(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、基材表面及び周縁部の側面にシートをラッピングするためには、上記特許文献1及び2に示される従来の技術では、シートを基材に貼り付けた状態でシートの角部に必要な切欠きを形成するものの、その切欠きを基材に合わせて正確に形成する必要があり、その精度が低いと、シートが基材に対しずれて、そのラッピングが不正確になるという難がある。また、不正確になるだけでなく、シートがずれた場合にシートの余剰部分が生じ、余剰部分の重なり合いによる接着不良等により、様々な不具合を生じる。
【0005】
本発明は斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、基材に対するシートのラッピング構造に工夫を加えて、基材にシートを正確にラッピングできるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、この発明では、シートの角部に余剰部分が生じないようにするための切欠きを形成するのではなく、シート
は、基材の表面に接着
された状態でシートの周縁部
が折り曲げ
られて基材側面に接着
されたものとするとともに、基材の隣接する周縁部2辺の側面の隅角部に生じるシートの両折曲げ部の余剰部分
は、裏面同士で重ね合わされた状態にあって、化粧シート層の切断により露出した切断端面を有するものとした。
【0007】
具体的には、第1の発明のラッピング化粧板は、板状の基材と、この基材の表面ないし周囲側面に接着一体化されたシートからなる化粧シート層とを備え、この化粧シート層の周縁部には、基材の周囲側面に接着された折曲げ部が設けられ、基材の隣接する2辺の隅角部には、該2辺の化粧シート層の両折曲げ部の基材から食み出した余剰部分
が裏面同士で重ね合わされた状態で存在し、両余剰部分は基材側寄り部位に、化粧シート層が切断されて露出した切断端面を有し、切断端面は、上記露出した状態で上記基材の隅角部に沿って基材厚さ方向に互いに平行に延びていることを特徴とする。
【0008】
この第1の発明では、ラッピング化粧板は、板状の基材の表面ないし周囲側面に接着一体化されたシートからなる化粧シート層を備え、その化粧シート層の周縁部に基材の側面に接着された折曲げ部が設けられ、基材の隣接する2辺の隅角部には、2辺の化粧シート層の両折曲げ部の余剰部分
が裏面同士で重ね合わ
された状態で存在し、この余剰部分は基材側寄り部位に、化粧シート層の切断により露出した切断端面を有し、これらの切断端面は、露出した状態で基材の隅角部に沿って基材厚さ方向に互いに平行に延びている。そのため、基材にシートをラッピングする場合には、例えば接着剤によりシートを基材の表面に接着した状態で、シートの周縁部のうち、基材の一方に対向する側面に対応する縁部を折り曲げ、その折曲げ部を基材の側面に接着し、その状態で、シートの周縁部のうち、基材の他方に対向する側面に対応する縁部を折り曲げ、その折曲げ部を基材の側面に接着することで、基材の隣接する2辺の隅角部に、2辺の化粧シート層の両折曲げ部が基材から食み出した余剰部分
が形成
される。その両折曲げ部の余剰部分
は、裏面同士
が重ね合わ
された状態となり、その基材側寄り部位で
の切断によって、露出した状態で基材の隅角部に沿って基材厚さ方向に互いに平行に延びる切断端面を有するものとなる。
【0009】
第2の発明のラッピング化粧板は、周囲側面の各辺に雌実及び雄実が形成された板状の基材と、この基材の表面ないし周囲側面に接着一体化されたシートからなる化粧シート層とを備え、上記基材の雌実は、基材の裏側又は厚み方向中間部に位置する雌実凹部と、この雌実凹部の表側に隣接する雌実側面とを有する一方、上記雄実は、基材の裏側又は厚み方向中間部に位置する雄実凸部と、この雄実凸部の表側に隣接する雄実側面とを有している。そして、上記化粧シート層の周縁部には、基材の雌実側面及び雄実側面に接着された折曲げ部が設けられ、基材の隣接する2辺の隅角部には、該2辺の化粧シート層の両折曲げ部の基材から食み出した余剰部分
