特許第5887433号(P5887433)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5887433
(24)【登録日】2016年2月19日
(45)【発行日】2016年3月16日
(54)【発明の名称】受信ステージおよび受信する方法
(51)【国際特許分類】
   H04B 1/10 20060101AFI20160303BHJP
【FI】
   H04B1/10 E
【請求項の数】19
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-560355(P2014-560355)
(86)(22)【出願日】2013年3月6日
(65)【公表番号】特表2015-513263(P2015-513263A)
(43)【公表日】2015年4月30日
(86)【国際出願番号】EP2013054523
(87)【国際公開番号】WO2013131966
(87)【国際公開日】20130912
【審査請求日】2014年10月31日
(31)【優先権主張番号】61/607,320
(32)【優先日】2012年3月6日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591037214
【氏名又は名称】フラウンホッファー−ゲゼルシャフト ツァ フェルダールング デァ アンゲヴァンテン フォアシュンク エー.ファオ
(74)【代理人】
【識別番号】100079577
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 全啓
(74)【代理人】
【識別番号】100167966
【弁理士】
【氏名又は名称】扇谷 一
(72)【発明者】
【氏名】エーラー フランク
(72)【発明者】
【氏名】エッペル マルクス
(72)【発明者】
【氏名】ミロシュ ハインリヒ
【審査官】 佐藤 敬介
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭60−103732(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
受信信号を受信する受信ステージ(10、10’、10’’)であって、
M個の受信パス(12a、12b、12c)を備え、各受信パス(12a、12b、12c)は、1つの信号処理器(14a、14b、14c)とK個の比較器(16a、16b、16c、16d)を備え、
前記M個の受信パス(12a、12b、12c)の前記信号処理器(14a、14b、14c)は、前記M個の受信パス(12a、12b、12c)の各々に対して、前記それぞれの受信パス(12a、12b、12c)の増幅利得が前記M個の受信パス(12a、12b、12c)の最初から前記M個の受信パス(12a、12b、12c)の最後まで増加するように、前記受信信号の増幅されたバージョンを生成するように構成され、
前記M個の受信パス(12a、12b、12c)の各々に対して、前記それぞれの受信パス(12a、12b、12c)の前記K個の比較器(16a、16b、16c、16d)は、前記それぞれの受信パス(12a、12b、12c)の前記増幅された受信信号をそれぞれの閾値と比較するように構成され、前記閾値は、前記M個の受信パス(12a、12b、12c)の各々に対して、前記K個の比較器(16a、16b、16c、16d)の最初から前記K個の比較器(16a、16b、16c、16d)の最後まで増加するように構成され
前記K個の比較器(16a、16b、16c、16d)の各々は、前記それぞれの比較器(16a、16b、16c、16d)によって転送されるビットシーケンスを検出するように構成された相関器(22a、22b、22c、22d)に接続される、
受信ステージ。
【請求項2】
前記M個の受信パス(12a、12b、12c)は、並列に配置され、その入力側において共通のノード(13)に接続される、請求項1に記載の受信ステージ(10、10’、10’’)。
【請求項3】
前記M個の受信パス(12a、12b、12c)の前記それぞれの信号処理器(14a、14b、14c)は、異なる利得を有する、請求項2に記載の受信ステージ(10、10’、10’’)。
【請求項4】
前記M個の受信パス(12a、12b、12c)の各信号処理器(14a、14b、14c)は、1つの増幅器(24a、24b、24c)を備える、請求項1〜3のいずれかに記載の受信ステージ(10、10’、10’’)。
