特許第5887191号(P5887191)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5887191
(24)【登録日】2016年2月19日
(45)【発行日】2016年3月16日
(54)【発明の名称】角膜撮影装置および角膜撮影方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 3/13 20060101AFI20160303BHJP
   A61B 3/10 20060101ALI20160303BHJP
【FI】
   A61B3/12 DZDM
   A61B3/10 W
【請求項の数】10
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2012-95408(P2012-95408)
(22)【出願日】2012年4月19日
(65)【公開番号】特開2013-220296(P2013-220296A)
(43)【公開日】2013年10月28日
【審査請求日】2015年3月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】501299406
【氏名又は名称】株式会社トーメーコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100103252
【弁理士】
【氏名又は名称】笠井 美孝
(74)【代理人】
【識別番号】100147717
【弁理士】
【氏名又は名称】中根 美枝
(72)【発明者】
【氏名】加藤 千比呂
【審査官】 島田 保
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−268871(JP,A)
【文献】 特許第2812421(JP,B2)
【文献】 特開2008−246071(JP,A)
【文献】 特開2002−191560(JP,A)
【文献】 特開平07−255678(JP,A)
【文献】 特開平11−070079(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/00−3/18
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検眼の視軸を所定位置に保持する固視標を含む視軸保持機構と、
スリット光束を前記被検眼に対して斜めから照射する照明光源を備えた照明光学系と該スリット光束による該被検眼の角膜からの反射光束を受光して角膜内皮像を撮像する光電素子を有する角膜撮像光学系を含む撮影機構と、
前記撮影機構を前記被検眼への接近/離隔方向となるZ方向に移動させるZ方向駆動手段と、
前記撮影機構を前記Z方向に直交するX方向及びY方向に移動させるX方向駆動手段及びY方向駆動手段を含んで構成された角膜撮影装置において、
前記固視標により前記被検眼の前記視軸の位置を固定保持した状態下で、該被検眼の前記視軸に対する前記撮影機構の撮影中心軸の傾斜角度を変更する傾斜角度変更手段と、
前記被検眼の角膜内皮形状を求める内皮形状演算手段と、
前記内皮形状演算手段により求められた前記角膜内皮形状の任意の撮影位置における法線方向を求める内皮法線演算手段と、を備えており、
前記撮影位置において、前記撮影機構の前記撮影中心軸が前記内皮法線演算手段で求めた法線方向となるように、前記傾斜角度変更手段による傾斜角度と、前記Z方向駆動手段によるZ方向位置及び前記X方向駆動手段によるX方向位置と、を調節設定するようになっていること、
を特徴とする角膜撮影装置。
【請求項2】
前記傾斜角度変更手段が、前記撮影機構を前記被検眼の周方向に揺動変位させる揺動機構を含んで構成されている請求項1に記載の角膜撮影装置。
【請求項3】
前記撮影位置が、前記被検眼の周方向に複数設定されており、前記固視標により前記被検眼の前記視軸の位置を固定保持した状態下で、該複数の撮影位置において、順次前記撮影機構の前記撮影中心軸が前記内皮法線演算手段で求めた法線方向に調節設定されて連続的に撮影されるようになっている請求項1又は2に記載の角膜撮影装置。
【請求項4】
前記内皮形状演算手段において、前記被検眼の前記角膜の実測値を用いて前記角膜内皮の曲率を推定して前記角膜内皮形状を得ている
請求項1〜3の何れか1項に記載の角膜撮影装置。
【請求項5】
前記内皮形状演算手段において、前記被検眼の周方向に離隔する少なくとも3箇所における前記角膜の厚さの実測値を用いて前記角膜内皮の曲率の推定値が求められている請求項4に記載の角膜撮影装置。
【請求項6】
前記内皮形状演算手段において、前記角膜内皮の曲率の推定値に従い、前記角膜内皮上の複数の測定位置において、角膜からの前記反射光束に基づき内皮位置を実測すると共に、該複数の測定位置の実測値に基づき前記角膜内皮形状を得ている
請求項4又は5に記載の角膜撮影装置。
【請求項7】
前記撮影機構を前記撮影中心軸方向に移動させる撮影方向駆動手段を含んで前記Z方向駆動手段および前記X方向駆動手段が構成されている
請求項1〜6の何れか1項に記載の角膜撮影装置。
【請求項8】
前記視軸保持機構と、前記被検眼に対して前記固視標の光軸の周囲に複数の点状の光を照射するケラト光源を含んで、前記被検眼の水平面の角膜前面曲率を測定するケラトメータが構成されている
請求項1〜7の何れか1項に記載の角膜撮影装置。
【請求項9】
被検眼の角膜撮影方法であって、
請求項1〜8の何れか1項に記載の角膜撮影装置を用い、
前記固視標により前記被検眼の前記視軸の位置を固定保持した状態下で、前記内皮形状演算手段により該被検眼の角膜内皮形状を求める内皮形状演算工程と、
前記内皮法線演算手段により得られた前記角膜内皮形状の任意の撮影位置における法線方向を求める内皮法線演算工程と、
前記撮影位置において、前記撮影機構の前記撮影中心軸が前記内皮法線演算手段で求めた法線方向となるように、前記傾斜角度変更手段による傾斜角度と、前記Z方向駆動手段によるZ方向位置及び前記X方向駆動手段によるX方向位置とを調節設定する撮影機構位置調節工程と、
を含むことを特徴とする角膜撮影方法。
【請求項10】
前記撮影位置が、前記被検眼の周方向に複数設定されており、前記固視標により前記被検眼の前記視軸の位置を固定保持した状態下で、該複数の撮影位置において、順次前記撮影機構の前記撮影中心軸が前記内皮法線演算手段で求めた法線方向に調節設定されて連続的に撮影される連続撮影工程を含む、請求項9に記載の角膜撮影方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検眼に対して照明光を照射して、被検眼の角膜からの反射光を受光することによって角膜内皮細胞像を撮像する角膜撮影装置および角膜撮影方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、眼疾患の有無判断や眼の術後経過の診断などに際して、角膜、特に角膜内皮の細胞状態を観察することが行われている。
【0003】
このような角膜内皮の細胞状態を観察するに際して、被検眼に対して非接触で角膜内皮細胞を撮像することの出来る角膜撮影装置が知られている。この角膜撮影装置は、照明光学系によりスリット状の照明光(スリット光束)を被検眼の角膜に斜めから照射して、角膜からの反射光を撮像光学系で受光して角膜内皮細胞を撮像するようになっている。
【0004】
ところで、角膜内皮の撮像に際しては、角膜の中央部分だけでなく角膜の周辺部分を含む広い範囲を撮像したい場合がある。このような要求に対応するため、特許第2580464号公報(特許文献1)には、被検者に正面から外れた斜め方向を固視させることにより、撮影用のスリット光束を角膜周辺部分に照射させてその反射光束を撮影光学系で撮像することにより、角膜の周辺部分の撮像を行う構造が提案されている。
【0005】
ところが、特許文献1に記載の角膜撮影装置では、角膜の周辺部分における角膜内皮の撮像を、角膜の中央部分と同様に角膜上皮(角膜外皮ともいう)による鏡面反射光を利用して撮像光学系XYアライメントを行っていることから、明瞭な角膜内皮像を得ることが出来ない場合があった。これは、解剖学的にも明らかなように、角膜内皮の曲率と角膜上皮の曲率は互いに異なっており、角膜の中央部分では角膜上皮による鏡面反射光を利用して角膜内皮のXYアライメントを行うことが出来るものの、周辺部分では同じ方向で角膜上皮による鏡面反射光を利用してXYアライメントを行うと角膜内皮の最適位置からずれてしまうことに起因する。
【0006】
