(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂中にエラストマーをブレンドした熱可塑性樹脂組成物からなるシートの端部を繋いで環状に形成してインナーライナー層を構成させる空気入りタイヤにおいて、前記熱可塑性樹脂または前記熱可塑性樹脂中にエラストマーをブレンドした熱可塑性樹脂組成物からなるシートの両端部が、該シートの平面視で根本が窪んだ突出部を有しており、該端部の突出部と他の端部の窪んだ根本を噛み合わせてシート端部が繋がれており、その繋がれたシートが前記環状を構成し、
前記熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂中にエラストマーをブレンドした熱可塑性樹脂組成物からなるシートが、タイゴムシートと積層された積層体として前記インナーライナー層を構成し、かつ、該タイゴムシートはその端部が、該タイゴムシートの平面視で根本が窪んだ突出部を有しており、該タイゴムシートの端部同士は該タイゴムシートの突出部と他の端部の窪んだ根本を噛み合わせて繋がれてなることを特徴とする空気入りタイヤ。
前記エラストマーの50重量%以上が、ハロゲン化ブチルゴムまたは臭素化イソブチレンパラメチルスチレン共重合ゴムまたは無水マレイン酸変性エチレンαオレフィン共重合ゴムであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
前記タイゴムシートが接着性ゴムからなり、前記熱可塑性樹脂または前記熱可塑性樹脂中にエラストマーをブレンドした熱可塑性樹脂組成物からなるシートと前記タイゴムシートとが接着層を介さず直接積層されてなることを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤ。
前記タイゴムシートが接着性ゴムからなり、前記熱可塑性樹脂または前記熱可塑性樹脂中にエラストマーをブレンドした熱可塑性樹脂組成物からなるシートと前記タイゴムシートとが接着層を介さず直接積層されてなり、かつ、前記タイゴムシートとカーカスとが接着層を介さず直接積層されてなることを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【背景技術】
【0003】
近年、熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂とエラストマーをブレンドした熱可塑性樹脂組成物からなるシート状物を空気入りタイヤのインナーライナーに使用するという提案がされ、検討されている(特許文献1)。
【0004】
この熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂とエラストマーをブレンドした熱可塑性樹脂組成物からなるシート状物を、実際に空気入りタイヤのインナーライナーに使用するにあたっては、通常、熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂とエラストマーをブレンドした熱可塑性樹脂組成物のシートと、該熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂とエラストマーをブレンドした熱可塑性樹脂組成物のシートと加硫接着されるゴム(タイゴム)シートを用いて、積層シートとしてタイヤ成形ドラムに巻き付けてラップスプライスして、タイヤの加硫成形工程に供するという製造手法がとられる。
【0005】
しかし、該熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂とエラストマーをブレンドした熱可塑性樹脂組成物とタイゴムシートとからなる積層体シートをタイヤ成形ドラムに巻き付けて、該成形ドラム上などにおいて該積層体シートをラップスプライス方式(
図5(a)にモデルを示した)によって繋いで、更に加硫成形をしてタイヤを製造したとき、タイヤ走行開始後にインナーライナーを構成している熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂組成物のシートと、該熱可塑性樹脂または該熱可塑性樹脂組成物のシートと加硫接着されたタイゴムシートとが剥離してしまう場合があった。
【0006】
これを図で説明すると、
図3(a)に示したように、熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂とエラストマーをブレンドした熱可塑性樹脂組成物からなるシート2とタイゴムシート3とからなる積層体シート1は、刃物などで所要サイズ(長さ)に切断されて、タイヤ成形ドラム上にて、その両端部にラップスプライス部Sを設けて環状を成すようにして端部が繋がれる。なお、該積層体シート1は、1枚の使用のときは、その両端部が繋がれて環状を成すように形成され、あるいは複数枚の使用のときはそれら相互の端部同士が繋がれて環状を成すように形成される。
【0007】
そして、更にタイヤの製造に必要なパーツ材(図示せず)が巻かれ、ブラダーで加硫成形される。加硫成形後においては、
