特許第5887404号(P5887404)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5887404光学フィルム用粘着剤組成物および粘着型光学フィルム、ならびに積層体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5887404
(24)【登録日】2016年2月19日
(45)【発行日】2016年3月16日
(54)【発明の名称】光学フィルム用粘着剤組成物および粘着型光学フィルム、ならびに積層体
(51)【国際特許分類】
   C09J 133/00 20060101AFI20160303BHJP
   G02B 5/30 20060101ALI20160303BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20160303BHJP
   C09J 133/04 20060101ALI20160303BHJP
   C09J 7/02 20060101ALI20160303BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20160303BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20160303BHJP
   B32B 7/02 20060101ALI20160303BHJP
   G02F 1/1335 20060101ALI20160303BHJP
   G02F 1/13363 20060101ALI20160303BHJP
【FI】
   C09J133/00
   G02B5/30
   C09J11/06
   C09J133/04
   C09J7/02 Z
   B32B27/30 A
   B32B27/00 D
   B32B7/02 103
   G02F1/1335 510
   G02F1/13363
【請求項の数】9
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2014-513378(P2014-513378)
(86)(22)【出願日】2013年11月27日
(86)【国際出願番号】JP2013081882
(87)【国際公開番号】WO2014091927
(87)【国際公開日】20140619
【審査請求日】2014年3月27日
(31)【優先権主張番号】特願2012-273724(P2012-273724)
(32)【優先日】2012年12月14日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000202350
【氏名又は名称】綜研化学株式会社
(72)【発明者】
【氏名】室井 佐知
(72)【発明者】
【氏名】大岡 竜太
【審査官】 磯貝 香苗
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−038055(JP,A)
【文献】 特開2005−187677(JP,A)
【文献】 特開2006−169438(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/024103(WO,A1)
【文献】 国際公開第2008/010367(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00−201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
架橋性官能基を有するアクリル系ポリマー(A)と、架橋剤(B)とを含み、
下記に定義される最大変形率が10%以下であり、かつ、下記に定義される歪み復元率が50%以上である、光学フィルム用粘着剤組成物であって、
前記架橋性官能基を有するアクリル系ポリマー(A)が、
架橋性官能基を有さず、かつ、ガラス転移温度(Tg)が0℃以上の(メタ)アクリル酸エステル(a1)5〜55質量%と、
架橋性官能基を有さず、かつ、ガラス転移温度(Tg)が0℃未満の(メタ)アクリル酸エステル(a2)44.5〜94.5質量%と、
架橋性官能基を有するモノマー(a3)0.5〜6質量%と、
を含むモノマー混合物の重合体であり(ここで、前記モノマー混合物中における前記(a1)、(a2)および(a3)の合計量は90〜100質量%である。)、
前記アクリル系ポリマー(A)成分の含有量が粘着剤組成物100質量部に対して95〜99.8質量部であって、
前記架橋剤(B)がイソシアネート架橋剤であることを特徴とする光学フィルム用粘着剤組成物。

最大変形率:前記光学フィルム用粘着剤組成物を平板上に塗布し乾燥して得られる厚さ1mmの粘着シートを、Φ8mmにカットして得られる試験片について、レオメーターを用いて下記測定工程1ないし3を順に行った場合において、変形率が最大となる時点の変形率(%)

最終変形率:レオメーターを用いて下記測定工程1ないし3を順に行った後の該試験片の変形率(%)

歪み復元率:前記光学フィルム用粘着剤組成物を平板上に塗布し乾燥して得られる厚さ1mmの粘着シートを、Φ8mmにカットして得られる試験片について、下記式(1)に基づいて算出された値

歪み復元率(%)=(最大変形率−最終変形率)/最大変形率×100・・・(1)

測定工程1:前記試料片の温度を23℃から80℃まで15分間一定速度で増加させつつ、該試料片の剪断応力を0Paから1000Paまで15分間一定速度で増加させる

測定工程2:前記試料片の温度を80℃で30分間保持しつつ、剪断応力を1000Paから2000Paまで30分間一定速度で増加させる

測定工程3:前記試料片の温度を80℃から23℃まで15分間一定速度で減少させつつ、該試料片の剪断応力を2000Paから0Paまで15分間一定速度で減少させる
【請求項2】
前記(メタ)アクリル酸エステル(a1)が(メタ)アクリル酸アルキルエステルであり、
前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルのアルキルエステル部位を構成するアルキル鎖(ここで、前記アルキル鎖の炭素原子数は1〜20である。)が直鎖状または分岐状のアルキル鎖である、請求項1に記載の光学フィルム用粘着剤組成物。
【請求項3】
前記架橋性官能基を有するアクリル系ポリマー(A)は、Tgが−70〜0℃である、請求項1または2記載の光学フィルム用粘着剤組成物。
【請求項4】
前記架橋性官能基を有するアクリル系ポリマー(A)は、重量平均分子量が50万〜200万である、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の光学フィルム用粘着剤組成物。
【請求項5】
ゲル分率が70%以上である、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の光学フィルム用粘着剤組成物。
【請求項6】
架橋性官能基を有するアクリル系ポリマー(A)と、架橋剤(B)とを含み、
前記架橋性官能基を有するアクリル系ポリマー(A)が
架橋性官能基を有さず、かつ、ガラス転移温度(Tg)が0℃以上の(メタ)アクリル酸エステル(a1)5〜55質量%と、
架橋性官能基を有さず、かつ、ガラス転移温度(Tg)が0℃未満の(メタ)アクリル酸エステル(a2)44.5〜94.5質量%と、
架橋性官能基を有するモノマー(a3)0.5〜6質量%と、
を含むモノマー混合物の重合体であって(ここで、前記モノマー混合物中における前記(a1)、(a2)および(a3)の合計量は90〜100質量%である。)、
前記アクリル系ポリマー(A)成分の含有量が粘着剤組成物100質量部に対して95〜99.8質量部であって、
前記架橋剤(B)がイソシアネート架橋剤であり、かつ、ゲル分率70%以上である、光学フィルム用粘着剤組成物。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1項に記載の光学フィルム用粘着剤組
成物を含む粘着剤層を、光学フィルムの片面または両面に設える、粘着型光学フィルム。
【請求項8】
偏光フィルム、位相差フィルム、楕円偏光フィルム、反射防止フィルム、輝度向上フィルムおよび光拡散フィルムからなる群から選択される光学フィルムである、請求項7に記載の粘着型光学フィルム。
【請求項9】
ガラス基板と、
偏光板と、
前記ガラス基板と前記偏光板との間に設けられた、請求項1ないし6のいずれか1項に記載の光学フィルム用粘着剤組成物を膜状に成形し、加熱して得られる粘着剤層と、
を含む、積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学フィルム用粘着剤組成物および粘着型光学フィルム、ならびに積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
画像表示装置は、近年、様々な用途や条件下において使用されており、例えば、室温条件下のみならず、高温、さらには高温多湿といった過酷な条件下においても使用されることも多くなっている。高温または高温多湿条件での使用としては、例えば、熱帯地域における使用、車両内部や野外計測機器の内部での使用が挙げられる。
【0003】
また、画像表示装置を構成する偏光フィルム等の光学フィルムは、二色性を有する色素をポリビニルアルコール等の高分子フィルムに吸着させ、延伸および配向させることにより作製される。このため、光学フィルムは、高温や多湿環境下で収縮して、寸法変形が生じやすい。また、一度、光学フィルムに寸法変形が生じた場合、たとえ、温度条件や湿度条件と変えたとしても、元の寸法には完全に戻ることは困難である。その結果、光学フィルムの寸法変化によって生じた応力の影響で粘着剤層にひび割れ、剥がれ、浮きが生じたり、偏光軸の歪みによる光漏れが画像表示装置に発生してしまったりする。
【0004】
さらに、近年、画像表示装置の大画面化、高画質化、高耐久性が求められている。例えば、画像表示装置が液晶表示装置である場合、省電力化の要求に応じるため、光源にLEDを使用する方式が多く採用されつつある。光源にLEDを使用する方式の液晶表示装置の場合、高画質化の要求や、光源由来の熱や光に対する高耐久性が顕著である。しかしながら、光源にLEDを使用する方式を採用する液晶表示装置の場合、光源であるLEDの輝度が高いため、光漏れが目立つ傾向がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−169329号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、高温および多湿条件下で優れた耐久性を発揮し、かつ、液晶セル等の被着体と偏光フィルム等の光学フィルムとの接着に使用された場合、光漏れを低減することができる光学フィルム用粘着剤組成物、およびそれを用いた粘着型光学フィルムならびに積層体を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、このような課題を解決すべく、所定の粘弾特性を有する粘着剤組成物を用いて粘着剤層を形成し、液晶セル等の被着体と偏光フィルム等の光学フィルムとの接着に使用した場合、光漏れを低減することができることを見出した。
【0008】
1.本発明の一態様に係る光学フィルム用粘着剤組成物は、架橋性官能基を有するアクリル系ポリマー(A)と、架橋剤(B)とを含み、下記に定義される最大変形率が10%以下であり、かつ、下記に定義される歪み復元率が50%以上である。

