特許第5887406号(P5887406)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5887406
(24)【登録日】2016年2月19日
(45)【発行日】2016年3月16日
(54)【発明の名称】真空ガラス封着方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   C03C 27/06 20060101AFI20160303BHJP
【FI】
   C03C27/06 101C
【請求項の数】13
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-517390(P2014-517390)
(86)(22)【出願日】2011年8月9日
(65)【公表番号】特表2014-520065(P2014-520065A)
(43)【公表日】2014年8月21日
(86)【国際出願番号】CN2011078161
(87)【国際公開番号】WO2013004038
(87)【国際公開日】20130110
【審査請求日】2013年12月26日
(31)【優先権主張番号】201110186356.5
(32)【優先日】2011年7月5日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】513128442
【氏名又は名称】ルオヤン ランドグラス テクノロジー カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】特許業務法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チョウ,ヤン
(72)【発明者】
【氏名】リー,ヤンビン
(72)【発明者】
【氏名】ワン,チョウセイ
(72)【発明者】
【氏名】シー,ジャンボー
(72)【発明者】
【氏名】パング,シタオ
【審査官】 相田 悟
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−009029(JP,A)
【文献】 特開2009−294551(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 27/00〜29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
封着しようとする複数のガラス板を真空室に送り込み、前記各ガラス板周囲の真空度をいずれも前記真空室内の真空度と全く同じにさせ、
前記真空室を必要な真空度に抽出した後、前記複数枚のガラス板を真空ガラス構造に応じて封着しようとする状態に組み立て、
前記組み立てた後の封着しようとするガラス板の表面に圧力を加え、且つこの状態下で、前記封着しようとするガラス板周縁への気密封着を完成させる真空ガラス封着方法であって、
(1)仕切り板を共通の側壁とし、前記仕切り板の両側にそれぞれ閉鎖空間を設置し、
(2)複数枚のガラス板を真空ガラスを構成する時の対応関係に応じて組み立て、隣接する2枚ガラス板のうちの少なくとも一方のガラス板に、前記隣接する2枚のガラス板の間に真空空間を形成するための中間支持物が設置され、且つ、前記ガラス板を組み立てる時、前記隣接する2枚のガラス板の間に分離装置を挿入することによって、前記隣接する2枚のガラス板の間に十分に大きな間隔を有させて、前記隣接する2枚のガラス板の間が十分に大きなコンダクタンスを有することを保証し、ガス分子を真空排気する時にスムーズに脱出させ、
(3)前記組み立てた後のガラス板を前記閉鎖空間のうちの一方に入れ、前記仕切り板と前記ガラス板とが分離状態を保持する状態下で、又は前記仕切り板が前記ガラス板に何ら圧力を加えない状態下で、前記ガラス板が存在する前記閉鎖空間が必要な真空度に達するまで、前記2つの閉鎖空間を同時に真空排気し、
(4)前記分離装置を除去し、前記隣接する2枚のガラス板をいずれもその間に設置された前記中間支持物に当接させ、そして封着しようとする状態に組み立て、
(5)前記ガラス板が存在する前記閉鎖空間が真空排気されたままの状態で、前記もう一方の閉鎖空間の気圧を上昇させ、前記仕切り板をその両側の圧力差の作用下で変形させて前記封着しようとするガラス板の表面に当接させ、且つこれによって前記封着しようとするガラス板に圧力を加え、
