特許第5887453号(P5887453)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5887453電極用触媒、ガス拡散電極形成用組成物、ガス拡散電極、膜・電極接合体、燃料電池スタック
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5887453
(24)【登録日】2016年2月19日
(45)【発行日】2016年3月16日
(54)【発明の名称】電極用触媒、ガス拡散電極形成用組成物、ガス拡散電極、膜・電極接合体、燃料電池スタック
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/92 20060101AFI20160303BHJP
   H01M 4/90 20060101ALI20160303BHJP
   H01M 4/86 20060101ALI20160303BHJP
   H01M 8/10 20160101ALI20160303BHJP
   B01J 35/08 20060101ALI20160303BHJP
   B01J 27/22 20060101ALI20160303BHJP
【FI】
   H01M4/92
   H01M4/90 B
   H01M4/86 B
   H01M8/10
   B01J35/08 B
   B01J27/22 M
【請求項の数】15
【全頁数】34
(21)【出願番号】特願2015-167902(P2015-167902)
(22)【出願日】2015年8月27日
【審査請求日】2015年12月2日
(31)【優先権主張番号】特願2014-174564(P2014-174564)
(32)【優先日】2014年8月28日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000228198
【氏名又は名称】エヌ・イーケムキャット株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129632
【弁理士】
【氏名又は名称】仲 晃一
(72)【発明者】
【氏名】永森 聖祟
(72)【発明者】
【氏名】水崎 智照
(72)【発明者】
【氏名】中村 葉子
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 寛
(72)【発明者】
【氏名】関 安宏
【審査官】 守安 太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−021610(JP,A)
【文献】 特開2012−041581(JP,A)
【文献】 特表2008−545604(JP,A)
【文献】 特開2012−143753(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/86
H01M 4/90
H01M 4/92
H01M 8/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性を有する担体と、
前記担体上に担持される触媒粒子と、
を含んでおり、
前記触媒粒子が、前記担体上に形成されるコア部と、前記コア部上に形成される第1シェル部と、前記第1シェル部上に形成される第2シェル部と、を有しており、
前記コア部にはW炭化物を少なくとも含むW化合物が含まれており、
前記第1シェル部にはPd単体が含まれており、
前記第2シェル部にはPt単体が含まれている、
電極用触媒。
【請求項2】
前記コア部には、W酸化物が更に含まれている請求項1に記載の電極用触媒。
【請求項3】
前記コア部には、W単体が更に含まれている請求項1又は2に記載の電極用触媒。
【請求項4】
X線光電子分光分析法(XPS)により測定される表面近傍の分析領域における、Pt単体の割合R1Pt(atom%)と、Pd単体の割合R1Pd(atom%)とが、下記式(1)の条件を満たしている、
請求項1〜3のうちのいずれか1項に記載の電極用触媒。
0.60≦(R1Pt/R1Pd)≦6.00・・・(1)
【請求項5】
前記R1Ptが35atom%以上である、
請求項4に記載の電極用触媒。
【請求項6】
前記R1Pdが60atom%以下である、
請求項4又は5に記載の電極用触媒。
【請求項7】
X線光電子分光分析法(XPS)により測定される表面近傍の分析領域における前記W化合物に由来するWの割合R1が30atom%以下である、
請求項4〜6のうちのいずれか1項に記載の電極用触媒。
【請求項8】
ICP発光分析により測定されるPt担持率LPt(wt%)と、Pd担持率LPd(wt%)とが下記式(2)の条件を満たしている、
請求項1〜7のうちのいずれか1項に記載の電極用触媒。
Pt/LPd≧0.3・・・(2)
【請求項9】
粉末X線回折(XRD)により測定される前記触媒粒子の結晶子サイズの平均値が3〜22.0nmである、
請求項1〜8のうちのいずれか1項に記載の電極用触媒。
【請求項10】
W炭化物と、W酸化物とを含むコア粒子を前記担体上に形成するコア粒子形成工程と、
前記コア粒子形成工程を経て得られる前記コア粒子の表面の少なくとも一部に前記第1シェル部を形成する第1シェル部形成工程と、
前記第1シェル部形成工程を経て得られる粒子の表面の少なくとも一部に前記第2シェル部を形成する第2シェル部形成工程と、
を経て調整され、
前記コア粒子形成工程を経て得られる粒子について、
X線光電子分光分析法(XPS)により測定される表面近傍の分析領域における前記W炭化物の割合R0WC(atom%)と、前記W酸化物の割合R0WO(atom%)とが下記式(3)の条件を満たしている、
請求項1〜のうちのいずれか1項に記載の電極用触媒。
R0WC/(R0WC+R0WO)≧0.10・・・(3)
【請求項11】
前記コア粒子形成工程を経て得られる粒子について、
X線光電子分光分析法(XPS)により測定される表面近傍の分析領域における前記W炭化物の割合R0WC(atom%)と、前記W酸化物の割合R0WO(atom%)とが下記式(4)の条件を更に満たしている、
請求項10に記載の電極用触媒。
R0WC/(R0WC+R0WO)≧0.25・・・(4)
【請求項12】
請求項1〜11のうちのいずれか1項に記載の電極用触媒が含有されている、
ガス拡散電極形成用組成物。
【請求項13】
請求項1〜11のうちのいずれか1項に記載の電極用触媒が含有されている、又は、請求項12に記載のガス拡散電極形成用組成物を使用して形成されている、
ガス拡散電極。
【請求項14】
請求項13記載のガス拡散電極が含まれている、膜・電極接合体(MEA)。
【請求項15】
請求項14記載の膜・電極接合体(MEA)が含まれている、燃料電池スタック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極用触媒に関する。より詳しくは、ガス拡散電極に好適に使用される電極用触媒に関し、燃料電池のガス拡散電極により好適に使用される電極用触媒に関する。
また本発明は、上記電極用触媒粒子を含む、ガス拡散電極形成用組成物、膜・電極接合体、及び、燃料電池スタックに関する。
【背景技術】
【0002】
固体高分子形燃料電池(Polymer Electrolyte Fuel Cell:以下、必要に応じて「PEFC」という)は、燃料電池自動車、家庭用コジェネレーションシステムの電源としての研究開発が行われている。
【0003】
PEFCのガス拡散電極に使用される触媒には、白金(Pt)等の白金族元素の貴金属粒子からなる貴金属触媒が用いられている。
例えば、典型的な従来の触媒としては、導電性カーボン粉末上にPt微粒子を担持させた「Pt担持カーボン触媒」(以下、必要に応じ「Pt/C触媒」という)が知られている(例えば、N.E.CHEMCAT社製のPt担持率50wt%のPt/C触媒、商品名:「NE−F50」など)。
PEFCの製造コストの中でPt等の貴金属触媒が占めるコストの割合は大きく、PEFCの低コスト化、PEFCの普及に向けた課題になっている。
この課題を解決するために、触媒の低貴金属化技術、又は、脱貴金属化技術の研究開発が進められている。
【0004】
これらの研究開発の中で、白金の使用量を低減するため、従来、非白金元素からなるコア部とPtからなるシェル部から形成されるコアシェル構造を有する触媒粒子(以下、必要に応じ「コアシェル触媒粒子」という)が検討されており、多数の報告がなされている。
例えば、特許文献1には、パラジウム(Pd)又はPd合金(コア部に相当)がPt原子の原子的薄層(シェル部に相当)によって被覆された構成を有する粒子複合材(コアシェル触媒粒子)が開示されている。更に、この特許文献1には、実施例としてコア部がPd粒子で、シェル部がPtからなる層であるコアシェル触媒粒子が記載されている。
更に、コア部Pt族以外の金属元素を構成元素として含む構成も検討されている。また、これとは逆に、シェル部に、Pt族以外の金属元素を構成元素として含む構成も提案されている。
例えば、タングステン(W)をコア部の構成元素として含む構成としては、W単体、W合金、W酸化物からなるコア部を有する構成が提案されている(例えば、特許文献2〜9)。
更に、Wをシェル部の構成元素として含む構成としては、W単体、W合金、W酸化物からなるシェル部を有する構成が提案されている(例えば、特許文献10)。
【0005】
より詳細には、特許文献2〜特許文献5には、W酸化物を含むコア部を有する構成が開示されている。
特許文献2においては、炭素担体上に、コア部がWO2、シェル部がWO2の還元生成物(WO2-y、0<y≦2)とPdとの合金である粒子を担持させた構成の触媒の合成例が開示されている(特許文献2、実施例8)。
特許文献3には、W酸化物(酸化タングステンナトリウムなど)をコア部、Ptなどをシェル部とする白金-金属酸化物複合粒子が開示されている。
特許文献4には、W単体またはWを含む一群の金属元素から選択される2以上の固溶体からなる金属酸化物粒子を基粒子(コア部)とし、Pt単体またはPtを含む一群の金属元素から選択される2以上の固溶体を金属被覆層(シェル部)とする構成の触媒粒子が提案されている。
特許文献5には、W酸化物を基粒子(コア部)とし、基粒子の表面の少なくとも一部を被覆する一種以上のPtなどの金属(シェル部)とする構成の触媒粒子が提案されている。
【0006】
また、特許文献6〜特許文献9には、W単体、又はW合金(W固溶体)を含むコア部を有する構成が開示されている。
特許文献6には、W単体、Wと他の一群の金属から選ばれる金属との合金、それらの混合物を内部コア(コア部)、PtやPt合金などを外部シェル部とする触媒粒子が開示されている。
特許文献7には、Pt以外の金属原子又はPt以外の金属原子による合金からなるコア粒子(コア部)、コア粒子の表面にPtからなるシェル層(シェル部)とする金属粒子が導電性担体に担持された構成のPt含有触媒が開示されている。Wは、コア部、シェル部の両方の構成材料として開示されている(特許文献7、段落番号0020、段落番号0021)。
特許文献8には、W単体、或いは、W合金を材料とする面心立方結晶構造を有するコア粒子(コア部)、Ptなどの金属を材料とする面心立方結晶構造を有するシェル層(シェル部)とするコアシェル型微粒子が開示されている。
特許文献9には、W単体、或いは、W合金を材料とするコア粒子(コア部)、Ptなどの金属を材料とするシェル層(シェル部)とするコアシェル型微粒子が開示されている。
【0007】
また、コアシェル構造を有する触媒粒子に該当するかについては不明確であるが、燃料電池用の電極触媒として、W炭化物の粒子にPt又はPt合金を担持した触媒も提案されている(特許文献11〜12、非特許文献1)。
