(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記アキュムレータの前記ケーシング(71)は、上下が開口する筒状本体(71a)と、前記筒状本体の上の開口を塞ぐ上部蓋体(71b)と、前記筒状本体の下の開口を塞ぐ下部蓋体(71c)と、を含み、
前記アキュムレータの前記入口管(72)の前記先端開口(72a)の高さ位置が、前記下部蓋体の上端(71d)の高さ位置よりも低い、
請求項1に記載の冷凍装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述のように特許文献1(特開2004−263995号公報)の空気調和装置では、アキュムレータの底部にホットガスを導くためのホットガスバイパス回路および自動開閉弁を設けているが、その分だけ装置の製造コストが上がっている。また、自動開閉弁の開閉の制御を適切に行わなければ、アキュムレータ内で液冷媒と冷凍機油とが二層分離していても攪拌動作が行われないという事態が生じてしまう。
【0004】
本発明の課題は、冷媒としてR32を使いアキュムレータを備える冷凍装置において、アキュムレータ内における液冷媒と冷凍機油との二層分離状態の解消を適切に低コストで行うことにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1観点に係る冷凍装置は、冷媒としてR32を使う冷凍装置であって、圧縮機と、凝縮器と、膨張機構と、蒸発器と、アキュムレータとを備えている。圧縮機は、吸入流路から冷媒を吸入し、冷媒の圧縮を行う。凝縮器は、圧縮機から吐出された冷媒を凝縮させる。膨張機構は、凝縮器を出た冷媒を膨張させる。蒸発器は、膨張機構で膨張した冷媒を蒸発させる。アキュムレータは、吸入流路に設けられており、ケーシングと、入口管と、出口管とを有する。ケーシングは、冷媒を気液分離するとともに余剰冷媒を貯留するための内部空間を形成するものである。入口管は、蒸発器で蒸発した冷媒を、ケーシングの内部空間に入れるための管である。出口管は、ケーシングの内部空間で分離したガス冷媒を、圧縮機に向かわせるための管である。そして、アキュムレータの入口管の先端開口が、ケーシングの内部空間の底から、内部空間の高さ寸法の0〜0.3倍の寸法だけ離れた高さ位置、にある。
【0006】
ここでは、蒸発器から流れてくる冷媒をケーシングの内部空間に入れる入口管の先端開口が、ケーシングの内部空間の底から内部空間の高さ寸法の0.3倍の寸法だけ離れた高さ位置よりも低い位置にある。すなわち、入口管の先端開口を、ケーシングの内部空間の下のほうに位置させているため、アキュムレータの内部空間に液冷媒が溜まって二層分離が生じ、上のほうに冷凍機油が溜まったときにも、入口管を通って蒸発器から導入されてくる冷媒が二層分離している液冷媒および冷凍機油を攪拌し、それにより二層分離の解消が図られる。
【0007】
なお、アキュムレータは、運転状況によって余剰となる冷媒を貯留する役割や、過渡的に蒸発器から液冷媒が戻ってきたときの冷媒貯留の役割を果たす。また、本発明では、従来から存在する入口管の先端開口の高さ位置を工夫し、従来にないほどにアキュムレータの内部空間の下のほうに位置させることで攪拌効果を得られるようにしている。このため、製造コストの上昇も抑えられる。
【0008】
また、本発明の第1観点に係る冷凍装置では、アキュムレータの入口管は、その先端開口が、ケーシングの側面に沿った方向を向いており、先端開口から内部空間に流入する冷媒は、側面に沿って周方向に周る。
【0009】
ここでは、入口管の先端をケーシングの内部空間の下のほうに位置させているけれども、その入口管の先端開口をケーシングの側面に沿った方向に向けているため、過度の泡立ち(foaming)が抑制される。
【0010】
また、本発明の第1観点に係る冷凍装置では、アキュムレータの入口管は、その先端開口が、
斜め上向きである。
【0011】
ここでは、アキュムレータの内部空間で液冷媒および冷凍機油が二層分離しているときに、入口管から導入される冷媒の流れが上向きのベクトルを持つことになるため、上下に分かれている冷凍機油と液冷媒とが効率的に攪拌されて混ざるようになる。
【0012】
本発明の
第2観点に係る冷凍装置は、
