(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ケースの外面に設けられ、前記接続部と前記タンクとの間のガスの流通を許容する導通状態と当該ガスの流通を遮断する遮断状態とに切り換えることが可能であり、かつ、前記遮断状態のときに前記タンクの内部の圧力を当該タンクの外部へ開放するガス抜き口を有する切換部をさらに備えている、
請求項1に記載の土木構造物補修用ブラスト装置。
前記研削材流量調整部は、前記接続部と前記タンクとの間のガス流路に配置され、前記接続部から前記タンクへ送られるガスの流量を調整することによって、前記タンクから前記ホースへ送られる前記研削材の流量を調整し、
前記切換部は、前記ガス流路における前記研削材流量調整部の下流側であって、前記研削材流量調整部と前記タンクとの間の前記ガス流路に配置されている、
請求項2に記載の土木構造物補修用ブラスト装置。
【背景技術】
【0002】
橋梁などの土木構造物は一般に鋼材が使用されており、これらの鋼材表面には腐食防止や美観向上のために塗装が施されている。このような塗装によって形成された塗膜は、施工直後から劣化が始まり、塗膜の減少や鋼材面の腐食へと進展していく過程において局所的な錆が発生するおそれがある。これらの局所的な錆を放置しておくと錆の急速な拡大につながることから、点検によって局所的な錆を早期発見し、速やかにそのような箇所を局所的に補修する必要がある。橋梁などを局所的に補修するときには、まず、橋梁を構成する鋼材の表面において錆が生じている箇所から錆を局所的に除去することによって鋼材の素地を露出させる素地調整の作業を行い、その後、錆が除去された箇所に部分的に塗装(いわゆる補修塗装)を行う。この素地調整の作業は、補修塗装の寿命を左右する重要な作業である。素地調整が不十分で錆が残存している箇所は、補修塗装をしても、塗装施工後に早期に発錆するおそれがある。
【0003】
そこで、従来では、素地調整のためにグラインダやジェットタガネなどの既存の電動工具や空圧工具などを使用して、錆で腐食している補修箇所から錆を除去することが行われる。しかし、腐食している部分の表面は細かな凹凸が多いため、これら工具により錆を完全に除去することは困難である。特に、橋梁等の構造部材の隅角部や狭隘箇所においては、工具をこれらの箇所に挿入することが困難であるので、当該箇所の十分な素地調整が難しい。そこで、このような点を考慮して、素地調整の質を確保するためには、砂などの粉末状の研削材を補修箇所に噴射して錆を除去するサンドブラスト工法の採用が望ましいと考えられる。
【0004】
サンドブラスト工法では、粉末状の研削材をノズルから吹き出す方式として3つの方式があり、具体的には、直圧式と、吸い上げ式と、重力式とがある。直圧式は、研削材を収容するタンクに高圧の空気を直接供給して研削材に圧力を与え、研削材を高圧の空気とともにノズルから吹き出す方式である。
【0005】
吸い上げ式は、高圧の空気が通るノズルの負圧によって研削材を収容したタンクから当該研削材を吸い上げてノズルから噴き出す方式である。このような吸い上げ式のブラスト装置は、通常、作業者が手で携行可能なブラストガンを備えている。このブラストガンは、研削材を格納するタンクと、ノズルとを有している。タンクは、ノズルの吸入側端部の下方の位置に配置されている。
【0006】
重力式は、高圧の空気が通るノズルの通路に向けて研削材をタンクから落とし込んで高圧の空気とともにノズルから吹き出す方式である。このような重力式のブラスト装置のブラストガンでは、研削材を収容するタンクは、ノズルの吸入側端部の上方の位置に配置されている。
【0007】
上記のような吸い上げ式および重力式のブラスト装置では、ノズルの向きを変えたときにノズルとタンクとの間の相対的な位置が変わり、それによってノズルへの研削材の供給量が変化するので、サンドブラスト作業を安定して行うことが難しいという問題がある。また、吸い上げ式および重力式のブラスト装置(および工具)は、ノズルとタンクが一体となった構造であるため、ある程度の形状、大きさを有することから狭隘箇所での施工に限界がある。
【0008】
このような吸い上げ式および重力式の欠点を考慮すれば、橋梁などの隅角部や狭隘箇所が多い場所を素地調整をする場合には、ノズルの向きによって研削材の供給量が変化しにくく、ノズルのみを研削対象箇所に接近させることができる直圧式が好ましいと考えられる。
【0009】
直圧式のブラスト装置としては、例えば特許文献1に記載されている装置がある。この装置は、研削材が収容された回収タンクと加圧タンクとを別個に備えている。この装置では、加圧タンクへ所定量の研削材を充填した後、加圧タンクに高圧の空気を供給して研削材を高圧の空気とともにノズルから噴射してサンドブラストを行う。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、特許文献1記載のような直圧式のブラスト装置では、研削材が充填された加圧タンクには高圧のガスが注入されるので、通常、タンクとして高い内圧に耐えられるように鋼製で重い密閉容器が採用される。そのため、直圧式のブラスト装置では全体の重量が重くなるため、当該ブラスト装置を運搬することが容易ではなく、作業場所が限定されるという欠点がある。そのため、直圧式のブラスト装置を橋梁などにおけるさびが発生しやすい箇所である隅角部や狭隘箇所の近くまで移動させ、当該隅角部や狭隘箇所においてブラスト作業を行なうことが難しいという問題がある。
【0012】
また、直圧式のブラスト装置の運搬を容易にするために、回収タンクなどの回収機構を省略して、加圧タンクにあらかじめ研削材を充填した状態でブラスト装置を作業場所に運搬することも考えられるが、この場合、使用できる研削材の量が限られるので、錆の大きさや程度に応じて研削材の流量を最適に調整することにより、研削材の使用量を抑える必要がある。しかし、従来の直圧式のブラスト装置では、装置本体が大型でかつ大きい重量を有しているので、作業場所の近くまで搬送してもノズルから離れた場所に装置本体を設置せざるをえない。したがって、たとえ研削材のための流量調整弁が装置本体に取り付けられていても、ノズルを持っている作業者が、研削材の噴射中に、補修対象箇所の材質や状態などの諸条件に応じて流量調整弁を操作して研削材の流量調整を行うことが困難である。その結果、研削材の消費を抑えることが難しく、タンクに研削材を充填する頻度が増加するという問題がある。
