特許第5887410号(P5887410)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5887410人工レンズの配向を検知するための光学的な配置および方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5887410
(24)【登録日】2016年2月19日
(45)【発行日】2016年3月16日
(54)【発明の名称】人工レンズの配向を検知するための光学的な配置および方法
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/16 20060101AFI20160303BHJP
   A61F 9/007 20060101ALI20160303BHJP
【FI】
   A61F2/16
   A61F9/007 200C
【請求項の数】20
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2014-531129(P2014-531129)
(86)(22)【出願日】2012年9月20日
(65)【公表番号】特表2015-502765(P2015-502765A)
(43)【公表日】2015年1月29日
(86)【国際出願番号】EP2012003946
(87)【国際公開番号】WO2013041230
(87)【国際公開日】20130328
【審査請求日】2014年4月18日
(31)【優先権主張番号】102011114251.0
(32)【優先日】2011年9月23日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】514070694
【氏名又は名称】ヴォスアメッド ゲーエムベーハー アンド カンパニー カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(72)【発明者】
【氏名】ガーテン、 ゲオルク
【審査官】 石田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】 特公昭61−30568(JP,B2)
【文献】 国際公開第2011/030509(WO,A1)
【文献】 特公平05−076293(JP,B2)
【文献】 特許第4124897(JP,B2)
【文献】 特許第2740924(JP,B2)
【文献】 特開昭54−160271(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0154269(US,A1)
【文献】 特表昭60−501992(JP,A)
【文献】 特公平03−046774(JP,B2)
【文献】 特開昭51−034591(JP,A)
【文献】 特公平07−057218(JP,B2)
【文献】 実開昭63−018102(JP,U)
【文献】 特許第2962845(JP,B2)
【文献】 特開平4−141132(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/16
A61F 9/007
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼(4)内の人工レンズ(6)の配向を決定するための光学的配置(1)であって、
結像光学系(18、18a)を有する少なくとも1つの観測ビーム通路(7、7a)と、規定された輪郭を有する少なくとも2つの発光試験対象(20、21)と、前記試験対象(20、21)から、前記眼(4)に向けられた視準ビーム通路(27、28)に入る、その光パターンを視準するように、この試験対象と関連している、試験対象(20、21)ごとに少なくとも1つの視準光学系(25、26)とを備えており、
数の観測ビーム通路がすべて接眼レンズ(12)に向かい、角膜の前側および前記人工レンズ(6)と前記眼(4)の光学媒体との間の境界から選択された異なる境界面で、反射される前記光パターン(29、30)が、同時に結像されるように調整された、異なる結像特性を有する複数の観測ビーム通路(7、7a)が設けられている、光学的配置。
【請求項2】
前記視準ビーム通路(27、28)は、前記観測ビーム通路(7、7a)と同一直線上にないやり方で、前記眼(4)に向けられていることを特徴とする、請求項1に記載の光学的配置。
【請求項3】
前記視準ビーム通路(27、28)と前記観測ビーム通路(7、7a)との間の角度(α、α1)は、10°から60°であることを特徴とする、請求項1または2に記載の光学的配置。
【請求項4】
前記試験対象(20、21)は、前記視準ビーム通路(27、28)と前記観測ビーム通路(7)との間の各角度α、α1が同一であるように、前記観測ビーム通路(7)の光学軸(8)の周りで一緒に回転可能であることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の光学的配置。
【請求項5】
試験対象(20、21)は、自己発光性、逆光性または反射性があり、及び/または、それぞれの試験対象(20)は、その色および/または輪郭において、別の試験対象(21)とは異なっていることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の光学的配置。
【請求項6】
前記少なくとも2つの試験対象(20、21)は2つの試験対象(20、21)からなり、前記2つの試験対象(20、21)が相互に相補的な輪郭を有していることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の光学的配置。
【請求項7】
前記光学的配置(1)が、人工レンズ(6)の曲率半径を測定するように構成されていることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の光学的配置。
【請求項8】
パイロットビームが、患者が見つめることができるように前記光学的配置(1)に結合されていることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の光学的配置。
【請求項9】
前記観測ビーム通路(7、7a)の少なくとも1つに、結像倍増系(13、13a)が配置されていることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の光学的配置。
【請求項10】
前記結像倍増系(13、13a)の少なくとも1つの光学素子が、前記試験対象(20、21)から出る光に対する透過性フィルタとして具体化されたコーティング(55)を備えていることを特徴とする、請求項9に記載の光学的配置。
【請求項11】
前記観測ビーム通路(7、7a)の少なくとも1つに、および/または結像倍増系(13)の部分ビーム通路(7’、7”)に、制御可能なシャッター(62、62a)が設けられていることを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載の光学的配置。
