(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記少なくとも1つの熱変動特徴部分は、第1及び第2の端部のうちの少なくとも一方に位置する前記加熱素子の前記出力表面から、前記第1の端部と前記第2の端部との中間に位置する前記1つ又は複数の出力表面と比較して異なる大きさの熱を生成して発散させるよう作用する、請求項1に記載の装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
よって、ガラスシートの所望の区域の高いレベルの平坦性を維持し;ガラスシートの無垢な両面を維持し;特定の関心区域における所望の変形量を得て;高いレベルの寸法制御を維持しながら、ガラスシートを局所的に加熱するための方法及び装置が必要とされている。このようなプロセス及び装置は、ディスプレイへの応用等、幅広い応用範囲におけるガラスシートの再成形に適したものであり得る。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の1つ又は複数の実施形態は、ガラスシートの特定の局所的な区域を加熱するために操作可能な加熱素子として、1つ又は複数の導電性材料を使用することを目的とする。このような実施形態により、極めて局所的かつ集中的な区域(又は複数の区域)から、大きな熱源を生成できる。1つ又は複数の実施形態は、熱源を物理的に接触させることなくガラスシートの特定の局所的区域を加熱し、最終的にガラスシートの所望の変形を引き起こすように作用する。
【0008】
本システムは、加熱素子、電気的接続、加熱素子の一部上に任意に配置される熱遮蔽体を含んでよく、これら全てを組み合わせて、局在化した熱をガラスシートへと配向する。例えば本システムは、応用の緊急性に応じて、環境温度が約600℃に達する環境において数分のサイクル時間で使用され得る。
【0009】
加熱素子は好ましくは:(i)合理的なサイズの電圧及び電流源を用いて所望の熱の大きさを生成できるような導電性;(ii)使用中及びサイクル全体を通してシステムの構成部品が変形せず、またシステムの構成部品が(比較的大きなガラスシートに適合するために)セクション全体に亘る大きな長さを支持できるような機械的強度;並びに(iii)加熱素子を機械加工して所望の形状(及びその結果としての局所的な可変性の加熱プロファイル)を得ることができるような機械的特性といった特定の特徴を有する、1つ又は複数の材料から形成される。加熱素子を形成するために適した材料としては、炭化珪素、二珪化モリブデン、二ホウ化チタン等の導電性セラミック材料が挙げられる。
【0010】
1つ又は複数の実施形態によると、装置は:第1の端部と第2の端部との間に横方向に延在する長さを有し、そこから上記横方向を横断する方向に熱を配向する1つ又は複数の出力表面を有する、導電性加熱素子;並びに、加熱素子の1つ又は複数の出力表面から発散される熱に向かってガラスシートの主表面が配向されるようにガラスシートを支持するよう作用する担持構造を含む。導電性加熱素子は、異なる大きさの熱を生成して、加熱素子の出力表面のうちの少なくとも2つから発散させるよう作用する、少なくとも1つの熱変動特徴部分を含む。
【0011】
上記少なくとも1つの熱変動特徴部分は、その第1及び第2の端部のうちの少なくとも一方に位置する加熱素子の出力表面から、第1の端部と第2の端部との中間部分と比較して異なる大きさの熱を生成して発散させるよう作用する。例えば、この少なくとも1つの熱変動特徴部分は、第1及び第2の端部に位置する出力表面から発散される、上記中間部分と比較して大きな熱を生成するよう作用する。更に例えば、このような構成は、ガラスシートの第1及び第2の縁部領域を、ガラスシートの中間領域より高い温度に加熱するよう作用し得る。
【0012】
加熱素子は好ましくは、炭化珪素、二珪化モリブデン、二ホウ化チタンのうちの1つまたは複数等の導電性セラミック材料から形成される。
【0013】
加熱素子は、長さを横断し、ガラスシートの主表面の平面に対して略垂直な方向に延在する、高さ寸法を含んでよく、また少なくとも1つの熱変動特徴部分は、加熱素子を通って横方向に流れる電流に反応して、異なる大きさの熱が加熱素子の出力表面から発散されるように、加熱素子の第1の端部と第2の端部との間で上記高さ寸法が変動することを含んでよい。
