(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5887652
(24)【登録日】2016年2月26日
(45)【発行日】2016年3月16日
(54)【発明の名称】熱検知装置および熱検知ユニット
(51)【国際特許分類】
G01K 7/00 20060101AFI20160303BHJP
G01K 1/14 20060101ALI20160303BHJP
【FI】
G01K7/00 311
G01K1/14 L
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-9264(P2012-9264)
(22)【出願日】2012年1月19日
(65)【公開番号】特開2013-148469(P2013-148469A)
(43)【公開日】2013年8月1日
【審査請求日】2014年12月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000190301
【氏名又は名称】新コスモス電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107308
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 修一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100126930
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 隆司
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健吾
【審査官】
深田 高義
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭53−142075(JP,U)
【文献】
特開2000−275110(JP,A)
【文献】
特開2001−304975(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01K 7/00
G01K 1/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定温度以上となったときに通電状態となるサーモスタットと、電力を供する電池部と、通電状態となった場合に信号を発信する発信手段と、を備えた回路を有し、
前記電池部を内部に収容し、前記サーモスタットが内面に隣接し、かつ取付対象物に密着して取り付け可能な取付け部を外面に形成したケーシングを備え、前記発信手段は、当該発信手段が発した信号を前記ケーシングの外部から識別できるように備えた熱検知装置。
【請求項2】
前記ケーシングの内部において、前記サーモスタットおよび前記電池部は断熱材を隔てて備え、前記取付け部の側から順に前記サーモスタット、前記断熱材および前記電池部を備えた請求項1に記載の熱検知装置。
【請求項3】
前記発信手段が赤外線を発する赤外線LEDであり、当該赤外線LEDは、前記ケーシングに形成した開口部から突出するように配設してある請求項1又は2に記載の熱検知装置。
【請求項4】
所定温度以上となったときに通電状態となるサーモスタットと、電力を供する電池部と、通電状態となった場合に信号を発信する発信手段と、を備えた回路を有し、
前記電池部を内部に収容し、前記サーモスタットが内面に隣接し、かつ取付対象物に密着して取り付け可能な取付け部を外面に形成したケーシングを備え、
前記発信手段は、当該発信手段が発した信号を前記ケーシングの外部から識別できるように備えた熱検知装置を備え、さらに、
前記発信手段からの信号を受信可能な受信手段と、前記受信手段が前記発信手段の信号を受信したときに警報を発する警報手段と、を備えた熱検知ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気機器などの異常発熱を感知する熱検知装置および当該熱検知装置を備えた熱検知ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電気機器などの異常発熱を感知するため、当該電気機器の近傍に設置する熱検知装置が知られていた。当該電気機器としては、例えば屋内のコンピュータサーバーや受配電盤・動力盤・分電盤・変圧器盤及び制御盤などが挙げられる。例えばコンピュータサーバーの異常発熱はCPUなどからの熱によって部品の耐熱性が低下するなどの原因で発生する。熱検知装置は、上述した盤内にある遮断機・変圧器や、これら回路構成部品とケーブルとの接続部分の異常発熱を検知する。
【0003】
