(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0027】
I.概論
本発明は細胞受容体のB7ファミリーの新規メンバーであるzB7H6の同定及び特性決定、及びNKp30に結合するその能力の発見に関する。本発明の新規受容体は「zB7H6」と命名され、そしてB7−1、B7−2、B7h2、PD−L1、PD−L2、B7−H3及びB7−H4のようなB7ファミリーの以前より知られているメンバーとは異なる。zB7H6媒介シグナリングをモジュレート、例えばzB7H6及びNKp30の天然の相互作用をモジュレートするための方法及び組成物もまた提供され、これは例えば癌及び感染性疾患のための免疫療法を包含する免疫療法のための複数の治療用途を有している。
【0028】
ヒトzB7H6をコードする例示的なヌクレオチド配列は配列番号1により与えられ;コードされたポリペプチドは配列番号2に示す通りである。配列番号2のzB7H6ポリペプチドは約242のアミノ酸残基(配列番号2の残基25〜266)の細胞外ドメイン、約18のアミノ酸残基(配列番号2の残基267〜284)の膜貫通ドメイン、及び約158のアミノ酸残基(配列番号2の残基285〜454)の細胞内ドメインを含む。zB7H6は又、約117のアミノ酸残基(配列番号2の残基25〜141)のIgVドメイン及び約97のアミノ酸残基(配列番号2の残基142〜238)のIgCドメインを有する。更に又、数種の潜在的なシグナリングモチーフがzB7H6の細胞内ドメイン内に存在し、これにはITIMモチーフ(SaYtpL、配列番号2のアミノ酸残基293〜298);SH2結合モチーフ(YqlQ、配列番号2のアミノ酸残基229〜332);及びSH3結合モチーフ(PdaPilPvsP、配列番号2のアミノ酸残基418〜427)が包含される。
【0029】
zB7H6はB7ファミリー遺伝子プロファイルに基づいた細胞受容体のB7ファミリーのメンバーとして同定されている。遺伝子構造プロファイルはシグナル−2−IgV−2−IgC−2−TMD−0−LgExである(
図7参照)。このプロファイルの細胞外領域はB7遺伝子構造モデルと合致し、これは、特徴的なエクソンパターンを包含しており、そこにおいては第1のエクソンがリーダー配列をコードし、第2のエクソンがIgVドメインをコードし、そして、第3のエクソンがIgCドメインをコードしている。B7ファミリー遺伝子構造の別の特徴はエクソンの相形成であり;細胞外ドメインに相当する領域において、B7ファミリーメンバーはエクソン1〜4の間の2の保存された相形成を示している(上記参照)。
【0030】
zB7H6は成熟ナチュラルキラー(NK)細胞上に選択的に発現され、そして活性化性の受容体としてヒトの天然の細胞毒性に関与している受容体であるNKp30に関するカウンター受容体として同定されている。NK細胞は典型的にはMHCクラスI分子及び阻害性受容体の間の相互作用により正常細胞を攻撃することが防止されている。しかしながらMHCクラスI発現(例えば腫瘍細胞又はウィルス感染細胞上)の非存在下でおいては、NK細胞上の活性化受容体のライゲーションは標的細胞の殺傷をトリガーする。そのようなトリガーNK細胞受容体はNKp30、NKp44、NKp46、NKG2D、及びDNAM1を包含する。NKp30が結合する活性化型標的細胞リガンドはこれまで同定されておらず、そしてNKp30に対するカウンター受容体としてのzB7H6の同定は、zB7H6とNKp30との相互作用を模倣するか又はそれに干渉することができる種々の治療剤が、種々の症状のうち、特に癌、感染性疾患、又はNK細胞媒介同種移植片拒絶を処置する目的のためにNKリンパ球活性をモジュレートできるようにする。例えばzB7H6−NKp30相互作用を模倣する試薬、例えば細胞外ドメインを含むzB7H6の可溶性形態はNKp30刺激シグナルを活性化することにより腫瘍又はウィルス感染細胞に対するNK細胞の応答を促進するために使用できる。逆に、zB7H6−NKp30相互作用をブロックする剤、例えばNKp30との結合に関して競合する抗zB7H6抗体は、例えば急性の骨髄細胞(BMC)同種移植片拒絶においてNK細胞媒介応答を阻害するために使用できる。
【0031】
従って、1つの態様において、本発明は、NK細胞活性のモジュレーションにおいて、そして、癌、感染性疾患、又はNK細胞媒介同種移植片拒絶のような障害の治療において有用であるzB7H6ポリペプチドを提供する。一般的に、そのようなzB7H6ポリペプチドは、zB7H6細胞外ドメイン(配列番号2の残基25〜266);配列番号2の残基25〜266と少なくとも80%(例えば少なくとも90%又は少なくとも95%)の同一性を有し、そしてNKp30に結合できるzB7H6細胞外ドメインの機能的変異体;又は、上記したzB7H6の細胞外ドメイン若しくはドメイン変異体の機能的フラグメントであって、そのフラグメントはNKp30に結合できるもの;を含む。一部の変異体において、zB7H6ポリペプチドは配列番号2(例えば配列番号2のポリペプチド)の残基25〜454のアミノ酸配列、又は配列番号2の残基25〜454と少なくとも80%(例えば少なくとも90%又は少なくとも95%)の同一性を有するzB7H6の機能的変異体を有する。特定の実施形態においては、zB7H6ポリペプチドは機能的膜貫通ドメインを欠いた可溶性zB7H6ポリペプチドである。特に適している可溶性zB7H6ポリペプチドはzB7H6細胞外ドメイン、又はその機能的変異体若しくはフラグメント、及び非相同ポリペプチドを含むかこれらからなる融合蛋白質を包含する。一部のそのような変異体において、非相同ポリペプチドは免疫グロブリン部分であり;特に適している免疫グロブリン部分は免疫グロブリン重鎖定常領域、例えばヒトFcフラグメントである。他の変形例においては、非相同ポリペプチドは血管拡張物質刺激ホスホ蛋白質(VASP)ドメインであり、これは可溶性zB7H6の多量体(例えば四量体)の形態の製造に特に適している。一部の実施形態においては、可溶性融合蛋白質は更にポリペプチドリンカーを包含する。
【0032】
本発明は又、本発明の可溶性zB7H6ポリペプチドをコードするベクターを含めたポリヌクレオチド、並びにそのようなポリヌクレオチドを含む宿主細胞を提供する。本発明の一部の態様においては、そのようなポリヌクレオチド、ベクター及び宿主細胞は可溶性zB7H6蛋白質を製造するための方法において使用される。そのような方法は一般的に、可溶性zB7H6蛋白質をコードする発現ベクターで形質転換又はトランスフェクトした宿主細胞を、蛋白質が発現される条件下で培養すること、及び宿主細胞から可溶性zB7H6蛋白質を回収することを包含する。
【0033】
本発明は更に、zB7H6の細胞外ドメインに特異的に結合する抗体を提供する。種々の実施形態において、そのような抗体はzB7H6の単量体及び/又は多量体の形態、例えば可溶性zB7H6の単量体又は多量体の形態に結合する。そのような抗体は、アゴニスト抗体、中和抗体、ポリクローナル抗体、ネズミモノクローナル抗体、ネズミモノクローナル抗体から誘導したヒト化抗体、ヒトモノクローナル抗体、及びそれらの抗原結合フラグメントを包含する。例示的な抗体フラグメントはF(ab’)
2、F(ab)
2、Fab’、Fab、Fv、scFv、及び最小認識単位を包含する。中和抗体はNKp30とのその相互作用が阻害又はブロックされるようにzB7H6に結合する。
【0034】
本発明は更に製薬上許容しうる担体及び本明細書に記載した可溶性zB7H6ポリペプチド又は抗zB7H6抗体を含む医薬組成物を包含する。そのような組成物は本発明による治療方法において使用できる。
【0035】
他の態様において、本発明はzB7H6活性を模倣又はブロックする剤を用いながらNK細胞活性をモジュレートするための方法を提供する。zB7H6活性を模倣する適当な剤は細胞外zB7H6ドメイン、又は結合してNKp30活性を刺激できるその機能的変異体又はフラグメントを含む、zB7H6の可溶性形態を包含する。代替のアゴニストは細胞内で機能的zB7H6分子を組み換え生産できる遺伝子療法ベクター、zB7H6発現及び/又はzB7H6媒介シグナリングの小分子エンハンサーを包含する。適当なzB7H6ブロッキング剤はzB7H6の細胞外ドメインの少なくとも一部分に結合し、そしてNKp30とのzB7H6の相互作用に干渉することができる抗zB7H6抗体;NKp30とのzB7H6の相互作用の小分子阻害剤等を包含する。代替となるzB7H6アンタゴニストは更に、zB7H6核酸配列を指向したアンチセンスオリゴヌクレオチド、阻害性RNA配列、B7H6発現及び/又は細胞内シグナリングの小分子阻害剤等を包含する。
【0036】
例えば、一部の実施形態においては、本発明は有効量の可溶性zB7H6ポリペプチドを対象に投与することにより不十分なナチュラルキラー(NK)細胞活性を特徴とする疾患又は障害(例えば癌又は感染性疾患)を処置するための方法を提供する。他の態様において、本発明はzB7H6の細胞外ドメインに特異的に結合し、そしてヒトNKp30とのzB7H6の相互作用を阻害する有効量の抗体に、ヒトNK細胞の存在下、zB7H6発現細胞を接触させることによるzB7H6発現細胞に対するヒトナチュラルキラー(NK)細胞活性を低下させるための方法を提供し;そのような方法は例えばNK細胞媒介同種移植片拒絶、特に急性BMC同種移植片拒絶を処置するためにインビボで使用できる。
【0037】
本発明のこれら及び他の態様は以下の詳細な説明を参照すれば自明となるものである。更に又、種々の参考文献が下記に提示されるが、これらは参照により全体が本明細書に組み込まれる。
【0038】
II.定義
特段の記載が無い限り、本明細書において使用する全ての専門技術用語は記載した方法及び組成物に関する当該技術分野における当業者により共通に理解されているものと同じ意味を有する。本明細書においては、以下の用語及び表現は特段の記載が無い限りそれらに帰属する意味を有する。
【0039】
本明細書においては、「核酸」又は「核酸分子」とはポリヌクレオチド、例えばデオキシリボ核酸(DNA)又はリボ核酸(RNA)、オリゴヌクレオチド、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により形成されたフラグメント、及びライゲーション、切断、エンドヌクレアーゼ作用、及びエキソヌクレアーゼ作用の何れかにより形成されたフラグメントを指す。核酸分子は天然に存在するヌクレオチド(例えばDNA及びRNA)、又は天然に存在するヌクレオチドの類縁体(例えば天然に存在するヌクレオチドのα−エナンチオマー型)、又は両方の組み合わせである単量体を含むことができる。修飾されたヌクレオチドは糖部分において、及び/又はピリミジン又はプリン塩基部分において、改変を有することができる。糖改変は例えば、1つ以上のヒドロキシル基のハロゲン、アルキル基、アミン、及びアジド基による置き換えを包含し、或いは糖はエーテル又はエステルとして官能性付与されることができる。更に又、全体の糖部分が立体的及び電子的に同様の構造、例えばアザ糖類及び炭素環糖類縁体で置き換えられることができる。塩基部分における修飾の例はアルキル化プリン及びピリミジン、アシル化プリン又はピリミジン、又は他のよく知られた複素環置換物を包含する。核酸単量体はホスホジエステル結合又はそのような連結部の類縁体により連結されることができる。ホスホジエステル連結部の類縁体はホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホロセレノエート、ホスホロジセレノエート、ホスホロアニロチオエート、ホスホロアニリデート、ホスホロアミデート等を包含する。「核酸分子」という用語は又、いわゆる「ペプチド核酸」を包含し、これはポリアミド骨格に結合した天然に存在する、又は修飾された核酸塩基を含む。核酸は1本鎖又は2本鎖の何れかであることができる。
【0040】
「核酸分子の相補体」という用語は相補のヌクレオチド配列及びレファレンスヌクレオチド配列と比較した場合に逆の方向を有する核酸分子を指す。
【0041】
「縮重ヌクレオチド配列」という用語はポリペプチドをコードするレファレンス核酸分子と比較した場合に1つ以上の縮退コドンを包含するヌクレオチドの配列を意味する。縮退コドンはヌクレオチドの異なるトリプレットを含有するが、同じアミノ酸残基をコードしている(例えばGAU及びGACトリプレットは各々Aspをコードしている)。
【0042】
「構造遺伝子」という用語は、転写されてメッセンジャーRNA(mRNA)となり、その後特定のポリペプチドに特徴的なアミノ酸の配列に翻訳される、核酸分子を指す。
【0043】
「単離された核酸分子」とは、生物のゲノムDNAに組み込まれていない核酸分子である。例えば細胞のゲノムDNAから分離されている成長因子をコードするDNA分子は単離されたDNA分子である。単離された核酸分子の別の例は生物のゲノムに組み込まれていない化学合成された核酸分子である。特定の種から単離されている核酸分子はその種に由来する染色体の完全なDNA分子より小型である。
【0044】
「核酸分子コンストラクト」とは天然に存在しない配置において組み合わされ並置されている核酸のセグメントを含有するように人間の介入を介して修飾されている1本鎖又は2本鎖の何れかの核酸分子である。
【0045】
「線状DNA」とは遊離の5’及び3’末端を有する非環状のDNA分子を意味する。
線状DNAは酵素消化又は物理的途絶によりプラスミドのような閉環型DNA分子から製造できる。
【0046】
「相補DNA(cDNA)」は酵素である逆転写酵素によりmRNA鋳型から形成される1本鎖DNA分子である。典型的には、mRNAの部分に対して相補的なプライマーを逆転写の開始のために使用する。当該分野では更に、そのような1本鎖DNA分子及びその相補DNA鎖よりなる2本鎖DNA分子を指すために「cDNA」という用語を使用する。「cDNA」という用語は又、RNA鋳型から合成したcDNA分子のクローンを指す。
【0047】
「プロモーター」とは、構造遺伝子の転写を指向するヌクレオチド配列である。典型的には、プロモーターは構造遺伝子の転写開始部位に近位の遺伝子の5’非コーディング領域内に位置する。転写の開始において機能するプロモーター内部の配列エレメントは頻繁にはコンセンサスヌクレオチド配列により特徴付けられる。これらのプロモーターエレメントはRNAポリメラーゼ結合部位、TATA配列、CAAT配列、分化特異的エレメント(DSEs;McGeheeら、Mol.Endocrinol.7:551、1993)、環状AMP応答エレメント(CREs)、血清応答エレメント(SREs;Treisman、Seminars in Cancer Biol.1:47、1990)、糖質コルチコイド応答エレメント(GREs)、及び、例えばmCRE/ATF(O’Reillyらの他の転写因子に関する結合部位、J.Biol.Chem.267:19938、1992)、AP2(Yeら、J.Biol.Chem.269:25728、1994)、SP1、cAMP応答エレメント結合蛋白質(CREB;Loeken、Gene Expr.3:253、1993)及び8量体因子(一般的にWatsonら編、Molecular Biology of the Gene、第4版(The Benjamin/Cummings Publishing Company、Inc.1987)、及びLemaigre and Rousseau、Biochem.J.303:1、1994参照)を包含する。プロモーターが誘導プロモーターである場合、転写速度は誘導剤に応答して上昇する。これとは対照的に、プロモーターが構成プロモーターである場合は転写速度は誘導剤により調節されない。リプレッション可能なプロモーターも知られている。
【0048】
「コアプロモーター」はTATAボックス及び転写開始を包含するプロモーター機能のための必須なヌクレオチド配列を含有する。この定義により、コアプロモーターは活性を増強するか、組織特異的活性を付与する場合がある特定の配列の非存在下でおいて検出可能な活性を有してもしなくてもよい。
【0049】
「調節エレメント」とは、コアプロモーターの活性をモジュレートするヌクレオチド配列である。例えば、調節エレメントは特定の細胞、組織、又は細胞内小器官において排他的又は優先的に転写を可能にする細胞因子に結合するヌクレオチド配列を含有してよい。これらの型の調節エレメントは通常は、「細胞特異的」、「組織特異的」又は細胞内小器官特異的」な態様において発現される遺伝子に関連している。
【0050】
「エンハンサー」とは転写の開始部位と相対比較した場合のエンハンサーの距離又は方向とは関わり無く、転写の効率を増大させることができる調節エレメントの型である。
【0051】
「非相同DNA」とはある宿主細胞の内部に天然には存在しないDNA分子、又はDNA分子の集団を指す。特定の宿主細胞に対して非相同であるDNA分子は、その宿主DNAが非宿主DNA(即ち外因性DNA)と組み合わされる限りにおいて、宿主細胞の種から誘導されたDNA(即ち内因性DNA)を含有してよい。例えば、転写プロモーターを含む宿主DNAセグメントに作動可能に連結したポリペプチドをコードする非宿主DNAセグメントを含有するDNA分子は非相同DNA分子とみなされる。逆に、非相同DNA分子は外因性プロモーターに作動可能に連結した内因性遺伝子を含むことができる。別の例として、野生型細胞から誘導した遺伝子を含むDNA分子は、そのDNA分子が野生型遺伝子を欠いている突然変異体細胞内に導入されれば、非相同DNAであるとみなされる。
【0052】
「ポリペプチド」は天然又は合成により生産されるかにかかわらず、ペプチド結合により連結されたアミノ酸残基の重合体である。約10アミノ酸残基未満のポリペプチドは一般的には「ペプチド」と称する。
【0053】
「蛋白質」は1つ以上のポリペプチド鎖を含む巨大分子である。蛋白質は又、炭水化物基のような非ペプチド成分を含んでよい。炭水化物及び他の非ペプチド性の置換基は、蛋白質が生産される細胞により蛋白質に付加されてよく、そして細胞の型により変動することになる。蛋白質はそれらのアミノ酸骨格の構造の観点から本明細書においては定義され;炭水化物基のような置換基は一般的には特定されないが、しかしなお存在してよい。
【0054】
DNAの宿主細胞発現の文脈において、「非相同」ペプチド又はポリペプチドは非宿主DNA分子によりコードされるペプチド又はポリペプチド、即ち非相同DNA分子によりコードされるペプチド又はポリペプチドである。
【0055】
「クローニングベクター」は宿主細胞中で自発的に複製する能力を有する、プラスミド、コスミド、又はバクテリオファージのような核酸分子である。クローニングベクターは典型的には、ベクターの必須な生物学的機能を失うことなく測定可能な態様において核酸分子の挿入を可能にする、の1つ又は少数の制限エンドヌクレアーゼ認識部位、並びにクローニングベクターで形質転換されている細胞の識別及び選択において使用するのに適するマーカー遺伝子をコードする核酸配列を含有する。マーカー遺伝子は典型的にはテトラサイクリン耐性又はアンピシリン耐性を与える遺伝子を包含する。
【0056】
「発現ベクター」は宿主細胞内で発現される遺伝子をコードする核酸分子である。典型的には、発現ベクターは転写プロモーター、遺伝子及び転写ターミネーターを含む。遺伝子発現は通常はプロモーターの制御下におかれ、そしてそのような遺伝子はプロモーターに「作動可能に連結している」言われる。同様に調節エレメント及びコアプロモーターは、調節エレメントがコアプロモーターの活性をモジュレートする場合は、作動可能に連結している。
【0057】
「組み換え宿主」とはクローニングベクター又は発現ベクターのような非相同核酸分子を含有する細胞である。本文脈において、組み換え宿主の例は発現ベクターからzB7H6を生産する細胞である。これとは対照的に、zB7H6はzB7H6の「天然の原料」であり、そして発現ベクターを欠いている細胞により生産される。
【0058】
「組み込み形質転換体」とは、非相同DNAが細胞のゲノムDNA内に組み込まれている組み換え宿主細胞である。
【0059】
「融合蛋白質」とは相互にとって相対的に異なる蛋白質から誘導されているポリペプチドセグメント少なくとも2つを含むハイブリッド蛋白質である。この文脈において、「異なる蛋白質」とは各蛋白質が異なる遺伝子の遺伝子座に相当することを意味する。ある蛋白質は、それが遺伝子の遺伝子座に相当する対立遺伝子によりコードされる場合、又は、蛋白質がそのような対立遺伝子によりコードされる蛋白質に対して少なくとも80%の配列同一性を有する場合に、遺伝子の遺伝子座に相当する。異なる蛋白質から誘導されたポリペプチドセグメントは又、本明細書においては、相互に対して相対的に「非相同」であると称する。即ち、zB7H6ポリペプチドセグメント(例えば細胞外ドメイン、又はその機能的変異体又はフラグメント)及びzB7H6とは異なる蛋白質に由来する第2のポリペプチドセグメントを含む融合蛋白質という文脈においては、第2のポリペプチドセグメントは本明細書においては「非相同ポリペプチドセグメント」又は「非相同ポリペプチド」とも称する。そのような非相同ポリペプチドは例えば、本明細書において後述する通り、免疫グロブリン定常領域及びVASPドメインを包含する。
【0060】
「受容体」という用語は「カウンター受容体」と称される生物学的に活性な分子に結合する細胞関連蛋白質を意味する。この相互作用は細胞上のカウンター受容体の作用を媒介する。受容体は膜結合シトゾル性又は核性;単量体性(例えば甲状腺刺激ホルモン受容体、ベータアドレナリン受容体)又は多量体性(例えばPDGF受容体、成長ホルモン受容体、IL−3受容体、GM−CSF受容体、G−CSF受容体、エリスロポエチン受容体及びIL−6受容体)であることができる。膜結合受容体は細胞外カウンター受容体結合ドメイン及び典型的にはシグナルトランスダクションに関与する細胞内エフェクタードメインを含む多ドメイン構造を特徴とする。特定の膜結合受容体においては、細胞外カウンター受容体結合ドメイン及び細胞内エフェクタードメインは完全な機能的受容体を含む別個のポリペプチド内に位置している。
【0061】
一般的に、受容体へのカウンター受容体の結合はエフェクタードメインと細胞内の他の分子の間の相互作用を誘発する受容体におけるコンホーメーション変化をもたらし、これが次に細胞の代謝の改変をもたらす。受容体−カウンター受容体相互作用に関連する場合が多い代謝事象は、遺伝子転写、ホスホリル化、脱ホスホリル化、環状AMP生産の増大、細胞カルシウムの移動、膜脂質の移動、細胞接着、イノシトール脂質の加水分解及びリン脂質の加水分解を包含する。
【0062】
「可溶性受容体」は細胞膜に結合していない受容体ポリペプチドである。可溶性受容体は最も一般的には、膜貫通及び細胞質のドメイン、及び、例えばグリコホスホイノシトール(GPI)を介する細胞膜への他の連結部、を欠いている、カウンター受容体結合ポリペプチドである。可溶性受容体はポリペプチドの精製を可能とする、又は基質へのポリペプチドの結合のための部位を与えるアフィニティータグのような追加的なアミノ酸残基、又は免疫グロブリン定常領域配列を含むことができる。多くの細胞表面受容体は蛋白質分解により生成した、又は、オルタナティブスプライシングされたmRNAから翻訳された、天然に存在する可溶性のカウンター部分を有する。可溶性受容体は単量体性、ホモ2量体性、ヘテロ2量体性、又は多量体性であることができ、ここで多量体性の受容体は一般的には9サブユニット超を含まない、好ましくは6サブユニット超を含まない、そして最も好ましくは3サブユニット超を含まないものである。受容体ポリペプチドはそれらが膜貫通及び細胞内ポリペプチドセグメントの十分な部分を欠いているためそれぞれ膜アンカリング又はシグナルトランスダクションを可能とする場合に、そのようなセグメントを実質的に有さないとされる。例えば、zB7H6に関わる代表的な可溶性受容体は、例えば配列番号17又は19に示す可溶性受容体を包含する。
【0063】
「分泌シグナル配列」という用語は、より大型のポリペプチドの成分として、それが合成される細胞の分泌経路を介してより大型のポリペプチドを指向するペプチド(「分泌ペプチド」)をコードするDNA配列を意味する。より大型のポリペプチドは一般的には分泌経路を介した通過の間に分泌ペプチドを除去するべく切断される。
【0064】
「単離されたポリペプチド」とは夾雑性の細胞成分、例えば炭水化物、脂質又は天然にポリペプチドに会合している他の蛋白性の不純物を実質的に含有しないポリペプチドである。典型的には、単離されたポリペプチドの調製品は高度に精製された形態の、即ち少なくとも約80%純度、少なくとも約90%純度、少なくとも約95%純度、95%超の純度、例えば96%,97%、又は98%以上の純度、又は99%超の純度のポリペプチドを含有する。特定の蛋白質調製品が単離されたポリペプチドを含有することを示す1つの方法は、蛋白質調製品のドデシル硫酸ナトリウム(SDS)−ポリアクリルアミドゲル電気泳動及びゲルのクーマシーブリリアントブルー染色の後に単一バンドが生じることによる。しかしながら、「単離された」という用語は、2量体又は交互にグリコシル化された、又は誘導体化された形態のような、別の物理的形態における同じポリペプチドの存在を排除するものではない。
【0065】
「アミノ末端」及び「カルボキシル末端」という用語は本明細書においてはポリペプチド内の位置を意味するために使用する。文脈から妥当である限りにおいて、これらの用語は近接性又は相対的位置を意味するためにポリペプチドの特定の配列又は部分に言及しながら使用する。例えば、ポリペプチド内のレファレンス配列に対してカルボキシル末端に位置する特定の配列は、レファレンス配列のカルボキシル末端に近位に位置するが、必ずしも完全なポリペプチドのカルボキシル末端にはない。
【0066】
「発現」という用語は遺伝子産物の生合成を指す。例えば構造遺伝子の場合は、発現はmRNAへの構造遺伝子への転写及び1つ以上のポリペプチドへのmRNAの翻訳を含む。
【0067】
「スプライス変異体」という用語は本明細書においては遺伝子から転写されたRNAの別の形態を意味する。スプライス変異体は天然には転写されたRNA分子内部の、或いは一般性は低下するが別々に転写されたRNA分子の間の、オルタナティブスプライシング部位の使用を介して自然に生じ、そして同じ遺伝子から転写された数種のmRNAをもたらす場合がある。スプライス変異体は改変されたアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする場合がある。スプライス変異体という用語は又、本明細書においては遺伝子から転写されたmRNAのスプライス変異体によりコードされるポリペプチドを意味するために使用する。
【0068】
本明細書においては、「免疫モジュレーター」という用語はサイトカイン、幹細胞成長因子、リンホトキシン、同時刺激分子、造血因子等、及びこれらの分子の合成類縁体を包含する。
【0069】
「相補体/抗相補体対」という用語は適切な条件下でおいて非共有結合的に会合している安定な対を形成する非同一の部分を意味する。例えば、ビオチン及びアビジン(又はストレプトアビジン)は相補体/抗相補体対のプロトタイプのメンバーである。他の例示される相補体/抗相補体対は受容体/カウンター受容体対、抗体/抗原(又はハプテン又はエピトープ)対、センス/アンチセンスポリヌクレオチド対等を包含する。相補体/抗相補体対の後の解離が望まれる場合は、相補体/抗相補体対は好ましくは10
9M
−1未満の結合親和性を有する。
【0070】
「抗体」という用語は本明細書においては、免疫グロブリンポリペプチド及び免疫グロブリンポリペプチドの免疫学的に活性な部分、即ち特定の抗原(例えばzB7H6の細胞外ドメイン)に免疫特異的に結合する抗原結合部位を含有する免疫グロブリンファミリーのポリペプチド、又はそのフラグメントを指す。
【0071】
「抗イディオタイプ抗体」とは免疫グロブリンの可変領域ドメインに結合する抗体である。本文脈においては抗イディオタイプ抗体は抗zB7H6抗体の可変領域に結合し、そしてそのため、抗イディオタイプ抗体はzB7H6のエピトープを模倣している。
【0072】
「抗体フラグメント」はF(ab’)
2、F(ab)
2、Fab’、Fab等のような抗体の一部分である。構造に関わらず、抗体フラグメントは未損傷抗体により認識されるものと同じ抗原に結合する。例えば抗zB7H6モノクローナル抗体フラグメントはzB7H6のエピトープに結合する。
【0073】
「抗体」という用語は、また、キメラ抗体、ヒト化抗体等の遺伝子操作された未損傷の抗体又はフラグメント、重鎖及び軽鎖の可変領域よりなる「Fv」フラグメント、軽鎖可変領域よりなるポリペプチド、軽鎖及び重鎖の可変領域がペプチドリンカーにより連結されている組み換え単鎖抗体(「scFv蛋白質」)、超可変領域を模倣するアミノ酸残基よりなる最小認識単位等、並びに合成の抗原結合ペプチド及びポリペプチドを包含する。
【0074】
「キメラ抗体」とはげっ歯類の抗体から誘導された可変ドメイン及び相補性決定領域を含有する組み換え蛋白質であるが、抗体分子の残余はヒト抗体から誘導されている。
【0075】
「ヒト化抗体」はモノクローナル抗体のネズミ相補性決定領域がネズミ免疫グロブリンの重鎖及び軽鎖の可変鎖からヒト可変ドメイン内に転移されている組み換え蛋白質である。ヒト蛋白質に結合するかこれを中和するもののようなネズミ抗体から誘導されたヒトにおける治療用途のためのヒト化抗体の構築は、当業者の知る通りである。
【0076】
「Fcフラグメント」、「Fc領域」又は「Fcドメイン」という用語は、本明細書においては、細胞上の抗体受容体及び補体のC1q成分への結合を担っている抗体の部分と同義語であり、それを指している。Fcは「結晶性フラグメント」を意味しており、蛋白質血症を容易に形成することになる抗体のフラグメントである。蛋白質分解性の消化により当初報告された区別可能な蛋白質フラグメントは免疫グロブリン蛋白質の全体的な一般的構造を定義できる。当初文献で定義されたものとしては、Fcフラグメントはジスルフィド連結した重鎖ヒンジ領域、C
H2及びC
H3ドメインよりなる。しかしながら、より最近では用語はC
H3、C
H2及び第2のそのような鎖とジスルフィド連結2量体を形成するために十分なヒンジの少なくとも一部分よりなる単鎖に適用されている。免疫グロブリンの構造及び機能に関する考察は、Putnam,The Plasma Proteins,Vol.V(Academic Press,Inc.,1987),pp.49−140;及びPadlan,Mol.Immunol.31:169−217,1994を参照できる。本明細書においては、Fcという用語は天然に存在する配列の変異体を包含する。
【0077】
「単鎖Fc」、「単鎖Fcドメイン」及び「scFc」という用語は本明細書においては同義語であり、そして2つのFc単量体が2量体化することによりFc受容体に結合可能な機能的2量体Fcドメインを形成できるように、可撓性のリンカーにより連結された2つのFcドメイン単量体を含むポリペプチド融合物を指す。単鎖Fcポリペプチドは更に、2008年4月18日出願の「Single Chain Fc,Methods of Making,and Methods of Treatment」と題された国際PCT特許出願US08/060852に記載されており、その開示内容は参照により全体が本明細書に組み込まれる。
【0078】
「ADCC活性を有するFc領域」という用語は本明細書においては、Fc受容体を発現する細胞溶解性の免疫エフェクター細胞(例えばNK細胞又はCD8
+T細胞)上の細胞溶解性Fc受容体(例えばFcγRIIIα)の結合を介して抗体依存性細胞性細胞毒性(ADCC)を媒介することができるFcドメインを指す。
【0079】
「補体」という用語は総称して、抗原結合抗体と一緒になって細胞を溶解する能力を示す正常血清中の成分を指す。補体は、強調しながら、そして秩序のある順序で機能することにより自身の作用を発揮する血清蛋白質の群よりなる。
【0080】
「古典的補体経路」及び「古典的補体系」という用語は本明細書においては同義語であり、そして補体の活性化のための特定の経路を指す。古典的な経路は開始のために抗原−抗体複合体を必要とし、そしてC1〜C9と標記される9種の主要な蛋白質成分の秩序だった態様における活性化が行われる。活性化のプロセスにおけるいくつかの工程のためには、生成物は後の工程を触媒する酵素となる。このカスケードは相対的に小型の初期シグナルによる大量の補体の増幅及び活性化をもたらす。
【0081】
「CDC活性を有するFc領域」という用語は本明細書においては、C1q補体蛋白質の結合及び古典的な補体系の活性化を介して補体依存性細胞毒性(CDC)を媒介できるFcドメインを指す。
【0082】
「剤」という用語は本明細書においては、例えば医薬品、又は薬理学的化合物を含む、元素、化合物、又は他の分子実体を意味する。剤は天然又は合成又はその組み合わせであることができる。「治療剤」とは単独又は他剤と組み合わせた場合(例えばプロドラッグと組み合わせたプロドラッグ変換酵素)に細胞又は組織上で(例えばzB7H6を発現する細胞又は組織、例えばzB7H6発現癌細胞上で)治療的な(例えば有利な)作用を発揮する剤である。本発明の特定の態様において、「治療剤」は治療のために有用な結合体を製造するために抗体に結合体化される剤である。治療剤の例は、薬剤、毒素、免疫モジュレーター、キレート形成剤、ホウ素化合物、光活性剤又は染料、及び放射性同位体を包含する。一部の変形例において、抗体への結合体化のための治療剤は、細胞毒性又は細胞増殖抑制性の作用を発揮する剤である。
【0083】
細胞に対する剤の作用に言及する場合の「細胞毒性作用」とは細胞の殺傷を意味する。「細胞増殖抑制作用」とは細胞増殖の抑制を意味する。「細胞毒性剤」とは細胞に対する細胞毒性又は細胞増殖抑制作用を有し、これにより細胞集団内部の細胞を、それぞれ枯渇させる、又は成長を抑制する剤を意味する。
【0084】
「検出可能な標識」とは抗体部分に結合体化することにより診断のために有用な分子を生成する分子又は原子である。検出可能な標識の例はキレート形成剤、光活性剤、放射性同位体、蛍光剤、常磁性イオン、又は他のマーカー部分を包含する。
【0085】
「アフィニティータグ」という用語は本明細書においては、第2のポリペプチドに結合して第2のポリペプチドの精製又は検出を可能にするか、又は第2のポリペプチドの基質への結合のための部位を与えることができるポリペプチドセグメントを意味するために使用する。原則として、抗体又は他の特異的結合剤を使用する対象となりえる何れかのペプチド又は蛋白質をアフィニティータグとして使用できる。アフィニティータグはポリヒスチジン管、プロテインA(Nilssonら、EMBO J.4:1075,1985;Nilssonら、Methods Enzymol.198:3,1991)、グルタチオンSトランスフェラーゼ(Smith and Johnson,Gene 67:31,1988)、Glu−Gluアフィニティータグ(Grussenmeyerら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 82:7952,1985)、サブスタンスP、FLAGペプチド(Hoppら、Biotechnology 6:1204,1988)、ストレプトアビジン結合ペプチド、又は他の抗原エピトープ又は結合ドメインを包含する。一般的にはFordら、Protein Expression and Purification 2:95,1991を参照できる。アフィニティータグをコードするDNA分子は商業的な供給元から入手できる(例えばPharmacia Biotech,Piscataway,NJ)。
【0086】
「ネイキッド抗体」とは治療剤と結合体化されていない、抗体フラグメントとは異なる、完全な抗体である。ネイキッド抗体はポリクローナル及びモノクローナル抗体の両方、並びにキメラ及びヒト化抗体等の特定の組み換え抗体を包含する。
【0087】
「モノクローナル抗体」という用語は何れかの真核生物又は原核生物の細胞クローン、又はファージクローンを包含する単一の細胞クローンから誘導された抗体を指し、それが作成された方法を指さない。即ち「モノクローナル抗体」という用語は本明細書においては、ハイブリドーマ技術を介して作成された抗体に限定されない。
【0088】
本明細書においては、「抗体成分」という用語は完全な抗体及び抗体フラグメントの両方を包含する。
【0089】
「免疫結合体」とは治療剤又は検出可能な標識との抗体成分の結合体である。
【0090】
本明細書においては、「抗体融合蛋白質」という用語は抗体成分及びzB7H6ポリペプチド成分を含む組み換え分子を指す。抗体融合蛋白質の例はzB7H6細胞外ドメイン、及びFcドメイン又は抗原結合領域の何れかを含む蛋白質を包含する。
【0091】
真核生物においては、RNAポリメラーゼIIは構造遺伝子の転写を触媒することによりmRNAを生成する。核酸分子は、RNA転写物が特定のmRNAのものに対して相補である配列を有するようなRNAポリメラーゼII鋳型を含有するように設計できる。RNA転写物は「アンチセンスRNA」と称され、そしてアンチセンスRNAをコードする核酸分子は「アンチセンス遺伝子」と称される。アンチセンスRNA分子はmRNA分子と結合してmRNA翻訳を抑制することができる。
【0092】
「抑制性ポリヌクレオチド」は第2(標的)のポリヌクレオチドの発現(転写又は翻訳)を低減又は防止するDNA又はRNA分子である。抑制性ポリヌクレオチドはアンチセンスポリヌクレオチド、リボザイム、及び外部ガイド配列を包含する。「抑制性ポリヌクレオチド」という用語は更に、リボザイムをコードするDNA分子のような、実際の抑制性物質種をコードするDNA及びRNA分子を包含する。
【0093】
「zB7H6に対して特異的なアンチセンスオリゴヌクレオチド」又は「zB7H6アンチセンスオリゴヌクレオチド」とは、(a)zB7H6遺伝子の一部分と安定なトリプレックスを形成することができる、又は(b)zB7H6遺伝子のmRNA転写物の一部分と安定なデュプレックスを形成できる、配列を有するオリゴヌクレオチドである。
【0094】
「リボザイム」とは触媒中心を含有する核酸分子である。用語はRNA酵素、自己スプライシングRNA、自己切断RNA、及びこれらの触媒機能を実施する核酸分子を包含する。リボザイムをコードする核酸分子は「リボザイム遺伝子」と称する。
【0095】
「外部ガイド配列」とは細胞内mRNAの特定の種に対して内因性のリボザイムであるRNasePを指向させることによりRNasePによるmRNAの切断をもたらす核酸分子である。外部ガイド配列をコードする核酸分子は「外部ガイド配列遺伝子」と称する。
【0096】
「変異体zB7H6遺伝子」という用語は配列番号2の修飾であるアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする核酸分子を指す。そのような変異体はzB7H6遺伝子の天然に存在する多形、並びに配列番号2のアミノ酸配列の保存的アミノ酸置換を含有する合成遺伝子を包含する。zB7H6遺伝子の追加的な変異体型は本明細書に記載したヌクレオチド配列の挿入又は欠失を含有する核酸分子である。変異体zB7H6遺伝子は、例えば、ストリンジェントな条件下で配列番号1の核酸配列又はその相補体を有する核酸分子に遺伝子がハイブリダイズするかどうかを測定することにより発見できる。
【0097】
或いは、変異体zB7H6遺伝子は配列比較により識別できる。2つのアミノ酸配列は、2つのアミノ酸配列のアミノ酸残基が、最大一致するようにアラインした場合に同じであれば、「100%アミノ酸配列同一性」を有する。同様に、2つのヌクレオチド配列は、2つのヌクレオチド配列のヌクレオチド残基が、最大一致するようにアラインした場合に同じであれば、「100%ヌクレオチド配列同一性」を有する。配列比較は、DNASTAR(Madison,Wisconsin)製であるLASERGENEバイオインフォマティックスコンピューティングセット中に包含されるもののような標準的なソフトウエアプログラムを用いて実施できる。最適アライメントを決定することにより2つのヌクレオチド又はアミノ酸の配列を比較するための他の方法は当該分野で良く知られている(例えばPeruski and Peruski,The Internet and the New Biology: Tools for Genomic and Molecular Research(ASM Press,Inc.1997);Wuら(編),「Information Superhighway and Computer Databases of Nucleic Acids and Proteins,」、Methods in Gene Biotechnology123−151(CRC Press,Inc.1997);Bishop(編),Guide to Human Genome Computing(第2版、Academic Press,Inc.1998)を参照)。2つのヌクレオチド又はアミノ酸配列は、2つの配列が相互に対して相対的に少なくとも80%、少なくとも90%、又は少なくとも95%の配列同一性を有していれば、「実質的に同様の配列同一性」又は「実質的な配列同一性」を有するとみなされる。配列同一性を測定するための特定の方法は後述する通りである。
【0098】
変異体zB7H6遺伝子又は変異体zB7H6ポリペプチドを識別するために使用する特定の方法とは無関係に、変異体遺伝子又は変異体遺伝子によりコードされるポリペプチドは抗zB7H6抗体に特異的に結合する能力により機能的に特性化してよい。変異体zB7H6遺伝子又は変異体zB7H6ポリペプチドはまた本明細書に記載したもののような生物学的又は生化学的な試験を用いて、NKp30に結合する能力により機能的に特性化してよい。
【0099】
「対立遺伝子変異体」という用語は本明細書においては同じ染色体の遺伝子座を占有している遺伝子の2つ以上の代替の形態を意味するために使用する。対立遺伝子変異は突然変異を介して天然に生じ、そして集団内部に表現型の多形をもたらす場合がある。遺伝子突然変異はサイレント(コードされたポリペプチドに変化無し)であることができ、或いは、改変されたアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードしてよい。対立遺伝子変異体という用語はまた、本明細書においては遺伝子の対立遺伝子変異体によりコードされる蛋白質を意味するために使用する。
【0100】
「オーソログ」という用語は異なる種に由来するポリペプチド又は蛋白質の機能的相応物である、1つの種から得られたポリペプチド又は蛋白質を意味する。オーソログ内出の配列の相違は種形成の結果である。
【0101】
「パラログ」とは生物により生成された、区別可能であるが構造的に関連する蛋白質である。パラログは遺伝子の重複により生じると考えられている。例えばα−グロビン、β−グロビン、及びミオグロビンは相互にパラログである。
【0102】
「NK細胞活性」は本明細書においては、NK細胞の細胞溶解活性を指す。そのような活性を検出及び/又はモニタリングするための多くの当該分野で良く知られている試験が数多く存在するが、これは、例えば本明細書の実施例に記載した試験を含むがこれらに限定されない。
【0103】
本明細書においては、「zB7H6及びNKp30の相互作用」という表現は、NK細胞上のNKp30との機能的zB7H6受容体の直接の物理的相互作用(例えば結合)及び/又は他の間接的な相互作用を指し、この作用は、zB7H6受容体及び/又はNKp30細胞の刺激及び関連する細胞内シグナリングをもたらす。
【0104】
本明細書においては、「ブロッキング剤」という用語は、zB7H6とNKp30の相互作用を妨害する、及び/又は、例えば細胞溶解活性により計測されるNK細胞活性をトリガーするzB7H6の能力を妨害する剤を包含する。例示される剤は、機能ブロッキング抗体、並びに、NKp30とのzB7H6の結合をブロックするが、NK細胞におけるzB7H6媒介シグナリングを刺激することはできないペプチド(例えばzB7H6誘導ペプチド、ペプチドミメティック、小分子等)を包含する。