【0014】
代わりに、又は加えて、加熱素子は、長さを横断し、ガラスシートの主表面の平面に対して略平行な方向に延在する、幅寸法を含んでよく、また少なくとも1つの熱変動特徴部分は、加熱素子を通って横方向に流れる電流に反応して、異なる大きさの熱が加熱素子の出力表面から発散されるように、加熱素子の第1の端部と第2の端部との間で上記幅寸法が変動することを含んでよい。
【0015】
代わりに、又は加えて、加熱素子の複数の出力表面はそれぞれ、ガラスシートの主表面の平面に対して略平行な方向に延在する、表面積部分を含んでよく、また少なくとも1つの熱変動特徴部分は、加熱素子を通って横方向に流れる電流に反応して、異なる大きさの熱が加熱素子の出力表面から発散されるように、加熱素子の第1の端部と第2の端部との間で各上記表面積部分のサイズが変動することを含んでよい。
【0016】
代わりに、又は加えて、加熱素子は、長さを横断し、上記横方向に対して略垂直な方向に延在する、断面積寸法を含んでよく、また少なくとも1つの熱変動特徴部分は、加熱素子を通って横方向に流れる電流に反応して、異なる大きさの熱が加熱素子の出力表面から発散されるように、加熱素子の第1の端部と第2の端部との間で上記断面積寸法が変動することを含んでよい。
【0017】
本開示の他の態様、特徴及び利点は、添付の図面と関連した本明細書の記載から当業者には明らかであろう。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図面(これらの図面において、同一の参照番号は同一の要素を指示する)を参照すると、
図1は、ガラスシート10の特定の局所的区域を加熱するよう作用できるシステム100の簡略図を示す。このような実施形態によって、極めて局所的かつ集中的な区域(又は複数の区域)から大きな熱源を生成して、熱源を物理的に接触させることなくガラスシート10の特定の局所的区域を加熱し、最終的にガラスシート10の所望の変形を引き起こすことができる。
【0020】
システム100は、担持構造102と、ガラスシート10を間に配置できるように担持構造102から離間した加熱素子104とを含む。(横方向に配向された)加熱素子104の長さ(L)は、ガラスシート10の長さ(又は幅)全体に亘って広がるに十分なものであることが好ましい。担持構造102は、ガラスシート10の主表面が加熱素子104に向かって配向されるようにガラスシート10を支持するよう作用できる。担持構造102は、適切な搬送機構及び/又は流体クッション等を用いて、ガラスシート10を加熱素子104に対して移動させるよう作用できるものであってよい。代替実施形態は、応用の緊急性がそれを必要とする場合、加熱素子104を移動させるための機構を使用してよい。
【0021】
加熱素子104は好ましくは、加熱素子104に亘って印加される電圧及び加熱素子104を通る駆動電流に反応して熱を生成できるよう、導電性である。図示していないが、このような電圧及び電流は、加熱素子104に連結された適切な電源により、対向する横方向の第1の端部106A及び第2の端部106B上の電気的接触を介して印加してよい。加熱素子104が生成する熱は、ガラスシート10へ向かって上記横方向を横断する方向にこの熱を配向するよう作用する1つ又は複数の出力表面108から発散される熱により特徴付けられることが好ましい。
【0022】
以下により詳細に述べる理由から、加熱素子104は好ましくは導電性セラミック材料から形成される。このような導電性セラミック材料は、炭化珪素、二珪化モリブデン、二ホウ化チタン等のうちの1つ又は複数を含んでよい。
【0023】
この実施形態では、加熱素子104は、遮蔽材料104Bで取り囲まれた導電性セラミック材料104Aのコアから形成される。より具体的には、遮蔽材料104Bは好ましくは、(1つ又は複数の)出力表面108の少なくとも一部を除いてコア104Aを取り囲む。この例では、遮蔽材料104Bは、(1つ又は複数の)出力表面108の、少なくともガラスシート10の方向を向いた部分を取り囲まない、又は覆わない。本明細書に記載する応用に適した特徴を呈するいずれの公知の断熱性材料を使用して、遮蔽材料104Bを製造してよい。遮蔽材料の一例は、低い熱伝導性を有するアルミノシリケート耐火物繊維である。このような材料をバルク部品から機械加工してよく、又は湿性フェルト(COTRONICS製Rescor 740又はWrap-it 372 UHT等のキャスタブルセラミック)のゲル化によって得てよい。
