特許第5887212号(P5887212)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5887212
(24)【登録日】2016年2月19日
(45)【発行日】2016年3月16日
(54)【発明の名称】吸収性物品用表面材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/15 20060101AFI20160303BHJP
   A61F 13/472 20060101ALI20160303BHJP
   A61F 13/49 20060101ALI20160303BHJP
【FI】
   A61F13/18 360
   A41B13/02 S
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-123249(P2012-123249)
(22)【出願日】2012年5月30日
(65)【公開番号】特開2013-248012(P2013-248012A)
(43)【公開日】2013年12月12日
【審査請求日】2015年5月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104927
【弁理士】
【氏名又は名称】和泉 久志
(72)【発明者】
【氏名】中田 知佐
【審査官】 新田 亮二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−089965(JP,A)
【文献】 特表2004−530802(JP,A)
【文献】 特開2007−130817(JP,A)
【文献】 特開2009−268559(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/00,13/15 − 13/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
肌当接面層を構成する透液性の表面シートとこの非肌当接面側に積層される親水性のセカンドシートとからなり、前記表面シートとセカンドシートとが部分的な接合部で接合された吸収性物品用表面材の製造方法であって、
表面に多数の凹状部が配置された第1エンボスロールと、この第1エンボスロールに対向配置されるとともに表面に前記凹状部に対応する多数の凸状部が配置された第2エンボスロールと、この第2エンボスロールに対向配置されるとともに表面に前記凸状部に対応する多数の凹状部が配置された第3エンボスロールとを備え、
前記表面シートを前記第1エンボスロールと第2エンボスロールとの間を通過させることにより前記凹状部と凸状部との噛み合わせによってエンボス加工処理を行い、次いで前記表面シートを前記第2エンボスロールの凸状部に保持した状態のまま、その外周に前記セカンドシートを導入し、前記表面シート及びセカンドシートを前記第2エンボスロールと第3エンボスロールとの間を通過させることにより前記凸状部と凹状部との噛み合わせによってエンボス加工処理を行うと同時に、前記第2エンボスロールの凸状部の先端部において前記接合部を形成するようにしたことを特徴とする吸収性物品用表面材の製造方法。
【請求項2】
前記第2エンボスロールの凸状部と前記第3エンボスロールの凹状部との噛み合わせ状態において、前記第2エンボスロールの凸状部以外のロール基準面と前記第3エンボスロールの凹状部以外のロール基準面との間の離間距離は、前記第2エンボスロールの凸状部と前記第3エンボスロールの凹状部との間の離間距離より大きく設定されている請求項1記載の吸収性物品用表面材の製造方法。
【請求項3】
前記凸状部及び凹状部は、所定の間隔で離間する線状のパターンからなる請求項1、2いずれかに記載の吸収性物品用表面材の製造方法。
【請求項4】
前記第2エンボスロールの凸状部は、規則的に配列されたドット状のパターンからなり、前記第3エンボスロールの凹状部は、前記第2エンボスロールとの噛み合わせ状態で、前記第2エンボスロールの凸状部によって四隅が囲まれた領域の中央部以外の部分を連続的な凹部としたパターン又は前記凸状部に対応する部分を凹部としたパターンのいずれかからなる請求項1、2いずれかに記載の吸収性物品用表面材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経血やおりものなどを吸収するための生理用ナプキン、パンティライナー、失禁パッド等の吸収性物品に用いられる表面材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、吸収性物品に用いられる表面材として、肌への接触面積を低減させることにより湿り感を抑える、或いは質感を出すと共に感触性を高めるなど種々の目的に応じて適宜の凹凸形状が付与されたものが市場に提供されている。