【0013】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、土木構造物における補修対象箇所へ容易に移動することが可能であり、かつ、研削材の消費を抑えながら補修対象箇所の錆を確実に除去することが可能な土木構造物補修用ブラスト装置およびそれを用いた土木構造物補修方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、直圧式のブラスト装置を用いて土木構造物の局所的補修方法を行なう場合に、タンクの耐圧性を確保しながらタンクの軽量化を達成することにより、ブラスト装置の移動性の向上ならびにそれによる補修作業の作業性の向上を可能にしたものである。
【0015】
すなわち、本発明は、土木構造物の局所的補修をするためにはノズルの向きに制限を受けない直圧式のブラスト装置を採用するにあたり、直圧式のタンクは耐圧性確保のために鋼製の重い密閉容器を採用しているので軽量化が難しいという従来の欠点を鑑み、本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、従来の鋼製のタンクよりも軽い材料からなる樹脂製または軽金属製のタンクを採用することを検討した。ここで、直圧式によってサンドブラストを行なうために必要なガスの圧力は0.1〜0.8MPa程度であればブラスト用の研削材を良好にノズルから噴出させることができることに発明者らは着目し、この程度の圧力であればペットボトルなどからなる樹脂製のタンクまたは軽金属製のタンクでも十分に耐えることが可能であることを見出した。そのような観点から本発明を創作するにいたったものであり、これによって、直圧式のタンクの軽量化を可能にしている。また、本発明は、このような軽量化されたタンクをケースに格納することによって、タンクの破損防止およびタンク破裂時の防護も達成するものである。さらに、本発明は、ケース内部に格納されたタンクから排出される研削材の流量をケース外部から調整可能な構成にすることより、局所的補修の作業中に、研削材の流量を容易に調整できるようにして、限られたタンクの容量であっても研削材を有効に利用できるようにしたものである。
【0016】
具体的には、本発明の土木構造物補修用ブラスト装置は、土木構造物において局所的に生じる錆に対して研削材を噴射することによって錆を除去するブラスト装置であって、前記研削材を収容する樹脂製または軽金属製のタンクであって、前記研削材が収容された空間部と、前記タンクの内部に前記研削材を加圧するためのガスを導入するための導入口と、前記研削材および前記ガスを排出するための排出口とを有する少なくとも1個のタンクと、前記タンクを覆うように格納するケースと、前記ケースの外部に配置される前記ガスを加圧するガス加圧源に接続可能な形状を有し、かつ、前記タンクの前記導入口に連通する接続部と、上流側端部および下流側端部を有しており、前記上流側端部が前記排出口に連通し、前記下流側端部が前記ケースの外部に配置されたホースと、前記ホースの下流側端部に接続されたノズルと、前記ケースの外面に設けられ、前記タンクから前記ホースへ送られる前記研削材の流量を調整する研削材流量調整部とを備えていることを特徴とするものである。
【0017】
かかる構成によれば、研削材を収容した樹脂製または軽金属製のタンクは、従来のスチールなどで製造された圧力容器と比較して軽量であるので、作業者はタンクを格納したケースを手で持つなどして補修対象箇所の近傍まで容易に搬送することが可能である。また、このような軽量化されたタンクは、ケースに格納されているので、タンクが土木建造物等に直接接触することが回避されているので、タンクの破損のおそれを低減している。さらに、このようなタンクをケースに格納した状態で補修対象箇所の近傍まで搬送した後、接続部にケースの外に配置されたコンプレッサなどのガス加圧源を接続して、接続部を介してガス加圧源から供給されるガスをタンクへ直接供給することが可能である。これにより、タンク内部の研削材およびガスをタンクに接続されたホースおよびノズルを介して補修対象箇所へ向けて噴射して補修対象箇所の錆を局所的に除去することが可能である。その結果、土木構造物における補修対象箇所に発生している錆を確実に除去することが可能になる。また、研削材を直圧式で噴射、すなわち、タンク内部の研削材にガスによって圧力を与え、ノズルを介して研削材を噴射するので、ノズルの向きに関係なく研削材を所定の流量で安定して供給することが可能になり、安定した局所補修作業が可能である。しかも、研削材の流量を調整する研削材流量調整部がケースの外面に設けられているので、局所的な補修作業中に、補修対象箇所の材質や状態をなどの諸条件に応じて、容易に研削材の流量を調整することが可能である。そのため、研削材の消費を抑えながら補修対象箇所の錆を確実に除去することが可能である。
【0018】
前記ケースの外面に設けられ、前記接続部と前記タンクとの間のガスの流通を許容する導通状態と当該ガスの流通を遮断する遮断状態とに切り換えることが可能であり、かつ、前記遮断状態のときに前記タンクの内部の圧力を当該タンクの外部へ開放するガス抜き口を有する切換部をさらに備えているのが好ましい。
【0019】
かかる構成によれば、補修作業の終了後に作業者がケース外面の切換部を操作して、接続部とタンクとの間のガスの流通を遮断するとともにタンク内部に残存する圧力をガス抜き口を通して大気開放することにより、研削材がタンク内部に残存する圧力によってノズルから漏れる量を低減することが可能である。また、補修作業の終了後は、タンク内部の圧力は、タンクの外部の大気圧と同じ圧力まで戻るので、タンクの移動保管時においてタンクの劣化や破損のおそれが低減する。
【0020】
また、前記研削材流量調整部は、前記接続部と前記タンクとの間のガス流路に配置され、前記接続部から前記タンクへ送られるガスの流量を調整することによって、前記タンクから前記ホースへ送られる前記研削材の流量を調整し、前記切換部は、前記ガス流路における前記研削材流量調整部の下流側であって、前記研削材流量調整部と前記タンクとの間の前記ガス流路に配置されているのが好ましい。
【0021】
かかる構成によれば、研削材流量調整部が接続部とタンクとの間のガス流路に配置される構成において、切換部がガス流路において研削材流量調整部の下流側に配置されているので、切換部がガス流路を遮断して、ガス抜き口を通してタンク内部の圧力をタンクの外部へ開放する際に、タンクからガスとともに微量の研削材がガス流路を逆流しても、当該研削材は研削材流量調整部に到達することなく、その下流側の切換部のガス抜き口から外部へ排出することが可能である。したがって、研削材流量調整部まで研削材が逆流するおそれを回避することができ、その結果、研削材流量調整部の内部に研削材が侵入して研削材流量調整部の動作異常や損傷などを回避することが可能である。
【0022】
また、前記ケースの外面に設けられ、前記ガス流路を開閉する開閉部をさらに備えており、前記開閉部は、前記ガス流路における前記切換部の下流側であって、前記切換部と前記タンクとの間の前記ガス流路に配置されているのが好ましい。