【0024】
加熱素子104の形成に導電性セラミック材料を使用する利点の1つは、(その組成、サイズ及び形状を注意深く選択すれば)このような材料が極めて局所的かつ集中的な1つ又は複数の区域から比較的大きな熱を生成することである。これは従来の、(所定の表面積から/所定の表面積上へ放射される出力によって測定した)比較的低い出力密度を特徴とする、ワイヤを巻き付けたセラミック製加熱管とは対照的である。有利なことに、加熱素子104の高い出力密度を使用して、(少なくとも(1つ又は複数の)出力表面108の)表面温度を低減し、熱及びその結果として得られる放射スペクトルをより高い波長へとシフトすることができ、ここでガラスのような材料は、より高い吸収係数を呈し、これによってガラスシート10の加熱速度が改善される。
【0025】
炭化珪素等の導電性セラミック材料を使用する別の利点は、熱伝導性が高いこと、及びそれに伴って加熱素子104において熱が生成され、主に(1つ又は複数の)出力(放射)表面108を通して周囲環境に放出されることである。導電性セラミック材料の高い導電性は、材料のバルクからその(1つ又は複数の)出力表面108への高い熱伝達をもたらし、これによって素子の、エネルギ的に迅速な利用が可能となる。更に、炭化珪素等の特定の種類の導電性セラミック材料の機械的特性は、これが高温に維持されている場合安定している。このような特徴により、十分な熱慣性を有したまま、加熱素子104のサイズ及び形状を最小化(体積を最小化)できる。従って、第1の端部106A及び第2の端部106Bにおいてのみ、好ましくはこれらへの電気的接続によって加熱素子104を支持したまま、ガラスシート10全体に亘って広がるに十分な長さを有する加熱素子104を作製できる。材料の安定した機械的特性は、ガラスシート10への熱伝達を正確に制御するための性能にとって有害な、加熱素子104の形状及び配向のいずれの変形を最小化する。
【0026】
更に、(例えば二珪化モリブデン又はその他の導電性セラミックと比較して)炭化珪素から加熱素子104を形成する別の利点は、材料の機械加工性である。材料の硬度が高い場合であっても、破損の有意なリスク無しに材料を機械加工できる。これは特に、加熱素子104を特定の形状に機械加工することによって特定の熱生成及び放出特性を求める場合に望ましい。このような形状と熱放出特性との関係については、以下により詳細に説明する。多数の加熱素子104を製造したい場合、炭化珪素をグリーン状態で成形した後で焼結してよい。ここで、加熱素子104がガラスシート10上に生成する1つ又は複数の特定の加熱プロファイルに関する、
図1のシステム100の1つ又は複数の実施形態の特定の態様の簡略図である
図2を参照する。コア104Aの形状が略均一であり、かつ遮蔽体104Bが比較的均一に成形された出力表面108を露出させていると仮定すると、出力表面108から発散される熱(破線矢印で示す)は、加熱素子104の長さLに沿って略均一である。また、(例えば、加熱素子104を通るガラスシート10の一定の搬送により)加熱素子104からの熱に対するガラスシート10の主表面の露出が略均一であると仮定すると、ガラスシート10の加熱プロファイルは同様に、(均一な網目200で示すように)シート全体に亘って均一となる。
【0027】
図3を参照すると、加熱素子104は、(1つ又は複数の)出力表面108から発散される異なる大きさの熱を生成して、ガラスシート10の不均一な加熱を生成するよう作用する、少なくとも1つの熱変動特徴部分を含むことが好ましい。この例では、熱変動特徴部分は、加熱素子のコア104Aのサイズ及び形状に、その長さLに沿った変動を導入することによって得られる。特に、加熱素子のコア104Aは、長さを横断し、ガラスシート10の主表面の平面に対して略垂直な方向に延在する、高さ寸法Hを含む。高さ寸法Hは、加熱素子104を通って(端部106Aと106Bとの間で)横方向に流れる電流に反応して、異なる大きさの熱(破線矢印)が加熱素子104の(1つ又は複数の)出力表面108から発散されるように、加熱素子のコアAの第1の端部106Aと第2の端部106Bとの間で変動する。