【0105】
本明細書においては、「模倣剤」という用語は、zB7H6とNKp30の相互作用を模倣し、及び/又は、NK細胞活性をトリガーするzB7H6及び/又はNKp30の能力を強化、増強又は増大させる剤を包含する。例示される剤はzB7H6可溶性受容体、NKp30に結合するzB7H6の能力を強化又は増強する、又はNKp30媒介シグナリングを刺激する場合のzB7H6を代替するペプチド(例えばB7H6誘導ペプチド、ペプチドミメティック、小分子等)、及びzB7H6抗イディオタイプ抗体を包含する。
【0106】
本発明はzB7H6ポリペプチドの機能的フラグメントを包含する。本発明の文脈内において、zB7H6の「機能的フラグメント」とは、少なくともNKp30に特異的に結合するzB7H6ポリペプチドの一部分を指す。一部の実施形態においては、zB7H6の機能的フラグメントはNKp30媒介NK細胞活性化をトリガー又は増強することができ;他の実施形態においては、機能的フラグメントはNKp30媒介NK細胞活性化をブロッキング又は低下することができる。
【0107】
「zB7H6関連剤」又は「zB7H6関連組成物」という用語は、本明細書においては、zB7H6の機能的活性又はzB7H6の機能的活性の抑制を示す剤、又は、zB7H6特異的結合を示す剤を指す。そのような剤は、例えば、可溶性zB7H6ポリペプチド、抗zB7H6抗体、抗zB7H6抗体−薬剤結合体、zB7H6抗イディオタイプ抗体又は他のzB7H6模倣剤、zB7H6コードポリヌクレオチド、抑制性ポリヌクレオチド等を包含する。
【0108】
「zB7H6機能的活性を示す」又は「zB7H6活性を示す」という表現は、剤又は組成物に言及する場合は、一般的に、zB7H6模倣剤(例えば可溶性zB7H6ポリペプチド及びzB7H6抗イディオタイプ抗体)並びにzB7H6機能的活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを指す。
【0109】
「zB7H6機能的活性の抑制を示す」という表現は、剤又は組成物に言及する場合は、一般的に、zB7H6ブロッキング剤(例えば機能的ブロッキング抗zB7H6抗体及びNKp30へのzB7H6の結合をブロックするがzB7H6媒介シグナリングを刺激することができないペプチド)並びにzB7H6遺伝子の発現を低減又は防止する核酸(即ちzB7H6抑制性ポリヌクレオチド)を指す。
【0110】
「NK細胞関連の疾患又は障害」という用語は、本明細書においては、一般的に、NK細胞媒介の疾患又は障害、並びに、不十分なNK細胞活性を特徴とする疾患又は障害を指す。
【0111】
「不十分なNK細胞活性を特徴とする疾患又は障害」という表現は、本明細書においては、NK細胞の細胞溶解活性の標的として機能できるが、少なくともNK細胞媒介細胞毒性を免れている結果として疾患又は障害において顕著に観察される病原性の細胞が少なくとも部分的に関与する何れかの疾患又は障害を指す。そのような病原生細胞は典型的には、例えば特定の腫瘍細胞又はウィルス感染細胞のような、MHCクラスI発現を欠いているものである。従って、不十分なNK細胞活性を特徴とする典型的な疾患又は障害は癌及び多くの感染性疾患である。そのような疾患及び障害は本明細書において更に説明する通り、NK細胞活性を増強するための特定の処置方法に特に適している。
【0112】
「NK細胞媒介の疾患又は障害」という用語は、本明細書においては、NK細胞の細胞溶解活性により少なくとも部分的に媒介される病理を有する何れかの疾患又は障害を指す。そのような疾患又は障害の例は骨髄細胞(BMC)同種移植片の急性の拒絶である。そのような疾患又は障害は本明細書において更に説明する通り、NK細胞活性を抑制するための特定の処置方法に特に適している。
【0113】
「有効量」という用語は、本明細書に記載する通り、対象への可溶性zB7H6ポリペプチド又は抗体の投与によるNK細胞関連の疾患又は障害の処置の文脈においては、NK細胞関連の疾患又は障害の発生を抑制するか、又はその1つ以上の症状を緩解するように、対象におけるNK細胞媒介応答をモジュレートするために十分であるそのような分子の量を指す。剤の有効量は「有効な用法」において本発明の方法に従って投与される。「有効な用法」という用語は疾患又は障害の処置又は防止を達成するために十分な、投与される剤の量と投薬頻度の組み合わせを指す。
【0114】
標準的な分析方法の不明瞭さのため、重合体の分子量及び長さは概ねの値であると理解しなければならない。そのような値を「約」X又は「概ね」Xと表記した場合、Xの記載された値は±10%まで性格であると理解することになる。
【0115】
III.zB7H6ポリペプチド、核酸、ベクター、宿主細胞、及び関連の製造方法
本発明のzB7H6ポリペプチドは一般的にzB7H6の細胞外ドメイン(配列番号2の残基25〜266)又はその機能的変異体又はフラグメントを含む。そのようなzB7H6ポリペプチドは例えば、NK細胞活性のモジュレーションにおいて、そして癌又は感染性疾患のような障害の処置において、並びに、NKp30とのzB7H6の機能的相互作用に対抗する活性に関して剤をスクリーニングする方法において、有用である。一般的に、本発明のzB7H6ポリペプチドは以下:
(i)配列番号2のzB7H6ポリペプチドの細胞外ドメイン(即ち配列番号2の残基25〜266);
(ii)配列番号2の残基25〜266と少なくとも80%の同一性を有する(i)のzB7H6ポリペプチドの細胞外ドメイン機能的変異体;及び、
(iii)(i)のzB7H6細胞外ドメインの、又は(ii)のドメイン変異体の機能的フラグメント;
から選択されるポリペプチド領域を含む。
【0116】
特定の実施形態においては、zB7H6ポリペプチドは可溶性受容体ポリペプチドである。そのようなzB7H6の可溶性型は機能的膜貫通ドメインを欠いており、そして典型的には細胞内ポリペプチドセグメントも実質的に非含有である。一部の代替の実施形態においては、zB7H6ポリペプチドはzB7H6の細胞膜結合型、例えば機能的膜貫通ドメイン又はGPI連結部を含むzB7H6ポリペプチドである。zB7H6の細胞膜結合型は、例えば完全長及び実質的に完全長の形態のzB7H6蛋白質、例えば配列番号2の残基25〜454を含むかこれよりなるポリペプチド、又はその変異体を包含する。
【0117】
機能的細胞外ドメイン変異体を含むzB7H6ポリペプチドの一部の実施形態においては、変異体は配列番号2の残基25〜266と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有する。同様に細胞外ドメイン変異体の機能的フラグメントを含む他の実施形態において、フラグメントは配列番号2の残基25〜266と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有する。前述した通り、特定の実施形態において、zB7H6ポリペプチドは更に膜貫通及び細胞内ドメインの成分を含み;一部の実施形態においては、本発明のポリペプチドは、配列番号2の残基25〜454と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有する。
【0118】
パーセント配列同一性は従来の方法により求められる。例えばAltschulら、Bull.Math.Bio.48:603,1986及びHenikoff and Henikoff,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:10915,1992を参照できる。例えば、2つのアミノ酸配列は、10のギャップオープニングペナルティー、1つのギャップエクステンションペナルティー、及び上記Henikoff and Henikoffの「BLOSUM62」スコアリングマトリックスを用いて、表1に示す通り、アライメントスコアを最適にするようにアラインすることができる(アミノ酸は標準的な1文字コードで示す)。次にパーセント同一性を([同一マッチの総数]/[より長い配列の長さ+2つの配列をアラインするためにより長い配列内に導入されたギャップの数])(100)として計算する。
【0119】
【表1】

当業者の知る通り、2つのアミノ酸配列をアラインするために使用できる多くの確立されたアルゴリズムが存在する。PearsonとLipmanの「FASTA」同様性検索アルゴリズムは本明細書に開示したアミノ酸配列と推定zB7H6変異体のアミノ酸配列により共有されている同一性のレベルを検査するための適当な蛋白質アライメント方法である。FASTAアルゴリズムはPearson and Lipman,Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 85:2444,1988及びPearson,Meth.Enzymol.183:63,1990に記載さえている。慨すれば、FASTAは先ず、保存的なアミノ酸の置換、挿入、又は欠失を考慮することなく、クエリ配列(例えば配列番号2の残基25〜266)及び最高密度の同一性(ktup変数が1の場合)又は同一性の対(ktup=2の場合)の何れかを有する被験配列により共有されている領域を発見することにより配列の同様性を特性化する。次に最高密度の同一性を有する10の領域を、アミノ酸置換マトリックスを用いて全ての対と成ったアミノ酸の同様性を比較することにより再採点し、そして領域の末端を「トリミング」することにより最高評点に寄与している残基のみが包含されるようにする。「カットオフ」値(配列の長さ及びktup値に基づいて所定の式により計算される)より高値の評点を有する数領域が存在する場合は、トリミングされた初期の領域を検査することにより、その領域を連結してギャップを有する概ねのアライメントを形成することができるかどうかを調べる。最後に、2つのアミノ酸配列の最高評点領域を、アミノ酸の挿入及び欠失を許可するNeedleman−Wunsch−Sellersのアルゴリズム(Needleman and Wunsch,J.Mol.Biol.48:444,1970;Sellers,SIAM J.Appl.Math.26:787,1974)の変法を用いてアラインする。FASRA分析に関する例示されるパラメーターはktup=1、ギャップオープニングペナルティー=10、ギャップエクステンションペナルティー=1、及び置換マトリックス=BLOSUM62である。これらのパラメーターはPearson,Meth.Enzymol.183:63,1990の付録2に説明されている通り採点マトリックスファイル(「SMATRIX」)を変更することによりFASTAプログラム内に導入できる。
【0120】
FASTAは又上記開示した比を用いて核酸分子の配列同一性を調べるために使用できる。ヌクレオチド配列比較のためには、ktup値の範囲は1〜6、好ましくは3〜6、最も好ましくは3であることができ、他のパラメーターは上記した通り設定する。
【0121】
本発明は配列番号2の残基25〜266のアミノ酸配列と比較した場合に保存されたアミノ酸の変化を有する可溶性zB7H6ポリペプチドを包含する。例えば、アルキルアミノ酸がzB7H6アミノ酸配列のアルキルアミノ酸に対して置換されているか、芳香族アミノ酸がzB7H6アミノ酸配列の芳香族アミノ酸に対して置換されているか、イオウ含有アミノ酸がzB7H6アミノ酸配列のイオウ含有アミノ酸に対して置換されているか、ヒドロキシ含有アミノ酸がzB7H6アミノ酸配列のヒドロキシ含有アミノ酸に対して置換されているか、酸性アミノ酸がzB7H6アミノ酸配列の酸性アミノ酸に対して置換されているか、塩基性アミノ酸がzB7H6アミノ酸配列の塩基性アミノ酸に対して置換されているか、或いは2塩基性モノカルボキシルアミノ酸が1つ以上のzB7H6アミノ酸配列の二塩基性モノカルボキシルアミノ酸に置換されている、配列番号2の残基25〜266のアミノ酸置換を含有するzB7H6変異体を得ることができる。共通のアミノ酸のうち、「保存されたアミノ酸置換」は例えば以下の群:
(1)グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、及びイソロイシン、(2)フェニルアラニン、チロシン、及びトリプトファン、(3)セリン及びスレオニン、(4)アスパルテート及びグルタメート、(5)グルタミン及びアスパラギン、及び(6)リジン、アルギニン及びヒスチジン、の各々の内部のアミノ酸内における置換により説明される。保存的アミノ酸変化の例示される群は更に、以下の表2においても示す。
【0122】
【表2】
BLOSUM62の表は蛋白質配列セグメントの約2000のローカルマルチプルアライメントから誘導されたアミノ酸置換マトリックスであり、関連する蛋白質の500群超の高度に保存された領域を示している(Henikoff and Henikoff,Proc.Nat’l Acad.Sci.USA89:10915,1992)。従って、BLOSUM62置換頻度を用いることにより、本発明のアミノ酸配列内に導入してよい保存的アミノ酸置換を定義することができる。化学的特性のみに基づいてアミノ酸置換を設計することも可能(上記考察)であるが、「保存的アミノ酸置換」という文言は、好ましくは、−1より大きいBLOSUM62値により示される置換を指す。例えば、置換が0、1、2、又は3のBLOSUM62値により特徴付けられる場合に、アミノ酸置換は保存的となる。このシステムに従えば、好ましい保存的アミノ酸置換は少なくとも1(例えば1、2又は3)のBLOSUM62値により特徴付けられるのに対し、より好ましい保存的アミノ酸置換は少なくとも2(例えば2又は3)のBLOSUM62値により特徴付けられる。zB7H6の特定の変異体は相当するアミノ酸配列(例えば配列番号2の残基25〜266)に対して少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有することにより特徴付けられ、ここでアミノ酸配列における変異は1つ以上の保存的アミノ酸置換によるものとなる。
【0123】
機能的zB7H6変異体又はフラグメントポリペプチドはNKp30(例えばヒトNKp30)に特異的に結合する変異体又はフラグメントの能力を試験するための定型的な試験、及び/又はNKp30媒介NK細胞活性化をトリガーする変異体又はフラグメントの能力を試験するための試験を用いて、容易に識別することができる。例えば、NKp30を発現する細胞は、可溶性zB7H6ポリペプチドを用いてFACSでプローブすることができ、これは直接標識するか又は可溶性zB7H6ポリペプチドの部分に特異的な二次試薬(例えばビオチン化zB7H6ポリペプチドを検出するための蛍光団結合体化ストレプトアビジン、又はFcフラグメントを含むzB7H6融合蛋白質を検出するための蛍光団結合体化抗IgG抗体)を用いて検出してよい。他の変形例においては、機能的zB7H6ポリペプチドは標的配列に対抗してNK細胞溶解活性ををトリガーするそれらの能力により識別してよい。zB7H6変異体及びフラグメントのzB7H6関連機能を試験するための例示される試験は本明細書において更に説明する。
【0124】
特定の変形例において、可溶性zB7H6ポリペプチドはzB7H6の細胞外ドメイン、又はその機能的変異体又はフラグメント、及び非相同ポリペプチドを含む融合蛋白質である。適当な非相同ポリペプチドは免疫グロブリン重鎖定常領域を包含する。例えば、一部の実施形態においては、免疫グロブリン重鎖定常領域はFcフラグメント(例えばヒトFcフラグメント)であり、これは2つ又は3つの定常領域ドメイン及びヒンジ領域を含有するが、可変領域を欠いている(例えばSledziewskiらへの米国特許6,018,026及び5,750,375を参照)。そのような融合蛋白質は典型的には多量体、典型的には2量体の分子として分泌され、その場合、Fc部分は相互にジスルフィド結合し、そして2つの受容体ポリペプチドは相互に近接して配置される。一例として、米国特許5,723,125(Chang等)はヒトインターフェロン及び蛍光マーカー免疫グロブリンFcフラグメントを含む融合蛋白質を記載している。インターフェロンのC末端はペプチドリンカー部分によりFcフラグメントのN末端に連結している。ペプチドリンカーの一例は免疫学的に不活性であるT細胞不活性配列を主に含むペプチドである。例示されるFc部分はヒトγ4鎖であり、これは溶液中で安定であり、そして補体活性化活性を殆ど、又は全く有さない。他の適当なFc部分はエフェクター機能を欠いているかそれが実質的に低減されているヒトγ1鎖の変異体、例えば
図13A〜13Cに示すFc4(配列番号31)、Fc5(配列番号32)、Fc6(配列番号33)、及びFc7(配列番号34)を包含する。従って、一部の実施形態においては、本発明はzB7H6細胞外ドメイン、又はその機能的変異体又はフラグメント及びFcフラグメント(例えばヒトFcフラグメント又はその変異体)を含むzB7H6融合蛋白質を提供し、ここでzB7H6細胞外ドメイン又はその機能的変異体又はフラグメントのC末端はペプチドリンカーを介してFcフラグメントのN末端に結合している。
【0125】
可溶性B7H6融合蛋白質の製造のための他の特に適している非相同ポリペプチドはVASPドメインを包含する。可溶性受容体融合蛋白質におけるVASPドメインの使用は参照により全体が本明細書に組み込まれる米国特許出願2007/0254339により詳細に記載されている。VASPドメインは多くの種に存在するVASP遺伝子から誘導される。配列はコイルドコイルの蛋白質構造を形成するそれらの予測される能力に関して選択されるが、その理由はこの構造は多量体蛋白質形態を形成する能力のために重要であるからである。本発明のための特に望ましいものは、4量体蛋白質構造を形成するコイルドコイル蛋白質の能力である。特に好ましい実施形態は、ヒトVASP配列のアミノ酸342〜375を利用しており、その完全長ポリペプチド配列は配列番号4に示す。ヒトVASP蛋白質をコードする完全長DNA配列は配列番号3に示す。
【0126】
他の型の多量体化配列、例えばロイシンジッパーを用いた研究によれば、保存的アミノ酸置換の限定された数(d残基における場合でも)は、多量体かする分子の能力を損失することなくジッパー配列において耐容される場合が多いことが示されている(Landschulzら、Science243:1681−1688,1989)。即ち、VASPドメインに関するネイティブの配列からの保存的変化は本発明の範囲内において意図されている。例えば、上記表2はコイルドコイル構造により耐容されることが予測される例示的な保存的変化を示している。
【0127】
ヘテロ多量体蛋白質、例えばヘテロ4量体を形成するために1つより多い融合蛋白質を用いようとする場合、使用されるVASPドメインは、ドメインが相互に会合して多量体蛋白質を形成する能力を有する限り、両方の融合蛋白質に関して同じドメイン、又は異なるVASPドメインであることができる。
【0128】
特定の実施形態においては、VASPドメインは配列番号2の残基25〜266に示すzB7H6細胞外ドメインのC末端において(又はその機能的変異体又はフラグメントに)連結される。更に又、VASPドメインは蛋白質の中央に位置することができ、これにより2つの非VASPポリペプチドセグメントにフランキングされているVASPドメインを有する二重融合蛋白質を効率的に形成し、その場合、VASPドメインにフランキングしているポリペプチド配列の少なくとも1つは配列番号2の残基25〜266に示すzB7H6細胞外ドメイン(又はその機能的変異体又はフラグメント)である。一部の変形例においては、VASPドメインにフランキングしている第2のポリペプチドセグメントはzB7H6結合活性の利益のために特定の細胞又は組織に可溶性受容体をターゲティングするように設計されたポリペプチドセグメントである。
【0129】
可溶性zB7H6融合コンストラクトにおける多量体化非相同ポリペプチド配列の使用の1つの結果は多量体形態の形成を介したリガンド又はカウンター受容体(例えばNKp30)に対するzB7H6の親和性又はアビディティを増大させる能力である。アビディティとは、より長い分子への多数の分子の結合の強度を意味しており、その状況の例は抗体による複合体抗原への結合であるがこれに限定されない。親和性とは単純な受容体−リガンドの系の結合の強度を意味する。そのような特徴は、例えば受容体の多量体化を介したzB7H6に対する良好な結合特性を有する結合部位を形成することにより向上できる。アビディティ及び親和性は当該分野で良く知られている標準的な試験法を用いて計測できる。親和性又はアビディティにおける向上は、多量体可溶性zB7H6融合蛋白質及びリガンド又はカウンター受容体に関する親和性又はアビディティの値(例えば親和性定数又はKa)が単量体のzB7H6ポリペプチド及びリガンド又はカウンター受容体に関するものより高値である場合に生じる。これらの特性を計測するための代替の手段は平衡定数(Kd)であり、この場合、多量体化非相同ポリペプチド(例えばVASP4量体化ドメイン)を用いて親和性又はアビディティの向上に伴って低下が観察される。
【0130】
可溶性zB7H6融合蛋白質のポリペプチドセグメント(例えばzB7H6細胞外ドメイン、又はその機能的変異体又はフラグメント、及びzB7H6に対して非相同であるセグメント)を直接別の蛋白質に連結することにより融合蛋白質を形成してよく;或いはポリペプチドセグメントは、蛋白質が生物学的活性に必要な適切な二次及び三次構造を形成することを確保するために十分な距離で隔たっていてよい。適当なリンカー配列は可撓性の伸長したコンホーメーションを採用することになり、そして融合蛋白質の機能的ドメインと相互作用する秩序のある二次構造を発生させる傾向を呈しないものとなり、そして融合止めの機能に干渉する場合もある最小限の疎水性又は荷電した特質も有することになる。リンカー配列は15残基リピートを基本に構築すべきであり、その理由は非相同配列のN又はC末端を堅固に拘束することは生物学的に活性な蛋白質を製造することのもっとも大きな利点ではないためである。これらの懸案をも超越して、リンカー配列の長さは融合蛋白質の生物学的活性に大きく影響することなく変動させてよい。リンカー配列はアフィニティータグ及びシグナルペプチドを包含する融合蛋白質(又は発現コンストラクト)の全ての成分の間で使用できる。例示されるリンカーはGSGG配列(配列番号5)である。
【0131】
可溶性zB7H6融合蛋白質は更にアフィニティータグを包含できる。そのようなタグは融合蛋白質の生物学的活性を改変せず、高度に抗原性であり、そして発現された融合蛋白質の迅速な検出及び精製を容易にするモノクローナル抗体のような特異的結合分子により可逆的に結合されえるエピトープを与える。アフィニティータグは又、蛋白質がE・コリのような細菌中で生産される場合に、細胞内分解に対する耐性も担持できる。例示されるアフィニティータグはFLAGタグ(配列番号6)又はHIS6タグ(配列番号7)である。精製のためのこのアフィニティータグを利用しながら融合蛋白質を製造する方法は米国特許5,011,912に記載されている。
【0132】
一部の変形例において、可溶性zB7H6受容体は「ターゲティングドメイン」、即ちzB7H6結合活性の利点に関して特定の細胞又は組織に可溶性受容体をターゲティングするように設計された非相同ポリペプチドセグメントを含む。例えば、一部の実施形態においては、可溶性融合蛋白質は腫瘍細胞に融合蛋白質を特異的にターゲティングするポリペプチドセグメントを含む。特定の細胞又は組織に融合蛋白質をターゲティングするための特に適している非相同ポリペプチドセグメントは標的細胞又は組織に会合している細胞表面マーカーを認識する抗体又はその抗原結合フラグメントを包含する。ターゲティングドメインの使用は標的組織(例えば腫瘍)の近接部において可溶性zB7H6受容体の高い局所的濃度を与えることができ、これにより所望の応答を起こすために投与しなければならない可溶性受容体の量を低減すること、並びに可溶性受容体への非標的組織の曝露により誘発される場合がある望ましくない副作用を最小限にすることが可能となる。更に又、標的細胞の表面へのzB7H6融合蛋白質のターゲティングドメイン部分の結合はNK細胞の表面上のzB7H6−結合NKp30の架橋を増強する場合があり、これにより標的細胞に対抗するNK細胞活性のNKp30媒介刺激を更に増強できる。
【0133】
例えば、腫瘍標的組織の場合、ターゲティングドメインは、腫瘍特異的又は腫瘍関連の抗原(即ち腫瘍細胞により発現されるが正常細胞からはされない抗原、又は正常細胞と相対比較して腫瘍細胞において高レベルで発現される抗原)を包含できる。そのような抗原の例は、表皮成長因子受容体ファミリーメンバー(例えばEGFR及びHer2)、癌胎児抗原(CEA)、ムチンファミリーのメンバー(MUC1)、メソセリン、フォレート受容体、その他を包含する。造血系の腫瘍に特異的であるかそれに関連する抗原、例えばCD30、CD33、CD40、CD72及びその他のものもターゲティングされる。これら全てに対する抗原は、複数の癌の処置にあたって認証されるか、臨床試験が行われる。これらの表面受容体の少なくとも1つに対する抗原を含むzB7H6融合蛋白質は分子の局所的ターゲティングを可能にし、そして更にNK細胞の表面上のzB7H6結合NKp30の架橋を促進し、これにより腫瘍細胞に対抗するNK細胞の活性のNKp30媒介刺激を更に増強できる。
【0134】
本発明は更に他のポリペプチド融合物の種々のものを提供する。例えば、一部の実施形態においては、zB7H6ポリペプチドは2つ以上の部分又はドメイン、例えば精製のためのアフィニティータグ、及びターゲティングドメインに融合できる。ポリペプチド融合物は又、1つ以上の切断部位を、特にドメイン間に含むことができる。例えばTuanら、Connective Tissue Research 34:1(1996)を参照できる。
【0135】
一部の変形例において、zB7H6ポリペプチドは更にシグナル配列又はリーダー配列を含む。これらの配列は一般的には、発現中の宿主細胞からの融合蛋白質の分泌を可能にするために利用され、そして又、リーダー配列、プレプロ配列又はプレ配列としても知られている。分泌シグナル配列はzB7H6から誘導してよいが、適当なシグナル配列は又、他の分泌蛋白質から誘導(例えば米国特許5,641,655に記載されている組織型プラスミノーゲン活性化物質(t−PA)シグナル配列)するか、又は新規に合成してもよい。分泌シグナル配列は、2つの配列が正しい読み枠内において連結され、そして宿主細胞の分泌経路内に新しく合成されたポリペプチドを指向させるように位置づけられるように、zB7H6コード配列に作動可能に連結している。分泌シグナル配列は一般的には目的のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列に対して5’側に位置するが、特定の分泌シグナル配列は目的のヌクレオチド配列ないの別の場所に位置してもよい(例えばWelchらへの米国特許5,037,743;Holland等への米国特許5,143,830を参照)。
【0136】
zB7H6又は哺乳類細胞により生産される他の蛋白質の分泌シグナル配列(例えば米国特許5,641,655に記載されている組織型プラスミノーゲン活性化物質シグナル配列)が組み換え哺乳類宿主におけるzB7H6の発現のために有用であるが、コウボシグナル配列がコウボ細胞における発現のためには好ましい。適当なコウボシグナル配列の例はコウボ交配フェロモンα因子(MFα1遺伝子によりコードされる)から誘導されたもの、インバターゼ(SUC2遺伝子によりコードされる)、又は酸ホスファターゼ(PHO5遺伝子によりコードされる)である。例えばRomanosら、「Expression of Cloned Genes in Yeast」、DNA Cloning 2:A Practical Approach、第2版Glover and Hames(編)、123−167ページ(Oxford University Press1995)を参照できる。
【0137】
一部の変形例においては、zB7H6ポリペプチドは重合体への連結を介して化学的に修飾される。典型的には、重合体は、zB7H6ポリペプチド結合体が水性の環境、例えば生理学的環境において沈殿しないように水溶性とする。適当な重合体の例はアシル化のための活性エステル、又はアルキル化のためのアルデヒドのような単一の反応性の基を有するように修飾されているものである。この態様において、重合の程度を制御できる。重合体は分枝鎖又は未分枝鎖であってよい。zB7H6ポリペプチド結合体は又そのような水溶性重合体の混合物を含むことができる。ポリペプチド及び水溶性重合体部分を含む結合体を製造するための一般的な方法は当業者の知る通りである(例えばKarasiewiczらへの米国特許5,382,657;Greenwaldらへの米国特許5,738,846;Nieforthら、Clin.Pharmacol.Ther.59:636,1996;Monkarshら.,Anal.Biochem.247:434,1997を参照)。そのような方法はホモ2量体、ヘテロ2量体又は多量体の可溶性受容体結合体を含むzB7H6を作成するために使用できる。
【0138】
zB7H6ポリペプチド結合体の1つの例はzB7H6ポリペプチドのN末端に結合したポリアルキルオキシド部分を含む。PEGは1つの適当なポリアルキルオキシドである。例として、zB7H6は「PEG化」として知られるプロセスであるPEGで修飾することができる。zB7H6のPEG化は当該分野で知られたPEG化反応の何れかにより実施できる(例えばEP0154316;Delgadoら、Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems 9:249,1992;Duncan and Spreafico,Clin.Pharmacokinet.27:290,1994;Francisら、Int J Hematol 68:1,1998を参照)。例えばPEG化はアシル化反応により、又はアルキル化反応により反応性のポリエチレングリコール分子を用いて、実施することができる。代替の手順においては、zB7H6結合体は、PEGの末端ヒドロキシ又はアミノ基は活性化リンカーにより置き換えられている活性化PEGを縮合することにより形成される(例えばKarasiewiczらへの米国特許5,382,657参照)。PEG化反応のためには、重合体分子の典型的な分子量は約2kDa〜約100kDa、約5kDa〜約50kDa、又は約12kDa〜約25kDaである。zB7H6に対する水溶性重合体のモル比は一般的に1:1〜100:1の範囲にある。典型的にはzB7H6に対する水溶性重合体のモル比は、ポリPEG化の場合は1:1〜20:1、そしてモノPEG化の場合は1:1〜5:1である。
【0139】
zB7H6ポリペプチドは例えば同属体カウンター受容体(例えばNKp30)を溶液からアフィニティー精製するために、又はインビトロ試験の手段として使用できる。例えば、生物学的試料中のzB7H6カウンター受容体の存在はzB7H6−免疫グロブリン融合蛋白質を用いて検出することができ、その場合zB7H6部分はカウンター受容体に結合するために使用され、そしてプロテインA又は抗Fc抗体等の巨大分子は固体支持体に融合蛋白質を結合するために使用される。そのような系はzB7H6のそのカウンター受容体(例えばNKp30)への結合に干渉するアゴニスト及びアンタゴニストを発見するために使用できる。
【0140】
zB7H6ポリペプチドは又、細胞上のNKp30に特異的に結合することによりインビトロでシグナルをトリガー又は増強するために、そしてそれらを非経腸投与(例えば筋肉内、皮下又は静脈内注射による)することにより細胞上のNKp30に結合してNK細胞のNKp30媒介活性化をトリガー又は増強することによりインビボのアゴニストとして、使用することもできる。例えば、可溶性zB7H6融合蛋白質は隠微オントロジーでNK細胞の細胞溶解活性をトリガー又は増強するために、又は、癌又は感染性疾患の処置のためにエクスビボ又はインビボでそのような活性をトリガー又は増強するために、使用できる。これら及び他の用途は本明細書において更に説明する。
【0141】
本明細書において考察する方法を用いて、当業者は本明細書に記載した種々のzB7H6ポリペプチド、例えば配列番号2の残基25〜266のzB7H6細胞外ドメイン、又はそれに実質的に同一であり、そして配列番号2の残基25〜266のNKp30結合又は他の機能的特性を保持しているzB7H6細胞外ドメインを含むポリペプチドを製造することができる。本発明のzB7H6ポリペプチドは典型的には組み換え生産されるが、そのようなポリペプチドは又、当該分野で一般的に使用される他の方法により製造することもできる(例えばポリペプチドの合成生産、又は天然原料からのzB7H6ポリペプチドの単離による)。組み換えzB7H6受容体ポリペプチドは一般的にzB7H6ポリペプチドをコードするDNAセグメントを含むポリヌクレオチドを発現することにより製造できる。例えば組み換えzB7H6可溶性受容体ポリペプチドは一般的に、配列番号2のzB7H6ポリペプチドの細胞外ドメイン(配列番号2の近接したアミノ酸残基25〜266)をコードするトランケーションされたDNAを含むポリヌクレオチド、又はその機能的変異体又はフラグメントを発現させることにより製造できる。可溶性細胞外ドメインポリペプチドは膜貫通及び細胞内ポリペプチドセグメントを実質的に含まない形態で製造することが好ましいため、そのような可溶性ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは典型的にはそのような膜貫通及び細胞内セグメントをコードする領域を欠いていることになる。蛋白質の組み換え生産のための方法は一般的に当該分野で良く知られている。
【0142】
上記考察した通り、可溶性zB7H6ポリペプチドは又、一般的に本明細書に開示した通り追加的なポリペプチドセグメントを包含してよい。可溶性zB7H6融合蛋白質の場合、そのような実施形態は又、当該分野で一般的に知られた方法により製造できる。例えば、融合蛋白質は融合蛋白質の各成分を製造し、そしてそれらを化学的に結合体化することにより製造できる。融合蛋白質の酵素的及び化学的な切断のための一般的な方法は例えばAusubel(1995)の16−19から16−25に記載されている。或いは、適切な読み枠内に融合蛋白質の両方の成分をコードしているポリヌクレオチドを知られた手法により形成し、そして本明細書で更に説明するもののような方法を用いて組み換え発現することができる。
【0143】
上記した通り、zB7H6受容体ポリペプチドは一般的にzB7H6ポリペプチドをコードするDNAセグメントを含むポリヌクレオチドを発現させることにより製造できる。可溶性蛋白質の形態のためには、細胞外ドメインポリペプチドは、膜貫通及び細胞内ポリペプチドセグメントを実質的に含まない形態で製造することが好ましい。宿主細胞に由来する受容体ドメインのエキスポートを指向するためには、受容体DNAはt−PA分泌ペプチドのような分泌ペプチドをコードする第2のDNAセグメントに連結する。一部の実施形態においては、分泌受容体ドメインの精製を容易にするために、ポリヒスチジンタグ、サブスタンスP、FLAG(商標)ペプチド(Hoppら、Biotechnology6:1204−1210,1988;入手元Eastman Kodak Co.,New Haven,CT)等のC末端エクステンション又は自身に対する抗体又は他の特異的結合剤が入手できる他のポリペプチド又は蛋白質を受容体ポリペプチドに融合することができる。
【0144】
従って、別の態様において、本発明は更に本明細書に記載したzB7H6ポリペプチドの何れかをコードするポリヌクレオチドを提供する。一般的に、可溶性zB7H6ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは配列番号2の残基25〜266の細胞外zB7H6ドメインをコードするポリヌクレオチド領域又はその機能的変異体又はフラグメントを含む。特定の他の変形例においては、本発明のポリヌクレオチドはzB7H6の細胞膜結合型、例えば配列番号2の残基25〜454又は1〜454を含むポリペプチド、又はその機能的変異体をコードする。特定の実施形態においては、可溶性zB7H6ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは配列番号1のヌクレオチド残基73〜798又は1〜798を含み;配列番号2の残基25〜454又は1〜454をコードするポリヌクレオチドの例は、配列番号1の73〜1362又は1〜1362を含むポリヌクレオチドを包含する。特定の変形例においては本発明のポリヌクレオチドは更に、zB7H6ポリペプチドの追加的な成分、例えばzB7H6融合蛋白質の非相同ポリペプチド成分をコードする1つ以上のポリヌクレオチド領域、シグナル分泌配列、及び/又はアフィニティータグを包含する。
【0145】
当業者の知る通り、遺伝子コードの縮重のために、極めて多数の核酸が作成され、その全ては本発明のzB7H6ポリペプチドをコードする。即ち、zB7H6ポリペプチドの特定のアミノ酸配列があれば、ポリペプチドをコードする異なる核酸の如何なる数量も、zB7H6ポリペプチドのアミノ酸配列を変えない態様において1つ以上のコドンの配列を修飾するための知られた手法を用いて作成することができる。
【0146】
zB7H6コードcDNAは種々の方法により、例えば完全又は部分的なヒトcDNAを用いて、又は開示された配列に基づく縮重プローブの1つ以上のセットを用いてプローブすることにより、単離することができる。cDNAは又本明細書に開示した代表的なヒトzB7H6配列から設計したプライマーを用いたポリメラーゼ連鎖反応を用いてクローニングすることもできる。更に又、cDNAライブラリを用いて宿主細胞を形質転換又はトランスフェクトすることができ、そして目的のcDNAの発現はzB7H6ポリペプチドに対する抗体を用いて検出できる。
【0147】
例えば、ヒトzB7H6遺伝子をコードする核酸分子は配列番号1に基づいたポリヌクレオチドプローブを用いてヒトcDNA又はゲノムライブラリをスクリーニングすることにより得ることができる。これらの手法は標準的であり、十分確立されており、そして商業的供給元から入手可能なクローニングキットを用いて達成してよい。例えばAusubelら(編),Short Protocols in Molecular Biology(第3版,John Wiley&Sons 1995);Wuら、Methods in Gene Biotechnology,CRC Press,Inc.1997;Aviv and Leder,Proc.Nat’l Acad.Sci.USA69:1408,1972;Huynhら、「Constructing and Screening cDNA Libraries in λgt10 and λgt11,」、DNA Cloning:A Practical Approach Vol.I,Glover(編)49ページ(IRL Press,1985)を参照できる。
【0148】
ヒトzB7H6遺伝子をコードする核酸分子は又、zB7H6遺伝子又はcDNAのヌクレオチド配列に基づいているヌクレオチド配列を有するオリゴヌクレオチドプライマーを用いたポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を用いて得ることができる。PCRを用いてライブラリをスクリーニングするための一般的な方法は例えばYuら、「Use of the Polymerase Chain Reaction to Screen Phage Libraries,」、Methods in Molecular Biology,Vol.15:PCR Protocols:Current Methods and Applications(White編、Humana Press,Inc.1993)に記載されている。更に又、関連する遺伝子を単離するためにPCRを使用するための手法は例えばPreston,「Use of Degenerate Oligonucleotide Primers and the Polymerase Chain Reaction to Clone Gene Family Members,」、Methods in Molecular Biology,Vol.15:PCR Protocols:Current Methods and Applications(White編、Humana Press,Inc.1993)に記載されている。代替として、zB7H6遺伝子は長鎖オリゴヌクレオチド及び本明細書に記載したヌクレオチド配列を相互プライミングすることを用いて核酸分子を合成することにより得ることができる(例えばAusubel上出参照)。ポリメラーゼ連鎖反応を用いる確立された手法は、少なくとも2キロ塩基長のDNA分子を合成する能力を与える(例えばAdangら、Plant Molec.Biol.21:1131,1993;Bambotら、PCR Methods and Applications 2:266,1993;Dillonら、「Use of the Polymerase Chain Reaction for the Rapid Construction of Synthetic Genes,」、Methods in Molecular Biology,Vol.15:PCR Protocols:Current Methods and Applications 263−268(White編、Humana Press,Inc.1993);及びHolowachukら、PCR Methods Appl.4:299,1995を参照)。ポリヌクレオチド合成に関する考察は、例えばGlick and Pasternak,Molecular Biotechnology,Principles and Applications of Recombinant DNA(ASM Press1994);Itakuraら、Annu.Rev.Biochem.53:323,1984;及びClimieら、Proc.Nat’l Acad.Sci.USA87:633,1990を参照できる。
【0149】
上記考察した通り、遺伝子コードの縮重を鑑みれば、かなりの配列の変異がこれらのポリヌクレオチド分子の間で可能であることは、当業者であれば容易に認識することになる。即ち、本発明は配列番号1の縮重ヌクレオチドを含むzB7H6ポリペプチドコード核酸分子、及びそれらのRNA等価物を意図している。ある所定のアミノ酸に関する全ての可能なコドンを包含する縮退コドンを表3に示す。
【0150】
【表3】
特定の宿主細胞における発現に関しては、異なる種は「優先的コドン使用」を呈することができる。一般的にはGranthamら、Nucl.Acids Res.8:1893,1980;HaasらCurr.Biol.6:315,1996;Wain−Hobsonら、Gene13:355,1981;Grosjean and Fiers,Gene 18:199,1982;Holm,Nuc.Acids Res.14:3075,1986;Ikemura,J.Mol.Biol.158:573,1982;Sharp and Matassi,Curr.Opin.Genet.Dev.4:851,1994;Kane,Curr.Opin.Biotechnol.6:494,1995;及びMakrides,Microbiol.Rev.60:512,1996を参照できる。本明細書においては、「優先的コドン使用」又は「優先的コドン」という用語は特定の種の細胞においてもっとも頻繁に使用され、これにより各アミノ酸をコードする可能なコドンの1つ又は数個の代表に恩恵を施す蛋白質翻訳コドンを指す当該分野の用語である(表2参照)。例えばアミノ酸スレオニン(Thr)はACA、ACC、ACG、又はACTによりコードされる場合があるが、哺乳類細胞においてはACCがもっとも一般的に使用されるコドンであり;他の種、例えば昆虫細胞、コウボ、ウィルス又は細菌においては、異なるThrコドンが優先される場合がある。特定の種に関わる優先的コドンは当業者の知る種々の方法により本発明のポリヌクレオチドに導入できる。組み換えDNA内への優先的コドン配列の導入は例えば特定の細胞方又は種内で蛋白質翻訳をより効率的なものとすることにより蛋白質の生産を増強することができる。従って、本明細書に開示した縮退コドン配列は当該分野で一般的に使用され本明細書に開示されている種々の細胞型及び種におけるポリヌクレオチドの発現を最適化するための鋳型として作用する。優先的コドンを含有する配列は本明細書に開示する通り種々の種における発現に関して試験及び最適化し、そして機能に関して試験できる。
