(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5887368
(24)【登録日】2016年2月19日
(45)【発行日】2016年3月16日
(54)【発明の名称】共溶媒処方物
(51)【国際特許分類】
A61K 47/10 20060101AFI20160303BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20160303BHJP
A61K 31/59 20060101ALI20160303BHJP
A61P 19/00 20060101ALI20160303BHJP
【FI】
A61K47/10
A61K9/08
A61K31/59
A61P19/00
【請求項の数】12
【外国語出願】
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-16658(P2014-16658)
(22)【出願日】2014年1月31日
(62)【分割の表示】特願2010-207684(P2010-207684)の分割
【原出願日】1999年3月22日
(65)【公開番号】特開2014-129360(P2014-129360A)
(43)【公開日】2014年7月10日
【審査請求日】2014年2月28日
(31)【優先権主張番号】09/057,143
(32)【優先日】1998年4月8日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512212195
【氏名又は名称】アッヴィ・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ルクチュ・リー
(72)【発明者】
【氏名】エドワード・エイ・ペック
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル・エイチ・ロビンソン
(72)【発明者】
【氏名】デニス・エイ・スティーブンズ
(72)【発明者】
【氏名】キャシー・ジャンツィ
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・ビイ・メイ
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・ピー・オーバディア
【審査官】
石井 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第04588528(US,A)
【文献】
国際公開第96/036340(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 9/00− 9/72
A61K 47/00−47/48
A61K 31/00−33/44
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療有効量の少なくとも一つのビタミンD化合物、水、15%〜40%(v/v)の量のエタノールおよび10%〜35%(v/v)の量のプロピレングリコールを含み、前記ビタミンD化合物がパラカルシン及びカルシトリオールからなる群より選択される、静脈注射用薬学的組成物。
【請求項2】
前記ビタミンD化合物が2μg/mlと10μg/mlとの間で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ビタミンD化合物が5μg/mlで存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記組成物が滅菌されている、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
滅菌が最終滅菌である、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記滅菌が滅菌充填である、請求項4に記載の組成物。
【請求項7】
2μg/mlのパラカルシン、
20%(v/v)エタノール、
30%(v/v)プロピレングリコール、および
50%(v/v)の水
を含む、静脈注射用薬学的処方物。
【請求項8】
a)水およびプロピレングリコールの混合物を調製する工程と、
b)ビタミンD化合物およびエタノールの混合物を調製する工程と、
c)工程(a)および工程(b)からの混合物を合わせ、均一な混合物を調製する工程と、
d)前記均一な混合物をろ過する工程と
を包含する治療有効量のビタミンD化合物を含む静脈注射用薬学的処方物の調製法であって、工程(d)における混合物が、15%〜40%(v/v)の量のエタノール及び10%〜35%(v/v)のプロピレングリコールを含み、前記ビタミンD化合物がパラカルシン及びカルシトリオールからなる群より選択される、静脈注射用薬学的処方物の調製法。
【請求項9】
2μg/mlから10μg/mlのビタミンD化合物;
