特許第5887337号(P5887337)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5887337
(24)【登録日】2016年2月19日
(45)【発行日】2016年3月16日
(54)【発明の名称】ヒト化IL−25抗体
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/02 20060101AFI20160303BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20160303BHJP
   C07K 16/24 20060101ALI20160303BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20160303BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20160303BHJP
   A61P 11/06 20060101ALI20160303BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20160303BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20160303BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20160303BHJP
   C12P 21/02 20060101ALN20160303BHJP
【FI】
   C12N15/00 CZNA
   C12P21/08
   C07K16/24
   C07K16/46
   A61K39/395 N
   A61P11/06
   A61P29/00
   A61P1/04
   A61P1/00
   !C12P21/02 C
【請求項の数】13
【全頁数】40
(21)【出願番号】特願2013-502790(P2013-502790)
(86)(22)【出願日】2011年3月30日
(65)【公表番号】特表2013-523132(P2013-523132A)
(43)【公表日】2013年6月17日
(86)【国際出願番号】US2011030469
(87)【国際公開番号】WO2011123507
(87)【国際公開日】20111006
【審査請求日】2014年3月28日
(31)【優先権主張番号】61/341,458
(32)【優先日】2010年3月30日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/319,260
(32)【優先日】2010年3月31日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】509087759
【氏名又は名称】ヤンセン バイオテツク,インコーポレーテツド
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100093676
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】アルマグロ,ジュアン,カーロス
(72)【発明者】
【氏名】ブラニガン,パトリック
(72)【発明者】
【氏名】ケーン,コリーン
(72)【発明者】
【氏名】ストロール,ウィリアム
(72)【発明者】
【氏名】タウドテ,スーザン
(72)【発明者】
【氏名】トルネタ,マーク
(72)【発明者】
【氏名】ホィーラー,ジョン
【審査官】 福澤 洋光
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2008/129263(WO,A1)
【文献】 国際公開第2009/136976(WO,A1)
【文献】 特表2003−527117(JP,A)
【文献】 米国特許第06562578(US,B1)
【文献】 Journal of Allergy and Clinical Immunology,2007年,Vol.120, No.6,p.1324-1331
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/00−15/90
C07K 1/00−19/00
C12P 1/00−41/00
CA/MEDLINE/BIOSIS/WPIDS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus(JDreamIII)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
IL−25に結合する標的結合メンバーであって、
アミノ酸配列SASQGISNYLN(配列番号6)を有するCDR1と、アミノ酸配列YTSSLHS(配列番号7)を有するCDR2と、アミノ酸配列QQYLAFPYTF(配列番号8)を有するCDR3と、を含む、抗体軽鎖可変領域(VL)ドメインと、
アミノ酸配列GYTMN(配列番号10)を有するCDR1と、アミノ酸配列LINPYNGGTSYNQNFKG(配列番号11)を有するCDR2と、アミノ酸配列EDYDGYLYFAMDY(配列番号12)を有するCDR3と、を含む抗体重鎖可変領域(VH)ドメインと、
を含む、標的結合メンバー。
【請求項2】
前記標的結合メンバーが、配列番号17のアミノ酸残基56〜63及び配列番号17のアミノ酸残基66〜74に結合する、請求項1に記載の標的結合メンバー。
【請求項3】
前記標的結合メンバーが、配列番号17のアミノ酸残基46〜63又は配列番号17のアミノ酸残基66〜84からなる群から選択される1つ以上のアミノ酸配列に結合する、請求項1に記載の標的結合メンバー。
【請求項4】
配列番号5の抗体軽鎖のVLドメインを含む、請求項に記載の標的結合メンバー。
【請求項5】
配列番号9の抗体重鎖のVHドメインを含む、請求項に記載の標的結合メンバー。
【請求項6】
前記標的結合メンバーが抗体定常領域を含む、請求項に記載の標的結合メンバー。
【請求項7】
前記抗体定常領域がIgG1定常領域又はIgG4定常領域である、請求項に記載の標的結合メンバー。
【請求項8】
配列番号5の抗体軽鎖及び配列番号9の抗体重鎖を含む、請求項に記載の標的結合メンバー。
【請求項9】
前記標的結合メンバーが、Fab抗体断片、F(ab’)2抗体断片、及びscFv抗体断片からなる群から選択される抗体断片を含む、請求項に記載の標的結合メンバー。
【請求項10】
請求項に記載の標的結合メンバーと、医薬的に許容できる担体と、を含む、組成物。
【請求項11】
凍結乾燥粉末を含む、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記標的結合メンバーが、ヒトIL−25に対して50pM以下の結合親和性を有する、請求項に記載の標的結合メンバー。
【請求項13】
前記標的結合メンバーがヒト化抗体を含む、請求項に記載の標的結合メンバー。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
IL−17Eとしても知られるインターロイキン−25(IL−25)は、IL−17サイトカインファミリーに属するサイトカインであり、タイプ2ヘルパーT細胞(Th2)及びマスト細胞から分泌される。IL−25は、多くの組織においてIL−4、IL−5、及びIL−13など他のサイトカインの産生を誘導し、好酸球の増殖を刺激する。
【0002】
IL−25は、胃腸管に関連する慢性炎症に関与されており、IL−25遺伝子は、炎症性腸疾患(IBD)などの消化管の自己免疫疾患に関連する染色体領域内に同定されている。IBD治療における従来の治療法では、抗生物質又はステロイド誘導体薬のいずれかを含めているが、現在のところ患者の臨床的寛解をもたらすこと、又は維持することに成功していない。
【0003】
IL−25は更に、ぜんそく(罹患者が全世界で3億人を超えると推測される疾患)の患者サンプルにおいて発現増加していることも証明されており、本サイトカインの過剰発現がぜんそく及び関連疾患の病態に寄与することが示唆される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、ぜんそく及び炎症性腸疾患など、IL−25の過剰発現を特徴とする疾病及び疾患の治療に有用な、IL−25の効果的な拮抗物質に対するニーズがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、インターロイキン25(IL−25)を対象とする、抗体、及びその結合断片を含む標的結合メンバーに関する。
【0006】
本発明は更に、RH2.5_R71Vの変異体である、マウス2C3抗体のヒト化(CDRグラフト化)版に関し、これらはまた本明細書において、それぞれ用語「huDDG91」及び「M9」を用いて称する。このような変異体の1つを、本明細書では「M6抗体」又は「M6」と称する。M6は、例えば、huDDG91親抗体と比較してIL−25に対する結合親和性の増強、huDDG91親抗体と比較して受容体及び細胞系アッセイにおけるIL−25受容体の阻害能の向上、更に、発現レベルが高い、溶解性が高い、精製時に顕著なタンパク質凝集がない、並びに精製時に望まれない翻訳後修飾、タンパク質−タンパク質相互作用、及び酸化がみられないといったその他特徴などの、インビトロ及びインビボにおける多くの有利な特性を示す。
【0007】
一実施形態において、本発明はIL−25に結合する標的結合メンバーに関し、この標的結合メンバーは、配列番号17のアミノ酸残基46〜63、配列番号17のアミノ酸残基66〜84、及び配列番号17のアミノ酸残基129〜135からなる群から選択される1つ以上のアミノ酸配列に結合する。特定の実施形態において、本発明の標的結合メンバーは、配列番号17のアミノ酸残基56〜63、及び配列番号17のアミノ酸残基66〜74に結合する。別の実施形態において、標的結合メンバーは、アミノ酸配列QQYLAFPYTF(配列番号8)を有するCDR3を含む、抗体VLドメインを含む。
【0008】
別の実施形態において、本発明はIL−25に結合する標的結合メンバーに関し、この標的結合メンバーは以下を含む。
a)アミノ酸配列SASQGISNYLN(配列番号6)を有するCDR1と、アミノ酸配列YTSSLHS(配列番号7)を有するCDR2と、アミノ酸配列QQYLAFPYTF(配列番号8)を有するCDR3と、を含む抗体VLドメイン、及び
b)アミノ酸配列GYTMN(配列番号10)を有するCDR1と、アミノ酸配列LINPYNGGTSYNQNFKG(配列番号11)を有するCDR2と、アミノ酸配列EDYDGYLYFAMDY(配列番号12)を有するCDR3と、を含む、抗体VHドメイン。
【0009】
特定の実施形態において、標的結合メンバーは、配列番号5を含むVLドメインと、配列番号9を含むVHドメインと、を含む。更なる実施形態において、標的結合メンバーは全長抗体を含む。
【0010】
さまざまな実施形態において、本発明は更に、本発明の標的結合メンバーをコードするヌクレオチド配列を含む単離された核酸、かかる核酸を含む発現ベクター、及びかかる発現ベクターを保有する宿主細胞に関する。
【0011】
別の実施形態において、本発明は標的結合メンバーの生成方法に関し、この方法は、標的結合メンバーの産生条件下で本発明の宿主細胞を培養する工程を含む。
【0012】
更なる実施形態において、本発明は、本発明の標的結合メンバーと、医薬的に許容できる担体と、を含む組成物を提供する。
【0013】
追加の実施形態において、本発明は、ぜんそく及び炎症性腸疾患を非限定的に含む疾病又は疾患の治療又は予防を必要とする被験体における、治療又は予防方法を包含する。
【0014】
更なる実施形態において、本発明は、炎症性疾患、例えば、ぜんそく(アレルギー性ぜんそくを含む)及び炎症性腸疾患(例えば、クローン病及び潰瘍性大腸炎)などの疾病又は疾患の治療のための、例えば医薬組成物の形態の本発明の標的結合メンバーの使用を提供する。
【0015】
別の実施形態において、本発明は、配列番号17のアミノ酸残基46〜63、配列番号17のアミノ酸残基66〜84、及び配列番号17のアミノ酸残基129〜135からなる群から選択される1つ以上のアミノ酸配列に結合する標的結合メンバーと、IL−25への結合を競合する標的結合メンバーに関する。特定の実施形態において、標的結合メンバーは、ヒトIL−25に対して約50pM以下の結合親和性を有する。
【0016】
別の実施形態において、本発明は更に、以下を含む本発明の標的結合メンバーに関する。
a)配列番号5のアミノ酸配列と比較して1〜約20か所のアミノ酸置換を有するアミノ酸配列を含む抗体VLドメイン
b)配列番号9のアミノ酸配列と比較して1〜約20か所のアミノ酸置換を有するアミノ酸配列を含む抗体VHドメイン、又は
c)これらの組み合わせ。
【0017】
更に別の実施形態において、本発明は、以下を含む本発明の標的結合メンバーの生成方法を提供する。
(a)VLドメインをコードする核酸の出発レパートリーを提供する工程であって、かかる核酸が置換されるCDR3コード領域を含むか、又はCDR3コード領域を欠くかのいずれかである工程、
(b)出発レパートリーを、アミノ酸配列QQYLAFPYTF(配列番号8)を有するVL CDR3をコードする供与核酸と組み合わせる工程であって、かかる供与核酸がレパートリー内の1つ以上の核酸に挿入され、アミノ酸配列QQYLAFPYTF(配列番号8)を有するVL CDR3を含むVLドメインをコードする核酸の生成物レパートリーを提供する工程、
(c)生成物レパートリーの核酸を発現し標的結合メンバーを提供する工程、
(d)配列番号17のアミノ酸残基56〜63、配列番号17のアミノ酸残基66〜74、及び配列番号17のアミノ酸残基129〜135からなる群から選択される1つ以上の配列に特異的に結合する標的結合メンバーを選択する工程
(e)標的結合メンバー又は、標的結合メンバーをコードする核酸を回収する工程。
【図面の簡単な説明】
【0018】
本特許又は出願書類は、少なくとも1枚のカラー印刷図面を収容している。カラー図面を備える、本特許又は特許出願公開の複製は、要請があれば、必要な手数料を支払うことにより、特許庁によって提供されるであろう。
図1】huDDG91/RH2.5_R71V抗体のκ軽鎖ヌクレオチド(配列番号1)及びアミノ酸(配列番号2)配列。アミノ酸配列中の下線はCDRを示す。リーダー配列は含まれない。
図2】huDDG91/RH2.5_R71V抗体の重鎖ヌクレオチド(配列番号3)及びアミノ酸(配列番号4)配列。アミノ酸配列中の下線はCDRを示す。リーダー配列は含まれない。
図3】huDDG91/RH2.5_R71V抗体をベースとした25メンバーのコンビナトリアルライブラリをスクリーニングすることにより同定したM6を含む、9種の候補モノクローナル抗体の特性を示す表。イタリック体は異なるデータセットから得られた数を意味する。R71V G1はhuDDG91抗体を意味する。2つのR71V G1の行は、2つの異なるデータセットの測定値を表す。疎水性が増した残基を黄色で強調する。
図4A】M6抗体の軽鎖(配列番号5)及びそのCDR(配列番号6〜8)のアミノ酸配列を示す。アミノ酸配列中の下線はCDRの位置を示す。リーダー配列は含まれない。赤太字のアミノ酸残基は、huDDG91/RH2.5_R71Vの親配列に対するアミノ酸置換を示す。
図4B】M6抗体の重鎖(配列番号9)及びそのCDR(配列番号10〜12)のアミノ酸配列。アミノ酸配列中の下線はCDRの位置を示す。リーダー配列は含まれない。
図5】rhIL−4及びrhIL−25の存在下で自己樹状細胞により4日間刺激を受けた未感作ヒトCD4+T細胞による、IL−4/IL25誘導性IL−5産生を、huDDG91(M9)抗体よりもM6が大いに抑制することを示すグラフ。IgG1アイソタイプ抗体(iso)を対照として用いた。n=4例のドナー。
図6A】組み換えヒトIL−25で24時間刺激したLS174T細胞における、M6抗体によるhuDDG91(M9)抗体と比べた、IL−25誘導性GROa産生の抑制増強を示すグラフ。図6A及び6B中のグラフは、2回の別の実験から得たデータを示す。
