【実施例】
【0027】
以下、実施例の面状発熱体について、図面を用いて説明する。なお、同一部材については同一の符号を用いて説明する。
【0028】
(
参考例1)
参考例1の面状発熱体について、
図1〜
図3を用いて説明する。
図1〜
図3に示されるように、本例の面状発熱体1は、発熱部2と、電極部3とを備えている。
【0029】
面状発熱体1において、発熱部2は、緯糸および経糸の一方が導電性繊維21であり、他方が非導電性繊維22である織物20より構成されている。各図では、面状発熱体1の長手方向に経糸が配置されており、面状発熱体1の幅方向に緯糸が配置されている例を示している。また、発熱部2を構成する織物20の織組織としては、平織組織が例示されている。
【0030】
本例では、緯糸が導電性繊維21とされており、経糸が非導電性繊維22とされている。導電性繊維21は、具体的には、有機繊維211と、有機繊維211の表面を被覆し、かつ、炭素材料を含有する被覆層212とを有している。有機繊維211は、より具体的には、マルチフィラメント糸構造を有するポリエステル系繊維であり、糸の表面に位置する繊維の表面だけでなく、糸の内部に位置する繊維の表面にも被覆層212が形成されている。なお、各図では、糸の内部に存在する被覆層212は省略されている。また、被複層212は、具体的には、炭素材料と、バインダーとを含有している。より具体的には、炭素材料は、カーボンナノチューブであり、バインダーは、ポリウレタン系樹脂である。
【0031】
面状発熱体1において、電極部3は、発熱部2における導電性繊維21方向の両端部にそれぞれ形成されており、非導電性繊維22方向に延びている。つまり、本例では、電極部3は、発熱部2の幅方向の両端部にそれぞれ形成されており、発熱部2の長手方向に延びている。電極部3は、導体線31と、固定糸32と、導電層33とを有している。
【0032】
導体線31は、発熱部2の片側表面に配置されている。本例では、導体線31は、平編組線である。平編組線は、具体的には、金属素線が管状に編み込まれて形成された管状編組線が平らに潰されることによって構成されている。したがって、平編組線は、編み込まれた金属素線の間に多くの隙間を有している。
【0033】
固定糸32は、導体線31を発熱部2に固定している。本例では、固定糸32は、第1固定糸321と、第2固定糸322とを有している。第1固定糸321は、導体線31の長手方向に沿って導体線31の中央部を縫い止めている。第2固定糸322は、導体線31の幅方向両側縁の外側における発熱部2を、導体線31の長手方向にジグザグ状に縫い止めている。固定糸32は、具体的には、ポリエステル系糸である。なお、
図2および
図3において、固定糸32は省略されている。
【0034】
導電層33は、発熱部2における導体線31の配置部分に付着された導電材料より形成されており、複数の導電性繊維21同士を電気的に接続している。つまり、導電層33において、複数の導電性繊維21同士は導電材料によって一体化されている。本例では、導電材料は、具体的には、炭素材料と、バインダーとを含有している。より具体的には、炭素材料は、カーボンナノチューブであり、バインダーは、ポリウレタン系樹脂である。
【0035】
電極部3において、導電層33と導体線31とは接している。具体的には、導電層33および導体線31は、導電層33に導体線31が接した状態で一体化されている。電極部3は、導電層33と導体線31とが接することによって、複数の導電性繊維21と導体線31とが導通可能とされている。
【0036】
本例では、導電層33を形成する導電材料の一部が導体線31内に入り込んでいる(不図示)。具体的には、導電材料の一部は、導体線31としての平編組線の表面にある隙間から内部に入り込んでいる。また、導電材料の一部は、導体線31側と反対側の発熱部2の表面にも付着している。
【0037】
本例では、面状発熱体1は、電気抵抗がR1≦R2の関係を満たしている。但し、R1は、発熱部2における電極部3が形成されている部分の電気抵抗であり、R2は、発熱部2における電極部3が形成されていない部分の電気抵抗である。
