特許第5887316号(P5887316)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5887316
(24)【登録日】2016年2月19日
(45)【発行日】2016年3月16日
(54)【発明の名称】空気調和機の室内機及び空気調和機
(51)【国際特許分類】
   F24F 13/20 20060101AFI20160303BHJP
   F24F 11/02 20060101ALI20160303BHJP
   F24F 13/06 20060101ALI20160303BHJP
【FI】
   F24F1/00 401C
   F24F11/02 102H
   F24F13/06 D
【請求項の数】5
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2013-178791(P2013-178791)
(22)【出願日】2013年8月30日
(65)【公開番号】特開2015-48948(P2015-48948A)
(43)【公開日】2015年3月16日
【審査請求日】2015年7月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】399048917
【氏名又は名称】日立アプライアンス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】村若 正俊
(72)【発明者】
【氏名】大郷 賢一
(72)【発明者】
【氏名】大舘 一夫
【審査官】 横溝 顕範
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−069127(JP,A)
【文献】 特開平09−287807(JP,A)
【文献】 特開2011−064399(JP,A)
【文献】 特開2009−144979(JP,A)
【文献】 特開2007−093092(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 11/02
F24F 13/06
F24F 13/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸込口と吹出口とを結ぶ空気通路と、
前記空気通路に配置された室内熱交換器と、
前記空気通路に配置され、前記室内熱交換器の下流側に位置する室内送風ファンと、
前記吹出口の上部を構成する上側ケーシングと、
前記吹出口の下部を構成する下側ケーシングと、
前記吹出口に配置された上下風向板と、
記上下風向板の上流側端部上面が前記下側ケーシングの延長線上又は前記下側ケーシングの延長線より下方に位置する能力優先モードと、
記上下風向板の上流側端部上面が前記下側ケーシングの延長線より上方に位置する通常冷房運転モードとを備え、
前記通常冷房運転モードにおける前記上下風向板と前記下側ケーシングの間の距離は、前記能力優先モードにおける前記上下風向板と前記下側ケーシングの間の距離より長い空気調和機の室内機。
【請求項2】
記上下風向板を回動する軸を備え、
前記軸を回動することによって前記上下風向板と前記下側ケーシングの間の距離を変えることを特徴とする請求項1に記載の空気調和機の室内機。
【請求項3】
前記下側ケーシングは、第1傾斜部と、前記第1傾斜部より下流側に位置し、前記第1傾斜部よりも床面方向に傾斜した第2傾斜部とを有し、
記上下風向板の上流側端部上面が前記第2傾斜部の延長線上又は前記第2傾斜部の延長線より下方に位置する通常暖房運転モードを備え、
前記通常冷房運転モードにおいて、前記上下風向板の上流側端部上面は前記第1傾斜部の延長線より上方に位置し、
前記能力優先モードにおいて、前記上下風向板の上流側端部上面は前記第1傾斜部の延長線上又は前記第1傾斜部の延長線より下方に位置することを特徴とする請求項2に記載の空気調和機の室内機。
【請求項4】
室内の湿度を検出する湿度センサを備え、
前記湿度センサで検出した値が所定値以上であるときに前記通常冷房運転モードを行い、前記湿度センサで検出した値が前記所定値より小さいときに前記能力優先モードを行うことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の空気調和機の室内機。
【請求項5】
前記請求項1乃至4のいずれかに記載の空気調和機の室内機と、
