特許第5887661号(P5887661)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5887661
(24)【登録日】2016年2月26日
(45)【発行日】2016年3月16日
(54)【発明の名称】ドロス除去装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/70 20140101AFI20160303BHJP
【FI】
   B23K26/70
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-285764(P2012-285764)
(22)【出願日】2012年12月27日
(65)【公開番号】特開2014-124685(P2014-124685A)
(43)【公開日】2014年7月7日
【審査請求日】2014年8月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】507351850
【氏名又は名称】育良精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092093
【弁理士】
【氏名又は名称】辻居 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103609
【弁理士】
【氏名又は名称】井野 砂里
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100168871
【弁理士】
【氏名又は名称】岩上 健
(72)【発明者】
【氏名】廣澤 清
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 隆三
(72)【発明者】
【氏名】曽根 栄二
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 憲治
【審査官】 山崎 孔徳
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−086248(JP,A)
【文献】 実開昭52−164660(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00−26/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の板が平行に立設されたレーザ加工機のワークサポートの前記各板の上縁部に沿って前後移動させることによって、ワークサポートに付着したドロスを除去するためのドロス除去装置であって、
このドロス除去装置を前記各板の上縁部に沿って案内するための案内部と、
上下方向に往復動してドロスを除去する複数のニードルを備え、前記案内部の上方に設けられたタガネと、
操作者が持って前記ドロス除去装置を操作するための操作ハンドル部とを有し、
前記案内部は、前記前後方向に対して横方向の断面における内面形状の上部連続的に湾曲し且つ下方に開放した馬蹄形の筒形であり、且つ、上壁に前記複数のニードルを挿通させる開口が形成されている、ことを特徴とするドロス除去装置。
【請求項2】
前記案内部の前端側内周縁部及び後端側内周縁部はそれぞれ、前端及び後端に向かって大きく開口するように内面が湾曲している、ことを特徴とする請求項1に記載のドロス除去装置。
【請求項3】
前記タガネは異なる長さのニードルを備える、ことを特徴とする請求項1又は2に記載のドロス除去装置。
【請求項4】
更に、前記タガネを保持するためのタガネ保持部を有し、
前記タガネ保持部は、前記タガネを前記前後方向に第1の回動軸線を中心として回動可能に前記案内部に連結され、
前記操作ハンドル部は、前記第1の回動軸線と平行な第2の回動軸線を中心として回動可能に前記タガネ保持部に取付けられている、ことを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載のドロス除去装置。
【請求項5】
前記タガネは、前記タガネ保持部に対して上下方向に所定範囲内で移動可能に、前記タガネ保持部に保持されている、ことを特徴とする請求項4に記載のドロス除去装置。
【請求項6】
