特許第5887165号(P5887165)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5887165
(24)【登録日】2016年2月19日
(45)【発行日】2016年3月16日
(54)【発明の名称】車載装置
(51)【国際特許分類】
   G01C 21/26 20060101AFI20160303BHJP
【FI】
   G01C21/26 A
【請求項の数】4
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2012-41550(P2012-41550)
(22)【出願日】2012年2月28日
(65)【公開番号】特開2013-178133(P2013-178133A)
(43)【公開日】2013年9月9日
【審査請求日】2015年2月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001487
【氏名又は名称】クラリオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100084412
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 冬紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121360
【弁理士】
【氏名又は名称】粟田 照久
(74)【代理人】
【識別番号】100149157
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 創史
(72)【発明者】
【氏名】水野 佳幸
(72)【発明者】
【氏名】武藤 啓介
【審査官】 東 勝之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−107371(JP,A)
【文献】 特開2007−127868(JP,A)
【文献】 特開2000−123292(JP,A)
【文献】 特開2011−235847(JP,A)
【文献】 特開2005−138816(JP,A)
【文献】 米国特許第07035733(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 21/00 − 32/36
G08G 1/00 − 1/16
G09B 29/00 − 29/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路上に予め設定された各地点の標高情報を含む地図データを記憶する地図データ記憶手段と、
自車位置を検出する自車位置検出手段と、
前記自車位置に基づいて算出対象地点を設定する算出対象地点設定手段と、
前記算出対象地点から前後にそれぞれ所定の離隔距離だけ離れた2地点に対応する標高情報を前記地図データから取得する標高情報取得手段と、
前記標高情報取得手段により取得された標高情報に基づいて、前記算出対象地点における道路勾配を算出する道路勾配算出手段と
前記地図データにおいて前記算出対象地点から前後にそれぞれ最も近い2地点の標高情報に基づいて、前記算出対象地点の標高を算出する算出対象地点標高算出手段と、
前記算出対象地点から前方に所定距離だけ離れた基準地点を設定し、前記地図データにおいて前記基準地点から前後にそれぞれ最も近い2地点の標高情報に基づいて、前記基準地点の標高を算出する基準地点標高算出手段と、
前記算出対象地点標高算出手段により算出された前記算出対象地点の標高と、前記基準地点標高算出手段により算出された前記基準地点の標高とに基づいて、前記算出対象地点における道路勾配を算出する第2の道路勾配算出手段と、を備え
前記算出対象地点と前記基準地点との間における道路の勾配形状に応じて、前記道路勾配算出手段または前記第2の道路勾配算出手段のいずれか一方を選択し、前記算出対象地点における道路勾配を算出することを特徴とする車載装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車載装置において、
前記算出対象地点に基づいて前記離隔距離を変化させる離隔距離変化手段をさらに備えることを特徴とする車載装置。
【請求項3】
請求項2に記載の車載装置において、
前記離隔距離変化手段は、前記算出対象地点が属する地域の種類と、前記算出対象地点に対応する道路の種類と、前記算出対象地点の前方または後方に存在する交差点の種類とのいずれか少なくとも一つに基づいて、前記離隔距離を変化させることを特徴とする車載装置。
【請求項4】
道路上に予め設定された各地点の標高情報を含む地図データを記憶する地図データ記憶手段と、
自車位置を検出する自車位置検出手段と、
前記自車位置に基づいて算出対象地点を設定する算出対象地点設定手段と、
前記地図データにおいて前記算出対象地点から前後にそれぞれ最も近い2地点の標高情報に基づいて、前記算出対象地点の標高を算出する算出対象地点標高算出手段と、
前記算出対象地点から前方に所定距離だけ離れた基準地点を設定し、前記地図データにおいて前記基準地点から前後にそれぞれ最も近い2地点の標高情報に基づいて、前記基準地点の標高を算出する基準地点標高算出手段と、
前記算出対象地点標高算出手段により算出された前記算出対象地点の標高と、前記基準地点標高算出手段により算出された前記基準地点の標高とに基づいて、前記算出対象地点における道路勾配を算出する道路勾配算出手段と
前記算出対象地点から前後にそれぞれ所定の離隔距離だけ離れた2地点に対応する標高情報を前記地図データから取得する標高情報取得手段と、
前記標高情報取得手段により取得された標高情報に基づいて、前記算出対象地点における道路勾配を算出する第2の道路勾配算出手段と、を備え