【請求項12】
前記結像倍増系(13、13a)が、多重プリズム(52)の組み合わせによって単体に設計されていることを特徴とする、請求項9から11のいずれか一項に記載の光学的配置。
【請求項13】
前記光学的配置(1)が、双眼顕微鏡(50)に回転可能に取り付けられていることを特徴とする、請求項1から12のいずれか一項に記載の光学的配置。
【請求項14】
眼(4)内の人工レンズ(6)の配向を決定するための方法であって、
少なくとも1つの観測ビーム通路(7、7a)を介して眼(4)を観測する工程と、
1または2の光パターンを照射する工程であって、この光パターンのそれぞれが、規定された輪郭を有する試験対象(20、21)から出て、それぞれ1つの視準光学系(25、26)を用いて、前記観測ビーム通路(7)と同一直線上にない角度で、前記眼(4)に向かって視準される、工程と、
その角膜の前側および前記人工レンズ(6)と前記眼(4)の光学媒体との間の境界面から選択されたいくつかの境界面で、反射される前記光パターン(29、30)を同時に結像する工程と、
前記選択された境界面からの前記光パターンの鏡映のイメージの重ね合わせを最大化するために、前記観測ビーム通路(7、7a)の光学軸(8)の周りの前記試験対象(20、21)の回転の角度を変更する工程と、を備え
異なる結像特性を有する複数の観測ビーム通路(7、7a)を用いて、前記選択された境界面からの、前記光パターンの前記鏡映が、同時に結像される方法。
【請求項15】
前記選択された境界面で、反射される前記光パターンが、連続的に結像されるように、前記観測ビーム通路(7、7a)のその結像光学系(18、18a)の結像特性が、変更されることを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
患者によって見つめられるべきパイロットビーム(59)が、前記方法を実行するための光学的配置(1)に結合されていることを特徴とする、請求項14から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
少なくとも1つの観測ビーム通路(7、7a)に配置されている結像倍増系(13、13a)を用いて、前記眼(4)の移動に対して観測者に生成されるイメージの安定化が、達成されていることを特徴とする、請求項14から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記観測ビーム通路(7、7a)の1つおよび/または部分ビーム通路(7’、7”)が、制御可能なシャッター(62、62a)を用いて、結像倍増系(13)内で一時的に閉鎖されることを特徴とする、請求項14から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記眼内レンズ(6)の中心位置調整は、異なる境界の逆鏡映の中心対称的な配置により、検査されることを特徴とする、請求項14から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記異なる境界の前記反射された試験標的のサイズ測定および/またはサイズ比較を用いて、前記光学軸に沿った軸方向における前記眼内レンズ(6)の位置の決定が、達成されることを特徴とする、請求項14から19のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼内の人工レンズの配向を検知するための光学的な配置および方法に関する。そのような人工レンズを、眼内レンズ(IOL)と呼ぶ。それらの配向、特に、それらの回転配向は、2つの異なる主軸における2つの異なる曲率半径ひいては2つの異なる屈折力を有する、いわゆる円環状眼内レンズで、主たる興味の対象である。
【背景技術】
【0002】
人間の眼レンズの手術は、世界で最も一般に実行される手術に属する。そのような手術は、ほとんどの場合、眼レンズの内部に関係する病理プロセス、例えば眼レンズの濁り度(白内障形成)および/または老視の場合におけるレンズ中心部の硬化により、必要となる。現代の外科方法では、眼レンズの内部(中心部、皮質)を除去する。このため、レンズ嚢は、好ましくは、前からのみ開かれて、残りはそのまま残されている。嚢は、自然の眼レンズの内部が除去された後に空であり、それから一般的に人工眼内レンズ(IOL)を受け取る役目をし、この人工眼内レンズは、除去された眼レンズの内部部品を置換し、眼の好ましい光学的補正を考慮して、患者の視力を再構成する。
【0003】
現代の眼内レンズは、関係している患者のために個別に製造されてもよく、この目的のため、関係する患者の(生まれつきの)屈折異常の多様な原因に対処しかつ補正するために、非球面性、多焦点性、円環状面などに関して、最も多様な光学的特性を有している。それらの機能をできるだけ正確に働かせるための個々に生成されたレンズのこれらの固有特性のために、レンズの好ましい光学的中心位置調整および眼の光学系におけるある基準系とのその関連を得ようと、努力が行われた。したがって、眼内レンズは、視線および入射瞳の中心を考慮して、特に嚢の中に、なおまた眼の毛様体溝または眼の前房の中に、一般に瞳孔中心と確実に同軸に置かれるべきであり、そこには特に円環状眼内レンズまたは有水晶体円環状IOLs(自分のレンズに加えて埋め込まれるIOLs)を用いた、軸方向の正確な位置決めも重要である。ここで、回転異常の場合には、埋め込まれたレンズのシリンダ部の回転および屈折力が大きいほど、予測された屈折目標が、実際に達成された目標から外れるだろう。しかし、眼の物質の光学系のXおよびY軸における正確な配向(orientation)だけでなくIOLの傾斜のない(光学軸に沿った)Z方向におけるレンズの好ましい永久かつ正確な位置決めも望まれている。
【0004】
手術中の外科医に向けて、対応する屈折およびその結果として生じる軸、またはある基準点を介して眼に入る軸を示す投影系および測定系があるとはいえ、これらの光学的決定系は、眼の全屈折力からIOLの倍率(power)を計算する。
【0005】
しかし、それらの曲率半径を介するレンズの光学的な力および位置の直接測定が、望ましい。特に、眼の乱視が、それは角膜(いわゆる角膜の不規則な曲率)からしばしば生じるが、IOLを用いて補正される場合、正確に補正されるべき角膜乱視の軸が円環状IOLの円筒軸に対応していることを人は理解しなければならない。既に、IOL軸の小さな回転異常で、眼の全結像系における主要な誤差が発生しそうであり、例えば、IOLの約15°の回転異常が既に円筒補正の50%の損失、および光学系において残っている全誤差のかなりの軸回転をもたらす。
【0006】
円環状IOLでは、円筒効果の軸は、通常、光学系上の製造業者によるマーカーによって示されている。しかし、これらは、眼の屈折において対応する全誤差を導き得る通常3°の特定の誤差許容範囲を有する。