【0003】
例えば下記特許文献1においては、第1層とこれに隣接する第2層とを有し、第1層と第2層とが所定パターンの接合部によって部分的に接合されており、該接合部間で第1層が三次元的立体形状をなす立体シート材料が開示されている。
【0004】
更に下記特許文献2においては、液透過性表面シートと裏面シート、及び両シートの間に吸収体を介在させた吸収性物品において、前記液透過性表面シートが不織布からなり、前記吸収体がパルプ繊維で構成され、前記液透過性表面シートと前記吸収体が接合されて、吸収体と表面シートが一体化した状態で肌当接面側に隆起した多数の凸部を有する吸収性物品が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−345357号公報
【特許文献2】特開2009−153706号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1記載の立体シート材料においては、圧密化された接合部にエンボスが施されることによって、第1層側に凹状部が形成されるとともに、第2層側にもこのときのエンボスによって凹状部が形成されるようになる。このため、この立体シート材料を吸収体に配置したとき、前記接合部が吸収体の表面から浮いた状態となり、このような配置状態の立体シート材料に体液が排出されると、シート内部に浸透した体液は、シート内を繊維密度勾配によって接合部側に速やかに移動するようになるが、前述のとおり接合部ではシート材が吸収体から浮いた状態であるため、体液が吸収体側に移行できずに表面材に液残りすることがあった。このため、体液の漏れやべた付き感が生じていた。
【0007】
また、上記特許文献2記載の吸収性物品では、吸収体の表面側の全面に表面シートが接合され表面シートと吸収体とが一体化した状態で多数の凸部が形成されているため、表面シートが全体に亘ってほぼ均等の繊維密度となりやすく、肌当接面側に液残りが発生しやすくなる。
【0008】
そこで本発明の主たる課題は、体液を素早く吸収体に移行させ肌側への液残りを防止するとともに、体液の漏れやべた付き感を防止した吸収性物品用表面材の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために請求項1に係る本発明として、肌当接面層を構成する透液性の表面シートとこの非肌当接面側に積層される親水性のセカンドシートとからなり、前記表面シートとセカンドシートとが部分的な接合部で接合された吸収性物品用表面材の製造方法であって、
表面に多数の凹状部が配置された第1エンボスロールと、この第1エンボスロールに対向配置されるとともに表面に前記凹状部に対応する多数の凸状部が配置された第2エンボスロールと、この第2エンボスロールに対向配置されるとともに表面に前記凸状部に対応する多数の凹状部が配置された第3エンボスロールとを備え、
前記表面シートを前記第1エンボスロールと第2エンボスロールとの間を通過させることにより前記凹状部と凸状部との噛み合わせによってエンボス加工処理を行い、次いで前記表面シートを前記第2エンボスロールの凸状部に保持した状態のまま、その外周に前記セカンドシートを導入し、前記表面シート及びセカンドシートを前記第2エンボスロールと第3エンボスロールとの間を通過させることにより前記凸状部と凹状部との噛み合わせによってエンボス加工処理を行うと同時に、前記第2エンボスロールの凸状部の先端部において前記接合部を形成するようにしたことを特徴とする吸収性物品用表面材の製造方法が提供される。
【0010】
上記請求項1記載の発明では、表面シートを第1エンボスロールと第2エンボスロールとの間を通過させることにより凹状部と凸状部との噛み合わせによってエンボス加工処理を行い、次いで表面シートを第2エンボスロールの凸状部に保持した状態のまま、その外周にセカンドシートを導入し、表面シート及びセカンドシートを第2エンボスロールと第3エンボスロールとの間を通過させることにより凸状部と凹状部との噛み合わせによってエンボス加工処理を行うと同時に、第2エンボスロールの凸状部の先端部において接合部を形成するようにしているため、この製造方法によって製造された吸収性物品用表面材は、肌当接面側(表面シート側)には、前記第2エンボスロールの凸状部に対応する位置に前記接合部となる多数の窪み部が形成されるとともに、その周囲が相対的に突出する突出部が形成され、非肌当接面側(セカンドシート側)には、前記第3エンボスロールの凹状部に対応する位置に前記接合部となる多数の突出部が形成されるとともに、その周囲が相対的に窪む窪み部が形成されるようになる。