前記算出対象地点と前記基準地点との間における道路の勾配形状に応じて、前記道路勾配算出手段または前記第2の道路勾配算出手段のいずれか一方を選択し、前記算出対象地点における道路勾配を算出することを特徴とする車載装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載されて使用される車載装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、地図をメッシュ状に区分して設定された所定の領域ごとに記憶されたメッシュ標高データを用いて、自車両前方の道路勾配を算出する装置が知られている(特許文献1参照)。この装置は、自車両が走行している道路の前方に所定距離ごとに仮想点を設定し、各仮想点が位置する領域のメッシュ標高データを各仮想点の標高として、自車位置と各仮想点との間の勾配をそれぞれ算出し、これらを平均化することにより、自車両前方の道路勾配を算出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−50743号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示される装置において、メッシュ標高データは、所定の領域、たとえば10m四方の正方形の領域ごとに設定されている。そのため、仮想点における実際の標高とは必ずしも一致せず、道路勾配の算出結果に誤差を生じる可能性がある。また、自車位置と各仮想点との間の勾配を平均化しているため、自車両前方の平均的な道路勾配を算出することはできるが、自車両前方の特定の地点における道路勾配については算出することができない。
【0005】
そこで、上記のような従来の道路勾配の算出方法における問題点を解消するために、各地の道路上の標高値をきめ細かく計測し、その計測値に基づいて設定された標高データを用いて自車両前方の特定の地点における道路勾配を算出することが近年提案されている。しかし、このような道路勾配の算出方法では、標高データの設定間隔が小さいため、標高の計測誤差による影響が大きい。たとえば、1m間隔で設定されている2つの標高データのうち一方に10cmの計測誤差があると、この2つの標高データに基づいて算出される道路勾配は、本来の道路勾配のパーセント値に対して±10%の誤差を含むこととなる。すなわち、本来の道路勾配がたとえば5%であれば、算出される道路勾配は15%または−5%となるため、本来とは全く異なった道路勾配が算出されてしまう。
【0006】
本発明は、以上説明したような標高の計測誤差による影響を抑えて、自車両前方の特定の地点における道路勾配を正確に算出することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様による車載装置は、道路上に予め設定された各地点の標高情報を含む地図データを記憶する地図データ記憶手段と、自車位置を検出する自車位置検出手段と、自車位置に基づいて算出対象地点を設定する算出対象地点設定手段と、算出対象地点から前後にそれぞれ所定の離隔距離だけ離れた2地点に対応する標高情報を地図データから取得する標高情報取得手段と、標高情報取得手段により取得された標高情報に基づいて算出対象地点における道路勾配を算出する道路勾配算出手段と、地図データにおいて算出対象地点から前後にそれぞれ最も近い2地点の標高情報に基づいて、算出対象地点の標高を算出する算出対象地点標高算出手段と、算出対象地点から前方に所定距離だけ離れた基準地点を設定し、地図データにおいて基準地点から前後にそれぞれ最も近い2地点の標高情報に基づいて、基準地点の標高を算出する基準地点標高算出手段と、算出対象地点標高算出手段により算出された算出対象地点の標高と、基準地点標高算出手段により算出された基準地点の標高とに基づいて、算出対象地点における道路勾配を算出する第2の道路勾配算出手段と、を備え、算出対象地点と基準地点との間における道路の勾配形状に応じて、道路勾配算出手段または第2の道路勾配算出手段のいずれか一方を選択し、算出対象地点における道路勾配を算出する
また、本発明の他の一態様による車載装置は、道路上に予め設定された各地点の標高情報を含む地図データを記憶する地図データ記憶手段と、自車位置を検出する自車位置検出手段と、自車位置に基づいて算出対象地点を設定する算出対象地点設定手段と、地図データにおいて算出対象地点から前後にそれぞれ最も近い2地点の標高情報に基づいて算出対象地点の標高を算出する算出対象地点標高算出手段と、算出対象地点から前方に所定距離だけ離れた基準地点を設定し、地図データにおいて基準地点から前後にそれぞれ最も近い2地点の標高情報に基づいて基準地点の標高を算出する基準地点標高算出手段と、算出対象地点標高算出手段により算出された算出対象地点の標高と、基準地点標高算出手段により算出された基準地点の標高とに基づいて、算出対象地点における道路勾配を算出する道路勾配算出手段と、算出対象地点から前後にそれぞれ所定の離隔距離だけ離れた2地点に対応する標高情報を地図データから取得する標高情報取得手段と、標高情報取得手段により取得された標高情報に基づいて、算出対象地点における道路勾配を算出する第2の道路勾配算出手段と、を備え、算出対象地点と基準地点との間における道路の勾配形状に応じて、道路勾配算出手段または第2の道路勾配算出手段のいずれか一方を選択し、算出対象地点における道路勾配を算出する
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、自車両前方の特定の地点における道路勾配を正確に算出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態による車載装置の適用例であるナビゲーション装置を含む車載システムの構成を示すブロック図である。
図2】ナビゲーション装置の構成を示すブロック図である。
図3】道路勾配の計算方法を説明する図である。
図4】第1の実施の形態によるナビゲーション装置において実行される道路勾配算出処理のフローチャートである。
図5】広域での道路勾配の計算方法を説明する図である。
図6】狭域での道路勾配の計算方法が適する場合の例と、広域での道路勾配の計算方法が適する場合の例とを示す図である。
図7】第2の実施の形態によるナビゲーション装置において実行される道路勾配算出処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
−第1の実施の形態−
本発明の一実施の形態による車載装置について以下に説明する。図1は、本発明の一実施形態による車載装置の適用例であるナビゲーション装置を含む車載システムの構成を示すブロック図である。図1において、電気自動車(EV)である車両100には、ナビゲーション装置1、車両制御装置2、バッテリ3、電力変換装置4および電気モータ5が搭載されている。
【0011】
ナビゲーション装置1は、地図データに基づいて地図を表示すると共に、設定された目的地までの推奨経路を探索し、車両100をその目的地まで案内することができる。さらに、車両100が走行している道路の前方における特定の地点を道路勾配の算出対象地点に設定し、その地点の道路勾配を算出して車両制御装置2へ出力する。このときナビゲーション装置1が行う処理の具体的な内容については、後で詳しく説明する。
