(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記構造のヘッドランプの場合、ヘッドランプのバルブ(光源)を点灯させたときに発生する熱でハウジング内に生じる空気の流れを考慮して、流出孔と流入孔の位置を設定している。したがって、結露によるレンズ内面の曇りを効率よく解消するためにはヘッドランプを点灯しなければならなかった。つまり、ヘッドランプを点灯していない状態では、レンズの内面の曇りを十分に解消することが難しかった。
【0006】
また、流出孔及び流入孔は、ハウジングの後面に設置されている。ハウジング内に流入された空気は、流出孔まで流動抵抗が少なくかつ最短経路となる部分を優先して流れる。そのため、ヘッドランプ内部に配置される反射板などの構成によっては、レンズ近傍(内面側)に十分な空気が流れにくくなる場合がある。このような場合、ヘッドランプのバルブを点灯させたとしても、レンズの内面の曇りを解消するのには時間がかかるという問題があった。
【0007】
また、近年では、ヘッドランプの光源として発光ダイオード(LED)や高輝度放電(HID)バルブなど、熱量の小さい光源を採用する車両が増えている。このようなヘッドランプの場合、バルブを点灯したことによって発生する熱はハロゲンバルブに比べて小さい。つまり、バルブを点灯してもレンズ内面の曇りを解消することは、より一層難しくなると考えられ、改善の余地があった。
【0008】
そこで、本発明は、バルブを点灯させることなく、内部が結露することによるレンズ内面の曇りを車両が走行している間に効率よく晴らす構造を有した車両用のヘッドランプを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る一実施形態のヘッドランプは、ハウジングと光源と反射板とレンズと流入ポートと流出ポートと
エクステンションとを備える。ハウジングは、車両の車体に固定され少なくとも車体の前方に開放した灯室を形成する。光源は、灯室に組み込まれる。反射板は、光源とハウジングとの間に配置され、光源から出射された光を車体の前方へ反射する。レンズは、ハウジングに外周部で接合され、灯室の前方を塞ぐとともに車体の前方へ出射される光を透過させる。流出ポートは、灯室を外部の第1領域に連通し、灯室の内部の空気を灯室の外部へ排出させる。流入ポートは、灯室を外部の第2領域に連通し、灯室の外部から灯室の内部へ空気を導入する。
エクステンションは、レンズに対して設けられる隙間よりも反射板に対して設けられる隙間の方が大きくなるように反射板とレンズとの間に配置される。そして、ハウジングは、レンズの内面近傍の空気を流出ポートへ案内する排出流路を灯室に有している。第1領域及び第2領域は、車両が前方へ走行する際に、第1領域の圧力が第2領域の圧力よりも低くなる領域に設定される。
エクステンションは、流入ポートから灯室内へ入りハウジングと反射板との間に拡散された空気を、レンズとの間に設けられた隙間及び反射板との間に設けられた隙間のそれぞれに通過させてレンズの内面に接する領域へ案内する。
この場合、エクステンションは、少なくともレンズに面した下端部とレンズとの間、及び、側端部とハウジングとの間、のそれぞれに隙間を有し、排気流路は、流出ポートを囲うとともにハウジングの側壁に沿ってレンズに向かって延びる案内隔壁、及びこのエクステンションによって構成されていてもよい。
【0010】
または、本発明に係る他の実施形態のヘッドランプは、ハウジングと光源と反射板とレンズと流出ポートと流入ポートとを備える。ハウジングは、車両の車体に固定され少なくとも車体の前方に開放した灯室を形成する。光源は、灯室に組み込まれる。反射板は、光源とハウジングとの間に配置され、光源から出射された光を車体の前方へ反射する。レンズは、ハウジングに外周部で接合され、灯室の前方を塞ぐとともに車体の前方へ出射される光を透過させる。流出ポートは、灯室を外部の第1領域に連通し、灯室の内部の空気を灯室の外部へ排出させる。流入ポートは、灯室を外部の第2領域に連通し、灯室の外部から灯室の内部へ空気を導入する。そして、ハウジングは、レンズの内面近傍の空気を流出ポートへ案内する排出流路を灯室に有している。第1領域および第2領域は、車両が前方へ走行する際に、第1領域の圧力が第2領域の圧力よりも低くなる領域に設定される。流
入ポートは、
光源よりも高い位置で灯室に連通するとともにハウジングの車幅方向内側寄
りまたは車幅方向外側寄りの位置に配置し、流
