特許第5887360号(P5887360)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5887360
(24)【登録日】2016年2月19日
(45)【発行日】2016年3月16日
(54)【発明の名称】アルジトールアセタールの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 493/04 20060101AFI20160303BHJP
【FI】
   C07D493/04 106B
【請求項の数】7
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-548934(P2013-548934)
(86)(22)【出願日】2011年2月28日
(65)【公表番号】特表2014-510033(P2014-510033A)
(43)【公表日】2014年4月24日
(86)【国際出願番号】IN2011000121
(87)【国際公開番号】WO2012095856
(87)【国際公開日】20120719
【審査請求日】2014年2月17日
(31)【優先権主張番号】79/MUM/2011
(32)【優先日】2011年1月10日
(33)【優先権主張国】IN
(73)【特許権者】
【識別番号】511269587
【氏名又は名称】リライアンス、インダストリーズ、リミテッド
【氏名又は名称原語表記】RELIANCE INDUSTRIES LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】特許業務法人あーく特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アドゥーリ・パバンクマール
(72)【発明者】
【氏名】ウッパラ・パラス・ヴェーラ
(72)【発明者】
【氏名】サクハルカール・マンジェッシュ
(72)【発明者】
【氏名】ラトナパルキー・ウダイ
【審査官】 黒川 美陶
(56)【参考文献】
【文献】 韓国公開特許第2003−0041038(KR,A)
【文献】 化学便覧基礎編,第5版,I-781〜I-782頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1,3:2,4−ビス(4−メチルベンジリデン)ソルビトール(MDBS)及び1,3:2,4−ビス(3,4−ジメチルベンジリデン)ソルビトール(DMDBS)からなる群から選択されるアセタール誘導体の製造方法であって、
a)PTSA(パラトルエンスルホン酸)及びシュウ酸からなる群から選択される水素供与体、及び、塩化ナトリウム及び塩化亜鉛からなる群から選択される対イオン供給化合物を等モル量で混合し、得られた混合物を、溶媒に溶解させる処理及び加熱処理からなる群から選択された処理形態によって処理することにより生成したイオン性化合物を含む金属塩系イオン性流体を製造するステップと、
b)連続撹拌下に、4−メチルベンズアルデヒド及び3,4−ジメチルベンズアルデヒドからなる群から選択されるアルデヒド及びソルビトールをモル比2:1で上記イオン性流体に加え反応混合物とすることにより、脱水縮合反応を行うステップと、
c)得られた反応混合物を撹拌して、内容物を懸濁状態に保つステップと、
d)上記反応混合物の撹拌を停止して、上記反応混合物中に生成した塊を沈降させるステップと、
e)上記反応混合物を濾過することにより上記塊を単離及び精製し、イオン性流体、未反応の反応物、及び固体の上記塊を含む母液を得るステップと、
f)上記固体塊を洗浄及び乾燥して、遊離酸残留物を含まないアセタール誘導体を得るステップとを含む方法。
【請求項2】
工程a)で得られた上記イオン性流体が、工程b)における上記脱水縮合反応の触媒として働く、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程a)で得られた上記イオン性流体が、工程b)における上記脱水縮合反応の反応媒体として働く、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
