特許第5887274号(P5887274)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5887274
(24)【登録日】2016年2月19日
(45)【発行日】2016年3月16日
(54)【発明の名称】イソブチレン系ブロック共重合体組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 53/00 20060101AFI20160303BHJP
   C08K 5/37 20060101ALI20160303BHJP
   B60C 5/14 20060101ALI20160303BHJP
【FI】
   C08L53/00
   C08K5/37
   B60C5/14 A
【請求項の数】10
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2012-540835(P2012-540835)
(86)(22)【出願日】2011年10月24日
(86)【国際出願番号】JP2011074383
(87)【国際公開番号】WO2012057051
(87)【国際公開日】20120503
【審査請求日】2014年10月14日
(31)【優先権主張番号】特願2010-243642(P2010-243642)
(32)【優先日】2010年10月29日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【弁理士】
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100122688
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 健二
(74)【代理人】
【識別番号】100117743
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 美由紀
(74)【代理人】
【識別番号】100163658
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 順造
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【弁理士】
【氏名又は名称】當麻 博文
(72)【発明者】
【氏名】中林 裕晴
(72)【発明者】
【氏名】井狩 芳弘
【審査官】 渡辺 陽子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−100083(JP,A)
【文献】 特開2010−195969(JP,A)
【文献】 特表2008−516825(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/119232(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L、B60C5/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)不飽和結合を有する(a)イソブチレンを主体とする重合体ブロックと(b)芳香族ビニル系化合物を主体とする重合体ブロックとからなるイソブチレン系ブロック共重合体100重量部と、(B)1分子中に2個以上のチオール基を有するポリチオール化合物0.1〜50重量部とを含有し、(A)不飽和結合を有するイソブチレン系ブロック共重合体が末端にアルケニル基を有する樹脂組成物。
【請求項2】
(A)不飽和結合を有するイソブチレン系ブロック共重合体がβ−ピネンを共重合したものである請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
(A)不飽和結合を有するイソブチレン系ブロック共重合体がイソプレンを共重合したものである請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
(A)不飽和結合を有するイソブチレン系ブロック共重合体のブロック構造が、(a)−(b)のジブロック体、または(b)−(a)−(b)のトリブロック体であることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
(A)不飽和結合を有するイソブチレン系ブロック共重合体の数平均分子量が30,000〜300,000であり、かつ分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量)が1.4以下であることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
(A)不飽和結合を有するイソブチレン系ブロック共重合体が(a)イソブチレンを主体とする重合体ブロックを60〜90重量%、および(b)芳香族ビニル系化合物を主体とするブロックを40〜10重量%含むことを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
芳香族ビニル系化合物がスチレンであることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
(A)不飽和結合を有するイソブチレン系ブロック共重合体と(B)1分子中に2個以上のチオール基を有するポリチオール化合物とを含有する化合物が溶融混練により製造されたものであることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項9】
(A)不飽和結合を有するイソブチレン系ブロック共重合体100重量部に対して(C)ポリアミドまたはエチレン−ビニルアルコール共重合体を1〜400重量部を含有することを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項10】
