特許第5887229号(P5887229)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5887229
(24)【登録日】2016年2月19日
(45)【発行日】2016年3月16日
(54)【発明の名称】美容剤除去用リムーバーの使用方法
(51)【国際特許分類】
   A45D 44/22 20060101AFI20160303BHJP
【FI】
   A45D44/22 Z
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-178650(P2012-178650)
(22)【出願日】2012年8月10日
(65)【公開番号】特開2014-33949(P2014-33949A)
(43)【公開日】2014年2月24日
【審査請求日】2015年5月28日
【審判番号】不服2015-20882(P2015-20882/J1)
【審判請求日】2015年11月25日
【早期審理対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】599083411
【氏名又は名称】株式会社 MTG
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】特許業務法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松下 剛
【合議体】
【審判長】 長屋 陽二郎
【審判官】 熊倉 強
【審判官】 関谷 一夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開平9−154791(JP,A)
【文献】 特開2004−187874(JP,A)
【文献】 特開2005−312497(JP,A)
【文献】 特開2003−199620(JP,A)
【文献】 特開2002−330891(JP,A)
【文献】 特開2003−289940(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3115321(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D 44/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁力により吸着され得る美容剤を肌面から除去するために使用され、磁力を発生する磁力発生面を備えた吸着ヘッド部を一端に有し、上記磁力発生面が長手方向に直交する方向に面する略棒状の美容剤除去用リムーバーの使用方法であって、
美容効果を得ようとする上記肌面に上記美容剤を予め塗布しておき、
上記吸着ヘッド部の先端から少なくとも上記磁力発生面までを覆う袋状のカバー本体部と、該カバー本体部の開口端から延設形成された把持部とを有し、上記吸着ヘッド部に対して着脱可能なリムーバー用カバーを準備し、
上記肌面に塗布された上記美容剤を除去する際には、上記リムーバー用カバーを上記吸着ヘッド部に装着し、上記磁力発生面を覆う上記カバー本体部の表面に、上記磁力発生面の磁力によって上記美容剤を吸着させ、
上記リムーバー用カバーを上記吸着ヘッド部から引き剥がす際には、上記磁力発生面とその磁力によって吸着させた上記美容剤との間に上記カバー本体部を挟持させた状態で、上記把持部を上記吸着ヘッド部の先端方向へ変位させつつ上記カバー本体部を表裏反転変形させ、表裏反転した上記カバー本体部内に上記美容剤を収容することを特徴とする美容剤除去用リムーバーの使用方法。
【請求項2】
上記リムーバー用カバーは、2枚のシート材を重ねるとともに、その周囲の一部を接合することにより形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の美容剤除去用リムーバーの使用方法。
【請求項3】
上記2枚のシート材は、それぞれ上記カバー本体部となる本体領域と上記把持部となる把持部領域とを連ねた形状を有しており、上記本体領域の外周部のみが接合されており、上記リムーバー用カバーを上記吸着ヘッド部に装着する際には、一方の上記シート材の上記本体領域が上記磁力発生面を覆うように配置させることを特徴とする、請求項2に記載の美容剤除去用リムーバーの使用方法。
【請求項4】
上記2枚のシート材の上記本体領域の外周形状は円弧状を呈していることを特徴とする、請求項2又は3に記載の美容剤除去用リムーバーの使用方法。
【請求項5】