特許文献11には、導電性カーボン上に、当該導電性カーボンの表面改質にW炭化物の粒子(WCとW2Cの混合物の粒子、又は、WCからなる粒子)を生成させ、更に、この粒子上にPt粒子を担持させた触媒が開示されている。
特許文献12には、WCを主成分とする粒子上にPt粒子を担持させた触媒が開示されている。ただし、導電性カーボン担体上に触媒粒子を担持させた構成は検討されていない。
非特許文献1には、W2Cを主成分とする粒子上にPt粒子を担持させた触媒が開示されている。ただし、導電性カーボン担体上に触媒粒子を担持させた構成は検討されていない。
更に、非Pt元素からなるコア部とPtからなるシェル部から形成されるコアシェル構造を有する触媒粒子において、Pt量の低減とともに触媒活性の向上も意図した構成も提案されている(例えば、特許文献13)。
例えば、特許文献13には、Pd合金を含む中心粒子(コア部)と、Ptを含む最外層(シェル部)と、中心粒子と最外層との間にPd単体のみからなる中間層を設けた子コアシェル構造を有する燃料電池用電極触媒微粒子が提案されている。
【0008】
なお、本件特許出願人は、上記文献公知発明が記載された刊行物として、以下の刊行物を提示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許出願公開第2007/31722号公報
【特許文献2】特開2012−143753号公報
【特許文献3】特表2008−545604号公報
【特許文献4】特開2005−125282号公報
【特許文献5】特開2003−080077号公報
【特許文献6】特表2010−501345号公報
【特許文献7】特開2011−072981号公報
【特許文献8】特開2012−041581号公報
【特許文献9】特開2013−163137号公報
【特許文献10】特開2012−216292号公報
【特許文献11】特表2013−518710号公報
【特許文献12】特開2008−021610号公報
【特許文献13】WO2010/011170号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Angew.Chem.Int.Ed.2005,44,6557−6560
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、導電性の担体上と当該担体上に担持されたコアシェル構造を有する触媒粒子を含む燃料電池用電極触媒に関し、W化合物(特にW炭化物)を主な構成成分として含むコア部を有する電極用触媒について着目して上述の従来技術をみた場合、Pt使用量の低減に加えて、従来のPt/C触媒と比較し、実用に耐えうる水準の触媒活性及び耐久性を得るための構成の検討、並びに、実施例によるその実証が十分になされておらず、未だ改善の余地があることを本発明者らは見出した。
すなわち、W酸化物を含むコア部を有する構成が開示されている特許文献2においては、炭素担体上に、コア部がWO2、シェル部がWO2の還元生成物(WO2-y、0<y≦2)とPdとの合金である粒子を担持させた構成の触媒の実施例の記載があり(特許文献2、実施例8)、この実施例の触媒活性が、炭素担体上にPd粒子を担持させた比較例(特許文献2、比較例2)に対して向上することが示されている(特許文献2、図11)。しかしながら、この実施例の構成が、従来のPt/C触媒と比較し、実用に耐えうる水準の触媒活性を得る観点や、更に十分な耐久性を得る観点で有効な構成なのか不明である。
【0012】
また、その他のW酸化物を含むコア部を有する構成が開示されている特許文献3〜特許文献5おいてはW酸化物を含むコア部を有する触媒に相当する実施例の記載がなく、触媒活性、耐久性の実証がなされていない。
すなわち、特許文献3には実施例の記載がない。また、特許文献4及び特許文献5には、導電性カーボンを担体とする構成の触媒の実施例の記載がない。更に、実施例の構成を「シェル部/コア部」で表記すると、実施例は、「Pt/CeO2」、「還元析出させたPt単体とRu単体/CeO2」、「還元析出させたPt単体とRu単体/CeO2・ZrO2固溶体」であり、有毒物質の浄化性能評価試験結果のみである。
【0013】
また、W単体、又はW合金(W固溶体)を含むコア部を有する構成が開示されている特許文献6〜特許文献9には、W単体、又はW合金(W固溶体)を含むコア部を有する触媒に相当する実施例の記載がなく、触媒活性、耐久性の実証がなされていない。
特許文献6については、実施例として記載され性能評価されているのは、「シェル部/コア部」で表記すると、「Pt/Ag」(特許文献6、実施例1、実施例4)、「Pt/Au」(特許文献6、実施例2、実施例3)の構成のみである。性能評価についても「RDE(回転リングディスク電極)による電気化学的試験において、高い比活性が得られる」とだけ記載されておりどの程度の活性向上があるか詳細は不明である。
特許文献7については、実施例として記載され性能評価されているのは、「シェル部/コア部」で表記すると、「Pt/Ru」(特許文献7、実施例1)の構成のみである。
特許文献8及び特許文献9については、「Wコア微粒子(W単体の微粒子)」を合成した例は記載されているが、これにシェル部を形成し触媒とした実施例の記載はない。実施例として記載され性能評価されているのは、「シェル部/コア部」で表記すると、「Pt/Ru」、「Pt/Ni」の構成のみである(特許文献8の段落[0111]、特許文献9の実施例1及び実施例2)。
【0014】
また、W炭化物の粒子にPt又はPt合金を担持した触媒が提案されている特許文献11については、導電性カーボン上に、当該導電性カーボンの表面改質によりW炭化物の粒子を生成させ、更に、この粒子上にPt粒子を担持させた触媒が開示されている(特許文献11、例1、例2)。
具体的には、実施例(特許文献11では「例1」、「例2」)の構成を「シェル部/コア部」で表記すると、Pt/(WCとW2Cとの混合物)、Pt/(WCからなる粒子)である。
触媒の耐久性(初期性能の低下の度合い)を加速劣化試験によって推定している。具体的には、カソードの酸素還元反応に関する触媒活性について、0.5〜1.3Vの間の150電位サイクルを酸素飽和電解質中で50mV/sの速度で実施し、性能の低下を測定して、従来のPt/C触媒に比較して性能低下が改善されることが開示されている。
しかしながら、触媒活性(Pt質量活性など)の数値については実施例、比較例ともに開示されておらず、実用に耐えうる水準の触媒活性を得る観点や、更に十分な耐久性を同時に得る観点で有効な構成なのか不明である。また、特許文献11に開示された実施例の触媒粒子がコアシェル構造を有しているか不明である。
【0015】
また、W炭化物の粒子にPt又はPt合金を担持した触媒が提案されている特許文献12については、導電性カーボン担体上に触媒粒子を担持させた構成の実施例は記載されていない。W2N、WS2等の特定の前駆化合物を経由して合成されたWCにPt粒子を担持した触媒(特許文献12、実施例1〜6)により、耐CO被毒性の改善と、アノード触媒活性の向上がみられることが示されている。しかしながら、この例の構成が、従来のPt/C触媒と比較し、実用に耐えうる水準の触媒活性を得る観点や、更に十分な耐久性を得る観点で有効な構成なのか不明である。
更に、W炭化物の粒子にPt又はPt合金を担持した触媒が提案されている非特許文献1については、導電性カーボン担体上に触媒粒子を担持させた構成の実施例は記載されていない。Pt粒子をW2C上に担持した構成の触媒の例が開示されている。更に、この例が、PtとRuとの合金粒子をカーボン担体上に担持した構成の触媒に比較して、ECSAなどの触媒活性が向上することが開示されている。しかしながら、この例の構成が、従来のPt/C触媒と比較し、実用に耐えうる水準の触媒活性を得る観点や、更に十分な耐久性を得る観点で有効な構成なのか不明である。
【0016】
本発明は、かかる技術的事情に鑑みてなされたものであって、従来のPt/C触媒と比較し、実用に耐えうる水準の触媒活性、耐久性を有し、かつ、低コスト化に寄与できる電極用触媒を提供することを目的とする。
また、本発明は、上記電極用触媒を含む、ガス拡散電極形成用組成物、ガス拡散電極、膜・電極接合体(MEA)、及び、燃料電池スタックを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本件発明者等は、Pt使用量の低減を意図してコア部の構成材料としてW系材料を採用する場合について、触媒活性と耐久性についても従来のPt/C触媒と比較し、実用に耐えうる水準の結果を得ることのできる構成について鋭意検討を行った。
その結果、本発明者らは、少なくともW炭化物を含むコア部、2層のシェル部からなる構成が有効で、より詳しくは、コア部とPt単体を含むシェル部との間にPd単体を含むシェル部を設ける構成(従来技術に開示も示唆もされていない構成)とすることが有効であることを見出し、本発明を完成するに至った。
より具体的には、本発明は、以下の技術的事項から構成される。
【0018】
すなわち、本発明は、
(N1)導電性を有する担体と、
前記担体上に担持される触媒粒子と、
を含んでおり、
前記触媒粒子が、前記担体上に形成されるコア部と、前記コア部上に形成される第1シェル部と、前記第1シェル部上に形成される第2シェル部と、を有しており、
前記コア部にはW炭化物を少なくとも含むW化合物が含まれており、
前記第1シェル部にはPd単体が含まれており、
前記第2シェル部にはPt単体が含まれている、
電極用触媒を提供する。
【0019】
詳細なメカニズムは十分に解明されていないが、上記の構成とすることにより、本発明の電極用触媒は、従来のPt/C触媒と比較し、実用に耐えうる水準の触媒活性、耐久性を有し、かつ、低コスト化に寄与できる。
【0020】
ここで、本発明において、「W炭化物」とは、タングステン(W)原子と炭素(C)原子が、結合を持って化合物として存在する形態であるものを示す。例えば、WC、WC1-x(0<x<1)、W2C、W3C等が挙げられる。
このW炭化物はX線回折(XRD)で確認することができる。即ち、W炭化物に対してX線(Cu−Kα線)を照射し、回折スペクトルを観察することによって、W炭化物に特徴的なピークを与えることで確認することができる。
例えば、WCは、例えば、X線回折の2θ(±0.3゜)のピークとして、31.513゜、35.639゜、48.300゜、64.016゜、65.790゜等の特徴的ピークを与えるものである。
例えば、WC1-xは、例えば、X線回折の2θ(±0.3゜)のピークとして、36.977゜、42.887゜、62.027゜、74.198゜、78.227゜等の特徴的ピークを与えるものである。
例えば、W2Cは、例えば、X線回折の2θ(±0.3゜)のピークとして、34.535゜、38.066゜、39.592゜、52.332゜、61.879゜等の特徴的ピークを与えるものである。
【0021】
なお、特許文献13では、Pd単体のみからなる中間層が、コア部(Pd合金を含む中心粒子)と、シェル部(Ptを含む最外層)との間に配置された構成が開示されている。
このPd単体のみからなる中間層を配置するのは、シェル部(Ptを含む最外層)の被覆状態を安定化させる働きを意図していることが開示されている。より詳しくは、Pdの格子定数(3.89オングストローム)が、Ptの格子定数(3.92オングストローム)により近く、シェル部(Ptを含む最外層)の白金原子をより安定に存在させることができるということが開示されている。
ただし、特許文献13では、コア部と、Pd単体のみからなる中間層との親和性も互いの構成材料の格子定数を考慮して構成されていることが示唆される。すなわち、中間層(単体Pdからなる層)と、コア部(Pd合金を含む中心粒子)とに共通成分であるPdを含む構成としている。このことは、例えば、特許文献13の実施例1の触媒を製造する際に、コア部の表面の銅を電気化学的に除去し、当該コア部の表面近傍の層の化学組成を略Pdからなる層とした後にPd単体のみからなる中間層を形成していることからも支持される。