(6)ヒーターを利用して前記封着しようとするガラス板が存在する前記閉鎖空間の外部から前記封着しようとするガラス板における封着しようとする部位を加熱し、金属ろう付けプロセスによって、真空ガラス周縁への気密封着を完成させ、前記使用するヒーターは誘導ヒーター又はマイクロ波ヒーターである真空ガラス封着方法。
【請求項2】
前記ステップ(5)において、前記封着しようとするガラス板に加える圧力は大気圧に等しいことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
封着しようとする複数のガラス板を真空室に送り込み、前記各ガラス板周囲の真空度をいずれも前記真空室内の真空度と全く同じにさせ、
前記真空室を必要な真空度に抽出した後、前記複数枚のガラス板を真空ガラス構造に応じて封着しようとする状態に組み立て、
前記組み立てた後の封着しようとするガラス板の表面に圧力を加え、且つこの状態下で、前記封着しようとするガラス板周縁への気密封着を完成させるための真空ガラス封着装置であって、
底板、環形側壁、カバー板、仕切り板及びヒーターを含み、前記環形側壁の下端が前記底板に位置し、且つ前記底板に気密接続され、前記カバー板が前記環形側壁の上端に気密封着され、前記仕切り板が前記底板と前記カバー板との間の前記環形側壁内に設置され、前記仕切り板が、前記環形側壁の内表面に周縁を気密接続された状態にあり、かつ、前記底板、前記環形側壁及び前記カバー板によって囲まれる空間を第1閉鎖空間と第2閉鎖空間とに分離し、前記2つの閉鎖空間にはそれぞれ真空排気のための吸気口が設けられており、
前記仕切り板と前記底板との間に位置する前記第1閉鎖空間は封着しようとするガラス板を置くために使用され、
前記仕切り板と前記カバー板との間に位置する前記第2閉鎖空間は前記仕切り板の稼動状態を制御するために使用され、a)前記第2閉鎖空間と前記第1閉鎖空間とを同期的に真空排気することによって、前記仕切り板は前記第1閉鎖空間中の前記封着しようとするガラス板と互いに分離され、又は前記封着しようとするガラス板に圧力が加えられないようにし、b)前記第1閉鎖空間が真空排気されたままの状態で、前記第2閉鎖空間の気圧を上昇させ、前記仕切り板をその両側の圧力差の作用下で前記封着しようとするガラス板に当接させ、且つ前記第2閉鎖空間の気圧をさらに上昇させることによって、前記封着しようとするガラス板に圧力を加え、
前記ヒーターは前記第1閉鎖空間の外部から前記封着しようとするガラス板における封着しようとする部位を加熱することに用いられ、金属ろう付けプロセスによって、前記封着しようとする部位への気密封着を完成させる真空ガラス封着装置。
【請求項4】
前記第2閉鎖空間を大気と連通させることによって、その気圧を上昇させることを特徴とする請求項3に記載の封着装置。
【請求項5】
前記封着しようとするガラス板に加える圧力は大気圧に等しいことを特徴とする請求項4に記載の封着装置。
【請求項6】
前記第1閉鎖空間の吸気口は前記底板及び/又は前記環形側壁に設置され、前記第2閉鎖空間の吸気口は前記カバー板及び/又は前記環形側壁に設置されることを特徴とする請求項3に記載の封着装置。
【請求項7】
前記底板はシールリングによって前記環形側壁の下端と気密接続され、前記シールリングは前記環形側壁及び/又は前記底板に形成されるシールリング取付溝に取り付けられ、
前記カバー板はシールリングによって前記環形側壁の上端と気密接続され、前記シールリングは前記環形側壁及び/又は前記カバー板に形成されるシールリング取付溝に取り付けられることを特徴とする請求項3に記載の封着装置。
【請求項8】
前記ヒーターは誘導ヒーター又はマイクロ波ヒーターであり、それに対応して、前記ヒーターと前記封着しようとするガラス板との間に位置する前記仕切り板、又は前記底板は非金属材料からなることを特徴とする請求項3に記載の封着装置。
【請求項9】
前記仕切り板の周縁は前記環形側壁に気密固定され、前記b)状態において、前記仕切り板はその両側の圧力差の作用下で自己変形することによって前記封着しようとするガラス板に当接されることを特徴とする請求項3に記載の封着装置。
【請求項10】
前記仕切り板はフッ素ゴムからなることを特徴とする請求項9に記載の封着装置。
【請求項11】
