(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら昨今の圧電センサの検出精度は非常に高い。そのため特許文献1に示す従来の方法においては、圧電センサは低い張力で張設される表層クッション127を介して、乗員が呼吸することによって生じる乗員の筋肉の圧力変動によって屈曲されるのみならず、乗員の表面に存在する凹凸によっても屈曲されてしまっていた。これによりフィルム状の圧電センサには、屈曲される方向が正負混在してしまい、結果的に精度の低い呼吸情報(生体情報)となってしまう虞があった。
【0006】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、精度の高い生体情報を得るために高検出能力を有する例えば歪みセンサを用いた場合にも安定して呼吸等の乗員の生体情報を検出可能な生体情報検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、請求項1に係る生体情報検出装置は、生体情報を検出するセンサと、前記センサを挟んで支持する弾性を有する第2の支持部材
および第2の支持部材よりも大きな弾性度の弾性を有する第1の支持部材と、を備え、前記第2の支持部材は表面で生体情報発信源と接触し、裏面で前記センサと接触し、
前記第1の支持部材は凹部を有し、前記凹部の底面には前記センサが配設され前記凹部内に前記第2の支持部材が配設されることにより前記センサが前記第1の支持部材と前記第2の支持部材とに挟持されており、前記第2の支持部材を所定形状の押圧部材で所定の押圧力で押圧したときの前記押圧部材の沈下量が、前記第1の支持部材を前記押圧部材および前記押圧力で押圧したときの前記押圧部材の沈下量よりも小さくなるよう前記第2の支持部材の
前記弾性度が設定される。
【0008】
請求項2に係る生体情報検出装置は、請求項1において、前記支持部材は軟質ポリウレタンフォームである。
【0010】
請求項
3に係る生体情報検出装置は、請求項
1または2において、前記第2の支持部材は、前記凹部の開口部より突出しない。
【0011】
請求項
4に係る生体情報検出装置は、請求項
1乃至請求項
3のいずれか1項において、前記第2の支持部材は前記センサ側の面に前記センサと接触する凸部を有する。
【0012】
請求項
5に係る生体情報検出装置は、請求項
4において、前記凹部および前記凸部は互いに嵌りあうR形状を有し、前記凹部内には前記センサが前記底面上に前記R形状に倣って配設される。
【0013】
請求項
6に係る項において、請求項1乃至請求項
5のいずれか1項において、前記生体情報検出装置はシートに配設され、前記第1および前記第2の支持部材は前記シートのクッション材である。
【0014】
請求項
7に係る生体情報検出装置は、請求項
6において、前記第1および前記第2の支持部材は、シートバックのクッション材である。
【0015】
請求項
8に係る生体情報検出装置は、請求項
6において、前記第1および前記第2の支持部材は、シートクッションのクッション材である。
【0025】
請求項
9に係る生体情報検出装置は、請求項1乃至請求項
8のいずれか1項において、前記センサはフィルム状またはワイヤ状の歪みセンサである。
【0026】
請求項
10に係る生体情報検出装置は、請求項
9において、前記歪みセンサは圧電センサである。
【0027】
請求項
11に係る生体情報検出装置は、請求項
10において、前記圧電センサはポリフッ化ビニリデンによって構成される。
【0028】
請求項
12に係る生体情報検出装置は、請求項1乃至請求項
11のいずれか1項において、前記生体情報は呼吸である。
【発明の効果】
【0029】
請求項1に係る生体情報検出装置によれば、生体情報発信源とセンサとの間に第1の支持部材より弾性度が小さい、つまり硬い第2の支持部材を介在させている。このため第2の支持部材により、例えば乗員の表面に存在する凹凸によるセンサへの影響が抑制され、高出力で安定した生体情報を取得できる。
また、第1の支持部材は凹部を有し、凹部内でセンサが第1の支持部材と前記第2の支持部材とに挟持されている。このため、例えば乗員の表面に存在する凹凸によるセンサへの影響が抑制され、高出力で安定した精度のよい生体情報を取得できる。また、第2の支持部材およびセンサは位置決めする必要もなく容易に取り付けが行える。
【0030】
請求項2に係る生体情報検出装置によれば、第1および第2の支持部材が軟質ポリウレタンフォームであるので、成形性がよく安価に製作できる。また第2の支持部材は第1の支持部材より弾性度が小さいとはいえ、軟質ポリウレタンフォームであるので生体情報発信源は第2の支持部材に接触しても異物感を感じる虞が低い。