これに対して、本発明の電極用触媒粒子は、コア部と第1シェル部とにおいて、互いに共通する構成成分を含まない構成を敢えて採用することにより、本発明の効果が得られることを本発明者らが見出し、完成するに至ったものである。
例えば、WCの格子定数(2.90オングストローム,2.83オングストローム)は、Pdの格子定数、Ptの格子定数とは異なるものである。
なお、本明細書において、電極用触媒の構成を説明する際に、必要に応じて、「担体上に担持される触媒粒子の構成(主な構成材料)/導電性を有する担体の構成(主な構成材料)」と表記する。より詳しくは、「シェル部の構成/コア部の構成/担体の構成」と表記する。更により詳しくは、「第2シェル部の構成/第1シェル部の構成/コア部の構成/担体の構成」と表記する。例えば、電極用触媒の構成が、「Ptからなる第2シェル部、Pdからなる第1シェル部、W炭化物を主成分とするコア部、導電性カーボンからなる担体」を有する構成の場合、「Pt/Pd/WC/C」と表記する。
【0022】
また、(N2)本発明の電極用触媒においては、本発明の効果が得られる範囲で、コア部には、W酸化物が更に含まれていてもよい。
ただし、十分な導電性を確保する観点から、本発明の電極触媒の原料(コア部の原料)となるコア粒子の構成成分の組成は後述する式(4)の条件を満たしていることが好ましい。
更に、(N3)本発明の電極用触媒においては、本発明の効果が得られる範囲で、コア部には、W単体が更に含まれていてもよい。
【0023】
また、本発明は、
(N4)X線光電子分光分析法(XPS)により測定される表面近傍の分析領域における、Pt単体の割合R1Pt(atom%)と、Pd単体の割合R1Pd(atom%)とが、下記式(1)の条件を満たしている、(N1)〜(N3)のうちのいずれか1に記載の電極用触媒を提供する。
0.60≦(R1Pt/R1Pd)≦6.00・・・(1)
上記(R1Pt/R1Pd)が0.60以上となるように電極用触媒を構成することにより、電極用触媒の表面において触媒活性の高いPt単体からなる部分の割合が増えて、本発明の効果がより確実に得られるようになる。また、上記(R1Pt/R1Pd)が6.00以下となるように電極用触媒を構成することにより、第2シェル部に含まれるPt単体の含有量を低減できるため、本発明の効果がより確実に得られるようになる。
なお、本発明において、従来のPt/Cに比較して、触媒活性(特に、後述の初期のPt質量活性)をより確実に向上させる観点からは、(R1Pt/R1Pd)は0.60以上、1.15未満であることが好ましい。
更に、本発明において、従来のPt/Cに比較して、耐久性(特に、後述の耐久性評価における「評価試験後のECSA」/「評価試験前の初期のECSA」の値)をより確実に向上させる観点からは、(R1Pt/R1Pd)は1.15以上、6.00以下であることが好ましい。
ここで、本発明においては、XPSでPt単体の割合R1Pt(atom%)と、Pd単体の割合R1Pd(atom%)とを算出する際には、これら2つの成分と、後述のW化合物に由来するWの割合R1Wとを合わせた3つの成分の合計が100%となる条件で算出される数値とする。すなわち、電極用触媒の表面近傍の分析領域において、Pt単体、Pd単体及びW化合物の他に検出される炭素の割合(atom%)は計算から外した数値となる。
【0024】
なお、本発明において、XPSは、以下の(A1)〜(A6)条件で測定される。
(A1)X線源:単色化AlKα
(A2)光電子取出確度:θ=75℃(後述する図3を参照)
(A3)帯電補正:R1sピークエネルギーを284.8eVとして補正
(A4)分析領域:200μm
(A5)分析時のチャンバ圧力:約1×10-6Pa
【0025】
また、本発明は、(N5)前記R1Ptが35atom%以上である、(N4)に記載の電極用触媒を提供する。これにより、電極用触媒の表面において触媒活性の高いPt単体からなる部分の割合が増えて、本発明の効果がより確実に得られるようになる。
なお、本発明において、従来のPt/Cに比較して、触媒活性(特に、後述の初期のPt質量活性)をより確実に向上させる観点からは、R1Ptは35〜48atm%であることが好ましい。
更に、本発明において、従来のPt/Cに比較して、耐久性(特に、後述の耐久性評価における「評価試験後のECSA」/「評価試験前の初期のECSA」の値)をより確実に向上させる観点からは、R1Ptは40atm%以上であることが好ましく、50atm%以上であることがより好ましい。
【0026】
また、本発明は、(N6)前記R1Pdが60atom%以下である、(N4)又は(N5)に記載の電極用触媒を提供する。これにより、電極用触媒の表面においてPd単体からなる部分の割合が減り、Pdの溶出がより確実に抑制できるようになる。そのため、耐久性(特に、後述の耐久性評価における「評価試験後のECSA」/「評価試験前の初期のECSA」の値)がより向上するなど、本発明の効果がより確実に得られるようになる。同様の観点から、R1Pdは36atom%以下であることがより好ましく、26atom%以下であることが更にこのましい。
【0027】
また、本発明は、
(N7)X線光電子分光分析法(XPS)により測定される表面近傍の分析領域における前記W化合物に由来するWの割合R1Wが30atom%以下である、(N4)〜(N6)のうちのいずれか1に記載の電極用触媒を提供する。
これにより、電極用触媒の表面でコア部の露出する部分が減少し、電極反応の促進に寄与する第2シェル部、第1シェル部の表面積を増やすことができる。そのため、本発明の効果がより確実に得られるようになる。
【0028】
また、本発明は、
(N8)ICP発光分析により測定されるPt担持率LPt(wt%)と、Pd担持率LPd(wt%)とが下記式(2)の条件を満たしている、
(N1)〜(N7)のうちのいずれか1に記載の電極用触媒を提供する。
Pt/LPd≧0.30・・・(2)
上記(3)式をさらに満たすように電極用触媒を構成することにより、第2シェル部のPtの使用量を低減することにより、第1シェル部のPdの使用量も低減できることになり、より低コスト化に寄与することができるようになる。
【0029】

また、本発明においては、(N9)粉末X線回折(XRD)により測定される前記触媒粒子の結晶子サイズの平均値が3〜22.0nmであることが好ましい。
結晶子サイズの平均値が3nm未満であると、担体上にコア部となる粒子を形成することが困難になり、第1シェル部及び第2シェル部を有しかつ式(1)の条件を満たすように担体上に触媒粒子を形成することが困難となる傾向が大きくなる。
更に、結晶子サイズの平均値が22.0nmを超えると、担体上にコア部となる粒子を高分散状態で形成することが極めて困難になり、式(1)の条件を満たすように触媒粒子を担体上に形成することが困難になる傾向が大きくなる。
なお、本発明においては、第1シェル部がPtからなり、第2シェル部がPdからなり、かつ、第1シェル部がPt原子層で1層〜2層となる場合、XRDによってPt(111)面のピークがみえないので、第2シェル部のPd(111)面のピークから算出した平均値を触媒粒子の結晶子サイズの平均値としている。
【0030】
また、本発明は、
(N10)W炭化物と、W酸化物とを含むコア粒子を前記担体上に形成するコア粒子形成工程と、
前記コア粒子形成工程を経て得られる前記コア粒子の表面の少なくとも一部に前記第1シェル部を形成する第1シェル部形成工程と、
前記第1シェル部形成工程を経て得られる粒子の表面の少なくとも一部に前記第2シェル部を形成する第2シェル部形成工程と、
を経て調整され、
前記コア粒子形成工程を経て得られる粒子について、
X線光電子分光分析法(XPS)により測定される表面近傍の分析領域における前記W炭化物の割合R0WC(atom%)と、前記W酸化物の割合R0WO(atom%)とが下記式(3)の条件を満たしている、
(N1)〜(N10)のうちのいずれか1項に記載の電極用触媒を提供する。
R0WC/(R0WC+R0WO)≧0.10・・・(3)
原料となるコア粒子の構成成分の組成をこのように調整することにより、W炭化物の割合が増加し、最終的に得られる本発明の電極用触媒のコア部の導電性をより十分に確保できる。
同様の観点から、本発明においては、(N10)の場合、(N11)R0WC/(R0WC+R0WO)は下記式(4)の条件を更に満たしていることが好ましい。
R0WC/(R0WC+R0WO)≧0.25・・・(4)
更に、同様の観点から、R0WC/(R0WC+R0WO)は0.30以上であることが好ましく、0.40以上であることがより好ましく、0.50以上であることが更に好ましく、0.70以上であることが更に好ましい。
【0031】
さらに、本発明は、
(N12)上述の(N1)〜(N11)いずれか1に記載の電極用触媒が含有されている、ガス拡散電極形成用組成物を提供する。
本発明のガス拡散電極形成用組成物は、本発明の電極用触媒を含んでいるため、従来のPt/C触媒と比較し、実用に耐えうる水準の触媒活性(分極特性)、耐久性を有し、かつ、低コスト化に寄与できるガス拡散電極を容易に製造することができる。
【0032】
また、本発明は、
(N13)上述の(N1)〜(N11)いずれか1に記載の電極用触媒が含有されている、又は、上述の(N12)に記載のガス拡散電極形成用組成物を使用して形成されている、ガス拡散電極を提供する。
本発明のガス拡散電極は、本発明の電極用触媒を含んで構成されている。或いは、本発明のガス拡散電極は、本発明のガス拡散電極形成用組成物を使用して形成されている。そのため、従来のPt/C触媒と比較し、実用に耐えうる水準の触媒活性(分極特性)、耐久性を有し、かつ、低コスト化に寄与できる構成とすることが容易となる。
【0033】
さらに、本発明は、
(N14)上述の(N13)記載のガス拡散電極が含まれている、膜・電極接合体(MEA)を提供する。
本発明の膜・電極接合体(MEA)は、本発明のガス拡散電極を含んでいるため、従来のPt/C触媒と比較し、実用に耐えうる水準の電池特性、耐久性を有し、かつ、低コスト化に寄与できる構成とすることが容易となる。
【0034】
また、本発明は、
(N15)上述の(N14)記載の膜・電極接合体(MEA)が含まれていることを特徴とする燃料電池スタックを提供する。
本発明の燃料電池スタックによれば、本発明の膜・電極接合体(MEA)を含んでいるため、従来のPt/C触媒と比較し、実用に耐えうる水準の電池特性、耐久性を有し、かつ、低コスト化に寄与できる構成とすることが容易となる。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、従来のPt/C触媒と比較し、実用に耐えうる水準の触媒活性、耐久性を有し、かつ、低コスト化に寄与できる電極用触媒が提供される。
また、本発明によれば、かかる電極用触媒を含む、ガス拡散電極形成用組成物、ガス拡散電極、膜・電極接合体(MEA)、燃料電池スタックが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】本発明の電極用触媒(コアシェル触媒)の好適な一形態を示す模式断面図である。
図2】本発明の電極用触媒(コアシェル触媒)の別の好適な一形態を示す模式断面図である。
図3】本発明におけるX線光電子分光分析法(XPS)の分析条件を説明するためのXPS装置の概略構成を示す模式図である。
図4】本発明の燃料電池スタックの好適な一実施形態を示す模式図である。
図5】実施例で用いた回転ディスク電極を備えた回転ディスク電極測定装置の概略構成を示す模式図である。
