特許第5887448号(P5887448)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5887448ナノ銀粒子担持方法、及び当該方法を用いたシリコン、セラミック、アルミニウム及びレジン
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5887448
(24)【登録日】2016年2月19日
(45)【発行日】2016年3月16日
(54)【発明の名称】ナノ銀粒子担持方法、及び当該方法を用いたシリコン、セラミック、アルミニウム及びレジン
(51)【国際特許分類】
   A61K 6/04 20060101AFI20160303BHJP
   C04B 41/88 20060101ALI20160303BHJP
   A61C 13/00 20060101ALI20160303BHJP
   A61C 13/08 20060101ALI20160303BHJP
   A61C 13/02 20060101ALI20160303BHJP
【FI】
   A61K6/04
   C04B41/88 Z
   A61C13/00 B
   A61C13/08 A
   A61C13/02
【請求項の数】1
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-105618(P2015-105618)
(22)【出願日】2015年5月25日
【審査請求日】2015年8月18日
(31)【優先権主張番号】特願2015-62722(P2015-62722)
(32)【優先日】2015年3月25日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】513124569
【氏名又は名称】株式会社愛歯
(74)【代理人】
【識別番号】100177220
【弁理士】
【氏名又は名称】小木 智彦
(72)【発明者】
【氏名】高橋 昌平
【審査官】 鶴見 秀紀
(56)【参考文献】
【文献】 特表2009−526132(JP,A)
【文献】 IOP Conference Series: Materials Science and Engineering ,2014年,Vol.60,pp.1-9
【文献】 Nanotoxicology,2014年,Vol.8,No.7,pp.745-754
【文献】 J Appl Polym Sci ,2007年,Vol.104,No.5,Page.2868-2876
【文献】 J Inorg Organomet Polym Mater ,2013年,Vol.23,No.3,Page.673-683
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 6/00−6/10
A61C 13/00
A61C 13/02
A61C 13/08
C04B 41/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レジンを含む義歯を浸漬した状態で誘導加熱を行うことにより、ナノ銀粒子を離散して前記義歯に担持させることを特徴とする、ナノ銀粒子担持方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗菌対象物質に、ナノ銀粒子を担持させるナノ銀粒子担持方法及び、当該方法によりナノ銀粒子を担持させたシリコン、セラミック、アルミニウム及びレジンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、義歯床(歯肉)の部分になる床用レジンの材料の素材はアクリル樹脂であり、粉材と液材を規定の分量に計量して混ぜ合わせたものに熱を加えると硬化する性質を持った材料である。
【0003】
近年、歯科技工用の義歯を作成するための床用レジンを熱硬化させる方法として、マイクロ波を利用していた。さらには常温で硬化するタイプや光で硬化するものもある。
【0004】
また、特許文献1に開示されているように、抗菌性、防汚性、防臭性が持続する抗菌コーティング可能な銀イオン定着物の提供を目的の一つとして、マイクロ波照射によってターゲット物体にナノ銀粒子を担持させる技術が知られている。
【0005】
すなわち、この技術によれば、マイクロ波照射によって、義歯に、ナノ銀粒子を離散して担持することにより、優れた抗菌効果を有し、また、咀嚼行為が連続しても、抗菌効果
