特許第5887627号(P5887627)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 明和工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5887627-炭化装置及び炭化方法 図000002
  • 特許5887627-炭化装置及び炭化方法 図000003
  • 特許5887627-炭化装置及び炭化方法 図000004
  • 特許5887627-炭化装置及び炭化方法 図000005
  • 特許5887627-炭化装置及び炭化方法 図000006
  • 特許5887627-炭化装置及び炭化方法 図000007
  • 特許5887627-炭化装置及び炭化方法 図000008
  • 特許5887627-炭化装置及び炭化方法 図000009
  • 特許5887627-炭化装置及び炭化方法 図000010
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5887627
(24)【登録日】2016年2月26日
(45)【発行日】2016年3月16日
(54)【発明の名称】炭化装置及び炭化方法
(51)【国際特許分類】
   C10B 47/02 20060101AFI20160303BHJP
   C10B 53/02 20060101ALI20160303BHJP
【FI】
   C10B47/02
   C10B53/02
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-109614(P2012-109614)
(22)【出願日】2012年5月11日
(65)【公開番号】特開2013-237725(P2013-237725A)
(43)【公開日】2013年11月28日
【審査請求日】2014年12月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】592141053
【氏名又は名称】明和工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100154966
【弁理士】
【氏名又は名称】海野 徹
(72)【発明者】
【氏名】北野 滋
(72)【発明者】
【氏名】木村 修二
(72)【発明者】
【氏名】芳賀 聖
(72)【発明者】
【氏名】村本 由美子
【審査官】 ▲来▼田 優来
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−323276(JP,A)
【文献】 特開2001−247871(JP,A)
【文献】 特開平10−245565(JP,A)
【文献】 特開昭54−131605(JP,A)
【文献】 特開2001−164261(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10B,C10L,B09B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に空間を有する箱体と、
箱体内を第1空間と第2空間の少なくとも左右2つの空間に区画する隔壁と、
第1空間内に配置されて有機性燃料を燃焼するための燃焼室と、
第2空間内に配置されて被炭化物を格納するための乾留炉と、
前記第1空間の上部に繋がる第1排気ダクトと、
前記第2空間の上部に繋がる第2排気ダクトと、
前記隔壁の上部に設けられる前記2つの空間を繋ぐ上部開口と、
前記乾留炉内から前記燃焼室の燃焼箇所近傍にまで至るガス導入管とを備え、
前記第1排気ダクトの天端の位置が前記第2排気ダクトの天端の位置よりも高くなっており、
前記第1空間内の燃焼室で有機性燃料を燃焼することで燃焼ガスを発生させ、当該燃焼ガスを前記上部開口を介して前記第2空間に導入し、当該燃焼ガスによって前記乾留炉の周囲を外熱式で加熱し、加熱された前記乾留炉内の被炭化物から可燃性の分解ガスを発生させ、当該分解ガスを前記ガス導入管を介して前記燃焼室の燃焼箇所近傍に導入することで前記有機性燃料の燃焼を促進させることを特徴とする炭化装置。
【請求項2】
前記第2空間内において、前記上部開口を介して前記第2空間内に導入した前記燃焼ガスを当該第2空間の上方及び下方まで至らせるための邪魔板を少なくとも1枚備えることを特徴とする請求項1に記載の炭化装置。
【請求項3】
前記乾留炉の一部を前記箱体の内側面に接合することで、当該箱体の扉と前記乾留炉に被炭化物を出し入れするための扉とを共通化することを特徴とする請求項1又は2に記載の炭化装置。
