特許第5888232号(P5888232)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5888232
(24)【登録日】2016年2月26日
(45)【発行日】2016年3月16日
(54)【発明の名称】情報取得装置を備えたタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 23/04 20060101AFI20160303BHJP
   G01L 17/00 20060101ALI20160303BHJP
【FI】
   B60C23/04 N
   G01L17/00 301P
【請求項の数】6
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2012-516250(P2012-516250)
(86)(22)【出願日】2011年11月29日
(86)【国際出願番号】JP2011077568
(87)【国際公開番号】WO2012073973
(87)【国際公開日】20120607
【審査請求日】2014年11月5日
(31)【優先権主張番号】特願2010-269313(P2010-269313)
(32)【優先日】2010年12月2日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(74)【代理人】
【識別番号】100118762
【弁理士】
【氏名又は名称】高村 順
(72)【発明者】
【氏名】中谷 興司
(72)【発明者】
【氏名】山田 吉英
(72)【発明者】
【氏名】道下 尚文
【審査官】 八木 誠
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−067585(JP,A)
【文献】 特開2004−082775(JP,A)
【文献】 特開2010−179888(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G60C23/00−23/20
G01L17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の物理情報を検出するセンサと、該センサによって検出された物理情報を送信する送信回路と、前記送信回路に接続され前記物理情報を含む信号を所定周波数の電波として放射するコイル状のアンテナとを有する情報取得装置を備えたタイヤであって、
前記コイル状のアンテナは、第1プリント配線を有する第1プリント配線基板と、前記第1プリント配線基板に対向して設けられ、第2プリント配線を有する第2プリント配線板と、一端が前記第1プリント配線に接続されかつ他端が前記第2プリント配線に接続された複数の接続導体とによって形成され、
前記タイヤの回転軸に対して前記アンテナのコイル軸のなす角度が0度から40度の範囲内となるように前記タイヤの内部空間に前記情報取得装置が設けられていることを特徴とするタイヤ。
【請求項2】
前記情報取得装置は、前記アンテナのコイル軸を含み且つ前記タイヤの回転軸に直交する垂線を有する仮想平面内に設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載のタイヤ。
【請求項3】
前記タイヤ回転軸に対して前記アンテナのコイル軸が平行になるように前記情報取得装置が設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載のタイヤ。
【請求項4】
前記情報取得装置が前記タイヤのリム上に固定されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項5】
前記タイヤはスチールカーカスを有することを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載のタイヤ。
【請求項6】
前記タイヤの側面において、前記スチールカーカスは前記タイヤの回転軸を中心とした半径方向のみに延ばしてタイヤ内に埋設されていることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイル状アンテナを用いて情報を電波で送信する情報取得装置を備えたタイヤに関するものであり、特に、情報取得装置からの送信電波の減衰を低減させたタイヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両においてはタイヤの空気圧の点検管理が重要であり、タイヤ空気圧が異常値になると事故を引き起こす原因となることが多々ある。