このようにセカンドシート側では接合部が突出部とされ、それ以外の部分が相対的に窪む窪み部とされているため、本表面材を吸収体の表面側に配置した状態で、接合部が吸収体に接するようになり、表面材の内部に浸透し繊維密度勾配によって接合部側に速やかに移動した体液が、この接合部を通じて素早く吸収体に移行するようになる。したがって、表面材の液残りがなくなり、体液の漏れやべた付き感が防止できるようになる。また、本製造方法によって製造された表面材は、吸収体の表面に配置した状態で、前記接合部以外の肌当接面側に凸となる部分で、吸収体の表面から浮いているため、クッション性が良く、肌当たりが良好となる。
【0011】
請求項2に係る本発明として、前記第2エンボスロールの凸状部と前記第3エンボスロールの凹状部との噛み合わせ状態において、前記第2エンボスロールの凸状部以外のロール基準面と前記第3エンボスロールの凹状部以外のロール基準面との間の離間距離は、前記第2エンボスロールの凸状部と前記第3エンボスロールの凹状部との間の離間距離より大きく設定されている請求項1記載の吸収性物品用表面材の製造方法が提供される。
【0012】
上記請求項2記載の発明では、表面材の表面シート側に前記接合部以外の肌側に突出する凸部がきっちりと形成されるように、第2エンボスロールの凸状部と第3エンボスロールの凹状部との噛み合わせ状態において、第2エンボスロールの凸状部以外のロール基準面と第3エンボスロールの凹状部以外のロール基準面との間の離間距離を、第2エンボスロールの凸状部と第3エンボスロールの凹状部との間の離間距離より大きく設定している。
【0013】
請求項3に係る本発明として、前記凸状部及び凹状部は、所定の間隔で離間する線状のパターンからなる請求項1、2いずれかに記載の吸収性物品用表面材の製造方法が提供される。本請求項3記載の発明は、表面材に線状の凹凸パターンを形成するためのものである。
【0014】
請求項4に係る本発明として、前記第2エンボスロールの凸状部は、規則的に配列されたドット状のパターンからなり、前記第3エンボスロールの凹状部は、前記第2エンボスロールとの噛み合わせ状態で、前記第2エンボスロールの凸状部によって四隅が囲まれた領域の中央部以外の部分を連続的な凹部としたパターン又は前記凸状部に対応する部分を凹部としたパターンのいずれかからなる請求項1、2いずれかに記載の吸収性物品用表面材の製造方法が提供される。本請求項4記載の発明は、表面材に規則的に配列されたドット状パターンの接合部を形成するためのものである。
【発明の効果】
【0015】
以上詳説のとおり本発明によれば、体液が素早く吸収体に移行し肌側への液残りが防止できるとともに、体液の漏れやべた付き感が防止できる吸収性物品用表面材の製造方法が提供できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】吸収性物品(失禁ライナー)1の一部破断斜視図である。
図2】吸収性物品(失禁ライナー)1の横断面図(図1のII−II矢視図)である。
図3】表面材7の断面構成を示す要部断面図である。
図4】表面材製造装置20の側面図である。
図5】表面材7を吸収体4の表面側に配置した状態の体液の流れを示す断面図である。
図6】第1形態例に係る第1エンボスロール21を示す、(A)は平面図、(B)はそのB−B線矢視図である。
図7】第1形態例に係る第2エンボスロール22を示す、(A)は平面図、(B)はそのB−B線矢視図である。
図8】第1形態例に係る第3エンボスロール23を示す、(A)は平面図、(B)はそのB−B線矢視図である。
図9】第1形態例に係る、(A)は第1エンボスロール21と第2エンボスロール22との噛み合わせ状態を示す図、(B)は第2エンボスロール22と第3エンボスロール23との噛み合わせ状態を示す図である。
図10】第2形態例に係る第1エンボスロール21を示す、(A)は平面図、(B)はそのB−B線矢視図である。
図11】第2形態例に係る第2エンボスロール22を示す、(A)は平面図、(B)はそのB−B線矢視図である。
図12】第2形態例に係る第3エンボスロール23を示す、(A)は平面図、(B)はそのB−B線矢視図である。
図13】第2形態例に係る第2エンボスロール22と第3エンボスロール23との噛み合わせ状態を示す図である。
