(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
細胞や微生物の試料の培養を行うための培養空間を内部に形成する略箱状の断熱箱本体と、前記培養空間の湿度を制御するための加湿水を貯溜し前記培養空間の底部に配置される加湿皿と、前記断熱箱本体を貫通し一端が前記培養空間の内部に配置され他端が前記断熱箱本体の外部に配置される伝熱結露部材と、を備え、前記伝熱結露部材は、前記断熱箱部材の外部に配置される冷却部にペルチェ効果によって前記伝熱結露部材を冷却可能な電子冷却素子が設けられ、かつ、前記電子冷却素子によって冷却されることにより前記培養空間の内部に配置される結露部の表面に結露させた水分を下方に配置された前記加湿皿に導入させる、培養装置。
前記電子冷却素子で発生する熱を放熱させる放熱器をさらに備え、前記電子冷却素子は、前記断熱箱部材の外部に配置される部分の上部に設けられ、前記放熱器は、前記電子冷却素子を介して、前記断熱箱部材の外部に配置される部分の上部に設けられる、請求項1に記載の培養装置。
前記伝熱結露部材と前記電子冷却素子との間には、第1熱伝導性部材が設けられ、前記電子冷却素子と前記放熱器との間には、第2熱伝導性部材が設けられる、請求項2に記載の培養装置。
前記断熱箱本体は、前記培養空間を形成する略箱状の内箱と、前記内箱の外周を囲む略箱状の外箱と、を備え、前記伝熱結露部材における前記内箱と前記外箱との間に配置される部分には、前記内箱と前記外箱との間の熱が前記伝熱結露部材へ伝わることを抑制する第1断熱シール部材が覆われている、請求項1に記載の培養装置。
前記断熱箱本体は、前記外箱と前記内箱との間で前記外箱の内側に配置される断熱材を備え、前記断熱材と前記内箱との間には空気層が形成され、前記第1断熱シール部材は、少なくとも前記伝熱結露部材の前記空気層内に配置される部分を覆っている、請求項6に記載の培養装置。
前記培養空間に空気の気体を強制対流させるためのダクト及び循環用送風機をさらに備え、前記伝熱結露部材における前記培養空間の内部に配置される部分は、前記ダクト内の気体通路に配置される、請求項2に記載の培養装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示の一例の培養装置1は、細胞や微生物等の試料の培養を行うための培養空間4を内部に形成する略箱状の断熱箱本体2と、培養空間4の湿度を制御するための加湿水を貯溜し培養空間4の底部に配置される加湿皿15と、断熱箱本体2を貫通し一端の結露部が培養空間4に配置され他端の冷却部が断熱箱本体2の外部に配置される伝熱結露部材35と、を備え、前記結露部はその表面の結露水が前記加湿皿15へ導入される配置であり、前記冷却部にはペルチェ効果によって前記冷却部を冷却する電子冷却素子41を設け、前記結露部及びその近傍に結露した水分を下方に流下させて前記加湿皿15に導入し、加湿水として繰り返し使用できるように構成されている。以下、図面に基づき本開示の実施例を詳述する。
【0012】
本開示の実施形態における培養装置1を
図1乃至
図10を参照しつつ説明する。本開示の実施形態における培養装置1は、
図1及び
図2に示すように、左開き式の扉(詳しくは外扉7と内扉3)を備えるものであり、前面に開口2Aを有する断熱箱本体2は、細胞や微生物等の試料の培養を行うための培養空間4を内部に形成する略箱状をなしている。その一つの構成として、図示のように、金属製の外箱21と、外箱21の内側に配置される断熱材24とで構成し、その内側に空気層(所謂エアージャケット)25を存してステンレス製の前面開口の内箱22が配置されている。これによって、断熱箱本体2内に内箱22によって前面開口の培養空間4が形成され、培養空間4内が細胞や微生物等の試料の培養を行う領域となる。内箱22の左右両側面、天面、底面及び背面には、培養空間4を加熱するための加熱ヒータ37が配置される。
【0013】
このように、前面に開口2Aを有する断熱箱本体2は、その内部に細胞や微生物等の試料の培養を行うための培養空間4が形成されている。断熱箱本体2の一側部(図示では左側)には、培養空間4の前面開口2Aからの熱進入を防止する外扉としての断熱扉7が開閉自在に取り付けられており、断熱扉7の裏側面の周縁部には磁石入りのガスケット8が環状に配置されている。断熱扉7を閉じたときガスケット8が断熱箱本体2の前面開口2Aの周縁部に密着することにより、断熱扉7によって気密的に前面開口2Aが閉塞され、培養空間4の前面開口2Aからの外気進入を防止する。