図6B】組み換えヒトIL−25で24時間刺激したLS174T細胞における、M6抗体によるhuDDG91(M9)抗体と比べた、IL−25誘導性GROa産生の抑制増強を示すグラフ。図6A及び6B中のグラフは、2回の別の実験から得たデータを示す。
図7A】2M尿素、1M TCEP、pH 3.0で反応停止したペプシン消化による、ヒトIL−25のアミノ酸残基1〜78(配列番号13)の配列カバーマップを示す。黒線は観察されたペプチド。
図7B】2M尿素、1M TCEP、pH 3.0で反応停止したペプシン消化による、ヒトIL−25のアミノ酸残基79〜146(配列番号14)の配列カバーマップを示す。黒線は観察されるペプチド。
図8A】H/D交換実験でのM6抗体結合による、ヒトIL−25タンパク質の異なるセグメント(配列番号15及び配列番号16)に対する重水素化レベルの違いを示す。各ブロックはヒトIL−25ペプチドを表し、6つの時点、pH 6で150秒間及び500秒間、並びにpH 7で150秒間、500秒間、1,500秒間及び5,000秒間でのデータを含む。紺青色は、M6抗体の結合の際保護されなかったことを示す。右側挿入部に示すように、その他の色は、オンソリューション/オフカラム交換後に、オンカラム/オフカラム交換後よりも多く重水素化されたことを示す。各イオンの第1の2つのアミノ酸残基のうちどちらかに結合された重水素が、分析(水性環境における消化/分離/質量分析)中に損失しており、H/D交換パターンにおける小さな差を説明する。
図8B】H/D交換実験でのM6抗体結合による、ヒトIL−25タンパク質の異なるセグメント(配列番号15及び配列番号16)に対する重水素化レベルの違いを示す。各ブロックはヒトIL−25ペプチドを表し、6つの時点、pH 6で150秒間及び500秒間、並びにpH 7で150秒間、500秒間、1,500秒間及び5,000秒間でのデータを含む。紺青色は、M6抗体の結合の際保護されなかったことを示す。右側挿入部に示すように、その他の色は、オンソリューション/オフカラム交換後に、オンカラム/オフカラム交換後よりも多く重水素化されたことを示す。各イオンの第1の2つのアミノ酸残基のうちどちらかに結合された重水素が、分析(水性環境における消化/分離/質量分析)中に損失しており、H/D交換パターンにおける小さな差を説明する。
図9A】3℃でM6抗体カラムを用いるpH 6及びpH 7でのオン/オフ交換後の、ヒトIL−25の異なるセグメントの重水素含量を示すグラフである。青色はオンソリューション/オフカラムであり、紫色はオンカラム/オフカラム。全ての交換時間をpH 7、23℃等価に変換した(例えば、150秒間、pH 6、3℃は1.85秒間、pH 7、23℃に等しい)。各セグメントに代表されるヒトIL−25残基を各プロットの上部に示す。
図9B】3℃でM6抗体カラムを用いるpH 6及びpH 7でのオン/オフ交換後の、ヒトIL−25の異なるセグメントの重水素含量を示すグラフである。青色はオンソリューション/オフカラムであり、紫色はオンカラム/オフカラム。全ての交換時間をpH 7、23℃等価に変換した(例えば、150秒間、pH 6、3℃は1.85秒間、pH 7、23℃に等しい)。各セグメントに代表されるヒトIL−25残基を各プロットの上部に示す。
図9C】3℃でM6抗体カラムを用いるpH 6及びpH 7でのオン/オフ交換後の、ヒトIL−25の異なるセグメントの重水素含量を示すグラフである。青色はオンソリューション/オフカラムであり、紫色はオンカラム/オフカラム。全ての交換時間をpH 7、23℃等価に変換した(例えば、150秒間、pH 6、3℃は1.85秒間、pH 7、23℃に等しい)。各セグメントに代表されるヒトIL−25残基を各プロットの上部に示す。
図9D】3℃でM6抗体カラムを用いるpH 6及びpH 7でのオン/オフ交換後の、ヒトIL−25の異なるセグメントの重水素含量を示すグラフである。青色はオンソリューション/オフカラムであり、紫色はオンカラム/オフカラム。全ての交換時間をpH 7、23℃等価に変換した(例えば、150秒間、pH 6、3℃は1.85秒間、pH 7、23℃に等しい)。各セグメントに代表されるヒトIL−25残基を各プロットの上部に示す。
図9E】3℃でM6抗体カラムを用いるpH 6及びpH 7でのオン/オフ交換後の、ヒトIL−25の異なるセグメントの重水素含量を示すグラフである。青色はオンソリューション/オフカラムであり、紫色はオンカラム/オフカラム。全ての交換時間をpH 7、23℃等価に変換した(例えば、150秒間、pH 6、3℃は1.85秒間、pH 7、23℃に等しい)。各セグメントに代表されるヒトIL−25残基を各プロットの上部に示す。
図9F】3℃でM6抗体カラムを用いるpH 6及びpH 7でのオン/オフ交換後の、ヒトIL−25の異なるセグメントの重水素含量を示すグラフである。青色はオンソリューション/オフカラムであり、紫色はオンカラム/オフカラム。全ての交換時間をpH 7、23℃等価に変換した(例えば、150秒間、pH 6、3℃は1.85秒間、pH 7、23℃に等しい)。各セグメントに代表されるヒトIL−25残基を各プロットの上部に示す。
図10】ヒトIL−25(配列番号17)のアミノ酸配列。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、本明細書で「M6」と称される高親和性ヒトIL−25抗体(実施例1を参照)の同定、及び、水素/重水素(H/D)交換マススペクトロメトリー(実施例3を参照)で決定される、M6抗体により結合されるヒトIL−25中のアミノ酸残基の同定に一部基づく。したがって、一実施形態において、本発明はIL−25に結合する標的結合メンバーに関し、この標的結合メンバーは、ヒトIL−25(配列番号17)のアミノ酸残基46〜63、66〜84、及び129〜135からなる群から選択される1つ以上のアミノ酸配列に結合する。このことから、本発明の標的結合メンバーは、配列番号17のアミノ酸残基46〜63、配列番号17のアミノ酸残基66〜84、若しくは配列番号17のアミノ酸残基129〜135、又はこれらの任意の組み合わせに結合することができる。一実施形態において、本発明の標的結合メンバーは、配列番号17のアミノ酸残基56〜63、及び配列番号17のアミノ酸残基66〜74に結合する。
【0020】
本明細書で用いるとき、「標的結合メンバー」は、哺乳類(例えば、ヒト)IL−25タンパク質又はその一部に特異的に結合する、重鎖若しくは軽鎖の少なくとも1つの相補的決定領域(CDR)又はそのリガンド結合部を含む免疫グロブリン分子の少なくとも一部を含む、任意のタンパク質又はペプチド含有分子を指す。このような標的結合メンバーとして更に、抗体重鎖若しくは軽鎖可変領域の少なくとも一部、抗体重鎖若しくは軽鎖定常領域の少なくとも一部、抗体フレームワーク領域の少なくとも一部、又はこれらの任意の組み合わせを挙げてもよい。このような標的結合メンバーは、インビトロ、インサイチュ、及び/又はインビボにおいて、少なくとも1つのIL−25活性若しくは結合、又はIL−25受容体活性若しくは結合について、調節、低下、拮抗、軽減、緩和、遮断、阻害、抑制、及び/又は妨害する。非限定例として、好適な本発明の標的結合メンバーは、本明細書で記載されるM6抗体によって認識されるヒトIL−25の阻害及び/又は中和エピトープに高い親和性で結合できる。
【0021】
本発明の標的結合メンバーは、配列番号17のアミノ酸残基46〜63、アミノ酸残基66〜84、及び/又はアミノ酸残基129〜135のみに結合するものに限定されない。したがって、いくつかの実施形態において、本発明の標的結合メンバーは、配列番号17のアミノ酸残基46〜63、アミノ酸残基66〜84、及び/又はアミノ酸残基129〜135を包含しないヒトIL−25の1つ以上の別の部分に更に結合することができる。他の例では、本発明の標的結合メンバーは、配列番号17のアミノ酸残基46〜63、アミノ酸残基66〜84、及び/又はアミノ酸残基129〜135に隣接するヒトIL−25中の1つ以上のアミノ酸残基に更に結合することができる。
【0022】
本発明は更に、配列番号17のアミノ酸残基46〜63、アミノ酸残基66〜84、及び/又はアミノ酸残基129〜135に含まれるヒトIL−25の1つ以上の部分、例えば、配列番号17のアミノ酸残基46〜63、アミノ酸残基66〜84、及び/又はアミノ酸残基129〜135の少なくとも5つのアミノ酸からなるIL−25の一部などに結合する標的結合メンバーを考慮する。標的結合メンバーにより結合され得る代表的なIL−25部分として、配列番号17のアミノ酸56〜63、及び/又はアミノ酸66〜74が挙げられる。
【0023】
本発明の標的結合メンバーにより結合されるIL−25の領域、又はエピトープは、本発明が属する当該技術分野において周知である、いくつかの標準的な任意のエピトープマッピング手技を用いて決定できる。このような手技として、例えば、結合アッセイを伴う部位特異的突然変異誘発法、ペプチドピンでのエピトープマッピング(例えば、Geysen et al.,Peptides:Chemistry and Biological,Proceedings of the Twelfth American Peptide Symposium,p.519〜523,Ed,G.R.Marshall,Escom,Leiden,1988)、X線結晶解析、及び水素/重水素(H/D)交換法(例えば、H/D交換マススペクトロメトリー)が挙げられる。
【0024】
本明細書で記載されるように、H/D交換マススペクトロメトリーを用いて、M6抗体により認識かつ結合されるヒトIL−25中のエピトープを決定した(実施例3、並びに図8A、8B及び9A〜9Fを参照)。水から重水素系溶媒系(重水)へ移すと、タンパク質の水素原子が重陽子(水素のより重い同位体)で徐々に置換されるため、タンパク質の質量が増加する。水素/重水素交換の発生頻度は、概してタンパク質構造及び溶媒露出度によって決まる。H/D交換マススペクトロメトリーを用いて、交換度、ひいてはタンパク質構造及び溶媒露出度を測定できる。小分子、又はタンパク質結合パートナーがタンパク質標的に結合すると、その標的の交換率は、実験的に観測可能に変化する。複合体形成による溶媒を排除する表面領域は、更にゆっくりと交換される。溶媒排除領域は結合部位の位置を推定するのに有用である。例えば、抗原−抗体相互作用の場合、これらの変化はエピトープの位置を強調する。
【0025】
典型的には、本発明の標的結合メンバーは、抗体重鎖可変領域(VH)ドメインと対となる抗体軽鎖可変領域(VL)ドメインを含み、IL−25結合ドメインを提供する。本明細書で記載される発明を行うにあたり、huDDG91抗体VLドメイン(配列番号1)中の相補的決定領域(CDR)、特にCDR3領域をQQYLAFPYTF(配列番号8)に変更することにより、huDDG91抗体の結合親和性が改善されることが見出された。したがって、本明細書で記載される発明では、配列番号8を含むVLドメイン、及びかかるVLドメインを含む標的結合メンバーが考慮される。いくつかの実施形態において、本発明の標的結合メンバー中のVLドメインはまた、M6及びhuDDG91抗体のCDR1(SASQGISNYLN(配列番号6))及びCDR2(YTSSLHS(配列番号7))領域も含む。本発明の標的結合メンバーに含めるためのその他好適なVL CDR領域として、図3に示す任意のVL CDR1領域が挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態において、本発明の標的結合メンバーは、M6抗体のVLドメインである配列番号5を含む。
【0026】
いくつかの実施形態において、本発明の標的結合メンバーはまた、M6及びhuDDG91抗体のCDR領域に相当する配列番号10〜12を含むVHドメインも含む。本発明の標的結合メンバーに含めるためのその他好適なVH CDR領域として、図3に示す任意のVH CDR3領域が挙げられるが、これらに限定されない。好ましい実施形態において、本発明の標的結合メンバーは、M6及びhuDDG91抗体のVHドメインである配列番号9を含む。VHドメインは、M6抗体のVLドメイン(配列番号5)以外の多くのVLドメインと対を作ることができる。好ましくは、VHドメインは、配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR3領域を含むVLドメインと対を作る。
【0027】
改変されたCDR(1つ又は複数)を有する標的結合メンバー(例えば、抗体)がヒトIL−25に結合し阻害する能力を維持する限りは、本明細書で記載されるM6抗体のCDR配列を、挿入、置換、及び欠失により改変し、本発明の標的結合メンバー内に含めてもよい。当業者は、本明細書で記載される機能アッセイを実施することにより、この活性維持を確認することができる。本発明の標的結合メンバー中のCDRは、配列番号6、7、8、10、11又は12で表される対応するM6のCDRと、例えば約50%〜約100%の相同性、好ましくは約80%〜約100%の相同性、より好ましくは約90%〜約100%の相同性を有してよい。一実施形態において、本発明の標的結合メンバー中のCDRは、配列番号6、7、8、10、11又は12で表される対応するM6のCDRと、約100%の相同性を有してもよい。
【0028】
本発明による標的結合メンバーは、本明細書で記載されるM6抗体と実質的に同等の、又はより高い親和性でIL−25に結合できる。例えば、本発明の標的結合メンバーは、約50pM(例えば、約53pM)以下、例えば、約45pM、約40pM、約35pM、約30pM、約25pM又は約20pMなどのIL−25(例えば、ヒトIL−25)に対する結合親和性を有し得る。標的結合メンバーは、一般にIL−25に特異的であろう。したがって、標的結合メンバーは、特異的結合パートナー(1つ又は複数)以外の分子に対する顕著な結合は全く示さないだろう。例えば、本明細書で記載されるM6抗体は、IL−17A、IL−17C、IL−17D、又はIL−17Fと交差反応しないことがわかっている。ぜんそくや類似の過程に関与する他のサイトカインに対するこのような交差反応を回避することは、本発明のいくつかの実施形態における標的結合メンバーの望ましい特徴である。
【0029】
標的結合メンバーと抗原の親和性又は結合活性は、任意の適切な方法を用いて実験的に測定できる。(例えば、Berzofsky et al.,「Antibody−Antigen Interactions」in Fundamental Immunology,Paul,W.E.,Ed.,Raven Press:New York,N.Y.(1984);Kuby,Janis,Immunology,W.H.Freeman and Company:New York,N.Y.(1992);及び本明細書で記載される方法を参照されたい。)特定の抗体抗原相互作用の測定される親和性は、異なる条件(例えば、塩濃度、pH)下で測定される場合に異なり得る。したがって、親和性及び他の抗原結合パラメータ(例えば、KD、Ka、Kd)の測定は、好ましくは、抗体及び抗原の標準化溶液、及び本明細書で記載される緩衝剤等の標準化緩衝剤を用いて行われる。
【0030】
例えば特異性は、特に、抗原パネルを用いるELISAなどの結合アッセイ、Biacoreアッセイ、及び/又はOctetアッセイにより測定できる。本発明による標的結合メンバーは、IL−25を認識でき、IL−17ファミリーの別のメンバー、特にIL−17A、IL−17B、IL−17C、IL−17D及びIL−17Fの任意の1つ、一実施形態においてはこれらの5つの分子の全てを認識できない。本発明による標的結合メンバーのIL−25との結合は、組み換えIL−25との競合により無効にできる。
【0031】
異なる標的結合メンバーの結合親和性及び中和効力を適当な条件下で比較できる。
【0032】
また、本発明は、配列番号17のアミノ酸残基46〜63、配列番号17のアミノ酸残基66〜84、及び配列番号17のアミノ酸残基129〜135からなる群から選択される1つ以上のアミノ酸配列に結合する本発明の標的結合メンバーと、IL−25への結合を競合する標的結合メンバーに関する。特定の実施形態において、標的結合メンバーは、ヒトIL−25に対して約50pM以下の結合親和性を有する。
【0033】