前記仕切り板の周縁は伸縮継手によって周囲の前記環形側壁に気密固定され、前記伸縮継手は弾性薄肉材料を曲げることによって形成されたエラストマーであり、前記伸縮継手の断面形状はジグザグ形、円弧部分を含む曲線形、又はジグザグ構造と曲線部分とを同時に含む複合形であり、前記伸縮継手はその断面形状を伸ばされたり又は圧縮されたりすることによって変形し、前記伸縮継手の片側が前記仕切り板の側部に気密接続され、前記伸縮継手のもう一方の側が前記環形側壁に気密固定され、前記b)状態において、前記仕切り板はその両側の圧力差の作用下で、前記仕切り板の周縁が圧迫されることによる前記伸縮継手の変形と、前記仕切り板の自己変形とが同時に重ね合わされることによって前記封着しようとするガラス板に当接されることを特徴とする請求項3に記載の封着装置。
【請求項12】
前記仕切り板はPP(ポリプロピレン)板又はPC(ポリカーボネート)板からなることを特徴とする請求項11に記載の封着装置。
【請求項13】
前記ヒーターはレーザヒーターであり、前記ヒーターと前記封着しようとするガラス板との間に位置する前記仕切り板又は前記底板は透明材料からなることを特徴とする請求項11に記載の封着装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は真空ガラス封着方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
以前、本出願人は中国特許庁に発明の名称が「真空ガラス封着装置」である発明特許出願を提出し、出願番号は201010555370.3であり、当該真空ガラス封着装置の構造は図1に示すように、ポンプ台1、上押さえ板2、ヒーター4を含み、ポンプ台1に封着しようとするガラス板を置くための収容タンク7及び収容タンク7と連通するポンプ口6が設置され、上押さえ板2とポンプ台1との接続を確実にさせるために、上押さえ板2に環状押さえ板3がさらに設置され、押さえ板3とポンプ台1との間が若干のカラン5によって固定される。稼動の際、上押さえ板2は収容タンク7における封着しようとするガラス板8に直接カバーされ、且つ収容タンク7の外周のポンプ台1と気密接続することによって封着しようとするガラス板8をある閉鎖空間に封止し、その後ポンプ口6によって上記の閉鎖空間を真空排気し、且つ必要な真空度に達した後、ヒーター4を利用して閉鎖空間の外部から封着しようとするガラス板における封着しようとする部位を加熱し、金属ろう付けプロセスによって封着部位の気密封着を完成する。
【0003】
上記封着装置を利用して真空ガラスを加工する時、封着する前に、真空ガラスを構成する複数枚のガラス板がすでに真空ガラス構造に応じて互いに組み立てられるが、真空ガラスにおける真空空間を形成する箇所の隙間が約0.2mmだけであり、小さなスリットはコンダクタンスが非常に小さく、真空排気する時にガス分子の脱出をひどく妨げ、このため、上記封着装置は真空抽出時間が長く、作製した真空ガラスが比較的高い真空度に達しにくい欠陥が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】中国特許出願201010555370.3号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記真空ガラス封着装置が存在する欠点に対して、本発明は真空ガラス封着方法を提供することを主要目的とし、同時に、本発明は真空ガラス封着装置をさらに提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を実現するために、本発明の真空ガラス封着方法は具体的に以下のとおりである:
(1)封着しようとする複数のガラス板を真空室に送り込み、前記各ガラス板周囲の真空度をいずれも前記真空室内の真空度と全く同じにさせ、
(2)前記真空室を必要な真空度に抽出した後、前記複数枚のガラス板を真空ガラス構造に応じて封着しようとする状態に組み立て、
(3)前記真空室内の真空度が不変となるよう維持し、前記組み立てた後の封着しようとするガラス板の表面に圧力を加え、且つこの状態下で、前記封着しようとするガラス板周縁への気密封着を完成させる。
【0007】
さらには、前記ステップ(3)において、前記組み立てた後の封着しようとするガラス板の表面に加える圧力は大気圧に等しいか、又はできる限り大気圧に近い。
【0008】
本発明の上記目的を実現する他の真空ガラス封着方法の技術案は以下のとおりである:
