(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5887344
(24)【登録日】2016年2月19日
(45)【発行日】2016年3月16日
(54)【発明の名称】高温及び高圧で材料を処理する装置
(51)【国際特許分類】
C30B 7/10 20060101AFI20160303BHJP
C30B 29/38 20060101ALI20160303BHJP
F16J 12/00 20060101ALI20160303BHJP
【FI】
C30B7/10
C30B29/38 D
F16J12/00 C
【請求項の数】41
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2013-521972(P2013-521972)
(86)(22)【出願日】2011年7月28日
(65)【公表番号】特表2013-542156(P2013-542156A)
(43)【公表日】2013年11月21日
(86)【国際出願番号】US2011045708
(87)【国際公開番号】WO2012016033
(87)【国際公開日】20120202
【審査請求日】2014年7月7日
(31)【優先権主張番号】61/368,443
(32)【優先日】2010年7月28日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506390498
【氏名又は名称】モーメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・インク
(74)【代理人】
【識別番号】100156845
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 威一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100112896
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 宏記
(74)【代理人】
【識別番号】100124039
【弁理士】
【氏名又は名称】立花 顕治
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100179213
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 未知子
(74)【代理人】
【識別番号】100170542
【弁理士】
【氏名又は名称】桝田 剛
(72)【発明者】
【氏名】アフィミワラ キルシュ
(72)【発明者】
【氏名】ゼン ラリー
【審査官】
阪野 誠司
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2006/0177362(US,A1)
【文献】
特表平09−512385(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0301387(US,A1)
【文献】
特表2001−524249(JP,A)
【文献】
特表2006−513122(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C30B 1/00− 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置であって、
1050bar以上の圧力をサポート可能な高強度エンクロージャーと、
前記高強度エンクロージャーに隣接して該高強度エンクロージャーから径方向内側に配置されている複数の放射状セグメントと、
前記放射状セグメントに隣接して該放射状セグメントから径方向内側に配置されているライナーと、
前記ライナーの内部に画定されているチャンバーと、
前記チャンバー内に配置されている加熱素子と、
300℃以上の高温及び700bar以上の高圧条件下で結晶を成長させるために反応物及び材料を保持するように構成されている、前記チャンバー内に配置されているカプセルと、
を備え、前記ライナーと前記加熱素子の外表面との間に間隙がある、装置。
【請求項2】
前記加熱素子は、外表面、内表面及び内部キャビティを画定している、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記カプセルは、前記加熱素子の前記内部キャビティ内に配置されている、請求項2の記載の装置。
【請求項4】
前記カプセルは、該カプセルの外表面と前記加熱素子の前記内表面との間に間隙があるように構成されている、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記ライナーは、スチール又は合金を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記ライナーは、ニッケルクロム系超合金を含む、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記ライナーは、0.1mm〜10mmの厚さを有する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記放射状セグメントは、セラミック、タングステン、モリブデン、TZM合金、サーメット又はそれらの2つ以上の組合せから選択される材料を含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記放射状セグメントは、アルミナ、窒化ケイ素、炭化ケイ素、ジルコニア、タングステン、モリブデン、コバルト焼結炭化タングステン又はそれらの2つ以上の組合せから選択される材料を含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
前記放射状セグメントはウェッジ形状構造を有する、請求項1〜9のいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
前記カプセル又は前記高強度エンクロージャー内で検知された環境条件に応じて、(a)前記カプセル内の圧力、又は(b)前記高強度エンクロージャー内の加圧ガスの周囲圧力を調整するように構成されている圧力制御装置を備える、請求項1〜9のいずれか一項に記載の装置。
【請求項12】