上記リムーバー用カバーは、樹脂フィルムからなることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の美容剤除去用リムーバーの使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペースト状の美容剤を磁力によって吸着除去する美容剤除去用リムーバーの使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
美容のために用いられるペースト状の美容剤には、塗布後に時間をおくことで皮膜状になるものと、時間をおいてもペースト状態を維持するものとに大別される。塗布後に皮膜状になる美容剤は、その一部を把持して引き剥がすことにより、容易に肌から分離することができる。一方、塗布後にペースト状態を維持する美容剤を使用後に肌から除去する方法としては、コットン等による拭き取りや、ぬるま湯等により洗い落とす方法が一般的である。最近では、これらの一般的方法よりもより簡便に使用後の美容剤を除去する方法が望まれていた。
【0003】
例えば特許文献1や特許文献2に開示されるように、鉄粉を混合した美容剤と、本体に磁石を備えたリムーバーとを組み合わせて用いる方法が提案されている。特許文献1や特許文献2に記載のリムーバーは、本体の磁石をキャップ部により覆っており、磁石の磁力により美容剤中の鉄粉をキャップ部の表面に吸着させることができるよう構成されている。
【0004】
また、これらのリムーバーは、キャップ部をスライド可能に設けてあり、キャップ部と磁石との間の距離を変化させることができるよう構成されている。これにより、使用後の美容剤が付着した鉄粉をキャップ部に吸着させた後、キャップ部を磁石から離す方向にスライドして鉄粉に作用する磁力を弱めることにより、鉄粉及びこれに付着する美容剤をキャップ部から除去しやすくすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−312497号公報
【特許文献2】特開2004−187874号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1や特許文献2に記載のリムーバーは、キャップ部をスライドさせて磁石から離すことにより、鉄粉に作用する磁力を弱めることができる。そのため、キャップ部をスライドさせれば容易に鉄粉を落下させることができる一方、不用意にキャップ部をスライドさせてしまうと、吸着されていた鉄粉がキャップ部から意図せず脱落して散逸するおそれがあり、使用しづらいものとなっていた。
【0007】
本発明は、上記の背景に鑑みてなされたもので、使用後の美容剤の散逸を容易に抑止可能な美容剤除去用リムーバーの使用方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、磁力により吸着され得る美容剤を肌面から除去するために使用され、磁力を発生する磁力発生面を備えた吸着ヘッド部を一端に有し、上記磁力発生面が長手方向に直交する方向に面する略棒状の美容剤除去用リムーバーの使用方法であって、
美容効果を得ようとする上記肌面に上記美容剤を予め塗布しておき、
上記吸着ヘッド部の先端から少なくとも上記磁力発生面までを覆う袋状のカバー本体部と、該カバー本体部の開口端から延設形成された把持部とを有し、上記吸着ヘッド部に対して着脱可能なリムーバー用カバーを準備し、
上記肌面に塗布された上記美容剤を除去する際には、上記リムーバー用カバーを上記吸着ヘッド部に装着し、上記磁力発生面を覆う上記カバー本体部の表面に、上記磁力発生面の磁力によって上記美容剤を吸着させ、
上記リムーバー用カバーを上記吸着ヘッド部から引き剥がす際には、上記磁力発生面とその磁力によって吸着させた上記美容剤との間に上記カバー本体部を挟持させた状態で、上記把持部を上記吸着ヘッド部の先端方向へ変位させつつ上記カバー本体部を表裏反転変形させ、表裏反転した上記カバー本体部内に上記美容剤を収容することを特徴とする美容剤除去用リムーバーの使用方法にある
【発明の効果】
【0009】
上記カバーは、袋状の上記カバー本体部内に上記吸着ヘッド部を挿入して上記リムーバーに装着される。これにより、上記カバー本体部は、上述のように上記磁力発生面を覆うように配される。そのため、磁力により吸着され得る美容剤を塗布した肌面に上記カバーを装着したリムーバーの吸着ヘッド部を近づけた場合、美容剤が上記磁力発生面の磁力により該磁力発生面を覆う上記カバーの表面に吸着される。
【0010】
上記カバーの表面に吸着された美容剤を廃棄する方法としては、様々な方法をとり得るが、例えば次のように行うことができる。