図14】第2形態例の変形例(その1)に係る第3エンボスロール23を示す、(A)は平面図、(B)はそのB−B線矢視図である。
図15】第2形態例の変形例(その2)に係る第3エンボスロール23を示す、(A)は平面図、(B)はそのB−B線矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
【0018】
〔吸収性物品(失禁ライナー)1の構造例〕
失禁ライナー1は、図1に示されるように、不透液性裏面シート2と、透液性表面シート3(以下、単に表面シートという。)との間に、吸収体4または同図に示されるように、クレープ紙5によって囲繞された吸収体4が介在されるとともに、前記表面シート3と吸収体4との間に親水性のセカンドシート(不織布)6を配置され、表面側両側部に立体ギャザーG、Gを備えた構造となっている。 前記不透液性裏面シート2は、ポリエチレン、ポリプロピレン等の少なくとも遮水性を有するシート材が用いられるが、この他に防水フィルムを介在して実質的に不透液性を確保した上で不織布シート(この場合には、防水フィルムと不織布とで不透液性裏面シートを構成する。)などを用いることができる。近年はムレ防止の観点から透湿性を有するものが好適に用いられる傾向にある。この遮水・透湿性シート材としては、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂中に無機充填剤を溶融混練してシートを成形した後、一軸または二軸方向に延伸することにより得られる微多孔性シートが好適に用いられる。
【0019】
次いで、前記表面シート3は、有孔または無孔の不織布や多孔性プラスチックシートなどが好適に用いられる。不織布を構成する素材繊維としては、たとえばポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維とすることができ、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法等の適宜の加工法によって得られた不織布を用いることができる。これらの加工法の内、スパンレース法は柔軟性、スパンボンド法はドレープ性に富む点で優れ、サーマルボンド法及びエアスルー法は嵩高でソフトである点で優れている。
【0020】
前記不透液性裏面シート2と表面シート3との間に介在される吸収体4は、たとえばパルプ中に高吸水性樹脂を混入したもの、或いはパルプ中に化学繊維を混入させるとともに、高吸水性樹脂を混入したものが使用される。前記吸収体4は、図示のように、形状保持、および経血等を速やかに拡散させるとともに、一旦吸収した経血等の逆戻りを防止するためにクレープ紙5によって囲繞するのが望ましい。前記パルプとしては、木材から得られる化学パルプ、溶融パルプ等のセルロース繊維や、レーヨン、アセテート等の人工セルロース繊維からなるものが挙げられ、広葉樹パルプよりは繊維長の長い針葉樹パルプの方が機能および価格の面で好適に使用される。
【0021】
また、前記吸収体4には合成繊維を混合しても良い。前記合成繊維は、例えばポリエチレン又はポリプロピレン等のポリオレフィン系、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系、ナイロンなどのポリアミド系、及びこれらの共重合体などを使用することができるし、これら2種を混合したものであってもよい。また、融点の高い繊維を芯とし融点の低い繊維を鞘とした芯鞘型繊維やサイドバイサイド型繊維、分割型繊維などの複合繊維も用いることができる。前記合成繊維は、体液に対する親和性を有するように、疎水性繊維の場合には親水化剤によって表面処理したものを用いるのが望ましい。
【0022】
前記高吸水性樹脂としては、たとえばポリアクリル酸塩架橋物、自己架橋したポリアクリル酸塩、アクリル酸エステル−酢酸ビニル共重合体架橋物のケン化物、イソブチレン・無水マレイン酸共重合体架橋物、ポリスルホン酸塩架橋物や、ポリエチレンオキシド、ポリアクリルアミドなどの水膨潤性ポリマーを部分架橋したもの等が挙げられる。これらの内、吸水量、吸水速度に優れるアクリル酸またはアクリル酸塩系のものが好適である。前記吸水性能を有する高吸水性樹脂は製造プロセスにおいて、架橋密度および架橋密度勾配を調整することにより吸水力と吸水速度の調整が可能である。前記高吸水性樹脂の含有率は吸収体重量の10〜60%とするのが望ましい。高吸水性樹脂含有率が10%未満の場合には、十分な吸収能を与えることができず、60%を超える場合にはパルプ繊維間の絡み合いが無くなり、シート強度が低下し破れや割れ等が発生し易くなる。