を持続することができるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2014−227345号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来では、ターゲット物体にナノ銀粒子を担持させる処理にマイクロ波照射を使用しているが、家庭用クッキングヒータの原理である誘導加熱(以下、IH(インダクションヒーティング)と称す)や、超音波の照射により、ナノ銀粒子を担持させる方法は未だ実施されていなかった。
【0008】
すなわち、IHを利用したクッキングヒータの原理は、磁力発生コイルに高周波電流を供給すると、当該コイル上に載せられている金属製の調理用鍋底にうず電流が流れ、当該鍋自体の電気抵抗でジュール熱が発生し、鍋底自身が自己発熱する。これにより、鍋の中に入れてある被加熱用食材を加熱するのである。この原理を利用しても、ナノ銀粒子が担持するのではないかと考えた。
【0009】
一方、超音波を利用した洗浄原理(超音波洗浄の原理)は、周波数約20kHz以上、更には、200kHz以上の超音波作用によって真空の泡が発生した瞬間に押しつぶされたときに発生する強力な衝撃波(所謂「キャビテーション」)の効果によって汚れを破壊し洗浄するものである。この衝撃波を使用してナノ銀粒子を担持させることが可能ではないかと考えた。
【0010】
加えて、レジン以外の物質に対しての担持についても確認がされていない。そこで、本発明者は、このような誘導加熱原理に基づく加熱方法及び超音波洗浄原理に基づくキャビテーション効果等を、シリコン、セラミック、アルミニウム、レジン等の抗菌対象物質に、ナノ銀粒子を離散して担持させるための一手段として利用することができるのではないかという点に着目した。
【0011】
そこで、本発明は叙上のような従来存した諸事情に鑑み創出されたもので、IHによる加熱、または、超音波の照射により、抗菌対象物質に、ナノ銀粒子を離散して担持することにより、優れた抗菌効果を有し、且つ、抗菌効果が持続することができるナノ銀粒子担持方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した課題を解決するために、本発明にあっては、抗菌対象物質を浸漬した状態で誘導加熱(IH)を行うことにより、ナノ銀粒子を離散して前記抗菌対象物質に担持させることを特徴とする。
【0013】
また、抗菌対象物質を浸漬した状態で超音波照射(超音波洗浄)を行うことにより、ナノ銀粒子を離散して抗菌対象物質に担持させることを特徴とする。
【0014】
ここで、抗菌対象物質は、義歯、あるいは義歯床の部分になるレジンであってもよいし、更には、シリコン、セラミック、アルミニウムのいずれかである。さらに、上記の担持方法は、常温の銀水溶液中に、抗菌対象物質を浸漬した状態で行うことができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、IHによる加熱、または、超音波の照射により、抗菌対象物質に、ナノ銀粒子を離散して担持することが可能となり、結果として、これらの物質に優れた抗菌効果を有し、且つ、抗菌効果を持続することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】担持したナノ銀粒子について、加熱時間から30秒経過した走査型電子顕微鏡(SEM)によって観察した写真である。
図2】担持したナノ銀粒子について、加熱時間から1分経過した走査型電子顕微鏡(SEM)によって観察した写真である。
図3】担持したナノ銀粒子について、加熱時間から1分経過した走査型電子顕微鏡(SEM)によって観察した写真である。
図4】担持したナノ銀粒子について、加熱時間から5分経過した走査型電子顕微鏡(SEM)によって観察した写真である。
図5】担持したナノ銀粒子について、加熱時間から5分経過した走査型電子顕微鏡(SEM)によって観察した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の実施の一形態を詳細に説明する。
【0018】