【0028】
この実施形態では、曲線からなる切り抜き部(又は凹部)150A、150Bが、高さ寸法Hの変動、及びその結果として生じる、(1つ又は複数の)出力表面108から発散される熱の大きさの差異に寄与する。以下により詳細に説明するように、高さHの変化により、出力表面108の、切り抜き部150A、150B近傍の部分から発散される熱は、出力表面108のその他の部分と比較して高くなる。よって、その第1の端部106A及び第2の端部106Bのうちの少なくとも一方において、各切り抜き部150A、150Bによって得られるより高い熱は、第1の端部106Aと第2の端部106Bとの中間部分と比較して異なるものとなり得る。図示した例では、第2の切り抜き部150B近傍の高さ寸法は、第1の切り抜き部150A近傍の高さ寸法と比較してより大幅に変動し、これによって第1の端部106A及び第2の端部106Bそれぞれにおいて異なる熱が得られる。この場合、熱変動特徴部分は、出力表面108から、第1の端部106Aと比較して第2の端部106Bにおいてより大きな熱を生成するよう作用し、ここでこれら両方は、中間部分における熱よりも高い。
【0029】
担持構造(図示せず)は、ガラスシート10の主表面の第1の縁部領域10A、第2の縁部領域10Bそれぞれを、加熱素子104の第1の端部106A、第2の端部106Bから発散される熱に向けて配向するよう作用できる。その結果、この装置は、網目202と比較してより高密度の網目202A、202Bで示すように、ガラスシート10の第1の縁部領域10A、第2の縁部領域10Bを、ガラスシート10の中間領域より高い温度に加熱するよう作用する。なお、第1の縁部領域10A、第2の縁部領域10Bに示す網目202A、202Bは、領域10A、10Bの少なくとも一部が、ガラスシート10の中間領域(網目202で示す)より高い温度であることを示すことを意図したものである。切り抜き部150A、150Bが曲線からなることにより、第1の縁部領域10A、第2の縁部領域10B内の加熱は不均一となるが、簡略化のために、網目202A、202Bは上記領域内で比較的均一なものとして示す。これは、第1の縁部領域10A、第2の縁部領域10B内において温度が均一でなければならないこと又は温度が不均一でなければならないこと(これらはいずれも、コア104Aの適切な成形によって可能である)を意味するものではない。
【0030】
有利には、上述の実施形態は、熱源の物理的な接触なしに、またガラスシート10全体を加熱することなく、ガラスシート10の特定の局所的区域(この場合は縁部領域)を加熱するよう作用する。これにより、上記のような局所的加熱によって、ガラスシート10の他の部分に物理的、光学的及び/又は電気的特性の損失及び/又は劣化を与えることなく、所望の結果を確実に達成できる。更に、図示した方法及び装置は、ガラスシート10の所望の区域における高いレベルの平坦性を保持し;ガラスシート10の無垢な両面を維持し;高いレベルの寸法制御の下で、特定の関心区域における所望の加熱量を得る。これらの加熱特性を用いて、例えばガラスシート10を所望の形状に再成形する(これについては後でより詳細に説明する)ための、ガラスシート10の選択区域の所望の局所的な変形を誘発できる。
【0031】
図4を参照して、加熱素子104の熱変動特徴部分を実装するための可能な方法に関して、より一般的な議論を行う。
図4は、加熱素子104の別の実施形態の側面立面図であり、この加熱素子104は、要素104の長さに沿って多数の異なる熱特性を達成し、これによってガラスシート10の別の不均一な加熱を生成する。一般に、基本的な機械加工等の多数の異なる成形技術を使用して、加熱素子104の様々な複数の部分に亘って変化する寸法を得ることができる。
【0032】
例えば、既にある程度詳細に説明したように、加熱素子104の異なる部分が異なる高さ寸法Hを有するよう、加熱素子104の様々な表面を機械加工できる。特に、
