特許第5887629号(P5887629)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5887629
(24)【登録日】2016年2月26日
(45)【発行日】2016年3月16日
(54)【発明の名称】電子部品の剥離装置
(51)【国際特許分類】
   B09B 3/00 20060101AFI20160303BHJP
【FI】
   B09B3/00 ZZAB
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2011-23802(P2011-23802)
(22)【出願日】2011年2月7日
(65)【公開番号】特開2012-161736(P2012-161736A)
(43)【公開日】2012年8月30日
【審査請求日】2014年1月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】301023238
【氏名又は名称】国立研究開発法人物質・材料研究機構
(73)【特許権者】
【識別番号】301006367
【氏名又は名称】有限会社押鐘
(74)【代理人】
【識別番号】100093816
【弁理士】
【氏名又は名称】中川 邦雄
(72)【発明者】
【氏名】原田 幸明
(72)【発明者】
【氏名】井出 邦和
(72)【発明者】
【氏名】押鐘 吉男
(72)【発明者】
【氏名】大野 悟
【審査官】 岩下 直人
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−026918(JP,A)
【文献】 特開2000−124597(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B09B 3/00
H05K 3/22,3/34
B23C 3/00
B23D 1/00
B02C 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品を基板材に搭載した実装基板から前記電子部品を剥離する装置であって、
切断刃と、
前記切断刃を固定する固定ブロックと、
前記固定ブロックに連設する駆動軸と、
前記駆動軸を上下動させる軸駆動機構と、
前記軸駆動機構に接続し前後動する移動体と、
前記実装基板を載置する基板固定床を含み前記基板材の切断刃に対する向きである前記切断刃の平坦な刃床又は前記切断刃の先端の移動面と前記基板材の表面との間の角αを2°〜15°の範囲に調節する基板角度調節機構と、
からなり、
前記移動体の移動に伴い前記軸駆動機構が水平移動しつつ前記駆動軸が収縮し、前記切断刃の先端と前記基板材との距離を一定に保たせつつ前記固定ブロックに固定された前記切断刃の先端を前記基板材の表面に沿って平行移動させ、前記電子部品の端子を前記切断刃によって切断し、前記基板材から前記電子部品を剥離することを特徴とする電子部品の剥離装置。
【請求項2】
前記基板角度調節機構が、
台に垂設された支柱と、
一端が前記支柱に回転軸を介して回動可能に接続された前記基板固定床と、
一端が前記基板固定床の背面に接続して他端が前記支柱に挿抜可能にネジで固定されるシャフトと、
からなることを特徴とする請求項1に記載の電子部品の剥離装置。
【請求項3】
前記基板固定床上における前記基板材の基板平面回転角βを任意に設定・固定する基板平面角調節機構を設けたことを特徴とする請求項1に記載の電子部品の剥離装置。
【請求項4】
前記軸駆動機構と前記移動体とが、首振り軸を介して接続し、前記軸駆動機構の前後移動を停止した上で、前記首振り軸により前記軸駆動機構を前記基板材の表裏方向に回動させることを特徴とする請求項1に記載の電子部品の剥離装置。
【請求項5】
前記固定ブロックが、自重で前記切断刃による前記端子の切断を補助することを特徴とする請求項1に記載の電子部品の剥離装置。
【請求項6】
前記固定ブロックが、前記切断刃の傾きを調整する回動させる機構を備えることを特徴とする請求項1に記載の電子部品の剥離装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用済み電子機器から有用な金属元素等を回収(リサイクル)するための基礎となる実装基板からICチップなどの電子部品を効率的に回収することができる装置に関し、より詳しくはその電子部品の形状・材質等の構成素材特性に応じて分別可能な形状を保ったまま、簡便・高効率で、基板から電子部品を剥離する電子部品の剥離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器等に使用される有用希少金属類の資源逼迫とともに、そのリサイクルの必要性が強く要望されている。しかしながら、これら電子機器に多用される電子部品を基板材に搭載している実装基板からの有用希少金属類のリサイクルについては、その高密度化・微小化に伴い手作業による分解工程を導入不能にしているのが現状である。