が裏面同士で重ね合わ
された状態で存在し、両余剰部分は基材側寄り部位に、化粧シート層が切断されて露出した切断端面を有し、切断端面は、上記露出した状態で上記基材の隅角部に沿って基材厚さ方向に互いに平行に延びていることを特徴とする。
【0010】
この第2の発明では、ラッピング化粧板は、周囲側面に雌実及び雄実が形成された板状の基材の表面ないし周囲側面に接着一体化されたシートからなる化粧シート層を備え、その化粧シート層の周縁部に基材の雌実側面及び雄実側面に接着された折曲げ部が設けられ、基材の隣接する2辺の隅角部には、2辺の化粧シート層の両折曲げ部の余剰部分
が裏面同士で重ね合わ
された状態で存在し、この余剰部分は基材側寄り部位に、化粧シート層の切断により露出した切断端面を有し、これらの切断端面は、露出した状態で基材の隅角部に沿って基材厚さ方向に互いに平行に延びている。そのため、基材にシートをラッピングする場合には、例えば接着剤によりシートを基材の表面に接着した状態で、シートの周縁部のうち、基材の一方に対向する側面に対応する縁部を折り曲げ、その折曲げ部を雌実側面及び雄実側面に接着し、その状態で、シートの周縁部のうち、基材の他方に対向する側面に対応する縁部を折り曲げ、その折曲げ部を雌実側面及び雄実側面に接着することで、基材の隣接する2辺の隅角部に、2辺の化粧シート層の両折曲げ部が基材から食み出した余剰部分
が形成
される。その両折曲げ部の余剰部分
は、裏面同士
が重ね合わ
された状態となり、その基材側寄り部位で
の切断によって、露出した状態で基材の隅角部に沿って基材厚さ方向に互いに平行に延びる切断端面を有するものとなる。
【0011】
これら第1及び第2の発明によると、このようにシートを基材の表面に接着した状態で、基材の隣接する2辺の隅角部に2辺の化粧シート層の両折曲げ部が基材から食み出し
かつ裏面同士が重ね合わされた余剰部分
が形成
され、そ
の余剰部分
が、基材の隅角部に沿って基材厚さ方向に互いに平行に延びる露出した切断端面を有するので、
ラッピング化粧板は、シート
が基材に対しずれることなく、かつ過不足なく正確にラッピング
されたものとなる。
【0012】
第3の発明は、第2の発明において、基材は長方形板材からなり、その基材の少なくとも長さ方向に対向するエンド側面に接着された化粧シート層の折曲げ部は、基材の雌実凹部の表側内面及び雄実凸部の表側外面に到達しないように雌実側面及び雄実側面まで延びていることを特徴とする。
【0013】
この第3の発明では、基材の長さ方向に対向するエンド側面に接着された化粧シート層の折曲げ部が基材の雌実凹部の表側内面及び雄実凸部の表側外面に到達しないので、隣接する2辺の隅角部の、2辺の化粧シート層の両折曲げ部の余剰部分を裏面同士が重ね合わされて接合された状態で
、その余剰部分に切断端面を形成する場合に、隅角部を1本線で
切断すればよく、
切断のために特殊な刃物を必要としないことから、好ましい。
【0014】
第4の発明は、第1〜第3の発明のいずれか1つにおいて、
切断端面を有する余剰部分が加熱により軟化して基材外面に沿うように馴染んでいることを特徴とする。
【0015】
この第4の発明では、
切断端面を有する余剰部分が加熱されて軟化して基材外面に沿うように馴染んでいるので、
その余剰部分を目立ち難くしてラッピング化粧板の外観見映えを高めることができる。
【0016】
第5の発明は、第1〜第4の発明のいずれか1つにおいて、基材に、湿気硬化型ウレタン樹脂系ホットメルト接着剤(PURホットメルト接着剤)を介して化粧シート層が接着一体化されていることを特徴とする。
【0017】
この第5の発明では、基材に対しシートをラッピングする際に、一方の対向する2辺のシートを貼着した後に、もう一方の対向する2辺のシートを貼着する場合に、PURホットメルト接着剤が湿気硬化する前に、後から貼着する方のPURホットメルト接着剤を温めて、再溶融することで、容易にラッピングして接着することができる。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように、本発明のラッピング化粧板によると、板状の基材の表面ないし周囲側面にシート