30%(v/v)エタノール;
20%(v/v)プロピレングリコール;および
50%(v/v)水を含み、前記ビタミンD化合物が、パラカルシン及びカルシトリオールからなる群より選択される、静脈注射用薬学的処方物。
【請求項10】
ビタミンD化合物が2μg/mlの量のパラカルシンである、請求項9に記載の薬学的処方物。
【請求項11】
2μg/mlから10μg/mlのビタミンD化合物;
40%(v/v)エタノール;
10%(v/v)プロピレングリコール;および
50%(v/v)水を含み、前記ビタミンD化合物が、パラカルシン及びカルシトリオールからなる群より選択される、静脈注射用薬学的処方物。
【請求項12】
ビタミンD化合物が2μg/mlの量のパラカルシンである、請求項11に記載の薬学的処方物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
1.発明の分野
本発明は、相乗的な防腐効果を有する治療薬用の共溶媒処方物にする。
【背景技術】
【0002】
2.先行技術の説明
製造、処理の際利点があり、且つ患者にとって安全な治療薬用の有効な処方物の開発がなお求められている。特に、ビタミンD化合物などの治療薬は、酸素に感受性を有するかまたは不安定であるものが多い。したがって、このような化合物を保護するには、有効成分の完全性を保存するために日常的に抗酸化剤を添加する必要がある。他の処方物では、緩衝液は、pHを維持するのに必要であり得る。キレート化剤には、これらに限定されないが、クエン酸、酒石酸、アミノ酸、チオグリコール酸、およびエデト酸2ナトリウム(EDTA)が含まれ、緩衝液には、これらに限定されないが、酢酸緩衝液、クエン酸緩衝液、グルタミン酸緩衝液、およびリン酸緩衝液が含まれるが、これらはしばしば処方物を安定化させるために使用される。しかし、WO96/36340で論じられているように、緩衝液およびキレート化剤は、製品の有効期限内で製品中に3.5ppmを超えるアルミニウムレベルをもたらすことに関与している。
【0003】
透析患者が軟骨化症を発症し得るので、アルミニウム蓄積の危険性を最小限にするために透析患者への血管・組織内投与用の処方物中のアルミニウムレベルを最小化することが特に有利であろう。EDTAの潜在的な副作用には、腎毒性および尿細管壊死もまた含まれ得る。さらに、EDTAは、日本などのいくつかの国際市場では賦形としては承認されていないキレート化剤である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第96/36340号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、薬学的処方物に伴うこれらの問題および他の問題を克服する処方物を提供する。本発明は、抗酸化剤を必要とせず、処方物中のアルミニウムレベルを増大させる添加物を含まず、最後に滅菌できる処方物を提供する。驚くべきことに、本発明の新規の処方物は、アルコールおよびグリコール誘導体を個々に使用した時の抗菌効果からは予想し得なかった相乗的な防腐効果を提供することもまた発見された。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(発明の要旨)
本発明は、薬学的有効量の治療薬ならびに低分子量アルコールおよびグリコール誘導体からなる群から選択される有機溶媒を含む薬学的組成物を提供する。本発明の処方物は相乗的な防腐効果を提供する。用語「相乗的な防腐効果」とは、付加的でなく、各薬剤の各々の効果から予想されるが、予想されるよりも高い防腐レベルが与えられる(つまり、相乗的である)防腐効果を意味する。防腐効果は、USP23のガイドラインに従って測定する。
【0007】
好ましい実施形態は、ビタミンD化合物、エタノールおよびプロピレングリコール(PG)を含む組成物である。より好ましくは、組成物は、パラカルシン、エタノール、プロピレングリコールおよびさらに水を含む。最も好ましくは、組成物は、パラカルシン、20%(v/v)エタノール、30%(v/v)PG、および50%(v/v)の水を含む。
【0008】
本発明のさらなる実施形態は、溶液中に溶解した治療薬に対して相乗的な防腐効果を提供するのに適切な溶液である。
【0009】
本発明のさらなる実施形態は、最後に滅菌した本発明の処方物である。
【0010】
本発明のさらに別の実施形態は、5μg/mlのパラカルシン、エタノール、プロピレングリコール、および水を含むパラカルシンの最終的な投薬形態を提供する処方物である。
【0011】
このような滅菌された共溶媒溶液の調製法もまた開示される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】20%(v/v)エタノール溶液の防腐効果を示す図である。
【
図2】30%(v/v)プロピレングリコール溶液の防腐効果を示す図である。
【