【0032】
請求項
3に係る生体情報検出装置によれば、第2の支持部材は、凹部の開口部より突出しないので、例えば乗員の表面に存在する凹凸によるセンサへの影響が更に抑制でき、高出力で安定した精度のよい生体情報を取得できる。また、生体情報発信源が第2の支持部材に接触しても異物感を感じる虞はない。
【0033】
請求項
4に係る生体情報検出装置によれば、第2の支持部材はセンサに接触する凸部を有している。これにより生体情報発信源が発した振動は第2の支持部材の凸部に集中してセンサを押圧するのでセンサは高感度で精度よく生体情報信号を出力できる。
【0034】
請求項
5に係る生体情報検出装置によれば、第1の支持部材の凹部および第2の支持部材の凸部は相互に嵌り合うR形状を有し、凹部の底面上にはセンサがR形状に倣って配設されている。これにより初期状態においてセンサは第1および第2の支持部材のR形状に倣って裏面側に屈曲するので、裏面側への屈曲がし易い安定した形状で測定を行なうことができ、精度のよい情報を収集できる。
【0035】
請求項
6に係る生体情報検出装置によれば、生体情報検出装置は、シートに配設されるものであり、第1および第2の支持部材は、シートのクッション材である。このため生体情報検出装置によってシートに着座する人体の呼吸情報、心拍情報および体動等を把握することができる。
【0036】
請求項
7に係る生体情報検出装置によれば、第1および第2の支持部材は、シートバックのクッション材である。このためセンサの位置が人体の胸郭や心臓に近く、シートに着座している人体の、特に呼吸情報や心拍情報等を精度よく把握することができる。
【0037】
請求項
8に係る生体情報検出装置によれば、第1および第2の支持部材は、シートクッションのクッション材である。このため人体がシートに着座している時に、大腿部の動脈と常時接触しているので、生体情報のうち心拍情報が精度よく取得できる。
【0047】
請求項
9に係る生体情報検出装置によれば、センサはフィルム状またはワイヤ状の歪みセンサであり、広い範囲に亘って振動荷重が測定できるとともに、小さな信号も精度良く取得することができる。
【0048】
請求項
10に係る生体情報検出装置によれば、センサは感度が良いとされる圧電センサであり、より広い範囲に亘って振動荷重が測定できるとともに、小さな信号も精度良く取得することができる。
【0049】
請求項
11に係る生体情報検出装置によれば、圧電センサはポリフッ化ビニリデン(PVDF)によって構成される。ポリフッ化ビニリデンは有機系の材料で製作されており柔らかく、振動の検出感度もよい。このため自在に配置でき搭載性に優れるとともに小さな振動でも高精度に検出することができる。
【0050】
請求項
12に係る生体情報検出装置によれば、生体情報は呼吸であるので、生体情報発信源の体調や覚醒状態を管理するのに適している。
【発明を実施するための形態】
【0052】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る第1の実施形態の生体情報検出装置2を車両用シート1(本発明のシートに該当する)に具体化して説明する。なお、本実施形態における前後左右上下は、図示したとおりであり、車両用シート1に着座した図示しない乗員(本発明に係る生体情報発信源に該当する)が見た方向と一致するものとする。
【0053】
図1に示すように、車両用シート1は、乗員が着座するシートクッション11と、シートクッション11の後端部において前後方向に回動可能に取り付けられ、乗員の背もたれとなるシートバック21と、シートバック21に配置され乗員の呼吸信号Bを取得する生体情報検出装置2と、を有している。なお、このとき生体情報検出装置2は呼吸信号Bだけではなく、心拍および体動等の信号H、Mを含んだ信号を取得する。生体情報検出装置2は制御装置3に接続され、取得した呼吸信号B、心拍信号Hおよび体動信号M等を含む振動信号を制御装置3に送信している。制御装置3では、取得した振動信号を図略の呼吸信号用フィルタに通し、呼吸信号Bのみを抽出して増幅し呼吸情報Bとして検出する。なお、心拍信号Hおよび体動信号Mを抽出する場合には、それぞれに対応するフィルタをかけ抽出すればよい。また、シートバック21の上端には、乗員の頭部を支持するヘッドレスト15が取り付けられている。
【0054】
シートクッション11は、乗員が着座するものであり、
図1に示すように、クッションフレーム12と、該クッションフレーム12に支持されるベースクッション材13と、表皮14とを有している。クッションフレーム12は上面視がコの字状を呈し、左右に配置された一対のプレート部材12a、12aが前部で板状部材12bによって連結されている。
【0055】
