(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
共重合体(A)の重量平均分子量が50,000〜1,000,000であり、かつ共重合体(B)の重量平均分子量が2,000〜80,000であることを特徴とする請求項1〜4いずれか1項に記載の太陽電池保護シート。
架橋剤(C)が、ポリイソシアネート化合物(c−1)、多官能エポキシ化合物(c−2)、金属キレート化合物(c−3)、カルボジイミド化合物(c−4)及びアジリジン化合物(c−5)からなる群より選択される1種以上の化合物を含むことを特徴とする請求項1〜5いずれか1項に記載の太陽電池保護シート。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明の好ましい形態について説明する。
【0038】
本発明に係る積層シート接合用樹脂組成物は、ガラス転移点(以下Tgともいう。)の異なる2種類の樹脂すなわち共重合体(A)および共重合体(B)と架橋剤(C)とを含むことを特徴とする。以下に詳細を説明する。
【0039】
<共重合体(A)>
本発明の共重合体(A)とは、α,β不飽和化合物を共重合してなり、α,β不飽和化合物の組成比を調整し、ガラス転移点(Tg)が−40℃以上、10℃未満となる共重合体である。
【0040】
共重合体(A)は、ラミネート時におけるフィルムへの接着性と、積層シート接合用樹脂組成物の架橋に伴う硬化反応後の硬化塗膜における濡れ性と凝集力のバランスから共重合体(A)のガラス転移点(以下、Tgと称す)を−40℃以上、10℃未満の範囲に調整することが好ましく、−30℃以上、0℃未満がより好ましく、−20℃以上、−5℃未満がさらに好ましい。Tgが−40℃未満の場合は、積層シート接合用樹脂組成物の硬化塗膜における凝集力が不足し接着力が低下する場合があり、10℃を越える場合は、積層シート接合用樹脂組成物の濡れ性が低下するため、ラミネート時におけるフィルムへの接着性が低下する場合がある。
なお、共重合体(A)の構成成分である各単量体から形成され得るホモポリマーのTgが既知であれば、各ホモポリマーのTgと各単量体の構成比とに基づいて、共重合体(A)のTgを理論的に求めることができる。
【0041】
ガラス転移点(Tg)は、次のFOX式により、理論計算することが可能である。
<FOX式>1/Tg=W1/Tg1+W2/Tg2+…+Wi/Tgi+…+Wn/Tgn
〔上記FOX式は、n種の単量体からなる重合体を構成する各モノマーのホモポリマーのガラス転移温度をTgi(K)とし、各モノマーの質量分率を、Wiとしており、(W1+W2+…+Wi+…Wn=1)である。〕
【0042】
尚、ホモポリマーのTgは、文献に記載されている値を用いることができる。そのような文献として、例えば、以下の文献を参照できる: 三菱レーヨン社のアクリルエステルカタログ(2001年度版);大阪有機化学工業社のカタログ(2009年度版);日立化成工業社のファンクリルカタログ(2007年度版);及び「POLYMER HANDBOOK」第3版第209〜277頁、John Wiley & Sons,Inc. 1989年発行。
本明細書では、下記の単量体の単独重合体のガラス転移点(℃)は以下のとおりとする。
プロペン酸:57℃
2−メチル−2−プロペン酸:144℃
2−メチレン琥珀酸:283℃
2−プロペンアミド:153℃
2−メチル-2-プロペン酸2−(1,3ジオキソブトキシ)エチル:8℃
プロペン酸2−ヒドロキシエチル:−15℃
2−メチル−2−プロペン酸2−ヒドロキシエチル:55℃
プロペン酸4−ヒドロキシブチル:−60℃
プロペン酸メチル:6℃
プロペン酸エチル:−24℃
プロペン酸n−ブチル:−48℃
プロペン酸2−エチルヘキシル:−50℃
プロペン酸イソオクチル:−54℃
2−メチル−2−プロペン酸メチル:105℃
2−メチル−2−プロペン酸エチル:65℃
2−メチル−2−プロペン酸ブチル:20℃
2−メチル−2−プロペン酸シクロヘキシル:66℃
2−プロペン酸ジシクロペンテニル:120℃
2−プロペンニトリル:105℃
2−メチル−2−プロペン酸N,N−ジメチルアミノエチル:18℃
【0043】
共重合体(A)の重量平均分子量は、積層シート接合用樹脂組成物の塗工適性と硬化塗膜の凝集力を確保するため、50,000〜1,000,000であることが好ましく、100,000〜500,000であることが好ましく、150,000〜300,000であることがさらに好ましい。重量平均分子量が50,000未満であると硬化塗膜の凝集力が不足し、凝集破壊となり接着力が低下する場合があり、1,000,000以上であると、共重合体(A)の粘度が高く、塗工性が悪化してしまう場合がある。尚、重量平均分子量150,000〜300,000の範囲が硬化塗膜の基材に対する濡れ性と凝集力、及び粘度のバランスの両立が容易であり、応力緩和性を発揮する。
【0044】
共重合体(A)の分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量)は、2〜8の範囲であることが好ましく、3〜6であることがより好ましい。分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量)が2未満であると、低分子量成分が少ないため、ラミネート時におけるレベリング性が低下し、フィルムへの初期接着性が低下する場合があり、分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量)が8を越える場合はチキソトロピー性が高くなりすぎて、塗工時にスジムラ等が発生し塗膜の外観不良が起きる場合がある。
【0045】
共重合体(A)に用いるα,β不飽和化合物としては、公知のものであれば、限定されることは無いが、その中でも、カルボキシル基、アミド基、カルボニル基及びN−アルコキシル基からなる群から選択される一種以上の官能基を有するα,β−不飽和化合物(m−1)を用いることが好ましい。後述の架橋剤(C)が、(m−1)中の官能基と化学反応し得る官能基を有する場合には、(m−1)を用いることにより、(m−1)中の官能基と架橋剤(C)に含有される官能基とが効果的に架橋に伴う硬化反応を起こし、接合用樹脂組成物による硬化塗膜の凝集力の向上が可能となる。また樹脂間の相互作用も高める効果が大きく、架橋塗膜の凝集力を著しく向上させる。
(m−1)に含有される官能基の効果は、上記のような一般的な架橋に伴う硬化反応だけではなく、(m−1)に含有される官能基を含め、その他、水酸基、メルカプト基、アミノ基、スルホニル基、スルフィニル基、ホスホニル基、ホスフィニル基、シラノール基等の活性水素基を有する官能基と架橋剤(C)に含有される官能基との反応促進としての著しい触媒効果を促すことが可能である。従って、後述の共重合体(B)に用いられるα,β不飽和化合物(m−2)に含有される官能基と後述の架橋剤(C)中に含有される官能基との架橋に伴う硬化反応を促進する触媒として効果的に働くため、硬化塗膜の凝集力向上を著しく高めることが可能となる。
特に、(m−1)に含有される官能基としては、カルボキシル基、およびアミド基等の官能基が、触媒効果が高く、この官能基を有するα,β−不飽和化合物がより好ましい。
【0046】
ここで、(m−1)に含有される官能基の触媒効果は、以下のような機構で起きていると推測する。カルボキシル基、およびアミド基等の官能基を有するα,β−不飽和化合物を共重合させることで、積層シート接合用樹脂組成物の求核性、求電子性を変化させることが可能であり、架橋剤(C)に含有される官能基として、イソシアネート基を例にすると、以下のような効果が期待される。
【0047】
イソシアネート基は、一般式(1)のような共鳴構造を示すことが知られている。