【請求項4】
前記箱体の側面に、前記第1空間内への空気の導入量を調節するための風量調整ダンパーを備えることを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載の炭化装置。
【請求項5】
内部に空間を有する箱体と、箱体内を第1空間と第2空間の少なくとも左右2つの空間に区画する隔壁と、第1空間内に配置されて有機性燃料を燃焼するための燃焼室と、第2空間内に配置されて被炭化物を格納するための乾留炉と、前記第1空間の上部に繋がる第1排気ダクトと、前記第2空間の上部に繋がる第2排気ダクトと、前記隔壁の上部に設けられる前記2つの空間を繋ぐ上部開口と、前記乾留炉内から前記燃焼室の燃焼箇所近傍にまで至る導入管とを備え、前記第1排気ダクトの天端の位置が前記第2排気ダクトの天端の位置よりも高くなっている炭化装置を用いた炭化方法において、
前記第1空間内の燃焼室で有機性燃料を燃焼することで燃焼ガスを発生させるステップと、当該燃焼ガスを前記上部開口を介して前記第2空間に導入するステップと、当該燃焼ガスによって前記乾留炉の周囲を外熱式で加熱するステップと、加熱された前記乾留炉内の被炭化物から可燃性の分解ガスを発生させるステップと、当該分解ガスを前記ガス導入管を介して前記燃焼室の燃焼箇所近傍に導入することで前記有機性燃料の燃焼を促進させるステップとを含むことを特徴とする炭化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被炭化物を乾留して炭化する炭化装置及び炭化方法に関し、特に被炭化物を微細化することなく、また電力及び化石燃料をほとんど使用せずに乾留し炭化できる炭化装置及び炭化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
木材やごみ等の有機物を含む廃材(被炭化物)を乾留によりほぼ無酸素状況下で熱分解することで、被炭化物から一酸化炭素、水素、メタン等の炭化水素等をガスとして揮発させ、木炭(炭化物)を得る炭化装置及び炭化方法が知られている。
【0003】
乾留による加熱方法としては被炭化物を入れた炉の中で被炭化物を直接的に加熱する内熱式と、炉の外から間接的に加熱する外熱式とに大別され、また、被炭化物を炉内で移動させる移動式と、固定式とに大別される。
例えば特許文献1には、収納ボックスに入れた被炭化物を炉内に入れて(固定式)、収納ボックスの周囲にバーナーで燃焼させた熱気を送り込む(外熱式)ことで乾留し、炭化する炭化炉が開示されている。
また、特許文献2には、チップ状に微細化した被炭化物を乾留炉内においてスクリューコンベアで移動させながら(移動式)、乾留炉の周囲を加熱する(外熱式)ことで乾留し、炭化する高温炭化装置が開示されている。
一般的には外熱式の方が内熱式と比較して無酸素状態を維持し易いため、ダイオキシン類を含めた有害物質が炭化物に含まれず、また、ガスとして発生することもないという利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003―286489号公報
【特許文献2】特開2003―213269号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記各特許文献に開示されたような従来の技術では以下のような問題がある。
すなわち、特許文献1の装置の場合、加熱時に継続してバーナーを使用するため、燃料として液化石油ガスや天然ガスなどの化石燃料を大量に使用する必要があるという問題がある。また、バーナー用の送風機を駆動するための電力が必要になるという問題がある。
また、特許文献2のような移動式は、特許文献1のような固定式と比較して炭化温度を制御し易い点や、加熱効率が良く炭化時間を短縮できるという点で優れているが、一方、被炭化物を移動させるための装置及びスペースが必要になる点、移動装置を駆動するための電力が必要になる点、可搬性に劣る点、更には微細化した被炭化物しか使用できないという点で固定式に劣るという問題がある。
【0006】