図3】20%(v/v)エタノール/30%(v/v)プロピレングリコール溶液の予想される防腐効果を示す図である。
【
図4】20%(v/v)エタノール/30%(v/v)プロピレングリコール溶液の実際の防腐効果を示す図である。
【
図5】30%(v/v)エタノール/20%(v/v)プロピレングリコール溶液の防腐効果を示す図である。
【
図6】40%(v/v)エタノール/10%(v/v)プロピレングリコール溶液の防腐効果を示す図である。
【0013】
(発明の詳細な説明)
本発明は、共溶媒処方物中で自己防腐的で、安定な治療薬の処方物を提供する。
【0014】
本発明の処方物と共に利用することができる治療薬は、水系での適切な溶解性を欠く生物学的および/または薬学的に活性な物質、つまり、有効な治療量を得るには水中の適切な溶解性を欠く薬剤の全ての範囲から選択することができる。物質の正確な生物学的活性は、その物質が本処方物に溶解され得る限り、実体が無い。その物質の溶解性は、水に1μg/ml未満であることがより好ましい。この薬剤の好ましいサブクラスは、ビタミンD化合物(例えば、カルシトリオールおよびパラカルシン)である。
【0015】
本発明の処方物の好ましい投与経路は、血管・組織内経路であり、最も好ましくは静脈注射である。
【0016】
用語「ビタミンD化合物」とは、ビタミンDおよびその誘導体を意味する。例として、ビタミンD誘導体は、19−nor−1α,3β,25−トリヒドロキシ−9,10−セコエルゴスタ−5,7(E),22(E)−トリエン(一般名パラカルシン)および1α,25−ジヒドロキシコレカフシフェロール(一般名カルシトリオール)である。
【0017】
用語「低分子量アルコール」とは、炭素数が1〜5個の脂肪族アルコール、例えば、エタノール、プロパノール、ブタノールなどを意味する。エタノールは、米国食品医薬品局(FDA)で安全性が認められた(GRAS)化合物リストに列挙されているので、ヒトへの投与を意図する本発明の処方物として好ましい。
【0018】
用語「グリコール誘導体」とは、液体または固体の化合物、例えば、グリセリンならびにグリコールのポリマー、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)プロピレングリコール(PG)のことをいう。血管・組織内投与には、典型的には分子量が1,000未満の液体ポリマーが好ましい。最も好ましいグリコール誘導体はPGである。
【0019】
特記しない限り、本明細書中に記載の濃度%は、体積/体積(v/v)に基づく。
【0020】
有機溶媒は、本発明の組成物中の賦形剤の100%まで含むことができる。本発明の好ましい血管・組織内用処方物中の有機溶媒の量が最小に保たれるべきであることが臨床分野の当業者に理解される。それと同時に、本発明の処方物中のビタミンD化合物が適切に溶解するように製造時の要件および必要とされる投薬量の範囲が考慮されなければならない。
【0021】
従って、低分子量アルコールの量は、0〜100%の範囲が可能であるが、アルコール量が50%を超えるとさらに経費がかかり、製造が困難になることに留意すべきである。好ましい範囲は約15%〜50%であり、好ましいアルコールはエタノールである。治療薬がパラカルシンである場合、溶液は20%エタノールを含むことが最も好ましい。
【0022】
グリコール誘導体の量もまた、0〜100%の範囲で変化させることができる。好ましい範囲は約15%〜約35%である。治療薬がパラカルシンである場合、好ましいグリコール誘導体はプロピレングリコールであり、その量は30%である。
【0023】
有機溶媒の総量が100%未満である場合、残りを水で補うことができる。血管・組織内投与用の調製物中の有機溶媒の総量が最小に維持されることが好ましいので、好ましい水の量は50%である。
【0024】
従って、本発明の最も好ましい処方物は、約15%〜約50%のエタノール、約15%〜約50%のPG、および残りは必要ならば水を含む。
【0025】
本発明の処方物中の治療薬の量は、本発明の賦形剤中の薬剤の溶解性のみに依存する。当業者は、過度に試験することなく、本明細書中に記載の組成物中の任意の治療薬の溶解性を同定することができる。
【0026】
本発明では治療薬の量は重要ではないので、特定の患者に対する所望の治療応答、組成物および投与様式を達成するのに有効な治療薬の量を得るために変化させることができる。投薬レベルの選択は、治療薬、投与経路、治療する症状の重篤度ならびに治療する患者の症状および以前の病歴に依存する。好ましいビタミンD化合物用の好ましい治療量は、約2μg/mlと約10μg/mlとの間が好ましく、5μg/mlが最も好ましい。
【0027】
本発明の共溶媒処方物は、先行技術の処方物を超える特定の利点を提供する。
【0028】
先行技術の脂質ベースの処方物について、本発明の処方物は、製造が容易であり且つ得られた処方物中の過酸化物の形成を回避するために製造工程を省略するという点で、より容易に製造され、過剰量の脂質に暴露されると考えられる患者にもより容易に許容され得る。
