(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5888008
(24)【登録日】2016年2月26日
(45)【発行日】2016年3月16日
(54)【発明の名称】エネルギーハーベスト装置
(51)【国際特許分類】
H02J 7/00 20060101AFI20160303BHJP
H02J 50/00 20160101ALI20160303BHJP
H02J 7/35 20060101ALI20160303BHJP
H02N 11/00 20060101ALI20160303BHJP
【FI】
H02J7/00 303A
H02J17/00 A
H02J7/35 H
H02N11/00 A
【請求項の数】3
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2012-51590(P2012-51590)
(22)【出願日】2012年3月8日
(65)【公開番号】特開2013-188018(P2013-188018A)
(43)【公開日】2013年9月19日
【審査請求日】2015年1月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100167553
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 久典
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 郁夫
(72)【発明者】
【氏名】鎮目 大
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 広樹
【審査官】
松尾 俊介
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−244812(JP,A)
【文献】
特開平11−177154(JP,A)
【文献】
特開2009−240086(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00 − 7/36
H02J 50/00
H02N 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
環境エネルギーとしての熱を捉えて第1の電力を発電する第1の発電部と、
熱以外の環境エネルギーを捉えて第2の電力を発電する第2の発電部と、
前記第1の電力及び前記第2の電力を蓄える二次電池と、
当該二次電池から供給される電力に基づいて所定の処理を行う処理部と
を備え、
前記第1の発電部は互いに直列接続された複数の熱電対であり、
前記処理部は、前記複数の熱電対の1つから得られる温度検出信号に信号処理を施すエネルギーハーベスト装置。
【請求項2】
前記処理部は、信号処理を施した前記温度検出信号を外部に無線送信する請求項1記載のエネルギーハーベスト装置。
【請求項3】
前記第2の発電部は、光あるいは振動を環境エネルギーとして捉えて第2の電力を発電する請求項1または2記載のエネルギーハーベスト装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エネルギーハーベスト装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、環境エネルギーの一種であるRFエネルギーを捉えることにより発電し、当該発電による電力をコアデバイス(負荷)に供給するパワーハーベスタを備えるアプリケーション装置が開示されている。このアプリケーション装置は、電池やキャパシタ等の電力貯蔵部に電力を一旦貯蔵した後に、アプリケーション用集積回路を有するコアデバイスに供給する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2008−544730号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記アプリケーション装置では、エネルギー源であるRFエネルギーが減衰した場合に、負荷であるコアデバイスに十分な電力を供給することができないう問題がある。このような問題点は、パワーハーベスト装置の本質的な欠点であり、パワーハーベスト装置を実用化する上で解決しなければならない重要な課題である。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、環境エネルギーが変動しても安定した電力を負荷に供給することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明では、第1の解決手段として、環境エネルギーとしての熱を捉えて第1の電力を発電する第1の発電部と、熱以外の環境エネルギーを捉えて第2の電力を発電する第2の発電部と、第1の電力及び第2の電力を蓄える二次電池と、当該二次電池から供給される電力に基づいて所定の処理を行う処理部とを備える、という手段を採用する。
【0007】
本発明では、第2の解決手段として、上記第1の解決手段において、第1の発電部は互いに直列接続された複数の熱電対である、という手段を採用する。
【0008】
本発明では、第3の解決手段として、上記第2の解決手段において、処理部は、複数の熱電対の1つから得られる温度検出信号に信号処理を施す、という手段を採用する。
【0009】
本発明では、第4の解決手段として、上記第3の解決手段において、処理部は、信号処理を施した検出信号を外部に無線送信する、という手段を採用する。
【0010】
本発明では、第5の解決手段として、上記第1〜第4のいずれかの解決手段において、第2の発電部は、光あるいは振動を環境エネルギーとして捉えて第2の電力を発電する、という手段を採用する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、第2の電力のエネルギー源である熱以外の環境エネルギーが変動しても、熱をエネルギー源とする第1の電力を処理部(負荷)に供給することが可能なので、安定した電力を負荷に供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態に係る温度検出装置Aの機能構成を示すブロック図である。
【
図2】本発明の一実施形態の変形例に係る温度検出装置Bを示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態に係る温度検出装置A(エネルギーハーベスト装置)について説明する。本温度検出装置Aは、