図3(b)にモデル図を示したように、熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂とエラストマーをブレンドした熱可塑性樹脂組成物のシート2とタイゴムシート3からなるインナーライナー層10が形成され、スプライス部S付近では、熱可塑性樹脂または上述の熱可塑性樹脂組成物からなるシート2が、露出している部分とタイゴムシートの中に埋設している部分が形成されている。すなわち、スプライス部S付近では、熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂とエラストマーをブレンドした熱可塑性樹脂組成物のシート2が、タイゴムシートを挟んで2層存在している。
【0008】
そして、上述した熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂組成物のシート2と加硫接着されたタイゴムシート3とが剥離してしまう現象は、特に、
図3(b)で示した熱可塑性樹脂組成物のシート2が露出していてかつその先端部付近4などにおいて発生し、まずクラックが発生し、それがさらに進んでシートの剥離あるいはタイゴムシートが破断しながら剥離する現象へと進行していく。
【0009】
この原因は、熱可塑性樹脂または上記熱可塑性樹脂組成物のシート2は、一般にゴムコンパウンドと比べると低伸張域のモジュラスが高く、特にスプライス部S付近で上述したようにタイゴムシートを挟んで2層存在していることにより他の部分に比較してスプライス部の剛性が高くなり、その剛性差が原因でクラックや剥離等が発生すると解されるものである。
【0010】
上記のような不都合を防止するため、ラップスプライス方式によらず、
図5(b)にモデル図で示したバットスプライス方式(突き合わせ状繋ぎ方式)によって繋ぐことも考えられる。しかし、バットスプライス方式では、熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂組成物からなるシートの端部を、シート平面に対して垂直方向または斜め方向に切断して該シート端部を作り、その断面(端面)同士を直接繋ぐこととなるが、この繋ぎ方では熱可塑性樹脂または上記熱可塑性樹脂組成物のシート2は、ゴムコンパウンドと比べると低伸長時の剛性が高く、タイヤの加硫成形時のリフトに耐えられず繋ぎ部が開いてしまうという問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、上述したような点に鑑み、熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂中にエラストマーをブレンドした熱可塑性樹脂組成物からなるシートの端部を繋いで環状に形成し、さらに加硫成形を経て、該熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂中にエラストマーをブレンドした熱可塑性樹脂組成物からなるシートから形成されたインナーライナー層を有する空気入りタイヤにおいて、該空気入りタイヤの走行を開始した後、インナーライナー層の繋ぎ部付近においてクラックや剥離を発生することがなく、耐久性に優れた空気入りタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述した目的を達成する本発明の空気入りタイヤは、下記(1)に記載の構成を有する。
(1)熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂中にエラストマーをブレンドした熱可塑性樹脂組成物からなるシートの端部を繋いで環状に形成してインナーライナー層を構成させる空気入りタイヤにおいて、前記熱可塑性樹脂または前記熱可塑性樹脂中にエラストマーをブレンドした熱可塑性樹脂組成物からなるシートの両端部
が、該シートの平面視で根本が窪んだ突出部を有
しており、該端部の突出部と他の端部の窪んだ根本を噛み合わせてシート端部
が繋がれており、
その繋がれたシートが前記環状
を構成し、前記熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂中にエラストマーをブレンドした熱可塑性樹脂組成物からなるシートが、タイゴムシートと積層された積層体として前記インナーライナー層を構成し、かつ、該タイゴムシートはその端部が、該タイゴムシートの平面視で根本が窪んだ突出部を有しており、該タイゴムシートの端部同士は該タイゴムシートの突出部と他の端部の窪んだ根本を噛み合わせて繋がれてなることを特徴とする空気入りタイヤ。
【0014】
かかる本発明の空気入りタイヤにおいて、以下の(2)〜
(9)のいずれかの構成からなることが好ましい。
(2)前記インナーライナー層が、前記エラストマーが分散相、前記熱可塑性樹脂が連続相を成してなる熱可塑性樹脂組成物から構成されてなることを特徴とする上記(1)
に記載の空気入りタイヤ。
(3)前記エラストマーをブレンドした前記熱可塑性樹脂組成物中の該エラストマーの体積率が、55〜85体積%であることを特徴とする上記(1)
または(2)に記載の空気入りタイヤ。
(4)前記エラストマーの50重量%以上が、ハロゲン化ブチルゴムまたは臭素化イソブチレンパラメチルスチレン共重合ゴムまたは無水マレイン酸変性エチレンαオレフィン共重合ゴムであることを特徴とする上記(1)〜
(3)のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
(5)前記熱可塑性樹脂組成物中の前記熱可塑性樹脂の50重量%以上が、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン6