が接着一体化
された化粧シート層を形成し、化粧シート層の周縁部に、基材における側面に接着された折曲げ部を設け、基材の隣接する2辺の隅角部に、2辺の化粧シート層の両折曲げ部の基材から食み出した余剰部分
を裏面同士で重ね合わされ
た状態で設け、その余剰部分
は基材側寄り部位
に、露出した状態で基材の隅角部に沿って基材厚さ方向に互いに平行に延びる切断端面を有するものとしたことにより、シートを基材に対しずれることなく正確にラッピングすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものでは全くない。
【0021】
(実施形態1)
図1は本発明の実施形態1に係るラッピング化粧板Aを示し、この化粧板Aは例えば床材等として使用される。ラッピング化粧板Aは、板状の基材1と、この基材1の表面1aないし周囲側面1b,1b,1c,1cに接着剤を介して接着一体化されたシート20′からなる化粧シート層20とを備えている。
【0022】
上記接着剤として、例えば湿気硬化型ウレタン樹脂系ホットメルト接着剤(PURホットメルト接着剤)が用いられている。このように、湿気硬化型ウレタン樹脂系ホットメルト接着剤を用いることで、基材1に対しシート20′を容易にラッピングして接着することができる。尚、湿気硬化型ウレタン樹脂系ホットメルト接着剤以外の接着剤を用いることもできる。
【0023】
上記基材1は、合板やMDF等が好適に用いられる。或いはパーティクルボードやハードボード等のその他の木質材料、大建工業(株)製の商品名「ダイライト」等の無機質系板材等、通常に建材として用いられる板状の材料が用いられ、例えば厚み15mm、幅303mm、長さ1818mmの長方形状の板材からなる。
【0024】
図3に示すように、基材1の表面1aは化粧面とされ、この表面1aと周囲側面1b,1b,1c,1cの各々との角部に該角部を斜め(又は円弧状)に切り欠いた面取り部2が形成されている。
【0025】
基材1の周囲側面1b,1b,1c,1cの各辺には雌実4又は雄実12が形成されている。具体的には、基材1の幅方向に対向するサイド側面1b,1bの一方には雌実4が、また他方には雌実4に嵌合可能な雄実12がそれぞれ形成されている。また、基材1の長さ方向に対向するエンド側面1c,1cの一方には雌実4が、また他方には雌実4に嵌合可能な雄実12がそれぞれ形成されており、雌実4に、隣接する化粧板A(基材1)の雄実12を嵌合することで、両化粧板A,Aが並べられて施工されるようになっている。
【0026】
上記サイド側面1b及びエンド側面1cの雌実4,4は互いに同じ構造であり、基材1の厚み方向の中間部を凹溝状に切り欠くことで、基材1の厚み方向中間部に位置する雌実凹部5を有し、この雌実凹部5の表裏側には、それぞれ雌実凹部5を切り欠いた残りの部分からなる表側及び裏側雌実凸条6,7が位置し、例えば裏側雌実凸条7の突出長さは表側雌実凸条6よりも大きくなっている。また、表側雌実凸条6の先端には、上記面取り部2に連続する雌実側面8が形成され、この雌実側面8は雌実凹部5の表側に隣接している。尚、雌実4は、基材1の厚み方向の裏側部を切り欠くことで、基材1の裏側に位置する雌実凹部5を形成してもよく、その場合は裏側雌実凸条7がないいわゆる合決り構造となる。
【0027】
一方、上記サイド側面1b及びエンド側面1cの雄実12,12も互いに同じ構造であり、基材1の厚み方向の表裏両側部をそれぞれ断面矩形状に切り欠くことで、基材1の厚み方向中間部に位置する雄実凸部13を有し、この雄実凸部13の表裏側には、それぞれ雄実凸部13を切り欠いた部分からなる表側及び裏側雄実切欠部14,15が位置し、例えば裏側雄実切欠部15の切欠き深さは表側雄実切欠部14よりも大きくなっている。また、表側雄実切欠部14の底部には、上記面取り部2に連続する雄実側面16が形成され、この雄実側面16は雄実凸部13の表側に隣接している。尚、雄実12は、基材1の厚み方向の表側部を切り欠くことで、基材1の裏側に位置する雄実凸部13を形成してもよく、その場合は裏側雄実切欠部15がない合決り構造となる。