【0003】
また、実装基板を全破壊し、必要とする希少金属類を回収する試みも進められているが、電子機器・部品等により使用されている金属元素等の種類・使用量が種々異なるため、効率的なリサイクル工程とするためには、その第一段階として部品の種類ごとの分別作業を可能とする剥離・分解方法の確立が強く求められている。
【0004】
一方、上述の部品の種類ごとの分別を対象とした試みの一つとして、実装基板の基板材(プラスチック)を加熱・分解する方法も試みられているが、基板材の分解過程で有害物質(たとえば、ハロゲン化物)の発生を防ぐことは極めて困難であるとともに、該有害物質の除去に多大の経費を要することになる。
【0005】
さらに、加熱条件等によって異なるが、同処理により回収される電子部品の形状は常に原形を留めているとは言い難く、しかも加熱に誘起される物理・化学変化によって電子部品に含まれる有用物質の揮発や変質が生じ、リサイクルに際しての大きな障害となることも想定される。
【0006】
この他の方法として、有機溶剤等を用いて基板材を軟化あるいは溶解して電子部品を回収する方法も試みられているが、基板材を軟化あるいは溶解可能な溶剤およびその処理条件等は基板材の材質によって異なっており、多種類の実装基板が混在する場合のリサイクルに際しては予め基板材の材質の確認・分別が必要となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は、上述のような実装基板からの希少金属類のリサイクル工程における問題点を解決するもので、使用済み電子機器から有用な金属元素等を回収するための基礎となる実装基板からICチップなどの電子部品の形状・材質等の構成素材特性に応じて分別可能な形状を保ったまま、簡便・高効率かつ高速で、基板から電子部品を剥離する電子部品の剥離装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するために、(1)電子部品を基板材に搭載した実装基板から前記電子部品を剥離する装置であって、前記電子部品の端子を切断刃の移動によって切断し、前記基板から前記電子部品を剥離することを特徴とする電子部品の剥離装置の構成とした。(2)前記切断刃の先端を前記基板材の表面に沿って平行移動させることを特徴とする(1)に記載の電子部品の剥離装置の構成とした。
【0009】
(3)前記基板材の表面を前記切断刃の先端の移動面と平行に固定する基板固定床を設けたことを特徴とする(1)又は(2)に記載の電子部品の剥離装置の構成とした。(4)前記基板材の表面を切断刃の刃床に対して任意の角度に保持する基板角度調節機構を設けたことを特徴とする(1)〜(3)の何れかに記載の電子部品の剥離装置の構成とした。
【0010】
(5)前記基板固定床上における前記基板材の平面回転角を任意に設定・固定する基板平面角調節機構を設けたことを特徴とする(1)〜(4)の何れかに記載の電子部品の剥離装置の構成とした。
【0011】
(6)前記切断刃を軸を介して前記軸の両方向に移動可能にする軸駆動機構を設けたことを特徴とする(1)〜(5)の何れかに記載の電子部品の剥離装置の構成とした。(7)前記軸駆動機構を前記基板の表裏方向に回動させる首振り機構を設けたことを特徴とする(6)に記載の電子部品の剥離装置の構成とした。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、電子部品の端子を切断刃の移動、より詳しくは端子切断刃の先端を基板材の表面と平行に移動させることにより、端子の高速切断が可能であるとともに、効果的で、かつ原形を留めたまま端子を切断された電子部品を回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本発明である電子部品の剥離装置の一例の模式図である。
図2図2は、切断刃固定ブロックに設けられた切断刃角度調節機構の一例の模式図である。
図3図3は、基板平面回転角調節機構の概念図である。
図4】基板平面回転角βを0°とした場合の切断刃移動距離ごとの切断負荷(Kgf)グラフである。