すなわち、角膜中央部分を撮像するために被検者が正面を固視した状態では、図18(a)に示すように、角膜上皮反射されるXYアライメント光の光軸(●印)に対して内皮反射光の光軸(×印)が一致することから、XYアライメントを行うことによって、撮像領域を示す□印の中では、角膜内皮も角膜上皮も同一の光学中心軸を有することとなり、目的とする内皮撮像を精度良く行うことが可能となる。しかし、角膜周辺部分を撮像するために被検者が斜め方向を固視した状態では、図18(b)に示すように、角膜上皮反射されるXYアライメント光の光軸(●印)に対して内皮反射光の光軸(×印)がずれてしまうこととなり、XYアライメントを行っても、撮像領域を示す□印の中では、角膜内皮と角膜上皮の光学中心軸が異なることから、内皮撮像の精度が大幅に低下してしまうのである。
【0007】
要するに、角膜周辺部分で、角膜内皮を鮮明に撮像するには、図18(b)において、XYアライメントを行った中心点(●点)から、角膜内皮のずれ方向(×方向)に向けて、所定距離だけ、撮像領域(□印の領域)を移動設定してから内皮撮像することが必要となる。
【0008】
そのために、従来、角膜撮影装置を用いて角膜を広範囲に撮像するに際しては、その撮像によって鮮明な像が得られなかった場合に、XY方向で被検眼に対する撮像光学系の相対位置を適当な方向に検者がずらせて位置設定し、満足できる像が得られるまで撮影を繰り返していたのである。そのために、検者と被検者の負担が大きく、特に経験の乏しい検者では撮影に多くの時間を要することから、被検者に苦痛を強いるおそれもあった。
【0009】
そこで、このような問題に対処するために、特許文献2(特許第2812421号公報)や特許文献3(特許第3338529号公報)において、角膜上皮反射光によって得られるXYアライメント信号に基づいて被検眼に対する撮像光学系のXYアライメントを行うに際して、被検眼が固視する斜め方向の位置に対応してXYアライメントの補正量を予め設定しておき、選択した固視標に対応する補正量だけ、角膜上皮反射光によって得られるXYアライメント信号に基づいて決定されたXYアライメント位置を補正するようにした角膜撮影装置が、提案されている。ここで、予め設定されるXYアライメントの補正量は、例えば、図18(b)におけるずれ方向線:αの方向において、角膜内皮/上皮の曲率半径差の理論に基づいて、解剖学上のデータから特定することが可能であると考えられる。
【0010】
しかしながら、本発明者が検討したところ、このような先行する特許文献2,3に記載の技術に従うXYアライメントを採用しても、角膜を広範囲に亘って十分な精度で撮像することが出来ないケースが幾つも存在することが明らかとなった。その原因について本発明者が更なる検討を加えたところ、角膜内皮及び角膜上皮の曲率半径には個人差が存在しており、この個人差の程度が、特許文献2,3に記載の補正方法では、撮影精度に影響を及ぼす程に大きい場合があるということがわかった。特に、着目すべきところは、特に角膜内皮の撮像が必要とされる被検者は、一般の全ての人を対象とするべきでなく、眼疾患を持つ者や眼の手術後の経過観察が必要とされる者が多いという事実であり、そのような者においては、角膜内皮及び角膜上皮の曲率が大きくばらつくことが多いという点である。
【0011】
このような事実を考慮すると、確かに解剖学上の統計データからは角膜内上皮の曲率半径の個人差が撮影精度に問題とならない程の大きさであるとして予め設定した補正量を採用する、前述の特許文献2,3に記載の角膜撮影装置では、実際の現場での使用に際して、補正量が不適切となって、結局、検者が撮影位置を微調節することが必要となることが比較的に多くなるのであり、その意味において、これら先行の特許文献2,3に記載の角膜撮影装置は、半自動のアライメント機構を備えた撮影装置に止まると言わざるを得ないのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特許第2580464号公報
【特許文献2】特許第2812421号公報
【特許文献3】特許第3338529号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ここにおいて、本発明は上述の如き事情を背景として為されたものであって、その解決課題は、角膜内皮の撮像を行うに際して、検者および被検者の負担をより一層軽減して速やかな撮像を可能にすると共に、角膜内上皮の曲率半径の個人差がある場合でも、角膜内皮細胞像を中心部のみならず周辺部も含む広範囲において高精度に撮像することの出来る、新規な角膜撮影装置および角膜撮影方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
以下、前述の如き課題を解決するために為された本発明の態様を記載する。なお、以下に記載の各態様において採用される構成要素は、可能な限り任意の組み合わせで採用可能である。
【0015】
角膜撮影装置に関する本発明の第一の態様は、(A)被検眼の視軸を所定位置に保持する固視標を含む視軸保持機構と、(B)スリット光束を前記被検眼に対して斜めから照射する照明光源を備えた照明光学系と該スリット光束による該被検眼の角膜からの反射光束を受光して角膜内皮像を撮像する光電素子を有する角膜撮像光学系を含む撮影機構と、(C)前記撮影機構を前記被検眼への接近/離隔方向となるZ方向に移動させるZ方向駆動手段と、(D)前記撮影機構を前記Z方向に直交するX方向及びY方向に移動させるX方向駆動手段及びY方向駆動手段を含んで構成された角膜撮影装置において、(E)前記固視標により前記被検眼の前記視軸の位置を固定保持した状態下で、該被検眼の前記視軸に対する前記撮影機構の撮影中心軸の傾斜角度を変更する傾斜角度変更手段と、(F)前記被検眼の角膜内皮形状を求める内皮形状演算手段と、(G)前記内皮形状演算手段により求められた前記角膜内皮形状の任意の撮影位置における法線方向を求める内皮法線演算手段と、を備えており、前記撮影位置において、前記撮影機構の前記撮影中心軸が前記内皮法線演算手段で求めた法線方向となるように、前記傾斜角度変更手段による傾斜角度と、前記Z方向駆動手段によるZ方向位置及び前記X方向駆動手段によるX方向位置と、を調節設定するようになっていること、を特徴とする。
【0016】
本発明に従う構造とされた角膜撮影装置によれば、(F)内皮形状演算手段によって、被検眼の角膜内皮形状を求め、(G)内皮法線演算手段によって、角膜内皮に対する法線方向を求めるようにした。そして、(E)傾斜角度変更手段と、(C)Z方向駆動手段および(D)X方向駆動手段によって、撮影機構の撮影中心軸(即ち、照明光学系の光軸と角膜撮像光学系の光軸が成す角の2等分線)を、得られた角膜内皮に対する法線方向に合わせ込んで、角膜内皮を撮影するようにした。このように、本発明によれば、撮影中心軸を、角膜上皮ではなく、撮影対象である角膜内皮の法線方向に直接に合わせることによって、角膜内皮細胞像をより高精度に撮影することが可能となる。特に、角膜周辺のように、角膜上皮の曲率に対する角膜内皮の曲率のずれが大きくなる位置においても、本発明によれば、撮影機構の撮影中心軸を角膜内皮の法線方向に合わせることから、角膜周辺の内皮も鮮明に撮影することが可能となる。しかも、得られた角膜内皮の法線方向に対して、撮影機構の撮影中心軸を、(E)傾斜角度変更手段と、(C)Z方向駆動手段および(D)X方向駆動手段の機械的な移動により、角膜内皮の法線方向に確実且つ速やかに合わせ込むことができ、撮影時間の短縮化や被検者の負担軽減を図ることができる。
【0017】
また、撮影機構の撮影中心軸を、(E)傾斜角度変更手段による傾斜角度と、(C)Z方向駆動手段によるZ方向位置および(D)X方向駆動手段によるX方向位置とに分けて調節することにより、角膜内皮の任意位置における法線方向に合わせ込むことが出来る。従って、角膜内皮および角膜上皮の曲率半径のばらつきが解剖学上のデータよりも著しく大きい場合でも、撮影機構の位置変化量を小さく押えつつ、撮影機構の撮影中心軸を確実に角膜内皮の任意位置の法線方向に合わせ込んで当該部分の鮮明な画像を撮影することができる。その結果、広い範囲に亘って精度の良い撮像を行なうことが出来る。
【0018】
なお、(E)被検眼の視軸に対する撮影機構の撮影中心軸の傾斜角度を変更する傾斜角度変更手段は、視軸に対する撮影中心軸の傾斜角度を変更可能なものであれば何れでも良く、例えば、被検眼の周方向に撮影機構を揺動変位させる機構によって実現しても良いし、或いは、任意の鉛直軸周りに撮影機構の撮影中心軸を回転可能にする機構によって実現する等しても良い。
【0019】
また、(B)撮影機構をZ方向に移動させる(C)Z方向駆動手段と、撮影機構をX方向に移動させる(D)X方向駆動手段は、撮影機構を、前記固視標を含む(A)視軸保持機構等の他の機構と共に移動させるものでも良いし、(A)視軸保持機構等とは独立して、撮影機構のみをZ方向やX方向に移動させるものでも良い。
【0020】
角膜撮影装置に関する本発明の第二の態様は、前記第一の態様に記載のものにおいて、前記傾斜角度変更手段が、前記撮影機構を前記被検眼の周方向に揺動変位させる揺動機構を含んで構成されているものである。