これら回路構成部品とケーブルとの接続部分において、当該接続部分のネジの緩みや設計上の許容範囲を超える負荷の変動が原因で異常発熱が発生する虞があり、当該異常発熱の発見が遅れると火災に至る虞がある。また、このような異常発熱は長期間に渡り緩やかに進行するケースが多い。
【0004】
上述した異常発熱を検出して通報する有効な手段として、レーザー式の高感度煙感知器が公知であるが、当該レーザー式の高感度煙感知器は高価であるため一般の配電盤などには普及していない。そのため、上記の異常発熱に伴う異常個所を未然に発見するべく、定期的な巡回検査が行われたり、異常発熱時にケーブルの被覆材などから揮発するガス成分を半導体式ガスセンサで検知する警報装置を設置したりしている。
【0005】
他に上記の異常発熱を検知する装置としては、例えば感熱カプセルなどの熱検知装置が知られており、この感熱カプセルは例えば小型の円盤状に形成され、金属製のケーシングの内部に液状のニオイ物質を封入しており、当該ニオイ物質は低融点ハンダで封印していた。感熱カプセルが電気機器の異常発熱によって加熱されて所定温度に達すると、ニオイ物質を封印していた低融点ハンダが溶け、封入されているニオイ物質が外部に放散される。このようにして放出されたニオイ物質をニオイ検知器で検知することにより、電気機器などの異常発熱を感知できる。
【0006】
このような感熱カプセルでは、低融点ハンダが溶融する温度によって感熱カプセルの動作温度(例えば80〜120℃)を種々規定することができる。また、当該感熱カプセルは、例えば直径15mm、高さ7mm程度のサイズを有する円盤状を呈しており、小型に形成できるため、設置場所はとらない。
【0007】
尚、上述した警報装置や感熱カプセルは広く公知であるため、特許文献等の従来技術文献は示さない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述した警報装置を使用した異常発熱の検知においてケーブルの被覆材などから揮発するガス成分や、上述した感熱カプセルにおいて動作温度に達したときに感熱カプセルから放出されたニオイ物質は、気流が発生する等の設置場所によっては警報装置や感熱カプセルで確実に検出できない虞がある。そのため警報装置や感熱カプセルは検知ムラがあり、検知精度が低い場合があった。
【0009】
従って、本発明の目的は、小型かつ簡易な構成で設置場所に制限されず、確実に異常発熱を検知できる熱検知装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための本発明に係る熱検知装置の第一特徴構成は、所定温度以上となったときに通電状態となるサーモスタットと、電力を供する電池部と、通電状態となった場合に信号を発信する発信手段と、を
備えた回路を有し、前記電池部を内部に収容し、前記サーモスタットが内面に隣接し、かつ取付対象物に密着して取り付け可能な取付け部を外面に形成したケーシングを備え、前記発信手段は、当該発信手段が発した信号を前記ケーシングの外部から識別できるように
備えた点にある。
【0011】
本発明の熱検知装置は、サーモスタット、電池部、発信手段といった回路を構成する部材をケーシングに収容することによって形成される。このように本発明の熱検知装置は、少ない部品数で構成することができるため、小型かつ簡易な構造で発熱を検知する対象物である取付対象物の熱を検知できる。
【0012】
また、本発明の熱検知装置は電池部を内蔵するため配線が不要となり、熱検知装置の設置場所が制限されることは殆ど無い。
【0013】
本発明の熱検知装置は、取付け部によって取付対象物に密着して取り付けることができる。当該取付対象物が異常発熱をした場合、取付対象物が発する熱は取付け部およびケーシングを介してサーモスタットに伝わる。
本構成では、ケーシングの内面側にサーモスタットを隣接して設け、外面側に取付け部を設けるため、取付対象物と密着する取付け部から伝わった熱を、ケーシングを介して当該ケーシングに隣接するサーモスタットに直ちに伝えることができるため、感熱性に優れた熱検知装置とすることができる。このとき、サーモスタットが所定温度以上となれば回路を通電状態にして、発信手段が信号を発する。当該信号を外部において識別することにより、取付対象物の異常発熱を検知することができる。
このように本発明の熱検知装置は、従来の感熱カプセル等のようにニオイ物質の検知の有無で熱を検知するものではないため検知ムラは殆どなく、確実に異常発熱を検知できる。
【0014】
本発明に係る熱検知装置の第二特徴構成は
、前記ケーシングの内部において、前記サーモスタットおよび前記電池部は断熱材を隔てて
備え、前記取付け部の側から順に前記サーモスタット、前記断熱材および前記電池部を備えた点にある。
【0015】
本構成によれば
、取付け部の側から順に前記サーモスタット、断熱材および電池部を配設して、断熱材における取付け部(取付対象物)の側にサーモスタットを設け、その反対側に電池部を設けることができる。