【請求項5】
前記M個の受信パス(12a、12b、12c)の各信号処理器(14a、14b、14c)は、前記それぞれの増幅器(24a、24b、24c)と前記K個の比較器(16a、16b、16c、16d)の間に配置された1つの復調器(26a、26b、26c)を備える、請求項4に記載の受信ステージ(10、10’、10’’)。
【請求項6】
前記M個の受信パスの前記信号処理器(14a、14b、14c)は、直列に配置され、前記M個の受信パス(12a、12b、12c)の前記K個の比較器(16a、16b、16c、16d)は、並列に配置される、請求項1〜5のいずれかに記載の受信ステージ(10、10’、10’’)。
【請求項7】
前記M個の受信パス(12a、12b、12c)の各信号処理器(14a、14b、14c)は、1つの増幅器(24a、24b、24c)を備え、前記M個の受信パス(12a、12b、12c)の前記それぞれの増幅器の利得は等しく、少なくとも前記M個の受信パス(12a、12b、12c)の最後の増幅利得は、前記M個の受信パス(12a、12b、12c)の最初の増幅器の利得と前記M個の受信パス(12a、12b、12c)の最後の増幅器の利得の組合せに基づいている、請求項6に記載の受信ステージ(10、10’、10’’)。
【請求項8】
前記M個の受信パス(12a、12b、12c)の各信号処理器(14a、14b、14c)は、1つの増幅器(24a、24b、24c)と、前記増幅器(24a、24b、24c)と前記K個の比較器(16a、16b、16c、16d)の間に配置される1つの復調器(26a、26b、26c)を備え、前記M個の受信パス(12a、12b、12c)の各々に対して、前記M個の受信パス(12a、12b、12c)の次に対するタップが、前記それぞれの増幅器(24a、24b、24c)と前記それぞれの復調器(26a、26b、26c)の間に配置される、請求項7に記載の受信ステージ(10、10’、10’’)。
【請求項9】
前記K個の比較器(16a、16b、16c、16d)は、並列に配置され、共通のノード(15a、15b、15c)を介して前記それぞれの信号処理器(14a、14b、14c)に接続される、請求項1〜8のいずれかに記載の受信ステージ(10、10’、10’’)。
【請求項10】
前記K個の比較器(16a、16b、16c、16d)は、前記増幅された受信信号が前記それぞれの閾値の上にある場合と、前記増幅された受信信号と干渉信号の差分が前記K個の閾値の平均距離より大きい場合に、前記増幅された受信信号を転送するように構成され、前記受信信号は、前記干渉信号と、前記ビットシーケンスを担持するデータ信号を備える、請求項1〜9のいずれかに記載の受信ステージ(10、10’、10’’)。
【請求項11】
前記それぞれの相関器(22a、22b、22c、22d)は、XNOR演算ユニットまたはXOR演算ユニットを備える、請求項1〜10のいずれかに記載の受信ステージ(10、10’、10’’)。
【請求項12】
前記M個の受信パス(12a、12b、12c)の各相関器(22a、22b、22c、22d)は、前記K個の相関器(22a、22b、22c、22d)の1つによって検出される前記ビットシーケンスに基づく情報を出力するように構成されたデジタル選択器(20)に接続される、請求項1〜11のいずれかに記載の受信ステージ(10、10’、10’’)。
【請求項13】
前記デジタル選択器(20)は、M×K個のチャンネルの1つ以上を選択および/または処理する組合せロジックを備え、各チャンネルは、前記M個の受信パス(12a、12b、12c)の前記それぞれの相関器(22a、22b、22c、22d)によって形成される、請求項12に記載の受信ステージ(10、10’、10’’)。
【請求項14】
前記デジタル選択器(20)は、前記ビットシーケンスが検出された前記それぞれの相関器(22a、22b、22c、22d)に関する情報を出力するように構成される、請求項12または13に記載の受信ステージ(10、10’、10’’)。
【請求項15】
前記復調器(26a、26b、26c)は、ピーク検波器、電力検波器、包落線検波器および/または振幅変調信号を復調する検波器を備える、請求項5に記載の受信ステージ(10、10’、10’’)。
【請求項16】
前記M個の増幅利得の2つの連続する増幅利得の間のM−1個の差分は、等距離である、請求項1〜15のいずれかに記載の受信ステージ(10、10’、10’’)。