圧縮機と室外熱交換器と室外送風ファンと膨張弁とを有する室外機とを備える空気調和機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気調和機の室内機及び空気調和機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、下側の上下風向板を下側ケーシングのほぼ延長上に配置し、下側ケーシングと下側の上下風向板の一端を、ほぼ隙間なく近接するようにしたことにより、同近接部から吹出空気が漏れにくくなって送風の効率を低下させないようにした空気調和機が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−287807号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の空気調和機では、通常冷房運転モード時に、下側の上下風向板により高温多湿の室内空気と低温の吐出空気が遮断され、下側上下風向板の裏面から表面に熱伝導し、高温多湿の室内空気にさらされた下側上下風向板の表面側に結露が発生する。結露した水滴は成長及び集合して、室内の家具または床に落下する恐れがある。
【0005】
本発明は、高い送風効率を実現しつつ、上下風向板の結露を抑制する空気調和機の室内機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の空気調和機は、吸込口と吹出口とを結ぶ空気通路と、空気通路に配置された室内熱交換器と、空気通路に配置され、室内熱交換器の下流側に位置する室内送風ファンと、吹出口の上部を構成する上側ケーシングと、吹出口の下部を構成する下側ケーシングと、吹出口に配置された上下風向板と、上下風向板の上流側端部における上面が下側ケーシングの延長線上又は下側ケーシングの延長線より下方に位置する能力優先モードと、上下風向板の上流側端部における上面が下側ケーシングの延長線より上方に位置する通常冷房運転モードとを備え、通常冷房運転モードにおける上下風向板と下側ケーシングの間の距離は、能力優先モードにおける上下風向板と下側ケーシングの間の距離より長い。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、高い送風効率を実現しつつ、上下風向板の結露を抑制する空気調和機の室内機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態に係る空気調和機のサイクル構成図である。
図2】第1実施形態に係る室内機の側面に沿った断面図である。
図3】第1実施形態に係る室内機吹出口の能力優先モード時における拡大側面断面図である。
図4】第1実施形態に係る室内機吹出口の通常冷房運転モード時における拡大側面断面図である。
図5】第1実施形態に係る室内機の運転停止時における側面に沿った断面図である。
図6】第2実施形態に係る室内機吹出口の能力優先モード時における拡大側面断面図である。
図7】第2実施形態に係る室内機吹出口の通常冷房運転モード時における拡大側面断面図である。
図8】第2実施形態に係る室内機吹出口の通常暖房運転モード時における拡大側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図において共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
(第1実施形態)
図1は第1実施形態に係る空気調和機のサイクル構成図である。冷房運転時は、圧縮機34より吐出された高温且つ高圧の冷媒は、四方弁35を介して室外熱交換機37に流入する。室外熱交換機37に流入した冷媒は、室外送風ファン38によって送られる室外の空気と熱交換することで、凝縮されて液冷媒となる。液冷媒は、膨張弁36を通過することで低温低圧の二相冷媒になり、室内熱交換器5に流入する。室内熱交換器5に流入した低温低圧の二相冷媒は、室内送風ファン6によって送られる室内の空気と熱交換する。このとき、室内熱交換器5に送られた室内の空気は、室内熱交換器5に流入した低温低圧の二相冷媒によって冷却され、吹出口3から室内に吐出される。吹出口3から室内に吐出される空気は、吸込口2における空気の温度よりも低いため、室内の温度を下げることができる。室内熱交換器5で熱交換された冷媒は四方弁35を介して再び圧縮機34に戻る。
【0010】