、ナイロン66、ナイロン6/66共重合体、ナイロン6/12共重合体、ナイロン6/10共重合体、ナイロン4/6共重合体、ナイロン6/66/12共重合体、芳香族ナイロン、およびエチレン/ビニルアルコール共重合体のいずれかであることを特徴とする上記(1)〜
(4)のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
(6)前記熱可塑性樹脂組成物中の前記エラストマーが、動的架橋をされてなることを特徴とする上記(1)〜
(5)のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
(7)前記タイゴムシートが、天然ゴム、
イソプレンゴム、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴムおよびブチルゴムのいずれか1種または複数種をポリマー中の主成分とするものであることを特徴とする上記
(1)に記載の空気入りタイヤ。
(8)前記タイゴムシートが接着性ゴムからなり、前記熱可塑性樹脂または前記熱可塑性樹脂中にエラストマーをブレンドした熱可塑性樹脂組成物からなるシートと前記タイゴムシートとが接着層を介さず直接積層されてなることを特徴とする上記
(1)に記載の空気入りタイヤ。
(9)前記タイゴムシートが接着性ゴムからなり、前記熱可塑性樹脂または前記熱可塑性樹脂中にエラストマーをブレンドした熱可塑性樹脂組成物からなるシートと前記タイゴムシートとが接着層を介さず直接積層されてなり、かつ、前記タイゴムシートとカーカスとが接着層を介さず直接積層されてなることを特徴とする上記
(1)に記載の空気入りタイヤ。
【発明の効果】
【0015】
請求項1にかかる本発明によれば、熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂中にエラストマーをブレンドした熱可塑性樹脂組成物からなるシートの端部を繋いで環状に形成し、さらに加硫成形を経て、該熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂中にエラストマーをブレンドした熱可塑性樹脂組成物からなるシートから形成されたインナーライナー層を有する空気入りタイヤにおいて、該空気入りタイヤの走行を開始した後、インナーライナー層の繋ぎ部付近においてクラックや剥離を発生することがなく、耐久性に優れた空気入りタイヤを提供することができる。
【0016】
請求項2〜請求項
9のいずれかにかかる本発明の空気入りタイヤによれば、より高い効果でかつ確実に請求項1にかかる本発明の効果を有する空気入りタイヤを得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、更に詳しく本発明の空気入りタイヤについて、説明する。
【0019】
本発明の空気入りタイヤは、
図1に示したように、熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂中にエラストマーをブレンドした熱可塑性樹脂組成物からなるシート2の端部を繋いで環状に形成してインナーライナー層を構成させる空気入りタイヤにおいて、前記熱可塑性樹脂または前記熱可塑性樹脂中にエラストマーをブレンドした熱可塑性樹脂組成物からなるシート2の両端部を、該シートの平面視で根本が窪んだ突出部を有するように形成し、該端部の突出部5と他の端部の窪んだ根本6を噛み合わせてシート端部を繋ぐことにより、前記環状が形成されていることを特徴とする。
【0020】
この方法は、バットスプライス方式を変形したものと言え、該シート2の端部同士を繋いでも、前述した
図3(b)のような該シートが2層重なって存在するものではないので、繋ぎ部分で剛性が極端に大きくなることはなく、剛性差によるクラックや剥離の発生が防止される。タイヤ加硫成形工程では、端部の突出部5と他の端部の窪んだ根本6が噛み合わされてシート端部が繋がれていることにより、繋ぎ部がリフトに耐えてリフトに追従して拡径し、繋ぎ部が多少伸びて最先端部で少し隙間ができることがあったとしても、繋ぎが全体として完全に開いてしまうことなくタイヤ成形をすることができる。
図1では、シート端部の突出部5と他の端部の窪んだ根本6の形態は、いわゆるジグソーパズルの嵌め合わせ部分の形態と類似したものを示しており、一方のシート端部での突出部5は、他方のシート端部での窪んだ根本6の部分と係合して固定的な嵌合がなされる。
【0021】
図2(a)〜(c)は、いずれも本発明にかかるシート2の繋ぎ方の各種の態様例を示したものであり、(a)は等辺台形状を呈して突出部5と窪んだ根本6を有するもの、(b)は中心角が180°よりも大きな円弧が連続した状態を呈して突出部5と窪んだ根本6を有するもの、(c)は
図1の如くジグソーパズルの嵌め合わせ部分の形態と類似の状態を呈して突出部5と窪んだ根本6を有するものをそれぞれ示している。特に(c)のジグソーパズルの嵌め合わせ部分と類似のものは、大きく窪んだ根本と突出部の嵌合でリフト時の張力に耐える以外に、カーカスコードと平行なスプライス部をなくすことで、タイヤ走行中に生じるカーカスの変形によるスプライス部への応力集中を緩和し、スプライス部耐久性を向上させることができる。
【0022】
この突出部5と窪んだ根本6は、繋がれるシート端の全幅領域にわたり形成されることが本発明の効果が大きく得られるので好ましいが、一部領域にだけ設けられるものでもよい。一部に設ける場合には、後述する