(1)仕切り板を共通の側壁とし、前記仕切り板の両側にそれぞれ閉鎖空間を設置し、
(2)複数枚のガラス板を真空ガラスを構成する時の対応関係に応じて組み立て、隣接する2枚ガラス板のうちの少なくとも一方のガラス板に、前記隣接する2枚のガラス板の間に真空空間を形成するための中間支持物が設置され、且つ、前記ガラス板を組み立てる時、前記隣接する2枚のガラス板の間に分離装置を挿入することによって、前記隣接する2枚のガラス板の間に十分に大きな間隔を有させて、前記隣接する2枚のガラス板の間が十分に大きなコンダクタンスを有することを保証し、ガス分子を真空排気する時にスムーズに脱出させ、
(3)前記組み立てた後のガラス板を前記閉鎖空間のうちの一方に入れ、前記仕切り板と前記ガラス板とが分離状態を保持する状態下で、又は前記仕切り板が前記ガラス板に何ら圧力を加えない状態下で、前記ガラス板が存在する前記閉鎖空間が必要な真空度に達するまで、前記2つの閉鎖空間を同時に真空排気し、
(4)前記分離装置を除去し、前記隣接する2枚のガラス板をいずれもその間に設置された前記中間支持物に当接させ、そして封着しようとする状態に組み立て、
(5)前記ガラス板が存在する前記閉鎖空間が真空排気されたままの状態で、前記もう一方の閉鎖空間の気圧を上昇させ、前記仕切り板をその両側の圧力差の作用下で変形させて前記封着しようとするガラス板の表面に当接させ、且つこれによって前記封着しようとするガラス板に圧力を加え、
(6)ヒーターを利用して前記封着しようとするガラス板が存在する前記閉鎖空間の外部から前記封着しようとするガラス板における封着しようとする部位を加熱し、金属ろう付けプロセスによって、真空ガラス周縁への気密封着を完成させ、前記使用するヒーターは誘導ヒーター又はマイクロ波ヒーターである。
【0009】
真空ガラス封着装置であって、底板、環形側壁、カバー板、仕切り板及びヒーターを含み、前記環形側壁の下端が前記底板に位置し、且つ前記底板に気密接続され、前記カバー板が前記環形側壁の上端に気密封着され、前記仕切り板が前記底板と前記カバー板との間の前記環形側壁内に設置され、前記仕切り板の周縁が前記環形側壁の内表面に気密接続された後、前記仕切り板は、前記底板、前記環形側壁及び前記カバー板によって囲まれる空間を第1閉鎖空間と第2閉鎖空間とに分離し、前記2つの閉鎖空間にはそれぞれ真空排気のための吸気口が設けられており、
前記仕切り板と前記底板との間に位置する前記第1閉鎖空間は封着しようとするガラス板を置くために使用され、
前記仕切り板と前記カバー板との間に位置する前記第2閉鎖空間は前記仕切り板の稼動状態を制御するために使用され、a)前記第2閉鎖空間と前記第1閉鎖空間とを同期的に真空排気することによって、前記仕切り板は前記第1閉鎖空間中の前記封着しようとするガラス板と互いに分離され、又は前記封着しようとするガラス板に圧力が加えられないようにし、b)前記第1閉鎖空間が真空排気されたままの状態で、前記第2閉鎖空間の気圧を上昇させ、前記仕切り板をその両側の圧力差の作用下で前記封着しようとするガラス板に当接させ、且つ前記第2閉鎖空間の気圧をさらに上昇させることによって、前記封着しようとするガラス板に圧力を加え、
前記ヒーターは前記第1閉鎖空間の外部から前記封着しようとするガラス板における封着しようとする部位を加熱することに用いられ、金属ろう付けプロセスによって、前記封着しようとする部位への気密封着を完成させる。
【0010】
さらには、前記第2閉鎖空間を大気と連通させることによって、その気圧を上昇させる。
【0011】
さらには、前記第1閉鎖空間の吸気口は前記底板及び/又は前記環形側壁に設置され、前記第2閉鎖空間の吸気口は前記カバー板及び/又は前記環形側壁に設置される。
【0012】
さらには、前記底板はシールリングによって前記環形側壁の下端と気密接続され、前記シールリングは前記環形側壁及び/又は前記底板に形成されるシールリング取付溝に取り付けられ、前記カバー板はシールリングによって前記環形側壁の上端と気密接続され、前記シールリングは前記環形側壁及び/又は前記カバー板に形成されるシールリング取付溝に取り付けられる。
【0013】
さらには、前記ヒーターは誘導ヒーター又はマイクロ波ヒーターであり、それに対応して、前記ヒーターと前記封着しようとするガラス板との間に位置する前記仕切り板、又は前記底板は非金属材料からなる。
【0014】