このため、車輪のタイヤ内の空気圧を検出してその情報を送信するタイヤ情報取得装置を各車輪に設けるとともに、各タイヤ情報取得装置から送信されたタイヤ空気圧の情報を取得して各タイヤの空気圧を監視し、空気圧に異常が生じたときに警報を発する監視装置を備えたタイヤ状態監視システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このタイヤ状態監視システムにおけるタイヤ情報取得装置は、タイヤとホイールとの間に形成された内部空間に配置される。このタイヤ情報取得装置は、タイヤ内の空気圧を検出する圧力検出素子からなる空気圧センサや、空気圧センサの検出結果を電気信号に変換して無線で監視装置へ送信する送信機等をケースに収容して構成される。ケースには、タイヤとホイールとの間に形成された上記内部空間の空気を内部の空気圧センサに導入するための通気孔が設けられている。監視装置は運転席近傍に配置されている。監視装置は、タイヤ情報取得装置から送信されたタイヤの空気圧情報を受信し、タイヤの空気圧が予め設定された基準圧力よりも低い場合に、運転者に対して所定の警報を発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3962073号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記情報取得装置を例えば大型タイヤの内部空間に設けた場合、タイヤの強度を増すためにタイヤ内に埋設されている金属部材(スチールカーカス等)によって電波が遮蔽され、タイヤの外部に放射される送信電波が大きく減衰されてしまうことがある。
【0006】
本発明は、タイヤの外部に放射される送信電波の減衰を低減するようにタイヤ内部空間に情報取得装置を備えたタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記の目的を達成するために、所定の物理情報を検出するセンサと、該センサによって検出された物理情報を送信する送信回路と、前記送信回路に接続され前記物理情報を含む信号を所定周波数の電波として放射するコイル状のアンテナとを有する情報取得装置を備えたタイヤであって、前記コイル状のアンテナは、第1プリント配線を有する第1プリント配線基板と、前記第1プリント配線基板に対向して設けられ、第2プリント配線を有する第2プリント配線板と、一端が前記第1プリント配線に接続されかつ他端が前記第2プリント配線に接続された複数の接続導体とによって形成され、前記タイヤ回転軸に対して前記アンテナのコイル軸のなす角度が0度から40度の範囲内となるように前記タイヤの内部空間に前記情報取得装置が設けられているタイヤを提案する。
【0008】
例えば大型車両用のタイヤのようにスチールカーカスがタイヤ内に埋設されている場合、タイヤ側面に埋設されるスチールカーカスは、タイヤ半径方向のみに延ばして配置される。このため、本発明を大型車両用のタイヤに適用した場合、隣接するスチールカーカス間の間隙を利用して、アンテナから放射される電波のタイヤ外への放射性を高めることができる。すなわち、アンテナからの放射電界の方向が、タイヤ半径方向に延在するスチールカーカスの方向にできるだけ直交するようにアンテナを配置することで、スチールカーカスによる電波の遮蔽が低下し、タイヤ外部に放射される送信電波の減衰の程度を抑制できる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、アンテナからタイヤ外部へ放射される電波の放射効率を向上させることができ、送信電波の減衰を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の一実施形態におけるタイヤ情報取得装置を実装したタイヤを示す図である。
図2図2は、本発明の一実施形態におけるタイヤ構造を示す図である。
図3図3は、本発明の一実施形態における情報取得装置を示す外観斜視図である。
図4図4は、本発明の一実施形態における情報取得装置を示す平面図である。
図5図5は、本発明の一実施形態における情報取得装置を示す側面断面図である。
図6図6は、本発明の一実施形態における装置本体を示す外観斜視図である。
図7図7は、本発明の一実施形態における装置本体を示す外観斜視図である。
図8図8は、本発明の一実施形態における装置本体の要部を示す外観斜視図である。
図9図9は、本発明の一実施形態における装置本体に設けられる第1プリント配線を概略的に示す平面図である。
図10図10は、本発明の一実施形態における装置本体に設けられる第2プリント配線を概略的に示す平面図である。
図11図11は、本発明の一実施形態における図9図10とを重ねて示す図である。
図12図12は、本発明の一実施形態における装置本体に設けられる柱状接続導体の配置を示す図である。