前記カプセルの内部と外部との差圧を検知するように構成されているセンサーを備える、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記カプセルは第1の熱膨張係数を有し、前記センサーは第2の熱膨張係数を有し、該第2の熱膨張係数は前記第1の熱膨張係数の35%以内である、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記センサーは前記カプセルと物理的に係合する、請求項12又は13に記載の装置。
【請求項15】
前記カプセルは蓋を含み、該蓋は、第1の厚さを有する第1の領域と、前記第1の厚さよりも薄い第2の厚さを有する第2の領域とを有するように構成されている、請求項12〜14のいずれか一項に記載の装置。
【請求項16】
前記センサーは、前記第2の厚さを有する前記第2の領域の少なくとも一部分に重なるように前記カプセルの前記蓋上に配置されている、請求項15に記載の装置。
【請求項17】
前記カプセルの内圧と前記周囲圧力との差圧に起因する前記カプセルの変形を測定するように構成されている変位センサーを備える、請求項11〜16のいずれか一項に記載の装置。
【請求項18】
スリーブが前記加熱素子の前記外表面の周囲に配置されている、請求項1〜17のいずれか一項に記載の装置。
【請求項19】
前記スリーブは断熱材料を含む、請求項18に記載の装置。
【請求項20】
スリーブは熱分解窒化ホウ素を含む、請求項19に記載の装置。
【請求項21】
装置であって、
1050bar以上の圧力をサポート可能な高強度エンクロージャーと、
前記高強度エンクロージャーに隣接して該高強度エンクロージャーから径方向内側に配置されている複数の放射状セグメントと、
前記放射状セグメントに隣接して該放射状セグメントから径方向内側に配置されているライナーと、
前記ライナーの内部に画定されているチャンバーと、
外表面、内表面、及び該内表面から径方向内側のキャビティを画定している、前記チャンバー内に配置されている加熱素子と、
300℃以上の高温及び700bar以上の高圧条件下で結晶を成長させるために反応物及び材料を保持するように構成されている、前記チャンバー内に配置されているカプセルと、
を備え、前記カプセルは、前記加熱素子の前記キャビティ内に配置されており、該カプセルの外表面と前記加熱素子の内表面との間に間隙があるように構成されている、装置。
【請求項22】
前記ライナーは、スチール又は合金を含む、請求項21に記載の装置。
【請求項23】
前記ライナーは、ニッケル−クロム系超合金を含む、請求項22に記載の装置。
【請求項24】
前記ライナーは、0.1mm〜10mmの厚さを有する、請求項21〜23のいずれか一項に記載の装置。
【請求項25】
前記放射状セグメントは、セラミック、タングステン、モリブデン、TZM合金、サーメット又はそれらの2つ以上の組合せから選択される材料を含む、請求項21〜24のいずれか一項に記載の装置。
【請求項26】
前記放射状セグメントは、アルミナ、窒化ケイ素、炭化ケイ素、ジルコニア、タングステン、モリブデン、コバルト焼結炭化タングステン又はそれらの2つ以上の組合せから選択される材料を含む、請求項21〜25のいずれか一項に記載の装置。
【請求項27】
前記放射状セグメントはウェッジ形状構造を有する、請求項21〜26のいずれか一項に記載の装置。
【請求項28】
前記カプセル又は前記高強度エンクロージャー内で検知された環境条件に応じて、(a)前記カプセル内の圧力、又は(b)前記高強度エンクロージャー内の加圧ガスの周囲圧力を調整するように構成されている圧力制御装置を備える、請求項21〜27のいずれか一項に記載の装置。
【請求項29】
前記カプセルの内部と外部との差圧を検知するように構成されているセンサーを備える、請求項28に記載の装置。
【請求項30】
前記カプセルは第1の熱膨張係数を有し、前記センサーは第2の熱膨張係数を有し、該第2の熱膨張係数は前記第1の熱膨張係数の35%以内である、請求項29に記載の装置。
【請求項31】
前記センサーは前記カプセルと物理的に係合する、請求項29又は30に記載の装置。
【請求項32】
前記カプセルは蓋を含み、該蓋は、第1の厚さを有する第1の領域と、前記第1の厚さよりも薄い第2の厚さを有する第2の領域とを有するように構成されている、請求項29〜31のいずれか一項に記載の装置。
【請求項33】
前記センサーは、前記第2の厚さを有する前記第2の領域の少なくとも一部分に重なるように前記カプセルの前記蓋上に配置されている、請求項32に記載の装置。
【請求項34】
前記カプセルの内圧と前記高強度エンクロージャー内の加圧ガスの周囲圧力との差圧に起因する前記カプセルの変形を測定するように構成されている変位センサーを備える、請求項21〜33のいずれか一項に記載の装置。
【請求項35】
スリーブが前記加熱素子の前記外表面の周囲に配置されている、請求項21〜34のいずれか一項に記載の装置。
【請求項36】
前記スリーブは断熱材料を含む、請求項35に記載の装置。
【請求項37】
スリーブは熱分解窒化ホウ素を含む、請求項36に記載の装置。
【請求項38】
前記カプセル内の動作条件を5kbar以上の圧力及び550℃以上の温度まで上げるように構成されている、請求項1〜37のいずれか一項に記載の装置。
【請求項39】
超臨界アンモニア中で成長する窒化ガリウム結晶を含む、請求項1〜38のいずれか一項に記載の装置。
【請求項40】
結晶を成長させる方法であって、結晶成長を促すほど十分な温度及び圧力条件下で、種結晶及び栄養素材料を反応させることを含み、請求項1〜39のいずれか一項に記載の装置内で行われる、結晶を成長させる方法。
【請求項41】
550℃以上の温度及び5kbar以上の圧力で前記種結晶及び前記栄養素を反応させることを含む、請求項40に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は包括的には、例えば結晶成長用途等に用いることができる、高温及び高圧で材料を処理するのに適した装置に関する。
【0002】
[連邦政府による資金提供]
本発明は、ARPA−EプログラムDE−AR000020の下請け契約の下で米国エネルギー省により受けた米国連邦政府支援により行われた。
【0003】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2010年7月28日に出願された、「Apparatus for Processing Materials at High Temperatures and Pressures」と題する米国仮特許出願第61/368,443号の利益を主張するものであり、この米国仮特許出願はその全体が、引用することにより本明細書の一部をなすものとする。