さらには、前記仕切り板の周縁は前記環形側壁に気密固定され、前記b)状態において、前記仕切り板はその両側の圧力差の作用下で自己変形することによって前記封着しようとするガラス板に当接される。
【0015】
さらには、前記仕切り板はフッ素ゴムからなる。
【0016】
さらには、前記仕切り板の周縁は伸縮継手によって周囲の前記環形側壁に気密固定され、前記伸縮継手は弾性薄肉材料を曲げることによって形成されたエラストマーであり、前記伸縮継手の断面形状はジグザグ形、円弧部分を含む曲線形、又はジグザグ構造と曲線部分とを同時に含む複合形であり、前記伸縮継手はその断面形状を伸ばされたり又は圧縮されたりすることによって変形し、前記伸縮継手の片側が前記仕切り板の側部に気密接続され、前記伸縮継手のもう一方の側が前記環形側壁に気密固定され、前記b)状態において、前記仕切り板はその両側の圧力差の作用下で、前記仕切り板の周縁が圧迫されることによる前記伸縮継手の変形と、前記仕切り板の自己変形とが同時に重ね合わされることによって前記封着しようとするガラス板に当接される。
【0017】
さらには、前記仕切り板はPP(ポリプロピレン)板又はPC(ポリカーボネート)板からなる。
【0018】
さらには、前記ヒーターはレーザヒーターであり、前記ヒーターと前記封着しようとするガラス板との間に位置する前記仕切り板又は前記底板は透明材料からなる
【発明の効果】
【0019】
本発明は2つの閉鎖空間を設置することによって、仕切り板は封着しようとするガラス板に対して2つの稼動状態を有するようにするため、真空ガラスの真空排気から最後の封着までに2つの外部環境を提供する。そのうち、仕切り板が封着しようとするガラス板と互いに分離し又はそれに何ら圧力を加えない状態下で、真空ガラスを構成する複数枚のガラス板の間は比較的大きい距離を離間することができ、各ガラス板の周囲にいずれも真空環境(即ち、第1閉鎖空間)と同じである真空度を有させ、且つこれによって封着する時に真空ガラス中の真空空間に真空環境と同じである真空度を有させ、このように、真空排気の時間を短縮させるだけでなく、作製する真空ガラスに十分に高い真空度を有させ、封着しようとするガラス板と反対側にある仕切り板の片側の気圧を上昇させて仕切り板をその両側の圧力差の作用下で封着しようとするガラス板に当接させた後、ガラス板における封着しようとする部位が必ず圧縮状態でろう付け封着を行う要求を満たし、特に大気圧の圧力を仕切り板を経てガラス板及び中間支持物に直接作用させた後、真空ガラスを構成するガラス板及び中間支持物の圧縮変形を封着する前にすでに発生させ、真空ガラスはポンプ台から離れた後に大気圧の作用によりほとんど圧縮変形せず、これによって真空ガラスの真空度の安定を保証する。
【0020】
本発明の封着装置における閉鎖空間は真空環境を提供することのみに用いられ、ろう付け溶接を行う時のヒーターは外部に単独に設置され、本発明の封着装置は設備操作にとって便利であり、設備の構造を簡素化させ、真空ガラスの大規模加工のために必要な条件を創造する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】既存の真空ガラス封着装置の構造模式図である。
図2】本発明実施例1の封着しようとするガラス板を真空排気する時の状態模式図である。
図3】本発明実施例1の封着しようとするガラス板を封着する時の状態模式図である。
図4】本発明実施例2の封着しようとするガラス板を真空排気する時の状態模式図である。
図5】本発明実施例2の封着しようとするガラス板を封着する時の状態模式図である。
図6】本発明実施例3の封着しようとするガラス板を真空排気する時の状態模式図である。
図7】本発明実施例3の封着しようとするガラス板を封着する時の状態模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面及び示例を参照して本発明をさらに詳細に説明する。
【0023】
[実施例1]
