(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5887384
(24)【登録日】2016年2月19日
(45)【発行日】2016年3月16日
(54)【発明の名称】線画像描画方法及び装置
(51)【国際特許分類】
G06T 11/80 20060101AFI20160303BHJP
G06T 5/00 20060101ALI20160303BHJP
【FI】
G06T11/80 A
G06T5/00 720
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-151019(P2014-151019)
(22)【出願日】2014年7月24日
(65)【公開番号】特開2016-24774(P2016-24774A)
(43)【公開日】2016年2月8日
【審査請求日】2014年8月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】511080111
【氏名又は名称】鴨崎 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100071526
【弁理士】
【氏名又は名称】平田 忠雄
(74)【代理人】
【識別番号】100124246
【弁理士】
【氏名又は名称】遠藤 和光
(72)【発明者】
【氏名】鴨崎 淳一
【審査官】
岡本 俊威
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−222429(JP,A)
【文献】
特開平04−030271(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 11/80
G06T 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
描画対象に対応する立体模型に少なくともグリッド線を描く工程と、
前記少なくともグリッド線が描かれた前記立体模型を撮影して前記少なくともグリッド線を線画として顕在化させた低階調画像データを生成する工程と、
前記低階調画像データに対して画像処理プログラムにより前記線画以外の不要な箇所を削除する工程と、
を含む線画の線画像描画方法。
【請求項2】
前記低階調画像データを生成する工程は、
前記少なくともグリッド線が描かれた前記立体模型を撮影する工程と、
前記撮影する工程により得られた撮影画像データを画像処理プログラムにより低階調化して前記低階調画像データを生成する工程と、
を含む請求項1に記載の線画像描画方法。
【請求項3】
前記立体模型に前記少なくともグリッド線を描く工程は、前記立体模型の表面全体に所定の明度の塗料で地色塗装を施した後、前記地色塗装の上から前記地色に対して明度差のある塗料で前記少なくともグリッド線を描く工程である、
請求項1又は2に記載の線画像描画方法。
【請求項4】
画像処理プログラムにより前記低階調画像データに前記グリッド線に基づいて輪郭線を付加する工程を、さらに含む請求項1から3のいずれか1項に記載の線画像描画方法。
【請求項5】
前記低階調画像データは、2値画像データである、
請求項1から4のいずれか1項に記載の線画像描画方法。
【請求項6】
描画対象に対応し、少なくともグリッド線が描かれた立体模型を撮影して得られた撮影画像データを受け付ける受付手段と、
前記撮影画像データを低階調化して前記少なくともグリッド線を線画として顕在化させた低階調画像データを生成する低階調化手段と、
前記低階調画像データに対して前記線画以外の不要な箇所を削除する編集手段と、
を備えた線画像描画装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、線画像描画方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、手作業により線画像を描画する場合、一般的には、下書き、ペン入れ、下書き削除という工程を経て行われている。
【0003】
図7は、従来の手作業による線画像の描画方法を説明するための図である。まず、
図7(a)に示すように、鉛筆等により輪郭線や輪郭線の内側の必要な箇所に線(例えば掌線)を下書きとして描き、次に、
図7(b)に示すように、下書きした線の上からインク等でペン入れを行い、最後に、
図7(c)に示すように、下書きを消しゴム等で消して線画像を完成させる。パーソナルコンピュータ(PC)を用いて線画像を描画する場合も同様の工程を経ている。
【0004】