【0151】
当業者の知る通り、配列番号1に開示する配列はヒトzB7H6の単一の対立遺伝子を示し、そして対立遺伝子変異及びオルタナティブスプライシングが生じる事が予測される。この配列の対立遺伝子変異体は標準的な操作法に従って種々の異なる個体に由来するcDNA又はゲノムライブラリをプローブすることによりクローニングできる。本明細書に開示したヌクレオチド配列の対立遺伝子変異体は、サイレントな突然変異を含有するもの、及び突然変異がアミノ酸配列の変化をもたらすものを含めて、本発明の範囲内にあり、そのことは本明細書に開示したアミノ酸配列の対立遺伝子変異体である蛋白質にも当てはまる。配列番号2のzB7H6ポリペプチドの特性を保持しているzB7H6ポリペプチド(例えばNKp30結合能力を保持している配列番号2の残基25〜266の細胞外ドメインの変異体)をコードするオルタナティブスプライシングされたmRNAから形成したcDNA分子は本発明の範囲内にあり、そのことはそのようなcDNA及びmRNAによりコードされたポリペプチドにも当てはまる。このような配列の対立遺伝子変異体及びスプライス変異体は、当業者の知る標準的な操作法に従って種々の異なる個体又は組織に由来するcDNA又はゲノムライブラリをプローブすることによりクローニングできる。
【0152】
変異体zB7H6核酸分子は一般的に当業者の知る手法を用いて識別できる。そのような変異体の識別のための適当な基準は、(a)配列番号2のアミノ酸配列を有するコードされたポリペプチド、又は配列番号2の残基25〜266のB7H6細胞外ドメインに相当するその領域の間の配列同一性又は同様性の測定;及び(b)ハイブリダイゼーション試験を包含する。そのようなzB7H6核酸変異体は、(1)洗浄ストリンジェンシーが0.5x〜2xSSC、0.1%SDS、55〜65℃と等価であるストリンジェントな洗浄条件下でおいて配列番号1のヌクレオチド配列を有する核酸分子(又はその相補体、又は配列番号1の残基73〜798を含むフラグメント)とハイブリダイズした状態で残存し、そして、(2)配列番号2のアミノ酸配列と、又は配列番号2の残基25〜266と、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%又は少なくとも99%の配列同一性を有するポリペプチドをコードする核酸分子を包含する。或いはzB7H6変異体は、(1)洗浄ストリンジェンシーが0.1〜0.2xSSC、0.1%SDS、50〜65℃と等価であるストリンジェントな洗浄条件下でおいて配列番号1のヌクレオチド配列を有する核酸分子(又はその相補体、又は配列番号1の残基73〜798を含むフラグメント)とハイブリダイズした状態で残存し、そして、(2)配列番号2のアミノ酸配列と、又は配列番号2の残基25〜266と、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%又は少なくとも99%の配列同一性を有するポリペプチドをコードする核酸分子として特性化できる。
【0153】
一般的にストリンジェントな条件は所定のイオン強度及びpHにおいて特異的配列に関する熱融点(T
m)よりも約5℃低値と成るように選択される。T
mは標的配列の50%が完全マッチしたプローブにハイブリダイズする温度(所定のイオン強度及びpHの下)である。ハイブリダイゼーションの後、核酸分子をストリンジェントな条件下、又は高度にストリンジェントな条件下で洗浄することにより非ハイブリダイズ核酸分子を除去する。例えばSambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,第2版(Cold Spring Harbor Press1989);Ausubelら(編)、Current Protocols in Molecular Biology(John Wiley and Sons,Inc.1987);Berger and Kimmel(編)、Guide to Molecular Cloning Techniques,(Academic Press,Inc.1987);及びWetmur,Crit.Rev.Biochem.Mol.Biol.26:227,1990)を参照できる。OLIGO 6.0(LSR;Long Lake,MN)及びPrimer Premier4.0(Premier Biosoft International;Palo Alto,CA)のような配列分析ソフトウエア並びにインターネット上のサイトが、ユーザー定義による基準に基づいて所定の配列を分析し、そしてT
mを計算するための使用可能な手段である。特定のポリヌクレオチドハイブリッドと共に使用するためのハイブリダイゼーション及び洗浄の条件を採用することは当業者の知る通りである。
【0154】
パーセント配列同一性は上記したもののような従来の方法により容易に測定できる。
【0155】
一部の実施形態においては、zB7H6の変異体は相当するアミノ酸配列(例えば配列番号2の残基25〜266)と少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有することにより特性化され、ここでアミノ酸配列における変異は1つ以上の保存的アミノ酸置換によるものである。zB7H6コードポリヌクレオチドにおける保存的アミノ酸変化は例えば配列番号1に示すヌクレオチドに対してヌクレオチドを置換することにより導入できる。そのような「保存的アミノ酸」変異体は、オリゴヌクレオチド指向突然変異誘発、リンカースキャニング突然変異誘発、ポリメラーゼ連鎖反応を用いた突然変異誘発等により得ることができる(Ausubel(1995);及びMcPherson(編)、Directed Mutagenesis:A Practical Approach(IRL Press1991)参照)。上記した通り、機能的zB7H6変異体ポリペプチドは、NKp30(例えばヒトNKp30)に特異的に結合する能力、及び/又はNKp30媒介NK細胞活性化をトリガーする変異体又はフラグメントの能力を評価するための試験により、識別できる。
【0156】
本発明のzB7H6ポリペプチドは又、天然に存在しないアミノ酸残基を含むことができる。天然に存在しないアミノ酸は、例えば限定しないが、トランス−3−メチルプロリン、2,4−メタノプロリン、シス−4−ヒドロキシプロリン、トランス−4−ヒドロキシプロリン、N−メチルグリシン、アロ−スレオニン、メチルスレオニン、ヒドロキシエチルシステイン、ヒドロキシエチルホモシステイン、ニトログルタミン、ホモグルタミン、ピペコリン酸、チアゾリジンカルボン酸、デヒドロプロリン、3−及び4−メチルプロリン、3,3−ジメチルプロリン、t−ロイシン、ノルバリン、2−アザフェニルアラニン、3−アザフェニルアラニン、4−アザフェニルアラニン、及び4−フルオロフェニルアラニンを包含する。天然に存在しないアミノ酸残基を蛋白質に組み込むための数種の方法が当該分野で知られている。例えば、化学的にアミノアシル化されたサプレッサtRNAを用いてノンセンス突然変異を抑制するインビトロの系を用いることができる。アミノ酸を合成し、そしてtRNAをアミノアシル化するための方法は当該分野で知られている。ノンセンス突然変異を含有するプラスミドの転写及び翻訳は典型的にはE・コリS30抽出物及び市販の酵素及び他の試薬を含む無細胞系において実施される。蛋白質はクロマトグラフィーにより精製される(例えばRobertsonら、J.Am.Chem.Soc.113:2722,1991;Ellmanら、Methods Enzymol.202:301,1991;Chungら、Science259:806,1993;及びChungら、Proc.Nat’l Acad.Sci.USA90:10145,1993を参照)。第2の方法においては、翻訳は突然変異したmRNA及び化学的にアミノアシル化されたサプレッサtRNAのマイクロインジェクションによりアフリカツメガエル卵母細胞中で行う(Turcattiら、J.Biol.Chem.271:19991,1996参照)。第3の方法においては、E・コリ細胞を置き換えるべき天然のアミノ酸(例えばフェニルアラニン)の非存在下、そして所望の天然に存在しないアミノ酸(例えば2−アザフェニルアラニン、3−アザフェニルアラニン、4−アザフェニルアラニン、又は4−フルオロフェニルアラニン)の存在下で培養する。天然に存在しないアミノ酸はその天然の相応物の変わりに蛋白質内に取り込まれる(Koideら、Biochem.33:7470,1994参照)。更に又、天然に存在するアミノ酸残基はインビトロの化学修飾により天然に存在しない種に変換できる。化学的修飾を部位指向性突然変異誘発と組み合わせることにより置換の範囲を更に拡大できる(Wynn and Richards,Protein Sci.2:395,1993参照)。
【0157】
限定された数量の非保存的アミノ酸、遺伝子コードによりコードされないアミノ酸、天然に存在しないアミノ酸、及び非天然のアミノ酸をzB7H6アミノ酸残基に対して置換させてよい。
【0158】
本発明のポリペプチド中の必須アミノ酸は部位指向性突然変異誘発又はアラニンスキャニング突然変異誘発のような当該分野で知られた操作法に従って識別できる(例えば
Cunningham and Wells,Science244:1081,1989;Bassら、Proc.Nat’l Acad.Sci.USA88:4498,1991;Coombs and Corey,「Site−Directed Mutagenesis and Protein Engineering,」、Proteins:Analysis and Design 259−311(Angeletti編、Academic Press,Inc.1998参照)。後者の手法においては単一のアラニン突然変異を分子の各残基において導入し、そして得られた突然変異体分子を生物学的活性(例えばNKp3−結合及び/又はNKp30媒介NK細胞活性化をトリガーする変異体又はフラグメントの能力)に関して試験することにより分子の活性にとって重要であるアミノ酸残基を発見する(例えばHiltonら、J.Biol.Chem.271:4699,1996参照)。
【0159】
配列分析はzB7H6NKp30結合領域を更に明確化するために使用できるが、NKp30へのzB7H6の結合において役割を果たすアミノ酸は又、推定接触部位アミノ酸の突然変異に関連する核磁気共鳴、結晶学的分析、電子回折又は光アフィニティー標識のような手法により測定される場合のように、構造の物理的分析により測定することができる(例えばde Vosら、Science255:306,1992;Smithら、J.Mol.Biol.224:899,1992;及びWlodaverら、FEBS Lett.309:59,1992参照)。
【0160】
多数のアミノ酸置換を突然変異誘発及びスクリーニングの知られた方法、例えばReidhaar−Olson及びSauer(Science241:53,1988)又はBowie及びSauer(Proc.Nat’l Acad.Sci.USA86:2152,1989)により開示されているものを用いて作成し、試験することができる。慨すれば、これらの著者らは、ポリペプチドにおける2つ以上の位置を同時に無作為化すること、機能的ポリペプチドを選択すること、そして次に各一において可能な置換のスペクトルを決定するために突然変異誘発されたポリペプチドを配列決定することのための方法を開示している。使用できる他の方法はファージディスプレイ(例えばLowmanら、Biochem.30:10832,1991;Ladnerらへの米国特許5,223,409;国際出願WO92/06204(Huse)参照)及び領域指向性突然変異誘発(例えばDerbyshireら、Gene46:145,1986;Nerら、DNA7:127,1988参照)を包含する。
【0161】
変異体zB7H6ヌクレオチド及びポリペプチドの配列は又DNAシャッフリングを介して形成できる(例えばStemmer,Nature 370:389,1994;Stemmer,Proc.Nat’l Acad.Sci.USA91:10747,1994;国際出願WO97/20078参照)。慨すれば、親DNAのランダムフラグメント化によるインビトロ相同体組み換え、次いで、PCRを用いた再組み立てにより無作為に導入された点突然変異を生じさせることにより、変異体DNA分子を形成する。この手法は、プロセスに追加的な変動性を導入するために異なる種に由来する対立遺伝子変異体又はDNA分子のような親DNA分子のファミリーを用いることにより変法とすることができる。所望の活性に関する選択又はスクリーニング、次いで追加的に反復して突然変異誘発及び試験を行えば、所望の突然変異を選択しつつ、有害な変化を選別排除することにより、配列の急速な「進化」が可能となる。
【0162】
本明細書に開示した突然変異誘発方法は、宿主細胞中のクローニングされ、突然変異誘発されたポリペプチドの活性を検出するための高スループットの自動化スクリーニング方法と組み合わせることができる。生物学的に活性なポリペプチド(例えばNKp30に特異的に結合するポリペプチド)をコードする突然変異誘発されたDNA分子を、近代的な装置を用いて宿主細胞から回収して迅速に配列決定することができる。これらの方法は目的のポリペプチドにおける個々のアミノ酸残基の重要性の迅速な測定を可能にし、そして、未知の構造のポリペプチドに適用できる。
【0163】
前述において考察した通り、本発明は又、zB7H6細胞外ドメインの「機能的フラグメント」及びそのような機能的フラグメントをコードする核酸分子を包含する。核酸分子の定型的な欠失分析を行うことによりzB7H6細胞外ドメインをコードする核酸分子の機能的フラグメントを得ることができる。一例として、配列番号1の残基73〜798のヌクレオチド配列を有するDNA分子をBal31ヌクレアーゼで消化することにより一連のネステッド欠失を得ることができる。次にフラグメントを適切な読み枠において発現ベクター内に挿入し、そして発現されたポリペプチドを単離し、NKp30に結合する能力に関して試験する。エキソヌクレアーゼ消化の1つの代替は、オリゴヌクレオチド指向性突然変異誘発を用いることにより欠失又は終止コドンを導入して所望のフラグメントの生産を特定することである。或いは、zB7H6遺伝子の特定のフラグメントをポリメラーゼ連鎖反応を用いて合成できる。
【0164】
この一般的な手順はインターフェロンの何れか又は両方の末端におけるトランケーションに関する試験により例示される(Horisberger and Di Marco,Pharmac.Ther.66:507,1995参照)。更に又、蛋白質の機能的分析のための標準的手法は例えばTreuterら、Molec.Gen.Genet.240:113,1993;Contentら、「Expression and preliminary deletion analysis of the 42 kDa 2−5A synthetase induced by human interferon」Biological Interferon Systems,Proceedings of ISIR TNO Meeting on Interferon Systems 65−72(Cantell編、Nijhoff 1987);Herschman,「The EGF Receptor」Control of Animal Cell Proliferation,Vol.1 169−199(Boyntonら編.,Academic Press1985);Coumailleauら、J.Biol.Chem.270:29270,1995;Fukunagaら、J.Biol.Chem.270:25291,1995;Yamaguchiら、Biochem.Pharmacol.50:1295,1995;及びMeiselら、Plant Molec.Biol.30:1,1996に記載されている。
【0165】
本発明は又、配列番号2のアミノ酸配列と相対比較した場合にアミノ酸の変化(例えば配列番号2の残基25〜266と相対比較した場合の変化)を有するポリペプチドをコードするzB7H6ポリヌクレオチドの機能的フラグメントを包含する。変異体zB7H6遺伝子は上記考察した通り、開示したヌクレオチド及びアミノ酸配列との同一性のレベルを測定することにより構造に基づいて識別できる。構造に基づいて変異体遺伝子を識別する代替の手順は、潜在的な変異体zB7H6遺伝子をコードする核酸分子が配列番号1のようなヌクレオチド配列番号を含む核酸分子にハイブリダイズできるかどうかを調べることである。
【0166】
本明細書において提供されるポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド分子はベクター中に分子を入れることにより増殖させる。プラスミドを包含するウィルス及び非ウィルスのベクターを使用する。プラスミドの選択は増殖が望まれる細胞の型及び増殖の目的に応じたものとなる。特定のベクター所望のDNA配列を大量に増幅して作成するために有用である。他のベクターは培養物中の細胞における発現に適している。更に別のベクターは完全な動物又はヒトにおける細胞に転移させて発現させることに適している。適切なベクターの選択は当該分野で良く知られている。多くのそのようなベクターが市販されている。部分的又は完全長のポリヌクレオチドは典型的にはベクター中の切断された制限酵素部位へのDNAリガーゼ結合によりベクター内に挿入される。或いは、所望のヌクレオチド配列をインビボで相同組み換えにより挿入できる。典型的にはこれは所望のヌクレオチド配列の側面上でベクターに相同性の領域を結合させることにより達成される。相同性の領域はオリゴヌクレオチドのライゲーションによるか、又は相同性の領域と所望のヌクレオチド配列の一部分の両方を含むプライマーを用いたポリメラーゼ連鎖反応により付加させる。
【0167】
発現のためには、発現カセット又は発現系を使用してよい。zB7H6遺伝子を発現するためには、発現ベクター中の転写的発現を制御する調節配列に作動可能に連結したポリペプチドをコードする核酸分子を宿主細胞内に導入する。プロモーター及びエンハンサーのような転写調節配列に加えて、発現ベクターは、翻訳調節配列及び発現ベクターを担持する細胞の選択に適しているマーカー遺伝子を含むことができる。本発明のポリヌクレオチドによりコードされる遺伝子産物は何れかの好都合な発現系、例えば細菌、コウボ、昆虫、両生類及び哺乳類の系において発現させる。適当なベクター及び宿主細胞は例えば米国特許5,654,173に記載されている。発現ベクターにおいて、zB7H6ポリペプチドコードポリヌクレオチドは所望の発現特性を得るために適切であるように調節配列に連結される。これらはプロモーター(センス鎖の5’末端におけるか、又はアンチセンス鎖の3’末端におけるかの何れかで結合)、エンハンサー、ターミネーター、オペレーター、リプレッサー、及びインデューサーを包含できる。プロモーターは調節されるか、又は構成的であることができる。一部の状況においては、組織特異的、又は発生段階特異的なプロモーターのような、条件により活性となるプロモーターを使用することが望ましい場合がある。これらはベクターへの連結に関して上記した手法を用いて所望のヌクレオチド配列に連結する。何れかの当該分野で知られた手法を使用できる。従って、発現ベクターは一般的に、コーディング領域が転写開始領域の転写制御下に作動可能に連結している誘導性又は構成性であってよい転写及び翻訳の開始領域、及び、転写及び翻訳の終止領域を与えることになる。これらの制御領域はzB7H6ポリペプチドをコードするDNAにネイティブであってよく、或いは、外因性の原料から誘導してよい。
【0168】
発現カセットは種々のベクター、例えばプラスミド、BAC、YAC、ラムダ、P1、M13等のバクテリオファージ、植物又は動物のウィルスベクター(例えばレトロウィルス系のベクター、アデノウィルスベクター)等に導入してよく、その場合ベクターは通常は発現ベクターを含む細胞の選択を可能にする能力により特徴付けられる。ベクターは特にプラスミド又はウィルスとしての染色体外の維持、又は宿主の染色体内への組み込みを可能にする場合がある。染色体外の維持が望まれる場合は、起点となる配列がプラスミドの複製を可能にし、それは低又は高コピー数であることができる。広範な種類のマーカーが選択のために使用可能であり、特に毒素に対抗して、より特定すれば抗生物質に対抗して保護するものが挙げられる。選択される特定のマーカーは宿主の性質に従って選択され、その場合、一部の例においては、栄養素要求株の宿主では補充を行ってよい。DNAコンストラクトの導入は何れかの好都合な方法、例えば結合体化、細菌形質転換、カルシウム沈殿DNA、エレクトロポレーション、融合、トランスフェクション、ウィルスベクターによる感染、バイオリスティック等を使用してよい。
【0169】
zB7H6ポリペプチドは発現の目的に応じて従来の方法に従って原核生物又は真核生物中で発現してよい。蛋白質の大規模生産のためには、単細胞生物、例えばE・コリ、B・サブチルス、S・セレビシアエ、昆虫細胞をバキュロウィルスと組み合わせたもの、又はより高等な生物、例えば脊椎動物、特に哺乳類の細胞(例えばCOS7細胞、HEK293、CHO、アフリカツメガエル卵母細胞)を発現宿主細胞として使用してよい。従って、目的の特定の発現系は細菌、コウボ、昆虫細胞及び哺乳類細胞から誘導した発現系を包含する。細菌における代表的な発現系は、例えばChangら、Nature275:615,1978;Goeddelら、Nature(1979)281:544,1979;Goeddelら、Nucleic Acids Res.8:4057,1980;EP0036,776;U.S.Pat.No.4,551,433;DeBoerら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA80:21−25,1983;及びSiebenlistら、Cell20:269,1980に記載されているものを包含する。コウボにおける代表的な発現系は例えばHinnenら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA75:1929,1978;Itoら、J.Bacteriol.153:163,1983;Kurtzら、Mol.Cell.Biol.6:142,1986;Kunzeら、J.Basic Microbiol.25:141,1985;Gleesonら、J.Gen.Microbiol.132:3459,1986;Roggenkampら、Mol.Gen.Genet.202:302,1986;Dasら、J.Bacteriol.158:1165,1984;De Louvencourtら、J.Bacteriol.154:737,1983;Van den Bergら、Bio/Technology 8:135,1990;Kunzeら、J.Basic Microbiol.25:141,1985;Creggら、Mol.Cell.Biol.5:3376,1985;米国特許4,837,148 and 4,929,555;Beach and Nurse,Nature 300:706,1981;Davidowら、Curr.Genet.10:380,1985;Gaillardinら、Curr.Genet.10:49,1985;Ballanceら、Biochem.Biophys.Res.Commun.112:284−289,1983;Tilburnら、Gene26:205−221,1983;Yeltonら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA81:1470−1474,1984;Kelly and Hynes,EMBO J.4:475479,1985;EP0244,234;及びWO91/00357に記載されているものを包含する。昆虫細胞における代表的な発現系は例えば米国特許4,745,051;Friesenら、「The Regulation of Baculovirus Gene Expression」The Molecular Biology Of Baculoviruses(W.Doerfler編、1986);EP0127,839;EP0155,476;及びVlakら、J.Gen.Virol.69:765−776,1988;Millerら、Ann.Rev.Microbiol.42:177,1988;Carbonellら、Gene73:409,1988;Maedaら、Nature315:592−594,1985;Lebacq−Verheydenら、Mol.Cell.Biol.8:3129,1988;Smithら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA82:8844,1985;Miyajimaら、Gene58:273,1987;及びMartinら、DNA7:99,1988に記載されているものを包含する。多くのバキュロウィルス株及び変異体及び宿主に由来する相当する許容性の昆虫宿主細胞がLuckowら、Bio/Technology6:47−55,1988;Millerら、Generic Engineering 8:277−279,1986;及びMaedaら、Nature15:592−594,1985に記載されている。哺乳類細胞における代表的な発現系は例えばDijkemaら、EMBO J.4:761,1985,Gormanら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA79:6777,1982;Boshartら、Cell41:521,1985;及びU.S.Pat.No.4,399,216に記載されている。哺乳類発現の他の特徴は例えば、Ham and Wallace,Meth.Enz.58:44,1979;Barnes and Sato,Anal.Biochem.102:255,1980;米国特許4,767,704、4,657,866、4,927,762、4,560,655、WO90/103430、WO87/00195及び米国特許RE30,985に記載されている通り容易にすることができる。
【0170】
要件となる核酸を用いることにより遺伝子的に修飾された非ヒト動物又は細胞系統における部位特異的遺伝子修飾を発生させることができる。「トランスジェニック」という用語はzB7H6ポリペプチドをコードするDNAの追加を有するか、又は宿主細胞において安定に伝達されるzB7H6ポリペプチドをコードする外因性DNAを有する遺伝子的に修飾された動物を包含することを意図している。トランスジェニック動物は相同組み換えを介して作成してよい。或いは核酸コンストラクトはゲノム内にランダムに組み込まれる。安定な組み込みのためのベクターは、プラスミド、レトロウィルス及び他の動物ウィルス、YAC等を包含する。有利なものはトランスジェニック哺乳類、特にげっ歯類(例えばラット、マウス)である。
【0171】
相同組み換えのためのDNAコンストラクトは可溶性zB7H6ポリペプチドをコードするDNAの少なくとも一部分を含むことになり、そして標的遺伝子座に相同な領域を包含することになる。好都合には、正及び負の選択のためのマーカーが包含される。相同組み換えを介してターゲティングされた遺伝子の修飾を有する細胞を形成するための方法は当該分野で知られている。哺乳類細胞をトランスフェクトするための種々の手法は例えばKnownらMethods in Enzymology 185:527−537,1990を参照できる。
【0172】
胚性幹(ES)細胞に関しては、ES細胞系統を使用するか、又はES細胞を宿主(例えばマウス、ラット、モルモット)から新たに得てよい。そのような細胞は、適切な線維芽細胞フィーダー層上で成長させるか、又は白血病抑制因子(LIF)の存在下で成長させる。ES細胞が形質転換されている場合、それらはトランスジェニック動物を作成するために使用してよい。形質転換の後、細胞を適切な培地中のフィーダー層上にプレーティングする。コンストラクトを含有する細胞は選択培地を使用することにより検出してよい。コロニーが成長するための十分な時間の後、それらを釣菌し、そして相同組み換えの発生に関して分析する。次に相同組み換えを呈しているコロニーを胚の操作及び胚盤胞の注入のために使用してよい。胚盤胞は4〜6週齢の過剰排卵雌から得る。ES細胞をトリプシン処理し、そして修飾された細胞を胚盤胞の割腔内に注入する。注入の後、胚盤胞を擬似妊娠雌の各子宮角に戻す。次に雌を臨月まで維持し、得られた新生仔は、コンストラクトを有する突然変異体細胞を有するものを得るべくスクリーニングされる。胚盤胞及びES細胞の異なる表現型を与えることにより、キメラ子孫を容易に検出できる。キメラ動物はzB7H6ポリペプチドをコードするDNAの存在するものを得るべくスクリーニングされ、そして修飾を有する雄及び雌を交配することによりホモ接合の子孫を得る。トランスジェニック動物は何れかの非ヒト哺乳類、例えば実験動物又は家畜動物であってよい。トランスジェニック動物はインビボの環境中における候補薬剤の作用を測定するために使用してよい。
【0173】
本発明は更に、組み換えベクター及び本明細書に記載したベクターを含む宿主細胞を包含する。一般的に、本発明の組み換えベクター及び宿主細胞は単離されるが;本発明のポリヌクレオチドを含む宿主細胞は遺伝子的に修飾された動物の部分であってよい。
【0174】
上記宿主細胞の何れか、又は他の適切な宿主細胞又は生物を使用することにより本発明のポリヌクレオチド又は核酸を複製及び/又は発現させる場合には、得られる複製された核酸、RNA、発現された蛋白質又はポリペプチドは、宿主細胞又は生物の産物として本発明の範囲内に含まれる。産物は当該分野で知られた何れかの適切な手段により回収される。zB7H6ポリペプチドは単量体又は多量体(例えばホモ2量体、ヘテロ2量体、4量体)として生産できる。
【0175】
従って、更に別の態様において、本発明は、本明細書に記載した組み換え宿主細胞を用いて、可溶性zB7H6ポリペプチドを、その単量体及び多量体(例えばホモ2量体、ヘテロ2量体、4量体)の形態も含めて、製造する方法を提供する。そのような方法は一般的に、蛋白質が発現される条件下で可溶性zB7H6蛋白質をコードする発現ベクターで形質転換又はトランスフェクトされた宿主細胞を培養すること、及び、宿主細胞から可溶性zB7H6蛋白質を回収することを包含する。原核生物及び真核生物の宿主細胞に関する組み換え蛋白質の回収のための手法は一般的に当該分野で良く知られている。
【0176】
例えば哺乳類細胞系により生産される外来性蛋白質の発現及び回収のための一般的方法は、例えばEtcheverry,「Expression of Engineered Proteins in Mammalian Cell Culture」、Protein Engineering:Principles and Practice 163(Clelandら編、Wiley−Liss,Inc.1996)に記載されている。細菌系により生産された蛋白質を回収するための標準的な手法は例えばGrisshammerら、「Purification of over−produced proteins from E.coli cells」、DNA Cloning 2:Expression Systems、第2版59−92(Gloverら編、Oxford University Press1995)に記載されている。バキュロウィルス系から組み換え蛋白質を単離するための確立された方法は、例えばRichardson(編)、Baculovirus Expression Protocols(The Humana Press,Inc.1995)に記載されている。
【0177】
E・コリのような細菌中で可溶性zB7H6ポリペプチドを発現する場合、ポリペプチドは細胞質中、典型的には不溶性の顆粒として保持される場合があり、或いは、細菌の分泌配列によりペリプラズム空間に指向される場合がある。前者の場合においては、細胞は溶解され、そして顆粒は回収され、そして例えばグアニジンイソチオシアネート又は尿素を用いて変性される。次に変性されたポリペプチドを、例えば尿素の溶液及び還元型及び酸化型のグルタチオンの組み合わせに対する透析、次いで緩衝食塩水に対する透析による等して、変性物を希釈することにより、再折り畳み及び2量体化に付すことができる。後者の場合においては、ポリペプチドは細胞を崩壊(例えば超音波処理又は浸透圧ショックによる)させてペリプラズム空間の内容物を放出させ、そして蛋白質を回収することにより、可溶性の機能的な形態においてペリプラズム空間から回収することができ、これにより変性及び再折り畳みの必要性をなくすことができる。
【0178】
或いは、本発明のzB7H6ポリペプチドは排他的固相合成、部分的固相法、フラグメント縮合又は古典的な溶液合成により合成できる。これらの合成方法は当該分野で良く知られている(例えばMerrifield,J.Am.Chem.Soc.85:2149,1963;Stewartら、「Solid Phase Peptide Synthesis」(第2版、Pierce Chemical Co.1984);Bayer and Rapp,Chem.Pept.Prot.3:3,1986;Athertonら、Solid Phase Peptide Synthesis:A Practical Approach(IRL Press1989);Fields and Colowick,「Solid−Phase Peptide Synthesis,」 Methods in Enzymology Volume 289(Academic Press1997);及びLloyd−Williamsら、Chemical Approaches to the Synthesis of Peptides and Proteins(CRC Press,Inc.1997)を参照)。「ネイティブ化学ライゲーション」及び「発現蛋白質ライゲーション」のような全体的な化学合成の方策における変形例も又、標準的である(例えばDawsonら、Science 266:776,1994;Hackengら、Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 94:7845,1997;Dawson,Methods Enzymol.287:34,1997;Muirら,Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 95:6705,1998;及びSeverinov and Muir,J.Biol.Chem.273:16205,1998を参照)。
【0179】
前述において考察した通り、可溶性zB7H6ポリペプチドは単量体として、又は種々の多量体型(例えばホモ2量体、ヘテロ2量体、又は4量体)の何れかにおいて、生産できる。本明細書に記載した可溶性zB7H6ポリペプチドであるポリペプチド少なくとも1つ及び可溶性非zB7H6ポリペプチドである他のポリペプチド少なくとも1つを含む組み換え生産されたヘテロ多量体の場合、宿主細胞は異なるポリペプチド鎖をコードする異なる発現ベクターで形質転換又はトランスフェクトされる。一部の実施形態においては、同じ宿主細胞がヘテロ2量体の異なる鎖をコードする異なる発現ベクターでトランスフェクト又は形質転換され、そして次にヘテロ多量体蛋白質が培地から単離され;或いは、異なるポリペプチド鎖をコードする各ベクターを異なる宿主細胞集団内で別個に生産し、その後、組み換え蛋白質の単離に引き続いて使用する琴により多量体複合体を形成することができる。例えば、異なるポリペプチド鎖成分を、所望のヘテロ多量体分子が生じるような意図的な比で組み合わせることができる。ヘテロ多量体の異なるポリペプチド鎖を種々のタグ配列(例えばHisタグ、FLAGタグ、及びGlu−Gluタグ)で示差的に標識することにより、生じる分子の組成分析又は精製を可能にすることができる。特定の実施形態においては、ヘテロ多量体は、ヘテロ2量体(例えば1つのポリペプチド鎖が例えば免疫グロブリン重鎖領域を含む可溶性zB7H6融合蛋白質である2量体)又はへテロ4量体(例えばポリペプチド鎖の少なくとも1つが例えばVASPドメインを含む可溶性zB7H6融合蛋白質である4量体)である。
【0180】
本発明のポリペプチドは典型的には、夾雑巨大分子、特に他の蛋白質及び核酸に関して少なくとも約80%純度、より典型的には少なくとも約90%純度まで、そして好ましくは少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、又は少なくとも約99純度%まで精製されており、そして感染性及び発熱性の物質を含有しない。本発明のポリペプチドは又、薬学的に純粋な状態まで精製されてよく、これは99.9%純度より高値である。特定の調製品において、精製されたポリペプチドは他のポリペプチド、特に動物起源の他のポリペプチドを実質的に含有しない。
【0181】
分画及び/又は従来の精製方法を用いることにより、天然原料(例えばヒト組織原料)から精製されたzB7H6ポリペプチド調製品、合成zB7H6ポリペプチド、及び組み換え宿主細胞から精製された組み換えzB7H6ポリペプチドを得ることができる。一般的に、硫酸アンモニウム沈殿及び酸又はカオトロピック剤抽出を試料の分画のために使用してよい。例示される精製工程はヒドロキシアパタイト、サイズエクスクルージョン、FPLC及び逆相高速液体クロマトグラフィーを包含してよい。適当なクロマトグラフィー媒体は誘導体化されたデキストラン、アガロース、セルロース、ポリアクリルアミド、特殊シリカ等を包含する。PEI、DEAE、QAE及びQ誘導体が適当である。例示されるクロマトグラフィー媒体はフェニル、ブチル、又はオクチル基で誘導体化された媒体、例えばフェニル−セファロースFF(Pharmacia)、トヨパールブチル650(Toso Haas,Montgomeryville,PA)、オクチル−セファロース(Pharmacia)等;又はポリアクリル樹脂、例えばAmberchromCG71(Toso Haas)等を包含する。適当な固体支持体は、自身が使用されることになる条件の下で不溶性であるガラスビーズ、シリカ系樹脂、セルロース樹脂、アガロースビーズ、架橋アガロースビーズ、ポリスチレンビーズ、架橋アクリルアミド樹脂等を包含する。これらの支持体は、アミノ基、カルボキシル基、スルヒドリル基、ヒドロキシル基、及び/又は炭水化物部分による蛋白質の結合を可能にする、反応性の基で修飾してよい。
【0182】
カップリング化学過程の例は臭化シアン活性化、N−ヒドロキシスクシンイミド活性化、エポキシド活性化、スルヒドリル活性化、ヒドラジド活性化、及びカルボジイミドカップリング化学過程に関わるカルボキシル及びアミノ誘導体を包含する。これら及び他の固体媒体は当該分野で良く知られ、使用されており、そして商業的供給元から入手できる。ポリペプチドの単離及び精製のための特定の方法の選択は定型的な設定のものであり、そして部分的には選択された支持体の特性により決定される。例えばAffinity Chromatography:Principles & Methods(Pharmacia LKB Biotechnology1988);及びDoonan,Protein Purification Protocols(The Humana Press1996)を参照できる。
【0183】
zB7H6ポリペプチドの単離及び精製における追加的な変形例は当業者が考案することができる。例えば後述するとおり得られる抗zB7H6抗体を用いることにより、免疫アフィニティー精製による大量の蛋白質の単離が可能である。
【0184】
本発明のポリペプチドはまた特定の特性を利用することにより単離できる。例えば、固定化金属イオン吸着(IMAC)クロマトグラフィーを用いることにより、ポリヒスチジンタグを含むものを包含するヒスチジンリッチの蛋白質を精製できる。慨すれば、ゲルを先ず2価の金属イオンで荷電させることによりキレートを形成する(Sulkowski,Trends in Biochem.3:1,1985)。ヒスチジンリッチの蛋白質は使用する金属イオンに応じて異なる親和性でこのマトリックスに吸着され、そして競合的溶離、pH低下、又は強力なキレート形成剤の使用により溶離されることになる。他の精製方法はレクチンアフィニティークロマトグラフィー及びイオン交換クロマトグラフィーによるグリコシル化蛋白質の精製を包含する(例えばM.Deutscher(編)、Meth.Enzymol.182:529,1990参照)。本発明の追加的実施形態の範囲内において、目的のポリペプチドとアフィニティータグ(例えばマルトース結合蛋白質、免疫グロブリンドメイン)の融合物を構築することにより精製を容易にしてよい。更に又、zB7H6細胞外ドメインのカウンター受容体結合特性をzB7H6ポリペプチドの精製のために利用することができ;例えば標準的なクロマトグラフィー法を用いてNKp30をカラムに結合させ、そしてzB7H6ポリペプチドを結合させ、その後溶離させるアフィニティークロマトグラフィーを用いることにより行える。
【0185】
zB7H6ポリペプチド又はそのフラグメントは又上記した通り化学合成を介して製造してよい。zB7H6ポリペプチドは単量体又は多量体;グリコシル化又は非グリコシル化;PEG化又は非PEG化であってよく;そして初期メチオニンアミノ酸残基を包含してもしなくてもよい。
【0186】
生成後、zB7H6ポリペプチドの機能は定型的な試験を用いて容易に試験できる。NKp30へのzB7H6ポリペプチドの結合は機能的活性の1つの尺度である。そのような結合活性は例えばNKp30の結合ドメインへの結合に関する競合により測定してよい(即ち競合結合試験)。例えば、競合結合試験の1つの構成では、標識された可溶性のNKp30受容体(例えばNKp30の細胞外ドメイン及びビオチンに結合体化されたFcフラグメントを含む融合蛋白質)及びzB7H6のネイティブの形態(例えば配列番号2のアミノ酸配列を有するポリペプチド)を発現する未損傷の細胞を使用する。そのような試験は実施例7に示す。更に又、NKp30発現細胞への可溶性zB7H6ポリペプチドの結合も計測してよい。或いは、可溶性zB7H6又はzB7H6のネイティブの形態を発現する未損傷の細胞を使用する代わりに、固相に結合した精製されたzB7H6を代替とすることができる。競合結合試験は標準的な方法を用いて実施できる。定性的又は半定量的な結果が競合オートラジオグラフプレート結合試験、又は蛍光活性化細胞ソーティングにより得ることができ、或いは、Scatchardプロットを利用して定性的結果を発生させてよい。
【0187】
zB7H6ポリペプチドの機能は又、例えばNK細胞の細胞溶解試験を包含する、NKp30機能に関連する生物学的活性を例えば計測する、生物試験を用いて計測してよい。例えば、本明細書に記載する通り、特定の細胞系統、例えばP815はNKp30を発現するNK−92細胞に対する良好な細胞溶解標的としては作用しない(実施例7参照)。しかしながら、zB7H6発現ベクターを用いたトランスフェクションによる等したこれらの細胞におけるhzB7H6(配列番号2)の発現は、NK−92細胞による攻撃に対して細胞を無防備にする(前述参照)。従って、zB7H6ポリペプチド、細胞外ドメイン内に1つ以上のアミノ酸の置換、付加、又は欠失を有するzB7H6ポリペプチドは、P815細胞においてそのようなポリペプチドを発現させること、そして、よく知られた細胞溶解試験においてNK−92細胞を用いてそのような細胞がNK細胞攻撃に対して無防備であるかどうかを調べることにより、機能的活性に関して容易にスクリーニングできる。zB7H6ポリペプチドの機能を評価するために使用できる例示されるNK−92細胞試験は後述する実施例7に記載する。