【0007】
人工レンズを用いてまたはなしで眼の光学的特性を検査するための眼科的装置および方法は、例えば、独国特許出願公開第102008034490号明細書、同第102005042436号明細書、同第102005031496号明細書、独国実用新案第29517578号明細書、独国特許出願公開第19817047号明細書、特許第01308552号公報、スイス国特許出願公開第699886号明細書、国際公開第2011/030509号明細書、カナダ国特許第1099965号明細書、または独国特許出願公開第2643344号明細書で知られている。しかし、前記装置は操作するのに複雑であるか、または眼の人工レンズの配向を確実に決定するのに適していないことが分かった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】独国特許出願公開第102008034490号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第102005042436号明細書
【特許文献3】独国特許出願公開第102005031496号明細書
【特許文献4】独国実用新案第29517578号明細書
【特許文献5】独国特許出願公開第19817047号明細書
【特許文献6】特許第01308552号公報
【特許文献7】スイス国特許出願公開第699886号明細書
【特許文献8】国際公開第2011/030509号明細書
【特許文献9】カナダ国特許第1099965号明細書
【特許文献10】独国特許出願公開第2643344号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、この状況を改善するために意図されており、本発明の目的は、嚢、毛様体溝、または眼の前房の中に、できるかぎり正確に眼内レンズを挿入し、所望の位置で正確に配向された後に、この位置で確実に固定されることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的は、請求項1の特徴を有する光学的配置によって、または請求項18の特徴を有する方法によって、それぞれ達成される。本発明のさらに好都合な発展は、従属請求項で述べられている。
【0011】
本発明に係る光学的配置は、規定された輪郭を有する少なくとも2つの発光試験対象を備えている。これらの試験対象(test object)から出る構造化光パターンは、視準光学系(collimation optical system)によって視準され、眼に向けられ、この眼は、例えば、光学的配置の操作者によって、またはカメラによって光学的配置の観測ビーム通路を介して観測される。患者の眼では、複数の光学的境界は、眼の異なる光学媒体間に存在する。これらの境界で屈折率が変化するので、光パターンの逆鏡映(retroreflection)が境界に生じる。本発明の範囲内では、これらの逆鏡映を「試験標的(test target)」とも呼ぶ。今や、本発明の核心は、眼内の異なる光学的境界の既知の輪郭および位置の試験標的を、同時にまたは連続的に逆反射しかつ比較できることである。最も重要な境界は、角膜の表面および埋め込まれた人工レンズの前側および後側である。さらに、境界は、角膜および網膜の後側であるだろう。
【0012】
本発明では、眼の光学媒体の異なる境界から反射される光パターンが連続的に鮮明に結像され得るように、その結像特性、特にそれらの集光特性が、調整可能なように、観測ビーム通路の結像光学系が、構成されている。この目的を達成するために、それによって結像光学系の集光が変位されてもよい全通路は、例えば、0と30mmの間、好ましくは約10mmであり得る。さらにまたは代案として、異なる結像特性、特に異なる集光特性を備えている複数の観測ビーム通路を備えることが、結像光学系にとって可能であろう。このことは、それらを互いに比較することができるように、眼の異なる深さから反射される光パターンを同時に鮮明に結像することを可能にする。
【0013】
人は、特に眼内レンズの前面または後面での眼の特定の深さからの光鏡映(reflection)または試験標的の相対位置から、レンズの配向、特に円環レンズにおける主軸の配向を、推測してもよい。眼の特定の深さにおける試験標的の相対位置および眼の表面上の試験標的の相対位置の比較に基づいて、人は、眼内レンズが角膜の乱視に関するどの回転配向を有するかを、さらに決定してもよい。ここで、結果として生じる全屈折力の質または眼の視力を、必ずしも検知する必要はない。むしろ十分に、光パターンの相対位置から、それによって眼に埋め込まれたレンズが、角膜の乱視に関して最適に方向づけられてもよい(回転方向および回転角度を示す)回転を、人が推定し得る。
【0014】
眼の手術中または手術後の装置として、または実験室用機器として用いられてもよいように、光学的配置が、特に設計されてもよい。例えば、光学的配置を、光モジュールとして設計し、手術中の用途のために、対応する取付物上の外科用顕微鏡の下で変位させ、折り返し、または外科用顕微鏡のビーム通路に導入することができる。しかし、代案として、独立した装置として使用されてもよいように、光学的配置を設計することができる。
【0015】
好ましくは、視準ビーム通路はそれぞれ、観測ビーム通路と同一直線上にないやり方で、すなわち観測ビーム通路に対してある角度で、眼に向けられる。このことは、眼の異なる深さまたは異なる境界からの光パターンの鏡映の横方向オフセットに結びつき、その結果、試験標的または光パターンの鏡映は、より検知可能である。
【0016】
10°から60°の角度、好ましくは25°から40°の範囲内の角度は、視準ビーム通路と観測ビーム通路との間で特に適した角度であることが分かった。これらの角度を用いて、試験標的の容易に検知可能な横方向オフセットが形成され、その間に試験対象から出る光も同時に眼の深い領域内に容易に入り込んでいく。
【0017】
可変に調整可能であることは、視準ビーム通路と観測ビーム通路との間の角度に、特に適している。このように、観測者の視線方向における試験標的の横方向オフセットおよび眼の深い領域への光パターンの入り込みは、用途のそれぞれの場合に最適化されてもよい。
【0018】
本発明の適切な変形例において、試験対象は、観測ビーム通路の光学軸の周りで一緒に回転されてもよい。このことは、試験標的を異なる方向から、患者の頭の配向と無関係でさえある眼に向かって照射することを可能にする。試験標的(すなわち、試験対象から出る光パターンの鏡映)の変更から、眼の光学媒体間の境界の輪郭に対して、特に円環状IOLの主軸の位置に対して、結論が引き出され得る。観測ビーム通路の光学軸の周りの試験対象の回転における試験標的の形の変化から、例えば、線形の試験標的の長さの変化から、そのような結論が得られることも考えられるだろう。
【0019】