図4の加熱素子104は:(i)第1の端部106A付近の第1の高さh1;(ii)(第1の高さh1未満の)第2の高さh2;(iii)(第2の高さh2と同一の)第3の高さh3;(iv)(他のどの高さよりも小さい)第4の高さh4;及び(第1の高さh1と同一の)第5の高さh5を、この順で含む。以下により詳細に説明するように、(高さh1、h2、h3、h4、h5で示したような)高さ寸法Hの変動によって、加熱素子のコア104Aの断面積がその長さに沿って変化する。これは結果として、所定の高さに関連する体積内で加熱素子104が生成する熱の大きさに対して、並びに加熱素子から発散される及び/又はガラスシート10が受け取る熱の大きさ(又は密度)に対して、影響を及ぼす。(
図4における図の視点に対して垂直な)幅寸法Wが一定であると仮定すると、加熱素子104の両端部間を流れるAC又はDC電流が生成する熱プロファイル(密度)は、図示した矢印で表すことができる。ゾーンf1及びf5では、熱の密度はゾーンf2及びf4における密度と比較して低くなり得る。ゾーンf3では、表面108−3から発散される熱の密度はゾーンf2の熱の密度と同一のものとなり得るが、以下により詳細に説明する理由から、ゾーンf3に対向するガラスシート10に適用可能な及び/又はガラスシート10が受け取る熱は、ゾーンf2におけるものよりも小さくなる。よって、
図4では、ゾーン3内の熱を示す矢印のうちのいくつかを破線で示す。この例においては考慮されないが、加熱素子のコア104Aのセクションそれぞれの長さL1、L2、L3、L4、L5もまた、各体積内で生成される熱の大きさに対して影響を及ぼし得る。
【0033】
代わりに、又は加えて、加熱プロセス中に、(1つ又は複数の)出力表面108の異なる部分がガラスシート10から異なる距離となるように、加熱素子104の様々な表面を機械加工(又はその他の方法で形成)できる。出力表面108−3(又はその一部分)と、ゾーンf3内のガラスシート10の主表面との間の距離は、ゾーンf1、f2、f4、f5におけるこのような距離よりも(寸法Dと等しい量だけ)大きい。その結果、ゾーンf3内のガラスシート10に到達する及び/又はガラスシート10を加熱する熱の大きさは小さくなり、これによってこのゾーンのガラスシートを、低めの温度まで加熱する。
図5−6を参照すると、(以上の代わりに、又は以上に追加して)加熱素子104の熱変動特徴部分を実装するために(1つ又は複数の)出力表面108の異なる部分が異なる断面積を有するよう、加熱素子104の様々な表面を機械加工できる。
【0034】
図5は加熱素子104の底面図であり、ここで加熱素子のコア104Aは、ガラスシートの主表面の平面に対して略平行にそれぞれ延在する、複数の表面積部分を有する。例えばゾーンf1、f3では、加熱素子のコア104Aは、同一の幅W1だけ増大するように画定されたサイズをそれぞれ有する第1及び第3の表面積部分を有する。ゾーン2では、加熱素子のコア104Aは、幅W2だけ増大するように画定されたサイズを有する第2の表面積部分を有する。表面から発散される熱の密度はその表面積に比例するため、出力表面の部分108−1及び108−3から発散されて、ゾーンf1、f3内のガラスシート10に到達する及び/又はガラスシート10を加熱する、熱の大きさ(密度)は、ゾーンf2内の出力表面の部分108−2から放出されるものより大きい。このような熱の密度を、出力表面108の部分108−1、108−2、108−3上の点の密度で表す。なお、この文脈における用語「密度」の使用は、大きな表面積から、例えば部分108−2と比較して部分108−1から供給される場合に、(少なくとも1単位で測定した)熱の量が大きくなるという事実を表すことを意図したものである。よって、部分108−1内の所定の単位区域における熱束密度は、部分108−2内の同一サイズの単位区域における熱束密度と同一となり得るものの、部分108−2と比較して部分108−1では(単位長あたり)より大きな表面積からより多くの熱が発散されるため、部分108−1からの熱の量(即ちこの文脈における「密度」)が大きくなると言える。この例においては考慮されないが、各ゾーンにおける加熱素子のコア104Aの各断面積もまた、各体積内で生成される熱の大きさに影響を及ぼし得、従って、出力表面の部分108−1、108−2、108−3から発散される熱の密度は、各表面部分で生成される熱束の異なる密度に基づいて、異なるものとなり得る。
【0035】