前記操作ハンドル部は、操作者によって持たれる部分にクッション材を備えている、ことを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載のドロス除去装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドロス除去装置に係わり、特に、レーザ加工機によって加工するワークを載置する板状のワークサポートに付着したドロスを除去するためのドロス除去装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、レーザ加工機によって被加工物である金属板(ワーク)を加工する際、ワークをワークサポートの上に載置する。より詳細には、このワークサポートにおいては、上縁が鋸歯状に形成された複数の細長い長方形の板材が所定間隔で並設されており、各板材の鋸歯の頂点部分でワークが支持される。このように、ワークとワークサポートとの接触面積を小さくすることにより、レーザ加工時にワークが溶融することにより生じた溶融物(ドロス)をワークの下方に落下させることが可能になっている。
【0003】
レーザ加工を繰り返すにしたがって、ドロスがワークサポートの上縁や側面に堆積すると、ドロスがワークの下方に落下し難くなったり、堆積したドロスにレーザ光が照射されることにより加工不良が発生したりする等の問題が発生する。この場合、ワークサポートを交換する必要が生じる。
【0004】
しかしながら、ワークサポートを交換するには、新たなワークサポートの製作や交換作業が必要になるため、コストの増大を招く。そこで、ワークサポートの使用可能期間を長期化してコスト低減を図るという観点から、ワークサポートの清掃が行われる場合がある。
例えば、特許文献1には、ワークサポートを清掃するワークサポート清掃装置が記載されている。このワークサポート清掃装置は、複数の針を別々に往復動させる機構を含む自動高速多針タガネが固定された清掃装置本体を備えている。清掃装置本体にはベースプレートが取り付けられており、このベースプレートに形成された開口を貫通してベースプレートの下側に針が露出するようになっている。また、ワークサポート上における清掃装置本体の移動を案内する一対の案内板が、ベースプレートの開口を挟んで対峙するようにベースプレートの下側に設けられている。さらに、清掃装置本体の操作用の取手が清掃装置本体に固定されている。
操作者が、一対の案内板でワークサポートを挟むようにしてベースプレートをワークサポートの上に載せ、自動高速多針タガネの針を往復動させると、針がワークサポートに衝突することにより、ワークサポートに付着しているドロスが剥離する。操作者は、取手を用いて清掃装置本体をワークサポートに沿って前後に移動させることによって清掃作業を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−86428号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述したような従来のワークサポート清掃装置では、平板状のベースプレートの底面に一対の平板状の案内板が固定された構造とされ、操作者が、一対の平板状案内板の間の左右に規制された範囲内で、ベースプレートをワークサポートの上縁面上で動かす構造とされ、基本的に、その左右の範囲内において、多針タガネによりドロスに衝撃を与えて除去するように構成されている。また、上記の従来のワークサポート清掃装置では、ベースプレートに対して多針タガネが垂直に固定されており、多針タガネの針の上下運動が、基本的に、ワークサポートに対して直角方向に規制された構成とされている。
また、このような装置によるドロスの除去作業は、付着したドロスが移動の障害になるため、操作者にとって清掃装置を前後に動かすのに力を要するので、作業負荷を軽減することが望ましい。
【0007】
本発明は、ワークサポートに付着したドロスを確実に除去することができ、且つ作業負荷の小さいドロス除去装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明は、複数の板が平行に立設されたレーザ加工機のワークサポートの各板の上縁部に沿って前後移動させることによって、ワークサポートに付着したドロスを除去するためのドロス除去装置であって、このドロス除去装置を各板の上縁部に沿って案内するための案内部と、上下方向に往復動してドロスを除去する複数のニードルを備え、案内部の上方に設けられたタガネと、操作者が持ってドロス除去装置を操作するための操作ハンドル部とを有し、案内部は、前後方向に対して横方向の断面における内面形状の上部連続的に湾曲し且つ下方に開放した馬蹄形の筒形であり、且つ、上壁に複数のニードルを挿通させる開口が形成されている、ことを特徴としている。
このように構成された本発明においては、ワークサポートの各板の長手方向軸線周りにドロス除去装置をローリングさせてドロスの除去作業を行う場合、案内部の内周面全体に沿ってワークサポートの上を連続的に円滑に滑らせてローリングさせることができる。これにより、タガネのニードルを長手方向軸線周りの幅広い角度範囲にわたって往復動させて、ワークサポート側面に付着したドロスに衝突させ、容易且つ確実にドロスを除去することができる。