図1に示されるように、R1は、具体的には、導体線31の幅よりも大きな角形状の小片S1を切り出し、導体線31を除いた小片S1について、導電性繊維21と垂直な方向の電気抵抗を測定することにより求められる。また、R2は、具体的には、R1の測定時と同じ大きさの小片S2を、発熱部2における電極部3が形成されていない部分から切り出し、小片S2について、導電性繊維21と垂直な方向の電気抵抗を測定することにより求められる。なお、R1≦R2の関係は、具体的には、導電層212を形成する導電材料に含まれる炭素材料の含有量≧導電性繊維21における被覆層形成材料に含まれる炭素材料の含有量の関係を満たすよう構成することによって調整されている。
【0038】
次に、本例の面状発熱体の作用効果について説明する。
【0039】
本例の面状発熱体1における電極部3は、導電性繊維21と導体線31とを直接接触させる場合に比べ、導電層33と導体線31との密着性を確保しやすい。そのため、面状発熱体1は、導電層33が有する導電性繊維21と導体線31との電気的な接続を確実なものとすることができる。それ故、面状発熱体1は、長尺に形成されることによって長尺な電極部3とされた場合でも、長手方向で電圧降下が生じ難く、均一に発熱することができる。また、面状発熱体1は、導電層33と導体線31との密着性が高いため、電極部3における接点不良も抑制しやすい。
【0040】
(実施例2)
実施例2の面状発熱体について、
図4、
図5を用いて説明する。
図4、
図5に示されるように、本例の面状発熱体1では、電極部3が、導体線31表面および導体線31周辺の発熱部2表面に付着した導電材料34を有している。また、電極部3は、導体線31よりも幅広であり、かつ、導体線31を覆うように貼り付けられたテープ材4を有している。なお、テープ材4は、導体線31の長手方向に沿って貼り付けられている。テープ材4は、具体的には、基材(不図示)と、基材の片面に形成された粘着層(不図示)とを有している。テープ材4は、粘着層側の面が導体線31側となるように配置されている。本例では、基材の材質は紙である。また、本例の面状発熱体1は、
電極部3側の面を覆う第1保護層51と、
電極部3側と反対側の面を覆う第2保護層52とを有している。第1保護層51、第2保護層52は、いずれも樹脂層であり、アクリルウレタン樹脂を含んでいる。なお、その他の構成は、
参考例1と同様である。
【0041】
本例の面状発熱体1も、
参考例1と同様の作用効果を得ることができる。また、本例の面状発熱体1は、電極部3が、導体線31表面および導体線31周辺の発熱部2表面に付着した導電材料34を有している。そのため、導体線31表面および導体線31周辺の発熱部2表面が導電材料34によって覆われる。それ故、本例の面状発熱体1は、導電層33と導体線31との密着性を向上させやすくなり、電極部3における接点不良をより一層抑制しやすい。
【0042】
また、本例の面状発熱体1は、電極部3が、テープ材4を有している。そのため、導体線31がテープ材4によって発熱部2に押えつけられる。それ故、本例の面状発熱体1は、導電層33と導体線31との密着性を向上させやすくなり、電極部3における接点不良をより一層抑制しやすい。また、第1保護層51を樹脂コーティングにて形成する際に、樹脂を基材中に浸透させることができる。そのため、導体線31および発熱部2とテープ材4との密着性が向上し、剥離を抑制しやすい。
【0043】
また、本例の面状発熱体1は、
電極部3側の面を覆う第1保護層51を有している。そのため、本例の面状発熱体1は、最表層に位置する第1保護層51によって下方の電極部3および発熱部2の導電性繊維21が保護される。また、本例の面状発熱体1は、第1保護層51によって発熱部2から電極部3が脱落するのを抑制しやすくなる。また、本例の面状発熱体1は、第1保護層51によって電極部3の防水性が向上する。また、本例の面状発熱体1は、
電極部3側と反対側の面にも第2保護層52を有している。そのため、本例の面状発熱体1は、発熱部2の導電性繊維21の保護をより一層確実なものとすることができる。
【0044】
<実験例>
以下、実験例を用いてより具体的に説明する。
【0045】
(試料1の面状発熱体の作製)
−発熱部を構成するための織物の作製−
導電材料としてマルチウォール型のカーボンナノチューブ(CNT)4質量%と、バインダーとしてポリウレタン樹脂5質量%と、を含有する水性のCNT分散液A(パーカーコーポレーション社製)を準備した。
【0046】