ベースクッション材13は、公知の軟質ポリウレタンフォームによって成形されている。そしてベースクッション材13の下面には、クッションフレーム12に嵌合される図示しない嵌合溝が形成され、嵌合溝とクッションフレーム12とが嵌合してベースクッション材13がクッションフレーム12上に支持されている。そして一対のプレート部材12a、12aの両下端には図示しないSばねスプリングが複数本装架されクッションフレーム12とともにベースクッション材13を支持している。ただしSばねスプリングはなくてもよい。
【0056】
表皮14は、ベースクッション材13とベースクッション材13の着座側表面である上面を覆うように装着される布製(またはビニールレザーや皮革製等)部材である。
【0057】
シートバック21は、
図1に示すシートバックフレーム22と、シートバッククッション材23と、表皮25と、生体情報検出装置2と、を有している。シートバックフレーム22は、正面視がコの字状を呈し左右に配置された一対のサイドフレーム部材22a、22aが上端部でパイプ状部材22bによって連結されて構成されている。
【0058】
シートバッククッション材23の後面には、シートバックフレーム22に嵌合される図示しない嵌合溝が形成され、嵌合溝とシートバックフレーム22とが嵌合してシートバッククッション材23がシートバックフレーム22に支持されている。そして一対のサイドフレーム部材22a、22aの両後端には図示しないSばねスプリングが複数本装架されシートバックフレーム22とともにシートバッククッション材23を支持している。ただしSばねスプリングはなくてもよい。
【0059】
表皮25は、シートバッククッション材23とシートバッククッション材23の背もたれ側表面である上面を覆うように装着される布製(またはビニールレザーや皮革製等)部材である。
【0060】
生体情報検出装置2は、シートバッククッション材23を構成し、第1の支持部材に該当する弾性を有するシートバックベースクッション材23A(本発明のシートバックのクッション材に該当する)と、シートバッククッション材23を構成し、第2の支持部材に該当する弾性を有するカバークッション材24と、歪みセンサ17とを有している(
図1乃至
図3参照)。
【0061】
シートバックベースクッション材23Aおよびカバークッション材24は、弾性度(詳細は後述する)は異なるが、ともに公知の軟質ポリウレタンフォームによって成形されている。シートバックベースクッション材23Aは
図1乃至
図3に示すようにカバークッション材24が配設される有底の凹部26を有している。凹部26は、
図1に対し表皮14を取り外した状態を示す
図2に示すようにシートバックベースクッション材23Aのカバークッション材24側表面に、該表面と直交する方向からみた投影形状が長方形となるように刻設されている。ただし、この投影形状はどのような形状でもよい。例えば正方形でも良いし、円形でもよい。また楕円形や菱形、平行四辺形であってもよい。なお、
図2はカバークッション材24の一部を切りとり圧電センサ17が見える状態で図示している。
【0062】
図2、
図3に示すように、凹部26の底面26aは平面で形成され、底面26a上には歪みセンサの1種である圧電センサ17が配設される。圧電センサ17は、感応部としてのセンサ部17aと、センサ部17aからの信号のノイズを除去する回路部17bと、センサ部17aと回路部17bとを接続する配線17cと、可撓性を有しセンサ部17aと配線17cとを被覆する被覆材17dと、回路部17bとシートバックベースクッション材23Aの外部に設置されている図示しない制御装置を接続する接続コード17eと、を有している。センサ部17aは、フィルム状で可撓性を有し長尺形状をなしている。そして本実施形態において、圧電センサ17はセンサ部17aの長手方向が水平になるよう配置されている。また、圧電センサ17が取り付けられる位置は、乗員がシートクッション11上に着座したとき、乗員の胸や腰のあたりに配置されることが好ましい。これによって乗員の呼吸データが精度よく取得できる。圧電センサ17は回路部17bを一体的に有しているが、特にこの形態に限定するものではなく、例えば回路部17bが圧電センサ17の裏側でシートバックベースクッション材23Aに埋設されていてもよく、シートバックベースクッション材23Aの外部に設置されていてもよい。
【0063】
圧電センサ17のセンサ部17aは圧電体(圧電素子)によって構成され、殊に圧電ポリマーを例示できる。具体的には、例えばポリフッ化ビニリデン(以降、PVDFと称す)のフィルム、または、シートとすることができ本実施形態においては前述したようにフィルム状のPVDFを適用した。なお、PVDFについては公知であるので構造について詳細な説明は省略する。