【0011】
リムーバーの使用後、上記カバー本体部は、吸着された美容剤と磁力発生面との間に磁力によって狭持された状態となり、吸着ヘッド部の磁力発生面上に接触した状態に維持されている。このような状態において、リムーバーの使用者は、上記磁力発生面を上方に向けた状態で、上記把持部を上記吸着ヘッド部の先端側へ向けて表裏反転変形させる。
【0012】
次いで、使用者は、上記把持部を上記吸着ヘッド部の先端方向へ変位させつつ、上記カバー本体部を吸着ヘッド部から引き剥がすようにして表裏反転変形させる。これにより、吸着された美容剤は、カバー本体部における吸着ヘッド部から引き剥がされた部分と、磁力発生面上に接触している部分との間に形成される折り返し部分に寄せ集められる。
【0013】
その後、引き続き上記把持部を吸着ヘッド部の先端方向へ変位させ、上記カバー本体部の表裏反転変形を完了させると、美容剤がカバー本体部内に収容された状態となる。そのため、上記カバーは、該カバーを吸着ヘッド部から引き剥がす際に、美容剤がカバー外部に漏出して吸着ヘッド部に直接吸着することを抑制できる。また、このようにカバー本体部内に収容された美容剤は、上記カバー内に収容された状態で美容剤の廃棄場所に廃棄することができる。
【0014】
このように、上記カバーは、着脱可能に上記吸着ヘッド部に装着することができ、かつ、表裏反転変形可能な袋状に形成されている。これにより、上述したように、リムーバーにより肌から取り除いた美容剤がカバー外部へ漏出する等、意図せず散逸することを抑制することができ、リムーバーの使いやすさを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施例1における、カバーをリムーバーに装着した状態の斜視図。
図2】実施例1における、カバーを装着したリムーバーを磁力発生面側(下方)から見た平面図。
図3】実施例1における、カバーの斜視図。
図4】実施例1における、シート材を厚み方向から見た平面図。
図5】実施例1における、カバーを表裏反転変形させている途中状態を示す断面図。
図6】実施例2における、2枚のシート材に各々異なる形状の把持部を形成したカバーの斜視図。
図7】実施例3における、一方のシート材のみに把持部を形成したカバーの斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
上記リムーバー用カバーにおいて、上記カバー本体部は伸縮性を有しており、上記吸着ヘッド部を覆った状態において伸長状態となるよう構成されていることが好ましいつまり、上記カバー本体部は、上記吸着ヘッド部に装着された状態において当該吸着ヘッド部の外形に沿って自然状態よりも引き伸ばされていることが好ましい。この場合には、上記カバー本体部は、上記吸着ヘッド部の外形に倣った形状となり、カバー本体部と吸着ヘッド部との間にしわ等による空隙が生じにくくなる。そのため、上記カバーは、美容剤に作用する磁力が上述の空隙により弱まることを抑制し、美容剤を確実に吸着させることができる。
【0017】
また、上記カバー本体部は、その内表面が凹凸面よりなり、外表面が平滑面よりなるよう形成されていてもよいこの場合には、上記カバーは、上記カバー本体部の内表面と上記吸着ヘッド部との接触面積が比較的小さいものとなる。これにより、上記カバー本体部は、上記吸着ヘッド部を挿入する際の摩擦力を適度に軽減できるものとなる。その結果、上記カバーは、上記吸着ヘッド部により装着しやすいものとなる。
【0018】
また、上記凹凸面は、上記把持部に形成されていてもよい。この場合には、使用者が上記把持部を把持する際に、上記把持部と使用者の指とが滑りにくくなり、上記カバーがより使用しやすいものとなる。
【0019】
また、上記吸着ヘッド部は、上記カバー本体部により覆われる部分が上記リムーバーの長手方向と略直交する方向に膨出した膨出部を有し、その頂面部分に上記磁力発生面を有していてもよいこの場合には、上記リムーバーは、磁力発生面がリムーバーの長手方向における先端面に形成される場合よりも上記磁力発生面の面積を広くしやすくなり、該磁力発生面に吸着される美容剤の量が多くなる。そのため、このようなリムーバーに上記リムーバー用カバーを用いることにより、美容剤の意図しない散逸を防止する作用効果をより効果的に発揮させることができる。
【0020】
