特許第5887372号(P5887372)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5887372
(24)【登録日】2016年2月19日
(45)【発行日】2016年3月16日
(54)【発明の名称】水中のホウ素を検出する電気化学的方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/48 20060101AFI20160303BHJP
   G01N 27/49 20060101ALI20160303BHJP
   G01N 27/30 20060101ALI20160303BHJP
【FI】
   G01N27/48 311
   G01N27/46 306
   G01N27/30 B
【請求項の数】13
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-41258(P2014-41258)
(22)【出願日】2014年3月4日
(62)【分割の表示】特願2009-209916(P2009-209916)の分割
【原出願日】2009年9月11日
(65)【公開番号】特開2014-98720(P2014-98720A)
(43)【公開日】2014年5月29日
【審査請求日】2014年3月14日
(31)【優先権主張番号】0856462
(32)【優先日】2008年9月25日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】504115013
【氏名又は名称】イー・エム・デイー・ミリポア・コーポレイシヨン
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】セリーヌ・ル・ニニバン
(72)【発明者】
【氏名】アリストテリス・ディミトラコプロス
(72)【発明者】
【氏名】パスカル・ラジャコパラン
(72)【発明者】
【氏名】アントニー・バンエグ
【審査官】 櫃本 研太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−078598(JP,A)
【文献】 特開2004−089824(JP,A)
【文献】 特開2006−192422(JP,A)
【文献】 米国特許第06682647(US,B1)
【文献】 欧州特許出願公開第0969281(EP,A2)
【文献】 特開2007−248158(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0015437(US,A1)
【文献】 米国特許第05378343(US,A)
【文献】 I. Sahin et al.,Voltammetric determination of boron by using Alizarin Red S,Analytica Chimica Acta,2006年 7月21日,Vol.572 No.2,P.253-258
【文献】 E. A. Hutton et al.,Bismuth film microelectrode for direct voltammetric measurement of trace cobalt and nickel in some simulated and real body fluid samples,Analytica Chimica Acta,2006年 1月31日,Vol.557 No.1-2,P.57-63
【文献】 C. E. Banks et al.,Cadmium detection via boron-doped diamond electrodes: surfactant inhibited stripping voltammetry,Talanta,2004年,Vol.62,p.279-286
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/26−27/49
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水処理プロセスに一体される、水中のホウ素の存在を検出する方法にして、検出されるべきホウ素を含む水と少なくとも1つのホウ素錯化剤とを含む導電性緩衝液を生成することと、少なくとも1つの作用電極(7)の存在下で前記緩衝液を電気化学セル内に導入することと、ホウ素錯体とホウ素錯化剤とのアノードピークをボルタンメトリーによって測定することとを含み、アノードピークの高さが、較正曲線を介してホウ素の濃度に関連する方法であって、
作用電極(7)がソリッド微小電極であることと、測定が前記緩衝液の流れに対して連続的に実施されることとを特徴とする、方法。
【請求項2】
ボルタンメトリー測定が、示差パルスボルタンメトリー(DPV)、または方形波吸着ストリッピングボルタンメトリー法(SWASVM)、または吸着ストリッピングボルタンメトリー法(ASVM)の測定である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ホウ素錯化剤が、10−9Mから10−3Mの濃度である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