【0028】
上記シート20′は、例えば塩ビ、ポリオレフィン系等の樹脂シートからなり、その厚みは0.1〜0.4mm程度のものが用いられる。
【0029】
これ以外に、ポリエチレンテレフタレート等の樹脂シート、コート紙、樹脂含浸紙等の化粧紙、不織布、織布、木質薄化粧突き板、畳表等の薄いシート材であれば、使用することができる。厚みは、ラッピング設備との兼ね合いで決定すればよく、紙であれば例えば0.05〜0.3mm程度のもの、木質薄化粧突板であれば、0.15〜0.30mm程度のものが好適に用いられる。
【0030】
このシート20′からなる化粧シート層20の周縁部には、基材1のサイド側面1b,1b及びエンド側面1c,1cにそれぞれ位置する4つの折曲げ部20a,20a,…が設けられている。この折曲げ部20a,20a,…のうち、雌実4の形成されている基材1のエンド側面1cに位置する各折曲げ部20aは、該雌実4における雌実側面8に接着され、その基材1裏側に位置する先端部が雌実凹部5の表側内面5aに到達しないように雌実側面8において該表側内面5a近傍まで延びている。一方、雄実12の形成されている基材1のエンド側面1cに位置する各折曲げ部20aは、該雄実12における雄実側面16に接着され、その基材1裏側に位置する先端部が雄実凸部13の表側外面13aに到達しないように雄実側面16において該表側外面13a近傍まで延びている。
【0031】
尚、基材1のサイド側面1bでも、化粧シート層20の各折曲げ部20aが雌実4における雌実側面8に接着され、その先端部が雌実凹部5の表側内面5aに到達しないように雌実側面8において該表側内面5a近傍まで延び、或いは、折曲げ部20aが雄実12における雄実側面16に接着され、その先端部が雄実凸部13の表側外面13aに到達しないように雄実側面16において該表側外面13a近傍まで延びていてもよい。
【0032】
さらに、上記基材1の隣接する2辺であるサイド側面1b及びエンド側面1cの隅角部には、該2辺の化粧シート層20の両折曲げ部20a,20aの基材1から食み出した余剰部分を同時に(重なった状態で)切断して除去した切除部21が切除の痕跡として形成されている。
図2は、基材1のサイド側面1bの雄実12と、このサイド側面1bに隣接するエンド側面1cの雄実12との隅角部を例示しており、この
図2にも拡大して示すように、基材1のサイド側面1b及びエンド側面1cでシート20′の周縁部を折り曲げて基材1側面に接着したときに、そのシート20′周縁部において基材1の隣接するサイド側面1b及びエンド側面1cに位置する折曲げ部20a′,20a′の余剰部分が裏面同士を重ね合わせた状態で基材1から食み出して食み出し部21′(
図6及び
図7参照)を構成しており、この両余剰部分からなる食み出し部21′を基材1の間際位置で同時に切除することで、切除部21が形成されている。
【0033】
そして、上記切除部21は、加熱により軟化して基材1外面に沿うように馴染んでいる。
【0034】
次に、上記ラッピング化粧板Aの製造方法について
図4〜
図8に基づき説明する。この製造方法は、(1)実加工工程、(2)接着剤塗布工程、(3)シート表面接着工程、(4)第1シート接着工程、(5)シート切断工程、(6)第2シート接着工程、(7)余剰部クランプ工程、(8)余剰部切除工程、及び(9)角部成形工程を有する。
【0035】
(1)実加工工程
実加工工程では、基材1周囲のサイド側面1b,1b及びエンド側面1c,1cに雌実4及び雄実12を加工する。
【0036】
(2)接着剤塗布工程
接着剤塗布工程では、シート20′の裏面に接着剤(湿気硬化型ウレタン樹脂系ホットメルト接着剤)を塗布する。尚、接着剤は、シート20′の裏面に塗布するのに代えて、基材1の表面1a及び側面1b,1cに塗布してもよい。
【0037】