出ポートは、
光源よりも低い位置で灯室に連通するとともにハウジングの
車幅方向
内側寄
りまたは車幅方向
外側寄りの
流入ポートと
は反対側となる位置に配置する。
【0011】
この場合、ヘッドランプは、反射板とレンズとの間に配置され
るエクステンションを備えていてもよい。エクステンションは、少なくともレンズに面した下端部とレンズとの間
、及び
、側端部とハウジングとの間
、のそれぞれに隙間を有する
。排出流路は、
流出ポートを囲うとともにハウジングの側壁に沿ってレンズに向かって延びる案内隔壁
、及びエクステンションによって構成される。
【0012】
流出ポートが連通される第1領域は、車両の前部において走行風が導入される開口部の近傍の領域に設定される。流出ポートの孔口は、直接走行風を受けない位置、例えばハウジングの後部に配置されるか、走行風の流れに沿うように走行風の下流に向けられる。
【発明の効果】
【0013】
上述のように構成された本発明に係る一実施形態のヘッドランプによれば、流出ポートは、車両が前方へ走行した場合に流入ポートが連通する灯室外部の領域(第2領域)よりも圧力が低くなる灯室外部の領域(第1領域)に連通されている。したがって、灯室内の空気は、まず流出ポートから吸い出され、それに相当する量の空気がハウジングの外部から流入ポートを通って供給される。つまり、灯室の内部の湿った空気は、流出ポートから排出され、流入ポートから外部の乾いた空気が入ってくる。このように、走行時に生じるハウジング外部の圧力差を利用して灯室内の空気を積極的に置換することで灯室の内部の湿度を下げることを可能としている、さらに、レンズ内面近傍の空気を流出ポートへ導く排出流路を設けているので、流入ポートから流入した空気がレンズの近傍を通って排出され易くなるため、より効率良くレンズの曇りを解消することが可能である。つまり、上記構成であれば、ヘッドランプのバルブ(光源)の熱を利用せずとも、レンズの内面は、結露が生じていても、車両を走行させることによって、自然と灯室内部の換気が促進されレンズ内面の曇りが解消される。
【0014】
ゆえに、例えば発光ダイオード(LED)等の発熱量の低い光源をヘッドランプに採用した場合でも、レンズ内面の曇りを解消することができる。
【0015】
流入ポートをハウジングの車幅方向外側寄りまたは車幅方向内側寄りの位置に配置し、流出ポートをハウジングの車幅方向外側寄りまたは車幅方向内側寄りの流入ポートと反対側の位置に配置したヘッドランプによれば、灯室内における空気の流れる経路が長くなり、灯室内の空気が一様に換気される。またレンズ内面の全体に亘って空気が流れるので、レンズの内面に生じた結露が全面的に晴れ易い。
【0016】
排出流路が、流出ポートを囲うとともにハウジングの側壁に沿ってレンズに向かって延びる案内隔壁を備えるヘッドランプによれば、レンズの内面の近傍の空気を優先的に流出ポートから吸い出す。レンズの内面近傍の空気が流入ポートから入ってきた外気によって換気されるので、レンズの内面に生じた結露が晴れ易い。
【0017】
反射板とレンズとの間に配置されるエクステンションをさらに備えるヘッドランプによれば、このエクステンションが、少なくともレンズに面したエクステンションの下端部とレンズとの間及びエクステンションの側端部とハウジングとの間にそれぞれ隙間を有している。そして、排出流路は、案内隔壁及びエクステンションによって構成される。案内隔壁は、反射板に面した側からエクステンションに対して当接もしくは近接するように設けられている。灯室内の空気は、エクステンションとレンズの間の隙間を通り、さらにハウジング側に回り込んで案内隔壁の内側にある流出ポートへ流れる。レンズとエクステンションの間に空気が流れるので、レンズの内側に生じた結露が晴れ易い。
【0018】
車両の前部において走行風が導入される開口部の近傍の領域に、流出ポートを連通させるヘッドランプにおいて、流出ポートが連通する灯室の外部領域の圧力は、流入ポートが連通する外部領域の圧力に比べて低くなりやすい。したがって、流出ポートから灯室の内部の空気が吸い出されやすくなる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明に係る一実施形態のヘッドランプ10について、
図1から
図9を参照して説明する。