ホウ素錯化剤が、10−8Mから10−4Mの濃度である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
ホウ素錯化剤が、アリザリンレッドS(またはARS、(3,4−ジヒドロキシ−9,10−ジオキソ)−2−アントラセンスルホン酸)酸ナトリウム塩)とベリリウム(III)とによって形成された群から選択される、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
作用微小電極(7)が、炭素微小電極と、ビスマス微小電極と、ホウ素添加またはホウ素非添加ダイアモンド微小電極と、水銀膜で被覆された微小電極とから選択される、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
ホウ素濃度の測定値が、ホウ素のない溶液によって、また知られている濃度のホウ素を含んだ少なくとも1つの溶液によって、アノードピークの高さに応じて較正される、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
最小で5ppbの濃度でホウ素を検出することを可能にする較正後、ホウ素が最小で5ppbの濃度で検出されることが可能である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
較正後、ホウ素が5ppbから1000ppbの濃度で検出されることが可能である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
較正後、ホウ素が5ppbから400ppbの濃度で検出されることが可能である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
樹脂床上の脱イオン化段階の下流側で実施される、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか一項に記載された方法を実施するための検出デバイス(10、20)であって、液体入口手段(3、13)と別個の液体出口手段(4、14)とを備えた電気化学セルと、基準電極、対向電極、および作用微小電極(7A、7B、7C、17A、17B、17C)が固定された板とを備え、前記電気化学セルが、セル密閉手段をさらに備え、前記板が、前記液体入口手段(3、13)を介して検出されるべきホウ素を含む水と少なくとも1つのホウ素錯化剤とを含む導電性緩衝液が導入された電気化学セル内に挿入されることができ、前記作用微小電極が、炭素微小電極と、ビスマス微小電極と、ホウ素添加またはホウ素非添加ダイアモンド微小電極と、水銀膜で被覆された微小電極とから選択され、前記検出デバイス(10、20)が、ボルタンメトリーによって前記導電性緩衝液のホウ素錯体と錯化剤のアノードピークを連続して測定可能であることを特徴とした、検出デバイス(10、20)。
【請求項13】
作用微小電極(7、17)によって拾われた信号(9、19)を処理する処理手段をさらに備え、前記処理手段が、電気化学セル内に存在する導電性緩衝液のホウ素濃度を測定する手段を備える、請求項12に記載の検出デバイス(10、20)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、液体中の、一般的には水中の、ほとんどの場合極めて小さな分量の、または痕跡量の状態にある(即ち一般的には重量で数ppbから数百ppb(ppbは10億分の1)の)ホウ素の電気化学的検出に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に水性の液体、ほとんどの場合は水である液体中のホウ素の検出は、多数の技法を使用して、ほとんどの場合はポラログラフィなどの電気化学的方法によって実施されることが可能である。
【0003】
ホウ素は、水中に極少量で存在しているときに検出されなければならないという点で、とりわけ、必然的に錯化剤との錯体として検出されるという点で、検出することが特に困難な物質である。
【0004】
このように、刊行物「Voltammetric determination of boron by using Alizarin Red S」(Analytica Chimica Acta 572(2006)253〜258)は、痕跡量の状態にある、即ち、ほとんどの場合には数ppbのレベルにある水中ホウ素の存在を定量する新規のボルタンメトリー方法について述べている。この刊行物では、アリザリンレッドS(ARS)とのホウ素錯体は、緩衝液中で、吊下げ式水銀滴電極である作用電極を使用することによって、アノードピークの存在によって検出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第5378343号明細書
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】「Voltammetric determination of boron by using Alizarin Red S」(Analytica Chimica Acta 572(2006)253〜258)
【非特許文献2】「Bismuth film microelectrode for direct voltammetric measurement of trace cobalt and nickel in some simulated and real body fluid samples」(Analytica Chimica Acta 557(2006)57〜63)