【0188】
zB7H6ポリペプチドの機能を評価するための他の試験は、例えば標的細胞(例えばP815)に対抗するNK細胞機能の活性化に関して試験するためのNKp30発現NK細胞への可溶性zB7H6ポリペプチドの添加である。NK細胞表面受容体に対抗する抗体の評価のためのNK細胞試験は例えばPendeら(J.Exp.Med.190:1505−1516,1999)に記載されており、そしてそのような試験は本明細書に記載する可溶性zB7H6ポリペプチドの活性を評価するために容易に適合させることができる。
【0189】
IV.zB7H6蛋白質に対する抗体
別の態様において、本発明はzB7H6に特異的に結合する抗体を提供する。好ましい実施形態においては、本発明の抗zB7H6抗体はzB7H6の細胞外ドメイン(配列番号2の残基25〜266に示すアミノ酸配列を有するポリペプチドセグメント)に特異的に結合する単離された抗体である。一部の実施形態においては、本発明の抗zB7H6抗体はヒトNKp30とのzB7H6の相互作用を抑制することができ;そのような抗体は例えばzB7H6及び/又はNKp30媒介の細胞内シグナリング及び関連するエフェクター機能(例えばNKp30媒介細胞溶解活性)を包含する、NKp30とのzB7H6の相互作用に関連する細胞性又は他の生理学的な事象を抑制する場合に有用である。
【0190】
zB7H6に対する抗体は、例えばzB7H6発現ベクターの産物又は抗原としての天然の原料から単離されたzB7H6を用いて得ることができる。特に有用な抗zB7H6抗体はzB7H6に「特異的に結合する」。抗体は、その抗体が以下の2つの特性、即ち(1)抗体は結合活性の閾値レベルでzB7H6に結合する、そして(2)抗体はzB7H6に関連するポリペプチドと有意に交差反応しない、の少なくとも1つを呈すれば、特異的に結合するとみなされる。
【0191】
第1の特性に関しては、抗体は、それらが10
6M
−1以上、好ましくは10
7M
−1以上、より好ましくは10
8M
−1以上、そして最も好ましくは10
9M
−1以上の結合親和性(Ka)でzB7H6ポリペプチド、ペプチド、又はエピトープに結合すれば、特異的に結合している。抗体の結合親和性は例えばScatchard分析(Scatchard,Ann.NY Acad.Sci.51:660,1949)により当業者の知る通り容易に測定できる。第2の特性に関しては、抗体は、例えばそれらは標準的なウエスタンブロット分析を用いた場合にzB7H6を検出するが、現在知られているポリペプチドを検出しない場合に、関連するポリペプチド分子と有意に交差反応しない。既知の関連ポリペプチドの例は既知のB7ファミリーメンバーを包含する。
【0192】
抗zB7H6抗体は抗原性zB7H6エピトープ担持のペプチド及びポリペプチドを用いて生産できる。抗原性エピトープ担持のペプチド及びポリペプチドは典型的には配列番号2のアミノ酸配列内に含有される少なくとも9つ、又は15〜約30アミノ酸の配列を含有する。しかしながら、30〜50アミノ酸、又はzB7H6ポリペプチドの全てのアミノ酸配列に至るまでの何れかの長さを含む、本発明のアミノ酸配列のより大きい部分を含むペプチド又はポリペプチドも又、zB7H6に結合する抗体を誘導するために有用である。エピトープ担持ペプチドのアミノ酸配列は水性溶媒中でかなりの溶解度を与えるように選択されるのが望ましい(即ち配列は比較的親水性の残基を包含するが、疎水性の残基は典型的には回避される)。更に又、プロリン残基を含有するアミノ酸配列もまた抗体生産のために望ましい場合がある。
【0193】
zB7H6における潜在的な抗原性の部位はLASERGENE(DNASTAR;Madison,WI)のPROTEANプログラム(バージョン3.14)により実施される通り、Jameson−Wolf法(Jameson and Wolf(CABIOS 4:181,1988))を用いて識別できる。デフォルトパラメーターをこの分析において使用してよい。
【0194】
Jameson−Wolf法は蛋白質構造予測のために6つの主要なサブルーチンを組み合わせることにより潜在的な抗原性決定基を予測している。例えばHopp−Woods法(Hoppら、Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 78:3824,1981参照)を先ず使用することにより最大の局所的親水性の区域を示すアミノ酸配列を識別してよい(パラメーター:7残基平均)。第2の工程においてはEminiの方法(Eminiら、J.Virology 55:836,1985参照)を使用することにより表面の確立を計算してよい(パラメーター:表面決定閾値(0.6)=1)。第3に、Karplus−Schultz法(Karplus and Schultz(Naturwissenschaften72:212,1985)を用いることにより骨格鎖の可撓性を予測してよい(パラメーター:可撓性閾値(0.2)=1)。分析の第4及び5の工程においては、Chou−Fasman(Chou,「Prediction of Protein Structural Classes from Amino Acid Composition」、Prediction of Protein Structure and the Principles of Protein Conformation 549−586(Fasman編、Plenum Press1990)参照)及びGarnier−Robson(Garnierら、J.Mol.Biol.120:97,1978参照)の方法を用いて二次構造の予測をデータに適用してよい(Chou−Fasmanパラメーター:コンホーメーション表=64蛋白質;α領域の閾値=103;β領域の閾値=105;Garnier−Robsonパラメーター:α及びβの決定定数=0)。第6のサブルーチンにおいては、可撓性のパラメーター及び水治療法/溶媒接触性のファクターを組み合わせることにより「抗原指数」と標記される表面輪郭値を決定してよい。最後に、ピークブロード化関数を抗原指数に適用してよく、これは、内部の領域と相対比較した場合の表面領域の運動性から誘導される追加的自由エネルギーを考慮するために該当するピーク値の例えば20、40、60、又は80%を付加することにより主要表面ピークをブロード化する。しかしながらこの計算は典型的にはヘリックス領域にある何れかの主要ピークに対しては、ヘリックス領域の可撓性が低値である傾向のため、適用されない。
【0195】
組み換えzB7H6蛋白質に対する、又は天然原料から単離したzB7H6に対するポリクローナル抗体は当該分野で良く知られている方法を用いて製造できる(例えばGreenら、「Production of Polyclonal Antisera」、Immunochemical Protocols 1−5(Manson編、Humana Press1992);Williamsら、「Expression of foreign proteins in E.coli using plasmid vectors and purification of specific polyclonal antibodies」、DNA Cloning 2:Expression Systems、第2版15(Gloverら編、Oxford University Press1995を参照)。zB7H6ポリペプチドの免疫原性はミョウバン(水酸化アルミニウム)又はフロイントの完全又は不完全アジュバントのようなアジュバントの使用を介して増大できる。免疫化のために有用なポリペプチドは又、融合ポリペプチド、例えば免疫グロブリンポリペプチドとの、又はマルトース結合蛋白質との、zB7H6又はその一部分の融合物を包含する。ポリペプチド免疫原は完全長の分子又はその一部分であってよい。ポリペプチドの部分が免疫化に関して「ハプテン様」である場合、そのような部分は、巨大分子担体、例えばキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)、ウシ血清アルブミン(BSA)、又は破傷風類毒素に好都合に結合又は連結させてよい。
【0196】
ポリクローナル抗体は典型的にはウマ、ウシ、イヌ、ニワトリ、ラット、マウス、ウサギ、モルモット、ヤギ、又はヒツジのような動物中で育成されるが、本発明の抗zB7H6抗体はヒト以下の霊長類の抗体から誘導してもよい。ヒヒにおいて診断上及び治療上有用な抗体を育成するための一般的な手法は、例えばGoldenbergらの国際特許出願WO91/11465、及びLosmanらのInt.J.Cancer46:310,1990に記載されている。
【0197】
或いは、モノクローナル抗zB7H6抗体を作成できる。例えば特定の抗原に対するげっ歯類のモノクローナル抗体は当該分野で知られた方法により得てよい(例えばKohlerら、Nature256:495,1975;Coliganら(編)、Current Protocols in Immunology,Vol.1 2.5.1−2.6.7(John Wiley&Sons1991)[「Coligan」];Picksleyら、「Production of monoclonal antibodies against proteins expressed in E.coli」、DNA Cloning 2:Expression Systems、第2版93(Gloverら編、Oxford University Press1995を参照)。特定の変形例においては、モノクローナル抗体は、zB7H6遺伝子産物(例えば配列番号2の残基25〜266を含むかこれよりなるポリペプチド)を含む組成物をマウスに注射すること、血清試料を取り出すことにより抗体生産の存在を確認すること、脾臓を摘出してBリンパ球を得ること、Bリンパ球を骨髄腫細胞と融合させてハイブリドーマを作成すること、ハイブリドーマをクローニングすること、抗原に対する抗体を生産する陽性のクローンを選択すること、抗原に対する抗体を生産するクローンを培養すること、及びハイブリドーマ培養物から抗体を単離することにより得られる。
【0198】
抗zB7H6抗体はヒトモノクローナル抗体、又はそれより誘導された抗体であってもよい。ヒトモノクローナル抗体は抗原攻撃に応答して特定のヒト抗体を生産するように操作されているトランスジェニックマウスから得られる。この手法において、ヒト重鎖及び軽鎖の遺伝子座のエレメントを、内因性の重鎖及び軽鎖の遺伝子座のターゲティングされた途絶を含有する胚性幹細胞系統から誘導されたマウスの系統内に導入する。トランスジェニックマウスはヒト抗原に特異的なヒト抗体を合成することができ、そしてマウスはヒト抗体分泌ハイブリドーマを生産するために使用できる。トランスジェニックマウスからヒト抗体を得るための方法は例えばGreenら、NatureGenet.7:13,1994;Lonbergら、Nature368:856,1994;及びTaylorら、Int.Immun.6:579,1994に記載されている。
【0199】
モノクローナル抗体は種々の十分確立された手法によりハイブリドーマ培養物から単離及び精製することができる。そのような単離の手法はプロテインAセファロースを用いたアフィニティークロマトグラフィー、サイズエクスクルージョンクロマトグラフィー、及びイオン交換クロマトグラフィーを包含する(例えばColigan、2.7.1−2.7.12ページ、及び2.9.1−2.9.3ページ;Bainesら、「Purification of Immunoglobulin G(IgG」)、Methods in Molecular Biology(Vol.10)79−104(The Humana Press,Inc.1992)を参照)。
【0200】
一部の実施形態においては、抗B7H6抗体は未損傷(全)抗体の抗原結合ドメインを含む抗体フラグメントである。そのような抗体フラグメントは例えば抗体の蛋白質分解性の加水分解により得ることができる。抗フラグメントは従来の方法による全抗体のペプシン又はパパイン消化により得ることができる。説明すれば、抗体フラグメントは、ペプシンで抗体を酵素的に切断してF(ab’)
2と標記される5Sフラグメントを形成することにより生産できる。このフラグメントを更にチオール還元剤で切断すれば、3.5SFab’1価フラグメントが形成できる。場合により、切断反応は、ジスルフィド連結部の切断により生じるスルヒドリル基に対するブロッキング基を用いて実施できる。代替として、ペプシンを用いた酵素切断では2つの1価のFabフラグメント及びFcフラグメントが直接形成される。これらの方法は例えばGoldenbergへの米国特許4,331,647;Nisonoffら、Arch Biochem.Biophys.89:230,1960;Porter,Biochem.J.73:119,1959;Edelmanら、Methods in Enzymology(Vol.1)422(Academic Press1967);及びColigan、2.8.1−2.8.10ページ及び2.10.−2.10.4ページに記載されている。
【0201】
抗体を切断する他の方法、例えば重鎖を分離して1価の軽鎖−重鎖フラグメントを形成すること、フラグメントを更に切断すること、又は他の酵素的、化学的、又は遺伝子的な手法も又、未損傷の抗体により認識される抗原にフラグメントが結合する限りにおいて、使用してよい。
【0202】
例えばFvフラグメントはVHとVL鎖の会合物を含む。この会合物はInbarら、Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 69:2659,1972に記載される通り、非共有結合である。或いは、可変鎖は分子内ジスルフィド結合により連結されるか、又はグルタルアルデヒドのような化学的手段により架橋することができる(例えばSandhu,Crit.Rev.Biotech.12:437,1992参照)。
【0203】
Fvフラグメントはペプチドリンカーにより連結されたVH及びVL鎖を含んでよい。これらの単鎖抗原結合蛋白質(scFv)はオリゴヌクレオチドにより連結されているVH及びVLドメインをコードするDNA配列を含む構造遺伝子を構築することにより製造される。構造遺伝子を発現ベクター内に挿入し、これを次にE・コリのような宿主細胞内に導入する。組み換え宿主細胞は2つのVドメインを架橋しているリンカーペプチドを有する単一のポリペプチド鎖を合成する。scFvを製造するための方法は例えばWhitlowら、Methods:A Companion to Methods in Enzymology 2:97,1991に記載されている(更に又、Birdら、Science 242:423,1988;Ladnerらへの米国特許4,946,778;Packら、Bio/Technology 11:1271,1993及びSandhu,上出も参照)。例示すれば、scFvはインビトロでzB7H6ポリペプチドにリンパ球を曝露すること、そしてファージ又は同様のベクター内の抗体ディスプレイライブラリを選択する(例えば固定化又は標識されたzB7H6蛋白質又はペプチドの使用を介する)ことにより得ることができる。
【0204】
別の形態の抗体フラグメントは単一の相補性決定領域(CDR)に関してコードしているペプチドである。CDRペプチド(最小認識単位)は目的の抗体のCDRをコードする遺伝子を構築することにより得ることができる。そのような遺伝子は例えば抗体産生細胞のRNAに由来する可変領域を合成するためにポリメラーゼ連鎖反応を使用することにより製造される(例えばLarrickら、Methods:A Companion to Methods in Enzymology 2:106,1991;Courtenay−Luck,「Genetic Manipulation of Monoclonal Antibodies」、Monoclonal Antibodies:Production,Engineering and Clinical Application 166(Ritterら編、Cambridge University Press1995);及びWardら、「Genetic Manipulation and Expression of Antibodies」、Monoclonal Antibodies:Principles and Applications 137(Birchら編、Wiley−Liss,Inc.1995)を参照)。
【0205】
或いは抗zB7H6抗体は「ヒト化」モノクローナル抗体から誘導してよい。ヒト化モノクローナル抗体はヒト可変ドメイン内にマウス免疫グロブリンの重鎖及び軽鎖の可変鎖に由来するマウス相補性決定領域を転移させることにより製造される。ヒト抗体の典型的な残基を次にネズミ相応部分のフレームワーク領域において置換させる。ヒト化モノクローナル抗体から誘導した抗体成分の使用はネズミ定常領域の免疫原性に関連する潜在的な問題を排除する。ネズミ免疫グロブリン可変ドメインをクローニングするための一般的手法は例えばOrlandiら、Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 86:3833,1989に記載されている。ヒト化モノクローナル抗体を製造するための手法は、例えば、Jonesら、Nature321:522,1986;Carterら、Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 89:4285,1992;Sandhu,Crit.Rev.Biotech.12:437,1992;Singerら、J.Immun.150:2844,1993;Sudhir(編)、Antibody Engineering Protocols(Humana Press,Inc.1995);Kelley,「Engineering Therapeutic Antibodies」、Protein Engineering:Principles and Practice 399−434(Clelandら編、John Wiley & Sons,Inc.1996);及びQueenらへの米国特許5,693,762に記載されている。
【0206】
特定の変形例においては、抗zB7H6抗体はFc領域を包含し、これは免疫グロブリン(Ig)重鎖のC
H2及びC
H3ドメイン及び典型的にはIgヒンジ領域の一部分を含む。FcはIgGの高度に望ましい特性の2つ、即ちエフェクター機能のリクルートメント及び長い血清中半減期を担っている。抗体が結合している標的細胞を殺傷する能力は、FcのそれぞれFc受容体及び補体蛋白質C1qへの結合を介した、免疫エフェクター経路(ADCC)及び補体経路(CDC)の活性化から派生している。結合は下方のヒンジ領域及び上方のC
H2ドメインに主に位置している残基により媒介される(例えばWinesら、J.Immunol.164:5313,2000;Woof and Burton,NatureReviews 4:1,2004参照)。IgGにより示される長い血清中半減期はC
H2及びC
H3ドメイン中のアミノ酸と新生仔Fc受容体FcRnの間のpH依存性相互作用を介して媒介される(例えばGetie and Ward,Immunology Today 18:592,1997;Petkovaら、Int.Immunol.18:1759,2006を参照)。
【0207】
従って、Fc領域を含む抗zB7H6抗体の特定の実施形態において、Fc領域はADCC及び/又はCDC活性を有する。そのような抗体はzB7H6を発現している標的細胞、例えば癌細胞又はウィルス感染細胞の殺傷を媒介するために特に有用である。他の実施形態において、抗zB7H6抗体は1つ以上のエフェクター機能を欠いている(例えばADCC及び/又はCDC活性を欠いている)Fc領域を含む。エフェクター機能を欠いているかそれが実質的に低減されているFc領域は、例えば、Fc領域が細胞溶解性Fc受容体及び/又はC1q補体蛋白質に結合しないか、実質的に低減された結合のみを示すように、ネイティブのFc領域の配列内に1つ以上のアミノ酸置換を導入することにより得てよい。エフェクター機能を欠いているかそれが実質的に低減されている特に適したFc領域は、例えば
図13A〜13Cに示すFc4(配列番号31)、Fc5(配列番号32)、及びFc6(配列番号33)、及びFc7(配列番号34)を包含する。
【0208】
Fc領域を含む特定の実施形態においては、Fc領域は単鎖Fc(scFc)であり、これは、2つのFc単量体が2量体化して機能的な2量体のFcドメインを形成できるように可撓性リンカーにより連結された2つのFcドメイン単量体を含む。例えばscFcを含む抗zB7H6抗体の一部の変形例においては、抗体はscFc部分に融合した単鎖Fv(scFv)を含み、その場合scFv部分はzB7H6に特異的に結合する。単鎖Fcポリペプチド、例えばscFc及びもう1つの抗原結合ドメイン(例えばscFv)を含む融合ポリペプチドは、参照により全体が本明細書に組み込まれる2008年4月18日に出願された「Single Chain Fc,Methods of Making,and Methods of Treatment」と題された国際PCT特許出願US08/060852に更に記載されている。
【0209】
更に又、本発明の抗zB7H6抗体又は抗体フラグメントは当該分野で知られた、そして本明細書に記載した方法を用いてPEG化できる。
【0210】
抗イディオタイプ抗体はzB7H6細胞外ドメインに対して特異的な抗zB7H6抗体に対抗して(例えば配列番号2の残基25〜266に対抗して)育成してよい。一部の変形例においては、抗イディオタイプ抗体はヒトNKp30とのzB7H6の相互作用を抑制できる抗zB7H6抗体に対抗しており;そのよう抗イディオタイプ抗体はNKp30に結合するzB7H6の能力を模倣してよく、そして、好ましい実施形態においては、NKp30媒介NK細胞活性化をトリガー又は増強することができる。ポリクローナル抗イディオタイプ抗体は標準的な手法を用いて抗zB7H6抗体又は抗体フラグメントで動物を免疫化することにより製造できる(例えばGreenら、「Production of Polyclonal Antisera」、Methods In Molecular Biology:Immunochemical Protocols 1−12(Manson編、Humana Press1992)を参照。更に又、Coligan、2.4.1−2.4.7.ページも参照)。或いは、モノクローナル抗イディオタイプ抗体は上記した手法により免疫原として抗zB7H6抗体又は抗体フラグメントを用いて製造できる。別の代替例として、ヒト化抗イディオタイプ抗体又はヒト未満の霊長類の抗イディオタイプ抗体は上記した手法を用いて製造できる。抗イディオタイプ抗体を製造するための方法は例えばIrieへの米国特許5,208,146;Greeneらへの米国特許5,637,677及びVarthakavi and Minocha,J.Gen.Virol.77:1875,1996に記載されている。
【0211】
抗zB7H6抗体は抗zB7H6イムノ結合体を形成するために検出可能な標識と結合体できる。適当な検出可能な標識は例えば、放射性同位体、蛍光標識、化学発光標識、酵素標識、生物発光標識又はコロイド状金を包含する。そのような検出可能に標識されたイムノ結合体を作成して検出する方法は、当該分野で良く知られており、そして後述においてより詳細に説明する。
【0212】
検出可能な標識はオートラジオグラフィーで検出される放射性同位体であることができる。本発明の目的のために特に有用な同位体は
3H、
125I、
131I、
35S及び
14Cである。
【0213】
抗zB7H6免疫結合体は又蛍光化合物で標識できる。蛍光標識された抗体の存在は適切な波長の光にイムノ結合体を曝露すること、及び、生じた蛍光を検出することにより測定される。蛍光標識化合物は、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、フィコエリスリン、フィコシアニン、アロフィコシアニン、o−フタルアルデヒド及びフルオレスカミンを包含する。
【0214】
或いは、抗zB7H6免疫結合体は化学発光化合物に抗体成分をカップリングすることにより検出可能に標識できる。化学発光タグ付けされた免疫結合体の存在は化学反応の過程において生じるルミネセンスの存在を検出することにより測定される。化学発光標識化合物の例は、ルミノール、イソルミノール、芳香族アクリジニウムエステル、イミダゾール、アクリジニウム塩及びオキサレートエステルを包含する。
【0215】
同様に、生物発光化合物は本発明の抗zB7H6イムノ結合体を標識するために使用できる。生物発光は触媒蛋白質が化学発光反応の効率を増大させる、生物学的な系において観察されるケミルミネセンスの型である。生物発光蛋白質の存在はルミネセンスの存在を検出することにより測定される。標識に有用な生物発光化合物はルシフェリン、ルシフェラーゼ及びエクオリンを包含する。
【0216】
或いは、抗zB7H6免疫結合体は酵素に抗zB7H6抗体成分を連結させることにより検出可能に標識できる。抗zB7H6酵素結合体を適切な基質の存在下でインキュベートすると、酵素部分が基質と反応して、例えば分光分析、蛍光分析又は目視的手段により検出できる化学的部分を形成する。多特異的イムノ結合体を検出可能に標識するために使用できる酵素の例は、β−ガラクトシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、ペルオキシダーゼ及びアルカリホスファターゼを包含する。
【0217】
本発明に従って使用できる他の適当な標識は当業者の知る通りである。抗zB7H6抗体へのマーカー部分の結合は当該分野で知られた標準的な手法を用いて達成できる。これに関する典型的な方法論はKennedyら、Clin.Chim.Acta70:1,1976;Schursら、Clin.Chim.Acta 81:1,1977;Shihら、Int’l J.Cancer 46:1101,1990;Steinら、Cancer Res.50:1330,1990;及びColigan、上出、に記載されている。
【0218】
更に又、免疫化学的検出の簡便性及び汎用性はアビジン、ストレプトアビジン、及びビオチンに結合体化されている抗zB7H6抗体を使用することにより増強できる(例えばWilchekら(編)、「Avidin−Biotin Technology,」 Methods In Enzymology(Vol.184)(Academic Press 1990);Bayerら、「Immunochemical Applications of Avidin−Biotin Technology」、Methods In Molecular Biology(Vol.10)149−162(Manson編、The Humana Press,Inc.1992)を参照)。
【0219】
イムノアッセイを実施するための方法は十分確立されている(例えばCook and Self,「Monoclonal Antibodies in Diagnostic Immunoassays」、Monoclonal Antibodies:Production,Engineering,and Clinical Application 180−208(Ritter and Ladyman編、Cambridge University Press1995);Perry,「The Role of Monoclonal Antibodies in the Advancement of Immunoassay Technology」、Monoclonal Antibodies:Principles and Applications 107−120(Birch and Lennox編、Wiley−Liss,Inc.1995);Diamandis,Immunoassay(Academic Press,Inc.1996)を参照)。
【0220】
本発明は又、zB7H6遺伝子発現に関する免疫学的な診断試験を実施するためのキットを意図している。そのようなキットは抗zB7H6抗体を含む容器少なくとも1つを含む。キットは又、zB7H6抗体の存在を示すことができる1つ以上の試薬を含む第2の容器を含んでよい。そのような指示薬の例は、検出可能な標識、例えば放射性標識、蛍光標識、化学発光標識、酵素標識、生物発光標識、コロイド状金等を包含する。キットは又、zB7H6蛋白質を検出するためにzB7H6抗体が使用されるものを使用者に運搬するための手段を含んでよい。例えば書面による説明書は、同封された抗体又は抗体フラグメントがzB7H6を検出するために使用できることを記載してよい。書面は容器に直接貼り付けることができ、或いは、書面は添付文書の形態で提供することもできる。
【0221】
V.抗zB7H6抗体−薬剤結合体
特定の態様において、本発明は抗zB7H6抗体−薬剤結合体を提供する。「抗zB7H6抗体−薬剤結合体」とは本明細書においては治療剤に結合体化された抗zB7H6抗体(上記セクションIVに記載の通り)を指す。そのような抗zB7H6抗体−薬剤結合体は、典型的には単独で投与された場合に、ただし他の治療剤と組み合わせた場合であっても、対象、例えばzB7H6発現癌を有する対象に投与された場合にzB7H6発現細胞に対して臨床上有益な作用をもたらす。
【0222】
典型的な実施形態においては、抗zB7H6抗体は、結果として生じる抗体−薬剤結合体が、zB7H6発現細胞(例えばzB7H6発現癌細胞)に対し、細胞により取り込まれるか内在化された場合に、細胞毒性又は剤棒増殖抑制性の作用を発揮するように、細胞毒性剤に結合体化される。抗体への結合体化のために特に適している部分は、化学療法剤、プロドラッグ変換酵素、放射性同位体又は化合物、又は毒素である。例えば、抗zB7H6抗体は細胞毒性剤、例えば化学療法剤(後述参照)又は毒素(例えば細胞増殖抑制性又は細胞殺傷性の薬剤、例えばアブリン、リシンA、シュードモナス外毒素、又はジフテリア毒素)に結合体できる。抗zB7H6抗体への結合体化のために有用である追加的な剤の例は後述する通りである。
【0223】
他の実施形態において、抗zB7H6抗体はプロドラッグ変換酵素に結合体化される。プロドラッグ変換酵素は知られた方法を用いて抗体に組み換え融合されるか、又はそれに化学的に結合体化されることができる。例示されるプロドラッグ変換酵素はカルボキシペプチダーゼG2、β−グルクロニダーゼ、ペニシリン−V−アミダーゼ、ペニシリン−G−アミダーゼ、β−ラクタマーゼ、β−グルコシダーゼ、ニトロレダクターゼ及びカルボキシペプチダーゼAである。
【0224】
蛋白質に、そして特に抗体に治療剤を結合体化するための手法はよく知られている(例えばArnonら、「Monoclonal Antibodies For Immunotargeting Of Drugs In Cancer Therapy」、Monoclonal Antibodies And Cancer Therapy(Reisfeldら編、Alan R.Liss,Inc.,1985);Hellstromら、「Antibodies For Drug Delivery」、Controlled Drug Delivery(Robinsonら編、Marcel Deiker,Inc.第2版1987);Thorpe,「Antibody Carriers Of Cytotoxic Agents In Cancer Therapy:A Review」、Monoclonal Antibodies ’84:Biological And Clinical Applications(Pincheraら編、1985);「Analysis,Results,and Future Prospective of the Therapeutic Use of Radiolabeled Antibody In Cancer Therapy」、Monoclonal Antibodies For Cancer Detection And Therapy(Baldwinら編、Academic Press,1985);及びThorpeら、1982,Immunol.Rev.62:119−58.See also,例えばPCT publication WO 89/12624を参照)。
【0225】
特定の変形例においては、本明細書に記載した方法に従って、抗zB7H6抗体−薬剤結合体をzB7H6発現細胞内に内在化及び蓄積させ、その場合、抗体−薬剤結合体が治療作用(例えば細胞毒性又は細胞増殖抑制性の作用)を発揮する。蓄積及び蓄積の速度を測定するための方法は例えば「Drug Conjugates and Their Use for Treating Cancer,an Autoimmune Disease or an Infectious Disease」と題されたWO2004/010957に記載されている。
【0226】
典型的な実施形態においては、治療剤(例えば薬剤又はプロドラッグ変換酵素)に結合体化された抗zB7H6抗体を使用する場合、剤は、処置すべきzB7H6発現細胞(例えばzB7H6発現癌の細胞)により内在化された場合に優先的に活性となる。他の実施形態においては、抗zB7H6抗体−薬剤結合体は内在化されず、そして薬剤は細胞膜に結合することにより治療作用(例えばzB7H6発現細胞の枯渇又は成長抑制)を呈するために有効となる。
【0227】
zB7H6発現細胞(例えばzB7H6発現癌細胞)の外部で治療剤の活性を最小限とするためには、治療剤は典型的には、抗体が切断除去(例えば加水分解によるか、又は切断剤による)されない限り自身の活性を低減するような態様において結合体化される。そのような実施形態においては、治療剤は、切断可能なリンカーを用いて抗体に結合させ、このリンカーは、zB7H6発現細胞の細胞内環境における切断には感受性であるが、細胞外の環境に対してはそれほど感受性ではなく、その結果、結合体が、zB7H6発現細胞により(例えばエンドゾーム内に、又は例えばpH感受性又はプロテアーゼ感受性により、リソソーム内に、又は小胞内に)内在化された場合に抗体から切断されるように、(後述のセクションV(A)参照)。
【0228】
更に又、特定の実施形態においては、抗体−薬剤結合体は原形質膜と相対比較した場合に荷電している治療剤を含み、これにより、細胞により内在化された後は原形質膜を通過する剤の能力を更に最小限とすることができる。本明細書においては、「荷電した剤」とは(a)剤の1つの領域が原形質膜と相対比較して荷電しているように極性を有するか、又は(b)原形質膜と相対比較して実質的な電荷を有する剤を意味する。
【0229】
典型的には、抗zB7H6抗体−薬剤結合体は実質的に精製されている(例えばその作用を制限するか、望ましくない副作用をもたらす物質を実質的に伴わない)。特定の実施形態においては、抗zB7H6抗体−薬剤結合体は40%純粋、より典型的には約50%純粋、そして最も典型的には約60%純粋である。他の特定の実施形態においては抗−CD70ADC又はADC誘導体は少なくとも約60〜65%、65〜70%、70〜75%、75〜80%、80〜85%、85〜90%、90〜95%、又は95〜98%純粋である。別の特定の実施形態においては抗−CD70 ADC又はADC誘導体は約99%純粋である。
【0230】
A.リンカー
典型的にはzB7H6抗体−薬剤結合体は治療剤及び抗zB7H6抗体の間にリンカー領域を含む。上記した通り、細胞内環境においてリンカーの切断により抗体から治療剤が放出されるように、細胞内の条件下ではリンカーは切断可能である。
【0231】
例えば、一部の実施形態においては、リンカーは細胞内環境(例えばリソソーム又はエンドソーム又は小胞内部)に存在する切断剤により切断可能である。リンカーは例えば、限定しないがリソソーム又はエンドソームのプロテアーゼを含む、細胞内ペプチダーゼ又はプロテアーゼ酵素により切断されるペプチジルリンカーであることができる。典型的には、ペプチジルリンカーは少なくとも2アミノ酸長であるか、少なくとも3アミノ酸長である。切断剤はカテプシンB及びD及びプラスミンを包含することができ、これらは全てジペプチド薬剤誘導体を加水分解することにより標的細胞内部での活性薬剤の放出をもたらすことが知られている(例えばDubowchik and Walker,Pharm.Therapeutics 83:67−123,1999参照)。最も典型的なものはzB7H6発現細胞内に存在する酵素により切断されるペプチジルリンカーである。例えば癌組織内で高度に発現されるチオール依存性のプロテアーゼであるカテプシン−Bにより切断可能なペプチジルリンカーを使用できる(例えばPhe−Leu又はGly−Phe−Leu−Glyリンカー)。そのようなリンカーの他の例は例えば米国特許6,214,345に記載されている。特定の実施形態において、細胞内プロテアーゼにより分解可能であるペプチジルリンカーはVal−Cit(バリン−シトルリン)リンカー又はPhe−Lys(フェニルアラニン−リジン)リンカーである(例えばval−citリンカーを用いたドキソルボシンの合成を記載した米国特許6,214,345参照)。治療剤の細胞内蛋白質分解性放出を用いる1つの利点は、剤が結合体化時に典型的には減衰され、そして結合体の血清中安定性が典型的には高値であることである。
【0232】
他の実施形態において、切断可能なリンカーはpH感受性、即ち特定のpH値における加水分解に感受性である。典型的には、pH感受性のリンカーは酸性条件下で加水分解可能である。例えばリソソーム中で加水分解可能である酸不安定性リンカー(例えばヒドラゾン、セミカルバゾン、チオセミカルバゾン、シスアコニチン酸アミド、オルトエステル、アセタール、ケタール等)を使用できる(例えば米国特許5,122,368;5,824,805;5,622,929;Dubowchik and Walker,Pharm.Therapeutics 83:67−123,1999;Nevilleら、Biol.Chem.264:14653−14661,1989参照)。そのようなリンカーは血液中等の様な中性のpHの条件下では相対的に安定であるが、リソソームの概ねのpHであるpH5.5又は5.0より低値では不安定である。特定の実施形態においては、加水分解可能なリンカーはチオエーテルリンカー(例えばアシルヒドラゾン結合を介して治療剤に結合しているチオエーテル(米国特許5,622,929参照))である。
【0233】
更に他の実施形態においては、リンカーは還元条件下で切断可能である(例えばジスルフィドリンカー)。種々のジスルフィドリンカーが当該分野で知られており、例えばSATA(N−スクシンイミジル−S−アセチルチオアセテート)、SPDP(N−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルチオ)プロピオネート)、SPDB(N−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルチオ)ブチレート)及びSMPT(N−スクシンイミジル−オキシカルボニル−アルファ−メチル−アルファ−(2−ピリジル−ジチオ)トルエン)、SPDB及びSMPTを用いて形成できるものが包含される(例えばThorpeら、Cancer Res.47:5924−5931,1987;Wawrzynczakら、In Immunoconjugates:Antibody Conjugates in Radioimagery and Therapy of Cancer(C.W.Vogel編,Oxford U.Press,1987を参照できる。更にまた米国特許4,880,935を参照)。
【0234】
更に別の変形例において、リンカーはマロネートリンカー(Johnsonら、Anticancer Res.15:1387−93,1995)、マレイミドベンゾイルリンカー(Lauら、Bioorg−Med−Chem.3:1299−1304,1995)、又は3’−N−アミド類縁体(Lauら、Bioorg−Med−Chem.3:1305−12,1995)である。
【0235】
典型的には、リンカーは細胞外環境に対して実質的に感受性ではない。本明細書においては、「細胞外環境に対して実質的に感受性ではない」とは、リンカーの文脈においては、抗体−薬剤結合体が細胞外環境中(例えば血漿中)に存在する場合に、抗体−薬剤結合体の試料中、リンカーの約20%以下、典型的には約15%以下、より典型的には約10%以下、そして更に典型的には約5%以下、約3%以下、又は約1%以下が切断されることを意味する。リンカーが細胞外環境に対して実質的に感受性であるかどうかは、例えば、(a)抗体−薬剤結合体(「抗体−薬剤結合体試料」)及び(b)等モル量の結合体化されていない抗体又は治療剤(「対照試料」)の両方を血漿と共に所定の時間(例えば2、4、8、16、又は24時間)独立してインキュベートすること、そして次に、例えば高速液体クロマトグラフィーにより計測されたものとしての、抗体−薬剤結合体試料中に存在する結合体化されていない抗体又は治療剤の量を、対照試料中に存在するものと比較すること、により測定できる。
【0236】
一部の変形例においては、リンカーは細胞内在化を促進する。特定の実施形態においては、リンカーは治療剤に結合体化された場合に(即ち抗体−薬剤結合体のリンカー−治療剤部分の環境内で)細胞内在化を促進する。更に他の実施形態においては、リンカーは治療薬と抗zB7H6抗体の両方に結合体化された場合に(即ち抗体−薬剤結合体の環境内で)細胞内在化を促進する。
【0237】
本発明の組成物及び方法と共に使用できる種々のリンカーは、例えば「Drug Conjugates and Their Use for Treating Cancer,an Autoimmune Disease or an Infectious Disease」と題されたWO2004/010957に記載されている。
【0238】
B.治療剤
本発明によれば、zB7H6発現細胞に対して治療作用を呈する何れかの剤を抗zB7H6抗体への結合体化のための治療剤として使用できる。zB7H6発現癌の処置のためのような特定の実施形態においては、治療剤は細胞毒性剤である。
【0239】
細胞毒性剤の有用なクラスは例えば抗チューブリン剤、オーリスタチン、DNA副溝結合剤、DNA複製抑制剤、アルキル化剤(例えばシスプラチン、モノ(白金)、ビス(白金)及び3核白金複合体、及びカルボプラチン等の白金複合体)、アントラサイクリン、抗生物質、抗フォレート、代謝拮抗剤、化学療法感作剤、デュオカルマイシン、エトポシド、フッ素化ピリミジン、イオノフォア、レキシトロプシン、ニトロソ尿素、プラチノール、前形成化合物、プリン代謝拮抗剤、ピューロマイシン、放射線感作剤、ステロイド、タキサン、トポイソメラーゼ阻害剤、ビンカアルカロイド等を包含する。
【0240】
個々の細胞毒性剤は例えば、アンドロゲン、アンスラマイシン(AMC)、アスパラギナーゼ、5−アザシチジン、アザチオプリン、ブレオマイシン、ブスルファン、ブチオニン、スルホキシミン、カンプトテシン、カルボプラチン、カルムスチン(BSNU)、CC−1065、クロランブシル、シスプラチン、コルヒチン、シクロホスファミド、シタラビン、シチジン、アラビノシド、シトチャラシンB、ダカルバジン、ダクチノマイシン(以前のアクチノマイシン)、ダウノルビシン、デカルバジン、ドセタキセル、ドキソルビシン、エストロゲン、5−フルオロデオキシウリジン、5−フルオロウラシル、グラミシジンD、ヒドロキシ尿素、イダルビシン、イホスファミド、イリノテカン、ロムスチン(CCNU)、メクロレタミン、メルファラン、6−メルカプトプリン、メトトレキセート、ミトラマイシン、マイトマイシンC、ミトキサントロン、ニトロイミダゾール、パクリタキセル、プリカマイシン、プロカルビジン、ストレプトゾトシン、テノポシド、6−チオグアニン、チオテパ、トポテカン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビノレルビン、VP−16及びVM−26を包含する。