本実施形態においては、ナノ銀粒子を担持させる抗菌対象物質として、例えば義歯、あるいは義歯床(歯肉)の部分になる床用レジンを採用し、これらを、例えば透磁率の比較的大きな耐熱性のデンチャーボックス内に入れ、当該抗菌対象物質を後述する約150mlの銀水溶液で浸漬する。そして、デンチャーボックス下部より電源約10Vで一定時間IHを照射するか、あるいは超音波洗浄装置によって、例えば20kHzから200kHz以上の超音波を照射する方法を採っている。
【0019】
また、以下で説明する実施例では、超音波洗浄装置は、超音波を剪断波(横波)で発生させたもので実施している。
【0020】
その結果、後述する図1図5に示すように、レジンの試験体をSEM(走査電顕)画像で確認したところ、義歯や床用レジン等のターゲット物体の表面に約100nm程度のナノ銀粒子が離散して担持していることが確認できた。
【0021】
このように、従来のマイクロ波ではなく、IH又は超音波でも確実にナノ銀粒子を担持することができる。こうしてターゲット物体にナノ銀粒子が担持することで、カンジダ菌に対する抗菌ができる。なお、IH又は超音波の他に、超短波や赤外線の照射によっても、ターゲット物体にナノ銀粒子を離散担持させることができ、これによってカンジダ菌に対する抗菌効果も期待できる。
【0022】
ここで、「離散して担持させる」とは、従来のコーティングのように膜形成をするのではなく、粒子を分散させて担持させることを示すものである。
【0023】
次に、具体的にレジンの試験片でIHによるナノ銀粒子担持試験を実行した結果に行いて説明する。
【0024】
本試験に使用されるレジンの試験体としては、縦1cm、横1cm、厚さ1.3mmのフィジオーレジンプレートを採用し、IHの加熱時間は、30秒、1分、5分、の3パターンとした。また、試験体は、デンチャーボックスの底より、1cm上部、3cm上部、の2パターンとした。
【0025】
また、前記銀水溶液は、銀イオンの水溶液であって、例えば、上記した特許文献1によるマイクロ波照射の場合と同様のものを使用してもよい。すなわち、フィチン酸、ポリアクリル酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、及び、酢酸銀等を含有する安全性の高い銀水溶液500mlに、アルコール製剤50ml〜150ml、望ましくは100mlを混合したものを用いてもよい。
【0026】
(1)銀水溶液の準備
最初に、安全性の高い銀水溶液を、150mlだけ準備してデンチャーボックス内に投入する。ここで、デンチャーボックスとして、例えば透磁率1.2567×10のマイナス6乗のフッ素樹脂(テフロン:登録商標)製の容器を用いることで、ナノ銀粒子の付着を低減するようにしてもよい。
【0027】
(2)義歯の浸漬
銀水溶液を、上記デンチャーボックス内に移した状態で、該銀水溶液に各試験体を浸漬する。この際、試験体は、デンチャーボックスの底より、1cm上部、3cm上部、の2パターンとした。
【0028】
(3)IH照射による加熱
デンチャーボックスを磁力発生コイルの上に載せて当該磁力発生コイルに高周波電流(電源約10V)を供給することにより、デンチャーボックス全体に所定の時間だけIHを照射する。すると、当該コイル上に載せられているデンチャーボックス内の銀水溶液及び試験体にうず電流が流れ、当該銀水溶液及び試験体自体の電気抵抗でジュール熱が発生して自己発熱する。IH照射後、デンチャーボックスから試験体を取り出し、表裏を逆にしてから銀水溶液に再び浸漬し、再度、同じ条件にてIHを照射する。こうして、IHの照射によって、銀水溶液中のナノ銀粒子を試験体の表裏に離散的に担持させることができる。ここで、IHの照射は、銀水溶液が常温状態(20℃前後)であることを確認した上で、水溶液の上昇温度を最高でも75℃程度に保っている為、照射の際に試験体が変形することを防ぐことができる。このように、IHの照射が常温で行われるので、試験体の表面に、銀が薄膜を形成するのではなく、ナノ銀粒子となって離散的に試験体の表面に担持する。これは、図1図5の担持したナノ銀粒子について、走査型電子顕微鏡(SEM)によって観察した結果からも明らかである。図1では照射時間が30秒、図2及び図3では照射時間が1分、図4及び図5では照射時間が5分である場合の走査型電子顕微鏡(SEM)によって観察された試験体の表面写真である。
【0029】
(4)義歯の後処理
デンチャーボックスから取り出した試験体は、流水下で軽く濯いだ後、水気をよく切る。
【0030】
(5)撮影結果