【0014】
培養空間4は、前面開口のステンレス製の内箱22によって区画形成されており、内箱22の左右両側面、天面及び背面は、断熱箱本体2と空気層(所謂エアージャケット)25を存して断熱箱本体2内に配置されている。内箱22の前面開口は内扉としての透明扉3によって開閉される構成であり、実質的に内箱22と透明扉3とで囲まれる空間により培養空間4が形成される。透明扉3は、その左側をヒンジにより内箱22に開閉自在に支持されている。内箱22の前面開口周縁部には環状配置した弾性シール部材2Bを備えており、透明内扉3を閉じたとき透明内扉3の裏側面が弾性シール部材2Bに密着して、培養空間4の前面開口が閉塞される。
【0015】
培養空間4は、複数の棚5により上下に(ここでは4枚の棚で5つに)区画されている。培養装置1は、例えば、CO
2インキュベータであれば、CO
2の濃度を5%程度に設定・維持するケースが多く、CO
2の濃度を制御するために、扉の閉塞後にCO
2ガスを培養空間4内に供給するようにしている。
【0016】
培養空間4には、その背面及び底面に沿ってそれぞれCO
2等を含む空気の気体通路Kを形成するために、内箱22の背壁及び底壁と間隔を存して背面ダクト11A及び底面ダクト11Bで構成されるダクト11が配置され、背面ダクト11Aの上部に形成した吸込口12から培養空間4内のCO
2等を含む気体を吸い込み、底面ダクト11Bの前部及び側面に設けた吹出口13から培養空間4内に吹き出す空気の強制循環を行う。ダクト11内(ここでは上部)には、このCO
2等を含む気体の強制循環のために循環用送風機14を配置している。この送風機14は、ファン14Aとモータ14Bと軸14Cとで構成されており、モータ14Bは後述する断熱箱本体2の外側背面の機械室19に配置され、軸14Cはこの機械室19のモータ14Bから断熱箱本体2の背面を貫通してCO
2等の気体通路Kまで延びてファン14Aに接続されている。
【0017】
培養空間4内の加湿を行う加湿皿15として、培養空間4の底面で且つ底面ダクト11Bと内箱22の底壁との間のダクト11内には、加湿用の水(即ち加湿水)16を貯溜する上面開口の加湿皿15が配置され、金属例えばステンレス製の内箱22の底面外側に配置されたヒータ37により加熱されて水を蒸発させる。尚、加湿皿15をダクト11内で且つ培養空間4の底部に配置することにより、循環用送風機14及びダクト11にて形成されるCO
2等の気体通路Kに加湿されたガスを効率よく循環させることが可能となる。
【0018】
断熱箱本体2の外箱21の背面には、循環用送風機14の駆動手段たるモータや、培養空間4にCO
2ガスを供給するためのガス供給手段17、及び図示しない制御基板等の電装部品を収容する電装ボックス38等を配置するための機械室19が、外箱21の背面を覆う背面カバー26によって形成される。
【0019】
ガス供給手段17は、ガス供給管17Aと、開閉弁17Bと、フィルタ17C等で構成され、ガス供給管17Aの先端部分は、気体通路Kに臨むようになっている。
培養空間4のガス濃度を制御するためにガス供給管17Aから供給されるCO
2ガスを噴射させることができる。培養空間4内を流通する気体及び加湿皿15内の水16の殺菌効果を得るために、気体通路K内に紫外線ランプ27を配置している。
【0020】
培養装置1は、本開示の目的達成のために、
図2等に示したように培養装置1の所定の箇所に、一端の結露部31と他端の冷却部32が連絡部30を介して一体化された伝熱結露部材35が装着されている。伝熱結露部材35は、作動液が封入されたヒートパイプ、アルミニウム等の良熱伝導材で構成した所定長さの丸棒、或いはアルミニウム等の良熱伝導材で構成した所定長さの平板のいずれであってもよい。
【0021】