【0064】
圧電ポリマーは広い周波数特性を有しており、他の圧電センサとして例示される例えば圧電セラミックス(Pzt)と比較して、柔軟性を備えている。
【0065】
PVDFは、長尺状のセンサ部17aが屈曲されたり、ねじれて歪んだりすることにより電荷を発生させ、発生された電荷量によって受けた荷重の大きさを演算するものである。このように、電力を供給する必要がないので簡素な構成とすることができる。
【0066】
上述のように、圧電センサ17(PVDF)はセンサ部17aに振動荷重が付与され、センサ部17aが所定の方向に屈曲されたときの屈曲量に応じた電圧の出力をおこなう。本実施形態においては、センサ部17aがカバークッション材24を介してシートバックベースクッション材23A方向に押圧されたときにシートバックベースクッション材23A方向に向って凸状に屈曲される方向を正方向とし、反対側であるカバークッション材24側に屈曲される方向を負方向とする。
【0067】
また、歪みセンサとしては、ほかにも前述のワイヤ状に形成された圧電セラミックス(Pztが散りばめられたポリエチレン)や、アレイ状に配列された歪みゲージ等によっても構成できる。さらに、エレクトレット材を圧電センサ17(PVDF)の替わりに用いてもよい。エレクトレットは、電気を通しにくい高分子材料(フッ素系樹脂、ポリプロピレン等)を加熱溶融し、直流の高電圧を加えて帯電させたセンサである。そして荷重がエレクトレットに加わると帯電バランスが崩れ、この崩れた帯電バランスを出力することによって付与された荷重量を検出する。これらを配設することによっても相応の効果が得られる。
【0068】
カバークッション材24は、シートバックベースクッション材23Aの凹部26に嵌合する直方体形状を呈し、シートバックベースクッション材23Aの凹部26に嵌入(または挿入)される。そして凹部26の底面26aと対向する面(裏面)に圧電センサ17(PVDF)の表面と接触する面(以後、センサ接触面24aと称す)が設けられ反対側の面(表面)に生体情報発信源と接触し生体情報発信源からの振動信号が入力される面(以後、生体情報入力面24bと称す)を有している。センサ接触面24aの各辺と生体情報入力面24bの各辺とを接続するカバークッション材24の側面は、カバークッション材24が凹部26に挿入されるとシートバックベースクッション材23Aの凹部26のそれぞれ対応する面に嵌合し固定される。カバークッション材24が凹部26に設置された状態において、カバークッション材24は少なくとも圧電センサ17のセンサ部17aの全体を覆っている。
【0069】
カバークッション材24は、圧電センサ17(PVDF)を裏面であるセンサ接触面24aとシートバックベースクッション材23Aの凹部26の底面26aとの間で挟持する。このとき、前述したように、本発明においてはシートバックベースクッション材23Aよりも、カバークッション材24のほうが弾性度が小さい、つまり所定の押圧力および所定の押圧部材で押圧したときに歪みにくい(硬い)軟質ポリウレタンフォームによって形成されている。そしてカバークッション材24の弾性度は事前に評価を行ない決定する。
【0070】
ここで、弾性度の評価方法について
図4に基づき説明する。
図4の断面図に示すようにシートバックベースクッション材23Aとカバークッション材24とが積層された状態において所定の押圧力P1および押圧部材18によってカバークッション材24の生体情報入力面24bをカバークッション材24の板厚方向に押圧し、そのときの押圧部材18の沈下量D1を測定する。このとき沈下量D1に比例する値を弾性度とする。なお、所定の押圧力P1および押圧部材18はどのように決定してもよい。ただし押圧部材18の先端部はR状であることが好ましい。これによって生体情報入力面24bを面で押圧することができ、安定して比較実験を行なうことができる。
【0071】
その後、カバークッション材24の表面と同一面であるシートバックベースクッション材23Aの最表面で先程と同様の所定の押圧力P1および押圧部材18でシートバックベースクッション材23Aの表面を押圧し、そのときの押圧部材18の沈下量D2を測定する。そして沈下量D2が沈下量D1よりも大きな値となるように、シートバックベースクッション材23Aとカバークッション材24の弾性度を設定する。なお、このとき、シートバックベースクッション材23Aの沈下量D2を測定するときに、凹部26の底面26aで測定してもよい。また、カバークッション材24およびシートバックベースクッション材23Aから同形状のテストピースをそれぞれ作成し、該テストピースによって沈下量D1、D2をそれぞれ測定して弾性度を設定してもよい。また、各テストピース自体の沈下量を単体同士で評価してもよい。