第1観点に係る冷凍装置であって、アキュムレータのケーシングは、上下が開口する筒状本体と、その筒状本体の上の開口を塞ぐ上部蓋体と、筒状本体の下の開口を塞ぐ下部蓋体と、を含む。そして、アキュムレータの入口管の先端開口の高さ位置が、下部蓋体の上端の高さ位置よりも低い。
【0013】
ここでは、下部蓋体の上端よりも低い位置まで、アキュムレータの入口管の先端の高さ位置を下げている。このため、より確実に二層分離している液冷媒および冷凍機油を攪拌することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の第1観点に係る冷凍装置によれば、アキュムレータの入口管の先端開口を、アキュムレータの内部空間の下のほうに位置させているため、二層分離が生じて上のほうに冷凍機油が溜まったときにも、入口管を通って蒸発器から導入されてくる冷媒が二層分離している液冷媒および冷凍機油を攪拌し、それにより二層分離の解消が図られる。
【0015】
また、本発明の第1観点に係る冷凍装置によれば、アキュムレータの入口管の先端開口をケーシングの側面に沿った方向に向けているため、過度の泡立ちが抑制される。
【0016】
また、本発明の第1観点に係る冷凍装置によれば、アキュムレータの入口管から導入される冷媒の流れが上向きのベクトルを持つことになるため、上下に分かれている冷凍機油と液冷媒とが効率的に攪拌されて混ざるようになる。
【0017】
本発明の
第2観点に係る冷凍装置によれば、より確実に二層分離している液冷媒および冷凍機油を攪拌することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(1)空気調和装置の全体構成
図1は、本発明の一実施形態に係る冷凍装置である空気調和装置10の冷媒配管系統を示す図である。空気調和装置10は、冷媒配管方式の分散型の空気調和装置であって、蒸気圧縮式の冷凍サイクル運転を行うことによって建物内の各室を冷暖房する。空気調和装置10は、熱源ユニットとしての室外ユニット11と、多数の利用ユニットとしての室内ユニット12と、室外ユニット11と室内ユニット12とを接続する冷媒連絡管としての液冷媒連絡管13およびガス冷媒連絡管14とを備えている。すなわち、
図1に示す空気調和装置10の冷媒回路は、室外ユニット11と、室内ユニット12と、冷媒連絡管13,14とが接続されることによって構成されている。そして、
図1に示す冷媒回路内には、冷媒が封入されており、後述のように、冷媒が圧縮され、冷却・凝縮され、減圧され、加熱・蒸発された後に、再び圧縮されるという冷凍サイクル運転が行われるようになっている。冷媒としては、R32が用いられる。R32は、温暖化係数が小さい低GWP冷媒であって、HFC系冷媒の一種である。また、冷凍機油として、R32に対していくらかの相溶性を有するエーテル系合成油が用いられる。この空気調和装置10では、冷媒としてR32を使用しているため、油分比率にもよるが、低温条件(例えば0℃以下)においては、圧縮機20の潤滑のために冷媒とともに封入されている冷凍機油の溶解度が非常に小さくなる傾向がある。
【0020】
(2)空気調和装置の詳細構成
(2−1)室内ユニット
室内ユニット12は、各室の天井あるいは側壁に設置されており、冷媒連絡管13,14を介して室外ユニット11に接続されている。室内ユニット12は、主として、減圧器である室内膨張弁42と、利用側熱交換器としての室内熱交換器50とを有している。
【0021】
室内膨張弁42は、冷媒を減圧するための膨張機構であり、開度調整が可能な電動弁である。室内膨張弁42は、その一端が液冷媒連絡管13に接続され、その他端が室内熱交換器50に接続されている。
【0022】
室内熱交換器50は、冷媒の蒸発器又は凝縮器として機能する熱交換器である。室内熱交換器50は、その一端が室内膨張弁42に接続され、その他端がガス冷媒連絡管14に接続されている。
【0023】
室内ユニット12は、ユニット内に室内空気を吸入して、再び室内に供給するための室内ファン55を備えており、室内空気と室内熱交換器50を流れる冷媒との間で熱交換をさせる。
【0024】
また、室内ユニット12は、各種のセンサや、室内ユニット12を構成する各部の動作を制御する室内制御部92を有している。室内制御部92は、室内ユニット12の制御を行うために設けられたマイクロコンピュータやメモリ等を有しており、室内ユニット12を個別に操作するためのリモコン(図示せず)との間で制御信号等のやりとりを行ったり、後述する室外ユニット11の室外制御部91との間で伝送線90aを介して制御信号等のやりとりを行ったりする。