上記溶媒が、メタノール、エタノール、プロパン−1−オール、プロパン−2−オール、1−ブタノール、イソブタノール、2−ブタノール、tert−ブタノール、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン、酢酸メチル、酢酸エチル、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、メチルエチルケトン、炭酸ジメチル、ジエチルケトン、アセトン、tert−ブチルメチルエーテル、ジエチレングリコール、N,N−ジメチルアセトアミド、ジエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコール、ヘキサメチルホスホルアミド、へキサメチルホスホラストリアミド、イソアミルアルコール、2−メトキシエタノール、酢酸2−メトキシエチル、1−メチル−2−ピロリジノン、ニトロメタン、及び水からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
上記ソルビトールが、40%〜99%の範囲内の濃度を有する水溶液である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
上記方法ステップ(c)において、攪拌を5〜8時間の範囲内の期間にわたって行う、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
上記方法ステップ(b)において、上記母液を脱水縮合に少なくとも35回再利用する、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イオン性流体中でのアルジトールアセタールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
上記アセタール化合物は、アルジトールとベンズアルデヒドとの反応生成物である。1,3:2,4−ビス(4−メチルベンジリデン)ソルビトール(MDBS)誘導体化合物や1,3:2,4−ビス(3,4−ジメチルベンジリデン)ソルビトール(DMDBS)誘導体化合物などのアルジトールアセタールは、ポリプロピレンの添加剤として有用な公知の化合物である。置換アルデヒド及び無置換アルデヒドのアセタールは、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、デオドラント、及び制汗剤組成物の、核形成剤、ゲル化剤、加工助剤、強度改良剤として、また炭化水素燃料及び塗料として有用であることも知られている。
【0003】
アセタール−アルジトールは、典型的には、芳香族アルデヒドをソルビトールなどの6個の炭素原子を含むアルジトールと縮合反応することにより製造される。MDBS構造やDMDBS構造は、そのような反応を2モルのアルデヒド及び1モルのアルジトールを用いて行うことにより得られる。
【0004】
アセタール−アルジトールを製造する数種の方法が、米国特許第4,267,110号、米国特許第3,721,682号、米国特許第4,429,140号、米国特許第4,562,265号、米国特許第4,902,807号、米国特許第5,023,354号、米国特許第5,731,474号、及び米国特許第6,500,964号に報告されている。
【0005】
従来報告されている方法には欠点がいくつかある。今までの公知の方法の多くでは、反応を高温で行わなければならない種々の有機溶媒が用いられているので、コストが高くなっている。さらに溶媒の多くが非常に高価であることも、この方法を非経済的なものとしている。
【0006】
酸性触媒を用いて上記方法の収率や汎用性(様々な置換アルデヒドを利用できること)を改善することにより、上記の欠点を克服する試みが既に行われている。
【0007】
しかし、現在知られている、酸性触媒を用いるアセタールの製造方法にも、まだ制約がいくつかある。無機酸は、アセタール化の良い触媒として働くが、本来的に極めて腐食性である。また、このような方法で得られる最終生成物は、残留する遊離酸を中和して精製しなければならない。すべての教示によって得られる収率は実用的な目的には許容できるが、汎用性、環境調和性、エネルギー効率、信頼性、費用効果、生産安全性の観点からはすべての方法が効果的でない。
【0008】