発光試験対象は、原則として、どんな輪郭も有してもよい。比較的単純な輪郭として、それらはそれにも関わらず容易に識別可能であるが、線、2重線、多重線、十字形、中空十字形、2重の十字形、多重の十字形、三角形、多角形、矢印、文字および/またはシンボルが、適していると分かっている。
【0020】
試験対象が光を出すことができるために、それらは、例えば、グローワイヤーとして、またはLEDアレイとして、自己発光性があってもよい。しかし、代案として、試験対象は、反射性または逆光性があってもよく、後者は、好ましくは、ある輪郭を有する逆光スリットまたはゲートとしてである。
【0021】
それぞれの試験対象が、その色および/または輪郭によって別の試験対象と異なることが、好都合なことが分かった。このことは、特定の試験対象を有する眼内の個々の光鏡映または試験標的を、光学的配置の操作者が、すぐに関連させることを可能にする。色による試験対象の区別は、これらがある観測角度で前後にそのまま位置している場合、個々の試験標的の明確な識別を可能にする。さらにまたは代案として、異なる試験対象から出る光パターンを、異なるように偏光させることもできる。異なる偏光を用いて、前後に位置している試験対象を、解像でき、偏光依存性ビーム分割器を用いて異なる観測ビーム通路へ導入でき、これにより同時に鮮明に結像できる。
【0022】
本発明に係る光学的配置の操作は、相補的な輪郭を備えている2つの試験対象によって、さらに改善されてもよい。これらは、例えば、互いの方に向けられた2つの矢印、または補色に関連する中空十字形(すなわち、発光しない十字形状の領域)、十字形状の試験標的であってもよい。眼の観測中に、2つの相補的な試験対象が、特定の相補的な位置をとるとすぐに、このことは、眼内の人工レンズを有する所定配向、例えば、主軸が角膜乱視の主軸に相当しているIOLの配向を画定する。
【0023】
本発明のさらに適切な変形例では、光強度を調整可能な照明装置が、少なくとも1つの試験対象のために設けられている。概して、光強度を調整可能な照明装置は、それぞれの試験対象のために設けられており、特に他の試験対象のための照明装置の光強度と無関係な光強度の調整可能性を有している。このことは、眼の異なる深さから反射される試験標的の光強度の差を補正することを、可能にする。光強度におけるこれらの差は、さもなければ、眼内の異なる長い通路を通過せねばならず、特に拡散によるプロセスにおいて異なる光量を緩める光パターンに起因し得る。異なる深さからの試験標的の光強度と一致する可能性は、眼の異なる深さからの試験標的の位置の比較を大幅に容易にする。
【0024】
光学的配置のさらに好都合な実施形態が、考えられる。例えば、患者の眼の移動に対する安定化系を、例えば多重イメージ原理にしたがって、観測ビーム通路に追加的に設けることができる。プリズムまたは同様の光学系が、結像(imaging)において横方向反転を受ける試験標的のイメージ反転のために設けられてもよい。1つ以上の目盛りが、観測ビーム通路における接眼レンズで好都合になることができ、この目盛りは、例えば、観測ビーム通路に対する視準ビーム通路の角度、角膜またはIOLの特定の曲率半径、および/またはIOLの軸方向位置を示している。
【0025】
本発明は、眼内の人工レンズの配向を確認するための方法にも関する。この方法では、それぞれが規定された輪郭を有する試験対象から出て、1つの視準光学系を用いて視準される2つ以上の光パターンは、それぞれ、観測ビーム通路に対して同一直線上ではない角度で、眼に向けられている。角膜の前側でおよび/または人工レンズと眼の光学媒体との間の少なくとも1つの境界で反射される光パターンは、同時にまたは連続的に鮮明に結像される。眼内の人工レンズの回転角度を変更することによって、および/または眼に対する試験対象の回転の角度を変更することによって、眼の異なる境界からの光パターンまたは光パターン群の鏡映のイメージを、最適化、すなわち最大化してもよい。光パターンの鏡映の最大の重ね合わせを用いて、眼内の人工レンズの最適な配向を保証する。円環状IOLでは、このことは、眼の角膜乱視の主軸とそれらの主軸とが正確に一致することを意味する。
【0026】
方法の第1変形例では、角膜の前側で、および/または人工レンズと眼の光学媒体との間の少なくとも1つの境界で反射される光パターンが連続的に鮮明に結像されるように、観測ビーム通路の結像光学系の結像特性が修正される。観測者または操作者、通常、眼科医は、自身の位置および患者の眼に向かう画角を変更する必要はない。代わりにまたはさらに、眼の異なる深さからの、例えば、角膜の前側からのおよび/または人工レンズと眼の光学媒体との間の少なくとも1つの境界からの、光パターンの鏡映が、同時に鮮明に結像されることを、異なる結像特性を有する複数の観測ビーム通路が取り扱ってもよい。この変形例は、人工レンズの配向が、光パターンの連続的な鏡映においてよりも、さらに一層早く識別され得るという長所を持っている。
【0027】
視準ビーム通路と観測ビーム通路との間の角度が変更される場合、および/または試験対象が観測ビーム通路の光学軸の周りで一緒に回転される場合、この方法は特に有益になり、その結果、試験標的が、異なる方向から患者の眼に向かって投影され得る。
【0028】
さらに、本発明に係る光学的配置および本発明に係る方法の変形例が考えられる。それらが以下で説明される。
【0029】
既に上述したように、レンズによって反射される試験標的の位置を考慮に入れて、人工眼レンズの曲率半径の測定が可能なように、光学的配置または方法を構成することが考えられる。それによって、レンズの倍率の直接測定も、そのためのなんらかの計算を実行することなしに可能である。特に、時間を消費する波面の測定および評価を避けてもよい。むしろ、曲率半径は、複数の試験対象の間の距離から、または試験標的と光学軸の間の距離から、直接的に読み取られてもよい。
【0030】
それは、光標的ビーム(光パイロットビーム)、例えばレーザーパイロットビームを、患者が検査中に見つめるような光学的配置に結合するのに役立ち得る。したがって、患者は、眼の位置の安定化に、このようにして測定の精度の増加に、積極的に寄与し得る。ここで、標的ビーム(パイロットビーム)が眼に向かって投影される試験標的に対して中心に位置するように、目標ビーム(パイロットビーム)が進められてもよい。それによって、患者の眼の見つめる軸に対して中心にある配向が得られる。光学的配置へのパイロットビームの結合は、患者の位置から観測ビーム通路の近位端で、または例えばプリズムの部品を用いて観測ビーム通路内で、行われる。
【0031】
パイロットビームが、とても小さな点の形ではなく、拡張された対象として眼に向かって放射されることが、特に好都合である。例えば(しかし強制的にではなく)、パイロットビームを、回転対称な見つめるマークとして、例えば中空円として、またはT形マーカーとして、眼に向かって投影できる。角膜の前面またはレンズの前面または後面からの逆鏡映の重ね合わせ(例えば、円光鏡映を互いに組み込むことまたはT形鏡映を重ね合わせること)によって、パイロットビームにより予め定められた見つめる軸へ向かう眼内レンズの中央位置調整が得られてもよい。