図10には伝熱結露部材35の一種であるヒートパイプ35の構成を示しており、ヒートパイプ35は、棒状の密閉容器内に少量の液体(作動液)を真空封入し、内壁に毛細管構造(ウイック)33を備えたものであり、結露部31で作動液が蒸発(蒸発潜熱の吸収)し、蒸発した蒸気は冷却部32の方向に移動する。蒸気は冷却部32で凝縮して蒸発潜熱を放出する。そして凝縮した液は毛細管現象で結露部31へ還流する。このような一連の相変化が連続的に生じ、熱が素早く移動するようになっている。
【0022】
伝熱結露部材35における熱移動を素早くするためには、ヒートパイプ35が好適であるが、培養装置1のように、極めて短時間の熱移動を要求されなくても差し支えない場合は、伝熱結露部材35は、アルミニウムや銀等の金属性良熱伝導材で構成した所定長さの丸棒、或いはアルミニウムや銀等の良熱伝導材で構成した所定長さの平板のいずれであってもよい。アルミニウムの場合は、その表面に抗菌性皮膜を抗菌メッキまたは抗菌アルマイト等によって形成することにより、雑菌の繁殖抑制効果を得る。伝熱結露部材35の銅材を採用することも考えられるが、銅は緑青が発生する虞があるため、この緑青が表面に現れないようにメッキを施す等の処置が必要である。
以下に記載する実施形態では、伝熱結露部材35の一種であるアルミニウム等の良熱伝導材で構成した所定長さの丸棒の伝熱結露部材35を採用した場合について記載する。
【0023】
伝熱結露部材35は、その冷却部32を断熱箱本体2の外部に配置し、連絡部30を断熱箱本体2及び内箱22を貫通して断熱箱本体2内の培養空間4に配置するために、結露部31をダクト11A内の気体通路Kに配置するように装着されている。冷却部32は、培養装置1の周囲からの外力によって損傷を受けないように、培養装置1の機械室19内に配置している。なお、本開示の一例では、伝熱結露部材35は、断熱箱本体2の背面を貫通しているが、側面を貫通させてもよい。
【0024】
連絡部30が断熱箱本体2及び内箱22を貫通する部分は、少なくとも金属製の外箱21とステンレス製の内箱22との間に断熱性シール材36を介して連絡部30が配置されている。このように断熱性シール材36を介在させたので、気体通路Kを流れる気体が漏洩せず、培養空間4が悪影響を受けなくなり、かつ連絡部30と内箱22との接触部に結露しなくなる。また、外箱21と内箱22の熱影響を抑制できる。
【0025】
結露部31を露点温度に保って結露部31の表面に結露を生じさせるために、冷却部32を適温に冷却することにより、その冷却効果が連絡部30を通って結露部31に伝達され、結露部31が露点温度に保たれる状況となる。このため、冷却部32を適温に冷却するための電子冷却装置40を冷却部32に取り付けている。取り付けの容易さ、小型化、温度制御のし易さ等を達成するために、本開示の一例では、電子冷却装置40として、ペルチェ効果によって冷却部32を冷却するペルチェ素子と称する電子冷却素子41と、それの放熱を行うためのヒートシンク42を備えている。
【0026】
ペルチェ素子と称する電子冷却素子41は、PN接合の複数の半導体素子で冷却・加熱部を構成するものであり、横方向にN型半導体とP型半導体が交互配列された状態で、隣り合うN型半導体とP型半導体の一端側が熱良導板で連結されて吸熱部(冷却側)を構成し、他端側が熱良導板で連結されて放熱部(加熱側)を構成する関係によって、全体としてN型半導体とP型半導体が直列状態に接続された周知の構成である。
【0027】
ヒートシンク42は、板状ベース部42Aの上面に間隔を存して複数の板状放熱フィン42Bが板状ベース部42Aと一体形成されたアルミニウム製である。
【0028】
図8及び
図9に示すように、電子冷却素子41は、前記吸熱部(冷却側)が伝熱結露部材35の冷却部32の上面に熱伝導状態に取り付けられている。このために、伝熱結露部材35の冷却部32は上面に平坦な取り付け面を形成しており、この取り付け面に放熱用グリスを介して、または薄い熱伝導ゴムシート等の熱伝導性部材を介して電子冷却素子41の冷却側が配置される。一方、電子冷却素子41の前記放熱部(加熱側)には、放熱用グリスを介して、または薄い熱伝導ゴムシート等の熱伝導性部材を介して放熱器として作用するヒートシンク42の板状ベース部42Aが配置される。この状態で、
図8及び
図9に示すように、伝熱結露部材35の冷却部32の下側から冷却部32を貫通して、ヒートシンク42の板状ベース部42Aに対して取り付けネジ44を締め付け結合する。これによって、伝熱結露部材35の冷却部32、電子冷却素子41、及びヒートシンク42が熱伝導状態に一体化される。