圧縮機34と室外熱交換器37と室外送風ファン38と膨張弁36は室外機に配置され、室内熱交換器5と室内送風ファン6は室内機1に配置されている。
【0011】
図2は第1実施形態に係る室内機の側面に沿った断面図である。空気調和機の室内機1は、吸込口2と吹出口3とを結ぶ空気通路4と、化粧枠13と、化粧枠13に固定され、室内機前面に配置された化粧パネル12を備える。さらに、空気調和機の室内機1は、化粧パネル12及び化粧枠13の内部であって、空気通路4に配置された室内熱交換器5と、化粧パネル12と室内熱交換器5の間に位置する前面側フィルタ14a、及び、上部化粧枠13aの下方に位置する上面側フィルタ14bから構成されるフィルタ14を備える。上面側フィルタ14bの直下には、塵埃が除去された空気と熱交換する室内熱交換器5が配置され、フィルタ14によって塵埃が除去された空気がΛ形状(逆V形状)の室内熱交換器5に流れる。室内の空気を吸い込む吸込口2は、室内機1本体の上部(化粧パネル12及び上面側フィルタ14bの上方)に位置し、吸込口2から吸い込まれた空気は塵埃を除去する上面側フィルタ14bに流れる。
【0012】
化粧パネル12の下方には吹出口3が設けられ、熱交換された空気が吹出口3から室内機1の前方に吹き出される。室内送風ファン(送風用貫流ファン)6は、吸込口2から室内熱交換器5を経由して吹出口3へ向かう空気通路4であって、室内熱交換器5の下流側に配置され、吹出口3から熱交換された空気を吹き出す。
【0013】
キャビネット15が壁面に固定される。室内熱交換器5の下側には、室内熱交換器5で結露した水を受けるドレンパン16が配置される。キャビネット15及びドレンパン16により、ファン6の下流側の空気通路4を発生させるための下流側風洞17が構成されている。
【0014】
下流側風洞17の上側には上側ケーシング18、下側には下側ケーシング11が配置される。上側ケーシング18は吹出口3の上部を構成し、下側ケーシング11は吹出口3の下部を構成する。
【0015】
また、下流側風洞17のファン6側とは反対側の端面が吹出口3となる。左右風向板33、下流側風洞17の下側に配置された下側上下風向板10と、下流側風洞17の上側に配置された上側上下風向板9が吹出口3に配置されている。ここで、吹出口3に配置には、吹出口3の近傍の下流側風洞17に配置される場合が含まれる。下側上下風向板10は、制御部によって、運転停止時に吹出口3を閉じ、冷房運転時や暖房運転時に吹出口3を開ける。
【0016】
上側上下風向板9は風路の中に配置されているため、冷房運転時上側上下風向板9の上面と下面に流れる空気に温度差が生じないため、上下風向板9が結露することはない。
【0017】
一方、下側上下風向板10は上面と下面で温度差が生じるため、結露が生じる。そのため、下側上下風向板10の上面と下面の熱の伝達を防ぐため、下側上下風向板10は熱抵抗が大きいウレタンフォームなどの断熱材28を挟んで構成される。
【0018】
次に、上下風向板の動作について、図3図4を用いて説明する。図3は、第1実施形態に係る室内機吹出口の能力優先モード時における拡大側面断面図である。能力優先モードについては、冷房運転時または暖房運転時の設定温度と室内温度との差が大きく、大きな冷房能力または暖房能力が必要となる場合に使用する。
【0019】
例えば、冷房運転または暖房運転の運転開始時に設定温度と室温が所定以上の差があるときに使用する。冷房能力および暖房能力は吸込口2と吹出口3の温度差と風量の積で決定され、風量が多い方がより冷房能力・暖房能力は高くなる。このとき室内送風ファン6の回転数を上昇させることで風量は多くなるが同時に騒音も上昇する。つまり送風効率を上げることができれば低騒音で能力を上昇させることができる。
【0020】
能力優先モード時には、下側上下風向板の軸21を中心に下側上下風向板10を回動し、下側上下風向板10の上流側端部上面26aが下側ケーシング11の延長線上又は下側ケーシング11の延長線より下方に位置するように配置される。これにより、下流側風洞17を通過する冷風22または温風23の送風抵抗が小さくでき、吹き出し風量を低下させることなく、効率良く室内に冷風22または温風23を送り出すことができる。上側上下風向板9及び下側上下風向板10については、ステップモータ24などの駆動部品25により上側上下風向板の軸20及び下側上下風向板の軸21を中心に回動する。下側上下風向板10の上面とは、下側上下風向板10のうち上側上下風向板9側の面をいう。