【請求項17】
前記K個の閾値の間の平均距離は、2つの連続する増幅利得の間の差分より少なくとも2倍小さい、請求項16に記載の受信ステージ(10、10’、10’’)。
【請求項18】
前記各受信パス(12a、12b、12c)は、複数のK個の比較器(16a、16b、16c、16d)を備え、前記複数のK個の比較器(16a、16b、16c、16d)は、並列に配置され、共通のノード(15a、15b、15c)を介して前記それぞれの信号処理器(14a、14b、14c)に接続される、請求項1〜15のいずれかに記載の受信ステージ(10、10’、10’’)。
【請求項19】
M個の受信パス(12a、12b、12c)を備える受信ステージ(10、10’、10’’)を用いて受信信号を受信する方法であって、各受信パス(12a、12b、12c)は、1つの信号処理器(14a、14b、14c)とK個の比較器(16a、16b、16c、16d)を備え、
前記それぞれの受信パス(12a、12b、12c)の増幅利得が、前記M個の受信パス(12a、12b、12c)の最初から前記M個の受信パス(12a、12b、12c)の最後まで増加するように、前記M個の受信パスの前記それぞれの信号処理器(14a、14b、14c)を用いて、前記M個の受信パス(12a、12b、12c)の各々に対して、前記受信信号の増幅されたバージョンを生成するステップと、
前記M個の受信パスの各々に対して、前記それぞれの受信パス(12a、12b、12c)の前記K個の比較器(16a、16b、16c、16d)を用いて、前記それぞれの受信パス(12a、12b、12c)の前記増幅された受信信号をそれぞれの閾値と比較するステップであって、前記閾値は、前記受信パス(12a、12b、12c)の各々に対して、前記K個の比較器(16a、16b、16c、16d)の最初から前記K個の比較器(16a、16b、16c、16d)の最後まで増加する、比較するステップと、
を備え
前記K個の比較器(16a、16b、16c、16d)の各々は、前記それぞれの比較器(16a、16b、16c、16d)によって出力されるビットシーケンスを検出するように構成された相関器(22a、22b、22c、22d)に接続される、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、受信信号を受信する受信ステージと、受信信号を受信する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
受信ステージは、通常は、受信機、例えば通信受信機または無線受信機に含まれる。全ての種類の無線受信機は、電波によって搬送される情報を、使用に適した形式、例えば音声信号または(デジタル)データ信号に変換する目的を有している。このようなワイヤレス受信機は、通常は、電磁波またはRF信号(無線周波信号)を受信するアンテナに接続される。
【0003】
受信機は、通常、受信ステージと、受信ステージとアンテナの間に配置される混合ステージを備える。混合ステージは、RF信号のダウンミックスを実行し、IF信号(中間周波信号)を受信ステージに出力する目的を有している。受信ステージは、IF信号の振幅を増加させる増幅器と、IF信号に基づいて所望の情報、例えばビットシーケンスを再生する復調器を備えることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
通常、増幅器は、異なる増幅利得を提供するために調節可能であり、遠距離にある送信機によって送信された弱い信号は、短距離にある送信機によって送信された強い信号と比較して、より強く増幅される。増幅利得を調整する技術水準のアプローチは、増幅器によって出力される信号が予め定められた信号強度の範囲外にある限り、増幅器の利得を適応させるように構成された、いわゆる自動利得調整(AGC)を提供することである。しかしながら、自動利得調整を用いた増幅利得の調整は時間がかかる。それ故に、短い信号シーケンス(短いデータテレグラム)が、特に信号強度変化(強から弱またはその逆)時に、受信できることを保証することはできない。言い換えれば、短いデータテレグラムは、欠落する可能性がある。従って、そのテレグラムの反復伝送が必要とされる。このように、改善されたアプローチに対するニーズがある。
【0005】