一般式(1)
【化1】
その中で、カルボキシル基は、イソシアネート基の共鳴を、N=C
+−O
-へ平衡を移動させることで、活性水素との反応を促進し、アミノ基およびアミド基は、N
-−C
+=Oへ平衡を移動させることで、活性水素との反応を促進すると考えられる。
【0048】
共重合体(A)の共重合に用いるα,β−不飽和化合物100重量部中、α,β−不飽和化合物(m−1)を0.01〜10重量部含むことが好ましく、0.1〜5重量部含むことがより好ましく、0.2〜2重量部含むことがさらに好ましい。0.01重量部より少ない場合は、架橋剤(C)との架橋に伴う硬化反応による硬化塗膜の凝集力の向上だけでなく、反応促進に伴う触媒効果が得られない。一方、10重量部より多い場合は架橋に伴う硬化反応による硬化収縮が顕著となり、接着力が得られない場合だけでなく、反応促進に伴う触媒効果が高すぎるため、後述の架橋剤(C)の添加配合直後に反応の進行が速すぎて、ポットライフ(可使時間)が短くなるという問題が生じる。尚、0.2〜2重量部の範囲が硬化塗膜の凝集力の向上および硬化反応の触媒効果の発現と、ポットライフの両立と、バランス維持が容易となる。
【0049】
カルボキシル基、アミド基、カルボニル基及びN−アルコキシル基からなる群から選択される一種以上の官能基を有するα,β−不飽和化合物(m−1)のうち、カルボキシル基含有のα,β−不飽和化合物としては、
例えば、(2−メチル)プロペン酸〔プロペン酸と2−メチルプロペン酸とを併せて「(2−メチル)プロペン酸」と表記する。以下同様。〕、2−メチレン琥珀酸、プロピレン−1,2−ジカルボン酸、2−ブテンジカルボン酸、2−ブテン酸、4-エテニル安息香酸、フタル酸−2−ヒドロキシエチル−2−((2−メチル)2−プロペニルオキシ)エチルエステル〔フタル酸−2−ヒドロキシエチル−2−プロペニルオキシ)エチルエステルとフタル酸−2−ヒドロキシエチル−2−メチル−2−プロペニルオキシ)エチルエステルとを併せて「フタル酸−2−ヒドロキシエチル−2−((2−メチル)2−プロペニルオキシ)エチルエステル」と表記する。以下同様。〕、テトラヒドルフタル酸−2−ヒドロキシエチル−2−((2−メチル)2−プロペニルオキシ)エチルエステル、ヘキサヒドロフタル酸−2−ヒドロキシエチル−2−((2−メチル)2−プロペニルオキシ)エチルエステル、コハク酸−2−ヒドロキシエチル−2−((2−メチル)2−プロペニルオキシ)エチルエステル等の、カルボキシル基含有のα,β−不飽和化合物が挙げられる。
【0050】
アミド基含有のα,β−不飽和化合物としては、
例えば、(2−メチル)2−プロペンアミド、2−メチルプロパ−2−エノイルアミド、N,N−ジメチル−2−プロペンアミド、N,N−ジエチル−2−プロペンアミド、N−[3−(N’,N’−ジメチルアミノ)プロピル]−2−プロペンアミド、N−イソプロピル−2−プロペンアミド、N−エテニルメタンアミド、N−エテニルアセトアミド、N−エテニル−α−メチルチオアセトアミド、N−エテニルホルムアミドなどの脂肪族アミド基含有エテニル類;
【0051】
カルボニル基含有のα,β−不飽和化合物としては、
例えば、(2−メチル)プロペン酸2−(1,3ジオキソブトキシ)エチル、(2−メチル)プロペン酸2−(1,3ジオキソブトキシ)プロピル、(2−メチル)プロペン酸3−(1,3ジオキソブトキシ)プロピル、(2−メチル)プロペン酸2−(1,3ジオキソブトキシ)ブチル、(2−メチル)プロペン酸3−(1,3ジオキソブトキシ)ブチル、(2−メチル)プロペン酸4−(1,3ジオキソブトキシ)ブチル等のβジケトン構造含有(2−メチル)プロペン酸エステル類:
【0052】
例えば、N−(1,1−ジメチル−3−オキソブチル)−2−プロペンアミド、N−(1,1−ジメチル−3−オキソブチル)−2−メチル−2−プロペンアミド等のケトン構造含有エテニル類のα,β−不飽和化合物が挙げられる。
【0053】
N−アルコキシ
アルキル基含有のα,β−不飽和化合物としては例えば、
N−メトキシメチル−2−プロペンアミド、N−エトキシメチル(2−メチル)プロペンアミド、N−(n−,iso−)ブトキシメチル(2−メチル)プロペンアミド、N−メトキシエチル(2−メチル)プロペンアミド、N−エトキシエチル(2−メチル)プロペンアミド、N−(n−、iso−)ブトキシエチル(2−メチル)プロペンアミド、等のα,β−不飽和化合物が挙げられる。
【0054】
これらの中でも、α,β−不飽和化合物(m−1)としては、架橋剤(C)との架橋に伴う硬化反応の完結および触媒効果の効率の観点から、(2−メチル)プロペン酸、2−メチレン琥珀酸、(2−メチル)2−プロペンアミドが好ましい。
【0055】
<共重合体(B)>
本発明の共重合体(B)は、α,β不飽和化合物を共重合してなり、α,β不飽和化合物の組成比を調整し、ガラス転移点(Tg)が10℃以上、110℃未満となる共重合体である。
【0056】
共重合体(B)を使用することにより、積層シート接合用樹脂組成物のエントロピー弾性に伴う凝集力を高める効果がある。ラミネート時におけるフィルムへの接着性と、積層シート接合用樹脂組成物のエントロピー弾性に伴う凝集力のバランスから共重合体(B)のTgを10℃以上、110℃未満の範囲に調整することが好ましく、20℃以上、80℃未満がより好ましく、25℃以上、60℃未満がさらに好ましい。Tgが10℃未満の場合は、積層シート接合用樹脂組成物の弾性に伴う凝集力を高める効果か低く、内部凝集力が低下して接着力が低下する場合があり、110℃を越える場合は、共重合体(A)との相溶性が悪化してしまう場合や、積層シート接合用樹脂組成物の濡れ性が減少し、ラミネート時におけるフィルムへの初期接着性が低下する場合がある。尚、Tg25℃以上、60℃未満の範囲が凝集力と粘度、相溶性、エントロピー弾性に伴う内部凝集力のバランスの両立が容易である。
【0057】
なお、共重合体(B)の構成成分である各単量体から形成され得るホモポリマーのTgが既知であれば、上記と同様に、各ホモポリマーのTgと各単量体の構成比とに基づいて、FOX式により、共重合体(B)のTgを理論的に求めることができる。
【0058】
共重合体(B)の重量平均分子量は、積層シート接合用樹脂組成物の塗工適性と樹脂の凝集力を確保するため、2,000〜80,000であることが好ましく、5,000〜50,000であることが好ましく、10,000〜30,000であることがさらに好ましい。重量平均分子量が2,000未満であると樹脂のエントロピー弾性に伴う内部凝集力が不足し、凝集破壊となり接着力が低下する場合があり、80,000以上であると、共重合体(B)の粘度が高く、塗工性が悪化してしまう場合があるとともに、共重合体(A)に対する相溶性が悪化し積層シート接合用樹脂組成物が白濁する場合がある。尚、重量平均分子量10,000〜30,000の範囲が塗工適性、凝集力、相溶性のバランスの両立が容易である。
【0059】
共重合体(B)に用いるα,β不飽和化合物としては、公知のものであれば、限定されることは無いが、その中でも、活性水素基を有するα,β−不飽和化合物(m−2)(ただし(m−1)であるものを除く)を用いることが好ましい。具体的には、α,β−不飽和化合物(m−2)に用いられる活性水素基としては、水酸基、スルホニル基、ホスホニル基などが挙げられ、その中でも水酸基を含有することが好ましい。
【0060】
活性水素基を有するα,β−不飽和化合物(m−2)のうち、水酸基含有の単量体としては、