図13図13は、本発明の一実施形態における情報取得装置の電気系回路を示すブロック図である。
図14図14は、本発明の一実施形態における平面導体板と保持材を示す外観斜視図である。
図15図15は、本発明の一実施形態における保持材を示す外観斜視図である。
図16図16は、本発明の一実施形態におけるタイヤ回転軸に対するアンテナの配置を示す斜視図である。
図17図17は、本発明の一実施形態におけるタイヤ回転軸に対するアンテナの配置を示す平面図である。
図18図18は、本発明の一実施形態におけるタイヤ回転軸に対するアンテナの配置を示す平面図である。
図19図19は、本発明の一実施形態におけるコイル状アンテナの放射電界とスチールカーカスとの関係を示す図である。
図20図20は、本発明の一実施形態における放射変化量を表す特性曲線を示す図である。
図21図21は、コイル状アンテナの他の構成例を示す図である。
図22図22は、コイル状アンテナの他の構成例を示す図である。
図23図23は、本発明の一実施形態における放射変化量を表す特性曲線を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態を説明する。
【0012】
図1は本発明の一実施形態における情報取得装置を実装したタイヤを示す図であり、図2は本発明の一実施形態におけるタイヤ構造を示す図である。
【0013】
図1に示すように、本実施形態に係るタイヤ1は、タイヤ本体2と、リム4と、ホイール5と、情報取得装置100とを有する。情報取得装置100は、リム4の外周面に固定され、タイヤ1の空気室3の内部に情報取得装置100が設けられる。情報取得装置100は、後述するように圧力検出素子と温度検出素子とを有するセンサ部を備え、センサ部は空気室3内の圧力と温度とを検出する。情報取得装置100は、この温度と圧力の検出結果をディジタル値に変換するとともに、これらのディジタル値を含むディジタル情報を生成して送信する。このディジタル情報には、空気室3内の温度と圧力の検出結果のディジタル値の他に、情報取得装置100に固有の識別情報が含まれる。
【0014】
本実施形態に係るタイヤ1は、通常、大型トラック、バス、建設車両などの大型車両に用いられる。タイヤ1は、例えば、周知のチューブレスラジアルタイヤである。図2に示すように、タイヤ1内(タイヤ本体2内)には、スチール製のベルト23A,23B(スチールベルト)とスチール製のカーカス24(スチールカーカス)が埋設されている。タイヤ本体2は周知のキャップトレッド21、アンダートレッド22、ベルト23A,23B、カーカス24等から構成されている。
【0015】
図3は情報取得装置100の外観斜視図、図4は情報取得装置100の平面図、図5は情報取得装置100の側面断面図(図4のV-V線断面図)である。なお、以下では、説明の便宜上、情報取得装置100の互いに直交する長手方向、幅方向および高さ方向を、それぞれ前後方向、左右方向および上下方向と定義し、この定義に従い各部の構成を説明する。前後方向は、例えばタイヤ1の進行方向に一致し、左右方向は例えばタイヤ1の回転軸の方向に一致する。
【0016】
図3に示すように、情報取得装置100は、その最外部に、前後方向に延在する略直方体形状のケース130を備える。なお、略直方体形状とは、直方体形状あるいはほぼ直方体形状のことをいい、直方体と実質的に同一形状のものを含む。図3,4に示すように、ケース130は、上面が開放されたケース本体131と、ケース本体131の上面に取り付けられる蓋体132とから構成されている。ケース本体131は、前後両端部にそれぞれねじ止め用の突起部131aを有し、これに対応して蓋体132も、前後両端部にそれぞれ突起部132aを有する。
【0017】
図5に示すように、ケース本体131の内部には装置本体300を収納するための収納空間134が形成されている。ケース本体131の突起部131aには、ねじ孔131bが設けられ、蓋体132の突起部132aを貫通したねじ141をねじ孔131bに螺合することにより、ケース本体131の上面に蓋体132が固定されている。これにより収納空間134の上面の開口が閉鎖される。ケース本体131の底面131cには、情報取得装置100の取付部が形成されている。情報取得装置100は、底面131cの取付部をリム4の外周面に接触させてリム4に、取り付けられる。情報取得装置100は、接着剤、取り付けバンド等によって、リム4に取り付けられたり、リム4のタイヤバルブに取り付けられる。
【0018】
図4に示すように、蓋体132の前端部(突起部132aよりも後方)には通気孔133が開口されている。これにより、ケース本体131に蓋体132を固定した状態で、通気孔133を介してケース130の内部と外部との間を空気が流通し、タイヤ室3の空気の温度と圧力の検出が可能となる。