【0032】
多重結像系(すなわち結像倍増系)が観測ビーム通路の少なくとも1つに配置される場合に、眼の検査が容易になる。このような多重結像系は、中央像面内における眼のイメージを2倍にするように構成されており、このようにして眼の移動に対して観測者に生成されるイメージを安定させる。
【0033】
この文脈において、多重結像系のプリズムまたはレンズのような光学素子にとって、眼に向かいかつ人工レンズに向かう試験標的を投影するのに用いられる光源の光周波数に調整されたコーティングを備えることは、好都合であり得る。コーティングを、特に、試験標的の光に対する狭帯域透過性フィルタとして具体化できる。この波長感応コーティングによって、その結果として、試験標的の光のみが観測ビーム通路で透過され、その結果、操作者の邪魔をする2重イメージが回避される。したがって、コーティングは、スペクトル的に非常に狭いフィルタを形成してもよく、その結果、関係のあるビーム通路で、試験標的の寄生イメージのみを非常に明るく見ることができ、2重イメージのみを非常に弱く見ることができる。コーティングは、減衰なしで約10nmのFWHM幅を有する波長領域内の光を透過する場合のみ、狭帯域フィルタと見なされてもよい。
【0034】
いくつかのそのような観測ビーム通路が存在する場合に、観測ビーム通路の少なくとも1つで、機械的に作動される一時的に使用可能なシャッターが、この観測ビーム通路を一時的に閉鎖することができるように設けられているならば、さらなる改善が生じる。1つの観測ビーム通路の一時的な閉鎖によって、操作者(または外科医)は、2重イメージなしの外科モードと2重イメージありの測定モードとの間を切り替えてもよい。シャッターは、観測ビーム通路のうちの1つのどの点に配置されてもよい。
【0035】
複数パートレンズ系の代わりに、多重結像系の単体設計が、いくつかのプリズムの組み合わせによって得られる場合、多重結像系(結像倍増系)は、特に頑強となるように具体化されてもよい。この場合、上述されたやり方でコーティングを有するプリズムを設けることができる。
【0036】
さらに、双眼顕微鏡の元で、照明要素、視準要素および観測要素を備える光学的配置を回転可能に配置することも考えられ、観測が、双眼顕微鏡の1つのビーム通路を介して達成され、その間、第2ビーム通路が影響を受けず、特に遮蔽されていないようになっている。光学的配置の挿入によって、2つの双眼顕微鏡のビーム通路の異なる光学通路が生じる場合、適した光学素子、例えばプリズムによって、これを補正できる。
【0037】
さらなる変形例は、試験標的を導入するように設計された観測ビーム通路への追加的な視準および/またはミラー光学系の導入になるであろう。この試験標的は、通常、レンズの前面の曲率によって外部へ反射されて再度観測ビーム通路へ入り、それによってそれらを測定のために使用可能にする。例えば、反射リングを観測ビーム通路に導入することができ、この反射リングは、観測ビーム通路の光学軸の方向で外部に再び向かうように鏡映を映し、これらの鏡映は、ミラーやプリズムのようなさらなる光学素子によって測定のために使用可能になる。
【0038】
以下に、本発明に記載の光学的配置および本発明に係る方法の好都合な実施形態が、図面を参照してより詳細に説明されるだろう。図面は、詳細には以下を示している。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】本発明に記載の光学的配置の配置図である。
図2】照射光パターンの鏡映または眼の試験標的の図である。
図3a】試験標的のいくつかの例である。
図3b】試験標的の輪郭である。
図4】光学的配置の変形例である。
図5】観測ビーム通路の第2変形例である。
図6】観測ビーム通路の第3変形例である。
図7】患者の視点からの観測ビーム通路の図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
同様の構成要素は、常に、図中の同一の参照符号を与えている。
【0041】
図1は、本発明に記載の光学的配置1の実施形態を概略的に示している。光学的配置1は、ハウジング2を備えており、光学的配置1は、ハウジング2を有する独立した装置として設計されてもよい。代案として、外科用顕微鏡の一部であるか、または対応する取付物によって、例えば外科用顕微鏡のビーム通路の中へそれを旋回させることによって、外科用顕微鏡のビーム通路に導入される、ハウジング2が考えられるだろう。
【0042】
ハウジング2で、概略的に台3が示されており、ハウジング2に対してこのようにして光学的配置1に対して所定位置に眼4を持って行くために、患者が頭を台3にもたれさせて休ませることができる。台3は、さらに、できるだけ安定するように所定位置に患者の眼4を保つのを支援する。
【0043】
患者の眼4は、図1に概略的に示されている。ここで、人は、眼の角膜5を見ることができ、角膜5は、光学的配置1、および眼のレンズ6に方向づけられている。レンズ6は、特に、人工眼レンズであり、さらに眼内レンズ(IOL)と呼ばれている。
【0044】
光学的配置1は、1次観測ビーム通路7を有する。1次観測ビーム通路7の中央光学軸8は、眼4が観測されてもよい方向を規定する。観測ビーム通路7には、第1対物レンズ9および第2対物レンズ10が設けられている。それらは、像面11中の眼4の観測された部位のイメージを生成する役目をする。1つの接眼レンズ12または一方が他方に隣接して配置された2つの接眼レンズ12によって、像面11に生成されたこのイメージが、観測者に対して鮮明に結像される。2つの対物レンズ9、10の間に、多重結像系(結像倍増系)13が配置されている。それは、観測者のために眼4の動作に対して生成されるイメージを安定させるように、中間像面内に眼4のイメージを2倍にする役目を果たす。
【0045】
光学的配置1は、さらに第2または2次観測ビーム通路7aを備えている。眼4と第1対物レンズ9の間に配置された第1ビーム分割器14を介して、2次観測ビーム通路7aは、1次観測ビーム通路7から脱結合されている。第2対物レンズ10と像面11の間に配置された第2ビーム分割器15を介して、2次観測ビーム通路7aが1次観測ビーム通路7に再び結合しており、その結果、両方の観測ビーム通路7、7aを介して接眼レンズ12を通って同時に観測者が見ることによって、眼4を観測できる。偏光ミラー16は、2次観測ビーム通路7aを、第1ビーム分割器14で1次ビーム通路7との脱結合から、第2ビーム分割器15から1次ビーム通路7への結合に、案内する。
【0046】