図6】実施例において参照電極REに対して回転ディスク電極WEの電位(vsRHE)を掃引する「矩形波の電位掃引モード」を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、適宜図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
<電極用触媒>
図1は、本発明の電極用触媒(コアシェル触媒)の好適な一形態を示す模式断面図である。また、図2は、本発明の電極用触媒(コアシェル触媒)の別の好適な一形態を示す模式断面図である。
図1に示されるように、本発明の電極用触媒10は、担体2と、担体2上に形成されるいわゆる「コアシェル構造」を有する触媒粒子3を含んでいる。
更に、触媒粒子3は、担体2上に形成されるコア部4と、コア部4上に形成されるシェル部7(第1シェル部5及び第2シェル部6)とを含む、いわゆる「コアシェル構造」を有する。
すなわち、電極用触媒10は、担体2にコア部4を核(コア)とし、第1シェル部5および第2シェル部6がシェル部7となってコア部4の表面を被覆している構造を有している。
また、コア部の構成元素(化学組成)と、第1シェル部5と、第2シェル部6との構成元素(化学組成)は異なる構成となっている。
【0038】
本発明においては、電極用触媒は、コア部の表面の少なくとも一部の上にシェル部が形成されていればよい。
例えば、本発明の効果をより確実に得る観点からは、図1に示すように、電極用触媒10は、シェル部7によってコア部4の表面の略全域が被覆された状態であることが好ましい。
また、図2に示すように、本発明の効果を得られる範囲において、電極用触媒1は、コア部4の表面の一部が被覆され、コア部4の表面が部分的に露出した状態(例えば、図2に示すコア部4の表面の一部4sが露出した状態)であってもよい。別の表現をすれば、図2に示す電極用触媒10Aのように、コア部4の表面の一部の上にシェル部7a、シェル部7bが部分的に形成されていてもよい。
更に、この場合、図2に示すように、第2シェル部6aによって第1シェル部5aの表面の略全域が被覆された状態であることが好ましい。
また、図2に示すように、本発明の効果を得られる範囲において、第1シェル部5bの表面の一部が被覆され、第1シェル部5bの表面が部分的に露出した状態(例えば、図2に示す第1シェル部5bの表面の一部5sが露出した状態)であってもよい。
更に、本発明の電極触媒は、本発明の効果を得られる範囲において、図1に示した電極用触媒10と、図2に示した電極用触媒10Aとが混在した状態であってもよい。
【0039】
更に、本発明においては、本発明の効果を得られる範囲において、図2に示したように、同一のコア部4に対し、シェル部7aとシェル部7bとが混在した状態であってもよい。また、本発明においては、本発明の効果を得られる範囲において、同一のコア部4に対しシェル部7aのみが形成された状態であってもよく、同一のコア部4に対しシェル部7bのみが形成された状態であってもよい(何れの状態も図示せず)。
また、本発明の効果を得られる範囲において、電極用触媒1には、担体2上に、上述の電極用触媒10および電極用触媒10Aのうちのの少なくとも1種に加えて、「シェル部7に被覆されていないコア部4のみの粒子」が担持された状態が含まれていてもよい(図示せず)。
更に、本発明の効果を得られる範囲において、電極用触媒1には、上述の電極用触媒10および電極用触媒10Aのうちのの少なくとも1種に加えて「シェル部7の構成元素のみからなる粒子」がコア部4に接触していない状態で担持された状態が含まれていてもよい(図示せず)。
また、本発明の効果を得られる範囲において、電極用触媒1には、上述の電極用触媒10および電極用触媒10Aのうちのの少なくとも1種に加えて「シェル部7に被覆されていないコア部4のみの粒子」と、「シェル部7の構成元素のみからなる粒子」とが、それぞれ独立に担持された状態が含まれていてもよい。
【0040】
第1シェル部5と第2シェル部6の厚さについては、電極用触媒の設計思想によって好ましい範囲が適宜設定される。
例えば、第2シェル部6を構成するPtの使用量を最小限にすることを意図している場合には、1原子で構成される層(1原子層)であることが好ましく、この場合には、第2シェル部6の厚さは、当該第2シェル部6を構成する金属元素が1種類の場合には、この金属元素の1原子の直径(球形近似した場合)の2倍に相当する厚さであることが好ましい。
また、当該第2シェル部6を構成する金属元素が2種類以上の場合には、1原子で構成される層(2種類以上の原子がコア部4の表面に並置されて形成される1原子層)に相当する厚さであることが好ましい。
また、例えば、第2シェル部6の厚さをより大きくすることにより耐久性の向上を図る場合には、1〜5nmが好ましく、2〜10nmがより好ましい。
なお、本発明において「平均粒子径」とは、電子顕微鏡写真観察による、任意の数粒子群からなる粒子の直径の平均値のことをいう。
第1シェル部5の厚さは、第2シェル部6の厚さ以下であることが好ましい。これにより、Pdの使用量を低減でき、電極触媒として使用される場合のPdの溶出量も低減できるので好ましい。
【0041】
担体2は、コア部4と第1シェル部5と第2シェル部6とからなる複合体を担持することができ、かつ表面積の大きいものであれば特に制限されない。
さらに、担体2は、電極用触媒1を含んだガス拡散電極形成用組成物中で良好な分散性を有し、優れた導電性を有するものであることが好ましい。
【0042】
担体2は、グラッシーカーボン(GC)、ファインカーボン、カーボンブラック、黒鉛、炭素繊維、活性炭、活性炭の粉砕物、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ等の炭素系材料や酸化物等のガラス系あるいはセラミックス系材料などから適宜採択することができる。
これらの中で、コア部4との吸着性及び担体2が有するBET比表面積の観点から、炭素系材料が好ましい。
更に、炭素系材料としては、導電性カーボンが好ましく、特に、導電性カーボンとしては、導電性カーボンブラックが好ましい。
導電性カーボンブラックとしては、商品名「ケッチェンブラックEC300J」、「ケッチェンブラックEC600」、「カーボンEPC」等(ライオン化学株式会社製)を例示することができる。
【0043】
コア部4は、W炭化物を少なくとも含むW化合物を含む構成を有している。また、本発明の効果をより確実に得る観点からは、W炭化物を少なくとも含むW化合物から構成されていることが好ましい。W化合物としてはW炭化物の他の成分としてはW酸化物が更に含まれていてもよい。また、W化合物以外の成分が含まれる場合には、その成分としてはW単体であることが好ましい。
更に、W化合物としてはW炭化物の他の成分としてはW酸化物が更に含まれる場合、コア部4は、十分な導電性をより確実に得る観点から、X線光電子分光分析法(XPS)により測定される表面近傍の分析領域におけるW炭化物の割合R0WC(atom%)と、W酸化物の割合R0WO(atom%)とが下記式(3)の条件を満たしている、ことが好ましい。
R0WC/(R0WC+R0WO)≧0.10・・・(3)
同様の観点から、この場合、R0WC/(R0WC+R0WO)は下記式(4)の条件を更に満たしていることが好ましい。
R0WC/(R0WC+R0WO)≧0.25・・・(4)
更に、同様の観点から、R0WC/(R0WC+R0WO)は0.30以上であることが好ましく、0.40以上であることがより好ましく、0.50以上であることが更に好ましく、0.70以上であることが更に好ましい。
【0044】
第1シェル部5は、Pd単体が含まれている。本発明の効果をより確実に得る観点、製造容易性などの観点から、第1シェル部5は、Pd単体を主成分(50wt%以上)として構成されていることが好ましく、Pd単体から構成されていることがより好ましい。
第2シェル部6は、Pt単体が含まれている。本発明の効果をより確実に得る観点、製造容易性などの観点から、第2シェル部6は、Pt単体を主成分(50wt%以上)として構成されていることが好ましく、Pt単体から構成されていることがより好ましい。
【0045】
また、電極用触媒10及び電極用触媒10Aは、本発明の効果をより確実に得る観点から以下の条件を満たしていることが好ましい。
すなわち、電極用触媒10及び電極用触媒10Aは、X線光電子分光分析法(XPS)により測定される表面近傍の分析領域における、Pt単体の割合R1Pt(atom%)と、Pd単体の割合R1Pd(atom%)とが、下記式(1)の条件を満たしていることが好ましい。
0.60≦(R1Pt/R1Pd)≦6.00・・・(1)
【0046】
上記(R1Pt/R1Pd)が0.60以上となるように電極用触媒10及び電極用触媒10Aを構成することにより、これらの電極用触媒の表面において触媒活性の高いPt単体からなる部分の割合が増えて、本発明の効果がより確実に得られるようになる。また、上記(R1Pt/R1Pd)が6.00以下となるように電極用触媒を構成することにより、第2シェル部に含まれるPt単体の含有量を低減できるため、本発明の効果がより確実に得られるようになる。
なお、従来のPt/Cに比較して、電極用触媒10及び電極用触媒10Aの触媒活性(特に、後述の初期のPt質量活性)をより確実に向上させる観点からは、(R1Pt/R1Pd)は0.60以上、1.15未満であることが好ましい。
更に、従来のPt/Cに比較して、電極用触媒10及び電極用触媒10Aの耐久性(特に、後述の耐久性評価における「評価試験後のECSA」/「評価試験前の初期のECSA」の値)をより確実に向上させる観点からは、(R1Pt/R1Pd)は1.15以上、6.00以下であることが好ましい。
この場合、電極用触媒10及び電極用触媒10Aは、R1Ptが35atom%以上であることが好ましい。従来のPt/Cに比較して、電極用触媒10及び電極用触媒10Aの触媒活性(特に、後述の初期のPt質量活性)をより確実に向上させる観点からは、R1Ptは35〜48atm%であることが好ましい。
【0047】
更に、従来のPt/Cに比較して、電極用触媒10及び電極用触媒10Aの耐久性(特に、後述の耐久性評価における「評価試験後のECSA」/「評価試験前の初期のECSA」の値)をより確実に向上させる観点からは、R1Ptは40atm%以上であることが好ましく、50atm%以上であることがより好ましい。
また、この場合、R1Pdが60atom%以下であることが好ましい。電極用触媒10及び電極用触媒10Aの耐久性(特に、後述の耐久性評価における「評価試験後のECSA」/「評価試験前の初期のECSA」の値)をより確実に向上させる観点からは、R1Pdは36atom%以下であることがより好ましく、26atom%以下であることが更にこのましい。
更にこの場合、XPSにより測定される表面近傍の分析領域におけるW化合物に由来するWの割合R1Wが30atom%以下であることが好ましい。
またこの場合、ICP発光分析により測定されるPt担持率LPt(wt%)と、Pd担持率LPd(wt%)とが下記式(2)の条件を満たしている、ことが好ましい。
Pt/LPd≧0.30・・・(2)
【0048】
X線光電子分光分析法(XPS)は、以下の分析条件(A1)〜(A5)で実施しされるものとする。
(A1)X線源:単色化AlKα
(A2)光電子取出確度:θ=75℃
(A3)帯電補正:R1sピークエネルギーを284.8eVとして補正
(A4)分析領域:200μm、
(A5)分析時チャンバ圧力:約1×10-6Pa
ここで、(A2)の光電子取出確度θは、図3に示すように、エックス線源32から放射されたX線が、試料ステージ34上にセットされた試料へ照射され、当該試料から放射される光電子を分光器36で受光するときの角度θである。すなわち、光電子取出確度θは、分光器36の受光軸と試料ステージ34の試料の層の面との角度に該当する。
【0049】
<電極用触媒の製造方法>