【0023】
かかる構成によれば、補修作業の終了後に作業者がケース外面の開閉部を操作することにより、切換部とタンクとの間のガスの流通を切換部の下流側の開閉部によって遮断することが可能である。その結果、切換部の切換操作時に、研削材がガスとともにガス流路を逆流して切換部に噛み込むおそれを回避することができ、切換部の動作異常や損傷などを回避することが可能である。
【0024】
また、前記タンクを迂回して前記接続部と前記ホースとの間を連通するバイパス配管をさらに備えているのが好ましい。
【0025】
かかる構成によれば、バイパス配管がタンクを迂回して接続部とホースとの間を連通するので、タンクからホースへ向かう研削材を、バイパス配管を通って接続部からホースへ向かうガスとホース内部で混合することが可能である。これにより、バイパス配管を経由したガスによって研削材を適度に希釈させて当該研削材を補修対象箇所へ噴射させることが可能になるので、研削材の過度の流出を抑えながら、補修対象箇所の材質や状態に合わせて研削材を最適な量で噴射させることができる。また、バイパス配管を通るガスが研削材とホース内部で合流して当該研削材を加速させるので、ノズル出口における研削材の噴射速度を上げるためにタンクにかける圧力を過度に上げる必要がなくなり、その結果、樹脂製または軽金属製のタンクの耐圧内で確実に研削材の噴射を行うことが可能である。
【0026】
また、前記バイパス配管は、前記ケースの内部に格納されているのが好ましい。
【0027】
かかる構成によれば、バイパス配管がケースの内部に格納されているので、ケースを持ち運ぶときにバイパス配管が土木構造物に接触するおそれが低くなり、作業性がさらに良くなる。
【0028】
また、前記ケースの外面に設けられ、当該バイパス配管を介して前記ホースへ供給される前記ガスの流量を調整するバイパスガス流量調整部をさらに備えているのが好ましい。
【0029】
かかる構成によれば、バイパス配管を介してホースへ供給されるガスの流量がバイパスガス流量調整部によって調整されるので、補修対象箇所の材質や状態などの諸条件に応じて、バイパス配管を流れるガスの流量を最適に調整することができる。しかも、バイパスガス流量調整部がケースの外面に設けられているので、局所的な補修作業中にバイパス配管を流れるガスの流量を容易に調整することが可能である。
【0030】
また、前記ノズルは、筒状のノズル本体と、前記ホースの端部の外周部に固定され、前記ホースの端部を前記ノズル本体の入口側端部に突き合わせるホース端末部材と、前記ホース端末部材と前記ノズル本体とを連結する連結部材とを備えており、前記ホースの端部における前記ノズル本体の入口側端部に突き合わされる部分は、当該ホースの内周面が前記入口側端部に当接するように当該ホースの半径方向外側にベルマウス状に拡大した舌部を有し、前記連結部材は、前記ホース端部の前記舌部が前記前記ノズル本体の入口側端部に当接した状態で、前記ホース端末部材と前記ノズル本体とを連結するのが好ましい。
【0031】
かかる構成によれば、ホース端部に形成されたベルマウス状の舌部がノズル本体の入口側端部に当接した状態で、ホース端末部材とノズル本体とが連結部材によって連結されるので、細いホースであっても、ノズル本体の端部と突き合わせた状態でシール性を維持しながらノズル本体と連結することが可能である。その結果、太いホースよりも曲げやすい細いホースを採用することが可能になり、その結果、ホースに接続されたノズルを補修対象箇所の錆へ容易に向けることが可能になる。
【0032】
また、前記ケースの内面と前記タンクとの間には、緩衝材が設けられているのが好ましい。
【0033】
かかる構成では、タンクの移動時などにおいてタンクがケースに衝突するときの衝撃を緩衝材によって緩和することが可能であり、樹脂製または軽金属製のタンクの破損を確実に防止することが可能である。
【0034】
本発明の土木構造物補修方法は、上記の土木構造物補修用ブラスト装置を用いた土木構造物補修方法であって、前記研削材を収容した前記タンクを前記ケースに収容するとともに前記研削材流量調整部を前記ケースの外面に設けることによって、当該タンクおよび当該研削材流量調整部を1つの前記ケースにまとめた状態で、前記土木構造物の補修対象箇所の近傍まで前記ケースを搬送する搬送工程と、前記ケースの外部の前記ガス加圧源から前記タンクの内部へ前記接続部を介してガスを圧送することにより前記研削材に圧力を加えることにより、当該タンクの排出口から前記タンク内部の研削材を前記ガスとともに当該タンクの外部へ排出し、さらに、前記タンクの外部へ排出された前記研削材およびガスを前記タンクの排出口に連通するホースを介して当該ホースに接続されたノズルへ送り、当該ノズルから前記研削材を前記補修対象箇所へ向けて噴射することにより、前記補修対象箇所の錆を局所的に除去するブラスト工程と、前記ケースの外面に設けられた前記研削材流量調整部を操作することにより、前記タンクから前記ホースへ送られる前記研削材の流量を調整する調整工程と、を含むことを特徴とする。
【0035】
上記のように、本発明の土木構造物の局所的補修方法では、スチールなどからなる圧力容器と比較して軽量である樹脂製または軽金属製のタンクに粉末状の研削材を収容し、タンクおよび研削材流量調整部を1つのケースにまとめた状態で当該ケースを土木構造物の補修対象箇所の近傍まで搬送するようにしているので、研削材を収容したタンクの移動が容易になり、補修作業の作業性が大幅に向上する。また、このような軽量化されたタンクは、ケースに収容されているので、タンクが搬送中に土木建造物等に直接接触することが回避されているので、タンクの破損のおそれを低減している。タンクをケースに収容した状態で補修対象箇所の近傍までタンクを搬送し、その後、ケース外部のガス加圧源からタンクへガスを圧送することにより、タンク内部の研削材およびガスをタンクに接続されたホースおよびノズルを介して補修対象箇所へ向けて噴射して補修対象箇所の錆を局所的に除去することが可能である。これにより、土木構造物における補修対象箇所に発生している錆を確実に除去することが可能になる。また、研削材を直圧式で噴射、すなわち、タンク内部の研削材にガスによって圧力を与え、ノズルを介して研削材を噴射するので、ノズルの向きに関係なく研削材を所定の流量で安定して供給することが可能になり、安定した局所補修作業が可能である。さらに、上記のようにノズルから研削材を噴射して局所的な補修作業をしているときに、ケースの外面に設けられた研削材流量調整部を操作することにより、補修対象箇所の材質や状態をなどの諸条件に応じて、容易に研削材の流量を調整することが可能である。そのため、研削材の消費を抑えながら補修対象箇所の錆を確実に除去することが可能である。
【発明の効果】
【0036】