本発明はこのような問題に鑑み、被炭化物を乾留して炭化する炭化装置及び炭化方法に関し、特に被炭化物を微細化することなく、また電力及び化石燃料をほとんど使用せずに乾留し炭化できる炭化装置及び炭化方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の炭化装置は、内部に空間を有する箱体と、箱体内を第1空間と第2空間の少なくとも左右2つの空間に区画する隔壁と、第1空間内に配置されて有機性燃料を燃焼するための燃焼室と、第2空間内に配置されて被炭化物を格納するための乾留炉と、前記第1空間の上部に繋がる第1排気ダクトと、前記第2空間の上部に繋がる第2排気ダクトと、前記隔壁の上部に設けられる前記2つの空間を繋ぐ上部開口と、前記乾留炉内から前記燃焼室の燃焼箇所近傍にまで至るガス導入管とを備え、前記第1排気ダクトの天端の位置が前記第2排気ダクトの天端の位置よりも高くなっており、前記第1空間内の燃焼室で有機性燃料を燃焼することで燃焼ガスを発生させ、当該燃焼ガスを前記上部開口を介して前記第2空間に導入し、当該燃焼ガスによって前記乾留炉の周囲を外熱式で加熱し、加熱された前記乾留炉内の被炭化物から可燃性の分解ガスを発生させ、当該分解ガスを前記ガス導入管を介して前記燃焼室の燃焼箇所近傍に導入することで前記有機性燃料の燃焼を促進させることを特徴とする。
また、前記第2空間内において、前記上部開口を介して前記第2空間内に導入した前記燃焼ガスを当該第2空間の上方及び下方まで至らせるための邪魔板を少なくとも1枚備えることを特徴とする。
また、前記第1排気ダクトの天端の位置が前記第2排気ダクトの天端の位置よりも高くなっていることを特徴とする。
また、前記乾留炉の一部を前記箱体の内側面に接合することで、当該箱体の扉と前記乾留炉に被炭化物を出し入れするための扉とを共通化することを特徴とする。
また、前記箱体の側面に、前記第1空間内への空気の導入量を調節するための風量調整ダンパーを備えることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の炭化方法は、内部に空間を有する箱体と、箱体内を第1空間と第2空間の少なくとも左右2つの空間に区画する隔壁と、第1空間内に配置されて有機性燃料を燃焼するための燃焼室と、第2空間内に配置されて被炭化物を格納するための乾留炉と、前記第1空間の上部に繋がる第1排気ダクトと、前記第2空間の上部に繋がる第2排気ダクトと、前記隔壁の上部に設けられる前記2つの空間を繋ぐ上部開口と、前記乾留炉内から前記燃焼室の燃焼箇所近傍にまで至る導入管とを備え、前記第1排気ダクトの天端の位置が前記第2排気ダクトの天端の位置よりも高くなっている炭化装置を用いた炭化方法において、前記第1空間内の燃焼室で有機性燃料を燃焼することで燃焼ガスを発生させるステップと、当該燃焼ガスを前記上部開口を介して前記第2空間に導入するステップと、当該燃焼ガスによって前記乾留炉の周囲を外熱式で加熱するステップと、加熱された前記乾留炉内の被炭化物から可燃性の分解ガスを発生させるステップと、当該分解ガスを前記ガス導入管を介して前記燃焼室の燃焼箇所近傍に導入することで前記有機性燃料の燃焼を促進させるステップとを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の炭化装置及び炭化方法によれば、有機性燃料を燃焼することで発生させた燃焼ガスの熱を、乾留炉の周囲を外熱式で加熱するために用い、次に、加熱によって乾留炉内で発生させた可燃性の分解ガスをガス導入管を介して燃焼室の燃焼箇所近傍に導入することで有機性燃料の燃焼を促進させるので、従来のように炭化作業中に乾留炉の周囲をバーナー等で加熱し続ける場合と比較して化石燃料の使用量を極めて少量に抑えることができる。また、分解ガスの発生により正圧状態になった乾留炉内からガス導入管を介して分解ガスを噴出させて燃焼室に送り込み、第2排気ダクトのドラフトで誘引するので、従来のように送風機を駆動するための電力が不要になるという利点もある。
また、被炭化物を乾留炉内に留めておく固定式なので、移動式のように被炭化物を移動させるための装置及びスペースが不要になる。
【0010】
また、被炭化物を微細化する必要がなく、乾留炉内に格納可能な程度の大きさにすればよいので炭化作業の作業性が向上する。
また、本発明の炭化装置は移動式の炭化装置とは異なり、移動装置駆動用の電力が不要になると共に、燃焼室や乾留炉の温度計測用センサを駆動するためのごく僅かな電力のみで作動するため、この電力を太陽光パネルで供給することにすれば、電源不要で炭化作業を行うことができる。更に、小型且つ電源を必要としないため可搬性に優れるという利点がある。
また、邪魔板を用いて燃焼ガスの上下方向への流路を設けることで、第2空間内の上下の温度差が小さくなり、乾留炉内部も上下に差がなくほぼ均等に加熱することができ、木炭の品質を均一化することができる。