【非特許文献3】「Cadmium detection via boron−doped diamond electrodes:surfactant inhibited stripping voltammetry」(Talanta 62(2004)279〜286)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
水銀が取り扱うことの困難な物質であり、安全および環境に関して問題を提示する可能性があるということを別として、作用電極の材料として水銀を使用することは注意を要し、装置は比較的大きい。その結果、この方法は実施するのに複雑であり、使用するのに融通性のないことが判明する可能性がある。
【0008】
本発明出願は、従来技術の欠点を改善すること、特に従来技術の欠点を有さない測定方法を実施することの困難さを改善することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的のために、本発明は、水中のホウ素の存在を検出する方法にして、水と少なくとも1つのホウ素錯化剤とを含む導電性緩衝液を生成することと、少なくとも1つの作用電極の存在下で上記緩衝液を電気化学セル内に導入することと、ホウ素錯体とホウ素錯化剤とのアノードピークをボルタンメトリーによって測定することとを含む方法であって、作用電極はソリッド微小電極であることと、測定は水の流れに対して連続的に実施されることとを特徴とする方法に関する。
【0010】
有利には、このような微小電極の使用によって、環境毒性の低い測定方法を有することが可能になる。
【0011】
他方、ソリッド微小電極を使用するということによって、特にコンパクトかつ低コストである装置によって容易に実施できる方法を有することが可能になる。
【0012】
ホウ素の存在が測定される水の流れに対してインラインの、本発明による連続測定の使用は特に有利である。
【0013】
好ましくはボルメタリー測定は、示差パルスボルタンメトリー(DPV)、または方形波吸着ストリッピングボルタンメトリー法(SWASVM)、または吸着ストリッピングボルタンメトリー法(ASVM)の測定である。
【0014】
アノードピークの測定は、一般的には所与のpHの導電性緩衝液の存在下で実施される。例えば、アノードピークの測定は以下のパラメータに従って実施される。導電性緩衝液は、例えば酢酸溶液および/またはリン酸塩溶液を含み、pHは7.4に選択されることが可能である。しかし他の任意のパラメータの組み合わせもまた、当業者によって想定されることが可能である。当業者は、任意の緩衝液および任意の適切なpHを使用することが可能である。pHは、一般的に、電解液の濃度および性質を含んだ様々なパラメータに依存し、その選択は、ホウ素の出現ピークの検出を最適化することを可能にしなければならない。
【0015】
好ましくはホウ素錯化剤は、10−9Mから10−3M、好ましくは10−8Mから10−4Mの濃度である。
【0016】
例えば、水処理プロセスの脈絡の中で、典型的には樹脂床上の脱イオン化段階の下流で、本発明による方法を使用する場合には、本発明による検出方法は、処理プロセスの速度を低下させずに処理プロセスに完全に一体化されるだけでなく、ホウ素の存在を検出することによって、樹脂が減耗したことを示すものを得ることを可能にする。
【0017】
本発明によると、ホウ素錯化剤は一般的に、アリザリンレッドS(またはARS、(3,4−ジヒドロキシ−9,10−ジオキソ)−2−アントラセンスルホン酸)酸ナトリウム塩)とベリリウム(III)とによって形成された群から選択される。しかし、本発明の範囲内で、他の任意の錯化剤も当業者によって想定されることが可能である。
【0018】
本発明による作用微小電極は一般的に、例えば、炭素微小電極(即ち一般的にガラス状炭素微小電極またはカーボンナノチューブ)と、ビスマス微小電極(即ち一般的にビスマスから製作された微小電極と、ビスマス膜で被覆された微小電極)と、ホウ素添加またはホウ素非添加ダイアモンド微小電極と、水銀膜で被覆された微小電極とから選択される。しかし、本発明の範囲内で、他の任意の微小電極も当業者によって想定されることが可能である。当業者は、実施条件に応じて、作用微小電極を規定するパラメータ、即ち微小電極およびその形状を形成する材料(複数を含む)を選択することが可能である。
【0019】
有利には本発明によれば、ホウ素濃度の測定をアノードピークの高さに応じて較正することが可能である。これは従来から「ブランク」溶液、即ちホウ素のない溶液を装置に通すことによって、また知られている濃度のホウ素を含んだ少なくとも1つの水溶液を通すことによって行われている。
【0020】
このような較正によって、ホウ素は一般的に、最小で5ppb、一般的には5ppbから1000ppb、好ましくは5ppbから400ppbの濃度で検出されることが可能である。
【0021】