最大変形率:前記光学フィルム用粘着剤組成物を平板上に塗布し乾燥して得られる厚さ1mmの粘着シートを、Φ8mmにカットして得られる試験片について、レオメーターを用いて下記測定工程1ないし3を順に行った場合において、変形率が最大となる時点の変形率(%)

最終変形率:レオメーターを用いて下記測定工程1ないし3を順に行った後の該試験片の変形率(%)

歪み復元率:前記光学フィルム用粘着剤組成物を平板上に塗布し乾燥して得られる厚さ1mmの粘着シートを、Φ8mmにカットして得られる試験片について、下記式(1)に基づいて算出された値

歪み復元率(%)=(最大変形率−最終変形率)/最大変形率×100・・・(1)

測定工程1:前記試料片の温度を23℃から80℃まで15分間一定速度で増加させつつ、該試料片の剪断応力を0Paから1000Paまで15分間一定速度で増加させる

測定工程2:前記試料片の温度を80℃で30分間保持しつつ、剪断応力を1000Paから2000Paまで30分間一定速度で増加させる

測定工程3:前記試料片の温度を80℃から23℃まで15分間一定速度で減少させつつ、該試料片の剪断応力を2000Paから0Paまで15分間一定速度で減少させる
【0009】
2.上記1に記載の光学フィルム用粘着剤組成物において、前記架橋性官能基を有するアクリル系ポリマー(A)が、架橋性官能基を有さず、かつ、ガラス転移温度(Tg)が0℃以上の(メタ)アクリル酸エステル(a1)5〜55質量%と、架橋性官能基を有さず、かつ、ガラス転移温度(Tg)が0℃未満の(メタ)アクリル酸エステル(a2)44.5〜94.5質量%と、架橋性官能基を有するモノマー(a3)0.5〜6質量%と、を含むモノマー混合物の重合体である(ここで、前記モノマー混合物中における前記(a1)、(a2)および(a3)の合計量は90〜100質量%である。)ことができる。
【0010】
3.上記1または2に記載の光学フィルム用粘着剤組成物において、前記(メタ)アクリル酸エステル(a1)が(メタ)アクリル酸アルキルエステルであり、前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルのアルキルエステル部位を構成するアルキル鎖(ここで、前記アルキル鎖の炭素原子数は1〜20である。)が直鎖状または分岐状のアルキル鎖であることができる。
【0011】
4.上記1ないし3のいずれかに記載の光学フィルム用粘着剤組成物において、前記架橋性官能基を有するアクリル系ポリマー(A)は、Tgが−70〜0℃であることができる。
【0012】
5.上記1ないし4のいずれかに記載の光学フィルム用粘着剤組成物において、前記架橋性官能基を有するアクリル系ポリマー(A)は、重量平均分子量が50万〜200万であることができる。
【0013】
6.上記1ないし5のいずれかに記載の光学フィルム用粘着剤組成物において、ゲル分率が70%以上であることができる。
【0014】
7.本発明の別の態様に係る光学フィルム用粘着剤組成物は、架橋性官能基を有するアクリル系ポリマー(A)と、架橋剤(B)とを含み、
前記架橋性官能基を有するアクリル系ポリマー(A)が、
架橋性官能基を有さず、かつ、ガラス転移温度(Tg)が0℃以上の(メタ)アクリル酸エステル(a1)5〜55質量%と、
架橋性官能基を有さず、かつ、ガラス転移温度(Tg)が0℃未満の(メタ)アクリル酸エステル(a2)44.5〜94.5質量%と、
架橋性官能基を有するモノマー(a3)0.5〜6質量%と、
を含むモノマー混合物の重合体であって(ここで、前記モノマー混合物中における前記(a1)、(a2)および(a3)の合計量は90〜100質量%である。)、ゲル分率70%以上であることができる。
【0015】
8.本発明の他の態様に係る粘着型光学フィルムは、上記1ないし7のいずれかに記載の光学フィルム用粘着剤組成物を含む粘着剤層を、光学フィルムの片面または両面に設える。
【0016】
9.上記8に記載の粘着型光学フィルムは、偏光フィルム、位相差フィルム、楕円偏光フィルム、反射防止フィルム、輝度向上フィルムおよび光拡散フィルムからなる群から選択される光学フィルムであることができる。
【0017】
10.本発明の他の態様に係る積層体は、ガラス基板と、偏光板と、前記ガラス基板と前記偏光板との間に設けられた、上記1ないし7のいずれかに記載の光学フィルム用粘着剤組成物を膜状に成形し、加熱して得られる粘着剤層と、を含む。
【発明の効果】
【0018】
上記光学フィルム用粘着剤組成物は、適度な粘着力を有し、高温条件下あるいは高温多湿条件下で優れた耐久性を発揮し、かつ、液晶セル等の被着体と偏光フィルム等の光学フィルムとの接着に使用された場合、光漏れを低減することができる。また、上記光学フィルム用粘着剤組成物を使用した上記粘着型光学フィルムは、液晶セル等の被着体に適度な粘着力で貼着され、高温条件下あるいは高温多湿条件下で、優れた耐久性を発揮し、かつ、液晶セル等の被着体との接着に使用される場合、光漏れを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、レオメーターを用いて測定された、本発明の一実施形態に係る光学フィルム用粘着剤組成物の変形率の経時変化を模式的に説明するグラフである。
図2図2は、本発明の実施例における画像表示装置(液晶ディスプレイパネル)の輝度の測定方法を模式的に説明する図である。
図3図3は、本発明の粘着剤組成物の試験片について、レオメーターを用いて変形率を測定する方法を説明する図である。
図4図4は、本発明の一実施形態に係る光学フィルム用粘着剤組成物を用いて得られた粘着剤層を含む積層体の一例を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しつつ、本発明を詳細に説明する。なお、本発明において、格別に断らない限り、「部」は「質量部」を意味し、「%」は「質量%」を意味する。
【0021】
1.光学フィルム用粘着剤組成物
本発明の一実施形態に係る光学フィルム用粘着剤組成物(以下、単に「粘着剤組成物」と記載する場合もある。)は、架橋性官能基を有するアクリル系ポリマー(A)(以下、単に「(A)成分」と記載する場合もある。)と、架橋剤(B)(以下、単に「(B)成分」と記載する場合もある。)と、を含む。
【0022】
本実施形態に係る光学フィルム用粘着剤組成物は、下記に定義される最大変形率が10%以下であり、かつ、下記に定義される歪み復元率が50%以上である。

最大変形率:前記光学フィルム用粘着剤組成物を平板上に塗布し乾燥して得られる厚さ1mmの粘着シートを、Φ8mmにカットして得られる試験片について、レオメーターを用いて下記測定工程1ないし3を順に行った場合において、変形率が最大となる時点の変形率(%)