図5】基板平面回転角βを4°とした場合の切断刃移動距離ごとの切断負荷(Kgf)グラフである。
図6】基板平面回転角βを7°とした場合の切断刃移動距離ごとの切断負荷(Kgf)グラフである。
図7】基板平面回転角βを14°とした場合の切断刃移動距離ごとの切断負荷(Kgf)グラフである。
図8図4図7のグラフを1の図にまとめた図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図1〜3を参照して、本発明である電子部品の剥離装置の具体的な構成をより詳しく説明する。なお、本発明は、ここに例示した形態に限定されものではなく、発明の技術的範囲に属する他の形態を包含するものである。
【0015】
図1に示す電子部品の剥離装置20は、切断刃1と、切断刃1を固定する固定ブロック3と、固定ブロック3に連設する駆動軸5と、駆動軸5を上下動させる軸駆動機構12と、軸駆動機構12に接続し前後動する移動体15と、実装基板6を載置する基板固定床8を含み基板6の切断刃1に対する向きを調節する基板角度調節機構9とからなる。
【0016】
さらに、基板固定床8には、基板固定床8上で基板6を水平方向に回転させて位置固定する基板平面角調節機構10、移動体15を支点に軸駆動機構12を前後方向に回動可能にする首振り軸14を備えてもよい。
【0017】
切断刃1は、図1、2では、平らな刃床1aを有し、切断刃1の先端面が刃床1aに対して水平な片刃のものを固定ブロック3にネジ2で固定したものを例示したが、切断刃1はこの形状に限定されるものではなく、切断刃1の先端面が斜めであってもよいし、また回転体などであってもよい。
【0018】
固定ブロック3は、上下に駆動する駆動軸5に連設され、その自重で切断刃1による端子7aの切断を補助する。また、図2を参照して後述するように、破線両矢印方向に回動させる機構を備えてもよい。
【0019】
駆動軸5は、それ自体が上下動して、切断刃1を上下動させる装置である。軸駆動機構12は、駆動軸5を上下動させる駆動装置であり、エアーシリンダーなどが例示できる。
【0020】
移動体15は、台16などに敷設されたレール13上をスライドする部材で、軸駆動機構12に連設され、移動体15の移動に伴い軸駆動機構12を水平に移動させる。また、移動体15と軸駆動機構12との接続に際して、軸駆動機構12を移動体15を支点に前後動できるように、首振り軸14を介在させてもよい。
【0021】
基板角度調節機構9は、台9aに垂設された支柱9bと、一端が支柱9bに回転軸8aを介して回動可能に接続された基板固定床8と、一端が基板固定床8背面に接続して他端が支柱9bに挿抜可能にネジ9dなどで固定されるシャフト9cとからなる。シャフト9cの支柱9bへの固定位置を変更することにより、切断刃1の先端の移動面と基板固定床8の面の傾きを変更することができる。
【0022】
なお、基板固定床8の面の傾きを調節する手段は、図1に例示に限定されるものではなく、基板固定床8の面の傾きを所望の位置で固定することができれば、どのような手段を選択してもよい。なお、基板平面角調節機構10については、図3を参照して後述する。
【0023】
ここで、刃床1a又は切断刃の先端の移動面と基板材6aの表面との間の角αは、切断刃1の形状、移動・駆動条件、対象部材の材質等によって種々変化するため一義的に定められないが、図1、2に示した最も単純な刃先形状の一つである平らな刃床1aを有する片刃の場合、切削時の逃げ角の観点から、大略数度〜15°の範囲が望ましい。
【0024】
また、軸駆動機構12を前後に移動させる移動体15及びレール13は、切断の進行とともに変化する切断刃1と基板材6aの表面間の距離を補正するために設けられた機構である。なお、切断距離が短く、かつ刃床1aと基板材6aの表面との間の角αが前述の逃げ角の範囲内であれば、移動体15のレール上のスライドによる軸駆動機構12の前後動を停止し、首振り軸14を支点にした軸駆動機構12の前後動(牽引ゴム紐等を利用した前後動等)に代替することが可能である。
【0025】
このようにしてなる電子部品の剥離装置20は、切断刃1を基板固定床8に載置された基板6の上端部から下端部に、駆動軸5の収縮によって移動させる。そのとき、移動体15がレール13上をスライドして駆動軸5を伸縮させる軸駆動機構12を基板6の表面方向に移動して、切断刃1の先端と基板材6aとの距離を一定に保たせることができる。破線が、切断刃1が基板6の末端に端子を切断しながら移動した後の各構成の位置である。また、破線両矢印は、回動或いは移動方向を示す。