【0019】
図6図7は、それぞれケース130内に収納される装置本体300の外観斜視図であり、図8は、装置本体300の要部(前側部分)を示す外観斜視図である。なお、図6は、装置本体300を斜め上方から見た図であり、図7は、斜め下方から見た図である。
【0020】
図6図8に示すように、装置本体300は、収納空間134の平面視形状に対応した略長方形状の第1プリント配線基板351と、第1プリント配線基板351から所定間隔を開けて第1プリント配線基板351の上方に、かつ、第1プリント配線基板351に対して略平行に配置された略長方形状の第2プリント配線基板352と、装置本体300の後端部において上下方向に延在し、第1プリント配線基板351の後端部と第2プリント配線基板352の後端部とを連結する第3プリント配線基板353と、装置本体300の前側部分において上下方向に延在し、第1プリント配線基板351と第2プリント配線基板352とを連結する複数の柱状の接続導体354とを有する。ここで、略長方形状とは、長方形状あるいはほぼ長方形状のことをいい、長方形と実質的に同一形状のものを含む。略平行とは、平行あるいはほぼ平行のことをいい、実質的に平行なものを含む。第3プリント配線基板353および接続導体354は、半田付けにより第1プリント配線基板351と第2プリント配線基板352とにそれぞれ連結されている。
【0021】
第1プリント配線基板351には、前後方向に延在する複数の第1プリント配線351aを含む所定の導体パターンが形成されている。第2プリント配線基板352には、前後方向に延在する複数の第2プリント配線352aを含む所定の導体パターンが形成されている。図9は、第1プリント配線351aを概略的に示す平面図、図10は、第2プリント配線352aを概略的に示す平面図であり、図11は、第1プリント配線351aと第2プリント配線352aの位置関係を概略的に示す平面図(図9図10を重ねて示す図)である。なお、図9図11では、第1プリント配線351aと第2プリント配線352aの数をそれぞれ4本としているが、プリント配線351a,352aの数はこれに限らない。
【0022】
図9に示すように、第1プリント配線基板351の前端部には、左右方向等間隔に複数(ここでは4個)の接続部C11〜C14が設けられている。さらに、第1プリント配線基板351には、接続部C11〜C14から所定距離L0だけ後方に離れた位置に、左右方向等間隔に複数(ここでは5個)の接続部C15〜C19が設けられている。第1プリント配線351aは、C11からC15、C12からC16、C13からC17、C14からC18にかけてそれぞれ延設されている。これにより各第1プリント配線351aは、互いに左右方向に等間隔にかつ平行に配置されている。
【0023】
図10に示すように、第2プリント配線基板352の前端部には、左右方向等間隔に複数(ここでは4個)の接続部C21〜C24が設けられている。さらに、第2プリント配線基板352には、接続部C21〜C24から所定距離L0だけ後方に離れた位置に、左右方向等間隔に複数(ここでは4個)の接続部C25〜C28が設けられている。第2プリント配線352aは、C21からC25、C22からC26、C23からC27、C24からC28にかけてそれぞれ延設されている。これにより各第2プリント配線352aは、互いに左右方向に等間隔にかつ平行に配置されている。
【0024】
図11に示すように、第1プリント配線基板351の接続部C11〜C14と第2プリント配線基板352の接続部C21〜C24は、平面視で互いに同一位置に設けられている。第1プリント配線基板351の接続部C16〜C19と第2プリント配線基板352の接続部C25〜C28も、平面視で互いに同一位置に設けられている。第1プリント配線351aと第2プリント配線352aとは、接続部C11〜C19,C21〜C28を介して連続しており、全体がジグザグ形状をなしている。
【0025】
図6図8に示すように、複数の柱状接続導体354は、接続部C11〜C19,C21〜C28の位置に対応して、前後に分かれて配置されている。図12は、装置本体300を前方から見た図であり、主に柱状接続導体354の配置を示す。なお、図12では、前側の接続導体354(第1接続導体354aと呼ぶ)の左右方向位置と後側の接続導体354(第2接続導体354bと呼ぶ)の左右方向位置を互いにずらしているが、両者の左右方向位置が重なるようにプリント配線351a,352aを形成してもよい。各接続導体354の長さは、第1プリント配線基板351と第2プリント配線基板352との間の距離H0に等しい。第1接続導体354aおよび第2接続導体354bは、それぞれ4本設けられ、接続導体354は全体で8本設けられている。なお、接続導体354の本数は、第1プリント配線351aと第2プリント配線352aの数に応じて決定されるものであり、8本に限らない。
