(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ロック制御弁部の前記スプールの位置が前記アキュムレータ作動位置に切換えられると、前記ロック状態になるよう前記中間ロック流路をドレン状態に切換えるよう構成してある請求項1に記載の弁開閉時期制御装置。
前記ロック制御弁部の前記スプールの位置が前記中間ロック位置又は前記デューティー位置において前記アキュムレータに対して流体を注入可能な弁体を前記アキュムレータ制御弁部に備え、前記スプールの一端に前記アキュムレータ作動位置において前記弁体を開き操作可能な押圧部材を設けてある請求項1又は2に記載の弁開閉時期制御装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、弁開閉時期制御装置にアキュムレータを別構成として追加した場合には、装置全体が大型化する。また、ソレノイドバルブを用いて開閉する流体制御弁部やロック弁部は、弁開閉時期制御装置の一方側にまとまって配置されていることを踏まえ、アキュムレータを配置位置については改善の余地がある。
【0007】
本発明は上述の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、内燃機関の始動時における進角室又は遅角室に対する流体の制御性を向上させた弁開閉時期制御装置をコンパクトに提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1特徴構成は、内燃機関のクランクシャフトに対して同期回転する駆動側回転部材と、前記駆動側回転部材に対して相対回転可能に同軸に配置され、前記内燃機関の弁開閉用のカムシャフトに対して一体回転する従動側回転部材と、前記駆動側回転部材及び前記従動側回転部材の何れか一方に形成された流体圧室と、前記流体圧室を進角室と遅角室とに仕切るよう前記駆動側回転部材及び前記従動側回転部材の何れか他方に設けられた仕切り部と、前記進角室又は前記遅角室に対する流体の供給又は排出の制御を行う流体制御弁部と、前記駆動側回転部材に対する前記従動側回転部材の相対回転を最遅角位置と最進角位置との間の中間位置にロックするロック状態とそのロック状態を解除するロック解除状態とに切換える中間ロック流路を有する中間ロック機構と、前記中間ロック流路に対する流体の供給または排出の制御を行うロック制御弁部と、前記内燃機関の始動時に前記流体制御弁部に流体を供給するアキュムレータを制御するアキュムレータ制御弁部と、を備え、前記駆動側回転部材または前記従動側回転部材を挟んで前記カムシャフトとは反対側に前記流体制御弁部、前記ロック制御弁部及び前記アキュムレータ制御弁部を備えると共に、前記ロック制御弁部を制御するソレノイドと前記アキュムレータ制御弁部を制御するソレノイドとを共有し
、前記ロック制御弁部に備えられたスプールの往復移動方向の延長上に前記アキュムレータ制御弁部が配置されると共に、前記スプールの位置を、前記中間ロック流路から流体が排出されて前記ロック状態となる中間ロック位置と、前記中間ロック流路に流体が供給されて前記ロック解除状態となるデューティー位置と、前記アキュムレータ制御弁部が開放操作されるアキュムレータ作動位置とに切り換え可能に構成してある点にある
【0009】
本構成の如く、駆動側回転部材または従動側回転部材を挟んでカムシャフトとは反対側に流体制御弁部、ロック制御弁部及びアキュムレータ制御弁部を備えたので、内燃機関の始動時において流体制御弁部にアキュムレータから流体を確実に供給することができる。これにより、内燃機関の始動直後から流体制御弁部による弁開閉特性を得ることができる。さらに、ロック制御弁部を制御するソレノイドとアキュムレータ制御弁部を制御するソレノイドとを共有したので、弁開閉時期制御装置自体をコンパクトに構成することができる。
【0010】
【0011】
また、本構成によれば、ロック制御弁部に備えられたスプールの往復移動により、スプールの位置を、中間ロック流路から作動油が排出されるロック状態と、中間ロック流路に作動油が供給されるロック解除状態とに切換えることができ、さらに、アキュムレータ制御弁部を開放操作することができる。すなわち、ロック制御弁部のスプールをロック制御弁部及びアキュムレータ制御弁部の制御に両用でき、アキュムレータ制御弁部を制御するための別部材が不要になる。これにより、ロック制御弁部及びアキュムレータ制御弁部の操作機構が簡略化され、ロック制御弁部及びアキュムレータ制御弁部の操作も簡易になる。