図4で示しているように、タイヤサイド〜ショルダー部付近において設けることが好ましい。特に、繰り返し大きな負荷が加わるサイド〜ショルダー部付近で前述したクラックや剥離が生じやすいからである。
【0023】
この突出部5と窪んだ根本6の形状の寸法は、タイヤサイズにもよるが、
図2(a)〜(c)に示した形状の場合では、一般的に、根本から突出部先端までの高さは5〜50mm、根本部の幅は2〜50mmとするのがよく、突出部は(一方の端部の)幅10cm当たり2〜10個とするのが本発明の効果を達成する上で好ましい。
【0024】
熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂中にエラストマーをブレンドした熱可塑性樹脂組成物からなるシート2は、熱可塑性樹脂100%からなるものよりも熱可塑性樹脂中にエラストマーをブレンドした熱可塑性樹脂組成物であることが好ましく、特にエラストマーが分散相、熱可塑性樹脂が連続相を成してなる熱可塑性樹脂組成物から構成されてなるものを使用することが、耐久性に優れ、またインナーライナー層として空気透過防止性が高いものが実現できる点で好ましい。
【0025】
熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂中にエラストマーをブレンドした熱可塑性樹脂組成物からなるシート2は、空気入りタイヤ中において、タイゴムシートと積層された積層体をなしてインナーライナー層を形成するが、該タイゴムシートはその端部が、該タイゴムシートの平面視で根本が窪んだ突出部を有することなく形成されていて、該タイゴムシートの端部同士はラップスプライス方式により繋がれていてもよい。本発明によれば、スプライス部において、熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂中にエラストマーをブレンドした熱可塑性樹脂組成物からなるシート2が2層になって存在していないので、剛性差の問題はないので、タイゴムシートは接合を確実にする意味でラップスプライス方式により繋いでもよいのである。あるいは、タイゴムシートをバットスプライス方式にしてもよく、熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂組成物からなるシート2の接合がリフトによって開くことがないので、それと積層されたタイゴムシートも開くことが、より少なく問題はほとんどない。その場合は、
図1(b)に示したように、熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂中にエラストマーをブレンドした熱可塑性樹脂組成物からなるシート2が単体で上記突出部5、窪んだ根本6が形成され、その嵌合後にタイゴムシート3がシート2に沿って繋がれる。
【0026】
あるいは、タイゴムシート3と熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂中にエラストマーをブレンドした熱可塑性樹脂組成物からなるシート2が積層された積層体として予め形成されており、その積層体の状態で、上記突出部、窪んだ根本を形成されたものでもよく、その場合は、タイゴムシート3の端部同士もタイゴムシートの突出部と他の端部の窪んだ根本が噛み合わされて繋がれることとなる。この場合は、タイゴムシートと積層体の状態で突出部と窪みの嵌合がされるため、繋ぎ合わせがより強くなされるという利点がある。
【0027】
本発明において、熱可塑性樹脂または前記熱可塑性樹脂中にエラストマーをブレンドした熱可塑性樹脂組成物からなるシート2の端部の、該シートの平面視で根本が窪んだ突出部と窪んだ根本部は、切断形状と同形状の刃先線を有する刃物を用いて打ち抜き加工によって切断して形成するか、あるいはレーザー切断により形成されることが、得られる形状の精度が良く、入り組んだ形状の加工が可能であるなど、加工性の点で好ましい。上記の刃物は、加熱したものを使用してもよい。
【0028】
図4は、本発明にかかる空気入りタイヤの形態の1例を示した一部破砕斜視図である。空気入りタイヤTは、トレッド部11の左右にサイドウォール部12とビード部13を連接するように設けている。そのタイヤ内側には、タイヤの骨格たるカーカス層14が、タイヤ幅方向には左右のビード13、13間に跨るように設けられている。トレッド部11に対応するカーカス層4の外周側にはスチールコードからなる2層のベルト層15が設けられている。矢印Xはタイヤ周方向を示している。カーカス層14の内側には、インナーライナー層10が配され、そのラップスプライス部Sがタイヤ幅方向に延びて存在している。
【0029】
本発明にかかる空気入りタイヤでは、タイヤ内周面上でこのラップスプライス部S付近で従来は生じやすかったクラックの発生、インナーライナー層10を形成している熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂組成物からなるシート2とタイゴムシート3の間のクラックの発生、剥離の発生が抑制されて耐久性が著しく向上するものである。
【0030】
シート2は、前述したように、熱可塑性樹脂100%からなるものよりも熱可塑性樹脂中にエラストマーをブレンドした熱可塑性樹脂組成物であることが好ましく、中でもエラストマーをブレンドした熱可塑性樹脂組成物中の該エラストマーの体積率が、55〜85体積%であることが好ましい。55〜85体積%とすることにより、剛性が低く、耐久性が向上することとなり、より高度に本発明の効果を得ることができるからである。