【0025】
(2−2)室外ユニット
室外ユニット11は、室内ユニット12が配備される各室が存在する建物の外あるいは建物の地下室などに設置され、冷媒連絡管13,14を介して室内ユニット12に接続されている。室外ユニット11は、主として、圧縮機20と、四路切換弁15と、室外熱交換器30と、室外膨張弁41と、過冷却用膨張弁63と、過冷却熱交換器64と、液側閉鎖弁17と、ガス側閉鎖弁18と、アキュムレータ70とを有している。
【0026】
圧縮機20は、圧縮機用モータによって駆動される密閉式圧縮機である。圧縮機20は、本実施形態において1台のみであるが、これに限定されず、室内ユニット12の接続台数等に応じて、2台以上の圧縮機が並列に接続されていてもよい。圧縮機20は、圧縮機付属容器28を介してガス冷媒を吸入する。
【0027】
四路切換弁15は、冷媒の流れの方向を切り換えるための機構である。冷房運転時には、室外熱交換器30を圧縮機20によって圧縮される冷媒の凝縮器として機能させ、かつ、室内熱交換器50を室外熱交換器30において冷却された冷媒の蒸発器として機能させるために、四路切換弁15は、圧縮機20の吐出側の冷媒配管29と室外熱交換器30の一端とを接続するとともに、圧縮機20の吸入側の吸入流路27(アキュムレータ70を含む)とガス側閉鎖弁18とを接続する(
図1の四路切換弁15の実線を参照)。また、暖房運転時には、室内熱交換器50を圧縮機20によって圧縮される冷媒の凝縮器として機能させ、かつ、室外熱交換器30を室内熱交換器50において冷却された冷媒の蒸発器として機能させるために、四路切換弁15は、圧縮機20の吐出側の冷媒配管29とガス側閉鎖弁18とを接続するとともに、吸入流路27と室外熱交換器30の一端とを接続する(
図1の四路切換弁15の破線を参照)。本実施形態において、四路切換弁15は、吸入流路27、圧縮機20の吐出側の冷媒配管29、室外熱交換器30およびガス側閉鎖弁18に接続された四路切換弁である。
【0028】
室外熱交換器30は、冷媒の凝縮器又は蒸発器として機能する熱交換器である。室外熱交換器30は、その一端が四路切換弁15に接続されており、その他端が室外膨張弁41に接続されている。
【0029】
室外ユニット11は、ユニット内に室外空気を吸入して、再び室外に排出するための室外ファン35を有している。室外ファン35は、室外空気と室外熱交換器30を流れる冷媒との間で熱交換をさせもので、室外ファン用モータによって回転駆動される。なお、室外熱交換器30の熱源は、室外空気に限定されるものではなく、水などの別の熱媒体であってもよい。
【0030】
室外膨張弁41は、冷媒を減圧するための膨張機構であり、開度調整が可能な電動弁である。室外膨張弁41は、その一端が室外熱交換器30に接続され、その他端が過冷却熱交換器64に接続されている。室外膨張弁41と過冷却熱交換器64とを結ぶメイン冷媒流路11aの一部分からは、分岐管62が分岐している。メイン冷媒流路11aは、室外熱交換器30と室内熱交換器50とを結ぶ液冷媒の主流路である。
【0031】
分岐管62には、過冷却用膨張弁63が設けられている。過冷却用膨張弁63は、冷媒を減圧するための膨張機構であり、開度調整が可能な電動弁である。また、分岐管62は、過冷却熱交換器64の第2流路64bに接続されている。すなわち、メイン冷媒流路11aから分岐管62へと分岐した冷媒は、過冷却用膨張弁63で減圧され、過冷却熱交換器64の第2流路64bに流れる。
【0032】
過冷却用膨張弁63で減圧されて過冷却熱交換器64の第2流路64bに流れた冷媒は、過冷却熱交換器64の第1流路64aを流れる冷媒と熱交換する。過冷却熱交換器64の第1流路64aは、メイン冷媒流路11aの一部を構成している。この過冷却熱交換器64での熱交換の後、分岐管62および第2流路64bを流れてきた冷媒は、バイパス流路65によって、吸入流路27の第2配管27bへと送られる。
【0033】
過冷却熱交換器64は、二重管構造を採る内部熱交換器であり、上述のように、主流路であるメイン冷媒流路11aを流れる冷媒と、インジェクションのためのメイン冷媒流路11aから分岐した冷媒との間で熱交換を行わせる。過冷却熱交換器64の第1流路64aの一端は室外膨張弁41に接続されており、他端は液側閉鎖弁17に接続されている。