【0012】
バッテリ3は、電気モータ5を駆動するための電力を供給する。バッテリ3から供給される電力を用いて電気モータ5が駆動することにより、車両100は走行する。また、車両100の減速時には電気モータ5が発電機として作用し、回生発電による電力が発生する。この回生発電によって得られた電力は、バッテリ3において蓄積される。電力変換装置4は、バッテリ3と電気モータ5との間で授受されるこれらの電力を相互に利用可能な形式に変換する。たとえば、バッテリ3から供給される直流電力を所望の交流電力に変換して電気モータ5へ出力すると共に、電気モータ5において回生発電により得られた交流電力を所望の直流電力に変換してバッテリ3へ出力する。
【0013】
車両制御装置2は、ナビゲーション装置1から出力された道路勾配の算出結果や、車両100の走行状態、バッテリ3の状態、電気モータ5の状態などを監視し、その監視結果に基づいて電力変換装置4の動作を制御する。この車両制御装置2の制御により電力変換装置4が動作することで、前方の道路勾配や車両100の走行状態などに応じてバッテリ3と電気モータ5との間で適切に電力の授受が行われる。これにより、バッテリ3に蓄積された電気エネルギーを消費して、車両100が走行するための運動エネルギーを電気モータ5による発生することができる。また、車両100の運動エネルギーの少なくとも一部を電気モータ5により回収して、再利用可能な回生エネルギーとしての電気エネルギーをバッテリ3に蓄積することができる。
【0014】
図2は、ナビゲーション装置1の構成を示すブロック図である。ナビゲーション装置1は、制御部10、振動ジャイロ11、車速センサ12、ハードディスク(HDD)13、GPS(Global Positioning System)受信部14、VICS(登録商標)(Vehicle Information and Communication System)情報受信部15、表示モニタ16、スピーカ17および入力装置18を備えている。
【0015】
制御部10は、マイクロプロセッサや各種周辺回路、RAM、ROM等によって構成されており、HDD13に記録されている制御プログラムや地図データに基づいて、各種の処理を実行する。たとえば、目的地を設定する際の目的地の検索処理、設定された目的地までの推奨経路の探索処理、車両100の現在位置の検出処理、各種の画像表示処理、音声出力処理などが制御部10によって実行される。
【0016】
振動ジャイロ11は、車両100の角速度を検出するためのセンサである。車速センサ12は、車両100の走行速度を検出するためのセンサである。これらのセンサにより車両100の運動状態を所定の時間間隔ごとに検出することにより、制御部10において車両100の移動方向および移動量が求められる。
【0017】
HDD13は不揮発性の記録媒体であり、制御部10において上記のような処理を実行するための制御プログラムや地図データなどが記録されている。HDD13に記録されているデータは、必要に応じて制御部10の制御により読み出され、制御部10が実行する様々な処理や制御に利用される。
【0018】
HDD13に記録された地図データは、経路計算データと、道路データと、背景データとを含む。経路計算データは、目的地までの推奨経路を探索する際などに用いられるデータである。道路データは、道路の形状や種別などを表すデータである。道路データにおいて、各道路は後述するようにノードや形状補間点と呼ばれる点を複数繋げることによって構成されている。背景データは、地図の背景を表すデータである。なお、地図の背景とは、地図上に存在する道路以外の様々な構成物である。たとえば、河川、鉄道、緑地帯、各種構造物などが背景データによって表される。
【0019】
地図データにおいて各道路の最小単位はリンクと呼ばれている。すなわち、各道路は所定の道路区間にそれぞれ対応する複数のリンクによって構成されており、リンク単位で経路計算データおよび道路データが表現されている。なお、道路データにおいて各リンクの両端には、座標情報がそれぞれ設定されたノードと呼ばれる点が設けられている。また、各リンクの途中には形状補間点と呼ばれる点が必要に応じて設けられている。各形状補間点には、ノードと同様に座標情報がそれぞれ設定されている。これらの点を順に繋げることにより、道路データにおいて道路の形状が表される。
【0020】
一方、経路計算データには、各道路区間に対応するリンクごとに、車両100が当該道路区間を走行する際の通過所要時間等に応じたリンクコストが設定されている。このリンクコストに基づいて、予め設定された経路探索条件に応じたリンクの組合せを求めることにより、ナビゲーション装置1において推奨経路の探索が行われる。たとえば、移動時間の短さを最優先として経路探索を行うような経路探索条件が設定されている場合は、出発地から目的地までの通過所要時間が最小となるリンクの組合せが推奨経路として求められる。
【0021】
HDD13に記録されている地図データは、上記の各データに加えて、さらに標高データを含んでいる。標高データは、道路上に予め設定された各地点の標高を表すためのデータである。たとえば、地図データの作成に当たって、GPS信号等を用いて走行中の位置と標高を高精度に測定可能な測定機材を搭載した測定車両を用意する。この測定車両に全国各地の道路を走行させて所定時間または所定距離ごとに測定を行うことにより、全国各地の道路における各地点の位置と標高の情報を取得する。こうして取得した情報を反映して作成された地図データをHDD13に記録することにより、標高データを含む地図データをHDD13に記憶させることができる。
【0022】
なお、上記ではナビゲーション装置1において地図データがHDD13に記録されている例を説明したが、これらをHDD以外の記録媒体に記録することとしてもよい。たとえば、CD−ROMやDVD−ROM、メモリカードなどに記録された地図データを用いることができる。すなわち、本実施の形態によるナビゲーション装置では、どのような記録媒体を用いてこれらのデータを記憶してもよい。
【0023】