本発明の目的は、改善された受信動作を有する受信ステージに対するコンセプトを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は、独立請求項の発明によって達成される。
【0007】
本発明の実施形態は、受信信号、例えばIF信号を受信する受信ステージを提供する。受信ステージは、M個の受信パスを備え、各受信パスは、1つの信号処理器と、K個の比較器を備える。M個の受信パスの信号処理器は、各M個の受信パスに対して、それぞれの受信パスの増幅利得が、M個の受信パスの最初からM個の受信パスの最後まで増加するように、受信信号の増幅されたバージョンを生成するように構成される。各M個の受信パスに対して、それぞれの受信パスのK個の比較器は、それぞれの受信パスの増幅された受信信号をそれぞれの閾値と比較するように構成される。閾値は、各M個の受信パスに対して、K個の比較器の最初からK個の比較器の最後まで増加する。
【0008】
本発明の教示は、受信信号の評価が並列の受信パスにおいて実行され、各受信パスにおいて、異なる増幅利得に従って(例えば異なる利得を有する異なる増幅器によって)増幅された同じ信号のバージョンが評価されるとき、増幅利得の調整を不要とすることができるとの認識に基づいている。それ故に、弱い信号強度を有する受信信号は、高い増幅利得を有する受信パスにおいて処理され、強い信号強度を有する受信信号は、低い増幅利得を有する更なる受信パスにおいて処理される。このように、異なる信号強度を有する受信信号は、利得制御によって生じるいかなる遅延もなしに、即時処理を可能とする方法で受信することができる。受信信号の処理は、増幅された受信信号を評価することを含むことができ、各受信パスは、ビットシーケンスを出力するために、信号処理器(例えば増幅器)の他に、受信信号をそれぞれの(異なる)閾値と比較するように構成されたK個の比較器を備える。別個の離散的な調整不能の利得ステージによる複数のM個の(並列の)受信パスと、それぞれ異なる閾値を用いるK個の比較器パスの使用は、より広い入力ダイナミックレンジにつながる。
【0009】
記述された原理をASK受信機に適用する場合、受信ステージは、高い入力ダイナミックレンジと、所望の信号の動的変化に対する速いレスポンスを有することができ、テレグラムの欠落のリスクは、時間利益によって低減される。受信信号がOOK(オンオフキーイング)変調の場合、より高い入力ダイナミックレンジは、技術水準のAGCと比較して時間利益を保持するとともに、干渉に対する排除能力を改善する。
【0010】
要約すれば、高い入力ダイナミックレンジを有する受信ステージは、複数の受信パス(M個の受信パス)と複数の比較器の組合せによって形成され、ダイナミックレンジは、受信パスの数(M)と比較器の数(K)、従ってその積M×Kに依存する。それ故に、受信ステージはM×Kのマトリクス(例えば4×3のマトリクス)によって記述することができる。
【0011】
このM×Kのマトリクスは、2つの異なるバリエーションを有することができる。第1の実施形態によれば、受信パスは並列に受信される。ここで、K個の受信パスに対する異なる増幅利得は、異なる利得を有する異なる増幅器を用いて生成され、M個のパスの各々において異なる増幅利得が用いられる。
【0012】
更なる実施形態によれば、増幅器を備えるM個の信号処理器の増幅器は、直列に配置することができ、K個の比較器を含むM個の比較器構成は、並列に配置することができる。従って、増幅利得は、最初の受信パスに対して増幅された受信信号を除いて、受信信号は数回増幅することができるという事実によって、信号処理器毎に等級づけられる。他の実施形態によれば、それぞれの増幅器のそれぞれの利得は、等しくすることができる。
【0013】
更なる実施形態によれば、各信号処理器は、1つの増幅器と、増幅器と比較器構成の間に配置される1つの復調器を備えることができる。復調器は、例えば電力検波または包絡線検波に基づいてIF信号を復調するように構成することができる。
【0014】
更なる実施形態によれば、K個の比較器の各々は、それぞれの比較器によって転送されたビットシーケンスを検出するように構成された相関器に接続することができる。更なる実施形態によれば、複数のM×K個の比較器または相関器は、ビットシーケンスが受信される1つまたは多重のM×K個のチャンネルを選択または処理する(例えば組合せロジックによって)ように構成されたデジタル選択器に接続することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