【0021】
本態様によれば、揺動機構によって、撮影機構の撮影中心軸を、角膜内皮の曲率に比較的に近似した円弧状で傾斜変位させることが出来る。これにより、任意の鉛直軸周りに撮影機構を回転させる場合に比して、一層精密な傾斜角度の調節が可能となる。
【0022】
なお、好ましくは、揺動機構の揺動中心が、被検眼の角膜内皮の曲率中心やその近傍領域に設定される。これにより、撮影機構の位置変化量を小さく押えつつ、撮影機構の撮影中心軸を一層有利に角膜内皮の任意位置の法線方向に合わせ込むことができる。
【0023】
角膜撮影装置に関する本発明の第三の態様は、前記第一又は第二の態様に記載のものにおいて、前記撮影位置が、前記被検眼の周方向に複数設定されており、前記固視標により前記被検眼の前記視軸の位置を固定保持した状態下で、該複数の撮影位置において、順次前記撮影機構の前記撮影中心軸が前記内皮法線演算手段で求めた法線方向に調節設定されて連続的に撮影されるようになっているものである。
【0024】
本態様によれば、被検眼の周方向の複数箇所に設定された撮影位置において、順次に角膜内皮の法線方向に撮影中心軸を合わせ込んで角膜内皮細胞を連続撮影することが出来、広範囲に亘る角膜内皮画像を取得することが出来る。そして、本発明によれば、(E)傾斜角度変更手段と、(C)Z方向駆動手段および(D)X方向駆動手段によって、撮影機構を被検眼の周方向に移動させることで、被検眼の視軸を一定に保持したまま複数箇所の連続撮影を行うことが出来ると共に、角膜内皮の法線方向に撮影中心軸を合わせ込むことから、角膜内皮を広範囲に亘って鮮明に撮影することが出来る。
【0025】
角膜撮影装置に関する本発明の第四の態様は、前記第一〜第三の何れか1つの態様に記載のものにおいて、前記内皮形状演算手段において、前記被検眼の前記角膜の実測値を用いて前記角膜内皮の曲率を推定して前記角膜内皮形状を得ているものである。
【0026】
より好ましくは、角膜撮影装置に関する本発明の第五の態様として、前記第四の態様に記載のものにおいて、前記内皮形状演算手段において、前記被検眼の周方向に離隔する少なくとも3箇所における前記角膜の厚さの実測値を用いて前記角膜内皮の曲率の推定値が求められているものである。
【0027】
なお、角膜厚さの実測は、例えば、ラインセンサによる光量分布情報や、フォトダイオードによる角膜上皮検出から角膜内皮検出までの光学系の移動量等に基づき得ることが出来る。また、角膜内皮の曲率の推定値は、例えば、3箇所の実測値から、円の方程式:(x−a)2 +(y−b)2 =R2 による3元連立方程式を解くことにより算出することが出来る。これらの態様によれば、角膜厚さの実測値に基づいて角膜内皮の曲率を推定することから、実際の内皮形状に近い曲率を推定することが出来る。そして、角膜中心付近のように、比較的球面に近い部位の広範囲撮像であれば、推定曲率を角膜内皮の曲率としてそのまま用いて撮影することも可能であり、より速やかな撮像を行なうことも出来る。特に第五の態様によれば、3箇所以上の複数箇所の実測値に基づいて推定曲率を得ることから、一層正確に角膜内皮の曲率値を推定することが出来、各撮影位置における法線方向をより確実且つ速やかに求めることが出来る。
【0028】
角膜撮影装置に関する本発明の第六の態様は、前記第四又は第五の態様に記載のものにおいて、前記内皮形状演算手段において、前記角膜内皮の曲率の推定値に従い、前記角膜内皮上の複数の測定位置において、角膜からの前記反射光束に基づき内皮位置を実測すると共に、該複数の測定位置の実測値に基づき前記角膜内皮形状を得ているものである。
【0029】
本態様によれば、推定された角膜内皮の曲率に従い、複数箇所で内皮位置を実測して、角膜内皮形状を得ていることから、一層実際の形状に近い角膜内皮形状を得ることができる。これにより、各撮影位置における内皮の法線方向を、一層確実に実際の内皮形状に則したものとすることができる。なお、本態様においては、内皮位置の実測は、被検眼の周方向で適当な間隔を隔てて実施して、測定位置の間の内皮位置はラグランジュ補完やスプライン補完、或いは双曲線関数等から求めることが処理速度の面から好ましいが、補完法等を用いることなく、被検眼の周方向の多数箇所で内皮位置を実測して内皮形状を得るようにしても良い。
【0030】
角膜撮影装置に関する本発明の第七の態様は、前記第一〜第六の何れか1つの態様に記載のものにおいて、前記撮影機構を前記撮影中心軸方向に移動させる撮影方向駆動手段を含んで前記Z方向駆動手段および前記X方向駆動手段が構成されているものである。
【0031】
本態様によれば、撮影機構の合焦点(照明光学系の光軸と角膜撮像光学系の光軸の交点)を撮影中心軸上で移動させることが出来る。従って、撮影機構の合焦点を、撮影位置となる角膜内皮上に移動させるに際して、傾斜角度変更手段と、Z方向駆動手段又はX方向駆動手段を用いて撮影機構の撮影中心軸を角膜内皮の法線方向に合わせ込んだ後には、撮影方向駆動手段で撮影機構の合焦点を角膜内皮上に移動することによって、撮影機構を撮影位置に移動させることが出来る。このように、Z方向駆動手段とX方向駆動手段が撮影方向駆動手段を補助的に用いることによって、撮影機構のZ方向の移動とX方向の移動の微調節を同時に行うことが可能となり、撮影機構の移動を簡易且つ速やかに行うことが出来る。
【0032】
角膜撮影装置に関する本発明の第八の態様は、前記第一〜第七の何れか1つの態様に記載のものにおいて、前記視軸保持機構と、前記被検眼に対して前記固視標の光軸の周囲に複数の点状の光を照射するケラト光源を含んで、前記被検眼の水平面の角膜前面曲率を測定するケラトメータが構成されているものである。
【0033】
本態様によれば、被検眼の水平面での角膜前面曲率を測定することが出来る。これにより、測定された角膜前面曲率と、測定された角膜厚さの実測値に基づいて、角膜内皮位置をより精度良く推定することが出来る。また、本発明の角膜撮影装置を用いて角膜前面曲率が実測可能となることから、乱視の評価等に用いることも出来る。
【0034】
角膜撮影方法に関する本発明の第一の態様は、被検眼の角膜撮影方法であって、前記角膜撮影装置に関する本発明の第一〜第八の何れか1つの態様に記載の角膜撮影装置を用い、前記固視標により前記被検眼の前記視軸の位置を固定保持した状態下で、前記内皮形状演算手段により該被検眼の角膜内皮形状を求める内皮形状演算工程と、前記内皮法線演算手段により得られた前記角膜内皮形状の任意の撮影位置における法線方向を求める内皮法線演算工程と、前記撮影位置において、前記撮影機構の前記撮影中心軸が前記内皮法線演算手段で求めた法線方向となるように、前記傾斜角度変更手段による傾斜角度と、前記Z方向駆動手段によるZ方向位置及び前記X方向駆動手段によるX方向位置とを調節設定する撮影機構位置調節工程と、を含むことを特徴とする。
【0035】
本発明方法に従う角膜撮影方法によれば、内皮形状演算工程と内皮法線演算工程において、角膜内皮の法線方向を求めると共に、撮影機構位置調節工程において、撮影機構の撮影中心軸を得られた角膜内皮の法線方向に合わせ込むようにした。これにより、角膜内皮細胞像をより高精度に撮影することが出来る。特に、角膜内皮の法線方向に撮影中心軸を合わせ込むことから、角膜内皮の曲率が角膜上皮の曲率から大きく異なる場合でも、角膜内皮細胞を精度よく撮影することが可能であり、角膜周辺の内皮も鮮明に撮影することが出来る。
【0036】
角膜撮影方法に関する本発明の第二の態様は、前記第一の態様に記載のものにおいて、前記撮影位置が、前記被検眼の周方向に複数設定されており、前記固視標により前記被検眼の前記視軸の位置を固定保持した状態下で、該複数の撮影位置において、順次前記撮影機構の前記撮影中心軸が前記内皮法線演算手段で求めた法線方向に調節設定されて連続的に撮影される連続撮影工程を含む、ものである。
【0037】
本態様によれば、連続撮影工程において、被検眼の周方向の複数箇所で角膜内皮画像を得ることが出来る。そして、本発明によれば、撮影機構位置調節工程において、撮影機構を被検眼の周方向に移動させることで、被検眼の視軸を一定に保持したまま複数箇所の撮影を行うことが出来る。
【発明の効果】
【0038】
本発明に従う角膜撮影装置および角膜撮影方法によれば、撮影装置の撮影中心軸を角膜内皮の法線方向に合わせ込むことにより、角膜内皮細胞をより鮮明に撮影することが出来る。そして、撮影機構の撮影中心軸の視軸に対する傾斜角度を変更可能としたことにより、被検眼の視軸を固定した状態で複数箇所を撮影することも可能となり、被検者や検者の負担を軽減しつつ、広範囲に亘って鮮明な角膜内皮撮影像を得ることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】本発明の第一の実施形態としての角膜撮影装置を説明するための説明図。
図2】本発明の第一の実施形態としての装置光学系の上面を示す説明図。