イオン系は、粘性の溶融塩の例であるが、多くの興味深く有用な特性を有し、例えば合成化学において高極性溶媒、助溶媒、及び触媒として有用である。イオン系はまた、電気化学、化合物の合成、染料、電池、燃料電池、光起電力素子、電着プロセス、半導体洗浄、熱分解、ガス化などの種々の分野における用途に、セルロース溶解を含む用途に、金属の電気めっきに、有用であることも見いだされており、そのことは、例えば、米国特許第6573405号、米国特許第7183433号、米国特許第7196221号、米国特許出願公開第2005/0147889号、米国特許第6527977号、米国特許出願公開第2008/0307703号、米国特許出願公開第2006/0183654号、米国特許出願公開第2009/0247432号に記載されている。
【0009】
イオン性化合物/液体は、極めて低い蒸気圧を示すか全く蒸気圧を示さないので、多くの通常の分子溶媒と比べると実質的に蒸気を発生しない。従って、イオン性液体は、健康面、安全性、環境の観点から有益である。
触媒及び/又は反応媒体としてイオン性液体を用いた、MDBS構造及びDMDBS構造以外のアセタール及びジアセタールの製造方法が報告されている。例えば、中国特許出願公開第101440025号は、N−メチルグリオキサリン硫酸水素塩イオン性液体触媒を用いたエチリデンエーテル又はケタールの製造方法を開示している。MDBS構造及びDMDBS構造以外のアセタールを製造するための触媒としてのイオン性液体の利用を開示した他の特許としては、中国特許出願公開第101723852号、中国特許出願公開第101544628号及び中国特許出願公開第1858048号がある。
【0010】
しかし、触媒及び/又は反応媒体としてイオン性化合物/液体を用いてMDBS及びDMDBSを製造する方法は、今までに報告されていない。そこで、触媒及び/又は反応媒体としてイオン性化合物/液体を用いてMDBS及びDMDBSを製造する方法が必要とされている。また、如何なる高価な溶媒も腐食性の無機酸も用いずにアセタール、特にMDBS及びDMDBSを製造する方法も必要とされている。
【発明の概要】
【0011】
〔定義〕
本明細書においては、下記の語句を、その語句が用いられる文脈が他の意味を示さない限り、通常以下に記載するような意味で用いることとする。
【0012】
「イオン性流体」という語句は、ここでは、メタンスルホン酸(MSA)、パラトルエンスルホン酸(PTSA)、シュウ酸、クエン酸、安息香酸、マレイン酸、及び酒石酸からなる群から選択される水素供与体と、塩化ナトリウム及び塩化亜鉛などの金属塩からなる群から選択される「対イオン供給化合物」との混合物を溶解することにより製造され、それによってin situでイオン性化合物が生成される溶媒和物を言う。
【0013】
〔発明の目的〕
本発明の目的は、アルジトールアセタール誘導体化合物を高収率及び高純度で製造する方法を提供することである。
【0014】
本発明の他の目的は、対称及び非対称のジベンジリデンソルビトール化合物を制約なく製造できる方法を提供することである。
【0015】
本発明のさらに他の目的は、アセタール誘導体の経済的な製造方法を提供することである。
【0016】
本発明のさらに他の目的は、アセタール誘導体の環境にやさしい製造方法を提供することである。
【0017】
本発明のさらに他の目的は、最終生成物が残留遊離酸を含まない、アセタール誘導体の製造方法を提供することである。
【0018】
本発明のさらに他の目的は、アセタール誘導体の安全な製造方法を提供することである。
【0019】
本発明のさらなる目的は、トリアセタール誘導体を生成させることなくモノアセタール誘導体及びジアセタール誘導体を製造できる方法を提供することである。
【0020】
〔発明の概要〕
本発明によれば、1,3:2,4−ビス(4−メチルベンジリデン)ソルビトール(MDBS)及び1,3:2,4−ビス(3,4−ジメチルベンジリデン)ソルビトール(DMDBS)からなる群から選択されるアセタール誘導体の製造方法であって、
a)PTSA(パラトルエンスルホン酸)及びシュウ酸からなる群から選択される水素供与体、及び、塩化ナトリウム及び塩化亜鉛からなる群から選択される対イオン供給化合物を等モル量で混合し、得られた混合物を、溶媒に溶解させる処理及び加熱処理からなる群から選択された処理形態によって処理することにより生成したイオン性化合物を含む金属塩系イオン性流体を製造するステップと、
b)連続撹拌下に、4−メチルベンズアルデヒド及び3,4−ジメチルベンズアルデヒドからなる群から選択されるアルデヒド及びソルビトールをモル比2:1で上記イオン性流体に加え反応混合物とすることにより、脱水縮合反応を行うステップと、
c)得られた反応混合物を撹拌して、内容物を懸濁状態に保つステップと、