このシート20′は、例えばロール等に巻き取られていてそのロール等から連続的に繰り出されて供給されるもので、予め、その幅が基材1にラッピングしたときに基材1の幅に対応する基準幅に設定されていてもよく、或いはその基準幅よりも大きくてもよい。具体的には、シート20′の基準幅は、シート20′を基材1に各々の幅方向を一致させてラッピングさせ、後述の(4)第1シート接着工程で折曲げ部20aを形成したとき、その折曲げ部20aの先端が基材1のサイド側面1b,1bにおける雌実凹部5の表側内面5a及び雄実凸部13の表側外面13aに到達しないような幅である。
図4(a)においては基準幅のシート20′を示している。
【0038】
(3)シート表面接着工程
シート表面接着工程では、
図4(a)及び(b)に示すように、上記シート20′を基材1の表面1aに接着剤で接着する。このとき、シート20′と基材1とを幅方向に正確に位置合わせして接着する。
【0039】
(4)第1シート接着工程(サイドラミネート)
第1シート接着工程では、
図5(a)及び(b)に示すように、上記シート20′の幅方向の両縁部を折り曲げて基材1のサイド側面1b,1bにおける雌実4の雌実側面8及び雄実12の雄実側面16に加圧しかつ接着剤を固化させて接着することで、基材1のサイド側面1b,1bに位置する化粧シート層20の周縁部に折曲げ部20a,20aを形成する。
【0040】
具体的には、この第1シート接着工程では、
図9に示す折り曲げプレス機構24が使用される。この折り曲げプレス機構24は、シート20′の縁部を基材1に加圧して接着するためのもので、シート20′の縁部を基材1に沿うように折り曲げる折り曲げ治具25と、この折り曲げ治具25を背面側から加熱する電気ヒータ等からなるヒータプレート26と、シート20′の縁部が基材1側面に向けて押し付けられるように折り曲げ治具25を背面側から直接に又はヒータプレート26を介在して加圧する加圧プレート27とを備えている。折り曲げ治具25及びヒータプレート26は、基材1の周縁部に昇降可能に配置されて、それぞれ図外の昇降駆動アクチュエータにより互いに独立して昇降する。折り曲げ治具25は、
図10に示すように、基材1のサイド側面1b及びエンド側面1cにおける雌実4の雌実側面8及び雄実12の雄実側面16に沿った形状の折り曲げ加圧面25aを有する。そして、折り曲げ治具25及びヒータプレート26が
図10に仮想線にて示す上昇位置から下降移動することにより、シート20′の縁部を、ヒータプレート26によって加熱された折り曲げ治具25の折り曲げ加圧面25aで基材1の雌実4の雌実側面8及び雄実12の雄実側面16に沿う形状に折り曲げるようになっている。
【0041】
折り曲げ治具25の折り曲げ加圧面25aの上側には上側に向かって基材1の中央側に向かうように傾斜した傾斜面25bが連続しており、この傾斜面25bにより、折り曲げ治具25は折り曲げ時に基材1の面取り部2を含む表面1a上のシート20′と間隔を空けて該シート20′に当接しないように構成されている。こうすることで、折り曲げ治具25が折り曲げ時に基材1の表面1a上のシート20′に押し付けられることはなく、表面1a上の化粧シート層20に折り曲げ治具25の痕跡が残らず、ラッピング化粧板Aの外観上の見映えを高めることができる。
【0042】
上記加圧プレート27は、上記折り曲げ治具25及びヒータプレート26の背面側(基材1から離れた側)に配置されて図外の加圧駆動アクチュエータにより基材1に対し接離する進退動作を行うもので、そのうちの接近する前進動作によりシート20′の縁部を基材1に向けて加圧する。具体的には、加圧プレート27は、ヒータプレート26が下降して折り曲げ治具25の背面側に位置する状態と、上昇して折り曲げ治具25の背面側に位置しない状態との2つの態様でプレス動作を行い、ヒータプレート26が下降して折り曲げ治具25の背面側に位置するときには、そのヒータプレート26で加熱された状態の折り曲げ治具25によってシート20′の縁部が折り曲げられた状態のまま、加圧プレート27の前進により該折り曲げ治具25をヒータプレート26と共にシート20′の縁部が基材1に向けて押し付けられるように加圧し、シート20′裏面に接着剤を再活性化(再溶融)するホットプレス動作を行う。