図3】本発明の第一の実施形態としての装置光学系の側面を示す説明図。
図4】表示画面に表示されるアライメント輝点とケラト輝点を説明するための説明図。
図5図1に示した光学系に接続される制御回路等を説明するための説明図。
図6】本発明の第一の実施形態としての角膜撮影方法の、内皮形状決定工程を示すフローチャート。
図7】本発明の第一の実施形態としての角膜撮影方法の、撮影工程を示すフローチャート。
図8】表示画面に表示される被検眼画像を説明するための説明図。
図9図6に示した内皮形状決定工程の処理内容を説明するための説明図。
図10】角膜反射光の光量分布の具体例を例示するグラフ。
図11図7に示した撮影工程の処理内容を説明するための説明図。
図12図7に示した撮影工程で得られる内皮撮影像と広範囲内皮撮影像を例示する説明図。
図13】本発明の第二の実施形態としての装置光学系の上面を示す説明図。
図14図13に示した装置光学系の位置合わせ作動を説明するための説明図。
図15】所定の曲率半径を有する角膜内皮上の特定位置に位置合わせするための、撮影機構のX方向移動量とZ方向移動量の具体例を示すグラフ。
図16】本発明の第三の実施形態としての装置光学系の上面を示す説明図。
図17】傾斜角度変更手段の異なる態様を説明するための説明図。
図18】角膜撮影装置における課題を説明するための説明図。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0041】
先ず、図1に、本発明の第一の実施形態としての角膜撮影装置10を、筐体を取り外した状態で概略的に示す。角膜撮影装置10には、装置光学系12、制御装置14、操作スティック16等が設けられている。装置光学系12は、基台18上に配設されており、操作スティック16の操作や制御装置14からの制御命令に基づいて、基台18で直交3軸方向に移動可能とされている。また、角膜撮影装置10には保持台20が設けられている。保持台20には、顎台22と額当て24が設けられており、顎台22に被検者の顎を載せて、額当て24に被検者の額を押し当てることで、被検者の顔を装置光学系12側に向けた状態で固定するようになっている。更にまた、概略的に示すように、角膜撮影装置10には、例えば液晶モニタ等からなる表示画面25が設けられている。
【0042】
図2および図3に、装置光学系12を示す。装置光学系12は、被検眼Eの前眼部を観察する観察光学系26、被検眼Eの視軸を固定するための視軸保持機構としての固視標光学系28、装置光学系12を被検眼Eに位置決めするためのXYアライメント光学系30、被検眼Eの角膜内皮像を撮影するための撮影機構としてのスペキュラー光学系32とを備えている。なお、図3においては、後述する観察用光源44,44およびケラト光源57,57を省略して図示している。
【0043】
観察光学系26は、被検眼Eに近い位置から順に、ミラー34、ミラー36、ハーフミラー38、ハーフミラー40、観察用CCD42が設けられて構成されている。また、被検眼Eの前方には、複数(本実施形態においては、2つ)の観察用光源44,44が配設されている。観察用光源44,44は、赤外光束を発する例えば赤外LEDなどが用いられる。そして、観察用光源44,44から発せられて被検眼Eの前眼部で反射された反射光束が、ミラー34とミラー36で反射されて、観察用CCD42上で結像されるようになっている。このように、本実施形態の観察光学系26の光軸Oo は、被検眼Eからミラー34に至るまでの間は被検眼Eの正面視軸Oと一致されている一方、ミラー34とミラー36で反射されることにより、ミラー34から観察用CCD42に至るまでは被検眼Eの正面視軸:Oから外れて設定されている。
【0044】
固視標光学系28は、被検眼Eに近い位置から順に、ミラー34、ミラー36、ハーフミラー38、ハーフミラー46、固視標光源48が設けられて構成されている。固視標光源48は例えばLEDなどの可視光を発する光源であり、固視標光源48から発せられた光束が、ハーフミラー38、ミラー36、ミラー34で反射されて、被検眼Eに照射される。
【0045】
XYアライメント光学系30は、XYアライメント照明光学系50と、XYアライメント検出光学系52を含んで構成されている。XYアライメント照明光学系50は、被検眼Eに近い位置から順に、ミラー34、ミラー36、ハーフミラー38、ハーフミラー46、XYアライメント用光源54が設けられて構成されている。XYアライメント用光源54からはXYアライメント用の指標光としての赤外光が発せられるようになっており、かかる赤外光は図示しないピンホール板を通過してハーフミラー46で反射され、図示しない投影レンズによって平行光束とされた後に、ハーフミラー38、ミラー36、ミラー34で反射されて、被検眼Eの正面視となる、観察光学系26の光軸Oo 上で被検眼Eの角膜に対して投射されるようになっている。
【0046】
一方、XYアライメント検出光学系52は、被検眼Eに近い位置から順に、ミラー34、ミラー36、ハーフミラー40、位置検出可能なXYアライメントセンサ(プロファイルセンサ)56が設けられて構成されている。そして、XYアライメント用光源54から被検眼Eの角膜に投射されて、角膜で鏡面反射された光束が、そのままXYアライメント用光源54の照射光と同じ光軸Oo 上においてハーフミラー40で反射されて、XYアライメントセンサ56に導かれるようになっている。
【0047】
また、被検眼Eの前方には、2つのケラト光源57,57が、水平方向(X方向)でXYアライメント用光源54の光軸Oo を挟む両側に設けられている。これらケラト光源57からは赤外光が発せられるようになっており、かかる赤外光が図示しないピンホールおよび投影レンズを通過して平行光束とされて、被検眼Eの角膜に対して投射される。そして、XYアライメント用光源54の光とケラト光源57,57の光が角膜で反射されて、図4に示すように、観察用CCD42上で、アライメント輝点58およびケラト輝点59,59として結像されるようになっている。アライメント輝点58とケラト輝点59,59は、中央部分にアライメント輝点58が位置し、アライメント輝点58の左右両側に、ケラト輝点59,59が位置する。即ち、本実施形態の角膜撮影装置10には、固視標光学系28、XYアライメント照明光学系50、ケラト光源57,57を含んで構成されたケラトメータ60が内蔵されている。
【0048】
スペキュラー光学系32は、照明光学系62と、角膜撮像光学系64を含んで構成されている。照明光学系62は、被検眼Eに近い位置から順に投影レンズ66、コールドミラー68、スリット70、集光レンズ72、照明光源74が設けられて構成されている。照明光源74としては、可視光束を発する例えばLED等が用いられる。コールドミラー68は、赤外光を透過せしめる一方、可視光を反射するようにされている。そして、照明光源74から発せられた光束は、集光レンズ72およびスリット70を通してスリット光束とされて、コールドミラー68により反射された後に投影レンズ66を通して、被検眼Eの角膜に対して斜め方向から照射されるようになっている。
【0049】
角膜撮像光学系64は、被検眼Eに近い位置から順に対物レンズ76、コールドミラー78、光電素子としての撮影用CCD80が設けられて構成されている。そして、照明光源74から照射されて被検眼Eの角膜で反射されたスリット光束が、対物レンズ76を介してコールドミラー78で反射されて、撮影用CCD80上に結像されるようになっている。
【0050】
これら照明光学系62の光軸OL と、角膜撮像光学系64の光軸Op は、所定の角度:αをもって交差するように設定されている。そして、照明光学系62の光軸OL と角膜撮像光学系64の光軸Op の成す角:αの二等分線が、スペキュラー光学系32の撮影中心軸Os とされる。また、照明光学系62の光軸OL と角膜撮像光学系64の光軸Op の交点が、スペキュラー光学系32の合焦点:Pc とされる。
【0051】
さらに、スペキュラー光学系32には、光軸の一部が角膜撮像光学系64の光軸Op と一致したZアライメント照明光学系82と、光軸の一部が照明光学系62の光軸OL と一致したZアライメント検出光学系84が設けられている。Zアライメント照明光学系82は、被検眼Eに近い位置から順に対物レンズ76、コールドミラー78、Zアライメント用光源86が設けられて構成されている。Zアライメント用光源86は、例えば赤外LEDなどの赤外光源が好適に採用される。そして、Zアライメント用光源86から発せられた赤外光束が、角膜に対して斜めから照射されるようになっている。なお、Zアライメント用光源86は、例えばハロゲンランプや可視光LEDなどの可視光源と赤外フィルタを組み合わせることによって構成しても良い。但し、Zアライメント用光源86は、必ずしも赤外光源とされる必要は無く、ハロゲンランプや可視光LEDなどの可視光源を用いても良い。可視光源を用いる場合には、その照度は照明光源74の照度よりも小さくされることが好ましい。これにより、アライメント等、Zアライメント用光源86による光束を照射せしめる際の被検者の負担を軽減することが出来る。