【0241】
特に適している細胞毒性剤は、例えば、ドラスタチン(例えばオーリスタチンE、AFP、MMAF、MMAE)、DNA副溝結合剤(例えばエネジイン及びレキシトロプシン)、デュオカルマイシン、タキサン(例えばパクリタキセル及びドセタキセル)、ピューロマイシン、ビンカアルカロイド、CC−1065、SN−38、トポテカン、モルホリノ−ドキソルビシン、リゾキシン、シアノモルホリノ−ドキソルビシン、エキノマイシン、コンブレタスタチン、ネトロプシン、エポチロンA及びB、エストラムスチン、クリプトフィシン、セマドチン、マイタンシノイド、ジスコデルモリド、エレウテロビン、及びミトキサントロンを包含する。
【0242】
特定の実施形態においては、細胞毒性剤は従来の化学療法剤、例えばドキソルビシン、パクリタキセル、メルファラン、ビンカアルカロイド、メトトレキセート、マイトマイシンC又はエトポシドである。更に又、強力な剤、例えばCC−1065類縁体、カリケアマイシン、マイタンシノイド、ドラスタチン10の類縁体、リゾキシン、及びパリトキシを抗zB7H6発現抗体に連結できる。
【0243】
特定の変形例においては、細胞毒性又は細胞増殖抑制性の剤はオーリスタチンE(当該分野ではドラスタチン−10としても知られている)又はその誘導体である。典型的にはオーリスタチンE誘導体は例えばオーリスタチンEとケト酸の間に形成したエステルである。例えば、オーリスタチンEはパラアセチル安息香酸又はベンゾイル吉草酸と反応することによりそれぞれAEB及びAEVBを生成する。他の典型的なオーリスタチン誘導体はAFP(ジメチルバリン−バリン−ドライソロイシン−ドラプロリン−フェニルアラニン−p−フェニレンジアミン)、MMAF(ドバリン−バリン−ドライソロイシン−ドラプロリン−フェニルアラニン)、及びMAE(モノメチルオーリスタチンE)を包含する。オーリスタチンE及びその誘導体の合成及び構造は米国特許出願公開20030083263;国際特許公開WO2002/088172及びWO2004/010957;及び米国特許6,884,869;6,323,315;6,239,104;6,034,065;5,780,588;5,665,860;5,663,149;5,635,483;5,599,902;5,554,725;5,530,097;5,521,284;5,504,191;5,410,024;5,138,036;5,076,973;4,986,988;4,978,744;4,879,278;4,816,444;及び4,486,414に記載されている。
【0244】
他の変形例においては、細胞毒性剤はDNA副溝結合剤である(例えば米国特許6,130,237参照)。例えば、特定の実施形態においては、副溝結合剤はCBI化合物である。他の実施形態においては、副溝結合剤はエネジイン(例えばカリケアマイシン)である。
【0245】
特定の実施形態においては、抗体−薬剤結合体は抗チューブリン剤を含む。抗チューブリン剤の例は、例えば、タキサン(例えばTaxol(登録商標)(パクリタキセル)、Taxotere(登録商標)(ドセタキセル))、T67(Tularik)、ビンカアルカロイド(例えばビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシン、及びビノレルビン)、及びドラスタチン(例えばオーリスタチンE、AFP、MMAF、MMAE、AEB、AEVB)を包含する。他の抗チューブリン剤は、例えばバッカチン誘導体、タキサン類縁体(例えばエポチロンA及びB)、ノコダゾール、コルヒチン及びコルシミド、エストラムスチン、クリプトフィシン、セマドチン、マイタンシノイド、コンブレタスタチン、ジスコデルモリド、及びエレウテロビンを包含する。一部の実施形態においては、細胞毒性剤は、抗チューブリン剤のもう1つの群であるマイタンシノイドである。例えば、特定の実施形態においては、マイタンシノイドはマイタンシン又はDM−1(ImmunoGen,Inc.;又はChariら、Cancer Res.52:127−131,1992を参照)である。
【0246】
他の実施形態において、細胞毒性剤は代謝拮抗剤である。代謝拮抗剤は、例えばプリンアンタゴニスト(例えばアゾチオプリン又はミコフェノレートモフェチル)、ジヒドロフォレートレダクターゼ阻害剤(例えばメトトレキセート)、アシクロビル、ガンシクロビル、ジドブジン、ビダラビン、リババリン、アジドチミジン、シチジンアラビノシド、アマンタジン、ジデオキシウリジン、ヨードデオキシウリジン、ポスカルネット又はトリフルリジンであることができる。
【0247】
C.抗zB7H6抗体−薬剤結合体の形成
抗zB7H6抗体−薬剤結合体の形成は当該分野で知られた何れかの手法により達成できる。慨すれば、抗zB7H6抗体−薬剤結合体は抗zB7H6抗体、薬剤、及び場合により薬剤と抗体を連結するリンカーを含む。多くの異なる反応が抗体への薬剤の共有結合のために使用できる。これは頻繁には、リジンのアミン基、グルタミン及びアスパラギン酸の遊離のカルボン酸基、システインのスルヒドリル基及び芳香族アミノ酸の種々の部分を包含する、抗体分子のアミノ酸残基の反応により達成される。最も一般的に使用されている共有結合の非特異的な方法の1つは抗体のアミノ(又はカルボキシ)基に化合物のカルボキシ(又はアミノ)基を連結するためのカルボジイミド反応である。更に又、2官能性の剤、例えばジアルデヒド又はイミドエステルが抗体分子のアミノ基に化合物のアミノ基を連結するために使用されている。抗体への薬剤の結合のために同様に使用できるものはシッフ塩基反応である。この方法では、グリコール又はヒドロキシ基を含有する薬剤の過ヨウ素酸塩酸化を行うことにより形成したアルデヒドを次に抗体分子と反応させる。結合は抗体分子のアミノ基とのシッフ塩基の形成を介して起こる。イソチオシアネートもまた抗体に薬剤を共有結合するためのカップリング剤として使用できる。他の手法は当該分野で知られており、そして本発明の範囲に包含される。そのような手法の非限定的な例は例えば米国特許5,665,358;5,643,573;及び5,556,623に記載されている。
【0248】
一部の実施形態においては、リンカーの前駆体である中間体を適切な条件下で薬剤と反応させる。特定の実施形態においては、反応性の基を薬剤及び/又は中間体に対して使用する。薬剤と中間体との間の反応の産物、又は誘導体化された薬剤を、その後、適切な条件下で抗zB7H6抗体と反応させる。
【0249】
D.細胞毒性又は細胞増殖抑制性の活性
特定の実施形態においては、抗zB7H6抗体−薬剤結合体は、抗体−薬剤結合体がzB7H6発現細胞(例えばzB7H6発現癌細胞)に対して細胞毒性又は細胞増殖抑制性の作用を発揮するように、細胞毒性剤に結合体化された抗zB7H6抗体を含む。抗zB7H6抗体−薬剤結合体の細胞毒性又は細胞増殖抑制性の作用に関して試験できるzB7H6発現細胞は培養細胞系統、例えば後述する表5に列挙するものであることができる。抗zB7H6抗体−薬剤結合体がzB7H6発現細胞に対して細胞毒性又は細胞増殖抑制性を発揮するものとして確認された後、その治療上の価値は適切な動物モデルにおいて確認できる。好ましい実施形態においては、細胞毒性剤を含む抗zB7H6抗体−薬剤結合体を用いてzB7H6発現癌を処置する。本発明の抗体−薬剤結合体の治療上の薬効を評価するために使用してよい種々の癌の動物モデルの例は、後述するセクションVI(B)及び実施例21〜27において説明する。
【0250】
剤が細胞に対して細胞毒性又は細胞増殖抑制性の作用を発揮するかどうかを調べる方法は、一般的に当該分野で知られている。そのような方法の代表例を以下に記載する。zB7H6発現細胞に対するこれらの作用の何れかが決定されれば、少なくとも部分的には例えばzB7H6発現癌のようなzB7H6発現細胞の異常な成長又は活性により媒介される病理を有する疾患又は障害の処置又は防止において、抗zB7H6抗体−薬剤結合体が有用であることが示される。
【0251】
抗zB7H6抗体−薬剤結合体がzB7H6発現細胞に対して細胞増殖抑制性の作用を発揮するかどうかを測定するためには、チミジン取り込み試験を使用してよい。例えば、96穴プレートのウェルあたり5000個の細胞密度においてzB7H6発現細胞を72時間培養し、そして72時間の最後の8時間は0.5 μCiの
3H−チミジンに曝露することができ、そして、培養物の細胞内部への
3H−チミジンの取り込みを抗体−薬剤結合体の存在下及び非存在下で計測する。
【0252】
細胞毒性を測定するためには、壊死又はアポトーシス(プログラムされた細胞死)を計測できる。壊死は典型的には原形質膜の増大した透過性、細胞の膨潤、及び原形質膜の破壊を伴う。アポトーシスは典型的には膜の水泡形成、細胞質の濃縮、及び内因性エンドヌクレアーゼの活性化を特徴とする。
【0253】
細胞の生存性は染料、例えばニュートラルレッド、トリパンブルー、又はALAMAR(商標)ブルーの取り込みを細胞において測定することにより計測できる(例えばPageら、Intl.J.of Oncology3:473−476,1993参照)。そのような試験においては、細胞を染料を含有する培養基中でインキュベートし、細胞を洗浄し、そして染料の細胞取り込みを反映している残存染料を分光光度計で計測する。蛋白質結合染料スルホローダミンB(SRB)もまた細胞毒性を計測するために使用できる(Skehanら、J.Nat’l Cancer Inst.82:1107−12,1990)。
【0254】
或いは、死滅しているのではなく生存している細胞を検出することによる哺乳類細胞の生存及び増殖に関する定量的なカロリー計算試験においてMTTのようなテトラゾリウム塩を使用する(例えばMosmann,J.Immunol.Methods 65:55−63,1983参照)。
【0255】
アポトーシスは例えばDNAフラグメント化を計測することにより定量できる。DNAフラグメント化の定量的なインビトロ測定のための商業的な光度測定法が使用される。そのような試験の例、例えばTUNEL(フラグメント化したDNAにおける標識されたヌクレオチドの取り込みを検出する)及びELISA系の試験はBiochemica,1999,no.2,pp.34−37(Roche Molecular Biochemicals)に記載されている。
【0256】
アポトーシスは又、細胞における形態学的変化を計測することにより測定することもできる。例えば、壊死の場合と同様、原形質膜の一体性の喪失を特定の染料(例えば蛍光染料、例えばアクリジンオレンジ又は臭化エチジウム)の取り込みを計測することにより測定できる。アポトーシス細胞数を計測するための方法は以前よりDuke and Cohen,Current Protocols In Immunology(Coliganら編、1992,pp.3.17.1−3.17.16)により記載されている。細胞はDNA染料(例えばアクリジンオレンジ、臭化エッチング時有無、又はヨウ化プロピジウム)で標識することもでき、そして細胞をクロマチンの濃縮及び内部核膜に沿った縁部形成があるかどうか観察する。アポトーシスを測定するために計測できる他の形態学的変化は、例えば細胞質の濃縮、増大した膜の水泡形成、及び細胞の収縮を包含する。
【0257】
アポトーシス細胞の存在は、培養物の結合している、及び、「浮遊している」コンパートメントの両方において計測できる。例えば、両方のコンパートメントは、上澄みを回収すること、結合している細胞をトリプシン処理すること、遠心分離洗浄工程(例えば10分、2000rpm)の後の沈殿を合わせること、及び、アポトーシスを検出すること(例えばDNAフラグメント化を計測することによる)により収集できる(例えばPiazzaら、Cancer Research55:3110−16,1995参照)。
【0258】
VI.使用方法
A.全般
別の態様において、本発明はNKp30発現細胞、例えばナチュラルキラー(NK)細胞及びT細胞(例えばCD8
+T細胞)の活性(例えば細胞溶解活性)をモジュレートする方法を提供する。そのような方法は、NKp30発現細胞の増大した、又は低下した活性の何れかに関連する疾患又は障害の処置のための方法を包含する。一部の実施形態においては、方法は、NKp30媒介活性(例えば細胞溶解活性)をトリガーするために有効な量において、zB7H6ポリペプチド、又はNKp30とのzB7H6の相互作用を模倣することができる剤(例えばzB7H6抗イディオタイプ抗体)にNKp30発現細胞を接触させることを包含する。zB7H6ポリペプチドは可溶性又は固定化(例えば細胞膜結合)型の何れかであることができ;例えば、特定の変形例においては、NKp30発現細胞の活性を増強する方法は、配列番号2の残基25〜266に示すアミノ酸配列と少なくとも90%、又は少なくとも95%の配列同一性を有するポリペプチドセグメントを含む単離された可溶性ポリペプチドにNKp30発現細胞を接触させること、又は、組み換え膜結合zB7H6ポリペプチドを発現する細胞にNKp30発現細胞を接触させることを包含する。他の変形例においては、方法は、抗zB7H6抗体又はNKp30とのzB7H6の相互作用を妨害することができる他剤の有効量に、NKp30発現細胞の存在下、機能的zB7H6を発現する細胞を接触させることを包含する。そのような方法はインビトロ、エクスビボ、又はインビボで実施できる。
【0259】
特定の好ましい変形例においては、NK細胞活性をモジュレートする方法、例えば増大した、又は低下したNK細胞活性の何れかに関連する疾患又は障害の処置のための方法が提供される。一部の実施形態においては、方法はNKp30媒介NK細胞の細胞溶解活性をトリガーするために有効な量において、zB7H6ポリペプチド、又はNKp30とのzB7H6の相互作用を模倣することができる剤(例えばzB7H6抗イディオタイプ抗体)にNK細胞を接触させることを包含する。zB7H6ポリペプチドは可溶性又は固定化(例えば細胞膜結合)型の何れかであることができ;例えば、特定の変形例においては、NK細胞の活性を増強する方法は、配列番号2の残基25〜266に示すアミノ酸配列と少なくとも90%、又は少なくとも95%の配列同一性を有するポリペプチドセグメントを含む単離された可溶性ポリペプチドにヒトNK細胞を接触させること、又は、組み換え膜結合zB7H6ポリペプチドを発現する細胞にヒトNK細胞を接触させることを包含する。他の変形例においては、方法は、抗zB7H6抗体又はNKp30とのzB7H6の相互作用を妨害することができる他剤の有効量に、NK細胞の存在下、機能的zB7H6を発現する細胞を接触させることを包含する。そのような方法はインビトロ、エクスビボ、又はインビボで実施できる。
【0260】
他の実施形態においては、NKp30発現T細胞活性をモジュレートする方法、例えばNKp30発現T細胞の増大又は低下した活性の何れかに関連する疾患又は障害の処置のための方法が提供される。特定のT細胞、例えばCD8
+T細胞はNKp30を発現することがわかっている(例えばSrivastava and Srivastava,Leuk.Res.30:37−46,2006参照)。従って、一部の実施形態においては、方法は、NKp30媒介T細胞活性(例えば細胞溶解活性)をトリガーするために有効な量において、zB7H6ポリペプチド、又はNKp30とのzB7H6の相互作用を模倣することができる剤(例えばzB7H6抗イディオタイプ抗体)にNKp30発現T細胞(例えばCD8
+T細胞)を接触させることを包含する。zB7H6ポリペプチドは可溶性又は固定化(例えば細胞膜結合)型の何れかであることができ;例えば、特定の変形例においては、NKp30発現T細胞の活性を増強する方法は、配列番号2の残基25〜266に示すアミノ酸配列と少なくとも90%、又は少なくとも95%の配列同一性を有するポリペプチドセグメントを含む単離された可溶性ポリペプチドにNKp30発現T細胞を接触させること、又は、組み換え膜結合zB7H6ポリペプチドを発現する細胞にNKp30発現T細胞を接触させることを包含する。他の変形例においては、方法は、抗zB7H6抗体又はNKp30とのzB7H6の相互作用を妨害することができる他剤の有効量に、NKp30発現T細胞の存在下、機能的zB7H6を発現する細胞を接触させることを包含する。そのような方法はインビトロ、エクスビボ、又はインビボで実施できる。
【0261】
上記した通り、特定の変形例においては、方法はNK細胞活性に関連する疾患又は障害を処置する方法である。例えば、一部の実施形態においては、方法は、不十分なナチュラルキラー(NK)細胞活性を特徴とする疾患又は障害(例えば癌又は感染性疾患)に罹患しているか、それを発症する危険性が高い対象に対し、可溶性zB7H6ポリペプチド、又はNKp30とのzB7H6の相互作用を模倣することができる剤(例えばzB7H6抗イディオタイプ抗体)の有効量を投与することを包含する。代替の実施形態においては、方法は、NK細胞媒介の疾患又は障害(例えばNK細胞媒介同種移植片拒絶、例えばNK細胞媒介骨髄細胞(BMC)同種移植片拒絶)に罹患しているか、それを発症する危険性が高い対象に対し、抗zB7H6抗体又はNKp30とのzB7H6の相互作用を妨害することができる他剤の有効量を投与することを包含する。
【0262】
一部の変形例においては、可溶性zB7H6ポリペプチドを癌治療のための免疫刺激剤として使用する。種々の分泌免疫調節性の蛋白質が免疫系の刺激を介して動物モデルにおいて抗腫瘍応答を刺激することが知られている(一般的にRosenberg(編)、Principles and practice of the biologic therapy of cancer(Lippincott Williams&Wilkins,Philadelphia,PA,第3版2000)参照)。例えばIL−2及びIFN−αの使用は転移性の黒色腫及び腎細胞癌の処置のために使用される(例えばAtkinsら、J.Clin.Oncol.17:2105−16,1999;Fyfeら、J.Clin.Oncol.13:688−96,1995;Jonasch and Haluska,Oncologist 6:34−55,2001参照)。これらのサイトカインの提案されている作用機序は、CD8
+T細胞及びNK細胞による直接の腫瘍細胞殺傷の増強を包含する。本明細書に記載する可溶性zB7H6受容体はNKp30媒介細胞溶解活性の誘導を介したNK細胞又はCD8
+T細胞による直接の腫瘍殺傷を増強するために同様の態様において使用してよい。
【0263】
可溶性zB7H6ポリペプチドは又、感染性疾患、例えばウィルス感染の処置のための免疫刺激剤として使用できる。NK細胞は侵入病原体に対抗した防御の第1選択肢を構成し、通常はウィルス感染の初期において活性化する(例えばAhmad and Alvarez,J.Leukoc.Biol.76:743−759,2004;Shrestaら、Virology 319:262−273,2004を参照)。CD8
+T細胞は又感染性の病原体への免疫応答の媒介において役割を果たしていることが示されている(例えばWong and Palmer,Annu.Rev.Immunol.21:29−70,2003参照)。感染性疾患に対する現在の処置は特にNK及びT細胞の活性を誘発することが知られている免疫系刺激物質を包含する。そのような処置は例えば、HIV感染における治療薬としてのIL−2の使用(例えばSmith,AIDS 15 Suppl 2:S28−35,2001参照)、ならびにHCV感染の処置におけるIFN−αの使用(例えば上出のAhmad and Alvarez参照)を包含する。NK細胞の活性を増大させる免疫調節性の蛋白質を介した感染性疾患の処置の可能性は、HCV感染個体における有効な治療がNK細胞活性におけるその増大に相関していたという観察結果により更に過小評価され:治療がNK細胞応答の増大に失敗した個体においては、ウィルス血症の低下は観察されなかった(Thielら、Dig.Dis.Sci.39:970−976,1994;Wozniakowska−Gesickaら、Pol.Merkuriusz Lek.8:376−377,2000;Bonavitaら、Int.J.Tissue React.15:11−16,1993参照)。即ち、NKp30媒介NK又はCD8
+T細胞活性を刺激することができる可溶性zB7H6ポリペプチドは感染性疾患を処置するためのNK媒介又はCD8
+T細胞媒介の抗病原体(例えば抗ウィルス)防御機序を促進するために使用してよい。
【0264】
他の変形例においては、抗zB7H6抗体はNK細胞媒介骨髄同種移植片拒絶を抑制するために使用される。骨髄移植(BMT)は種々の血液学的な悪性疾患の処置のための許容された治療となっている。しかしながら同種異系BMTの薬効は、特定の障害、例えば移植片の拒絶により限定されている。NK細胞が骨髄同種移植片の定着にとって障壁であること、そしてそれらが単独でマウスにおけるBMC拒絶の特異性を媒介できることを示す多くの証拠がある(例えばMurphyら、J.Exp.Med.165:1212−1217,1987;Murphyら、J.Exp.Med.166:1499−1509,1987;Murphyら、J.Immunol.144:3305−3311,1990;Murphyら、Eur.J.Immunol.20:1729−1734,1990;Murphyら、Immunol.Rev.181:279−289,2001参照)。臨床的には、細胞減少性のコンディショニングを行うことなくT細胞の枯渇したHLAミスマッチBMTを受けたSCID患者において観察された同種移植片耐性は、ドナー由来のNK細胞の高い活性に起因するとされている(O’Reillyら、Vox.Sang.51:81−86,1986参照)。従って、本明細書に記載したzB7H6の細胞外ドメインに対抗し、そしてNKp30とのzB7H6の相互作用を抑制することができる抗体は、同種移植片に対抗するNK細胞の細胞溶解活性を抑制し、これによりBMC同種移植片拒絶を処置又は防止するためにBMT中に使用してよい。
【0265】
更に他の実施形態においては、抗zB7H6抗体は、zB7H6発現細胞、例えばzB7H6発現癌細胞に対抗して、抗体依存性細胞性細胞毒性(ADCC)又は補体依存性細胞毒性(CDC)を誘導するために使用される。抗体療法は、特定の腫瘍が独特の抗原、系統特異的抗原、又は正常細胞と相対比較して過剰量で存在する抗原の何れかを提示することから、癌治療において得に功を奏している。実験的証拠は、zB7H6は正常組織と相対比較して多くの腫瘍誘導細胞系統、例えば結腸、肝臓、子宮頚部、肺、膵臓、及び前立腺の癌から誘導された細胞系統、並びに血液の種々の癌、例えば前血球性白血病、B細胞リンパ腫、単球性リンパ腫、赤白血病、バーキットリンパ腫、又は慢性骨髄性白血病から誘導されたものにより高度に発現されることを示している。この証拠はzB7H6が新規な腫瘍特異的又は腫瘍関連の抗原であること、及び、抗zB7H6抗体を抗腫瘍剤として使用してよいことを示している。モノクローナル抗体療法の抗腫瘍活性に関連する機序の1つは、抗体依存性細胞性細胞毒性(ADCC)である。ADCCにおいて、モノクローナル抗体は標的細胞(例えば癌細胞)に結合し、そしてモノクローナル抗体に対する受容体を発現する特定のエフェクター細胞(例えばNK細胞、CD8
+T細胞、単球、顆粒球)はモノクローナル抗体/標的細胞複合体に結合して標的細胞の死滅をもたらす。
【0266】
従って、一部の実施形態においては、エフェクター機能を有するFc領域を含む抗zB7H6抗体を用いてzB7H6発現細胞に対抗して抗体依存性細胞性細胞毒性(ADCC)又は補体依存性細胞毒性(CDC)を誘導する。ADCCを誘導するための方法は一般的に、ADCC活性を有するFc領域を含む抗zB7H6抗体の有効量にzB7H6発現細胞を接触させることを包含し、ここで、接触の工程は細胞溶解活性を有するFc領域を発現する細胞溶解性免疫エフェクター細胞の存在下で行う。細胞溶解性Fc受容体(例えばFcγRIIIα又はCD16)を発現する免疫エフェクター細胞は例えばNK細胞並びに特定のCD8
+T細胞を包含する。CDCを誘導するための方法は一般的に、CDC活性を有するFc領域を含む抗zB7H6抗体の有効量にzB7H6発現細胞を接触させることを包含し、ここで、接触の工程は補体の存在下で行う。そのような方法を用いて殺傷するためにターゲティングされることができるzB7H6発現細胞は例えば、以下の癌細胞、例えば結腸癌細胞、肝臓癌細胞、子宮頚癌細胞、肺癌細胞、膵臓癌細胞、前立腺癌細胞、前血球性白血病細胞、B細胞リンパ腫細胞、単球性リンパ腫細胞、赤白血病細胞、バーキットリンパ腫細胞、及び慢性骨髄性白血病細胞等を包含する。
【0267】
関連の実施形態において、エフェクター機能を有するFc領域を含む抗zB7H6抗体は対象におけるzB7H6発現癌を処置するために使用される。そのような方法は一般的に、ADCC活性及び/又はCDC活性を有するFc領域を含む抗zB7H6抗体の有効量を対象に投与することを包含する。そのような方法を用いた処置に特に適するzB7H6発現癌は例えば、結腸、肺、子宮頚部、膵臓、又は前立腺の癌、並びに血液の癌、例えば前血球性白血病、B細胞リンパ腫、単球性リンパ腫、赤白血病、バーキットリンパ腫、又は慢性骨髄性白血病等を包含する。
【0268】
更に他の実施形態において、抗zB7H6抗体−薬剤結合体(上記セクションV参照)を用いることによりzB7H6発現細胞に治療剤を送達し、その場合、剤は治療作用を発揮する。抗zB7H6抗体−薬剤結合体を利用する特定の好ましい変形例においては、治療剤はzB7H6発現細胞、例えばzB7H6発現癌細胞に対して細胞毒性又は細胞増殖抑制性の作用を発揮する細胞毒性剤である。上記した通り、実験的証拠によれば、zB7H6は、正常組織と相対比較して、多くの腫瘍誘導細胞系統、例えば結腸、肝臓、子宮頚部、肺、膵臓及び前立腺の癌から誘導された細胞系統、並びに、血液の種々の癌、例えば前血球性白血病、B細胞リンパ腫、単球性リンパ腫、赤白血病、バーキットリンパ腫、又は慢性骨髄性白血病から誘導されたものにより高度に発現される。この証拠は、zB7H6が、癌治療において治療作用を有する剤、特に腫瘍細胞を枯渇させるかその成長を抑制することができる細胞毒性剤をターゲティングするために有用な、新規な腫瘍特異的又は腫瘍関連の抗原であることを示している。従って、一部の実施形態においては、細胞毒性剤に結合体化した抗zB7H6抗体を含む抗zB7H6抗体−薬剤結合体はzB7H6発現癌の処置に使用される。
【0269】
本明細書に記載した処置方法の実施形態のおのおのにおいて、可溶性zB7H6ポリペプチド、抗体、又は他のzB7H6関連剤(例えばzB7H6ポリヌクレオチド又は抗zB7H6抗体−薬剤結合体)は処置が望まれる疾患又は障害の管理維持に関連する従来の方法と合致した態様において送達される。本明細書における開示に従って、剤の有効量を、疾患又は障害を防止又は処置するために十分な時間及び条件下でそのような処置を必要とする対象に投与する。
【0270】
本明細書に記載した可溶性zB7H6ポリペプチド、抗体、又は他のzB7H6関連の剤の投与の対象は、NK細胞活性に関連する特定の疾患又は障害を発症する危険性の高い患者、並びに既存のNK細胞関連の疾患又は障害を伴って存在する患者を包含する。特定の実施形態においては、対象は処置が望まれる疾患又は障害を有するものとして診断されている。更に又、対象は疾患又は障害に何らかの変化(例えば疾患又は障害の臨床兆候の増加又は低下)があるかどうかについて処置の過程の間にモニタリングすることができる。更に又、一部の変形例においては、対象は、同族体受容体とのzB7H6の相互作用を模倣又はブロッキングすることを含む処置を必要とする別の疾患又は障害に罹患していない。
【0271】
予防的用途においては、医薬組成物又は医薬は、特定の疾患に罹患し易いか、又は別様にその危険性を有する患者に対し、疾患の危険性を排除又は低減するか、発症を遅延させるために十分な量において投与される。治療用途の場合は、組成物又は医薬は疾患の症状及びその合併症を治癒するか、少なくとも部分的に停止するために十分な量でそのような疾患が疑われるか、既に罹患している患者に投与される。これを達成するために十分な量は治療上又は薬学的に有効な用量又は量と称する。予防的及び治療的な用法の両方において、剤は通常は、十分な応答(例えば適切なNK細胞活性をトリガーすること、又は不適切なNK細胞活性の抑制)が達成されるまで、数投薬において投与される。典型的には、応答をモニタリングし、そして所望の応答が減衰し始めれば反復投薬を行う。
【0272】
本発明の方法に従った処置の対象となる患者を識別するためには、特定のNK細胞関連の障害に関連する危険因子を調べるため、又は、対象において発見された既存の障害の状態を調べるために、許容されるスクリーニング法を使用してよい。そのような方法は例えば特定の疾患を有すると診断されている親族を個体が有するかどうかを調べることを包含できる。スクリーニング方法は又、例えば、遺伝的成分を有することが知られている特定の疾患に関する家族性の状況を調べるための従来の後処理を包含できる(例えばBMTの場合は、臨床試験により、特定のHLA−C対立遺伝子の存在がBM同種移植片拒絶の上昇した危険性に相関することが示されており(Scottら、Blood 92:48644871,1998参照)、そして種々の癌も又、特定の遺伝性の成分を有することがわかっている)。癌の遺伝性の成分は、例えば、形質転換される多数の遺伝子における突然変異(例えばRas,Raf,EGFR,cMet及びその他)、特定のHLA及びキラー阻害受容体(KIR)分子の存在又は非存在、又は、癌細胞が直接的又は間接的にNK細胞やT細胞のような細胞の免疫抑制をモジュレートすることができる機序を包含する(例えばLjunggren and Malmberg,Nature Rev.Immunol.7:329−339,2007;Boyton and Altmann,Clin.Exp.Immunol.149:1−8,2007参照)。この目的のために、ヌクレオチドプローブを定型的に使用することにより目的の特定の疾患に関連する遺伝子マーカーを保有している個体を識別することができる。更に又、特定の疾患に関するマーカーを識別するために有用な広範な種類の免疫学的方法が当該分野で知られている。例えば、特定の腫瘍に関連する抗原を検出するためにモノクローナル抗体プローブを使用する種々のELISAイムノアッセイ法が使用可能であり、そして当該分野で良く知られている。スクリーニングは既知の患者の兆候特徴、年齢要因、関連する危険因子等により示されるとおり実施してよい。これらの方法は処置のために本明細書に記載した方法を必要とする患者を医師が定型的に選択できるようにする。これらの方法に従えば、NK細胞活性のモジュレーションは、独立した処置プログラムとして、又は他の処置のフォローアップ、併用、又は協調的な処置計画として実施してよい。
【0273】
投与のためには、zB7H6ポリペプチド、抗体、又は他のzB7H6関連の剤を医薬組成物として製剤する。可溶性のzB7H6ポリペプチド、抗zB7H6抗体、又は他の剤を含む医薬組成物は、治療薬分子が製薬上許容しうる担体との混合物中で組み合わせられる、薬学的に有用な組成物を製造するための知られた方法に従って製剤できる。組成物は、その投与がレシピエントである患者により耐容され得る場合に、「製薬上許容しうる担体」と言われる。滅菌されたホスフェート緩衝食塩水は、製薬上許容しうる担体の一例である。他の適当な担体は当該分野で良く知られている(例えばGennaro(編)、Remington’s Pharmaceutical Sciences(Mack Publishing Company,第19版1995)を参照)。製剤は更に、1個以上の賦形剤、保存料、可溶化剤、緩衝剤、ウィルス表面上の蛋白質損失を防止するためのアルブミン等を包含してよい。
【0274】
zB7H6ポリペプチド、抗体、又は他のzB7H6関連の剤を含む医薬組成物は有効量において対象に投与される。本発明の方法によれば、ポリペプチド、抗体、又は他の剤は、種々の投与様式、例えば、筋肉内、皮下、静脈内、動脈内、間接内、非経腸、鼻内、肺内、経皮、胸膜腔内、髄腔内、及び経口経路の投与により、対象に投与してよい。防止及び処置の目的のためには、剤は、単回瞬時送達において、継続送達(例えば継続経皮送達)を介して延長された期間に渡り、或いは反復投与プロトコルにおいて(例えば毎時、毎日、又は毎週を基本として)対象に投与してよい。
【0275】
この文脈における有効用量の決定は典型的にはヒトの臨床知見によりフォローアップされる動物モデル試験に基づき、そして、モデル対象における対象の疾患又は障害の発生又は重症度を優位に低減する有効用量及び投与プロトコルにより方針付けられる。本発明の組成物の有効用量は多くの異なる要因、例えば、投与の手段、標的部位、患者の生理学的状態、患者がヒトであるか動物であるか、他の医薬を投与するか、処置が予防的であるか治療的であるか、並びに、組成物そのものの特異的活性及び個体において所望の応答を誘発するその能力に応じて変動する。通常は、患者はヒトであるが、一部の疾患においては、患者は非ヒト哺乳類である場合がある。典型的には、投薬の用法は最適な治療応答をもたらすように、即ち安全性と薬効を最適とするように、調節される。従って、治療上又は予防上の有効量は又、何れかの望ましくない併発作用よりもNKp30媒介NK細胞活性をモジュレートする有利な作用のほうが勝るものである。可溶性zB7H6ポリペプチド又は抗体の投与のためには、用量は典型的には、対象体重の約0.1μg〜100mg/kg又は1μg/kg〜約50mg/kg、より通常は10μg〜5mg/kgの範囲である。より特定の実施形態においては、剤の有効量は約1μg/kg〜約20mg/kg、約10μg/kg〜約10mg/kg、又は約0.1mg/kg〜約5mg/kgである。この範囲の用量は単回又は多数回の投与、例えば1日当たり多数回投与、又は毎日、毎週、隔週、又は毎月の投与により達成できる。例えば、特定の変形例においては、用法は、初回投与に引き続いて多数回の後続投与を毎週又は隔週の間隔で行うことよりなる。他の用法は初回投与に引き続いて多数回の後続投与を毎月又は隔月の間隔で行うことよりなる。或いは、投与は、NK細胞の活性及び/又は疾患又は障害の臨床症状のモニタリングにより示される通り、不定期を基本に行うことができる。
【0276】
医薬組成物の用量は、標的部位において所望の濃度を維持するために、担当医により変更されてよい。例えば静脈内様式の送達を選択する場合、標的組織における血流中の剤の局所濃度は、対象の状態及び計画された計測される応答に応じて、組成物リットル当たり約1〜50ナノモル、場合によりリットル当たり約1.0ナノモル、そしてリットル当たり10、15、又は25ナノモルであってよい。より高値又は低値の濃度は、送達の様式、例えば経表皮の送達vs粘膜表面への送達等に基づいて選択してよい。用量は又投与される製剤、例えば鼻内スプレーvs粉末、持続放出の経口又は注射用の粒子、経皮製剤等の放出速度に基づいて調節されるべきである。例えば同じ血清中濃度を達成するためには、5ナノモル(標準的条件下で)の放出速度を有する緩徐放出粒子は10ナノモルの放出速度を有する粒子の用量の約2倍において投与される。
【0277】
可溶性zB7H6ポリペプチド、抗体、又は他のzB7H6関連組成物を含む医薬組成物は液体形態において、エアロゾルにおいて、又は固体形態において提供することができる。液体形態は注射用の溶液、エアロゾル、滴下剤、局所用溶液及び経口用懸濁液により説明される。例示される固体形態は、カプセル、錠剤、及び制御放出形態を包含する。後者の形態はミニ浸透圧ポンプ及びインプラントにより説明される(例えばBremerら、Pharm.Biotechnol.10:239,1997;Ranade,「Implants in Drug Delivery」、Drug Delivery Systems 95−123(Ranade and Hollinger編、CRC Press 1995);Bremerら、「Protein Delivery with Infusion Pumps」、Protein Delivery:Physical Systems 239−254(Sanders and Hendren編、Plenum Press 1997);Yeweyら、「Delivery of Proteins from a Controlled Release Injectable Implant」、Protein Delivery:Physical Systems 93−117(Sanders and Hendren編、Plenum Press 1997)を参照)。他の固体形態はクリーム、ペースト、他の局所適用剤等を包含する。
【0278】
リポソームは例えば静脈内、腹腔内、髄腔内、筋肉内、皮下、又は経口投与、吸入、又は鼻内投与を介して対象に治療用ポリペプチドを送達する1つの手段を与える。リポソームは水性のコンパートメントを包囲する1つ以上の脂質二層よりなる微視的な小胞である(例えば一般的にBakker−Woudenbergら、Eur.J.Clin.Microbiol.Infect.Dis.12(補遺1):S61,1993;Kim,Drugs 46:618,1993;Ranade,「Site−Specific Drug Delivery Using Liposomes as Carriers」、Drug Delivery Systems 3−24(Ranade and Hollinger編、CRC Press 1995)を参照)。リポソームは細胞膜と組成において同様であり、そしてその結果、リポソームは安全に投与でき、そして生体分解性である。製造方法に応じて、リポソームは単層又は多層であってよく、そしてリポソームは0.02μm〜10μm超の範囲の直径を有する大きさにおいて変動できる。種々の剤がリポソーム中にカプセル化されることができ、疎水性の剤は二層中に分配され、そして親水性の剤は内部の水性の空間内に分配される(例えばMachyら、Liposomes In Cell Biology And Pharmacology(John Libbey1987);Ostroら、American J.Hosp.Pharm.46:1576,1989を参照)。更に又、リポソームの大きさ、二層の数、脂質の組成、並びにリポソームの電荷及び表面特性を変化させることによりカプセル化された剤の治療上の利用性を制御することが可能である。
【0279】
リポソームは実質的に如何なる型の細胞も吸着し、そして次にカプセル化された剤を放出することができる。或いは、吸収されたリポソームは貪食細胞性である細胞によるエンドサイトーシスに付してよい。エンドサイトーシスに後続してリポソーム脂質のリソソーム内分解及びカプセル化された剤の放出が起こる(Scherphofら、Ann.N.Y.Acad.Sci.446:368,1985参照)。静脈内投与後、小型のリポソーム(0.1〜1.0μm)は典型的には細網内皮系の細胞により取り込まれ、肝臓及び脾臓に主に局在するのに対し、3.0μmより大型のリポソームは肺内に沈着する。このような細網内皮系の細胞によるより小型のリポソームの優先的な取り込みはマクロファージに、そして、肝臓の腫瘍に化学療法剤を送達するために使用されている。
【0280】
細網内皮系は数種の方法、例えばリポソーム粒子の大用量による飽和、又は薬理学的手段による選択的マクロファージ不活性化により迂回することができる(Claassenら、Biochim.Biophys.Acta802:428,1984参照)。更に又、糖脂質又はポリエチレングリコールで誘導したリン脂質のリポソーム膜内への取り込みが細網内皮系による取り込みを有意に低減することが示されている(Allenら、Biochim.Biophys.Acta1068:133,1991;Allenら、Biochim.Biophys.Acta1150:9,1993参照)。
【0281】
リポソームは又、リン脂質の組成を変化させることによるか、又はリポソーム内に受容体又はカウンター受容体を挿入することにより、特定の細胞又は臓器にターゲティングされるように製造できる。例えばノニオン系界面活性剤の高含有量を用いて製造されたリポソームが肝臓をターゲティングするために使用されている(例えばHayakawaら、Katoらへの日本国特許04−244,018;Biol.Pharm.Bull.16:960,1993を参照)。これらの製剤は、大豆ホスファチジルコリン、α−トコフェロール、及びエトキシル化水添ヒマシ油(HCO−60)をメタノール中で混合し、真空下に混合物を濃縮し、そして次に混合物を水で再構成することにより製造されている。大豆誘導ステリルグルコシド混合物(SG)及びコレステロール(Ch)を用いたジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)のリポソーム製剤もまた肝臓をターゲティングすることが示されている(Shimizuら、Biol.Pharm.Bull.20:881,1997参照)。
【0282】
或いは、種々のターゲティングカウンター受容体をリポソームの表面に結合させることができ、例えば抗体、抗体フラグメント、炭水化物、ビタミン、及び輸送蛋白質があげられる。例えば、肝臓をターゲティングする場合、肝臓の細胞の表面上に排他的に発現されるアシアロ糖蛋白質(ガラクトース)受容体をターゲティングするために分枝鎖型のガラクトシル脂質誘導体でリポソームを修飾することができる(Kato and Sugiyama,Crit.Rev.Ther.Drug Carrier Syst.14:287,1997;Murahashiら、Biol.Pharm.Bull.20:259,1997参照)。組織ターゲティングのより一般的な手順においては、標的細胞により発現されるカウンター受容体に対して特異的なビオチン化抗体で標的細胞を予め標識する(Harasymら、Adv.Drug Deliv.Rev.32:99,1998参照)。遊離の抗体の血漿中排出の後、ストレプトアビジン結合体化リポソームを投与する。別の手順においては、ターゲティング抗体をリポソームに直接結合する(上出のHarasymら参照)。
【0283】
ポリペプチド及び抗体は蛋白質のマイクロカプセル化の標準的な手法を用いてリポソーム内にカプセル化できる(例えばAndersonら、Infect.Immun.31:1099,1981;Andersonら、Cancer Res.50:1853,1990;Cohenら、Biochim.Biophys.Acta1063:95,1991;Alvingら「Preparation and Use of Liposomes in Immunological Studies」、Liposome Technology(Vol.III)317(Gregoriadis編、CRC Press、第2版1993);Wassefら、Meth.Enzymol.149:124,1987参照)。上記した通り、治療上有用なリポソームは種々の成分を含有してよい。例えばリポソームはポリ(エチレングリコール)の脂質誘導体を含んでよい(Allenら、Biochim.Biophys.Acta1150:9,1993参照)。
【0284】