【0021】
下側ケーシング11及び下側上下風向板10の側面に沿った断面形状については、下側上下風向板10が下側ケーシング11の略延長線上であれば、直線形状でも曲線形状でもよい。なお、下側上下風向板10の上流側端部上面26aが下側ケーシング11の延長線上になるよう配置するほうが好ましい。
【0022】
下側上下風向板10は上下風向板軸21を中心に回動するため、下側上下風向板10と下側ケーシング11は干渉しない程度のクリアランスが必要である。クリアランスは下側上下風向板10の製品寸法のばらつきや反りの管理値以上にする必要があるが、下側上下風向板10をディフューザとして使用するためにはクリアランスは極力小さい方がよい。クリアランスが大きいとクリアランス部分から冷風22または温風23が漏れてしまい本来静圧として回収される動圧が周囲の空気に運動エネルギを与えてしまい静圧回収が有効に行われなくなる。
【0023】
クリアランスが十分に小さい場合、ベルヌーイの定理から吹出口3は室内機1の周囲の圧力よりも小さくなるので、クリアランス部分は吹出口3に流入する流入空気39の流れ(下方から上方に向かう流れ)が生じる。
【0024】
しかし、クリアランスが大きくなると、下側ケーシング11に沿って流れる冷風22・温風23が拡散しようとする流れが、吹出口3に流入する流れに勝り、クリアランス部分から冷風22または温風23が漏れてしまい、周囲の空気に運動エネルギを与えてしまう。また、流入空気39も運動エネルギを与えられるので少ない方がよい。以上の理由から前記クリアランスは小さい方が望ましく、静圧回収を有効に行うためにはクリアランスは2mm以下にすることが好ましい。
【0025】
なお、上側上下風向板9については、送風抵抗を小さくするため、下側上下風向板10に略平行の姿勢とすることが好ましい。
【0026】
図4は、第1実施形態に係る室内機吹出口の通常冷房運転モード時における拡大側面断面図である。通常冷房運転モードは、大きな冷房能力を必要としない場合や、室内空気の湿度が高い場合に使用する。下側上下風向板10には熱抵抗が大きいウレタンフォーム等の断熱材28が挟まれ構成されているが、長時間下側上下風向板10の上面と下面で温度差を生じている場合や、湿度が高い状態が続くと下側上下風向板10が結露する懸念が生じる。
【0027】
そこで、本実施例では、設定温度と室温の差が所定の値以下の場合、または湿度が所定の値以上の時に、通常冷房運転モードとし、下側上下風向板10の上流側端部上面26aが下側ケーシング11の延長線より上方に位置するよう下側上下風向板10を配置する。通常冷房運転モードにおける下側上下風向板10と下側ケーシング11の間の距離は、能力優先モードにおける下側上下風向板10と下側ケーシング11の間の距離より長い。
【0028】
温度の低い空気は、室内の低い位置に停留しやすい。低温の空気が、室内の低い位置に停留すると、使用者の足元のみが冷え、使用者に不快感を与える恐れがある。通常冷房運転モード時は、空気調和機の室内機1から室内の高い位置に冷風22を吹き出し、室内全体の温度を下げることが望ましい。このため、能力優先モード時の下側上下風向板10の位置より、下側上下風向板の軸21を中心に5〜25°上方に回動させた位置を、通常冷房運転モード時の下側上下風向板10の位置とする。上側上下風向板9については、送風抵抗を小さくするため、下側上下風向板10に略平行の姿勢とすることが好ましい。
【0029】
下側ケーシング11の下流側には、下側上下風向板の上流側端部26が位置する。このとき、下側上下風向板10と下側ケーシング11の間に所定の隙間を設けているため、流入空気39の流れよりも冷風22が拡散しようとする流れが勝る。このため、下側ケーシング11に沿って冷風22が流れ、下側上下風向板の上流側端部26で下側上下風向板10の上側と下側に分かれて流れていく。下側上下風向板10の下側にも冷風22が流れるため、下側上下風向板10の上側も下側も略均一に冷やされる。これにより、下側上下風向板10の表面への結露を抑制することができる。
【0030】
下側上下風向板の軸21は下側上下風向板10の上流側で上側ケーシング18と下側ケーシング10との間に位置する。下側上下風向板の軸21と下側上下風向板10の間の距離は、通常冷房運転モードにおける下側上下風向板10と下側ケーシング11の間の距離より長い。具体的には、下側上下風向板10の上流側端部26と下側ケーシング11との間の隙間は、5〜15mmとすることが好ましい。これにより、通常冷房運転モード時に下側上下風向板10の下側にも冷風22が供給されやすくなる。