例えば、(2−メチル)プロペン酸2−ヒドロキシエチル、(2−メチル)プロペン酸1−ヒドロキシプロピル、(2−メチル)プロペン酸2−ヒドロキシプロピル、(2−メチル)プロペン酸2−メトキシエチル、(2−メチル)プロペン酸2−エトキシエチル、(2−メチル)プロペン酸2−ヒドロキシブチル、(2−メチル)プロペン酸4−ヒドロキシブチル(2−メチル)プロペン酸ポリエテンオキサイド、(2−メチル)プロペン酸ポリプロペンオキサイド等の水酸基含有(2−メチル)プロペン酸エステル類;
【0061】
例えば、(2−メチル)プロペン酸ポリエテンオキサイド、(2−メチル)プロペン酸ポリプロペンオキサイド、(2−メチル)プロペン酸ポリテトラメチンオキサイド、(2−メチル)プロペン酸ポリヘキサメチンオキサイドメチルなどのポリアルキレングリコール含有(2−メチル)プロペン酸誘導体類;
【0062】
例えば、2−ヒドロキシ−4−[2−(2−メチル)プロパン−2−エノイルオキシ]エトキシジフェニルメタノン、2−ヒドロキシ−4−[2−((2−メチル)プロパン−2−エノイルオキシ)ブトキシジフェニルメタノン、2,2'−ジヒドロキシ−4−[2−(2−メチル)プロパン−2−エノイルオキシ]エトキシジフェニルメタノン、2−ヒドロキシ−4−[2 −(2−メチル)プロパン−2−エノイルオキシ]エトキシ−4'−(2−ヒドロキシエトキシ)ジフェニルメタノン等のジフェニルメタノン系の水酸基含有(2−メチル)プロペン酸誘導体類;
等の水酸基含有のα,β−不飽和化合物が挙げられる。
【0063】
α,β−不飽和化合物(m−2)のうち、スルホニル基含有のα,β−不飽和化合物としては、
例えば、エテニルベンゼンスルホン酸、エテニルスルホン酸、アリルスルホン酸、アリルオキシベンゼンスルホン酸、メタリルスルホン酸、メタリルオキシベンゼンスルホン酸、ビニル硫酸等のアルケニル基含有スルホン酸化合物類、等のスルホニル基含有のα,β−不飽和化合物が挙げられる。
【0064】
(m−2)のうち、ホスホニル基含有の単量体としては、例えば、(2−メチル)プロペン酸アシッドホスホオキシエチル、(2−メチル)プロペン酸アシッドホスホオキシプロピル、(2−メチル)プロペン酸アシッドホスホオキシブチル、(2−メチル)プロペン酸−3−クロロ−2−アシッドホスホオキシエチル、(2−メチル)プロペン酸−3−クロロ−2−アシッドホスホオキシプロピル、(2−メチル)プロペン酸−3−クロロ−2−アシッドホスホオキシブチル、(2−メチル)プロペン酸アシッドホスホオキシエテンオキサイド( エテンオキサイド付加モル数:4〜10)、(2−メチル)プロペン酸アシッドホスホオキシプロペンオキサイド(プロペンオキサイド付加モル数:4〜10)等のホスホニル基含有の(2−メチル)プロペン酸エステル類、等のホスホニル基含有のα,β−不飽和化合物が挙げられる。
【0065】
これらの中でも、水酸基を有するα,β−不飽和化合物が好ましく、その中でも、(2−メチル)プロペン酸2−ヒドロキシエチル、(2−メチル)プロペン酸4−ヒドロキシブチルが好ましい。
【0066】
共重合体(B)の共重合に用いるα,β−不飽和化合物100重量部中、活性水素基を有するα,β−不飽和化合物(m−2)は、0.01〜20重量部含むことが好ましく、0.1〜10重量部含むことがより好ましく、0.2〜5重量部含むことがさらに好ましい。0.01重量部より少ない場合は、後述の架橋剤(C)に含有されている官能基との架橋に伴う硬化反応による分子量向上効果による凝集力向上効果が得られにくく、積層シート接合用樹脂組成物の硬化塗膜における凝集力が不足し、接着力が得られない場合があり、20重量部より多い場合は、硬化反応による硬化収縮が顕著となり、十分な接着力が得られない場合がある。尚、0.2〜5重量部の範囲が、硬化塗膜の架橋に伴う分子量が向上し、エントロピー弾性を発現しうる内部凝集力を確保できるだけでなく、かつ硬化収縮を起こしにくいため、より好ましい。
このように、硬化塗膜にエントロピー弾性を持たせる事によって環境変化による基材の緩やかな伸縮運動に対して、追従させることができ、接着力の低下を防ぐことが可能となる。
【0067】
共重合体(A)および共重合体(B)に用いられるその他共重合可能なα,β−不飽和化合物(m−3)としては、(m−1)および(m−2)と共重合可能なα,β−不飽和化合物が用いられる。
【0068】
例えば、(2−メチル)プロペン酸メチル、(2−メチル)プロペン酸エチル、(2−メチル)プロペン酸1−プロピル、(2−メチル)プロペン酸2−プロピル、(2−メチル)プロペン酸n−ブチル、(2−メチル)プロペン酸sec−ブチル、(2−メチル)プロペン酸iso−ブチル、(2−メチル)プロペン酸tert−ブチル、(2−メチル)プロペン酸n−アミル、(2−メチル)プロペン酸iso−アミル、(2−メチル)プロペン酸n−ヘキシル、(2−メチル)プロペン酸2−エチルヘキシル、(2−メチル)プロペン酸n−オクチル、(2−メチル)プロペン酸iso−オクチル、(2−メチル)プロペン酸n−ノニル、(2−メチル)プロペン酸iso−ノニル、(2−メチル)プロペン酸デシル、(2−メチル)プロペン酸ドデシル、(2−メチル)プロペン酸オクタデシル、(2−メチル)プロペン酸ラウリル、(2−メチル)プロペン酸ステアリルなどの(2−メチル)プロペン酸アルキルエステル類;
【0069】
例えば、(2−メチル)プロペン酸シクロヘキシル、(2−メチル)プロペン酸ベンジル、(2−メチル)プロペン酸iso−ボニル、(2−メチル)プロペン酸2-オキソ-1,2-ジフェニルエチル、(2−メチル)プロペン酸−p−クミルフェノール、(2−メチル)プロペン酸ジシクロペンテニル、(2−メチル)プロペン酸−1,4−ジオキサスピロ〔4,5〕−デカ−2−イルメチルエステル、(2−メチル)プロペン酸ジシクロペンタニルオキシエチル、(2−メチル)プロペン酸トリシクロペンテニル、(2−メチル)プロペン酸−1−アダマンチル、(2−メチル)プロペン酸−2−メチル−2−アダマンチル、(2−メチル)プロペン酸−2−エチル−2−アダマンチルなどの(2−メチル)プロペン酸環状エステル類;
【0070】
例えば、(2−メチル)プロペン酸ポリエテンオキサイドメチル、(2−メチル)プロペン酸ポリエテンオキサイドエチル、(2−メチル)プロペン酸ポリエテンオキサイドプロピル、(2−メチル)プロペン酸ポリエテンオキサイドブチル、(2−メチル)プロペン酸ポリエテンオキサイドペンチル、(2−メチル)プロペン酸ポリエテンオキサイドフェニル、(2−メチル)プロペン酸ポリエテンオキサイドフェニルノニル、(2−メチル)プロペン酸ポリエテンオキサイドフェニルパラクミル、(2−メチル)プロペン酸ポリプロペンオキサイドメチル、(2−メチル)プロペン酸ポリプロペンオキサイドエチル、(2−メチル)プロペン酸ポリプロペンオキサイドプロピル、(2−メチル)プロペン酸ポリプロペンオキサイドブチル、(2−メチル)プロペン酸ポリプロペンオキサイドn-ペンチル、(2−メチル)プロペン酸ポリプロペンオキサイドフェニル、(2−メチル)プロペン酸ポリプロペンオキサイドフェニルノニル、(2−メチル)プロペン酸ポリプロペンオキサイドフェニルパラクミル、(2−メチル)プロペン酸ポリテトラメチンオキサイドメチル、(2−メチル)プロペン酸ポリテトラメチンオキサイドフェニル、(2−メチル)プロペン酸ポリヘキサメチンオキサイドメチルなどのアルコキシポリアルキレングリコール含有(2−メチル)プロペン酸誘導体類;
【0071】
例えば、エテニルナフタレン、エテニルアントラセン等のエテニルベンゼン類:
【0072】