どのタンパク質、抗体、及びその他拮抗物質が、本発明の標的結合メンバーとIL−25への結合を競合、及び/又はエピトープ領域を共有するのかを確認するため、本発明の標的結合メンバー(例えば、抗体)について競合アッセイを実施することができる。容易に当業者に知られるように、これらのアッセイは、タンパク質、例えば、IL−25上の限られた結合部位に対する、拮抗物質又はリガンド間の競合を評価する。競合の前後でタンパク質及び/又は抗体を固定化又は不溶化し、例えば、デカント(タンパク質/標的結合メンバーを予め不溶化した場合)又は遠心分離(競合反応後タンパク質/抗体を沈殿した場合)により、IL−25タンパク質に結合したサンプルを未結合のサンプルと分離する。また、標的結合メンバーがタンパク質へ結合したこと、又は結合しなかったことにより機能が変わるかどうか、例えば、標的結合メンバー分子が、例えば、ラベルの酵素活性を阻害又は強化するかどうかにより、競合結合を決定してもよい。当該技術分野において周知のような、ELISA及びその他機能性アッセイを使用してよい。
【0034】
抗体
好ましくは、本発明の標的結合メンバーは抗体分子である。用語「抗体」には、抗体模倣薬を含む、抗体、その消化断片、特異的部分及び変異体、あるいは、単鎖抗体及びその断片を含む、抗体の構造及び/若しくは機能を模倣する抗体の部分、又はその特定断片、又はその一部を包含することを意図し、これらはそれぞれ少なくとも1つのCDRを含む。機能断片としては、哺乳類のIL−25に結合する抗原結合断片が挙げられる。例えば、Fab(例えば、パパイン消化による)、Fab’(例えば、ペプシン消化及び部分的還元による)及びF(ab’)2(例えば、ペプシン消化による)、facb(例えば、プラスミン消化による)、pFc’(例えば、ペプシン又はプラスミン消化による)、Fd(例えば、ペプシン消化、部分的還元及び再集合による)、Fv又はscFv(例えば、分子生物学的手法による)断片を非限定的に含む、IL−25又はその部分に結合可能な抗体断片が本発明に包含される(例えば、Colligan,et al.,eds.,Current Protocols in Immunology,John Wiley & Sons,Inc.,NY(1994 2001);Colligan et al.,Current Protocols in Protein Science,John Wiley & Sons,NY,N.Y.,(1997 2001)を参照のこと)。
【0035】
このような断片は、当該技術分野において既知であるような、及び/又は本明細書に記載のような、酵素的切断、合成又は組み換え技術により生成できる。抗体はまた、1つ以上の終止コドンが天然の終止部位の上流に導入されている抗体遺伝子を用いて、種々の切頭型で生成できる。例えば、F(ab’)2重鎖部をコードする遺伝子の組み合わせは、重鎖のCH1ドメイン及び/又はヒンジ領域をコードするDNA配列を含むよう設計することができる。抗体の種々の部分を従来の技術により化学的に連結でき、又は遺伝子工学技術を用いて隣接タンパク質として調製できる。
【0036】
本明細書で用いるとき、用語「抗体」は、非マウス、好ましくはヒト抗体由来の1つ以上のタンパク質又はペプチドを有する本明細書で記載のM6 CDRの任意の組み合わせを含む、「キメラ」抗体及び「ヒト化」、又は「CDRグラフト化」抗体を包含することも意図する。本発明に従って、CDRがM6抗体由来であるキメラ又はヒト化抗体が提供される。そのため一実施形態において、抗体のヒト部分は実質的にヒトに免疫原性がない領域を含み得る。ヒト抗体由来の抗体領域は、ヒト抗体と100%の同一性を有する必要がない。好ましい実施形態において、免疫原性を低くするために可能な限り多くのヒトアミノ酸残基が保持されるが、ヒト残基を必要に応じて改変し、CDRにより形成される抗原結合部位を支持すると同時に、抗体のヒト化を最大限にしてもよい。このような変化又は変異は、所望によりかつ好ましくは、非改変抗体に比べて、ヒト又は他の種における免疫原性が保持されている又は低下している。ヒト化抗体は、機能的に再構成されたヒト免疫グロブリン(例えば、重鎖及び/又は軽鎖)遺伝子を発現する能力をもつ非ヒト動物又は原核若しくは真核細胞により産生され得る。更に、抗体が単鎖抗体である場合、天然のヒト抗体では見出されないリンカーペプチドを含み得る。例えば、Fvは、重鎖の可変領域及び軽鎖の可変領域を接続する2〜約8個のグリシン又はその他のアミノ酸残基などのリンカーペプチドを含み得る。このようなリンカーペプチドはヒト由来のものと見なされる。
【0037】
別の方法としては、図4A及び4BのM6抗体の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域全体(配列番号5及び9)をヒト定常領域及びフレームワーク領域と組み合わせ、本発明の標的結合メンバーを形成してよい。
【0038】
本発明の標的結合メンバーの定常(C)領域をコードするヒト遺伝子は、既知の方法によるヒト胎児肝臓ライブラリ由来であってもよい。ヒトC領域遺伝子は、ヒト免疫グロブリンを発現かつ産生するものなど、任意のヒト細胞由来であってよい。ヒトCH領域は、γ、μ、α、δ、εを含む任意のヒトH鎖の既知の種類、又はアイソタイプ、及びそのサブタイプ、例えば、G1、G2、G3及びG4由来であってもよい。H鎖のアイソタイプは抗体のさまざまなエフェクター機能に関与するため、所望のエフェクター機能、例えば、補体結合又は抗体依存性細胞毒性(ADCC)の活性により、CH領域の選択が導かれるであろう。一実施形態において、CH領域はγ1(IgG1)由来である。
【0039】
ヒトCL領域はヒトL鎖のアイソタイプ、κ又はλのいずれか、好ましくはκ由来であってもよい。
【0040】
ヒト免疫グロブリンC領域をコードする遺伝子は、標準的なクローニング手技(例えば、Sambrook et al.(Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd Edition,Cold Spring Harbor Press,Cold Spring Harbor,N.Y.(1989)及びAusubel et al.,eds.,Current Protocols in Molecular Biology(1987,1993))によりヒト細胞から得ることができる。ヒトC領域の遺伝子は、2種類のL鎖、5種類のH鎖、及びそれらのサブクラスを表す遺伝子を含有する既知のクローンから容易に入手できる。キメラ抗体断片、例えば、F(ab12及びFabは、適切に切頭化されたキメラH鎖遺伝子を設計することにより作製できる。例えば、F(ab12断片のH鎖部をコードするキメラ遺伝子は、H鎖のCH1ドメイン及びヒンジ領域をコードするDNA配列を含め、翻訳終止コドンを続けることで切頭型分子を得る。
【0041】
一般には、一例として、M6抗体のH鎖及びL鎖抗原結合領域をコードするDNAセグメントをクローニングし、これらDNAセグメントをCH領域及びCL領域をコードするDNAセグメントとそれぞれ連結してキメラ免疫グロブリンコード遺伝子を生成することにより、本発明のキメラ抗体、断片及び領域を作製する。
【0042】
したがって一実施形態において、ヒトC領域の少なくとも一部をコードする第2のDNAセグメントに連結された、非ヒト由来である、連結(J)セグメントを伴う機能的に再配列したV領域などの少なくとも抗原結合領域をコードする第1のDNAセグメントを含む、融合キメラ遺伝子が作製される。
【0043】
標的結合メンバーがヒトIL−25に結合し阻害する能力を維持する限りは、M6抗体の可変領域の配列を挿入、置換、及び欠失により改変してもよい。
【0044】
便宜上、本明細書ではKabatらの番号付けスキームを採用している。現在の配列を標準的なKabat番号付け配列に一致させるため、必要に応じて小文字数字又はハイフンで残基を表記する。
【0045】
本発明に従って、M6抗体のCDR領域がヒト領域と結合されるCDRグラフト化又はヒト化抗体については、親抗体、例えばM6に特異的なFR領域内に残基を保持してもよい。他の抗体においてヒト化に重要であると示されている残基も保持してもよい。CDRにより形成される抗原結合部位を支持すると同時に、抗体のヒト化を最大限にするのに必要な範囲で、これらの指針に従うことができる。
【0046】
非ヒト抗体又はヒト抗体を工学的処理又はヒト化するための方法も同様に使用でき、当該技術分野において周知である。一般に、ヒト化又は工学的処理された抗体は、例えばマウス、ラット、ウサギ、非ヒト霊長類又はその他の哺乳動物などの(ただしこれらに限定されない)ヒト以外の供給源からの1つ以上のアミノ酸残基を有する。これらのヒトアミノ酸残基は、しばしば「インポート」残基と呼ばれ、典型的には既知のヒト配列の「インポート」可変領域、定常領域又はその他のドメインから採取される。既知のヒトIg配列が、例えば、National Institute of HealthのNCBIデータベースなどの公開データベース、又はKabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,U.S.Dept.Health(1983)などの出版物に多く開示されている。
【0047】
このようなインポートされた配列は、免疫原性を減少させるため、又は、当該技術分野において既知のように、結合、親和性、オン速度、オフ速度、結合活性、特異性、半減期、又はその他の適切な任意の特性を低減、増強又は改変するために使用することができる。一般には、可変領域及び定常領域の非ヒト配列がヒト又はその他のアミノ酸に置き換えられている一方で、非ヒト又はヒトCDR配列の一部分又は全てを維持できる。抗体は、所望により、抗原に対する高い親和性及びその他の有利な生物学的特性を伴い、ヒト化することもできる。この目的を達成するため、所望により、ヒト化抗体を、親配列及びヒト化配列の3次元モデルを使用した、親配列及びさまざまな概念的ヒト化産物の分析プロセスによって調製することが可能である。3次元免疫グロブリンモデルが一般的に利用可能であり、当業者によく知られている。選択された候補の免疫グロブリン配列について、可能性の高い3次元立体構造を図示及び表示するコンピュータプログラムが利用可能である。これらの表示を調べることにより、候補の免疫グロブリン配列の機能における残基の役割として可能性の高いものの分析、すなわち候補の免疫グロブリンがその抗原に結合する能力に影響を及ぼす残基の分析が可能となる。このようにして、標的抗原に対する親和性の増大など、望ましい抗体特性が達成されるように、コンセンサス配列及びインポート配列から、FR残基を選択し組合せることができる。一般的に、CDR残基は抗原結合に対する影響において、直接的かつ最も実質的に関与している。本発明の抗体のヒト化、又は操作は、(Jones et al.,Nature 321:522(1986);Riechmann et al.,Nature 332:323(1988);Verhoeyen et al.,Science 239:1534(1988))Sims et al.,J.Immunol.151:2296(1993);Chothia and Lesk,J.Mol.Biol.196:901(1987),Carter et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.89:4285(1992);Presta et al.,J.Immunol.151:2623(1993)、米国特許第5,723,323号、同第5,976,862号、同第5,824,514号、同第5,817,483号、同第5,814,476号、同第5,763,192号、同第5,723,323号、同第5,766,886号、同第5,714,352号、同第6,204,023号、同第6,180,370号、同第5,693,762号、同第5,530,101号、同第5,585,089号、同第5,225,539号、同第4,816,567号、国際出願PCT/US98/16280号、同US96/18978号、同US91/09630号、同US91/05939号、同US94/01234号、同GB89/01334号、同GB91/01134号、同GB92/01755号、国際公開第90/14443号、同第90/14424号、同第90/14430号、欧州特許第229246号(これらは引用されている文献も含め、それぞれ参照により全体が本明細書に組み込まれる)に記載されるもの(ただし、これらに制限されない)など任意の既知の方法を用いて実施できる。
【0048】
本発明の標的結合メンバーのヒト定常領域は、任意の種類(IgG、IgA、IgM、IgE、IgDなど)又はアイソタイプのものであってもよく、κ又はλ軽鎖を含めることができる。一実施形態においては、ヒト定常領域は、IgG重鎖又は定義された断片、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4の、少なくとも1つのアイソタイプを含む。別の実施形態において、標的結合メンバーはIgG1重鎖及びIgG1 κ軽鎖を含む。単離された本発明の標的結合メンバーは、任意の好適なポリヌクレオチドによりコードされる本明細書で開示される抗体のアミノ酸配列を含んでもよい。好ましくは、標的結合メンバーはヒトIL−25と結合し、これにより、部分的又は実質的に、このタンパク質の少なくとも1つの生物活性を中和する。標的結合メンバー又はその特定の部分若しくはそれらの変異体は、少なくとも1つのIL−25タンパク質又は断片の少なくとも1つの生物活性を、部分的に又は好ましくは実質的に中和し、これによりIL−25のIL−25受容体に対する結合を通して、又はその他のIL−25依存性又は媒介型機序を通して、媒介される活性を阻害する。本明細書で使用するとき、「中和抗体」という用語は、アッセイに応じて約20〜100%、好ましくは少なくとも約10、20、30、40、50、55、60、65、70、75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100%又はそれ以上、IL−25依存活性を阻害できる抗体を意味する。IL−25依存性活性を阻害する標的結合メンバーの能力は、好ましくは、本明細書に記載されているように及び/又は当該技術分野において既知のように、少なくとも1つの適切なIL−25タンパク質又は受容体アッセイによって評価される。
【0049】
本発明の少なくとも1つの抗体は、M6抗体が結合する本明細書で特定される少なくとも1つのエピトープに結合する。この少なくとも1つのエピトープは、タンパク質の少なくとも一部分を含む少なくとも1つの抗体結合領域を含むことが可能であり、このエピトープは好ましくは、タンパク質の少なくとも1つの細胞外、可溶性、親水性、外部、又は細胞質部分から構成されている。一般に、本発明の標的結合メンバーは、配列番号10、11及び12の少なくとも1つの相補的決定領域(CDR1、CDR2及びCDR3)又は少なくとも1つの重鎖可変領域の変異体及び少なくとも1つのヒト相補性決定領域(CDR1、CDR2及びCDR3)(配列番号6、7及び8)又は少なくとも1つの軽鎖可変領域の変異体を含む抗原結合領域を含むようになる。
【0050】
ヒトIL−25に結合し、定められた重鎖若しくは軽鎖可変領域、又はCDR領域を含む標的結合メンバーは、ファージディスプレイ法(Katsube,Y.,et al.,Int J.Mol.Med,1(5):863 868(1998))などの適切な方法、又は当該技術分野において既知であるように、及び/若しくは本明細書で記載されるように、トランスジェニック動物で利用される方法を用いて調製できる。例えば、抗体、特異的部分、又は変異体は、適切な宿主細胞内で、コード核酸又はその一部分を用いて発現することができる。
【0051】
