【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的は、請求項1の特徴を有する光学的配置によって、または請求項18の特徴を有する方法によって、それぞれ達成される。本発明のさらに好都合な発展は、従属請求項で述べられている。
【0011】
本発明に係る光学的配置は、規定された輪郭を有する少なくとも2つの発光試験対象を備えている。これらの試験対象(test object)から出る構造化
光パターンは、視準光学系(collimation optical system)によって
視準され、眼に向けられ、この眼は、例えば、光学的配置の操作者によって、またはカメラによって光学的配置の観測ビーム通路を介して観測される。患者の眼では、複数の光学的境界は、眼の異なる光学媒体間に存在する。これらの境界で屈折率が変化するので、
光パターンの逆鏡映(retroreflection)が境界に生じる。本発明の範囲内では、これらの逆鏡映を「試験標的(test target)」とも呼ぶ。今や、本発明の核心は、眼内の異なる光学的境界の既知の輪郭および位置の試験標的を、同時にまたは連続的に逆反射しかつ比較できることである。最も重要な境界は、角膜の表面および埋め込まれた人工レンズの前側および後側である。さらに、境界は、角膜および網膜の後側であるだろう。
【0012】
本発明では、眼の光学媒体の異なる境界から反射される
光パターンが連続的に鮮明に結像され得るように、その結像特性、特にそれらの集光特性が、調整可能なように、観測ビーム通路の結像光学系が、構成されている。この目的を達成するために、それによって結像光学系の集光が変位されてもよい全通路は、例えば、0と30mmの間、好ましくは約10mmであり得る。さらにまたは代案として、異なる結像特性、特に異なる集光特性を備えている複数の観測ビーム通路を備えることが、結像光学系にとって可能であろう。このことは、それらを互いに比較することができるように、眼の異なる深さから反射される
光パターンを同時に鮮明に結像することを可能にする。
【0013】
人は、特に眼内レンズの前面または後面での眼の特定の深さからの光鏡映(reflection)または試験標的の相対位置から、レンズの配向、特に円環レンズにおける主軸の配向を、推測してもよい。眼の特定の深さにおける試験標的の相対位置および眼の表面上の試験標的の相対位置の比較に基づいて、人は、眼内レンズが角膜の乱視に関するどの回転配向を有するかを、さらに決定してもよい。ここで、結果として生じる全屈折力の質または眼の視力を、必ずしも検知する必要はない。むしろ十分に、
光パターンの相対位置から、それによって眼に埋め込まれたレンズが、角膜の乱視に関して最適に方向づけられてもよい(回転方向および回転角度を示す)回転を、人が推定し得る。
【0014】
眼の手術中または手術後の装置として、または実験室用機器として用いられてもよいように、光学的配置が、特に設計されてもよい。例えば、光学的配置を、光モジュールとして設計し、手術中の用途のために、対応する取付物上の外科用顕微鏡の下で変位させ、折り返し、または外科用顕微鏡のビーム通路に導入することができる。しかし、代案として、独立した装置として使用されてもよいように、光学的配置を設計することができる。
【0015】
好ましくは、視準ビーム通路はそれぞれ、観測ビーム通路と同一直線上にないやり方で、すなわち観測ビーム通路に対してある角度で、眼に向けられる。このことは、眼の異なる深さまたは異なる境界からの
光パターンの鏡映の横方向オフセットに結びつき、その結果、試験標的または
光パターンの鏡映は、より検知可能である。
【0016】
10°から60°の角度、好ましくは25°から40°の範囲内の角度は、視準ビーム通路と観測ビーム通路との間で特に適した角度であることが分かった。これらの角度を用いて、試験標的の容易に検知可能な横方向オフセットが形成され、その間に試験対象から出る光も同時に眼の深い領域内に容易に入り込んでいく。
【0017】
可変に調整可能であることは、視準ビーム通路と観測ビーム通路との間の角度に、特に適している。このように、観測者の視線方向における試験標的の横方向オフセットおよび眼の深い領域への
光パターンの入り込みは、用途のそれぞれの場合に最適化されてもよい。
【0018】
本発明の適切な変形例において、試験対象は、観測ビーム通路の光学軸の周りで一緒に回転されてもよい。このことは、試験標的を異なる方向から、患者の頭の配向と無関係でさえある眼に向かって照射することを可能にする。試験標的(すなわち、試験対象から出る
光パターンの鏡映)の変更から、眼の光学媒体間の境界の輪郭に対して、特に円環状IOLの主軸の位置に対して、結論が引き出され得る。観測ビーム通路の光学軸の周りの試験対象の回転における試験標的の形の変化から、例えば、線形の試験標的の長さの変化から、そのような結論が得られることも考えられるだろう。
【0019】
発光試験対象は、原則として、どんな輪郭も有してもよい。比較的単純な輪郭として、それらはそれにも関わらず容易に識別可能であるが、線、2重線、多重線、十字形、中空十字形、2重の十字形、多重の十字形、三角形、多角形、矢印、文字および/またはシンボルが、適していると分かっている。