また、案内部は、前後方向に対して横方向の断面における内面形状が、下方に開放した馬蹄形の筒形であるため、ワークサポートの上端近傍の側面に付着したドロスの塊を、案内部の内面の湾曲部分に通すことができる。これにより、ドロスと案内部との接触が少なくなるので、操作者は、より小さな力でワークサポート上のドロス除去装置を前後に移動させることができる。
【0009】
また、本発明において、好ましくは、案内部の前端側内周縁部及び後端側内周縁部はそれぞれ、前端及び後端に向かって大きく開口するように内面が湾曲している。
このように構成された本発明においては、ドロス除去装置をワークサポート上で前後移動させる際、ワークサポートの側面や上面に付着しているドロスが案内部の前端側内周縁部及び後端側内周縁部に引っ掛かることによってドロス除去装置の移動が妨げられることを防止できる。
【0010】
また、本発明において、好ましくは、タガネは異なる長さのニードルを備えることを特徴とする。
このように構成された本発明においては、ワークサポートの上端面や側面に均等にニードルを衝突させることができ、ワークサポートの様々な部分に付着しているドロスを確実に除去することができる。
【0011】
また、本発明において、好ましくは、ドロス除去装置は、更に、タガネを保持するためのタガネ保持部を有し、タガネ保持部は、タガネを前後方向に第1の回動軸線を中心として回動可能に案内部に連結され、操作ハンドル部は、第1の回動軸線と平行な第2の回動軸線を中心として回動可能にタガネ保持部に取付けられていることを特徴とする。
このように構成された本発明においては、タガネを前後方向に傾斜させることができ、タガネの傾斜に沿って、ドロス除去装置の前後への移動方向に対して斜めにニードルを突出させることができる。その結果、ニードルが異なる方向からドロスに衝撃を与えるので、ドロスをより確実に除去することができる。また、ニードルがドロスに衝撃を与えるときの反力が、ドロス除去装置を前方又は後方に移動させる推進力となるので、操作者がドロス除去装置を前後に移動させる際の作業負荷を軽減することができる。
【0012】
また、本発明において、好ましくは、タガネは、タガネ保持部に対して上下方向に所定範囲内で移動可能に、タガネ保持部に保持されていることを特徴とする。
このように構成された本発明においては、ニードルが案内部から突出する長さをタガネの上下移動によって変化させることができる。これにより、ワークサポートの上端面や側面の一層広い範囲に付着しているドロスを確実に除去することができ、様々な形状のワークサポートのドロス除去を行うことができる。
また、ニードルをタガネから突出させる際の反力の一部を、タガネの移動によって吸収させることができ、タガネから操作ハンドルを介して操作者の手に伝わる振動を軽減することができる。
【0013】
また、本発明において、好ましくは、操作ハンドル部は、操作者によって持たれる部分にクッション材を備えていることを特徴とする。
このように構成された本発明においては、タガネから操作ハンドル部を介して操作者の手に伝わる振動をさらに軽減することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によるドロス除去装置によれば、ワークサポートに付着したドロスを確実に除去することができ、且つ作業負荷を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態によるドロス除去装置の側面図である。
図2】本発明の実施形態によるドロス除去装置の正面図である。
図3】本発明の実施形態によるタガネ保持部及びタガネの部分拡大図である。
図4】本発明の実施形態によるドロス除去装置のワークサポート上での移動動作を示す側面図である。
図5】本発明の実施形態によるドロス除去装置をローリングさせた状態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態によるドロス除去装置を説明する。
まず、図1及び図2により、本発明の実施形態によるドロス除去装置の構成を説明する。図1は本発明の実施形態によるドロス除去装置の側面図であり、図2は本発明の実施形態によるドロス除去装置の正面図である。以下の説明では、ドロス除去装置をワークサポートの各板の上縁部に沿って前後移動させる方向を「前後方向」と呼び、この前後方向に直交する方向を「横方向」と呼ぶ。
【0017】