GPS受信部14は、GPS衛星から送信されるGPS信号を受信して制御部10へ出力する。GPS信号には、そのGPS信号を送信したGPS衛星の位置と送信時刻に関する情報が含まれている。したがって、所定数以上のGPS衛星からGPS信号を受信することにより、これらの情報に基づいて、GPS信号の受信位置を制御部10において算出することができる。このGPS信号に基づく受信位置の算出結果と、前述の振動ジャイロ11および車速センサ12の各検出結果に基づく移動方向および移動量の算出結果とにより、制御部10において所定時間ごとに自車位置を検出するための処理が実行され、自車位置が検出される。
【0024】
VICS情報受信部15は、図示しないVICSセンターからナビゲーション装置1に対して送信されるVICS情報を受信する。このVICS情報をVICS情報受信部15が受信することにより、渋滞情報を始めとする様々な道路交通情報がナビゲーション装置1において取得される。VICS情報受信部15により受信されたVICS情報は、制御部10に出力され、渋滞情報の表示や推奨経路の探索などに利用される。
【0025】
なお、VICSセンターからナビゲーション装置1へのVICS情報の送信は、主に高速道路上に設置されている電波ビーコンや、主に一般道路上に設置されている光ビーコン、またはFM多重放送によって行われる。電波ビーコンや光ビーコンは、その設置地点付近を通過する車両に対して、電波あるいは光(赤外線)により局所的にVICS情報を送信するものである。これに対して、FM多重放送では比較的広い地域に対してVICS情報を送信することができる。
【0026】
表示モニタ16は、ナビゲーション装置1において様々な画面表示を行うための装置であり、液晶ディスプレイ等を用いて構成される。この表示モニタ16により、地図画面の表示や推奨経路の案内表示などが行われる。表示モニタ16に表示される画面の内容は、制御部10が行う画面表示制御によって決定される。表示モニタ16は、たとえば車両100のダッシュボード上やインストルメントパネル内など、ユーザが見やすいような位置に設置されている。
【0027】
スピーカ17は、制御部10の制御により様々な音声情報を出力する。たとえば、推奨経路に従って車両100を目的地まで案内するための経路案内用の音声や、各種の警告音などがスピーカ17から出力される。
【0028】
入力装置18は、ナビゲーション装置1を動作させるための様々な入力操作をユーザが行うための装置であり、各種の入力スイッチ類を有している。ユーザは、入力装置18を操作することにより、たとえば、目的地に設定したい施設や地点の名称等を入力したり、推奨経路の探索条件を設定したり、予め登録された登録地の中から目的地を選択したり、地図を任意の方向にスクロールしたりすることができる。この入力装置18は、操作パネルやリモコンなどによって実現することができる。あるいは、入力装置18を表示モニタ16と一体化されたタッチパネルとしてもよい。
【0029】
ユーザが入力装置18を操作して目的地を設定すると、ナビゲーション装置1は、前述のようにして検出された車両100の現在位置を出発地として、前述の経路計算データに基づいて所定のアルゴリズムの演算による経路探索処理を行う。この処理により、出発地から目的地まで至る推奨経路を探索する。さらにナビゲーション装置1は、たとえば色を変える等の方法により、表示モニタ16に表示された地図上において他の道路と識別可能な形態で探索された推奨経路を表示する。そして、推奨経路に従って所定の画像情報や音声情報を表示モニタ16やスピーカ17から出力することにより、車両100を目的地まで案内する。
【0030】
次に、ナビゲーション装置1において行われる道路勾配の算出処理について説明する。前述したように、ナビゲーション装置1は、車両100が走行している道路の前方に道路勾配の算出対象地点を設定し、その地点の道路勾配を算出して車両制御装置2へ出力する。この処理は、制御部10により、HDD13に記録されている地図データに含まれる標高データに基づいて、以下のような計算方法に従って行われる。
【0031】
図3は、道路勾配の計算方法を説明する図である。図3において、符号30は、自車位置前方の道路上に設定された道路勾配の算出対象地点を表している。ナビゲーション装置1は、自車位置に対して算出対象地点30を設定すると、この算出対象地点30の前後にそれぞれ所定の離隔距離Dだけ離れた2地点を特定する。次に、特定した2地点に対応する標高情報として、地図データにおいて当該道路上に設定されている各標高データ(図3中に示す各点)の中から、当該2地点にそれぞれ最も近い位置の標高データ31、32をそれぞれ選択する。こうして選択した標高データ31、32を用いて、標高データ31に対応する地点と標高データ32に対応する地点との間のおける標高差すなわち垂直距離と、位置差すなわち水平距離とを算出する。そして、算出した垂直距離と水平距離に基づいて、これらの地点間の勾配を計算し、これを算出対象地点30の道路勾配とする。このような計算方法に応じた処理を制御部10で実行することにより、ナビゲーション装置1において算出対象地点30の道路勾配を算出することができる。
【0032】
なお、図3における各点の水平方向(図の左右方向)の位置は、道路リンク上での各標高データの位置関係をそれぞれ表している。地図データには、リンクと標高データの対応関係を表すデータが含まれている。このデータを参照することにより、各リンク上でどの位置に標高データが設定されているかを確認することができる。また、各点の垂直方向(図の上下方向)の位置は、各標高データが示す標高の高さをそれぞれ表している。
【0033】
図4は、本実施形態のナビゲーション装置1において実行される道路勾配算出処理のフローチャートである。このフローチャートに示す道路勾配算出処理は、ナビゲーション装置1において、制御部10により所定時間ごとに繰り返し実行される。
【0034】
ステップS10において、制御部10は、道路勾配の算出対象地点を設定する。ここでは、車両100がこれから走行予定の道路に沿って、自車位置から前方に所定距離、たとえば100m離れた地点を、道路勾配の算出対象地点として設定する。なお、車両100がこれから走行予定の道路とは、ナビゲーション装置1において目的地までの推奨経路が設定されている場合は、その推奨経路のうち自車位置から先に続く部分である。一方、推奨経路が設定されていない場合は、車両100が現在走行している道路を道なりに進んだときの自車位置から先に続く道路である。
【0035】
ステップS20において、制御部10は、離隔距離Dを設定する。ここでは離隔距離Dとして、固定の値、たとえば50mを設定することができる。あるいは、ステップS10で設定した道路勾配の算出対象地点に基づいて、ステップS20で設定する離隔距離Dを以下で説明するように変化させてもよい。