【0029】
さらに、本発明の処方物は、患者によっては注射した部位に炎症を起こさせる界面活性の使用を省く。本発明の処方物はまた、溶液のpHを調整するための緩衝剤の使用を回避する。これは、製造においてさらなる利点であり、最終処方物中のアルミニウム源を回避するというさらなる利点を提供する。さらに、本発明の処方物は、抗酸化剤の使用による変色が無いので賦形剤も必要ない。従って、緩衝液、界面活性剤、およびさらなる賦形剤を本発明の処方物に添加することができるが、このような添加物は自己防腐特性の達成および処方物中での治療薬の安定性の維持には重要ではない。
【0030】
本発明の処方物のさらなる利点は、処方物を最後に滅菌しうることである。処方物について、最終滅菌には、一般に、オートクレーブ、γ線照射、および電子ビーム滅菌技術が含まれるが、これらに限定することを意図しない。この開示の目的のために、最終滅菌は、主にオートクレーブ法をいう。勿論、無菌充填法も使用することができるが、最終滅菌が好ましい。
【0031】
最終滅菌の無菌性保証レベル(SAL)(10
−6)は、滅菌充填(10
−3)よりも高い。従って、本発明の処方物のオートクレーブによる最終滅菌は、滅菌充填法による最終製品よりも10
3倍のSALを付与する。高いSALを有して製造された血管・組織内用製品は、患者への潜在的な感染を減少させる。
【0032】
驚いたことに、本発明の処方物は、先行技術による処方物を超えるさらに別の利点を提供することが発見された。エタノールは殺菌剤および殺真菌剤として周知であるが、通常のエタノールの使用は70%を超える濃度が必要であろう。エタノールは、USP23の定義によれば防腐剤として使用されず、Physicians Desk Reference(1995)に列挙されたいずれの薬物処方物にも防腐剤として列挙されていない。プロピレングリコールは真の防腐剤として定義されており、少なくとも1つの処方物が本溶媒として3%の濃度で使用されている。本発明者らは、これらの好ましい溶媒を組み合わせることにより、各溶媒の効果を単に足し算することによって予想される効果よりも高い抗菌効果が得られることを発見した。特に、認知度の高いUSP23試験で使用されている少なくとも3つの有機溶媒に関して相乗効果が認められることが発見された。
【0033】
従って、本発明の処方物によって提供されたさらなる利点は、様々な使用に適切なパッケージング、例えば、バイアルで治療薬を封入できることである。
【0034】
本発明の最も好ましい実施形態では、血管・組織内投与用のパラカルシン処方物を1ml、2ml、または5mlの滅菌単位量の鉛ガラス製のバイアルまたはアンプルで供給することができる。投与形態は長期間安定であり、約15℃〜30℃の温度で保存可能である。
【0035】
溶液1mlあたり5μgのパラカルシン、0.2mlのエタノール、0.3mlのPG、および注射するのに適量の水を含むことが好ましい。
【0036】
本発明の処方物の全ての成分が薬学的に受容可能な等級および品質であることが当業者に理解される。
【0037】
1×10
−3の無菌性保証レベル(SAL)を保証するために、本発明の処方物を含むアンプルまたはバイアルを一連のフィルターを用いて滅菌充填することがきる。より好ましくは、本発明の処方物を含むアンプルまたはバイアルをいっぱいにして最終滅菌し、1×10
−6のSALを得ることができる。例えば、本発明の処方物の溶液を0.45マイクロメター(μm)のフィルターまたはより細かいメンブランフィルター(Millipore Corporation, Bedford,MA.01730)でアンプルへろ過することができる。コンテナを密封して最終滅菌することができる。
【0038】
最終製品の最終滅菌を、製品の安定性を維持するのに適切な条件下で行うことができる。好ましくは、約8〜約18のF
0で最終滅菌することができる。用語「F
0」は、121.11℃で完全に滅菌されたかそれと同等の時間を意味し、これは当業者に周知である。例えば、F
0=8は、121.11℃で8分間の飽和蒸気での滅菌サイクルを行ったことを示し、F
0=18は、121.11℃で18分間の飽和蒸気での滅菌サイクルを行ったことを示す。
【実施例1】
【0039】
共溶媒系中でのパラカルシンの安定性
適当量のパラカルシンを秤量し、共栓付きガラス試験管中の10mlの共溶媒に添加した。各共溶媒組成物用に2つのサンプルを調製した。サンプルを含む試験管を25℃の往復式震盪水浴中、100rpmで震盪した。完全に溶解させた後、アリコートを0.45ミクロンのシリンジフィルターでろ過し、ろ過物を50%メタノールで1:1に希釈した。得られた希釈物質中のパラカルシン含量を測定した。表1は、列挙した共溶媒系の中のパラカルシン濃度の結果を示す。
【0040】
【表1】