【0011】
また、ガス導入管を設けることで、可燃性の分解ガスを確実に燃焼箇所近傍に送り込むことができる。
また、第1排気ダクトの天端の位置を第2排気ダクトの天端の位置よりも高くすることで、いわゆるドラフト効果により、第1空間内の温度が急激に上昇した場合等に第1空間内の気体を効率的に外部に排出し、温度を低下させることができる。
また、箱体に形成した扉と乾留炉に被炭化物を出し入れするための扉とを共通化することで、作業者は2つの扉各々を開く場合と比較して被炭化物の出し入れが容易になる。
また、風量調整ダンパーを備えることにより、燃焼室への空気の流入量を調節し、最適な炭化状態を維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】炭化装置の正面図
図2】炭化装置の左側面図
図3】炭化装置の右側面図
図4】炭化装置の平面図
図5】炭化装置のA−A’線矢視図
図6】炭化装置のB−B’線矢視図
図7】炭化装置のC−C’線矢視図
図8】炭化装置のD−D’線矢視図
図9】メッシュコンテナの構造を示す正面図(a)、左側面図(b)及び平面図(c)
【発明を実施するための形態】
【0013】
[第1の実施の形態]
本発明の炭化装置の実施の形態について説明する。
図1図8に示すように、炭化装置10は、箱体20、隔壁30、燃焼室40、乾留炉50、第1排気ダクト60、第2排気ダクト70等から概略構成される。
【0014】
箱体20は、鉄等の耐熱性・耐候性に優れる金属製の複数の板(天板21、底板22、前後左右の側板23〜26)を相互に接合することでほぼ直方体形状に構成されており、その内部に空間を有している。箱体20の内面はセラミックウール等の断熱材27(図5等の斜線部分)で覆われている。前側の側板23はその中央部で2枚の側板23a、23bに分割されており、ヒンジ機構によりいわゆる観音開き方式で開閉することができる。
【0015】
隔壁30は箱体20内部の空間を第1空間28と第2空間29の左右2つの空間に区画するために設けられており、具体的には箱体20を構成する前後の側板23、24と底板22に隔壁30を接合することで、図5に示す右側の第1空間28と左側の第2空間29とに区画している。
隔壁30の上部には第1空間28と第2空間29とを繋ぐための上部開口31が形成されている。
【0016】
燃焼室40は有機性燃料1を燃焼するための空間であり、第1空間28内に配置されている。
有機性燃料1は乾留炉50に格納する被炭化物そのものを使用するのが好ましい。
有機性燃料1及び被炭化物としては有機物を含むものであれば特に限定されないが、例えば森林伐採木材、間伐材、街路樹・公園樹木の剪定廃材、建築廃木材などのチップ、鋸屑、とうもろこしやサトウキビ等の食品残渣、麦藁、稲藁などの農業廃材、繊維素を含む産業廃材等が挙げられる。また、有害物質を含まず、水分量を20%以下程度に乾燥させたものを使用するのが好ましい。
箱体20の前側の側板23には燃焼室40に燃料を投入する際に使用する燃料投入口80が形成されており、燃料投入口80は扉で開閉自在になっている。
また、箱体20の前後の側板23、24には、第1空間28内への空気の導入量を調節するための風量調整ダンパー81が取り付けられている。
【0017】
乾留炉50は内部に被炭化物を格納した状態で、その周囲から外熱式で加熱されることにより当該被炭化物を乾留・炭化するためのものであり、第2空間29内に配置されている。
乾留炉50は左右に開口を有する筒状の金属製の部材であり、その右側の開口は隔壁30に接合されることで塞がれており、左側の開口51は箱体20の左側の側板25の内面に接合されている。なお、乾留炉50の形状は特に限定されるものではなく、直方体形状や球形状等であってもよい。
被炭化物は上部が開口した有底の金属製のメッシュコンテナ90(図9参照)に入れられた状態で乾留炉50内に格納される。メッシュコンテナ90の下部には複数のキャスター91が取り付けられており、このキャスター91によって乾留炉50内に敷設されている底板52(図6参照)の上を左右方向に移動可能となっている。なお、キャスター91は無くてもよいし、また、コンテナを構成する材料はメッシュ加工を施したものでなくてもよい。