【0023】
前記透液性表面シート3と吸収体4との間に配置される親水性のセカンドシート6は、体液に対して親水性を有するものであればよい。具体的には、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維を用いることにより素材自体に親水性を有するものを用いるか、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維を親水化剤によって表面処理し親水性を付与した繊維を用いることができる。
【0024】
図3に示されるように、前記表面シート3及びセカンドシート6によって表面材7が構成されている。前記表面材7は、肌当接面層を構成する前記表面シート3と、この非肌当接面側に積層される前記セカンドシート6とからなり、前記表面シート3とセカンドシート6とが部分的な多数の接合部8、8…で接合されるとともに、エンボスによって凹凸加工が施されている。この表面材7については、後段でさらに具体的に詳述する。
【0025】
本失禁ライナー1の表面側両側部にはそれぞれ長手方向に沿って、かつ失禁ライナー1の全長に亘ってサイド不織布15,15が設けられているとともに、このサイド不織布15,15の外側部分が側方に延在されるとともに、前記不透液性裏面シート2が側方に延在され、これら側方に延在されたサイド不織布15部分と不透液性裏面シート2部分とをホットメルト接着剤等により接合して側部フラップが形成されている。
【0026】
前記サイド不織布15としては、重要視する機能の点から撥水処理不織布または親水処理不織布を使用することができる。たとえば、尿やおりもの等が浸透するのを防止する、あるいは肌触り感を高めるなどの機能を重視するならば、シリコン系、パラフィン系、アルキルクロミッククロリド系撥水剤などをコーティングした撥水処理不織布を用いるのが望ましく、体液の吸収性を重視するならば、合成繊維の製造過程で親水基を持つ化合物、例えばポリエチレングリコールの酸化生成物などを共存させて重合させる方法や、塩化第2スズのような金属塩で処理し、表面を部分溶解し多孔性とし金属の水酸化物を沈着させる方法等により合成繊維を膨潤または多孔性とし、毛細管現象を応用して親水性を与えた親水処理不織布を用いるのが望ましい。かかるサイド不織布15としては、天然繊維、合成繊維または再生繊維などを素材として、適宜の加工法によって形成されたものを使用することができるが、好ましくは目付け量を抑えて通気性を持たせた不織布を用いるのがよい。
【0027】
前記サイド不織布15の内方側は、図2に示されるように、前記サイド不織布15をほぼ二重に折り返すとともに、この二重シート内部に、その高さ方向中間部に両端または長手方向の適宜の位置が固定された1または複数の、図示例では2本の糸状弾性伸縮部材16,16が配設され、その収縮力によって前記二重シート部分を表面側に起立させた立体ギャザーG、Gが形成されている。
【0028】
〔表面材7の製造方法〕
前記表面材7は、図4に示されるように、表面に多数の凹状部24が配置された第1エンボスロール21と、この第1エンボスロール21に対向配置されるとともに、表面に前記凹状部24に対応する多数の凸状部25が配置された第2エンボスロール22と、この第2エンボスロール22に対向配置されるとともに、表面に前記凸状部25に対応する多数の凹状部26が配置された第3エンボスロール23とが備えられた表面材製造装置20によって凹凸状のエンボス加工処理及び接合部8が形成されている。
【0029】
具体的には、表面シート3を前記第1エンボスロール21と第2エンボスロール22との間を通過させることにより、第1エンボスロール21の凹状部24と第2エンボスロール22の凸状部25との噛み合わせによってエンボス加工処理を行い、次いで前記表面シート3を前記第2エンボスロール22の凸状部25に保持した状態のまま、その外周に前記セカンドシート6を導入し、前記表面シート3及びセカンドシート6を前記第2エンボスロール22と第3エンボスロール23との間を通過させることにより、前記第2エンボスロール22の凸状部25と前記第3エンボスロール23の凹状部26との噛み合わせによってエンボス加工処理を行うと同時に、前記第2エンボスロール22の凸状部25の先端部において前記表面シート3とセカンドシート6とを熱溶着させることにより接合部8を形成している。
【0030】