上述のように、本発明は更に、本明細書に記載されるM6アミノ酸配列と実質的に同じである配列内のアミノ酸を含む抗体、抗原結合断片、免疫グロブリン鎖及びCDRにも関する。かかる抗IL−25抗体は、本明細書で特定されるように、自然変異又はヒトによる操作のいずれかによる、1つ以上のアミノ酸の置換、欠失、又は付加を含むことができる。好ましくは、かかる抗体又は抗原結合断片及びかかる鎖若しくはCDRを含む抗体は、高い親和性(例えば、KDが約10−9M以下)で、ヒトIL−25と結合することができる。本明細書に記載されている配列と実質的に同じであるアミノ酸配列は、保存的アミノ酸置換、並びにアミノ酸欠失及び/又は挿入を含む、配列を有する。保存的アミノ酸置換とは、第1のアミノ酸のものに類似した化学的及び/又は物理的特性(例えば電荷、構造、極性、疎水性/親水性)をもつ第2のアミノ酸で、第1のアミノ酸を置換することを意味する。保存的置換には、あるアミノ酸を、リジン(K)、アルギニン(R)及びヒスチジン(H);アスパラギン酸(D)及びグルタミン酸(E);アスパラギン(N)、グルタミン(Q)、セリン(S)、トレオニン(T)、チロシン(Y)、K、R、H、D及びE;アラニン(A)、バリン(V)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、プロリン(P)、フェニルアラニン(F)、トリプトファン(W)、メチオニン(M)、システイン(C)及びグリシン(G);F、W及びY;C、S及びTという群の中の別のアミノ酸で置換することが含まれる。
【0052】
当業者が行い得るアミノ酸置換の数は、上記のものを含む数多くの要因に基づく。一般的に言えば、所与の抗IL−25抗体、断片又は変異体について、そのアミノ酸置換、挿入又は欠失の数は、本明細書で特定されるように、40、30、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、又は1、例えば、1〜30又はこの中の任意の範囲若しくは値を超えない。
【0053】
機能上不可欠である本発明の標的結合メンバー内のアミノ酸は、部位特異的突然変異誘発又はアラニンスキャニング突然変異誘発などの、当該技術分野において既知の方法により同定できる(例えば、Ausubel(上記)、Chapters 8,15;Cunningham and Wells,Science 244:1081 1085(1989))。後者の手順は、分子内の全ての残基において単一アラニン突然変異を導入する。得られた突然変異分子は、例えば(ただし、これに制限されない)少なくとも1つのIL−25中和活性などの生物活性について、続いてテストされる。抗体結合にとってきわめて重要である部位もまた、結晶化、核磁気共鳴又は光親和性標識などの構造分析によって同定することができる(Smithら、J.Mol.Biol.224:899〜904(1992)及びde Vosら、Science 255:306〜312(1992))。
【0054】
本発明の標的結合メンバーは、少なくとも1つの配列番号5〜12の隣接アミノ酸のうち、5個ないし全てのアミノ酸から選択された、少なくとも1つの部分、配列又は組み合わせを含むことができるが、これらに限定されない。
【0055】
標的結合メンバーは、所望により更に、配列番号5又は9のうち少なくとも1つの、隣接アミノ酸の70〜100%の少なくとも1つのポリペプチドを含んでもよい。
【0056】
一実施形態において、免疫グロブリン鎖又はその一部(例えば、可変領域、CDR)のアミノ酸配列は、配列番号5又は9の少なくとも1つの対応する鎖のアミノ酸配列と、約70〜100%の同一性(例えば、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、又はこの中の任意の範囲若しくは値)を有する。例えば、軽鎖可変領域のアミノ酸配列は、配列番号5の配列と比較してもよく、又は重鎖可変領域のアミノ酸配列は、配列番号9と比較してもよい。好ましくは、70〜100%のアミノ酸同一性(すなわち、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、又はこの中の任意の範囲若しくは値)は、当該技術分野において既知であるような、適切なコンピュータアルゴリズムを用いて決定される。
【0057】
代表的な重鎖及び軽鎖可変領域の配列は、配列番号5及び9に示される。本発明の標的結合メンバー、又はその特定の変異体は、本発明の抗体から任意の数の隣接アミノ酸残基を含み得、その数は、標的結合メンバーにおける隣接残基数の10〜100%からなる整数の群から選択される。任意で、隣接アミノ酸のこの部分配列は、少なくとも約10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、又はそれ以上のアミノ酸長であるか、又はその中の任意の範囲若しくは値である。更に、かかる部分列の数は、少なくとも2、3、4、又は5等の、1〜20からなる群から選択される任意の整数であり得る。
【0058】
当業者には明らかなように、本発明には、本発明の少なくとも1つの生物活性抗体が含まれている。生物活性抗体は、ネイティブ(非合成)、内因性又は関連する、及び既知の抗体のものの、少なくとも20%、30%、又は40%、及び好ましくは少なくとも50%、60%、又は70%、及び最も好ましくは少なくとも80%、90%又は95%〜1000%の比活性を有する。酵素活性及び基質特異性のアッセイ及び定量測定の方法は、当業者にとって周知である。
【0059】
別の態様においては、本明細書で記載されるように、本発明は標的結合メンバーに関連し、有機部分の共有結合連結によって修飾される。かかる修飾は、改善された薬物動態特性(例えば、増大した、生体内での血清半減期)を持つ抗体又は抗原結合断片を産生することができる。有機部分は、直線状又は分岐した親水性ポリマー基、脂肪酸基、又は脂肪酸エステル基であり得る。特定の実施形態においては、親水性ポリマー基は、約800〜約120,000ダルトンの分子重量を有し、ポリアルカングリコール(例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール(PPG))、糖質ポリマー、アミノ酸ポリマー又はポリビニルピロリドンであり得、脂肪酸又は脂肪酸エステル基は、約8〜約40の炭素原子を含み得る。
【0060】
本発明の修飾された標的結合メンバーは、直接的又は間接的に抗体に共有結合される、1つ以上の有機部分を含むことができる。本発明の抗体又は抗原結合断片に結合されるそれぞれの有機部分は、独立して、親水性ポリマー基、脂肪酸基、又は脂肪酸エステル基であり得る。本明細書で使用するとき、「脂肪酸」という用語は、モノカルボン酸及びジカルボン酸を包含する。本明細書で使用するとき、「親水性ポリマー基」という用語は、オクタンよりも水への可溶性の高い有機ポリマーを意味する。例えばポリリシンは、オクタンに対するよりも水に対する溶解度が高い。よって、ポリリシンの共有結合付着により修飾された抗体が、本発明に包含されている。本発明の抗体を修飾するために適切な親水性ポリマーは、直線状又は分岐状であり得、例えば、ポリアルカングリコール(例えば、PEG、モノメトキシ−ポリエチレングリコール(mPEG)、PPG等)、糖質(例えば、デキストラン、セルロース、オリゴ糖、多糖等)、親水性アミノ酸のポリマー(例えば、ポリリシン、ポリアルギニン、ポリアスパラギン酸等)、ポリアルカンオキシド(例えば、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド等)、及びポリビニルピロリドンを含む。好ましくは、本発明の抗体を修飾する親水性ポリマーは、個別の分子体として、約800〜約150,000ダルトンの分子量を有する。例えば、PEG5000及びPEG20,000を使用することができ、下付き文字は、ポリマーの平均分子量(ダルトン)である。親水性ポリマー基は、1〜約6アルキル、脂肪酸、又は脂肪酸エステル基と置換され得る。脂肪酸又は脂肪酸エステル基と置換される親水性ポリマーは、適切な方法を採用することによって調製することができる。例えば、アミン基を含むポリマーは、脂肪酸又は脂肪酸エステルのカルボキシレートとカップリングさせることができ、脂肪酸又は脂肪酸エステル上の活性化カルボキシレート(例えば、N,N−カルボニルジイミダゾールで活性化されたもの)は、ポリマー上のヒドロキシル基とカップリングさせることができる。
【0061】
本発明の抗体を修飾するために適切な脂肪酸及び脂肪酸エステルは、飽和され得るか、又は1つ以上の不飽和単位を含有し得る。本発明の抗体を改変するために適切な脂肪酸としては、例えば、n−ドデカン酸(C12、ラウリン酸)、n−テトラデカン酸(C14、ミリスチン酸)、n−オクタデカン酸(C18、ステアリン酸)、n−エイコサン酸(C20、アラキジン酸)、n−ドコサン酸(C22、ベヘン酸)、n−トリアコンタン酸(C30)、n−テトラコンタン酸(C40)、シス−DELTA9−オクタデカン酸(C18、オレイン酸)、全てのシス−DELTA5,8,11,14−エイコサテトラエン酸(C20、アラキドン酸)、オクタンジオン酸、テトラデカンジオン酸、オクタデカンジオン酸、ドコサンジオン酸などが挙げられる。適切な脂肪酸エステルは、直線状又は分岐状の低級アルキル基を含む、ジカルボキシル酸のモノエステルを含む。低アルキル基は、1〜約12、好ましくは1〜約6の炭素原子を含み得る。
【0062】
修飾された標的結合メンバーは、1つ以上の改変剤との反応など、適切な方法を使用して調製することができる。本明細書で使用するとき、用語「改変剤」は、活性化基を含む適切な有機基(例えば親水性ポリマー、脂肪酸、脂肪酸エステル)を意味する。「活性化基」とは、適切な条件下で第2の化学基と反応し、これにより改変剤と第2の化学基との間に共有結合を形成することのできる、化学部分又は官能基である。例えば、アミン反応性活性化基は、トシル酸、メシル酸、ハロ(クロロ、ブロモ、フルオロ、ヨード)等の求電子性基、N−ヒドロキシスクシニミジルエステル(NHS)等を含む。チオールと反応できる活性化基は、例えば、マレイミド、ヨードアセチル、アクリロリル、ピリジルジスルフィド、5−チオール−2−ニトロベンゾ酸チオール(TNB−チオール)等を含む。アルデヒド官能基は、アミン又はヒドラジド含有分子と結合することができ、アジド基は、三価リン基と反応して、ホスホルアミド化又はホスホルイミド結合を形成することができる。分子中に活性化基を導入するための適切な方法が、当該技術分野において既知である(例えば、Hermanson,G.T.,Bioconjugate Techniques,Academic Press:San Diego,Calif.(1996)参照)。活性化基は、有機基(例えば、親水性ポリマー、脂肪酸、脂肪酸エステル)に直接的に、又はリンカー部分(例えば、二価のC112基、ここで1つ以上の炭素原子は酸素、窒素、又はイオウなどのヘテロ原子に置換できる)を介して、結合することができる。適切なリンカー部分としては、例えば、テトラエチレングリコール、−−(CH23−−、−−NH−−(CH26−−NH−−、−−(CH22−−NH−−、及び−−CH2−−O−−CH2−−CH2−−O−−CH2−−CH2−−O−−CH−−NH−−が挙げられる。リンカー部分を含む改変剤は、例えば、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)の存在下で、モノ−Boc−アルキルジアミン(例えば、モノ−Boc−エチレンジアミン、モノ−Boc−ジアミノへキサン)を脂肪酸と反応させることにより、遊離アミンと脂肪酸カルボキシレートとの間のアミド結合を形成することによって、生成可能である。Boc保護基を、トリフルオロ酢酸(TFA)処理により生成物から除去し、記載されているようにもう1つのカルボン酸塩にカップリングし得る一級アミンを露出させることができ、あるいは、これを無水マレイン酸と反応させ、結果として得られた生成物を環化させて脂肪酸の活性化マレイミド誘導体を生成することができる。(例えば、参照によりこの教示の全体が本明細書に組み込まれるThompsonらの国際公開第92/16221号を参照されたい。)
【0063】
本発明の改変された標的結合メンバーは、ヒト抗体又は抗原結合断片を改変剤と反応させることによって生成することができる。例えば、有機部分は、アミン反応性変性剤、例えば、PEGのNHSエステルを採用することによって、非部位特異的方法で抗体に結合させることができる。抗体又は抗原結合断片のジスルフィド結合(例えば鎖内ジスルフィド結合)を還元することによって、修飾されたヒト抗体又は抗原結合断片を調製することもできる。このとき、還元された抗体又は抗原結合断片をチオール反応性修飾剤と反応させて、本発明の修飾された抗体を生産することが可能である。本発明の抗体の特異的部位も結合する有機部分を含む改変されたヒト抗体及び抗原結合断片を、逆タンパク質分解(Fisch et al.,Bioconjugate Chem.,3:147 153(1992);Werlen et al.,Bioconjugate Chem.,5:411 417(1994);Kumaran et al.,Protein Sci.6(10):2233 2241(1997);Itoh et al.,Bioorg.Chem.,24(1):59 68(1996);Capellas et al.,Biotechnol.Bioeng.,56(4):456 463(1997))などの好適な方法、及び、Hermanson,G.T.,Bioconjugate Techniques,Academic Press:San Diego,Calif.(1996)に記載される方法を用いて調製することができる。
【0064】
本発明の方法及び組成物に有用な標的結合メンバーは、IL−25への結合親和性が高く、かつ所望により毒性が低いことを特徴とする。具体的には、可変領域、定常領域、及びフレームワークのような個々の構成要素が、個々に及び/又は集合的に、所望によりかつ好ましくは低い免疫原性を有する、本発明の標的結合メンバーが本発明で有用である。本発明で用いることのできる標的結合メンバーは、所望により、長期間測定可能な程度症状を緩和する患者を治療する能力、並びに低い及び/又は許容できる毒性を特徴とする。低い若しくは許容できる免疫原性、及び/又は高い親和性、並びに他の好適な特性は、得られる治療結果に寄与することができる。「低い免疫原性」は、本明細書では、治療される患者の約75%未満、若しくは好ましくは約50%未満で有意にHAHA、HACA若しくはHAMA応答が増加する、及び/又は、治療される患者において低い力価(二重抗原酵素免疫アッセイで測定したとき約300未満、好ましくは約100未満)が増加することとして定義される(Elliott et al.,Lancet 344:1125 1127(1994)、参照により全体が本明細書に組み込まれる)。
【0065】
また、少なくとも2種の抗原に対して結合特異性を有するモノクローナル、ヒト化抗体である、二重特異的、異種特異的、異種結合性又は類似の抗体を用いてもよい。この場合では、結合特異性のうち一方は少なくとも1つのIL−25タンパク質に対するものであり、他方は任意の他の抗原に対するものである。二重特異的抗体の製造方法は、当該技術分野において既知である。伝統的に、二重特異的抗体の組み換え体生成は、2種の免疫グロブリン重鎖−軽鎖対の共発現に基づき、ここで2本の重鎖は異なる特異性を有する(ミルスタイン及びクエロ(Cuello)、Nature、305巻、537頁(1983年))。免疫グロブリン重鎖及び軽鎖のランダムな組み合わせのために、これらのハイブリドーマ(クアドローマ)は10種の異なる抗体分子の可能な混合物を生成し、これらのうち1種のみが正しい二重特異的構造を有する。正しい分子の精製(通常アフィニティクロマトグラフィー工程により行われる)は、かなり面倒であり、生成物の収率は低い。類似する手順が、例えば、国際公開第93/08829号、米国特許第6,210,668号、同第6,193,967号、同第6,132,992号、同第6,106,833号、同第6,060,285号、同第6,037,453号、同第6,010,902号、同第5,989,530号、同第5,959,084号、同第5,959,083号、同第5,932,448号、同第5,833,985号、同第5,821,333号、同第5,807,706号、同第5,643,759号、同第5,601,819号、同第5,582,996号、同第5,496,549号、同第4,676,980号、国際公開第91/00360号、国際公開第92/00373号、欧州特許第03089号、Traunecker et al.,EMBO J.10:3655(1991)、Suresh et al.,Methods in Enzymology 121:210(1986)に開示されており、これらはそれぞれ参照により全体が本明細書に組み込まれる。