本発明の実施形態は、以下の同封された図面を参照して述べられる。
図1】実施形態にかかる受信ステージの概略ブロック図を示す。
図2a】M個の受信パスが並列に配置された更なる実施形態にかかる受信ステージのブロック図を示す。
図2b】M個の受信パスが部分的に直列に配置された更なる実施形態にかかる受信ステージの概略ブロック図を示す。
図3a】本発明によって達成される改善を例示するために、受信信号を受信する例示的なシナリオを示す。
図3b】本発明の改善を例示する2つの線図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の異なる実施形態は、図1〜3を参照して引き続いて述べられる。なお、同一の参照番号は同一であるか類似した機能を有する対象物に提供され、異なる実施形態の中で同一の参照番号によって参照される対象物は交換可能であり、その記述は相互に適用可能である。
【0017】
図1は、M個の受信パス12a、12b、12c(M個のブランチ)を示し、各受信パスは、1つの信号処理器14a、14b、14cと、K個の比較器16a、16b、16c、16d(K個のサブブランチ)を備える。M個の受信パス12a、12b、12cは、例えば混合ステージから、同じ受信信号(IF信号)を受信するために、入力側において、例えば共通のノード13を介してお互いに接続される。
【0018】
この受信信号は、信号処理器14a、14b、14cの各々によって処理または増幅され、複数の比較器16a、16b、16c、16dを備えるそれぞれの受信パス12a、12b、12cのそれぞれの比較器構成16に出力される。比較器16a、16b、16c、16dは、それぞれの受信パス12a、12b、12cの増幅された受信信号をそれぞれの閾値と比較するように構成される。M個の受信パス12a−12cの比較器構成16は、通常は等しく、それぞれの受信パス12a、12b、12c内のK個の比較器16a、16b、16c、16dは、閾値に関してお互いに異なる。K個の比較器16a、16b、16c、16dの閾値は、閾値がK個の比較器の最初16aからK個の比較器の最後16dまで増加するように選択される。
【0019】
各比較器16a、16b、16c、16dは、2値信号、例えば、増幅された受信信号がそれぞれの閾値の上にある場合に「1」を、増幅された受信信号がそれぞれの閾値より下にある場合に「0」を出力するように構成される。すなわち、比較器は、アナログ信号に基づいて、増幅された受信信号がそれぞれの閾値のまわりを振動するという条件で、デジタル信号を出力するように構成される。詳細には、これは増幅された受信信号がオフレベル(低い値、例えば−80dBV)とオンレベル(高い値、例えば−70dBV)を有することを意味する。
【0020】
図1にかかる実施形態は、ASK(振幅シフトキー)変調された受信信号に適用することができ、自動利得調整の時間要求なしに高い入力ダイナミックレンジに結果としてなるが、図2aと2bの実施形態は、所望の受信信号がOOK変調によって変調されている場合に、受信機の干渉排除能力の利益を与えるものであり、以下においてより徹底して説明される。
【0021】
次の例示的な演算において、所望の受信信号と干渉信号は、一般にコヒーレントでないので、信号レベルは、次の表で示されるように、パワーレベルとして加算される。
【0022】
【表1】
【0023】
このことから、所望の受信信号が論理的にハイの状態を備えるとき、オフレベルと干渉レベルが、それぞれK個の比較器16a〜16dのそれぞれの閾値の1つより下にある場合と、有効IF信号が、それぞれの比較器16a〜16dのそれぞれの閾値より上にある場合に、受信信号のデジタル信号への変換を可能とすることができると結論づけることができる。
【0024】
参照符号によって示されるように、通常は増幅器を備えるM個の受信パスの信号処理器14a、14b、14cは、お互いに異なることができる。一般に、異なる増幅器および信号処理器14a、14b、14cは、それぞれ、M個の受信パス12a、12b、12cの各々に対して、それぞれの受信パス12a、12b、12cの増幅利得がM個の受信パスの最初12aからM個の受信パスの最後12cまで増加するように、受信信号の増幅されたバージョンを生成するように構成される。
【0025】