【0026】
図12に示すように、各第1接続導体354aの上端部および下端部は、それぞれ第2プリント配線基板352の接続部C21〜C24および第1プリント配線基板351の接続部C11〜C14に半田付けにより接続されている。各第2接続導体354bの上端部および下端部は、それぞれ第2プリント配線基板352の接続部C25〜C28および第1プリント配線基板351の接続部C16〜C19に半田付けにより接続されている。
【0027】
これにより、図6図8に示すように第1プリント配線351aと第2プリント配線352aとが接続導体354を介して接続され、第1プリント配線351aと第2プリント配線352aと接続導体354とにより、螺旋状に巻回されたアンテナ450が形成される。すなわち、各接続導体354の上下端部が第1プリント配線351aと第2プリント配線352aに連結され、全体がコイル状のアンテナ450が形成される。ここで、コイル状とは、導体が円筒面に沿って巻かれたものだけでなく、本実施形態のように直方体の側面に沿って巻かれたものも含む。すなわち、第1プリント配線351aと第1接続導体354aと第2プリント配線351bと第2接続導体354bとを順次接続してなる螺旋状のアンテナ450は、曲線によって形成されても折れ曲がり直線によって形成されてもよい。
【0028】
第1プリント配線351aと第2プリント配線352aと接続導体354とによって構成されたアンテナ450の螺旋の始点は、第1プリント配線基板351の右後端側の接続部C15であり、終点は第1プリント配線基板351の左後端側の接続部C19である。これら接続部C15、C19は、第1プリント配線基板351の導体パターン(電源回路等)に接続され、接続部C15,C19を介してアンテナ450に電流が流れる。第1プリント配線351aと第2プリント配線352aと第1接続導体354aと第2接続導体354bとによって囲まれた直方体空間の中心を通る軸線、すなわち、コイル状のアンテナ450の中心を通るコイル軸Cは、図11に示すように左右方向(情報取得装置100の幅方向)に延びる。
【0029】
図6図8に示すように、アンテナ450は、装置本体300の前端部に形成され、装置本体300の後端側には、センサ部410及び電池420などの電子部品が実装されている。これらセンサ部410及び電池420は、電子回路を構成する。
【0030】
図13は、情報取得装置100の電気系回路を示すブロック図である。図13に示すように、装置本体300は検出・送受信回路400を有する。検出・送受信回路400は、センサ部410と、電池420と、主制御部430と、送受信部440と、アンテナ450とを含んで構成されている。
【0031】
図7に示すように、センサ部410は、装置本体300の表面(第1プリント配線基板351の下面)に実装されている。図13に示すように、センサ部410は、空気圧検出素子411と、温度検出素子412と、アナログ/ディジタル変換回路413とから構成されている。センサ部410は、例えば空気式防舷材の空気室内の空気圧と温度とを、空気圧検出素子411と温度検出素子412とによってそれぞれ検出し、この検出結果をアナログ/ディジタル変換回路413によってディジタル値に変換して主制御部430に出力する。
【0032】
電池420は、不図示の接続導体によって装置本体300に接続され、装置本体300の検出・送受信回路400に電力を供給する。
【0033】
主制御部430は、周知のCPUとメモリなどから構成されている。主制御部430は、センサ部410による検出結果をディジタル値で受け取り、このディジタル値を含むディジタル情報を生成して送受信部440に出力する。なお、このディジタル情報には、上記検出結果のディジタル値の他に、予め設定されている装置本体300に固有の識別情報(予めメモリに書き込まれているか又はディップスイッチによって設定されている)が含まれる。
【0034】
送受信部440は、主制御部430からの指示に基づいて送信と受信とを切り替える。送受信部440は、送信時には主制御部430から入力したディジタル情報を所定周波数、例えば315MHzの電波によってアンテナ450から送信する。送受信部440は、受信時にはアンテナ450を介して受信した所定周波数(315MHz)の電波からディジタル信号を検出し、検出したディジタル信号からディジタル情報を抽出して主制御部430に出力する。なお、送受信部440の送信周波数と受信周波数とは同一周波数に設定されている。
【0035】