図6は、熱変動特徴部分が出力表面108の複数の部分の断面積の変動にも基づいている、加熱素子104の別の実施形態の底面図である。得られる結果は
図5の実施形態と同様であるが、出力表面108の部分の有効表面積の変化は異なる方法で達成される。特に、加熱素子のコア104Aは共通の均一の幅を有するが、熱遮蔽材料104Bが、各ゾーンにおいて様々な度合いで出力表面108の部分を覆う。例えばゾーンf1、f3では、加熱素子のコア104Aの出力表面108の部分108−1、108−3は、遮蔽材料104Bによって同一の最小範囲だけ覆われる。これにより、第1及び第3の表面積部分それぞれが、同一の幅W1だけ増大するように画定されたサイズとなる。ゾーンf2では、加熱素子のコア104Aの出力表面108の部分108−2は、遮蔽材料104Bによってより大きな度合いで覆われる。これにより、第2の表面積部分が、幅W2だけ増大するように画定されたサイズとなる。よって、出力表面の部分108−1、108−3から発散される及び/又はゾーンf1、f3内のガラスシート10を加熱する熱は、ゾーンf2よりも大きくなる。
図5の実施形態とは異なり、各ゾーンにおける加熱素子のコア104Aの各断面積は一定であり、従って各体積内で生成される熱の相対的な大きさに対して変動をもたらすことはない。
【0036】
上述の実施形態、及び加熱素子104の各幾何学的特性と熱との関係について、加熱素子のコア104Aの斜視図である
図7に示す更なる実施形態と関連して更に説明するが、ここで加熱素子のコア104Aは、特定の特徴を有する熱を生成するよう作用する多数の熱変動特徴部分を有する。ここで、本明細書に記載する実施形態は、コア104Aの幾何学的特性と、結果として得られる導電性材料(例えばセラミック)の増大する及び/又は巨大な抵抗との間の関係に依存するものであることを理解するべきである。これにより当業者は、コア104Aの各体積内で生成される熱を、並びにこれに伴って、コア104Aから発散される及び/又はガラスシート10の各区域又は領域が受け取る熱を、局所的に変調できる。
【0037】
加熱素子のコア104Aのいずれの所定の表面又はそのいずれの部分から放射される熱に関連して、当業者は、所定の表面がランバートラジエータ(グレイボディ)として作用すると仮定してよい。このような表面からの熱は、以下の数式に従って(この場合はガラスシート10内の)所定の標的へと放射される:
【数1】
ここで、Qは、関係する表面積Sの部分が放出する熱であり;εは表面の放射率(通常、セラミック、酸化金属においては約0.8、炭化珪素のような材料においては約0.9)であり;σはステファン−ボルツマン定数(5.67×10
-8SI)であり;T
Sは表面の温度であり;T
tはガラスシート10の表面温度である。
【0038】
熱放出表面の表面積に加えて、ガラスシート10に対するこの表面の距離が、受け取られる熱束に強い影響を及ぼし、これは上述のように、加熱素子104の長さLに沿ってガラスシート10の加熱を変調するための方法として当業者が使用可能である。上記距離と変調との間の関係は、以下の等式によって与えられる:
【数2】
ここで、dφ
Dは方向D(略ガラスシート10へと向かう方向)へと放射される基本束であり;dSは熱放出表面の基本表面積であり;ωはD方向の周りの基本立体角であり;βは放出表面の法線と方向Dとの間の角度であり;Tは熱放出表面の温度である。
【0039】
最後に、加熱素子のコア104Aの所定の基本体積内において電流が生成する熱は、ジュールの法則によって与えられる:
【数3】
ここで、Pは抵抗体へと流れる電流が生成する出力であり;Rは抵抗体の電気抵抗であり;Iは電流である。
【0040】
加熱素子のコア104Aの所定の基本体積の抵抗は、材料固有の特性、電気抵抗率、寸法に依存し、以下の数式によって定義される:
【数4】
ここで、ρは加熱素子のコア104Aの電気抵抗率であり;Lは加熱素子のコア104Aの(端部から端部への電流の流れの方向の)所定の部分の長さであり;Sは加熱素子のコア104Aの所定の部分の(電流の流れの方向に対して垂直な)断面積である。
【0041】