例えば、(2−メチル)プロペン酸アリル、(2−メチル)プロペン酸1−メチルアリル、(2−メチル)プロペン酸2−メチルアリル、(2−メチル)プロペン酸1−ブテニル、(2−メチル)プロペン酸2−ブテニル、(2−メチル)プロペン酸3−ブテニル、(2−メチル)プロペン酸1,3−メチル−3−ブテニル、(2−メチル)プロペン酸2−クロルアリル、(2−メチル)プロペン酸3−クロルアリル、(2−メチル)プロペン酸−o−アリルフェニル、(2−メチル)プロペン酸2−(アリルオキシ)エチル、(2−メチル)プロペン酸アリルラクチル、(2−メチル)プロペン酸シトロネリル、(2−メチル)プロペン酸ゲラニル、(2−メチル) プロペン酸ロジニル、(2−メチル)プロペン酸シンナミル、(2−メチル)プロペン酸エテニル等のさらに不飽和基を含有する(2−メチル)プロペン酸エステル類;
【0073】
例えば、(2−メチル)プロペン酸パーフルオロメチル、(2−メチル)プロペン酸パーフルオロエチル、(2−メチル)プロペン酸パーフルオロプロピル、(2−メチル)プロペン酸パーフルオロブチル、(2−メチル)プロペン酸パーフルオロオクチル、(2−メチル)プロペン酸トリフルオロメチルメチル、(2−メチル)プロペン酸2−トリフルオロメチルエチル、(2−メチル)プロペン酸ジパーフルオロメチルメチル、(2−メチル)プロペン酸2−パーフルオロエチルエチル、(2−メチル)プロペン酸2−パーフルオロメチル−2−パーフルオロエチルメチル、(2−メチル)プロペン酸トリパーフルオロメチルメチル、(2−メチル)プロペン酸2−パーフルオロエチル−2−パーフルオロブチルエチル、(2−メチル)プロペン酸2−パーフルオロヘキシルエチル、(2−メチル)プロペン酸2−パーフルオロデシルエチル、(2−メチル)プロペン酸2−パーフルオロヘキサデシルエチル、(2−メチル)プロペン酸−2,6−ジブロモ−4−ブチルフェニル、(2−メチル)プロペン酸−2,4,6−トリブロモフェノキシエチル、(2−メチル)プロペン酸−2,4,6−トリブロモフェノールエテンオキサイド付加物(エテンオキサイド付加モル数:4〜12)等のハロゲン含有(2−メチル)プロペン酸アルキルエステル類;
【0074】
例えば、(2−メチル)プロペン酸グリシジル、(2−メチル)プロペン酸(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチル、(2−メチル)プロペン酸(3−メチル−3−オキセタニル)メチル、(2−メチル)プロペン酸テトラヒドロフルフリル等の酸素原子含有複素環含有(2−メチル)プロペン酸エステル類;
【0075】
例えば、3−(2−メチルプロパン−2−エノイルオキシプロピル)トリメトキシシラン、3−(2−メチルプロパン−2−エノイルオキシプロピル)トリエトキシシラン、3−(2−メチルプロパン−2−エノイルオキシプロピル)トリイソプロポキシシラン、3−(2−メチルプロパン−2−エノイルオキシプロピル)メチルジメトキシシラン、3−(2−メチルプロパン−2−エノイルオキシプロピル)メチルジエトキシシラン、3−(プロパン−2− エノイルオキシプロピル)トリメトキシシラン等のアルコキシシリル基含有(2−メチル)プロペン酸エステル類;
【0076】
アミノ基含有のα,β−不飽和化合物としては、
例えば、(2−メチル)プロペン酸N−メチルアミノエチル、(2−メチル)プロペン酸N−トリブチルアミノエチル、(2−メチル)プロペン酸N,N−ジメチルアミノエチル、(2−メチル)プロペン酸N,N−ジエチルアミノエチル等の鎖状アミノ基を有するアミノ基含有(2−メチル)プロペン酸エステル類;
【0077】
例えば、(2−メチル)プロペン酸モルホリノエチル、(2−メチル)プロペン酸ペンタメチルピペリジニル、(2−メチル)プロペン酸テトラメチルピペリジニルなどの窒素原子を1個有する環状アミノ基含有(2−メチル)プロペン酸エステル類;
【0078】
例えば、2−エテニルピリジン、4−エテニルピリジン、2−エテニルピペラジン、2−エテニルピリミジン、N−エテニルイミダゾール、4−エテニルピペラジン、エテニルオキサゾール、N−エテニルカルバゾール、N−エテニルインドール、N−エテニルピロリデン、メチルエテニルイミダゾリウムクロリド、2,4−ジアミノ−6−エテニル−s−トリアジン、2−エテニルピロール、1−ベンジル−2−エテニル−1H−ピロール 、2−(1−ピロリル)エチルビニルエーテル、1−(4−ビニルフェニル)−1H―ピロール−2,5−ジオン、2−エテニルチオフェン、2−(2−ニトロエテニル)チオフェン 、5−ホルミル−2−エテニルチオフェン、3−ブロモ−4−(1−ヨード−2−パーフルオロブチル−エテニル)チオフェン、3−ブロモ−4−(1−ブロモ−2−ペンタフルオロスルファニル−エテニル)−チオフェン、5−[2−[4−ジフェニルアミノフェニル−フェニル]−エテニル]−フェニル]−チオフェン−2−ルボアルデヒド、ビス(2−ジフェニルエテニル)チオフェン、4−[2−(4−ジフェニルアミノ−フェニル)−エテニル]−ベンズアルデヒド、ジエテニルエチルウレアなどの窒素原子を有する環状アミノ基有の複素環エテニル類;
【0079】
その他、
例えば、2−エテニルピリジン、4−エテニルピリジン、2−エテニルピペラジン、2−エテニルピリミジン、N−エテニルイミダゾール、4−エテニルピペラジン、エテニルオキサゾール、N−エテニルカルバゾール、N−エテニルインドール、N−エテニルピロリデン、メチルエテニルイミダゾリウムクロリド、2,4−ジアミノ−6−エテニル−s−トリアジン、2−エテニルピロール、1−ベンジル−2−エテニル−1H−ピロール 、2−(1−ピロリル)エチルビニルエーテル、1−(4−ビニルフェニル)−1H―ピロール−2,5−ジオン、2−エテニルチオフェン、2−(2−ニトロエテニル)チオフェン 、5−ホルミル−2−エテニルチオフェン、3−ブロモ−4−(1−ヨード−2−パーフルオロブチル−エテニル)チオフェン、3−ブロモ−4−(1−ブロモ−2−ペンタフルオロスルファニル−エテニル)−チオフェン、5−[2−[4−ジフェニルアミノフェニル−フェニル]−エテニル]−フェニル]−チオフェン−2−ルボアルデヒド、ビス(2−ジフェニルエテニル)チオフェン、4−[2−(4−ジフェニルアミノ−フェニル)−エテニル]−ベンズアルデヒド、ジエテニルエチルウレアなどの窒素原子含有複素環エテニル類;
【0080】
例えば、3-ピロリン-2,5-ジオン、1−メチル−1H-ピロール−2,5−ジオン、1−エチル−1H−ピロール−2,5−ジオン、1−プロピル−1H−ピロール−2,5−ジオン、1−ブチル−1H−ピロール−2,5−ジオン、1−オクチル−1H−ピロール−2,5−ジオン、1−ドデシル−1H−ピロール−2,5−ジオン、1−ステアリル−1H−ピロール−2,5−ジオン、1−フェニル−1H−ピロール−2,5−ジオン、1−シクロヘキシル−1H−ピロール−2,5−ジオンなどの窒素原子含有の3-ピロリン-2,5-ジオン誘導体類;
【0081】
例えば、2官能の単量体として、ジ(2−メチル)プロペン酸エテンオキサイド、ジ(2−メチル)プロペン酸トリエテンオキサイド、ジ(2−メチル)プロペン酸テトラエテンオキサイド、ジ(2−メチル)プロペン酸ポリエテンオキサイド、ジ(2−メチル)プロペン酸プロペンオキサイド、ジ(2−メチル)プロペン酸ジプロペンオキサイド、ジ(2−メチル)プロペン酸トリプロペンオキサイド、ジ(2−メチル)プロペン酸ポリプロペンオキサイド、ジ(2−メチル)プロペン酸ブテンオキサイド、ジ(2−メチル)プロペン酸ペンテンオキサイド、ジ(2−メチル)プロペン酸2,2−ジメチルプロピル、ジ(2−メチル)プロペン酸ヒドロキシピバリルヒドロキシピバレート(通称マンダ) 