また、従来、3次元の物体を2次元の画像として描画する方法として、計算機を用いて2次元の画像に輪郭線及び稜線を付加する描画方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。この描画方法は、3次元の物体形状データとカメラの視点位置及び視線の方向等のカメラパラメータに基づいてカメラの視点位置から3次元の物体表面までの距離からなる距離画像を生成し、距離画像から輪郭線及び稜線を抽出し、2次元の画像に輪郭線及び稜線を付加するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−37105号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来の手作業による線画像の描画方法によると、線画像を完成するまでの工程が多く、線画像の製作者にとって煩わしいという問題がある。また、従来の計算機を用いた描画方法によると、3次元データを扱う特別な技術が必要になり、簡易に線画像を描画できないという問題がある。
【0007】
したがって、本発明の目的は、特別な技術を使わなくても誰でも簡単に線画像を描画することができる線画像描画方法及び装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
[1]描画対象に対応する立体模型に
少なくともグリッド線を描く工程と、
前記
少なくともグリッド線が描かれた前記立体模型を撮影して前記
少なくともグリッド線を線画として顕在化させた低階調画像データを生成する工程と、
前記低階調画像データに対して画像処理プログラムにより前記線画以外の不要な箇所を削除する工程と、を含む線画の線画像描画方法。
[2]前記低階調画像データを生成する工程は、
前記
少なくともグリッド線が描かれた前記立体模型を撮影する工程と、
前記撮影する工程により得られた撮影画像データを画像処理プログラムにより低階調化して前記低階調画像データを生成する工程と、を含む前記[1]に記載の線画像描画方法。
[3]前記立体模型に前記
少なくともグリッド線を描く工程は、前記立体模型の表面全体に所定の明度の塗料で地色塗装を施した後、前記地色塗装の上から前記地色に対して明度差のある塗料で前記
少なくともグリッド線を描く工程である、前記[1]又は[2]に記載の線画像描画方法。
[4]画像処理プログラムにより前記低階調画像データに
前記グリッド線に基づいて輪郭線を付加する工程を、さらに含む前記[1]から[3]のいずれかに記載の線画像描画方法。
[5]前記低階調画像データは、2値画像データである、前記[1]から[4]のいずれかに記載の線画像描画方法。
[6]描画対象に対応し、
少なくともグリッド線が描かれた立体模型を撮影して得られた撮影画像データを受け付ける受付手段と、
前記撮影画像データを低階調化して前記
少なくともグリッド線を線画として顕在化させた低階調画像データを生成する低階調化手段と、
前記低階調画像データに対して前記線画以外の不要な箇所を削除する編集手段と、
を備えた線画像描画装置。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、特別な技術を使わなくても誰でも簡単に線画像を描画することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る線画像描画装置の概略の構成例を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、撮影画像データの一例を示す図である。
【
図3】
図3は、低階調画像データの一例を示す図である。
【
図4】
図4は、線画像データの一例を示す図である。
【
図5】
図5は、線画像データの一例を示す図である。
【
図6】
図6は、本発明の第2の実施の形態に係る撮影画像データの一例を示す図である。
【
図7】
図7(a)〜(c)は、従来の手作業による線画像の描画方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、各図中、実質的に同一の機能を有する構成要素については、同一の符号を付してその重複した説明を省略する。
【0012】
[第1の実施の形態]
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る線画像描画装置の概略の構成例を示すブロック図である。この線画像描画装置1は、本装置1の各部を制御する制御部2と、各種の情報を記憶する記憶部3と、外部メモリとの間でデータの読み書きを行う外部メモリIF部4と、キーボード、マウス等によって構成された入力部5と、液晶ディスプレイ等によって構成された表示部6と、ネットワークを介して外部装置と通信を行うネットワーク通信部7とを備えて概略構成されている。