【0031】
以下に、本発明で用いることのできる熱可塑性樹脂、エラストマーについて説明する。
【0032】
本発明で用いることのできる熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリアミド系樹脂〔例えば、ナイロン6(N6)、ナイロン66(N66)、ナイロン46(N46)、ナイロン11(N11)、ナイロン12(N12)、ナイロン610(N610)、ナイロン612(N612)、ナイロン6/66共重合体(N6/66)、ナイロン6/66/610共重合体(N6/66/610)、ナイロンMXD6(MXD6)、ナイロン6T、ナイロン9T、ナイロン6/6T共重合体、ナイロン66/PP共重合体、ナイロン66/PPS共重合体〕及びそれらのN−アルコキシアルキル化物、例えば、ナイロン6のメトキシメチル化物、ナイロン6/610共重合体のメトキシメチル化物、ナイロン612のメトキシメチル化物、ポリエステル系樹脂〔例えば、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンイソフタレート(PEI)、PET/PEI共重合体、ポリアリレート(PAR)、ポリブチレンナフタレート(PBN)、液晶ポリエステル、ポリオキシアルキレンジイミドジ酸/ポリブチレンテレフタレート共重合体などの芳香族ポリエステル〕、ポリニトリル系樹脂〔例えば、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメタクリロニトリル、アクリロニトリル/スチレン共重合体(AS)、(メタ)アクリロニトリル/スチレン共重合体、(メタ)アクリロニトリル/スチレン/ブタジエン共重合体〕、ポリメタクリレート系樹脂〔例えば、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリメタクリル酸エチル〕、ポリビニル系樹脂〔例えば、酢酸ビニル、ポリビニルアルコール(PVA)、ビニルアルコール/エチレン共重合体(EVOH)、ポリ塩化ビニリデン(PDVC)、ポリ塩化ビニル(PVC)、塩化ビニル/塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニリデン/メチルアクリレート共重合体、塩化ビニリデン/アクリロニトリル共重合体(ETFE)〕、セルロース系樹脂〔例えば、酢酸セルロース、酢酸酪酸セルロース〕、フッ素系樹脂〔例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニル(PVF)、ポリクロルフルオロエチレン(PCTFE)、テトラフロロエチレン/エチレン共重合体〕、イミド系樹脂〔例えば、芳香族ポリイミド(PI)〕等を好ましく用いることができる。
【0033】
また、本発明で使用できる熱可塑性樹脂組成物を構成する熱可塑性樹脂とエラストマーは、熱可塑性樹脂については上述のものを使用できる。エラストマーとしては、例えば、ジエン系ゴム及びその水添物〔例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、エポキシ化天然ゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR、高シスBR及び低シスBR)、ニトリルゴム(NBR)、水素化NBR、水素化SBR〕、オレフィン系ゴム〔例えば、エチレンプロピレンゴム(EPDM、EPM)、マレイン酸変性エチレンプロピレンゴム(M−EPM)、ブチルゴム(IIR)、イソブチレンと芳香族ビニル又はジエン系モノマー共重合体、アクリルゴム(ACM)、アイオノマー〕、含ハロゲンゴム〔例えば、Br−IIR、CI−IIR、臭素化イソブチレン−p−メチルスチレン共重合体(BIMS)、クロロプレンゴム(CR)、ヒドリンゴム(CHR)、クロロスルホン化ポリエチレンゴム(CSM)、塩素化ポリエチレンゴム(CM)、マレイン酸変性塩素化ポリエチレンゴム(M−CM)〕、シリコンゴム〔例えば、メチルビニルシリコンゴム、ジメチルシリコンゴム、メチルフェニルビニルシリコンゴム〕、含イオウゴム〔例えば、ポリスルフィドゴム〕、フッ素ゴム〔例えば、ビニリデンフルオライド系ゴム、含フッ素ビニルエーテル系ゴム、テトラフルオロエチレン−プロピレン系ゴム、含フッ素シリコン系ゴム、含フッ素ホスファゼン系ゴム〕、熱可塑性エラストマー〔例えば、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、エステル系エラストマー、ウレタン系エラストマー、ボリアミド系エラストマー〕等を好ましく使用することができる。
【0034】
特に、エラストマーの50重量%以上が、ハロゲン化ブチルゴムまたは臭素化イソブチレンパラメチルスチレン共重合ゴムまたは無水マレイン酸変性エチレンαオレフィン共重合ゴムであることが、ゴム体積率を増やして低温から高温に至るまで柔軟、高耐久化できる点で好ましい。
【0035】
また、熱可塑性樹脂組成物中の熱可塑性樹脂の50重量%以上が、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン6