【0072】
なお、上記の条件を満たしてもカバークッション材24の弾性度の大きさがシートバックベースクッション材23Aの弾性度に近すぎるとカバークッション材24を介して乗員の体の凹凸が圧電センサ17に伝達されてしまう。これにより圧電センサ17の曲げ方向がシートバックベースクッション材23A側に屈曲される正方向、またはカバークッション材24側に屈曲される負方向に入り乱れて混在し、圧電センサ17の出力が小さくなって不安定になる虞がある。
【0073】
またカバークッション材24の弾性度が小さすぎると、乗員から出力された振動は、充分、なまされ、均一化された信号が圧電センサ17に伝達されるので圧電センサ17の出力は安定する。しかし乗員が小さすぎる弾性度を有したカバークッション材24に触れ異物感を感じてしまう虞がある。そこで、本発明においては、事前の評価によってカバークッション材24の弾性度の大きさを、圧電センサ17からの出力が安定し且つ乗員が異物感を感じない適切な大きさとなるようにしている。
【0074】
しかし、このように、カバークッション材24の弾性度を適切な大きさとするよう選定せずとも、上記評価の条件を満たせばカバークッション材24をそのまま適用してもよい。これによっても相応の効果は得られる。
【0075】
また、カバークッション材24はシートバックベースクッション材23Aの凹部26内に収納され凹部26の上面から突出することはない。これによって乗員がカバークッション材24近傍に背中をもたれかけさせても異物感を感じることはない。好ましくは、カバークッション材24の表面とシートバックベースクッション材23Aの表面23AA(凹部26の開口周辺部を含み生体情報発信源が接触する面)を同一面とすることにより、乗員がカバークッション材24近傍に背中をもたれかけさせても、より異物感を感じることはない。
【0076】
なお、第1の実施形態においては、シートバックベースクッション材23Aに凹部26を設け、凹部26内に圧電センサ17(PVDF)およびカバークッション材24を嵌合(挿入)して配設した。しかしこの態様に限らず、凹部26を設けずに平面状態のシートバックベースクッション材上に圧電センサ17(PVDF)を粘着テープ等によって貼付して配置し、その上にシートバックベースクッション材と同じ平面形状を有したシートバックベースクッション材よりも弾性度の小さなカバークッション材を積層してもよい。これによっても効果は得られる。
【0077】
次に作用について、発明者によって実施された
図5に示す実験結果に基づき説明する。
図5(a)は、従来技術によって製作された生体情報検出装置によって取得した乗員の呼吸データ(センサ出力)である。また
図5(b)は本発明に係る第1の実施形態の生体情報検出装置2によって取得した乗員の呼吸データ(センサ出力)である。
【0078】
図5(a)に示す従来技術においては、フィルム状の圧電センサ(PVDF)は生体情報検出装置2と同様にシートバックに設けられている。
図5(a)において破線は乗員が胸にバンド状センサを巻いて取得した呼吸データであり、実際の呼吸と極めて近い状態を示している。また実線は、圧電センサ(PVDF)によって取得した呼吸データである。各データにおいて+方向の振動は息を吸ったときの信号であり、−方向の振動は吐き出したときの信号を示している。このときの測定条件としては、シートバックは表皮を有し、表皮の下に小さい張力で張設されたやわらかい表層クッションと、大きな張力で張設されている硬いベースクッション材とを有している。そして圧電センサが表層クッションとベースクッション材との間に配設されている。そしてこのときの表層クッションおよびベースクッション材の厚さは、本実施形態のカバークッション材24およびシートバックベースクッション材23Aと同じになるよう構成してある。なお、実線データが破線データより小さいのは表皮によって信号が減衰しているためである。
【0079】
図5(a)をみると、破線が示す実際の呼吸データと実線が示す圧電センサが取得したデータとでは位相がずれていることがわかる。これは、乗員が発信した呼吸由来の筋肉の振動が乗員の体の表面の凹凸によって複雑な方向を有した信号となり、該複雑な信号がやわらかい表層クッションを伝播してそのまま圧電センサに伝わったためであると推定できる。このため本来、正方向に屈曲されるべきデータが部分的に反転されて負方向に屈曲する等して、本来の呼吸データとは異なったデータとして出現したと推定できる。
【0080】
次に、
図5(b)に示す本発明に係る第1の実施形態の生体情報検出装置2によって取得した呼吸データについて説明する。上記と同様、