M個の受信パス12a〜12cとK個の比較器16a〜16dの組み合わせによって、有効な比較器閾値(受信された受信信号のIFレベルと称される)が生成され、それは最初の受信パス12aの最初の比較器16aから最後の信号パス12cの最後の比較器16dまで増加する。すなわち、受信信号は、M×K個の比較器によって、M×K個の(有効な比較器の)閾値を用いて、並列に処理または評価することができる。M×Kのマトリクスによって形成される受信ステージ10のこの演算モードは、以下に述べられる。
【0026】
3つの信号処理器14a、14b、14cの増幅利得と、比較器16a、16b、16c、16dの閾値に対して、例示的な値に基づいて考察される。3つの信号処理器14a、14b、14cの例示的な増幅利得は、20dB(14a)、30dB(14b)および40dB(14c)であり、4つの比較器16a、16b、16c、16dの例示的な閾値は、−21dBV(16a)、−24dBV(16b)、−27dBV(16c)および−30dBV(16d)である。結果として生じる有効な比較器の閾値の例示的な値は、次の表によって示される。
【0027】
【表2】
【0028】
これらの有効な比較器の閾値に基づいて、OOK変調された受信信号の2値信号への変換は、次の表で例示されるように実行することができる。
【0029】
【表3】
【0030】
表3は、異なる受信シナリオに対して、データ信号と、連続波干渉信号と、結果として生じる有効なIF信号に対する値を備える。さらにまた、表は、受信ステージ10のM×K個の比較器の各々に対して、各受信シナリオに対するそれぞれの出力値を備える。ここで、「0」は、与えられたシナリオにおける有効なIF信号が全ての(関連する)時間において有効な比較器の閾値より下にあることを意味し、「1」は、有効なIF信号が全ての(関連する)時間においてそれぞれの比較器の閾値より上にあることを意味する。連続波干渉信号がそれぞれの有効な比較器の閾値より下にあり、データ=1であるときに結果として生じる有効なIF信号がそれぞれの有効な比較器の閾値より上にあるケースは、データストリームを意味する「D」でマークされ、所望のビットシーケンスのデータ受信または出力が可能である。表から分かるように、いくつかのシナリオは不可能な受信につながり(データ信号−50dBV、CW信号−40dBV、有効IF信号−39.6dBVの行を参照)、いくつかシナリオは1つ以上の比較器を介した受信につながる(データ信号−50dBV、CW信号−60dBV、有効なIF信号−49.6dBVの行を参照)。比較のため、表は、技術水準による単純なOOK(オンオフキーイング)比較器の比較器出力を例示する更なる列を含んでいる。これから分かるように、受信機10は、高い干渉レベルを許容することによって必要な信号対干渉比を拡張する。そのトポロジーは、自動利得調整による遅延のない連続信号受信を可能にする。ワイヤレス受信機は、1つの周波数バンドに対して、多くの無線トラフィックによって、受信ステージ10から利益を受け、無線チャンネル内でより高い干渉とブロッキングの尤度を得る、すなわちより小さい入力信号対干渉比が可能である。そのうえ、所望の無線信号を検出する確率が増加する。
【0031】
図2aは、M個の受信パス12a、12b、12cを備える更なる実施態様の受信ステージ10’を示し、M個の受信パス12a、12b、12cは、お互いに並列に配置され、信号処理器14a、14b、14cの各々は共通のノード13に直接接続される。各受信パス12a、12b、12cは、それぞれの信号処理器14a、14b、14cと、比較器構成16を備え、比較器パス16a、16b、16c、16dは、並列に配置され、更なるそれぞれの共通のノード15a、15b、15cに接続される。
【0032】
信号処理器14a、14b、14cの各々は、1つの増幅器24a、24b、24cと1つの復調器26a、26b、26cの組合せによって形成される。本実施形態において、増幅器24a、24b、24cは、信号処理器14a、14b、14cの出力において異なる増幅利得を提供するために、異なる利得を有する。結果的に、受信信号は、異なって増幅される。増幅された受信信号は、例えば、比較器パス16a、16b、16c、16dに提供される前に復調される振幅変調信号または他の交流信号とすることができる。
【0033】
復調は、それぞれの復調器26a、26b、26cによって実行される。復調器26a、26b、26cは、例えば、ピーク検波器、電力検波器または包落線検波器によって形成することができる。代替として、復調器26a、26b、26cは、振幅変調信号を復調する他の検波器、あるいは、一般に、(交流の)受信信号に基づいてDC電圧のような復調された信号を比較器構成16に出力するように構成された検波器を備えることができる。