以上説明したように、本発明によれば、土木構造物における補修対象箇所へ容易に移動することが可能であり、かつ、研削材の消費を抑えながら補修対象箇所の錆を確実に除去することができる。
【発明を実施するための形態】
【0038】
つぎに本発明のブラスト装置について図面を参照しながらさらに詳細に説明する。
【0039】
図1〜5に示されるブラスト装置1は、橋梁などの土木構造物において局所的に生じるサビを除去するための局所的補修に用いられるものである。
【0040】
橋梁の構成部材は、高度の耐食性能を有する多重塗装を施しているが、環境その他いろいろな要因により局所的な錆が比較的多く発生している。局所的な錆は、具体的には構成部材が入り組んだ隅角部や狭隘箇所、ボルト締結箇所などに多く、これらの箇所には通常の補修工具等が入りにくいため、素地調整作業が難しい状況である。
【0041】
そこで、本実施形態に係わるブラスト装置1は、
図1〜5に示されるように、作業者が手で持って橋梁における上記の補修箇所まで搬送可能な軽量構造であり、かつ、研削材Sを確実にサビに向けて噴射することが可能な構造を有している。具体的には、ブラスト装置1は、研削材Sを収容したペットボトルなどからなる樹脂製の4本のタンク2と、タンクを格納するケース3と、ホース4と、ホース4端部に接続されたノズル5と、ケース3外部のコンプレッサ61に接続される接続部6と、圧力調整弁7と、圧縮空気をタンク2側およびバイパス側の2系統に分配する分配部8と、分配部8からタンク2へ圧縮空気を供給する圧縮空気供給部9と、タンク2から下流側の合流部12へ研削材Sを圧縮空気とともに搬送する研削材搬送部10と、分配部8からタンク2を迂回させて圧縮空気を下流側の合流部12へ供給するバイパス部11と、上記の研削材搬送部10によって搬送される研削材Sとバイパス部11から供給される圧縮空気とを合流させる合流部12とを備えている。合流部12において合流された研削材Sおよび圧縮空気は、ホース4を通ってノズル5から噴射される。
【0042】
ブラスト装置1は、
図1〜2に示されるように1つのケース3にまとめられて1つのユニットを構成しており、作業者はケース3を橋梁の補修対象箇所の近傍まで搬送した後、外部のコンプレッサ61に接続配管62を介して接続するだけで、サンドブラスト作業を行うことができる。
【0043】
以下、ブラスト装置1の各構成要素についてさらに詳細に説明する。
【0044】
タンク2は、研削材Sを収納したペットボトルなどからなる樹脂製の容器である。タンク2は、研削材Sが収容された空間部2cと、タンク2の内部に研削材Sを加圧するための空気を導入するための導入口2aと、研削材および空気を排出するための排出口2bとを有する。導入口2aは、タンク2の上端部に形成され、排出口2bは、タンク2の底部に形成されている。
【0045】
タンク2には、通常のサンドブラスト用の砂(砂、ガラス、アルミナなど)からなる研削材Sが収容される。タンク2は、このような研削材Sを噴射するために必要な圧力0.8MPa程度の圧力に耐えるものであればよい。本実施形態のタンク2としては、例えば、1.5リットルの容量のペットボトル(すなわち、ポリエチレンテレフタレート樹脂からなるボトル)が採用される。なお、ペットボトルの設計上の耐圧は1.0MPa程度であるので、ペットボトルは、上記の0.8MPa程度の使用圧力に耐えることが可能である。タンク2として1.5リットルの容量のペットボトルを採用した場合、4本のタンク2の容量の合計は、6リットルになる。4本のタンク2は、台座25の上に載った状態でケース3に収納される。
【0046】
タンク2の容量については、本発明はとくに限定するものではないが、例えば、橋梁などの巨大構造物の局所的な素地調整を行うために、研削材Sの充填回数を極力減らすことを考慮した場合、ケース3内部のタンク2の容量の合計が2〜10リットル程度であるのが好ましい。
【0047】
ケース3は、4本のタンク2を収容し、当該タンク2よりも硬質の材料で製造された容器である。ケース3は、例えば、直方体形状のアルミハードケースまたはアルミトランクケースなどからなる。ケース3は、ケース本体3aと、蓋3bとからなる。ケース本体3aは、中空箱体であり、4本のタンク2などを収容する空間部3cを有する。ケース本体3aの上面3dには、作業者が把持するための取っ手3eが設けられている。また、上面3dには、ホース4が通る貫通孔3j(
図5参照)が形成されている。蓋3bは、ケース本体3aの開口部3fの外周縁においてヒンジ3g(
図2参照)を介して開閉自在に取り付けられている。また、蓋3bは、止め具3hによって、ケース本体3aの開口部3fを強固に閉じることができる。
【0048】
図2に示されるように、ケース本体3aの内周面および蓋3bの内面には、タンク2が受ける側方からの衝撃を緩和する緩衝材としてスポンジ板などからなる緩衝シート27が貼り付けられている。これにより、ペットボトル製のタンク2が剛性の高いケース3の内面に接触して損傷することを回避することが可能である。
【0049】
また、ケース3内部には、
図2、
図4および
図6〜7に示されるように、タンク2載せるための台座25が収容されている。台座25は、軽量化のために樹脂によって製造された中空の角錐台であり、台座25の下面側は開放されている。タンク2の底部に接続された合流管19は、台座25の上面を貫通して当該台座25の内部に収容されている。また、合流管19に接続された合流コネクタ20も、台座25内部に収容されている。そのため、合流管19および合流コネクタ20は、台座25によって覆われているので、タンク2やケース3から押圧力などを受けて合流管19および合流コネクタ20が破損するおそれを回避することが可能である。
【0050】
また、4本のタンク2は、共通の一個の台座25の上面において、合流管19の上端部に螺合するボルト28(
図7参照)などによって固定されている。これにより、タンク2へ研削材Sを補給するときに、これら複数のタンク2をケース3からまとめて取り出すときに容易に取り出すことが可能である。
【0051】
さらに、タンク3の底部と台座25との間には、タンク3が受ける下方からの衝撃を緩和する緩衝材としてゴムなどからなる緩衝シート26が設けられている。緩衝シート26は、これにより、ペットボトル製のタンク2が台座25を通して下方からの衝撃を直接受けて損傷することを回避することが可能である。緩衝シート26は、例えば、スポンジシートなどからなる。緩衝シート26には、複数本のスリット26a(
図6参照)が並んで形成され、合流管19は当該スリット26aを貫通している。
【0052】
また、タンク3同士の間には、粘着シート30(
図2および
図6参照)が貼り付けられているので、タンク3を互いに離れないように固定しながらタンク3同士の接触を防止している。