本発明はまた、以上に述べた方法を実施するための検出デバイスに関する。このようなデバイスは、液体入口手段と別個の液体出口手段とを備えた少なくとも1つの電気化学セルを備え、セルは、セル密閉手段と、基準電極、対向電極、および作用微小電極とをさらに備え、上記作用微小電極は、水と少なくとも1つのホウ素錯化剤とを含む導電性緩衝液の存在下で電気化学セル内に導入されることが可能であり、上記作用ミニ電極は、炭素微小電極と、ビスマス微小電極と、ホウ素添加またはホウ素非添加ダイアモンド微小電極と、水銀膜で被覆された微小電極とから選択され、上記デバイスは、ボルタンメトリーによってホウ素錯体とホウ素錯化剤のアノードピークを測定し、この測定を水の流れに対して連続的に実施することが可能であることを特徴としている。
【0022】
特に好ましくは3つの電極は微小電極である。
【0023】
本発明によるデバイスは、好ましくは作用電極によって拾われた信号を処理する手段も備え、上記処理手段は、好ましくはセル内に存在する液体のホウ素濃度を測定する手段を備える。一般的に、このような手段は、較正を記憶することと、較正と比較することと、測定情報を再伝送することとを可能にする電子手段および/またはコンピュータ手段を備える。
【0024】
本発明によるデバイスは、水浄化システム内に一体化されること、自立した「独立」型モジュール、即ち一般に外部へのリンクがなく、自給型である(外部の作用または情報なしで動作することが可能である)ものに利用されることが可能である。
【0025】
以下の図面を読めば、本発明がよりよく理解される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明による第1ホウ素検出デバイスの上から見た図式的分解図である。
図2】上記第1デバイスの下から見た図式的分解図である。
図3】電気化学セルの内部に電極が配置された、上記第1組立てデバイスを図式的に示す図である。
図4】微小電極が取り外された、図3の上記第1組み立てデバイスを示す図である。
図5】本発明による第2ホウ素検出デバイスの上から見た図式的分解図である。
図6】上記第2デバイスの下から見た図式的分解図である。
図7】電気化学セルの内部に微小電極が配置された、上記第2組立てデバイスを示す図である。
図8】本発明の一実施例によるボルタンメトリー測定を示す図である。
図9】本発明の一実施例による較正曲線を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明によるホウ素検出用第1デバイス10は、図1から図4で示されている通りである。デバイス10は、基部1とカバー2によって画定されたセルを備える。基部1とカバー2はそれぞれ中空部を備え、互いに対向するように配置されることを目的としており、それらの中空部を組み合わせると、それらは互いに補い合い、実際のセル、即ち水とホウ素錯化剤とを含む電解液が存在することになる空間を、また3つの電極(基準電極、作用電極、および対向電極)が接触して電気化学測定、この場合ボルタンメトリー、ができるようになる空間を画定する。部品1と部品2の組立て体は、閉じられた後は、このセルを形成し、ガスケット21がセルの密閉を確保する。
【0028】
カバー2と基部1はそれぞれねじ込み開口部を備え、それらは、これらの2つの部品の組立て体を、基部1の開口部1B、1C、1D、1Eとカバー2の開口部2B、2C、2D、2Eとのそれぞれにネジをねじ込むことによって固定するためのものであり、組立て体は、ネジ22B、22C、22A、22Dによって組み立てられる。上記組立て体が電気化学セルを作り出す。
【0029】
カバー2は、液体入口オリフィス2Aと液体出口オリフィス2Fの2つそれぞれを備え、それらに端部片3と端部片4がそれぞれ部分的に配置されて、液体の通過を可能にし、密閉を保証する。カバー2の壁内で不動化されることのない端部片3と端部片4の端部は、液体流れのための確動ロックを備えた柔軟な管を受け取ることを目的としている。
【0030】
デバイス10は、一般的に、セラミック、PDMS(ポリジメチルシロキサン)型のプラスチック、またはシリコンウエハ型の基板で製作される場合の多い支持体によって構成された板7を備える。板7には、本発明によって微小電極7A、7B、および7C、即ち基準電極、作用電極、および対向電極である3つの電極がセメント接合されている。これら3つの電極の特質は、一般的に、電解質媒体および他の通常のパラメータに応じて当業者によって選択される。
【0031】
本発明によると、他のタイプの支持板、例えば、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)型、PVDF(フッ化ポリビニリデン)型、またはPE(ポリエチレン)型のプラスチックから製作された支持板も想定されることが可能である。石英、さらにステンレススチール(絶縁)などの他の材料から製作された支持板も想定されることが可能である。同様に、微小電極の形状は、この場合は薄い長方形の板の形態であるが、様々であることが可能であり、長方形でなく、例えば円形状または螺旋形状であることが可能である。一般的に、当業者は、本発明の範囲を超えることなく、実施条件に応じて使用デバイスを適合させることが可能である。
【0032】
板7は、簡単な直線移動によって任意にデバイス10内に挿入され、またはデバイス10から取り外されることが可能であり、移動がこのように可能なことによって、有利に上記デバイスの使用の融通性がもたらされる。板7は、特に3つの微小電極を介して、選択された長さの可撓性部8と接触する。可撓性部8は3つの電気信号を剛性板9に伝送し、剛性板9は任意の電気検出または電子検出、さらには測定装置への接続を可能にする。支持板7および3つの微小電極と可撓性部8と接続板9とを組み立てると、デバイス10の着脱部が構成される。