【0029】
図12及び
図13には他の実施形態を示しており、
図8及び
図9に示した部分と同じ機能部分には同一符号を付している。
図12は、伝熱結露部材35、ヒートシンク42、電子冷却素子41、及び
断熱性シール材36に係る他の実施形態を説明する分解斜視図である。
図13は、伝熱結露部材35への電子冷却素子41とヒートシンク42の取り付け関係に係る他の実施形態を説明する断面図である。電子冷却素子41の吸熱部(冷却側)が伝熱結露部材35の冷却部32の上面に熱伝導状態に取り付けられた状態で、冷却部32の下側に配置した断熱性能を有する合成樹脂性の取り付け板43の左右両側をヒートシンク42の板状ベース部42Aに対して、取り付けネジ44を締め付け結合する。これによって、伝熱結露部材35の冷却部32、電子冷却素子41、及びヒートシンク42が熱伝導状態に一体化される。
【0030】
伝熱結露部材35の結露部31を露点温度に保って結露部31の表面に結露を生じさせるために、電子冷却素子41によって冷却部32を冷却する。冷却部32を冷却することにより、結露部31の表面温度を適温になるようにして、結露部31の表面に結露を生じさせるようにする。冷却部32は、電装ボックス38内の発熱部品から発生する熱影響が少ない位置となるように、電装ボックス38の側方に配置するが、冷却部32は培養装置1の機械室19内に配置しているため、培養装置1の周囲温度や機械室19内の発熱部品の温度等、所謂冷却部32の周囲温度の影響を受ける。その温度影響によって冷却部32の温度が変化し、それが連絡部30を通って結露部31に影響し、結露部31が露点温度に保たれなくなる状況が生じる。
【0031】
本開示では、このような課題を解決するために、例えば、冷却部32の周囲温度の変化を温度センサTAによって検出し、電装ボックス38に収容した制御基板の配置した制御部によって、温度センサTAによって検出した温度に応じて電子冷却素子41へ印加する駆動電圧を変化させることにより、結露部31の表面温度を露点温度に保ち、結露部31の表面に結露を生じさせるように制御する。この制御は連続的な制御でもよいが、例えば、冷却部32の周囲温度が、35℃、30℃、25℃、20℃、10℃にそれぞれ対応して、電子冷却素子41へ印加する駆動電圧を、6V、5V、4V、3V、2Vのように段階的に変化させる制御とすることができる。
【0032】
なお、結露部31の表面温度は、培養空間4内の温度にも影響される。また、結露部31の表面への結露発生は、培養空間4内の湿度にも影響される。このため、培養空間4内の中央部の温度を他の温度センサTBによって検出し、培養空間4内の中央部の湿度も湿度センサSAによって検出し、温度センサTAによって検出した温度、温度センサTBによって検出した温度、及び湿度センサSAによって検出した湿度に基づき、電子冷却素子41へ印加する駆動電圧を変化させることにより、冷却部32の冷却状態を制御して結露部31の表面温度を露点温度に保ち、結露部31の表面に結露を生じさせるように制御すれば、更に精度の高い制御となる。
【0033】
このような制御の一例として、培養空間4内の設定温度が37℃の場合、伝熱結露部材35の結露部31の表面温度が、培養空間4内の設定温度よりも約1.0℃〜2.0℃低い温度となるように、電子冷却素子41の駆動電圧を変化させる。その一例として、培養空間4内の設定温度が37℃の場合、気体通路Kを流れる気体の温度が37℃、相対湿度RHが95%で、露点温度36.07℃であり、また、培養空間4内の設定温度が37℃の場合、気体通路Kを流れる気体の温度が37℃、相対湿度RHが90%で、露点温度35.08℃である。このような露点温度になるように、前記制御部によって電子冷却素子41へ印加する駆動電圧を制御することにより、結露部31の表面には良好に結露するが培養空間4の内壁面や気体通路Kの壁面に結露が発生しない状態にできる。
【0034】
このように、温度センサTA、温度センサTB、及び湿度センサSAによる検出に応じた電子冷却素子41による冷却効果を制御することにより、結露部31の表面温度を露点温度に保ち、結露部31の表面に結露を生じさせ、その結露水を加湿皿15へ導入して、再び加湿用に利用できるものとなる。