請求項1〜のいずれか1項に記載の樹脂組成物によって作られることを特徴とするタイヤ用インナーライナー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気バリア性、柔軟性、靱性、およびゴムへの接着性に優れたイソブチレン系ブロック共重合体と組成物に関する。さらにはカーカスへの接着性に優れたタイヤ用インナーライナーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、空気バリア性、柔軟性、および靱性に優れる共重合体としてイソブチレンとスチレンのブロック共重合体が知られている(例えば特許文献1)。しかし、その機械強度と接着性のバランスが十分とはいえず、その用途には限界があった。
【0003】
また従来、耐気体透過性材料としてブチルゴムは種々の分野で利用されている。例えば、薬栓やタイヤインナーライナー用材料として使用されている。しかし、タイヤインナーライナー用材料として使用する場合には、加硫操作を必要とするため操作性に劣るという問題点があった。
【0004】
特許文献2には芳香族ビニル化合物とイソブチレンとのブロック共重合体とカーボンブラックとを含有するタイヤインナーライナー用ゴム組成物が開示されている。これは加硫工程を必要とせず、ガスバリア性には優れているものの未だカーカス層を構成するゴムとの接着は不十分であった。
【0005】
特許文献3にはアルケニル基を含有するイソブチレン系ブロック共重合体が開示されているが、不飽和結合を有するものの、加硫ゴムへの接着性には課題があった。
【0006】
特許文献4,5にはイソブチレンとβ−ピネンとの共重合体が開示されている。カーカス層を構成するゴムとの接着は向上しているものの十分とは言えず、かつ高温時の強度に課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平08−301955号公報
【特許文献2】特開平06−107896号公報
【特許文献3】特開平11−222510号公報
【特許文献4】特開2010−195864号公報
【特許文献5】特開2010−195969号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、空気バリア性、柔軟性、靱性、ゴムへの接着性および高温での機械強度に優れたイソブチレン系ブロック共重合体組成物を提供することにある。さらに加硫工程を必要としない空気入りタイヤのインナーライナー層として空気バリア性、柔軟性、靱性とカーカスへの接着性のバランスに優れたインナーライナーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、鋭意検討した結果、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち本発明は、(A)不飽和結合を有する(a)イソブチレンを主体とする重合体ブロックと(b)芳香族ビニル系化合物を主体とする重合体ブロックとからなるイソブチレン系ブロック共重合体100重量部と、(B)1分子中に2個以上のチオール基を有するポリチオール化合物0.1〜50重量部、とを含有する樹脂組成物に関する。
【0011】
好ましい実施態様としては、(A)不飽和結合を有するイソブチレン系ブロック共重合体がβ−ピネンを共重合したものである樹脂組成物に関する。
【0012】
好ましい実施態様としては、(A)不飽和結合を有するイソブチレン系ブロック共重合体が末端にアルケニル基を有することを特徴とする樹脂組成物に関する。
【0013】
好ましい実施態様としては、(A)不飽和結合を有するイソブチレン系ブロック共重合体がイソプレンを共重合したものである樹脂組成物に関する。
【0014】
好ましい実施態様としては、(A)不飽和結合を有するイソブチレン系ブロック共重合体のブロック構造が、(a)−(b)のジブロック体、または(b)−(a)−(b)のトリブロック体であることを特徴とする樹脂組成物に関する。
【0015】
好ましい実施態様としては、(A)不飽和結合を有するイソブチレン系ブロック共重合体の数平均分子量が30,000〜300,000であり、かつ分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量)が1.4以下であることを特徴とする樹脂組成物に関する。
【0016】
好ましい実施態様としては、(A)不飽和結合を有するイソブチレン系ブロック共重合体が(a)イソブチレンを主体とする重合体ブロックを60〜90重量%、および(b)芳香族ビニル系化合物を主体とするブロックを40〜10重量%含むことを特徴とする樹脂組成物に関する。
【0017】
芳香族ビニル系化合物がスチレンであることを特徴とする樹脂組成物に関する。
【0018】
好ましい実施態様としては、(A)不飽和結合を有するイソブチレン系ブロック共重合体と(B)1分子中に2個以上のチオール基を有するポリチオール化合物とを含有する化合物が溶融混練により製造されたものであることを特徴とする樹脂組成物に関する。
【0019】
好ましい実施態様としては、(A)不飽和結合を有するイソブチレン系ブロック共重合体100重量部に対して(C)ポリアミドまたはエチレン−ビニルアルコール共重合体を1〜400重量部を含有することを特徴とする樹脂組成物に関する。
【0020】
好ましい実施態様としては、前記樹脂組成物によって作られることを特徴とするタイヤ用インナーライナーに関する。
【発明の効果】
【0021】
本発明の(A)不飽和結合を有するイソブチレン系ブロック共重合体と(B)ポリチオール化合物からなる樹脂組成物は、従来のイソブチレン系ブロック共重合体の特徴である空気バリア性、柔軟性、および靱性に加え、特に接着性と高温時の強度に優れる。特に本発明のタイヤ用インナーライナーは、加硫工程を必要とせず、空気バリア性、柔軟性、靱性とカーカスへの接着性のバランスに優れており、タイヤの組み立て容易化、あるいはガス圧の保持力の向上に好適である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明は、(A)不飽和結合を有する(a)イソブチレンを主体とする重合体ブロックと(b)芳香族ビニル系化合物を主体とする重合体ブロックとからなるイソブチレン系ブロック共重合体100重量部と、(B)1分子中に2個以上のチオール基を有するポリチオール化合物0.1〜50重量部、とを含有する樹脂組成物である。