図1に示すように、n個の熱電対T1〜Tn(第1の発電部)、太陽電池1(第2の発電部)、蓄電池2(二次電池)、センサ回路3及び監視伝送部4によって構成されている。これら構成要件のうち、センサ回路3及び監視伝送部4は、本実施形態における処理部を構成している。
【0014】
n個の熱電対T1〜Tnは、各々に環境温度(周囲温度)に応じた起電圧Vsをそれぞれ発生する温度センサーであり、図示するように互いに直列接続されている。すなわち、当該n個の熱電対T1〜Tnは、環境エネルギーとしての熱を捉えて電圧Vp(=n×Vs)の第1の電力を発電する一種の発電素子である。
【0015】
このような熱電対T1〜Tnのうち、第1番目の熱電対T1の一端は蓄電池2の一方の入力端に接続され、第n番目の熱電対Tnの一端はセンサ回路3の一方の入力端に接続され、また第n番目の熱電対Tnの他端は蓄電池2の他方の入力端及びセンサ回路3の他方の入力端にそれぞれ接続されている。すなわち、n個の熱電対T1〜Tnの合計起電圧Vpは第1の電力として蓄電池2に出力され、一方、第n番目(1個)の熱電対Tnの起電圧Vsは、温度検出信号としてセンサ回路3に出力される。
【0016】
太陽電池1は、光をエネルギー源として発電する発電素子である。すなわち、太陽電池1は、熱以外の環境エネルギーである光を捉えて電力を発電し、当該電力を第2の電力として蓄電池2に出力する。蓄電池2は、上記熱電対T1〜Tnから入力される第1の電力及び太陽電池1から入力される第2の電力を蓄える二次電池である。この蓄電池2は、自らが蓄えた電力(直流電力)を負荷であるセンサ回路3及び監視伝送部4に供給する。
【0017】
ここで、このような本温度検出装置Aでは、n個の熱電対T1〜Tnが第1の発電部として機能し、太陽電池1が第2の発電部として機能する。すなわち、本温度検出装置Aには、2つの発電機能部が設けられている。これら2つの発電機能部のうち、太陽電池1(第2の発電部)は、n個の熱電対T1〜Tn(第1の発電部)よりも発電電力が大きく、よって蓄電池2が蓄える直流電力の殆どは太陽電池1(第2の発電部)が発電したものである。太陽電池1(第2の発電部)は本温度検出装置Aの主発電機能部であり、一方、n個の熱電対T1〜Tnは本温度検出装置Aの補助発電機能部である。このようなn個の熱電対T1〜Tn、太陽電池1及び蓄電池2は、環境エネルギーをエネルギー源として捉えて発電するエネルギーハーベスト発電部を構成している。
【0018】
センサ回路3は、上記蓄電池2から入力される直流電源によって動作する電子回路であり、第n番目の熱電対Tnから入力される温度検出信号を増幅して監視伝送部4に出力する。監視伝送部4は、センサ回路3から入力された温度検出信号を外部に無線送信すると共に、蓄電池2及びセンサ回路3の動作状態を監視する。この監視伝送部4の無線通信機能は、近距離用の無線通信機能であり、よって電波の出力が比較的小さい。なお、これらセンサ回路3及び監視伝送部4は、本実施形態における処理部を構成している。
【0019】
次に、このように構成された温度検出装置Aの動作について詳しく説明する。
本温度検出装置Aでは、通常動作として、太陽電池1(第2の発電部)が発電した直流電力の一部でセンサ回路3及び監視伝送部4を作動させると共に、上記直流電力の残りを蓄電池2に充電する。
【0020】
しかしながら、太陽電池1では、十分な日照量が得られず発電量が低下する事態が生じ得る。このような事態が発生して蓄電池2の充電量が所定の下限値まで低下すると、蓄電池2は、太陽電池1の直流電力に代えて、n個の熱電対T1〜Tn(第1の発電部)が発電した直流電力を充電する。すなわち、n個の熱電対T1〜Tn(第1の発電部)は、太陽電池1がエネルギー源としている光とは異なる熱を捉えて発電を行うので、太陽電池1の発電量の低下に伴って発電量が低下することはない。
【0021】
したがって、本実施形態によれば、太陽電池1(第2の発電部)の発電量の低下をn個の熱電対T1〜Tn(第1の発電部)が補うので、エネルギーハーベスト発電部の負荷であるセンサ回路3及び監視伝送部4に安定した直流電力を供給することができる。
【0022】
センサ回路3は、このようなエネルギーハーベスト発電部から供給される直流電力を電源として第n番目の熱電対Tnから入力される温度検出信号を増幅して監視伝送部4に出力する。センサ回路3には第n番目の熱電対Tnから常時連続して温度検出信号が入力されるので、センサ回路3は温度検出信号を連続的に増幅して監視伝送部4に出力する。
【0023】
そして、監視伝送部4は、センサ回路3から入力された温度検出信号を電波として外部に送信する。監視伝送部4は、例えばセンサ回路3から連続的に入力される温度検出信号を所定のタイムインターバルでサンプリングすることにより離散的な温度検出データに変換し、この温度検出データを電波に順次乗せて発信する。
【0024】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、例えば以下のような変形例が考えられる。
(1)上記実施形態では、n個の熱電対T1〜Tnの合計起電圧Vpを蓄電池2に充電する構成を採用したが、本発明はこれに限定されない。例えば、
図2に示すように(n−1)個の熱電対T1〜Tn-1の合計起電圧Vqを蓄電池2に充電してもよい。すなわち、
図2に示す温度検出装置Bは、第n番目の熱電対Tnの他端を蓄電池2の他方の入力端に接続することに代えて、第n番目の熱電対Tnの一端を蓄電池2の他方の入力端に接続することにより、n個の熱電対T1〜Tnの合計起電圧Vpに代えて、(n−1)個の熱電対T1〜Tn-1の合計起電圧Vqを蓄電池2に入力するものである。
【0025】
(2)上記実施形態では、第2の発電部として太陽電池1を採用したが、本発明はこれに限定されない。例えば、振動を環境エネルギーとして捉えて発電を行う圧電素子を採用してもよい。また、風(気流)を環境エネルギーとして捉えて発電を行う一種の風力発電装置を第2の発電部として採用してもよい。
【0026】
(3)上記実施形態では、センサ回路3及び監視伝送部4から処理部を構成したが、本発明はこれに限定されない。例えば処理部をセンサ回路3のみから構成し、センサ回路3の出力を信号線(電線)を介して外部に送信してもよい。
【0027】
(4)上記実施形態では、n個の熱電対T1〜Tnを第1の発電部としたが、本発明はこれに限定されない。例えば、n個の熱電対T1〜Tnに代えて、ゼーベック効果を利用した熱電素子(半導体素子)を用いてもよい。この熱電素子は、n個の熱電対T1〜Tnと同様に熱を環境エネルギーとして捉えて発電を行う一種の発電素子である。
【符号の説明】
【0028】
A,B…温度検出装置(エネルギーハーベスト装置)、T1〜Tn…熱電対(第1の発電部)、1…太陽電池(第2の発電部)、2…蓄電池(二次電池)、3…センサ回路、4…監視伝送部