【0034】
受信パス12a、12b、12cのM×K個の比較器16a、16b、16c、16dの全ては、デジタル選択器20に接続される。デジタル選択器20は、OR演算ユニットによって形成することができる。デジタル選択器20は、M×K個のチャンネルの1つ以上を選択または処理し、選択器の出力に情報を転送する目的を有する。
【0035】
図示されたように、M個の受信パス12a、12b、12cの各比較器16a〜16dは、オプションとして、相関器22a、22b、22c、22d(相関器構成22)を介してデジタル選択器20に接続することができる。オプションの相関器22a、22b、22c、22d、例えばXNORおよび/またはXORベースのデジタル相関器は、予め定められたパターンとそれぞれの比較器16a、16b、16c、16dによる出力パターンを有するビットシーケンスを検出し、ビットシーケンスを転送するかまたはビットシーケンスに基づいて信号をデジタル選択器20に出力するように構成される。すなわち、各相関器22a、22b、22c、22dは、対応する比較器データによる特定のコードマッチを示す。例えば、良好な相関関係の結果は、N=31のシーケンス長に対して達成することができる。
【0036】
変調されたデータが適切な相関コードであり、受信パス12a、12b、12cの相関器22a、22b、22c、22dの全てが同じコードシーケンスをスキャンする場合、各相関器22a〜22dは、対応する比較器データによって特定のコードマッチを示す。マッチングは次の表によって示され、それは実質的に上記の表3に等しい。
【0037】
【表4】
【0038】
各シナリオに対して、デジタル選択器20における出力が示され、ここで、デジタル選択器20の出力における1は達成されたコードマッチを意味し、0は達成されたコードマッチがないことを意味する。単純なOOK相関器の出力(1つの比較器と1つの相関器のみを用いた)を、例えばORされた相関器の出力信号と比較すると、強い改善を観測することができる。7つの信号シナリオは、提案されたアーキテクチャによって満たすことができる。反対に、単一の比較器と単一の相関器による単純なOOK受信機は、単にシナリオの1つを満たすだけである。言い換えれば、より高い入力ダイナミックレンジは、干渉排除能力の実質的改善につながる。相関器において、変調された干渉とデータ変調信号を区別するために拡散シーケンス変調IF信号を用いることは、有用であることに留意すべきである。
【0039】
図2bは、M個の受信パス12a、12b、12cを備える更なる受信ステージ10''を示し、各受信パスは、相関器22a、22b、22c、22dを介してデジタル選択器20に接続される比較器構成16を備える。図2aの実施形態とは対照的に、M個の受信パス12a、12b、12cは、共通のノードに接続されず、部分的に直列に接続される。
【0040】
ここで、第2の受信パス12bは、第1の信号処理器14aの増幅器24aの出力において、第1のタップ28aを介して第1の受信パス12aに接続される、すなわちタップ28aは、増幅器24aとオプションの復調器26aの間に配置される。同様に、最後の受信パス12cの信号処理器14cは、タップ28bを介して前の受信パス12bの増幅器24bの出力に接続される。従って、第2の受信パス12bの第2の増幅器24bによって増幅される信号は、第1の受信パス12aの第1の増幅器24aによって予め増幅され、増幅器24cによって増幅される信号は、前の受信パス12aと12bの増幅器24bと24cによって予め増幅される。結果的に、増幅器24a、24b、24cの利得は等しいまたは任意に選択することができるにもかかわらず、増幅利得は最初の受信パス12aから最後の受信パス12cまで増加する。
【0041】
図3aは、受信ステージ10、10’、10''の1つを含む受信機44に対する信号強度を例示する受信マップ40を示し、ここでTX信号は干渉42によって妨害される。干渉42の放射電力は100mWである。所望の信号は10mWで放射されている。2つの信号源の間の距離は300m(破線参照)である。所望の円弧は、干渉信号の電力が円弧の全ての位置に対して注釈された値に等しいことを意味する干渉42の等電力線を表す。ハッチされた領域は、与えられたシナリオにおいて信号レベルが干渉レベルより大きい位置を表す。−51dBm(30m離れたところ)の信号の等電力線の範囲内で、信号対干渉比(CIR)に対する信号は10dBより大きく、距離の増加と共に減少する。