【背景技術】
【0004】
例えば窒化ガリウム(GaN)等の結晶の成長を、高温及び/又は高圧での反応及び処理により達成することができる。反応材料が一般的にカプセルの内部に配置され、カプセルはシールされ、溶媒とカプセル内で行われるプロセス又は反応によって発生し得るガスとに対して概ね化学的に不活性であるとともに不透過性である環境を有する。カプセルは高温に曝され、カプセル内の圧力はカプセル内の材料が超臨界流体を形成する点まで増大し、結晶成長が超臨界条件下で起こる。カプセル内の圧力は、いずれの箇所でも一平方インチ当たり1000ポンド(psi)〜50000psi(約70bar〜約3450bar)の範囲であり、温度は、摂氏約300度〜約1200度の範囲であり得る。幾つかの例では、商業的に実現可能な成長速度を達成するために、圧力は、約70000psi〜約100000psi(約4800bar〜約7000bar)の範囲にある必要があり、温度は摂氏500度〜約700度の範囲にある必要があり得る。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、高温及び高圧条件下で材料を処理する装置、及びそのような材料を製造する方法を提供する。一態様では、本発明は、例えばバルクGaN結晶のアモノサーマル成長等の高圧及び高温条件下で材料を処理するのに適した反応ユニット又は反応システムを提供する。本出願人は、スケールアップすることができるとともに、商業的に実現可能な成長速度を達成するのに必要とされ得る高圧及び高温に十分に耐え得る反応器構成を見出した。本ユニットは、商業規模/産業規模にスケールアップ可能でありながら、他の既知のシステムと比べて依然として比較的小型のままであるものとすることができる。さらに、本発明は、他の既知のシステムと比べてより高い温度及び圧力で動作することが可能でるものとすることができる。
【0006】
一態様では、本発明は、圧力容器と、圧力容器に隣接して圧力容器から径方向内側に配置されている放射状セグメントと、放射状セグメントに隣接して放射状セグメントから径方向内側に配置されているライナーと、圧力容器、放射状セグメント及びライナーによって画定されているチャンバーとを備える装置を提供する。加熱素子をチャンバー内に配置することができ、反応を行うためのカプセルを、カプセルとライナーとの間に加熱素子が配置されるようにチャンバー内に配置することができる。
【0007】
一態様では、本発明は、装置であって、
高強度エンクロージャーと、
前記高強度エンクロージャーに隣接して該高強度エンクロージャーから径方向内側に配置されている複数の高強度放射状セグメントと、
前記放射状セグメントに隣接して該放射状セグメントから径方向内側に配置されているライナーと、
前記ライナーの内部に画定されているチャンバーと、
前記チャンバー内に配置されている加熱素子と、
高温及び高圧条件下で結晶を成長させるために反応物及び材料を保持するように構成されている、前記チャンバー内に配置されているカプセルと、
を備え、前記ライナーと前記加熱素子の外表面との間に間隙がある、装置を提供する。
【0008】
別の態様では、本発明は、装置であって、
高強度エンクロージャーと、
前記高強度エンクロージャーに隣接して該高強度エンクロージャーから径方向内側に配置されている複数の高強度放射状セグメントと、
前記放射状セグメントに隣接して該放射状セグメントから径方向内側に配置されているライナーと、
前記ライナーの内部に画定されているチャンバーと、
外表面、内表面、及び該内表面から径方向内側のキャビティを画定している、前記チャンバー内に配置されている加熱素子と、
高温及び高圧条件下で結晶を成長させるために反応物及び材料を保持するように構成されている、前記チャンバー内に配置されているカプセルと、
を備え、前記カプセルは、前記加熱素子の前記キャビティ内に配置されており、該カプセルの外表面と前記加熱素子の内表面との間に間隙があるように構成されている、装置を提供する。
【0009】
一態様によれば、前記ライナーは、高温スチール又は高温合金を含む。
【0010】
一態様によれば、前記ライナーは、ニッケルクロム系超合金を含む。
【0011】
一態様によれば、前記ライナーは、約0.1mm〜10mmの厚さを有する。
【0012】
一態様によれば、前記放射状セグメントは、セラミック、耐熱金属、
サーメット又はそれらの2つ以上の組合せから選択される材料を含む。
【0013】
一態様によれば、前記放射状セグメントは、アルミナ、窒化ケイ素、炭化ケイ素、ジルコニア、タングステン、モリブデン、コバルト焼結炭化タングステン又はそれらの2つ以上の組合せから選択される材料を含む。
【0014】
一態様によれば、前記放射状セグメントはウェッジ形状構造を有する。
【0015】
一態様によれば、本装置は、前記カプセル又は前記高強度エンクロージャー内で検知された環境条件に応じて、(a)前記カプセル内の圧力、又は(b)前記高強度エンクロージャー内の加圧ガスの周囲圧力を調整するように構成されている圧力制御装置を備える。
【0016】
一態様によれば、センサーは、前記カプセルの内部と外部との差圧を検知するように構成されている。
【0017】
一態様によれば、前記カプセルは第1の熱膨張係数を有し、前記センサーは第2の熱膨張係数を有し、該第2の熱膨張係数は前記第1の熱膨張係数の35%、30%、25%、20%、15%、10%、5%又は1%以下の範囲内である。更に別の態様では、前記センサーは前記カプセルと物理的に係合する。
【0018】
一態様によれば、前記カプセルは蓋を含み、該蓋は、第1の厚さを有する第1の領域と、前記第1の厚さよりも薄い第2の厚さを有する第2の領域とを有するように構成されている。別の態様によれば、前記センサーは、前記第2の厚さを有する前記第2の領域の少なくとも一部分に重なるように前記カプセルの前記蓋上に配置されている。
【0019】
一態様によれば、本装置は、前記カプセルの内圧と前記周囲圧力との差圧に起因する前記カプセルの変形を測定するように構成されている変位センサーを備える。
【0020】
一態様によれば、スリーブが前記ヒーターの前記外表面の周囲に配置されている。前記スリーブは断熱材料を含んでもよい。他の態様では、前記スリーブは熱分解窒化ホウ素を含んでもよい。
【0021】