図1は、このヘッドランプ10を備える車両1を示す。実施形態の説明の便宜上、車両1が進行する方向を基準に「前」,「後」,「左」,「右」をそれぞれ定義し、重力が作用する方向を基準に「上」,「下」を定義する。また、車幅方向に車両1の中心に向かう方向を「内側」、中心から離れる方向を「外側」とする。
【0021】
図1に示す車両1は、
図2に示すように車体2の前部にエンジン3とヘッドランプ10とを搭載している。ヘッドランプ10は、エンジン3が搭載されたエンジンルーム21に通じる部分に配置されている。車体2は、左右対称に配置された一対のヘッドランプ10の間にエンジンルーム21に通じる開口部22を有している。車両1が走行することによって、開口部22を通過する空気は、エンジンルーム21から車体2の下部へ通り貫ける。走行する車体2に対して相対的に生じる空気の流れを「走行風」と呼ぶ。
【0022】
この走行風Wは、
図2に示すように、エンジンルーム21を通過する際、開口部22に近い範囲の下流側となる部分を減圧する。つまり、車体2の内側に近いヘッドランプ10の後方に位置する第1領域P1が、ヘッドランプ10の外側の後方に位置する第2領域P2よりも減圧される。また、走行風Wは、エンジンルーム21内においてエンジン3やその他の補機あるいはエンジンルーム21を構成する隔壁23に衝突することによって攪拌され、車体2の外側寄りのヘッドランプ10に後ろから吹き付けることもある。この場合、車体2の外側寄りのヘッドランプ10の後方に位置する第2領域P2は、大気圧よりも加圧される。つまり、ヘッドランプ10の内側の後方の第1領域P1と外側の後方の第2領域P2の間に、さらに圧力差が生じる。
【0023】
ヘッドランプ10は、左右対称の構造を有している。そこで、
図3から
図9に示すように、車体2の左側のヘッドランプ10を代表して説明する。ヘッドランプ10は、ハウジング11と、光源12と、反射板13と、レンズ14と、流入ポート15と、流出ポート16とを備える。本実施形態のヘッドランプ10は、さらにエクステンション17を備えている。このエクステンション17は、ベゼルと呼ばれることもある。
【0024】
図3は、ハウジング11とエクステンション17を組み合わせた状態のヘッドランプ10を示す。
図4は、ヘッドランプ10を後方から見た図、すなわちエンジンルーム21側から見た図である。
図5は、流入ポート15と光源12と流出ポート16のそれぞれ中心を通るヘッドランプ10の断面図である。
図6は、ハウジング11の流出ポート16が設けられた部分を前方から見た斜視図である。
図7は、鉛直方向に流出ポート16の中心を通るように切ったヘッドランプ10の断面図であり、
図8は、水平方向に流出ポート16の中心を通るように切ったヘッドランプ10の断面図である。
図9は、
図6に示したハウジング11にエクステンション17を取り付けた状態の斜視図である。
【0025】
ハウジング11は、
図3及び
図4に示すように車体2に固定される複数のブラケット111a,111b,111c,111d,111eを有している。これらのブラケット111a〜111eは、出射される光の光軸を調整する場合にも利用される。ハウジング11は、
図3及び
図5に示すように、車体2の前方に開放した灯室112を形成する。光源12は、高輝度放電(HID)ランプやハロゲン電球などのバルブであって、灯室112内に組み込まれる。光源12は、
図5に示すようにロービーム用の第1の光源121とハイビーム用の第2の光源122を含む。これらの他に、本実施形態のヘッドランプ10は、ハウジング11の灯室112内に組み込まれる光源12として、車幅灯や方向指示灯を有している。光源12に接続されるケーブルやハーネス類がハウジング11を通り貫けた部分は、水密に密封されている。
【0026】
反射板13は、
図5に示すように光源12とハウジング11との間に配置されている。本実施形態の場合、光源12は、
図5に示すように反射板13に口金が固定されている。ハウジング11は、
図4及び
図5に示すように、光源12を通すための開口部113と、この開口部113を塞ぐキャップ114とを有している。開口部113は、反射板13に光源12を取り付けおよび取り外し操作できる程度に十分に大きい。反射板13は、
図5に示すように光源12を焦点とする放物面に形成され、光源12から出射された光を車体2の前方へ反射する。
【0027】
レンズ14は、
図5に示すように、光源12及び反射板13の前面を覆い、灯室112を塞ぐようにハウジング11に対して外周部で接合されている。このレンズ14は、光源12から車体2の前方へ出射される光を透過させる透光性部材、本実施形態では透明な樹脂(プラスティック)で作られており、レンズ機能を有している。