図1及び図2に示すように、本実施形態によるドロス除去装置1は、操作者が持ってドロス除去装置1を操作するための操作ハンドル部4を備えている。この操作ハンドル部4は、棒状に形成されており、一方の端部には、操作者の一方の手によって把持されるコントロールグリップ4aが設けられている。また、操作ハンドル部4の中間部分には、ドロス除去装置1を持ち上げるためのライジンググリップ4b、4cが設けられている。これらのコントロールグリップ4a、ライジンググリップ4b、4cには、発泡体(例えば発泡ポリエチレン)により形成されたクッション材が設けられている。
【0018】
操作ハンドル部4のコントロールグリップ4aとは反対側の端部4dは、円筒状のタガネ保持部6に取り付けられている。この操作ハンドル部4の端部4dは、ハンドル回動軸8を介してタガネ保持部6に連結されており、操作ハンドル部4はハンドル回動軸8を中心にしてタガネ保持部6に対して回動可能となっている。ハンドル回動軸8は、その軸線方向と操作ハンドル部4の長手方向及びタガネ保持部6の長手方向とが直交するように配置されている。
【0019】
タガネ保持部6は、円筒状のタガネ保持部6の内部において、タガネ10を保持している。タガネ10は、円筒状のタガネ本体12と、タガネ本体12の一方の端面(図1及び図2においては下端面12a)から突出してタガネ本体12の長手方向に沿って上下方向に往復動してドロスを除去する複数のニードル14と、タガネ本体12の内部に格納されて複数のニードル14を往復動させる駆動機構(図示省略)とを備えている。タガネ本体12は、このタガネ本体12の長手方向とタガネ保持部6の長手方向とが一致するようにタガネ保持部6の内部に配置される。タガネ保持部6の下端近傍の内周面にはタガネ本体12を支持するための支持ステー16aが設けられており、タガネ本体12の下端面12aの周縁部が支持ステー16aに当接することにより、タガネ本体12がタガネ保持部6によって保持される。また、タガネ保持部6の上端近傍の内周面にはタガネ本体12の上方への移動を規制するための規制ステー16bが突出している。タガネ本体12は、支持ステー16aに固定されていないため、支持ステー16aの上方且つ規制ステー16bの下方の範囲内において、タガネ保持部6の長手方向に沿ってタガネ保持部6の内部を上下方向に移動可能になっている。駆動機構は、圧縮空気配管からタガネ本体12の上端部に設けられたバルブを介して供給される圧縮空気の圧力によって、複数のニードル14を往復動させる。
【0020】
タガネ10の下方には、ドロス除去装置1をワークサポート2の各板の上縁部に沿って案内するための案内部18が設けられている。案内部18は、図2に示すように、前後方向に対して横方向の断面における内面形状が、下方に開放した略馬蹄形の筒形に形成されている。特に本実施形態では、案内部18は、横方向の断面が、下部が開放した円形となるように湾曲して形成されている。また、案内部18の前端側内周縁部18a及び後端側内周縁部18bはそれぞれ、前端及び後端に向かって大きく開口するように内面が円弧状に湾曲している。
案内部18は、長手方向中央部の上壁外面においてタガネ保持部6の下端部6aに取り付けられている。具体的には、タガネ保持部6は、タガネ回動軸20を介して案内部18の長手方向中央部の上壁外面に連結されており、タガネ10を前後方向にタガネ回動軸20を中心として所定の角度範囲内で回動可能になっている。案内部18又はタガネ保持部6には、案内部18の回動を所定の角度範囲内に規制するためのストッパー(図示省略)が設けられている。タガネ回動軸20は、その軸線方向が案内部18の長手方向と直交し、且つ、ハンドル回動軸8の軸線方向と平行になるように(即ちタガネ保持部6の長手方向と直交するように)配置されている。
また、案内部18の上壁には、タガネ10の複数のニードル14を挿通させる開口22が形成されている。この開口22は、タガネ保持部6に取り付けられた案内部18において、タガネ保持部6の下端部6aと向かい合う位置に配置され、タガネ10の全てのニードル14を挿通可能な大きさに形成されている。さらに、案内部18の長手方向における開口22の両端縁22a、22bが、タガネ保持部6への案内部18の取り付け状態においてタガネ保持部6側に持ち上がるように湾曲している。
【0021】
次に、図3により、タガネ10の複数のニードル14の長さについて説明する。図3は本発明の実施形態によるドロス除去装置1のタガネ保持部6及びタガネ10の部分拡大図である。この図3においては、往復動するニードル14が案内部18の開口22から最も突出した位置を点線で示し、ニードル14がタガネ本体12に向かって最も後退した位置を実線で示す。また、図3においては、ワークサポート2、案内部18、及びタガネ回動軸20を、想像線により示している。
【0022】