一態様によれば、本装置は、超臨界アンモニア中で成長する窒化ガリウム結晶を含む。
【0022】
更に別の態様では、本装置は、結晶を成長させる方法であって、結晶成長を促すほど十分な温度及び圧力条件下で、種結晶及び栄養素材料を反応させることを含む、方法において用いることができる。本方法は、約550℃以上の温度及び約5kbar以上の圧力で前記種結晶及び前記栄養素を反応させることを含んでもよい。
【0023】
本発明のこれらの特徴及び更なる特徴は、以下の説明及び添付の図面を参照すると更に理解される。これらの説明及び図面において、本発明の特定の実施形態が、本発明の原理を用いることができるやり方のうちの幾つかを示すものとして詳細に開示されているが、本発明は範囲がそれに対応して限定されないことが理解される。そうではなく、本発明は、添付の特許請求の範囲の趣旨及び範囲内にある全ての変更、改変及び均等物を含む。
【0024】
一実施形態に関して説明及び/又は例示される特徴は、1つ又は複数の他の実施形態及び/又はそれらの他の実施形態の特徴と組み合わせて又は他の実施形態の特徴の代わりに、同じやり方又は同様のやり方で用いることができる。
【0025】
本明細書において用いられる場合の「備える(含む)(comprises/comprising)」という語は、述べられている特徴、完全体(integer)、ステップ又は構成部材の存在を特定するのに用いられているが、1つ又は複数の他の特徴、完全体、ステップ、構成部材又はそれらの群の存在又は追加を排除しないことを強調しておく。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の一実施形態による装置の平面断面図である。
【
図2】線2−2に沿った
図1の装置の上面断面図である。
【
図3】
図1の反応器の圧力を制御する制御システムを示す、この反応器の概略図である。
【
図4】本発明の一実施形態によるカプセルの部分平面断面図である。
【
図5】本発明の一実施形態による装置の上面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図面は一定の縮尺率になく、本発明の態様を示すために提供されていることが理解されるであろう。本発明の目的及び利点は本発明の動作とともに、以下の例示と併せて以下の詳細な説明を参照することによってより良く理解することができる。
【0028】
図1〜
図3を参照すると、本発明の一実施形態による装置100(本明細書では反応器、反応器ユニット、反応器システム等と呼ぶ場合がある)が示されている。反応器システム100は、圧力容器110と、圧力容器110に隣接して圧力容器110から径方向内側に配置されている複数の高強度放射状セグメント120と、放射状セグメント120に隣接して放射状セグメント120から径方向内側に配置されているライナー130とを備える。これらの圧力容器、放射状セグメント及びライナーは、反応器システムの内部にチャンバー又はキャビティ140を画定している。圧力容器、放射状セグメント及びライナーによって形成されている構造又は構成は、本明細書では格納構造と呼ぶ場合があり、反応器ハウジングを概ね画定している。チャンバー140はカプセル160を受け入れるようになっており、カプセル160は例えば、例えば窒化ガリウム(GaN)等の結晶材料を製造するような反応を行うのに用いることができる。
【0029】
さらに、反応器100はチャンバー140内に配置されている加熱素子150を備える。概して、加熱素子150は、加熱素子150の外表面152とライナー130との間に間隙又は隙間142があるようにチャンバー140内に配置されている。加熱素子150は内表面154を含み、内表面154の径方向内側に内部部分又はキャビティを画定している。カプセル160は、加熱素子の内部キャビティ内に概ね配置されている。本発明の態様によれば、カプセル160は、カプセルの外表面162と加熱素子150の内表面154との間に間隙又は隙間144があるようなサイズ及び形状になっているものとすることができる。カプセルと加熱素子との間の隙間144は、カプセル内の圧力上昇及び温度上昇に起因してカプセルの膨張が可能なほど十分に大きいが反応器内の対流伝熱を妨げるほど十分に小さいものであるように設けることができる。
【0030】
シールキャップ165を、反応器の各端において本装置に固定して、本システムをシールすることができる。例えば、
図1に示されているように、圧力ライナー130の端と放射状ウェッジ120の端とにエンドキャップ165を配置して、カプセルの周囲に閉鎖/シールされた環境を提供するとともにチャンバー140内の内容物をシールする。本システムは、本システムの端に固定されるエンドプレート175を更に備えることができる。
【0031】
反応器システム100は、カプセル160の内部で発生する熱及び圧力が制御されて、カプセル160の内部に所望の温度分布を確保するとともに、カプセル160の内部とカプセル160の外部との間に比較的均一な圧力を確保することを可能にする。特定の実施形態では、カプセル160は、例えば、窒化ガリウム又は石英の結晶成長についてそれぞれのアンモニア又は水の状態方程式により、熱反応又は化学反応によって自己加圧する。例えば、加熱素子150は、カプセル160の内部の温度を上昇させ、それによって、カプセル160内に配置されている物質を膨張させ、したがってカプセル160内の圧力を上昇させるように機能する。
【0032】
図3に示されているように、反応器システムは、カプセル160内のこの内圧を相殺するためにガス圧力調整器170(例えばコンプレッサー)を備える。ガス圧力調整器170は、アルゴン又は別の不活性ガス等の高圧ガスを反応器システム100及びチャンバー140(間隙又は隙間144を含む)に圧送して、カプセル160の周囲の閉鎖/シールされた環境を加圧する。装置100は、カプセル160の内部と外部との差圧を検知するように構成されている1つ又は複数のセンサー180を備える。本システムに用いられるセンサーのタイプは、特定の使用を目的とした用途の所望に応じて選択することができる。例えば、圧力センサーを用いて外圧及び内圧を検知することができ、その場合、外圧及び内圧を用いて差圧を算出する。別の実施形態では、変位センサーを単独で用いてカプセル160の変形を算出することができ、カプセルの変形を用いて差圧を算出することができる。別の実施形態では、圧力センサーを用いてカプセルの内圧を検知することができ、その場合、カプセルの内圧は、外圧センサーが測定した外圧又は周囲圧力と比較される。