電極用触媒10(10A)の製造方法は、W炭化物と、W酸化物とを含むコア粒子を担体上に形成する「コア粒子形成工程」と、コア粒子形成工程を経て得られるコア粒子の表面の少なくとも一部に第1シェル部5(5a、5b)を形成する「第1シェル部形成工程」と、第1シェル部形成工程を経て得られる粒子の表面の少なくとも一部に第2シェル部6(6a、6b)を形成する「第2シェル部形成工程」とを含む構成を有する。
【0050】
電極用触媒10(10A)は、電極用触媒の触媒成分である触媒粒子3(3a)、すなわち、コア部4、第1シェル部5(5a、5b)、第2シェル部6(6a、6b)を担体2に順次担持させることより製造される。
電極用触媒10(10A)の製造方法は、担体2に触媒成分である触媒粒子3(3a)を担持させることができる方法であれば、特に制限されるものではない。
例えば、担体2に触媒成分を含有する溶液を接触させ、担体2に触媒成分を含浸させる含浸法、触媒成分を含有する溶液に還元剤を投入して行う液相還元法、アンダーポテンシャル析出(UPD)法等の電気化学的析出法、化学還元法、吸着水素による還元析出法、合金触媒の表面浸出法、置換めっき法、スパッタリング法、真空蒸着法等を採用した製造方法を例示することができる。
ただし、「コア粒子形成工程」においては、好ましくは先に述べた式(5)の条件を満たすように、上述の公知の手法を組み合わせるなどして、原料、原料の配合比、合成反応の反応条件などを調整することが好ましい。
また、「第1シェル部形成工程」、「第2シェル部形成工程」においても、好ましくは先に述べた式(1)〜(3)の条件のうちの少なくとも1つを満たすように、上述の公知の手法を組み合わせるなどして、原料、その配合比、合成反応条件などを調整することが好ましい。
【0051】
更に、「コア粒子形成工程」を経て得られるコア粒子について、「第1シェル部形成工程」で第1シェル部を形成する前に、コア粒子の表面に存在するW酸化物を低減する処理を施してもよい。例えば、コア粒子の表面の還元処理や、酸によるW酸化物除去処理などをしてもよい。
なお、電極用触媒10及び電極用触媒10Aを上述した式(1)〜(5)で示した条件などの好ましい条件を満たすように構成する方法としては、例えば、生成物(触媒)の化学組成や構造を各種の公知の分析手法を用いて分析し、得られる分析結果を製造プロセスにフィードバックし、選択する原料、その原料の配合比、選択する合成反応、その合成反応の反応条件などを調製・変更する方法などがあげられる。
【0052】
<燃料電池セルの構造>
図4は本発明の電極用触媒を含むガス拡散電極形成用組成物、このガス拡散電極形成用組成物を用いて製造されたガス拡散電極、このガス拡散電極を備えた膜・電極接合体(Membrane Electrode Assembly:以下、必要に応じて「MEA」と略する)、及びこのMEAを備えた燃料電池スタックの好適な一実施形態を示す模式図である。
図4に示された燃料電池スタック40は、MEA42を一単位セルとし、この一単位セルを複数積み重ねた構成を有している。
【0053】
更に、燃料電池スタック40は、ガス拡散電極であるアノード43(負極)と、ガス拡散電極であるカソード44(正極)と、これらの電極の間に配置される電解質膜45と、を備えたMEA42を有している。
また、燃料電池スタック40は、このMEA42がセパレータ46及びセパレータ48により挟持された構成を有している。
【0054】
以下、本発明の電極用触媒を含む燃料電池スタック40の部材である、ガス拡散電極形成用組成物、ガス拡散電極であるアノード43及びカソード44、並びにMEA42について説明する。
【0055】
<ガス拡散電極形成用組成物>
本発明の電極用触媒をいわゆる触媒インク成分として用い、本発明のガス拡散電極形成用組成物とすることができる。
本発明のガス拡散電極形成用組成物は、本発明の電極用触媒が含有されていることを特徴とする。
ガス拡散電極形成用組成物は上記電極用触媒とイオノマー溶液を主要成分とする。イオノマー溶液の組成は特に限定されない。例えば、イオノマー溶液には、水素イオン伝導性を有する高分子電解質と水とアルコールとが含有されていてもよい。
【0056】
イオノマー溶液に含有される高分子電解質は、特に制限されるものではない。例えば、高分子電解質は、公知のスルホン酸基、カルボン酸基を有するパーフルオロカーボン樹脂を例示することができる。容易に入手可能な水素イオン伝導性を有する高分子電解質としては、ナフィオン(登録商標、デュポン社製)、アシプレックス(登録商標、旭化成株式会社製)、フレミオン(登録商標、旭硝子株式会社製)を例示することができる。
【0057】
ガス拡散電極形成用組成物は、電極用触媒、イオノマー溶液を混合し、粉砕、撹拌することにより作製することができる。
ガス拡散電極形成用組成物の作製は、ボールミル、超音波分散機等の粉砕混合機を使用して調製することができる。粉砕混合機を操作する際の粉砕条件及び撹拌条件は、ガス拡散電極形成用組成物の態様に応じて適宜設定することができる。
ガス拡散電極形成用組成物に含まれる電極用触媒、水、アルコール、水素イオン伝導性を有する高分子電解質の各組成は、電極用触媒の分散状態が良好であり、かつ電極用触媒をガス拡散電極の触媒層全体に広く行き渡らせることができ、燃料電池が備える発電性能を向上させることができるように適宜設定される。
【0058】
<ガス拡散電極>
ガス拡散電極であるアノード43は、ガス拡散層43aと、ガス拡散層43aの電解質膜45側の面に形成された触媒層43bとを備えた構成を有している。
カソード44もアノード43と同様にガス拡散層(図示せず)と、ガス拡散層の電解質膜45側の面に形成された触媒層(図示せず)とを備えた構成を有している。
本発明の電極用触媒は、アノード43及びカソード44のうちの少なくとも一方の触媒層に含有されていればよい。
なお、本発明のガス拡散電極は、アノードとして用いることができ、カソードとしても用いることができる。
【0059】
(電極用触媒層)
触媒層43bは、アノード43において、ガス拡散層43aから送られた水素ガスが触媒層43bに含まれている電極用触媒10の作用により水素イオンに解離する化学反応が行われる層である。また、触媒層43bは、カソード44において、ガス拡散層43aから送られた空気(酸素ガス)とアノードから電解質膜中を移動してきた水素イオンが触媒層43bに含まれている電極用触媒10の作用により結合する化学反応が行われる層である。
【0060】
触媒層43bは、上記ガス拡散電極形成用組成物を用いて形成されている。触媒層43bは、電極用触媒10とガス拡散層43aから送られた水素ガス又は空気(酸素ガス)との反応を十分に行わせることができるように大きい表面積を有していることが好ましい。また、触媒層43bは、全体に亘って均一な厚みを有するように形成されていることが好ましい。触媒層43bの厚みは、適宜調整すればよく、制限されるものではないが、2〜200μmであることが好ましい。
【0061】
(ガス拡散層)
ガス拡散電極であるアノード43、ガス拡散電極であるカソード44が備えているガス拡散層は、燃料電池スタック40の外部より、セパレータ46とアノード43との間に形成されているガス流路に導入される水素ガス、セパレータ48とカソード44との間に形成されているガス流路に導入される空気(酸素ガス)をそれぞれの触媒層に拡散するために設けられている層である。
また、ガス拡散層は、触媒層を支持して、ガス拡散電極の表面に固定化する役割を有している。
【0062】
ガス拡散層は、水素ガス又は空気(酸素ガス)を良好に通過させて触媒層に到達させる機能・構造を有している。このため、ガス拡散層は撥水性を有していることが好ましい。例えば、ガス拡散層は、ポリエチレンテレフタレート(PTFE)等の撥水成分を有している。
【0063】
ガス拡散層に用いることができる部材は、特に制限されるものではなく、燃料電池用電極のガス拡散層に用いられている公知の部材を用いることができる。例えば、カーボンペーパー、カーボンペーパーを主原料とし、その任意成分としてカーボン粉末、イオン交換水、バインダーとしてポリエチレンテレフタレートディスパージョンからなる副原料をカーボンペーパーに塗布したものが挙げられる。
ガス拡散電極であるアノード43、ガス拡散電極であるカソード44は、ガス拡散層、触媒層との間に中間層(図示せず)を備えていてもよい。
【0064】
(ガス拡散電極の製造方法)
ガス拡散電極の製造方法について説明する。本発明のガス拡散電極は本発明の電極用触媒を触媒層の構成成分となるように製造されていればよく、製造方法は特に限定されず公知の製造方法を採用することができる。
例えば、ガス拡散電極は、電極用触媒と水素イオン伝導性を有する高分子電解質と、イオノマーとを含有するガス拡散電極形成用組成物をガス拡散層に塗布する工程と、このガス拡散電極形成用組成物が塗布されたガス拡散層を乾燥させ、触媒層を形成させる工程とを経て製造してもよい。
【0065】
<膜・電極接合体(MEA)>
図4に示す本発明のMEAの好適な一実施形態であるMEA42は、アノード43と、カソード44と、電解質膜45とを備えた構成を有している。MEA42は、アノード及びカソードのうちの少なくとも一方に本発明の電極用触媒が含有されたガス拡散電極を備えた構成を有している。
MEA42は、アノード43、電解質300及びカソード44をこの順序により積層した後、圧着することにより製造することができる。
【0066】
<燃料電池スタック>
図4に示す本発明の燃料電池スタックの好適な一実施形態である燃料電池スタック40は、MEA42のアノード43の外側にセパレータ46が配置され、カソード44の外側にセパレータ48が配置された構成を一単位セル(単電池)とし、この一単位セル(単電池)を1個のみとする構成、又は、2個以上集積させた構成(図示せず)を有している。
なお、燃料電池スタック40に周辺機器を取り付け、組み立てることにより、燃料電池システムが完成する。
【実施例】
【0067】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0068】
(I)実施例及び比較例の電極用触媒の準備
【0069】
(実施例1)
<電極用触媒の製造>
【0070】
[Pd/W/C上にPtからなる第2シェル部を形成した「Pt/Pd/W/C」粉末]
下記の「Pd/W/C」粉末の粒子のPd上にPtからなる第2シェル部が形成された「Pt/Pd/W/C」粉末{商品名「NE−F12W10−AAA」、N.E.CHEMCAT社製)}を実施例1の電極触媒として製造した。
このPt/Pd/W/C粉末は、下記のPd/W/C粉末と、塩化白金酸カリウムと、水との混合液を調製し、これに還元剤を添加して得られる液中でPtイオンを還元処理することにより得られた。
【0071】
[W/C上にPdからなる第1シェル部を形成した「Pd/W/C」粉末]
下記の「W/C」粉末の粒子のW上にPdからなる第1シェル部が形成された「Pd/W/C」粉末{商品名「NE−F02W00−AA」、N.E.CHEMCAT社製)}を用意した。
このPd/W/C粉末は、下記のW/C粉末と、テトラクロロパラジウム(II)酸ナトリウムと、水との混合液を調製し、これに還元剤を添加して得られる液中でパラジウムイオンを還元処理することにより得られる。
【0072】
[コア粒子担持カーボン「W/C」粉末]
W炭化物とW酸化物とからなるコア粒子がカーボンブラック粉末上に担持されたW/C粉末{商品名「NE−F00W00−A」、N.E.CHEMCAT社製)}を用意した。
なお、後述するようにこのW/C粉末は、XPS分析の結果、W炭化物とW酸化物とを表1に示す比[R0WC/(R0WC+R0WO)]で含んでいることを確認した。
このW/C粉末は、市販のカーボンブラック粉末(比表面積750〜850m2/g)と、市販のタングステン酸塩と、市販の水溶性ポリマー(炭素源)とを含む粉末を、還元雰囲気下で熱処理して調整したものである。