【0012】
本発明の弁開閉時期制御装置の第
2特徴構成は、前記ロック制御弁部の前記スプールの位置が前記アキュムレータ作動位置に切換えられると、前記ロック状態になるよう前記中間ロック流路をドレン状態に切換えるよう構成してある点にある。
【0013】
本構成の如く、ロック制御弁部のスプールの位置がアキュムレータ作動位置に切換えられると、中間ロック流路から流体が排出され、例えば中間ロック機構の係止爪がロック溝に入り込み易くなる。一方、アキュムレータからの流体は例えば進角室に供給する構成にすることで、中間ロック機構を内燃機関の始動時に確実に作動させることができ、内燃機関の始動性が高まる。
【0014】
本発明の弁開閉時期制御装置の第
3特徴構成は、前記ロック制御弁部の前記スプールの位置が前記中間ロック位置又は前記デューティー位置において前記アキュムレータに対して流体を注入可能な弁体を前記アキュムレータ制御弁部に備え、前記スプールの一端に前記アキュムレータ作動位置において前記弁体を開き操作可能な押圧部材を設けてある点にある。
【0015】
内燃機関の始動時にアキュムレータから流体制御弁部に流体を供給するためには、それまでにアキュムレータに流体が注入されている必要がある。本構成のように、アキュムレータの流体を放出利用しない状態において、アキュムレータ制御弁部に備えられた弁体によってアキュムレータに流体が注入されるよう構成してあると、アキュムレータに流体を別途注入する手間が不要となる。その結果、弁開閉時期制御装置におけるアキュムレータへの流体の注入操作が簡便なものとなる。
【0016】
また、ロック制御弁部のスプールの一端にアキュムレータ作動位置において当該弁体を開き操作可能な押圧部材を設けてあると、ロック制御弁部のスプールがアキュムレータ作動位置のときに押圧部材が当該弁体を開き、アキュムレータ制御弁部を開放することができる。その結果、内燃機関の始動時におけるアキュムレータからの流体圧室への流体供給を確実に行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る弁開閉時期制御装置を図面に基づいて説明する。
【0019】
〔全体構成〕
弁開閉時期制御装置1は、
図1及び
図2に示すように、エンジン(内燃機関)のクランクシャフト(図示しない)に対して同期回転する「駆動側回転部材」としての外部ロータ3及びフロントプレート4と、外部ロータ3に対して同軸心上に配置され、エンジンの弁開閉用のカムシャフト8に同期回転する「従動側回転部材」としての内部ロータ5とを備えて構成してある。
【0020】
内部ロータ5は、エンジンの吸気弁又は排気弁の開閉を制御するカム(図示しない)の回転軸を構成するカムシャフト8の先端部に一体的に組付けられている。内部ロータ5の内径側には凹部14が設けてあり、その底面にはカムシャフト8の側に貫通した固定用穴12が開けてある。この固定用穴12にボルト13を通し、内部ロータ5をカムシャフト8に固定する。このカムシャフト8は、エンジンのシリンダヘッド(図示しない)に回転自在に組み付けられている。
【0021】
外部ロータ3は、フロントプレート4と一体となって、内部ロータ5に対して所定の範囲内で相対回転可能に外装されている。外部ロータ3の外周にはスプロケット部11が形成されている。このスプロケット部11とクランクシャフトに取り付けられたギア(図示しない)との間には、タイミングチェーンやタイミングベルト等の動力伝達部材(図示しない)を架設している。
【0022】
クランクシャフトが回転駆動すると、動力伝達部材を介してスプロケット部11に回転動力が伝達され、外部ロータ3が回転駆動する。そして、外部ロータ3の回転駆動に伴って内部ロータ5が回転駆動してカムシャフト8が回転する。そして、カムシャフト8に設けられたカムがエンジンの吸気弁又は排気弁を押し下げて開弁させる。
【0023】
図3に示すように、外部ロータ3には、径内方向に突出する複数個の凸部が回転方向に沿って互いに離間して形成され、隣接する凸部と内部ロータ5とにより流体圧室6が形成されている。本実施形態においては、流体圧室6を四個備えている。
【0024】
内部ロータ5の外周部において各流体圧室6に対面する箇所には溝が形成され、この溝に、「仕切部」としてのベーン7が挿入されている。流体圧室6は、このベーン7によって相対回転方向(
図3、4における矢印S1、S2方向)に進角室6aと遅角室6bとに仕切られる。
【0025】