【0033】
装置100は、1つ又は複数のセンサーが検知した差圧に応じて、格納システム内のカプセル160と閉鎖/シールされた環境との差圧を調整する(すなわち、減らすか、最小限に抑えるか又はなくす)ように構成されている圧力制御装置190を備える。通常、本システムの動作中、カプセル内の圧力は、約10000psi〜約150000psi(約700bar〜約10500bar)の範囲であり、温度は、摂氏約300度〜摂氏約1200度の範囲であり得る。一実施形態では、本装置は、カプセル内の動作条件を摂氏約550度の温度及び約5000bar(5kbar)の圧力まで上げるように構成されている。本技法の他の実施形態では、圧力は、150000psi(約10500barすなわち10.5kbar)超の範囲である場合があり、温度は、摂氏約1500度超の範囲である。本明細書及び特許請求の範囲における他の場合と同様にこの場合も、数値を組み合わせて、更なる範囲及び/又は開示されていない範囲を形成することができる。圧力制御装置190は、カプセル又は圧力容器内の検知された環境条件に応じて、カプセル160内の内圧と圧力容器内の加圧ガスの外圧又は周囲圧力とを平衡させるように構成されている。上述したように、これらの検知された環境条件は、カプセル160の内圧、外圧、変形、カプセルの内部及び/又は外部の温度、並びにそれらの種々の組合せを含み得る。
【0034】
図示の技法の一実施形態では、センサー180は、カプセル160の外部と内部との差圧によって生じる、カプセル160の膨張又は収縮に起因するカプセル160の変位又は変形を測定するように構成されている、静電容量型変位変換器(capacitance displacement transducer)等の変位測定装置を含む。別の実施形態では、センサー180は、カプセル160の外部と内部との差圧によるものである、カプセル160の膨張又は収縮に起因して、カプセル160の変位又は変形を測定するように構成されている歪ゲージを含むことができる。カプセル160の測定された変位に応じて、圧力制御装置190が、その変形をカプセル160の内圧と相関させ、ガス圧力調整器170により、カプセル160内の内圧及び/又は閉鎖/シールされた環境内の周囲圧力を調整して、内圧と周囲圧力とを平衡させ、それによって、差圧を実質的になくし、カプセル160の更なる変位を防ぐ。多様なセンサーが本技法の範囲内にあることが理解されるであろう。圧力制御装置190は、差圧を監視するとともに、閉鎖/シールされた環境内の周囲圧力がカプセル160の内部の圧力に実質的に等しくなるようにガス圧力増圧器170を制御するソフトウェア、ハードウェア、又は適した装置を含むことができる。このようにして、カプセル160は、比較的高い内圧に耐え、それによって、超臨界流体による材料の処理を促すことができる。
【0035】
センサーを、カプセルの外表面上に配置してカプセルの変位又は変形を検出及び測定するように構成することができる。一実施形態では、カプセル及びセンサーは、同様の熱膨張係数を有するように構成され、そのため、選択された高温及び高圧条件下で本装置がカプセル内で所望の反応を行うように動作する際に、同様の割合で膨張又は収縮する。一実施形態では、カプセルは第1の熱膨張係数を有し、センサーは第2の熱膨張係数を有し、第2の熱膨張係数は第1の熱膨張係数の約35%以内である。別の実施形態では、第2の熱膨張係数は第1の熱膨張係数の約30%以内である。更に別の実施形態では、第2の熱膨張係数は第1の熱膨張係数の約25%以内である。他の実施形態では、第2の熱膨張係数は第1の熱膨張係数の20%以内、15%以内、10%以内、5%以内又は1%以内又はそれよりも低い%以内である。一実施形態では、第2の熱膨張係数は第1の熱膨張係数の約0.1%〜約35%である。別の実施形態では、第2の熱膨張係数は第1の熱膨張係数の約1%〜約25%である。更に別の実施形態では、第2の熱膨張係数は第1の熱膨張係数の約5%〜約15%である。本明細書及び特許請求の範囲における他の場合と同様にこの場合も、数値を組み合わせて、更なる範囲及び/又は開示されていない範囲を形成することができる。
【0036】
センサーは、カプセル内の圧力を検知するのに必要な電子機器及び構成部材に取り付けるための高温コネクターも備えることができる。この高温コネクターは、センサーを電子部品から分離することを可能にし、カプセルを開閉することを可能にし、かつ、センサーに損傷を与えることなく部品を互いに分離することを可能にするように構成することができる。
【0037】
カプセルの蓋は任意選択的に、カプセルの内部の圧力を評価することを可能にするように構成することができる。
図4に示されている一実施形態では、カプセル160’は、外表面162’と、内表面164’と、第1の厚さt
1を有する第1の領域167及び第1の厚さよりも薄い第2の厚さt
2の第2の領域169を有するように構成されている蓋166とを含む。センサーは、カプセルの表面上に配置される場合、低減した、すなわちより薄い厚さを有する第2の領域に少なくとも部分的に重なるように配置することができる。
図4を参照すると、例えば、センサー180’を、低減した厚さを有する領域
169に重なるように蓋166上に配置することができる。
【0038】
代替的な実施形態では、差圧は、カプセル160内で温度及び圧力を同時に連係して制御することによって実質的になくすか又は最小限に抑えることができる。本システムにおける温度の制御に関して、本装置は、カプセル160の温度分布を監視する、カプセル160に近接して任意選択的にカプセル160と直接接触して位置する複数の温度センサーを備えることができる。加えて、温度センサーをカプセル160の内部及び外部の双方に位置決めして、カプセル160の内部条件及び外部/周囲条件(例えば温度、圧力等)の制御を促すことができる。適した温度センサーの非限定的な例として、熱電対、サーミスター、光高温計に接続される光ファイバー又はそれらの任意の組合せを挙げることができる。温度センサーは、カプセル160の温度分布を監視及び制御する温度制御装置に接続することができる。特定の実施形態では、温度制御装置及び圧力制御装置190は協働して、カプセル160の内部と外部との差圧が実質的に最小限に抑えられることを確実にしながらカプセル160内(及び任意選択的にカプセル160の周囲)に所望の温度及び圧力を提供する。さらに、温度センサーを、カプセル160の外部の周囲の、高温ゾーン等の複数の異なるゾーンに配置することができ、そのため、温度制御装置がこれらの異なるゾーンにわたる温度変化を監視及び調整することができる。例えば、温度制御装置は、カプセル160の周囲の異なるゾーン内で検知された温度に応じて、加熱素子150の種々の部材又は部分を個別制御し、それによって、カプセル160内の平衡した又は所望の温度プロファイルを促すことができる。本技法の一実施形態では、中央コントローラー、コンピューター、制御回路又は制御システムは圧力制御装置190及び温度制御装置を接続し、それによって、カプセル160に関連した温度及び圧力を同時制御又は中央制御することができる。