最終変形率:レオメーターを用いて下記測定工程1ないし3を順に行った後の該試験片の変形率(%)

歪み復元率:本実施形態に係る光学フィルム用粘着剤組成物を平板上に塗布し乾燥して得られる厚さ1mmの粘着シートを、Φ8mmにカットして得られる試験片について、下記式(1)に基づいて算出された値

歪み復元率(%)=(最大変形率−最終変形率)/最大変形率×100・・・(1)

測定工程1:前記試料片の温度を23℃から80℃まで15分間一定速度で増加させつつ、該試料片の剪断応力を0Paから1000Paまで15分間一定速度で増加させる

測定工程2:前記試料片の温度を80℃で30分間保持しつつ、剪断応力を1000Paから2000Paまで30分間一定速度で増加させる

測定工程3:前記試料片の温度を80℃から23℃まで15分間一定速度で減少させつつ、該試料片の剪断応力を2000Paから0Paまで15分間一定速度で減少させる
【0023】
1.1.最大変形率および歪み復元率
本発明における「最大変形率」は、粘着剤組成物の変形しやすさの指標であり、最大変形率が大きいほど、粘着剤組成物が変形しやすいといえる。本実施形態に係る光学フィルム用粘着剤組成物において、前記最大変形率が10%を超えると、粘着剤の被着体の膨張または収縮に粘着剤層が追従できない結果、粘着剤層に複屈折が生じ、光漏れを防止できない場合がある。本実施形態に係る光学フィルム用粘着剤組成物において、粘着剤に生じる複屈折をより確実に防止して、光漏れをより低減することができる点で、前記最大歪み率は10%以下であることが好ましく、8%以下であることがより好ましい。
【0024】
また、本発明における「歪み復元率」は、変形した粘着剤組成物の復元しやすさの指標であり、歪み復元率が大きいほど、粘着剤組成物が変形から復元しやすいといえる。本実施形態に係る光学フィルム用粘着剤組成物において、前記歪み復元率が50%未満であると、粘着剤層の変形が復元しにくいため、粘着剤に生じた複屈折が解消せず、光漏れを防止できない場合がある。本実施形態に係る光学フィルム用粘着剤組成物において、粘着剤に生じた複屈折を速やかに解消して、光漏れをより低減することができる点で、前記歪み復元率は50%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましい。
【0025】
なお、本発明において、ある時点の「変形率(%)」は、{レオメーターに設置されたφ8mm治具の円周移動量M(μm)}/{上記測定工程1ないし3を行う前の試料片の厚みT(μm)}×100(%)を意味するものとする(図3参照)。
【0026】
本発明における「最大変形率」および「歪み復元率」について図1を参照して説明する。図1は、レオメーターを用いて測定された、本実施形態に係る光学フィルム用粘着剤組成物の変形率の経時変化を模式的に説明するグラフである。すなわち、図1は、本実施形態に係る光学フィルム用粘着剤組成物の粘弾特性(レオロジー特性)について、レオメーターを用いて上記測定工程1ないし3を順に行って測定した結果を示している。すなわち、本実施形態に係る光学フィルム用粘着剤組成物の変形率は、レオメーターを用いて測定された値である。
【0027】
測定工程1ないし3は、本実施形態に係る光学フィルム用粘着剤組成物の粘着剤層が被着体の表面に形成された場合に長期間にわたって生じる変形を模したものである。
【0028】
測定工程1では、試料片の温度および剪断応力を所定時間(15分間)、一定速度で増加させる。測定工程2では、試料片を一定の温度(80℃)および一定の剪断応力(1000Pa)の下で保持する。測定工程3では、試料片の温度および剪断応力を所定時間(15分間)、一定速度で減少させる。
【0029】
図1を参照すると、測定工程1および2の間、変形率は上昇を続け、測定工程2の終了時に変形率は最大(最大変形率)となる(なお、変形率が最大となる時点の変形率が最大変形率である。)。その後、測定工程3において、試料片の温度および剪断応力とともに変形率は減少し、測定工程3の終了時には、測定工程3における変形率が最少となる(最終変形率)。最終変形率および最大変形率から式(1)に基づいて歪み復元率が算出される。
【0030】
1.2.(A)成分
本発明において、「アクリル系ポリマー」とは、アクリル酸、アクリル酸塩、アクリル酸エステル、メタアクリル酸、メタクリル酸塩、およびメタクリル酸エステルから選ばれる少なくとも1種を構成単位中に50質量%以上含むポリマーをいう。また、本発明において、「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸およびメタアクリル酸を含む概念である。また、本発明において、「架橋性官能基」とは、架橋剤(B)と反応し得る官能基をいい、より具体的には、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、アミド基、および酸無水物基から選ばれる少なくとも1種の基をいう。
【0031】
本実施形態に係る粘着剤組成物における(A)成分の含有量は、本実施形態に係る粘着剤組成物100質量部に対して90〜99.99質量部であることができ、95〜99.8質量部であることが好ましい。
【0032】
本実施形態に係る粘着剤組成物において、(A)成分は、架橋性官能基を有さず、かつ、ガラス転移温度(Tg)が0℃以上の(メタ)アクリル酸エステル(a1)(以下、単に「(a1)成分」と記載する場合もある。)5〜55質量%と、架橋性官能基を有さず、かつ、ガラス転移温度(Tg)が0℃未満の(メタ)アクリル酸エステル(a2)(以下、単に「(a2)成分」と記載する場合もある。)44.5〜94.5質量%と、架橋性官能基を有するモノマー(a3)(以下、単に「(a3)成分」と記載する場合もある。)0.5〜6質量%と、を含むモノマー混合物の重合体であることができる。
【0033】
1.2.1.(a1)成分
(a1)成分は例えば、下記一般式(1)で表される、Tgが0℃以上の(メタ)アクリル酸エステルであることができる。
【0034】
化1
(式中、Rは水素原子またはメチル基を表し、Rは、直鎖状または分岐状アルキル基、脂環基、または芳香環含有基を表す。)
【0035】
(a1)成分である、Tgが0℃以上の(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、n−ヘキサデシルアクリレート、n−ヘキサデシルメタクリレート、ステアリルアクリレート、ステアリルメタクリレート等のエステル部位に直鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル;
t−ブチルアクリレート、i−プロピルメタクリレート、i−ブチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート等のエステル部位に分岐状アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル;
シクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、イソボルニルアクリレート、イソボルニルメタクリレート等のエステル部位に脂環基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル;
ベンジルメタクリレート、ベンジルアクリレート、2−ナフチルアクリレート等のエステル部位に芳香環基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられ、このうち1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。このうち、本実施形態に係る粘着剤組成物を用いて形成された粘着剤層が画像表示装置の光漏れをより低減できる点で、(a1)成分は(メタ)アクリル酸アルキルエステルであって、該(メタ)アクリル酸アルキルエステルのアルキルエステル部位を構成するアルキル鎖が直鎖状または分岐状のアルキル鎖であることが好ましく、分岐状のアルキル鎖を有することがより好ましい。この場合、本実施形態に係る粘着剤組成物を用いて形成された粘着剤層が画像表示装置の光漏れをさらに低減できる点で、前記アルキル鎖の炭素原子数は1〜20(好ましくは1〜10)であることがさらに好ましい。
【0036】
(A)成分である重合体を得るための前記モノマー混合物中における(a1)成分の含有量が5質量%未満であると、光漏れを十分に抑えることができない場合があり、一方、55質量%を超えると、粘着剤層が硬くなりすぎ、貼付作業性が悪くなったり、耐久性に悪影響を及ぼしたりする場合がある。光漏れを十分に抑え、かつ、耐久性に優れた粘着剤層を得るためには、(A)成分である重合体を得るための前記モノマー混合物中における(a1)成分の含有量は、5〜55質量%であることが好ましく、10〜40質量%であることがより好ましい。
【0037】
1.2.2.(a2)成分
(a2)成分は例えば、下記一般式(1)で表される、Tgが0℃未満の(メタ)アクリル酸エステルであることができる。
【0038】
[化2]
(式中、Rは水素原子またはメチル基を表し、Rは、直鎖状または分岐状アルキル基、脂環基、または芳香環含有基を表す。)
【0039】