、ナイロン66、ナイロン6/66共重合体、ナイロン6/12共重合体、ナイロン6/10共重合体、ナイロン4/6共重合体、ナイロン6/66/12共重合体、芳香族ナイロン、およびエチレン/ビニルアルコール共重合体のいずれかであることが、空気透過防止性と耐久性を両立できる点で好ましい。
【0036】
また、前記した特定の熱可塑性樹脂と前記した特定のエラストマーとの組合せでブレンドをするに際して、相溶性が異なる場合は、第3成分として適当な相溶化剤を用いて両者を相溶化させることができる。ブレンド系に相溶化剤を混合することにより、熱可塑性樹脂とエラストマーとの界面張力が低下し、その結果、分散層を形成しているエラストマーの粒子径が微細になることから両成分の特性はより有効に発現されることになる。そのような相溶化剤としては、一般的に熱可塑性樹脂及びエラストマーの両方又は片方の構造を有する共重合体、あるいは熱可塑性樹脂又はエラストマーと反応可能なエポキシ基、カルボニル基、ハロゲン基、アミノ基、オキサゾリン基、水酸基等を有した共重合体の構造をとるものとすることができる。これらはブレンドされる熱可塑性樹脂とエラストマーの種類によって選定すればよいが、通常使用されるものには、スチレン/エチレン・ブチレンブロック共重合体(SEBS)及びそのマレイン酸変性物、EPDM、EPM、EPDM/スチレン又はEPDM/アクリロニトリルグラフト共重合体及びそのマレイン酸変性物、スチレン/マレイン酸共重合体、反応性フェノキシン等を挙げることができる。かかる相溶化剤の配合量には特に限定されないが、好ましくは、ポリマー成分(熱可塑性樹脂とエラストマーとの合計)100重量部に対して、0.5〜10重量部がよい。
【0037】
熱可塑性樹脂とエラストマーがブレンドされた熱可塑性樹脂組成物において、特定の熱可塑性樹脂とエラストマーとの組成比は、特に限定されるものではなく、熱可塑性樹脂のマトリクス中にエラストマーが不連続相として分散した構造をとるように適宜決めればよく、好ましい範囲は重量比90/10〜30/70である。
【0038】
本発明において、熱可塑性樹脂、または熱可塑性樹脂とエラストマーをブレンドした熱可塑性樹脂組成物には、インナーライナーとしての必要特性を損なわない範囲で相溶化剤などの他のポリマーを混合することができる。他のポリマーを混合する目的は、熱可塑性樹脂とエラストマーとの相溶性を改良するため、材料の成型加工性をよくするため、耐熱性向上のため、コストダウンのため等があり、これに用いられる材料としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ABS、SBS、ポリカーボネート(PC)等を例示することができる。また、一般的にポリマー配合物に配合される充填剤(炭酸カルシウム、酸化チタン、アルミナ等)、カーボンブラック、ホワイトカーボン等の補強剤、軟化剤、可塑剤、加工助剤、顔料、染料、老化防止剤等をインナーライナーとしての必要特性を損なわない限り任意に配合することもできる。熱可塑性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂のマトリクス中にエラストマーが不連続相として分散した構造をとる。かかる構造をとることにより、インナーライナーに十分な柔軟性と連続相としての樹脂層の効果により十分な空気透過防止性を併せ付与することができると共に、エラストマーの多少によらず、成形に際し、熱可塑性樹脂と同等の成形加工性を得ることができるものである。
【0039】
また、エラストマーは、熱可塑性樹脂との混合の際、動的に加硫することもできる。動的に加硫する場合の加硫剤、加硫助剤、加硫条件(温度、時間)等は、添加するエラストマーの組成に応じて適宜決定すればよく、特に限定されるものではない。
【0040】
このように熱可塑性樹脂組成物中のエラストマーが動的加硫をされていることは、該シートが加硫エラストマーを含んだシートとなるので、外部からの変形に対して抵抗力(弾性)があり、特に突出構造と窪んだ根本の構造を維持しやすく、本発明の効果を確実に得ることができることになり好ましい。
【0041】
加硫剤としては、一般的なゴム加硫剤(架橋剤)を用いることができる。具体的には、イオウ系加硫剤としては粉末イオウ、沈降性イオウ、高分散性イオウ、表面処理イオウ、不溶性イオウ、ジモルフォリンジサルファイド、アルキルフェノールジサルファイド等を例示でき、例えば、0.5〜4phr〔本明細書において、「phr」は、エラストマー成分100重量部あたりの重量部をいう。以下、同じ。〕程度用いることができる。
【0042】
また、有機過酸化物系の加硫剤としては、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルヒドロパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジ(パーオキシルベンゾエート)等が例示され、例えば、1〜20phr程度用いることができる。
【0043】
更に、フェノール樹脂系の加硫剤としては、アルキルフェノール樹脂の臭素化物や、塩化スズ、クロロプレン等のハロゲンドナーとアルキルフェノール樹脂とを含有する混合架橋系等が例示でき、例えば、1〜20phr程度用いることができる。
【0044】
その他として、亜鉛華(5phr程度)、酸化マグネシウム(4phr程度) 、リサージ(10〜20phr程度)、p−キノンジオキシム、p−ジベンゾイルキノンジオキシム、テトラクロロ−p−ベンゾキノン、ポリ−p−ジニトロソベンゼン(2〜10phr程度)、メチレンジアニリン(0.2〜10phr程度)が例示できる。