【0031】
下側上下風向板10については、下側上下風向板の上流側端部下側26bにCカット面または曲面形状としても良い。これにより、通常冷房運転モード時に下側上下風向板10の下側に沿って流れる冷風22が、抵抗なく、よりスムーズに流れるようになる。
【0032】
下側上下風向板10については、中空構造とし、内部に断熱材28を備えた構造としても良い。これにより、下側上下風向板10表面への結露の抑制効果を高めることができる。
【0033】
能力優先モードと通常冷房運転モードの切り替えは、使用者が実施する。また空気調和機の室内機1に備えた湿度センサ32によって、検知した湿度が予め設定された湿度(所定値)に達した場合に、自動で能力優先モードと通常冷房運転モードを切り替えても良い。湿度センサ32に加え、又は、湿度センサ32の代わりに、温度センサ31の検出値に応じて、能力優先モードと通常冷房運転モードを切り替えても良い。
【0034】
運転開始直後は、結露が発生しないこと、及び、急速に室内を冷やす必要があることから、運転開始から所定時間は湿度センサ32又は湿度センサ32の検出値に係らず、強制的に能力優先モードを実行してもよい。
【0035】
なお、能力優先モードにおいて、室内送風ファン6の回転数を所定の値に変更してもよいし、能力優先モードの通常冷房運転モードの切り替えによって、室内送風ファン6の回転数を変えないようにしてもよい。
【0036】
能力優先モードと通常冷房運転モードとは、必ずしも使用者が設定できる特定の運転モードを構成する場合に限らず、1つの冷房運転モードにおいて、室温センサ31や湿度センサ32で検出された値に応じて、下側上下風向板10の位置を、能力優先モードにおける下側上下風向板10の位置と、通常冷房運転モードにおける下側上下風向板10の位置とに切り替えるよう構成してもよい。
【0037】
このように本発明の第1実施形態によれば、空気調和機の室内機1において、室内空気を効率良く冷やす能力優先モードを備えつつ、室内空気の湿度が著しく高い場合には、通常冷房運転モードにより上下風向板10表面への結露を抑制することができる。
【0038】
図5は、第1実施形態に係る室内機の運転停止時における側面に沿った断面図である。本実施形態における上側上下風向板9及び下側上下風向板10は、室内機1の筐体に沿うように曲線形状としている。そのため、空気調和機の運転停止時に、上側上下風向板9及び下側上下風向板10の下面が室内機1の意匠の一部となり、意匠面にも優れた構成にすることができる。
【0039】
空気調和機の運転停止時に図5に示すように、下側上下風向板10の下面が室内機1の意匠外観を構成する表面の一部となり、通常冷房運転モード時に下側上下風向板10を図4に示す位置とし、能力優先モード時に図3に示す位置とするために、下側上下風向板10の回動する下側上下風向板の軸21は、下側上下風向板10よりも風上側であって、下側ケーシング11と上側ケーシング18の間に配置している。
【0040】
ディフューザとして静圧回収を目的とする場合、下側上下風向板10は長いほど効果が得られるが、下側上下風向板の軸21と離れているため、上下風向板10を回動させるためには大きなトルクが必要になる。下側上下風向板10を回動させるステップモータ24のトルクが不足した場合、減速機を介せばトルクを上昇させることができるが、減速比が大きければ大きいほど減速機が大きくなる。つまり、下側上下風向板10をディフューザとして使用する場合、ディフューザの効果を最大限得る構造は、減速機が室内機1に収まる大きさで減速比を大きくし、下側上下風向板10を回動させることができるトルクの上限まで下側上下風向板を長くすることである。なお、ステップモータ24及び減速機を下側ケーシング11の背面側で、且つ、下部化粧枠13bの上方に位置させてもよい。ステップモータ24及び減速機が気流の障害になるのを避けつつ、下側上下風向板の軸21のトルクを上昇させることができる。なお、下側ケーシング11の背面側とは、下流側風洞17の背面側の空間をいう。
(第2実施形態)