【0023】
本発明に使用される、(A)不飽和結合を有するイソブチレン系ブロック共重合体とは(a)イソブチレンを主体とする重合体ブロックと(b)芳香族ビニル系化合物を主体とする重合体ブロックからなり、かつ不飽和結合を分子鎖中に有する。
【0024】
(a)イソブチレンを主成分とする重合体ブロックは、イソブチレンに由来するユニットが60重量%以上、好ましくは80重量%以上から構成される重合体ブロックである。
【0025】
いずれの重合体ブロックも、共重合成分として、相互の単量体を使用することができるほか、その他のカチオン重合可能な単量体成分を使用することができる。このような単量体成分としては、脂肪族オレフィン類、ジエン類、ビニルエーテル類、シラン類、ビニルカルバゾール、アセナフチレン等の単量体が例示できる。これらはそれぞれ単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0026】
(b)芳香族ビニル系化合物を主体とする重合体ブロックは、芳香族ビニル系化合物に由来するユニットが60重量%以上、好ましくは80重量%以上から構成される重合体ブロックである。
【0027】
芳香族ビニル系化合物としては、スチレン、o−、m−又はp−メチルスチレン、α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、2,6−ジメチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、α−メチル−o−メチルスチレン、α−メチル−m−メチルスチレン、α−メチル−p−メチルスチレン、β−メチル−o−メチルスチレン、β−メチル−m−メチルスチレン、β−メチル−p−メチルスチレン、2,4,6−トリメチルスチレン、α−メチル−2,6−ジメチルスチレン、α−メチル−2,4−ジメチルスチレン、β−メチル−2,6−ジメチルスチレン、β−メチル−2,4−ジメチルスチレン、o−、m−又はp−クロロスチレン、2,6−ジクロロスチレン、2,4−ジクロロスチレン、α−クロロ−o−クロロスチレン、α−クロロ−m−クロロスチレン、α−クロロ−p−クロロスチレン、β−クロロ−o−クロロスチレン、β−クロロ−m−クロロスチレン、β−クロロ−p−クロロスチレン、2,4,6−トリクロロスチレン、α−クロロ−2,6−ジクロロスチレン、α−クロロ−2,4−ジクロロスチレン、β−クロロ−2,6−ジクロロスチレン、β−クロロ−2,4−ジクロロスチレン、o−、m−又はp−t−ブチルスチレン、o−、m−又はp−メトキシスチレン、o−、m−又はp−クロロメチルスチレン、o−、m−又はp−ブロモメチルスチレン、シリル基で置換されたスチレン誘導体、インデン、ビニルナフタレン等が挙げられる。これらの中でも、工業的な入手性やガラス転移温度の点から、スチレン、α−メチルスチレン、および、これらの混合物が好ましく、特にスチレンが好ましい。
【0028】
(a)イソブチレンを主体とする重合体ブロックと(b)芳香族ビニル系化合物を主体とするブロックの比は、(a)イソブチレンを主体とする重合体ブロックを10〜90重量%、および(b)芳香族ビニル系化合物を主体とするブロックを90〜10重量%であることが好ましく、(a)イソブチレンを主体とする重合体ブロックを60〜90重量%、および(b)芳香族ビニル系化合物を主体とするブロックを40〜10重量%であることがガスバリア性、柔軟性、耐熱性点で好ましく、また、製造および加工の面での扱いやすさの点で好ましい。
【0029】
本発明の(A)イソブチレン系ブロック共重合体に含まれる不飽和結合は以下のような単量体を共重合することで得られる。例えば、シクロペンタジエン、ジビニルベンゼン、イソプレン、1,5−ヘキサジエン、1,9−デカジエン、β−ピネン、1,3−ブテンが挙げることができる。これらの中でも、イソプレンが入手性の点で好ましい。またβ―ピネンが芳香族ビニルとの共重合性の容易さの点で好ましい。上記のモノマーは(a)イソブチレンを主体とするブロックに存在しても、(b)芳香族ビニル系化合物を主体とするブロックに存在してもよい。また、上記モノマーを主成分としたブロックを共重合していても良い。上記モノマーの含有量は0.5〜20mol%以上が好ましく、1〜10mol%がより好ましい。0.5mol%を下回ると加硫ゴムへの接着性が不足する可能性があり、20mol%を上回るとガスバリア性が低下する傾向がある。
【0030】
また、ブロック共重合体の末端へアルケニル基を導入することで不飽和結合を導入することも可能である。ブロック共重合体の末端へのアルケニル基の導入方法としては特開平3−152164号公報や特開平7−304909号公報に開示されているような、水酸基などの官能基を有する重合体に不飽和基を有する化合物を反応させて重合体に不飽和基を導入する方法があげられる。
【0031】
アルケニル基とは、硫黄による架橋反応に対して、活性のある炭素−炭素二重結合を含む基であればとくに制限されるものではない。具体例としては、ビニル基、アリル基、メチルビニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基などの脂肪族不飽和炭化水素基、シクロプロペニル基、シクロブテニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基などの環式不飽和炭化水素基をあげることができる。
【0032】