図2及び図3には本発明実施例1を示している。図に示すように、当該封着装置は底板13、環形側壁14、カバー板11、仕切り板12及びヒーター23を備えている。環形側壁14の下端は底板13上に位置し、且つ封着リング16によって底板13と気密接続され、封着リング16が環形側壁14に形成されている取付溝に取り付けられている。カバー板11が環形側壁14の上端にカバーされ、カバー板11の周縁が封着リング16によって環形側壁14の上端と気密接続されている。仕切り板12の周縁が環形側壁14の内壁に設置されるリング溝に気密固定され、これによりカバー板11、環形側壁14及び底板13によって囲まれる空間を、第1閉鎖空間及び第2閉鎖空間という2つの閉鎖空間に気密分離し、そのうち、第1閉鎖空間15は底板13、環形側壁14及び仕切り板12により囲まれており、第2閉鎖空間は仕切り板12、環形側壁14及びカバー板11により囲まれている。第1及び第2閉鎖空間にはそれぞれ真空排気のための吸気口17が設けられ、第1閉鎖空間15の吸気口17は底板13に設置され、第2閉鎖空間の吸気口17はカバー板11に設置される。
【0024】
カバー板11、底板13及び環形側壁14は金属材料からなり、仕切り板12はフッ素ゴムからなり、ヒーター23は誘導ヒーターである。
【0025】
二層構造の真空ガラスを例とし、本発明の真空ガラス封着装置が稼動する時、まず上層ガラス板19と下層ガラス板20とを真空ガラスを構成する時の対応関係に応じて組み立て、そのうち、下層ガラス板20に真空空間を形成する中間支持物21が設置される。2枚のガラス板の間に分離装置18を挿入することによって、2枚のガラス板の間に十分に大きな間隔を有させて、その間が十分に大きなコンダクタンス(空気の流れやすさ)を有することを保証し、ガス分子を真空排気する時にスムーズに脱出させることができ、当該間隔は5mm以上が好ましい。その後、図2に示すように、組み立てた後のガラス板を第1閉鎖空間に入れ、仕切り板12と上層ガラス板19とが分離状態を保持し又は仕切り板12がガラス板19に何ら圧力を加えない状態下で、第1閉鎖空間が所望する真空度に達するまで、2つの閉鎖空間を同時に真空排気し、その後、分離装置18を除去し、上層ガラス板19を中間支持物21に当接させ、封着しようとする状態に組み立てる。その後、第1閉鎖空間が真空排気されたままの状態で(即ち、第1閉鎖空間の真空度を保持する)、第2閉鎖空間の真空排気を停止させ、且つ第2閉鎖空間を大気と連通させ、カバー板11を除去し、この際、図3に示すように、仕切り板12は大気の圧力下で変形して上層ガラス板19の全表面に当接され、且つこれによって大気圧が封着しようとするガラス板に加えられる。最後に、ヒーター23を利用して仕切り板12の外部から封着しようとするガラス板における封着しようとする部位を加熱し、金属ろう付けプロセスによって、封着しようとするガラス板の周縁の気密封着を完成する。
【0026】
ヒーター23はマイクロ波ヒーターであってもよい。
【0027】
上記封着装置を利用して水平状態で真空ガラスを加工する時、カバー板11が十分な重量を有するならば、カバー板11と底板13との間に追加の固定装置をさらに設置しなくても、カバー板と床板との間の気密接続、及び底板と環形側壁との間の気密接続を保証することができ、そうでなければ、カバー板11と底板13との間にクランプフランジのような固定装置を設置して固定する必要がある。
【0028】
また、上記実施例1におけるヒーター23を既知の多自由度運動機構(図に示せず)に取り付けることができ、多自由度運動機構によりヒーター23をガラス板における封着しようとする部位に沿って移動させ、封着しようとする部位へのろう付け溶接を次第に完成し、このようにすることで、ろう付け溶接の品質を保証することができるだけでなく、操作者の作業負荷を軽減することができる。
【0029】
上記実施例1における封着しようとするガラス板は底板13に直接置かれる。上層ガラス板19の上表面と仕切り板12との間の間隔が大きいとき、できる限り仕切り板12の変形量を減少させるために、底板13に適切な厚さのクッション層又はクッションブロックを設置することによって、その間隔を調整することができ、そして、仕切り板12の稼動状況を改善する。
【0030】
上記実施例1における真空ガラスは平面真空ガラスである。しかし、曲面構造の底板13、それに対応する環形側壁14、仕切り板12、及びカバー板11が採用された場合、本発明の真空ガラス封着装置は曲面真空ガラス製品を加工することもできる。
【0031】
[実施例2]