図3に示すように、タガネ10は、異なる長さのニードル14a、14b、14cを備えている。これにより、案内部18の開口22から複数のニードル14が突出する長さが異なる。
長さが最も短いニードル14aは、ドロス除去装置1をワークサポート2上に設置した状態において、案内部18の開口22から最も突出した時はワークサポート2の鋸歯の先端よりも下方まで突出し、タガネ本体12に向かって最も後退した時はワークサポート2の鋸歯の先端よりも上方まで後退する。
長さが最も長いニードル14bは、ドロス除去装置1をワークサポート2上に設置した状態において、案内部18の開口22から最も突出した時はワークサポート2の鋸歯の谷よりも下方まで突出し、タガネ本体12に向かって最も後退した時はワークサポート2の鋸歯の先端と谷の間の位置に後退する。
長さが中間のニードル14cは、ドロス除去装置1をワークサポート2上に設置した状態において、案内部18の開口22から最も突出した時はワークサポート2の鋸歯の谷の近傍まで突出し、タガネ本体12に向かって最も後退した時はワークサポート2の鋸歯の先端の近傍に後退する。
【0023】
次に、図4及び図5により、本発明の実施形態によるドロス除去装置1の作用を説明する。図4は、本発明の実施形態によるドロス除去装置1のワークサポート2上での移動動作を示す側面図であり、図4(a)は操作者が操作ハンドル部4を引くことによりドロス除去装置1が移動する動作を示す図、図4(b)は操作者が操作ハンドル部4を押すことによりドロス除去装置1が移動する動作を示す図である。以下の説明では、操作ハンドル部4が操作者によってワークサポート2の長手方向に沿って引かれる方向を後方とし、操作ハンドル部4が操作者によってワークサポート2の長手方向に沿って押される方向を前方とする。
【0024】
図4(a)に示すように、操作者が操作ハンドル部4を後方に(図4(a)では右側に)引くと、タガネ保持部6はタガネ回動軸20を中心に操作ハンドル部4が引かれた方向に回動し、後方に向かって傾斜する。その結果、タガネ保持部6と共に後方に傾斜したタガネ本体12から前方に向かってニードル14が突出する(図4(a)において、ニードル14の突出方向を矢印で示す)。前方に向かって突出したニードル14は、後方からドロスやワークサポート2に衝突し、その反動で後方に向かって後退する。タガネ10の駆動機構は、後退したニードル14を、タガネ本体12から前方に向かって再び突出させる。このとき、タガネ本体12には、反力として後方に向かう力がニードル14から加えられる。この後方に向かう力は、タガネ本体12からタガネ保持部6を介して操作ハンドル部4及び案内部18に伝達され、ドロス除去装置1がワークサポート2上を後方に移動する推進力となる。
【0025】
また、図4(b)に示すように、操作者が操作ハンドル部4を前方に(図4(b)では左側に)押すと、タガネ保持部6はタガネ回動軸20を中心に操作ハンドル部4が押された方向に回動し、前方に向かって傾斜する。その結果、タガネ保持部6と共に前方に傾斜したタガネ本体12から後方に向かってニードル14が突出する(図4(b)において、ニードル14の突出方向を矢印で示す)。後方に向かって突出したニードル14は、前方からドロスやワークサポート2に衝突し、その反動で前方に向かって後退する。タガネ10の駆動機構は、後退したニードル14を、タガネ本体12から後方に向かって再び突出させる。このとき、タガネ本体12には、反力として前方に向かう力がニードル14から加えられる。この前方に向かう力は、タガネ本体12からタガネ保持部6を介して操作ハンドル部4及び案内部18に伝達され、ドロス除去装置1がワークサポート2上を前方に移動する推進力となる。
【0026】
図5は、本発明の実施形態によるドロス除去装置1をローリングさせた状態を示す正面図である。
上述したように、案内部18は、前後方向に対して横方向の断面における内面形状が、下方に開放した略馬蹄形の筒形に形成されている。従って、図5に示すように、ワークサポート2の長手方向軸線周りにドロス除去装置1をローリングさせてドロスの除去作業を行う場合、案内部18の内周面全体に沿ってワークサポート2の上を連続的に滑りながらローリングさせることができる。従って、操作者はドロス除去装置1をスムーズにローリングさせることができる。図5に示すようにドロス除去装置1をローリングさせることで、タガネ10から突出したニードル14がワークサポート2の側面に衝突するため、ワークサポート2の側面に付着したドロスが確実に除去される。
また、案内部18の前後方向に対して横方向の断面における内面形状が、下方に開放した略馬蹄形の筒形であるため、ワークサポート2の上端近傍の側面に付着したドロスの塊を、案内部18の内面の湾曲部分に通すことができ、且つ、ワークサポート2上のドロス除去装置1を、案内部18の内周面の下端部分によって確実に案内することができる。