(a2)成分である、Tgが0℃未満の(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、n−ペンチルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、n−ヘキシルメタクリレート、n−ペンチルアクリレート、n−オクチルアクリレート、n−オクチルメタクリレート、n−ノニルアクリレート、n−ラウリルメタクリレート、n−ラウリルアクリレート、n−テトラデシルメタクリレート、等のエステル部位に直鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル;i−プロピルアクリレート、i−ブチルアクリレート、i−オクチルアクリレート、i−オクチルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート等のエステル部位に分岐状アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル;フェノキシエチルアクリレート等のエステル部位に芳香環基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられ、このうち1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。このうち、本実施形態に係る粘着剤組成物を用いて形成された粘着剤層が光漏れをより低減できる点で、(a2)成分は(メタ)アクリル酸アルキルエステルであって、該(メタ)アクリル酸アルキルエステルのアルキルエステル部位を構成するアルキル鎖が直鎖状または分岐状のアルキル鎖であることが好ましく、直鎖状のアルキル鎖を有することがより好ましい。この場合、本実施形態に係る粘着剤組成物を用いて形成された粘着剤層が画像表示装置の光漏れをさらに低減できる点で、前記アルキル鎖の炭素原子数は1〜20(好ましくは1〜10)であることがさらに好ましい。
【0040】
(A)成分である重合体を得るための前記モノマー混合物中における(a2)成分の含有量が44.5質量%未満であると、粘着物性のバランスが崩れ、被着体への密着力が不足する場合があり、一方、94.5質量%を超えると、光漏れを十分に抑えることができない場合がある。光漏れを十分に抑え、かつ、耐久性に優れた粘着剤層を得るためには、(A)成分である重合体を得るための前記モノマー混合物中における(a2)成分の含有量は、44.5〜94.5質量%であることが好ましく、50〜89.5質量%であることがより好ましく、60〜86質量%であることが更に好ましい。
【0041】
1.2.3.(a3)成分
(a3)成分は、(a1)成分および(a2)成分以外の単量体であって、架橋性官能基を有する。(a3)成分としては、例えば、カルボキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート
、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレート、アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、アクリルアマイド、アクリロニトリルが挙げられ、このうち、架橋性官能基を有するモノマーを必須とする1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。このうち、(a3)成分は、(B)成分である架橋剤との架橋性能に優れる点で、架橋性官能基を有するアルキル(メタ)アクリレートおよびアルキルアマイドあるいはいずれか一方であることが好ましく、水酸基を有するアルキル(メタ)アクリレート、アクリル酸、およびアルキルアマイドから選ばれる少なくとも1種であることがより好ましい。
【0042】
1.2.4.(a1)成分、(a2)成分および(a3)成分の合計量
本実施形態に係る粘着剤組成物では、所定の最大変形率および歪み復元率を達成できる観点から、(A)成分である重合体を得るための前記モノマー混合物中における前記(a1)成分、(a2)成分および(a3)成分の合計量が90〜100質量%であることができ、95〜100質量%であることが好ましい。
【0043】
さらに、本実施形態に係る粘着剤組成物は、本実施形態に係る粘着剤組成物を用いて形成された粘着剤層が光漏れをより低減できる点で、アルキレンオキサイド基を有するモノマーの含有量が5質量%以下であることが好ましく、アルキレンオキサイド基を有するモノマーを含まないことがより好ましい。アルキレンオキサイド基を有するモノマーとしては、例えば、側鎖にアルキレンオキサイド基を有する(メタ)アクリルモノマー、アルキレンオキサイド基を有する反応性乳化剤が挙げられる。なお、本発明において「粘着剤組成物がアルキレンオキサイド基を有するモノマーを含まない」とは、粘着剤組成物中のアルキレンオキサイド基を有するモノマーの含有量が2質量%以下であることをいう。特に、粘着剤組成物中のアルキレンオキサイド基を有するモノマーの含有量が0〜2質量%であることが好ましい。
【0044】
1.2.5.Tg
本実施形態に係る粘着剤組成物では、所定の最大変形率および歪み復元率を達成することにより、光漏れを防止し、かつ耐久性を高めることができる観点から、(A)成分のTgは−70〜0℃であることが好ましく、−40〜−10℃であることがより好ましい。なお、本発明において、(A)成分のTgは、下記式(2)(FOXの式)により算出された値である。
【0045】
1/Tg=Wa1/Tga1+Wa2/Tga2+Wa3/Tga3 ・・・・(2)
(式中、Tgは、(A)成分のガラス転移温度(K)を示し、Tga1,Tga2,Tga3はそれぞれ、構成モノマー(a1),(a2),(a3)から調製されたホモポリマーのガラス転移温度(Tg(K))を示し、Wa1,Wa2,Wa3はそれぞれ、(A)成分中に含まれる、構成モノマー(a1),(a2),(a3)の重量分率を示す。)
なお、上記式(2)により、Tgは、絶対温度(K)として算出されるので、必要に応じて摂氏温度(℃)に換算される。
【0046】
また、代表的なモノマーから調製されたホモポリマーのガラス転移温度は、下記表1に示されるが、より具体的には、たとえば、ポリマーハンドブック4版(Polymer Handbook Fourth Edition, Wiley-Interscience, 2003)などに記載されている。
【0047】
【表1】
【0048】
1.2.6.重量平均分子量(Mw)
また、本実施形態に係る粘着剤組成物において、所定の最大変形率および歪み復元率を達成することにより、光漏れを防止し、かつ耐久性を高めることができる観点から、(A)成分は、重量平均分子量(Mw)が50万〜200万であることが好ましく、80万〜180万であることがより好ましい。ここで、(A)成分の重量平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)を用い、下記の条件で標準ポリスチレン換算による重量平均分子量(Mw)を求めたものである。
<GPC測定条件>
測定装置:HLC−8120GPC(東ソー社製)
GPCカラム構成:以下の5連カラム(すべて東ソー社製)
(1)TSK−GEL HXL−H (ガードカラム)
(2)TSK−GEL G7000HXL
(3)TSK−GEL GMHXL
(4)TSK−GEL GMHXL
(5)TSK−GEL G2500HXL
サンプル濃度:1.0mg/cm となるように、テトラヒドロフランで希釈
移動相溶媒:テトラヒドロフラン
流量:1.0cm/min
カラム温度:40℃
また、本実施形態にかかる(A)成分は、上記GPCにより求められる分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量)が4〜7の範囲にあることが好ましい。
【0049】
1.2.7.ゲル分率
さらに、本実施形態に係る粘着剤組成物において、所定の最大変形率および歪み復元率を達成することにより、光漏れを防止し、かつ耐久性を高めることができる観点から、本実施形態に係る粘着剤組成物のゲル分率が70%以上であることが好ましく、77%以上であることがより好ましい。
【0050】
本実施形態に係る粘着剤組成物において、上記ゲル分率は例えば、粘着剤組成物を調製する際に使用するモノマー混合物中の(a3)成分の種類や使用量、(B)成分である架橋剤の種類や使用量によって調整することができる。なお、上記ゲル分率は、架橋された粘着剤を乾燥重量で0.1g(乾燥重量(1))をサンプル瓶に採取し、更に、サンプル瓶に、酢酸エチル30ccを加えて24時間振とうした後、該サンプル瓶の内容物を200メッシュのステンレス製金網でろ別し、金網上の残留物を100℃で2時間乾燥して乾燥重量(乾燥重量(2))を測定し、下記式(3)により求められる。
ゲル分率(%)=(乾燥重量(2)/乾燥重量(1))×100 ・・・(3)
【0051】
1.3.(B)成分
本実施形態に係る粘着剤組成物において、(B)成分である架橋剤は、常温又は加熱下で(A)成分と架橋し得る架橋剤であれば特に限定されないが、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、金属キレ―ト架橋剤が挙げられ、このうち、イソシアネート系架橋剤が好ましい。
【0052】
イソシアネート系架橋剤としては、具体的には、キシリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、クロルフェニレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水添されたジフェニルメタンジイソシアネートなどのイソシアネートモノマーや、それらをトリメチロールプロパンなどの2価以上のアルコール化合物等に付加反応させたイソシアネート化合物やイソシアヌレート化物等が例示される。
【0053】
また、公知のポリエーテルポリオールやポリエステルポリオール、アクリルポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオールなどにイソシアネート化合物を付加反応させたウレタンプレポリマー型のイソシアネート等も挙げられる。これらのうち、キシリレンジイソシアネートおよびその誘導体などが好ましく用いられる。また、(A)成分がカルボキシル基を有する場合には、イソシアネート系架橋剤とエポキシ架橋剤とを併用して用いることもできる。
【0054】
本実施形態に係る粘着剤組成物における(B)成分の含有量は、所定のゲル分率(例えば70%以上)を達成できる観点から、本実施形態に係る粘着剤組成物100質量部に対して0.01〜3質量部であることができ、0.1〜1.5質量部であることが好ましい。