【0035】
図5に示すように、伝熱結露部材35の連絡部30は、外箱21と内箱22に接触しない状態で、外箱21の貫通孔21P、断熱性シール材36、及び内箱22の貫通孔22Pを貫通する。断熱性シール材36は図示の如く、主体部36A(第1断熱性シール材36A)とその先端部の先端シール部36B(第2断熱性シール材36B)とを一体成形によって形成した疎水性の高い部材が好ましく、ポリアセタール樹脂がその一つである。また、疎水性の材質として、疎水性のゴム、フッ素系樹脂等の採用でもよい。断熱性シール材36は、その主体部36Aの背面が貫通孔21Pを塞ぐ状態で外箱21の背壁の内側面に当接し、主体部36Aが断熱材24を貫通して内箱22の背壁の裏面に当接し、主体部36Aから前方へ延びる先端シール部36Bが、内箱22の貫通孔22Pを貫通して気体通路K内に延出している。
【0036】
伝熱結露部材35は、図示の如く、その連絡部30が後方から前方へ向けて低くなる傾斜状態で、断熱性シール材36の主体部36Aと先端シール部36Bとを貫通して保持されている。この断熱性シール材36によって、気体通路Kを流れる気体が伝熱結露部材35の配置部分から漏洩せず、培養空間4が気体の漏洩による悪影響を受けなくなり、且つ、伝熱結露部材35の連絡部30を介して内箱22に結露することを防止でき、伝熱結露部材35に対する外箱21と内箱22の熱影響を抑制できる。
【0037】
結露部31及びその近傍の連絡部30に結露した水分が下方に流下して加湿皿15に入るようにするために、伝熱結露部材35は、ダクト11A内の気体通路Kに達した連絡部30が下方に曲折されて、曲折部34が形成されており、曲折部34から結露部31に到る伝熱結露部材35の部分が対応するダクト11Aと平行になるように下向きに構成してある。また、断熱性シール材36のダクト11内に延出する部分に結露した水分、即ち、気体通路Kに露出した先端シール部36Bに結露した水分が、下方に流下して加湿皿15に入るようにするために、先端シール部36Bは、その上下面は勿論のこと左右面も含めた周囲面が、前方に向けて斜め下向きの傾斜面を形成して、加湿皿15の真上に延出している。
【0038】
これによって、曲折部34から結露部31に到る伝熱結露部材35の部分によく結露し、結露した水分が重力によって下方に流下して飛散することなく加湿皿15に入る。また、気体通路Kに露出した断熱性シール材36の先端シール部36Bに結露した場合でも、その結露水は、重力によってその傾斜に沿って下方に流下し、加湿皿15に直接落下するか、連絡部30及び結露部31を伝って加湿皿15に落下するため、飛散することなく加湿皿15に入る。
【0039】
図11は、他の実施形態を示している。
図1乃至
図10に示した符号と同じ符号の部分は同じ機能箇所であるため、その詳細な説明は省略し、異なる構成について説明することとする。
図11に示す伝熱結露部材35は、前方に低く傾斜配置ではなく水平配置である。具体的には、伝熱結露部材35は、その冷却部32を断熱箱本体2の外部に配置し、連絡部30を断熱箱本体2及び内箱22を貫通して水平状態に配置し、結露部31をダクト11A内の気体通路Kに配置するように装着されている。冷却部32は、培養装置1の周囲からの外力によって損傷を受けないように、培養装置1の機械室19内に配置している。
【0040】
上記のように、
図1乃至
図13に係る本開示において、連絡部30が内箱22を貫通する部分は、ステンレス製の内箱22との間に断熱性シール材36を介して連絡部30が配置されているので、気体通路Kを流れる気体が漏洩せず、培養空間4が悪影響を受けなくなり、かつ連絡部30と内箱22との接触部に結露しなくなる。
【0041】
伝熱結露部材35の冷却部32には、上記同様に電子冷却素子41の吸熱部(冷却側)が熱伝導状態に取り付けられている。このため、上記同様の制御によって、結露部31の表面に結露を生じさせ、その結露水を加湿皿15へ導入して、再び加湿用に利用できるものとなる。
【0042】
本開示で使用する伝熱結露部材の大きさ、形状、寸法、個数などは培養装置の容量、形状、大きさ、培養物などによって異なる。