内部ロータ5には、進角室連通孔17と遅角室連通孔18とが形成してある。進角室連通孔17は円柱形状の凹部14と進角室6aとを連通する。遅角室連通孔18は、凹部14と遅角室6bとを連通する。
【0026】
ポンプPからの「流体」としての作動油を、進角室6a又は遅角室6bに対して供給又は排出することにより、内部ロータ5と外部ロータ3との相対回転位相(以下、「相対回転位相」という)を、進角方向S1又は遅角方向S2へ変位させる。進角方向S1とは、
図3、4において矢印S1で示されるベーン7が相対変位する方向を示し、遅角方向S2とは、矢印S2で示されるベーン7が相対変位する方向を示す。
【0027】
進角室6aに作動油を供給した場合は、相対回転位相は進角方向S1に変位し、遅角室6bに作動油を供給した場合は、相対回転位相は遅角方向S2に変位する。なお、相対回転位相が変位可能な範囲は、流体圧室6の内部でベーン7が変位可能な範囲であり遅角室6bの容積が最大となる最遅角位相と、進角室6aの容積が最大となる最進角位相との間の範囲に相当する。
【0028】
〔流体制御弁機構〕
流体制御弁機構は流体制御弁部2を備え、流体制御弁部2によって、進角室6a又は遅角室6bに対する作動油の供給又は排出を制御する。流体制御弁機構は、上述した内部ロータ5の凹部14に相対回転可能に挿入されると共に、エンジンのフロントカバー等の静止系に固定してある。即ち、流体制御弁機構は静止したままであって、内部ロータ5の回転には追従しない。
【0029】
流体制御弁機構は、
図1に示すように、ソレノイド21、ハウジング23、及びスプール25を備えている。スプール25は有底の円筒形状を有する。また、ハウジング23はスプール25を収納する第1スプール収納部23aと、凹部14に挿入される凸部23bとを備える。第1スプール収納部23aには、スプール25を収納する中空部24が形成されている。この中空部24は、一方に開口する有底の円筒形状を有する。また、凸部23bは、凹部14の形状に対応した円柱形状を有する。第1スプール収納部23aの中空部24と凸部23bとは互いの延在方向が直行するように形成されている。中空部24には、スプール25が、カムシャフト8の回転軸心方向に垂直な方向に直線移動可能に収納される。
【0030】
図1に示すように、内部ロータ5の凹部14に凸部23bが相対回転可能に挿入されると共に、ハウジング23が、エンジンのフロントカバー等に固定される。これにより内部ロータ5が凸部23bにより相対回転可能に支持される。
【0031】
スプール25と中空部24の底面との間に亘ってスプリング26が設置されている。このため、スプール25は中空部24の開口側に付勢されている。第1スプール収納部23aの開口側の端部にはソレノイド21が設置されており、カムシャフト8の回転軸心方向に垂直な方向にスプール25を往復運動させる。ソレノイド21の先端部のロッド22がスプール25の底部に当接されている。ソレノイド21に通電すると、ロッド22がソレノイド21から延出してスプール25の底部を押圧し、スプール25は
図1中の下方に移動する。通電を停止すると、ロッド22はソレノイド21の側に引退し、上述したスプリング26の付勢力により、スプール25はロッド22の動きに追従してソレノイド21の側に移動する。ソレノイド21、ロッド22、スプール25、および、スプリング26は、流体制御弁部2を構成する。
【0032】
凸部23bの外周面には、外周一周に亘る環状の溝が三本平行に形成され、夫々の溝には作動油漏れ防止用のシールリング27が設置されている。隣接する前記溝の夫々の間には、同様に環状の溝である進角用外周溝31と遅角用外周溝32とが形成されている。シールリング27によって、進角用外周溝31、遅角用外周溝32からの作動油の漏れを防止する。
図1に示すように、進角用外周溝31は、進角室連通孔17と常時連通している。また、遅角用外周溝32は、遅角室連通孔18と常時連通している。
【0033】
また、
図1、
図5に示すように、第1スプール収納部23aに垂直な方向に供給側流路47が形成され、凸部23bの内部には、凸部23bの延在方向、すなわち、カムシャフト8の延在方向に沿って進角側流路42及び遅角側流路43が形成されている。供給側流路47は、一端が第1スプール収納部23aの中空部24に連通し、他端側からはポンプPからの作動油が供給される。供給側流路47の中途部にはスリーブ15が設けられ、これらスリーブ15の空間に球形弁体15bが設けられている。この球形弁体15bとスリーブ15aの供給側流路47下流側との間には、スプリング15cが介装され、スリーブ15aの供給側流路47上流側に付勢される。これにより、供給側流路47内の作動油の逆流を防止する。進角側流路42は一方が中空部24に開口するとともに他端が進角用外周溝31に開口する。進角側流路42は進角用外周溝31の一部を構成している。また、遅角側流路43は一端が中空部24に開口するとともに他端が遅角用外周溝32に開口する。遅角側流路43は遅角用外周溝32の一部を構成している。