【0036】
たとえば、算出対象地点が属する地域の種類に応じて、勾配変化が比較的大きい山間部などの地域では離隔距離Dを小さく設定し、勾配変化が比較的小さい平野部などの地域では離隔距離Dを大きく設定することができる。この場合、たとえば地図データにおいてメッシュごとに地域の種類を予め設定しておき、これに基づいて算出対象地点が属する地域の種類を判断することができる。
【0037】
また、算出対象地点に対応する道路の種類に応じて、勾配変化が比較的大きい可能性がある道路、たとえば細街路などでは離隔距離Dを小さく設定し、勾配変化が比較的小さい高速道路などの道路では離隔距離Dを大きく設定することができる。この場合、たとえば地図データにおいて算出対象地点に対応するリンクの属性から、当該道路の種類を判断することができる。このとき制限速度やリンク形状などを考慮してもよい。
【0038】
さらに、算出対象地点の前方または後方に存在する交差点の種類に応じて、勾配変化が比較的大きい可能性がある立体交差などの交差点の付近では離隔距離Dを小さく設定し、それ以外の交差点の付近では離隔距離Dを大きく設定することもできる。この場合、たとえば地図データにおいて算出対象地点に対応するリンクの両端のノード種別から、当該ノードが立体交差点であるか否かを判断することができる。
【0039】
以上説明したような各種の離隔距離Dの変化は、いずれかを単独で採用してもよいし、任意のものを組み合わせてもよい。すなわち、ステップS20では、算出対象地点が属する地域の種類と、算出対象地点に対応する道路の種類と、算出対象地点の前方または後方に存在する交差点の種類とのいずれか少なくとも一つに基づいて、離隔距離Dを変化させることができる。
【0040】
ステップS30において、制御部10は、HDD13に記憶されている地図データを用いて、ステップS10で設定した算出対象地点と、ステップS20で設定した離隔距離Dとに対して、標高情報の取得対象地点を2つ特定する。すなわち、上記において図3を参照して説明したように、車両100がこれから走行予定の道路に沿って算出対象地点の前後にそれぞれ離隔距離Dだけ離れた2つの地点を、標高情報の取得対象地点として特定する。
【0041】
ステップS40において、制御部10は、ステップS30で特定した2つの取得対象地点について、それぞれに対応するリンクを特定し、その各リンクに対して予め設定された固有のリンクIDを地図データにおいて参照する。これにより、各取得対象地点に対応する2つのリンクIDが参照される。なお、2つの取得対象地点が同一のリンク上にある場合は、そのリンクに対応する1つのリンクIDのみを参照すればよい。
【0042】
ステップS50において、制御部10は、ステップS40で参照したリンクIDに基づいて、ステップS30で特定した2つの取得対象地点に対応する標高情報が地図データ内にあるか否かを判定する。ここでは、2つの取得対象地点にそれぞれ対応する各リンクについて、ステップS40で参照したリンクIDにより、当該リンクと標高データの対応関係を表す前述のようなデータを地図データから読み出す。こうして読み出したデータに基づいて、当該リンク上に少なくとも1つ以上の標高データが設定されているか否かを判断することにより、標高情報の有無を判定する。
【0043】
上記の判定の結果、ステップS30で特定した2つの取得対象地点に対して、その両方についてそれぞれ対応する標高情報が地図データ内にあると判定した場合は、ステップS60へ進む。一方、2つの取得対象地点に対して、そのいずれか少なくとも一方に対応する標高情報が地図データにおいて設定されていないと判定した場合は、図4のフローチャートに示す道路勾配算出処理を終了する。この場合、道路勾配が算出できなかったことを車両制御装置2に対して通知することが好ましい。
【0044】
ステップS60において、制御部10は、ステップS30で特定した2つの取得対象地点に対応する標高情報を地図データから取得する。ここでは、上記において図3を用いて説明したように、2つの取得対象地点がそれぞれ位置する各リンク上に設定されている標高データのうち、当該取得対象地点に最も近い位置に設定されている標高データを地図データから読み出して取得する。これにより、2つの取得対象地点に対して、それぞれ最も近い地点の標高情報をHDD13の地図データから取得することができる。
【0045】
ステップS70において、制御部10は、ステップS60で取得した標高情報に基づいて、ステップS10で設定した算出対象地点における道路勾配を算出する。すなわち、前述のように、ステップS60で2つの取得対象地点について地図データからそれぞれ読み出した標高データに基づいて、その2つの取得対象地点間の垂直距離および水平距離を求める。そして、この水平距離に対する垂直距離のパーセント値を計算することにより、2つの取得対象地点間の勾配を算出し、これを算出対象地点における道路勾配とする。このようにして、算出対象地点における道路勾配を算出する。
【0046】
ステップS70を実行したら、制御部10は図4のフローチャートに示す道路勾配算出処理を終了する。そして、算出された道路勾配を車両制御装置2に対して出力する。
【0047】
以上説明した本発明の第1の実施の形態によれば、次の(1)、(2)のような作用効果を奏することができる。
【0048】
(1)ナビゲーション装置1は、道路上に予め設定された各地点の標高情報を含む地図データをHDD13に記憶しておくと共に、制御部10において自車位置を検出するための処理を実行する。そして、制御部10が行う道路勾配算出処理により、検出された自車位置に基づいて道路勾配の算出対象地点を設定し(ステップS10)、その算出対象地点から前後にそれぞれ所定の離隔距離Dだけ離れた2つの取得対象地点を特定して(ステップS30)、この2地点に対応する標高情報を地図データから取得する(ステップS60)。こうして取得した標高情報に基づいて、算出対象地点における道路勾配を算出する(ステップS70)。このようにしたので、標高の計測誤差による影響を抑えて、自車両前方の特定の地点における道路勾配を正確に算出することができる。
【0049】
(2)制御部10は、ステップS10で設定した算出対象地点に基づいて離隔距離Dを変化させることができる(ステップS20)。具体的には、算出対象地点が属する地域の種類と、算出対象地点に対応する道路の種類と、算出対象地点の前方または後方に存在する交差点の種類とのいずれか少なくとも一つに基づいて、離隔距離Dを変化させることができる。このようにすれば、状況に応じて最適な離隔距離を設定して道路勾配を算出することができる。