また、XRD分析結果より、このW/C粉末のコア粒子は以下のW炭化物とW酸化物から構成されていることが確認された。すなわち、W炭化物は、WC、W2C、WC1-x(0<x<1)であり、W酸化物はWO3であった。
【0073】
<X線光電子分光分析(XPS:X−ray photoelectron spectroscopy)による電極用触媒の表面分析>
実施例1の電極用触媒についてXPSによる表面分析を実施し、Pt単体の割合R1Pt(atom%)と、Pd単体の割合R1Pd(atom%)と、W化合物(上述のW炭化物とW酸化物)に由来するWの割合R1W(atom%)を測定した。
具体的には、XPS装置として「Quantera SXM」(アルバック・ファイ社製)を使用し、以下の分析条件で実施した。
(A1)X線源:単色化AlKα
(A2)光電子取出確度:θ=75℃(図3参照)
(A3)帯電補正:R1sピークエネルギーを284.8eVとして補正
(A4)分析領域:200μm
(A5)分析時のチャンバ圧力:約1×10-6Pa
(A6)測定深さ(脱出深さ):約5nm以下
分析結果を表1に示す。なお、表1に示すPt単体の割合R1Pt(atom%)、Pd単体の割合R1Pd(atom%)、および、W化合物に由来するWの割合R1W(atom%)、については、これらの3成分で100%となるように算出した。すなわち、電極用触媒の表面近傍の分析領域において、Pt単体、Pd単体及びW化合物の他に検出される炭素の割合(atom%)は計算から外した数値となる。
【0074】
<担持率の測定(ICP分析)>
実施例1の電極用触媒について、Pt担持率LPt(wt%)と、Pd担持率LPd(wt%)、Wの担持率LW(wt%)を以下の方法で測定した。
実施例1の電極用触媒を王水に浸し、金属を溶解させた。次に、王水から不溶成分のカーボンを除去した。次に、カーボンを除いた王水をICP分析した。
ICP分析の結果を表1に示す。
【0075】
<X線光電子分光分析(XPS:X−ray photoelectron spectroscopy)によるコア粒子の表面分析>
実施例1の電極用触媒の原料となったコア粒子についてXPSによる表面分析を実施し、W炭化物の割合R0WC(atom%)と、W酸化物の割合R0WO(atom%)とを測定した。
具体的には、XPS装置として「Quantera SXM」(アルバック・ファイ社製)を使用し、上述の触媒粒子のXPS分析と同一の分析条件(A1)〜(A6)で実施した。
分析結果を表1に示す。
【0076】
<電極用触媒の表面観察・構造観察>
実施例1の電極用触媒について、STEM−HAADF 像、EDS elemental mapping 像を確認した結果、W炭化物とW酸化物とからなるコア部の粒子の表面の少なくとも一部に、Pdからなる第1シェル部の層が形成され、更に、第1シェル部の層の少なくとも一部にPtからなる第2シェル部の層が形成されたコアシェル構造を有する触媒粒子が導電性カーボン担体に担持されている構成(図1図2参照)を有していることが確認できた。
【0077】
(実施例2〜実施例5)
表1に示した電極用触媒の表面のXPS分析結果(R1Pt、R1Pd、R1W)、触媒粒子全体のICP分析結果(LPt、LPd、LW)、コア粒子の表面のXPS分析結果{R0WC/(R0WC+R0WO)}を有するように原料の仕込み量、反応条件等を微調整したこと以外は同様の調製条件、同一の原料を使用して、実施例2〜実施例5の電極用触媒を製造した。
また、XPS分析、ICP分析も実施例1と同一の条件で実施した。
更に、実施例2〜5の電極用触媒についても、STEM−HAADF 像、EDS elemental mapping 像を確認した結果、W炭化物とW酸化物とからなるコア部の粒子の表面の少なくとも一部に、Pdからなる第1シェル部の層が形成され、更に、第1シェル部の層の少なくとも一部にPtからなる第2シェル部の層が形成されたコアシェル構造を有する触媒粒子が導電性カーボン担体に担持されている構成(図1図2参照)を有していることが確認できた。
【0078】
(実施例6)
<電極用触媒の製造>
【0079】
[Pd/W/C上にPtからなる第2シェル部を形成した「Pt/Pd/W/C」粉末]
下記の「Pd/W/C」粉末の粒子のPd上にPtからなる第2シェル部が形成された「Pt/Pd/W/C」粉末{商品名「NE−G12W10−AAA」、N.E.CHEMCAT社製)}を実施例6の電極触媒として製造した。
このPt/Pd/W/C粉末は、下記のPd/W/C粉末と、塩化白金酸カリウムと、水との混合液を調製し、これに還元剤を添加して得られる液中でPtイオンを還元処理することにより得られた。
【0080】
[W/C上にPdからなる第1シェル部を形成した「Pd/W/C」粉末]
下記の「W/C」粉末の粒子のW上にPdからなる第1シェル部が形成された「Pd/W/C」粉末{商品名「NE−G02W00−AA」、N.E.CHEMCAT社製)}を用意した。
このPd/W/C粉末は、下記のW/C粉末と、テトラクロロパラジウム(II)酸ナトリウムと、水との混合液を調製し、これに還元剤を添加して得られる液中でパラジウムイオンを還元処理することにより得られる。
【0081】
[コア粒子担持カーボン「W/C」粉末]
W炭化物とW酸化物とからなるコア粒子がカーボンブラック粉末上に担持されたW/C粉末{商品名「NE−G00W00−A」、N.E.CHEMCAT社製)}を用意した。
なお、後述するようにこのW/C粉末は、XPS分析の結果、W炭化物とW酸化物とを表2に示す比[R0WC/(R0WC+R0WO)]で含んでいることを確認した。
このW/C粉末は、市販のカーボンブラック粉末(比表面積200〜300m2/g)と、市販のタングステン酸塩と、市販の水溶性ポリマー(炭素源)とを含む粉末を、還元雰囲気下で熱処理して調整したものである。
また、XRD分析結果より、このW/C粉末のコア粒子は以下のW炭化物とW酸化物から構成されていることが確認された。すなわち、W炭化物は、WC、W2C、WC1-x(0<x<1)であり、W酸化物はWO3であった。
実施例6の電極用触媒について、実施例1の電極用触媒と同一の条件で、電極用触媒の表面のXPS分析、ICP分析、コア粒子のXPS分析を行った。それぞれの分析結果を表2に示す。
次に、実施例6の電極用触媒についても、STEM−HAADF 像、EDS elemental mapping 像を確認した結果、W炭化物とW酸化物とからなるコア部の粒子の表面の少なくとも一部に、Pdからなる第1シェル部の層が形成され、更に、第1シェル部の層の少なくとも一部にPtからなる第2シェル部の層が形成されたコアシェル構造を有する触媒粒子が導電性カーボン担体に担持されている構成(図1図2参照)を有していることが確認できた。
【0082】
(実施例7〜実施例11)
表2に示した電極用触媒の表面のXPS分析結果(R1Pt、R1Pd、R1W)、触媒粒子全体のICP分析結果(LPt、LPd、LW)、コア粒子の表面のXPS分析結果{R0WC/(R0WC+R0WO)}を有するように原料の仕込み量、反応条件等を微調整したこと以外は同様の調製条件、同一の原料を使用して、実施例7〜実施例11の電極用触媒を製造した。
また、XPS分析、ICP分析も実施例1と同一の条件で実施した。
更に、実施例7〜実施例11の電極用触媒についても、STEM−HAADF 像、EDS elemental mapping 像を確認した結果、W炭化物とW酸化物とからなるコア部の粒子の表面の少なくとも一部に、Pdからなる第1シェル部の層が形成され、更に、第1シェル部の層の少なくとも一部にPtからなる第2シェル部の層が形成されたコアシェル構造を有する触媒粒子が導電性カーボン担体に担持されている構成(図1図2参照)を有していることが確認できた。
【0083】
(実施例12)
<電極用触媒の製造>
【0084】
[Pd/W/C上にPtからなる第2シェル部を形成した「Pt/Pd/W/C」粉末]
下記の「Pd/W/C」粉末の粒子のPd上にPtからなる第2シェル部が形成された「Pt/Pd/W/C」粉末{商品名「NE−G12W09−ADB」、N.E.CHEMCAT社製)}を実施例12の電極触媒として用意した。
このPt/Pd/W/C粉末は、下記のPd/W/C粉末と、塩化白金酸カリウムと、水との混合液を調製し、これに還元剤を添加して得られる液中でPtイオンを還元処理することにより得られる。
【0085】
[W/C上にPdからなる第1シェル部を形成した「Pd/W/C」粉末]
下記の「W/C」粉末の粒子のW上にPdからなる第1シェル部が形成された「Pd/W/C」粉末{商品名「NE−G02W00−DB」、N.E.CHEMCAT社製)}を用意した。
このPd/W/C粉末は、下記のW/C粉末と、テトラクロロパラジウム(II)酸ナトリウムと、水との混合液を調製し、これに還元剤を添加して得られる液中でパラジウムイオンを還元処理することにより得られる。
【0086】
[コア粒子担持カーボン「W/C」粉末]
W炭化物とW酸化物とからなるコア粒子がカーボンブラック粉末上に担持されたW/C粉末{商品名「NE−G00W00−B」、N.E.CHEMCAT社製)}を用意した。
このW/C粉末は、市販のカーボンブラック粉末(比表面積200〜300m2/g)と、市販のタングステン酸塩とを含む粉末を、炭化水素ガス(炭素源)を含む還元雰囲気下で熱処理して調整したものである。
また、XRD分析結果より、このW/C粉末のコア粒子は以下のW単体と、W炭化物と、W酸化物とから構成されていることが確認された。ここで、W炭化物はWCであり、W酸化物はWO3であった。
この実施例12の電極用触媒についても実施例1の電極触媒と同一の条件でXPS分析、ICP分析を実施した。その結果を表3に示す。
また、実施例12の電極用触媒についても、STEM−HAADF 像、EDS elemental mapping 像を確認した結果、構成(図1図2参照)を有していることが確認できた。
【0087】
(実施例13〜実施例21)
表3に示した電極用触媒の表面のXPS分析結果(R1Pt、R1Pd、R1W)、触媒粒子全体のICP分析結果(LPt、LPd、LW)、コア粒子の表面のXPS分析結果{R0WC/(R0WC+R0WO)}を有するように原料の仕込み量、反応条件等を微調整したこと以外は同様の調製条件、同一の原料を使用して、実施例13〜実施例21の電極用触媒を製造した。
また、XPS分析、ICP分析も実施例12と同一の条件で実施した。
更に、実施例13〜実施例21の電極用触媒についても、STEM−HAADF 像、EDS elemental mapping 像を確認した結果、W炭化物とW酸化物とからなるコア部の粒子の表面の少なくとも一部に、Pdからなる第1シェル部の層が形成され、更に、第1シェル部の層の少なくとも一部にPtからなる第2シェル部の層が形成されたコアシェル構造を有する触媒粒子が導電性カーボン担体に担持されている構成(図1図2参照)を有していることが確認できた。
【0088】
(実施例22)
<電極用触媒の製造>
【0089】
[Pd/W/C上にPtからなる第2シェル部を形成した「Pt/Pd/W/C」粉末]
下記の「Pd/W/C」粉末の粒子のPd上にPtからなる第2シェル部が形成された「Pt/Pd/W/C」粉末{商品名「NE−G12W09−ACB」、N.E.CHEMCAT社製)}を実施例22の電極触媒として用意した。
このPt/Pd/W/C粉末は、下記のPd/W/C粉末と、塩化白金酸カリウムと、水との混合液を調製し、これに還元剤を添加して得られる液中でPtイオンを還元処理することにより得られる。
【0090】
[W/C上にPdからなる第1シェル部を形成した「Pd/W/C」粉末]
下記の「W/C」粉末の粒子のW上にPdからなる第1シェル部が形成された「Pd/W/C」粉末{商品名「NE−G02W00−CB」、N.E.CHEMCAT社製)}を用意した。