、ジ(2−メチル)プロペン酸ヒドロキシピバリルヒドロキシピバレートジカプロラクトネート、ジ(2−メチル)プロペン酸1,6−ヘキサンジオール、ジ(2−メチル)プロペン酸1,2−ヘキサンジオール、ジ(2−メチル)プロペン酸1,5−ヘキサンジオール、ジ(2−メチル)プロペン酸2,5−ヘキサンジオール、ジ(2−メチル)プロペン酸1,7−ヘプタンジオール、ジ(2−メチル)プロペン酸1,8−オクタンジオール、ジ(2−メチル)プロペン酸1,2−オクタンジオール、ジ(2−メチル)プロペン酸1,9−ノナンジオール、ジ(2−メチル)プロペン酸1,2−デカンジオール、ジ(2−メチル)プロペン酸1,10−デカンジオール、ジ(2−メチル)プロペン酸1,2−デカンジオール、ジ(2−メチル)プロペン酸1,12−ドデカンジオール、ジ(2−メチル)プロペン酸1,2−ドデカンジオール、ジ(2−メチル)プロペン酸1,14−テトラデカンジオール、ジ(2−メチル)プロペン酸1,2−テトラデカンジオール、ジ(2−メチル)プロペン酸1,16−ヘキサデカンジオール、ジ(2−メチル)プロペン酸1,2−ヘキサデカンジオール、ジ(2−メチル)プロペン酸2−メチル−2,4−ペンタンジオール、ジ(2−メチル)プロペン酸3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ジ(2−メチル)プロペン酸2−メチル−2-プロピル−1,3−プロパンジオール、ジ(2−メチル)プロペン酸2,4−ジメチル−2,4−ペンタンジオール、ジ(2−メチル)プロペン酸2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオ-ル、ジ(2−メチル)プロペン酸2,2,4−トリメチル-1,3-ペンタンジオール、ジ(2−メチル)プロペン酸ジメチロールオクタン、ジ(2−メチル)プロペン酸2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、ジ(2−メチル)プロペン酸2,5−ジメチル-2,5−ヘキサンジオール、ジ(2−メチル)プロペン酸2-メチル−1,8−オクタンジオール、ジ(2−メチル)プロペン酸2−ブチル−2−エチル−1,3-プロパンジオール、ジ(2−メチル)プロペン酸2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、ジ(2−メチル)プロペン酸1,2−ヘキサンジオール、ジ(2−メチル)プロペン酸1,5−ヘキサンジオール、ジ(2−メチル)プロペン酸2,5−ヘキサンジオール、ジ(2−メチル)プロペン酸1,7−ヘプタンジオール、ジ(2−メチル)プロペン酸1,8−オクタンジオール、ジ(2−メチル)プロペン酸1,2-オクタンジオール、ジ(2−メチル)プロペン酸1,9−ノナンジオール、ジ(2−メチル)プロペン酸1,2−デカンジオール、ジ(2−メチル)プロペン酸1,10−デカンジオール、ジ(2−メチル)プロペン酸1,2−デカンジオール、ジ(2−メチル)プロペン酸1,12−ドデカンジオール、ジ(2−メチル)プロペン酸1,2−ドデカンジオール、ジ(2−メチル)プロペン酸1,14−テトラデカンジオール、ジ(2−メチル)プロペン酸1,2−テトラデカンジオール、ジ(2−メチル)プロペン酸1,16−ヘキサデカンジオール、ジ(2−メチル)プロペン酸−1,2−ヘキサデカンジオール、ジ(2−メチル)プロペン酸2−メチル−2,4−ペンタン、ジ(2−メチル)プロペン酸3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ジ(2−メチル)プロペン酸2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、ジ(2−メチル)プロペン酸2,4−ジメチル−2,4−ペンタンジオール、ジ(2−メチル)プロペン酸2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、ジ(2−メチル)プロペン酸2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、ジ(2−メチル)プロペン酸ジメチロールオクタン、ジ(2−メチル)プロペン酸2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、ジ(2−メチル)プロペン酸2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオール、ジ(2−メチル)プロペン酸2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、ジ(2−メチル)プロペン酸2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、ジ(2−メチル) プロペン酸1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタン等(2−メチル)プロペン酸系2官能誘導体類;
【0082】
ジ(2−メチル)プロペン酸トリシクロデカンジメチロール、ジ(2−メチル)プロペン酸トリシクロデカンジメチロールジカプロラクトネート、ジ(2−メチル)プロペン酸−2,2−ビス(ヒドロキシフェニル)プロパンのテトラエテンオキサイド付加体、ジ(2−メチル)プロペン酸−2,2−ビス(ヒドロキシフェニル)メタンのテトラエテンオキサイド付加体、ジ(2−メチル) プロペン酸−4,4‘−スルフォニルジフェノールのテトラエテンオキサイド付加体、ジ(2−メチル) プロペン酸−水添加2,2−ビス(ヒドロキシフェニル)プロパンのテトラエテンオキサイド付加体、ジ(2−メチル)プロペン酸−水添加2,2−ビス(ヒドロキシフェニル)メタンのテトラエテンオキサイド付加体、ジ(2−メチル)プロペン酸−水添加2,2−ビス(ヒドロキシフェニル)プロパン、ジ(2−メチル) プロペン酸−水添加2,2−ビス(ヒドロキシフェニル)メタン、ジ(2−メチル)プロペン酸−2,2−ビス(ヒドロキシフェニル)プロパンのテトラエチレンオキサイド付加体−ジカプロラクトネート、ジ(2− メチル)プロペン酸−2,2−ビス(ヒドロキシフェニル)メタンのテトラエテンオキサイド付加体−ジカプロラクトネート等、(2−メチル)プロペン酸系2官能誘導体類;
【0083】
3官能の単量体としてトリ(2−メチル)プロペン酸グリセリン、トリ(2−メチル)プロペン酸トリメチロールプロパン、トリ(2−メチル)プロペン酸トリメチロールプロパントリエチレンオキサイド、トリ(2−メチル)プロペン酸トリメチロールプロパントリカプロラクトネート、トリ(2−メチル)プロペン酸トリメチロールエタン、トリ(2−メチル)プロペン酸トリメチロールヘキサン、トリ(2−メチル)プロペン酸トリメチロールオクタン、トリ(2−メチル)プロペン酸ペンタエリスリトール、トリ(2−メチル)プロペン酸1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタン、トリ(2−メチル)プロペン酸1,1,1−トリスヒドロキシメチルプロパン等の3官能(2−メチル)プロペン酸エステル類;
【0084】
4官能以上の単量体として、テトラ(2−メチル)プロペン酸ペンタエリスリトール、テトラ(2−メチル)プロペン酸ペンタエリスリトールテトラカプロラクトネート、テトラ(2−メチル)プロペン酸ジグリセリン、テトラ(2−メチル)プロペン酸ジトリメチロールプロパン、テトラ(2−メチル)プロペン酸ジトリメチロールプロパンテトラカプロラクトネート、テトラ(2−メチル)プロペン酸ジトリメチロールエタン、テトラ(2−メチル)プロペン酸ジトリメチロールブタン、テトラ(2−メチル)プロペン酸ジトリメチロールヘキサン、テトラ(2−メチル)プロペン酸ジトリメチロールオクタン、テトラ(2−メチル)プロペン酸ジペンタエリスリトール、ヘキサ(2−メチル)プロペン酸ジペンタエリスリトール、ヘキサ(2−メチル)プロペン酸トリペンタエリスリトール、ヘプタ(2−メチル)プロペン酸トリペンタエリスリトール、オクタ(2−メチル)プロペン酸トリペンタエリスリトール、ヘプタ(2−メチル)プロペン酸ジペンタエリスリトールポリアルケンオキサイド等の多官能(2−メチル)プロペン酸エステル類;
【0085】