ちょうど1次ビーム通路7でのように、2次観測ビーム通路7aでも、第1対物レンズ9aおよび第2対物レンズ10aが、眼4の観測された部位のイメージを生成するように、かつ観測者のために接眼レンズ12のこのイメージを鮮明に結像するように、設けられている。さらに、1次観測ビーム通路7との類似点では、眼4の動作に対して生成されるイメージを安定させるために2次観測ビーム通路7aに多重結像系(結像倍増系)13aも取り付けられている。1次観測ビーム通路7に対する相違点は、2次観測ビーム通路7aの第1対物レンズ9aは、固定位置に配置されていないが、2次観測ビーム通路7aの光学軸8aに沿って変更されてもよい、ということである。この変位動作は、両方向矢印Vによって示される。変位動作Vは、例えば、10mmまで、20mmまで、または30mmまでもの領域にわたって、許容できる。それは、眼4における異なる深さから観測者まで連続的に鮮明に結像することを許容する。1次観測ビーム通路7に対する一層の相違点は、2次観測ビーム通路7aには、今回の場合にプリズムによって実現されるイメージ反転手段17が設けられている、ということである。それらは、2次観測ビーム通路7aにおいて恐らく上下逆さまのイメージを逆にする役目を果たす。
【0047】
2つの対物レンズ9、10および接眼レンズ12は、一緒に、この1次観測ビーム通路7の結像特性を規定する1次観測ビーム通路7の結像光学系18を形成する。同様に、第1対物レンズ9a、第2対物レンズ10a、そしてまた接眼レンズ12は、2次観測ビーム通路7aの結像光学系18aを形成し、その結像特性を規定する。第1対物レンズ9aの変位の可能性によって、2次観測ビーム通路7aの結像特性は、可変または調整可能である。
【0048】
本発明に記載の光学的配置1は、さらに、第1試験対象20および第2試験対象21を備えている。2つの試験対象20、21はそれぞれ、規定された、好ましくは相補的な輪郭を有する。光は、この規定された輪郭の形で、試験対象20、21から放出される。この目的を達成するために、試験対象20、21は、例えばLEDアレイまたは自己発光のホイル(OLED)の形で、自己発光してもよい。しかし、例示的な実施形態では、試験対象20、21はそれぞれ、規定された輪郭を有し、照明装置22、23によって逆光を受けるゲート(穴)である。ここで、照明装置22、23は、例えば白色光の形で同じ色を有してもよく、あるいは、それらは、2つの試験対象20、21を識別するための異なる色、特に、緑および赤のような補色、または異なる偏光を有することができる。例示的な実施形態では、第1試験対象20用の照明装置22は制御装置24を備えており、制御装置24によって照明装置22の光強度22が連続的にまたは次第に制御されてもよい。
【0049】
1つの独立した視準光学系25、26は、各試験対象20、21に関連している。前記視準光学系25、26は、それぞれの試験対象20、21から放出される、輪郭形成された光パターン視準し、眼4に向けられた視準ビーム通路27、28にそれを押し込む。試験対象20、21から放出される光パターンは、このように、無限から来るように見える平行光線束として眼4に達する。眼では、異なる屈折率を有する2つの光学媒体の間の境界で、特に、角膜5の前側または後側で、および人工レンズ6の前側または後側で、光が反射され、ここで後者の境界は中空ミラーとして作用する。鏡映または反射光点を、本発明の範囲内では試験標的29、30と呼ぶ。これらの鏡映または試験標的29、30は、2つの観測ビーム通路7、7aを介して、観測者に対して鮮明に結像される。
通路7の光学軸8の周りで一緒に回転可能である。
【0050】
視準ビーム通路27、28は、光学的配置1において、1次観測ビーム通路7の光学軸8に対して、それぞれ角度α、α1に位置する。2つの角度α、α1は、同一であってもよい。好都合な実施形態では、試験対象20、21、および視準ビーム通路27、28の配向の位置は、視準ビーム通路27、28および観測ビーム通路7の間でとられる角度α、α1に関して、可変である。適した機構は、角度α、α1が常に同一のままとなることを取り扱ってもよい。接眼レンズ12の付近に、ユーザーのためのそれぞれの角度αを示す目盛りが取り付けられてもよい。代案として、この角度が、目盛りを有する接眼レンズ12内に重ね合わされてもよい。さらに、試験対象20、21はすべて、好ましくは、異方向から眼4に向かって試験標的29、30を照射することができるように、観測ビーム通路7の光学軸8の周りで一緒に回転可能である。
【0051】
図2は、拡大表示で、患者の眼4における状況を示している。ここで、眼4の前側媒体だけ、すなわち、角膜5、(人工)レンズ6、および中間に位置する前房31および絞り
32が、示されている(正確な縮尺ではない)。角膜5の前側5aおよび後側5bで、およびレンズ6の前側6aおよび後側6bで、屈折率段階が、眼4の異なる光学媒体の間および角膜5と空気との間に発生する。これらの境界5a、5b、6a、6bで、屈折率段階により、視準ビーム通路27、28を介して照射された試験対象20、21の光パターンの逆鏡映が生じる。観測ビーム通路7、7aを介して観測者に見えるようになる明るい「試験標的」としてのこれらの光パターンの鏡映29、29a、30、30aが、眼内の異なる深さから生じることを、人は、図2ではっきりと理解できる。ここで、鏡映または試験標的29、30は、角膜5の前側5aから生じており、一方、試験標的29a、30aは、角膜5aの前面の真下の約5〜10mmに置かれている人工レンズ6の前側6aから生じている。さらに、鏡映または試験標的は、そこで中空ミラーとして作用する人工レンズ6の後側6bから反射され得る。
【0052】
図3aは、例として、一緒に用いられる2つの試験対象20、21の輪郭を示している。ここで、第1試験対象20の輪郭は、4重の十字形、すなわち2つの他の同様に平行線の一群によって直角に切断される2つの平行線の一群からなっている。この試験対象20の輪郭の中心に、長方形の特に正方形の中央部33が形成されている。第2試験対象20の輪郭は、単純な十字形である。第2試験対象21の十字形輪郭が、この十字形の中心が第1試験対象20の光パターンの中央部33で中心に置かれるように方向づけられてもよい限りにおいて、2つの試験対象20、21の輪郭は、互いに関して相補的である。
【0053】
図3bは、2つの試験標的20、21の輪郭の第2実施形態を示している。ここで、左に示される第1試験標的20は、中央帯34が見当たらない二等辺三角形の輪郭を有する。第2試験対象21は、そのような二等辺三角形の輪郭を有する。しかし、ここで、中央帯が存在しており、突出34aの形で三角形を越えてさらに延長されている。第2試験標的21の延長された突出部34aが第1試験標的20の埋め込み中央帯領域34に挿入されてもよい限りにおいて、2つの試験標的20、21は、互いに関して相補的である。
【0054】
以下で、本発明に記載の光学的配置の動作および本発明に係る方法の手順が説明されるだろう。
【0055】