かかる表面材製造装置20によって製造された表面材7は、図3に示されるように、表面シート3側(肌当接面側)には、前記第2エンボスロール22の凸状部25に対応する位置に前記接合部8、8…となる多数の窪み部3b、3b…が形成されるとともに、その周囲が相対的に突出する凸部3a、3a…が形成されるようになる。また、セカンドシート6側(非肌当接面側)には、前記第3エンボスロール23の凹状部26に対応する位置に前記接合部8、8…となる多数の凸部6a、6a…が形成されるとともに、その周囲が相対的に窪む窪み部6b、6b…が形成されるようになる。このように、セカンドシート6側では、前記接合部8が外面側に突出する凸部6aとされ、それ以外の部分が相対的に窪む窪み部6bとされた凹凸状に形成されるため、図5に示されるように、本表面材7を吸収体4の表面側に配置した状態では、前記接合部8が吸収体4側に接するようになり、表面材7の内部に浸透し繊維密度勾配によって接合部8側に速やかに移動した体液が、この接合部8を通じて素早く吸収体4に移行するようになる。したがって、表面材7に液残りが生じることがなくなり、体液の漏れやべた付き感が防止できるようになる。また、前記表面材7は、吸収体4の表面側に配置した状態で、肌面側に凸となる部分では、セカンドシート6側に前記窪み部6bが形成されるため、吸収体4側の表面から浮いた状態となり、その結果クッション性が増し、肌当たりが良好となる。
【0031】
前記第1エンボスロール21の凹状部24の深さh1(ロール基準面から凹状部24底面までのロール半径方向長さ。図6図10のh1。)は、1.5〜5mm程度とするのが望ましく、前記第2エンボスロール22の凸状部25の高さh2(ロール基準面から凸状部25頂部までのロール半径方向長さ。図7図11のh2。)は、1.7〜5.2mm程度とするのが望ましい。また、前記第1エンボスロール21の凹状部24の深さh1を第2エンボスロール22の凸状部25の高さh2よりも大きく形成し、図4に示されるように、第1エンボスロール21と第2エンボスロール22との噛み合わせ状態で前記凸状部25が凹状部24に接触せずに、全体に亘りほぼ同等の所定の隙間、具体的には0.1〜0.5mm、好ましくは0.2〜0.4mm程度の隙間が形成されるようにするのが望ましい。凹状部24と凸状部25とが接触するような部分を無くしながらエンボスを付与することにより、この段階では表面シート3に繊維の高密度領域を作らずにエンボスを付与することができるようになる。
【0032】
また、第3エンボスロール23の凹状部26の深さh3(ロール基準面から凹状部26底面までのロール半径方向長さ。図8図12のh3。)は、0.3〜4mm程度とするのが望ましく、前記第2エンボスロール22の凸状部25の高さh2よりも小さく形成することが望ましい。具体的な前記凸状部25の高さh2と前記凹状部26の深さh3との比は、h2:h3=4:1程度となるように形成することが望ましい。また、図4に示されるように、第2エンボスロール22と第3エンボスロール23との噛み合わせ状態で前記凸状部25が凹状部26に接触せずに、前記凸状部25と凹状部26との間に所定の隙間、具体的には0.2〜1.0mm、好ましくは0.3〜0.8mm程度の隙間が形成されるようにするのが望ましい。
【0033】
前記第3エンボスロール23の凹状部26の深さh3を第2エンボスロール22の凸状部25の高さh2の1/4程度とすることにより、図9(B)に示されるように、第2エンボスロール22と第3エンボスロール23との噛み合わせ状態で、第2エンボスロール22のロール基準面と第3エンボスロール23のロール基準面との間に、前記凸状部25と凹状部26との隙間より大きな間隔の空間Rが形成されるようになる。このため、第1エンボスロール21と第2エンボスロールとの噛み合わせによって形成された表面シート3の凸部形状が維持されたまま、この外面側にセカンドシート6が積層された状態でさらにエンボス加工処理が施されることによって、表面シート3の凸部3aが消失しにくくなり、凸部3aのクッション性が良好になるとともに、図3の断面図に示されるように表面シート3側の凸部3aにおいて、表面シート3とセカンドシート6との間に空気層が形成されるようになり、前記凸部3aのクッション性がより一層良好なものとなる。
【0034】
また、第3エンボスロール23に前記凹状部26が形成されることにより、この凹状部26の底面に対して第3エンボスロール23のロール基準面が相対的に高く形成されることとなるため、この相対的に高く形成されたロール基準面によって、表面材7のセカンドシート6側には、前記第3エンボスロール23の凹状部26によって外面側に突出した凸部6aに対して相対的に窪んだ窪み部6bが形成されるようになる。
【0035】