例えば、エテニルフェニルペンチルエーテル、エテニルフェニルヘキシルエーテル、エテニルフェニルヘプチルエーテル、エテニルフェニルオクチルエーテル、エテニルフェニルノニルエーテル、エテニルフェニルデシルエーテル、エテニルフェニルウンデシルエーテル、エテニルフェニルドデシルエーテル、エテニルフェニルトリデシルエーテル、エテニルフェニルテトラデシルエーテル、エテニルフェニルペンタデシルエーテル、エテニルフェニルヘキサデシルエーテル、エテニルフェニルヘプタデシルエーテル、エテニルフェニルオクタデシルエーテル、エテニルフェニルノナデシルエーテル、エテニルフェニルエイコシルエーテル、エテニルフェニルヘンエイコシルエーテル、エテニルフェニルドコシルエーテル、エテニルフェニルメチルブチルエーテル、エテニルフェニルメチルペンチルエーテル、エテニルフェニルメチルヘキシルエーテル、エテニルフェニルメチルヘプチルエーテル、エテニルフェニルメチルオクチルエーテル、エテニルフェニルメチルノニルエーテル、エテニルフェニルメチルデシルエーテル、エテニルフェニルメチルウンデシルエーテル、エテニルフェニルメチルドデシルエーテル、エテニルフェニルメチルトリデシルエーテル、エテニルフェニルメチルテトラデシルエーテル、エテニルフェニルメチルペンタデシルエーテル、エテニルフェニルメチルヘキサデシルエーテル、エテニルフェニルメチルヘプタデシルエーテル、エテニルフェニルメチルオクタデシルエーテル、エテニルフェニルメチルノナデシルエーテル、エテニルフェニルメチルエイコシルエーテル、エテニルフェニルメチルヘンエイコシルエーテル、エテニルフェニルメチルドコシルエーテルなどの長鎖アルキル基を有する芳香族エテニルエーテル類;
【0086】
例えば、イソプロペニルフェニルメチルブチルエーテル、イソプロペニルフェニルメチルペンチルエーテル、イソプロペニルフェニルメチルヘキシルエーテル、イソプロペニルフェニルメチルヘプチルエーテル、イソプロペニルフェニルメチルオクチルエーテル、イソプロペニルフェニルメチルノニルエーテル、イソプロペニルフェニルメチルデシルエーテル、イソプロペニルフェニルメチルウンデシルエーテル、イソプロペニルフェニルメチルドデシルエーテル、イソプロペニルフェニルメチルトリデシルエーテル、イソプロペニルフェニルメチルテトラデシルエーテル、イソプロペニルフェニルメチルペンタデシルエーテル、イソプロペニルフェニルメチルヘキサデシルエーテル、イソプロペニルフェニルメチルヘプタデシルエーテル、イソプロペニルフェニルメチルオクタデシルエーテル、イソプロペニルフェニルメチルノナデシルエーテル、イソプロペニルフェニルメチルエイコシルエーテル、イソプロペニルフェニルメチルヘンエイコシルエーテル、イソプロペニルフェニルメチルドコシルエーテルなどの長鎖アルキル基を有するイソプロペニルフェニル類;
【0087】
4−エテニルベンゼンカルボン酸ヘキシル、4−エテニルベンゼンカルボン酸オクチル、4−エテニルベンゼンカルボン酸ノニル、4−エテニルベンゼンカルボン酸デシル、4−エテニルベンゼンカルボン酸ドデシル、4−エテニルベンゼンカルボン酸テトラデシル、4−エテニルベンゼンカルボン酸ヘキサデシル、4−エテニルベンゼンカルボン酸オクタデシル、4−エテニルベンゼンカルボン酸エイコシル、4−エテニルベンゼンカルボン酸ドコシル、4−イソプロペニルベンゼンカルボン酸ヘキシル、4−イソプロペニルベンゼンカルボン酸オクチル、4−イソプロペニルベンゼンカルボン酸ノニル、4−イソプロペニルベンゼンカルボン酸デシル、4−イソプロペニルベンゼンカルボン酸ドデシル、4−イソプロペニルベンゼンカルボン酸テトラデシル、4−イソプロペニルベンゼンカルボン酸ヘキサデシル、4−イソプロペニルベンゼンカルボン酸オクタデシル、4−イソプロペニルベンゼンカルボン酸エイコシル、4−イソプロペニルベンゼンカルボン酸ドコシルなどの長鎖アルキル基を有するエテニルベンゼンカルボン酸エステル系またはイソプロペニルベンゼンカルボン酸エステル類;
【0088】
例えば、エテニルベンゼン、α−イソプロペニルベンゼン、β−イソプロペニルベンゼン、1−メチルエテニルベンゼン、2−メチルエテニルベンゼン、3−メチルエテニルベンゼン、1−ブチルエテニルベンゼン、1−クロロ−4−イソプロペニルベンゼンなどの芳香族エテニル類;
【0089】
例えば、テトラ(エテンオキサイド)エテニルフェニルエーテル、メチルテトラ(エテンオキサイド)エテニルフェニルエーテル、エチルテトラ(エテンオキサイド)エテニルフェニルエーテル、プロピルテトラ(エテンオキサイド)エテニルフェニルエーテル、n−ブチルテトラ(エテンオキサイド)エテニルフェニルエーテル、n−ペンチルテトラ(エテンオキサイド)エテニルフェニルエーテル、テトラ(プロペンオキサイド)エテニルフェニルエーテル、メチルテトラ(プロペンオキサイド)エテニルフェニルエーテル、エチルテトラ(プロペンオキサイド)エテニルフェニルエーテル、プロポキシテトラ(プロペンオキサイド)エテニルフェニルエーテル、n−ブチルテトラ(プロペンオキサイド)エテニルフェニルエーテル、n−ペンタキシテトラ(プロペンオキサイド)エテニルフェニルエーテル、ポリ(エテンオキサイド)エテニルフェニルエーテル、メチルポリ(エテンオキサイド)エテニルフェニルエーテル、エチルポリ(エテンオキサイド)エテニルフェニルエーテル、ポリ(プロペンオキサイド)エテニルフェニルエーテル、メチルポリ(プロペンオキサイド)エテニルフェニルエーテル、エチルポリ(プロペンオキサイド)エテニルフェニルエーテル、ポリ(エテンオキサイド)エテニルベンジルエーテル、メチルポリ(エテンオキサイド)エテニルベンジルエーテル、エチルポリ(エテンオキサイド)エテニルベンジルエーテル、ポリ(プロペンオキサイド)エテニルベンジルエーテル、メチルポリ(プロペンオキサイド)エテニルベンジルエーテル、エチルポリ(プロペンオキサイド)エテニルベンジルエーテル、ポリ(エテンオキサイド)エテニルフェニルエチルエーテル、メチルポリ(エテンオキサイド)エテニルフェニルエチルエーテル、エチルポリ(エテンオキサイド)エテニルフェニルエチルエーテル、ポリ(オキシプロピレン)ビニルフェニルエチルエーテル、メチルポリ(プロペンオキサイド)エテニルフェニルエチルエーテル、エチルポリ(プロペンオキサイド)エテニルフェニルエチルエーテルなどの長鎖ポリアルケンオキサイド部位有するエテニルベンゼン類;
【0090】
例えば、ポリ(エテンオキサイド)イソプロペニルフェニルエーテル、メチルポリ(エテンオキサイド)イソプロペニルフェニルエーテル、エチルポリ(エテンオキサイド)イソプロペニルフェニルエーテル、ポリ(プロペンオキサイド)イソプロペニルフェニルエーテル、メチルポリ(プロペンオキサイド)イソプロペニルフェニルエーテル、エチルポリ(プロペンオキサイド)イソプロペニルフェニルエーテル、ポリ(エテンオキサイド)イソプロペニルベンジルエーテル、メチルポリ(エテンオキサイド)イソプロペニルベンジルエーテル、エチルポリ(エテンオキサイド)イソプロペニルベンジルエーテル、ポリ(プロペンオキサイド)イソプロペニルベンジルエーテル、メチルポリ(プロペンオキサイド)イソプロペニルベンジルエーテルなどのポリアルケンオキサイド部位を有するイソプロペニル類;
【0091】
例えば、パーフルオロエテン、パーフルオロプロペン、パーフルオロ(プロピルエテニルエーテル)、フッ化エテニリデンなどのフッ素含有エテニル類;
【0092】
例えば、エテニルトリメトキシシラン、エテニルトリエトキシシランなどのトリアルキルオキシシリル基含有エテニル類;
【0093】