【0013】
線画像描画装置1は、カメラで撮影して得られた撮影画像データからユーザの編集作業に基づいて線画像データを描画するものである。ここで、「線画像」とは、細線、太線、破線等の線によって表現された画像をいう。線画像描画装置1は、例えば、パーソナルコンピュータ(PC)、タブレット型PC、多機能携帯電話機(スマートフォン)等で実現することができる。
【0014】
制御部2は、CPU(Central Processing Unit)等によって構成され、画像処理プログラム30を実行することにより、受付手段20、低階調化手段21、編集手段22等として機能する。なお、制御部2の各手段20〜22は、全部又は一部がASIC(Application Specific Integrated Circuit)等のハードウエアによって実現されてもよい。
【0015】
記憶部3は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard disk drive)等から構成され、画像処理プログラム30、撮影画像データ31、低階調画像データ32、線画像データ33等が記憶される。
【0016】
外部メモリIF部4は、外部メモリが装着されるメモリスロット等を備え、メモリスロットに装着された外部メモリとの間でデータの読み書きを行うものである。外部メモリは、例えば、USB(Universal Serial Bus)メモリ、SDメモリカード、メモリスティック等の半導体メモリであり、カメラで撮影して得られた撮影画像データが記憶される。
【0017】
受付手段20は、外部メモリIF部4又はネットワーク通信部7を介してカメラで撮影して得られた撮影画像データを受け付けし、記憶部3に記憶する。
【0018】
低階調化手段21は、記憶部3に記憶された撮影画像データを当該撮影画像データの階調よりも低階調(例えば、2値)の低階調画像データに変換し、記憶部3に記憶する。なお、低階調としては3値等の階調に変換してもよい。カメラが低階調化機能(例えば、シーンモードの文字モード)を備えている場合には、その機能を使用して撮影画像データを低階調化した低階調画像データを線画像描画装置1に入力してもよい。本装置1が低階調化手段21を備えることにより、低階調化機能を備えていないカメラでも本発明を適用することができる。ここで、「シーンモード」とは、目的のシーン(夜景、風景、室内等)に応じて最適な条件で撮影するモードをいう。「シーンモードの文字モード」とは、通常のモードで撮影された画像(撮影画像データ)を文字が鮮明となる画像(低階調画像データ)に変換するシーンモードをいう。
【0019】
編集手段22は、低階調画像データに対して入力部5を操作して指示された削除、付加等の編集を行って線画像データを生成し、その線画像データを記憶部3に記憶する。
【0020】
(第1の実施の形態の動作)
次に、線画像描画装置1を用いた線画像の描画方法の一例について説明する。
【0021】
まず、ユーザは、描画対象に対応する立体模型の表面全体に所定の明度の塗料、例えば白色系の塗料で地色塗装を施す。地色の塗料は、立体模型の材質に応じたものを選ぶのが好ましい。なお、地色は、白色に限られず、白色に近い灰色、青色、黄色や、地色の上に明るい色で線を描く場合には、黒色系の色等でもよい。
【0022】
次に、立体模型の地色塗装の上に線画像の描画に必要な線を例えば黒色系の塗料で描く(線入れ)。この線入れ用の塗料は、立体模型の材質に応じたものを選ぶのが好ましい。なお、線入れ用の塗料は、黒色に限られず、地色に対して明度差のある色なら、黒色に近い灰色や、地色が暗い色の場合は、青色、黄色等の明るい色等の他の色でもよい。線画像の描画に必要な線としては、例えば、中心線、グリッド線(格子状線)等の補助線、輪郭線、稜線、影線、掌線等がある。輪郭線とは、カメラで撮影した画像上で輪郭となる線をいう。
【0023】
次に、ユーザは、上記の塗装が施された立体模型をカメラで撮影する。その撮影によって得られた撮影画像データは、カメラに着脱可能に収容された外部メモリに保存される。
【0024】
図2は、その撮影画像データの一例を示す図である。同図に示す撮影画像データ31には、人間の立体模型の像31aの表面にグリッド線31bや中間濃度部分31cが現れ、背景に立体模型の影31dが現れている。
【0025】