加熱素子のコア104Aの長さに沿った、ある部分から別の部分への上記断面積の変化は、電気回路内で直列接続された複数の抵抗体の挙動に類似したものとなり得る。このような例では、コア104Aの長さを通る電流は一定であるものと仮定されるが、出力表面108から得られる熱源は、コア104Aの各所定の部分の幾何学的形状に応じて変動する。図示した例では、コア104Aの幅W及びそれぞれの長さL1、L2、L3、L4、L5は一定であり、これによって一定の出力表面積が得られる。しかしながら、各高さh1、h2、h3は徐々に小さくなり、徐々に小さくなる断面積が得られ、これによって電流及びコア104Aから発散される熱が徐々に大きくなる。よって、各セクション内で生成される出力(熱)は、L1からL2、そしてL3へと徐々に大きくなり、続いてL3からL4、そしてL5へと徐々に小さくなる。以上に基づいて、出力表面108の各セクションから発散される熱は、高さh1、h2、h3、h4、h5の変動(及びこれによって得られる、各セクションの断面積への影響)のみに基づいて変動することになる。しかしながら、出力表面108の各部分とガラスシート10との間の各距離は、加熱素子のコア104Aの長さに沿って変動し、これによって、上記の数式に従ってガラスシート10の加熱に影響を及ぼすことに留意されたい。
【0042】
なお、熱源を変調するために、加熱素子のコア104Aの材料のインクリメンタルな電気抵抗率もまた変動させてよい。このような変動を適切に制御すると、加熱素子104のセクションで生成されて得られる熱も同様に調整できる。
【0043】
ここで、ガラスシート再成形システム300の簡略立面図である
図8を参照する。システム300は、担持構造102に対して対向関係にある加熱素子104を含む。特に、担持構造102は、ガラスシート10の各縁部10A、10Bに対してそれぞれ配置された縁部鋳型102A、102Bを含む。加熱素子104は多数のセクションを含み、第1のセクションは高さh1を有し、第2のセクションは高さh2を有し、第3のセクションは高さh3を有する。これらのセクションは、第2のセクションがガラスシート10の主表面から距離Dだけ離間するよう、オフセットされる。上述の説明によると、ガラスシート10は、中間領域と比較して、縁部領域10A、10Bにおいてより高い熱を受け取ることになり、これによって縁部10A、10Bをより高い温度に加熱する。
【0044】
縁部領域10A、10Bは、ガラスシート10の中間領域に対してこれらを容易に屈曲させることができるよう十分な温度(例えばガラスの軟化温度付近又はそれを超える温度)まで加熱される。加熱素子104が提供する加熱機能は、加熱チャンバ(図示せず)内で実行でき、これによってガラスシート10の予備加熱を行い、続いてガラスシート10を加熱素子104の下で搬送する及び/又は加熱素子104をガラスシート10に対して移動させることによって、対向する縁部領域10A、10Bを加熱できる。
【0045】
ガラスシート10は、中間領域と比較して縁部領域10A、10Bにおいてより高い熱を受け取ることになるため、中間領域の加熱を中断及び/又は阻止するための別個の遮蔽体が不要となり得るが、遮蔽体の使用が望ましい場合はこれを使用してもよい。ガラスシート10の中間領域の温度が低いことにより、この領域の高い平坦性を維持したまま、平坦性を低下させることなく及び/又はガラスの他の特性を損なうことなく、ガラスシート10の最外部の縁部領域を熱(例えばガラスシート10の軟化温度)に曝露して屈曲させることができる。これにより、ガラスシート10の中間領域を変形させたり、この領域に品質欠陥を導入したりすることを防止した上で、縁部領域10A、10Bを変形させることができる。いくつかの応用例では、実際に屈曲が発生することになる部位(例えばシート10の縁部から内側)の近傍のガラスシート10の部分のみを、上記軟化温度まで加熱し、領域10A、10Bの最外縁部をより低い温度(例えば上記軟化温度未満)のままとして、この部分の平坦性を維持することが望ましい。
【0046】
ガラスシート10の対向する縁部領域10A、10Bそれぞれを屈曲させるステップは、これらが第1の縁部鋳型102A、第2の縁部鋳型102Bの対応する外形に従うように実施される。屈曲は様々な方法で実施でき、例えば、縁部領域10A、10Bが重力によって自重で下に下がり、縁部鋳型102A、102Bの鋳型表面の形状と一致するまで、縁部領域10A、10Bを加熱してよい。或いは、適合用部材(図示せず)をある方向に移動させることで、縁部鋳型102A、102Bの鋳型表面の形状と一致するよう縁部領域10A、10Bを付勢してよい。その後、再成形されたガラスシート10を冷却できる。