【0042】
受信ステージ10、10’、10’’の提案されたアーキテクチャは、受信信号についてOOK変調されたデータを用いるとき、低い信号対干渉比(例えば3dB)による受信を可能にする。これは、強い干渉の存在下で、短いデータテレグラムの近距離場(例えば50〜60m)の受信が可能であることを意味する。AGCによる技術水準の受信機の場合、短いデータテレグラムは、フィードバックループがIF信号を比較器に対して適当な受信/検知レベルにロックするまで、数回繰り返されなければならない。提案された方法によって、利益調整による遅延はなく、テレグラムは失われない。比較として、AGCも有さず上記のM×Kのマトリクスも有しない、上記の干渉源から3km離れた位置(100dBのパス損失)にある−80dBmの感度を有するOOK受信機は、依然として干渉によってブロックされるとみなされる。
【0043】
図3bは、可能な信号受信が、CW信号レベル(CW干渉レベル)およびデータ信号レベル(所望の信号レベル)に依存してマークされた2つの線図46および48を示す。各線図において、CW信号レベルが、データ信号レベルにわたってプロットされている。第1の線図46は、単純なOOK相関受信機(1つの比較器および1つの相関器を用いた)に対する可能な信号受信(ハッチされた領域)を例示している。第2の線図48は、多数の比較器と相関器を用いた拡張されたダイナミックレンジを有する受信機(10、10’、10’’を参照)に対する可能な信号受信を例示している。CW信号レベルに関する2つの線図46と48の比較は、改善された受信ステージを有する受信機10、10’、10’’が、技術水準のアプローチと比較して高いCW信号レベルまでの信号を受信することができることを示している。
【0044】
さらにまた、所望の信号レベルに関して、改善された受信ステージを用いることによって、所望の信号レベルを、低い干渉の場合には、より小さくすることができる(データ信号レベル:−70dBVのポイントを参照)ことに留意する必要がある。
【0045】
上記の実施形態において、受信機10、10’、10’’は、4つの比較器16a、16b、16c、16dによる3つの受信パス12a、12b、12cを有する受信機として説明されたが、受信パスの数Mは、比較器の数Kと同様に変えることができることに留意する必要がある。
【0046】
一般に、複数の受信パス12a、12b、12cの2つの連続する増幅利得の間の差分は、好ましくは等距離であることに留意する必要がある。例えば、2つの連続する増幅利得の間の差分は、10−15dBとすることができる。
【0047】
上記の実施形態において、閾値がM個の比較器構成16の各々に対して等しい圧力値として述べられてきたが、圧力値は、代替として、最初の受信パス12aから最後の受信パス12cまで変わることができることに留意する必要がある。
【0048】
図2aおよび2bを参照して、M×K個の比較器の出力は、RFチャンネルの占有評価を実行するために用いることができることに留意する必要がある。
【0049】
いくつかの態様が装置の文脈において記載されてきたが、その態様は対応する方法の記載をも表すことは明らかであり、ブロックまたはデバイスは、方法ステップまたは方法ステップの特徴に対応する。同様に、方法ステップの文脈において記載されている態様は、対応する装置の対応するブロック、アイテムまたは特徴の記載をも表している。方法ステップの一部または全ては、マイクロプロセッサ、プログラム可能なコンピュータまたは電子回路のようなハードウェア装置によって(または用いて)実行することができる。いくつかの実施形態において、いくつかの1つ以上の最も重要な方法ステップは、この種の装置によって実行することができる。
【0050】
上記の実施形態は、本発明の原理に対する単なる例証である。本願明細書に記載された構成および詳細の修正および変更は、他の当業者にとって明らかであると理解される。それ故に、本願発明は、以下の特許請求の範囲のスコープのみによって制限され、本願明細書における記載方法によって提供される具体的な詳細および実施形態の説明によって制限されるものでないことを意図する。
図1
図2a
図2b
図3a
図3b