d)上記反応混合物の撹拌を停止して、上記反応混合物中に生成した塊を沈降させるステップと、
e)上記反応混合物を濾過することにより上記塊を単離及び精製し、イオン性流体、未反応の反応物、及び固体の上記塊を含む母液を得るステップと、
f)上記固体塊を洗浄及び乾燥して、遊離酸残留物を含まないアセタール誘導体を得るステップとを含む方法が提供される。
【0021】
典型的には、本発明の方法によれば、上記イオン性流体は、上記脱水縮合反応の触媒としても反応媒体としても働く。
【0022】
典型的には、上記イオン性流体は、等モル量の水素供与体及び対イオン供給化合物を溶媒中で混合することにより製造される。
【0023】
典型的には、上記溶媒は、メタノール、エタノール、プロパン−1−オール、プロパン−2−オール、1−ブタノール、イソブタノール、2−ブタノール、tert−ブタノール、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン、酢酸メチル、酢酸エチル、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、メチルエチルケトン、炭酸ジメチル、ジエチルケトン、アセトン、tert−ブチルメチルエーテル、ジエチレングリコール、N,N−ジメチルアセトアミド、ジエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコール、ヘキサメチルホスホルアミド、へキサメチルホスホラストリアミド、イソアミルアルコール、2−メトキシエタノール、酢酸2−メトキシエチル、1−メチル−2−ピロリジノン、ニトロメタン、及び水からなる群から選択される少なくとも1種である。
【0026】
典型的には、上記水素供与体は、メタンスルホン酸(MSA)、パラトルエンスルホン酸(PTSA)、シュウ酸、クエン酸、安息香酸、マレイン酸、及び酒石酸からなる群から選択される。
【0027】
典型的には、上記対イオン供給化合物は、塩化ナトリウム及び塩化亜鉛からなる群から選択される。
【0029】
典型的には、上記ソルビトールは、40%〜99%の範囲内の濃度を有するソルビトール水溶液である。
【0030】
典型的には、上記の攪拌する方法ステップ(c)、5〜8時間の範囲内の期間にわたって行う。
【0031】
典型的には、上記の脱水縮合の方法ステップ(b)において、上記母液を、少なくとも35回、好ましくは30回再利用する。
【発明を実施するための形態】
【0032】
高価な溶媒や腐食性の無機酸触媒を用いてアセタールを製造する、従来報告されている方法の欠点を克服するために、本発明の発明者らは、アセタール、特にDMDBS及びMDBSの製造のために、特定のイオン性流体を選択した。
【0033】
すなわち、本発明において、反応触媒及び反応媒体の両方の役割を果たす金属塩系イオン性流体を用いる、アルデヒドとアルジトールとの間の脱水縮合反応によるアセタール誘導体、特に1,3:2,4−ビス(4−メチルベンジリデン)ソルビトール(MDBS)及び1,3:2,4−ビス(3,4−ジメチルベンジリデン)ソルビトール(DMDBS)からなる群から選択されるアセタール誘導体の製造方法であって、
a)PTSA(パラトルエンスルホン酸)及びシュウ酸からなる群から選択される水素供与体、及び、塩化ナトリウム及び塩化亜鉛からなる群から選択される対イオン供給化合物を等モル量で混合し、得られた混合物を、溶媒に溶解させる処理及び加熱処理からなる群から選択された処理形態によって処理することにより生成したイオン性化合物を含む金属塩系イオン性流体を製造するステップと、
b)連続撹拌下に、4−メチルベンズアルデヒド及び3,4−ジメチルベンズアルデヒドからなる群から選択されるアルデヒド及びソルビトールをモル比2:1で上記イオン性流体に加え反応混合物とすることにより、脱水縮合反応を行うステップと、
c)得られた反応混合物を撹拌して、内容物を懸濁状態に保つステップと、
d)上記反応混合物の撹拌を停止して、上記反応混合物中に生成した塊を沈降させるステップと、
e)上記反応混合物を濾過することにより上記塊を単離及び精製し、イオン性流体、未反応の反応物、及び固体の上記塊を含む母液を得るステップと、
f)上記固体塊を洗浄及び乾燥して、遊離酸残留物を含まないアセタール誘導体を得るステップとを含む方法が提供される。
【0034】