【0053】
ホース4は、
図1および
図3〜4に示されるように、入口側端部4aと出口側端部4bと有している。ホース4の入口側端部4aは、研削材搬送部10(すなわち、合流管19、合流コネクタ20、および研削材供給管21)、および合流部12を介して、タンク2の排出口2bに連通している。ホース4の出口側端部4bは、ケース3の外部に配置され、ノズル5が接続されている。ホース4は、ケース3の外部に延びる細くてフレキシブルな管であり、ウレタン樹脂などの柔軟性の高い樹脂によって製造される。
【0054】
ノズル5は、
図9〜10に示されるように、ホース4の出口側端部4bに接続可能であり、小型で手で持ちやすい形状を有している。具体的には、ノズル5は、筒状のノズル本体51と、ホース4の出口側端部4bに接続されたホース端末部材52と、当該ホース端末部材52とノズル本体51とを連結する連結部材53とを備えている。
【0055】
ノズル本体51は、細長い筒状を有しており、先端に向かうにつれて細くなっている。ノズル本体51の先端には、噴射口50が開口している。
【0056】
ホース端末部材52は、ホース4の出口側端部4bの外周部に固定可能な筒状の形状を有しており、その内部にはホース4が挿入可能な挿入孔52aが形成されている。また、ホース端末部材52の外周面には、おねじ部52bが形成されている。さらに、ホース端末部材52は、ホース4の出口側端部4bをノズル本体51の入口側端部51aに突き合わせることができるように、ノズル本体51の入口側端部51aに対向する端面52cを有する。
【0057】
ホース4の出口側端部4bのうちホース端末部材52を貫通して端面52cから突出している部分が、ノズル本体51の入口側端部51aに突き合わされる。その部分は、当該ホース4の内周面が前記入口側端部51aに当接するように当該ホース4の半径方向外側にベルマウス状に拡大した舌部4b1になるように加工処理されている。
【0058】
連結部材53は、筒状の部材からなり、ノズル本体51の入口側端部51aが嵌入されている。さらに、連結部材53の内周面53bには、ホース端末部材52のおねじ部52bに螺合可能なめねじ部53cが形成されている。
【0059】
連結部材53は、そのめねじ部53cをホース端末部材52のおねじ部52bに螺合させることにより、ホース4の出口側端部4bの先端に形成された舌部4b1がノズル本体51の入口側端部51aに当接した状態で、ホース端末部材52とノズル本体51とを連結することが可能である。なお、
図9では、舌部4b1の形状をより明瞭に示すために、舌部4b1がノズル本体51の入口側端部51aから若干離間した状態が示されているが、実際には、ノズル5は、舌部4b1がノズル本体51の入口側端部51aに当接した状態で使用される。
【0060】
上記のように構成されたノズル5は、作業者が手で持つことが可能な大きさである。しかも、ノズル5は、ブラスト用の研削材Sを収容するタンクなどを有していないので、その外形形状はシンプルで出っ張っていない形状である。したがって、
図10に示されるように、作業者はノズル5の連結部材53などを指Fでつまんでそのノズル5の先端の噴射口50を橋梁Aのボルト締結箇所Pなどの隅角部や狭隘箇所に容易に向けることができるので、作業者の手の届く範囲であれば、奥深い箇所でのブラスト作業が可能である。
【0061】
接続部6は、
図1〜5に示されるように、ケース3外部のコンプレッサ61に通じる接続配管62と着脱自在に接続することが可能な形状を有する。接続部6は、圧力調整弁7、分配部8および圧縮空気供給部9を経由して、タンク2の導入口2aに連通する。
【0062】
圧力調整弁7は、コンプレッサ61から送られてきた圧縮空気の圧力をブラスト装置1で使用可能な圧力に調整し、かつ、圧力を安定させる弁であり、ケース3の外側の側面に取り付けられ、接続部6に一体に連結されている。なお、圧力調整弁7を接続部6から離して導入管13の途中に配置してもよい。
【0063】
図3〜4に示されるように、圧力調整弁7の下流側には、分配部8が接続されている。分配部8には、タンク2へ連通する導入管13とタンク2を迂回して合流部12に接続されるバイパス管22とが接続されている。圧力調整弁7で圧力調整された圧縮空気は、分配部8によって、導入管13とバイパス管22とへ分配される。
【0064】
圧縮空気供給部9は、
図3〜5に示されるように、分配部8に接続された圧縮空気導入用の導入管13と、当研削材流量調整バルブ14、三方弁15、ボールバルブ16、分配コネクタ17と、当該分配コネクタ17から分岐して4本のタンク2の導入口2aにそれぞれ接続された分配管18とを備えている。研削材流量調整バルブ14、三方弁15、ボールバルブ16および分配コネクタ17は、導入管13において上流側から順に配置されている。
【0065】
研削材流量調整バルブ14は、ケース3の外面、具体的には上面3dにおいて、接続部6とタンク2との間のガス流路、具体的には、分配部8と分配コネクタ17との間の導入管13に設けられている。研削材流量調整バルブ14は、導入管13を介してコンプレッサ61からタンク2へ供給する圧縮空気の圧力を調整することにより、タンク2からホース4へ送られる研削材Sの流量を調整する。
【0066】
三方弁15は、導入管13を通る圧縮空気を導通させる導通状態と当該圧縮空気を遮断する遮断状態とを切り換えることが可能な弁であり、遮断状態においてコンプレッサ61からタンク2へ供給する圧縮空気の圧力を外部へ逃がして、ブラスト作業終了後の余分な圧力を逃がすことが可能なガス抜き口15aを有する。三方弁15は、ケース3の上面3dにおいて、導入管13において研削材流量調整バルブ14よりも下流側に配置されている。三方弁15は、本発明の切換部に対応する。
【0067】
ボールバルブ16は、導入管13を開閉することにより、圧縮空気を導通させる導通状態と当該圧縮空気を遮断する遮断状態とを切り換えることが可能な弁であり、本発明の開閉部に対応する。ボールバルブ16は、ケース3の上面3dにおいて、三方弁15よりも下流側であって当該三方弁15とタンク2との間に配置されている。また、研削材流量調整バルブ14による研削材の流量を調整する機能を補完するために、ボールバルブ16の開度を微妙に調整することにより、タンク2に導入される圧縮空気の流量を微調整することが可能であり、その結果、ブラスト作業中にノズル5から噴射される研削材Sの流量を微調整することが可能である。
【0068】
分配コネクタ17は、上記導入管13の下流端に設けられている。分配コネクタ17には、
図3〜4に示されるように、4本の分配管18の上流側端部が接続されている。分配管18の下流側端部は、それぞれタンク2の上端側の導入口2aに接続されている。
【0069】