図5(b)において破線は乗員が胸にバンド状センサを巻いて取得した実際の呼吸と極めて近い呼吸データ(センサ出力)であり、実線は、車両用シート1に配置した本発明に係る圧電センサ17(PVDF)によって取得した呼吸データ(センサ出力)である。
【0081】
図5(b)に示すように、破線が示す実際の呼吸データと実線が示す圧電センサ17が取得したデータとでは位相が一致している。これは、乗員が発信した呼吸由来の筋肉の振動が、乗員の体の表面の凹凸によって複雑な方向を有した信号として発信されたものの硬いカバークッション材24によって充分になまされ平均化されて圧電センサ17(PVDF)に伝達したためである。このため、圧電センサ17では本来、正方向に屈曲されるべきデータが反転されることなくそのまま正方向に屈曲し、これによって実際の呼吸データと位相が一致したものである。このように、本実施形態においては、実際の呼吸データに近いデータを得ることができた。
【0082】
上述の説明から明らかなように、第1の実施形態によれば、乗員(生体情報発信源)と圧電センサ17(歪みセンサ)との間にシートバックベースクッション材23A(第1の支持部材)より弾性度が小さいカバークッション材24(第2の支持部材)を介在させている。このため乗員が発した呼吸由来の振動は弾性度が小さいカバークッション材24によってなまされ、平均化されたデータとしてセンサ全域で全体の荷重を取得するのに適するフィルム状の圧電センサ17(PVDF)に到達することができる。即ち、乗員(生体情報発信源)の表面に存在する凹凸による圧電センサ17(PVDF)への影響が抑制される。これによって圧電センサ17(PVDF)は乗員の表面に存在する凹凸によって一部が反転しカバークッション材24側に屈曲して生体情報と逆方向の出力を送出することがなくなるので、高出力で安定した精度のよい生体情報を取得できる。
【0083】
また、第1の実施形態によれば、第1および第2の支持部材(シートバックベースクッション材23Aおよびカバークッション材24)が軟質ポリウレタンフォームであるので、成形性がよく安価に製作できる。また第2の支持部材であるカバークッション材24は、弾性度が小さいとはいえ、軟質ポリウレタンフォームであるので乗員はカバークッション材24に接触しても異物感を感じる虞が低い。
【0084】
また、第1の実施形態によれば、凹部26の底面26aには圧電センサ17(PVDF)が配設され凹部26内にカバークッション材24が配設されることにより圧電センサ17(PVDF)がシートバックベースクッション材23Aとカバークッション材24とに挟持される。これによりカバークッション材24および圧電センサ17(PVDF)の取り付けが容易である。
【0085】
また、第1の実施形態によれば、カバークッション材24(第2の支持部材)は、凹部26の開口部より突出しないので、乗員がカバークッション材24に接触しても異物感を感じる虞は低い。
【0086】
また、第1の実施形態によれば、生体情報検出装置2は、車両用シート1に配設されるものであり、シートバックベースクッション材23A(第1の支持部材)およびカバークッション材24(第2の支持部材)は、車両用シート1のシートバック21のクッション材である。このため圧電センサ17(PVDF)の位置が人体の胸郭や心臓に近く、シートに着座している乗員の、特に呼吸情報や心拍情報等を精度よく把握することができる。呼吸については、腰部でも精度よく把握できる。
【0087】
また、第1の実施形態によれば、センサは歪みセンサであり、フィルム状の圧電センサ17であるので、小さな信号も広くかつ精度良く取得することができる。また、圧電センサ17は自身が歪むことによって電荷を発生し、発生した電荷量によって振動量を検出するので電力を供給する必要が無く簡素な構成とすることができる。
【0088】
また、圧電センサ17はポリフッ化ビニリデン(PVDF)で構成される。ポリフッ化ビニリデンは有機系の材料で製作されており柔らかく、振動の検出感度もよい。このため自在に配置でき搭載性に優れるとともに小さな振動でも高精度に検出することができる。
【0089】
さらに、第1の実施形態によれば、生体情報検出装置2において生体情報は呼吸であるので、生体情報発信源である乗員の体調や、覚醒状態を管理するのに適している。
【0090】
次に、第1の実施形態に係る生体情報検出装置2の変形例1について
図6に基づき説明する。変形例1に係る生体情報検出装置32はカバークッション材34が凸部を有している点のみ第1の実施形態の生体情報検出装置2と異なる。よって変更点のみ説明し、同様部分については、説明を省略する。また同様の部品については同じ符号を付して説明する。
【0091】