上記イオン性流体は、水素供与体と対イオンとの間の水素結合から形成される「in situで生成した」イオン性化合物を含み、このイオン性化合物は脱水縮合を触媒する。さらに、上記イオン性流体は、反応を行うための反応媒体としても働く。典型的には、上記のイオン性流体を製造する方法ステップは、等モル量の水素供与体及び対イオン供給化合物を独立して溶媒に加えて、溶媒中でイオン性化合物をin situで生成させることを含む。
【0035】
本発明によるイオン性流体の製造方法に必要なエネルギーは極めて低く、上記製造方法は室温で行うこともできる。
【0036】
本発明によるイオン性流体の製造に用いられる溶媒は、メタノール、エタノール、プロパン−1−オール、プロパン−2−オール、1−ブタノール、イソブタノール、2−ブタノール、tert−ブタノール、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン、酢酸メチル、酢酸エチル、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、メチルエチルケトン、炭酸ジメチル、ジエチルケトン、アセトン、tert−ブチルメチルエーテル、ジエチレングリコール、N,N−ジメチルアセトアミド、ジエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコール、ヘキサメチルホスホルアミド、へキサメチルホスホラストリアミド、イソアミルアルコール、2−メトキシエタノール、酢酸2−メトキシエチル、1−メチル−2−ピロリジノン、ニトロメタン、及び水からなる群から選択される。
【0037】
典型的には、本発明の方法によれば、上記イオン性流体は、上記脱水縮合反応の触媒としても反応媒体としても働く。
【0040】
典型的には、上記水素供与体は、メタンスルホン酸(MSA)、パラトルエンスルホン酸(PTSA)、シュウ酸、クエン酸、安息香酸、マレイン酸、及び酒石酸からなる群から選択される少なくとも1種の酸からなる群から選択される。触媒活性は、酸の水素供与能の減少と共に減少してゆくことがわかった。幅広い範囲の温度における触媒活性は、水素結合の安定性及び強度を示す水素結合供与体に依存すると共に、イオン性化合物を形成している塩に依存する(Angew.Chem.Int.Ed.,2000,39,3772〜3789,Ionic Liquids−New “Solutions” for Transition Metal Catalysis)。
【0041】
水素結合の強度及び安定性はまた、溶液中及び水−溶媒系中の塩の溶解度に依存する。
【0042】
典型的には、上記対イオン供給化合物は、塩化ナトリウム及び塩化亜鉛からなる群から選択される。好ましい実施形態において、対イオン供給化合物は、塩化ナトリウムである。
【0043】
上記対イオン供給化合物は、溶液中又は水−溶媒混合液中で水素結合を形成することのできる対イオンを供給する。水素結合によるカチオンとアニオンとの結合により形成されたイオン性化合物は、超分子構造組織を有することが報告されている(Olivier−Bourbigou,H.等、Applied Catalysis A:General,373,1〜56,2010;Deetlefs,M.等、J.Physical Chemistry B.110,12055〜12061,2006;Canongia Lopez,J.N.及びPadua,A.A.H.,J.Physical Chemistry B.110,3330〜3335,2006)。水素結合のネットワークにより形成された連続マイクロドメイン構造は、酸が遊離型で得られず、そのため最終生成物に残留酸性を残さないので、触媒反応に適していると思われる。
【0044】
本発明の方法で用いられるアルデヒドは、4−メチルベンズアルデヒド、3,4−ジメチルベンズアルデヒドからなる群から選択される少なくとも1種である。
【0045】
典型的には、本発明の方法により用いられるソルビトールは、40%〜99%の範囲内の濃度を有するソルビトール水溶液である。
【0046】
典型的には、上記脱水縮合反応は、約25℃〜約50℃の範囲内の温度で行われる。典型的には、上記の撹拌する方法ステップを、約5〜10時間の範囲内の期間にわたって行う。典型的には、未反応の反応物を含むと共にイオン性流体を含む母液を、上記脱水縮合反応の方法ステップにおいて再利用する。典型的には、上記母液を、イオン性流体の触媒活性の消失なしに、少なくとも35回、好ましくは30回再利用する。