【0055】
1.4.他の成分
本実施形態に係る光学フィルム用粘着剤組成物は、必要に応じて、(A)成分および(B)成分以外の成分をさらに含むことができる。例えば、本実施形態に係る粘着剤組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、(C)シランカップリング剤(以下、単に「(C)成分」と記載することもある。)、(D)イオン性化合物(以下、単に「(D)成分」と記載する場合もある。)、酸化防止剤、紫外線吸収剤、粘着付与剤、可塑剤等が配合されていても良い。
【0056】
1.4.1.(C)シランカップリング剤
本実施形態に係る光学フィルム用粘着剤組成物が(C)成分を含むことにより、本実施形態に係る光学フィルム用粘着剤組成物を用いて被着体の表面に粘着剤層を形成した場合、被着体との接着を良好に保つことができる。(C)成分は例えば、ビニルトリメトキシシラン,ビニルトリエトキシシラン及びメタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の重合性不飽和基含有ケイ素化合物;3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン,3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン及び2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ構造を有するケイ素化合物;3−アミノプロピルトリメトキシシラン,N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン及びN−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン等のアミノ基含有ケイ素化合物;並びに3−クロロプロピルトリメトキシシラン;オリゴマー型シランカップリング剤等であってもよく、中でも、(メタ)アクリル系コポリマー(A)中に含まれる官能基と反応する官能基を有しているシランカップリング剤が湿熱環境下でハガレを生じさせにくいという点で好ましい。
【0057】
本実施形態に係る光学フィルム用粘着剤組成物における(C)成分の含有量は、被着体との接着を良好に保つことができる観点から、本実施形態に係る光学フィルム用粘着剤組成物100質量部に対して0〜0.5質量部であることができ、0.05〜0.3質量部であることが好ましい。
【0058】
1.4.2.(D)イオン性化合物
また、本実施形態に係る粘着剤組成物は、イオン性化合物(D)を含んでいてもよい。本実施形態に係る粘着剤組成物が(D)成分を含むことにより、本実施形態に係る粘着剤組成物を用いて被着体の表面に粘着剤層を形成した場合、被着体の帯電を効果的に防止することができる。(D)成分としては、例えば、アニオンとカチオンとからなる、25℃で液体状、または固体状のイオン性化合物が挙げられ、具体的には、アルカリ金属塩、イオン性液体(25℃で液体状)、界面活性剤等が挙げられる。
【0059】
上記アルカリ金属塩としては、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属カチオンと、アニオンとからなる化合物が挙げられ、具体的には、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウム、過塩素酸リチウム、塩素酸カリウム、硝酸カリウム、硝酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、チオシアン酸ナトリウム、LiBr、LiI、LiBF、LiPF、LiSCN、酢酸ナトリウム、アルギン酸ナトリウム、リグニンスルホン酸ナトリウム、トルエンスルホン酸ナトリウム、LiCFSO、Li(CFSON、Li(CFSO)IN、Li(CSO)2N、Li(CSO)IN、Li(CFSOC等が挙げられる。
【0060】
上記イオン性液体を構成するカチオンとしては、ピペリジニウムカチオン、ピロリジニウムカチオン、ピロリン骨格を有するカチオン、ピロール骨格を有するカチオン、イミダゾリウムカチオン、テトラヒドロピリミジニウムカチオン、ジヒドロピリミジニウムカチオン、ピラゾリウムカチオン、ピラゾリニウムカチオン、テトラアルキルアンモニウムカチオン、トリアルキルスルホニウムカチオン、テトラアルキルホスホニウムカチオン等が挙げられ、上記イオン性液体を構成するアニオンとしては、Cl、Br、I、AlCl、AlCl、BF、PF、ClO、NO、CHCOO、CFCOO、CHSO、CFSO、(CFSO、(CFSO、AsF、SbF、NbF、TaF、F(HF)n(n=2〜3)、(CN)、CSO、(CSO、CCOO、(CFSO)(CFCO)N等があげられる。
【0061】
そして、上記イオン性化合物としては、これらのカチオンとアニオンとから構成され、25℃で液状のイオン性化合物が挙げられる。このようなイオン性化合物としては、具体的には、2−メチル−1−ピロリンテトラフルオロボレート、1−エチル−2−フェニルインドールテトラフルオロボレート、1,2−ジメチルインドールテトラフルオロボレート、1−エチルカルバゾールテトラフルオロボレート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムアセテート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムトリフルオロアセテート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムヘプタフルオロブチレート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムペルフルオロブタンスルホネート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムジシアナミド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムトリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチド、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムトリフルオロアセテート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムヘプタフルオロブチレート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムペルフルオロブタンスルホネート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−へキシル−3−メチルイミ
ダゾリウムブロミド、1−へキシル−3−メチルイミダゾリウムクロライド、1−へキシル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1−へキシル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート、1−へキシル−3−メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネート、1−オクチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1−オクチル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート、1−へキシル−2,3−ジメチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1,2−ジメチル−3−プロピルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−メチルピラゾリウムテトラフルオロボレート、3−メチルピラゾリウムテトラフルオロボレート、テトラヘキシルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、ジアリルジメチルアンモニウムテトラフルオロボレート、ジアリルジメチルアンモニウムトリフルオロメタンスルホネート、ジアリルジメチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、ジアリルジメチルアンモニウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド、N,N−ジエチル−N−メチル−N−(2−メトキシエチル)アンモニウムテトラフルオロボレート、N,N−ジエチル−N−メチル−N−(2−メトキシエチル)アンモニウムトリフルオロメタンスルホネート、N,N−ジエチル−N−メチル−N−(2−メトキシエチル)アンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジエチル−N−メチル−N−(2−メトキシエチル)アンモニウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド、グリシジルトリメチルアンモニウムトリフルオロメタンスルホネート、グリシジルトリメチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル
)イミド、グリシジルトリメチルアンモニウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド、1−ブチルピリジニウム(トリフルオロメタンスルホニル)トリフルオロアセトアミド、1−ブチル−3−メチルピリジニウム(トリフルオロメタンスルホニル)トリフルオロアセトアミド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム(トリフルオロメタンスルホニル)トリフルオロアセトアミド、N,N−ジエチル−N−メチル−N−(2−メトキシエチル)アンモニウム(トリフルオロメタンスルホニル)トリフルオロアセトアミド、ジアリルジメチルアンモニウム(トリフルオロメタンスルホニル)トリフルオロアセトアミド、グリシジルトリメチルアンモニウム(トリフルオロメタンスルホニル)トリフルオロアセトアミド、N,N−ジメチル−N−エチル−N−プロピルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジメチル−N−エチル−N−ブチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジメチル−N−エチル−N−ペンチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジメチル−N−エチル−N−へキシルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジメチル−N−エチル−N−ヘプチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジメチル−N−エチル−N−ノニルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジメチル−N,N−ジプロピルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジメチル−N−プロピル−N−ブチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジメチル−N−プロピル−N−ペンチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジメチル−N−プロピル−N−ヘキシルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジメチル−N−プロピル−N−ヘプチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジメチル−N−ブチル−N−ヘキシルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジメチル−N−ブチル−N−ヘプチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジメチル−N−ペンチル−N−ヘキシルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジメチル−N,N−ジヘキシルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、トリメチルヘプチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジエチル−N−メチル−N−プロピルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジエチル−N−メチル−N−ペンチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジエチル−N−メチル−N−ヘプチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジエチル−N−プロピル−N−ペンチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、トリエチルプロピルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、トリエチルペンチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホ
ニル)イミド、トリエチルヘプチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジプロピル−N−メチル−N−エチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジプロピル−N−メチル−N−ペンチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジプロピル−N−ブチル−N−へキシルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジプロピル−N,N−ジヘキシルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジブチル−N−メチル−N−ペンチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジブチル−N−メチル−N−ヘキシルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、トリオクチルメチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N−メチル−N−エチル−N−プロピル−N−ペンチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド等が挙げられる。
【0062】
上記界面活性剤としては、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤および両性界面活性剤の何れも使用することができる。
【0063】
上記ノニオン系界面活性剤としては、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニエルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタントリオレエート等のソルビタン高級脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート等のポリオキシエチレンソルビタン高級脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレンモノステアレート等のポリオキシエチレン高級脂肪酸エステル類;例えば、オレイン酸モノグリセライド、ステアリン酸モノグリセライド等のグリセリン高級脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシブチレン等のポリオキシアルキレン類及びそれらのブロックコポリマーが挙げられる。
【0064】
上記カチオン系界面活性剤としては、塩化アルキルトリメチルアンモニウム、塩化ジアルキルジメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム塩、アルキルジメチルアンモニウムエトサルフェート等が挙げられる。
【0065】
上記アニオン系界面活性剤としては、ラウリン酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、N−アシル−N−メチルグリシンナトリウム塩、ポリオキシエチレンラウリルエーテルカルボン酸ナトリウム等のカルボン酸塩、ドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリウム、ジアルキルスルホコハク酸エステル塩、ジメチル−5−スルホイソフタレートナトリウム等のスルホン酸塩、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸ナトリウム等の硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンラウリル燐酸ナトリウム、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルリン酸ナトリウム等の燐酸エステル塩等が挙げられる。
【0066】
上記両性界面活性剤としては、カルボキシベタイン型界面活性剤、アミノカルボン酸塩、イミダゾリニウムペタイン、レシチン、アルキルアミンオキサイドが挙げられる。また、その他に、伝導性ポリマー、伝導性カーボン、塩化アンモニウム、塩化アルミニウム、塩化銅、塩化鉄、硫酸アンモニウム等を使用することができる。
【0067】
このなかでも、アルカリ金属塩が好ましく、特に過塩素酸リチウムが好ましく用いられる。
【0068】
本実施形態に係る光学フィルム用粘着剤組成物における(D)成分の含有量は、本実施形態に係る光学フィルム用粘着剤組成物100質量部に対して0〜3質量部であることができ、0.05〜2.5質量部であることが好ましい。
【0069】
1.5.(A)成分の重合方法
(A)成分の重合方法は、特に制限されるものではなく、溶液重合、乳化重合、懸濁重合などの公知の方法により重合できるが、重合により得られた共重合体の混合物を用いて、本発明の粘着剤組成物を製造するにあたり、処理工程が比較的簡単でかつ短時間で行える観点から、溶液重合により重合することが好ましい。
【0070】
溶液重合は、一般に、重合槽内に所定の有機溶媒、各単量体、重合開始剤、および必要に応じて用いられる連鎖移動剤等を仕込み、窒素気流又は有機溶媒の還流温度の下で、撹拌しながら数時間加熱反応させることにより行われる。
【0071】