またハロゲン原子を有する重合体に不飽和基を導入するためにはアルケニルフェニルエーテルとのフリーデルクラフツ反応を行なう方法、ルイス酸存在下アリルトリメチルシランなどとの置換反応を行なう方法、種々のフェノール類とのフリーデルクラフツ反応を行ない水酸基を導入した上でさらに前記のアルケニル基導入反応を行なう方法などがあげられる。さらに米国特許第4316973号明細書、特開昭63−105005号公報、特開平4−288309号公報に開示されているように単量体の重合時に不飽和基を導入することも可能である。この中でもアリルトリメチルシランと塩素の置換反応により末端にアリル基を導入したものが、反応性の点から好ましい。
【0033】
イソブチレン系重合体の末端のアルケニル基の量は、必要とする特性によって任意に選ぶことができるが、接着性の観点から、1分子あたり平均して少なくとも0.8個のアルケニル基を末端に有する重合体であることが好ましい。0.8個未満であると、接着性、高温時の機械強度の改善効果が充分に得られない場合がある。
【0034】
本発明の(A)不飽和結合を有するイソブチレン系ブロック共重合体は(a)イソブチレンを主体とする重合体ブロックと(b)芳香族ビニル系化合物を主体とする重合体ブロックから構成されている限り、その構造には特に制限はなく、例えば、直鎖状、分岐状、星状等の構造を有するブロック共重合体、トリブロック共重合体、マルチブロック共重合体等のいずれも選択可能である。好ましい構造としては、物性バランス及び成形加工性の点から、(a)−(b)で構成されるジブロック共重合体、(b)−(a)−(b)で構成されるトリブロック共重合体が挙げられる。これらは所望の物性・成形加工性を得る為に、それぞれ単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0035】
また(A)不飽和結合を有するイソブチレン系ブロック共重合体の分子量にも特に制限はないが、流動性、成形加工性、ゴム弾性等の面から、GPC測定による数平均分子量で30,000〜300,000であることが好ましく、30,000〜150,000であることが特に好ましい。数平均分子量が30,000よりも低い場合には機械的な物性が十分に発現されない傾向があり、一方300,000を超える場合には流動性、加工性が悪化する傾向がある。さらには加工安定性の観点からイソブチレン系ブロック共重合体の重量平均分子量/数平均分子量が1.4以下であることが好ましい。
【0036】
イソブチレン系ブロック共重合体の製造方法については特に制限はないが、例えば、下記一般式(I)で表される化合物の存在下に、単量体成分を重合させることにより得られる。
(CR12X)nR3 (I)
[式中Xはハロゲン原子、炭素数1〜6のアルコキシ基またはアシロキシ基から選ばれる置換基、R1、R2はそれぞれ水素原子または炭素数1〜6の1価炭化水素基でR1、R2は同一であっても異なっていても良く、R3は一価若しくは多価芳香族炭化水素基または一価若しくは多価脂肪族炭化水素基であり、nは1〜6の自然数を示す。]
上記一般式(I)で表わされる化合物は開始剤となるものでルイス酸等の存在下炭素陽イオンを生成し、カチオン重合の開始点になると考えられる。本発明で用いられる一般式(I)の化合物の例としては、次のような化合物等が挙げられる。
【0037】
(1−クロル−1−メチルエチル)ベンゼン[C65C(CH32Cl]、1,4−ビス(1−クロル−1−メチルエチル)ベンゼン[1,4−Cl(CH32CC64C(CH32Cl]、1,3−ビス(1−クロル−1−メチルエチル)ベンゼン[1,3−Cl(CH32CC64C(CH32Cl]、1,3,5−トリス(1−クロル−1−メチルエチル)ベンゼン[1,3,5−(ClC(CH32363]、1,3−ビス(1−クロル−1−メチルエチル)−5−(tert−ブチル)ベンゼン[1,3−(C(CH32Cl)2-5−(C(CH33)C63
これらの中でも特に好ましいのはビス(1−クロル−1−メチルエチル)ベンゼン[C64(C(CH32Cl)2]、トリス(1−クロル−1−メチルエチル)ベンゼン[(ClC(CH32363]である。[なおビス(1−クロル−1−メチルエチル)ベンゼンは、ビス(α−クロロイソプロピル)ベンゼン、ビス(2−クロロ−2−プロピル)ベンゼンあるいはジクミルクロライドとも呼ばれ、トリス(1−クロル−1−メチルエチル)ベンゼンは、トリス(α−クロロイソプロピル)ベンゼン、トリス(2−クロロ−2−プロピル)ベンゼンあるいはトリクミルクロライドとも呼ばれる]。
【0038】
イソブチレン系ブロック共重合体を製造する際には、さらにルイス酸触媒を共存させることもできる。このようなルイス酸としてはカチオン重合に使用できるものであれば良く、TiCl4、TiBr4、BCl3、BF3、BF3・OEt2、SnCl4、SbCl5、SbF5、WCl6、TaCl5、VCl5、FeCl3、ZnBr2、AlCl3、AlBr3等の金属ハロゲン化物;Et2AlCl、EtAlCl2等の有機金属ハロゲン化物を好適に使用することができる。中でも触媒としての能力、工業的な入手の容易さを考えた場合、TiCl4、BCl3、SnCl4が好ましい。ルイス酸の使用量は、特に限定されないが、使用する単量体の重合特性あるいは重合濃度等を鑑みて設定することができる。通常は一般式(I)で表される化合物に対して0.1〜100モル当量使用することができ、好ましくは1〜50モル当量の範囲である。
【0039】
イソブチレン系ブロック共重合体の製造に際しては、さらに必要に応じて電子供与体成分を共存させることもできる。この電子供与体成分は、カチオン重合に際して、成長炭素カチオンを安定化させる効果があるものと考えられており、電子供与体の添加によって、分子量分布の狭い、構造が制御された重合体を生成することができる。使用可能な電子供与体成分としては特に限定されないが、例えば、ピリジン類、アミン類、アミド類、スルホキシド類、エステル類、または金属原子に結合した酸素原子を有する金属化合物等を挙げることができる。