【0047】
本発明の発明者らは意外なことに、本発明の方法によって得られる生成物が全く残留遊離酸を含まないことを見いだした。従って、公知の方法では必要とされる、生成物を単離する前の反応混合物の中和が必要ない。生成物中の残留遊離酸は、高温で、特に乾燥工程中で、最終生成物の加水分解を促進するので、極めて望ましくない。
【0048】
従って、本発明の方法は、最終生成物中の残留遊離酸を中和する必要がなく、方法のコスト及び複雑さを低減させるので、特に好都合である。これにより、酸による脱水縮合反応を行う反応媒体として、上記イオン性流体が有用であることが明らかである。
【実施例】
【0049】
以下の実施例に基づき本発明をさらに説明するが、実施例はここに添付される請求項に規定される発明を制限するものとは解釈されない。
【0050】
〔実施例1〕
水素供与体であるトルエン−4−スルホン酸一水和物(PTSA)(2g)を塩化ナトリウム(0.6g)と等モル比で混合し、30mlのメタノールを塩混合物に加え、よく撹拌して、イオン性流体を製造した。得られたイオン性流体を用いて脱水反応を26℃で行った。3,4−ジメチルベンズアルデヒド及びソルビトールを2:1のモル比でイオン性化合物に加え、撹拌して反応を開始させた。反応開始から数分以内に固体塊が生成した。撹拌速度を上昇させて上記塊を懸濁状態に保ち、反応を5時間続けた。上記固体生成物を濾過し、母液と、白色の固体塊とを得た。上記白色の固体塊を120mlのメタノールで洗浄した。上記白色の固体生成物をオーブン内で95℃で2時間乾燥させた後、4時間風乾し、収率を求めた。収率は77%であった。
【0051】
〔実施例2〕
70%ソルビトール水溶液(1.5ml)を100%ソルビトールに変えた以外は、実施例1の方法に従った。収率は75%であった。
【0052】
〔実施例3〕
PTSAを、1:2のモル比のシュウ酸(1.3g)及び1.2gのNaClに変えた以外は、実施例1の方法に従った。反応を8時間行った。収率は75%であった。
【0053】
〔実施例4〜7〕
母液の再利用/再使用の例
初回の反応から得られた母液に3,4−ジメチルベンズアルデヒド及びソルビトールを補充した以外は実施例1の方法に従い、反応を続けた。反応の詳細を表1に示す。
【0054】
【表1】
【0055】
〔試験データ〕
〔比較例〕
米国特許第4429140号に開示されている従来法によりジベンジリデンソルビトールを製造し、エネルギー所要量と、所要時間と、本発明による方法に用いられた試薬数から見た方法全体の複雑さとを評価した。
【0056】
3,4−ジメチルベンズアルデヒド及びソルビトールを2.5:1のモル比で、シクロヘキサン(100重量部)及びメタノール(100重量部混合)に混合した。この混合物に、触媒として働く98%硫酸(0.5重量部)を加え、脱水縮合反応を窒素雰囲気下78〜82℃で3時間行った。反応中に生成した水をシクロヘキサン及びメタノールと共に共沸混合物として連続的に留去した。凝縮器で凝縮及び分離したシクロヘキサンを反応系に再利用し、反応系から水層を取り出した。反応を3時間後に終了し、冷却し、KOH水溶液で中和し、熱水で洗浄し、濾過して、白色の粉末を得た。収率は95%、純度は97.5%であった。
【0057】
本発明による方法は、室温で行われるので、必要なエネルギーがより少ないことがわかった。さらに、本発明の方法は、方法ステップの数が少なく、硫酸などの有害又は腐食性の薬品を必要としない。さらにまた、上記の従来法とは異なり、本発明の方法の場合のイオン性流体の形態の触媒は再利用可能であり、したがって本方法は環境にやさしい。
【0058】
本発明の実施形態をいくつか記載したが、これらの実施形態は例として示されただけで、本発明の範囲を限定するものではない。当業者がこの開示を検討すると、本発明の範囲内で、本発明の構造及び構成への変形又は変更を思いつくかもしれない。しかしそのような変形又は変更は十分に本発明の思想の範囲内である。添付の請求項及びそれらと等価なものは、本発明の範囲及び思想の範囲内にある形態又は変更に及ぶものとする。
【0059】
種々の物理的パラメーター、大きさ及び量の数値は単におおよその値であり、明細書中にそうでないと述べられていない限り、物理的パラメーター、大きさ及び量に割り当てられた数値を超える値は本発明及び請求項の範囲内に含まれるものとする。