【0034】
液側閉鎖弁17は、室外ユニット11と室内ユニット12との間で冷媒をやりとりするための液冷媒連絡管13が接続される弁である。ガス側閉鎖弁18は、室外ユニット11と室内ユニット12との間で冷媒をやりとりするためのガス冷媒連絡管14が接続される弁であり、四路切換弁15に接続されている。ここで、液側閉鎖弁17およびガス側閉鎖弁18は、サービスポートを備えた三方弁である。
【0035】
アキュムレータ70は、四路切換弁15と圧縮機20との間の吸入流路27に配置されており、蒸発器として機能する室内熱交換器50あるいは室外熱交換器30から四路切換弁15に接続された吸入流路27の第1配管27aを通って戻ってきた冷媒を、気液分離する。気液分離された冷媒のうち、ガス冷媒が圧縮機20へと送られる。アキュムレータ70は、
図1および
図2に示すように、内部空間ISを形成するケーシング71と、入口管72と、出口管73とを有している。ケーシング71は、主として、上下が開口する円筒状の本体71aと、本体71aの上の開口を塞ぐ椀状の上部蓋体71bと、本体71aの下の開口を塞ぐ椀状の下部蓋体71cとから構成されている。入口管72は、吸入流路27の第1配管27aを通ってきた冷媒を、内部空間ISに導き入れる。入口管72は、上部蓋体71bの周縁部を貫通し、内部空間ISの底に向かって延び、その先端部分が内部空間ISの下部において約150度だけ折り曲げられている。これにより、入口管72の先端開口72aは、斜め上を向いている。また、入口管72の先端開口72aは、アキュムレータ70の内側面71eに沿った方向を向いており、先端開口72aから内部空間ISに流入する冷媒は、アキュムレータ70の内側面71eに沿って周方向に周りながら上がっていく流れになる。
【0036】
なお、アキュムレータ70の入口管72の先端開口72aの高さ位置は、アキュムレータ70の内部空間ISの底から高さ寸法H1だけ離れた位置にある。この高さ寸法H1は、アキュムレータ70の内部空間ISの高さ寸法Hの、0〜0.3倍である。
図2に示すものでは、高さ寸法H1は、高さ寸法Hの5分の1以下である。また、アキュムレータ70の入口管72の先端開口72aの高さ位置は、下部蓋体71cの上端71dの高さ位置よりも低くなっている(
図2参照)。
【0037】
アキュムレータ70の出口管73は、内部空間ISで分離したガス冷媒を、圧縮機付属容器28に接続された吸入流路27の第2配管27bへと出す。出口管73は、J字状の管であり、上部蓋体71bを貫通し、内部空間ISの下部においてUターンし、その上端(先端)の流出口73aの高さ位置が内部空間ISの上部に位置する。出口管73の内部空間ISの下部におけるUターン部分には、油戻し穴73bが形成されている。油戻し穴73bは、ケーシング71の内部空間ISの下部に液冷媒とともに溜まっている冷凍機油を圧縮機20へと戻すための穴である。
【0038】
アキュムレータ70の出口管73と圧縮機付属容器28とは、吸入流路27の第2配管27bで結ばれており、圧縮機付属容器28と圧縮機20とは、吸入流路27の第3配管27cで結ばれている。
【0039】
吸入流路27の第2配管27bには、
図1に示すように、バイパス流路65が接続されている。バイパス流路65は、メイン冷媒流路11aから分岐し過冷却熱交換器64を通った冷媒を、吸入流路27の第2配管27bへと供給するための流路である。
【0040】
また、室外ユニット11は、各種のセンサや、室外制御部91を有している。室外制御部91は、室外ユニット11の制御を行うために設けられたマイクロコンピュータやメモリ等を有しており、室内ユニット12の室内制御部92との間で伝送線8aを介して制御信号等のやりとりを行う。これらの室外制御部91および室内制御部92によって、空気調和装置10の制御部90が構成されている。
【0041】
(2−3)冷媒連絡管
冷媒連絡管13,14は、室外ユニット11および室内ユニット12を設置場所に設置する際に、現地にて施工される冷媒配管である。
【0042】
(3)空気調和装置の動作
次に、本実施形態に係る空気調和装置10の動作について説明する。なお、以下に説明する各種運転における制御は、運転制御手段として機能する制御部90によって行われる。
【0043】