【0028】
流入ポート15及び流出ポート16は、
図5に示すように、ハウジング11とレンズ14とで囲われた灯室112をハウジング11の外部に連通させる。
図4に示すように流入ポート15は、灯室112の上部寄りに設けられ、流出ポート16は、灯室112の下部寄りに設けられている。さらに本実施形態において、流入ポート15は、車体2の幅方向に外側寄りの位置に配置され、流出ポート16は、車体2の幅方向に内側寄りの位置に配置されている。つまり、車体2の正面からヘッドランプ10を見た場合、流出ポート16は、流入ポート15に対して斜め下の対角の位置に配置されている。さらに、この実施形態において、流入ポート15は、第1の光源121及び第2の光源122よりも高い位置で灯室112に連通し、流出ポート16は、第1の光源121及び第2の光源122よりも低い位置で灯室112に連通している。
【0029】
流入ポート15及び流出ポート16は、
図5に示すように車両1の進行方向に沿ってハウジング11を貫通する孔であり、それぞれ
図4に示すようにハウジング11に向かってU字形に折り返された通気管151,161がハウジング11の外側に取り付けられている。通気管151,161は、
図4に示すように、水などが直接かからないように、フード152,162で囲われている。この通気管151,161及びフード152,162は、流入ポート15及び流出ポート16を通って外部から灯室112内部へ水が直接侵入しないようにするために設けられている。したがって、通気管151,161は、水が浸入することを防止できれば、U字形以外の形あるいは構造であってもよい。
【0030】
本実施形態の流出ポート16は、車両1が前方へ走行することによって、流入ポート15が連通する灯室112の外部領域よりも圧力が低くなる灯室112の外部領域に開口している。具体的には、流出ポート16の通気管161は、
図2に示す第1領域P1に連通しており、流入ポート15の通気管151は、
図2に示す第2領域P2に連通している。そして、第1領域P1の圧力は、車両1が前方へ走行することによって、第2領域P2の圧力よりも低くなる。なお、流入ポート15の通気管151が連通する位置よりも気圧が低くなる位置に流出ポート16の通気管161が連通するように、流出ポート16から少し離れた位置まで延びていてもよい。
【0031】
このヘッドランプ10は、
図3及び
図5に示すように、反射板13とレンズ14との間にエクステンション17を備えている。エクステンション17は、反射板13の反射面を前方へ延長するとともにヘッドランプ10の意匠の一部を構成する。このエクステンション17は、単一の部材で一続きに構成されていてもよいし、複数の部材を組み合わせて構成されていてもよい。エクステンション17は、少なくともレンズ14に面した下端部171とレンズ14との間、および側端部172とハウジング11との間に、それぞれ隙間G1,G2を有して組み立てられている。また、エクステンション17は、レンズ14に対して設けられる隙間G1よりも反射板13に対して設けられる隙間G3の方が大きくなるように配置される。
【0032】
ヘッドランプ10は、
図6に示すように、流出ポート16が灯室112に連通した部分を取り囲むように、ハウジング11の灯室112側にレンズ14に向かって延びた案内隔壁18を備えている。案内隔壁18は、レンズ14の内面近傍の空気を流出ポート16へ案内するように、ハウジング11に一体に形成されている。なお、案内隔壁18は、エクステンション17に一体に形成されていてもよいし、ハウジング11やエクステンション17と別体に構成されていてもよい。
【0033】
図5、
図7及び
図8に示すように、本実施形態の場合、流出ポート16が設けられた部分のハウジング11とレンズ14との間にエクステンション17があるので、案内隔壁18は、反射板13に面した側からエクステンション17に当接もしくは近接している。また、
図6から
図8に示すように、案内隔壁18は、車両1の進行方向に沿って、エクステンション17の下端部171とハウジング11の間をレンズ14の内面近傍まで延びた下部隔壁181と、エクステンション17の側端部172とハウジング11の間をレンズ14側に向かって延びた側部隔壁182とを含む。
【0034】
本実施形態のヘッドランプ10において、エクステンション17は、
図6から