分解性重合体微小球は治療用蛋白質の高い全身レベルを維持するために設計されている。微小球は分解性重合体、例えばポリ(ラクチド−コ−グリコリド)(PLG)、ポリ無水物、ポリ(オルトエステル)、非生体分解性エチルビニルアセテート重合体から製造され、その場合、蛋白質は重合体内に捕獲される(例えばGombotz and Pettit,Bioconjugate Chem.6:332,1995;Ranade,「Role of Polymers in Drug Delivery」、Drug Delivery Systems 51−93(Ranade and Hollinger編、CRC Press 1995);Roskos and Maskiewicz,「Degradable Controlled Release Systems Useful for Protein Delivery」、Protein Delivery:Physical Systems 45−92(Sanders and Hendren編、Plenum Press 1997);Bartusら、Science 281:1161,1998;Putney and Burke,Nature Biotechnology 16:153,1998;Putney,Curr.Opin.Chem.Biol.2:548,1998を参照)。ポリエチレングリコール(PEG)−コーティングナノスフィアも又、治療用蛋白質の静脈内投与のための担体を与えることができる(例えばGrefら、Pharm.Biotechnol.10:167,1997を参照)。
【0285】
他の剤型は例えばAnsel and Popovich,Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems(Lea&Febiger,第5版1990);Gennaro(編)、Remington’s Pharmaceutical Sciences(Mack Publishing Company,第19版1995),and Ranade and Hollinger,Drug Delivery Systems(CRC Press 1996)により示されている通り、当業者により考案され得るものである。
【0286】
zB7H6ポリペプチドは遺伝子療法の範囲内で使用できる。遺伝子療法は細胞の表現型を一過性に、又は永久的に改変するための細胞内への遺伝子物質の転移として広範に定義できる。腫瘍患者内の特定の局部への遺伝子療法を介したサイトカイン、腫瘍抗原、及び追加的な同時刺激分子の送達のために多くの方法が開発中である(一般的にRosenberg(編)、Principles and practice of the biologic therapy of cancer(Lippincott Williams&Wilkins,Philadelphia,PA,第3版2000)を参照)。これらの方法はzB7H6のDNA又はRNAを使用するために適合される。
【0287】
従って、一部の実施形態においては、対象におけるNK細胞応答は、例えば本明細書に記載する可溶性zB7H6ポリペプチドを包含するzB7H6蛋白質をコードする核酸の投与によりモジュレートされる。そのようなzB7H6コード核酸を用いて、不十分なNK細胞活性を特徴とする疾患又は障害を一般的に上記において考察した通り処置することができる。核酸療法の場合、細胞から分泌されることにより上記した対象に直接投与される可溶性zB7H6ポリペプチドと同様の態様においてNKp30媒介作用を誘導する可溶性の受容体として、zB7H6ポリペプチドを発現させてよい。或いは、蛋白質が発現される細胞の表面との会合を維持している形態(例えば機能的膜貫通ドメイン又はGPI連結部による)においてzB7H6ポリペプチドを発現させてよく;そのような実施形態は局在化したNKp30媒介作用を維持するための特定の細胞又は組織へのターゲティングを容易にしたい場合に特に有用である。
【0288】
治療法において使用するためのzB7H6ポリペプチドコード核酸はDNA又はRNAであることができる。zB7H6ポリペプチドをコードする核酸セグメントは典型的には患者における意図する標的細胞におけるDNAセグメントの発現を可能にするプロモーター及びエンハンサーのような調節エレメントに連結している。血液細胞中の発現のためには、zB7H6ポリペプチドの発現を介したNK細胞媒介応答の誘導のために望ましいのと同様に、軽鎖又は重鎖免疫グロブリン遺伝子由来のプロモーター及びエンハンサーエレメント、又はCMV主要中初期プロモーター及びエンハンサーが発現を指向するために適している。連結した調節エレメント及びコーディング配列は頻繁にベクター内にクローニングされる。
【0289】
多くのウィルスベクター系が使用され、例えばレトロウィルス系(例えばLawrie and Tumin,Cur.Opin.Genet.Develop.3,102−109,1993参照);アデノウィルスベクター(例えばBettら、J.Virol.67,5911,1993参照);アデノ関連ウィルスベクター(例えばZhouら、J.Exp.Med.179,1867,1994)、ワクシニアウィルス及びトリポックスウィルスを包含するポックスファミリーに由来するウィルスベクター、シンドビス及びセムリキ森林ウィルスから誘導されたもののようなアルファウィルス属に由来するウィルスベクター(例えばDubenskyら、J.Virol.70,508−519,1996参照)、及び乳頭腫ウィルス(Oheら、Human Gene Therapy 6,325−333,1995;WO 94/12629(Wooら);Xiao&Brandsma,Nucleic Acids.Res.24,2630−2622,1996)を挙げることができる。
【0290】
核酸は細胞における機能的zB7H6発現のレベルを低下させるためにも使用してよい。例えば治療法における使用のための核酸は例えば、抑制性のポリヌクレオチド(例えばアンチセンスポリヌクレオチド、小型抑制性RNA(siRNA)、リボザイム、及び外部ガイド配列)、並びにzB7H6優性阻害変異体をコードする核酸を包含してよい。そのような核酸は機能的zB7H6とのNKp30の相互作用のレベルを低減することにより対象におけるzB7H6活性を抑制するために使用できる。
【0291】
zB7H6ポリペプチドをコードするDNA、又はそれを含有するベクターをリポソーム内にパッケージすることができる。適当な脂質及び関連の類縁体は米国特許5,208,036、5,264,618、5,279,833及び5,283,185に記載されている。zB7H6ポリペプチドをコードするベクター及びDNAは又、特定の担体に吸着させるか、それと会合させることができ、その例はポリメチルメタクリレート重合体及びポリラクチド及びポリ(ラクチド−コ−グリコリド)を包含する(例えばMcGeeら、J.Micro Encap.,1996参照)。
【0292】
遺伝子療法ベクター又はネイキッドのDNAは、典型的には全身投与(例えば静脈内、腹腔内、経鼻、胃内、皮内、筋肉内、皮下、又は頭蓋内への注入)又は局所適用(例えば米国特許5,399,346参照)による、個体患者への投与によりインビボで送達できる。DNAは遺伝子銃により投与できる(上出のXiao&Brandsma参照)。DNAコードポリペプチドは微視的な金属ビーズの表面に沈着させる。マイクロプロジェクタイルを衝撃波又は膨張ヘリウムガスで加速し、そして数細胞層の深度まで組織を貫通させる。例えばAgacetus,Inc.Middleton WI製のAccel(商標)遺伝子送達装置が適している。或いは、単に、化学的又は機械的刺激と共に皮膚上にDNAをスポットすることにより、ネイキッドのDNAを皮膚を通過させて血流中に至らせることができる(例えばWO95/05853参照)。
【0293】
別の変形例においては、zB7H6ポリペプチドをコードするベクターはエクスビボの細胞、例えば個体患者から体外移植された細胞(例えばリンパ球、骨髄吸引物、組織生検試料)又はユニバーサルドナーの造血幹細胞に送達し、その後、通常はベクターを取り込んでいる細胞が得られるように選別した後に、患者に細胞を再移植することができる。
【0294】
特定の実施形態においては、方法は更に、標的細胞又は組織を特異的に認識するウィルス又は他の送達ベヒクルを使用する(例えば腫瘍ターゲティングウィルス、又は腫瘍細胞を特異的に認識する他の送達ベヒクル)。
【0295】
本明細書に記載した医薬組成物は又、複合療法の範囲において使用してよい。「複合療法」という用語は本明細書においては、zB7H6関連の組成物及び他剤の少なくとも1つの治療有効用量において対象が投与されることを意味する。zB7H6関連組成物は、例えば、可溶性zB7H6ポリペプチド、抗zB7H6抗体(例えば抗zB7H6抗体−薬剤結合体を包含する)、zB7H6模倣剤、例えばzB7H6抗イディオタイプ抗体、zB7H6コードポリヌクレオチド、抑制性ポリヌクレオチド、又は、zB7H6の生物学的活性、zB7H6生物学的活性の抑制、又はzB7H6への特異的結合を示す他剤(例えばzB7H6発現細胞への治療剤のターゲティングの範囲において)であってよい。
【0296】
例えば癌の免疫療法の範囲においては、zB7H6の生物学的活性を有する組成物は化学療法、放射線照射、及び骨髄剥離と組み合わせた免疫刺激剤として使用できる。zB7H6ポリペプチド及びzB7H6の生物学的活性を有する他剤は従来型の化学療法又は放射線照射と相乗作用的に作用することができる。例えば、リンパ腫及び腎細胞癌の前臨床モデルにおいて、ドキソルビシンとのIL−2の組み合わせ(Ehrkeら、Cancer Immunol.Immunother.42:221−30,1996)、又は放射線とのIL−2(Younesら、Cell Immunol.165:243−51,1995)又はIFN−α(Nishisakaら、Cytokines Cell Mol Ther.6:199−206,2000)の組み合わせは単一の剤の使用を超えて優れた結果をもたらしている。この設定において、zB7H6ポリペプチド及びzB7H6ポリペプチド模倣剤は、腫瘍負荷を更に低減し、そして化学療法剤によるより効率的な殺傷を可能にすることができる。更に又、致死用量の化学療法又は放射線照射と後続する骨髄移植又は幹細胞再構成は、十分小さいレベル(例えば最小残存疾患)まで腫瘍負荷を低減することによりzB7H6媒介抗腫瘍作用が更に良好に呈されるようにする。この種の処置計画の例は骨髄剥離及び移植の後の抗癌応答を変調させるためにIL−2及びIFN−αの使用を包含する(Porrataら、Bone Marrow Transplant.28:673−80,2001;Slavin and Nagler,Cancer J.Sci.Am.Suppl 1:S59−67,1997;Feferら、Cancer J.Sci.Am.Suppl 1:S48−53,1997)。リンパ腫及び他の癌の場合には、化学療法剤と相対比較していつzB7H6関連組成物を使用するかに応じて、zB7H6関連組成物は、腫瘍細胞に対する化学療法剤の作用に直接相乗するように使用するか、又は免疫系を刺激するために化学療法の後に使用してよい。両方の可能性を利用するためのプロトコルは当業者が考案してよい。
【0297】
zB7H6生物学的活性を示す本発明の組成物は、種々のサイトカイン及び同時刺激/抑制分子を包含する他の免疫調節化合物と組み合わせて使用できる。例えば、抗癌応答を媒介する場合のzB7H6のNK細胞刺激活性は、zB7H6活性を有する組成物を他のクラスの免疫調節分子と共に使用する場合に、患者において増強できる。これらは、限定しないが、追加的なサイトカインの使用を包含する。例えばIL−2及びIL−12の複合使用はT細胞リンパ腫、扁平上皮細胞癌、及び肺癌において有益な作用を示す(Zakiら、J.Invest.Dermatol.118:366−71,2002;Liら、Arch.Otolaryngol.Head Neck Surg.127:1319−24,2001;Hirakiら、Lung Cancer 35:329−33,2002参照)。更に又、zB7H6活性を有する組成物はCD137の活性化(Wilcoxら、J.Clin.Invest.109:651−9,2002参照)又はCTLA4の抑制(Chambersら、Ann.Rev.Immunol.19:565−94,2001)のような免疫系のエフェクター細胞上に観察される種々の細胞表面分子を同時刺激する試薬と組み合わせることができる。或いは、zB7H6活性を有する組成物はTRAIL関連受容体と相互作用することにより腫瘍細胞アポトーシスを誘導する試薬と共に使用される(例えばTakedaら、J.Exp.Med.195:161−9,2002;Srivastava,Neoplasia 3:535−46,2001参照)。そのような試薬はTRAILリガンド、TRAILリガンド−Ig融合物、抗TRAIL抗体等を包含する。
【0298】
他の変形例においては、zB7H6活性を有する組成物はモノクローナル抗体療法と組み合わせて使用する。そのような複合療法は癌の治療のために特に有用であり、その場合、モノクローナル抗体の使用は、多くの腫瘍に対して標準的な慣行になりつつあり、例えば非ホジキンリンパ腫(リツキシマブ、即ちRITUXAN(登録商標))、白血病の型(ゲムツズマブ、即ちMYLOTARG(登録商標))、乳細胞癌(トラスツズマブ、即ちHERCEPTIN(登録商標))、及び結腸癌(セツキシマブ、即ちERBITUX(登録商標))が挙げられる。抗体が抗癌作用を媒介する1つの機序は、免疫系の細胞、例えばNK細胞、マクロファージ、及び好中球が、抗体複合体により結合される細胞を殺傷する、抗体依存性細胞媒介細胞毒性(ADCC)と称される過程を介している。従って、NKp30媒介NK細胞活性をトリガーするその免疫調節性のために、zB7H6は抗体療法の有効性を増強するために使用できる。この種の処置パラダイムの例はホジキン及び非ホジキンリンパ腫の処置のためのRITUXANTM(リツキシマブ)とIL−2、IL−12、又はIFN−αの複合使用を包含する(Keilholzら、Leuk.Lymphoma 35:641−2,1999;Ansellら、Blood 99:67−74,2002;Carsonら、Eur.J.Immunol.31:3016−25,2001;Sacchiら、Haematologica 86:951−8.,2001参照)。
【0299】
医薬組成物は本明細書に記載した治療用ポリペプチド又はポリヌクレオチドを含む容器を含むキットとして供給してよい。治療用分子は、例えば単用量又は多用量のための注射用溶液の形態において、又は注射前に再建される滅菌粉末として提供できる。或いは、そのようなキットは治療用ポリペプチド又はポリヌクレオチドの投与のための乾燥粉末分酸器、液体エアロゾル発生器、又はネブライザーを包含できる。そのようなキットは更に医薬組成物の適応症及び使用法に関する書面による情報を含んでよい。例えばそのような情報はzB7H6組成物がzB7H6に対する過敏症の既往歴のある患者では禁忌であることの宣言文を包含してよい。
【0300】
B.癌治療
1.癌の型
本明細書に記載した通り、zB7H6は刺激性NK細胞受容体、NKp30に対する活性化リガンドである。そのため、特定の変形例においてはNKp30に対抗するアゴニスト性のzB7H6活性を有する剤は、NKp30媒介NK細胞細胞溶解活性の誘導を介したNK細胞による直接の腫瘍殺傷を増強することにより、癌治療のための免疫刺激剤として使用してよい。更に又、本明細書に記載した試験により示されるとおり、zB7H6は種々の腫瘍誘導細胞上で発現される。従って、他の変形例においては、zB7H6抗体はFc受容体及び補体蛋白質C1qへのFcの結合を介してADCC又はCDC経路を活性化することによりzB7H6発現細胞の殺傷を指向するために使用してよい。更に他の変形例においては抗zB7H6抗体に結合体化した細胞毒性剤を含む抗zB7H6抗体−薬剤結合体を使用することによりzB7H6発現癌細胞に細胞毒性剤を送達してよく、その場合、細胞毒性剤は癌細胞を枯渇させるか、その成長を抑制することにより治療効果を発揮する。
【0301】
以下の表4は標的組織により主に組織化した、本発明による処置に適する一部の癌を一覧列挙している。
【0304】
【表4-3】
上記下癌の一部は、腫瘍応答に対する本発明によるzB7H6関連の剤の作用を評価するための該当する動物モデルの一部を含めて、以下に更に詳細に考察する。
【0305】
a.慢性骨髄性白血病
慢性骨髄性白血病(CML)は殆ど成人が罹患する癌の稀な型である。これは顆粒球(白血球の主な型の1つ)の癌である。CMLにおいては顆粒球が生産され、そしてそれらはそれらが未成熟であり適切に機能できない場合には血液中に放出される。未成熟の白血球は芽として知られている。他の型の血球の生産もまた途絶する。通常は白血球は秩序のある制御された態様において自身を修復して再生するが、慢性骨髄性白血病においてはその過程は制御からはずれ、そして細胞は異常に分裂及び成熟し続ける。疾患は通常は極めて緩徐に発症し、それが「慢性」骨髄性白血病と称される理由である。
【0306】
CMLは緩徐に発症(進行)するため、その早期の段階において検出することは困難である。別の理由で血液試験を行ったときにのみ発見される場合もある。CMLの症状は頻繁には曖昧で非特異的であり、そして骨髄における異常な白血球の増大した数量及び正常な血液細胞の低減した数量により誘発され:腹部の左側の充満感又は柔軟な塊状物を伴う。その理由はCMLにおいては脾臓が肥大する場合があるためである。脾臓は腹部左側の肋骨の真下に位置する臓器である。それは血液を濾過し、そして使い古された赤血球を除去する。脾臓の膨大はまた胃に対して圧力をもたらす場合があり、これが消化不良と食欲不振をもたらす場合があり、一部の人間は疲労を感じ血色が悪くなり、血液中の血小板の低下した数量による赤血球の欠乏(貧血)により、一部の人間は自身が容易に出血又は挫傷するようになったことに気づく場合がある。通常よりも挫傷し易くなったことに加えて、特殊な型の挫傷が見られる場合がある。これは通常は脚部上又は口腔内に観察される小型の血液様斑紋よりなり、そして点状出血と称される。女性は自身の月経が極めて重くなったことに気づく場合がある。これらの症状及び兆候は稀であるが、一部の人間は全身掻痒に気づく場合がある。慢性骨髄性白血病は如何なる年齢においても生じる場合があるが、より一般的には中高年が罹患する。小児では稀である(cancerbacup インターネットウェブサイト)。腫瘍応答に対する剤(例えば抗zB7H6抗体−薬剤結合体)の作用は例えばヒト腫瘍異種移植片モデルにおいて、免疫不全マウスに移植したヒトCML細胞を用いて評価することができる(例えばRen,Leukemia and Lymphoma 8:1549−1561,2002;Van Etten,Blood Cells Mol.Dis.27:201−205,2001;Wong and Witte,Oncogene 20:5644−5659,2001参照)。
【0307】
b.多発性骨髄腫
多発性骨髄腫はプラズマ細胞と称される特定の白血球が罹患する癌の型である。プラズマ細胞が癌に関与する場合、身体はこれらの細胞を更に製造し続ける。不必要なプラズマ細胞は、全てが異常であり全てが厳密に同じであるが、骨髄腫細胞と称される。骨髄腫細胞は骨髄中に、そして骨の硬質の外側部分中に収集される傾向がある。場合によりそれらは1つの骨にのみ収集され、単一の固まり、即ち腫瘍を形成し、これはプラズマ細胞腫と称される。しかしながら大部分の場合においては、骨髄腫細胞は多くの骨に収集され、頻繁には多くの腫瘍を形成し、そして他の問題も誘発する。それが起こった場合、疾患は多発性骨髄腫と称される。
【0308】
多発性骨髄腫を有する者は異常に多数の同一のプラズマ細胞を有しているため、それらは又1つの型の抗体を多く持ちすぎている。これらの骨髄腫細胞及び抗体は多くの重大な医学的問題点を誘発する場合がある。(1)骨髄腫細胞の数量が増大するに従って、それらは骨に損傷を与えて脆弱化させ、疼痛及び場合により骨折を誘発する。骨の疼痛は患者を動きにくくさせる場合がある。(2)骨が損傷を受けると、カルシウムが血液中に放出される。これが高カルシウム血症、即ち血中に過剰量のカルシウムをもたらす場合がある。高カルシウム血症は食欲消失、吐き気、のどの渇き、疲労、筋肉脆弱、不安、及び混乱を誘発する場合がある。(3)骨髄腫細胞は正常なプラズマ細胞及び免疫系にとって重要である他の白血球を骨髄が形成することを妨げる。患者は感染及び疾患に対抗できなくなる場合がある。(4)癌細胞も又新しい赤血球の成長を防止して貧血を誘発する場合がある。貧血を有する患者は異常な疲れを感じるか脆弱化する場合がある。そして(5)多発性骨髄腫患者は重篤な問題を自身の腎臓に有する場合がある。過剰な抗体蛋白質及びカルシウムは腎臓が適切に血液を濾過及び浄化することを妨げる。多発性骨髄腫の症状は疾患がどのように進行しているかに応じて異なる。疾患の最初期の段階では、症状はない場合がある。症状は実際に起こる場合は、患者は一般的には骨疼痛を、頻繁には背部又は肋骨部に有する。患者は又、破壊された骨、脆弱感、疲労、体重減少、又は反復する感染症を有する場合がある。疾患が進行すると、症状は吐き気、嘔吐、便秘、排尿障害、及び脚部の脆弱感又は麻痺を含む場合がある(National Cancer Instituteのインターネットウェブサイト)。腫瘍応答に対する剤(例えば抗zB7H6抗体−薬剤結合体)の作用はMiyakawaら、Biochem.Biophys.Res.Commun.313:258−62,2004に記載されている通り、免疫不全マウスにおけるヒト腫瘍異種移植片モデルにおいて評価できる。
【0309】
c.非ホジキンリンパ腫
非ホジキンリンパ腫はリンパ系の癌の1つの型である。リンパ腫には2つの主要な型が存在する。1つはホジキン病(最初に報告したホジキン博士に因む)と称される。もう1つは非ホジキンリンパ腫と称される。非ホジキンリンパ腫には約20種の異なる型が存在する。ホジキン病の大部分の例においては、リード−スターンバーグ細胞として知られる特定の細胞が生検試料中に観察される。この細胞は他のリンパ腫においては通常観察されないため、それらは非ホジキンリンパ腫と称される。これは極めて大きな相違とは考えられないが、ホジキン及び非ホジキンリンパ腫の治療は極めて異なる場合があるため、重要となる。
【0310】
頻繁には、非ホジキンリンパ腫の第1の兆候は頚部、腋窩又は鼠径部のリンパ節の無痛の腫脹である。他の症状は以下のもの、即ち:寝汗又は原因不明の高体温(発熱);食欲喪失、原因不明の体重減少及び過剰な疲労感の何れかを包含する場合があり;小児は咳又は呼吸困難を発症する場合がある。小児等は又腹痛を訴える場合があり、或いは子供の腹部の塊状物又は全身の皮膚の持続性の掻痒感に気づく場合がある(cancerbacup インターネットウェブサイト)。腫瘍応答に対する剤(例えば抗zB7H6抗体−薬剤結合体)の作用はAnsellら、Leukemia 18:616−23,2004に記載されているものと同様の非ホジキンリンパ腫異種移植片モデルにおいて評価できる。
【0311】
最も一般的に使用されている非ホジキンリンパ腫の分類はREAL分類系(Ottensmeier,Chemico−Biological Interactions 135−136:653−664,2001)である。特定の免疫学的なマーカーがリンパ腫の分類のために発見されている。例えば、濾胞性リンパ腫マーカーはCD20+、CD3−、CD10+、CD5−を包含し;小リンパ球性リンパ腫マーカーはCD20+、CD3−、CD10−、CD5+、CD23+を包含し;辺縁域B細胞リンパ腫マーカーはCD20+、CD3−、CD10−、CD23−を包含し;広汎性大型B細胞リンパ腫マーカーはCD20+、CD3−を包含し;皮膜細胞リンパ腫マーカーはCD20+、CD3−、CD10−、CD5+、CD23+を包含し;末梢T細胞リンパ腫マーカーはCD20−、CD3+を包含し;一次縦隔大型B細胞リンパ腫マーカーはCD20+、CD3−を包含し、リンパ芽球性リンパ腫マーカーはCD20−、CD3+、Tdt+を包含し、そしてバーキットリンパ腫マーカーはCD20+、CD3−、CD10+、CD5−を包含する(Decision Resourses,Non−Hodgkins Lymphoma,Waltham,MA.,Feb.2002)。
【0312】
インターナショナル・ワーキング・フォーミュレーションによる非ホジキンリンパ腫(NHL)の臨床上の分類は疾患を以下のサブタイプ:(1)低等級(無痛性)の疾患、例えば小型のリンパ球性であり、慢性リンパ球性の白血病(SC)と合致したもの;濾胞性、主に小型の分割細胞(FSC);濾胞性、混合小型の分割された、そして大型の細胞(FM);(2)中等級の疾患、例えば濾胞性、主に大型の細胞(FL);広汎性、小型の分割細胞(DSC);広汎性の混合型、小型及び大型の細胞(DM);広汎性、大型の分割された、又は非分割の細胞(DL);そして(3)高等級の疾患、例えば免疫芽球、大型の細胞(IBL);リンパ芽球、屈曲又は非屈曲細胞(LL);及び小型の非分割細胞、バーキット、又は非バーキット(SNC;(The Non−Hodgkin’s Lymphoma Pathologic Classification Project,Cancer 49:2112−35,1982)に細分している。アン・アルバー・ステージング系はNHLを有する患者の病期判定のために一般的に使用されている。ステージIとは単一のリンパ節領域の関与、又は単一のリンパ外の臓器又は部位の局所的関与を意味する。ステージIIは横隔膜の同じ側の2つ以上のリンパ節領域の関与、又は節外の部位又は臓器及び横隔膜の同じ側の1つ以上のリンパ節領域の局所的関与を意味する。ステージIIIはおそらくは節外の臓器又は部位の局所的関与を伴った横隔膜の両側のリンパ節領域の関与を意味する。ステージIVはリンパ節の関与を伴うか伴わない1つ以上の遠位の節外の臓器のびまん性又は播種性の関与を意味する(「Lymphoid neoplasms」、American Joint Committee on Cancer.:AJCC Cancer Staging Manual第6版New York,NY:Springer,2002,pp.393−406)。リツキシマブは無痛性及び濾胞性のリンパ腫を治療する場合に有効であることがわかっている(Boyeら、Annals of Oncol.14:520−535,2003)。
【0313】
d.子宮頸癌
子宮頚部は膣に向けて開口している子宮の首部である。子宮頸癌は、子宮頚部癌腫とも称され、子宮頚部表面上の異常な細胞から発生する。子宮頸癌は女性が罹患する最も一般的な癌の1つである。子宮頸癌は通常は子宮頚部の表面上の細胞における形成異常、即ち前癌性の変化に先行される。これらの異常な細胞は侵襲性の癌へと進展する場合がある。癌が生じた後は、それは4つの病期を経由して進行する場合がある。病期は癌の拡張の範囲により定義される。癌が拡張するほど、処置はより広範となる。子宮頸癌には2つの主要な型が存在し、即ち(1)扁平上皮型(類表皮癌):これは最も一般的な型であり、子宮頸癌の約80%〜85%に相当する。この癌は性感染病により誘発される場合がある。そのような性病の1つは性病いぼを誘発するヒト乳頭腫ウィルスである。癌性腫瘍は子宮頚部の上及び内部に成長する。この癌は一般的に子宮頚部の表面で始まり、そしてパパニコラウスミアにより早期の段階で診断される場合がある。(2)腺癌:この型の子宮頸癌は子宮頚部の管内の子宮頚管腺中の組織から発生する。早期の子宮頸癌は通常は症状を誘発しない。癌は通常はパパニコラウスミア及び骨盤検査により検出される。子宮頸癌のより後の病期は、予測されない時期、例えば月経の中間、性交後、又は閉経後における異常な膣出血又は血液混入分泌物を誘発する。異常な膣分泌は混濁又は出血性である場合があるか、又は、悪臭を伴った粘液を含有する場合がある。癌の進行した病気は疼痛を誘発する場合がある(ミシガン大学ヘルスシステムインターネットウェブサイト)。腫瘍応答に対する剤(例えば抗zB7H6抗体−薬剤結合体)の作用はDownsら、Gynecol.Oncol.98:203−10,2005;及びLiら、Int.J.Gynecol.Cancer 15:301−7,2005に記載されているものと同様のヒト腫瘍異種移植片モデルにおいて評価できる。
【0314】
e.頭頚部腫瘍
頭頚部の大部分の癌は癌腫と呼ばれる型のものである(特に扁平上皮細胞癌腫)。頭頚部の癌腫は口腔、鼻、喉又は耳の内張、又は舌を被覆している表面層を形成する細胞において始まる。しかしながら、頭頚部の癌は細胞の他の型からも発生する場合がある。リンパ腫はリンパ系の細胞から発生する。肉腫は筋肉、軟骨又は血管を形成している支持細胞から発生する。黒色腫は眼及び皮膚に色素を与えているメラノサイトと称される細胞から始まる。頭頚部癌の症状はそれがどこにあるかにより変動し、例えば舌の癌は一部の不明瞭言語を誘発する場合がある。最も一般的な症状は、数週間以内には治癒しない頭部又は頚部の潰瘍又は糜爛;嚥下困難、又は咀嚼又は嚥下時の疼痛;呼吸又は会話の困難、例えば持続性の雑音性呼吸、不明瞭言語又は嗄声;口腔の麻痺感;持続性の鼻腔閉鎖、又は鼻出血;持続性の耳痛、耳鳴り、又は聴覚困難;口腔又は頚部の腫脹又は塊状物;顔面又は上顎部の疼痛であり;喫煙者、噛み煙草使用者においては、前癌性の変化は口腔の内張、又は舌上において生じる場合がある。これらは持続性の白色斑紋(白斑症)又は赤色斑紋(紅板症)として生じる場合がある。それらは通常は無痛であるが、場合により糜爛性となる場合があり、そして出血する場合がある(Cancerbacup インターネットウェブサイト)。腫瘍応答に対する剤(例えば抗zB7H6抗体−薬剤結合体)の作用はKuriakoseら、Head Neck22:57−63,2000;Caoら、Clin.Cancer Res.5:1925−34,1999;Braakhuisら、Cancer Res.51:211−4,1991;及びBaker,Laryngoscope 95:43−56,1985に記載されているものと同様のヒト頭頚部腫瘍異種移植片モデルにおいて評価できる。
【0315】
f.脳の癌
脳組織において開始される腫瘍は脳の原発腫瘍として知られている。原発脳腫瘍は細胞型又はそれらが開始される脳の部分に従って命名される。最も一般的な原発脳腫瘍は神経膠腫である。それらは神経膠細胞において開始される。多くの型の神経膠腫が存在する。(1)星状細胞腫−星状細胞と称される星型の神経膠細胞から腫瘍が生じる。成人においては、星状細胞腫は最も頻繁には大脳で生じる。小児においては、それらは脳幹、大脳、及び小脳において起こる。第III等級の星状細胞腫は場合により未分化星状細胞腫と称される。第IV等級の星状細胞腫は通常は多形性神経膠芽細胞腫と称される。(2)脳幹神経膠腫−腫瘍は脳の最下部において起こる。脳幹神経膠腫は最も頻繁には若年小児及び中年成人において診断される。(3)脳室上衣細胞腫−腫瘍は脳室又は脊髄の中心管の内張りを形成する細胞から生じる。それらは最も一般的には小児及び若年成人において観察される。(4)稀突起神経膠細胞−この稀な腫瘍は神経を被覆して保護する脂肪性物質を構成する細胞から生じる。これらの腫瘍は通常は大脳において生じる。それらは緩徐に成長し、そして通常は周囲の脳組織内には拡張しない。それらは中年成人において最も一般的である。脳腫瘍の症状は腫瘍の大きさ、型、及び位置により異なる。症状は腫瘍が神経を圧迫するか、又は脳の特定の区域に損傷を与える場合に生じる場合がある。それらは又、脳が浮腫を生じるか流体が頭蓋内に蓄積する場合に生じる場合がある。脳腫瘍の最も一般的な症状は頭痛(通常は朝に悪化する);吐き気又は嘔吐;発語、視野、又は聴力の変化;平衡感覚又は歩行の問題;気分、人格、又は集中能力の変化;記憶障害;筋肉の収縮又は攣縮(癲癇発作又は痙攣);及び腕部又は脚部の麻痺感又は刺痛(National Cancer Instituteのインターネットウェブサイト)である。腫瘍応答に対する剤(例えば抗zB7H6抗体−薬剤結合体)の作用はBelloら、Clin.Cancer Res.8:3539−48,2002に記載されているものと同様のヒト神経膠腫異種移植片モデルにおいて評価できる.
g.甲状腺癌
乳頭性及び濾胞性の甲状腺癌は全甲状腺癌の80〜90%に相当する。両方の型が甲状腺の濾胞性細胞において開始される。大部分の乳頭性及び濾胞性の甲状腺癌は緩徐に成長する傾向がある。それらが早期に検出されれば、大部分は処置が成功する。髄質性の甲状腺癌は甲状腺癌症例の5〜10パーセントに相当する。それは濾胞性細胞ではなくC細胞において生じる。髄質性甲状腺癌はそれが身体の他の部分に拡張する前に発見して処置されれば抑制が容易になる。未分化型の甲状腺癌は甲状腺癌の最も一般性が低い型である(症例の僅か1〜2パーセント)。これは濾胞性細胞において生じる。癌細胞は高度に異常であり、認識が困難である。癌のこの型は、癌細胞が極めて急速に成育及び拡張する傾向はあるため、通常は抑制が極めて困難である。早期の甲状腺癌は症状を誘発しない場合が多い。しかし癌が成長するに従って、症状は、喉仏近傍の頚部の前面における塊状物又は結節;嗄声又は正常な声で話すことの困難;特に頚部の腫脹したリンパ節;嚥下及び呼吸の困難;又は喉又は頚部の疼痛(National Cancer Instituteのインターネットウェブサイト)を包含するようになる場合がある。腫瘍応答に対する剤(例えば抗zB7H6抗体−薬剤結合体)の作用はQuidvilleら、Endocrinology 145:2561−71,2004に記載されているものと同様のヒト腫瘍異種移植片モデルにおいて評価できる。
【0316】
h.肝臓癌
原発性肝臓癌には2つの異なる型が存在する。最も一般的な種類はヘパトーマ又は肝細胞癌(HCC)と称されるものであり、そして肝臓の主要な細胞(肝細胞)から生じる。この型は通常は肝臓に限局されるが、場合により他の臓器に拡張する。これは殆どが肝硬変と称される肝臓病を有する者に起こる。線維層板ヘパトーマと称されるヘパトーマのより稀なサブタイプが存在し、これはより若年層で生じる場合があり、そして過去の肝臓病とは関係しない。他の型の原発肝臓癌は胆管癌腫又は胆管の癌と称され、その理由はそれが胆管の内張り細胞において開始するためである。ヘパトーマを発症する者の大部分は通常は肝硬変と称される状態も有している。これは、感染及び長期に渡る過剰な飲酒を包含する種々の原因による肝臓全体に渡る微細な瘢痕形成である。しかしながら、肝硬変を有する者の低比率のみが原発肝臓癌を発症する。B型肝炎又はC型肝炎ウィルスの何れかによる感染は肝臓癌をもたらす場合があり、そして又、ヘパトーマ発症の危険性を増大させる肝硬変の原因となる場合がある。身体における鉄の過剰な沈着を誘発するヘモクロマトーシスと称される稀な状態を有する者は、ヘパトーマを発症する可能性が高い。本発明のzB7H6関連の剤(例えば可溶性zB7H6ポリペプチド又は抗zB7H6抗体−薬剤結合体)は肝細胞癌腫に関連する状態又は症状の少なくとも1つを、処置、防止、進行抑制、発症遅延、及び/又は、重症度を低下又は抑制するために使用してよい。肝細胞癌腫は、肝炎(例えばA型肝炎、B型肝炎、C型肝炎及びD型肝炎)の感染に関連している場合としていない場合がある。腫瘍応答に対する剤(例えば抗zB7H6抗体−薬剤結合体)の作用はZhouら、Clin.Cancer Res.9:6030−7,2003;及びHuynhら、J.Cell Mol.Med.2008(電子出版物、「Postprint」、10.1111/j.1582−4934.2008.00364.x,2008,Blackwell Synergyウェブサイト)に記載されているものと同様のヒト腫瘍異種移植片モデルにおいて評価できる。
【0317】
i.肺癌
腫瘍応答に対する剤(例えば抗zB7H6抗体−薬剤結合体)の作用はヒト小細胞/非小細胞肺癌異種移植片モデルにおいて評価できる。慨すればヒト腫瘍を免疫不全マウスに移植し、そしてこれらのマウスに剤、例えば抗zB7H6抗体−薬剤結合体を、単独、又は他剤と組み合わせて処置する。処置の薬効は腫瘍の成長を評価することにより明らかにできる(Nematiら、Clin Cancer Res.6:2075−86,2000;及びHuら、Clin.Cancer Res.10:7662−70,2004)。
【0318】
2.固形腫瘍に関する終点及び抗腫瘍活性
各プロトコルは腫瘍の応答の評価を異なって定義している場合があるが、例示されるガイドラインはClinical Research Associates Manual(Southwest Oncology Group,CRAB,Seattle,WA,October 6,1998,updated August 1999)(「CRA Manual」)に記載されている。CRA Manual(第7章「Response Accessment」参照)によれば、腫瘍の応答は全ての計測可能な患部又は転移の低減又は排除を意味する。疾患はそれが医療用写真又はX線、コンピューター化された軸方向の断層撮影(CT)、核磁気共鳴画像化(MRI)、又は触診により明確に定義された辺縁を有する二次元計測可能な患部を含む場合に、一般的に計測可能とみなされる。評価可能な疾患とは、疾患が一次元の計測可能な患部、辺縁が明確に定義されない塊状物、両方の直径が0.5cm未満の患部、カット間の距離よりも小さい何れかの直径を有するスキャン上の患部、直径2cm未満の触診可能な患部、又は骨疾患を含むことを意味する。評価不能な疾患は胸水、腹水、及び間接的な証拠により報告されている疾患を包含する。進行していない以前に放射線照射された患部もまた一般的には評価不能とみなされる。
【0319】
他覚的状態に関する基準が固形腫瘍の応答を評価するためのプロトコルのために必要である。代表的な基準は以下のもの:(1)完全応答(CR)、全ての計測可能及び評価可能な疾患の完全な消失として定義;新患部無し;疾患関連症状無し;評価不能な疾患の証拠無し;(2)部分的応答(PR)、全ての計測可能な患部の直交する直径の積の和においてベースラインから50%以上の低下として定義;評価可能な疾患の進行無し;新規患部無し;少なくとも1つの計測可能な患部を有する患者に適用;(3)進行、ベースラインと同じ手法を用いて観察された最小の和を超えた計測可能な患部の積の和における50%又は10cm2増大、又は何れかの評価可能な疾患の明確な悪化、又は消失していた何れかの患部の再出現、又は何れかの新規患部の出現、又は死亡又は悪化状態(当該癌に無関係でない限り)により評価のために再来することが不可能であること、として定義される;(4)安定又は無応答、CR、PR、又は進行に関して格付けされないものとして定義(上出Clinical Research Associates Manual参照)を包含する。
【0320】
癌科学の分野において許容されているその他の終点は全体的生存性(OS)、無疾患生存(DFS)、他覚的応答率(ORR)、進行までの時間(TTP)、及び無進行生存(PFS)を包含する(Guidance for Industry:Clinical Trial Endpoints for the Approval of Cancer Drugs and Biologics,April 2005,Center for Drug Evaluation and Research,FDA,Rockville,MD参照)。
【0321】
3.複合癌療法
前述において考察した通り、特定の実施形態においては、zB7H6ポリペプチド、抗体又は他のzB7H6関連の剤は、疾患又は障害の処置のために第2の剤と組み合わせて使用される。癌を処置するために使用される場合、本発明のzB7H6ポリペプチド、抗体、又は他の剤、例えば抗zB7H6抗体−薬剤結合体は、従来の癌療法、例えば手術、放射線療法、化学療法、又はこれらの組み合わせと組み合わせて使用してよい。特定の態様において本発明によるzB7H6関連の剤を用いた複合癌療法のために有用な他の治療剤は抗血管形成剤を包含する。一部の他の態様において複合療法のために有用な他の治療剤は例えばEGFR、ErbB2(Her2)、ErbB3、ErbB4、又はTNFのような腫瘍の成長に関与する特定の因子のアンタゴニストを包含する。一部の態様において、本発明による剤はサイトカイン(例えば腫瘍に対抗する免疫応答を刺激するサイトカイン)と同時投与される。癌の処置に特に適している複合療法の例は後述においてより詳細に説明する。
【0322】
a.腫瘍関連抗原をターゲティングする抗体
以前に記載した通り、特定の腫瘍は独特の抗原、系統特異的な抗原、又は正常細胞と相対比較して過剰量で存在する抗原の何れかを示すため、抗体療法は癌の処置において特に良好な結果を与えている。モノクローナル抗体療法の抗腫瘍活性に関連する機序の1つは抗体依存性細胞性細胞毒性(ADCC)である。ADCCにおいて、モノクローナル抗体は標的細胞(例えば癌細胞)に結合し、そして、モノクローナル抗体に対する受容体を発現している特定のエフェクター細胞(例えばNK細胞、単球、顆粒球)はモノクローナル抗体/標的細胞複合体に結合し、これにより標的細胞の死滅がもたらされる。従って、本発明の特定の変形例においては、zB7H6ポリペプチド、抗体、又は癌に対抗する薬効を有する他のzB7H6関連の剤を腫瘍関連抗原に対抗したモノクローナル抗体と同時投与する。ADCC又はCDCの何れかを介して抗腫瘍活性を誘導するために抗zB7H6抗体を利用するこのような変形例において、或いは抗zB7H6抗体−薬剤結合体の関連においては、組み合わせて使用されるモノクローナル抗体は第2の腫瘍特異的又は腫瘍関連の抗原に対する抗体となる。MAbの用量及び投薬計画は同時投与する特定の抗体に帰属する薬物動態及び毒性動態の特性に基づいており、そして、これらの作用を最適としつつ、zB7H6ポリペプチド、抗体、又は他のzB7H6関連の剤の投与に関連する場合がある何れかの毒性を最小限にしなければならない。
【0323】
本明細書に記載したzB7H6関連の剤及び区関連抗原に対抗するモノクローナル抗体を用いた複合療法は、第1選択肢の治療が失敗している場合に適応される場合があり、そして第2選択肢の治療とみなされる場合がある。本発明は又、新規に診断され、そして以前には抗癌剤の治療を受けていなかった患者集団(新規患者)及び以前には如何なるモノクローナル抗体療法も受けていなかった患者(ナイーブ患者)における第1選択肢の治療として組み合わせを使用することを提供する。
【0324】
本明細書に記載したzB7H6関連の剤は又、腫瘍細胞の何れかの直接の抗体媒介ADCC又はCDCの非存在下でおける腫瘍関連抗原に対抗するモノクローナル抗体を用いた複合療法においても有用である。例えば、免疫系における抑制性のシグナルをブロックする抗体は増強された免疫応答をもたらすことができる。例としては、(1)細胞毒性Tリンパ球関連抗原4(CTLA−4)、プログラム死−1(PD−1)、B及びTリンパ球減衰物質(BTLA)のような、抑制性の機能を有するB7Rファミリーの分子に対する抗体;(2)IL−10、TGFβのような抑制性サイトカインに対抗する抗体;及び(3)抗CD25又はCTLA−4のような抑制性の細胞の機能を枯渇又は阻害する抗体が挙げられる。例えばマウス及びヒトの両方における抗CTLA4MAbは、免疫抑制性の調節T細胞(Treg)の機能を抑制するか、又はAPC又は腫瘍細胞の上のB7−1又はB7−2分子へのT細胞上のCTLA−4の結合を介して伝達される抑制シグナルを抑制するかの何れかであると考えられている。
【0325】
表6は本発明による複合療法が可能である、認可された、又は試験中のモノクローナル抗体を非網羅的に列挙したものである。
【0326】
【表5】
b.チロシンキナーゼ阻害剤
一部の実施形態においては、zB7H6ポリペプチド、抗体、又は本明細書に記載した他のzB7H6関連の剤は、チロシンキナーゼ阻害剤と組み合わせて使用される。チロシンキナーゼはアデノシントリホスフェートから標的蛋白質へのγホスフェート基の転移を触媒する酵素である。チロシンキナーゼは受容体及び非受容体蛋白質チロシンキナーゼとして分類できる。それらは多様な正常細胞の過程、例えば成長受容体を介した活性化において必須な役割を果たしており、そして種々の細胞型の増殖、生存及び成長に影響している。更に又、それらは腫瘍細胞増殖を促進し、抗アポトーシス作用を誘導し、そして血管形成及び転移を促進すると考えられている。成長因子を介した活性化に加えて、体性の突然変異を介した蛋白質キナーゼの活性化も腫瘍形成の共通の機序である。発見された突然変異の一部は、B−Rafキナーゼ、FLt3キナーゼ、BCR−ABLキナーゼ、c−KITキナーゼ、表皮成長因子(EGFR)及びPDGFR経路におけるものである。Her2、VEGFR及びc−Metは癌の進行及び腫瘍形成に関与を示唆されている他の重要な受容体チロシンキナーゼ(RTK)経路である。多数の細胞過程がチロシンキナーゼにより開始されるため、それらは阻害剤の重要な標的として発見されている。