【0040】
イソブチレン系ブロック共重合体の重合は必要に応じて有機溶媒中で行うことができ、有機溶媒としてはカチオン重合を本質的に阻害しなければ、特に制約なく使用することができる。具体的には、塩化メチル、ジクロロメタン、クロロホルム、塩化エチル、ジクロロエタン、n−プロピルクロライド、n−ブチルクロライド、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、ブチルベンゼン等のアルキルベンゼン類;エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン等の直鎖式脂肪族炭化水素類;2−メチルプロパン、2−メチルブタン、2,3,3−トリメチルペンタン、2,2,5−トリメチルヘキサン等の分岐式脂肪族炭化水素類;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の環式脂肪族炭化水素類;石油留分を水添精製したパラフィン油等を挙げることができる。
【0041】
これらの溶媒は、イソブチレン系ブロック共重合体を構成する単量体の重合特性及び生成する重合体の溶解性等のバランスを考慮して、それぞれ単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0042】
上記溶媒の使用量は、得られる重合体溶液の粘度や除熱の容易さを考慮して、重合体の濃度が1〜50wt%、好ましくは5〜35wt%となるように決定される。
【0043】
実際の重合を行うに当たっては、各成分を冷却下例えば−100℃以上0℃未満の温度で混合する。エネルギーコストと重合の安定性を釣り合わせるために、特に好ましい温度範囲は−30℃〜−80℃である。
【0044】
本発明の樹脂組成物は接着性付与、高温時の機械強度の改善の観点から(B)1分子中に2個以上のチオール基を有するポリチオール化合物を含有する。
【0045】
ポリチオールとしては分子中に2個以上のチオール基を有していれば、特に制限は無いが、以下の構造のものが例示される。ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、エチレングリコール等のチオグリコレート、メルカプトプロピオネート、メルカプトプロピルエーテル、ジメルカプトブタンやトリメルカプトヘキサンなどのメルカプト基置換アルキル化合物、ジメルカプトベンゼンなどのメルカプト基置換アリル化合物が挙げられる。加工温度での重量減少の観点から沸点が150℃以上のものが好ましく、200℃以上のものがより好ましく、220℃以上のものが最も好ましい。
【0046】
(B)1分子中に2個以上のチオール基を有するポリチオール化合物の添加量としては、0.1〜50重量部が好ましく、1〜20重量部がより好ましい。0.1重量部を下回ると接着性の改善効果が乏しく、50重量部を上回るとブリードアウトのおそれがある。
【0047】
本発明に使用されるポリチオール化合物は加熱や光照射により(A)不飽和結合を有するイソブチレン系ブロック共重合体または加硫ゴムと反応することで硫黄−炭素結合が生成する。
【0048】
本発明の組成物にはガスバリア性の向上の観点からさらに(C)ポリアミドまたはエチレン−ビニルアルコール共重合体を含有しても良い。
【0049】
エチレン−ビニルアルコール共重合体は、エチレン含有量は20〜70モル%であることが好ましい。エチレン含有量が20モル%を下回ると水分バリア性と柔軟性に劣り耐屈曲性に劣る恐れがある上熱成形性に劣る恐れがある。また、70モル%を上回るとガスバリア性が不足する恐れがある。
【0050】
ポリアミドとしては、ナイロン−6、ナイロン−66、ナイロン−11、ナイロン−12、ナイロン−46、ナイロン−610、ナイロン−612などがあげられる。
【0051】
(C)ポリアミドまたはエチレン−ビニルアルコール共重合体の配合量は(A)不飽和結合を有するイソブチレン系ブロック共重合体100重量部に対して好ましくは1〜400重量部、さらに好ましくは10〜400重量部含有することが好ましい。エチレン−ビニルアルコール共重合体の配合量が400重量部を超えると柔軟性が失われ長期での屈曲疲労特性に劣る可能性がある。
【0052】
本発明の組成物にはさらに架橋剤と架橋助剤を添加しても良い。架橋剤は単体硫黄、テトラメチルチウラムジスルフィド、4,4−ジチオビスモルホリン、有機過酸化物、フェノールホルムアルデヒド樹脂、ハロメチルフェノールが例示される。これらの中でも好ましいのは単体硫黄、テトラメチルチウラムジスルフィド、4,4−ジチオビスモルホリンである。架橋助剤は例えば、スルフェンアミド、ベンゾチアゾール、グアニジン、ジチオカルバミン酸、酸化亜鉛などの金属酸化物、ステアリン酸などの脂肪酸、含窒素化合物、トリアリルイソシアヌレート、エチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパンメタクリレートが挙げられる。これらの中でも好ましいのはスルフェンアミド、ベンゾチアゾール、グアニジン、ジチオカルバミン酸、酸化亜鉛などの金属酸化物、ステアリン酸などの脂肪酸である。架橋剤と架橋助剤の配合量としてそれぞれ好ましくはイソブチレン系ブロック共重合体100重量部に対して0.5〜5重量部である。
【0053】
本発明の組成物にはカーカスゴムへの密着性の点から、さらに粘着付与剤を含有していても良い。粘着付与剤には天然のロジン、テルペン、合成のクマロンインデン樹脂、石油樹脂、アルキルフェノール樹脂などが挙げられる。粘着付与剤の配合量はイソブチレン系ブロック共重合体100重量部に対して好ましくは1〜80重量部である。
【0054】