乾留炉50の右側面には、乾留炉50内から燃焼室40の燃焼箇所近傍にまで至るガス導入管53が取り付けられている。図7及び図8に示すように、ガス導入管53はその一方の端部が乾留炉50に接続されており、隔壁30を通って第1空間28内を下方に下がり、有機性燃料1を載置するテーブル82の近傍で前後に枝分かれする形状になっている。当該枝分かれ部分53aの側面には無数の開口53bが設けられており、乾留炉50内で発生した可燃性の分解ガスG2を、ガス導入管53を介してこれら開口53bから噴出させることで燃焼室40の燃焼箇所近傍に導入する仕組みになっている。
【0018】
箱体20の左側の側板25には、乾留炉50の内径とほぼ同一の径を有する開口25aが形成されており、この開口25aを封鎖するためのほぼ円形の扉25bが配置されている。扉25bはヒンジによって開閉自在な構造になっている。上述の通り、乾留炉50の左側の開口25aは箱体20の左側の側板25の内面に接合されており、この扉25bを開くことで箱体20の開口25a及び乾留炉50の開口51を介してメッシュコンテナ90を出し入れ可能になっている。すなわち、箱体20の側面に形成した扉25bと乾留炉50に被炭化物を出し入れするための扉とを共通化していることになる。このように2つの扉を共通化することで、作業者は2つの扉各々を開く場合と比較して被炭化物の出し入れが容易になる。
【0019】
第2空間29内には、上部開口31を介して第2空間29内に導入される燃焼ガスG1を当該第2空間29の上方及び下方まで至らせるための邪魔板83が配置されている。
本実施の形態では左右方向に3枚の邪魔板83a〜83cが配置されている。右側と左側の邪魔板83a、83bは箱体20の天板21及び前後の側板23、24に接合されており、その下端が乾留炉50の下端付近にまで至るように構成されている。中央の邪魔板83cは箱体20の底板22及び前後の側板23、24に接合されており、その上端が乾留炉50の上端付近にまで至るように構成されている。
【0020】
第1排気ダクト60は箱体20の天板21の上部に取り付けられており、第1空間28の上部に繋がっている。また、第2排気ダクト70も同様に箱体20の天板21の上部に取り付けられており、第2空間29の上部に繋がっている。第1排気ダクト60と第2排気ダクト70は、作業者が封鎖手段(図示略)を操作することにより自在に開放・封鎖できる構造になっている。
【0021】
また、第1空間28及び第2空間29内の温度を計測するための温度センサ(図示略)が取り付けられている。温度センサとしては例えば熱電対を用いることができる。熱電対であれば少ない消費電力で第1空間28内と第2空間29内との温度差を測定することができる。熱電対による温度差測定で必要となる電力は小型の太陽光パネル(図示略)で十分供給することができる。
通常の炭化作業中には第1排気ダクト60は封鎖、第2排気ダクト70は開放されており、作業者は第1空間28及び第2空間29内の温度を温度センサで確認しながら必要に応じて各排気ダクトを開放・封鎖している。
【0022】
次に、炭化装置10の動作及び炭化方法について説明する。
まず作業者は前側の側板23を開いた状態で、有機性燃料1を燃焼室40に配置し、ライター等の周知の着火手段により当該有機性燃料1に着火し、前側の側板23を閉じる。
有機性燃料1を燃焼して生じる燃焼ガスG1は第1空間28の上部に上昇し、上部開口31を介して第2空間29内に移動する。
【0023】
次に、燃焼ガスG1は第2空間29の上方を移動し、右側の邪魔板83aにぶつかることでその進路が下方に変更され、第2空間29の下方に移動する。上述の通り右側の邪魔板83aはその下端が乾留炉50の下端付近にまで至るように構成されているので、乾留炉50の下端付近まで下降した燃焼ガスG1は右側の邪魔板83aの下端よりも下方に至った後、当該右側の邪魔板83aと中央の邪魔板83cとに案内された状態で再び上昇して第2空間29の上方に至る。
中央の邪魔板83cの上端は乾留炉50の上端付近にまで至るように構成されているので、乾留炉50の上端付近まで上昇した燃焼ガスG1は中央の邪魔板83cの上端を超えてさらに左方向に進む。以下同様に燃焼ガスG1は左側の邪魔板83bにぶつかることでその進路が下方に変更され、第2空間29の下方に至り、左側の邪魔板83bの下端よりも下方に至った後、左側の邪魔板83bと左側の側板25とに案内された状態で第2空間29の上方に至る。
【0024】
このように高温の燃焼ガスG1が第2空間29内で上方のみに留まらないように邪魔板83を用いて上下方向への流路を設けてやることで、第2空間29内の上下の温度差が小さくなり、乾留炉50内部も上下に差がなくほぼ均等に加熱することができ、木炭の品質を均一化することができる。
【0025】