【0034】
スプール25の外周面には、
図1、5に示すように、外周一周に亘る環状の排出用外周溝53a、53b、供給用外周溝54が形成されている。排出用外周溝53a、53bには、内部の中空部に貫通する貫通孔55a、55bが夫々設けられている。
【0035】
排出用外周溝53a、53b及び供給用外周溝54の位置関係は、次の通りである。ソレノイド21の非通電時には、
図1に示すように、供給用外周溝54が供給側流路47及び進角側流路42を連通すると共に、排出用外周溝53aが遅角側流路43と連通するよう設定されている。ソレノイド21の通電時には、供給用外周溝54が供給側流路47及び遅角側流路43を連通すると共に、排出用外周溝53bが進角側流路42と連通するよう設定してある。
【0036】
〔中間ロック機構〕
外部ロータ3と内部ロータ5との間には、外部ロータ3と内部ロータ5との相対回転を最遅角位置と最進角位置との間の中間位置にロックするロック状態とそのロック状態を解除するロック解除状態とに切換える中間ロック流路99を有する中間ロック機構9を設けてある。中間ロック機構9によって相対回転位相の変位を最進角位相と最遅角位相との間の中間ロック位相(
図4参照)にロックするよう構成してある。
【0037】
中間ロック機構9は、
図3、
図4に示されるように、ロック用収納部91a,91b、出退部材92a,92b、ロック用凹部93及びスプリング94a,94bを備えている。ロック用収納部91a,91bは外部ロータ3に形成され、ロック用凹部93は内部ロータ5に形成されている。出退部材92a、92bは、ロック用凹部93に突入して相対回転をロックするロック状態とロック用凹部93からロック用収納部91a、91bに引退してロック状態を解除するロック解除状態とに変位可能である。出退部材92a、92bは、ロック用収納部91a、91bに設置したスプリング94a,84bによって、ロック用凹部93に対して突入するよう常時付勢されている。
【0038】
〔ロック制御弁部〕
ハウジング23には、
図2、
図5に示すように、流体制御弁部2と、中間ロック機構9の中間ロック流路99に対する流体の供給または排出の制御を行うロック制御弁部100とが併設されている。ロック制御弁部100は、ソレノイド101、ハウジング23、及びスプール105を備え、スプール105は有底の円筒形状を有する。また、ハウジング23はスプール105を収納する第2スプール収納部23cと、後述のアキュムレータ110を収納するアキュムレータ収納部23dとを備える。第2スプール収納部23cには、スプール105を収納する中空部104が形成されている。中空部104は円筒形状を有する。中空部104には、スプール105が、カムシャフト8の回転軸心方向に垂直な方向に直線移動可能に収納される。
【0039】
中空部104の底部近傍にはアキュムレータ110への連通部107が形成されており、連通部107にアキュムレータ110を開放作動させる押圧部材108が配置されている。押圧部材108の外周には軸受部材109が設けられており、スプール105と軸受部材109との間に亘ってスプリング106が設置されている。スプリング106によってスプール105は中空部104のソレノイド101側に付勢されている。押圧部材108はスプリング106によって保持されており、ソレノイド101が通電されていない状態では押圧部材108はスプール105の先端部から離間した位置に保持されている。
【0040】
第2スプール収納部23cの開口側の端部にはソレノイド101が設置されており、カムシャフト8の回転軸心方向に垂直な方向にスプール25を往復運動させる。ソレノイド101の先端部のロッド102がスプール105の底部に当接されている。ソレノイド101に通電すると、ロッド102がソレノイド101から延出してスプール105の底部を押圧し、スプール105は