【0039】
更に別の実施形態では、カプセル160の内部と外部との間の圧力の平衡を自己調節機構によって達成することができる。そのような実施形態では、カプセルの内部の圧力もカプセル本体の変位も測定することなく圧力を調節することができる。状態方程式に基づいた、スペース140(間隙又はエリア144を含む)内の制御された圧力及び温度勾配が、近似の圧力平衡をもたらし、厳密な平衡が自己調節機構によって達成される。例えば、カプセル160は、ガスがカプセルに出入りすることを可能にする1つ又は複数の弁を有して構成することができる。カプセルの内圧が外圧よりも高くなると、弁が開き、少量の超臨界流体がチャンバー140に流出することを可能にする。内圧がより低くなると、弁はチャンバー内の加圧ガス(例えばAr又はN
2)がカプセルに入ることを可能にする。
【0040】
処理条件下で、電力を加熱素子150に誘導することによってカプセル160の温度が所定値に上昇すると、カプセル160の内部の圧力が昇圧に達する。カプセル160内の材料の状態方程式、すなわち、温度及びフィルファクターの関数としての圧力が正確に分かっている場合、閉鎖/シールされた環境内のガス圧力がカプセル160の内部の圧力におよそ等しくなるように高強度エンクロージャー内の圧力を温度の上昇と連係して増大させることができる。この条件が維持されない場合、カプセル160は、外圧が内圧を上回るか又は逆に内圧が外圧を上回るかに応じて圧壊又は破裂する。この場合も同様に、圧力制御装置190により、特定のプロセス中にカプセル160の内部の圧力及び外部の圧力が実質的に平衡し、それによって、カプセル160の不所望な変形を防ぐとともに特定のプロセスの場合に更に広い圧力範囲を促すことが確実になる。
【0041】
高圧及び高温での超臨界流体処理の幾つかのタイプの場合、カプセル160の2つのチャンバー間に温度勾配が望まれる。例えば、温度勾配が場合によっては望ましい用途には結晶成長がある。結晶成長の特定の用途では、カプセル160が加熱されるにつれて溶媒の蒸気圧が上昇する。カプセル160内に存在する溶媒の所与の温度及び量における、溶媒の蒸気圧は、溶媒の状態図から求めることができる。十分な高温及び高圧で、溶媒は超臨界流体になる。上記で説明したように、カプセル160の内圧が上昇するにつれて、カプセル160の壁が外側に変形する可能性がある。
【0042】
過圧に起因する破裂からカプセル160を保護するために、圧力制御装置190が、閉鎖/シールされた環境内の圧力を調整するように機能する。例えば、カプセル160の変形を、圧力制御装置190に信号を供給するセンサー180によって測定することができる。幾つかの実施形態では、センサーをカプセル160の内部及び外部に設けて内圧及び外圧を測定することができ、その場合、内圧及び外圧が内部と外部との差圧を特定するのに用いられる。次に、圧力制御装置190が、カプセル160へのガスの流れを調節するように信号をガス圧力増圧器170に供給し、それによって破裂からカプセル160を保護する。換言すれば、内圧が外圧を上回り始めることでカプセル160を外側に変形させる場合、センサー180のうちの1つ又は複数が、圧力制御装置190による圧力調整を誘発させる内外の差圧(又は物理的な変位/変形)を示す。例えば、1つ又は複数のセンサー180は、ガス圧力増圧器170によって外部のガス圧力を上昇させて内外の差圧を最小限に抑えるか又はなくすようにさせる信号を圧力制御装置190に供給することができる。逆に、外圧が内圧を上回り始めることでカプセル160が内側に変形する場合、1つ又は複数のセンサー180は、外部のガス圧力を低下させて内外の差圧を最小限に抑えるか又はなくすようにさせる信号を圧力制御装置190に送信する。例えば、本システムはガス圧力増圧器170の圧送を低減させるか又は弁(図示せず)を開いて一部の圧力を解放することができる。
【0043】
システム100は、超臨界点における又は超臨界点を超える物質の処理を改善するための多様な特徴を含む。例えば、システム100は、より均一に温度及び圧力を制御し、それによって、カプセル160の内部での材料処理の条件及びカプセル160の壁に対する応力を低減する条件を大幅に改善するように構成されている。さらに、システム100は、カプセル160の種々の領域全体にわたる熱及び流れ分布を改善し、それによって、カプセル160の内部での材料処理の条件を更に改善するように構成されている。本出願人は、圧力容器に隣接して放射状ウェッジセグメントを使用することと併せて、カプセルの周囲(ライナーが画定しているチャンバーによって提供される)の圧力を制御又は調整するようになっている構成を組み合わせることにより、材料の高温及び高圧処理に適しているとともに、例えば5000barを超える非常な高圧及び550℃を超える高温、更には約100000psi(約7000bar)又はそれよりも高い高圧に特に適している反応器が提供されることを見出した。開示されている構成は産業サイズ規模で提供することができる。しかしながら、本出願人は驚くべきことに、本開示による構成は、商業規模/産業規模にスケールアップ可能でありながらも、(i)カプセルの外部の圧力だけを調節するか、又は(ii)放射状ウェッジセグメントだけを用いることによってカプセルの膨張を制御するシステムのような他のシステムと比べて依然として比較的小型のままであるものとすることができることを見出した。カプセルの周囲の圧力だけを調節するように構成されているシステムは、特に、極めて高い圧力(例えば70000psi(約4800bar)よりも大きい)で動作する場合に、非常に大型で厚みのある圧力容器を必要とする可能性がある。カプセルの膨張を制御するのに放射状ウェッジセグメントだけを用いるシステムは、非常に厳格な公差を要し、隣接する構成部材が、構造の全長にわたって本質的に互いに面と面とが接触した状態になければならず、この状態は、極めて高い圧力で商業的に実現可能な結晶成長を行うのに必要とされるサイズにスケールアップされる際に達成するには困難である。しかしながら、本開示による反応器は、工業要件を満たすようにスケールアップ可能であるが(極めて高い圧力で動作する場合であっても)依然として比較的小型のままであるものとすることができる。