【0047】
ここで、本明細書の1つ又は複数の実施形態と関連する使用に適した加熱素子200の側面図である
図9を参照するが、この実施形態は別の熱変動特徴部分を有し、これは別の特性を有する変動性の局所的な熱を生成するよう作用する。この実施形態では、加熱素子200は、周りにワイヤ204Bを巻き付けられたコア材料204Aを含む。コア204Aは、いずれの適切な材料で形成してよく、非導電性セラミック材料のように非導電性であることが好ましい。ワイヤ204Bは適切な導電性材料で形成され、これは、これを流れる駆動電流に反応して熱を生成する。ワイヤ204Bを形成する具体的な材料は、ガラスシート10(図示せず)の温度を上述の1つ又は複数の実施形態について述べたレベルまで上昇させるのに十分な熱を生成する(例えばガラスシート10を再成形できるレベルまでガラスシート10の部分を加熱する)ためのいずれの公知の材料から選択するべきである。
【0048】
ただし、巻き付けられたワイヤ204Bの間隔は、ゾーンf2と比較してゾーンf1、f3において大きくなることに留意されたい。従って、(ワイヤ204Bの長さに沿って抵抗率が均一であると仮定した場合)ゾーンf2と比較してゾーンf1、f3においてより高い密度の熱が生成される。その結果、加熱素子200をガラスシートに隣接して配置した場合に、(矢印で示すような)不均一な局所的加熱特性を達成できる。当業者は、上述の実施形態に関する説明を参照して、この機能の重要性を理解できるであろう。
【0049】
ここで、本明細書の1つ又は複数の実施形態と関連する使用に適した別の加熱素子200の底面図である
図10を参照する。この実施形態もまた、別の特性を有する変動性の局所的な熱を生成するよう作用する、熱変動特徴部分を呈する。この実施形態でも、加熱素子200は周りにワイヤ204Bを巻き付けられたコア材料204Aを含む。ここでもコア204Aは、非導電性セラミック材料等のいずれの適切な材料で形成される。ワイヤ204Bもまた、ガラスシート10(図示せず)の温度を適切なレベルまで上昇させるのに十分な熱を生成するために、適切な導電性材料で形成される。この実施形態では、コア204Aは、ゾーンf2の区域208−2と比較して、ゾーンf1、f3においてより大きな表面積(区域208−1、208−3)を有する。このような表面積の変動は、コア204A内に異なる高さ及び/又は幅寸法を有する結果として発生する。よって、(ここでも、ワイヤ204Bの長さに沿って抵抗率が均一であると仮定した場合)ゾーンf2と比較してゾーンf1、f3においてより高い密度の熱が生成される。その結果、加熱素子200をガラスシートに隣接して配置した場合に、(点で示すような)不均一な局所的加熱特性を達成できる。当業者はここでもまた、上述の実施形態に関する説明を参照して、この機能の重要性を理解できるであろう。
【0050】
更に、コア204Aの異なる高さ及び幅寸法により、加熱素子200の1つ又は複数のセクションをガラスシートから離間させることができる。
図10の図は、加熱素子200の底面(これはガラスシートの方向を向くことになる)を示しており、コア204A及びワイヤ204Bの各表面からガラスシートまでの距離は、複数のゾーン間で不変であり得る。しかしながら、高さ寸法も変動する場合は、コア204A及びワイヤ204Bの各表面とガラスシートとの間の距離もまた変動し得、(上述の実施形態においても説明したように)熱変動特徴部分に寄与し得る。図示したように、ワイヤ204Bの間隔は一定であるが、上述の特性によって熱の変動が得られる。しかしながら、加熱素子200の加熱特性を変動させるにあたって更なる自由度を提供するために、上記間隔の変動を更に利用してよい。
【0051】
本明細書の開示は、特定の実施形態を参照して行われているが、これらの実施形態は原理及び提示された応用例の単なる説明に過ぎないことを理解されたい。従って、これらの例示的実施形態に対して数多くの修正を行うことができること、並びに本開示の精神及び範囲並びに添付の請求項によって定義される保護範囲から逸脱することなく、他の構成を考案できることを理解されたい。