例えば、エタン酸エテニル、プロパン酸エテニル、ピバリン酸エテニル、ベンゼンカルボン酸エテニル、3−フェニル−2−プロペン酸エテニル、cis−ブテン二酸ジアリル、2−メチリデンコハク酸ジアリル、(E)−ブタ−2−エン酸エテニル、(Z)−オクタデカ−9−エン酸エテニル、(9Z,12Z,15Z)−オクタデカ−9,12,15−トリエン酸エテニル等のエテニルエステル類;
【0094】
例えば、2−プロペンニトリル、2−メチル−2−プロペンニトリル、(2−メチル)プロペン酸2−シアノエチルなどのニトリル基含有エテニル類;
【0095】
例えば、グリシジルシンナマート、アリルグリシジルエーテル、エテニルシクロヘキセンモノオキシラン、1,3−ブタジエンモノオキシラン等のグリシジル基含有エテニルエステル類;
【0096】
例えば、エテン、プロペン、1−ブテン、2−ブテン、2−メチルプロペン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセン、1−ドコセン、1−テトラコセン、1−ヘキサコセン、1−オクタコセン、1−トリアコンテン、1−ドトリアコンテン、1−テトラトアコンテン、1−ヘキサトリアコンテン、1−オクタトリアコンテン、1−テトラコンテン等ならびにその混合物などのアルケン類;
【0097】
例えば、アレン、1,2−ブタジエン、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2−クロロ−1,3−ブタジエンなどのジエン類;
【0098】
例えば、クロロエテン、1,1−ジクロロエテン、アリルクロライド、アリルアルコールなどが挙げられるが特にこれらに限定されるものではない。
【0099】
例えば、上記、分子内にプロプ−2−エノイル基、2−メチルプロパ−2−エノイル基を少なくとも1つ有するα,β−不飽和化合物の共重合体であって、共重合体末端にα,β−不飽和二重結合を有する高分子量タイプの重合可能な共重合体、いわゆるマクロモノマーも含まれる。
【0100】
これらは、1種だけを用いてもよいし、あるいは、複数種を併用してもよく、特に限定されるものではない。
【0101】
次に共重合体(A)および共重合体(B)を作成する際に用いる重合開始剤について説明する。
本発明における共重合体(A)および共重合体(B)は、上記したような種々のα,β−不飽和化合物(m−1)〜(m−3)の合計100重量部に対して、0.001〜20重量部の重合開始剤を用いて塊状重合、溶液重合、乳化重合、懸濁重合などの方法により合成される。好ましくは溶液重合で合成される。
【0102】
重合開始剤の例としては、2,2‘−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)や2,2’−アゾビス(2−メチルブタンニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン1−カルボニトリル)や2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルペンタロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチル−4−メトキシペンタロニトリル)やジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、4,4’−アゾビス(4−シアノペンタン酸)や2,2’−アゾビス(2−ヒドロキシメチルプロピオニトリル)、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]などのアゾ系化合物類が挙げられる。
【0103】
また、ジベンゾイルジオキシダンやtert−ブチルパーベンゾエート、tert−ブチルパーオキシピバレート、tert−ヘキシルパーオキシピバレート、オクタノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、クメンヒドロパーオキシドやジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネートやジ(2−エトキシエチル)パーオキシジカーボネート、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、tert−ブチルパーオキシネオデカノエートやtert−ブチルパーオキシビバレート、(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキシドやジプロピオニルパーオキシド、ジアセチルパーオキシドなどの有機過酸化物類が挙げられる。
【0104】
また合成時には、ラウリルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン等のメルカプタン類、α−メチルスチレンダイマー、リモネン等の連鎖移動剤を使用しても良い。
【0105】
これらの中でも、分子量制御および分子量分布制御の観点から、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)およびジベンゾイルジオキシダンやtert−ブチルパーベンゾエート、tert−ブチルパーオキシピバレート、tert−ヘキシルパーオキシピバレート、オクタノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートが好ましい。
【0106】
共重合体(A)および共重合体(B)を溶液重合法によって作成する場合、溶媒として、例えば、メチルベンゼン、1,2−ジメチルベンゼンなどの芳香族系溶媒;エタノール、プロパン−2−オール、1−ブタノールなどのアルコール系溶媒; 1−メトキシ−2−プロパノール、(2−メトキシメチルエトキシ)−プロパノール2−エトキシエタノール、2−ブトキシエタノールなどのエーテル系溶媒; エタン酸エチル、エタン酸ブチル、2−エトキシエタノールアセテートなどのエステル系溶媒;2−プロパノン、2−ブタノン、4−メチル−2−ペンタノン、2,4−ペンタジオンなどのケトン系溶媒; ジメチルホルムアミドなどのアミド系溶媒などの有機溶媒が挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの溶媒は、それぞれ単独で用いてもよく、2 種以上を併用してもよい。溶媒の量は、重合条件、α,β−不飽和化合物(m−1)〜(m−3)成分の組成、得られる共重合体(A)および共重合体(B)の粘度や濃度などを考慮して適宜決定すればよい。
【0107】
共重合体(A)および共重合体(B)を作成する際の重合条件は、重合方法に応じて適宜設定すればよく、特に限定されるものではない。重合温度は、好ましくは室温〜150℃、より好ましくは40〜120℃ である。反応時間は、α,β−不飽和化合物(m−1)〜(m−3)成分の重合反応が完結するように適宜設定すればよい。
【0108】
<架橋剤(C)>
次に架橋剤(C)について、説明する。
架橋剤(C)は、架橋剤(C)中の反応性官能基が、共重合体(A)のカルボキシル基、アミド基、カルボニル基及びN−アルコキシル基および共重合体(B)中の活性水素基と硬化反応し、積層シート接合用樹脂組成物の硬化塗膜の分子量を向上させ、エネルギー弾性を発現する内部凝集力を向上させる役割を持つ。
また、架橋剤(C)は後述する基材表面との相互作用を向上させる効果も期待できる。さらには、コロナ放電処理等の物理処理、酸などで改質された科学処理のなされた基材に対しては、架橋剤(C)中の反応性官能基を基材と化学反応させることで、共重合体(A)および共重合体(B)と基材との間に強固な相互作用を発現させることも可能である。
このように、架橋剤(C)を用いる事により、強固な硬化塗膜を形成することが可能となり、急激な環境変化に伴う基材の伸縮運動を、エネルギー弾性を発現する架橋剤(C)により、抑制することが可能となる。
【0109】