【0016】
これにより、電池部を、取付対象物からある程度離間させ、かつ断熱材によって隔てて配置できるため、当該電池部に対して取付対象物から伝わる熱の影響を抑制することができる。例えば電池部として熱に弱いリチウムイオン電池を使用した場合であっても、本構成では、当該リチウムイオン電池に対して熱の影響が少ない状況で熱検知を行なうことができる。
【0017】
本発明に係る熱検知装置の第三特徴構成は、前記発信手段が赤外線を発する赤外線LEDであり、当該赤外線LEDは、前記ケーシングに形成した開口部から突出するように配設した点にある。
【0018】
本構成によれば、赤外線LEDを開口部から突出させているため、赤外線LEDから発した信号を広い範囲にわたって発信することができ、当該信号を識別し易くなる。
【0019】
本発明に係る熱検知ユニットの第一特徴構成は、所定温度以上となったときに通電状態となるサーモスタットと、電力を供する電池部と、通電状態となった場合に信号を発信する発信手段と、を
備えた回路を有し、前記電池部を内部に収容し、前記サーモスタットが内面に隣接し、かつ取付対象物に密着して取り付け可能な取付け部を外面に形成したケーシングを備え、前記発信手段は、当該発信手段が発した信号を前記ケーシングの外部から識別できるように
備えた熱検知装置を備え、さらに、前記発信手段からの信号を受信可能な受信手段と、前記受信手段が前記発信手段の信号を受信したときに警報を発する警報手段と、を備えた点にある。
【0020】
本構成によれば、取付対象物の異常発熱が発生した際に熱検知装置によって発せられた信号は、受信手段によって受信され、警報手段が警報を発することにより、使用者が取付対象物の異常発熱を確実に認識することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
本発明の熱検知装置は、例えば電気機器のコードの異常発熱などを検知する。
図1〜2に示したように、本発明の熱検知装置Xは、所定温度以上となったときに通電状態となるサーモスタット1と、電力を供する電池部2と、通電状態となった場合に信号を発信する発信手段4と、を設けた回路Cを有する。
サーモスタット1および電池部2はケーシング3の内部に収容され、発信手段4は、当該発信手段4が発した信号を前記ケーシングの外部から識別できるように配設してあり、さらに、取付対象物Tに密着して取り付け可能な取付け部5がケーシング3の外面に形成してある。
【0023】
サーモスタット1は、温度によって回路Cの通電状態を制御できるものであればよく、公知の様々の手段で構築することが可能である。例えば、熱膨張率が異なる2枚の金属板を貼り合わせたバイメタルによるもの、形状記憶合金による機械式検知によるもの、ワックス粒の膨張によるもの、サーミスタによる電気式検知によるもの、熱電対による電気式検知によるもの等が挙げられるが、これに限られるものではない。特にバイメタルによるサーモスタットであれば当該サーモスタット自体を小型に構成することができるため、結果として熱検知装置Xを小型にすることができる。
【0024】
サーモスタット1が作動する温度(回路Cをオフ状態からオン状態に制御する温度)は、発熱を検知する対象物である取付対象物Tが異常発熱と判断される温度、或いはその近傍の温度とすればよい。例えば当該取付対象物Tが耐熱樹脂製の電気ケーブルである場合、当該ケーブルの耐熱温度は、概ね120℃程度である。そのためサーモスタット1が作動する温度が100〜120℃程度となるように当該サーモスタット1を構成するとよい。
【0025】
サーモスタット1はNO(ノーマルオープン)型を使用するのがよい。当該NO型であれば正常時は電池を消耗しないため、長期に亘る熱検知が可能となる。
【0026】
電池部2は、回路Cに電源を供給できるものであればどのような態様であってもよく、例えば、ボタン型のリチウムイオン電池などが使用できる。
【0027】
発信手段4は、回路Cが通電状態となった場合に信号を発信することができるもの、例えば信号として赤外線を発するもの、可視光を発するもの、電波を発するもの等が挙げられるがこれらに限られるものではない。本実施形態では、発信手段4として赤外線を発する赤外線LED(発光ダイオード)を使用する場合について説明する。当該赤外線LED4は、例えば700〜2500nmの波長の近赤外線を照射する近赤外線LEDを使用するとよい。近赤外線LEDは十分な光量を有し、消費電力が少なく、比較的安価であり、さらに、寿命が長い。
【0028】
ケーシング3は、例えば熱伝導性および耐熱性に優れた材料で構成するとよい。このような材料としては例えば金属が挙げられるが、これに限られるものではない。当該金属は、鉄、銅、合金など、ケーシングとして使用し得る公知の金属であれば特に限定されるものではない。本実施形態では金属製のケーシング3とした場合について説明する。