変形例1の生体情報検出装置32のカバークッション材34はセンサ接触部34aに凸部37を有している。凸部37は圧電センサ17の長手方向で切断した断面形状が矩形を呈し底面37aが圧電センサ17のセンサ部17aの長手方向と直交する方向を横断し、圧電センサ17と当接している。このように構成されるので、乗員(生体情報発信源)が発した呼吸に由来する振動は弾性度が小さいカバークッション材34(第2の支持部材)に伝達され、カバークッション材34で信号が、充分なまされたのち凸部37に集中して圧電センサ17の一部を押圧する。これにより圧電センサ17は反転等することなく精度よく生体情報信号(呼吸信号B)を出力する。なお、凸部37の断面形状は矩形に限らず先端がテーパ状になっていてもよいし、逆テーパ状になっていてもよい。
【0092】
次に、変形例2について
図7に基づき説明する。変形例2は、第1の実施形態の変形例1のカバークッション材34(第2の支持部材)の凸部37およびシートバックベースクッション材23A(第1の支持部材)の凹部26をR形状に変更したものである。このとき変更後のカバークッション材44(第2の支持部材)の凸部47とシートバックベースクッション材43(第1の支持部材)の凹部46とは互いに嵌り合うように形成されている。そして嵌り合ったカバークッション材44とシートバックベースクッション材43との間に圧電センサ17(PVDF)が挟持されている。これにより、初期状態において圧電センサ17は凹部46の底面上でシートバックベースクッション材43およびカバークッション材44のR形状に倣い、シートバックベースクッション材43側への変形である正方向への変形がし易い形状となり、精度のよい情報が収集できる。
【0093】
次に、
参考例について
図8に基づいて説明する。なお
参考例の生体情報検出装置52は、第1の実施形態の生体情報検出装置2に対して可撓部材と支持部材とによって圧電センサ17(PVDF)を挟持する点が異なる。よって変更点のみ説明し、同様部分については、説明を省略する。また同様の部品については同じ符号を付して説明する。なお、
参考例についても生体情報検出装置52は、シートバック21に設けられているものとして説明する。
【0094】
生体情報検出装置52は、第1の実施形態と同様に、本発明に係る支持部材である弾性を有するシートバックベースクッション材53(第1の実施形態における第1の支持部材に相当する)の表面に該表面と直交する方向からみた投影形状が長方形となるように有底の凹部56が刻設されている。ただし、第1の実施形態と同様に投影形状は長方形に限らない。また、凹部56の底面56aは第1の実施形態の変形例2で説明したようにR形状で形成されている。そして凹部56には底面56aから上方に向って圧電センサ17(PVDF)と本発明に係る板状の可撓部材55と、穴埋部材であるカバークッション材54とが配設されている。
【0095】
このとき可撓部材55とカバークッション材54とは凹部56の底面のR形状と嵌り合うよう、それぞれの接触面がR形状を呈するよう形成されている。このとき、カバークッション材54のR形状部はカバークッション材54の凸部である。そして支持部材であるシートバックベースクッション材53と穴埋部材であるカバークッション材54とは、特にこれに限定するものではないが、同じ材質(軟質ポリウレタンフォーム)で成形されている。
【0096】
可撓部材55は、可撓性を有した部材であればどのようなものでもよい。たとえば樹脂でもよいし、可撓性を有する銅合金やアルミ合金等の金属でもよい。本実施形態においては、エポキシ樹脂を適用する。
【0097】
このように構成されて圧電センサ17(PVDF)がシートバックベースクッション材53(支持部材)と可撓部材55とに挟持される。これにより、初期状態において圧電センサ17は、凹部56の底面56a上で、シートバックベースクッション材53、カバークッション材54および可撓部材55のR形状に倣い、シートバックベースクッション材53側への変形である正方向への変形がし易い形状となり、精度のよい情報が収集できる。可撓部材55とシートバックベースクッション材53との間の弾性度の関係は下記のように規定されている。
【0098】
まず、
図9に示すように可撓部材55と同じ厚さを有した平面状の可撓部材59を、シートバックベースクッション材53上に積層した状態で所定形状の押圧部材58によって所定の押圧力P2で押圧したときの押圧部材58の沈下量D3が、シートバックベースクッション材53を押圧部材58および押圧力P2で押圧したときの押圧部材58の沈下量D4より小さくなるよう可撓部材59(可撓部材55)およびシートバックベースクッション材53の弾性度が設定されている。なお、このときも第1の実施形態と同様に、可撓部材55およびシートバックベースクッション材53のテストピースをそれぞれ同形状によって作成し、別々に沈下量D3、D4を測定することによって可撓部材55およびシートバックベースクッション材53の弾性度を設定してもよい。このときには、各テストピース自体の沈下量を単体同士で評価してもよい。しかし、これに限らず各テストピースをシートバックベースクッション材53と同質材で作成した同一形状の台の上に載せ、台の沈下量も含めた沈下量として評価を行なってもよい。