次に、ユーザは、カメラから外部メモリを取り出し、線画像描画装置1の外部メモリIF部4のメモリスロットに装着する。線画像描画装置1の受付手段20は、外部メモリIF部4のメモリスロットに装着された外部メモリから撮影画像データ31を読み出し、記憶部3に記憶する。なお、撮影画像データ31をネットワーク通信部7を介して取り込んでもよい。
【0026】
ユーザは、入力部5を操作して記憶部3が記憶する撮影画像データ31のうち編集対象の撮影画像データ31を選択する。制御部2は、ユーザにより選択された撮影画像データ31を記憶部3から読み出して表示部6に表示する。
【0027】
ユーザは、入力部5を操作して低階調化処理を指示すると、低階調化手段21は、表示部6に表示されている撮影画像データ31を例えば2値に低階調化して低階調画像データ32を生成し、その低階調画像データ32を表示部6に表示するとともに、記憶部3に記憶する。
【0028】
図3は、その低階調画像データ32の一例を示す図である。同図に示す低階調画像データ32には、人間の立体模型の像32aの表面にグリッド線32bが現れ、背景に影32dが現れている。低階調画像データ32には、撮影画像データ31に現れていた
図2に示す中間濃度部分31cが低階調化によって消えている。
【0029】
次に、ユーザは、入力部5を操作して低階調画像データ32に対して線画以外の不要な箇所、例えば影32dを削除する指示を行うと、編集手段22は、指示された影32dを低階調画像データ32から削除する。
【0030】
また、ユーザは、入力部5を操作して低階調画像データ32に対して必要な箇所に線を付加する指示を行うと、編集手段22は、指示された線を低階調画像データ32に付加して線画像データ33を生成し、記憶部3に記憶する。
【0031】
図4及び
図5は、その線画像データ33の一例を示す図である。
図4に示す線画像データ33Aでは、
図3に示す影32dが消え、輪郭線33aが付加されている。
図5に示す線画像データ33Bでは、
図4に示す線画像データ33Aに対してさらに線で表された衣服33bが付加され、グリッド線32bが一部削除されている。なお、
図5において、グリッド線32bを全て削除してもよい。
【0032】
制御部2は、完成した線画像データ33Bを、外部メモリIF部4のメモリスロットに装着された外部メモリを書き込む。なお、完成した線画像データ33Bを、ネットワーク通信部7を介してプリンタや他のPC等の外部装置に送信してもよい。
【0033】
(第1の実施の形態の効果)
本実施の形態によれば、3次元データを扱う必要がなく、立体模型とカメラを使った簡単な操作で線画像を描画することができるため、特別な技術を使わなくても誰でも簡単に線画像を描画することができる。
【0034】
[第2の実施の形態]
図6は、本発明の第2の実施の形態に係る撮影画像データの一例を示す図である。第1の実施の形態では、立体模型として人間の立体模型を用いた場合について説明したが、本実施の形態は、建物や風景等の背景を立体模型としたものである。
【0035】
立体模型として明度の高い色の紙で建物等の背景を作成し、この背景に必要な線を描き、それをカメラで撮影して
図6に示すような撮影画像データを生成する。
図6に示す撮影画像データ31には、建物の背景からなる立体模型の像32a及び人物の像32a’が含まれている。立体模型の像32aには、建物の窓やドア等を示す線31eが現れている。後の工程は第1の実施の形態と同様であるので、説明を省略する。
【0036】
(第2の実施の形態の効果)
本実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様に、3次元データを扱う必要がなく、立体模型とカメラを使った簡単な操作で線画像を描画することができるため、特別な技術を使わなくても誰でも簡単に線画像を描画することができる。
【0037】
本発明は、上記実施の形態に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲内で種々に変形実施が可能である。
【符号の説明】
【0038】
1…線画像描画装置、2…制御部、3…記憶部、4…外部メモリIF部、5…入力部、
6…表示部、7…ネットワーク通信部、20…受付手段、21…低階調化手段、
22…編集手段、30…画像処理プログラム、31…撮影画像データ、
31a…立体模型の像、31b…グリッド線、31c…中間濃度部分、31d…影、
31e…線、32…低階調画像データ、32a…立体模型の像、32a’…人物の像、
32b…グリッド線、32d…影、33、33A、33B…線画像データ、
33a…輪郭線、33b…衣服