次いで、ポリエステル系繊維(クラレ社製、「FD84T48」、84dtex/48フィラメント)に対して、CNT分散液Aを用い、サイジング糊付け手法にてカーボンナノチューブを付着させた。具体的には、ポリエステル系繊維をCNT分散液Aに浸漬する際に、微振動させた糸ガイドを通して、200Hzの微振動を糸に与え、170℃で2分間乾燥させた。これにより、ポリエステル系繊維と、ポリエステル系繊維の表面を被覆し、かつ、カーボンナノチューブを含有する被覆層とを有する、導電性繊維を得た。
【0047】
次いで、この導電性繊維を緯糸に配置し、レギュラーポリエステル糸(56dtex/36フィラメント)を経糸として用い、5/1ツイル組織にて織物を作製した。なお、緯糸の内込本数は、112本/インチであった。
【0048】
−電極部の形成−
導電材料としてマルチウォール型のカーボンナノチューブ(CNT)6質量%と、バインダーとしてポリウレタン樹脂5質量%と、を含有する水性のCNT分散液B(パーカーコーポレーション社製)を準備した。
【0049】
次いで、幅30cm、長さ2mに形成した織物の片側表面における緯糸方向(幅方向)の一端部に、幅2mm、長さ2mの平編組線(双葉電線社製)を経糸方向(長手方向)に沿って配置した。なお、平編組線は、スズめっき銅素線を用いて形成されおり、公称断面積0.38mm
2、素線径0.1mm、素線数48本である。次いで、ミシンを用いて、ポリエステル系糸により平編組線の中央部を経糸方向に縫い止めた。次いで、同様に、ミシンを用いて、ポリエステル系糸により、平編組線の幅方向両側縁の外側における織物部分を、経糸方向にジグザグ状に縫い止めた。これにより、織物の片側表面における緯糸方向の一端部に、平編組線を糸にて固定した。織物の片側表面における緯糸方向の他端部にも、同様にして、平編組線を糸にて固定した。以下、平編組線を固定した側の織物面をおもて面とし、その反対側の織物面をうら面とする。
【0050】
次いで、織物のおもて面の平編組線に沿うように、織物のうら面にCNT分散液Bを塗布し、CNT分散液Bを織物内に含浸させ、乾燥させた。これにより、織物における平編組線の配置部分にカーボンナノチューブおよびバインダーを付着させ、平編組線と接する導電層を形成した。また、織物のおもて面における平編組線表面および平編組線周辺に、CNT分散液Bを塗布し、乾燥させた。これにより、織物のおもて面における平編組線表面および平編組線周辺にも、カーボンナノチューブおよびバインダーを付着させた。なお、カーボンナノチューブおよびバインダーは、平編組線の内部にも入り込んでいた。
【0051】
次いで、織物のおもて面におけるCNT分散液Bの塗布部分を覆うように、紙製の基材を有するマスキングテープを貼り付けた。また、織物のうら面におけるCNT分散液Bの塗布部分を覆うように、上記マスキングテープを貼り付けた。次いで、織物のおもて面およびうら面の両方にアクリルウレタン系樹脂をコーティングすることにより、第1保護層および第2保護層をそれぞれ形成した。
【0052】
以上により、試料1の面状発熱体を作製した。
【0053】
(試料1Cの面状発熱体の作製)
試料1の面状発熱体の作製時に準備した織物の片側表面における緯糸方向の両端部に、銅ペーストを用いて、経糸方向に延びる一対の電極部(幅300mm、長さ2m)を形成した。これにより、試料1Cの面状発熱体を作製した。
【0054】
(発熱試験)
一対の電極部の一方端部に、電圧印加装置を接続し、50Vの交流電圧を印加した。そして、赤外線サーモグラフィ(フリアーシステムズジャパン社製、「FLIRi5j」)を用いて、サーモ画像を撮影した。その結果を、
図6、
図7に示す。なお、各図において、手前側の電極部に電圧印加装置が接続されている。
【0055】
図7に示されるように、試料1Cの面状発熱体は、手前側から奥側に向かうにつれ、電極部に電圧降下が発生し、発熱にムラが生じて均一な発熱ができていないことがわかる。
【0056】
これに対して、
図6に示されるように、試料1の面状発熱体は、電極部に電圧降下が発生せず、長手方向で均一に発熱できていることがわかる。また、試料1の面状発熱体は、電極部における接点不良も見られなかった。
【0057】
以上、本発明の実施例、実験例について詳細に説明したが、本発明は上記実施例、実験例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を損なわない範囲内で種々の変更が可能である。