード
20,21,22 マイクロフォン
23 ポップガード
24 増幅器
25 信号処理装置
26 PC
27 データバンク
28 二次レーダ装置
29 スピーカ
30、31 アンテナ