【0066】
IL−25
当該技術分野においてIL−17Eとしても周知であるIL−25は、商業的供給源(例えば、R&D Systems(MN,USA))より入手でき、あるいは当該技術分野において入手可能なIL−25の配列を参照してクローニング又は合成することができる。ヒトIL−25の配列(配列番号17)を図3に示す。抗体の産生又はイムノアッセイでの使用には、IL−25タンパク質(例えば、組み換えIL−25タンパク質)の任意の断片又は断片の組み合わせ、特にN末端が切頭化されているものを使用できる。例えば、市販の組み換えヒトIL−25(IL−17E)は成熟タンパク質配列のTyr 33〜Gly 177(登録番号Q9H293)を含み、市販のマウスIL−25はマウスIL−17Eの残基Val 17〜Ala 169(登録番号NP_542767)を含む。
【0067】
核酸分子
本明細書に提供されている情報を用いて、少なくとも1つの本発明の標的結合メンバーをコードする本発明の核酸分子は、本明細書に記述される方法又は当該技術分野において既知の方法を用いて入手することができる。
【0068】
本発明の核酸分子は、mRNA、hnRNA、tRNA若しくは任意の他の形態のようなRNA、又はクローニングにより得られる若しくは合成的に生成されるcDNA及びゲノムDNAが挙げられるがこれらに限定されないDNAの形態、又はこれらの任意の組み合わせであってもよい。DNAは、三本鎖、二本鎖、若しくは一本鎖、又はこれらの任意の組み合わせであってもよい。DNA又はRNAの少なくとも1本の鎖の任意の部分は、センス鎖としても知られるコード鎖であってもよく、又はアンチセンス鎖と呼ばれる、非コード鎖であってもよい。
【0069】
本発明の単離された核酸分子として、本明細書に記載されるように、及び/又は当該技術分野において既知のように、1つ以上のイントロン(例えば、少なくとも1つの重鎖(例えば配列番号10〜12)又は軽鎖(例えば配列番号6〜8)のCDR1、CDR2及び/又はCDR3といった少なくとも1つのCDRの少なくとも1つの特異的部分であってこれらに制限されない)を所望により伴うオープンリーディングフレーム(ORF)を含む核酸分子;抗IL−25可変領域(例えば、配列番号5又は9)のコード配列を含む核酸分子;及び、上記に説明されているものとは実質に異なるヌクレオチド配列を含むものでありながら、遺伝コードの縮退に起因して、少なくとも1つの抗IL−25抗体を依然としてコードする核酸分子を挙げてよい。当然のことながら、遺伝子コードは、当該技術分野においてよく知られている。したがって、当業者には、本発明の特異的な抗IL−25抗体をコードする、これらの変性核酸変異体を作製することは、日常的であるだろう。例えば上記のオースベルらを参照されたく、かかる核酸変異体は、本発明に含まれる。
【0070】
本明細書に記されているように、抗IL−25抗体をコードする核酸を含む本発明の核酸分子には、単独で抗体断片のアミノ酸配列をコードするもの;完全長抗体又はその一部分についてのコード配列、1つの抗体、断片又は一部分についてのコード配列並びに付加的配列、例えばスプライシング及びポリアデニル化シグナルを含む、転写、mRNAプロセッシングにおいて役割を果たす転写された非翻訳配列(例えば、リボソーム結合及びmRNAの安定性)といった非コード5’及び3’配列を含むが、これらに限定されない、付加的な非コード配列を伴う、少なくとも1つのイントロンなどの、前述の付加的なコード配列を伴うか否かを問わない、少なくとも1つのシグナルリーダー又は融合ペプチドのコード配列、付加的なアミノ酸(例えば、付加的な機能を提供するものなど)についてコードする付加的なコード配列、が含まれる可能性があるが、これらに限定されない。したがって、抗体をコード化する配列は、抗体断片又は部分を含む融合された抗体の精製を促進するペプチドをコード化する配列等のマーカー配列に融合させることができる。
【0071】
ポリヌクレオチドに選択的にハイブリダイズするポリヌクレオチド
本発明は、本明細書で開示されるポリヌクレオチドに対して、選択的なハイブリダイゼーション条件下で、ハイブリダイズする単離核酸を提供する。したがって、本実施形態のポリヌクレオチドは、このようなポリヌクレオチドを含む核酸を単離、検出、及び/又は定量するために使用することができる。例えば、本発明のポリヌクレオチドを使用して、蓄積されたライブラリにおける部分又は全長クローンを同定、単離、又は増幅することができる。一部の実施形態においては、ポリヌクレオチドは、単離された、又はそうでなければヒト又は哺乳類核酸ライブラリからのcDNAに相補的なゲノム配列又はcDNA配列である。
【0072】
好ましくは、cDNAライブラリは全長配列の少なくとも80%、好ましくは全長配列の少なくとも85%又は90%、及びより好ましくは全長配列の少なくとも95%を含む。cDNAライブラリは、稀な配列の発現量を増大させるために正規化され得る。ストリンジェンシーが低度又は中程度のハイブリダイゼーション条件が、典型的であり(ただし排他的ではなく)、相補的な配列に比べて低い配列同一性をもつ配列を伴い、利用される。ストリンジェンシーが中程度及び高度の条件は、所望により、より高い同一性をもつ配列について利用することができる。低ストリンジェンシーな条件は、約70%の配列同一性をもつ配列の選択的ハイブリダイゼーションを可能にし、オルソロガス又はパラロガスな配列を同定するために利用できる。
【0073】
所望により、本発明のポリヌクレオチドは本明細書に記載されているポリヌクレオチドによってコードされる抗体の少なくとも一つの部分をコードすることになる。本発明のポリヌクレオチドは、本発明の抗体をコードするポリヌクレオチドに対する選択的ハイブリダイゼーションのために利用可能な核酸配列を包含する。例えば、Ausubel、上記、Colligan、上記を参照されたい。これらはそれぞれ参照により全体が本明細書に組み込まれる。
【0074】
核酸のコンストラクション
本発明の単離された核酸は、当技術分野にて周知のように、(a)組み換え方法、(b)合成技術、(c)精製技術、又はそれらの組み合わせを使用して形成することができる。
【0075】
核酸は、本発明のポリヌクレオチドに加えて、便利に配列を含むことができる。例えば、1つ以上のエンドヌクレアーゼ制限酵素認識部位を含むマルチクローニングサイトを、核酸に挿入して、ポリヌクレオチドの単離に役立てることができる。また、翻訳可能な配列を挿入して、本発明の翻訳されたポリヌクレオチドの単離に役立てることができる。例えば、ヘキサヒスチジンマーカー配列は、本発明のタンパク質を精製するための便利な手段を提供する。本発明の核酸(コード配列を除く)は、所望により、本発明のポリヌクレオチドのクローニング及び/又は発現のためのベクター、アダプター、又はリンカーである。
【0076】
追加の配列をかかるクローン化及び/又は発現配列に追加して、クローン化及び/又は発現におけるそれらの機能を最適化して、ポリヌクレオチドの単離を助けることができるか、又は細胞へのポリヌクレオチドの導入を改善することができる。クローン化ベクター、発現ベクター、アダプター、及びリンカーの使用は、当該技術分野においてよく知られている。(例えば、Ausubel、上記、又はSambrook、上記を参照されたい)。
【0077】
核酸を構築するための組み換え方法
例えば、RNA、cDNA、ゲノムDNA、又はこれらの任意の組み合せのような本発明の単離核酸組成物は、当業者に既知の任意の数のクローニング手順を用いて生物源から得ることができる。いくつかの実施形態において、本発明のポリヌクレオチドに対してストリンジェントな条件下で選択的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドプローブが、cDNA又はゲノムDNAライブラリ内の望ましい配列を同定するために使用される。RNAの単離、並びにcDNA及びゲノムライブラリの構築は、当業者にとって周知である。(例えば、Ausubel、上記、又はSambrook、上記を参照されたい)。
【0078】
核酸のスクリーニング及び単離方法
本明細書で開示されているような、本発明のポリヌクレオチドの配列に基づいたプローブを用いて、cDNA又はゲノムライブラリをスクリーニングすることができる。同じ又は異なる生体内の相同遺伝子を単離するため、ゲノムDNA又はcDNA配列とハイブリッド形成するためにプローブを使用することができる。当業者であれば、アッセイ中でさまざまな度合のハイブリダイゼーションストリンジェンシーを用いることができ、ハイブリダイゼーション又は洗浄培地のいずれかがストリンジェントであり得るということは明らかだろう。ハイブリダイゼーションのための条件がストリンジェントになるにつれて、二重鎖形成が生じるための、プローブと標的の間に必要な相補性の程度は大きくなる。ストリンジェンシーの程度は、温度、イオン強度、pH、及びホルムアミドのような部分的な変性溶媒の存在、のうちの、1つ以上によって制御され得る。例えば、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーは、例えば0%〜50%の範囲内のホルムアミド濃度の操作を通して反応溶液の極性を変えることにより都合良く変更される。検出可能な結合のために必要な相補性(配列同一性)の程度は、ハイブリダイゼーション媒質及び/又は洗浄媒質のストリンジェンシーに応じて変化する。相補性の程度は、最適には100%、又は70〜100%、又はその中の任意の範囲若しくは値である。しかしながら、プローブ及びプライマー内のわずかな配列変動は、ハイブリダイゼーション及び/又は洗浄培地のストリンジェンシーを低減させることで補償できるということを理解すべきである。
【0079】
RNA又はDNAの増幅方法は、当該技術分野において周知であり、本明細書中で紹介する教示及び指針に基づいて、過度の実験なしに、本発明に従って使用可能である。既知のDNA又はRNA増幅方法としては、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)及び関連する増幅プロセス(例えば、米国特許第4,683,195号、同第4,683,202号、同第4,800,159号、同第4,965,188号(Mullisら)、同4,795,699号、及び同第4,921,794号(Taborら)、同第5,142,033号(Innis)、同第5,122,464号(Wilsonら)、同第5,091,310号(Innis)、同第5,066,584号(Gyllenstenら)、同第4,889,818号(Gelfandら)、米国特許第4,994,370号(Silverら)、同第4,766,067(Biswas)、同第4,656,134号(Ringold)参照)及び二本鎖DNA合成のためのテンプレートとして標的配列に対するアンチセンスRNAを用いるRNA媒介増幅(米国特許第5,130,238号(Malekら)、商標名NASBA)が挙げられるが、これらに限定されず、これらの参考文献の全内容は参照により本明細書に組み込まれる。(例えば、オースベル、上記、又はサムブルック、上記を参照されたい)。
【0080】
例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)技術を用いて、ゲノムDNA又はcDNAライブラリから直接、本発明のポリヌクレオチド及び関連する遺伝子の配列を増幅することができる。PCR及び他のインビトロ増幅方法はまた、例えば、発現すべきタンパク質をコードする核酸配列をクローン化する、サンプル中の所望のmRNAの存在を検出するため、核酸の配列決定のため、又は他の目的のためのプローブとして用いるための核酸を作製するのに有用である場合がある。インビトロ増幅方法を通して当業者を導くのに十分な技術の例は、Berger(上記)、Sambrook(上記)及びAusubel(上記)、並びにMullisら、米国特許第4,683,202号(1987)、及びInnisら、PCR Protocols A Guide to Methods and Applications,Eds.,Academic Press Inc.,San Diego,Calif.(1990)に見られる。ゲノムPCR増幅用の市販キットは当該技術分野において既知である。例えば、アドバンテージ−GCゲノミックPCRキット(Advantage GC Genomic PCR Kit)(クローンテック(Clontech))を参照のこと。更に、例えば、T4遺伝子32タンパク質(ベーリンガー・マンハイム(Boehringer Mannheim))を用いて、長いPCR産物の収率を改善することができる。
【0081】
核酸を構築するための合成方法
本発明の単離核酸は、既知の方法による直接化学合成によっても調製可能である(例えば、オースベルら、上記を参照)。化学合成は、一般に、相補的配列とのハイブリダイゼーション、又は単鎖をテンプレートとして使用するDNAポリメラーゼでの重合によって、二本鎖DNAに変換可能な単鎖オリゴヌクレオチドを産生する。当業者であれば、DNAの化学合成が約100以上の塩基の配列に限定され得る一方で、より長い配列は、より短い配列の連結によって得ることができることを認識するであろう。
【0082】
組み換え発現カセット
本発明は、本発明の核酸を含む組み換え発現カセットを更に提供する。本発明の核酸配列、例えば本発明の抗体をコードするcDNA又はゲノム配列を用いて、少なくとも1種の所望の宿主細胞に導入できる組み換え発現カセットを構築することができる。組み換え発現カセットは、典型的には、意図される宿主細胞においてポリヌクレオチドの転写を導く、転写開始調節配列に機能的に連結される、本発明のポリヌクレオチドを含む。相同性及び非相同性(すなわち、外因性)プロモーターの両方を採用して、本発明の核酸の発現を指向することができる。
【0083】
いくつかの実施形態では、プロモーター、エンハンサー、又は他の構成要素として機能する単離核酸を、本発明のポリヌクレオチドの発現を上方又は下方調節するために、本発明のポリヌクレオチドの非異種形の適切な位置(上流、下流、又はイントロン内)に導入することができる。例えば、内因性プロモーターを、突然変異、欠失、及び/又は置換により、インビボ又はインビトロで改変することができる。
【0084】
ベクター及び宿主細胞
本発明は、本発明の単離核酸分子を含むベクター、組み換えベクターで遺伝子組み換えされている宿主細胞、及び当該技術分野において周知であるような組み換え技術による少なくとも1つの抗IL−25抗体の産生にも関連する。例えばSambrookら上掲書、Ausubelら上掲書を参照されたい。これらはそれぞれ参照により全体が本明細書に組み込まれる。
【0085】
ポリヌクレオチドは、所望により、宿主の増殖についての選択マーカーを含有するベクターに連結することができる。一般に、プラスミドベクターは、リン酸カルシウム沈殿物のような沈殿物内、又は荷電脂質との複合体内に導入される。ベクターがウイルスである場合は、適切なパッケージング細胞株を用いてインビトロでこれをパッケージングし、その後、宿主細胞内に形質導入することができる。
【0086】
DNA挿入物は、適切なプロモーターに機能的に連結されるべきである。発現コンストラクトは更に、転写開始、終結のための部位、及び転写された領域に、翻訳のためのリボソーム結合部位を含む。コンストラクトにより発現する成熟した転写産物のコード部分は、好ましくは、翻訳されるべきmRNAの最後に適切に位置する開始及び終止コドン(例えば、UAA、UGA、又はUAG)で始まる翻訳を含み、哺乳類又は真核生物細胞の発現ではUAA及びUAGが好ましい。
【0087】