本発明の組成物にはさらに目的に応じて充填剤、老化防止剤、軟化剤、加工助剤を添加しても良い。例えば充填剤には、カーボンブラック、湿式シリカ、乾式シリカ、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、クレー等が挙げられ、老化防止剤には酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤が挙げられ、軟化剤にはパラフィン系オイル、ナフテン系オイル、アロマ系オイル、ナタネ油、ジオクチルフタレート、ジオクチルアジペートなどが挙げられ、加工助剤には高級脂肪酸、脂肪酸エステル、脂肪酸金属塩、脂肪酸アミド、パラフィンワックス、脂肪アルコール、フッ素・シリコーン系樹脂、高分子量ポリエチレンが挙げられる。
【0055】
本発明の組成物からなる配合物を得るには、公知の溶融混練の方法が適用できる。例えばイソブチレン系ブロック共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、さらに所定の物性を得るために配合される他の成分を、加熱混練機、例えば、一軸押出機、二軸押出機、ロール、バンバリーミキサー、ブラベンダー、ニーダー、高剪断型ミキサー等を用いて溶融混練することで製造することができる。溶融混練の温度は、100〜240℃が好ましい。100℃よりも低い温度ではイソブチレン系ブロック共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体の溶融が不十分となり、混練が不均一となる傾向がある。240℃よりも高い温度では、イソブチレン系ブロック共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体の熱分解、熱架橋が起こる傾向がある。得られた組成物を次に押出成形、カレンダー成形といった熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマーをフィルム化する通常の方法によってフィルム化すれば良い。
【0056】
本発明の組成物は、インナーライナー、特にタイヤ用インナーライナーに好適に使用できる。
【0057】
本発明のインナーライナーの厚みは合計20μm〜1500μmの範囲に有ることが好ましい。厚みが20μmを下回るとインナーライナーの耐屈曲性が低下しタイヤ転動時の屈曲変形による破断や亀裂が生じる恐れがある。一方厚みが1500μmを超えるとタイヤ重量低減のメリットが少なくなる。
【実施例】
【0058】
以下、実施例にて本発明をさらに詳しく説明するが、これらの実施例によって本発明は何ら限定されるものではない。
尚、実施例に先立ち各種測定法、評価法、実施例について説明する。
【0059】
(引張強度)
JIS K 6251に準拠し、試験片としてシートをダンベルで7号型に打抜いたものを用意し、これを測定に使用した。引張速度は100mm/分とした。
【0060】
(引張伸び)
JIS K 6251に準拠し、試験片としてシートをダンベルで7号型に打抜いたものを用意し、これを測定に使用した。雰囲気温度は100℃、引張速度は100mm/分とした。
【0061】
(高温引張強度)
JIS K 6251に準拠し、試験片としてシートをダンベルで7号型に打抜いたものを用意し、これを測定に使用した。雰囲気温度は100℃、引張速度は100mm/分とした。
【0062】
(高温引張伸び)
JIS K 6251に準拠し、試験片としてシートをダンベルで7号型に打抜いたものを用意し、これを測定に使用した。雰囲気温度は100℃、引張速度は100mm/分とした。
【0063】
(ガスバリア性)
ガスバリア性は気体透過性を評価し、酸素の透過度を評価した。酸素の透過度は、得られたシートから100mm×100mmの試験片を切り出し、JISK7126に準拠して、23℃、0%RH、1atmの差圧法にて測定した。
【0064】
(接着性)
イソプレンゴムとの接着性を評価した。(製造例1)のイソプレンゴムの2mm厚未加硫シートと貼り合わせ、200℃、50MPaで10分加熱加圧加硫を行った後、幅2cm×6cmに切り出した後、180°剥離試験を行った際の応力を測定した。試験速度は200mm/minで行い、剥離開始後3cm〜5cmの応力の平均値を採用した。
【0065】
(実施例等記載成分の内容)
成分(A)−1(イソブチレン系ブロック共重合体):スチレン−β−ピネン−イソブチレン−β−ピネン−スチレンブロック共重合体 β−ピネン含量2.4mol% 数平均分子量102,000(製造例2)
成分(A)−2(イソブチレン系ブロック共重合体):(スチレン/β−ピネン)−イソブチレン−(スチレン/β−ピネン)ブロック共重合体 β−ピネン含量2.4mol% 数平均分子量107,000(製造例3)
成分(A)−3(イソブチレン系ブロック共重合体):末端にアリル基を有するスチレン−イソブチレン−スチレントリブロック共重合体。(製造例4)
成分(B)(ポリチオール化合物):分子内に4個のチオール基を有するペンタエリスリトールのチオグリコレート。カレンズMT PE1(昭和電工社製)
成分(C)(エチレン−ビニルアルコール共重合体):エチレン含量44mol%エチレン−ビニルアルコール共重合体(株式会社クラレ社製 商品名「EVAL E105B」)
架橋剤:硫黄(関東化学社製)
架橋助剤1:ジ-2-ベンゾチアゾリルジスルフィド
架橋助剤2:酸化亜鉛
架橋助剤3:ステアリン酸
粘着付与剤:脂環族飽和炭化水素樹脂(荒川化学社製「アルコンP−70」)。
老化防止剤:株式会社アデカ社製「AO−50」
SIBS:スチレン−イソブチレン−スチレンブロック共重合体(製造例5)
(製造例1)イソプレンゴムシートの作製
イソプレンゴム(株式会社JSR社製 商品名「IR2200」)を400g、カーボンブラック(旭カーボン旭♯50)200gを40℃に設定した1Lニーダー(株式会社モリヤマ社製)に投入し50rpmで5分間混練した後、硫黄6g、N-tert-ブチル-2-ベンゾチアゾルスルフェンアミド8g、酸化亜鉛8g、ステアリン酸8gを投入し2分間混練した後排出し、80℃で加熱プレス(神藤金属社製)にて2mm厚のシート状に成形した。
【0066】