【0044】
本明細書において高強度エンクロージャー/高強度装置と呼ぶ場合がある圧力容器110は、閉鎖/シールされた環境内の高圧(例えば、15000psi〜約150000psi(約1050bar〜約10500bar))に支えるために、SA723又は別の高強度スチール等の高強度材料から構成することができる。
【0045】
装置100は、動作条件下でほとんど変形を被らない又は全く変形を被らない硬質材料を含む放射状セグメント120を更に備える。特定のプロセス中、高強度圧力容器110及び放射状セグメント120は協働して、カプセル160の内部に形成される圧力に耐えるとともにこの圧力を相殺する。セグメント120は、アルミナ、窒化ケイ素、炭化ケイ素、ジルコニア等のセラミックを含み得る。セグメント120は代替的に、タングステン、モリブデン若しくはTZM合金等の耐熱金属、又は、コバルト焼結炭化タングステン等のサーメットを含んでいてもよい。放射状セグメント120の材料及びウェッジ形状の幾何学形状は、チャンバー140から圧力容器110に伝わる圧力を低下させるように構成されている。換言すれば、ウェッジ形状の放射状セグメント120は、カプセル160によって加えられる負荷をセグメント120の内径の面積にわたり分散させ、さらに圧力容器110の内径のより大きな面積にわたり分散させ、そのため、圧力容器110が放射状セグメント120と圧力容器110との間の境界面において耐える圧力は比較的小さい。これらの理由から、放射状セグメント120が圧力容器110と協働して、カプセル160の内部の圧力を相殺し、それによってカプセル160の内部の力と外部の力とを平衡させる。結果として、本装置は、比較的高い内圧、したがって、広範の超臨界流体処理条件に耐えることが可能である。
【0046】
本装置は、放射状セグメント120に隣接して配置されているライナー130を更に備える。開示されている装置は、カプセルと放射状セグメントとの間に間隙を含んでいるため、ライナーが本システム内にシールを提供するのに用いられる。ライナーは、例えば、高温シール又は高温合金等の高温材料であるものとすることができる。ライナーに適した材料の非限定的な例は、ニッケルクロム系合金である。適したニッケルクロム系合金の非限定的な例として、例えば、Inconel718等のInconel(商標)金属が挙げられる。ライナーの厚さは特に限定されず、特定用途又は使用目的の所望に応じて選択することができる。一実施形態では、ライナーは、約0.1mm〜約10mm又は約3mm〜約6.5mm(例えば約0.125インチ〜約0.25インチ)の厚さを有し得る。
【0047】
装置100は、カプセル160の周囲に配置されている加熱素子150を更に備え、そのため、カプセル160の温度が均一に上昇又は低下することができる。この加熱素子は特に限定されず、特定の必要性又は使用目的を満たすように選択することができる。特定の実施形態では、加熱素子150は、少なくとも1つの抵抗加熱型のチューブ、フォイル、リボン、バー、ワイヤー又はそれらの組合せを含む。任意選択的に、装置100は、冷却系、例えば、水、水/不凍液、オイル等を含む再循環系を含むことができる。冷却系は、高強度エンクロージャー110をその強度及び耐クリープ性が高いままである温度に維持するのに役立つ。冷却は代替的に、高強度エンクロージャーの外表面にわたる受動的な又は強制された空気対流によって行ってもよい。放射状セグメント120は、反応器システムにかかる圧力負荷を低減又は拡散することに加え、ヒーター150及びカプセル160の近くの高温から圧力容器110を断熱することが理解されるであろう。これにより、圧力容器110がより低温で動作するとともにその材料特性を維持することが可能になる。
【0048】
カプセル160は、圧力がカプセル160内で上昇するにつれてカプセル160が膨張することを可能にする変形可能な材料から形成することができる。これにより、カプセル160が破裂することを防ぐ。一実施形態では、変形可能な材料は、銅、銅系合金、金、銀、パラジウム、白金、イリジウム、ルテニウム、ロジウム、オスミウム、チタン、バナジウム、クロム、鉄、鉄系合金、ニッケル、ニッケル系合金、ジルコニウム、ニオビウム、モリブデン、タンタル、タングステン、レニウム、それらの組合せ等のうちの少なくとも1つを含み得る。別の実施形態では、カプセル160は、銅、銅系合金、金、銀、パラジウム、白金、イリジウム、ルテニウム、ロジウム、オスミウム、鉄、鉄系合金、ニッケル、ニッケル系合金、モリブデン及びそれらの組合せのうちの少なくとも1つのような冷間溶接可能な材料から形成されるが、それらに限定されない。カプセル160を形成するのに用いることができる銅系合金として、ステンレス鋼が挙げられるがそれに限定されない。カプセルを形成するのに用いることができるニッケル系合金として、インコネル、ハステロイ等が挙げられるがそれらに限定されない。
【0049】
一実施形態では、カプセルは、高圧装置内に挿入される前に閉鎖され、シールされ、かつ実質的に空気がない状態にされる。図示の実施形態では、カプセルは可動プランジャーを含んでいないが、その理由は可動プランジャーが化学的に不活性な気密シールを維持することが困難であるためである。代わりに、カプセルは、相対的に固定された外側エンクロージャーを有しており、そのため、特定の超臨界流体プロセス中に膨張及び収縮(例えば変形)によって幾何学形状が変わる。一実施形態では、カプセルは、閉鎖端と、閉鎖端に隣接して閉鎖端から延びている少なくとも1つの壁と、閉鎖端に対向してこの少なくとも1つの壁に隣接する気密シール端とを含む。シール端は、少なくとも1つのチャンバーに材料を導入し、チャンバーを排気し、かつ、実質的に空気に曝すことなく少なくとも1つのチャンバーに溶媒を導入した後で形成される。次いで、更なる外側シールを、冷間溶接、アーク溶接等によってシール端に設けることができる。カプセル内のチャンバーは、シールされると実質的に空気がない状態となり、チャンバー内に収容されている材料は、汚染の危険性が低減された状態で処理することができる。
【0050】