また、上記リムーバー用カバーは、2枚のシート材を重ねるとともに、その周囲の一部を接合することにより形成されていてもよいこの場合には、上記カバーは、安価に入手可能なシート材を用いることによるコストメリットを受けることができるものとなる。また、2枚のシート材を接合することにより、シート本体部の袋状構造の形成工程が、真空成形や圧縮成形等の他の成形方法に比べて簡素なものとなる。その結果、上記カバーは、安価かつ生産性のより高いものとなる。
【0021】
この場合において、上記シート材の材質は、公知の材料の中から表裏反転変形が可能なものを適宜選択することができ、例えば、布材や、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリビニルアルコール、ウレタンあるいはシリコーン等の種々の樹脂をフィルム状に成型したものを使用することができる。例えばポリエチレンを用いる場合には、厚さが0.02〜0.2mmのものを使用することができる。
【0022】
また、この場合において、上記2枚のシート材間の接合は、接着剤による接着や熱圧着等の公知の方法によって行うことができる。
【0023】
また、上記2枚のシート材は、それぞれ上記カバー本体部となる本体領域と上記把持部となる把持部領域とを連ねた形状を有しており、上記本体領域の外周部のみが接合され、2つの上記把持部が設けられていてもよいこの場合には、2つの上記把持部をそれぞれ吸着ヘッド部の先端方向へ変位させることにより、上記カバーを吸着ヘッド部から引き剥がす際の表裏反転変形をより容易に行うことができる。その結果、上記カバーはより使用しやすいものとなる。
【0024】
また、上記2枚のシート材の上記把持部領域は、同一の形状を有していてもよいこの場合には、2枚のシート材が互いに同一形状となるため、上記カバーの生産効率をより向上させることが容易となる。
【0025】
また、上記2枚のシート材は、一方が上記カバー本体部となる本体領域と上記把持部となる把持部領域とを連ねた形状を有し、他方が上記本体領域のみを備えた形状を有しており、上記本体領域の外周部のみが接合され、1つの上記把持部が設けられていてもよい上記把持部は、上記カバーに少なくとも1つ配設されていれば、上述のように上記カバー本体部の表裏反転変形を行うことができる。
【0026】
また、上記2枚のシート材の上記本体領域の外周形状は円弧状を呈していてもよいこの場合には、上記カバーは、上記吸着ヘッド部への装着や表裏反転変形の際等に、上記カバーの変形に伴う応力が上記シート材の接合領域に集中しにくい形状となる。そのため、上記カバーは、上記吸着ヘッドへの着脱時等に破れにくくなり、美容剤が漏出しにくいものとなる。
【実施例】
【0027】
(実施例1)
上記リムーバーの使用方法の実施例について、図1図5を用いて説明する。リムーバー用カバー1は、図1図2及び図5に示すように、磁力を発生する磁力発生面201を備えた吸着ヘッド部20を一端に有する略棒状のリムーバー2の吸着ヘッド部20に着脱可能に装着される。カバー1は、図1及び図2に示すように、吸着ヘッド部20の先端から少なくとも磁力発生面201までを覆う袋状のカバー本体部10と、カバー本体部10の開口端11から延設形成された把持部12とを有している。そして、図5に示すように、カバー1は、表裏反転変形可能に構成されている。
【0028】
カバー1は、図3及び図4に示すように、同一形状の2枚のシート材3(3a、3b)を重ねるとともに、その周囲の一部を接合することにより形成されている。2枚のシート材3は、図4に示すように、それぞれカバー本体部10となる本体領域Aと把持部12となる把持部領域Bとを連ねた形状を有している。
【0029】
図4に示すように、2枚のシート材3の本体領域Aの外周形状は円弧状を呈している。また、2枚のシート材3は、本体領域Aの外周部30のみが互いに接合されている。これにより、カバー1の開口端11は、図3及び図4に示すように、2枚のシート材3における本体領域Aと把持部領域Bとの境界C、即ち上述した本体領域Aの接合部分(外周部30)の両端間を結ぶ直線上に形成される。
【0030】
また、2枚のシート材3の把持部領域Bは、図4に示すように、本体領域Aとの境界Cを基端として本体領域Aと反対側へ向けて延伸され、先端へ向かうにつれて次第に幅が狭くなるように形成されている。また、把持部領域Bの先端は、略半円状を呈している。カバー1は、上述のように形成された2つの把持部12(12a、12b)を有している。
【0031】
シート材3は、最厚部の厚さが0.05mmであるメタロセン低密度ポリエチレンより構成されている。これにより、カバー1は、表裏反転変形が可能な程度の柔軟性とともに伸縮性を有しており、後述するように、吸着ヘッド部20を覆った状態において伸長状態となるよう構成されている。