一方、ヒータプレート26が上昇して折り曲げ治具25の背面側に位置しないときには、加圧プレート27の前進により、ヒータプレート26で加熱されない状態の折り曲げ治具25を直接に加圧して、その折り曲げ治具25によってシート20′の縁部を基材1に向けて押し付け、上記再活性化された接着剤を冷却により固化させて接着するコールドプレス動作を行うように構成されている。そのため、図示しないが、加圧プレート27には例えば冷媒が流れる冷媒通路が形成されて、その冷媒によって冷却されている。また、この加圧プレート27がヒータプレート26によって加熱されないようにするために、ヒータプレート26の背面に断熱材を設けることが望ましい。
【0043】
尚、本実施形態の折り曲げ治具25とヒータプレート26とは、一体に成型されていてもよい。
【0044】
また、本実施形態においては、プレートを使用したサイドのラッピング方法を例示しているが、これに限らず、表面から対向するサイド周縁部のシートラッピング加工については、一般的なラッピング設備を使用してもよい。
【0045】
(5)シート切断工程(エンドカット)
シート切断工程では、シート20′の周縁部のうち、基材1において互いに長さ方向に対向するエンド側面1c,1cの2辺に対応する縁部を、該縁部が基材1のエンド側面1c,1cに折り曲げられたときに面取り部2を経て雌実側面8及び雄実側面16まで雌実凹部5の表側内面5a及び雄実凸部13の表側外面13aに到達しないように延びる所定長さになるように切断する。この切断は、例えば基材1の先端をセンサーで検知し、連続搬送される基材1の全長に応じて上記所定長さで切断する。
【0046】
(6)第2シート接着工程(エンドラミネート)
第2シート接着工程も、上記第1シート接着工程と基本的に同じで、シート切断工程で切断されたシート20′の長さ方向の両縁部を接着することのみが異なる。すなわち、この工程では、
図6(a)及び(b)に示すように、上記第2シート切断工程で切断されたシート20′の両縁部を折り曲げて基材1のエンド側面1c,1cにおける雌実4の雌実側面8及び雄実12の雌実側面16に加圧しかつ接着剤を固化させて接着することで、基材1のエンド側面1c,1cに位置する化粧シート層20の周縁部に折曲げ部20a,20aを形成する。
【0047】
この工程でも、上記第1シート接着工程で使用されたものと同じ折り曲げプレス機構24が用いられる。折り曲げプレス機構24の構造や動作は第1シート接着工程で使用されるものと同じであるので、説明を省略する(
図9参照)。
【0048】
この第2シート接着工程が終了すると、基材1の2つのサイド側面1b,1b及び2つのエンド側面1c,1cにそれぞれシート20′の縁部が折り曲げられて接着されるので、基材1周囲の4つの隅角部に、化粧シート層20において基材1の隣接する2辺の折曲げ部20a,20aが端部の余剰部分で集まって基材1から食み出した食み出し部21′が形成される。
【0049】
(7)余剰部クランプ工程
余剰部クランプ工程では、
図7(a)及び(b)に示す如く、上記のように、基材1の隣接する2辺の隅角部に形成された化粧シート層20の食み出し部21′(両余剰部分)をクランプして挟圧することで、その食み出し部21′を化粧シート層20の2辺の折曲げ部20a,20aが裏面同士を重ね合わせた状態となるように成形する。
【0050】
この余剰部クランプ工程では、11に示すクランプ機構30が使用される。このクランプ機構30は、図外のアクチュエータにより、基材1の隣接する2辺の隅角部に向かって前進後退する板状のベース部材31を備えている。このベース部材31の先端部には略L字状に直角に切り欠かれた切欠部32が形成され、切欠部32の内面両側にはそれぞれ例えば水平面内で互いに直交するように配置された1対の押し付け定規33,33が取付固定されており、ベース部材31を前進させることで、これらの押し付け定規33,33を食み出し部21′両側の、基材1の隣接する2辺の隅角部に位置する雌実4の雌実側面8又は雄実12の雄実側面16に化粧シート層20の折曲げ部20a,20aの上から押し付けて、ベース部材31及び後述するクランプ部材35の位置決めを行うようにしている。