図1の高強度エンクロージャー110の、温度及び圧力が調節された環境の内部において、カプセル160が材料及び溶媒等の物質を収容しており、それらの物質のうちの少なくとも1つは、カプセル160内の高温及び高圧で超臨界になる。特定の場合では、開示されている装置及び方法の実施形態は、過熱状態にある液体、すなわち、必ずしも超臨界ではないが雰囲気圧でその沸点よりも高い温度にある流体中で結晶を成長させる又は材料を処理するのに有用であるものとすることができる。「超臨界」という用語は、本発明の実施形態の使用範囲を定める目的から、「過熱」という用語と互換的に用いることができることを理解されたい。カプセル160を用いて、高品質の窒化ガリウム単結晶又は石英結晶を含む多様な材料を処理することができる。
【0051】
特定の実施形態では、カプセル160は、第1のチャンバー(例えば栄養素チャンバー)及び第2のチャンバー(例えば、種/結晶成長チャンバー)等の複数の別々のチャンバーにカプセル160を分割する、バッフルプレート等の少なくとも1つの分割構造体を備える。栄養素チャンバーは、超臨界温度で少なくとも1つの材料を処理するためにこの少なくとも1つの材料を収容している。種/結晶成長チャンバーすなわち第2のチャンバーは、特定の超臨界流体プロセス、例えば、結晶化学及び成長化学、また、処理される材料の可溶性が温度によって増大するか又は低減するかに応じて、カプセル160の上部領域又は底部領域に位置付けることができる。バッフルプレートは、複数の別々のチャンバー間、例えば第1のチャンバー及び第2のチャンバー間の流体の流れと、伝熱と、質量伝達とを促す複数の通路を有することができる。最初に、結晶若しくは多結晶粒子又は栄養素粒子等の1つ又は複数の栄養素材料が第1のチャンバー内に配置され、結晶種等の1つ又は複数の種材料が第2のチャンバー内に配置される。例示的な結晶成長プロセスでは、カプセル160内の内部環境が超臨界になるにつれて、栄養素粒子から溶解した溶質が結晶種に循環し、それによって、第2のチャンバー内の種の結晶成長を促す。バッフルプレートは、栄養素材料及び/又は種材料をカプセル160の特定の領域に閉じ込めるか又は分離するように構成することができ、その一方で、溶解した溶質とともに超臨界流体がバッフルプレート内の通路を自由に通ることによってカプセル160全体にわたって混和することを可能にする。
【0052】
加熱素子は、特定目的又は使用目的の所望に応じて選択及び構成することができる。
図1〜
図5には示されていないが、加熱素子150の外表面152は、1つ又は複数の適した加熱素子を収容することができる。一実施形態では、適した加熱素子として、電気加熱素子、半導体系加熱素子又はそれらの組合せが挙げられる。一実施形態(図示せず)では、所望パターンの1つ又は複数の電動式ヒーター線が、加熱素子150の外表面上に形成されている1つ又は複数の溝内に配置される。一実施形態では、加熱素子の主要部分は、例えば、円筒形状の窒化ホウ素(HBRグレード)製チューブである。HBR窒化ホウ素は、径方向に熱伝導する一方で絶縁体である。一実施形態では、HBR窒化ホウ素製支持チューブに形成されている1つ又は複数の溝は、加工プロセスにより形成される。しかしながら、本発明は加工プロセスだけに限定されないことに留意されたい。代わりに、本発明のHBR窒化ホウ素のチューブに1つ又は複数の溝を形成する任意の適したプロセスを用いることができる。上記を所与とすると、1つ又は複数の電動式ヒーター線が、任意の所望のパターンで加熱素子150の外表面152上に蒸着され、配置され、及び/又は位置付けられる。一実施形態では、擬似パターンを用いることができるが、本発明はそれに限定されないことを理解されたい。むしろ、任意のパターンを、そのようなパターンが、加熱素子150に存在するキャビティ内に配置されているカプセル160の上部と底部との間に所望の温度勾配を得ることを可能にする限り、用いることができる。
【0053】
一実施形態では、加熱素子の外表面は、断熱材料で覆うことができる。
図5は、装置100’の一実施形態を示す。装置100’は装置100と同様であり、ヒーター150’を備える。ヒーター150’は、様々な局面でヒーター150と同様であるが、その外表面152の周囲に配置されるか又は外表面152を覆う断熱スリーブ156を備えるものとして示されている。一実施形態では、加熱素子150’の外表面152は熱分解窒化ホウ素製スリーブ156で覆われる。熱分解窒化ホウ素製スリーブ等の断熱材料は、1つ又は複数の加熱線パターンを設けた後で外表面の周囲に配置することができる。スリーブは、存在する場合、効果的な断熱体及び熱障壁として作用する。別の実施形態では、熱分解窒化ホウ素製スリーブはまた、そのようなHBR窒化ホウ素製支持チューブ内の1つ又は複数の溝に対する1つ又は複数の加熱線の位置を維持するように作用する。
【0054】
別の実施形態では、1つ又は複数の電動式ヒーター線の代わりに、加熱素子150の外表面152上に任意の適した技法(例えば化学蒸着法(CVD))により蒸着される任意の適したパターンの熱分解グラファイトを用いることができる。種々の適したCVDプロセスが当該技術分野において既知であるため、簡潔のために本明細書での詳細な説明は省く。代替的に、熱分解グラファイトは、適したCVDプロセスにより加熱素子150の外表面152全体にわたって蒸着することができる。CVD蒸着が完了した後、適したパターンが、例えばサンドブラストにより、結果として得られる熱分解グラファイト層に形成され得る。次いで、この実施形態では、残存パターンの熱分解グラファイトが「加熱線」となる。更に、この実施形態では、加熱素子150の外表面152は、この実施形態では「加熱線」を形成する1つ又は複数のパターンの熱分解グラファイトが完了した後、熱分解窒化ホウ素製スリーブ(図示せず)で覆われる。この実施形態では、加熱素子の主要部分は、例えば円筒形状の窒化ホウ素(HBRグレード)製チューブである。
【0055】
本発明を種々の例示的な実施形態を参照しながら説明してきたが、当業者は改変を想起することができ、本出願は、本発明の趣旨内に含まれる改変及び発明を包含することを意図されることが理解されるであろう。加えて、本発明の特定の特徴は、幾つかの図示の実施形態のうちの1つのみ又は複数に関して上述してきたが、そのような特徴は、任意の所与の用途又は特定の用途に所望されるとともに有利であり得るように、他の実施形態の1つ又は複数の他の特徴と組み合わせることができる。