【0033】
図3では、コンパクトな形態の、第1デバイス10が組み立てられた状態で示されているが、微小電極が電気化学セルの内部に存在している。ここに示されているように、デバイス10は、任意の検出測定のために使用されることが可能である。矢印Fは、支持板を保持および移動させることによって、支持体上の電極の組立て体7を損傷することなく移動させて、電極を出すことが可能となる方向を示している。図4は、微小電極がセルから取り外された後の組立てデバイスを示している。したがって、微小電極の組立て体は、例えば維持管理のために、または同じ型の別のセルで使用するために、任意にセルの内部または外部に移動されることが可能である。
【0034】
図5図6、および図7は本発明による第2ホウ素検出デバイス20を示している。図7では組み立てられた状態で示されている。第2デバイス20は第1デバイス10の変化形態であり、デバイス20の部品は、ここで特に明記していない限りデバイス10と同じ種類である。デバイス20は、2つのオリフィス12Aと12Bを備えかつセル上部12Cを画定したカバー12と、一組の電極16が挿入されることが可能な基部11とを備える。組立て体16は、微小電極17A、17B、および17Cが、例えばセメント接合によって固定された支持板17を備える。組立て体16は、微小電極からの信号を電気接続板19に伝導するのに適した可撓性部18も備える。確動ロックでカバー12に固定された液体入口部と液体出口部はそれぞれ端部片13と14である。
【0035】
カバー12を基部11上に固定するための要素はここでは示されていない。これらは例えば溶接手段またはセメント接合手段である。
【0036】
図7では、矢印Fは、支持板を保持および移動させることによって、電極17、17B、および17Cの組立て体を損傷することなく移動させて、電極をこのデバイス20から出すことが可能となる方向および方法を示している。
【0037】
実施例
本発明が、本発明による例示的かつ非限定的な実施例に従って第2デバイス20によって水中のホウ素を測定するために実施された。測定されるべき水と電解液の成分(緩衝液、ホウ素錯化剤)との混合は、例えばコイルの形態の液体アクセス管セクション内でインラインに実施された。図8および図9は得られた結果を示している。図8はこの実施例によって測定されたボルタンメトリー曲線を示しており、図9はこの実施例によって測定された較正曲線を示している。
【0038】
図5から図7に示されたデバイス20は、DPV(「示差パルスボルタンメトリー」)の技法に従って使用された。ピーク出現の電圧は−0.37Vであった。
【0039】
作用微小電極はビスマスで、より正確にはビスマス膜で被覆された炭素で製作されている。支持板はPDMSで製作されている。基準電極はHg/HgClペーストで製作され、対向電極は炭素で製作されている。
【0040】
測定された較正曲線が図9に示されている。これは、y軸に沿ってアノードピークの高さ(マイクロアンペア、μA)Hを、x軸に沿ってホウ素3+イオンの濃度C(ppb)を示している。この較正曲線は、図8の様々な測定値から得られたものである。
【0041】
図8は、図9の較正曲線を生み出した様々な測定値を示している。アノードピークの強さi(アンペア、A)がy軸に沿って示されており、電圧E(ボルト、V)がx軸に沿って示されている。検査した電解液ごとの様々なボルタンモグラムに基づいて、様々なボルタンモグラムが示されている。曲線23は、「ブランク」のボルタンモグラム、即ちホウ素がなく、ARS10−6Mと酢酸アンモニウム0.1Mおよびリン酸アンモニウムとを含むものを表している。カーブ24は、同じ溶液であるが、ホウ素10ppbを加えたものを表している。同様に、曲線25から31はそれぞれ、ホウ素30ppb、ホウ素50ppb、ホウ素70ppb、ホウ素100ppb、ホウ素200ppb、ホウ素300ppb、およびホウ素400ppbについての測定値を表している。
【0042】
測定値は、酢酸塩緩衝液0.1M、リン酸緩衝液0.1Mを用いて、pH7.4で実施された。蓄積電圧は、攪拌を伴う120秒間でE=−0.70Vであり、振幅は50mV、ステップは4mVである。
【0043】
以上に説明した本発明による方法およびデバイスは、インラインで極めて有効に使用されることが可能な、信頼のおける、無毒性の、安全な測定方法によるホウ素検出における特定の利点を提示する。
【符号の説明】
【0044】
1、11 基部
1B、1C、1D、1E 基部1の開口部
2、12 カバー
2A カバー2の液体入口オリフィス
2B、2C、2D、2E カバー2の開口部
2F カバー2の液体出口オリフィス
3、4、13、14 端部片
6、16 一組の電極
7、17 板、支持板
7A、7B、7C、17A、17B、17C、 微小電極
8、18 可撓性部
9 剛性板
10 第1デバイス
12A、12B カバー12のオリフィス
12C カバー12のセル上部
19 接続板
20 第2ホウ素検出デバイス
21 ガスケット
22A、22B、22C、22D ネジ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9