発現ベクターは、好ましくは少なくとも1つの選択可能なマーカーを含むが、これは任意である。このようなマーカーとしては、例えば、メトトレキサート(MTX)、ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR、米国特許第4,399,216号、同第4,634,665号、同第4,656,134号、同第4,956,288号、同第5,149,636号、同第5,179,017号)、アンピシリン、ネオマイシン(G418)、ミコフェノール酸、又は真核細胞培養に耐性のあるグルタミン合成酵素(GS、米国特許第5,122,464号、同第5,770,359号、同第5,827,739号)、並びに、大腸菌及び他の細菌又は原核生物において培養するためのテトラサイクリン又はアンピシリン耐性遺伝子が挙げられるが、これらに限定されない(上記の特許は、参照することによってその全体が本明細書に組み込まれる)。上記の宿主細胞に対して適切な培養培地及び条件は、当該技術分野において知られている。適切なベクターは、当事者にとって容易に明白となる。ベクターコンストラクトの宿主細胞への導入は、リン酸カルシウムトランスフェクション、DEAE−デキストラン媒介トランスフェクション、カチオン性脂質媒介トランスフェクション、エレクトロポレーション、形質導入、感染、又は他の既知の方法により影響を受ける場合がある。このような方法については、Sambrook(上記)、第1 4、16 18章、Ausubel(上記)、第1、9、13、15、16章等のように、当該技術分野において記述されている。
【0088】
本発明の少なくとも1つの抗体は、融合タンパク質等の修飾された形態で発現され得、分泌シグナルだけでなく、追加の相同性機能領域も含み得る。例えば、追加アミノ酸の領域、特に荷電アミノ酸を抗体のN末端に追加して、精製中又は後次の処理及び保存中に、宿主細胞における安定性及び持続性を改善することができる。また、ペプチド部分を本発明の抗体に追加して、精製を促進することもできる。抗体又は少なくとも1つのその断片の最終調製前に、かかる領域を除去することができる。このような方法は、Sambrook(上記)、17.29 17.42及び18.1 18.74章、Ausubel(上記)、16、17及び18章のような、多くの標準的な実験室マニュアルに記載されている。
【0089】
当業者であれば、本発明のタンパク質をコードする核酸の発現に利用可能な多数の発現系について精通している。
【0090】
別の方法としては、本発明の核酸は、本発明の抗体をコードする内因性DNAを含む宿主細胞内で、(操作により)オン切換えすることにより、宿主細胞中で発現させることができる。このような方法は、例えば、米国特許第5,580,734号、同第5,641,670号、同第5,733,746号、及び同第5,733,761号に記載されているように、当該技術分野において周知であり、これらは参照により全体が本明細書に組み込まれる。
【0091】
抗体、その特定された部分又は変異体の産生にとって有用な細胞培養の一例としては哺乳動物細胞がある。哺乳類細胞系は、しばしば単層の細胞の形態をとるが、哺乳類細胞の懸濁液又はバイオリアクターも使用可能である。無傷なグリコシル化タンパク質を発現可能な多数の適切な宿主細胞株が当該技術分野において開発されており、これにはCOS−1(例えば、ATCC CRL 1650)、COS−7(例えば,ATCC CRL−1651)、HEK293、BHK21(例えば、ATCC CRL−10)、CHO(例えば、ATCC CRL 1610)及びBSC−1(例えば、ATCC CRL−26)細胞株、Cos−7細胞、CHO細胞、hep G2細胞、P3X63Ag8.653、SP2/0−Ag14、293細胞、HeLa細胞、その他同様物を含み、これらは例えば、American Type Culture Collection(Manassas,Va.)(world wide web.atcc.org)から容易に入手できる。好適な宿主細胞には、骨髄腫及びリンパ腫細胞等のリンパ系起源の細胞を含む。特に好ましい宿主細胞はP3X63Ag8.653細胞(ATCC登録番号CRL−1580)及びSP2/0−Ag14細胞(ATCC登録番号CRL−1851)である。特に好ましい実施形態では、組み換え細胞は、P3X63Ab8.653又はSP2/0−Ag14細胞である。
【0092】
これらの細胞の発現ベクターは、以下の発現制御配列の1つ以上を含み、複製起点、プロモーター(例えば、後期又は早期SV40プロモーター、CMVプロモーター(米国特許第5,168,062号、同第5,385,839号)、HSV tkプロモーター、pgk(ホスホグリセリン酸キナーゼ)プロモーター、EF−1 αプロモーター(米国特許第5,266,491号)、少なくとも1つのヒト免疫グロブリンプロモーター、エンハンサー、及び/又はリボソーム結合部位、RNAスプライス部位、ポリアデニル化部位(例えば、SV40大型T AgポリA追加部位)、及び転写終了配列等の、プロセシング情報部位を含むが、それらに限定されない。例えば、オースベルら、上記、サムブルックら、上記を参照のこと。本発明の核酸又はタンパク質の生成に有用な他の細胞は既知であり、及び/又は、例えば、アメリカ培養細胞系統保存機関(American Type Culture Collection)の細胞株及びハイブリドーマのカタログ(www.atcc.org)若しくは他の既知の若しくは商業的供給源から入手可能である。
【0093】
真核宿主細胞が利用される場合は、通常、ベクター内にポリアデニル化又は転写ターミネーター配列が組み込まれる。ターミネーター配列の一例は、ウシ成長ホルモン遺伝子からのポリアデニル化配列である。転写の正確なスプライシングのための配列も、同様に含めることができる。スプライシング配列の一例としては、SV40由来のVP1イントロンがある(Spragueら、J.Virol.45:773〜781(1983))。加えて、宿主細胞内の複製を制御するための遺伝子配列を、当該技術分野において既知のとおりに、ベクター内に組み込むことができる。
【0094】
組成物
本発明はまた、非天然組成物、混合物、又は形態で提供される、本明細書に記載されるような、及び/又は当該技術分野において既知であるような、少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、又はそれ以上の標的結合メンバーを含む、少なくとも1つの標的結合メンバー組成物を提供する。このような組成物の百分率は、当該技術分野において既知であるように、又は本明細書に記載されるように、重量、体積、濃度、容量モル濃度、又は液体若しくは乾燥溶液、混合物、懸濁液、エマルション、又はコロイドとしての容量モル濃度によるものである。
【0095】
本発明の組成物は更に、調節、処置、又は治療が必要な細胞、組織。器官、動物又は患者に対する少なくとも1つの抗IL−25標的結合メンバーを含み、所望により、少なくとも1つのTNF拮抗物質(例えば、TNF抗体又は断片、可溶性TNF受容体又は断片、それらの融合タンパク質、又は小分子TNF拮抗物質などであるが、これらに限定されない)、抗リウマチ薬(例えば、メトトレキセート、オーラノフィン、アウロチオグルコース、アザチオプリン、エタネルセプト、金チオリンゴ酸ナトリウム、硫酸ヒドロキシクロロキン、レフルノミド、スルファサルジン)、筋弛緩剤、麻薬、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、鎮痛剤、麻酔剤、鎮静剤、局所麻酔剤、神経筋遮断薬、抗菌剤(例えば、アミノグリコシド、抗真菌剤、駆虫薬、抗ウイルス剤、カルバペネム、セファロスポリン、フルオロキノロン、マクロライド、ペニシリン、スルホンアミド、テトラサイクリン、その他の抗菌剤)、抗乾癬剤、コルチコステロイド、アナボリックステロイド、糖尿病関連薬、ミネラル、栄養薬、甲状腺薬、ビタミン、カルシウム関連ホルモン、止瀉剤、鎮咳剤、制吐剤、抗潰瘍剤、緩下剤、抗凝血剤、エリスロポエチン(例えば、エポエチンアルファ)、フィルグラスチム(例えばG−CSF、Neupogen)、サルグラモスチム(GM−CSF、Leukine)、免疫化薬、免疫グロブリン、免疫抑制薬(例えば、バシリキシマブ、シクロスポリン、ダクリズマブ)、成長ホルモン、ホルモン補充薬、エストロゲン受容体調節薬、散瞳薬、毛様筋調節薬、アルキル化剤、抗代謝剤、有糸分裂阻害剤、放射性医薬品、抗うつ薬、抗躁病薬、抗精神病薬、抗不安薬、催眠薬、交感神経作動薬、刺激薬、ドネペジル、タクリン、ぜんそく薬、ベータ作動薬、吸入ステロイド、ロイコトリエン阻害薬、メチルキサンチン、クロモリン、エピネフリン又は類似薬、ドルナーゼアルファ(Pulmozyme)、サイトカイン又はサイトカイン拮抗物質から選択される、少なくとも1つを更に含む、好適かつ有効量の組成物又は医薬組成物のうち任意の少なくとも1つを含むことができる。このようなサイトカインの、非限定的な例としては、IL−1〜IL−23のいずれかが含まれ、これらに限定されない。適切な投与量は、当該技術分野において周知である。例えば、Wells et al.,eds.,Pharmacotherapy Handbook,2nd Edition,Appleton and Lange,Stamford,Conn.(2000);PDR Pharmacopoeia,Tarascon Pocket Pharmacopoeia 2000,Deluxe Edition,Tarascon Publishing,Loma Linda,Calif.(2000)を参照されたい。これらはそれぞれ、参照により全体が本明細書に組み込まれる。
【0096】
このような抗癌剤又は抗感染薬はまた、本発明の少なくとも1つの抗体に関連、結合、同時処方、又は同時投与される毒素分子も含むことができる。毒素は任意に作用して、病原性細胞又は組織を選択的に死滅させることができる。病原細胞は、癌細胞又は他の細胞であり得る。かかる毒素は、限定されないが、例えば、リシン、ジフテリア毒、ヘビ毒、又は細菌毒の少なくとも1つから選択される、毒素の少なくとも1つの機能的細胞毒性ドメインを含む、精製又は組み換え毒素又は毒素断片であり得る。毒素という用語は、ヒト及び他の哺乳類において、死に至り得る毒素性ショックを含む、任意の病原状態をもたらし得る任意の自然発生する突然変異若しくは組み換え細菌又はウイルスによって産生される内毒素及び外毒素のいずれも含む。かかる毒素には、腸毒素産生の大腸菌熱に不安定なエンテロトキシン(LT)、熱安定エンテロトキシン(ST)、赤痢菌細胞毒素、アエロモナス属エンテロトキシン、中毒性ショック症候群毒素−1(TSST−1)、ブドウ球菌エンテロトキシンA(SEA)、B(SEB)、又はC(SEC)、連鎖球菌エンテロトキシン等を含み得るが、それらに限定されない。かかる細菌として、エンテロトキシン大腸菌(ETEC)種、腸管出血性大腸菌(例えば、セロタイプ0157:H7の株)、ブドウ球菌種(例えば、黄色ブドウ球菌、化膿レンサ球菌)、赤痢菌種(例えば、Shigella dysenteriae、Shigella flexneri、Shigella boydii、及びShigella sonnei)、サルモネラ種(例えば、Salmonella typhi、Salmonella cholera−suis、Salmonella enteritidis)、クロストリジウム種(例えばClostridium perfringens、Clostridium dificile、Clostridium botulinum)、カンピロバクター種(例えば、Camphlobacter jejuni、Camphlobacter fetus)、ヘリコバクター種(例えば、Heliobacter pylon)、アエロモナス種(例えば、Aeromonas sobria、Aeromonas hydrophila、Aeromonas caviae)、Pleisomonas shigelloides、エルシニア腸コリティカ、ビブリオ種(例えば、コレラ菌、腸炎ビブリオ)、クレブシエラ種、緑膿菌、及び連鎖球菌の株が挙げられるが、これらに限定されない。例えば、Stein,ed.,INTERNAL MEDICINE,3rd ed.,pp 1 13,Little,Brown and Co.,Boston,(1990);Evans et al.,eds.,Bacterial Infections of Humans:Epidemiology and Control,2d.Ed.,pp 239 254,Plenum Medical Book Co.,New York(1991);Mandell et al,Principles and Practice of Infectious Diseases,3d.Ed.,Churchill Livingstone,N.Y.(1990);Berkow et al,eds.,The Merck Manual,16th edition,Merck and Co.,Rahway,N.J.,1992;Wood et al,FEMS Microbiology Immunology,76:121 134(1991);Marrack et al,Science,248:705 711(1990)を参照されたい。参照により、これら参考文献の内容は全て本明細書に組み込まれる。
【0097】
本発明の組成物は更に、任意の適切な助剤のうち少なくとも1つ、例えば、希釈剤、結合剤、安定剤、緩衝剤、塩、親油性溶媒、保存料、アジュバント等を含むことができるが、これらに限定されない。医薬的に許容できる助剤が好ましい。このような無菌溶液の、非制限例及びその調製方法は、Gennaro,Ed.,Remington’s Pharmaceutical Sciences,18th Edition,Mack Publishing Co.(Easton,Pa.)1990などのように(ただし、これらに限定されない)、当該技術分野において周知である。当該技術分野において周知のように、又は本明細書に記載されるように、抗IL−25標的結合メンバー、断片又は変異体組成物の投与方法、溶解性及び/又は安定性に好適な医薬的に許容できる担体を、慣行的に選択することができる。
【0098】
本発明の組成物で有用な医薬賦形剤及び添加剤には、タンパク質、ペプチド、アミノ酸、脂質、及び炭水化物(例えば、糖であって、単糖類、二糖類、三糖類、四糖類及びオリゴ糖、アルジトール、アルドン酸、エステル化糖等の誘導化糖類、並びに多糖類又は糖ポリマーが挙げられる)が包含されるが、これらに限定されず、これらは、単独で又は組み合わせて存在することができ、単独で又は1〜99.99重量%又は体積%での組み合わせを含んでいる。典型的なタンパク質賦形剤には、ヒト血清アルブミン(HSA)等の血清アルブミン、組み換えヒトアルブミン(rHA)、ゼラチン、カゼイン等を含む。緩衝能においても機能し得る代表的なアミノ酸/抗体構成要素には、アラニン、グリシン、アルギニン、ベタイン、ヒスチジン、グルタミン酸、アスパラギン酸、システイン、リシン、ロイシン、イソロイシン、バリン、メチオニン、フェニルアラニン、アスパルテーム等を含む。好ましいアミノ酸の1つはグリシンである。
【0099】
本発明における使用に適した糖質賦形剤は、例えば、フルクトース、マルトース、ガラクトース、グルコース、D−マンノース、ソルボース等の単糖、ラクトース、スクロース、トレハロース、セロビオース等の二糖、ラフィノース、メレジトース、マルトデキストリン、デキストラン、スターチ等の多糖、及びマンニトール、キシリトール、マルチトール、ラクチトール、キシリトールソルビトール(グルシトール)、ミオイノシトール等のアルジトールを含む。本発明で使用するのに好ましい炭水化物賦形剤は、マンニトール、トレハロース、及びラフィノースである。
【0100】
組成物はまた、緩衝剤又はpH調整剤を含むこともでき、典型的には緩衝剤は有機酸又は塩基から調製された塩である。代表的な緩衝剤には、クエン酸、アスコルビン酸、グルコン酸、炭酸、酒石酸、コハク酸、酢酸、又はフタル酸の塩などの有機酸塩;トリス、塩酸トロメタミン、又はリン酸緩衝剤が挙げられる。本組成物における使用に適した緩衝剤は、クエン酸などの有機酸塩である。
【0101】
加えて、本発明の組成物は、ポリビニルピロリドン、フィコール(ポリマー糖)、デキストレート(例えば、2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン等のシクロデキストリン)、ポリエチレングリコール、着香剤、抗菌剤、甘味料、抗酸化剤、帯電防止剤、界面活性剤(例えば、「TWEEN 20」及び「TWEEN 80」等のポリソルベート)、脂質(例えば、リン脂質、脂肪酸)、ステロイド(例えば、コレステロール)、及びキレート剤(例えば、EDTA)等のポリマー賦形剤/添加剤を含むことができる。
【0102】