【実施例2】
【0041】
共溶媒処方物中のパラカルシンの安定性
20%エタノール/30%プロピレングリコール/50%水中に溶解したパラカルシンサンプル(5μg/ml)を、安定性試験用に調製した。適当な容器に最終量の約30%まで注射用の水を添加した。混合しながらプロピレングリコールを容器に添加した。別のコンテナで、バッチあたりの全エタノールから得たエタノール(95%、非飲料用)の一部に特定量のパラカルシンを溶解させ、混合しながら容器に添加した。バッチエタノールのさらなるアリコートを使用してコンテナを濯ぎ、その濯ぎ溶液を撹拌しながら容器に添加する。残りのアルコールを混合しながら容器に添加する。適量の注射用の水を最終体積まで添加し、約30分間混合する。溶液を0.45ミクロンのメンブランでろ過し、アンプルに分注する。各アンプルを炎で密封し、F
016でオートクレーブした。
【0042】
第1のアンプルのセットを溶液中のパラカルシン残存%について試験し(T=0)、これを対照とした(すなわち、100%残存)。第2のアンプルのセットを40℃で保存し、1ヶ月後、2ヵ月後、および3ヵ月後に試験する。最後のセットを30℃で保存し、1ヵ月後、2ヵ月後、3ヵ月後、6ヵ月後、9ヵ月後、12ヵ月後、18ヵ月後、および24ヵ月後に試験する。これらの結果を、対照%(T=0)に対するパラカルシン残存量として表2に示す。各時点は、1〜5つのデータポイントを示す。
【0043】
【表2】
【実施例3】
【0044】
自己防腐共溶媒処方物
20%エタノール、30%プロピレングリコール、20%エタノール/30%PG、30%エタノール/20%PG、および40%エタノール/10%PGの各溶液を0.45ミクロンのフィルターでろ過し、アメリカ薬局方、23−NF 18、1995Ed.、51章、1681頁(本明細書中で参考により援用される)に記載のようにUSP23防腐効果試験によって試験した。簡単に述べれば、本試験は、10
5〜10
6個/mlの試験生物を含む試験溶液をインキュベートし、その後標準的な微生物学的方法を用いて20℃〜25℃でのインキュベーションの7日後、14日後、21日後、および28日後の生物の生存数を同定する工程を含む。0日後のデータは、USP23では必要とされていないが、本研究では行った。微生物を回収する目的でろ過および洗浄を行って不活性因子を取り除いたが、他の等価の方法を使用することができる。USP試験生物には、細菌Staphylococcus aureus、Escherichia coli、およびPseudomonas aeruginosa、酵母(Candida albicans)、およびカビ(Aspergillus niger)が含まれる。USP23防腐有効試験の基準を満たすには、細菌は、初期接種レベルから7日目で90%(対数1)減少および14日目で99.9%(対数3)減少を示さなければならない。酵母およびカビは、初期接種レベルから増加してはならない。初期接種レベルは、保存培養濃度を確認するか、試験溶液の代わりに緩衝液対照を用いるかして計数することができる。
【0045】
図1および
図2を参照して認められるように、20%アルコール溶液および30%プロピレングリコール溶液はいずれも、USP23防腐効果試験で承認された基準を満たす。カビAspergillus nigerについては、両溶液とも微生物の完全な排除には至っておらず、20%エタノールについては阻害性を有するが30%PGはほとんど効果がなかった。上記のように、これらの両溶液は当該分野では抗菌剤として認識されているので、この結果はまったくの予想外である。
【0046】
プロピレングリコールとアルコールは抗菌特性および溶媒特性を共有しているので、この共溶媒系の防腐効果はエタノールとプロピレングリコールのそれぞれの効果が合わさったものと予想されるであろう(H.Takruri and C.B.Anger、Presevation of Dispersed Systems、pp.85、101 in Pharmaceutical Dosage Forms、Dispersed Systems,H.A.Lieberman,M.M.Reiger, and G.S. Banker,Ed(1989))。
図3は、
図1と
図2のから得た値の合計によって決定した、20%エタノールと30%プロピレングリコールとを組み合わせた溶液の予想される結果を示す。しかし、
図4は、20%エタノールと30%プロピレングリコールとの組み合わせが付加的ではないが相乗的であるという予想し得なかった実際の防腐効果を示す。カビA.nigerは、共溶媒によって7日目以内に完全に滅菌される、つまり、微生物の残存数がアッセイの検出限界である。20%エタノール/30%PG処方物にパラカルシンを添加しても処方物の防腐効果に影響しない(データ示さず)。
【0047】
図5および
図6は、エタノールとPGの比が本共溶媒処方物の自己防腐特性に重要ではないことを示す。