(3−1)冷房運転の基本動作
冷房運転時は、四路切換弁15が
図1の実線で示される状態、すなわち、圧縮機20からの吐出ガス冷媒が室外熱交換器30に流れ、かつ、吸入流路27がガス側閉鎖弁18に接続された状態となる。室外膨張弁41は全開状態に、室内膨張弁42は、開度調節されるようになっている。なお、閉鎖弁17,18は開状態である。
【0044】
この冷媒回路の状態において、圧縮機20から吐出された高圧のガス冷媒は、四路切換弁15を経由して、冷媒の凝縮器として機能する室外熱交換器30に送られ、室外ファン35によって供給される室外空気と熱交換を行って冷却される。室外熱交換器30において冷却されて液化した高圧の冷媒は、過冷却熱交換器64で過冷却状態となり、液冷媒連絡管13を経由して各室内ユニット12に送られる。各室内ユニット12に送られた冷媒は、室内膨張弁42によってそれぞれ減圧されて低圧の気液二相状態の冷媒となり、冷媒の蒸発器として機能する室内熱交換器50において室内空気と熱交換をし、蒸発して低圧のガス冷媒となる。そして、室内熱交換器50において加熱された低圧のガス冷媒は、ガス冷媒連絡管14を経由して室外ユニット11に送られ、四路切換弁15を経由し、アキュムレータ70を通って再び圧縮機20に吸入される。このようにして、室内の冷房が行われる。
【0045】
室内ユニット12のうち一部の室内ユニットだけが運転されている場合は、停止している室内ユニットについては、その室内膨張弁42が停止開度(例えば、全閉)にされる。この場合、運転停止中の室内ユニット12内を冷媒が殆ど通過しないようになり、運転中の室内ユニット12のみについて冷房運転が行われることになる。
【0046】
(3−2)暖房運転の基本動作
暖房運転時は、四路切換弁15が
図1の破線で示される状態、すなわち、圧縮機20の吐出側の冷媒配管29がガス側閉鎖弁18に接続され、かつ、吸入流路27が室外熱交換器30に接続された状態となっている。室外膨張弁41および室内膨張弁42は、開度調節されるようになっている。なお、閉鎖弁17,18は開状態である。
【0047】
この冷媒回路の状態において、圧縮機20から吐出された高圧のガス冷媒は、四路切換弁15およびガス冷媒連絡管14を経由して、各室内ユニット12に送られる。そして、各室内ユニット12に送られた高圧のガス冷媒は、冷媒の凝縮器として機能する室内熱交換器50において、それぞれ室内空気と熱交換を行って冷却された後、室内膨張弁42を通過し、液冷媒連絡管13を経由して室外ユニット11に送られる。冷媒が室内空気と熱交換を行って冷却される際に、室内空気は加熱される。室外ユニット11に送られた高圧の冷媒は、過冷却熱交換器64で過冷却状態となり、室外膨張弁41によって減圧されて低圧の気液二相状態の冷媒となって、冷媒の蒸発器として機能する室外熱交換器30に流入する。室外熱交換器30に流入した低圧の気液二相状態の冷媒は、室外ファン35によって供給される室外空気と熱交換を行って加熱され、蒸発して低圧の冷媒となる。室外熱交換器30を出た低圧のガス冷媒は、四路切換弁15を経由して、アキュムレータ70を通って再び圧縮機20に吸入される。このようにして、室内の暖房が行われる。
【0048】
なお、アキュムレータ70には、特に暖房運転時に余剰冷媒が溜められる。
【0049】
(3−3)各運転におけるアキュムレータ内の状態
上述のように、この空気調和装置10では、冷媒としてR32を使用しているため、低温条件(例えば冷媒温度が0℃以下)においては、圧縮機20の潤滑のために冷媒とともに封入されている冷凍機油の溶解度が、非常に小さくなる。このため、冷凍サイクルにおける低圧になると、冷媒温度の低下によって、冷凍機油の溶解度が大きく低下することになり、冷凍サイクルにおいて低圧になるアキュムレータ70内で冷媒であるR32と冷凍機油が二層分離し、圧縮機20に冷凍機油が戻りにくくなる。特に、余剰冷媒が多く溜まる傾向がある暖房運転や暖房運転開始時においては、
図3に示すように、ケーシング71の内部空間ISの下部が液冷媒で満たされ、液冷媒から分離した冷凍機油が内部空間ISの上部に集まってしまう傾向がある。このような二層分離が生じると、アキュムレータ70の出口管73の油戻し穴73bと冷凍機油とが離れてしまい、アキュムレータ70の内部空間ISに溜まっている冷凍機油を圧縮機20へと戻すことが出来なくなってしまう。
【0050】