図8に示すように案内隔壁18の近傍でハウジング11及びレンズ14に対して隙間G4,G5を有している。
図7及び
図8に示すようにこの案内隔壁18は、エクステンション17とともに、灯室112の内部に排出流路REを形成する。この排出流路REは、灯室112内部の空気のうち、レンズの内面近傍の空気を積極的に流出ポート16へ案内する。特に、
図6に示すように、側部隔壁182が設けられた部分の近傍のハウジング11は、車体2の幅方向に内側に張り出した膨出部115を有しており、側部隔壁182の上部と下部に流路R1,R2を有している。この膨出部115は、
図1及び
図2に示すように、ヘッドランプ10の間に設けられるフロントグリル25に隠れる。
【0035】
側部隔壁182の上部に設けられた流路R1は、
図7に示すように、案内隔壁18の上面に沿ってエクステンション17の後ろ側から側部隔壁182の前端を回り込むように、灯室112内部の空気を案内する。側部隔壁182の下部に設けられた流路R2は、車体2の幅方向に内側であるレンズ14とエクステンション17との間を通過した空気を、側部隔壁182の前端を回り込んだ空気とともに案内隔壁18の内側へ案内する。側部隔壁182の上部に流路R1が設けられていることによって、流路R2内の流速が増す。したがって、レンズ14の内面近傍の空気がエクステンション17の側端部172とレンズ14の間を通って案内隔壁18の内側に引き込まれ易くなる。
【0036】
本実施形態のヘッドランプ10は、さらに
図7及び
図9に示すように、下部隔壁181とエクステンション17の下端部171の間に流路R3を有している。流路R3は、ハウジング11とエクステンション17との間の空気を案内隔壁18の外側から内側へ下部隔壁181を越えて案内する。また、ヘッドランプ10は、下部隔壁181の前端とレンズ14の内面との間にも流路R4を有している。
図8に示すように下部隔壁181の前端を回り込むように空気が流れる。
【0037】
流路R3,R4に空気が流れることによって、エクステンション17の内側に囲われた空気が案内隔壁18の近傍において、エクステンションの下端部171とレンズ14の間を通って案内隔壁18の内側へ空気が引き込まれ易くなる。
【0038】
以上のように構成されたヘッドランプ10において、車両1が走行することによって車体2の幅方向に内側寄りの第1領域P1が走行風によって減圧されると、
図5に示すように、灯室112内の空気が流出ポート16をから外部へ吸い出される。
図5、
図7、
図8、
図9中において、空気の流れを矢印Hで示す。このヘッドランプ10の灯室112内の空気の流れは、車両1が走行している間のヘッドランプ10の後方に位置する第1領域P1と第2領域P2の圧力差によって生じる。つまり、灯室112の内部の空気を換気するために、光源12を点灯しなくてもよく、空気の膨張を伴わない。
【0039】
その結果、灯室112内の空気は、
図5に示すように、流入ポート15から流出ポート16に向かって流れ、流出ポート16から吸い出された空気とほぼ同じ分量の空気が流入ポート15から灯室112内へ吸い込まれる。このように、灯室112内の空気をヘッドランプ10の外部の空気で効率よく換気することができる。その結果、ヘッドランプ10のレンズ14の内面に結露が生じて曇っていても、車両1が走行することで、結露が速やかに晴れる。
【0040】
さらに、流入ポート15から灯室112内へ吸い込まれる空気は、エンジンルーム21内でエンジン3に温められており、車体2の外部の空気に比べて相対湿度が低下している。また、一般的にレンズ14の上部側は曇り難く、下部側は曇り易い。レンズ14の内面に結露を生じている場合、その部位の近傍の空気の相対湿度は、ほぼ100%に近いと考えられる。このとき、本実施形態のヘッドランプ10の場合、流入ポート15は、流出ポート16よりも高い位置に設けられている。
【0041】
したがって、灯室112の上部に連通した流入ポート15から灯室112へ入った空気は、レンズ14の下部寄りに結露を生じさせている灯室112内の湿った冷たい空気を下方へ押し下げるように流れる。流出ポート16は、灯室112の下部に連通しているので、湿った冷たい空気を優先的にヘッドランプ10の外部へ排出できる。このように、このヘッドランプ10において結露を生じるような相対湿度の高い灯室112内の空気は、相対湿度の低い空気で押し出されるように換気される。したがって、ヘッドランプ10のレンズ14の内面に生じた結露は、速やかに晴れる。
【0042】