図2中の下方に移動する。ソレノイド101への通電を停止すると、ロッド102はソレノイド101の側に引退し、上述したスプリング106の付勢力により、スプール105はロッド102の動きに追従してソレノイド101の側に移動する。ソレノイド101、ロッド102、スプール105、および、スプリング106は、ロック制御弁部100を構成する。
【0041】
図1、2、5に示すように、ハウジング23はスプール25を収納する第1スプール収納部23aと、凹部14に挿入される凸部23bと、に加え、ロック制御弁部100のスプール105を収納する第2スプール収納部23cと、アキュムレータ110を収納するアキュムレータ収納部23dとを備える。第2スプール収納部23cは、凸部23bの延在方向に垂直な方向、すなわち、カムシャフト8の延在方向に垂直な方向において、第1スプール収納部23aと並設されている。
図5に示すように、凸部23bの延在方向、すなわち、カムシャフト8の延在方向において、第1スプール収納部23aと第2スプール収納部23cとが略同一平面上に位置するように設けられている。
【0042】
ハウジング23の凸部23bの外周面には、
図2に示すように、外周一周に亘る環状の溝が四本平行に形成され、夫々の溝には作動油漏れ防止用のシールリング27が設置されている。隣接する前記溝の夫々の間には、進角用外周溝31と遅角用外周溝32とに加え、ロック用外周溝96が形成されている。ロック用外周溝96は、ロック用凹部93に繋がるロック連通孔95と常時連通している。
【0043】
また、
図2に示すように、中間ロック流路99が凸部23bの延在方向に沿って形成されている。中間ロック流路99は、一端が中空部104に開口し、他端がロック用外周溝96に常時連通している。中間ロック流路99は、ロック用外周溝96の一部を構成している。また、
図5に示すように、供給側流路47と中空部104との間には接続流路48が形成されている。
【0044】
〔アキュムレータ〕
図2、
図5に示すように、ロック制御弁部100のスプール105の往復移動方向の延長上に設けられたアキュムレータ制御弁部120を介してアキュムレータ110が配置されている。アキュムレータ110は、エンジン始動時に流体制御弁部2に供給する流体(作動油)を加圧した状態で蓄える容器である。ソレノイド101は、ロック制御弁部100を制御すると共にアキュムレータ制御弁部120も制御する。すなわち、弁開閉時期制御装置は、ロック制御弁部100を制御するソレノイド101とアキュムレータ制御弁部120を制御するソレノイド101とを共有する。アキュムレータ制御弁部120は、具体的には、中空部104にアキュムレータ110の仕切壁部111が設けられ、アキュムレータ制御弁部120が、この仕切壁部111の貫通孔112に球形弁体113とスプリング114とを備えて構成されている。球形弁体113はスプール105の往復移動方向の延長上の位置にする。スプリング114は球形弁体113を閉じ方向に付勢する。これにより、アキュムレータ110内の作動油の逆流を防止する。アキュムレータ110には、アキュムレータ制御弁部120とは反対の側にスプール105の往復移動方向の延長線上に移動して流体貯留部115の容量を可変させる可動壁部116を備える。また、可動壁部116には流体貯留部115内の作動油を加圧するために可動壁部116を付勢するスプリング117が設けられている。
【0045】
〔ロック制御弁部の動作〕
ロック制御弁部100の動作を
図6(a)、
図6(b)、
図6(c)に基づいて説明する。
【0046】
ロック制御弁部100は、スプール105の位置が、中間ロック流路99から流体が排出されてロック状態となる中間ロック位置(
図6(a))と、中間ロック流路99に流体が供給されてロック解除状態となるデューティー位置(
図6(b))と、アキュムレータ110が開放操作されるアキュムレータ作動位置(
図6(c))とに切り換え可能に構成されている。
【0047】
図6(a)は、エンジンの停止時におけるロック制御弁部100のスプール105の位置(中間ロック位置)を示している。ここでは、ソレノイド101は通電されておらず、スプール105の位置が最もソレノイド101の側に位置する。供給側流路47から接続流路48を介して供給される作動油はスプール105に形成された流入ポートP1からスプール105内に流入するものの、スプール105に別途形成された流出ポートP2は中間ロック流路99との連通が遮断されている。一方、中間ロック流路99はドレン孔P4に連通し、作動油がドレン孔P4に排出される。こうして、駆動側回転部材に対する従動側回転部材の相対回転を最遅角位置と最進角位置との間の中間位置にロックするロック状態となる。すなわち、この状態のスプール105の位置が中間ロック位置となる。また、供給側流路47は接続流路48を介してアキュムレータ110に作動油を注入する注入流路118に連通しているため、アキュムレータ110は作動油が注入され得る状態にある。