【0051】
ベース部材31の上面には、上記両押し付け定規33,33の上方に位置する開閉可能なクランプ部材35が昇降可能に支持されている。このクランプ部材35はペンチと同様の構造を有するもので、図外の昇降アクチュエータにより昇降し、かつ図外の開閉アクチュエータにより開閉するようになっており、ベース部材31が押し付け定規33,33で位置決めされたときに、クランプ部材35を開いた状態で下降させ、食み出し部21′を挟んで加圧することで、その食み出し部21′を化粧シート層20の折曲げ部20a,20aの裏面同士が確実に接着するように成形する。
【0052】
このことで、各食み出し部21′は基材1の4つの隅角部において、例えば隣接する2辺に対し例えば等間隔の135°の角度をあけた方向に向くように成形される。
【0053】
尚、ベース部材31の形状については、本実施例においてはL字に形成されているが、周縁部及び面取り部の形状に応じて、適宜必要な形状のベース部材31を用いればよい。
【0054】
(8)余剰部切除工程
余剰部切除工程では、
図8(a)及び(b)に示すように、上記シート20′の各食み出し部21′を基材1の間際部分で両余剰部分が同時となるように重なった状態で切除することで、切除部21を形成する。
【0055】
余剰部切除工程では、
図12に示す角部カット機構40が使用される。この角部カット機構40は、基本的構造が上記クランプ機構30と同じであり、クランプ部材35がニッパー41に置き換わったものである(角部カット機構40において、クランプ機構30と同じ部分については同じ符号を付して説明する)。
【0056】
すなわち、角部カット機構40は、図外のアクチュエータにより、基材1の隣接する2辺の隅角部に向かって前進後退する板状のベース部材31を備え、ベース部材31の先端部には略L字状に直角に切り欠かれた切欠部32が形成され、切欠部32の内面両側にはそれぞれ例えば水平面内で互いに直交するように配置された1対の押し付け定規33,33が取付固定されており、ベース部材31を前進させることで、これらの押し付け定規33,33を食み出し部21′両側の、基材1の隣接する2辺の隅角部に位置する雌実側面8又は雄実側面16に化粧シート層20の折曲げ部20a,20aの上から押し付けることで、ベース部材31及び後述するニッパー41の位置決めを行うようにしている。
【0057】
ベース部材31の上面には、上記両押し付け定規33,33の上方に位置する開閉可能な刃部41aを有するニッパー41(切断手段)が昇降可能に支持され、このニッパー41は図外の昇降アクチュエータにより昇降し、かつ図外の開閉アクチュエータにより刃部41aが開閉するようになっており、ベース部材31が押し付け定規33,33で位置決めされたときに、刃部41aを開いた状態で下降させて食み出し部21′を挟み、刃部41aを閉じて食み出し部21′の基材1側寄り部位をカットし、食み出し部21′の先端側を切り落とすことで、切除部21を形成するようにしている。
【0058】
(9)角部成形工程
角部成形工程では、上記各切除部21を加熱により軟化させて基材1外面に沿うように馴染ませる。この工程では、
図13に示す角部成形機構45が用いられる。この角部成形機構45は、図外のアクチュエータにより、基材1の隣接する2辺の隅角部に向かって前進後退するベース部材46を備えている。ベース部材46の先端部には加熱プレート47が取り付けられ、この加熱プレート47の前面には内面が互いに直交するように略L字状に直角に切り欠かれた加熱凹部47aが形成されており、ベース部材46の前進により加熱プレート47の加熱凹部47aを切除部21に押し当てて加熱することで、切除部21を溶融状態として基材1外面に沿うように馴染ませる。
【0059】
尚、この角部成形工程では、各切除部21(化粧シート層20)が部分的に溶融してその切断面同士が熱融着する程度まで加熱してもよい。
【0060】