IHによる加熱時間が30秒(図1)、1分(図2及び図3)、5分(図4及び図5)である3パターンの場合の走査型電子顕微鏡(SEM)によって観察した結果を示す。この結果によると、処理が充分ではない、30秒の場合はナノ銀粒子が確認できなかったが、1分以上の処理後の場合は粒子径が約100nmのナノ銀粒子が点在して見られた。図1図5の各写真において、右下の目盛りは、1目盛りあたり100nmを示しており、10個の目盛り全部(フルオーダー)で1.00μmを示している。
【0031】
(6)菌数測定
従来技術のマイクロ波によってナノ銀を担持した場合は、24時間後および3ヶ月後の耐水抗菌持続性試験(ISO22196)において、24時間後のデータでは、未処理試験片の生菌数は、10の6乗オーダーであるのに対し、抗菌処理試験片の生菌数は「検出されず」、3ヶ月後のデータでは、未処理試験片の生菌数は、10の7乗オーダーであるのに対し、抗菌処理試験片の生菌数は「検出されず」、その結果、抗菌効果が持続していることが確認できた。さらに、カンジダ培養試験においては、CFU(Colony forming unit;コロニー形成単位)数を測定した。
【0032】
表1には、本実施形態におけるカンジダ菌の経時的変化による菌数測定結果(京都微生物研究所の総合科学分析センター)を示している。抗菌対象物質として、陶器(セラミック)、レジンをナノ銀粒子の被担持材料とした場合に、カンジダ菌の菌数変化を確認したところ、上記したIH又は超音波照射の各処理後(24時間後、48時間後、72時間後)においては、菌数が約10万分の一以下となった。具体的には、菌数測定の結果として、表1に示すように、超音波の照射時間が10分と30分との2パターンで行なった場合の陶器と、IHを照射した場合のレジンに、菌数に大幅な効果があった。すなわち、初期値が1.2×10の5乗cells/mlであったカンジダ菌は、上記した各処理後においては、菌数が全て約10以下であり、「検出されず」という結果になった。但し、IH又は超音波照射による各処理が行われずに、レジンを銀水溶液中に単に浸漬しただけの場合では、菌数は平均として初期値と殆ど変化が無かった。
【0033】
試験方法は、抗菌力評価試験として、JISZ2801に基づいて試験を行なった。使用菌株は、カンジダ菌(Candida albicans)であり、すなわち、抗菌対象物質となる供試片の表面に500分の1普通ブイヨンで調製した菌液を滴下し、フィルムで密着させ35℃で保存する。測定は、供試片上の菌液について生菌数を測定した。
【0034】
【表1】
【0035】
同様に、表2には、カンジダ菌の経時的変化による菌数測定結果(京都微生物研究所の総合科学分析センター)を示している。抗菌対象物質として、シリコン、金属(アルミニウム)、陶器(タイル)をナノ銀粒子の被担持材料とした場合に、カンジダ菌の菌数変化を確認した。上記したIHの各処理後(24時間後、48時間後、72時間後)において、シリコンは、菌数が約1万分の1、金属においては、100分の1、陶器においては、10万分の1以下となった。
【0036】
試験方法は、同様に、抗菌力評価試験として、JISZ2801に基づいて試験を行なった。使用菌株は、カンジダ菌(Candida albicans)であり、すなわち、抗菌対象物質となる供試片の表面に500分の1普通ブイヨンで調製した菌液を滴下し、フィルムで密着させ35℃で保存する。測定は、供試片上の菌液について生菌数を測定した。
【0037】
【表2】
【0038】
以上から、ナノ銀粒子は、カンジダの義歯材料への付着を抑制することが確認でき、義歯、あるいは義歯床(歯肉)の部分になる床用レジン、更には、シリコン、タイル、アルミニウム等へのナノ銀粒子の適用が有効であることが示された。したがって、IH又は超音波照射であっても同様の結果が得られると推測される。さらに加えて、超短波、赤外線の照射によっても、レジン、シリコン、セラミック、アルミニウム等へのナノ銀粒子の担持が同様の結果が得られると考えられる。

【要約】
【課題】IHによる加熱、または、超音波の照射により、抗菌対象物質にナノ銀粒子を離散して担持させることにより、優れた抗菌効果を有し、且つ、抗菌効果が持続することができるようにする。
【解決手段】常温の銀水溶液中に、抗菌対象物質を浸漬した状態で誘導加熱、又は超音波照射を行うことにより、ナノ銀粒子を離散して前記抗菌対象物質に担持させる。
【選択図】図5
図1
図2
図3
図4
図5