なお、この場合において、有機溶媒、単量体及び/又は重合開始剤の少なくとも一部を逐次添加してもよい。有機溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、n−プロピルベンゼン、t−ブチルベンゼン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、テトラリン、デカリン、芳香族ナフサなどの芳香族炭化水素類;例えば、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、i−オクタン、n−デカン、ジペンテン、石油スピリット、石油ナフサ、テレピン油などの脂肪系もしくは脂環族系炭化水素類;例えば、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸n−アミル、酢酸2−ヒドロキシエチル、酢酸2−ブトキシエチル、酢酸3−メトキシブチル、安息香酸メチルなどのエステル類;例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチル−i−ブチルケトン、イソホロン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノンなどのケトン類;例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルなどのグリコールエーテル類;例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、i−ブチルアルコール、s−ブチルアルコール、t−ブチルアルコールなどのアルコール類;などを挙げることができる。これらの有機溶媒はそれぞれ単独で、又は2種以上混合して用いることができる。
【0072】
これら重合用有機溶媒のうち、(A)成分の重合に際しては、重合反応中に連鎖移動を生じにくい有機溶媒、例えば、エステル類、ケトン類を使用することが好ましく、特に、(A)成分の溶解性、重合反応の容易さなどの点から、酢酸エチル、メチルエチルケトン、アセトンなどの使用が好ましい。
【0073】
前記重合開始剤としては、通常の溶液重合で使用できる有機過酸化物、アゾ化合物などを使用することが可能である。このような有機過酸化物としては、例えば、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、カプロイルパーオキシド、ジ−i−プロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシビバレート、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(4,4−ジ−t−アミルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(4,4−ジ−t−オクチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(4,4−ジ−α−クミルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)ブタン、2,2−ビス(4,4−ジ−t−オクチルパーオキシシクロヘキシル)ブタンなどが挙げられ、アゾ化合物としては、例えば、2,2´−アゾビス−i−ブチロニトリル、2,2´−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、2,2´−アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリルなどを挙げることができる。
【0074】
これら有機過酸化物のうち、(A)成分の重合反応中に、グラフト反応を起こさない重合開始剤が好ましく、特にアゾ系が好ましい。その使用量は、通常、単量体合計100重量部に対して0.01〜2重量部であり、好ましくは0.1〜1.0重量部である。
【0075】
また、本発明の粘着剤組成物に含まれる(A)成分の製造に際しては、連鎖移動剤を使用しないのが普通であるが、本発明の目的及び効果を損なわない範囲で、必要に応じて使用することは可能である。
【0076】
このような連鎖移動剤としては、例えば、シアノ酢酸;シアノ酢酸の炭素数1〜8のアルキルエステル類;ブロモ酢酸;ブロモ酢酸の炭素数1〜8のアルキルエステル類;アントラセン、フェナントレン、フルオレン、9−フェニルフルオレンなどの芳香族化合物類;p−ニトロアニリン、ニトロベンゼン、ジニトロベンゼン、p−ニトロ安息香酸、p−ニトロフェノール、p−ニトロトルエンなどの芳香族ニトロ化合物類;ベンゾキノン、2,3,5,6−テトラメチル−p−ベンゾキノンなどのベンゾキノン誘導体類;トリブチルボランなどのボラン誘導体;四臭化炭素、四塩化炭素、1,1,2,2−テトラブロモエタン、トリブロモエチレン、トリクロロエチレン、ブロモトリクロロメタン、トリブロモメタン、3−クロロ−1−プロペンなどのハロゲン化炭化水素類;クロラール、フラルデヒドなどのアルデヒド類:炭素数1〜18のアルキルメルカプタン類;チオフェノール、トルエンメルカプタンなどの芳香族メルカプタン類;メルカプト酢酸、メルカプト酢酸の炭素数1〜10のアルキルエステル類;炭素数1〜12のヒドロキシアルキルメルカプタン類;ピネン、ターピノレンなどのテルペン類;などを挙げることができる。
【0077】
(A)成分の重合温度としては、一般に約30〜180℃であり、好ましくは40〜150℃であり、より好ましくは50〜90℃の範囲である。なお、溶液重合法などで得られた重合物中に未反応の単量体が含まれる場合は、該単量体を除くために、メタノールなどによる再沈澱法で精製することも可能である。
【0078】
1.6.粘着剤組成物の製造
本実施形態に係る粘着剤組成物は、通常、前記(A)および(B)成分および必要に応じて任意成分を、同時にあるいは任意の順番で混合して調製される。また、(A)成分と(B)成分とを混合するにあたり、(A)成分を溶液重合により調製した場合は、重合完了後の(A)成分を含む溶液に(B)成分を添加してもよく、(A)成分を塊状重合により調製する場合は、重合完了後では均一混合が困難になるため、この重合の途中で(B)成分を添加して混合することが好ましい。
【0079】
1.7.用途および作用効果
本実施形態に係る粘着剤組成物は、光学フィルム(詳しくは後述する)の接着剤として好適に用いることができる。本実施形態に係る粘着剤組成物によれば、高温および多湿条件下で優れた耐久性を発揮し、かつ、液晶セル等の被着体と偏光フィルム等の光学フィルムとの接着に使用された場合、光漏れを低減することができる。なお、画像表示装置が位相差フィルムを含む場合、液晶セルと偏光フィルムとの間に位相差フィルムが設けられるため、位相差フィルムと偏光フィルムとの間に、本実施形態に係る粘着剤組成物を用いた接着剤層を設けることができる。
【0080】
例えば、本実施形態に係る粘着剤組成物を光源にLEDを採用するLED方式の画像表示装置(液晶表示装置)において、液晶セル等の被着体と偏光フィルム等の光学フィルムとの接着に使用された場合、良好な光漏れ防止特性および高耐久性を実現することができるため、画像表示装置の高画質化を達成することができる。この場合、本実施形態に係る粘着剤組成物は、VAモード用偏光フィルムまたはIPSモード用偏光フィルムを被着体とする接着剤として使用することができるが、高画質化を達成することができる点で、VAモード用偏光フィルムを被着体とする接着剤として好適に使用することができる。
【0081】
例えば、本実施形態に係る粘着剤組成物を、VAモード用偏光フィルムを被着体とする接着剤として使用する場合であって、大型(例えば10インチ以上、好ましくは19インチ以上)の画像表示装置の接着剤層を形成するために本実施形態に係る粘着剤組成物を使用する場合、大型の画像表示装置は特に、偏光フィルムの収縮が大きいため、寸法変形により生じた応力の影響による浮き、剥がれの影響が大きく、偏光軸の歪みによる光漏れの影響が大きい。このため、該接着剤層が耐久性に優れ、かつ、光漏れを低減することができることにより、高画質化を達成できる点で有用である。
【0082】
本実施形態に係る粘着剤組成物の一作用効果である光漏れ防止特性は、以下の2つの作用機序によるものであると推測される。第1に、偏光フィルムの収縮に由来する応力が本実施形態に係る粘着剤組成物に加わる場合、本実施形態に係る粘着剤組成物の変形率が小さい(本実施形態に係る粘着剤組成物の上記最大変形率が10%以下である)ため、偏光フィルムの収縮を適度に抑制し、偏光フィルムの偏光軸の歪みを小さくすることができ、その結果、光漏れを少なくすることができる。第2に、前記偏光フィルムの応力が開放される際に、本実施形態に係る粘着剤組成物の上記歪み復元率が50%以上であることにより、本実施形態に係る粘着剤組成物の変形が速やかに復元されるため、偏光フィルムの収縮に起因する偏光軸の歪みが速やかに復元し、その結果、画像表示装置の光漏れを少なくすることができる。
【0083】
すなわち、本実施形態に係る粘着剤組成物を用いて光学フィルム(偏光フィルム)の表面に粘着剤層が設けられる場合、該粘着剤層の変形率が小さい(本実施形態に係る粘着剤組成物の上記最大歪み率が10%以下である)ことにより、該光学フィルムの収縮を適度に抑制する第1の特性と、該粘着剤層の変形が速やかに復元される第2の特性(本実施形態に係る粘着剤組成物の上記歪み復元率が50%以上である)との両方を本実施形態に係る粘着剤組成物が具備することにより、画像表示装置の高耐久性を実現し、かつ、画像表示装置の光漏れを少なくすることができる。
【0084】
2.粘着型光学フィルムおよび積層体
2.1.粘着型光学フィルム
本発明の別の一実施形態に係る粘着型光学フィルムは、上記実施形態に係る光学フィルム用粘着剤組成物を含む粘着剤層を、光学フィルムの片面または両面に設える。本実施形態に係る粘着型光学フィルムを作製するにあたり、上記粘着剤層は、光学フィルム上に、上記粘着剤組成物をグラビアコーター、メイヤーバーコーター、エアナイフコーター、ロールコーター等により塗布し、光学フィルム上に塗布された粘着剤組成物を常温または加熱により乾燥および架橋して形成されてもよく、または、粘着剤層を剥離フィルム上に設け、これを上記光学フィルムに転写して形成されてもよい。また、粘着剤層の厚みは、通常は1〜50μm、好ましくは5〜30μm程度である。なお、粘着型光学フィルムの使用前に、粘着剤層を保護するために、該粘着剤層の表面に剥離フィルムを積層させてもよい。
【0085】