【0026】
なお、図示していないが、実装基板6の基板固定床8への固定方法としては、一般的に使用されている減圧吸引固定あるいは実装基板への外部押圧力の付与等の単独あるいは併用を利用することが可能である。
【0027】
図2に、切断刃固定ブロック3に設けられた切断刃1の角度を調節する切断刃角度調節機構の一例の模式図を示した。当該、切断刃角度調節機構は、駆動軸5の径より大きな径の孔3aが穿設された固定ブロック3に挿通する回転軸4に、上下動する駆動軸5の一端を孔3a内で接続し、ネジ3cで固定ブロック3を回転軸4に固定して、固定ブロック3の回動を止め、切断刃1の傾きを調節するものである。
【0028】
孔3aは、駆動軸5よりも大きな径をしているため、孔3a内で駆動軸5が移動させるスペース3bを形成することができ、固定ブロック3の回動を許容する。破線は、固定ブロック3、ネジ3c及び切断刃1を回動させたときの位置を示す。
【0029】
当該、切断刃角度調節機構は、図1に示した基板角度調節機構9と同様に、刃床1aと基板材6aの表面との間の角αを調整できるものである。なお、この切断刃1の角度調節機構と基板角度調節機構9はそれぞれ補完する機能であり、対象とする被切断基板6によって単独あるいは併用して切断刃1の角度(α)調節が可能である。
【0030】
図3に、基板平面回転角調節機構の概念図を示した。図3(A)が基板6を載置する面から見た基板固定床8の平面図、図3(B)は図3(A)のA−A‘断面、図3(C)は図3(B)のB−B’断面図である。
【0031】
基板平面角調節機構10は、図3(C)にあるように、基板固定床8の最下部をL字に張りだし、その先端上方に突起8cを設け、間隙8bを形成するとともに、間隙8bの底部に所定間隔で複数の溝11を有する基板6の支持体である。間隙8bに基板6の基板材6aの平らな側面を嵌めてもよい。溝11に基板材6aコーナー部を挿入することにより、基板6を基板固定床8の面上で水平方向に回転させ固定することができる。そして、基板材6aの側面と基板固定床8の底辺(=切断刃1の先端)とに任意の基板平面回転角(β=0°〜45°:ただし、0度の場合は間隙不使用)を付与するものである。その結果、ICチップ7などの電子部品の端子7aの列と切断刃1の先端に任意の角βを形成することができる。
【0032】
基板平面角調節機構10の役割は、基板材6aの上に整列配置されている電子部品の端子7aの切断に際し、切断刃1の進入方向(切断方向)を被切断端子7aの整列面に対して傾け、単位切断面当たりの切断に必要な切断負荷(応力)を低減することにある。
【0033】
また同時に、このように切断方向を被切断端子7aの整列面に対して傾けた場合、単純な「押切り」の場合とは異なった一種の「引切り」効果が発生するため、より一層の切断応力の低減が期待できる。なお、このような切断応力の低減は、切断の高速化・効率向上などとともに、基板材6aの変形やそれに伴う破損などを防止する上で極めて重要なファクターである。
【0034】
また、基板平面回転角βの調節に際し、基板材6aの下部コーナーを所定の溝11に挿入・固定する方式は、挿入された縦横両側面部が一種の楔としての機能を発現するため、上方からの切断応力に対して基板6の横ずれ、変形等を極めて効果的に防止することができるものである。
【0035】
なお、上述の基板6の横ずれ、変形等の恐れがない場合、あるいはそれらを防止する機構(サイドストッパーの設置等)がある場合には、基板材6aの下部端面を支える基板平面角調節機構10あるいは基板固定床8全体を切断刃1の先端面に対して有意な角度を与えることにより同様な効果が期待できるものである。
【実施例1】
【0036】
刃床1aと基板材6aの表面との間の角αの効果を検証した。この試験には、図1の電子部品の剥離装置20を用いた。そして試験に供した実装基板の大きさは52.5mm×70mmで、6ピンの端子を2列有する電子部品(7.41mm×18.7mm)が2列×2列配置されたものである。
【0037】
使用した切断刃1を保持する固定ブロック3の自重は5Kgで、切断刃1を移動させる軸駆動機構12としてエアーシリンダーを使用した。なお、この試験では、切断刃1の移動距離が短いことを考慮し、軸駆動機構12を移動させる移動体15をレールに固定して、首振り軸14を介した軸駆動機構12の前後動方式を採用するとともに、基板平面回転角βは0°とした。
【0038】