【0052】
Zアライメント検出光学系84は、被検眼Eに近い位置から順に投影レンズ66、コールドミラー68、ラインセンサ88が設けられて構成されている。そして、Zアライメント用光源86から照射されて被検眼Eの角膜で反射された光束が、投影レンズ66、コールドミラー68を通過してラインセンサ88上に結像されるようになっている。
【0053】
さらに、図5に示すように、角膜撮影装置10には、装置光学系12を被検眼Eに対して接近乃至は離隔方向に移動せしめる駆動手段が設けられている。これらの駆動手段は例えばラック・ピニオン機構などによって構成されており、本実施形態においては、装置光学系12を、被検眼Eに対する接近/離隔方向に直交する水平方向に延びるX方向(図5における上下方向)に駆動せしめるX軸駆動機構90、鉛直上下方向に延びるY方向(図5における紙面と垂直の方向)に駆動せしめるY軸駆動機構92、被検眼Eに対する接近/離隔方向で水平方向に延びるZ方向(観察光学系26の光軸Oo に沿った方向、図5における左右方向)に駆動せしめるZ軸駆動機構94が設けられている。そして、本実施形態においては、X軸駆動機構90および後述する撮影軸駆動機構98を含んでX方向駆動手段が構成されている。また、Y軸駆動機構92を含んで、Y方向駆動手段が構成されている。更に、Z軸駆動機構94および後述する撮影軸駆動機構98を含んでZ方向駆動手段が構成されている。
【0054】
更にまた、角膜撮影装置10には、装置光学系12のうち、特にスペキュラー光学系32のみを揺動変位させる揺動機構96と、スペキュラー光学系32のみを撮影中心軸Os 上で駆動せしめる撮影方向駆動手段としての撮影軸駆動機構98が設けられている。図2および図3に概略的に示したように、スペキュラー光学系32において、部分的に共通の光軸を有する照明光学系62とZアライメント検出光学系84は、支持台100a上に設けられている一方、同じく部分的に共通の光軸を有する角膜撮像光学系64とZアライメント照明光学系82は、支持台100b上に設けられている。これら支持台100a,100bは、長手の板形状とされており、それぞれの長手方向を照明光学系62の光軸OL 、角膜撮像光学系64の光軸Op に向けたV字形状に配設されている。
【0055】
支持台100a,100bは、円弧状レール102上に配設されて、円弧状レール102と一体的に移動可能とされている。円弧状レール102は、被検眼E側に曲率中心Cを有する円弧形状を有している。円弧状レール102にはラック104が形成されており、かかるラック104が、電動モータ106の駆動軸に設けられたピニオン108と噛合されることでラック・ピニオン機構が構成されている。これにより、電動モータ106が駆動されると、円弧状レール102が中心Cを揺動中心として揺動されて、固視標光学系28等は移動させることなく、スペキュラー光学系32のみが、揺動中心C回りで被検眼Eの周方向に揺動される。その結果、固視標光学系28で被検眼Eの視軸を正面に固定した状態で、スペキュラー光学系32の撮影中心軸Os が、固視標光学系28の光軸Oo に一致する被検眼Eの正面視軸Oに対して傾斜されて、ピニオン108の回転量を調節することによって、撮影中心軸Os の視軸Oに対する傾斜角度を変更することが出来る。このように、支持台100a,100b、円弧状レール102、および電動モータ106とピニオン108によって揺動機構96が構成されており、該揺動機構96によって、傾斜角度変更手段が構成されている。
【0056】
なお、スペキュラー光学系32の揺動中心Cとなる円弧状レール102の曲率中心Cは、好ましくは被検眼Eの角膜上皮や角膜内皮の曲率中心やその近傍領域に設定される。また、円弧状レール102の曲率は、好ましくは、被検眼Eの角膜上皮や角膜内皮の曲率に近い値に設定される。更にまた、円弧状レール102の中心角βの大きさは、スペキュラー光学系32の撮影中心軸Os が、角膜内皮における撮影対象領域の全体を移動出来る大きさに設定される。
【0057】
さらに、支持台100a,100bにおいて、被検眼E側の互いの対向面には、撮影中心軸Os と同方向に延びるラック110a,110bが形成されている。そして、円弧状レール102上には、一方が電動モータ112の駆動軸に設けられて互いに噛合された一対のピニオン114a,114bが設けられており、これらピニオン114a,114bに、支持台100a,100bのラック110a,110bが噛合されることで、ラック・ピニオン機構が構成されている。これにより、電動モータ112が駆動されることで、支持台100a,100bが、円弧状レール102上で、撮影中心軸Os 方向で前後方向に移動可能とされている。その結果、支持台100a,100b上に設けられた照明光学系62と角膜撮像光学系64が撮影中心軸Os 方向に移動されて、照明光学系62の光軸OL と角膜撮像光学系64の光軸OP との交点となる合焦点:Pc の位置を、撮影中心軸Os 上で被検眼Eに対する接近および離隔方向に移動させることが出来る。このように、支持台100a,100b、電動モータ112とピニオン114a,114bによって、撮影軸駆動機構98が構成されている。
【0058】
なお、図3から明らかなように、固視標光学系28を構成するミラー34とミラー36は、ミラー34が支持台100a,100bの上方に配設される一方、ミラー36が支持台100a,100bの下方に配設されている。これにより、固視標光学系28の光軸Oo は、ミラー34とミラー36によって、支持台100a,100bの下方に反射されるようになっている。その結果、固視標光学系28や、観察光学系26、XYアライメント光学系30等を構成するハーフミラー38,40や固視標光源48、観察用CCD42等の各部品が支持台100a,100bの下方に配設されて、支持台100a,100bの揺動に干渉しないようになっている。このように、ミラー34とミラー36によって、光軸高さ変更手段が構成されている。
【0059】
また、角膜撮影装置10の制御装置14(図1参照)は、例えばCPUやROM,RAMを備えたプリント配線板等を含んで構成されている。制御装置14内には、装置光学系12による角膜像の撮像の作動制御を行う撮像制御手段としての撮像制御回路116が設けられている。そして、X軸駆動機構90、Y軸駆動機構92、Z軸駆動機構94、揺動機構96、撮影軸駆動機構98は、それぞれ、撮像制御回路116に接続されて、撮像制御回路116からの駆動信号に基づいて駆動せしめられるようにされている。また、XYアライメントセンサ56は、XYアライメント検出回路118に接続されており、かかるXYアライメント検出回路118は、撮像制御回路116に接続されている。また、ラインセンサ88は、Zアライメント検出回路120に接続されており、かかるZアライメント検出回路120は、撮像制御回路116に接続されている。これにより、XYアライメントセンサ56およびラインセンサ88の検出情報が、撮像制御回路116に入力されるようになっている。なお、図示は省略するが、撮像制御回路116は、各照明光源44,74,86,48,54,57にも接続されており、これらの発光を制御出来るようにされている。
【0060】
次に、このような構造とされた角膜撮影装置10において、撮像制御回路116が実行する、角膜撮影方法に関する本発明の一実施形態としての角膜内皮の撮像手順の概略を図6および図7に示し、以降、順に説明する。角膜内皮の撮像手順は、図6に示す内皮形状決定工程と、図7に示す、撮影工程に大別される。
【0061】
図6に示す内皮形状決定工程では、先ず、S1において、被検眼Eに対して、装置光学系12の位置合わせ(XYアライメントおよびZアライメント)を行う。XYアライメント時には、固視標光源48から照射された固視標光が被検眼Eに導かれる。そして、被検者にかかる固視標光を固視させることによって、被検眼Eの視軸方向を、観察光学系26の光軸Oo の方向と一致させた正面視状態に保持することが出来る。かかる状態下で、観察用光源44、44から照射されて、被検眼Eの前眼部で反射された光束が観察用CCD42上に導かれる。これにより、図8に示すように、表示画面25上に、被検眼Eの前眼部が表示される。
【0062】
さらに、表示画面25上には、例えばスーパーインポーズ信号などによって生成された、矩形枠形状のアライメントパターン122が、被検眼Eに重ねて表示される。それと共に、XYアライメント用光源54から被検眼Eに向けて照射された光束が、被検眼Eの前眼部で反射されて、観察用CCD42に導かれることによって、表示画面25に、点状のアライメント輝点58として表示されるようになっている。そして、操作者は操作スティック16を操作することによって、装置光学系12を駆動せしめて、アライメント輝点58がアライメントパターン122の枠内に入るように、装置光学系12の位置を調節する。