【0048】
図6(b)は、エンジンの通常作動時におけるロック制御弁部100のスプール105の位置(デューティー位置)を示している。ここでは、ソレノイド101への通電が中程度の状態であり、スプール105の位置が
図6(a)の位置よりもアキュムレータ110側に位置する。流出ポートP2と中間ロック流路99は連通された状態となり、供給側流路47から接続流路48を介して流入ポートP1に流入した作動油は流出ポートP2から中間ロック流路99に供給されている。一方、中間ロック流路99とドレン孔P3,P4との連通は遮断される。こうして、駆動側回転部材に対する従動側回転部材の相対回転のロック状態が解除されるロック解除状態となる。また、供給側流路47はアキュムレータ110に作動油を注入する注入流路118に連通しているため、アキュムレータ110は作動油が注入され得る状態にある。
【0049】
図6(c)は、エンジンの始動時におけるロック制御弁部100のスプール105の位置(アキュムレータ作動位置)を示している。ここでは、ソレノイド101への通電が最大近くの状態であり、スプール105の位置が
図6(b)の位置よりもさらにアキュムレータ110側に位置する。スプール105の先端部に位置する押圧部材108がチェック弁の球形弁体113を押し込んでアキュムレータ制御弁部120が開放作動される。すなわち、スプール105の位置がアキュムレータ作動位置となる。このとき、エンジンの始動時であるので、供給側流路47からは接続流路48を介して流入ポートP1及びアキュムレータ110への注入流路118には作動油がまだ供給されていない。したがって、アキュムレータ制御弁部120が開放されると、アキュムレータ110内の作動油は注入流路118に向けて放出される。アキュムレータ110から放出された作動油は、注入流路118を介して流体制御弁部2に供給される。
【0050】
その後、ロック制御弁部100のスプール105の位置をデューティー位置に切換えることで、エンジンの始動時であってもアキュムレータ110に貯留された作動油を用い、流体制御弁部2による進角遅角制御を迅速に行うことができる。
【0051】
ロック制御弁部100のスプール105の位置がアキュムレータ作動位置に切換えられると、ロック状態になるよう中間ロック流路99をドレン状態に切換えるよう構成してある。すなわち、ロック制御弁部100のスプール105がアキュムレータ作動位置においては、中間ロック流路99はドレン孔P3と連通し、作動油がドレン孔P3に排出される。このように、ロック制御弁部100のスプール105の位置がアキュムレータ作動位置に切換えられると、中間ロック流路99から流体が排出され、中間ロック機構の出退部材92a,92bがロック用凹部93に入り込み易くなる。一方、アキュムレータ110からの作動油は進角室6aに供給する構成にすることで、中間ロック機構をエンジン始動時に確実に作動させることができ、エンジンの始動性が高まる。
【0052】
また、上述のように、ロック制御弁部100のスプール105の位置が中間ロック位置又はデューティー位置においてアキュムレータ110に対して作動油を注入可能な球形弁体113をアキュムレータ制御弁部120に備え、スプール105の一端にアキュムレータ作動位置において球形弁体113を開き操作可能な押圧部材108を設けてある。
【0053】
エンジンの始動時にアキュムレータ110から流体制御弁部2に作動油を供給するためには、それまでにアキュムレータ110に作動油が注入されている必要がある。本実施形態のように、アキュムレータ110の作動油を放出利用しない状態において、アキュムレータ制御弁部120に備えられた球形弁体113によってアキュムレータ110に作動油が注入されるよう構成してあると、アキュムレータ110に作動油を別途注入する手間が不要となる。その結果、弁開閉時期制御装置1におけるアキュムレータ110への作動油の注入操作が簡便なものとなる。
【0054】