このPd/W/C粉末は、下記のW/C粉末と、テトラクロロパラジウム(II)酸ナトリウムと、水との混合液を調製し、これに実施例1〜実施例21で添加した還元剤とは異なる還元剤を添加して得られる液中でパラジウムイオンを還元処理することにより得られる。
【0091】
[コア粒子担持カーボン「W/C」粉末]
W炭化物とW酸化物とからなるコア粒子がカーボンブラック粉末上に担持されたW/C粉末{商品名「NE−G00W00−B」、N.E.CHEMCAT社製)}を用意した。
このW/C粉末は、市販のカーボンブラック粉末(比表面積200〜300m2/g)と、市販のタングステン酸塩とを含む粉末を、炭化水素ガス(炭素源)を含む還元雰囲気下で熱処理して調整したものである。
また、XRD分析結果より、このW/C粉末のコア粒子は以下のW単体と、W炭化物と、W酸化物とから構成されていることが確認された。ここで、W炭化物はWCであり、W酸化物はWO3であった。
この実施例22の電極用触媒についても実施例1の電極触媒と同一の条件でXPS分析、ICP分析を実施した。その結果を表3に示す。
また、実施例22の電極用触媒についても、STEM−HAADF 像、EDS elemental mapping 像を確認した結果、構成(図1図2参照)を有していることが確認できた。
【0092】
(比較例1)
Pt/C触媒として、N.E.CHEMCAT社製のPt担持率50wt%のPt/C触媒(商品名:「NE−F50」)を用意した。この触媒は、実施例1の電極用触媒と同一の担体を原料とするものである。
この比較例1の電極用触媒についても実施例1の電極触媒と同一の条件でXPS分析、ICP分析を実施した。その結果を表1に示す。
【0093】
(比較例2)
<電極用触媒の製造>
[Pd/C上にPtからなるシェル部を形成した「Pt/Pd/C」粉末]
下記の「Pd/C」粉末の粒子のPd上にPtからなるシェル部が形成された「Pt/Pd/C」粉末{商品名「NE−F01215−BC」、N.E.CHEMCAT社製)}を比較例2の電極触媒として用意した。
このPt/Pd/C粉末は、下記のPd/C粉末と、塩化白金酸カリウムと、水との混合液を調製し、これに還元剤を添加して得られる液中でPtイオンを還元処理することにより得られる。
[コア粒子担持カーボン「Pd/C」粉末]
Pdからなるコア粒子がカーボンブラック粉末上に担持されたPd/C粉末{商品名「NE−F00200−C」、N.E.CHEMCAT社製)}を用意した。
このPd/C粉末は、市販のカーボンブラック粉末(比表面積750〜850m2/g)と、テトラクロロパラジウム(II)酸ナトリウムと、水との混合液を調製し、これに還元剤を添加して得られる液中でパラジウムイオンを還元処理することにより得られる。
この比較例2の電極用触媒についても実施例1の電極触媒と同一の条件でXPS分析、ICP分析を実施した。その結果を表1に示す。
また、実施例12の電極用触媒についても、STEM−HAADF 像、EDS elemental mapping 像を確認した結果、Pdからなるコア部の粒子の表面の少なくとも1部に、Ptからなるシェル部の層が形成されたコアシェル構造を有する触媒粒子が導電性カーボン担体に担持されている構成を有していることが確認できた。
【0094】
(比較例3)
Pt/C触媒として、N.E.CHEMCAT社製のPt担持率30wt%のPt/C触媒(商品名:「NE−G30」)を用意した。
この触媒は、実施例6〜22の電極用触媒と同一の担体を原料とするものである。
【0095】
(比較例4)
<電極用触媒の製造>
[W/C上にPtからなるシェル部を形成した「Pt/W/C」粉末]
下記の「W/C」粉末の粒子のW上にPdからなる第1シェル部が形成された「Pd/W/C」粉末{商品名「NE−G01W10−AA」、N.E.CHEMCAT社製)}を比較例4の電極触媒として用意した。
このPt/W/C粉末は、下記のW/C粉末と、塩化白金酸カリウムと、水との混合液を調製し、これに還元剤を添加して得られる液中でPtイオンを還元処理することにより得られる。
[コア粒子担持カーボン「W/C」粉末]
W炭化物とW酸化物とからなるコア粒子がカーボンブラック粉末上に担持されたW/C粉末{商品名「NE−G00W00−A」、N.E.CHEMCAT社製)}を用意した。
なお、後述するようにこのW/C粉末は、XPS分析の結果、W炭化物とW酸化物とを表1に示す比[R0WC/(R0WC+R0WO)]で含んでいることを確認した。
このW/C粉末は、市販のカーボンブラック粉末(比表面積200〜300m2/g)と、市販のタングステン酸塩と、市販の水溶性ポリマー(炭素源)とを含む粉末を、還元雰囲気下で熱処理して調整したものである。
また、XRD分析結果より、このW/C粉末のコア粒子は以下のW炭化物とW酸化物から構成されていることが確認された。すなわち、W炭化物は、WC、W2C、WC1-x(0<x<1)であり、W酸化物はWO3であった。
比較例4の電極用触媒について、実施例1の電極用触媒と同一の条件で、電極用触媒の表面のXPS分析、ICP分析、コア粒子のXPS分析を行った。それぞれの分析結果を表2及び表3に示す。
次に、比較例4の電極用触媒についても、STEM−HAADF 像、EDS elemental mapping 像を確認した結果、W炭化物とW酸化物とからなるコア部の粒子の表面の少なくとも一部に、Ptからなるシェル部の層が形成されたコアシェル構造を有する触媒粒子が導電性カーボン担体に担持されている構成を有していることが確認できた。
【0096】
(比較例5)
<電極用触媒の製造>
[Pd/C上にPtからなるシェル部を形成した「Pt/Pd/C」粉末]
下記の「Pd/C」粉末の粒子のPd上にPtからなるシェル部が形成された「Pt/Pd/C」粉末{商品名「NE−G01215−BC」、N.E.CHEMCAT社製)}を比較例5の電極触媒として用意した。
このPt/Pd/C粉末は、下記のPd/C粉末と、塩化白金酸カリウムと、水との混合液を調製し、これに還元剤を添加して得られる液中でPtイオンを還元処理することにより得られる。
[コア粒子担持カーボン「Pd/C」粉末]
Pdからなるコア粒子がカーボンブラック粉末上に担持されたPd/C粉末{商品名「NE−G00200−D」、N.E.CHEMCAT社製)}を用意した。
このPd/C粉末は、市販のカーボンブラック粉末(比表面積200〜300m2/g)と、テトラクロロパラジウム(II)酸ナトリウムと、水との混合液を調製し、これに還元剤を添加して得られる液中でパラジウムイオンを還元処理することにより得られる。
この比較例5の電極用触媒についても実施例1の電極触媒と同一の条件でXPS分析、ICP分析を実施した。その結果を表3に示す。
また、比較例5の電極用触媒についても、STEM−HAADF 像、EDS elemental mapping 像を確認した結果、Pdからなるコア部の粒子の表面の少なくとも1部に、Ptからなるシェル部の層が形成されたコアシェル構造を有する触媒粒子が導電性カーボン担体に担持されている構成を有していることが確認できた。
【0097】
(II)ガス拡散電極形成用組成物の製造
実施例1〜実施例22、比較例1〜比較例5の電極用触媒の粉末を約8.0mg秤取り、超純水2.5mLとともにサンプル瓶に入れて超音波を照射しながら混合して電極用触媒のスラリー(懸濁液)を作製した。
次に、別の容器に超純水10.0mLと10wt%ナフィオン(登録商標)分散水溶液((株)ワコーケミカル製、商品名「DE1020CS」)20μLを混合して、ナフィオン−超純水溶液を作製した。
このナフィオン−超純水溶液2.5mLを電極用触媒のスラリー(懸濁液)が入ったサンプル瓶に投入し、室温にて15分間、超音波を照射し、十分に撹拌して、ガス拡散電極形成用組成物とした。
【0098】
(III)評価試験用の電極への触媒層の形成
後述する回転ディスク電極法(RDE法)による電極触媒の評価試験の準備として、回転ディスク電極WE(図5参照)の電極面上に、実施例1の電極用触媒の粉末を含む触媒層CL(図5参照)、実施例2の電極用触媒の粉末を含む触媒層CL(図5参照)、比較例1の電極用触媒の粉末を含む触媒層CL(図5参照)、比較例2の電極用触媒の粉末を含む触媒層CL(図5参照)を以下の手順で形成した。
すなわち、ガス拡散電極形成用組成物を10μL分取して、回転ディスク電極WEの清浄な表面に滴下した。その後、回転ディスク電極WEの電極面全体に当該組成物を塗布し、塗布膜を形成した。このガス拡散電極形成用組成物からなる塗布膜を温度23℃、湿度50%RHにて、2.5時間乾燥処理し、回転ディスク電極WEの表面に触媒層CLを形成した。
【0099】
(IV)電極用触媒の触媒活性の評価試験
次に、実施例1〜実施例22の電極触媒を含む触媒層CLが形成された回転ディスク電極WEと、比較例1〜比較例5の電極触媒を含む触媒層CLが形成された回転ディスク電極WEとを使用し、触媒活性の評価試験、耐久性の評価試験を以下の手順で実施した。
また、回転ディスク電極法(RDE法)により、以下の手順で+0.9V(vsRHE)での白金質量活性(Mass Act、mA/g-Pt)を測定した。
【0100】
[回転ディスク電極測定装置の構成]
図5は、回転ディスク電極法(RDE法)に用いる回転ディスク電極測定装置50の概略構成を示す模式図である。
図5に示すように、回転ディスク電極測定装置50は、主として、測定セル51と、参照電極REと、対極CEと、回転ディスク電極WEとから構成されている。更に、触媒の評価を実施する場合には、測定セル51中に電解液ESが入れられる。
測定セル51は上面に開口部を有する略円柱状の形状を有しており、開口部には、ガスシール可能な蓋を兼ねた回転ディスク電極WEの固定部材52が配置されている。固定部材52の中央部には回転ディスク電極WEの電極本体部分を測定セル51内に挿入しつつ固定するためのガスシール可能な開口部が設けられている。
測定セル51の隣には、略L字状のルギン管53が配置されている。更にルギン管53の一方の先端部分はルギン毛細管の構造を有し、測定セル51の内部に挿入されており、測定セル51の電解液ESがルギン管53内部にも入るように構成されている。ルギン管53の他方に先端には開口部があり、当該開口部から参照電極REがルギン管53内に挿入される構成となっている。
なお、回転ディスク電極測定装置50としては、北斗電工株式会社製「モデルHSV110」を使用した。また、参照電極REとしてはAg/AgCl飽和電極、対極CEとしてはPt黒付Ptメッシュ、回転ディスク電極WEとしてはグラッシーカーボン社製、径5.0mmφ、面積19.6mm2の電極をそれぞれ使用した。更に、電解液ESとして0.1MのHCl04を用いた。
【0101】
[回転ディスク電極WEのクリーニング]
図5に示すように、上記回転ディスク電極測定装置50内において、HClO4電解液ES中に回転ディスク電極WEを浸した後、測定セル51の側面に連結されたガス導入管54からアルゴンガスを測定セル51中に導入することにより、アルゴンガスで電解液ES中の酸素を30分以上パージした。
その後、参照電極REに対する回転ディスク電極WEの電位(vsRHE)を、+85mV〜+1085mV、走査速度50mv/secとする、いわゆる「三角波の電位掃引モード」で20サイクル、掃引した。
【0102】
[初期の電気化学表面積(ECSA)の評価]
次に、参照電極REに対する回転ディスク電極WEの電位(vsRHE)を、図6に示すいわゆる「矩形波の電位掃引モード」で掃引した。
より詳しくは、以下(A)〜(D)で示す操作を1サイクルとした電位掃引を6サイクル行った。
(A)掃引開始時の電位:+600mV、(B)+600mVから+1000mVへの掃引、(C)+1000mVでの電位保持3秒、(D)+1000mVから+600mVへの掃引、(E)+600mVでの電位保持3秒。