【0063】
また、XYアライメント用光源54から照射されて、被検眼Eの前眼部(角膜上皮)で反射された光束の一部は、ハーフミラー40で反射されて、XYアライメントセンサ56に導かれるようになっている。なお、XYアライメント用光源54からは被検者に認識されない赤外光束が照射されることによって、被検者の負担が軽減されている。ここにおいて、XYアライメントセンサ56は、アライメント輝点58がアライメントパターン122の枠内に入ると、アライメント輝点58のX方向の位置とY方向の位置を検出することが出来るようにされている。かかるX方向位置とY方向位置は、XYアライメント検出回路118に入力される。XYアライメント検出回路118は、X方向の位置情報に基づいて観察光学系26の光軸Oo が被検眼Eの視軸に近づくようにX軸駆動機構90を駆動すると共に、Y方向の位置情報に基づいて観察光学系26の光軸Oo が被検眼Eの視軸に近づくようにY軸駆動機構92を駆動せしめる。これにより、装置光学系12の被検眼Eに対するXY方向の位置合わせが行われる。
【0064】
特に本実施形態においては、XYアライメント用光源54と観察用光源44,44を短時間で交互に点滅せしめると共に、観察用光源44が消灯されてアライメント用光源54が点灯されるタイミングに合わせて、XYアライメントセンサ56による検出が行われるようになっている。これにより、XYアライメントに際して観察用光源44,44の赤外光束が影響を与えることの無いようにされている。なお、XYアライメント用光源54と観察用光源44,44の点滅は観察用CCD42における受光信号への変換速度よりも高速に行われることから、観察用CCD42の受光信号が出力される表示画面25には、両光源54,44が点滅して認識されることはなく、恰も両光源54,44が連続して点灯しているように認識される。
【0065】
また、Zアライメントは、Z軸駆動機構94を駆動せしめて、装置光学系12を、被検眼Eに対して接近する方向に所定距離だけ前進作動せしめることによって、Zアライメント用光源86から照射されて被検眼Eの角膜で反射された光束がラインセンサ88で受光可能で、ケラト光源57,57から照射されて被検眼Eの角膜で反射された光束が、観察用CCD42で撮影可能なように装置光学系12のZ方向位置を調節する。
【0066】
次に、S2において、ケラトメータ60を用いて、被検眼Eの水平面での角膜上皮の曲率を実測する。この角膜上皮の曲率の実測方法は、例えば特開2007−215956号公報等に記載の周知技術が採用可能であることから、概略を説明するに留める。先ず、XYアライメント用光源54を点灯した状態で、2つのケラト光源57,57を点灯する。そして、ケラト光源57,57から被検眼Eに向けて照射された光束が、被検眼Eの角膜で反射されて、観察用CCD42に導かれることにより、図4に示したように、表示画面25に、アライメント輝点58の左右両側に、2つのケラト輝点59,59が表示される。これらケラト輝点59,59の座標値から近似楕円の形状、即ち、角膜形状の楕円近似を特定して、被検眼Eの水平面での角膜上皮の曲率半径:Rを求める。これにより、図9(a)に示すように、角膜上皮の形状が求められる。
【0067】
そして、S3において、S2で得られた角膜上皮形状に基づいて、揺動機構96を駆動せしめて、図9(a)に示すように、スペキュラー光学系32を、撮像中心軸Os が角膜上皮の法線方向:lo と一致する位置に移動する。次に、Zアライメント用光源86を発光せしめて、Zアライメント用光源86から照射された赤外光束を、被検眼Eの角膜に対して斜め方向から照射すると共に、角膜から反射された光束を、ラインセンサ88によって受光する。特に本実施形態においては、Zアライメント用光源86から照射される光束が赤外光束とされていることから、被検者の負担が軽減されている。
【0068】
これらの反射光束は、ラインセンサ88に検出されて、ラインセンサ88には、図10のような光量分布が検出される。図10において、光量の最も多い第一ピーク部128は、角膜上皮からの反射光を示す。次に光量の多い第二ピーク部130は、角膜内皮からの反射光を示す。これにより、図9(a)に示すように、角膜内皮の位置:Pt1が実測される。そして、Z軸駆動機構94および揺動機構96を駆動せしめて、被検眼Eの視軸は固定した状態でスペキュラー光学系32のみを被検眼Eの周方向に回動させることにより、このような角膜内皮の位置の実測を、角膜の周方向の3箇所以上(本例においては、3箇所)で実施して、角膜内皮の暫定実測位置Pt1〜Pt3を求める。
【0069】
次に、S4において、S3で得られた角膜内皮の暫定実測位置Pt1〜Pt3を用いて、円の方程式(x−a)2 +(y−b)2 =r2 による3元連立方程式を解くことにより、図9(a)に示す、暫定的な角膜内皮形状である暫定内皮形状の曲率半径:rt を求める。
【0070】
続いて、S5において、図9(b)に示すように、S4で得られた暫定内皮形状の曲率半径:rt に基づいて、暫定内皮上の周方向で、所定間隔の複数(本例においては、5点)の測定点:Pm1〜Pm5図9(b)の○印)を設定し、これら測定点:Pm1〜Pm5のそれぞれについて、Z軸駆動機構94および揺動機構96を駆動せしめて、スペキュラー光学系32を、撮像中心軸Os が測定点:Pm1〜Pm5における暫定内皮の法線方向:lt と一致する位置に移動する。そして、S3と同様に、Zアライメント用光源86から照射されて角膜で反射された赤外光束をラインセンサ88で受光して、ラインセンサ88の光量分布から、測定点:Pm1〜Pm5における暫定内皮の法線方向:lt での角膜内皮の実測位置:P1 〜P5 図9(b)中の●印)を求める。
【0071】
次に、S6において、全ての測定点:Pm1〜Pm5において、ラインセンサ88の光量分布から角膜内皮の実測位置:P1 〜P5 が求められたか否かを判定し、測定点:Pm1〜Pm5の何れかにおいて、角膜内皮の実測位置:P1 〜P5 が実測できていない場合(S6=No)には、図9(b)に実測位置:P2 が実測できていない場合を例に示すように、S7において、実測できた角膜内皮の実測位置:P1 ,P3 ,P4 ,P5 に基づいて、ラグランジュ補完やスプライン補完等の補完法により、実測できていない測定点:Pm2の位置における角膜内皮の暫定形状(傾斜と位置):rt ’(図9(b)に実線で示す)を再計算する。そして、S8において、得られた暫定内皮形状:rt ’から、角膜内皮位置を実測できていない測定点:Pm2における暫定内皮形状:rt ’に対する法線方向:lt ’を再計算して、Z軸駆動機構94および揺動機構96を駆動せしめて、スペキュラー光学系32の撮像中心軸Os を、再計算した法線方向:lt ’に合わせて、ラインセンサ88によって、測定点:Pm2における角膜内皮の法線方向:lt ’上での角膜内皮の実測位置:P2 を再実測する。
【0072】
そして、全ての測定点:Pm1〜Pm5で角膜内皮の実測位置:P1 〜P5 が得られた場合(S6=Yes又はS9=Yes)には、S10において、図9(c)に示すように、得られた角膜内皮の実測位置:P1 〜P5 から、例えばラグランジュ補完やスプライン補完等の補完法や双曲線関数を用いて、実測位置:P1 〜P5 の間の角膜内皮の形状:r(図9(c)に実線で示す)を演算して決定する。このようにして、内皮形状決定工程が完了する。以上のように、本実施形態においては、ラインセンサ88、制御装置14を含んで内皮形状演算手段が構成されており、S2〜S10を含んで、内皮形状演算工程が構成されている。
【0073】
続いて、図7に示す、撮影工程を実施する。先ず、S20において、図11(a)に示すように、S10で得られた角膜内皮形状から、被検眼Eの周方向で角膜内皮上の複数n(本例では、n=6)の撮影点:Ps1〜Ps6を決定する。なお、後述するように、各撮影点:Ps1〜Ps6のそれぞれにおける内皮撮影像を連結して広範囲内皮撮影像(広範囲スペキュラー)を生成可能とするために、撮影点:Ps1〜Ps6の隣接する2点は、1枚の内皮撮影像の撮影範囲に入る距離に設定されていることが好ましい。
【0074】
次に、撮影点:Ps1〜Ps6のそれぞれについて、S21とS22の処理を実施する。図11(a)に示すように、撮影点:Ps1を例に説明すると、先ず、S21において、S10で得られた内皮形状:rに基づいて、撮影点:Ps1における角膜内皮に対する法線:Lを算出する。そして、被検眼Eの正面視軸:Oに対する法線:Lの傾斜角度であるあおり角度:θと、撮影点:Ps1のX方向およびZ方向位置を求める。このように、本実施形態においては、制御装置14を含んで内皮法線演算手段が構成されており、S21を含んで、内皮法線演算工程が構成されている。