アンテナ450は、共振周波数が送受信部440の送受信周波数に設定されたコイル状アンテナである。アンテナ450は、上述したように第1プリント配線基板351に設けられた第1プリント配線351aと、第2プリント配線基板352に設けられた第2プリント配線352aと、第1プリント配線351aと第2プリント配線352aとを導電接続するとともにプリント配線基板351,352を互いに固定する柱状接続導体354とによって構成されている。
【0036】
図8に示すように、第1プリント配線基板351の下面には長方形状の平面導体板361が4つの保持材371によって固定されている。平面導体板361は、装置本体300をケース130に収納した時にケース本体131の底面側に位置する第1プリント配線基板351と平行になるように、アンテナ450の下方に配置されている。平面導体板361と第1プリント配線基板351との間には、保持材371によって所定の間隔Dが維持されている。平面導体板361は、第1プリント配線基板351の所定の導体パターン(電池420の負極に接続されている導体パターン)に導電接続されて基準電位に設定されている。
【0037】
図14は、平面導体板361を斜め上方から見た斜視図であり、図15は、保持材371の斜視図である。図14に示すように、各保持材371は、平面導体板361の上面の四隅にそれぞれ固設されている。図15に示すように、保持材371は、円柱形状の本体371aと、本体371aの両端面から突設された本体371aよりも小さい直径の円柱形状の一対の突起部371bとを有する。一方の突起部371bは、平面導体板361の四隅に設けられた凹部あるいは貫通孔に嵌合し、これにより平面導体板361と保持材371とが一体化される。他方の突起部371bは、第1プリント配線基板351に設けられた凹部あるいは貫通孔に嵌合し、これにより保持材371を介して平面導体板361が第1プリント配線基板351に固定される。
【0038】
第1プリント配線基板351に平面導体板361を固定した状態において、アンテナ450の共振周波数は例えば315MHzである。この315MHzにおけるアンテナインピーダンスは、50オームである。このときの第1プリント配線基板351と平面導体板361との間隔D(図8)は、保持材371によって例えば1.5mmに設定されている。
【0039】
以上のように構成された情報取得装置100のタイヤ1内への配置について説明する。図16は、本実施形態に係るアンテナ450の配置を3次元的に示す図であり、図17図18は、アンテナ450の配置を示す平面図である。図19は、コイル状アンテナ450の放射電界とタイヤ1内のスチールカーカス24との関係を3次元的に示す図である。
【0040】
図16に示すように、アンテナ450のコイル軸Cを含み且つタイヤ1の回転軸xに直交する垂線Pを有する平面を仮想平面PLとして定義すると、図17図18は、仮想平面PL上におけるアンテナ450の配置を示している。図16図18に示すように、情報取得装置100は、仮想平面PL内において、タイヤ回転軸xに対してコイル軸Cがなす角度が0度から±40度の範囲内となるように、タイヤ1内に配置されている。このとき、図19に示すように、アンテナ450からの放射電界(Eφ)は、コイル軸Cを中心とする円周方向に生成される。なお、図19には、コイル軸Cがタイヤ回転軸xと平行となるように配置されたアンテナを450aとして、直交するように配置されたアンテナを450bとしてそれぞれ示している。
【0041】
図17図19に示すようにコイル軸Cがタイヤ1の回転軸xに対して0度(平行)に設定されていると(図19の450a)、スチールカーカス24に直交する電界(Eφ)が存在する。この直交成分は、スチールカーカス24の存在に影響されずに、タイヤ外へ放射される。これに対し、コイル軸Cがタイヤ1の回転軸xに対して90度に設定されていると(図19の450b)、全ての電界(Eφ)がスチールカーカス24と平行となるため、タイヤ外への電界放射は大きく低減する。
【0042】
図20は、実際に測定した放射変化量の特性を示す図である。図20において、縦軸は放射変化量(dB)を表し、横軸はタイヤ側面に埋設されるカーカス24の本数を表している。例えば、タイヤ回転軸xに対してアンテナ450のコイル軸Cが平行になるように情報取得装置100を配置したときは、図20の曲線Aで示すような放射変化量が測定された。これに対し、タイヤ回転軸xに対してアンテナ450のコイル軸Cが90度の角度をなすように情報取得装置100を配置したときは、図20の曲線Bで示すような放射変化量が測定された。このように、タイヤ回転軸xに対してコイル軸Cが平行となるように情報取得装置100を配置したときには、タイヤ回転軸xに対してコイル軸Cが90度の角度をなすように配置したときに比べて、放射変化量を6dB程度改善することができた。