【0050】
−第2の実施の形態−
次に本発明の第2の実施の形態について説明する。本実施形態では、第1の実施の形態で説明した道路勾配の計算方法に加えて、さらに別の計算方法を用いて道路勾配を求める車載装置について説明する。なお、本実施形態では、第1の実施の形態と同様に、ナビゲーション装置における適用例を用いて説明を行う。本実施形態による車載システムの構成およびナビゲーション装置1の構成は、図1、2に示したものとそれぞれ同一である。
【0051】
本実施形態によるナビゲーション装置1では、第1の実施の形態で説明したような計算方法を用いて、比較的狭い範囲を対象とした道路勾配を算出する。一方、これとは別の計算方法を用いて、比較的広い範囲を対象とした道路勾配を算出する。これら2種類の計算方法を状況に応じて使い分けることにより、最適な道路勾配を算出するようにしている。なお、以下の説明では、前者の計算方法を「狭域での道路勾配の計算方法」と称し、後者の計算方法を「広域での道路勾配の計算方法」と称することとする。
【0052】
図5は、広域での道路勾配の計算方法を説明する図である。図5において、符号50は、図3の符号30と同様に、自車位置前方の道路上に設定された道路勾配の算出対象地点を表している。一方、符号60は、この算出対象地点50から前方に所定距離、たとえば500mだけ離れた地点を表している。以下では、この符号60に示す地点を基準地点と称する。なお、図5における各点の水平方向(図の左右方向)の位置と垂直方向(図の上下方向)の位置は、図3と同様に、道路リンク上での各標高データの位置関係と標高の高さをそれぞれ表している。
【0053】
ナビゲーション装置1は、自車位置に対して算出対象地点50を設定すると、この算出対象地点50の前方に、車両100が走行予定の道路に沿って所定距離だけ離れた地点を基準地点60に設定する。次に、地図データにおいて当該道路上に設定されている各標高データ(図5中に示す各点)の中から、算出対象地点50の前後にそれぞれ最も近い位置の標高データ51、52を選択し、これらの標高データを用いて、算出対象地点50に対する標高データ53の値を求める。すなわち、算出対象地点50から標高データ51に対応する地点までの距離と、算出対象地点50から標高データ52に対応する地点までの距離とに応じて、これらの標高データが表す標高の値をそれぞれ重み付けして加重平均することにより、算出対象地点50に対する標高データ53の値を求める。基準地点60についても同様にして、基準地点60の前後にそれぞれ最も近い位置の標高データ61、62を選択し、これらの標高データを用いて、基準地点60に対する標高データ63の値を求める。
【0054】
こうして求められた算出対象地点50に対する標高データ53の値と、基準地点60に対する標高データ63の値とを用いて、算出対象地点50と基準地点60との間のおける標高差すなわち垂直距離を算出する。そして、算出した垂直距離と、算出対象地点50から基準地点60までの距離とに基づいて、これらの地点間の勾配を計算し、これを算出対象地点50の道路勾配とする。このような計算方法に応じた処理を制御部10で実行することにより、ナビゲーション装置1において算出対象地点50の道路勾配を算出することができる。
【0055】
ナビゲーション装置1は、第1の実施の形態で説明したような狭域での道路勾配の計算方法と、上記において説明したような広域での道路勾配の計算方法とを、状況に応じて使い分ける。図6は、この状況に応じた道路勾配の計算方法の使い分けを説明するために、狭域での道路勾配の計算方法が適する場合の例と、広域での道路勾配の計算方法が適する場合の例とを示す図である。
【0056】
図6(a)は、狭域での道路勾配の計算方法が適する場合の一例である。この図に示すように、算出対象地点50の付近で標高が変化しており、かつ算出対象地点50と基準地点60との間における標高差が小さい場合、図5で説明したような広域での道路勾配の計算方法を用いて算出対象地点50の道路勾配を算出すると、実際よりも小さな道路勾配が算出されてしまう。したがってこのような場合、図3で説明したような狭域での道路勾配の計算方法を用いて、算出対象地点50の道路勾配を算出することが好ましい。
【0057】
図6(b)は、広域での道路勾配の計算方法が適する場合の一例である。この図に示すように、算出対象地点50の付近で標高があまり変化しておらず、かつ算出対象地点50と基準地点60との間における標高差が大きい場合、図3で説明したような狭域での道路勾配の計算方法を用いて算出対象地点50の道路勾配を算出すると、実際よりも小さな道路勾配が算出されてしまう。したがってこのような場合、図5で説明したような広域での道路勾配の計算方法を用いて、算出対象地点50の道路勾配を算出することが好ましい。
【0058】
ナビゲーション装置1は、算出対象地点50付近の標高の変化や、算出対象地点50と基準地点60との間における標高差などから、算出対象地点50と基準地点60との間の道路の勾配形状が図6(a)、(b)に示したような状況のどちらにより近いかを判断する。この判断結果に応じて、狭域での道路勾配の計算方法または広域での道路勾配の計算方法のいずれか一方を選択し、選択した計算方法を用いて、算出対象地点50の道路勾配を算出する。
【0059】
図7は、本実施形態のナビゲーション装置1において実行される道路勾配算出処理のフローチャートである。このフローチャートに示す道路勾配算出処理は、ナビゲーション装置1において、制御部10により所定時間ごとに繰り返し実行される。なお、図7において、図4に示した第1の実施の形態による道路勾配算出処理と同一の処理を実行する処理ステップには、図4と共通のステップ番号を付している。以下の説明では、図4と共通のステップ番号が付された処理ステップの内容については、特に必要が無い限りその説明を省略する。
【0060】
ステップS11において、制御部10は、ステップS10で設定した道路勾配の算出対象地点に対する基準地点を設定する。ここでは、車両100がこれから走行予定の道路に沿って、道路勾配の算出対象地点から前方に所定距離、たとえば500m離れた地点を、基準地点として設定する。なお、車両100がこれから走行予定の道路とは、前述のように、ナビゲーション装置1において目的地までの推奨経路が設定されている場合は、その推奨経路のうち、自車位置から道路勾配の算出対象地点を通ってさらに先に続く部分である。一方、推奨経路が設定されていない場合は、車両100が現在走行している道路を道なりに進んだときに、自車位置から道路勾配の算出対象地点を通ってさらに先に続く道路である。