【0075】
そして、S22において、図11(b)に示すように、スペキュラー光学系32を、撮影点:Ps1の撮影位置に位置合わせする。なお、撮影点:Ps1の撮影位置とは、スペキュラー光学系32が、その撮影中心軸:Os が撮影点:Ps1における角膜内皮に対する法線:Lに合わせ込まれる(一致される)と共に、合焦点:Pc が撮影点:Ps1に位置された位置である。
【0076】
本実施形態においては、先ず、(1)揺動機構96を駆動して、固視標光学系28や観察光学系26等は固定して、被検眼Eの視軸は固視標光学系28で正面に固定した状態で、スペキュラー光学系32の撮影中心軸:Os を揺動中心:C回りで回動させることにより、撮影中心軸:Os の正面視軸:Oに対する傾斜角度を、S21で求めたあおり角度:θに設定して、法線:Lの方向と一致させる(撮影中心軸:Os を法線Lと平行にする)。次に、(2)Z軸駆動機構94を駆動して、撮影中心軸:Os を、法線:Lに合わせ込む(撮影中心軸:Os を法線:Lと一致させる)。なお、この撮影中心軸:Os の法線:Lへの合わせ込みは、X軸駆動機構90を駆動して、撮影中心軸:Os をX方向に移動させて行っても良い。そして、(3)撮影軸駆動機構98を駆動して、スペキュラー光学系32の合焦点:Pc が撮影点:Ps1に位置するように、スペキュラー光学系32を撮影中心軸:Os 方向で、X方向にdx 、Z方向にdz だけ移動させて、合焦点:Pc を撮影点:Ps1に位置させる。このように、本実施形態においては、撮影軸駆動機構98を駆動させて、スペキュラー光学系32を撮影中心軸:Os 上で移動させることにより、X方向とZ方向に同時に移動させることが可能とされており、撮影軸駆動機構98とX軸駆動機構90を含んで、スペキュラー光学系32をX方向に移動させるX方向駆動手段が構成されていると共に、撮影軸駆動機構98とZ軸駆動機構94を含んで、スペキュラー光学系32をZ方向に移動させるZ方向駆動手段が構成されている。要するに、撮影軸駆動機構98は、スペキュラー光学系32のX方向の駆動とZ方向の駆動を同時に行うことが出来るものであり、撮影中心軸:Os を法線:Lに合わせ込んだ後は、前述のように、撮影軸駆動機構98を用いてスペキュラー光学系32を撮影中心軸:Os 方向に駆動させることによってX方向にdx とZ方向にdz に同時に駆動させても良いし、X軸駆動機構90を用いてX方向にdx だけ駆動した後にZ軸駆動機構94を用いてZ方向にdz だけ駆動しても良いのであって、これら撮影軸駆動機構98、X軸駆動機構90、Z軸駆動機構94を任意に組み合わせて、スペキュラー光学系32のX方向位置およびZ方向位置を調節し得るのである。なお、このようなスペキュラー光学系32の撮影位置への移動は、必ずしも上記順序で行われる必要は無く、最終的にスペキュラー光学系32が撮影位置に位置すれば良いのであって、異なる順序で行なわれても良いし、各機構96,94(90),98の駆動量が既知であることから、上記(1),(2),(3)を同時に行うことも可能である。このように、本実施形態においては、S22を含んで、撮影機構位置調節工程が構成されている。
【0077】
そして、照明光源74を発光せしめて、照明光源74から照射された光束を被検眼Eの角膜内皮に対して斜め方向から照射すると共に、角膜内皮から反射された光束を、撮影用CCD80で受光することによって、撮影点:Ps1における角膜内皮撮影像を得る。
【0078】
続いて、S23において、全ての撮影点:Ps1〜Ps6で撮影が完了するまで、上述の如きS21〜S22を、各撮影点:Ps1〜Ps6について連続して実施する。このように、S21〜S23を含んで、連続撮影工程が構成されている。なお、各撮影点:Ps1〜Ps6を連続して撮影するに際して、スペキュラー光学系32の撮影中心軸:Os の法線:Lへの合わせ込み(図11(b)の(2)参照)を、Z軸駆動機構94を駆動して装置光学系12をZ方向に移動させて行なうことで、固視標光学系28をXY方向で被検眼Eに対して固定して、被検眼Eの視軸を固定した状態で、各撮影点:Ps1〜Ps6の撮影を行うことが出来る。これにより、図12に示すように、各撮影点:Ps1〜Ps6における角膜内皮撮影像132a〜132fが得られる。そして、全ての撮影点:Ps1〜Ps6で撮影が完了した場合には、S24において、各撮影点:Ps1〜Ps6で得られた角膜内皮撮影像132a〜132fを画像処理して連結することにより、広範囲内皮撮影像(広範囲スペキュラー)134を得ることが出来る。なお、角膜内皮撮影像132a〜132fの連結方法としては各種の方法が適宜に採用可能であって、例えば、各内皮撮影像132a〜132fの端縁を単純に連結しても良いし、各内皮撮影像132a〜132fの端部同士で最も相関の高い部位を角膜内皮の同一箇所と判断して、当該部位で重ね合わせて連結する等しても良い。また、本実施形態においては、角膜内皮の略全体に亘る広範囲に撮影点:Ps1〜Ps6を設定して、角膜内皮の略全体に亘る広範囲内皮撮影像134を取得しているが、必ずしも角膜内皮の略全体を撮影する必要は無く、例えば角膜内皮の周方向で1〜2mm程度の範囲に限定して連続撮影する等しても良い。このようにすれば、撮影完了までの時間を短縮することが出来る。以上のようにして、撮影工程が完了する。
【0079】
本実施形態に従う角膜撮影装置10および角膜撮影方法によれば、S21において角膜内皮に対する法線:Lを求めて、揺動機構96とZ軸駆動機構94(又はX軸駆動機構90)、および撮影軸駆動機構98でスペキュラー光学系32の撮影中心軸:Os を、かかる法線:Lに合わせ込んで角膜内皮を撮影するようにした。これにより、角膜内皮細胞像をより精度良く撮影することが出来る。そして、角膜内皮形状に基づいてスペキュラー光学系32を位置合わせすることから、角膜周辺や眼疾患の患者の眼のように、角膜上皮と角膜内皮の曲率の差が大きい場合でも、鮮明な角膜内皮細胞像を得ることが出来る。
【0080】
特に、内皮形状を算出するに際して、ラインセンサ88を用いて実測した内皮位置:P1 〜P5 に基づいて、内皮形状を算出している。これにより、より実際に近い内皮形状を得ることが出来る。その結果、スペキュラー光学系32を角膜内皮に精度良く位置合わせすることが出来て、鮮明な角膜内皮細胞像を得ることが出来る。
【0081】
また、X軸駆動機構90およびZ軸駆動機構94と、揺動機構96とを設けて、スペキュラー光学系32のX方向位置およびZ方向位置と、撮影中心軸:Os の被検眼Eの正面視軸:Oに対する傾斜角度とを分けて調節することにより、スペキュラー光学系32の撮影中心軸:Os を、角膜内皮の任意位置における法線:Lに合わせ込むことが出来る。これにより、角膜上皮の曲率と角膜内皮の曲率のばらつきが大きい場合でも、撮影中心軸:Os を角膜内皮の法線方向に確実に合わせ込むことが出来る。
【0082】
特に、揺動機構96によって、固視標光学系28等は動かすことなく、スペキュラー光学系32のみを揺動変位させることにより、被検者は視軸を動かさずに一定位置を固視した状態で角膜内皮の複数箇所を撮影することが出来て、広範囲内皮撮影像134を得ることが出来る。更に、スペキュラー光学系32を撮影中心軸:Os の方向で移動させる撮影軸駆動機構98を設けたことによって、簡易な制御でスペキュラー光学系32を撮影位置に位置合わせすることが出来ると共に、X方向の移動とZ方向の移動を同時に行なうことが出来て、速やかな位置合わせを行うことが出来る。
【0083】
次に、図13に、本発明の第二の実施形態としての角膜撮影装置140を示す。なお、以下の説明において、前記第一の実施形態と同様の構造とされた部材には、図中に前記第一の実施形態と同一の符号を付することにより、その説明を省略する。
【0084】
本実施形態における角膜撮影装置140は、円弧状レール142に、スペキュラー光学系32が固定的に設けられたものである。即ち、本実施形態における角膜撮影装置140は、前記第一の実施形態の角膜撮影装置10に比して、図5に示した撮影軸駆動機構98を有さないものである。従って、スペキュラー光学系32は、X軸駆動機構90によるX方向の移動、Y軸駆動機構92によるY方向の移動、Z軸駆動機構94によるZ方向の移動と、揺動機構96による揺動中心軸:C回りでの揺動が可能とされている。
【0085】
このような角膜撮影装置140は、図6および図7に示した、前記第一の実施形態と同様の角膜撮影方法のうち、S22に示した、スペキュラー光学系32の撮影位置への移動方法の他は前記第一の実施形態と同様の構成が採用されることから、以下、S22に対応する処理手順のみ説明する。
【0086】