【0032】
また、シート材3は、その一方の面にエンボス加工が施されており、円柱状の微小な凸部(図示略)が厚み方向に多数立設されている。これにより、シート材3の一方の面が凹凸面となり、他方の面が平滑面となる。カバー1は、上述した2枚のシート材3の凹凸面を内側にして重ね合わせることにより、図3に示す内表面13が凹凸面よりなり、外表面14が平滑面よりなるよう構成されている。
【0033】
次に、カバー1を装着するリムーバー2について説明する。なお、以下において、リムーバー2に関する方向は、特に断りのない限り、長手方向における吸着ヘッド部20を有する端部の方向を前方とし、その反対側を後方とする。また、磁力発生面201の設けられた方向を下方とし、その逆方向を上方とする。また、前後方向及び上下方向の双方と直交する方向を側方ということがある。これらの方向表示は便宜上のものであり、リムーバー2の使用時における実際の向きとは何ら関係がない。
【0034】
カバー1を装着するリムーバー2は、図1及び図5に示すように、側方から見たときに、前後方向(長手方向)の略中央部が両端部に対して上方に位置するように湾曲して形成されている。また、リムーバー2の両端部は、図2に示すように、上下方向から見たときの外形線が略円弧状を呈している。また、リムーバー2の長手方向の中央部は、上下方向から見たときに両端に比べて幅狭に形成されている。
【0035】
図2及び図5に示すように、リムーバー2の先端側に配された吸着ヘッド部20は、カバー本体部10により覆われる部分がリムーバー2の長手方向と略直交する方向(下方)に膨出した膨出部200を有している。また、膨出部200は、その頂面部分に平坦面よりなる磁力発生面201を有している。
【0036】
また、本例のリムーバー2は、その側周面に第1電極21と第2電極22とを有している。第1電極21は、図2に示すように、リムーバー2の後方端部に配設されており、電極面が下方を向いている。第2電極22は、図1に示すように、吸着ヘッド部20における上方、つまり磁力発生面201の反対側に配設されている。
【0037】
また、本例のリムーバー2は、人体肌上に塗布された電荷を有する美容成分を、第1電極21と第2電極22との間の電位差により肌内部に浸透させるイオン導入器として構成されている。即ち、リムーバー2は、第1電極21と第2電極22との間に電位差を発生させることにより、人体肌上に塗布された電荷を有する美容成分を肌内部に浸透させることができるよう構成されている。また、本例のリムーバー2は、第1電極21と第2電極22との双方が人体と接触したことを契機として、第1電極21と第2電極22との間に電位差を発生することができるよう構成されている。
【0038】
次に、カバー1の使用方法の例を説明する。使用者は、美容効果を得たい肌面に予めペースト状の美容剤4を塗布しておく。そして、使用者は、美容剤4を除去する際に、カバー1を構成する2枚のシート材3のうち、一方のシート材3aを下方(磁力発生面201側)に、他方のシート材3bを上方に向けてカバー1の開口端11から吸着ヘッド部20を挿入し、カバー1を吸着ヘッド部20に装着する。
【0039】
カバー1が吸着ヘッド部20に装着された状態において、一方のシート材3aに設けられた把持部12aと、他方のシート材3bに設けられた把持部12bとは、図1に示すように、リムーバー2を挟んで上下方向における互いに反対側に配置される。また、図2に示すように、下方側のシート材3aの本体領域Aは、磁力発生面201を覆うように配置される。このとき、シート材3a及び3bそれぞれの本体領域Aは膨出部200を含む吸着ヘッド部20に沿って自然状態よりも伸長した伸長状態となっている。そして、シート材3aの本体領域Aにおける磁力発生面201と当接する部分が略平坦面となっている。
【0040】
次いで、使用者は、美容剤4が塗布された肌面に、カバー1を装着したリムーバー2の吸着ヘッド部20を近づける。これにより、美容剤4が、磁力発生面201の磁力により、磁力発生面201を覆うカバー本体部10の表面に吸着される。このとき、カバー本体部10は、吸着された美容剤4と磁力発生面201との間に磁力によって狭持された状態となり、吸着ヘッド部20の磁力発生面201上に接触した状態に維持されている。
【0041】
上述のようにカバー本体部10の表面に吸着された美容剤4を廃棄する際、使用者は、2つの把持部12aと12bとを吸着ヘッド部20の先端側へ向けて表裏反転変形させる。把持部12の表裏反転変形は、美容剤4が磁力発生面201からの磁力により吸引されるため、リムーバー2をどの方向に向けて行ってもよいが、美容剤4の散逸を低減する観点から、磁力発生面201を上方に向けた状態で行うことが好ましい。