【0045】
また、必要に応じて、加硫促進剤を添加してもよい。加硫促進剤としては、アルデヒド・アンモニア系、グアニジン系、チアゾール系、スルフェンアミド系、チウラム系、ジチオ酸塩系、チオウレア系等の一般的な加硫促進剤を、例えば、0.5〜2phr程度用いることができる。
【0046】
具体的には、アルデヒド・アンモニア系加硫促進剤としては、ヘキサメチレンテトラミン等、グアジニン系加硫促進剤としては、ジフェニルグアジニン等、チアゾール系加硫促進剤としては、ジベンゾチアジルジサルファイド(DM)、2−メルカプトベンゾチアゾール及びそのZn塩、シクロヘキシルアミン塩等、スルフェンアミド系加硫促進剤としては、シクロヘキシルベンゾチアジルスルフェンアマイド(CBS)、N−オキシジエチレンベンゾチアジル−2−スルフェンアマイド、N−t−ブチル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアマイド、2−(チモルポリニルジチオ)ベンゾチアゾール等、チウラム系加硫促進剤としては、テトラメチルチウラムジサルファイド(TMTD)、テトラエチルチウラムジサルファイド、テトラメチルチウラムモノサルファイド(TMTM)、ジペンタメチレンチウラムテトラサルファイド等、ジチオ酸塩系加硫促進剤としては、Zn−ジメチルジチオカーバメート、Zn−ジエチルジチオカーバメート、Zn−ジ−n−ブチルジチオカーバメート、Zn−エチルフェニルジチオカーバメート、Te−ジエチルジチオカーバメート、Cu−ジメチルジチオカーバメート、Fe−ジメチルジチオカーバメート、ピペコリンピペコリルジチオカーバメート等、チオウレア系加硫促進剤としては、エチレンチオウレア、ジエチルチオウレア等を挙げることができる。
【0047】
また、加硫促進助剤としては、一般的なゴム用助剤を併せて用いることができ、例えば、亜鉛華(5phr程度)、ステアリン酸やオレイン酸及びこれらのZn塩(2〜4phr程度)等が使用できる。
【0048】
熱可塑性エラストマー組成物の製造方法は、予め熱可塑性樹脂とエラストマー(ゴムの場合は未加硫物)とを2軸混練押出機等で溶融混練し、連続相(マトリックス)を形成する熱可塑性樹脂中に分散相(ドメイン)としてエラストマーを分散させることによる。エラストマーを加硫する場合には、混練下で加硫剤を添加し、エラストマーを動的加硫させてもよい。また、熱可塑性樹脂またはエラストマーへの各種配合剤(加硫剤を除く)は、上記混練中に添加してもよいが、混練の前に予め混合しておくことが好ましい。熱可塑性樹脂とエラストマーの混練に使用する混練機としては、特に限定はなく、スクリュー押出機、ニーダ、バンバリミキサー、2軸混練押出機等が使用できる。中でも熱可塑性樹脂とエラストマーの混練およびエラストマーの動的加硫には、2軸混練押出機を使用するのが好ましい。更に、2種類以上の混練機を使用し、順次混練してもよい。溶融混練の条件として、温度は熱可塑性樹脂が溶融する温度以上であればよい。また、混練時の最大剪断速度は300〜7500sec
-1であるのが好ましい。混練全体の時間は30秒から10分、また加硫剤を添加した場合には、添加後の加硫時間は15秒から5分であるのが好ましい。上記方法で製作されたポリマー組成物は、射出成形、押出し成形等、通常の熱可塑性樹脂の成形方法によって所望の形状にすればよい。
【0049】
このようにして得られる熱可塑性エラストマー組成物は、熱可塑性樹脂のマトリクス中にエラストマーが不連続相として分散した構造をとる。かかる構造をとることにより、インナーライナーに十分な柔軟性と連続相としての樹脂層の効果により十分な空気透過防止性を併せ付与することができると共に、エラストマーの多少によらず、成形に際し、熱可塑性樹脂と同等の成形加工性を得ることができる。
【0050】
熱可塑性樹脂および熱可塑性エラストマー組成物のヤング率は、特に限定されるものではないが、好ましくは1〜500MPa、より好ましくは25〜250MPaにするとよい。
【0051】
また、タイゴムシートは、天然ゴム、イソブレンゴム、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴムおよびブチルゴムのいずれか1種または複数種をポリマー中の主成分とするものを使用することが好ましい。さらに、タイゴムシートは接着性ゴムからなることがタイヤ製造工程上好ましく、その場合、熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂中にエラストマーをブレンドした熱可塑性樹脂組成物からなるシートと、該タイゴムシートとが接着層を介さず直接積層されてなることが好ましい。そのように構成すると、タイゴムシートが加硫工程で圧力により嵌合部の隙間に入り込んでも該タイゴムシートと熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂組成物のシート端部と接着させることができるからである。さらに、あるいは、熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂中にエラストマーをブレンドした熱可塑性樹脂組成物からなるシートと、該タイゴムシートとが接着層を介さず直接積層されていて、かつ、タイゴムシートとカーカスとが接着層を介さず直接積層されてなることが好ましい。そのように構成すると、タイゴムシートとカーカスを予め積層させた部材をスプライス接合することができるからである。