(製造例2)[スチレン−β−ピネン−イソブチレン−β−ピネン−スチレンブロック共重合体(成分(A)−1)]の製造]
2Lのセパラブルフラスコの重合容器内を窒素置換した後、注射器を用いて、n−ヘキサン(モレキュラーシーブスで乾燥したもの)31.0mL及び塩化ブチル(モレキュラーシーブスで乾燥したもの)294.6mLを加え、重合容器を−70℃のドライアイス/メタノールバス中につけて冷却した後、イソブチレンモノマー88.9mL(941.6mmol)が入っている三方コック付耐圧ガラス製液化採取管にテフロン(登録商標)製の送液チューブを接続し、重合容器内にイソブチレンモノマーを窒素圧により送液した。p−ジクミルクロライド0.148g(0.6mmol)及びα−ピコリン0.07g(0.8mmol)を加えた。次にさらに四塩化チタン0.87mL(7.9mmol)を加えて重合を開始した。重合開始から1.5時間同じ温度で撹拌を行った後、重合溶液からサンプリング用として重合溶液約1mLを抜き取った。続いて、あらかじめ−70℃に冷却しておいたβ−ピネン3.6g(26.3mmol)を重合容器内に添加した。β−ピネン添加45分後にスチレンモノマー10.4g(99.4mmol)を重合容器内に添加した。スチレンを添加してから45分後に約40mLのメタノールを加えて反応を終了させた。反応溶液から溶剤等を留去した後、トルエンに溶解し2回水洗を行った。さらにトルエン溶液を多量のメタノールに加えて重合体を沈殿させ、得られた重合体を60℃で24時間真空乾燥することにより目的のブロック共重合体を得た。ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により得られた重合体の分子量を測定した。Mnが102,000、Mw/Mnが1.25であるブロック共重合体が得られた。
【0067】
(製造例3)[(スチレン/β−ピネン)−イソブチレン−(スチレン/β−ピネン)ブロック共重合体(成分(A)−2)]の製造]
2Lのセパラブルフラスコの重合容器内を窒素置換した後、注射器を用いて、n−ヘキサン(モレキュラーシーブスで乾燥したもの)31.0mL及び塩化ブチル(モレキュラーシーブスで乾燥したもの)294.6mLを加え、重合容器を−70℃のドライアイス/メタノールバス中につけて冷却した後、イソブチレンモノマー88.9mL(941.6mmol)が入っている三方コック付耐圧ガラス製液化採取管にテフロン(登録商標)製の送液チューブを接続し、重合容器内にイソブチレンモノマーを窒素圧により送液した。p−ジクミルクロライド0.148g(0.6mmol)及びα−ピコリン0.07g(0.8mmol)を加えた。次にさらに四塩化チタン0.87mL(7.9mmol)を加えて重合を開始した。重合開始から1.5時間同じ温度で撹拌を行った後、重合溶液からサンプリング用として重合溶液約1mLを抜き取った。続いて、あらかじめ−70℃に冷却しておいたスチレンモノマー10.4g(99.4mmol)とβ−ピネン3.6g(26.3mmol)をよく撹拌し均一にした後重合容器内に添加した。スチレンとβ−ピネン添加45分後に約40mLのメタノールを加えて反応を終了させた。反応溶液から溶剤等を留去した後、トルエンに溶解し2回水洗を行った。さらにトルエン溶液を多量のメタノールに加えて重合体を沈殿させ、得られた重合体を60℃で24時間真空乾燥することにより目的のブロック共重合体を得た。ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により得られた重合体の分子量を測定した。Mnが107,000、Mw/Mnが1.23であるブロック共重合体が得られた。
【0068】
(製造例4)[末端にアリル基を有するスチレン−イソブチレン−スチレントリブロック共重合体(成分(A)−3)の製造]
2Lのセパラブルフラスコの重合容器内を窒素置換したのち、注射器を用いてn−ヘキサン456.4mLおよび塩化ブチル656.3mL(いずれもモレキュラーシーブスで乾燥したもの)を加え、重合容器を−70℃のドライアイス/メタノールバス中につけて冷却した。イソブチレンモノマー232mL(2871mmol)が入っている三方コック付耐圧ガラス製液化採取管にテフロン(登録商標)製の送液チューブを接続し、重合容器内にイソブチレンモノマーを窒素圧により送液した。p−ジクミルクロライド1.089g(4.7mmol)およびα−ピコリン1.30g(14mmol)を加えた。次にさらに四塩化チタン8.67mL(79.1mmol)を加えて重合を開始した。重合開始から2.5時間同じ温度で撹拌を行なったのち、重合溶液からサンプリング用として重合溶液約1mLを抜き取った。続いて、あらかじめ−70℃に冷却しておいたスチレンモノマー77.9g(748mmol)、n−ヘキサン14.1mLおよび塩化ブチル20.4mLの混合溶液を重合容器内に添加した。さらに2時間後、アリルトリメチルシランを10.74g(94mmol)重合容器内に添加した。該溶液を添加してから4時間後に、大量の水を加えて反応を終了させた。
【0069】
反応溶液を2回水洗し、溶媒を蒸発させ、得られた重合体を60℃で24時間真空乾燥することにより目的のブロック共重合体を得た。ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により得られた重合体の分子量を測定した。ブロック共重合体のMnが63100であるブロック共重合体が得られた。1HNMRよりアリル基は1モルあたり1.8個有していた。
【0070】
(製造例5)[スチレン−イソブチレン−スチレンブロック共重合体(SIBS)]の製造]