図14に示すように、スペキュラー光学系32が揺動機構96で揺動変位された際に、合焦点:Pc の動く軌跡の曲率半径:r1は、角膜内皮の曲率半径:r2と完全には一致しない。そこで、合焦点:Pc を撮影位置:Ps に移動させるために、前準備として、X軸駆動機構90とZ軸駆動機構94を駆動せしめて、装置光学系12の全体をX方向とZ方向に移動させることにより、スペキュラー光学系32の撮影中心軸:Os を、被検眼Eの正面視軸:Oに一致させる。次に、揺動機構96を駆動せしめることにより、撮影中心軸:Os の正面視軸:Oに対する傾斜角度を、S21で得られたあおり角度:−θに設定する。これにより、スペキュラー光学系32の合焦点:Pc が、図14中のPa に位置される。
【0087】
そして、合焦点:Pc を位置Pa から撮影点:Ps に移動させるために、X軸駆動機構90とZ軸駆動機構94を駆動せしめて、X方向に下記dx 、Z方向に下記dz だけ、装置光学系12を移動させる。
x =(r1−r2)*sinθ
z =(r1−r2)−((r1−r2)*cosθ)
以上により、スペキュラー光学系32を、撮影点:Ps に位置させることが出来る。
【0088】
なお、上記X方向の移動量:dx およびZ方向の移動量:dz は、都度計算により算出しても良いが、図15に示すように、撮影点:Ps の角膜内皮:r2上での位置(角膜頂点を0として、角膜内皮:r2の曲率中心回りの角度位置であって、図14に示す−θ、θ(rad))と、当該撮影点:Ps に移動させるために必要なX方向の移動量:dx およびZ方向の移動量:dz との関係を、予めデータテーブルとして制御装置14に記憶しておいて、撮影点:Ps の位置(rad)から必要なX方向の移動量:dx とZ方向の移動量:dz を求めるようにしても良い。なお、図15は、合焦点:Pc の動く軌跡の曲率半径:r1=7.5mm、角膜内皮の曲率半径:r2=6.5mm、6.75mm、7.0mmである場合に必要とされるX方向の移動量とZ方向の移動量を示している。
【0089】
本実施形態によれば、計算結果に基づいてスペキュラー光学系32を移動せしめることから、例えば双曲線関数等で補完した様々な角膜内皮形状に対して、撮影中心軸:Os を角膜内皮の法線方向に精度良く位置合わせすることが出来る。また、前記第一の実施形態の如き、スペキュラー光学系32を撮影中心軸:Os 上で移動させる撮影軸駆動機構98を要しないことから、簡易な構成で実現することが出来る。
【0090】
次に、図16に、本発明の第三の実施形態としての角膜撮影装置150を示す。角膜撮影装置150は、前記第二の実施形態における角膜撮影装置140と同様に、円弧状レール152にスペキュラー光学系32が固定的に設けられたものである。本実施形態の円弧状レール152は略台形の平板形状とされており、台形の下底にあたる端縁部に、円弧形状に延びるラック104が形成されて、電動モータ106のピニオン108と噛合されている。そして、台形の上底にあたる、ラック104と反対側の端縁部に、筒状の軸部154が設けられており、該軸部154に、角膜撮影装置150内で回転可能に突設された回動軸155が挿通されることにより、軸部154回りで回動可能とされている。なお、このような角膜撮影装置150は、前記第二の実施形態としての角膜撮影装置140と同様の角膜撮影方法に従い、内皮撮影像および広範囲内皮撮影像を得ることが出来る。本実施形態によれば、円弧状レール152が所定面積に亘って広がる板形状とされていることから、スペキュラー光学系32を構成する投影レンズ66や対物レンズ76等の光学部品を安定的に支持することが出来て、スペキュラー光学系32の揺動を安定的に行うことが出来る。
【0091】
以上、本発明の各実施形態について詳述してきたが、かかる実施形態における具体的な記載によって、本発明は、何等限定されるものでなく、当業者の知識に基づいて種々なる変更、修正、改良等を加えた態様で実施可能であり、また、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることは、言うまでもない。
【0092】
例えば、撮影機構の撮影中心軸の、被検眼Eの正面視軸に対する傾斜角度を変更する傾斜角度変更手段は、前記実施形態のような、円弧状レール102,142,152のラック104とピニオン108による、ラック・ピニオン機構に限定されない。図17にモデル的に示すように、例えば、撮影機構としてのスペキュラー光学系32を任意の位置で鉛直軸:O(図17の紙面に垂直に延びる軸)回りに回転可能とする回転機構160によって実現することも出来る。このような構造において、スペキュラー光学系32を、角膜内皮上の撮影点:Ps に位置合わせする場合には、回転機構160によって、スペキュラー光学系32を鉛直軸:O回りで回転させて、撮影中心軸:Os を撮影点:Ps における角膜内皮に対する法線:Lと平行にした後に、X軸駆動機構90とZ軸駆動機構94を駆動せしめて、X方向にdx 、Z方向にdz だけ移動させることによって、撮影中心軸:Os を角膜内皮に対する法線方向に設定して、スペキュラー光学系32を撮影点:Ps に位置合わせすることが出来る。
【0093】
また、前記第一の実施形態では、角膜内皮の6箇所を連続的に撮影する態様を例示したが、本発明の角膜撮影装置は、角膜内皮の任意の1箇所のみを撮影するものでも良い。更に、角膜内皮を複数箇所で連続的に撮影する場合には、少なくとも2箇所で撮影するものであれば良く、広範囲内皮撮影像(前記図12における符号134)としては、少なくとも2枚の内皮撮影像(同図における符号132)が組み合わされたものであればよい。更にまた、前述したように、角膜内皮の周方向で撮影したい部位を限定して、角膜内皮の周方向の特定部分のみを連続撮影することも勿論可能であって、撮影したい部分のみに関して角膜内皮形状を演算して連続撮影しても良い。具体的には、図9(a)に示した角膜内皮の暫定実測位置Pt1〜Pt3の位置を、角膜内皮の周方向で撮影したい部分により特定して設定しても良く、このようにすれば、暫定的な角膜内皮の曲率半径:rt を、撮影したい部分に限定してより精度良く求めることが出来る。また、図9(b)に示した測定点:Pm1〜Pm5の数を少なくしたり、測定点:Pm1〜Pm5の位置を撮影したい部分により特定して設定する等して、角膜内皮の実測位置:P1 〜P5 を撮影したい部分に限定することにより、撮影したい部分に関してのみ角膜内皮形状を演算して、角膜内皮を周方向の特定範囲に限定して連続撮影する等しても良い。このようにすれば、撮影完了までの時間をより短くすることが出来る。また、前記実施形態では、被検眼Eの視軸を正面に固定した状態で、角膜周辺の内皮を撮影するようにされていたが、例えば、被検眼Eの視軸を正面から外れた位置に保持させる固視標光源を設けて、被検眼Eを横向きに保持して周辺部分の角膜内皮を撮影するようにしても良い。
【0094】
更にまた、角膜内皮の位置の実測(図6のS5および図9参照)は、必ずしもラインセンサを用いて行う必要は無く、例えば、フォトダイオード等を用いて、撮影装置を前進させつつ被検眼からの反射光束の光量を測定して、角膜上皮を検出してから角膜内皮を検出するまでの撮影装置の移動量から角膜内皮の位置を決定しても良いし、或いは、本出願人が先に出願した、特開2008−54964号公報、特開2008−246071号公報に記載のように、撮影装置を撮影中心軸上で変位させつつ角膜内皮を複数箇所で連続撮影して、鮮明な内皮撮像が得られた時点での撮影装置の位置から角膜内皮の位置を決定する等しても良い。
【0095】
また、前記実施形態における装置光学系12はあくまでも例示であって、各光学系を構成するレンズやスリット等の光学部品の構成および配設位置等が前述の如き構成に限定されないのは勿論であり、必要に応じて、レンズやスリット、コリメートレンズ等の光学部品が適宜に設けられ得ることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0096】
10,140,150:角膜撮影装置、12:装置光学系、14:制御装置、26:観察光学系、28:固視標光学系、30:XYアライメント光学系、32:スペキュラー光学系(撮影機構)、48:固視標光源、50:XYアライメント照明光学系、52:XYアライメント検出光学系、57:ケラト光源、60:ケラトメータ、62:照明光学系、64:角膜撮像光学系、74:照明光源、80:撮影用CCD(光電素子)、88:ラインセンサ、90:X軸駆動機構(X方向駆動手段)、92:Y軸駆動機構(Y方向駆動手段)、94:Z軸駆動機構(Z方向駆動手段)、96:揺動機構(傾斜角度変更手段)、98:撮影軸駆動機構(X方向駆動手段、Z方向駆動手段)、132a〜f:内皮撮影像、134:広範囲内皮撮影像、160:回転機構(傾斜角度変更手段)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図12