第2実施形態が、第1実施形態と異なる点は、第2実施形態の下側ケーシング11が、第1傾斜部29と、第1傾斜部29より下流側(先端側)に位置する第2傾斜部30を有する点である。第2傾斜部30は、第1傾斜部29に比べて、先端側が床面方向に傾斜している。
【0041】
次に、第2実施形態の上下風向板の動作について、図6乃至図8を用いて説明する。図6は、第2実施形態に係る室内機吹出口の能力優先モード時における拡大側面断面図である。能力優先モード時には、下側上下風向板の軸21を中心に下側上下風向板10を回動し、下側上下風向板10の上面が前記下側ケーシング11の第1傾斜部29の延長線上又は前記下側ケーシングの延長線より下方に位置する。これにより、下流側風洞17を通過する熱交換された冷風22または温風23の送風抵抗が小さくなるため、吹き出し風量が低下することなく、効率良く室内に冷風22または温風23を送り出すことができる。上側上下風向板9及び下側上下風向板10については、第1実施形態と同様に、ステップモータ24などの駆動部品25により回動する。
【0042】
下側ケーシング11の第1傾斜部29及び下側上下風向板10の側面に沿った断面形状については、下側上下風向板10が下側ケーシング11の第1傾斜部29の略延長線上であれば、直線形状でも曲線形状でも可とする。このときに、下側上下風向板の上流側端部26と下側ケーシング11の第1傾斜部29との間の隙間については、第1実施携帯同様2mm以下と小さい方が好ましい。
【0043】
上側上下風向板9についても、送風抵抗を小さくするため、下側上下風向板10に略平行の姿勢とすることが好ましい。
【0044】
図7は、第2実施形態に係る室内機吹出口の通常冷房運転モード時における拡大側面断面図である。通常冷房運転モードは、大きな冷房能力を必要としない場合や、室内空気の湿度が高い場合に使用する。
【0045】
第1実施形態と同様に、能力優先モード時の下側上下風向板10位置より、下側上下風向板の軸21を中心に5〜25°上方に回動させた位置を、通常冷房運転モード時の下側上下風向板10の位置とする。上側上下風向板9については、送風抵抗を小さくするため、下側上下風向板10に略平行の姿勢とすることが好ましい。
【0046】
下側上下風向板の上流側端部上面26aが下側ケーシング11の第1傾斜部29の延長線より上方に位置する。このため、下側ケーシング11の第1傾斜部29に沿って流れる冷風22については、下側上下風向板の上流側端部26で下側上下風向板10の上側と下側に分かれて流れていく。このとき、冷風22の一部はコアンダ効果によって第1傾斜部29から第2傾斜部30、下側上下風向板10の下側に沿って第1実施形態よりも効果的に下側上下風向板10の下側にも冷風が流れるため、下側上下風向板10の上側も下側も略均一に冷やされる。これにより下側上下風向板10の表面への結露を抑制できる。
【0047】
前記下側上下風向板の上流側端部26と下側ケーシング11の第1傾斜部29との間の隙間については、5〜15mmとすることが好ましい。これにより、通常冷房運転モード時に下側上下風向板10の下側にも冷風が供給されやすくなる。
【0048】
下側上下風向板10については、下側上下風向板の上流側端部下側26bにCカット面または曲面形状としても良い。これにより、通常冷房運転モード時に下側上下風向板10の下側に沿って流れる冷風22が、抵抗なく、よりスムーズに流れるようになる。
【0049】
前記下側上下風向板10については、中空構造とし、内部に断熱材28を備えた構造としても良い。これにより、下側上下風向板10表面への結露の抑制効果を高めることができる。
【0050】
図8は、第2実施形態に係る室内機吹出口の通常暖房運転モード時における拡大側面断面図である。通常暖房運転モードは、大きな暖房能力を必要としない場合や、室内空気の温度が設定温度に近づいた場合に使用する。温度の高い空気は、室内の高い位置に停留しやすい。高温の空気が、室内の高い位置に停留すると、使用者の頭部付近の空気が高温となり、使用者の足元は暖かくならず、不快感を与える恐れがある。通常暖房運転モード時は、空気調和機の室内機1から室内の低い位置に温風23を吹き出し、使用者の足元から暖めることが望ましい。このため、通常暖房運転モード時には、下側上下風向板の軸21を中心に前記下側上下風向板10を回動し、前記下側上下風向板10の上面が前記下側ケーシング11の第2傾斜部30の延長線上又は第2傾斜部30の延長線より下方となるように配置する。このときの下側上下風向板10位置は、前記能力優先モード時の下側上下風向板10位置より、軸を中心に5〜30°下方に回動させた位置とするのが望ましい。上側上下風向板9については、下側上下風向板10に略平行の姿勢とすることが望ましい。