図4及び図5には本発明実施例2を示している。上記実施例1と比べ、当該実施例2において、仕切り板12は底板13とカバー板11との間の環形側壁14内に設置され、仕切り板12の周縁が伸縮継手22によって周囲の環形側壁14の内壁に気密固定され、これによってカバー板11、環形側壁14及び底板13によって囲まれる空間を第1閉鎖空間及び第2閉鎖空間という2つの閉鎖空間に気密分離する。第1閉鎖空間15は、底板13、環形側壁14及び仕切り板12によって囲まれており、第2閉鎖空間は、仕切り板12、環形側壁14及びカバー板11によって囲まれている。且つ、第1及び第2閉鎖空間にはそれぞれ真空排気のための吸気口17が設けられ、第1閉鎖空間15の吸気口17は底板13に設置され、第2閉鎖空間の吸気口17はカバー板11に設置される。
【0032】
伸縮継手22は弾性薄肉鋼板を曲げることによって形成されたエラストマー(弾性体)であり、図に示すように、その断面形状は円弧セグメント(円弧部分)を含む曲線形であり、伸縮継手22の片側が仕切り板12の側部に気密接続され、伸縮継手22のもう一方の側が環形側壁14に設置される挿入溝に気密固定される。
【0033】
カバー板11、底板13及び環形側壁14は金属材料から作製されている。仕切り板12はPP(ポリプロピレン)板、PC(ポリカーボネート)板又はその他の適切な硬度を有する非金属材料により作製されている。ヒーター23は誘導ヒーターである。
【0034】
同様に二層構造の真空ガラスを例とし、本発明実施例2が稼動する時、図4に示すように、まず上層ガラス板19と下層ガラス板20とを組み立てた後に第1閉鎖空間15に入れ、第1及び第2閉鎖空間を同時に真空排気し、そして、第1閉鎖空間が所望の真空度に達した後に、分離装置18を除去し、上層ガラス板を中間支持物21に当接させて封着しようとする状態に組み立てる。その後、第1閉鎖空間が真空排気されたままの状態で(即ち、第1閉鎖空間の真空度を保持する)、大気と連通させて、第2閉鎖空間の気圧を上昇させ、カバー板11を除去し、この際、図5に示すように、仕切り板12はその両側の圧力差の作用下で伸縮継手22が圧迫されて変形することによって上層ガラス板19の表面に当接され、そして、これによって大気圧が封着しようとするガラス板に加えられる。最後に、ヒーター23を利用して仕切り板12の外部から封着しようとするガラス板における封着しようとする部位を加熱し、金属ろう付けプロセスによって、封着しようとするガラス板の周縁への気密封着を完成する。
【0035】
変形抵抗ができる限り小さい伸縮継手22を選定することによって、封着しようとするガラス板19に加える圧力をできるだけ大気圧に近くする。
【0036】
ヒーター23はマイクロ波ヒーターを採用してもよく、そして、底板13が非金属材料によって作製されている場合、ヒーター23は底板13の片側から封着しようとするガラス板を加熱するようにしてもよい。
【0037】
ヒーター23はレーザヒーターを採用してもよく、この際に透明非金属材料を採用することによって仕切り板12は製造されていてもよく、例えば、透明PP板を採用して仕切り板12を製造する。
【0038】
仕切り板12をその両側の圧力差の作用下で上層ガラス板19に当接させるために、伸縮継手22を圧迫して変形することによって実現する以外、伸縮継手22を圧迫して変形すると同時に、仕切り板12にも一定の変形を発生させ、且つ伸縮継手22の変形と仕切り板12の変形とが互いに重ね合わされる状況下で、仕切り板を上層ガラス板19の表面に当接させる。
【0039】
[実施例3]
図6及び図7は本発明の別の実施形態を示す。図に示すように、当該実施例3において波形断面構造の伸縮継手22’が採用される。実施例2における伸縮継手22と比べ、波形断面構造の伸縮継手22’はより大きい伸縮変形量を有することができるため仕切り板12はより大きい上下変位量を有し、その結果、封着装置が封着することができる真空ガラスの全体の厚さの範囲はより大きくなる。
【0040】
なお、実施例2と実施例3は2つの具体的な形式の伸縮継手を挙げるに過ぎず、この他に、断面形状がジグザグ形の伸縮継手、及びその他の適切な断面構造を有する伸縮継手を採用してもよい。
【0041】
上記示例は本発明を説明することに用いられるに過ぎず、本発明の実施形態はこれらの示例に限定されるものではなく、この分野の当業者が作る本発明の思想を符合する様々な特定の実施形態はいずれも本発明の保護範囲内にあるべきである。










図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7