また、本実施形態に係る粘着型光学フィルムは、FPDなどの画像表示装置等で使用されるものが挙げられ、例えば、偏光フィルム、位相差フィルム、楕円偏光フィルム、反射防止フィルム、輝度向上フィルムおよび光拡散フィルムからなる群から選択される光学フィルムであることができる。光学フィルムの厚さは、使用目的に応じて適宜選択することができるが、通常、10〜500μmであり、好ましくは15〜300μm程度である。
【0086】
2.2.積層体
本発明の一実施形態に係る積層体は、ガラス基板と、偏光板と、前記ガラス基板と前記偏光板との間に設けられた、上記実施形態に係る光学フィルム用粘着剤組成物を膜状に成形し、加熱して得られる粘着剤層(粘着シート)と、を含む。
【0087】
2.2.1.積層構造
図4は、本発明の一実施形態に係る積層体の一例(積層体200)を模式的に示す断面図である。積層体200は、図1に示されるように、ガラス基板110と、偏光フィルム(偏光板)130と、ガラス基板110と偏光フィルム130との間に設けられた粘着剤層120と、を含む。
【0088】
より具体的には、積層体200は、ガラス基板110と、ガラス基板110の上に設けられた粘着剤層120と、ガラス基板110の上に粘着剤層120を介して設けられた偏光フィルム130とを含む。ガラス基板110と偏光フィルム130とは粘着剤層120を介して接着されている。
【0089】
図4において、粘着剤層120は、被着体(ガラス基板110)の表面に形成されている。本実施形態に係る粘着剤組成物を被着体の表面に形成する方法としては、平滑性の良好な剥離フィルム(セパレーター)の表面に粘着剤組成物を塗布し、塗膜を乾燥した後、当該塗膜を特定の樹脂フィルムの表面に転写する転写法を挙げることができる。
【0090】
本実施形態に係る積層体は例えば、画像表示装置(特に液晶表示装置)に含まれる。この場合、本実施形態に係る積層体に含まれるガラス基板は、液晶表示装置用のガラス基板である。
【0091】
2.2.2.ガラス基板
本実施形態に係る積層体を構成するガラス基板は、画像表示装置用に用いられるガラス基板であることができる。画像表示装置としては、例えば、液晶テレビ、コンピュータのモニタ、携帯電話、タブレットなどに用いられるTFT(薄膜トランジスタ)液晶表示装置であることができる。
【0092】
2.2.3.作用効果
本実施形態に係る積層体は、ガラス基板と、偏光フィルムと、前記ガラス基板と前記偏光フィルムとの間に設けられた、上記実施形態に係る光学フィルム用粘着剤組成物を膜状に成形し、適宜加熱、乾燥して得られる粘着剤層と、を含むことにより、高温多湿条件下で優れた耐久性を発揮し、かつ、光漏れを低減することができる。
【0093】
3.実施例
以下、本発明を下記実施例に基づいて説明するが、本発明は実施例に限定されない。
【0094】
3.1.(A)成分の調製
攪拌機、還流冷却器、温度計および窒素導入管を備えた反応装置に、下記表2および表3に示す配合比率を有するモノマー混合物を仕込み、次に、酢酸エチルをモノマー濃度が50質量%になる配合量にて仕込んだ。次に、アゾビスイソブチロニトリル0.1質量部を加え、反応容器内の空気を窒素ガスで置換しながら撹拌を行い60℃に昇温した後、4時間反応させた。反応終了後、酢酸エチルで希釈して、(A)成分(アクリル系ポリマーA〜L)を得た。
【0095】
3.2.評価用粘着加工偏光板の作製
上記3.1.で得られた(A)成分を用いて、下記表3および表4の配合(固形分配合)にて各成分を添加して、実施例1〜15および比較例1〜5の粘着剤組成物の溶液を得た。この粘着剤組成物の溶液を剥離処理したポリエステルフィルムの表面に塗布して乾燥させることにより、厚さ20μmの粘着剤層を有する粘着シートを得た。この粘着シートをVAモード用偏光フィルムの片面に貼り付けた後、23℃/50%RHの条件で暗所にて7日間熟成させて、評価用粘着加工偏光板を得た。
【0096】
各評価用粘着加工偏光板について、下記表3および表4に示す最大変形率、歪み復元率、光漏れ(光源にLEDを用いたもの:LED方式)、光漏れ(光源にLEDを用いないもの:非LED方式)、湿熱耐久性(発泡および断裂)について以下の方法にて評価した。
【0097】
3.3.評価方法
3.3.1.最大変形率および歪み復元率
表3および表4に示す実施例1〜15および比較例1〜5のアクリル系共重合体溶液を剥離処理したポリエステルフィルムの表面に塗布して乾燥させ、空気が入らないようにして厚さ1mmに成膜し、Φ8mmにカットして、試験片とした。この試験片についてレオメーター(型名:MCR300、日本シイベルヘグナー社製)を用いて上記測定工程1ないし3を順に行って上記最大変形率を測定し、かつ、上記(1)に基づいて歪み復元率を算出した。
【0098】
3.3.2.光漏れ
19インチサイズのVA型液晶パネル(I・Oデータ社製、型式:LCD−A191EWから取り外したもの)に、剥離処理されたポリエステルフィルムをはがした評価用粘着加工偏光板を、粘着剤層が前記液晶パネルに接するように、かつ、前記評価用粘着加工偏光板がクロスニコルになるように貼り合わせて、80℃の雰囲気下で240時間放置した後、23℃/50%RH雰囲気下で2時間放置した。その後、前記偏光板を貼り合わせたVA型液晶パネルを暗室でパソコンに接続し全画面黒表示にした。本試験では、光源(バックライト)として、LED(LED方式)および蛍光灯(非LED方式)の2種を用いて評価を行った。この全画面黒表示のディスプレイモニターについて、図2に示されるように、各コーナー付近の直径1cmの領域における輝度(La,Lb,Lc,Ld)およびモニタ中央部分の直径1cmの領域における輝度(Lcenter)を輝度計(ハイランド社製、型名:RISA−COLOR/CD8)を用いて測定し、下記式(4)に基づいて光漏れ性(ΔL)を算出した。ΔLが小さいほど、(バックライトからの)光漏れが少ないことを意味し、通常、ΔLが2.0未満であれば液晶表示用パネルとしての使用が可能である。
ΔL=(La+Lb+Lc+Ld)/4−Lcenter ・・・(4)
【0099】
また、図2にて点線で示すように、ディスプレイモニターのコーナー付近において光漏れが発生した範囲(R)を目視で測定した。光漏れが発生した範囲は、小さいほど光漏れが少ないことを意味し、通常、Rが20mm未満であれば、液晶表示用パネルとしての使用が可能である。
【0100】
3.3.3.湿熱耐久性
剥離処理されたポリエステルフィルムをはがした評価用粘着加工偏光板を15インチサイズ(233mm×309mm)に裁断し、厚さ0.5mmの無アルカリガラス板の片面に、粘着剤層が前記ガラス板に接するようにして、ラミネータロールを用いて貼り付けた。貼付後、オートクレーブ(栗原製作所製)にて0.5MPa、50℃、20分の条件で加圧処理して試験用プレートを得た。こうして得られた試験用プレートを60℃/90%RHの条件下に500時間放置した。試験終了後、試験用プレートを試験環境より取り出し、23℃/50%RH雰囲気下で2時間静置した後、粘着剤層における発泡(凝集力不足)、断裂(過架橋)を目視にて観察して、湿熱耐久性を下記評価基準にて評価した。
【0101】
(発泡−サイズ)
○:発泡が全く見られない
△:発泡の直径が1mm以下
×:発泡の直径が1mmより大きい
【0102】
(発泡−発生量)
○:発泡が全く見られない
△:発泡の個数が10個以下
×:発泡の個数が10個より多い
【0103】
(断裂−サイズ)
○:断裂が全く見られない
△:断裂が生じた面積が試験用プレートにおける貼り合わせ部分全体(100%)に対して5%未満
×:断裂が生じた面積が試験用プレートにおける貼り合わせ部分全体(100%)に対して5%以上
【0104】
(断裂−位置)
○:断裂が全くない
△:試験用プレートの各端部付近の1cm幅領域のみに欠点がある
×:試験用プレートの各端部付近の1cm領域と領域外に欠点がある。
【0105】
【表2】
【0106】
【表3】
【0107】
【表4】
【0108】
なお、表2、表3および表4における略語は以下の意味である。
AA:アクリル酸
AM:アクリルアミド
BA:n−ブチルアクリレート
t−BA:ターシャリーブチルアクリレート
i−BMA:イソブチルメタクリレート
HEA:2−ヒドロキシエチルアクリレート
L−45:TDI系イソシアネート化合物(綜研化学社製 L−45)
MA:メチルアクリレート
MEA:メトキシエチルアクリレート
i−PMA:イソプロピルメタアクリレート
TD:XDI系イソシアネート化合物(三井武田薬品社製 TD−75)
KBM−403:3−グリシドキプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製)
帯電防止剤((D)成分:イオン性化合物):1−オクチル−4−メチルピリジニウム・ビス(フルオロスルホニル)イミド
【0109】
表1ないし4の結果から、上記実施例1ないし15の組成物は、最大変形率が10%以下であり、かつ、歪み復元率が50%以上であることにより、該組成物を用いて得られる接着剤層が光学フィルムの収縮を適度に抑制する第1の特性と、該粘着剤層の変形が速やかに復元される第2の特性との両方を本実施形態に係る粘着剤組成物が具備することにより、高い粘着力および優れた耐久性を実現し、かつ、光漏れを低減することができる。これに対して、上記比較例1ないし6の組成物は、最大変形率が10%以下であることと、歪み復元率が50%以上であることとの両方を満たさないことから、該組成物を用いて得られる接着剤層が上記第1の特性および第2の特性を両立しないため、光漏れの低減を十分に達成することができないことが理解できる。
【符号の説明】
【0110】
1 試料片、2 治具、10 最終変形率、20 最大変形率、100 画像表示装置、La,Lb,Lc,Ld 画像表示装置のコーナー近傍の輝度、Lcenter 画像表示装置の中央部における輝度、M 円周移動量、T 試料片の厚さ、110 ガラス基板、 120 粘着剤層、130 偏光フィルム、 200 積層体。
図1
図2
図3
図4