【0051】
温風23は下側ケーシング11を沿って流れ下側ケーシングの第1傾斜部、下側ケーシングの第2傾斜部を経てコアンダ効果によって下側上下風向板10の上面を沿って流れ室内の低い位置に温風23を吹き出す。
【0052】
下側上下風向板10をディフューザとして下側ケーシング11の延長線上となるように配置しているが、上側上下風向板9を上側ケーシング18の延長線上となるように配置しても同様にディフューザとしての効果を得ることができる。しかしながら、冷風22・温風23は下側ケーシング11に沿って流れるため下側上下風向板10と同等のディフューザとしての効果は得られない。
【0053】
空気調和機の運転停止時は図5に示すように下側上下風向板10の下面が室内機1の意匠の一部となり、通常冷房運転モード時に下側上下風向板10を図4若しくは図7に示す位置とし、能力優先モード時に下側上下風向板10を図3若しくは図6に示す位置とし、通常暖房運転モード時に下側上下風向板10を図8に示す位置にするために、下側上下風向板10の回動する下側上下風向板の軸21は、下側上下風向板10よりも風上側であって、下側ケーシング11と上側ケーシング18の間に配置している。
【0054】
第1実施形態と同様に、能力優先モードと通常冷房運転モードと通常暖房運転モードの切り替えは、使用者が実施する。また、空気調和機の室内機1に備えた室温センサ31と湿度センサ32によって、検知した室温と湿度によって、予め設定された室温・湿度に達した場合に、自動で能力優先モードと通常冷房運転モードと通常暖房運転モードを切り替えても良い。
【0055】
冷房運転開始時に能力優先モードは設定温度と室温が所定以上の差があるときに使用し、所定の温度差以内であれば通常冷房運転モードとなる。
【0056】
能力優先モードから通常冷房運転モードへの遷移は設定温度と室温の差が所定の値以下の場合、または所定の時間中湿度が所定の値以上の時通常冷房運転モードの上下風向板の位置にし、下側上下風向板の10の下面に風を流し上面と下面の温度差をなくすことで結露を防止する。
【0057】
暖房運転開始時における能力優先モードは設定温度と室温が所定以上の差があるときに使用し、所定の温度差以内であれば通常暖房運転モードとなる。
【0058】
能力優先モードから通常暖房運転モードへの遷移は設定温度と室温の差が所定の値以下の場合通常暖房運転モードの上下風向板の位置にし、空気調和機の室内機1から室内の低い位置に温風23を吹き出し、使用者の足元を温める。
【0059】
第2実施形態により、空気調和機の室内機1において、室内空気を効率良く冷やす、または効率良く暖める能力優先モードを備えつつ、室内空気の湿度が著しく高い冷房運転時には、通常冷房運転モードにより上下風向板10表面への結露を抑制することができる。さらに通常暖房運転モード時には、下側ケーシング11近傍の送風抵抗を小さくし、風量の低下を抑えることができる。
【0060】
尚、本発明は、実施形態の個々に限定されることはなく、また、上述した実施形態を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0061】
1 室内機
2 吸込口
3 吹出口
4 空気通路
5 室内熱交換器
6 室内送風ファン
9 上側上下風向板
10 下側上下風向板
11 下側ケーシング
12 化粧パネル
13 化粧枠
13a 上部化粧枠
13b 下部化粧枠
14 フィルタ
14a 前面側フィルタ
14b 上面側フィルタ
15 キャビネット
16 ドレンパン
17 下流側風洞
18 上側ケーシング
20 上側上下風向板の軸
21 下側上下風向板の軸
22 冷風
23 温風
24 ステップモータ
25 駆動部品
26 下側上下風向板の上流側端部
26a 下側上下風向板の上流側端部上側
26b 下側上下風向板の上流側端部下側
28 断熱材
29 第1傾斜部
30 第2傾斜部
31 室温センサ
32 湿度センサ
33 左右風向板
34 圧縮機
35 四方弁
36 膨張弁
37 室外熱交換機
38 室外送風ファン
39 流入空気
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8