【0099】
そして
図8に示すように凹部56内ではカバークッション材54が凹部56の開口部から突出しないように配置されている。このように構成されるので、乗員は背中に異物感を感じることなく着座できるとともに、乗員が発した呼吸由来の振動信号がカバークッション材54を介して可撓部材55に伝達される。好ましくは、カバークッション材54の表面とシートバックベースクッション材53の表面53A(凹部56の開口周辺部を含み生体情報発信源が接触する面)を同一面とすることにより、乗員がカバークッション材54近傍に背中をもたれかけさせてもより異物感を感じることはない。その後、弾性度の小さな可撓部材55によって振動信号が充分なまされたのち圧電センサ17(PVDF)全体に均一な信号が伝達される。即ち、乗員の表面に存在する凹凸による圧電センサ17への影響が抑制される。これにより圧電センサ17(PVDF)は屈曲が反転等されることがないので、精度よく生体情報信号が出力される。このように第1の実施形態および第1の実施形態の変形例2と同様の効果が得られる。
【0100】
なお、上記、
参考例においては、可撓部材55と接触するカバークッション材54(穴埋部材)の凸部形状をR形状とした。しかし、これに限らず、凸部は第1の実施形態の変形例1に示したように断面が矩形等の形状を呈するものでもよい。これによって、第1の実施形態の変形例1と同様の効果を得ることができる。
また、上記、
参考例においてシートバックベースクッション材53の凹部56の底面を、第1の実施形態を示す
図3のシートバックベースクッション材23Aと同様に平面形状としてもよい。そして凹部56の底面から凹部56の開口部に向って圧電センサ17(PVDF)、平面で板状に形成された可撓部材および可撓部材と平面で接触する穴埋部材が配設されるよう構成する。これによっても、精度よく生体情報信号を得ることができる。
【0101】
次に
参考例の変形例1について
図10に基づき説明する。
参考例の変形例1の生体情報検出装置62は、
参考例の生体情報検出装置52に対して、凹部66内に穴埋部材であるカバークッション材54を有さず、可撓部材65が平面形状で形成されるとともに凹部66の底面66aも平面で形成されている点のみが異なる。このように形成されても乗員(生体情報発信源)が発した呼吸由来の振動は弾性度が小さい可撓部材55によって、充分、なまされ、平均化された信号として圧電センサ17(PVDF)に到達することができる。即ち、乗員の表面に存在する凹凸による圧電センサ17への影響が抑制される。これによって圧電センサ17(PVDF)は安定して精度のよい生体情報を取得できる。
【0102】
なお、上
記第1実施形態、
及び参考例においては、生体情報検出装置2、32、52、62は、シートバック21に設けられていた。しかしこの態様に限らず、
図11に示すように乗員が着座するシートクッション11に設けてもよい。このとき取り付け方法および構造はシートバック21のシートバックベースクッション材23A、43、53に設けたときと同様である。よって、
参考例においては第1の支持部材または支持部材がベースクッション材13になる。これによって、乗員がシートに着座している時に、大腿部の動脈と常時接触しているので、生体情報のうち心拍情報が精度よく取得できる。また、生体情報検出装置2、32、52、62をシートバック21およびシートクッション11の双方に設けてもよい。
【0103】
また、本実施形態
、及び参考例においては、車両用シートに生体情報検出装置2、32、52、62を適用したが、これに限らず事務用シートに適用し、事務用シートに着座する作業者の体調管理おこなってもよい。さらに病院や病院に準ずる施設のベッドに適用し、ベッドに横臥する患者の体調管理をおこなってもよい。
【0104】
さらに、本実施形態
、及び参考例においては、カバークッション材24に軟質ポリウレタンフォームを適用したが、シートバックベースクッション材23Aより弾性度が小さければ、ゴムでもよい。さらに、カバークッション材24は、ポリウレタン (PUR)、ポリスチレン (PS)、ポリオレフィン(主にポリエチレン (PE)やポリプロピレン (PP))、フェノール樹脂 (PF)、ポリ塩化ビニル (PVC)、ユリア樹脂 (UF)、シリコーン (SI)、ポリイミド (PI)、メラミン樹脂 (MF)等の発泡プラスチックであってもよい。