研削材搬送部10は、4本のタンク2の排出口2bにそれぞれ接続された合流管19と、4本の合流管19を合流する合流コネクタ20と、合流コネクタ20から合流部12へ研削材Sを圧縮空気とともに供給する研削材供給管21とを備えている。研削材供給管21は、研削材Sを搬送する管であり、合流コネクタ20と後述の合流部12との間を接続する。
【0070】
バイパス部11は、バイパス管22と、バイパスエア流量調整バルブ23と、ボールバルブ24とを備えている。
【0071】
バイパス管22は、タンク2を迂回して接続部6とホース4との間、具体的には、分配部8と合流部12との間を連通する。バイパス部管22の内部には、コンプレッサ61から供給される圧縮空気が流れる。
【0072】
図4に示されるように、バイパス管22のうちボールバルブ24と合流部12との間の部分22aは、ケース3の内部に収容されている。なお、バイパス管22の全体をケース3の内部に収容してもよい。
【0073】
バイパスエア流量調整バルブ23は、バイパス部11に設けられ、当該バイパス部11を介してホース4へ供給される圧縮空気の圧力を調整する。バイパスエア流量調整バルブ23は、本発明のバイパスガス流量調整部に対応する。
【0074】
ボールバルブ24は、バイパス管22の開閉をすることにより、圧縮空気を導通させる導通状態と当該圧縮空気を遮断する遮断状態とを切り換えることが可能な弁である。ボールバルブ24は、バイパスエア流量調整バルブ23の下流側に配置されている。
【0075】
バイパス部11は、合流部12を経由してノズル5方向に高速のバイパスエアを送ることが可能である。
【0076】
合流部12は、
図3〜4に示されるように、バイパス部11を流れる圧縮空気と研削材供給管21を流れる研削材Sを含む圧縮空気とを混合する部分である。すなわち、合流部12は、バイパス部11の下流端に接続された第1入力部12aと、研削材供給管21の下流端に接続された第2入力部12bと、ホース4の入口側端部4aに接続された出力部12cとを備えている。合流部12によってバイパス部11を流れる圧縮空気と研削材供給管21を流れる研削材Sを含む圧縮空気とが混合された後、その混合された研削材Sおよび圧縮空気はホース4に供給される。
【0077】
図2〜3および
図5に示されるように、本実施形態のブラスト装置1では、圧縮空気供給部9およびバイパス部11のバルブ類、すなわち、研削材流量調整バルブ14、三方弁15、ボールバルブ16、バイパスエア流量調整バルブ23およびボールバルブ24は、ケース3の上面3dに集中して配置されているので、作業者はノズル5から研削材Sを噴射してブラスト作業を行いながら、これらのバルブ操作を容易に行うことが可能である。しかも、ブラスト装置1を移動中にこれらのバルブが障害物に当たるおそれも低減する。
【0078】
ケース3の外に配置されたコンプレッサ61は、接続配管62を介して接続部6に接続される。コンプレッサ61から接続配管62を介して送られた圧縮空気は、圧力調整弁7によってペットボトル製のタンク2の耐圧(0.8MPa以下)まで下げられた後、研削材流量調整バルブ14によって補修対象箇所の条件に応じて流量調整を細かく行うことにより、タンク2内部へ0.1〜0.8MPa程度の圧縮空気を供給することが可能である。
【0079】
(ブラスト装置1内部の空気の流れ)
上記のブラスト装置1は、以下のような経路で空気が流れる。まず、
図3に示されるように、コンプレッサ61によって生成された圧縮空気は、接続配管62を介してブラスト装置1の接続部6から供給される。接続部6から供給された圧縮空気は、圧力調整弁7によって減圧された後、導入管13とバイパス管22へ分岐して流れる。
【0080】
導入管13を流れる圧縮空気は、研削材流量調整バルブ14によって所定の流量に調整され、その後、三方弁15ボールバルブ16および分配コネクタ17を通過した後、分配コネクタ17に接続された分配管18から4本のタンク2へそれぞれ供給される。4本のタンク2に収容された研削材Sは、圧縮空気とともに合流管19および合流コネクタ20を介して研削材供給管21へ合流する。研削材供給管21を流れる研削材Sおよび圧縮空気は合流部12へ導かれる。
【0081】
一方、バイパス部11を流れる圧縮空気は、バイパスエア流量調整バルブ23によって所定の流量に調整された後、ボールバルブ24を通過して合流部12へ導かれる。合流部12では、上記の研削材供給管21を流れる研削材Sおよび圧縮空気とバイパス部11を経由して流れる圧縮空気とが混合される。
【0082】
そして、合流部12で所定の混合割合で混合された研削材Sおよび圧縮空気は、ホース4を介してノズル5から噴射される。
【0083】
(橋梁の局所的補修方法についての説明)
つぎに上記のように構成されたブラスト装置1を用いた橋梁の局所的補修方法について説明する。
【0084】
本実施形態に係わる橋梁の局所的補修方法は、上記のブラスト装置1を用いて橋梁において局所的に生じるサビを除去するための局所的補修方法であり、搬送工程と、ブラスト工程と、研削材流量調整工程とを含む。
【0085】
具体的には、まず、研削材Sを収容したタンク2をケース3に収容するとともにバルブ類(すなわち、研削材流量調整バルブ14、三方弁15、ボールバルブ16、バイパスエア流量調整バルブ23およびボールバルブ24)をケース3の上面3dに設けることによって、当該タンク2および上記のバルブ類を1つのケース3にまとめた状態で、ブラスト装置1を橋梁の補修対象箇所の近傍までケース3を搬送する(搬送工程)。補修対象箇所は、通常の補修工具等が入りにくく補修作業がしづらい箇所であり、例えば、
図10に示されるような橋梁Aのボルト締結箇所付近などの隅角部や狭隘箇所などである。
【0086】
つぎに、ブラスト装置1の接続部6にコンプレッサ61に接続された接続配管62を接続し、
図10に示されるように、作業者は指Fでノズル5の連結部材53などを把持しながらノズル5の噴射口50をボルト締結箇所Pなどの補修対象箇所へ向けて研削材Sを噴射することにより、補修対象箇所の錆を局所的に除去する(ブラスト工程)。
【0087】
ブラスト工程では、ケース3の外部のコンプレッサ61からタンク2の内部へ接続部6を介して圧縮空気を圧送することにより研削材Sに圧力を加えることにより、当該タンク2の排出口2bからタンク2内部の研削材Sを圧縮空気とともに当該タンク2の外部へ排出し、さらに、タンク2の外部へ排出された研削材Sおよび圧縮空気を、合流部12においてバイパス部11を経由してきた圧縮空気と混合した後に、混合された当該研削材Sおよび圧縮空気をホース4を介してノズル5へ送る。これによって、タンク2内部の研削材Sをノズル5から噴出させることが可能である。
【0088】
このブラスト処理を行なうときには、具体的には、ブラスト装置1のバルブ類を以下のような手順で操作を行う。