【0327】
チロシンキナーゼ阻害剤(TKI)は、受容体及び非受容体のチロシンキナーゼの両方の触媒性チロシンキナーゼドメインへの結合に関してアデノシントリホスフェート(ATP)と競合する、細胞内部で作用する小分子である。この競合的結合は下流のシグナリングの開始をブロックし、成長、生存、及び血管形成のようなこれらのシグナリング事象に関連するエフェクター機能をもたらす。構造的及びコンピューターによる手順を用いて、多くの医学的化学コンビナトリアルライブラリに由来する多くの化合物がチロシンキナーゼを阻害するものとして発見されている。
【0328】
大部分のTKIは腫瘍細胞の直接の阻害を介して、又は血管形成の阻害を介して、腫瘍の成長を阻害すると考えられている。更に又、特定のTKIはソラフェニブ及びスニチニブを包含するVEGFファミリー受容体を介してシグナリングに影響する。一部の場合においては、TKIは樹状細胞及び他の生得の免疫細胞、例えばNK細胞の機能を活性化することがわかっている。これはイマチニブに関して動物モデルにおいて最近報告されている。イマチニブは樹状細胞及びNK細胞によるキラー活性を増強することがわかっているTKIである(研究についてはSmythら、NEJM 354:2282,2006を参照)。
【0329】
BAY43−9006(ソラフェニブ、Nexavar(登録商標))及びSU11248(スニチニブ、Sutent(登録商標))は転移性の腎細胞癌(RCC)における使用に関して最近認可された2つのそのようなTKIである。多くの他のTKIが種々の型の癌の治療のための後期及び早期の段階の開発に付されている。他のTKIは、限定しないが、イマチニブメシレート(Gleevec(登録商標),Novartis);ゲフィチニブ(Iressa(登録商標),AstraZeneca);塩酸エルロチニブ(Tarceva(登録商標),Genentech);Vandetanib(Zactima(登録商標),AstraZeneca),チピファルニブ(Zarnestra(登録商標),Janssen−Cilag);ダサチニブ(Sprycel(登録商標),Bristol Myers Squibb);ロナファルニブ(Sarasar(登録商標),Schering Plough);コハク酸バタラニブ(Novartis,Schering AG);ラパチニブ(Tykerb(登録商標),GlaxoSmithKline);ニロチニブ(Novartis);レスタウルチニブ(Cephalon);塩酸パゾパニブ(GlaxoSmithKline);Axitinib(Pfizer);2塩酸カネルチニブ(Pfizer);ペリチニブ(National Cancer Institute,Wyeth);タンズチニブ(Millennium);ボスチニブ(Wyeth);セマキサニブ(Sugen,Taiho);AZD−2171(AstraZeneca);VX−680(Merck,Vertex);EXEL−0999(Exelixis);ARRY−142886(Array BioPharma,AstraZeneca);PD−0325901(Pfizer);AMG−706(Amgen);BIBF−1120(Boehringer Ingelheim);SU−6668(Taiho);CP−547632(OSI);(AEE−788(Novartis);BMS−582664(Bristol−Myers Squibb);JNK−401(Celgene);R−788(Rigel);AZD−1152 HQPA(AstraZeneca);NM−3(Genzyme Oncology);CP−868596(Pfizer);BMS−599626(Bristol−Myers Squibb);PTC−299(PTC Therapeutics);ABT−869(Abbott);EXEL−2880(Exelixis);AG−024322(Pfizer);XL−820(Exelixis);OSI−930(OSI);XL−184(Exelixis);KRN−951(Kirin Brewery);CP−724714(OSI);E−7080(Eisai);HKI−272(Wyeth);CHIR−258(Chiron);ZK−304709(Schering AG);EXEL−7647(Exelixis);BAY−57−9352(Bayer);BIBW−2992(Boehringer Ingelheim);AV−412(AVEO);YN−968D1(Advenchen Laboratories);ミドスタウリン(Novartis);ペリフォジン(AEterna Zentaris,Keryx,National Cancer Institute);AG−024322(Pfizer);AZD−1152(AstraZeneca);ON−01910Na(Onconova);及びAZD−0530(AstraZeneca)を包含する。
【0330】
c.化学療法の組み合わせ
特定の実施形態においては、zB7H6ポリペプチド、抗体、又はzB7H6関連の剤は1つ以上の化学療法剤と組み合わせて投与される。化学療法剤は例えばDNA又はRNAの何れかに影響することにより、そして、細胞周期の複製に干渉することにより、異なる作用様式を有する。DNAレベル又はRNAレベルにおいて作用する化学療法剤の例は、代謝拮抗剤(例えばアザチオプリン、シタラビン、リン酸フルダラビン、フルダラビン、ゲムシタビン、シタラビン、クラドリビン、カペシタビン6−メルカプトプリン、6−チオグアニン、メトトレキセート、5−フルオロウラシル及びヒドロキシ尿素;アルキル化剤(例えばメルファラン、ブスルファン、シスプラチン、カルボプラチン、シクロホスファミド、イホスファミド、ダカルバジン、プロカルバジン、クロラムブシル、チオテパ、ロムスチン、テモゾラミド);抗有糸分裂剤(例えばビノレルビン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ドセタキセル、パクリタキセル);トポイソメラーゼ阻害剤(例えばドキソルビンシン、アムサクリン、イリノテカン、ダウノルビシン、エピルビシン、マイトマイシン、ミトキサントロン、イダルビシン、テニポシド、エトポシド、トポテカン);抗生物質(例えばアクチノマイシン及びブレオマイシン);アスパラギナーゼ;アントラサイクリン又はタキサンである。
【0331】
d.放射線療法の組み合わせ
一部の変形例において、zB7H6ポリペプチド、抗体、又は他のzB7H6関連の剤は放射線療法と組み合わせて投与される。特定の腫瘍は放射線照射又は放射性医薬品で治療できる。放射線療法は一般的に切除不可能であるか手術不可能である腫瘍及び/又は腫瘍転移物に対して使用される。放射線療法は典型的には3つの方法で行われる。外部放射線療法は身体から距離を置いて施行され、そしてガンマ線(
60Co)及びX線を包含する。近接照射療法は例えば標的組織と共に、又はそれと接触させて
60Co、
137Cs、
192Ir、又は
125Iのような線源を使用する。
【0332】
e.ホルモン剤の組み合わせ
一部の実施形態においては、zB7H6ポリペプチド、抗体、又は他のzB7H6関連の剤はホルモン又は抗ホルモンと組み合わせて投与される。特定の癌はホルモン依存性に関連しており、そして例えば卵巣癌、乳癌、及び前立腺癌を包含する。ホルモン依存性癌の治療は抗アンドロゲン又は抗エストロゲン化合物の使用を含んでよい。癌治療において使用されるホルモン及び抗ホルモンはリン酸エストラムスチン、リン酸ポリエストラジオール、エストラジオール、アナストラゾール、エキセメスタン、レトロゾール、タモキシフェン、酢酸メゲストロール、酢酸メドロキシプロゲステロン、オクトレオチド、酢酸シプロテロン、ビカルツミド、フルタミド、トリトレリン、ロイプロレリン、ブセレリン及びゴセレリンを包含する。
【0333】
VII.スクリーニングの方法
別の態様において、本発明はNKp30とのzB7H6の相互作用のアゴニスト又はアンタゴニストを得るためのスクリーニングの方法を提供する。一般的に、そのようなアンタゴニストを得るためのスクリーニングの方法は以下の工程、即ち:(a)NKp30ポリペプチドの存在下でzB7H6ポリペプチドに剤を接触させること;(b)NKp30ポリペプチドとのzB7H6の相互作用の尺度を検出すること;及び(c)工程(b)において計測されたzB7H6/NKp30相互作用のレベルが剤の非存在下の対照のzB7H6とNKp30ポリペプチドに関して計測された相互作用のレベルと相対比較して有意に低値であるかどうかを決定し、これによりzB7H6/NKp30相互作用のレベルが低値であれば、剤をNKp30とのzB7H6の相互作用のアンタゴニストとして同定すること、を包含する。
【0334】
アゴニストを得るためのスクリーニングの方法は、一般的に以下の工程、即ち:(a)NKp30ポリペプチドの存在下でzB7H6ポリペプチドに剤を接触させること;(b)NKp30ポリペプチドとのzB7H6の相互作用の尺度を検出すること;及び(c)工程(b)において計測されたzB7H6/NKp30相互作用のレベルが剤の非存在下の対照のzB7H6とNKp30ポリペプチドに関して計測された相互作用のレベルと相対比較して有意に高値であるかどうかを決定し、これによりzB7H6/NKp30相互作用のレベルが高値であれば、剤をNKp30とのzB7H6の相互作用のアゴニストとして同定すること、を包含する。
【0335】
NKp30とのzB7H6の相互作用の尺度は、例えばNKp30とのzB7H6の結合、並びに、NKp30媒介細胞活性(例えば細胞溶解活性)をトリガーするzB7H6ポリペプチドの能力、又はzB7H6媒介細胞活性をトリガーするNKp30ポリペプチドの能力の検出を包含できる。zB7H6/NKp30相互作用のアゴニストを識別するためには、特に相互作用の尺度がNKp30又はzB7H6媒介の細胞活性のレベルである場合、方法は更に、剤がzB7H6ポリペプチド又はNKp30ポリペプチドの非存在下で細胞活性を誘導できるかどうかを調べるための追加的対照を包含し、これにより、剤がzB7H6ポリペプチド又はNKp30ポリペプチドの非存在下で細胞活性を誘導できれば、その剤はNKp30とのzB7H6の相互作用のアゴニストではないとする。
【0336】
スクリーニング方法において使用するためのzB7H6ポリペプチドは一般的にzB7H6の細胞外ドメイン、又はその機能的変異体又はフラグメントを含むことになる。従って、スクリーニングにおいて使用するためのzB7H6ポリペプチドは下記:
(i)配列番号2のzB7H6ポリペプチドの細胞外ドメイン(配列番号2の残基25〜266);
(ii)(i)のzB7H6細胞外ドメインの機能的変異体、ここで変異体は配列番号2の残基25〜266と少なくとも80%の同一性を有するもの;及び、
(iii)(i)のzB7H6細胞外ドメインの、又は(ii)のドメイン変異体の機能的フラグメント;
から選択されるポリペプチド領域を包含することになる。
【0337】
典型的な変形例においては、zB7H6ポリペプチドはzB7H6配列番号2の細胞外ドメイン(即ち配列番号2の残基25〜266)又は配列番号2の残基25〜266と少なくとも90%又は95%の配列同一性を有する機能的変異体を包含する。zB7H6ポリペプチドは本明細書に開示した通り可溶性zB7H6受容体であることができる。大体の変形例においては、zB7H6ポリペプチドは細胞上に発現されたzB7H6の膜結合形態である(例えばGPI連結部を有するzB7H6ポリペプチド、又は機能的膜貫通ドメインを有するzB7H6ポリペプチド、例えば組み換え細胞上に発現された配列番号2のzB7H6ポリペプチド)。
【0338】
同様に、スクリーニング方法において使用するためのNKp30ポリペプチドはNKp30の細胞外ドメイン、又はその機能的変異体又はフラグメントを包含することになる。典型的には、NKp30ポリペプチドはヒトNKp30ポリペプチド又はヒトNKp30から誘導されたポリペプチドである。NKp30ポリペプチドは可溶性NKp30受容体又はNKp30の膜結合形態であることができる。特定の変形例においては、NKp30は細胞上に発現された完全長NKp30蛋白質(例えば完全長ヒトNKp30)であり;そのような実施形態は特に、NKp30とのzB7H6の相互作用を検出するための機能的リードアウトとしてのNKp30媒介細胞溶解活性の使用に適している。
【0339】
組み換え細胞上に発現されたzB7H6又はNKp30ポリペプチドを利用する特定の変形例においては、zB7H6又はNKp30受容体をコードするcDNA又は遺伝子をその発現のために必要な他の遺伝子エレメント(例えば転写プロモーター)と組み合わせ、そして結果として生じた発現ベクターを宿主細胞内に挿入する。DNAを発現し、そして機能的受容体を生産する細胞を選択し、そして種々のスクリーニング系内において使用する。単量体、ホモ2量体、ヘテロ2量体及び多量体の受容体複合体の各成分を同じ細胞中で発現させることができる。更に又、単量体、ホモ2量体、ヘテロ2量体及び多量体の受容体複合体の成分を膜貫通ドメイン又は他の膜融合部分に融合させることにより複合体の組み立て及びトランスフェクション体のスクリーニングを行うことができる。一部の実施形態においては、zB7H6ポリペプチド及びNKp30ポリペプチドのおのおのを別個の宿主細胞中で発現させる。或いは、zB7H6及びNKp30ポリペプチドの一方のみを細胞中で発現させる。
【0340】
動物モデル系において、動物に候補剤を投与することにより候補剤に細胞を接触させることができる。候補剤は経口、静脈内、注入又は注射等により投与できる。
【0341】
スクリーニングにおいて使用するための剤は非共有結合性の相互作用を介して、例えば水素結合、イオン結合、ファンデルワールス力、又は疎水性相互作用を介して、生物学的分子、特に蛋白質と構造的に相互作用する能力を有する如何なる剤も包含できる。従って、多くの型の剤を本発明の方法によりスクリーニングできる。適当な候補剤は例えば小分子、核酸、ペプチド、ペプチドミメティック、合成化合物、及び/又は天然の化合物を包含する。
【0342】
スクリーニングのための剤はペプチド及び/又は核酸のランダム及び/又は半ランダムなライブラリを包含できる。宿主細胞中の組み換えzB7H6又はNKp30の発現を含む変形例においては、核酸剤に発現系の細胞を接触させることにより核酸剤をスクリーニングできる。特定の例において、ゲノム又はcDNAライブラリをzB7H6又はNKp30を発現している組み換え細胞集団内に導入して発現させることにより、NKp30とのzB7H6の相互作用を低減又は増強する遺伝子剤を発見することができる。
【0343】
他の実施形態において、スクリーニングされる剤はペプチドミメティックである。「ペプチドミメティック」という用語は蛋白質、ポリペプチド、又はペプチドと実質的に同じ構造的及び機能的な特性を有する合成の化学物質を指す。ペプチド類縁体は鋳型ペプチドのものと類似した特性を有する非ペプチド薬剤として薬品産業において一般的に使用されている。非ペプチド化合物のこのような型を「ペプチドのミメティック」 又は「ペプチドミメティック」と称する(例えばFauchere,J.Adv.Drug Res.15:29,1986;Veber and Freidinger TINS p.392,1985;及びEvansら、J.Med.Chem.30:1229,1987参照)。治療上有用なペプチドと構造的に同様であるペプチドミメティックは等価又は増強された治療上又は予防上の作用をもたらすために使用してよい。一般的に、ペプチドミメティックは理論的枠組みのポリペプチド(例えば所望の生物学的又は薬理学的な活性を有するポリペプチド)と構造的に同様であるが、例えば−−CH2NH−−、−−CH2S−−、−−CH2−−CH2−−、−−CH.=CH−−(シス及びトランス)、−−COCH2−−、−−CH(OH)CH2−−、及び−−CH2SO−−からなる群より選択される連結部により場合により置き換えられている1つ以上のペプチド連結部を有する。ミメティックはアミノ酸の合成の非天然類縁体から完全になるものであるか、又は部分的に天然のペプチドアミノ酸及び部分的に非天然のアミノ酸類縁体のキメラ分子である。ミメティックは天然のアミノ酸の保存的置換を取り込むこともできるが、その置換はミメティックの構造及び/又は活性を実質的に改変してはならない。
【0344】
スクリーニングのための剤は又、合成及び/又は天然の化合物のライブラリに由来するものであることができる。1つの例はヒトにより使用され得るFDA認可の化合物のライブラリである。更に又、合成の化合物のライブラリは多くの企業、例えばMaybridge Chemical Co.(Trevillet,Cornwall,UK)、Comgenex(Princeton,N.J.)、Brandon Associates(Merrimack,N.H.)及びMicrosource(New Milford,Conn.)から商業的に入手でき、そして希少化学物質ライブラリはAldrich(Milwaukee,Wis.)から入手できる。
【0345】
コンビナトリアルライブラリは入手するか、及び/又は製造できる。或いは、細菌、カビ、植物、及び動物の抽出液の形態の天然化合物のライブラリも又、例えばPan Laboratories(Bothell,Wash.)又はMycoSearch(N.C.)から入手するか、又は製造できる。天然原料、例えば動物、細菌、カビ、植物原料、例えば葉や樹皮、及び海洋試料から単離した化合物もまた候補剤としてスクリーニングできる。
【0346】
他の適当な剤はアンチセンス分子、リボザイム、及び抗体(単鎖抗体及びFvフラグメントを包含する)を包含する。例えば、翻訳又は転写の開始部位、又はスプライス接合部に結合するアンチセンス分子は候補剤であることができる。更に又、天然及び合成により製造されたライブラリ及び化合物は、従来の化学的、物理的、及び生化学的な手段を介して容易に修飾される。
【0347】
コンビナトリアルに形成されたライブラリ(例えばペプチドライブラリ)を包含するそのようなライブラリのスクリーニングは関連及び/又は未関連の化合物の多数をスクリーニングするための迅速で効率的な方法において実施できる。コンビナトリアルな手順は又、活性ではあるが、別様には望ましくない化合物をモデルとした第2、第3及び第4世代の化合物の形成により、潜在的な治療剤の迅速な進化に役立つものである。
【0348】
コンビナトリアル化学ライブラリの製造及びスクリーニングは当該分野で良く知られている。そのようなコンビナトリアル化学ライブラリは、例えば限定しないが、ペプチドライブラリを包含する(例えば米国特許5,010,175;Furka,Int.J.Pept.Prot.Res.37:487−93,1991;Houghtonら、Nature354:84−88,1991参照)。化学的に多様なライブラリを作成するための他の化学的性質も使用できる。そのような化学的性質は例えば限定しないが、ペプトイド(例えばPCT公開WO91/19735参照)、コードされたペプチド(例えばPCT公開WO93/20242参照)、ランダムバイオオリゴマー(例えばPCT公開WO92/00091参照)、ベンゾジアゼピン(例えば米国特許5,288,514;Baum,C&EN,Jan18,1993,p.33参照)、ダイバーソマー、例えばヒダントイン、ベンゾジアゼピン及びジペプチド(例えばHobbsら、Proc.Nat.Acad.Sci.USA90:6909−13,1993参照)、ビニローガスポリペプチド(例えばHagiharaら、J.Amer.Chem.Soc.114:6568,1992参照)、グルコーススカホールドを有する非ペプチド性ペプチドミメティック(例えばHirschmannら、J.Amer.Chem.Soc.114:9217−18,1992参照)、小化合物ライブラリの類似有機合成(例えばChenら、J.Amer.Chem.Soc.116:2661,1994参照)、オリゴカーバメート(例えばChoら、Science 261:1303,1993参照)、ペプチジルホスホネート(例えばCampbellら、J.Org.Chem.59:658,1994参照)、核酸ライブラリ(例えば上出のAusubelら;上出のSambrook参照)、ペプチド核酸ライブラリ(例えば米国特許5,539,083参照)、抗体ライブラリ(例えばVaughnら、Nature Biotechnology,14:309−14,1996及びPCT/US96/10287参照)、炭水化物ライブラリ(例えばLiangら、Science 274:1520−22,1996;米国特許5,593,853参照)、小型有機分子ライブラリ、例えばイソプレノイド(例えば米国特許5,569,588参照)、チアゾジジノン及びメタチアザノン(例えば米国特許5,549,974参照)、ピロリジン(例えば米国特許5,525,735及び5,519,134参照)、モルホリノ化合物(例えば米国特許5,506,337参照)等を包含する。
【0349】
コンビナトリアルライブラリの製造のための装置は市販されている(例えば357 MPS,390 MPS,Advanced Chem Tech,Louisville Ky.;Symphony,Rainin,Woburn,Mass.;433A Applied Biosystems,Foster City,Calif.;9050 Plus,Millipore,Bedford,Mass参照)。更に又、多くのコンビナトリアルライブラリがそれ自体市販されている(例えばComGenex,Princeton,N.J.;Tripos,Inc.,St.Louis,Mo.;3D Pharmaceuticals,Exton,Pa.;Martek Biosciences,Columbia,Md.等参照)。
【0350】
上記スクリーニング方法の何れかにより元来発見された剤を更に試験することにより見かけの活性を確認することができる。例えば、後続の確認は適当な動物モデル又はエクスビボのヒト細胞を用いて実施できる。動物モデル系を用いたインビボの確認のためには、そのような方法の基本的なフォーマットでは、初回スクリーニングの間に発見された剤をNK細胞関連の疾患又は障害に関するモデルとして機能する動物に投与し、そして次にNK細胞活性がモジュレートされるか、又は疾患又は障害の他の臨床症状が緩解されるかを調べる。確認試験において利用される動物モデルは一般的に何れかの種の哺乳類である。適当な動物の特定の例は、例えば限定しないが、霊長類、マウス、及びラットを包含する。
【0351】
以下の非限定的な実施例により本発明を更に説明する。
【実施例】
【0352】
実施例1:可溶性NKp30/VASPを用いたK562標的に対抗するNK−92細胞溶解活性の阻害
細胞溶解試験をK562標的に対抗するエフェクターとしてのNK−92細胞を用いて実施した。
【0353】
NK−92細胞をHBSSF(Hank緩衝食塩水(Ca、Mg非含有)+5%FBS)で1回洗浄し、そしてHBSSF中1.35×10
6/mlで再懸濁した(27:1比を達成するため)。洗浄した細胞150μlをU底96穴プレートの最上列にプレーティングし、そしてHBSSF中に連続希釈(1:3)した。
【0354】
K562標的細胞をHBSSFで1回洗浄し、そして37℃で60分間10μMカルセインAM分子プローブ#C1430(DMSO中4mM保存液の2.5μl/ml、4mM=4mg/ml)中で1×10
6細胞/mlで標識した。標識細胞をHBSSFで2回洗浄し、1×10
6細胞を20mL HBSSF中に再懸濁した(5000細胞/100μl)。懸濁した標的細胞100ulを総量200ulの希釈エフェクターに添加した。可溶性形態のNKp30(NKp30/VASP A1683F)も又、2μg/mlの濃度で連続希釈ウェルの一部のセットに添加した。
【0355】
エフェクター及び標的細胞を2分間500rpmで遠心分離し、3時間37℃でインキュベートし、5分間1500rpmで遠心分離し、そして次に100μlの上澄みを新しい平底96穴に移した。移した上澄みを含有する平底プレートを励起波長485nm及び発光波長535nmで1秒間蛍光計上で読み取った。
【0356】
図1に示す通り、可溶性NKp30/VASP A1683FはK562標的に対抗するNK−92細胞の細胞溶解活性を阻害した(
図1A参照)。他のVASP対照は作用を有しておらず、K562標的を溶解するNK−92の能力がNKp30依存性であることを示唆している。
【0357】
別個の細胞溶解実験において、可溶性NKp30/VASPを種々の濃度(0.25、0.5、1.0、2.0、4.0、8.0、及び16.0μg/ml)でNK−92エフェクター及びK562標的を含有するウェル(エフェクター:標的比9:1)に添加した。この実験の結果は、可溶性NKp30が用量依存性の態様においてNK−92による溶解を阻害したことを示していた(
図1B参照)。これらの結果はK562細胞上のNKp30に対するリガンドの存在を示唆しており、今後の研究を奨励するものとなった。
【0358】
実施例2:可溶性NKp30のK562細胞への特異的結合
K562細胞をNKp30の可溶性形態(NKp30の細胞外ドメイン及びネズミFcフラグメントを含有するNKp30/mFc2(配列番号8))を用いたFACSによりプローブした。K562細胞を1.6×10
6細胞/mlの濃度でPBS/2%FBS中に再懸濁した(160,000細胞/試料)。100μlの試料を小分量化し、1μlの全ヒトIgG(Jackson#009−000−003)を各々に添加した。NKp30/mFc2プローブを2μg/mlの濃度において10μg/mlヘパリン及び100倍質量過剰のVASP蛋白質(NKp30/VASP又は対照VASP蛋白質、ヒトzB7R1/VASP(配列番号12)又はB7−DC/VASP(配列番号13))と共に添加した。細胞を氷上で1時間インキュベートし、そして2mlの冷PBSで洗浄した。洗浄した細胞を1μlのPE抗mIgG(Jackson 115−116−071)を含有するPBS/2%FBS100μl中に再懸濁し、そして氷上で30分間インキュベートした。次に細胞を2回2mlの冷PBSで洗浄し、500μlのPBS中に再懸濁し、そしてFACSCalibur上でPE染色に関して分析した。
【0359】
図2に示す通り、NKp30/mFc2はK562細胞に結合した(「競合無し」)。この結合はNKp30/VASPとは競合可能であったが、対照VASP蛋白質(「hzB7R1/Vasp」及び「B7−DC/Vasp」)とは競合可能ではなく、K562細胞へのNKp30/mFc2の結合が特異的であることを示していた。
【0360】
別個のFACS実験において、K562細胞及びBaF3細胞をビオチンに結合体化したNKp30/mFc2(NKp30/mFc2−ビオチン、4μg/ml)でプローブした。これらの試験のためにPE結合体化ストレプトアビジン(BD Pharmingen 554061)を二次試薬として使用した。この実験の結果は、NKp30/mFc2がK562細胞には結合したがBaF3細胞には結合しなかったことを示していた(
図3参照)。
【0361】
実施例3:K562細胞とビオチン化NKp30/mFc2の架橋
K562細胞上のNKp30リガンドを発見する試みにおいて、K562細胞をビオチン化NKp30/mFc2に架橋させ、その後、免疫沈降及び質量スペクトル分析に付した。
【0362】
4試料、即ち目的試料と3つの陰性対照試料を分析した。目的試料はビオチン化NKp30/mFc2と共にインキュベートしたK562細胞とした。3つの陰性対照試料はNKp30非存在下のK562細胞及びNKp30存在下及び非存在下のBaF3細胞とした。100×10
6細胞をPBS中で1回洗浄し、そして2μg/ml NKp30/mFc2−ビオチンの存在下又は非存在下で2mlの結合緩衝液(RPMI,3mg/ml BSA,20mM HEPES)中に再懸濁し、そして氷上で2時間インキュベートした。細胞を洗浄(結合緩衝液中1回、PBS中1回)し、1mlの架橋剤(3mm BS3[Pierce21580])中に再懸濁し、そして室温で30分間インキュベートした。次に7.5μlの2M Tris(pH7.4)を最終Tris濃度15mMとなるまで添加し、そして細胞を室温で15分間インキュベートした。細胞をPBS中2回洗浄し、次に氷上で5分間1mlのRIPA/1%TX−100/0.1%SDS中で溶解した(RIPA緩衝液:20mM Tris pH7.4、150mM NaCl、2mM EGTA、1mM NaV0
4、1mM β−グリセロホスフェート、1錠/25ml完全ミニプロテアーゼ阻害剤カクテル錠(Roche10946900))。溶解物上澄みを50μlのストレプトアビジンアガロース(Pierce20347)、溶解物上澄みと共に振とうしながら4℃で2時間インキュベートした。ストレプトアビジンアガロースをPBS中3回洗浄した。結合した蛋白質は、7.5μlのNupage試料緩衝液(InvitrogenNP0007)、19.5μlの水及び3μlの還元剤(InvitrogenNP0004)中のストレプトアビジンアガロースの再懸濁、ついで10分間煮沸することにより溶出させた。次に試料を半分に分割し、各半量を2つの同一の4〜12%NuPageゲルの1つの上で泳動させた(約40×10
6細胞/レーン)。未架橋NKp30/mFc2−ビオチン(100ng、33ng、11ng、及び3.6ng)もまた対照としてこれらのゲル上で泳動させた。2つのゲルの1つを縦列質量スペクトル分析のために使用し、もう1つをウエスタンブロット分析のために使用した。
【0363】
ウエスタンブロット分析のためには、蛋白質を45分間600mAmpの一定電流においてウエスタン転移緩衝液(0.025M Tris/0.186M グリシン/20%(v/v)メタノール)中ニトロセルロース膜(InvitrogenLC2000)に転移させた。次にニトロセルロース膜を室温で1時間ブロッキング緩衝液ウエスタンA(0.097%TrisBase(w/w)/0.661%Tris HCl(w/w)/0.186%EDTA(w/w)/0.05%Igepal(v/w)/0.877%NaCl(w/w)/0.25%ゼラチンl(w/w))でブロックした。ブロックした膜を室温で1時間ストレプトアビジン−HRP(1:8000,Pierce21126)でプローブし、そして次にPBSで3回洗浄した。洗浄した膜を室温で1分間10ml ECL A+B緩衝液(AmershamRPN2209)中でインキュベートし、Saran(登録商標)ラップに包み、x線フィルムに露光した。5秒の露光により
図4に示す結果が得られた。
図4に示されるとおり、高分子量のシグナルはNKp30/mFc2−ビオチンでプローブしたK562細胞に関してのみ検出されている。この高分子量バンドに相当する蛋白質を相当するNuPageゲルから切り出し、縦列質量スペクトル分析に付した。
【0364】
実施例4:NKp30相互作用蛋白質のLC−MS/MSプロテオミック分析によるzB7H6の識別
序論
K562細胞をビオチン化NKp30/mFc2と共にインキュベートし、相互作用があればそれを、化学架橋剤との相互作用に共有結合することにより温存した(上記実施例3参照)。示差的質量スペクトル分析は、ペプチド配列に縦列質量スペクトルをマッチさせるための自動検索アルゴリズムを用いることにより、ユニークな蛋白質を識別できる。この分析において、検索アルゴリズムX!Tandemを用いることによりK562細胞とのNKp30/mFc2の相互作用にユニークな蛋白質を識別した。
【0365】
材料及び方法
4試料、即ち目的試料と3つの陰性対照試料を分析した。目的試料はビオチン化NKp30/mFc2と共にインキュベートしたK562細胞とした。3つの陰性対照試料はNKp30非存在下のK562細胞及びNKp30存在下及び非存在下のBaF3細胞とした。各試料を化学的架橋剤と反応させることにより蛋白質−蛋白質相互作用があればそれに共有結合させ、そしてビオチン化成分を分離し、ストレプトアビジンアガロースで沈殿させることにより収集した。
【0366】
ビオチン化成分を含有するストレプトアビジン精製画分をSDS−PAGE電気泳動により分離した。ウエスタンブロットの準備をし、ストレプトアビジン−HRPでプローブした(上記実施例3参照)。第2のゲルはクーマシー染色した。
図5A及び5Bはクーマシー染色したゲル及び並置した相当するウエスタンブロットを示す。
【0367】
16ゲルバンドを切り出した。これらのバンドは
図5Aに示す通り領域11〜14、21〜24、31〜34、及び41〜44に相当した。これらのゲルバンドの蛋白質をTCEP(25μl、25mM、80℃、15分)で還元し、得られた遊離のシステインをIAM(25μl、100mM、25℃、2時間)でキャップし、そして試料をトリプシン(PromegaV5111、ロット18889904、10μl、20μg/mL、37℃、18時間)で消化した。得られたペプチドをゲル片から抽出し、乾燥し、0.1%FA20μL中に再建した。得られたペプチド混合物5μlを、50umの溶融シリカ約10cm中に充填したMagic C18AQ3μm,200A樹脂上で分離した。溶出したペプチドをLTQIonTrap質量スペクトル分析器上で分析した。質量スペクトル分析器による分析は10スキャン1サイクルとした。初回スキャンにおいて、400〜2000m/zの完全なMSスキャンを得た。その後のスキャンではMS/MSにより9つの最も強いイオンを分析した。ダイナミックエクスクルージョンにより、その初回MS/MS分析の後15秒〜30秒はMS/MS分析に関して分析イオンがターゲティングされないようにした。
【0368】
生データファイルはBioworksを用いてテキストファイルに変換した。得られたテキストファイルは自動検索アルゴリズムX!Tandemを用いてヒトipiデータベースに照合して検索した。
【0369】
結果及び考察
前述の通り、ウエスタンブロット及びクーマシー染色ゲルを
図5A及び5Bに示す。ウエスタンブロットにおいては、ビオチン化NKp30/mFc2の分子量(約50kDa)より高値の分子量において泳動した、目的の試料を含有するレーンにおけるユニークなバンドが観察された(
図5B参照)。このことは、これらのバンドが、K652細胞の表面上の結合相手に架橋しているビオチン化NKp30であることを示唆している。相当するクーマシー染色ゲル(
図5A)において、バンド11は、K562細胞表面上の結合相手に結合体化下NKp30としてウエスタンブロット中に同定された蛋白質を含有している。ゲルのこの切片からは同定されたが相当する陰性対照バンド(21、31及び41)において同定されなかった蛋白質の一覧を表7に示す。ゲノムデータベースの分析によりこれらの蛋白質の1つは仮説的蛋白質DKFZp686O24166として同定された。仮説的蛋白質DKFZP686I21167のアミノ酸配列においてLC−MS/MSにより同定された3つのペプチドの位置を
図6に示す。全てのスペクトルはX!Tandemを用いて行われた蛋白質/蛋白質同定を確認するために手作業によっても検査した。
【0370】
【表6】
結論
NKp30/mFc2及び仮説的蛋白質DKFZP686I21167はNKp30/mFc2がK562細胞と相互作用できた試料においてのみ同定された。これらのデータはNKp30に対する結合相手としての仮説的蛋白質DKFZP686I21167を裏付けるものである。
【0371】
実施例5:zB7H6配列及び遺伝子構造の分析及びB7ファミリーメンバーとしてのzB7H6の同定
B7ファミリー遺伝子プロファイリングに基づけば、仮説的蛋白質DKFZP686I21167は細胞受容体のB7ファミリーのメンバーとして同定された。遺伝子構造プロファイルはシグナル−2−IgV−2−IgC−2−TMD−0−LgExである(
図7参照)。このプロファイルの細胞外領域はB7遺伝子構造モデルとマッチし、これは、第1のエクソンがリーダー配列をコードし、第2のエクソンがIgVドメインをコードし、そして第3のエクソンがIgCドメインをコードしている特徴的なエクソンパターンを包含する。B7ファミリー遺伝子の別の特徴的な側面はエクソンの相形成であり:細胞外ドメインに相当する領域においてはB7ファミリーメンバーはエクソン1〜4の間に2つの保存された相形成を示している(上記参照)。B7ファミリーメンバーとしてのDKFZP686I21167の同定に部分的に基づいて、この蛋白質に本発明者らの内部標記としてzB7H6を割り付けた。zB7H6の細胞質領域は44%の同一性でGagポリ蛋白質と相同であり、そしてこれは潜在的なシグナリングモチーフ、例えばSaYtpL(ITIM)、YqlQ(SH2)及びPdaPilPvsP(SH3)を含有している(
図7参照)。従って、これはpNKp30をトリガーすること以外にも機能を有している可能性がある。
【0372】
公的なESTデータベースの検索により、zB7H6に相当する少なくとも20のヒトESTが同定されたが、マウスのEST又はmRNAは存在しなかった。他の種(例えばマウス、ラット、イヌ、ウシ)の全てに関しては、予測配列のみ存在する。ヒトと類人猿を除く他の種に由来する予測ペプチドの間には細胞内領域内部における同様性は存在しない。
【0373】
実施例6:ヒトzB7H6発現コンストラクト
cDNAクローンCT#102296、即ちDKFZp686O24166(zB7H6と標記)に相当するものをGerman Cancer Research Center(Heidelberg,Germany)から購入した。
【0374】
完全長ヒトzB7H6(配列番号2)をコードするポリヌクレオチドを含有する発現プラスミドをPCR、制限消化及びライゲーションにより構築した。ヒトzB7H6cDNAのフラグメントを鋳型としてCT#102296を用いてPCRにより単離し、その際プライマーzc58067(配列番号9)及びzc58401(配列番号10)を用いてヒトzB7H6挿入点にフランキングするベクター配列に相当する5’及び3’末端のフランキング領域を有するようにした。
【0375】
PCR反応混合物を1%アガロースゲル上で泳動し、そしてインサートのサイズに相当するバンドをQIAquick(商標)ゲル抽出キット(Qiagen,Valencia,CA)を用いてゲル抽出する。得られた精製PCR産物を37℃で2時間EcoRI及びXhoIで消化し、そして上記した通りバンド精製のために1%アガロースゲル上で泳動した。プラスミドpZP−7NXを37℃で2時間EcoRI及びXhoIで消化し、そして上記した通りバンド精製のために1%アガロースゲル上で泳動した。2μlのPCR産物及び1μlの切断pZP−7NXを、室温で2時間、2μlの10×ライゲーション緩衝液、14ulの水、及び1ulのT4DNAリガーゼ(Promega,Madison,WI)を用いて総容量20μL中においてライゲーションした。ライゲーション物1ulをElectromaxDH10B(Invitrogen,Carlsbad,CA)内に、Gene PulserIIエレクトロポレーター(BioRad,Hercules,CA)を用いて、25uF、300オーム及び2100ボルトの設定においてエレクトロポレーションに付した。形質転換物100μlを1枚のLBAMPプレート(LBブロス(Lennox),1.8%Bacto(商標)寒天(Difco),100mg/Lアンピシリン)上にプレーティングした。
【0376】
個々のコロニーを2mlのLB100mg/Lアンピシリン成長培地中で一夜成長させ、そしてプラスミドキット(Qiagen,Valencia,CA.)を用いてミニプレップ処理した。ミニプレップ処理物をBamHI及びBglIIで消化し、そして正しい1.152kBのインサートを有するクローンをDNA配列決定に付した。正しいコンストラクトをpZP−7NXhzB7H6と命名した。
【0377】
実施例7:P815及びBaF3細胞における完全長zB7H6の発現:zB7H6はNKp30に特異的に結合し、そしてNK細胞活性をトリガーすることができる。
【0378】
配列が正しいことを確認したzB7H6クローン(pZP−7NXhzB7H6)をエレクトロポレーションによりエレクトロマックスDH10Bに再導入し、そして次に、200mlのLB+amp一夜培養物にスケールアップし、それからQiagenキット#12183を用いてDNAを精製した。DNA40μgをHindIII消化及びエタノール沈殿により線状化した。このDNAを以下のプロトコルを用いてP815及びBaF3細胞内へのエレクトロポレーションに付した。B815細胞を2回Optimem血清非含有培地(Invitrogen,Carlsbad,CA)で洗浄し、そしてOptimem中1×10
7細胞/mlとなるように再懸濁した。細胞800μlを上記で得られた線状化DNAを含有する試験管に移し、そして室温で15分間インキュベートした。DNA/細胞混合物を4mmのエレクトロポレーションキュベットに移し、800μF及び300ボルトの衝撃を与えた。1分間インキュベートした後、細胞を1180μF及び300ボルトで再度衝撃を与えた。細胞を37℃で一夜インキュベートした後、1mg/mlゲネチシン(Invitrogen1013−027)中で選択し、そして0.3細胞/ウェルの限界希釈によりプレーティングすることによりクローンを形成した。ランダムに選択したクローンはNKp30の可溶性形態への結合に関してFACSでスクリーニングした(NKp30/VASP;配列番号11)。最高選択クローンをFACS結合競合試験及び細胞溶解試験に付した。
【0379】
FACS結合競合試験は、3×10
6/mlに再懸濁され、そして最終計数値が300,000細胞/試料となるように100μl/試料で小分量化したBaF3を用いて実施した。全マウスIgG(Jackson 015−000−003)1μlを試料当たり添加し、その後NKp30/mFc2−A647標識プローブを2μg/mlで添加した。競合試験に付す試料においては、未標識のプローブを100倍質量過剰量で添加し、そして試料を氷上で1時間インキュベートした。試料を1回冷PBSで洗浄し、そして試料を可溶性NKp30/mFc2−A647の結合に関してFACSCalibur上で分析した。
【0380】
FACS結合競合試験の結果を
図8A及び8Bに示す。可溶性NKp30/VASP−A647はhzB7H6発現ベクターでエレクトロポレーションした細胞に結合したが、空ベクター対照を含有する対照細胞には結合しなかった。NKp30/VASP−A647による染色は未標識のNKp30/VASPの100倍過剰量の存在下では観察されなかった(
図8A参照)が、未標識の非関連VASP蛋白質の100倍過剰量の存在下では観察された(
図8B参照)。
【0381】
細胞溶解試験はP815標的に対抗するエフェクターとしてのNK−92細胞を用いて実施した。NK−92細胞をHBSSF(Hank緩衝食塩水(Ca、Mg非含有)+5%FBS)で1回洗浄し、そしてHBSSF中1.35×10
6/mlで再懸濁した(27:1比を達成するため)。洗浄細胞150μlをU底96穴プレートの最上列にプレーティングし、HBSSF中に連続希釈した(1:3)。P815標的細胞をHBSSFで1回洗浄し、そして37℃で60分間、1×10
6細胞/mlで10μMカルセインAM分子プローブ#C1430(DMSO中4mM保存溶液2.5μl/ml、4mM=4mg/ml)中で標識した。標識細胞をHBSSF中で2回洗浄し、そして1×10
6細胞を20ml HBSSF中に再懸濁した(5000細胞/100μl)。懸濁標的細胞100μlを総容量200μlとなるように希釈したエフェクターに添加した(エフェクター:標的比は27:1、9:1、3:1、及び1:1)。活性化抗NKp30モノクローナル抗体もまた2μg/mlの濃度で連続希釈したウェルの一部のセットに添加した。