【0042】
次いで、使用者は、把持部12aと12bとを交互に吸着ヘッド部20の先端方向へ変位させつつ、図5に示すように、カバー本体部10を吸着ヘッド部20から引き剥がすようにして表裏反転変形させる。これにより、吸着された美容剤4は、カバー本体部10における吸着ヘッド部20から引き剥がされた部分と、磁力発生面201上に接触している部分との間に形成される折り返し部分15に寄せ集められる。
【0043】
その後、引き続き把持部12を吸着ヘッド部20の先端方向へ変位させ、カバー本体部10の表裏反転変形を完了させると、美容剤4がカバー本体部10内に収容された状態となる。このようにカバー本体部10内に収容された美容剤4は、カバー1内に収容された状態で美容剤4の廃棄場所に廃棄することができる。なお、上述したカバー本体部10の表裏反転変形は、吸着ヘッド部20の先端を上方へ向けた状態で行うことも可能である。
【0044】
次に、本例の作用効果について説明する。カバー1は、図1に示すように着脱可能に吸着ヘッド部20に装着することができ、かつ、表裏反転変形可能な袋状に形成されている。そのため、リムーバー2により肌から取り除いた美容剤4がカバー外部へ漏出する等、意図せず散逸することを抑制することができる。
【0045】
また、図4に示すように、カバー1を構成する2枚のシート材3が、それぞれカバー本体部10となる本体領域Aと把持部12となる把持部領域Bとを連ねた形状を有している。そして、図3に示すように本体領域Aの外周部30のみが接合され、2つの把持部12が設けられている。そのため、2つの把持部12をそれぞれ吸着ヘッド部20の先端方向へ変位させることにより、カバー1を吸着ヘッド部20から引き剥がす際の表裏反転変形をより容易に行うことができる。その結果、カバー1はより使用しやすいものとなる。
【0046】
また、カバー本体部10は伸縮性を有しており、吸着ヘッド部20を覆った状態において伸長状態となるよう構成されている。そのため、カバー本体部10は、吸着ヘッド部20の外形に倣った形状となり、カバー本体部10と吸着ヘッド部20との間にしわ等による空隙が生じにくくなる。そのため、カバー1は、美容剤4に作用する磁力が上述の空隙により弱まることを抑制し、美容剤4を確実に吸着させることができる。
【0047】
また、カバー1は、その内表面13が凹凸面よりなり、外表面14が平滑面よりなるよう形成されている。そのため、カバー本体部10は、吸着ヘッド部20を挿入する際の摩擦力を適度に軽減できるものとなる。その結果、カバー1は、吸着ヘッド部20により装着しやすいものとなる。また、上記凹凸面が把持部12にも形成されているため、把持部12と使用者の指とが滑りにくくなり、カバー1がより使用しやすいものとなる。
【0048】
また、吸着ヘッド部20は、カバー本体部10により覆われる部分がリムーバー2の下方に膨出した膨出部200を有し、その頂面部分に磁力発生面201を有している。これにより、磁力発生面201がリムーバー2の長手方向における先端面に形成される場合よりもリムーバー2は、磁力発生面201の面積を広くしやすくなり、磁力発生面201に吸着される美容剤4の量が多くなる。そのため、カバー1は、リムーバー2に適用することにより、美容剤4の意図しない散逸を防止する作用効果をより効果的に発揮させることができるものとなる。
【0049】
また、カバー1は、2枚のシート材3を重ねるとともに、その周囲の一部を接合することにより形成されている。そのため、上述のようにカバー1は安価かつ生産性のより高いものとなる。
【0050】
また、2枚のシート材3の本体領域Aの外周形状は円弧状を呈している。そのため、カバー1は、吸着ヘッド部20への装着や表裏反転変形の際等に、カバー1の変形に伴う応力がシート材3の接合領域(外周部30)に集中しにくい形状となる。そのため、カバー1は、脱着時等に破れにくくなり、美容剤4が漏出しにくいものとなる。
【0051】
このように、カバー1は、着脱可能に吸着ヘッド部20に装着することができ、かつ、表裏反転変形可能な袋状に形成されている。これにより、上述したように、リムーバー2により肌から取り除いた美容剤4を、意図に反して散逸することを抑制することができ、リムーバー2の使いやすさを向上させることができる。
【0052】