本実施形態のヘッドランプ10は、排出流路REを構成するエクステンション17及び案内隔壁18をさらに備えている。このヘッドランプ10において、流入ポート15から灯室112へ入った空気は、
図5に示すように、ハウジング11と反射板13との間に拡散される。このとき、エクステンション17と反射板13との間の隙間G3は、エクステンション17の下端部171及び側端部172とレンズとの間のそれぞれ隙間G1,G2よりも大きい。さらに、案内隔壁18がエクステンション17の後ろから当接もしくは近接しており、排出流路REが形成されている。この排出流路REは、レンズ14の内面近傍の空気を流出ポート16に案内するために、ハウジング11と反射板13との間の空気が、流出ポート16へ直接的に流れ込むことを阻止している。
【0043】
したがって、流入ポート15から入った空気の一部は、反射板13とエクステンション17との隙間G3を優先的に通過し、レンズ14とエクステンション17とで囲われた側へ移動する。レンズ14とエクステンション17とで囲われた領域は、すなわち、レンズ14の内面に接する領域である。流入ポート15から入った相対湿度の低い空気がレンズ14の内面に接する領域に案内されるので、レンズ14の内面に生じた結露が晴れ易い。
【0044】
このように、本実施形態のヘッドランプ10は、流出ポート16の灯室112側に案内隔壁18を設け、エクステンション17とともに排出流路REを設定することで、結露し易いレンズ14の下部側の内面直近に空気の流れを起こしやすい構造を有している。したがって、結露を生じさせた周辺の湿った空気を排出し、その代わりに乾いた空気を結露部に導き易いので、このヘッドランプ10は、結露を晴れさせるのに効果的である。
【0045】
また、灯室112内の空気がレンズ14とエクステンション17とで囲われた領域から排出流路REを通って流出ポート16へ流れるためには、
図5、
図7及び
図8に示すように、エクステンション17の下端部171及び側端部172とレンズ14との間の隙間G1,G2を通過しなければならない。特に、本実施形態では、案内隔壁18が設けられた近傍において、エクステンション17が、ハウジング11及びレンズ14に対して隙間G4,G5を有しているので、
図7及び
図8に示すように、レンズ14とエクステンション17で囲われた領域の空気は、隙間G4,G5を通過して案内隔壁18の内側へ流れる。
【0046】
このとき、ハウジング11が膨出部115に流路R1,R2を有しているので、エクステンション17の側端部172とレンズ14の間の隙間G5及びエクステンション17とハウジング11の間の隙間G4を通った空気は、流路R1から流路R2へ折り返すようにハウジング11とエクステンション17の間を流れる空気に引き込まれる。また、
図7に示すように、下部隔壁181とエクステンション17の間に流路R3、下部隔壁181とレンズ14下部との間に流路R4を有しているので、エクステンション17の下端部171とレンズ14との間の隙間G5及びエクステンション17の下端部171とハウジング11との間の隙間G4を通る空気は、流路R3、R4を通過する空気に引き込まれる。このように流路R1,R2,R3,R4があることによって、案内隔壁18の近傍の隙間G4,G5の流れが安定する。この結果、
図7から
図9に示すように、車体2の幅方向に内側の下部寄りの角部にまで、レンズ14の内面に沿って隈なく空気が循環する。
【0047】
本実施形態におけるヘッドランプ10は、反射板13とエクステンション17の間に隙間G3を有しており、灯室112内の空気は、この隙間G3を通ってエクステンション17で囲われた領域に入る。光源12を点灯した場合、隙間G3を通過して光源12の前方を空気が通過する際に温められる。温められた空気は、さらに相対湿度が低下するので、レンズ14の内面の結露を容易に晴らすことができる。
【0048】
なお、本実施形態では、車体2の幅方向について流入ポート15を外側に、流出ポート16を内側にそれぞれ1つずつ配置した。灯室112内の湿った空気を上述の実施形態のように換気する場合、車両1の走行中に流出ポート16の出口が位置するところの圧力が流入ポート15の入口が位置するところの圧力よりも低くなる条件を満たせばよい。そして、灯室112の内部の空気を流入ポート15の入口と流出ポート16の出口の圧力差によって換気する。温度差によって換気する場合に比べて効率よく換気できる。
【0049】