【0043】
なお、上記実施形態の説明は、本開示の一例を説明するためのものであって、請求の範囲に記載の発明を限定し、或は範囲を減縮するものではない。又、本開示の一例の各部構成は上記実施形態に限らず、請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能である。
【0044】
以上のように、本実施形態にかかる培養装置1は、少なくとも以下の効果を有する。
本実施形態に係る培養装置1は、細胞や微生物等の試料の培養を行うための培養空間4を内部に形成する略箱状の断熱箱本体2と、培養空間4の湿度を制御するための加湿水16を貯溜し培養空間4の底部に配置される加湿皿15と、断熱箱本体2を貫通し一端が培養空間4の内部に配置され他端が断熱箱本体2の外部に配置される伝熱結露部材35と、を備える。伝熱結露部材35は、断熱箱部材2の外部に配置される部分にペルチェ効果によって伝熱結露部材35を冷却可能な電子冷却素子41が設けられ、かつ、電子冷却素子41によって冷却されることにより培養空間4の内部に配置される部分に結露した水分を下方に配置された加湿皿15に導入させる。
これにより、培養空間4の壁内面(内箱22の内面)への結露を防止して培養物に対する悪影響を抑制することができる。
【0045】
また、本実施形態に係る培養装置1は、電子冷却素子41で発生する熱を放熱させるヒートシンク42(放熱器)をさらに備える。電子冷却素子41は、断熱箱部材2の外部に配置される部分の上部に設けられ、ヒートシンク42は、電子冷却素子41を介して、断熱箱部材2の外部に配置される部分の上部に設けられる。
これにより、電子冷却素子41の放熱側を上部に配置することができるため、ヒートシンク42から放熱された熱が伝熱結露部材35に伝わるのを抑制し、効率よく伝熱結露部材35を冷却することができる。
【0046】
また、本実施形態に係る培養装置1は、伝熱結露部材35と電子冷却素子41との間には、放熱用グリス又は熱伝導ゴムシート等の熱伝導性部材(第1熱伝導性部材)が設けられ、電子冷却素子41とヒートシンク42との間には、放熱用グリス又は熱伝導ゴムシート等の熱伝導性部材(第2熱伝導性部材)が設けられる。
これにより、電子冷却素子41と伝熱結露部材35との熱伝導および電子冷却素子41とヒートシンク42との熱伝導が効率よく行われる。
【0047】
また本実施形態に係る培養装置1において、断熱箱本体2は、培養空間4を区画形成する略箱状の内箱22と、内箱22の外周を囲む略箱状の外箱21と、を備える。伝熱結露部材35における内箱22と外箱21との間に配置される部分(連絡部30)は、内箱22と外箱21との間の熱が伝熱結露部材35へ伝わることを抑制する断熱性シール材の主体部36A(第1断熱シール部材)で覆われている。
これにより、電子冷却素子41によって培養空間4の内部に配置された部分を効率よく冷却することができる。
【0048】
また、本実施形態に係る培養装置1において、断熱箱本体2は、外箱21と内箱22との間で外箱21の内側に配置される断熱材24を備える。断熱材24と内箱22との間には空気層25が形成され、断熱性シール材の主体部36Aは、少なくとも伝熱結露部材35の空気層25内に配置される部分を覆っている。
これにより、電子冷却素子41によって培養空間4の内部に配置された部分を効率よく冷却することができる。
【0049】
また、本実施形態に係る培養装置1において、伝熱結露部材35と内箱22との間には、培養空間4と空気層25との間の熱伝導を抑制する断熱性シール部材36の先端シール部36B(第2断熱性シール材)が配置されている。
これにより、空気層25の熱が培養空間4へ伝わることを抑制できるため、培養空間4内の温度制御を安定させることができる。また、曲折部34から結露部31に到る伝熱結露部材35の部分によく結露させることができる。
【0050】
また、本実施形態に係る培養装置1は、培養空間4内に空気等の気体を強制対流させるためのダクト11及び循環用送風機14をさらに備える。伝熱結露部材35における培養空間4の内部に配置される部分は、ダクト11内の気体通路Kに配置される。
これにより、伝熱結露部材35を作業者から見えない場所に配置することができ、見栄えをよくすることができる。