燃焼ガスG1によって乾留炉50の周囲を外熱式で加熱することで、乾留炉50内の被炭化物から可燃性の分解ガスG2が発生する。当該分解ガスG2の発生によって乾留炉50内が正圧状態になり、また、第2排気ダクト70のドラフトで誘引するので、分解ガスG2は乾留炉50内から押し出されるようにしてガス導入管53を介して第1空間28内の燃焼室40の燃焼箇所近傍に噴出する。
上述の通りこの分解ガスG2は可燃性なので、有機性燃料1の燃焼を促進させる効果がある。すなわち、一旦有機性燃料1を燃焼させた後は、乾留炉50内から導入される可燃性の分解ガスG2及び風量調整ダンパー81から供給される空気により燃焼状態が促進・継続されるので、従来の炭化装置10のように炭化作業中にバーナー等で常時加熱する場合と比較して化石燃料の使用量を大幅に抑制することができる。なお、分解ガスG2に含まれる一酸化炭素等の揮発成分は完全燃焼により清浄化される。
また、着火直後は有機性燃料1に含まれる水分等の蒸発により第2排気ダクト70から白煙が排出されるが、乾留炉50が暖まり、燃焼室40の燃焼が当該分解ガスG2により促進されるようになると煙は無色になり、その後ほとんど煙がでない状態で安定する。
【0026】
作業者は、上記温度センサで検出される温度差を目視により確認し、必要以上に温度が上昇・下降した場合には封鎖手段及び風量調整ダンパー81を操作して、第1排気ダクト60、第2排気ダクト70の開放・封鎖や、燃焼室40への空気の導入量を調節する。
なお、第1空間28内の温度が必要以上に上昇した場合には、第1空間28から第2空間29に送り込まれる燃焼ガスG1の温度が高くなり、これに伴って乾留炉50内の温度も上昇し、乾留炉50内から発生する分解ガスG2の量が増加することで第1空間28内の燃焼が促進され、第1空間28内の温度が更に上昇するといういわゆる熱暴走のおそれがある。したがって、第1排気ダクト60の天端の位置を第2排気ダクト70の天端の位置よりも高く設定するのが好ましい。これにより第1空間28内の温度が必要以上に上昇した場合等に作業者が封鎖手段を操作して、ドラフト効果により第1空間28内の気体を効率的に外部に排出し、温度を低下させることができる。
そして、所定時間が経過して乾留炉50内から分解ガスG2が発生しなくなった後、自然冷却させ、扉25bを開いて乾留炉50内からメッシュコンテナ90を取出し、木炭を得ることができる。なお、乾留炉50内の下方の温度が約400℃程度になった時点で分解ガスG2の発生量が少なくなり、炭化が完了したと判断することができる。
乾留炉50内でごく僅かに発生したタール等は乾留炉50下部に設けたドレン(図示略)で回収・廃棄することができる。
本発明の炭化装置10では、乾留炉50の周囲全体をほぼ均一且つ高温で加熱することができるので、例えば被炭化物として比重0.2〜0.3程度、直径50mm程度の伐採木を用いる場合、一回の処理量が2,500L程度で、炭化に要する時間が約5時間と従来の伝統的な炭焼きの炭化装置(数日)と比較して極めて短時間で炭化を完了することができる。
【0027】
なお、上記実施の形態では3枚の邪魔板83a〜83cを用いるものとしたが、1枚のみでもよく、あるいは邪魔板を用いない構成であってもよい。
また、第1排気ダクト60の天端の位置が第2排気ダクト70の天端の位置よりも高くなっているものとしたが、炭化装置10の設置場所の環境等によって最適なドラフトが得られるように適宜調節可能である。
また、箱体20の側面に形成した扉25bと乾留炉50に被炭化物を出し入れするための扉とを共通化することにしたが、これらを別体に設けてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明は、被炭化物を乾留して炭化する炭化装置及び炭化方法に関し、特に被炭化物を微細化することなく、また電力及び化石燃料をほとんど使用せずに乾留し炭化できる炭化装置及び炭化方法に関するものであり、産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0029】
G1 燃焼ガス
G2 分解ガス
10 炭化装置
20 箱体
28 第1空間
29 第2空間
30 隔壁
31 上部開口
40 燃焼室
50 乾留炉
60 第1排気ダクト
70 第2排気ダクト
80 燃料投入口
81 風量調整ダンパー
83 邪魔板
90 メッシュコンテナ

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9