例えば、車両1の走行中にエンジンルーム21内に生じる減圧領域に第1領域P1を設定して流出ポート16の出口が開口するように通気管161を配管し、加圧領域に第2領域P2を設定して流入ポート15の入口が開口するように通気管151を配管する。したがって、流入ポート15及び流出ポート16の配置は、車体2の幅方向に内側であるか外側であるか限定されない。また、流入ポート15を灯室112の上部に連通させるとともに流出ポート16を灯室112の下部に連通させることによって、灯室112の内部の空気を上から下へ掃き出すように換気すれば、湿った冷たい空気を攪拌せずに効率よく排気される。
【0050】
また、流入ポート15が灯室112に連通する位置から流出ポート16が灯室112に連通する位置まで、空気が灯室112内を全体的に満遍なく流れるように流路が確保されるように、エクステンション17及び案内隔壁18の形状は適宜変更される。
【0051】
湿った空気が淀み易い位置が灯室112内に複数個所発生する場合、流出ポート16は1つに限らず空気が淀み易い位置に対応させて複数設けてもよい。このとき流出ポート16が設けられた位置に対応するハウジング11の後部が減圧領域ではない場合、上述のように通気管161を延長して流出ポート16の出口を減圧領域に連通させる。このとき、通気管161を延長しづらい場合、車両1のフロントバンパやフロントフェンダなどにエアダクトを設けて、流速の速い空気を流出ポート16または通気管161の出口に導くようにすればよい。流入ポート15の入口と流出ポート16の出口の間に十分な差圧が生じればよいので、流入ポート15の入口が加圧領域に配置されるだけでもよい。
【0052】
さらに、ヘッドランプ10は、ハウジング11の灯室112の流出ポート16側に設けた案内隔壁18と同様の案内隔壁19を流入ポート15側にも設けてもよい。流入ポート15側に案内隔壁19を設けた一例を
図10に示す。この案内隔壁19は、流入ポート15寄りのエクステンション17とともに導入流路RIを形成する。導入流路RIは、流入ポート15から灯室112の中に供給された空気をレンズ14の内面近傍に向けて積極的に案内する。これにより、ヘッドランプ10の外部から取り込まれた空気がレンズ14の内面付近に沿ってより多く流れるので、レンズ14の内面の曇りをより確実に抑制することができる。
以下に、本願の出願当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1] 車両の車体に固定され少なくとも前記車体の前方に開放した灯室を形成するハウジングと、前記灯室に組み込まれる光源と、前記光源と前記ハウジングとの間に配置され前記光源から出射された光を前記車体の前方へ反射する反射板と、前記ハウジングに外周部で接合されて前記灯室の前方を塞ぐとともに前記車体の前方へ出射される光を透過させるレンズと、前記灯室を外部の第1領域に連通し、前記灯室の内部の空気を前記灯室の外部へ排出させる流出ポートと、前記灯室を外部の第2領域に連通し、前記灯室の外部から前記灯室の内部に空気を導入する流入ポートと、を備える車両用ヘッドランプであって、前記ハウジングは、前記レンズの内面近傍の空気を前記流出ポートへ案内する排出流路を前記灯室に有し、前記第1領域および前記第2領域は、前記車両が前方へ走行する際に前記第1領域の圧力が前記第2領域の圧力よりも低くなる前記灯室外部の領域に設定される、ことを特徴とする車両用ヘッドランプ。
[2] 前記流入ポートは、前記ハウジングの車幅方向内側寄りまたは車幅方向外側寄りの位置に配置され、前記流出ポートは、前記ハウジングの車幅方向内側寄りまたは車幅方向外側寄りの前記流入ポートとは反対側となる位置に配置されることを特徴とする[1]に記載された車両用ヘッドランプ。
[3] 前記排出流路は、前記流出ポートを囲うとともに前記ハウジングの側壁に沿って前記レンズに向かって延びる案内隔壁を備えることを特徴とする[1]または[2]に記載された車両用ヘッドランプ。
[4] 前記反射板と前記レンズとの間に配置され、少なくとも前記レンズに面した下端部と前記レンズとの間及び側端部と前記ハウジングとの間に隙間を有するエクステンションを備え、前記排出流路は、前記案内隔壁及び前記エクステンションによって構成されることを特徴とする[3]に記載された車両用ヘッドランプ。
[5] 前記第1領域は、前記車両の前部において走行風が導入される開口部の近傍の領域であることを特徴とする[1]〜[4]のいずれか1つに記載された車両用ヘッドランプ。