【0061】
ステップS12において、制御部10は、ステップS10で設定した道路勾配の算出対象地点と、ステップS11で設定した基準地点との間における道路の勾配形状を判断する。ここでは前述のように、算出対象地点付近の標高の変化や、算出対象地点と基準地点との間における標高差などに基づいて、算出対象地点と基準地点との間の道路の勾配形状が図6(a)のような状況と図6(b)のような状況のどちらに該当するかを判断する。
【0062】
ステップS13において、制御部10は、ステップS12の判断結果に基づいて、狭域での道路勾配の計算方法または広域での道路勾配の計算方法のどちらが適しているかを判定する。すなわち、ステップS12において、算出対象地点と基準地点との間の道路の勾配形状が図6(a)に該当するとの判断結果を得た場合は、狭域での道路勾配の計算方法がより適していると判定し、ステップS20へ進む。一方、算出対象地点と基準地点との間の道路の勾配形状が図6(b)に該当するとの判断結果を得た場合は、広域での道路勾配の計算方法がより適していると判定し、ステップS80へ進む。
【0063】
ステップS13からステップS20へ進んだ場合、ステップS20〜S70において、制御部10は図4のフローチャートで説明したのと同様の処理を実行する。これにより、狭域での道路勾配の計算方法を用いて、ステップS10で設定した算出対象地点における道路勾配を算出する。ステップS70を実行したら、制御部10は図7のフローチャートに示す道路勾配算出処理を終了し、算出された道路勾配を車両制御装置2に対して出力する。
【0064】
ステップS13からステップS80へ進んだ場合、ステップS80において、制御部10は、ステップS10で設定した道路勾配の算出対象地点に対する標高情報の取得対象地点を2つ特定する。ここでは、上記において図5を参照して説明したように、地図データにおいて自車両が走行中の道路上に設定されている各標高データに対応する各地点のうち、算出対象地点から前後にそれぞれ最も近い2地点を、算出対象地点に対する標高情報の取得対象地点として特定する。
【0065】
ステップS90において、制御部10は、ステップS80で特定した2つの取得対象地点について、それぞれに対応するリンクを特定し、その各リンクに対して予め設定された固有のリンクIDを地図データにおいて参照する。これにより、各取得対象地点に対応する2つのリンクIDが参照される。なお、2つの取得対象地点が同一のリンク上にある場合は、そのリンクに対応する1つのリンクIDのみを参照すればよい。
【0066】
ステップS100において、制御部10は、ステップS90で参照したリンクIDに基づいて、ステップS80で特定した2つの取得対象地点に対応する標高情報が地図データ内にあるか否かを判定する。ここでは、図4のフローチャートで説明したステップS50と同様の判定を行う。すなわち、2つの取得対象地点にそれぞれ対応する各リンクについて、ステップS90で参照したリンクIDにより、当該リンクと標高データの対応関係を表す前述のようなデータを地図データから読み出す。こうして読み出したデータに基づいて、当該リンク上に少なくとも1つ以上の標高データが設定されているか否かを判断することにより、標高情報の有無を判定する。
【0067】
上記の判定の結果、ステップS80で特定した2つの取得対象地点に対して、その両方についてそれぞれ対応する標高情報が地図データ内にあると判定した場合は、ステップS110へ進む。一方、2つの取得対象地点に対して、そのいずれか少なくとも一方に対応する標高情報が地図データにおいて設定されていないと判定した場合は、図7のフローチャートに示す道路勾配算出処理を終了する。この場合、道路勾配が算出できなかったことを車両制御装置2に対して通知することが好ましい。
【0068】
ステップS110において、制御部10は、ステップS80で特定した2つの取得対象地点に対応する標高情報を地図データから取得する。すなわち、2つの取得対象地点に対応して設定されている標高データをHDD13の地図データからそれぞれ読み出して取得する。
【0069】
ステップS120において、制御部10は、ステップS110で取得した標高情報に基づいて、ステップS10で設定した算出対象地点の標高を算出する。ここでは、上記において図5を用いて説明したように、算出対象地点から各標高データに対応する各地点、すなわちステップS80で特定した各取得対象地点までの距離に応じて、各標高データが表す標高の値をそれぞれ重み付けして加重平均する。これにより、算出対象地点の標高を算出する。
【0070】
ステップS130において、制御部10は、ステップS11で設定した基準地点に対する標高情報の取得対象地点を2つ特定する。ここでは、上記において図5を参照して説明したように、地図データにおいて自車両が走行中の道路上に設定されている各標高データに対応する各地点のうち、基準地点から前後にそれぞれ最も近い2地点を、基準地点に対する標高情報の取得対象地点として特定する。
【0071】
ステップS140において、制御部10は、ステップS130で特定した2つの取得対象地点について、それぞれに対応するリンクを特定し、その各リンクに対して予め設定された固有のリンクIDを地図データにおいて参照する。これにより、各取得対象地点に対応する2つのリンクIDが参照される。なお、2つの取得対象地点が同一のリンク上にある場合は、そのリンクに対応する1つのリンクIDのみを参照すればよい。また、前述のステップS90において当該リンクIDを既に参照済みである場合は、ステップS140の処理を省略してもよい。
【0072】
ステップS150において、制御部10は、ステップS140で参照したリンクIDに基づいて、ステップS130で特定した2つの取得対象地点に対応する標高情報が地図データ内にあるか否かを判定する。ここでは、ステップS50、S100と同様の判定方法により、標高情報の有無を判定する。
【0073】
上記の判定の結果、ステップS130で特定した2つの取得対象地点に対して、その両方についてそれぞれ対応する標高情報が地図データ内にあると判定した場合は、ステップS160へ進む。一方、2つの取得対象地点に対して、そのいずれか少なくとも一方に対応する標高情報が地図データにおいて設定されていないと判定した場合は、図7のフローチャートに示す道路勾配算出処理を終了する。この場合、道路勾配が算出できなかったことを車両制御装置2に対して通知することが好ましい。