第一に、患者の頭は、特に台3に患者の頭を置くことによって、光学的配置1にドッキングされる。これは、人工眼レンズ6が、選択的に円環眼レンズ6が、患者の眼4に挿入された後に、行われる。このレンズ6は、眼4の、特に角膜乱視の不完全な視覚を補正するために、特に患者の眼4のために、前もって製造されている。人工レンズ6における製造業者マーカーは、主軸の位置を、それが円環状IOLである場合、マークする。これらのマーカーは、接眼レンズ12を通して見ており、観測ビーム通路7を通して眼4を観測する観測者によって、可視である。しかし、マーカーは、必ずしも完全にIOLの主軸と一直線に並んでいるとは限らない。
【0056】
これは、本発明に係る方法が有効になるところである。角膜曲率計を用いる場合と同様に、試験対象20、21から出る規定された輪郭の光パターンが、眼4に向かって照射される。これらの光パターンの鏡映は、明るい試験標的の形で、観測者に可視である。しかし、上述し、かつ特に図2を参照して図示したように、それらは、眼の異なる深さから出る。これらの深さの差を補正するために、1次観測ビーム通路7に加えて、2次観測ビーム通路7aが今や設けられてもよく、2次観測ビーム通路7aの結像光学系18が、1次観測ビーム通路7の結像光学系18よりも眼4の別の深さから鮮明なイメージを生成する。このように、眼4の異なる深さからの試験標的は、観測者のために同時に鮮明に結像される。試験標的間に輝度差が存在していて、特に、眼4におけるより大きな深さから反射される試験標的29a、30aが、眼4におけるより高い領域から反射される試験標的よりも光強度が小さいならば、輝度差は、照明装置22の光強度を制御することによって補正されてもよい。代案として次のことが考えられ、2次観測ビーム通路7aの中、または1次観測ビーム通路7の中に、主として1つの観測ビーム通路7だけが存在する場合、結像光学系18の結像特性が、特に対物レンズ9、9aを移動させることによって可変である。このことは、このために視野角を変更する必要なしに、角膜5aの前面によって、または眼4のより深い領域における境界によって反射された試験標的を、連続的に鮮明に観測者に結像させることを可能にする。
【0057】
さらなる段階では、観測者は、今や、好ましくは試験標的20、21と眼4との間の距離を維持しながら、眼4に対する試験対象20、21の配向を変更してもよく、1次観測ビーム通路7の光学軸8の周りですべての試験対象20、21の完全群を回転させてもよい。このように、試験対象20、21の光パターンは、異方向からの眼4に向けられる。この方向の変更は、順番に、試験対象20、21によって引き起こされる鏡映または試験標的を重ね合わせることを可能にする。このことは、観測者によって2つの試験標的の区別を可能にする試験標的20、21の輪郭における差によって、容易になる。試験標的の重ね合わせを最大化することは、図3a、3bにおける例により示されるように、試験対象20に相補的な輪郭を与えることにより、さらに容易にさえなる。その上、試験標的の重ね合わせを最大化するのに必要であれば、観測者は、眼4内の人工レンズ6を回転させてもよい。観測者は、角膜5aの前面から、および最大化されたレンズ6の境界6a、6bから反射される光パターンの重ね合わせにより、眼4内の人工レンズ6の最適な配向を認識する。
【0058】
例示的な実施形態から始めて、本発明に記載の光学的配置1および本発明に係る方法が、多くのやり方で修正または拡張されてもよい。例えば、2つの試験対象20、21を設けることだけでなく、4つ、6つ、あるいはその他の数の試験対象20、21を設けることが、考えられるだろう。その上、観測ビーム通路7、7aに、適した画質評価ソフトウェアを有するカメラを導入することも考えられるだろう。観測ビーム通路7の光学軸8の周りの回転可能性に加えて、試験対象20、21は、置き換えによって移動可能にもなり得る。
【0059】
眼4内の異なる深さから重ね合わせられたまたは隣接した試験対象29、30のイメージが、共通の結像平面内に同時にまたは連続的にもたらされることによって、複数の光学境界5a、6a、6bの逆反射されたマーカーが、互いに比較されてもよい。このことは、例えば、角膜5および円環状IOL6のシリンダ部の軸を重ね合わせること、および軸方向の一致に関してそれらを検査することを、可能にする。それによって、IOL6の回転または位置決めの対応する修正が、手術中または手術後に行われてもよい。ここで、IOL6の倍率の計算ではなく、むしろ、その曲率半径を用いたレンズ6の倍率および位置の直接測定が、行われる。不完全に取り付けられた製造業者マーカーにより、レンズ6上に生じ得る不良位置合わせは、本発明では回避される。それによって、眼4の屈折特性は、完全に改善される。手術前および手術中に得られる患者の眼4のイメージ間の比較に基づく従来方式とは対照的に、その上、手術前および手術中のイメージの間の回転偏差による誤差は、本発明では取り除かれている。本発明では、IOL6および角膜5の互いに対する位置は、患者の眼4または患者の全頭部の可能な回転とむしろ無関係に測定される。
【0060】
強化機能を有する本発明1に記載の光学的配置のさらなる変形例が、図4に示されている。よりよい概観のため、図4は、1つの単一観測ビーム通路7のみを有する光学的配置1の変形例を示している。眼4の異なる深さから試験標的29、30の鏡映を鮮明に結像することができるように、対物レンズ9は、矢印Vによって示されるように、この観測ビーム通路7において変位されてもよい。
【0061】
第1実施形態に関しての改造は、光学的配置1が検影器の機能性によって補われることである。このことは、第1試験対象20と眼4の間の視準ビーム通路27へ導入される旋回ビーム分割器または鏡40によって、なされる。この鏡40を内側へ旋回させることによって、視準ビーム通路は遮られる。代わりに、今やスリット41からの光は、視準光学系42を介して眼4に達する。それによって、眼4上に生成される光の線が、それから放射される光の光学軸と垂直に、開口スリット41の移動によって移動されてもよい。
【0062】
光の線は、検査される眼4を越えて視準されかつ移動され、網膜で鏡映が接眼レンズ12を通して観測される。瞳孔の領域を超える移動中の鏡映移動の方向が、スリットの元の移動方向と比較される。
【0063】
鏡映の非移動:眼は、屈折異常を有しない。
【0064】
追従移動:眼は、遠視(視界が遠い)である。
【0065】
反対方向における移動:眼は、近視(視界が近い)である。
【0066】
移動方向の変更も、眼4の乱視の場合に利用されてもよい。このため、最高および最低の屈折率を有する軸が、瞳孔を越えて光の線を回転かつ移動させることによって、決定されてもよい。それに応じて、屈折異常も、外科用顕微鏡の下での(乱視修正円環)人工レンズ6の注入の後に、選択的に人工レンズが埋め込まれる前および後の比較によって、直接的に決定されてもよい。
【0067】