【0089】
まず、
図8(a)に示されるように、ケース2の上面3dに配置されたバイパス部11のボールバルブ24を開く操作をしてバイパス管22を導通状態にし、ノズル5から圧縮空気のみを吐出させる。このとき、タンク2に圧縮空気を供給するための圧縮空気供給部9のボールバルブ16は閉じている。
【0090】
ついで、
図8(b)に示されるように、ノズル5を補修対象箇所に向けた状態で、ケース2の上面3dに配置された圧縮空気供給部9の三方弁15およびボールバルブ16を開いて導入管13を導通状態にしてタンク2内部へ圧縮空気を送り、それによって研削材Sをタンク2からノズル5へ圧送する。これにより、タンク2から圧送されてきた研削材Sとバイパス部11を経由してきた圧縮空気とを合流部12内部で混合させた後にノズル5から噴出させ、補修対象箇所のブラスト処理を行なう。
【0091】
上記のようなブラスト処理をしている間、作業者は、補修対象箇所の錆の除去状態を見ながら、ケース2の上面3dに設置された研削材流量調整バルブ14およびバイパスエア流量調整バルブ23を操作して、ノズル5から噴射される研削材Sと圧縮空気の混合比率を変えるように調整する。このようにして、タンク2からホース4へ送られる研削材Sの流量を最適に調整する(調整工程)。
【0092】
ブラスト作業の終了後、
図8(c)に示されるように、まず、タンク2上流側のボールバルブ16を閉めて、研削材Sのノズル5への供給を中止する。このとき、バイパス部11のボールバルブ24は開いた状態を維持し、圧縮空気をバイパス管22および合流部12を通ってノズル5から噴射させ続ける。このように合流部12を圧縮空気が流れ続けることにより、合流部12およびその下流側のホース4の内部に残留する研削材Sをノズル5から排出することが可能である。
【0093】
その後、
図8(d)に示されるように、三方弁15を閉じるとともにガス抜き口15a(
図3参照)を開いて導入管13を大気へ開放する準備を行い、その後、タンク2上流側のボールバルブ16を開くことにより、当該タンク2の内部圧力を大気圧まで戻すことが可能である。
【0094】
また、ボールバルブ16を開くと同時にバイパス部11内部の圧縮空気が合流部12を経てタンク2へ流れ込むため、タンク2から合流部12までの間の研削材搬送部10(すなわち、合流管19、合流コネクタ20、および研削材供給管21)の内部に残っている研削材Sはタンク2に逆流して戻る。このとき、バイパス部11のボールバルブ24を徐々に閉じていくことにより、当該ボールバルブ24から合流部12までの区間およびタンク2から合流部12までの区間も大気圧に戻すことが可能である。
【0095】
(特徴)
(1)
本実施形態の土木構造物補修用ブラスト装置1では、研削材Sを収容するタンク2としてペットボトルなどの樹脂製タンクを採用しており、従来のスチールなどで製造された圧力容器と比較して軽量である。そのため、作業者はタンク2を格納したケース3を手で持つなどして橋梁の補修対象箇所の近傍まで容易に搬送することが可能である。また、このような軽量化されたタンク2は、ケース3に格納されているので、タンク2が橋梁などの土木建造物等に直接接触することが回避されているので、タンク2の破損のおそれを低減している。さらに、このようなタンク2をケース3に格納した状態で補修対象箇所の近傍まで搬送した後、接続部6にケース3の外に配置されたコンプレッサなどのコンプレッサ61を接続して、接続部6を介してコンプレッサ61から供給される圧縮空気をタンク2へ直接供給することが可能である。これにより、タンク2内部の研削材Sおよび圧縮空気をタンク2に接続されたホース4およびノズル5を介して補修対象箇所へ向けて噴射して補修対象箇所の錆を局所的に除去することが可能である。その結果、土木構造物における補修対象箇所に発生している錆を確実に除去することが可能になる。また、研削材Sを直圧式で噴射、すなわち、タンク2内部の研削材Sに圧縮空気によって圧力を与え、ノズル5を介して研削材Sを噴射するので、ノズル5の向きに関係なく研削材Sを所定の流量で安定して供給することが可能になり、安定した局所補修作業が可能である。
【0096】
しかも、研削材Sの流量を調整する研削材流量調整バルブ14がケース3の外面に設けられているので、局所的な補修作業中に、補修対象箇所の材質や状態をなどの諸条件に応じて、容易に研削材Sの流量を調整することが可能である。そのため、研削材Sの消費を抑えながら補修対象箇所の錆を確実に除去することが可能である。
【0097】
さらに、上記のようなブラスト装置1を用いれば、従来の大型のブラスト装置を用いて広範囲の床面や壁面をブラスト処理する場合と比較して、飛散する研削材Sが少量で済むので、補修対象箇所をビニール袋などで局所的に囲うことにより研削材Sを容易に回収することが可能である。
【0098】
(2)
また、本実施形態のブラスト装置1では、遮断状態のときにタンク2の内部の圧力を当該タンク2の外部へ開放するガス抜き口15aを有する三方弁15を備えているので、補修作業の終了後に作業者がケース3外面の三方弁15を操作して、接続部6とタンク2との間の圧縮空気の流通を遮断するとともにタンク2内部に残存する圧力をガス抜き口を通して大気開放することにより、研削材Sがタンク2内部に残存する圧力によってノズル5から漏れる量を低減することが可能である。
【0099】
(3)
また、本実施形態のブラスト装置1では、研削材流量調整バルブ14が接続部6とタンク2との間に配置された導入管13に配置される構成であり、かつ、三方弁15が導入管13において研削材流量調整バルブ14の下流側に配置されているので、三方弁15が導入管13を遮断して、ガス抜き口15aを通してタンク2内部の圧力をタンク2の外部へ開放する際に、タンク2から圧縮空気とともに微量の研削材Sが導入管13を逆流しても、当該研削材Sは研削材流量調整バルブ14に到達することなく、その下流側の三方弁15のガス抜き口15aから外部へ排出することが可能である。したがって、研削材流量調整バルブ14まで研削材Sが逆流するおそれを回避することができ、その結果、研削材流量調整バルブ14の内部に研削材Sが侵入して研削材流量調整バルブ14の動作異常や損傷などを回避することが可能である。
【0100】
(4)
また、本実施形態のブラスト装置1では、前記ケース3の外面に設けられ、前記導入管13を開閉するボールバルブ16をさらに備え、当該ボールバルブ16は、導入管13における三方弁15の下流側であって、三方弁15とタンク2との間に配置されているので、補修作業の終了後に作業者がケース3外面のボールバルブ16を操作することにより、三方弁15とタンク2との間の圧縮空気の流通を三方弁15の下流側のボールバルブ16によって遮断することが可能である。その結果、三方弁15の切換操作時に、研削材Sが圧縮空気とともに導入管13を逆流して三方弁15に噛み込むおそれを回避することができ、三方弁15の動作異常や損傷などを回避することが可能である。