これに鑑み、空気調和装置10では、上述のように、上部蓋体71bを上から下に貫通してアキュムレータ70の内部空間ISに差し込まれている入口管72を、内部空間ISの下部まで下に延ばしている。さらに、その入口管72の先端部分を折り返して、入口管72の先端開口72aがアキュムレータ70の内側面71eに沿って斜め上に向くようにしている。これにより、蒸発器(暖房運転時では室外熱交換器30)から四路切換弁15および吸入流路27の第1配管27aを通って流れてくる低圧冷媒が、アキュムレータ70の内部空間ISの下部に位置している入口管72の先端開口72aから斜め上に向けてアキュムレータ70内に流入する。したがって、
図3に示すように、アキュムレータ70の内部空間ISに余剰冷媒が溜まっており、且つ、冷媒温度が低く内部空間ISに溜まった液冷媒および冷凍機油が二層分離している場合に、入口管72から内部空間ISに流入する冷媒が貯留されている冷媒および冷凍機油を攪拌する役割を果たす。入口管72の先端開口72aから斜め上に向けて冷媒がアキュムレータ70内に流れ込むため、
図4に示すように、アキュムレータ70の内部空間ISに貯留されている液冷媒および冷凍機油が、上下に攪拌され(
図4の太線の矢印を参照)、アキュムレータ70内の二層分離現象が解消あるいは抑制される。
【0051】
(4)空気調和装置の特徴
(4−1)
本実施形態に係る空気調和装置10では、蒸発器から流れてくる低圧冷媒をアキュムレータ70の内部空間ISに入れる入口管72の先端開口72aの高さ位置が、内部空間ISの底から内部空間ISの高さ寸法Hの0.3倍の寸法だけ離れた高さ位置よりも低くなるように、アキュムレータ70を設計している。すなわち、入口管72の先端開口72aを、内部空間ISの下部に位置させているため、アキュムレータ70の内部空間ISに液冷媒が溜まって二層分離が生じ、上のほうに冷凍機油が溜まったときにも、入口管72を通って蒸発器から導入されてくる冷媒が二層分離している液冷媒および冷凍機油を攪拌し、それにより二層分離の解消が図られる。
【0052】
なお、アキュムレータ70は、運転状況によって余剰となる冷媒を貯留する役割や、過渡的に蒸発器から液冷媒が戻ってきたときの冷媒貯留の役割を果たす。また、本実施形態に係る空気調和装置10では、従来から存在する、アキュムレータ70の入口管72の先端開口72aの高さ位置を工夫し、従来にないほどにアキュムレータ70の内部空間ISの下のほうに先端開口72aを位置させることで、上述の攪拌効果を得られるようにしている。このように、空気調和装置10では、余分な配管や部品を追加しておらず、製造コストの上昇も抑えられている。
【0053】
(4−2)
本実施形態に係る空気調和装置10では、アキュムレータ70の入口管72の先端部分をケーシング71の内部空間ISの下のほうに位置させているけれども、その入口管72の先端開口72aをケーシング71の内側面71eに沿った方向に向けているため、攪拌効果を得つつ、過度の泡立ち(foaming)は抑制されている。
【0054】
(4−3)
本実施形態に係る空気調和装置10では、アキュムレータ70の入口管72の先端部分が内部空間ISの下部において折り返され、入口管72の先端開口72aが斜め上を向いている。このため、入口管72から内部空間ISに入る冷媒の流れが上向きのベクトルを持つことになり、冷媒は先端開口72aから内側面71eに沿って周方向に周りながら上のほうに流れていく。この流れが、
図4において太線で示すような、内部空間ISに溜まる液冷媒および冷凍機油が上下に混ぜられる流れを引き起こし、上下に分かれている冷凍機油と液冷媒とが内部空間ISにおいて効率的に攪拌され混ざるようになっている。
【0055】
(4−4)
本実施形態に係る空気調和装置10では、
図2に示すように、アキュムレータ70の入口管72の先端開口72aの高さ位置を、アキュムレータ70の内部空間ISの底から高さ寸法H1だけ離れた位置に据え、その高さ寸法H1を、アキュムレータ70の内部空間ISの高さ寸法Hの、0〜30%にしている。更に、アキュムレータ70の入口管72の先端開口72aの高さ位置を、下部蓋体71cの上端71dの高さ位置よりも低くしている。
【0056】
このため、空気調和装置10では、内部空間ISに溜まっている液冷媒および冷凍機油の量が少ないときにも、それらを攪拌することができる。