2Lのセパラブルフラスコの重合容器内を窒素置換した後、注射器を用いて、n−ヘキサン(モレキュラーシーブスで乾燥したもの)31.0mL及び塩化ブチル(モレキュラーシーブスで乾燥したもの)294.6mLを加え、重合容器を−70℃のドライアイス/メタノールバス中につけて冷却した後、イソブチレンモノマー88.9mL(941.6mmol)が入っている三方コック付耐圧ガラス製液化採取管にテフロン(登録商標)製の送液チューブを接続し、重合容器内にイソブチレンモノマーを窒素圧により送液した。p−ジクミルクロライド0.148g(0.6mmol)及びα−ピコリン0.07g(0.8mmol)を加えた。次にさらに四塩化チタン0.87mL(7.9mmol)を加えて重合を開始した。重合開始から1.5時間同じ温度で撹拌を行った後、重合溶液からサンプリング用として重合溶液約1mLを抜き取った。続いて、あらかじめ−70℃に冷却しておいたスチレンモノマー10.4g(99.4mmol)を重合容器内に添加した。スチレンを添加45分後に約40mLのメタノールを加えて反応を終了させた。反応溶液から溶剤等を留去した後、トルエンに溶解し2回水洗を行った。さらにトルエン溶液を多量のメタノールに加えて重合体を沈殿させ、得られた重合体を60℃で24時間真空乾燥することにより目的のブロック共重合体を得た。ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により得られた重合体の分子量を測定した。Mnが101,000、Mw/Mnが1.23であるブロック共重合体が得られた。
【0071】
(実施例1)
成分(A)−1、成分(B)、老化防止剤を表1の割合で配合し、2軸押出機を用いて170℃で混練しペレットを得た。得られたペレットはTダイ(ダイリップ径2000μm、幅200mm)を取り付け、ダイ温度180℃に設定した単軸押出機に投入され出てきたフィルムをロールにて引き取り1000μmの厚みのフィルムを得た。得たフィルムの引張試験、ガスバリア性、接着性の測定を行った。
【0072】
(実施例2)
成分(A)−1を成分(A)−2に変更した以外は実施例1と同様にして、フィルムを得て、得たフィルムの引張試験、ガスバリア性、接着性の測定を行った。
【0073】
(実施例3)
成分(A)−1を成分(A)−3に変更し、成分(B)の配合量を変更した以外は実施例1と同様にして、フィルムを得て、得たフィルムの引張試験、ガスバリア性、接着性の測定を行った。
【0074】
(実施例4)
成分(A)−1、成分(B)、成分(C)、老化防止剤を表1の割合で配合し、2軸押出機を用いて200℃で混練しペレットを得た。得られたペレットはTダイ(ダイリップ径2000μm、幅200mm)を取り付け、ダイ温度220℃に設定した単軸押出機に投入され出てきたフィルムをロールにて引き取り1000μmの厚みのフィルムを得た。得たフィルムの引張試験、ガスバリア性、接着性の測定を行った。
【0075】
(実施例5)
成分(C)の配合量を変更した以外は実施例4と同様にして、フィルムを得て、得たフィルムの引張試験、ガスバリア性、接着性の測定を行った。
【0076】
(実施例6)
成分(B)の配合量を変更した以外は実施例2と同様にして、フィルムを得て、得たフィルムの引張試験、ガスバリア性、接着性の測定を行った。
【0077】
(実施例7)
成分(A)−1、成分(B)、粘着付与剤、老化防止剤を表1の割合で配合し、2軸押出機を用いて170℃で混練しペレットを得た。得られたペレットはTダイ(ダイリップ径2000μm、幅200mm)を取り付け、ダイ温度170℃に設定した単軸押出機に投入され出てきたフィルムをロールにて引き取り1000μmの厚みのフィルムを得た。得たフィルムの引張試験、ガスバリア性、接着性の測定を行った。
【0078】
(比較例1)
成分(A)−1、老化防止剤を表1の割合で配合し、2軸押出機を用いて170℃で混練しペレットを得た。得られたペレットはTダイ(ダイリップ径2000μm、幅200mm)を取り付け、ダイ温度180℃に設定した単軸押出機に投入され出てきたフィルムをロールにて引き取り1000μmの厚みのフィルムを得た。得たフィルムの引張試験、ガスバリア性、接着性の測定を行った。
【0079】
(比較例2)
成分(A)−1を成分(A)−2に変更した以外は比較例1と同様にして、フィルムを得て、得たフィルムの引張試験、ガスバリア性、接着性の測定を行った。
【0080】
(比較例3)
成分(A)−1を成分(A)−3に変更した以外は比較例1と同様にして、フィルムを得て、得たフィルムの引張試験、ガスバリア性、接着性の測定を行った。
【0081】
(比較例4)
成分(A)−1をSIBSに変更した以外は比較例1と同様にして、フィルムを得て、得たフィルムの引張試験、ガスバリア性、接着性の測定を行った。
【0082】
(比較例5)
成分(A)−3、成分(B)、老化防止剤を表1の割合で配合し、2軸押出機を用いて170℃で混練しペレットを得た。得られたペレットはTダイ(ダイリップ径2000μm、幅200mm)を取り付け、ダイ温度170℃に設定した単軸押出機に投入され出てきたフィルムをロールにて引き取り1000μmの厚みのフィルムを得た。得たフィルムの引張試験、ガスバリア性、接着性の測定を行った。
【0083】
(比較例6)
成分(A)−3、粘着付与剤、老化防止剤を表1の割合で配合し、2軸押出機を用いて170℃で混練しペレットを得た。得られたペレットはTダイ(ダイリップ径2000μm、幅200mm)を取り付け、ダイ温度170℃に設定した単軸押出機に投入され出てきたフィルムをロールにて引き取り1000μmの厚みのフィルムを得た。得たフィルムの引張試験、ガスバリア性、接着性の測定を行った。
【0084】
【表1】
【0085】
【表2】
【0086】
実施例は成分(B)を配合していない比較例1〜4、6に比べてゴムへの接着強度が高く、高温での引張強度に優れていることがわかる。成分(B)を50重量部以上含有する比較例5は成分(B)のブリードによって接着性が低いものである。
【産業の利用可能性】
【0087】
本発明のイソブチレン系ブロック共重合体組成物は、空気バリア性、柔軟性、靱性、ゴムへの接着性および高温での機械強度に優れており、インナーライナー、特にタイヤ用インナーライナーに好適に使用できる。