【0020】
試験対象が光を出すことができるために、それらは、例えば、グローワイヤーとして、またはLEDアレイとして、自己発光性があってもよい。しかし、代案として、試験対象は、反射性または逆光性があってもよく、後者は、好ましくは、ある輪郭を有する逆光スリットまたはゲートとしてである。
【0021】
それぞれの試験対象が、その色および/または輪郭によって別の試験対象と異なることが、好都合なことが分かった。このことは、特定の試験対象を有する眼内の個々の光鏡映または試験標的を、光学的配置の操作者が、すぐに関連させることを可能にする。色による試験対象の区別は、これらがある観測角度で前後にそのまま位置している場合、個々の試験標的の明確な識別を可能にする。さらにまたは代案として、異なる試験対象から出る
光パターンを、異なるように偏光させることもできる。異なる偏光を用いて、前後に位置している試験対象を、解像でき、偏光依存性ビーム分割器を用いて異なる観測ビーム通路へ導入でき、これにより同時に鮮明に結像できる。
【0022】
本発明に係る光学的配置の操作は、相補的な輪郭を備えている2つの試験対象によって、さらに改善されてもよい。これらは、例えば、互いの方に向けられた2つの矢印、または補色に関連する中空十字形(すなわち、発光しない十字形状の領域)、十字形状の試験標的であってもよい。眼の観測中に、2つの相補的な試験対象が、特定の相補的な位置をとるとすぐに、このことは、眼内の人工レンズを有する所定配向、例えば、主軸が角膜乱視の主軸に相当しているIOLの配向を画定する。
【0023】
本発明のさらに適切な変形例では、光強度を調整可能な照明装置が、少なくとも1つの試験対象のために設けられている。概して、光強度を調整可能な照明装置は、それぞれの試験対象のために設けられており、特に他の試験対象のための照明装置の光強度と無関係な光強度の調整可能性を有している。このことは、眼の異なる深さから反射される試験標的の光強度の差を補正することを、可能にする。光強度におけるこれらの差は、さもなければ、眼内の異なる長い通路を通過せねばならず、特に拡散によるプロセスにおいて異なる光量を緩める
光パターンに起因し得る。異なる深さからの試験標的の光強度と一致する可能性は、眼の異なる深さからの試験標的の位置の比較を大幅に容易にする。
【0024】
光学的配置のさらに好都合な実施形態が、考えられる。例えば、患者の眼の移動に対する安定化系を、例えば多重イメージ原理にしたがって、観測ビーム通路に追加的に設けることができる。プリズムまたは同様の光学系が、結像(imaging)において横方向反転を受ける試験標的のイメージ反転のために設けられてもよい。1つ以上の目盛りが、観測ビーム通路における接眼レンズで好都合になることができ、この目盛りは、例えば、観測ビーム通路に対する視準ビーム通路の角度、角膜またはIOLの特定の曲率半径、および/またはIOLの軸方向位置を示している。
【0025】
本発明は、眼内の人工レンズの配向を確認するための方法にも関する。この方法では、それぞれが規定された輪郭を有する試験対象から出て、1つの視準光学系を用いて
視準される2つ以上の
光パターンは、それぞれ、観測ビーム通路に対して同一直線上ではない角度で、眼に向けられている。角膜の前側でおよび/または人工レンズと眼の光学媒体との間の少なくとも1つの境界で反射される
光パターンは、同時にまたは連続的に鮮明に結像される。眼内の人工レンズの回転角度を変更することによって、および/または眼に対する試験対象の回転の角度を変更することによって、眼の異なる境界からの
光パターンまたは
光パターン群の鏡映のイメージを、最適化、すなわち最大化してもよい。
光パターンの鏡映の最大の重ね合わせを用いて、眼内の人工レンズの最適な配向を保証する。円環状IOLでは、このことは、眼の角膜乱視の主軸とそれらの主軸とが正確に一致することを意味する。
【0026】
方法の第1変形例では、角膜の前側で、および/または人工レンズと眼の光学媒体との間の少なくとも1つの境界で反射される
光パターンが連続的に鮮明に結像されるように、観測ビーム通路の結像光学系の結像特性が修正される。観測者または操作者、通常、眼科医は、自身の位置および患者の眼に向かう画角を変更する必要はない。代わりにまたはさらに、眼の異なる深さからの、例えば、角膜の前側からのおよび/または人工レンズと眼の光学媒体との間の少なくとも1つの境界からの、
光パターンの鏡映が、同時に鮮明に結像されることを、異なる結像特性を有する複数の観測ビーム通路が取り扱ってもよい。この変形例は、人工レンズの配向が、
光パターンの連続的な鏡映においてよりも、さらに一層早く識別され得るという長所を持っている。
【0027】
視準ビーム通路と観測ビーム通路との間の角度が変更される場合、および/または試験対象が観測ビーム通路の光学軸の周りで一緒に回転される場合、この方法は特に有益になり、その結果、試験標的が、異なる方向から患者の眼に向かって投影され得る。
【0028】
さらに、本発明に係る光学的配置および本発明に係る方法の変形例が考えられる。それらが以下で説明される。