【0101】
(5)
また、本実施形態のブラスト装置1では、バイパス管22がタンク2を迂回して接続部6とホース4との間を連通するので、タンク2からホース4へ向かう研削材Sを、バイパス管22を通って接続部6からホース4へ向かう圧縮空気とホース4内部で混合することが可能である。これにより、バイパス管22を経由した圧縮空気によって研削材Sを適度に希釈させて当該研削材Sを補修対象箇所へ噴射させることが可能になるので、研削材Sの過度の流出を抑えながら、補修対象箇所の材質や状態に合わせて研削材Sを最適な量で噴射させることができる。また、バイパス管22を通る圧縮空気が研削材Sとホース4内部で合流して当該研削材Sを加速させるので、ノズル5出口における研削材Sの噴射速度を上げるためにタンク2にかける圧力を過度に上げる必要がなくなり、その結果、ペットボトルからなる樹脂製のタンク2の耐圧内で確実に研削材Sの噴射を行うことが可能である。
【0102】
(6)
また、本実施形態のブラスト装置1では、バイパス管22がケース3の内部に格納されているので、ケース3を持ち運ぶときにバイパス管22が土木構造物に接触するおそれが低くなり、作業性がさらに良くなる。
【0103】
(7)
また、本実施形態のブラスト装置1では、バイパス管22を介してホース4へ供給される圧縮空気の流量がバイパスエア流量調整バルブ23によって調整されるので、補修対象箇所の材質や状態などの諸条件に応じて、バイパス管22を流れる圧縮空気の流量を最適に調整することができる。しかも、バイパスエア流量調整バルブ23がケース3の外面に設けられているので、局所的な補修作業中にバイパス管22を流れる圧縮空気の流量を容易に調整することが可能である。
【0104】
(8)
また、本実施形態のブラスト装置1では、ホース4端部に形成されたベルマウス状の舌部4b1がノズル本体51の入口側端部51aに当接した状態で、ホース端末部材52とノズル本体51とが連結部材53によって連結されるので、細いホース4であっても、ノズル本体51の端部と突き合わせた状態でシール性を維持しながらノズル本体51と連結することが可能である。その結果、太いホース4よりも曲げやすい細いホース4を採用することが可能になり、その結果、ホース4に接続されたノズル5を補修対象箇所の錆へ容易に向けることが可能になる。
【0105】
(9)
また、本実施形態のブラスト装置1では、ケース3の内面とタンク2との間には、緩衝シート27が設けられているので、タンク2の移動時などにおいてタンク2がケース3に衝突するときの衝撃を緩衝シート27によって緩和することが可能であり、ペットボトルからなる樹脂製のタンク2の破損を確実に防止することが可能である。
【0106】
(10)
また、本実施形態のブラスト装置1を用いた土木構造物補修方法では、スチールなどからなる圧力容器と比較して軽量であるペットボトルからなる樹脂製のタンク2に粉末状の研削材Sを収容し、タンク2およびバルブ類(すなわち、研削材流量調整バルブ14、三方弁15、ボールバルブ16、バイパスエア流量調整バルブ23およびボールバルブ24)を1つのケース3にまとめた状態で、当該ケース3を土木構造物の補修対象箇所の近傍まで搬送するようにしているので、研削材Sを収容したタンク2の移動が容易になり、補修作業の作業性が大幅に向上する。また、このような軽量化されたタンク2は、ケース3に収容されているので、タンク2が搬送中に土木建造物等に直接接触することが回避されているので、タンク2の破損のおそれを低減している。タンク2をケース3に収容した状態で補修対象箇所の近傍までタンク2を搬送し、その後、ケース3外部のコンプレッサ61からタンク2へ圧縮空気を圧送することにより、タンク2内部の研削材Sおよび圧縮空気をタンク2に接続されたホース4およびノズル5を介して補修対象箇所へ向けて噴射して補修対象箇所の錆を局所的に除去することが可能である。これにより、土木構造物における補修対象箇所に発生している錆を確実に除去することが可能になる。また、研削材Sを直圧式で噴射、すなわち、タンク2内部の研削材Sに圧縮空気によって圧力を与え、ノズル5を介して研削材Sを噴射するので、ノズル5の向きに関係なく研削材Sを所定の流量で安定して供給することが可能になり、安定した局所補修作業が可能である。さらに、上記のようにノズル5から研削材Sを噴射して局所的な補修作業をしているときに、ケース3の外面に設けられた研削材流量調整バルブ14を操作することにより、補修対象箇所の材質や状態をなどの諸条件に応じて、容易に研削材Sの流量を調整することが可能である。そのため、研削材Sの消費を抑えながら補修対象箇所の錆を確実に除去することが可能である。
【0107】
(11)
また、本実施形態の土木構造物補修方法では、補修される土木構造物が橋梁であり、補修対象箇所は、当該橋梁における狭隘箇所または隅角部である。したがって、このような橋梁においてこれまで補修塗装のための素地調整作業がしづらかった隅角部や狭隘箇所に研削材Sを収容したタンク2を搬送し、タンク2から排出された研削材Sおよび圧縮空気をノズル5からこれらの隅角部や狭隘箇所へ噴射することにより、橋梁において補修工具等が入りづらかった箇所の錆を局所的に確実に除去することが可能である。また、このように、橋梁の隅角部や狭隘箇所に局所的に研削材Sを噴射することにより、研削材Sの消費を抑えることが可能である。
【0108】
(変形例)
(A)
上記実施形態では、ペットボトルなどの樹脂製のタンクを例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、研削材をある程度まとまった量を収容できる容量(例えば、タンクの総容量が2〜10リットル程度)を有しており、かつ、必要な噴射圧力に耐えられる強度があれば樹脂製以外のタンクとして、例えば軽金属製のタンクを採用してもよい。
【0109】
(B)
上記実施形態では、本発明の土木構造物の局所的補修方法の一例として橋梁の局所的補修方法を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、土地に定着した大型の土木構造物であれば、本発明の局所的補修方法を適用する対象となり、例えば、建物やプラントなどのさび易い箇所について本発明の局所的補修方法を適用することが可能である。
【0110】
(C)
本実施形態では、研削材を噴射させるためにタンク2に供給される加圧用ガスの一例として、圧縮空気を例にあげて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、空気以外のガス(例えば、窒素など)を用いてもよい。