【実施例】
【0052】
以下、実施例などにより、本発明の空気入りタイヤについて具体的に説明する。
【0053】
なお、各試験タイヤの評価は、以下に記載の方法によった。
【0054】
〔評価方法〕
試験タイヤとして、195/65/R15サイズのタイヤをそれぞれのインナーライナー層の形成の仕方をして作成し、空気圧120kPa、−20℃雰囲気下で、4.8kNの荷重をかけて、金属ドラム上を30000kmまで走行させた。該走行後、インナーライナーを観察し、クラックが発生したものを不合格とした。
【0055】
〔従来例1、比較例1、同2、同3、
参考例1、
実施例1〕
従来例1
空気透過防止層としてブチルゴムを用いたシートとタイゴムシートをプレアッシーしたシートをタイヤの所定長さにホットメスで切断し、それを成形ドラムに巻き付け、その後、カーカス等必要部材を貼り合わせてグリーンタイヤを作製した。未加硫ゴムはタックがあり、ドラム上でラップスプライス(
図5(a))すると容易に密着した。部材を全て貼り合わせ加硫することでスプライス部は共架橋により接着した。
【0056】
所定の試験走行後、スプライス部を観察したが異常はなかった。
【0057】
比較例1
熱可塑性樹脂中にエラストマーをブレンドした熱可塑性樹脂組成物からなるシートをカッターでタイヤの所定長さに切断し、それを成形ドラムに巻付け、スプライスのタイヤ内面側(成形ドラム側)を粘着性「テフロン」(登録商標)テープで固定し、その上に接着性タイゴムシートを巻付け、その後、カーカス等の必要部材を貼り合わせてグリーンタイヤを作製した。加硫の熱と圧力で熱可塑性エラストマー組成物のスプライス部を融着させた。
【0058】
所定の試験走行後、スプライス部を観察したところ、熱可塑性熱可塑性エラストマー組成物の融着部が150mm剥がれ、さらに50mm程度ゴムとも剥離した部分があって、三日月状にスプライスが開いていた。評価は不合格だった。
【0059】
比較例2
熱可塑性樹脂中にエラストマーをブレンドした熱可塑性樹脂組成物からなるシートをカッターでタイヤの所定長さに切断し、それをラップスプライス方式(
図5(a))で環状(円筒状)にし、スプライス部をヒートシーラーで接合したものを成形ドラムに挿入し、その上に接着性タイゴムを巻き付け、その後、カーカス等の必要部材を貼り合わせてグリーンタイヤを作製した。
【0060】
所定の試験走行後、スプライス部を観察したところ、熱可塑性樹脂組成物の融着部が二重(二層)になったスプライス部の両端に最大80mmのクラックが発生した。評価は不合格だった。
【0061】
比較例3
熱可塑性樹脂中にエラストマーをブレンドした熱可塑性樹脂組成物からなるシートをカッターでタイヤの所定長さに切断し、その片面に接着層を塗布により設け、該接着層の溶剤を揮発させたものを、熱可塑性樹脂組成物がドラム側になるように成形ドラムに巻き付けた。その上にタイゴムを巻き付けて、その後、カーカス等の必要部材を貼り合わせてグリーンタイヤを作製した。接着層のタックによりグリーンタイヤでは熱可塑性樹脂組成物のスプライス部は剥がれず、その後、加硫の熱で接着層と熱可塑性樹脂組成物を反応接着させた。
【0062】
所定の試験走行後、スプライス部を観察したところ、熱可塑性樹脂組成物が二重(二層)になったスプライス部の両端に最大50mmのクラックが発生した。評価は不合格だった。
【0063】
参考例1
熱可塑性樹脂中にエラストマーをブレンドした熱可塑性樹脂組成物からなるシートをタイヤの所定長さに切断する際、赤外線(CO2 )レーザー((株)キーエンス製ML−Z9520)を用いてジグソー状の突出部と窪んだ根本部を有する形状(根本から突出部先端までの高さ:10mm、根本部の幅:5mm、突出部の個数(一方の端部の):幅10cm当たり5個)に切断した。それを成形ドラムに巻き付け、両端のジグソー状凹凸部を嵌合させた。その上に接着性タイゴムシートを巻き付け、さらに、カーカス等の必要部材を貼り合わせてグリーンタイヤを作製した。得られたタイヤは、物理的嵌合と、接着性タイゴムシートとの密着によりスプライス部は剥がれなかった。その後、加硫時の熱と圧力で熱可塑性樹脂組成物と接着層、接着層とタイゴムシートとを反応接着させた。
【0064】
所定の試験走行後、スプライス部を観察したが異常はなかった。
【0065】
実施例
1
熱可塑性樹脂中にエラストマーをブレンドした熱可塑性樹脂組成物からなるシートと接着性タイゴムシートの積層体をタイヤの所定長さに切断する際、ジグソー状の突出部と窪んだ根元部を有する形状の刃物を150℃に加熱して用いてジグソー状の突出部と窪んだ根本部(根本から突出部先端までの高さ:18mm、根本部の幅:10mm、突出部の個数(一方の端部の):幅10cm当たり3個)を有する形状に切断した。これを、熱可塑性樹脂組成物がドラム側になるように成形ドラムに巻き付け、両端のジグソー状凹凸部を嵌合させた。その上にカーカス等の必要部材を貼り合わせてグリーンタイヤを作製した。得られたタイヤは、物理的嵌合と、接着性タイゴムシート層の密着によりスプライス部は剥がれなかった。その後、加硫時の熱と圧力で熱可塑性樹脂組成物と接着層、接着層とタイゴムシートとを反応接着させた。
【0066】
所定の試験走行後、スプライス部を観察したところ加硫工程の圧力でジグソー状凹凸部の嵌合部にタイゴムが入りこんで熱可塑性樹脂組成物の端部が若干開いていたが、クラック等の故障はなく良好であった。