【0029】
既に上述したように、レンズによって反射される試験標的の位置を考慮に入れて、人工眼レンズの曲率半径の測定が可能なように、光学的配置または方法を構成することが考えられる。それによって、レンズの倍率の直接測定も、そのためのなんらかの計算を実行することなしに可能である。特に、時間を消費する波面の測定および評価を避けてもよい。むしろ、曲率半径は、複数の試験対象の間の距離から、または試験標的と光学軸の間の距離から、直接的に読み取られてもよい。
【0030】
それは、光標的ビーム(光パイロットビーム)、例えばレーザーパイロットビームを、患者が検査中に
見つめるような光学的配置に結合するのに役立ち得る。したがって、患者は、眼の位置の安定化に、このようにして測定の精度の増加に、積極的に寄与し得る。ここで、標的ビーム(パイロットビーム)が眼に向かって投影される試験標的に対して中心に位置するように、目標ビーム(パイロットビーム)が進められてもよい。それによって、患者の眼の
見つめる軸に対して中心にある配向が得られる。光学的配置へのパイロットビームの結合は、患者の位置から観測ビーム通路の近位端で、または例えばプリズムの部品を用いて観測ビーム通路内で、行われる。
【0031】
パイロットビームが、とても小さな点の形ではなく、拡張された対象として眼に向かって放射されることが、特に好都合である。例えば(しかし強制的にではなく)、パイロットビームを、回転対称な
見つめるマークとして、例えば中空円として、またはT形マーカーとして、眼に向かって投影できる。角膜の前面またはレンズの前面または後面からの逆鏡映の重ね合わせ(例えば、円光鏡映を互いに組み込むことまたはT形鏡映を重ね合わせること)によって、パイロットビームにより予め定められた
見つめる軸へ向かう眼内レンズの中央位置調整が得られてもよい。
【0032】
多重結像系(すなわち結像倍増系)が観測ビーム通路の少なくとも1つに配置される場合に、眼の検査が容易になる。このような多重結像系は、中央像面内における眼のイメージを2倍にするように構成されており、このようにして眼の移動に対して観測者に生成されるイメージを安定させる。
【0033】
この文脈において、多重結像系のプリズムまたはレンズのような光学素子にとって、眼に向かいかつ人工レンズに向かう試験標的を投影するのに用いられる光源の光周波数に調整されたコーティングを備えることは、好都合であり得る。コーティングを、特に、試験標的の光に対する狭帯域透過性フィルタとして具体化できる。この波長感応コーティングによって、その結果として、試験標的の光のみが観測ビーム通路で透過され、その結果、操作者の邪魔をする2重イメージが回避される。したがって、コーティングは、スペクトル的に非常に狭いフィルタを形成してもよく、その結果、関係のあるビーム通路で、試験標的の寄生イメージのみを非常に明るく見ることができ、2重イメージのみを非常に弱く見ることができる。コーティングは、減衰なしで約10nmのFWHM幅を有する波長領域内の光を透過する場合のみ、狭帯域フィルタと見なされてもよい。
【0034】
いくつかのそのような観測ビーム通路が存在する場合に、観測ビーム通路の少なくとも1つで、機械的に作動される一時的に使用可能なシャッターが、この観測ビーム通路を一時的に閉鎖することができるように設けられているならば、さらなる改善が生じる。1つの観測ビーム通路の一時的な閉鎖によって、操作者(または外科医)は、2重イメージなしの外科モードと2重イメージありの測定モードとの間を切り替えてもよい。シャッターは、観測ビーム通路のうちの1つのどの点に配置されてもよい。
【0035】
複数パートレンズ系の代わりに、多重結像系の単体設計が、いくつかのプリズムの組み合わせによって得られる場合、多重結像系(結像倍増系)は、特に頑強となるように具体化されてもよい。この場合、上述されたやり方でコーティングを有するプリズムを設けることができる。
【0036】
さらに、双眼顕微鏡の元で、照明要素、視準要素および観測要素を備える光学的配置を回転可能に配置することも考えられ、観測が、双眼顕微鏡の1つのビーム通路を介して達成され、その間、第2ビーム通路が影響を受けず、特に遮蔽されていないようになっている。光学的配置の挿入によって、2つの双眼顕微鏡のビーム通路の異なる光学通路が生じる場合、適した光学素子、例えばプリズムによって、これを補正できる。
【0037】
さらなる変形例は、試験標的を導入するように設計された観測ビーム通路への追加的な視準および/またはミラー光学系の導入になるであろう。この試験標的は、通常、レンズの前面の曲率によって外部へ反射されて再度観測ビーム通路へ入り、それによってそれらを測定のために使用可能にする。例えば、反射リングを観測ビーム通路に導入することができ、この反射リングは、観測ビーム通路の光学軸の方向で外部に再び向かうように鏡映を映し、これらの鏡映は、ミラーやプリズムのようなさらなる光学素子によって測定のために使用可能になる。
【0038】
以下に、本発明に記載の光学的配置および本発明に係る方法の好都合な実施形態が、図面を参照してより詳細に説明されるだろう。図面は、詳細には以下を示している。