また、ロック制御弁部100のスプール105の一端にアキュムレータ作動位置において当該球形弁体113を開き操作可能な押圧部材108を設けてあると、ロック制御弁部100のスプール105がアキュムレータ作動位置のときに押圧部材108が球形弁体113を開き、アキュムレータ制御弁部120を開放することができる。その結果、エンジンの始動時におけるアキュムレータ110からの流体圧室6への流体供給を確実に行うことができる。
【0055】
〔弁開閉時期制御装置の動作〕
弁開閉時期制御装置1の動作を図面に基づいて説明する。
【0056】
図1に示すように、進角室6aに作動油を供給して、相対回転位相を進角方向S1へ変位させる場合には、流体制御弁部2のソレノイド21に通電しない非通電状態とする。このとき、スプリング26の付勢力により、スプール25は、ソレノイド21のロッド22と共に、ソレノイド21の側に移動する。この非通電状態において、ポンプPから供給側流路47に作動油を供給すると、
図1、3に示すように、作動油は、供給側流路47から供給用外周溝54、進角側流路42、進角用外周溝31、進角室連通孔17を介して、各進角室6aへと圧送される。このとき、ベーン7が進角方向S1に相対移動して、各遅角室6bの作動油は排出される。その作動油は、各遅角室6bから各遅角室連通孔18、遅角用外周溝32、遅角側流路43、排出用外周溝53a、貫通孔55a、ドレン流路(図示せず)を介して、外部へと排出される。
【0057】
一方、遅角室6bに作動油を供給して、相対回転位相を遅角方向S2へ変位させる場合には、流体制御弁部2のソレノイド21への通電を行う。このとき、スプール25は、ソレノイド21のロッド22に押されて、下方に移動した状態となる。この通電状態において、ポンプPから供給側流路47に作動油を供給すると、ポンプPから供給側流路47、供給用外周溝54、遅角側流路43、遅角用外周溝32、遅角室連通孔18を介して、遅角室6bへと圧送される。このとき、ベーン7が遅角方向S2に相対移動して、各進角室6aの作動油は排出される。その作動油は、各進角室6aから各進角室連通孔17、進角用外周溝31、進角側流路42、排出用外周溝53b、連通孔55b、ドレン流路(図示せず)を介して、外部へと排出される。
【0058】
上述のように、駆動側回転部材(外部ロータ3)または従動側回転部材(内部ロータ5)を挟んでカムシャフト8とは反対側に流体制御弁部2、ロック制御弁部100及びアキュムレータ制御弁部120を備えたので、内燃機関の始動時において流体制御弁部2にアキュムレータ110から作動油を確実に供給することができる。これにより、エンジンの始動直後から流体制御弁部2による弁開閉特性を得ることができる。また、ロック制御弁部100を制御するソレノイド101とアキュムレータ制御弁部120を制御するソレノイド101とを共有したので、弁開閉時期制御装置1自体をコンパクトに構成することができる。
【0059】
また、ロック制御弁部100に備えられたスプール105の往復移動により、スプール105の位置を、中間ロック流路99から作動油が排出されるロック状態と、中間ロック流路99に作動油が供給される前記ロック解除状態とに切換えることができ、さらに、アキュムレータ制御弁部120を開放操作することができる。すなわち、ロック制御弁部100のスプール105をロック制御弁部100及びアキュムレータ制御弁部120の制御に両用でき、アキュムレータ制御弁部120を制御するための別部材が不要になる。これにより、ロック制御弁部100及びアキュムレータ制御弁部120の操作機構が簡略化され、ロック制御弁部100及びアキュムレータ制御弁部120の操作も簡易になる。
【0060】
〔別実施形態〕
(1)上記の実施形態においては、一つのロック用凹部93に対して、二つの出退部材92a,92bが突入してロック状態となるよう構成したが、これに限られるものではない。図示はしないが、例えば、一つのロック用凹部93に対して一つの出退部材だけを備える構成であっても良い。この場合は、ロック用凹部93の周方向の幅を出退部材の周方向の幅とほぼ同じ程度に設定する。
【0061】
(2)上記の実施形態では、ロック制御弁部100のスプール105を用いてアキュムレータ制御弁部120を開放作動させるよう構成したが、アキュムレータ制御弁部120の操作部材をロック制御弁部100のスプール105とは別の部材で構成してもよい。
【0062】
(3)上記の実施形態では、ロック制御弁部100のスプール105の往復移動方向の延長上にアキュムレータ110(流体貯留部115)を配置する例を示したが、アキュムレータ110はロック制御弁部100のスプール105の往復移動方向の延長上以外の位置に配置されていてもよい。