上記した(4)第1シート接着工程(サイドラミネート)、(5)シート切断工程(エンドカット)及び(6)第2シート接着工程(エンドラミネート)の3つの工程は順番を変えてもよく、同様の作用効果が得られる。
【0061】
例えば、(4)第1シート接着工程(サイドラミネート)と(5)シート切断工程(エンドカット)とを逆にし、(5)シート切断工程(エンドカット)→(4)第1シート接着工程(サイドラミネート)→(6)第2シート接着工程(エンドラミネート)の順序にすることができる。
【0062】
また、3つの工程の順番を全て逆にし、(6)第2シート接着工程(エンドラミネート)→(5)シート切断工程(エンドカット)→(4)第1シート接着工程(サイドラミネート)の順序にしてもよい。
【0063】
以上の工程を経過することにより、上記ラッピング化粧板Aが得られる。
【0064】
したがって、上記実施形態においては、シート20′を基材1の表面1aに接着した状態で、基材1の隣接する2辺の隅角部に2辺の化粧シート層20の両折曲げ部20a,20aの余剰部分が重ね合わされて接合された食み出し部21′を形成し、その食み出し部21′の余剰部分を同時に切除して切除部21を設けるので、シート20′を基材1に対しずれることなく正確にラッピングすることができる。
【0065】
また、切除部21が加熱により軟化して基材1外面に沿うように馴染んでいるので、切除部21を目立ち難くしてラッピング化粧板Aの外観見映えを高めることができる。
【0066】
さらに、基材1のエンド側面1c,1cに位置する化粧シート層20の折曲げ部20a,20aは、基材1の雌実凹部5の表側内面及び雄実凸部13の表側外面に到達しないように雌実側面8及び雄実側面16まで延びているので、基材1の周囲側面に雌雄実5,12が形成されていても、化粧シート層20の折曲げ部20aが雌実4における雌実凹部5の表側内面5a及び雄実12における雄実凸部13の表側外面13aまでずれて接着されることはない。そのため、雌雄実4,12の嵌合構造に化粧シート層20が悪影響を及ぼすことはない。
【0067】
(実施形態2)
図14は本発明の実施形態2を示し(尚、
図1〜
図13と同じ部分については同じ符号を付してその詳細な説明は省略する)、上記実施形態1では、周囲側面の各辺に雌実4又は雄実12が形成された板状の基材1を用いているのに対し、雌実4又は雄実12のない基材1を用いたものである。
【0068】
すなわち、この実施形態では、ラッピング化粧板Aは、表面1aと周囲のサイド側面1b,1b及びエンド側面1c,1cとの角部に面取り部2が形成された板状の基材1を備え、この基材1の表面1aないし周囲側面1b,1b,1c,1cにシート20′が接着一体化されて化粧シート層20が形成されている。
【0069】
上記化粧シート層20の周縁部には折曲げ部20a,20a,…が形成され、基材1のエンド側面1cに位置する各折曲げ部20aは、基材1の面取り部2を経て周囲のサイド側面1b及びエンド側面1cまで基材1裏面に到達しないように延びて該サイド側面1b及びエンド側面1cに接着されている。
【0070】
そして、基材1の隣接する2辺の隅角部には、裏面同士を重ね合わせた状態で基材1から食み出している、化粧シート層20の2辺の両折曲げ部20a,20aの余剰部分を同時に(重なった状態で)切断して除去した切除部21が形成され、この切除部21は加熱により軟化して基材1外面に沿うように馴染んでいる。
【0071】
この実施形態2のラッピング化粧板Aを製造する方法の工程、及び製造装置は、実施形態1で説明したものと同じであるので、その説明を省略する。
【0072】
したがって、この実施形態においても実施形態1と同様の作用効果を奏することができる。
【0073】
(その他の実施形態)
上記実施形態では、化粧シート層20の食み出し部21′をカットするためにニッパー41を用いているが、レーザー等、他の切断手段を用いることができる。
【0074】
また、上記実施形態では、基材1は長方形状の板材からなるものとしたが、サイド側面1b及びエンド側面1cが同じ寸法長さとなる正方形のものでもよい。