なお、本例のリムーバー2をイオン導入器として用いる場合には、以下のようにして使用することができる。使用者は、リムーバー2を使用する前に、予め電荷を帯びた美容成分を肌に塗布しておく。なお、当該電荷を帯びた美容成分は、磁力により吸引されないものであれば、予め美容剤4と混合しておくこともできる。この場合には、リムーバー2により美容剤4を肌表面から除去した後に、上記美容成分が肌表面に残り、塗布された状態となる。上記美容成分としては、例えば、L−アスコルビン酸−2−リン酸ナトリウム等を使用することができる。
【0053】
使用者は、第1電極21が手から突出し、かつ、第2電極22が手と接触するようにリムーバー2を把持する。そして、使用者は、このようにリムーバー2を把持した状態で第1電極21を肌表面に接触させる。リムーバー2は、第1電極21と第2電極22との双方が肌表面と接触したことを契機として、両電極の間に電位差を発生させる。これにより、第1電極21から肌表面にイオン導入電流が流れ、これに伴って美容成分が肌内部へ浸透する。
【0054】
(実施例2)
本例のカバー102は、実施例1におけるカバー1の一方のシート材に、他方のシート材とは異なる形状の把持部122を設けた例である。カバー102は、図6に示すように、実施例1におけるシート材3と、シート材3とは異なる形状の把持部領域Dを有するシート材5とを重ね合わせて形成されている。なお、カバー102は、実施例1と同形状のカバー本体部10を有している。
【0055】
シート材5は、シート材3と同一形状の本体領域Aと、シート材3の把持部領域Bよりも延伸方向における長さが短くなるように形成された把持部領域Dとを連ねた形状を有している。把持部領域Dは、本体領域Aと反対側へ行くにつれて次第に幅が狭くなるように形成されている。また、把持部領域Dの先端は、本体領域Aと把持部領域Dとの境界Eと略平行な直線状に形成されている。なお、境界Eは、実施例1と同様に、本体領域Aの接合部分の両端間を結ぶ直線として定められる。その他は実施例1と同様である。
【0056】
本例のカバー102は、図6に示すように、シート材5の把持部領域Dからなる把持部122の先端部が、シート材3の把持部領域Bからなる把持部12の先端部よりも開口端11側に位置している。このように、把持部の形状は特に限定されることはなく、2枚のシート材のそれぞれに形成されていれば、実施例1と同様の作用効果を奏することができる。なお、本例のカバー102は、シート材3と磁力発生面201とが当接するように吸着ヘッド部20に装着してもよく、シート材5と磁力発生面201とが当接するように装着してもよい。美容剤4の散逸を低減する観点からは、シート材3と磁力発生面201とが当接するように吸着ヘッド部20に装着することが好ましい。
【0057】
(実施例3)
本例のカバー103は、実施例1におけるカバー1の一方のシート材に、本体領域Aのみからなるシート材を用いた例である。カバー103は、図7に示すように、実施例1におけるシート材3と、本体領域Aのみからなる形状を有するシート材6とを重ね合わせて形成されている。これにより、カバー103は、実施例1と同形状のカバー本体部10と、カバー本体部10から延設された1つの把持部12を有している。その他は実施例1と同様である。
【0058】
カバー103は、吸着ヘッド部20に対して、シート材3と磁力発生面201とが当接するようにして装着することが好ましい。これにより、カバー103を表裏反転変形する際に、美容剤4の吸着している磁力発生面201側に、その反対側よりも先行して折り返し部分15を形成することができる。なお、この場合において、シート材6側は、シート材3側の表裏反転変形が進展するにつれて、自然に表裏反転変形が行われる。
【0059】
このように、リムーバー用カバー1に設けられる把持部12は1つ以上であればよく、当該把持部12を吸着ヘッド部20から引き剥がすようにして表裏反転変形を行うことができる。
【0060】
なお、実施例1〜3には、2枚のシート材を接合してなるカバーの例を示したが、これに限定されることはない。例えば、柔軟性を有するシート状のプラスチック材を一端が閉塞された筒状に成形すれば、実施例1と同様の作用効果を有するカバーを得ることができる。
【0061】
また、カバー本体部10や把持部12の形状も、磁力発生面201を覆うことができ、かつ表裏反転変形が可能な形状であれば上記の実施例に限定されることはない。
【符号の説明】
【0062】
1 リムーバー用カバー
10 本体部
11 開口端
12 把持部
2 リムーバー
20 吸着ヘッド部
201 磁力発生面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7