刃床1aと基板材6aの表面との間の角αを0°〜8°の範囲で2°間隔で変化させた場合の試験結果(剛性圧力(Mpa))を表1に示した。
【0039】
【表1】
【0040】
切断刃角度α=0°の場合は、最終的には切断刃1が電子部品を乗り越えて終了した。従って切断が不良であったのでNGとした。一方、α=2°〜8°の範囲の場合では、いずれも端子7aの切断は完了した。
【0041】
そして、切断開始時の剛性圧力(Mpa)についてみると、αの増大とともにその値は低下するが、α=6°を境にして再び上昇する傾向を示した。これらの結果から判るように、端子7aの切断の可否に対して、一種の逃げ角と見做すことの出来るαの付与の有無が重要な関係を有している。また、低い剛性圧力で切断を開始するためにはα値をある範囲(この場合は大略4°〜8°)に設定することが効果的である。
【実施例2】
【0042】
基板平面回転角βの効果を検証した。この試験には、図1〜3の電子部品の剥離装置20を用いた。供した実装基板の大きさは52.5mm×70mm、7ピンの端子を2列有する電子部品(7.41mm×18.7mm)が3列×2列配置されたものである。
【0043】
試験に使用した機器ならびに切断刃1の移動・駆動方法等の条件は実施例1と同じである。なお、刃床1aと基板材6aの表面との間の角αは6°に固定した。そして、基板平面回転角β(平面角)は0°〜14°の範囲で変化させた場合の試験結果を表2および図4〜8に示した。
【0044】
なお、表2における最大切断負荷(kgf)は、図4〜7に見られるような切断刃1による端子7a切断時における切断負荷(kgf)の最大値を示したものである。
【0045】
【表2】
【0046】
試験の結果では、基板材6a上に配列している電子部品の端子7aの列と切断刃1の先端が平行となるβ=0°における切断負荷に比べ、電子部品の端子7aの列と切断刃1の先端が平行とならないβ=4°以上における最大切断負荷はいずれも約1/4に低下した。このことから、電子部品の端子7aの列を切断刃1の先端と平行な位置から有意な角度に回転させることが電子部品の端子7aの切断負荷の低下に極めて有効である。
【0047】
なお、電子部品切断に際しての有効な基板平面回転角βの値は、実装基板のサイズや形状、電子部品の配列形態や搭載密度などによって異なるため一義的に定められないが、実用的には大略5°〜15°の範囲が効果的である。
【0048】
実施例1、2の結果から明らかなように、本発明である電子部品の剥離装置を使用することにより、電子部品の原形を留めたまま簡便で高速かつ経済的に、電子部品を剥離、回収することができる。従って、本発明は、希少金属等の再資源化に大いに資するものと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
以上詳しく説明した通り、本発明によれば、実装基板上の電子部品をその原形を留めたまま簡便で高速かつ経済的に電子部品を剥離、回収することできる。現代社会を支える根幹に横たわる電子機器類には、いわゆる希少金属と呼ばれるような物質が多用されているが、近年それらの物質は世界的に資源そのものの枯渇が取りざたされている。言うまでもなく電子部品はそれらの物質が濃縮されたものであり、そのリサイクルに対し、本発明は極めて大きな波及効果を及ぼすものと考えられる。
【符号の説明】
【0050】
1 切断刃
1a 刃床
2 ネジ
3 固定ブロック
3a 孔
3b スペース
3c ネジ
4 回転軸
5 駆動軸
6 基板
6a 基板材
7 ICチップ
7a 端子
8 基板固定床
8a 回転軸
8b 間隙
8c 突起
9 基板角度調節機構
9a 台
9b 支柱
9c シャフト
9d ネジ
10 基板平面角調節機構
11 溝
12 軸駆動機構
13 レール
14 首振り軸
15 移動体
16 台
20 電子部品の剥離装置
【先行技術文献】
【特許文献】
【0051】
【特許文献1】特開2011−574号公報
【特許文献2】特開2009−125934号公報
【特許文献3】特開2000−228578号公報
【特許文献4】特開2001−308515号公報
【特許文献5】特開平09−271748号公報
【特許文献6】特開2007−92138号公報
【特許文献7】特開2003−181414号公報
【非特許文献】
【0052】
【非特許文献1】「基板リサイクルの過去・現在」:TOKYO(MRB.ne.jp),2010-05-03
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8