本発明による組成物における使用に好適なこれら及び追加の既知の医薬賦形剤及び/又は添加剤は、当該技術分野において既知であり、例えば、「Remington:The Science & Practice of Pharmacy」19th ed.,Williams & Williams,(1995)及び「Physician’s Desk Reference」52nd ed.,Medical Economics,Montvale,N.J.(1998)に記載されており、これらの開示は参照によって全体が本明細書に組み込まれる。好適な担体又は賦形剤材料は、糖質(例えば、単糖類及びアルジトール)及び緩衝剤(例えば、クエン酸)又はポリマー剤である。
【0103】
治療適用
一態様において、本発明は、治療を必要とする被験体(例えば、ヒト)の気道過敏症を予防又は低減する方法を提供し、この方法はIL−25に結合する標的結合メンバー、特に抗体分子を被験体に投与する工程を含む。別の態様において、本発明は、治療を必要とする被験体のぜんそくを予防、低減、又は治療する方法を提供し、この方法はIL−25に結合する標的結合メンバー、特に抗体分子を被験体に投与する工程を含む。ぜんそくにはアレルギー性ぜんそくが含まれる。
【0104】
上記の方法は、IL−25が役割を果たすさまざまな疾病及び疾患において治療可能性を有する、IL 25への結合及び好ましくはその作用の拮抗に有用な本発明による標的結合メンバー(その組成物を含む)を用いて実行することができる。ぜんそくに加え、このような疾病として、炎症性腸疾患(IBD)、例えば、クローン病、及び潰瘍性大腸炎などの炎症が関与するその他病状が挙げられる。また、本方法は、付随する実施例中に記載のように得られるIL−25に結合するその他の標的結合メンバー(その組成物を含む)を用いて実行することもできる。
【0105】
本発明による標的結合メンバー(その組成物を含む)を、ヒト又は動物被験体における治療(予防的治療を含む)又は診断方法に使用することができる。このような治療又は診断方法(予防的治療を含んでもよい)は、かかる被験体に有効量の本発明の標的結合メンバーを投与する工程を含んでもよい。代表的な疾病及び疾患について、更に以下で説明する。
【0106】
ヒト又は動物被験体に投与するための薬剤の製造における、本発明の標的結合メンバー(その組成物を含む)の使用が更に提供される。
【0107】
抗IL−25標的結合メンバーを用いて治療効果をもたらし得る臨床的適応として、IL−25が病理的影響を有する任意の病状が含まれる。したがって、一般には、本発明の標的結合メンバーは、不必要なTh2応答又は2型応答に関与する任意の病状の治療に用いることができる。例えば、本発明の標的結合メンバーは、アレルギー及びぜんそく、特にぜんそくの治療に用いることができる。
【0108】
抗IL−25処置を、注射(例えば、静脈内)により、又は局所送達法により投与してもよい。抗IL−25は遺伝子媒介技術により送達できる。別の配合方法により、経口又は坐剤経路に適した製剤を提供できる。投与経路は、疾患への特別な配慮をした上で、効果を最適化するように、又は副作用を極力抑えるように、処置の物理化学的性質により決定され得る。
【0109】
本発明に従って、提供された組成物を個体に投与できる。投与は、好ましくは「治療的有効量」での投与であり、この量は患者への利益を示すのに十分な量である。そのような利益は、少なくとも1つの症状の少なくとも改善であってもよい。実際の投与量、並びに投与速度及び時間経過は、治療対象の性質及び重篤度によって決まる。治療の処方(例えば、投与量などの決定)は、一般医及び他の医師の責任の範囲内である。抗体の適切な用量は当該技術分野において周知である。Ledermann J.A.et al.(1991)Int.J.Cancer 47:659〜664;Bagshawe K.D.et al.(1991)Antibody,Immunoconjugates and Radiopharmaceuticals 4:915〜922を参照されたい。
【0110】
正確な投与量は、多くの要因、例えば抗体が診断のためのものであるのか、それとも治療のためのものであるのか、治療される領域の大きさ及び場所、抗体の厳密な性質(例えば、全長抗体、断片又は二重特異性抗体)、並びに抗体に結合させた任意の検出可能な標識又は他の分子の性質によって決まる。典型的な抗体の投与量は、0.5mg〜1.0gの範囲内にあり、これは、適宜ボーラスとして、又は数時間にわたる注入として、必要用量を達成するように静脈内に投与され得る。その他投与方法として、同等の総累積投与量を達成するような、数時間にわたる静脈内注入が挙げられる。これは成人患者の単回治療における投与量であり、小児及び乳児に対しては比例的に調節でき、また他の抗体形式に対しても分子量に比例して調節できる。治療は医師の裁量により、毎日、週2回、週1回又は月1回の間隔で繰り返すことができる。
【0111】
更なる投与方法は、留置デバイスへのプレコーティング、ないしは別の方法による取り込みを利用するものであり、そのための抗体の最適量は、適切な実験により決定される。
【0112】
本発明のいくつかの好ましい実施形態における抗体分子は、F(ab)又はscFvなどのモノマー断片である。かかる抗体断片は、比較的半減期が短いという利点を有し、受容体のクラスター化により引き起こされ得る血小板活性化のリスクを低下させることができる。血小板活性化を生じさせるクラスター化は、例えば、IL−25分子、又はIL−25とFcγRII分子のいずれかのものであり得る。
【0113】
全長抗体が使用される場合、好ましくは血小板を活性化及び/又は破壊できない形態である。IgG4アイソタイプあるいはIgG1主鎖由来の「デザイナー」アイソタイプ(新規Fc遺伝子構築物、国際公開第99/58572号、Clark、Armour、Williamson)が好ましい選択肢である。F(ab’)2などの更に小さい抗体断片を使用してもよい。更に、二重エピトープ特異性(例えば、scFv 2C3により認識されるエピトープに対して)を有する全長抗体又は断片(例えば、F(ab’)2又は二重特異性抗体)を使用してよい。そのような実施形態は受容体クラスター化を促進し得るが、個々の受容体への高い会合速度がこの問題を排除できる。
【0114】
本発明の標的結合メンバーは、通常、標的結合メンバーに加えて少なくとも1つの構成成分を含むことができる医薬組成物の形態で投与される。
【0115】
本発明の標的結合メンバーは、単独で又は他の処置と組み合わせて、治療される病状により同時に又は順次投与できる。他の処置としては、適切な投与量である、非ステロイド性抗炎症薬(例えば、アスピリン、パラセタモール、イブプロフェン、又はケトプロフェン)若しくはアヘン剤(例えば、モルヒネ)などの鎮痛薬の投与、制吐剤の投与、又はぜんそくに対して活性を持つ少なくとも1つのその他化合物、一般的には、気道弛緩を引き起こすか粘液クリアランスを向上させる気管支拡張薬、例えばβ−アゴニスト(例えば、サルブタモール、サルメテロール)、クロモグリク酸二ナトリウム、ステロイド、若しくはPDEIV阻害剤の投与を挙げてもよい。
【0116】
アッセイ方法
本発明は、本明細書において提供される標的結合メンバーのIL−25への結合を生じさせる、又は可能にする工程を含む方法を提供する。先に述べたように、そうした結合は、インビボで、例えば、標的結合メンバー又は標的結合メンバーをコードする核酸の投与の後に起こる場合があり、あるいはインビトロで、例えば、ELISA、Biacoreアッセイ、Octetアッセイ、ウェスタンブロット法、免疫細胞化学法、免疫沈降法、又は親和性クロマトグラフィーで起こる場合がある。
【0117】
IL−25への標的結合メンバーの結合量を決定できる。定量化は、診断対象であり得る試験サンプル中の抗原の量と関連付けることができる。
【0118】
サンプルにおける抗体の反応性は、任意の適切な手段により決定できる。ラジオイムノアッセイ(RIA)は1つの実行可能な手段である。放射性標識抗原を非標識抗原(試験サンプル)と混合し、抗体に結合させる。結合抗原を非結合抗原から物理的に分離し、抗体と結合した放射性抗原の量を決定する。試験サンプル中に存在する抗原が多いほど、より少ない放射性抗原が抗体に結合することになる。レポーター分子に連結された抗原又は類縁体を用いる、非放射性抗原との競合結合アッセイも利用できる。レポーター分子は、スペクトル上区別される吸収又は発光特性を有する蛍光色素、蛍光体又はレーザー色素であってもよい。好適な蛍光色素としては、フルオレセイン、ローダミン、フィコエリトリン及びTexas Redが挙げられる。好適な発色性色素としては、ジアミノベンジジンが挙げられる。
【0119】
その他のレポーターとしては、着色、磁性又は常磁性のラテックスビーズなどの高分子コロイド粒子又は微粒子材料、及び、直接的又は間接的に、検出可能シグナルを視覚的に観察させる、電子的に検出させる、ないしは別の方法で記録させる、生物学的又は化学的に活性な薬剤が挙げられる。これらの分子は、例えば、発色若しくは変色する、又は電気的性質に変化をもたらす、反応を触媒する酵素であってもよい。これらは、エネルギー状態間の電子遷移が特徴的なスペクトル吸収又は発光をもたらすように分子的に励起可能であり得る。これらは、バイオセンサーと共に使用される化学物質を含んでもよい。ビオチン/アビジン又はビオチン/ストレプトアビジンとアルカリホスファターゼとの検出系を使用してもよい。
【0120】
個々の抗体−レポーター複合体により生成されるシグナルを用いて、サンプル(正常及び試験)中の関連する抗体結合の定量化可能な絶対又は相対データを得ることができる。
【0121】
また、本発明は、競合アッセイにおいて抗原レベルを測定するための上記のような標的結合メンバーの使用、すなわち、本発明により提供されるような標的結合メンバーを競合アッセイにおいて使用することによりサンプル中の抗原レベルを測定する方法も提供する。これは、非結合抗原からの結合抗原の物理的分離が必要とされない場合にあり得る。結合の際に物理的又は光学的変化が起こるようにレポーター分子を標的結合メンバーに連結することは、1つの実行可能な手段である。レポーター分子は、検出可能な、好ましくは測定可能なシグナルを、直接的又は間接的に生成できる。レポーター分子の連結は、直接的又は間接的、共有結合的、例えば、ペプチド結合又は非共有結合的であってもよい。ペプチド結合による連結は、抗体及びレポーター分子をコードする遺伝子融合の組み換え発現の結果であってもよい。
【0122】
また、本発明は、本発明による標的結合メンバーを、例えば、バイオセンサー系において使用することによる、抗原レベルの直接的測定を提供する。
【0123】
当業者は、好み及び一般的知識に従って好適な結合様式を選択できる。
【実施例】
【0124】
本発明の例示的実施形態の説明を続ける。
【0125】
実施例1:M6(高親和性ヒト化IL−25抗体)の生成
IL−25への結合親和性が改善された変異体の生成には、マウス2C3モノクローナル抗IL25抗体のヒト化(CDRグラフト化)版であるhuDDG91を親分子として選択した。リーダー配列を除くhuDDG91のκ軽鎖配列を図1(配列番号2)に示しており、ここではKabatにより定義されるCDRループのアミノ酸配列に下線を引いている。huDDG91重鎖の配列(配列番号4)を図2に示しており、ここではKabatにより定義されるCDRのアミノ酸配列に下線を引いている。huDDG91はRH2.5_R71Vとしても知られている。マウス2C3モノクローナル抗IL25抗体の生成及び特徴付けは、国際出願PCT/GB2008/001365号(国際公開第2008/129263号として2008年10月30日に公開されており、この内容はその全てを参照として本明細書に組み込まれる)に記載されている。
【0126】
huDDG91の変異体を生成するために、標準的な手順を用いてhuDDG91配列を基にファージディスプレイライブラリを構築した。Fabライブラリをビオチン化IL−25に対してパニングした。ELISAにより、huDDG91(IgG4)と同等又はより高い結合を示すFabを選択した。
【0127】
以下のようにFabをmAbに転換した。5種類の軽鎖及び5種類の重鎖(huDDG91の軽鎖及び重鎖を含む)のコンビナトリアルライブラリを設計した。このライブラリで用いた軽鎖及び重鎖は、軽鎖CDR1及びCDR3アミノ酸配列、並びに重鎖CDR 3配列において互いに異なる。これらの軽鎖及び重鎖を用いて、合計25種類のmAb(IgG1)を構築し、HEK293細胞内でスモールスケールで発現させ、精製した。IL−25結合親和性、細胞阻害、及び受容体阻害について、以下のように各mAbを試験した。
・IL−25結合親和性は、標準的なIL−25 ELISA及びBiacore結合アッセイを用いて決定した。ヒトIL−25に対して50pM未満のKD、かつヒトIL−17A、C、D、及びFに対して100nM超のKDを有する候補体を選択した。
・細胞阻害は、標準的なTK−10ヒト腎がん細胞系アッセイ(IL−25応答性、IL−25及びIL−8の読み取り、可溶性IL−25Rと親mAbとの間の差を識別可能)及びCD4+T細胞系アッセイを用いて評価した。TK−10アッセイでは、huDDG91親抗体より低いIC50、及び10nMのmAb濃度においてIL−25放出の>90%阻害を示すmAbを選択した。CD4+T細胞アッセイでは、親huDDG91が示すより高い又は同程度のIL−5産生阻害を引き起こすmAbを選択した。
・受容体阻害は、ビーズベースの電気化学発光イムノアッセイ(ECLIA)の変法を用いて評価した。10nMのmAb濃度においてhuDDG91親抗体と比較して、受容体に対するIL−25結合のIC50を3倍超減少させる候補体を選択した。
【0128】
この基準に基づき、9種類の候補mAbを選択した(図3)。全ての候補体は、許容可能な発現レベルを示し、HEK293内で発現させ、標準的な手順で精製すると望ましいSE−HPLC及びSDS−PAGE特性を呈した。続いて、これら9種類の候補体を、10Lスケールでチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞内で一時的に発現させ、Mab Select SuRe(GE Healthcare Life Sciences)を用いて精製し、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で緩衝液交換して濃縮した。9種の候補mAbのそれぞれのIL−25結合親和性は、huDDG91と比較して顕著に向上した。更に、発現レベル、同一性(SDS−PAGE)、溶解性、凝集(SE−HPLC)、翻訳後修飾、タンパク質−タンパク質相互作用、及び酸化について、常用の手技及びアッセイを用いて各mAbを試験した。CHO中で発現させ、精製し、標準的条件下で処理すると、候補体mAbのうちいくつかは、濃縮中の沈殿、低収率、並びに/又は好ましくないSDS−PAGE及びSE−HPLC特性を呈した。
【0129】
発現レベルが優れる、溶解性が高い、精製時に顕著なタンパク質凝集がない、並びに精製時に望まれない翻訳後修飾、タンパク質−タンパク質相互作用、及び酸化がみられないことから、M6と名付けた1つのmAbを更なる実験に選択した。
【0130】
実施例2:M6抗体の特徴
材料及び方法
LS 174Tヒト結腸上皮細胞アッセイ
ヒト結腸上皮細胞株LS 174T(CL−188)をATCC(Manassas,VA)から入手し、10% FBS、ペニシリン、及びストレプトマイシンを追加したダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)(Invitrogen(Carlsbad,CA))中、37℃、5% CO2下で維持した。細胞を、96ウェルの組織培養プレートに、密度1×105細胞/mL、総容量100μLで播種し、一晩付着させた。IL−25抗体(M6及びM9)を、一定量のIL−25タンパク質(最終濃度10ng/mL)の組み換えヒトIL−25タンパク質(Centocor)と予め複合体化し、3倍希釈又は3.3倍(ハーフログ)希釈系列で容量設定したさまざまな量の抗IL−25抗体と混合し、37℃で1時間インキュベートした。細胞培養培地をゆっくりと吸引してIL−25タンパク質/IL−25抗体複合体で置き換え、その後細胞を一晩(18〜22時間)インキュベートした。続いて、培養プレートを1200rpmで2分間遠心分離して細胞残渣の持ち越しを排除し、次に上清を回収し、ELISA法(R&D Systems(Minneapolis,MN))を用いてGROaについてアッセイした。