【0027】
次に、上述した本発明の実施形態によるドロス除去装置1の効果を説明する。
【0028】
本発明の実施形態によるドロス除去装置1の案内部18は、前後方向に対して横方向の断面における内面形状が、下方に開放した略馬蹄形の筒形であり、且つ、上壁に複数のニードルを挿通させる開口が形成されている。
即ち、ワークサポート2の各板の長手方向軸線周りにドロス除去装置1をローリングさせてドロスの除去作業を行う場合、案内部18の内周面全体に沿ってワークサポートの上を連続的に円滑に滑らせてローリングさせることができる。これにより、タガネ10のニードル14を長手方向軸線周りの幅広い角度範囲にわたって往復動させて、ワークサポート2の側面に付着したドロスに衝突させ、容易且つ確実にドロスを除去することができる。
また、案内部18は、前後方向に対して横方向の断面における内面形状が、下方に開放した略馬蹄形の筒形であるため、ワークサポート2の上端近傍の側面に付着したドロスの塊を、案内部18の内面の湾曲部分に通すことができる。これにより、ドロスと案内部18との接触が少なくなるので、操作者は、より小さな力でワークサポート上のドロス除去装置1を前後に移動させることができる。
【0029】
また、案内部18の前端側内周縁部18a及び後端側内周縁部18bはそれぞれ、前端及び後端に向かって大きく開口するように内面が湾曲しているので、ドロス除去装置1をワークサポート2上で前後移動させる際、ワークサポート2の側面や上面に付着しているドロスが案内部18の前端側内周縁部18a又は後端側内周縁部18bに引っ掛かることによってドロス除去装置1の移動が妨げられることを防止できる。
【0030】
また、タガネ10は、異なる長さのニードル14a、14b、14cを備える。これにより、ワークサポート2の上端面や側面に均等にニードル14を衝突させることができ、ワークサポート2の様々な部分に付着しているドロスを確実に除去することができる。
【0031】
また、ドロス除去装置1は、更に、タガネ10を保持するためのタガネ保持部6を有し、タガネ保持部6は、タガネ10を前後方向にタガネ回動軸20を中心として回動可能に案内部18に連結され、操作ハンドル部4は、タガネ回動軸20と平行なハンドル回動軸8を中心として回動可能にタガネ保持部6に取付けられている。
即ち、タガネ10を前後方向に傾斜させることができ、タガネ10の傾斜に沿って、ドロス除去装置1の前後への移動方向に対して斜めにニードル14を突出させることができる。その結果、ニードル14が異なる方向からドロスに衝撃を与えるので、ドロスをより確実に除去することができる。また、ニードル14がドロスに衝撃を与えるときの反力が、ドロス除去装置1を前方又は後方に移動させる推進力となるので、操作者がドロス除去装置を前後に移動させる際の作業負荷を軽減することができる。
【0032】
また、タガネ10は、タガネ保持部6に対して上下方向に所定範囲内で移動可能に、タガネ保持部6に保持されているので、ニードル14が案内部18から突出する長さをタガネ10の上下移動によって変化させることができる。これにより、ワークサポート2の上端面や側面の一層広い範囲に付着しているドロスを確実に除去することができ、様々な形状のワークサポート2のドロス除去を行うことができる。
また、ニードル14をタガネ10から突出させる際の反力の一部を、タガネ10の移動によって吸収させることができ、タガネ10から操作ハンドル部4を介して操作者の手に伝わる振動を軽減することができる。
【0033】
また、操作ハンドル部4は、操作者によって持たれる部分にクッション材を備えているので、タガネ10から操作ハンドル部4を介して操作者の手に伝わる振動をさらに軽減することができる。
【0034】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明の具体的な構成及び手段は、特許請求の範囲に記載した各発明の技術的思想の範囲内において、任意に改変及び改良することができる。
【符号の説明】
【0035】
1 ドロス除去装置
2 ワークサポート
4 操作ハンドル部
4a コントロールグリップ
4b、4c ライジンググリップ
4d 端部
6 タガネ保持部
6a 下端部
8 ハンドル回動軸
10 タガネ
12 タガネ本体
12a 端面
14、14a、14b、14c ニードル
16a 支持ステー
16b 規制ステー
18 案内部
18a 前端側内周縁部
18b 後端側内周縁部
20 タガネ回動軸
22 開口
22a、22b 端縁
図1
図2
図3
図4
図5