【実施例】
【0024】
以下に実施例、比較例に基づき本発明を詳細に説明するが、本発明の主旨を超えない限り本実施例に限定されるものではない。なお、本発明で用いる評価方法は以下の通りである。
【0025】
<架橋試験>
(架橋時間)
架橋時間の指標として、JIS K6300−2:2001に準じてt
C(90)とt
C(Δ80)を評価した。ここで、t
C(90)とt
C(Δ80)は以下の定義による。
t
C(90):架橋時間、または最大トルク値(M
H)−最小トルク値(M
L)の90%に達するのに必要な時間(分)
t
C(Δ80):架橋速度の目安、またはt
C(90)−t
C(10)で求められる時間(分)
ここでいうt
C(10)とは、最大トルク値(M
H)−最小トルク値(M
L)の10%に達するのに必要な時間(分)である。
【0026】
評価は振動式加硫試験機(JSRトレーディング(株)製キュラストメーターV型)を用いて、上型および下型の温度を140℃あるいは110℃に設定し、±1°の振幅角度で実施した。t
C(90)が短いほど最適架橋点までの時間が短くなり、t
C(Δ80)が短いほど、架橋開始点から最適架橋点までの時間が短くなり、短時間で架橋を完了する事ができる。
【0027】
(架橋度)
架橋度の指標として、JIS K 6300−2:2001に準じてM
H(最大トルク値)を評価した。評価は振動式加硫試験機(JSRトレーディング(株)製キュラストメーターV型)を用いて、上型および下型の温度を140℃あるいは110℃に設定し、±1°の振幅角度を用いて140℃あるいは110℃で実施した。M
Hは大きくなるに従って、EVAの架橋が進行している事を示す。架橋したEVAは耐熱性が向上する。太陽電池用封止材として使用するには、0.25N・m以上の架橋度(ゲル分率では80%以上に相当する)が要求される。
【0028】
<貯蔵安定性試験>
太陽電池用封止材組成物を30℃に保たれた場所に6ヶ月間静置し、その後、振動式加硫試験機を用いて140℃で架橋させたときの架橋度の保持率が90%以上であるとき貯蔵安定性は○、90%未満のとき貯蔵安定性は×とした。
【0029】
[実施例1]
[太陽電池用封止材組成物配合1]
EVA:100重量部
(東ソー株式会社製 ウルトラセン751:酢酸ビニル含有量28重量%)
架橋剤(式1のR=(CH
2)
2CH
3):0.5重量部
(1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)−2−メチルシクロヘキサン(日油株式会社製 パーヘキサHMC)
上記配合をロール機に供給し、60℃で混練して、太陽電池用封止材組成物を調製した。
【0030】
[実施例2]
太陽電池用封止材組成物配合1において、架橋剤を1.0重量部用いた以外は、実施例1と同様にして太陽電池用封止材組成物を調製した。
【0031】
[実施例3]
太陽電池用封止材組成物配合1において、架橋剤を2.0重量部用いた以外は、実施例1と同様にして太陽電池用封止材組成物を調製した。
【0032】
[実施例4]
[太陽電池用封止材組成物配合4]
EVA:100重量部
(東ソー株式会社製 ウルトラセン751:酢酸ビニル含有量28重量%)
架橋剤(式1のR=CH
2CH
3):0.5重量部
(1,1−ビス(t−アミルパーオキシ)−2−メチルシクロヘキサン(日油株式会社製 パーヘキサAMC)
上記配合の太陽電池用封止材組成物を用いた以外は、実施例1と同様にして太陽電池用封止材組成物を調製した。
【0033】
[実施例5]
太陽電池用封止材組成物配合4において、架橋剤を1.0重量部用いた以外は、実施例4と同様にして太陽電池用封止材組成物を調製した。
【0034】
[実施例6]
太陽電池用封止材組成物配合4において、架橋剤を2.0重量部用いた以外は、実施例4と同様にして太陽電池用封止材組成物を調製した。
【0035】
得られた各実施例の太陽電池用封止材組成物の架橋時間、架橋度、及び貯蔵安定性を上記試験方法により測定した。その結果を表1に示す。
【表1】
【0036】
[比較例1]
太陽電池用封止材組成物配合1において、架橋剤として1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−2−メチルシクロヘキサン(日油株式会社製 パーヘキサMC)を0.5重量部用いた以外は、実施例1と同様にして太陽電池用封止材組成物を調製した。
【0037】
[比較例2]
太陽電池用封止材組成物配合1において、架橋剤として1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン(日油株式会社製 パーヘキサ3M)を1.0重量部用いた以外は、実施例1と同様にして太陽電池用封止材組成物を調製した。
【0038】
[比較例3]
太陽電池用封止材組成物配合1において、架橋剤としてt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(日油株式会社製 パーブチルO)を1.0重量部用いた以外は、実施例1と同様にして太陽電池用封止材組成物を調製した。
【0039】
得られた各比較例の太陽電池用封止材組成物の架橋時間、架橋度、及び貯蔵安定性を上記試験方法により測定した。その結果を表2に示す。
【表2】
【0040】
表1および表2の結果より、架橋試験において、架橋温度140℃で評価した実施例1〜6の評価1−1〜6−1と比較例1〜3の評価7−1〜9−1を比較すると、実施例の評価1−1〜6−1の太陽電池用封止材組成物は、t
C(90)が6分未満でかつt
C(Δ80)が5分未満の短い時間で架橋できると共に、M
Hが0.25N・m以上の架橋度を有していた。一方、比較例の評価7−1および8−1の太陽電池用封止材組成物は、t
C(90)が6分以上でかつt
C(Δ80)が5分以上の時間を要した。また、比較例の評価9−1の太陽電池用封止材組成物は、M
Hが0.25N・mより低く、太陽電池用封止材として不可欠な耐熱性に必要な架橋度が得られなかった。
【0041】
次に、架橋温度110℃で評価した実施例1〜6の評価1−2〜6−2と比較例1〜3の評価7−2〜9−2を比較すると、実施例の評価1−2〜6−2の太陽電池用封止材組成物は、t
C(90)が100分未満でかつt
C(Δ80)が80分未満の時間で架橋できると共に、M
Hが0.25N・m以上の架橋度を有していた。一方、比較例の評価7−2および8−2の太陽電池用封止材組成物はt
C(90)が100分以上でかつt
C(Δ80)が80分以上の長時間を要した。
【0042】
次に、貯蔵安定性試験において、実施例1〜6の評価1〜6と比較例1〜3の評価7〜9の貯蔵安定性を比較すると、実施例の評価1〜6はいずれも貯蔵安定性が良かったが、比較例の評価9は貯蔵安定性が悪かった。
【0043】
以上から、本発明により、110℃〜140℃の広範囲の架橋温度において太陽電池用封止材として不可欠な耐熱性に必要な架橋度を損なう事なく、架橋時間の短縮を図ることができ、さらに長期間保管しても太陽電池用封止材として不可欠な耐熱性に必要な架橋度が維持される太陽電池用封止材組成物を得ることができた。