【0074】
ステップS160において、制御部10は、ステップS130で特定した2つの取得対象地点に対応する標高情報を地図データから取得する。すなわち、2つの取得対象地点に対応して設定されている標高データをHDD13の地図データからそれぞれ読み出して取得する。
【0075】
ステップS170において、制御部10は、ステップS160で取得した標高情報に基づいて、ステップS11で設定した基準地点の標高を算出する。ここでは、前述のステップS120と同様にして、基準地点から各標高データに対応する各地点、すなわちステップS130で特定した各取得対象地点までの距離に応じて、各標高データが表す標高の値をそれぞれ重み付けして加重平均する。これにより、基準地点の標高を算出する。
【0076】
ステップS180において、制御部10は、ステップS120で算出した算出対象地点の標高と、ステップS170で算出した基準地点の標高とに基づいて、ステップS10で設定した算出対象地点における道路勾配を算出する。すなわち、前述のように、算出対象地点の標高と基準地点の標高との差から、これらの地点間の垂直距離を求める。そして、算出対象地点から基準地点までの間の所定距離に対する垂直距離のパーセント値を計算することにより、算出対象地点と基準地点間の勾配を算出し、これを算出対象地点における道路勾配とする。このようにして、算出対象地点における道路勾配を算出する。
【0077】
ステップS180を実行したら、制御部10は図7のフローチャートに示す道路勾配算出処理を終了する。そして、算出された道路勾配を車両制御装置2に対して出力する。
【0078】
以上説明した本発明の第2の実施の形態によれば、第1の実施の形態で説明した(1)、(2)の作用効果に加えて、さらに次の(3)、(4)のような作用効果を奏することができる。
【0079】
(3)ナビゲーション装置1は、制御部10が行う道路勾配算出処理により、検出された自車位置に基づいて道路勾配の算出対象地点を設定する(ステップS10)。そして、HDD13に記憶されている地図データにおいて、その算出対象地点から前後にそれぞれ最も近い2つの取得対象地点を特定し(ステップS80)、この2地点に対応する標高情報を地図データから取得する(ステップS110)。こうして取得した標高情報に基づいて、算出対象地点の標高を算出する(ステップS120)。また、設定した算出対象地点から前方に所定距離だけ離れた基準地点を設定する(ステップS11)。そして、HDD13に記憶されている地図データにおいて、その基準地点から前後にそれぞれ最も近い2つの取得対象地点を特定し(ステップS130)、この2地点に対応する標高情報を地図データから取得する(ステップS160)。こうして取得した標高情報に基づいて、基準地点の標高を算出する(ステップS170)。このようにして、算出対象地点の標高と基準地点の標高とを算出したら、これらの標高に基づいて、算出対象地点における道路勾配を算出する(ステップS180)。このようにしたので、第1の実施の形態で説明したのと同様に、標高の計測誤差による影響を抑えて、自車両前方の特定の地点における道路勾配を正確に算出することができる。
【0080】
(4)制御部10は、ステップS10で設定した算出対象地点とステップS11で設定した基準地点との間における道路の勾配形状を判断し(ステップS12)、この判断結果に応じて、狭域での道路勾配の計算方法によるステップS20〜S70の処理、または広域での道路勾配の計算方法によるステップS80〜S180の処理のいずれか一方を選択する(ステップS13)。そして、選択した処理により、算出対象地点における道路勾配を算出することとした。このようにしたので、2種類の計算方法を状況に応じて使い分け、最適な計算方法により道路勾配を算出することができる。
【0081】
なお、以上説明した第2の実施の形態では、ステップS12の判断結果に応じて、狭域での道路勾配の計算方法によるステップS20〜S70の処理、または広域での道路勾配の計算方法によるステップS80〜S180の処理のいずれか一方をステップS13で選択する例を説明した。しかし、ステップS12、S13の処理を省略すると共に、ステップS20〜S70の処理を省略してもよい。このようにして、常に広域での道路勾配の計算方法によるステップS80〜S180の処理を実行するようにしても、標高の計測誤差による影響を抑えて、自車両前方の特定の地点における道路勾配を正確に算出することができる。
【0082】
上記各実施の形態では、EVである車両100に搭載されているナビゲーション装置1を例として説明したが、ナビゲーション装置1が搭載される車両はEVに限定されない。たとえば、HEVや、ガソリン等の燃料を使用して内燃機関を駆動させることにより動力を発生する従来の自動車など、どのような車両に搭載される装置であっても本発明を適用可能である。
【0083】
また、上記各実施の形態では、ナビゲーション装置1における適用例を説明したが、ナビゲーション装置以外の車載装置において適用してもよい。道路勾配の算出対象地点を設定し、その算出対象地点における道路勾配を算出するものである限り、どのような車載装置についても本発明を適用可能である。
【0084】
上記第2の実施の形態で説明した広域での道路勾配の計算方法において、前述のように算出対象地点の前後にそれぞれ最も近い2つの標高データの値を重み付けして加重平均したものを算出対象地点の標高データの値とする代わりに、算出対象地点に最も近い位置の標高データの値を用いてもよいものとする。また、基準地点の標高に関しても同様に決定してよいものとする。
【0085】
なお、以上説明した各実施の形態や各種の変形例はあくまで一例であり、発明の特徴が損なわれない限り、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0086】
1:ナビゲーション装置、2:車両制御装置、3:バッテリ、4:電力変換装置、
5:電気モータ、10:制御部、11:振動ジャイロ、12:車速センサ、13:HDD
14:GPS受信部、15:VICS情報受信部、16:表示モニタ、17:スピーカ、18:入力装置、100:車両
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7