ケーシング3には、回路Cを構成する部材のうち、少なくともサーモスタット1および電池部2をその内部に収容できる収容空間32を形成する。
ケーシング3は、例えば円柱型、円盤型、直方体などの公知の形状に成型すればよい。例えば円盤型の場合、直径10〜15mm、高さ5〜10mm程度のサイズとすれば、小型の熱検知装置Xに構成できる。
【0029】
ケーシング3には開口部31が形成してあり、本実施形態では、赤外線LED4などを配設した回路基板6によって当該開口部31を塞いでいる。赤外線LED4は開口部31から突出するように、回路基板6の外方側に配設してある。回路基板6には、赤外線LED4のほか、サーモスタット1、電池部2、その他の回路部品(抵抗など)61が接続している。
赤外線LED4を開口部31から突出するように設けると、当該赤外線LED4から発した信号を広い範囲にわたって発信することができるため、当該信号を識別し易くなる。
【0030】
ケーシング3の外面には、取付対象物Tに密着して取り付け可能な取付け部5が形成してある。当該取付け部5は、取付対象物Tに密着して取り付け可能にできる態様であればどのような手段を用いてもよい。例えば、熱検知装置Xを取付対象物Tに対して、粘着力によって取付ける態様、磁力によって取り付ける態様、凹凸どうしの嵌合によって取り付ける態様など、公知の取付け手段を適用することができる。本実施形態では、上記粘着力による取り付けができるように、取付け部5に粘着剤を塗布した場合について説明する。
【0031】
サーモスタット1および取付け部5はケーシング3を隔てて配設してある。本実施形態では、ケーシング3の内面側にサーモスタット1を設け、外面側に取付け部5を設ける。これにより、取付対象物Tと密着する取付け部5から伝わった熱を、熱伝導性の優れた金属製のケーシングを介して当該ケーシング1に隣接するサーモスタット1に直ちに伝えることができるため、感熱性に優れた熱検知装置Xとすることができる。
【0032】
また、本実施形態では、ケーシング3の内部において、サーモスタット1および電池部2は断熱材7を隔てて配設する。断熱材7は、その表裏において熱伝導性の低いものであればよく、例えばガラス繊維を使用したもの、発泡スチロールを使用したもの等が使用できる。
本構成では、断熱材7における取付け部5(取付対象物T)の側にサーモスタット1を設け、その反対側に電池部2を設けることができる。これにより、電池部2を取付対象物Tからある程度離間させ、かつ断熱材7によって隔てて配置できるため、当該電池部2に対して取付対象物Tから伝わる熱の影響を抑制することができる。
【0033】
尚、本実施形態では、断熱材7には、サーモスタット1と回路基板6とを接続する配線8を挿通させる孔部71が形成してある。
【0034】
図3に示したように本発明の熱検知ユニットYは、上述した熱検知装置Xと、発信手段4からの信号を受信可能な受信手段9と、受信手段9が発信手段4の信号を受信したときに警報を発する警報手段10と、を備える。
【0035】
受信手段9は、発信手段4からの信号を受信可能な手段であるため、発信手段4の態様に対応した手段によって構成する。本実施形態では発信手段として赤外線LED4を使用しているため、当該赤外線LED4から照射された近赤外線を受信できる赤外線検出手段、例えばフォトダイオードやフォトトランジスタ等を用いるとよい。
【0036】
警報手段10は、例えばランプの点滅や音声により警報を発するように構成するとよい。当該警報手段10は、赤外線LED4からの信号を受信した時間が所定時間以上であれば警報を発するように制御してもよい。
【0037】
本発明の熱検知装置Xは、取付け部5によって取付対象物Tに密着して取り付けることができる。当該取付対象物Tが異常発熱をした場合、取付対象物Tが発する熱は取付け部5およびケーシング3を介してサーモスタット1に伝わる。このとき、サーモスタット1が所定温度以上となれば回路Cを通電状態にして、赤外線LED4が信号(赤外線)を発する。当該信号は、受信手段9によって受信され、警報手段10が警報を発することにより、使用者が取付対象物の異常発熱を確実に認識することができる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明の熱検知装置および熱検知ユニットは、電気機器などの異常発熱を感知するために利用できる。
【符号の説明】
【0039】
C 回路
X 熱検知装置
Y 熱検知ユニット
T 取付対象物
1 サーモスタット
2 電池部
3 ケーシング
31 開口部
4 発信手段
5 取付け部
7 断熱材
9 受信手段
10 警報手段