前記表面材7の凹凸形状は、前記第1エンボスロール21〜第3エンボスロール23の凹状部24、26及び凸状部25のパターンを変化させることによって、種々のパターンで形成することができる。
【0036】
第1形態例に係る凹凸形状パターンは、線状パターンとしたものである。この線状パターンを形成するための第1エンボスロール21は、図6に示されるように、所定の間隔で線状の凹状部24a、24a…を多数配列した構造とされ、第2エンボスロール22は、図7に示されるように、前記第1エンボスロール21の凹状部24a、24a…に対応して多数の凸状部25a、25a…が形成された構造とされ、第3エンボスロール23は、図8に示されるように、前記第2エンボスロール22の凸状部25a、25a…に対応して多数の凹状部26a、26a…が形成された構造とされている。前記凹状部24a、26a及び凸状部25aは、ライン流れ方向に沿う線状とするためロール幅方向に所定の間隔でロール周方向に沿って形成することが好ましいが、ライン流れ方向に直交する線状となるようにロール周方向に所定の間隔でロール幅方向に沿って形成してもよい。
【0037】
図4に示されるように、第2エンボスロール22の凸状部25aと第3エンボスロール23の凹状部26aとの噛み合わせ状態で、前記凸状部25aの先端が加熱されることによって本形態例では所定間隔で多数の線状の接合部8、8…が形成されるようになる。
【0038】
前記線状パターンを形成した表面材7は、線状パターンの方向が失禁ライナー1の長手方向又は前後方向のいずれの方向に沿うように配置してもよいが、体液の横漏れを防止する観点から長手方向の拡散性が向上するように、失禁ライナー1の長手方向に沿う線状パターンとなるように配置することが好ましい。
【0039】
第2形態例に係る凹凸形状パターンは、ドット状パターンとしたものである。このドット状パターンを形成するための第1エンボスロール21は、図10に示されるように、ロール周方向及びロール幅方向に所定の間隔で千鳥状に凹状部24b、24b…を多数配列した構造とされ、第2エンボスロール22は、図11に示されるように、前記第1エンボスロール21の凹状部24b、24b…に対応してロール周方向及び幅方向に所定の間隔で千鳥状に凸状部22b、22b…を多数配列した構造とされ、第3エンボスロール23は、図12に示されるように、前記第2エンボスロール22の凸状部25b、25b…に対応して多数の凹状部26b、26b…が形成された構造とされている。
【0040】
本形態例において前記第3エンボスロール23は、図12に示されるように、第2エンボスロール22との噛み合わせ状態で、第2エンボスロール22の凸状部25bによって四隅が囲まれた領域の中央部以外の部分を連続的な凹部とし、前記凸状部25bによって四隅が囲まれた領域の中央部が相対的に突出した凸部となるようなパターンで形成することができる。このような連続的な凹状部26bとすることによって、第3エンボスロール23の加工が容易となるが、隣接する凸状部25b、25b間のうち凹状部26bが連続する部分では、セカンドシート6側に圧力がかからず低繊維密度になってしまうおそれがある。この対策として、次のような変形例を採用することもできる。
【0041】
第2形態例に係る第3エンボスロール23の変形例として、図14に示されるように、第3エンボスロール23を、第2エンボスロール22の凸状部25bに対応してロール周方向及び幅方向に所定の間隔で千鳥状に平面略四角形状の凹状部26c、26c…を多数配置することができる。この変形例では、凹状部26cと凹状部26cとの間に相対的に高く形成されたロール基準面が設けられるため、セカンドシート6側の凸部6aと凹部6bとがきっちりと形成されるようになるとともに、セカンドシート6の繊維密度が低下せず、表面シート3からの液の移行が生じやすくなる。
【0042】
第2形態例の他の変形例としては、図15に示されるように、第3エンボスロール23の凹状部26dの平面形状として、前記凹状部26cと同じ配列パターンとした上で、平面略円形状に形成することもできる。
【符号の説明】
【0043】
1…失禁ライナー、2…不透液性裏面シート、3…透液性表面シート、4…吸収体、5…クレープ紙、6…セカンドシート、7…表面材、8…接合部、20…表面材製造装置、21…第1エンボスロール、22…第2エンボスロール、23…第3エンボスロール、24・24a・24b…凹状部、25・25a・25b…凸状部、26・26a・26b・26c・26d…凹状部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15