【0131】
結果
M6の配列分析により、huDDG91配列に対して合計3ヶ所のアミノ酸置換が明らかとなり、その全てが軽鎖のCDR3に存在していた(図3を参照)。M6の軽鎖(配列番号5)及び重鎖(配列番号9)、並びにそれらのCDRのアミノ酸配列を図4に示す。
【0132】
Biacore法により、M6が、huDDG91のヒトIL25に対する親和性よりも3〜5倍高いヒトIL−25に対する結合親和性を有することが確認された(図3)。更に、M6はIL−25に対して選択性があると同時に、ヒトIL−17A、C、D又はFには結合しなかった。M6の種間交差反応を、カニクイザルI2−25 cynoIL−25及びげっ歯類(マウス)IL−25について評価した。cynoIL−25との種間交差反応は、5倍以内のヒトIL−25の親和性、受容体リガンドの阻害、及びTK−10細胞系アッセイにより示された。これらの基準を用いて、M6がcyno及びマウスIL−25の両方に結合したと判定された。
【0133】
実施例1に記載の細胞系アッセイを用いて、M6がhuDDG91に対して増強した受容体阻害を呈すことにより、huDDG91と比較してIC50が3倍超低下することを証明した(図3)。更に、実施例1に記載の細胞系アッセイを用いると、M6はhuDDG91と比較してヒトIL25の細胞阻害の増強を示した(図3及び5)。この結果は、上述のように実施したLS174Tヒト結腸上皮細胞アッセイ(図6A及び6B)により確認された。
【0134】
実施例3:M6により認識されるヒトIL−25内エピトープのH/D交換マッピング
課題を解決するための手段
M6抗体により認識されるヒトIL−25内推定エピトープを、ExSar Corporation(Monmouth Junction,New Jersey)が実施するExSar(商標)水素/重水素交換マススペクトロメトリーを用いてマッピングした。
【0135】
材料及び方法
I.IL−25の消化/分離最適化
(1)氷上でIL−25を溶かした。
(2)18×100μLのアリコートに分け、1つ以外を凍らせた。
(3)10μLの0.28mg/mL(16.6μM)IL−25と30μLのPBS(pH 7.0)を水中で混合した。→[IL−25]=0.07mg/mL(4.2μM)。
(4)40μLの(3)をさまざまな反応停止液と混合した。
(5)55μLをExSARシステムに注入した。
(6)緩衝液A(H2O中0.05% TFA)中、200μL/分でペプシン固定化カラムにサンプルを通した。
(7)消化断片を逆相トラップカラムにロードし、200μL/分で3分間、緩衝液Aにより脱塩した。
(8)23分間で13%→40%の直線勾配の緩衝液B(95%アセトニトリル、5% H2O、0.0025% TFA)を用い、C18カラムにより消化ペプチドを分離した。
(9)ペプチドをマススペクトロメトリーで検出した。
【0136】
II.M6の固定化
4.1.M6固定化の実験手順
<樹脂上への抗体の結合>
(1)1.5mLの0.96mg/mL M6を氷上で溶かした。
(2)400μLを用いた(未使用の材料は再凍結した)。
(3)4mgのNaCNBH3(87.5μモル)を1.5mLのねじぶた付きバイアル瓶に加えた。→POROS AL 1gあたり40mgのNaCNBH3
(4)400μLの抗体溶液をバイアル瓶に加えた。
(5)POROS AL樹脂を加える前に、NaCNBH3が溶解しているかを確認した。
(6)100mgのPOROS ALをバイアル瓶に入れた。
(7)室温で3時間振盪しながらカップリング反応をインキュベートした。
(8)5×80μLの2.8M Na2SO4を、1時間あたり一部ずつ、合計400μL加えた。→[抗体]=0.48mg/mL、[NaCNBH3]=5.0mg/mL[Na2SO4]=1.4M。
(9)この混合液を室温で一晩振盪した。
(10)濾過用漏斗を用いて大量のPBS緩衝液(pH 7.0)で混合液を洗浄した。
【0137】
<キャッピング>
(11)250μLのエタノールアミン(FW=61.08、密度=1.012g/mL、8.3ミリモル、〜1M)を3.5mLのPBS(pH 7.0)に混合し、この溶液のpHを氷酢酸(〜200μL)でpH 7.2に調整することにより、キャッピング溶液を調製した。この溶液の最終量は約4mLである。
(12)4mgのNaCNBH3を500μLのキャッピング溶液に溶解した。→[NaCNBH3]=8mg/mL、[エタノールアミン]=〜1M。
(13)洗浄した乾燥樹脂をNaCNBH3溶液に再懸濁した。
(14)室温で2時間浸透した。
(15)この混合液を濾過し、濾過用漏斗を用いて大量のPBS(pH 7.0)で洗浄した。
(16)樹脂ケークを0.75mLのPBS緩衝液(pH 7.0)に再懸濁した。
(17)結合した材料を冷蔵庫内4℃で保管した。
【0138】
III.M6カラムの結合能テストの実験手順
<緩衝液の調製>
(1)50mMクエン酸水溶液(pH 6.0)を調製した。
(2)50mMクエン酸、2mM Foscholine−12水溶液(pH 6.0)を調製した。
(3)PBS水(pH 7.0)を調製した。
(4)(1)、(2)又は(3)のいずれかを「緩衝液H」として用いた。
【0139】
<結合能テスト>
(5)流量500μL/分の緩衝液A(H2O中0.05% TFA)及び2.1mm×30mmのステンレス製カラムホルダーを用いて、mAbカラム(104μL)を600μLのPOROS樹脂に結合したM6で充填した。
(6)カラムに出入りする試薬の送出及び捕獲用にセットされたラインを伴う、3℃に設定した冷却ユニットのリザーバ槽中に抗体カラムを置いた。試薬及びサンプル濾過用の投入ラインに沿って2マイクロメートルのフリットを置いた。
(7)抗体カラムを2×250μLの「緩衝液H」で平衡化した。pH試験紙を用いて、ラインの最終部で溶液のpHを試験し、pHが中性であることを確認した。
(8)10μLの0.28mg/mL(16.6μM)IL−25と30μLの「緩衝液H」を混合した。→[IL−25]=4.1μM(166ピコモル当量)。
(9)上記混合液を平衡化した抗体カラム上に注入した。
(10)シリンジポンプを用いて200μLの「緩衝液H」(500μLのHamiltonシリンジに入れた)を3℃のカラムに送り、5×40μLの画分を回収した。
(11)シリンジポンプを用いて200μLの0.8%ギ酸を3℃のカラムに送り、5×40μLの画分を回収した。
(12)10μLの0.28mg/mL(16.6μM)IL−25と30μLの「緩衝液H」を混合することにより、ガラス製インサート内に対照注入液を調製した。
(13)画分又は対照サンプルを含有する全てのインサートを遠心分離し、インサートの壁上の液体を全て沈降させた。インサートを内部にいれた状態でバイアル瓶に蓋をしてラベルを付けた。
(14)中性及び酸性画分、並びに対照サンプルを、冷却スタックトレイ4の3〜23の奇数の位置に、対照サンプル、中性洗浄液1、2、3、4、5、及び酸性洗浄液1、2、3、4、5の順に保持した。
(15)11本の蓋をした空のバイアル瓶を、冷却スタックトレイ4の4〜24の偶数の位置に置いた。
(16)各画分を20μLの2M尿素、1M TCEP(pH 3.0)と混合した。
(17)55μLの反応停止した溶液を、ペプシンカラムを含まないExSARシステムに注入した。
(18)サンプルを、緩衝液A(0.05% TFA)中200μL/分でトラップカラムにロードし、3分間脱塩し、23分間で13%〜40%の直線勾配の緩衝液B(95%アセトニトリル、5% H2O、0.0025% TFA)で溶出した。
(19)溶出液を、MS1:セントロイドモードのマススペクトロメトリーで分析した。
【0140】
IV.オンソリューション/オフカラム交換の実験手順
<緩衝液の調製>
(1)H2O中50mMクエン酸、2mM Foscholine−12(pH 6.0)を調製した。
(2)H2O中PBS、2mM Foscholine−12(pH 7.0)を調製した。
(3)H2O中PBS(pH 7.0)を調製した。
(4)(1)〜(3)を「交換液H」として用いた。
(5)1部のH2O中PBS(pH 7.0)と3部の「交換液H」を混合することにより「交換液HH」を調製した。
(6)D2O中50mMクエン酸、2mM Foscholine−12(pH 6.0)を調製した。
(7)D2O中PBS、2mM Foscholine−12(pH 7.0)を調製した。
(8)D2O中PBS(pH 7.0)を調製した。
(9)(6)〜(8)を「交換液D」として用いた。
(10)1部のH2O中PBS(pH 7.0)と3部の「交換液D」を混合することにより「交換液HD」を調製した。
【0141】
<オンソリューション>
(1)3℃の冷却ボックスの内部にmAbカラム(総容積104μL)を置き、平衡化した。
(2)2×250μLの0.8%ギ酸でmAbカラムを洗浄した。
(3)mAbカラムを2×250μLの「交換液HD」で洗浄し、カラムを平衡化した。
(4)10μLの0.28mg/mL(16.6μM)IL−25と30μLの「交換液D」を3℃で混合した。→[IL−25]=0.07mg/mL(4.2μM)、[D2O]=75%(オン交換としてタイマーをスタートする)
(5)混合液を150、500、1,500又は5,000秒間3℃でインキュベートした。
(6)混合液(40μL)をmAbカラム上に注入した。
(7)3℃の100μLの「交換液HD」でmAbカラムを洗浄した。
【0142】
<オフカラム>
(8)200μLの冷却した「交換液HH」でmAbカラムを洗浄した(オン交換時間が停止し、H2Oがカラムに触れた瞬間にオフ交換時間が開始する)。
(9)75、250、750又は2,500秒間23℃でインキュベートした。
【0143】
<溶出>
(10)120μLの冷却した0.8%ギ酸をmAbカラム上に注入した(酸性液がカラムに導入された瞬間にオフ交換時間が停止する)。
(11)更に40μLの冷却した0.8%ギ酸を注入し、mAbカラムから抗原を溶出した。
(12)ガラス製インサートを用いてこの40μL画分を回収した。
【0144】
<分析>
(13)20μLの冷却した2M尿素、1M TCEP(pH 3.0)を40μL画分に加えた。
(14)55μLの反応停止した交換済みサンプルを、ペプシンカラム及びC18カラム(ペプシンカラム総容積104μL;ペプシンカラム上流速200μL/分;C18勾配23分間で13%〜40%の緩衝液B)を含むExSARシステムに注入した。消化時間を3分間に設定した。
(15)溶出液をMS1:プロファイルの質量分析計により分析した。
【0145】
V.オンカラム/オフカラム交換の実験手順
<オンカラム>
(1)23℃の冷却ボックスの内部にmAbカラム(総容積104μL)を置き、平衡化した。
(2)2×250μLの0.8%ギ酸でmAbカラムを洗浄した。
(3)mAbカラムを「交換液HH」で洗浄し、カラムを平衡化した。
(4)10μLの0.28mg/mL(16.6μM)IL−25と30μLの「交換液H」を3℃で混合した。→[IL−25]=0.07mg/mL(4.2μM)、[D2O]=0%
(5)混合液をmAbカラム上に注入した。
(6)100μLの「交換液HH」で洗浄した。
(7)200μLの「交換液HD」をmAbカラム上に通すことでオン交換反応を開始した(オン交換時間開始)。
(8)mAbカラムを150、500、1,500又は5,000秒間3℃でインキュベートした。
【0146】
<オフカラム>5.2と同様。
【0147】
<溶出>上記手順IV、工程10〜14と同様。
【0148】
<分析>上記手順IV、工程15と同様。
【0149】
VI.完全重水素化実験の実験手順
<完全重水素化サンプルの調製>
(1)10μLの0.28mg/mL(16.6μM)IL−25と30μLの「交換液D」を混合した。
(2)混合液を60℃で3時間加熱した。
(3)室温まで冷却した。
(4)40μLの混合液をmAbカラムにロードした。
(5)100μLの「交換液HD」をmAbカラム内に注入した。
【0150】
<溶出>上記手順IV、工程10〜14と同様。
【0151】
<分析>上記手順IV、工程15と同様。
【0152】
各イオンの第1の2つのアミノ酸残基上に結合されたいかなる重水素が、分析(水性環境における消化/分離/質量分析)中に損失した。これにより図8A及び8BのH/D交換パターンにおける小さな差が説明される。非重水素化実験、オン交換実験、及び完全重水素化実験を各タンパク質について実施した。非重水素化実験は、イオン、並びに重水素を含まない各イオンの正確なm/zの同定を目的とした。完全重水素化実験により、分析(水性環境における消化/分離/質量分析)中に各イオンにおける重水素損失が確認された。これらの種類の実験では、LCMS分析前、及びオン又はオンオフ交換反応後の重陽子数を逆算することができる。オンオフ交換実験では、オフ交換時間はオン交換時間の半分であった。これは、同じpH値において固有のH→D交換率は固有のD→H交換率の半分であるという事実による。
【0153】
結果
IL−25消化
さまざまな条件を用いて、ペプシンでIL−25を消化した。ペプシンによるIL−25の最適な消化は、2部の希釈IL−25溶液を1部の2M尿素、1M TCEP(pH 3.0)で反応停止し、200μL/分のペプシンカラムで消化した際に得られた。最適分離条件は、23分間で13%から40%の直線勾配の緩衝液A中緩衝液B(95%アセトニトリル、5% H2O、及び0.0025% TFA)を用いるC18カラムであった。ペプシン消化後のIL−25の配列カバー度は100%(=146/146;図7A及び7B)であった。
【0154】
M6の固定化及びM6カラムの結合能テスト
ペプシン消化を行わないIL−25サンプルは、8.5分の位置に1本のクロマトグラフピークを示した。サンプルはきれいな状態だと思われた。M6は、シッフ塩基の化学的性質によりPOROS AL樹脂上にうまく結合した。ExSARにより、表1に示す3つの異なる条件でM6カラムの結合能を試験した。m/z=1875(+18)及び1985(+17)の完全なピークが結果として生じた。試験した全ての結合条件において、中性洗浄液ではIL−25が溶出されなかったことから、ロードした全てのIL−25(166ピコモル)が中性条件でM6カラムに結合したことが示された。IL−25は非特異的にM6カラムに固着できる。ロードしたIL−25の17〜18%のみが、洗剤非存在下の酸性洗浄液中に回収された。IL−25を繰り返しロードすると、M6カラムの背圧も徐々に増加する。回収率は、Foscholine−12の添加により改善された。
【0155】
【表1】
【0156】
「温度」と「中性」との間の列のタイトルは「ペプシン」である。
【0157】
エピトープ同定
<溶液中IL−25のオン交換実験>
溶液中IL−25のオン交換実験を23℃、pH 7で実施した。
【0158】
IL−25は比較的動的なタンパク質であることがわかった。
【0159】
<M6カラムを用いる、又は用いないIL−25のオン/オフ交換実験>
アミノ酸残基56〜63及び66〜74を包含するセグメントにおいて、最大の保護が観察された(図8A及び9C、表2)。アミノ酸残基46〜63及び66〜84を包含する類似セグメントは、一貫して弱い保護を示した(図8A、9C及び9D、表2)。アミノ酸残基129〜135を包含するセグメントにおいて、境界レベルの保護が観察された(図8B、9E及び9F、表2)。
【0160】
【表2】
【0161】
本明細書で引用する全ての特許、公開特許、及び引用文献による教示はその全体が参照により組み込まれる。
【0162】
本発明は、その例示的実施形態を参照にして具体的に示され、記載されてきたが、当業者らは、添付の特許請求に包含される本発明の範囲から逸脱することなく、形態及び詳細におけるさまざまな変更をこれに加えることができることを理解する。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B
図9A
図9B
図9C
図9D
図9E
図9F
図10
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]