【0043】
以上より、タイヤ回転軸xに対するコイル軸Cのなす角度は、0度に近い方が好ましい。但し、タイヤ回転軸xに対するコイル軸Cのなす角度が±40度の範囲内にあれば、曲線Aよりも放射変化量は低下するものの、その低下量は2dB以内に抑えることができる。このため、図18に示すようにタイヤ回転軸xに対するコイル軸Cのなす角度が±40度である場合にも、図20の曲線Bに比べ、放射変化量を大きく低減することができる。
【0044】
以上のように本実施形態に係る情報取得装置100を備えたタイヤ1では、タイヤ回転軸xに対するアンテナ450のコイル軸Cのなす角度が±40度以内となるように、タイヤ1内に情報取得装置100が配置される。例えば大型車両用のタイヤ1のようにスチールカーカス24がタイヤ1内に埋設されているものにおいては、タイヤ側面に埋設されているスチールカーカス24は、一般にタイヤ半径方向に延ばして配置される。すなわち、タイヤ回転軸xを含む平面上に配置される。このため、タイヤ側面は、スチールベルト23A,23Bとスチールカーカス24が埋設されているトレッド部(キャップトレッド21)に比べて、磁界型アンテナであるコイル状アンテナ450における磁界を形成する磁流を妨げることが少ない。その結果、スチールカーカス24による、アンテナ450から放射された電波の遮蔽が低下し、タイヤ1の外部に放射される送信電波の減衰を低減することができる。これにより、情報取得装置100とタイヤ外部の通信機能を有する装置との間の電波の送受信距離を伸ばすことができる。
【0045】
上記実施形態では、タイヤ1内の空気圧と温度の両方を検出するように情報取得装置100を構成したが、空気圧または温度の何れか一方を検出するように情報取得装置を構成しても良い。タイヤ1内の空気圧または温度と相関関係を有する他の物理量、すなわちタイヤ1内やタイヤ1自体の状態を表す他の物理量、たとえば、タイヤ自体の温度、タイヤの歪量、加速度などを検出するように情報取得装置を構成することもできる。
【0046】
上記実施形態では、情報取得装置100のアンテナ450をプリント配線基板のプリントパターンを用いて形成するようにしたが、アンテナ450の構成はこれに限定されることはない。例えば、図21に示すように磁性体に導電線を巻いて形成したバーアンテナ460、或いは図22に示すような導電線を単に空心コイル状に巻いただけのコイルアンテナ470を用いても同様の効果を得ることができる。すなわち、アンテナのコイル軸Cを含みタイヤ1の回転軸xに直交する垂線を有する仮想平面PL内において、タイヤ回転軸xに対してコイル軸Cのなす角度が0度から40度の範囲内となるように情報取得装置を設けるのであれば、アンテナの構成はいかなるものでもよい。
【0047】
図23は、情報取得装置100の設置角(タイヤ回転軸xに対するコイル軸Cのなす角度)と、放射変化量(dB)との関係を示す図である。図23に示すように、情報取得装置100の設置角が大きくなるに従い、放射変化量が大きくなっている。放射変化量は、実用上、2dB以下とすることが好ましく、設置角が0度から40度の範囲内であれば、この要件を満たす。
【0048】
上記実施形態では、情報取得装置100をリム4に取り付けたが、情報取得装置100の取付位置はこれに限定されることはない。情報取得装置100をリム4以外の場所、例えばタイヤ本体2の内側面などに取り付けてもよく、この場合にも上述したのと同様の効果を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
コイル状アンテナと送信回路とを備えた情報取得装置を内部空間に備えたタイヤであって、アンテナからタイヤ外部への電波の放射変化量を低減したタイヤを構築することができ、情報取得装置とタイヤ外部の装置との間の電波の送受信距離を伸ばすことが可能になる。
【符号の説明】
【0050】
1…タイヤ、2…タイヤ本体、3…空気室、4…リム、100…情報取得装置、130…ケース、131…ケース本体、132…蓋体、133…通気孔、134…収納空間、141…ねじ、300…装置本体、351…第1プリント配線基板、351a…第1プリント配線、352…第2プリント配線基板、352a…第2プリント配線、353…第3プリント配線基板、354…柱状接続導体、361…平面導体板、371…保持材、400…検出・送受信回路、410…センサ部、411…空気圧検出素子、412…温度検出素子、413…アナログ/ディジタル変換回路、420…電池、430…主制御部、440…送受信部、450…アンテナ。
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