【0382】
エフェクター及び標的細胞を2分間500rpmで遠心分離し、3時間37℃でインキュベートし、5分間1500rpmで遠心分離し、そして次に100μlの上澄みを新しい平底96穴に移した。移した上澄みを含有する平底プレートを励起波長485nm及び発光波長535nmで1秒間蛍光計上で読み取った。
【0383】
NK−92細胞は野生型P815細胞又は2つの非トリガー対照蛋白質(hIgSF1(配列番号14)及びhB7H1(配列番号15))でトランスフェクトしたP815細胞を溶解しなかったが、活性化抗NKp30モノクローナル抗体の添加は再指向された溶解をトリガーした。hCD86(Azumaら、Nature366:76,1993)又はzB7H6の何れかによるトランスフェクションはP815細胞の直接の殺傷をトリガーした。
【0384】
これらのデータはzB7H6がNKp30に特異的に結合し、そして細胞溶解活性をトリガーできることを示している。
【0385】
実施例8:ヒトzB7H6/mFc2のクローニング及び構築
ヒトzB7H6の細胞外ドメイン及びマウスFc2部分をコードするポリヌクレオチドを含有する発現プラスミドをPCR増幅、制限消化及びライゲーションにより構築した。ヒトzB7H6の細胞外ドメインのDNAのフラグメントを鋳型としてSEQCT#102296を用いてPCRにより単離し、その際プライマーzc50437(配列番号20)及びzc50438(配列番号21)を用いてヒトzB7H6挿入点にフランキングするベクター配列及びマウスFc2配列に相当する5’及び3’末端のフランキング領域を有するようにした。
【0386】
PCR反応混合物を1%アガロースゲル上で泳動し、そしてインサートのサイズに相当するバンドをQIAquick(商標)ゲル抽出キット(Qiagen,Valencia,CA)を用いてゲル抽出する。使用した初期プラスミドは自身内に組み込まれたマウスFc2部分を有する基礎ベクターとしてのpZMP21とした。プラスミドpZMP21は、MPSVプロモーター、コーディング配列の挿入のための多数の制限部位、終止コドン、E・コリの複製起点を有する発現カセット;SV40プロモーター、エンハンサー及び複製起点、DHFR遺伝子、及びSV40ターミネーターを含む哺乳類選択マーカー発現ユニット;及びS・セレビシアエ中の選択及び複製に必要なURA3及びCEN−ARS配列を含有する哺乳類発現ベクターである。これはpZP9(寄託先:American Type Culture Collection,10801 University Boulevard,Manassas,VA 20110−2209,アクセッション番号98668)から、pRS316(寄託先:American Type Culture Collection,10801 University Boulevard,Manassas,VA 20110−2209,アクセッション番号77145)から取り出したコウボ遺伝子エレメント、ポリオウイルス由来の内部リボソームエントリー部位(IRES)エレメント、及び膜貫通ドメインのC末端においてトランケーションされているCD8の細胞外ドメインと共に構築した。プラスミドhBTLAmFc2pZMP21はEcoR1/BglIIで消化することによりヒトBTLAを切断除去し、そしてPCRインサートとのライゲーションのために使用した。
【0387】
2μlのPCR産物及び1μlの切断pZMP21を、室温で2時間、2μlの10×ライゲーション緩衝液、14ulの水、及び1ulのT4DNAリガーゼ(Promega,Madison,WI)を用いて総容量20μL中においてライゲーションした。ライゲーション物1ulをElectromaxDH10B(Invitrogen,Carlsbad,CA)内に、Gene PulserIIエレクトロポレーター(BioRad,Hercules,CA)を用いて、25uF、300オーム及び2100ボルトの設定においてエレクトロポレーションに付した。形質転換物100μlを1枚のLBAMPプレート(LBブロス(Lennox),1.8%Bacto(商標)寒天(Difco),100mg/Lアンピシリン)上にプレーティングした。コロニーはEcoRI及びKpnIを用いた制限消化によりスクリーニングし、その際、予測された1.596kBのインサートを示すクローンをDNA配列決定に付した。配列が正確なコンストラクトをhB7H6mFc2pZMP21と命名した。hzB7H6/mFc2をコードしているDNA配列を配列番号16に示し;hzB7H6/mFc2に関するアミノ酸配列を配列番号17に示す。
【0388】
実施例9:zB7H6/VASPのクローニング及び構築
ヒト血管拡張物質活性化ホスホ蛋白質(VASP)はKuehnelら(Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA101:17027,2004)により記載されている。VASPのヌクレオチド及びアミノ酸の配列は配列番号3及び4に示す。ヒトVASP蛋白質の4量体化ドメインのセンス及びアンチセンスの鎖の両方をコードする2つのオーバーラップするオリゴヌクレオチドを、オリゴヌクレオチドzc50629(配列番号22)及びオリゴヌクレオチドZC50630(配列番号23)を用いて固相合成により合成した。これらのオリゴヌクレオチドを55℃でアニーリングし、そしてオリゴヌクレオチドプライマーzc50955(配列番号24)及びzc50956(配列番号25)を用いてPCRにより増幅した。
【0389】
増幅されたDNAを1.5%アガロースゲル上で分画し、そして次にQiagenゲル単離キットを用いて製造元のプロトコルに従って単離した(Qiagen,Valiencia,CA)。単離したDNAをコウボ組み換えによりBglII切断pzmp21ベクターに挿入した。DNA配列決定はベクターの予測された配列を確認するものであり、これをpzmp21VASP−His6と命名した。
【0390】
ヒトzB7H6の細胞外ドメインはオリゴzc58284(配列番号26)及びzc58419(配列番号27)を用いてCT#102296からのPCR増幅により作成した。PCR反応混合物を1%アガロースゲル上で泳動し、そしてインサートのサイズに相当するバンドをQIAquick(商標)ゲル抽出キット(Qiagen,Valencia,CA)を用いてゲル抽出する。得られた精製PCR産物を37℃で2時間EcoRI及びBglIIで消化し、そして上記した通りバンド精製のために1%アガロースゲル上で泳動した。単離したフラグメントをEcoRI/BglII切断pZMP21VASP−His
6ベクター内にライゲーションにより挿入した。2μlのPCR産物及び1μlの切断pZMP21VASP−His
6を、室温で2時間、2μlの10×ライゲーション緩衝液、14ulの水、及び1ulのT4DNAリガーゼ(Promega,Madison,WI)を用いて総容量20μL中においてライゲーションした。ライゲーション物1ulをElectromaxDH10B(Invitrogen,Carlsbad,CA)内に、Gene PulserIIエレクトロポレーター(BioRad,Hercules,CA)を用いて、25uF、300オーム及び2100ボルトの設定においてエレクトロポレーションに付した。形質転換物100μlを1枚のLBAMPプレート(LBブロス(Lennox),1.8%Bacto(商標)寒天(Difco),100mg/Lアンピシリン)上にプレーティングした。
【0391】
個々のコロニーを2mlのLBAMP成長培地中で一夜成長させ、そしてプラスミドミニキット(Qiagen,Valencia,CA.)を用いてミニプレップ処理した。ミニプレップ処理物をBamHI及びBglIIで消化し、そして正しい1.152kBのインサートを有するクローンをDNA配列決定に付した。正しいコンストラクトをpZMP21hzB7H6VASP−His
6と命名した。hzB7H6/VASP−His
6をコードしているDNA配列を配列番号18に示し;hzB7H6/VASP−His
6に関するアミノ酸配列を配列番号19に示す。
【0392】
実施例10:CHO細胞におけるzB7H6/mFc2の安定なトランスフェクション及び発現
3セットの50μgのhB7H6mFc2pZMP21コンストラクトを3時間37℃で25単位のPvuIで各々消化し、そして次にIPAで沈殿させ、そして1.5mlのマイクロ遠沈管中で遠心分離した。上澄みを傾瀉してペレットと分け、そしてペレットを70%エタノール0.5mlで洗浄した。試験管を13000RPMで15分間マクロ遠心分離に付し、そして上澄みを傾瀉してペレットと分けた。次にペレットを滅菌環境中のZF1培地1ml中に再懸濁し、15分間60℃でインキュベートし、そして室温に戻した。5E6 5xSA APFDXB11CHO細胞を3試験管の各々で遠心分離し、そしてDNA培地溶液を用いて再懸濁した。DNA/細胞混合物を4mmギャップのキュベットにいれ、以下のパラメーター、即ち950μF、高静電容量、及び300Vを用いてエレクトロポレーションに付した。次にキュベットの内容物を取り出し、合わせ、そしてZF1培地で25mLに希釈し、そして125mL容量の振とうフラスコに入れた。フラスコを37℃、6%CO
2、及び120RPMで振とうする振とう器上のインキュベーターに置いた。
【0393】
細胞系統を栄養選択に付し、その後200nMメトトレキセート(MTX)、そして次に500nMMTXまでの段階的増幅に付した。抗マウスIgG2a抗体及び抗マウスIgGH+L抗体を用いてプローブするウエスタンブロットにより発現を確認し、そして細胞系統をスケールアップし、そして蛋白質精製を後続させた。
【0394】
実施例11:CHO細胞におけるzB7H6/VASPの安定なトランスフェクション及び発現
3セットの50μgのpZMP21hzB7H6VASP−His
6コンストラクトを3時間37℃で25単位のPvuIで各々消化し、そして次にIPAで沈殿させ、そして1.5mlのマイクロ遠沈管中で遠心分離した。上澄みを傾瀉してペレットと分け、そしてペレットを70%エタノール0.5mlで洗浄した。試験管を13000RPMで15分間マクロ遠心分離に付し、そして上澄みを傾瀉してペレットと分けた。次にペレットを滅菌環境中のZF1培地1ml中に再懸濁し、15分間60℃でインキュベートし、そして室温に戻した。5E6 5xSA APFDXB11CHO細胞を3試験管の各々で遠心分離し、そしてDNA培地溶液を用いて再懸濁した。DNA/細胞混合物を4mmギャップのキュベットにいれ、以下のパラメーター、即ち950μF、高静電容量、及び300Vを用いてエレクトロポレーションに付した。次にキュベットの内容物を取り出し、合わせ、そしてZF1培地で25mLに希釈し、そして125mL容量の振とうフラスコに入れた。フラスコを37℃、6%CO
2、及び120RPMで振とうする振とう器上のインキュベーターに置いた。
【0395】
細胞系統を栄養選択に付し、その後200nMメトトレキセート(MTX)、そして次に500nMMTXまでの段階的増幅に付した。抗6−His抗体を用いてプローブするウエスタンブロットにより発現を確認し、そして細胞系統をスケールアップし、そして蛋白質精製を後続させた。
【0396】
実施例12:zB7H6はヒト一次NK細胞における細胞溶解活性をトリガーする。
【0397】
細胞溶解試験はP815標的に対抗するエフェクターとしてのヒト一次NK細胞を用いて実施した。NK細胞は磁気ビーズ標識Miltenyi#130−092−657を用いた負の選択を用いてヒト抹消血から精製した。これらの精製されたNK細胞を10ng/mlのヒトIL−2(R&D#202−IL−010)を添加したRPMI/10%FBS中で一夜培養した。次にNK−92細胞をHBSSF(Hank緩衝食塩水(Ca、Mg非含有)+5%FBS)で1回洗浄し、そしてHBSSF中1.35×106/mlで再懸濁した(27:1比を達成するため)。洗浄細胞150μlをU底96穴プレートの最上列にプレーティングし、HBSSF中に連続希釈した(1:3)。P815標的細胞をHBSSFで1回洗浄し、そして37℃で60分間、1×10
6細胞/mlで10μMカルセインAM分子プローブ#C1430(DMSO中4mM保存溶液2.5μl/ml、4mM=4mg/ml)中で標識した。標識細胞をHBSSF中で2回洗浄し、そして1×10
6細胞を20ml HBSSF中に再懸濁した(5000細胞/100μl)。懸濁標的細胞100μlを総容量200μlとなるように希釈したエフェクターに添加した(エフェクター:標的比は27:1、9:1、3:1、及び1:1)。活性化抗NKp30モノクローナル抗体もまた2μg/mlの濃度で連続希釈したウェルの一部のセットに添加した。NKp30の可溶性mFc型を2μg/mlにおいて一部のセットの連続希釈ウェルに添加し、そして未関連の蛋白質HHLA2/mFc2を異なるセットに同じ濃度で添加した。
【0398】
エフェクター及び標的細胞を2分間500rpmで遠心分離し、3時間37℃でインキュベートし、5分間1500rpmで遠心分離し、そして次に100μlの上澄みを新しい平底96穴に移した。移した上澄みを含有する平底プレートを励起波長485nm及び発光波長535nmで1秒間蛍光計上で読み取った。
【0399】
NK細胞は野生型のP815細胞を低レベルで溶解したが、zB7H6でトランスフェクトしたP815細胞は活性化抗NKp30モノクローナル抗体によりトリガーされる再指向された殺傷に近似したレベルにおいて溶解された。可溶性NKp30は概ねバックグラウンドのレベルまでzB7H6トランスフェクトされたP815の溶解を阻害したが、HHLA2/mFc2の添加は作用を有していなかった。
【0400】
実施例13:マウス抗zB7H6ポリクローナル抗体の形成
免疫化
5匹の3か月齢の雌性BALB/cマウス(Charles River Laboratories,Wilmington,MA)をヒトzB7H6で免疫化した。マウスは先ず、Emulsigen(登録商標)−Pアジュバント(MVP Laboratories INC,Omaha,NE)と組み合わせて、VASP、6Hisに融合され、そしてBSA結合体化(SJAS 9Aug07)された精製組み換えヒトzB7H6(CHO DXB 11 5SA中に生産されたZGI、ロット番号A1980F)約50μgの皮下注射により、製造元の説明書に従って、免疫化した。初回免疫化の後、マウス各々に対し、9週間の期間にわたり、2週毎に、皮下投与により、Emulsigen(登録商標)−Pアジュバント中のヒトzB7H6の追加50μgを与えた。第3及び4回目の免疫化の7日後、後眼窩叢を介して出血させ、血液から血清を分離し、ヒトzB7H6に結合するその能力を分析した。
【0401】
直接試験
抗血清中の抗ヒトzB7H6抗体がヒトzB7H6(ロット番号A1980F)に結合する能力を直接式ELISA試験を用いて評価した。本試験においては96穴のポリスチレンELISAプレートのウェルをコーティング緩衝液(0.1M Na2CO3、pH9.6)中1μg/mLの濃度のヒトzB7H6(ロット番号A1980F)で100μL/ウェルとなるようにコーティングした。プレートを4℃で一夜インキュベートした後、未結合の受容体を吸引し、そしてプレートを300μL/ウェルの洗浄緩衝液(PBS−Tween、即ち0.137M NaCl,0.0022M KCl,0.0067M Na2HPO4,0.0020M KH2PO4,0.05%v/wポリソルベート20,pH7.2)で2回洗浄した。ウェルを200μL/ウェルのブロッキング緩衝液(PBS−Tween+1%w/vウシ血清アルブミン(BSA))で1時間ブロックした後、プレートを洗浄緩衝液で2回洗浄した。血清の連続10倍希釈物(PBS−Tween中1%BSA)を、初期希釈度1:100から開始し、そして1:100,000までの範囲となるように調製した。正常マウス血清を対照とした。次に各希釈物の2連の試料を試験プレートに100μL/ウェルとなるように移し、これによりヒトzB7H6に結合させた。室温で1時間インキュベートした後、ウェルを吸引し、プレートを上記した通り2回洗浄した。次にセイヨウワサビペルオキシダーゼ標識ヤギ抗マウスカッパ抗体(SouthernBiotech,Birmingham,Alabama)を1:5,000の希釈度において各ウェルに100μL/ウェルとなるように添加し、そしてプレートを1時間室温でインキュベートした。未結合のHRP結合体化抗体を除去した後、各ウェルに添加したテトラメチルベンジジン(TMB)(BioFX Laboratories,Owings Mills,MD)100μL/ウェルで2回プレートを洗浄し、そしてプレートを室温で2.5分間インキュベートした。TMB停止試薬(BioFX Laboratories,Owings Mills,MD)100μL/ウェルを添加することにより発色を停止させ、そしてウェルの吸光度値を450nmにおいてMolecular Devices Spectra MAX 340機上で読み取った。
【0402】
全マウスに由来する免疫血清が強力な抗VASP及び抗zB7H6応答を示した。血清を合わせ、後述する通り、抗zB7H6抗体を精製した。
【0403】
zB7H6ポリクローナル抗体の精製
zB7H6 C(VASP)H6で攻撃したマウスに由来する血清を合わせ、35mM NaPO4、120mM NaCl、pH7.2で1:1(v/v)希釈し、そして0.2μm濾過滅菌した後に、zB7H6(mFc2)にカップリングしたCNBr−活性化Sepharose(商標)4B(GE Healthcare,Piscataway,NJ)上にローディングした(バッチ法による)。希釈した血清をローディングする前に、CNBr−活性化Sepharose(商標)4B樹脂を35mM NaPO4、120mM NaCl、pH7.2の20カラム容量(約50ml)で予め平衡化させておいた。希釈血清のカップリング樹脂に対する比は2.8:1(v/v)であった。
【0404】
クロマトグラフィープロセスは5℃及び周囲室温の両方において実施した。特記すれば、zB7H6(mFc2)カップリングCNBr−活性化Sepharose(商標)4B樹脂への希釈血清のローディング(キャプチャー工程)は5℃の揺動プラットホームを用いて実施した。洗浄工程及びその後の溶出工程は、空のガラス製Econo−Column(Bio−Rad,Hercules,CA)内に血清/樹脂スラリーを注ぎ込んだ後に周囲室温(約22℃)において実施した。15カラム容量(約37.5ml)の35mM NaPO4、120mM NaCl、pH7.2を用いてカラムを洗浄した(重力による流下)。次に結合した抗体を100mMグリシン、pH2.7でpH溶出させた(重量流下)。0.5mlの画分を収集し、そして即座に0.05mlの2.0M Tris−HCl、pH8.0で中和した。画分はNanoDrop(Thermo Scientific,Fremont,CA)で得られたA280の読み取り値に基づいて収集し、プールした。次に保持されたフロースルーを、カラム再生/平衡化の後にzB7H6(mFc2)カップリングCNBr−活性化Sepharose(商標)4B樹脂に再適用した。このバッチ/溶出サイクルを2回反復した。
【0405】
相当する精製のプールした画分をプールし、そして次にプレパックドSephadex(商標)G−25 Superfineカラム、HiTrap(商標)カラム(GE Healthcare,Piscataway,NJ)を用いて35mM NaPO4、120mM NaCl、pH7.2に対して脱塩(緩衝液交換)した。0.5mlの画分を収集した。これらの画分をプールすることは、AKTA ExplorerのA280の読み取り値により決定した。プールし、脱塩された画分を、次に0.22μm濾過滅菌した後に小分量化し、−80℃で保存した。
【0406】
実施例14:マウス抗zB7H6ポリクローナル抗体の活性及び特異性の確認
マウス抗zB7H6アフィニティー精製ポリクローナル抗体を製造元の説明書に従ってAlexafluor−A647抗体標識キット(InvitrogenA30009)を用いてAlexa−647蛍光マーカーと結合体化した。150,000細胞/試料の野生型又はzB7H6トランスフェクトしたP815細胞を100倍質量過剰量において未標識の競合物質の存在下又は非存在下でおいて1μg/mlにおいて抗zB7H6−A647でプローブした。細胞を氷上で1時間インキュベートし、氷冷PBS2mlで1回洗浄し、次にFACSCalibur機上のフローサイトメトリーにより読み取った。結合は平均の蛍光強度(MFI)として記録した。この試験の結果は、抗zB7H6−A647抗体はzB7H6トランスフェクトしたP815細胞に結合する(MFI≒600)が、野生型(未トランスフェクト)P815細胞には結合しない(MFI≒25)ことを示していた。この結合は未標識の抗zB7H6の100倍質量過剰量では競合可能であった(MFI≒40)が、アイソタイプ対照抗体の100倍質量過剰量では可能ではなかった(MFI≒500)。
【0407】
マウス抗zB7H6ポリクローナル抗体は又P815トランスフェクション体へのNKp30/mFc2ビオチンの結合の競合結合試験においても使用した。150,000の野生型又はzB7H6トランスフェクトしたP815細胞を100μl PBS/2%FBS中1μg/mlにおいて、NKp30/mFc2ビオチンでプローブした。未標識の抗zB7H6ポリクローナル抗体又は他の対照抗体又は可溶性受容体を100倍質量過剰量で添加した。細胞を氷上で1時間染色し、氷冷PBS2mlで1回洗浄し、そして次に氷上で15分間1μg/mlのストレプトアビジン−PE(BD:554061)で染色した。細胞を再度冷PBSで洗浄した後、FACSCalibur機上のフローサイトメトリーにより読み取った。結合は平均の蛍光強度(MFI)として記録した。本試験の結果は、NKp30/mFc2ビオチンはzB7H6トランスフェクトした細胞に結合する(MFI≒825)が、野生型P815細胞には結合しない(MFI<15)ことを示していた。標識されたNKp30/mFc2は未標識の抗zB7H6抗体及びNKp30/mFc2の両方で競合可能であった(MFI≒25)が、アイソタイプ対照抗体では可能ではなかった(MFI≒775)。
【0408】
実施例15:可溶性蛋白質によるK562及びP815zB7H6標的に対抗したNK−92細胞溶解活性の阻害
細胞溶解試験はK562及びP815zB7H6標的に対抗するエフェクターとしてのNK−92細胞を用いて実施した。
【0409】
NK−92細胞をHBSSF(Hank緩衝食塩水(Ca、Mg非含有)+5%FBS)で1回洗浄し、そしてHBSSF中1.35×10
6/mlで再懸濁した(27:1比を達成するため)。洗浄細胞150μlをU底96穴プレートの最上列にプレーティングし、HBSSF中に連続希釈した(1:3)。
【0410】
K562及びP815zB7H6標的細胞を1回HBSSFで洗浄し、そして37℃で60分間、1×10
6細胞/mlで10μMカルセインAM分子プローブ#C1430(DMSO中4mM保存溶液2.5μl/ml、4mM=4mg/ml)中で標識した。標識細胞をHBSSF中で2回洗浄し、そして1×10
6細胞を20ml HBSSF中に再懸濁した(5000細胞/100μl)。懸濁標的細胞100μlを総容量200μlとなるように希釈したエフェクターに添加した。可溶性形態のNKp30(NKp30/VASP4量体受容体)、VASP対照(B7H3/VASP;配列番号[28])、抗zB7H6ポリクローナル抗体(E10607)、又は非関連の対照抗体もまた5μg/mlの濃度で連続希釈ウェルの一部のセットに添加した。
【0411】
エフェクター及び標的細胞を2分間500rpmで遠心分離し、3時間37℃でインキュベートし、5分間1500rpmで遠心分離し、そして次に100μlの上澄みを新しい平底96穴に移した。移した上澄みを含有する平底プレートを励起波長485nm及び発光波長535nmで1秒間蛍光計上で読み取った。
【0412】
図10に示す通り、可溶性NKp30/VASP及び抗zB7H6ポリクローナル抗体は9:1のエフェクターの標的に対する比においてK562及びP815zB7H6標的に対抗したNK−92細胞の細胞溶解活性を阻害した(
図10参照)。阻害は又27:1及び3:1の標的のエフェクターに対する比においても観察された。VASP及び非関連の抗体対照は作用を有していなかった。これらのデータはK562及びP815zB7H6標的を溶解するNK−92の能力はNKp30媒介性であり、そして更にzB7H6に依存していることを示唆している。
【0413】
実施例16:可溶性NKp30はK562、P815zB7H6及び293F細胞に特異的に結合する。
【0414】
K562、P815zB7H6及び293F細胞をNKp30の細胞外ドメイン及びネズミFcフラグメントを含有するNKp30のビオチン化可溶性形態(NKp30/mFc2)を用いたFACSによりプローブした。細胞を1.5×10
6細胞/mlの濃度でPBS/2%FBS中に再懸濁した(150,000細胞/試料)。100μlの試料を小分量化し、その際100μg/mlの全ヒトIgG(Jackson#009−000−003)をFc受容体ブロッキングのために包含させた。NKp30/mFc2−ビオチンプローブを2μg/mlの濃度において添加し、そして100倍質量過剰のVASP蛋白質(NKp30/VASP又はヒトzB7R1/VASP)又は対照VASP蛋白質(B7H3/VASP)を使用した。細胞を氷上で1時間インキュベートし、そして2mlの冷PBSで洗浄した。洗浄した細胞を1μg/mlでストレプトアビジン−PE(BD:554061)を含有する100μlのPBS/2%FBS100μl中に再懸濁し、そして氷上で15分間インキュベートした。次に細胞を1mlの冷PBSで洗浄し、250μlのPBS中に再懸濁し、そしてFACSCalibur上でPE染色に関して分析した。
【0415】
図11に示す通り、NKp30/mFc2ビオチンはK562、293F及びP815zB7H6細胞に結合した(競合無し)。この結合はNKp30/VASP及びzB7H6/VASPでは競合可能であったが、対照VASP蛋白質(B7H3/VASP)では可能ではなく、K562、P815zB7H6及び293F細胞へのNKp30/mFc2の結合が特異的であることを示している。MCF−7、Aspc−1、A549、及びHL−60腫瘍細胞系統に関しては、結合は殆ど、又は全く観察されなかった。
【0416】
実施例17:抗zB7H6はK562、P815zB7H6及び293F細胞に特異的に結合する
K562、P815、P815zB7H6及び293F細胞を抗zB7H6マウスポリクローナル抗体のA647結合体化形態(E10607)でプローブした。細胞を1.5×10
6細胞/mlの濃度でPBS/2%FBS中に再懸濁した(150,000細胞/試料)。100μlの試料を小分量化し、その際100μg/mlの全ヒトIgG(Jackson#009−000−003)をFc受容体のブロッキングのために包含させた。抗zB7H6−A647抗体を2μg/mlの濃度で添加し、100倍質量過剰量のVASP蛋白質(zB7H6/VASP又は対照VASP蛋白質(B7H3/VASP))も使用した。細胞を氷上で1時間インキュベートし、そして2mlの冷PBSで洗浄した。次に細胞を250μlのPBSに再懸濁し、そしてFACSCalibur上でAPC染色に関して分析した。
【0417】
図12に示す通り、抗zB7H6はK562、P815zB7H6及び293F細胞には結合するが、未トランスフェクトのP815細胞には結合しなかった(競合無し)。この結合はzB7H6/VASPでは競合可能であったが、対照VASP蛋白質(B7H3/VASP)では可能ではなく、K562、P815zB7H6及び293F細胞に対する抗zB7H6−A647の結合が特異的であることを示している。MCF−7、Aspc−1、A549、及びHL−60腫瘍細胞系統に関しては、結合は殆ど、又は全く観察されなかった。これらのデータをNKp30/mFc2ビオチン結合データと総合すると、zB7H6発現とのNKp30/mFcビオチン結合の相応性が示されている。
【0418】
実施例18:正常ヒト組織の定量的リアルタイムPCR分析
定量的リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(qRT−PCR)を用いて正常ヒト組織におけるzB7H6mRNA伝言レベルを試験した。zB7H6プライマー及びプローブは、ゲノムDNAの増幅を回避するためにエクソン/イントロン境界に渡るように設計されたFAMレポーター染料を用いてプライマーを発生させるABIの専売ソフトウエアを用いてそこより購入した。このプライマー(ABI:Hs02340611_m1)は、100ngから始まる5対数希釈シリーズにおいて293F cDNAに対するハウスキーピング遺伝子HPRT1(ABI:4333768−0712016)に関するプライマーと組み合わせて確認実験において使用した。293FcDNA濃度の対数vsデルタサイクル閾値(deltaCt)のプロットは式Y=−0.02571x+3.504に統計学的にフィットした直線を与え、zB7H6プライマー及びプローブのセットの効率がHPRT1のものとマッチしており、Log
2Ctの計算を有効化していることを示している(通過確認実験はdeltaCtの傾きvslog入力cDNAの絶対値<0.1として定義される)。ゲノムDNAからの増幅の非存在を確認するための293F希釈シリーズにおける濃度の各々に対する逆転写(−RT)対照は実施しなかった。正常組織のqPCRアレイはOrigene(OrigeneHMRT102)から購入した。このアレイにおけるポリ−AのRNA由来の第1鎖cDNAは製造元によりGAPDHに対して規格化されていた。凍結乾燥試料を30μLの重水に再懸濁し、そして13.5μlを2つの反応の各々に分割し、1つをHPRT1用、1つをzB7H6RT−PCR用とした。ABIの7900HTRT−PCR機上3連において行った10μlの反応物中、プライマーは900nMにおいて、そしてプローブは250nMにおいて使用した。全試料中で増幅したHPRT1ハウスキーピング遺伝子の増幅があったのに対し、48正常組織試料の何れにおいてもzB7H6プライマーによる増幅は観察されなかった。更に又、293F陽性対照cDNAはzB7H6の増幅をもたらし、qRT−PCR反応が正しく機能していたことを示していた。
【0419】
実施例19:腫瘍細胞系統の定量的リアルタイムPCR分析
qRT−PCRは又、種々の期限の腫瘍細胞系統のパネルに由来するzB7H6mRNAを評価するために使用した。RNeasy Midiカラム(Qiagen75142)を用いて製造元の説明書に従って細胞から全RNAを形成した。第1鎖cDNAはInvitrogen Superscript III Kit(Invitrogen11752−250)を用いて製造元の説明書に従って1μgのRNAの逆転写により合成した。上記実施例18に記載のものと同じプライマー及びプローブを使用して腫瘍系統由来の第1鎖cDNA19.3ngを分析した。NKp30/mFc2及び抗zB7H6と低結合レベルを有することが観察されているDaudi細胞は異なる3日において3連で実施した3種の異なる反応から0.079のLog
2Ct平均値をもたらし;従って0.07をqRT−PCR試験におけるzB7H6陽性を定義するための閾値として使用した。試験した118細胞系統のうち23がzB7H6メッセージを発現することがわかった。zB7H6を発現する腫瘍細胞系統を以下の表8に列挙する。
【0420】
【表7】
実施例20:腫瘍成長に対抗した抗zB7H6抗体又は抗体−薬剤結合体の薬効を評価するためのBxPC3膵臓癌腫モデル
抗zB7H6抗体又は抗体−薬剤結合体がマウスにおいて腫瘍の成長に対して活性を有するかどうかを試験するために、マウスの群にBxPC3膵臓腫瘍を第0日に皮下注射する。腫瘍が150〜200mm
3にまで成長した後、マウスの群(n=10/gp)に1mg/kg〜30mg/kgの対照試薬、抗zB7H6抗体、又は抗zB7H6抗体−薬剤結合体を、1〜3回/週、3週間注射する。腫瘍体積は3回/週、5週間モニタリングする。対照試薬を注射したマウスと比較して抗zB7H6抗体又は抗体−薬剤結合体を注射したマウスにおいて有意に小さい腫瘍であれば、腫瘍成長の阻害のためのアンタゴニストの薬効を示している。
【0421】
試験設計:8〜10週齢の雌性C.B−17SCIDマウス(Charles River Laboratories)の右側腹皮下に2×10
6BxPC−3細胞を第0日に注射する。150〜200mm
3の腫瘍サイズを起点として、マウスの群(n=10/群)に1mg/kg〜30mg/kgの対照試薬、抗zB7H6抗体、又は抗zB7H6抗体−薬剤結合体を、1〜3回/週、3週間腹腔内注射する。腫瘍の成長はカリパス計測により3回/週、5週間モニタリングする。腫瘍体積は式1/2*(B)
2*L(mm
3)を用いて計算する。
【0422】
実施例21:抗zB7H6抗体又は抗体−薬剤結合体を用いたインビボのヒト肝細胞癌の細胞成長の阻害
インビボのヒト肝細胞癌の細胞に対抗する抗zB7H6抗体又は抗体−薬剤結合体の抗腫瘍活性を評価するために、BALB/cヌードマウスの群にHuH7又はC3A肝細胞癌の細胞の何れかを第0日に注射する。腫瘍担持マウスの群(n=10/群)に5〜75μgの抗zB7H6抗体又は抗体−薬剤結合体を腹腔内、又は腫瘍周囲への注射により隔日(EOD)で第5〜33日まで投与する。腫瘍体積は3回/週で6週間モニタリングする。抗zB7H6抗体又は抗体−薬剤結合体による腫瘍成長の阻害は、該当する蛋白質がインビボのヒト肝細胞癌に対して阻害作用を有することを示している。
【0423】
試験設計:8週齢の雌性BALB/cヌードマウス(Charles River Laboratories)の右側腹皮下に6×10
6のHuH7又はC3A細胞を第0日に注射する。マウスの群(n=10/群)に5μg〜75μgの抗zB7H6抗体又は抗体−薬剤結合体を腹腔内、又は腫瘍周囲への注射により第5〜33日まで投与する。注射は総容量200μlで行う。腫瘍の成長はカリパス計測により3回/週、6週間モニタリングする。腫瘍体積は式1/2*(B)
2*L(mm
3)を用いて計算する。
【0424】
実施例22:抗zB7H6抗体又は抗体−薬剤結合体を用いたインビボのヒト前立腺癌の細胞成育の阻害
インビボのヒト前立腺癌の細胞に対抗する抗zB7H6抗体又は抗体−薬剤結合体の抗腫瘍活性を評価するために、BALB/cヌードマウスの群にPC−3又はDU−145前立腺癌の細胞の何れかを第0日に注射する。腫瘍担持マウスの群(n=10/群)に5〜75μgの抗zB7H6抗体又は抗体−薬剤結合体を腹腔内、又は腫瘍周囲への注射により隔日(EOD)で第5〜33日まで投与する。腫瘍体積は3回/週で6週間モニタリングする。抗zB7H6抗体又は抗体−薬剤結合体による腫瘍成長の阻害(体積又は重量)は、該当する蛋白質がインビボのヒト前立腺癌に対して阻害作用を有することを示している。
【0425】
試験設計:8週齢の雌性BALB/cヌードマウス(Charles River Laboratories)の右側腹皮下又は前立腺葉内正常位に10×10
6のPC−3又は6×10
6のDU−145細胞を第0日に注射する。マウスの群(n=10/群)に5μg〜75μgの抗zB7H6抗体又は抗zB7H6抗体−薬剤結合体を腹腔内、又は腫瘍周囲(皮下モデルのみ)への注射により第5〜33日まで投与する。注射は総容量200μlで行う。皮下腫瘍に関しては、腫瘍の成長はカリパス計測により3回/週、6週間モニタリングする。腫瘍体積は式1/2*(B)
2*L(mm
3)を用いて計算する。正常位腫瘍に関しては、マウスを試験終了時に屠殺し、そして腫瘍を計量することにより腫瘍負荷の評価を可能とする。
【0426】
実施例23:抗zB7H6抗体又は抗体−薬剤結合体を用いたインビボのヒト結腸癌の細胞成育の阻害
インビボのヒト結腸癌の細胞に対抗する抗zB7H6抗体又は抗体−薬剤結合体の抗腫瘍活性を評価するために、BALB/cヌードマウスの群にDLD−1又はHCT−116結腸癌の細胞の何れかを第0日に注射する。腫瘍担持マウスの群(n=10/群)に5〜75μgの抗zB7H6抗体又は抗zB7H6抗体−薬剤結合体を腹腔内、又は腫瘍周囲への注射により隔日(EOD)で第5〜33日まで投与する。腫瘍体積は3回/週で6週間モニタリングする。抗zB7H6抗体又は抗体−薬剤結合体による腫瘍成長の阻害(体積又は重量)は、該当する蛋白質がインビボのヒト結腸癌に対して阻害作用を有することを示唆している。
【0427】
試験設計:8週齢の雌性BALB/cヌードマウス(Charles River Laboratories)の右側腹皮下又は結腸壁内正常位に6×10
6のDLD−1又はHCT−116細胞を第0日に注射する。マウスの群(n=10/群)に5μg〜75μgの抗zB7H6抗体又は抗zB7H6抗体−薬剤結合体を腹腔内、又は腫瘍周囲(皮下モデルのみ)への注射により第5〜33日まで投与する。注射は総容量200μlで行う。皮下腫瘍に関しては、腫瘍の成長はカリパス計測により3回/週、6週間モニタリングする。腫瘍体積は式1/2*(B)
2*L(mm
3)を用いて計算する。正常位腫瘍に関しては、マウスを試験終了時に屠殺し、そして腫瘍を計量することにより腫瘍負荷の評価を可能とする。
【0428】
実施例24:抗zB7H6抗体又は抗体−薬剤結合体を用いたインビボのヒト膵臓癌の細胞成育の阻害
インビボのヒト膵臓癌の細胞に対抗する抗zB7H6抗体又は抗体−薬剤結合体の抗腫瘍活性を評価するために、BALB/cヌードマウスの群にBxPC−3又はHPAF−II膵臓癌の細胞の何れかを第0日に注射する。腫瘍担持マウスの群(n=10/群)に5〜75μgの抗zB7H6抗体又は抗zB7H6抗体−薬剤結合体を腹腔内、又は腫瘍周囲への注射により隔日(EOD)で第5〜33日まで投与する。腫瘍体積は3回/週で6週間モニタリングする。抗zB7H6抗体又は抗体−薬剤結合体による腫瘍成長の阻害(体積又は重量)は、該当する蛋白質がインビボのヒト膵臓癌に対して阻害作用を有することを示唆している。
【0429】
試験設計:8週齢の雌性BALB/cヌードマウス(Charles River Laboratories)の右側腹皮下又は膵臓葉内正常位に6×10
6のBxPC−3又はHPAF−II細胞を第0日に注射する。マウスの群(n=10/群)に5〜75μgの抗zB7H6抗体又は抗zB7H6抗体−薬剤結合体を腹腔内、又は腫瘍周囲(皮下モデルのみ)への注射により第5〜33日まで投与する。注射は総容量200μlで行う。皮下腫瘍に関しては、腫瘍の成長はカリパス計測により3回/週、6週間モニタリングする。腫瘍体積は式1/2*(B)
2*L(mm
3)を用いて計算する。正常位腫瘍に関しては、マウスを試験終了時に屠殺し、そして腫瘍を計量することにより腫瘍負荷の評価を可能とする。
【0430】
実施例25:抗zB7H6抗体又は抗体−薬剤結合体を用いたインビボのB細胞リンパ腫の阻害
ヒトBリンパ腫細胞系統を成長培地中継代によりインビトロで維持する。細胞をPBS中で十分に洗浄することにより培養成分を除去する。
【0431】
SCIDマウスに(典型的には)100マイクロリットルの容量において尾静脈を介して1×10
6ヒトリンパ腫細胞を注射する。注射する細胞の最適な数は所望の動態と合致して腫瘍の生着をもたらすためにパイロット試験において経験的に求められる。抗zB7H6抗体又は抗体−薬剤結合体の投与は、翌日より、ALZET(登録商標)浸透圧ミニポンプ(ALZET,Cupertino,CA)の皮下移植によるか、又は抗zB7H6抗体又は抗体−薬剤結合体又はビヒクルの毎日腹腔内注射により開始する。マウスは生存及び明確な罹患性に関してモニタリングする。初期の体重の20%超を失った、並びに後肢の麻痺のような明確な罹患性を示しているマウスは屠殺する。使用するリンパ腫細胞系統に応じて、未処置のマウスは典型的には3〜6週間で死亡する。IgG又はIgMを分泌するB細胞リンパ腫に関しては、疾患の進行は又、毎週の採血及びELISAによる血清中ヒト免疫グロブリン濃度の計測によりモニタリングできる。
【0432】
抗zB7H6抗体又は抗体−薬剤結合体の用量応答/IM−9モデル
マウスに1×10
6のIM−9細胞を注射し、そして28日用の浸透圧ミニポンプを翌日移植する。用量群当たり8マウスを用いて、ポンプに送達すべきzB7H6抗体又は抗体−薬剤結合体を以下の濃度、即ち1日当たり0、0.12.1.2又は12マイクログラムを投入する。抗体又は抗体−薬剤結合体の増大した用量を用いた腫瘍細胞系統からのマウスの増強された保護は、抗zB7H6抗体又は抗体−薬剤結合体の作用が用量依存性であることを示している。実験の終了時に生存していたマウスは疾患の兆候を有しておらず、そしてそれらの血清中には検出可能なヒトIgGは存在しない。
【0433】
これらのデータは、SCIDマウスリンパ腫モデルにおける抗zB7H6抗体又は抗zB7H6抗体−薬剤結合体の薬効がインビボにおけるリンパ腫細胞系統の成長を阻害する能力と相関していることを示している。
【0434】
実施例26:抗zB7H6抗体又は抗体−薬剤結合体を用いたインビボのB細胞誘導腫瘍の阻害
ミニ浸透圧ポンプを介した一定注入による抗zB7H6抗体又は抗zB7H6抗体−薬剤結合体の投与はポンプ中に含有された抗体又は抗体−薬剤結合体の濃度に比例した定常状態の血清中濃度をもたらす。2mg/ml又は0.2mg/mlの濃度のリン酸塩緩衝食塩水(pH6.0)中に含有される抗zB7H6抗体又は抗体−薬剤結合体0.22mlをAlzetミニ浸透圧ポンプ(2004型、Alza corporation Palo Alto,CA)内に滅菌条件下で導入する。ポンプを背部皮膚の1cmの切開部を通過してマウスに皮下移植し、そして滅菌創傷閉鎖材で皮膚を閉鎖する。これらのポンプは28日間の期間に渡り時間当たり0.25μlの速度でそれらの内容物を送達するように設計されている。この投与方法により腫瘍細胞を注射されたマウスにおける生存率が有意に上昇する(後述)。
【0435】
インビボにおけるB細胞誘導腫瘍に対する抗zB7H6抗体又は抗体−薬剤結合体の作用
抗zB7H6抗体又は抗体−薬剤結合体の作用は本明細書に記載したマウス腫瘍異種移植片モデルを用いてインビボで試験される。試験すべき異種移植片モデルはヒトリンパ芽球様細胞系統IM−9(ATCC No.CRL159)である。C.B−17SCIDマウス(雌性C.B−17/IcrHsd−scid;Harlan,Indianapolis,Indiana)を4群に分割する。第0日にIM−9細胞(ATCC No.CRL159)を培養物から採取し、そして全マウスに対し尾静脈から静脈内注射する(マウス当たり約1,000,000細胞)。第1日において被験物質又は対照物質を含有するミニ浸透圧ポンプをマウスに皮下移植する。群1〜3(群当たりn=9)のマウスには抗zB7H6抗体又は抗体−薬剤結合体を送達し;群1は2.0mg/mLの抗体又は抗体−薬剤結合体を含有し、そして1日当たり12μgを送達され;群2は0.20mg/mLを含有し、そして1日当たり1.2μgを送達され;群3は0.02mg/mLを含有し、そして1日当たり0.12μgを送達される。群4のマウス(n=9)は対照であり、そしてビヒクル(PBS pH6.0)で処置する。
【0436】
ビヒクル処置マウスと比較した場合の処置群(12μg/日又は1.2μg/日の何れか)の上昇した生存率は、抗zB7H6抗体又は抗体−薬剤結合体がインビボのB細胞腫瘍細胞の作用を低減することを示している。
【0437】
上記より、当然ながら、本発明の特定の実施形態を説明目的のために本明細書に記載したが、種々の変更が本発明の精神及び範囲を外れることなく可能である。従って、本発明は添付の請求項による場合を除き、制約されるものではない。本明細書において引用した全ての公開物、特許、及び特許出願は全ての目的のために参照により全体が本明細書に組み込まれる。