次に、回転ディスク電極WEの電位(vsRHE)を、測定開始の電位+119mV、+50mV〜1200mV、走査速度20mV/secとする「三角波の電位掃引モード」にて3サイクル、CV測定を行った。なお、回転ディスク電極WEの回転速度は1600rpmとした。
【0103】
次に、酸素ガスで測定セル51の電解液ESを15分以上バブリングした後、走査電位を135〜1085mV vsRHE、走査速度10mV/secの「三角波の電位掃引モード」にて10サイクル、回転ディスク電極WEの回転速度を1600rpmの条件でCV測定を行った。
回転ディスク電極WEの電位+900mV vsRHEにおける電流値を記録した。
さらに、回転ディスク電極WEの回転速度をそれぞれ400rpm、625rpm、900rpm、1225rpm、2025rpm、2500rpm、3025rpmに設定して、1サイクルごとに酸素還元(ORR)電流測定を行った。
CV測定から得られた結果を利用して、Pt質量活性(Mass Act)(mA/ μg−Pt@0.9V)を算出した。
実施例1〜実施例5、比較例1及び比較例2について得られた結果を表1に示す。
実施例6〜実施例11、比較例3及び比較例4について得られた結果を表2に示す。
実施例12〜実施例22、比較例3〜比較例5について得られた結果を表3に示す。
なお、表1においては、比較例1(Pt/C触媒)のPt質量活性(Mass Act)を1.00とした場合における、実施例1〜実施例5、比較例2のPt質量活性(Mass Act)の相対値を示した。
また、表2においては、比較例3(Pt/C触媒)のPt質量活性(Mass Act)を1.00とした場合における、実施例6〜実施例11、比較例4のPt質量活性(Mass Act)の相対値を示した。
更に、表3においては、比較例3(Pt/C触媒)のPt質量活性(Mass Act)を1.00とした場合における、実施例12〜実施例22、比較例4及び比較例5のPt質量活性(Mass Act)の相対値を示した。
【0104】
(V)電極用触媒の耐久性の評価試験
触媒活性の評価試験に使用したものとは別の実施例1〜実施例22の電極触媒を含む触媒層CLが形成された回転ディスク電極WEと、比較例1〜比較例5の電極触媒を含む触媒層CLが形成された回転ディスク電極WEとをそれぞれ用意し、RDE法により、以下の手順でECSAの測定を行い、耐久性の評価を行った。
【0105】
[クリーニング]
先に述べた触媒活性の評価試験で実施したクリーニングと同一の電気化学的処理を行った。
【0106】
(V−1)[初期のECSAの測定]
(i)電位掃引処理
参照電極REに対する回転ディスク電極WEの電位(vsRHE)を、図6に示すいわゆる「矩形波の電位掃引モード」で掃引した。
より詳しくは、以下(A)〜(D)で示す操作を1サイクルとした電位掃引を6サイクル行った。
(A)掃引開始時の電位:+600mV、(B)+600mVから+1000mVへの掃引、(C)+1000mVでの電位保持3秒、(D)+1000mVから+600mVへの掃引、(E)+600mVでの電位保持3秒。
(ii)CV測定
次に、回転ディスク電極WEの電位(vsRHE)を、測定開始の電位+119mV、+50mV〜1200mV、走査速度50mV/secとする「三角波の電位掃引モード」にて2サイクル、CV測定を行った。なお、回転ディスク電極WEの回転速度は1600rpmとした。
2サイクル目のCV測定結果から、水素脱着波に基づく初期のECSAの値を算出した。結果を表1に示す。
【0107】
(V−2)[電位掃引回数12420サイクル後のECSAの測定]
初期のECSAの測定に引き続き、上述の「(i)電位掃引処理」を、電位掃引回数を12サイクルとしたこと以外は同一の条件で実施した。次に、上述の「(ii)CV測定」を同一の条件で実施した。
このようにして、電位掃引回数を順次変化させて「(i)電位掃引処理」を実施し、その都度上述の「(ii)CV測定」を同一の条件で実施した。電位掃引回数は、22、40、80、160、300、600、800、1000、1000、8400サイクルと順次変化させた。
これにより、最後の「(ii)CV測定」において得られるECSAの値(電位掃引回数が合計12420サイクルとなる電位掃引処理を施された後のECSAの値)を求めた。
また、この最後の「(ii)CV測定」において得られる水素脱着波に基づくECSAの値を「初期のECSAの値」で除すことにより、ESCAの維持率(%)を算出した。
実施例1〜実施例5、比較例1及び比較例2について得られた結果を表1に示す。
実施例6〜実施例11、比較例3及び比較例4について得られた結果を表2に示す。
実施例12〜実施例22、比較例3〜比較例5について得られた結果を表3に示す。
【0108】
なお、表1においては、比較例1(Pt/C触媒)の初期のECSAの値を1.00とした場合における、実施例1〜実施例5、比較例2の初期のECSAの相対値を示した。更に、表1においては、比較例1(Pt/C触媒)のESCAの維持率の値を1.00とした場合における、実施例1〜実施例5、比較例2のESCAの維持率の相対値を示した。
また、表2においては、比較例3(Pt/C触媒)の初期のECSAの値を1.00とした場合における、実施例6〜実施例11、比較例4の初期のECSAの相対値を示した。更に、表2においては、比較例3(Pt/C触媒)のESCAの維持率の値を1.00とした場合における、実施例6〜実施例11、比較例2のESCAの維持率の相対値を示した。
更に、表3においては、実施例12〜実施例22、比較例3〜比較例5のそれぞれについて、初期のECSAの値を示した。また、表3においては、比較例3(Pt/C触媒)の初期のECSAの値を1.00とした場合における、実施例12〜実施例22、比較例4及び比較例5の初期のECSAの相対値を示した。更に、表3においては、電位掃引回数12420サイクル後のECSAの測定値について、比較例3(Pt/C触媒)で得られた値を1.00とした場合における、実施例12〜実施例22、比較例4及び比較例5の相対値(以下、「相対値X」という)を示した。
また、実施例16と比較例5については、初期のECSAの値を測定した直後の測定セル51中の電解液ESの一部と、電位掃引回数12420サイクル後のECSAの値を測定した直後の測定セル51中の電解液ESの一部とをそれぞれ採取し、ICP分析を行うことにより、実施例16と比較例5の電極用触媒から溶出するPdの量を測定した。得られた結果を表4に示す。なお、表4においては、比較例5(Pt/Pd/C触媒)のPd溶出量を1.00とした場合における、実施例16のPd溶出量の相対値を示した。
【0109】
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【0110】
表1〜表3に示したPt質量活性(Mass Act)の結果から、実施例1〜実施例22の電極用触媒は、比較例1及び比較例3の電極触媒(従来のPt/C触媒)と比較し、略同等かそれ以上のPt質量活性を有しており、かつ、初期のECSAの値も略同等かそれ以上であり、実用に耐えうる水準の触媒活性を有していることが明らかとなった。
特に、実施例12〜実施例22の電極用触媒(R1Pt/R1Pdが0.60以上1.15未満)は、比較例3の電極触媒(従来のPt/C触媒)と比較し、2倍〜約5倍のPt質量活性を有しており、かつ、初期のECSAの値も約1.8倍〜約2.7倍であり、優れた触媒活性を有していることが明らかとなった。
また、表1〜表2に示した初期のECSAの値、電位掃引回数12420サイクル後のECSAの測定値から得られる「ESCAの維持率の相対値」の結果から、実施例1〜実施例11の電極用触媒(R1Pt/R1Pdが1.15〜6.00)は、比較例1及び比較例3の電極用触媒(Pt/C触媒)と比較し、電位掃引回数12420サイクル後のECSAの値及びECSAの維持率が同等以上(約1倍〜約1.4倍)であり、実用に耐えうる水準の耐久性を有していることが明らかとなった。
また、表3に示した結果から、実施例12〜実施例22の電極用触媒は、比較例3の電極触媒と比較し、「相対値X」の値が約1.4倍〜約2.3倍となる十分に高い水準を維持しており、実用に耐えうる水準の耐久性を有していることが明らかとなった。
更に、表1において、実施例1〜実施例5の電極用触媒は、比較例2(Pt/Pd/C触媒)との対比した場合、ESCAの維持率が同等であり、Pt/Pd/C触媒と同水準の優れた耐久性を有していることが明らかとなった。
【0111】
また、表2において、実施例6〜実施例11の電極用触媒は、比較例4(Pt/W/C)との対比した場合、ESCAの維持率が約5倍以上であることが明らかとなった。このことから、実施例6〜実施例11の電極用触媒のように第1シェル部としてPd単体を含む層が存在する構成とすると、比較例4のように第1シェル部としてPd単体を含む層が存在しない構成に比較して耐久性が向上することが示された。第1シェル部としてのPd単体を含む層の存在により耐久性が向上する傾向は、表3において、実施例12〜実施例22の電極用触媒と、比較例4(Pt/W/C)の電極触媒について、「相対値X」を比較するとより顕著であることが示された。
更に、表3において、実施例12〜実施例22の電極用触媒は、比較例5(Pt/Pd/C触媒)との対比した場合、「相対値X」が同等以上であり、Pt/Pd/C触媒と同水準の優れた耐久性を有していることが明らかとなった。
また、表4に示した結果から、W炭化物、W酸化物をコア粒子の構成要素とする実施例16の電極用触媒(Pt/Pd/W/C触媒)の方が比較例5(Pt/Pd/C触媒)よりもPd溶出量が約1/2に低減できることが示された。
以上の結果から、本実施例の電極用触媒は、従来のPt/C触媒と比較し、実用に耐えうる水準の触媒活性、耐久性を有していることが明らかとなった。更に、本実施例の電極用触媒は、コア部の材料をタングステン化合物としているため、白金使用量を削減でき、低コスト化に寄与できることが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0112】
本発明の電極用触媒は、従来のPt/C触媒と比較し、実用に耐えうる水準の触媒活性、耐久性を有し、かつ、低コスト化に寄与できる。
従って、本発明は、燃料電池、燃料電池自動車、携帯モバイル等の電機機器産業のみならず、エネファーム、コジェネレーションシステム等に適用することができる電極用触媒であり、エネルギー産業、環境技術関連の発達に寄与する。
【符号の説明】
【0113】
2・・・担体、
3・・・触媒粒子、
4・・・コア部、
5・・・第1シェル部、
6・・・第2シェル部、
7・・・シェル部、
10、10A・・・電極用触媒、
40・・・燃料電池スタック40、
42・・・MEA、
43・・・アノード、
43a・・・ガス拡散層、
43b・・・触媒層、
44・・・カソード、
45・・・電解質膜、
46・・・セパレータ、
48・・・セパレータ、
50・・・回転ディスク電極測定装置、
51・・・測定セル、
52・・・固定部材、
53・・・ルギン管、
CE・・・対極、
CL・・・触媒層、
ES・・・電解液、
RE・・・参照電極、
WE・・・回転ディスク電極。
【要約】
【課題】従来のPt/C触媒と比較し、実用に耐えうる水準の触媒活性、耐久性を有し、かつ、低コスト化に寄与できる電極用触媒の提供。
【解決手段】電極用触媒は、担体と担体上に担持される触媒粒子を有する。触媒粒子はコア部と、コア部上に形成される第1シェル部、当該第1シェル部上に形成される第2シェル部を有する。コア部はW炭化物を少なくとも含むW化合物を含み、第1シェル部はPd単体を含み、第2シェル部はPt単体を含む。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6