このため、顕微鏡に光の線を結合する装置は、好都合であり、その結果、鏡映が顕微鏡の接眼レンズ12を通じて直接的に観測され得る。装置は、軸方向位置を決定するために回転可能でなければならず、光の線は、水平方向でそれを変位させることによって患者の眼4の瞳孔を越えて移動可能でなければならない。回転可能な結合の異なる位置の比較をすることができるように、マーカーが、接眼レンズに取り付けられ、かつ調整可能(回転可能)である。
【0068】
本発明のこの変形例では、光学的配置1は、(すべて検影器の原理による組立体としての)光源(ハロゲンランプ、LED、・・・)、スリット、視準光学系、ビーム分割器からなる投射ユニットを回転可能に連結するための装置と、(水平)変位装置、例えば外科用顕微鏡の下でまたは中でボールベアリングによって接続されたリング系とを備えている。短スリット軸の方向における変位は、例えばネジ装置または電動移動を介して達成されてもよい。回転装置は、少なくとも0から180°まで回転可能であり、360度までの回転が可能である。患者の眼4の瞳孔面上の光の線の変位領域は、0〜25mmである。スリットは、1〜25mmの長さおよび0.1〜10mmの幅を有している。
【0069】
選択的に、少なくとも1つの試験標的は、例えば突出部「シャッター」としてのスリットを挿入することによって、または十字形の光源を用いて、(十字形の棒を格納する)一方向におけるイメージの次元を減少させることによって、スリットに変えられてもよく、同一直線上で移動可能なやり方でビーム分割器を介して外科用顕微鏡のビーム通路の中へ溶明/挿入/旋回してもよい。
【0070】
図5は、光学的配置が外科用顕微鏡50、特に双眼顕微鏡に結合された、さらなる変形例を概略的に示している。双眼顕微鏡の2つの接眼レンズ12、12aおよび外科用顕微鏡の主な対物レンズ51を表すレンズが、示されている。よりよい概観のために、多重結像系13を含む光学的配置1の観測ビーム通路7の一部のみが示されている。
【0071】
人は、多重結像系(結像倍増系)13が顕微鏡50の1つの接眼レンズ12aのビーム通路の中に配置されていることのみであることが分かる。その結果、他の接眼レンズ12のビーム通路は、影響を受けない。人は、多重結像系13が複数の相互に連結されたプリズム52および透明光学ブロック53を備えていることが、さらに分かる。観測ビーム通路7を2つの部分ビーム7’および7”に分割し、続いてこれらの部分ビームを再び重ね合わせるビーム分割器配置が生じるように、これらのプリズム52および光学ブロック53は、互いに接続されている。部分ビーム通路7’および7”の各々に、レンズ54が分散して置かれた自由ビーム通路が置かれている。レンズ54の分散配置は、ビーム偏光を引き起こす。
【0072】
観測ビーム通路7を含む光学的配置は、好ましくは外科用顕微鏡に回転可能に結合されている。例えばプリズムを使用して、他の接眼レンズ12のビーム通路中の対応する補正光学系により、接眼レンズ12aの観測ビーム通路中の光路長に対する多重結像系13の影響を補正することが、考えられる。
【0073】
さらに、コーティング55を有する多重結像系13の光学素子52、53、54の1つまたは複数を設けることが考えられ、コーティング55は、ここで単なる例として、プリズム52上におよび透明光学ブロック53上に表されている。コーティング55は、試験対象20または試験標的29、30から放射される光のための狭帯域透過性フィルタであってもよい。
【0074】
さらに、図5は、単なる例として、光学的配置1のすべての実施形態の中にあってもよい、さらなる特徴、すなわち制御可能なシャッター62を示している。後者は、実線によって表される観測ビーム通路7の位置に、この観測ビーム通路7を一時的に閉鎖するように、一時的に持ってこられてもよい。そうでなければ、シャッター62は、破線によって表される開位置をとる。
【0075】
さらにまたは代案として、1つの部分ビーム7”だけを実線で示される位置で閉鎖し、一方(破線で示される)開位置でこの部分ビーム7”を妨害しないように、制御可能なシャッター62aは、多重結像系13の内部に配置されてもよい。シャッター62aが部分ビーム通路7”に置かれており、それを閉鎖する場合、観測者は他の部分ビーム通路7’を通して接眼レンズ12aに達する光を見るだけなので、2重のイメージが防止されている。
【0076】
図6は、図1、4および5に示される、多重結像系13のさらなる改造を示している。図5と同様に、図6における状況でも、表された多重結像系13を有する光学的配置は、外科用顕微鏡50に結合されており、特に、それは、双眼顕微鏡50の2つの接眼レンズ12aのうちの1つのビーム通路にのみ、挿入されている。図5の状況とは異なって、図6に係る多重結像系(結像倍増系)13は、今や自由ビーム通路なしで作動する単体系として、具体化されている。分散されたレンズ54を有する自由ビーム通路の代わりに、2重プリズム56が、2つの部分ビームの正味のビーム偏光を処理する部分ビーム通路7、7’、7”の各々に配置されている。
【0077】
図6は、さらに、光学的配置1のすべての実施形態に設けられてもよい、さらなる変形例、すなわち見つめる光(パイロット光)57も示している。この見つめる光57のための光源は、LED、電球またはレーザーであってもよい。視準レンズ58によって、見つめる光57から放射されたパイロットビーム59は、多重結像系13に結合され、それにより光学的配置1の観測ビーム通路7に結合される。この結合は、パイロットビーム59が光学軸8と平行な観測ビーム通路7へ向けられるように、達成される。眼4の検査中に、患者は、パイロットビーム59を見つめるべきかつ見つめることができ、したがって、観測ビーム7の光学軸8に対して最適に、眼4を適応させる。
【0078】
図7は、患者の視点からの観測ビーム通路7の図を概略的に示している。患者の視界の中心に、患者によって見つめるべきパイロットビーム59が置かれている。それは、双眼顕微鏡50の接眼レンズ12aを通して観測されてもよい領域の中心に置かれている。多重結像系13は、第2接眼レンズ12の観測通路を妨害しないように、配置されている。図7に示される位置から始めて、多重結像系13は、第2接眼レンズ12の観測通路を妨害することなく、点で描いた矢印によって示される方向に、180°よりもずっと大きく、約270°ですら、回転されてもよい。視界の端に、配向を容易にする角膜曲率計マーカー60および付加的な発光円61が、置かれてもよい。
【0079】
さらなる変形では、本発明に記載の光学的配置および本発明に係る方法は、眼内の眼内レンズ6の軸方向位置、すなわちいわゆるZ軸におけるレンズ6の位置を測定するのに適することができる。既知の曲率半径および眼内レンズ6の既知の厚さがとられる場合、これは可能である。眼内レンズ6の軸方向位置の測定は、逆反射された試験標的のサイズから、異なる試験標的間の距離から、または光学軸からの試験標的の距離から、確認されてもよい。眼内レンズ6の軸方向位置におけるこの情報を用いて、レンズ6の屈折効果が、正確に計算されてもよい。
図1
図2
図3a
図3b
図4
図5
図6
図7