架橋剤(C)としては、例えば、ポリイソシアネート化合物、多官能エポキシ化合物、高分子量ポリカルボジイミド化合物、N−メチロール基含有化合物、多官能アジリジン化合物、金属キレート化合物などが挙げられる。
これらの中でも、架橋剤(C)の架橋に伴う硬化反応が有効に作用するために、共重合体(A)中のカルボキシル基、アミド基、カルボニル基及びN−アルコキシル基および共重合体(B)中の活性水素基と反応し得る官能基を分子内に2個以上有する化合物が好ましく用いられる。特にポリイソシアネート化合物は、硬化反応後における積層シート接合用樹脂組成物の接着性に優れていることから好ましく用いられる。
【0110】
架橋剤(C)のうち、ポリイソシアネート化合物(c−1)としては、イソシアネート基を分子内に複数有する化合物であればよく、特に限定されるものではない。ポリイソシアネート化合物の例としては、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネートなどのポリイソシアネート化合物、及びこれらポリイソシアネート化合物と2−(ヒドロキシメチル)−2−エチルプロパン−1,3−ジオール等のポリオール化合物とのアダクト体、これらポリイソシアネート化合物のビュレット体やイソシアヌレート体、更にはこれらポリイソシアネート化合物と公知のポリエーテルポリオールやポリエステルポリオール、ポリプロペン酸アルキル系ポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオール等とのアダクト体等が挙げられる。
【0111】
これらの中でも、積層シート用接合用樹脂組成物の添加配合直後のポットライフや、塗工後の反応速度の制御、塗膜の透明性向上の観点から、脂肪族のポリイソシアネート(c−1−1)である、ヘキサメチレンジイソシアネートのビュレット体やイソシアヌレート体、ヘキサメチレンジイソシアネートと公知のポリエーテルポリオールやポリエステルポリオール、ポリプロペン酸アルキル系ポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオール等とのアダクト体、
脂環族のポリイソシアネート化合物(c−1−2)である、イソホロンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネートのビュレット体やイソシアヌレート体、イソホロンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネートいずれかの化合物との公知のポリエーテルポリオールやポリエステルポリオール、ポリプロペン酸アルキル系ポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオール等とのアダクト体が好ましい。
【0112】
更に積層シート接合用樹脂組成物の接着性、硬化反応後の耐湿熱性、透明性の観点から、特に、ヘキサメチレンジイソシアネートと2−(ヒドロキシメチル)−2−エチルプロパン−1,3−ジオールとのアダクト体、ヘキサメチレンジイソシアネートイソシアヌレート3量体、ヘキサメチレンジイソシアネートビュレット体(c−1−1)、イソホロンジイソシアネートと2−(ヒドロキシメチル)−2−エチルプロパン−1,3−ジオールとのアダクト体、イソホロンジイソシアネートイソシアヌレート3量体(c−1−2)が好ましい。
【0113】
多官能エポキシ化合物は、エポキシ基を分子内に複数有する化合物であればよく、特に限定されるものではない。多官能エポキシ化合物としては、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ビスフェノールA・エピクロロヒドリン型エポキシ樹脂、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N−ジグリシジルアニリン、N,N−ジグリシジルトルイジン等が挙げられる。
【0114】
高分子量ポリカルボジイミド化合物としては、日清紡績株式会社のカルボジライトシリーズが挙げられる。その中でもカルボジライトV−01、03、05、07、09は、有機溶剤との相溶性に優れており好ましい。
【0115】
多官能アジリジン化合物としては、例えば、2,2’−ビスヒドロキシメチルブタノールトリス[3−(1−アジリジニル)プロピオネート]、4,4’−ビス(エチレンイミノカルボニルアミノ)ジフェニルメタン等が挙げられる。
【0116】
金属キレート化合物としては、例えば、アルミニウム、鉄、銅、亜鉛、スズ、チタン、ニッケル、アンチモン、マグネシウム、バナジウム、クロム及びジルコニウムなどの多価金属と、2,4−ペンタジオンやエチル−3−オキソブタノエートとの配位化合物などが挙げられる。
【0117】
架橋剤(C)は、単独又は併用して使用することが可能である。
【0118】
架橋剤(C)は、共重合体(A)および共重合体(B)の合計100重量部に対して、0.1〜30重量部添加することが好ましく、より好ましくは、1〜25重量部、さらに好ましくは2〜15重量部である。0.1重量部未満であると架橋剤(C)の添加量が少なく、硬化反応による硬化塗膜の分子量向上効果が得られず、エネルギー弾性の発現が不十分のため、凝集力が不足し、接着力が低下する場合がある。30重量部を超えると、過剰の架橋剤(C)が積層シート接合用樹脂組成物に未反応のまま残存し、接着力が低下する懸念があり、また、積層シート接合用樹脂組成物を二つのフィルムの接着に使用した際には、耐久性試験時に残存している架橋剤(C)が架橋に伴う硬化反応を引き起こし、積層シート接合用樹脂組成物のエネルギー弾性が高すぎたり、基材に対する濡れ性が低下したり等の変質を起こしてしまう場合がある。尚、2〜15重量部の範囲が凝集力の向上効果と残留架橋剤低減効果の点でより好ましい。
【0119】
<積層シート接合用樹脂組成物>
次に積層シート接合用樹脂組成物について説明する。
本発明の積層シート接合用樹脂組成物は、共重合体(A)、共重合体(B)および架橋剤(C)からなることを特徴とし、共重合体(A)、共重合体(B)、及び架橋剤(C)とを使用時に混合する、いわゆる3液混合タイプの積層シート接合用樹脂組成物であってもよいし、予め、重合体(A)と共重合体(B)を混合した共重合体混合物と架橋剤(C)とを使用時に混合する、いわゆる2液混合タイプの積層シート接合用樹脂組成物であってもよいし、また、使用条件によっては、共重合体(A)、共重合体(B)、及び架橋剤(C)とが、予め混合された1液タイプの積層シート接合用樹脂組成物であってもよい。また、共重合体(A)、共重合体(B)、及び架橋剤(C)を、それぞれ独立に複数種類で用いてもよい。通常、2液混合タイプとして用いる場合、第1液としては、共重合体(A)、共重合体(B)、有機溶剤、及びその他の添加剤を含み、第2液としては、架橋剤(C)、有機溶剤、その他の添加剤を含む。
【0120】
共重合体(A)および共重合体(B)の合計100重量部中、共重合体(A)は30〜95重量部含むことが好ましく、より好ましくは、40〜80重量部、さらに好ましくは50〜70重量部含むことがこのましい。30重量部未満であると、共重合体(B)の凝集力の高さが顕著となることや、積層シート接合用樹脂組成物の濡れ性がなくなり、ラミネート時におけるフィルムへの接着性が低下する場合があり、95重量部より多い場合は積層シート接合用樹脂組成物の硬化塗膜における凝集力が不足し、剥離時に凝集破壊傾向となり、接着力が低下する場合がある。尚、50〜70部が硬化塗膜の濡れ性と凝集力のバランスが良好となり、高接着力である場合が多い。
【0121】
本発明の積層シート接合用樹脂組成物は、共重合体(A)、共重合体(B)、及び架橋剤(C)を架橋に伴う硬化反応を伴って、様々な環境変化に影響しない硬化塗膜を提供することが可能となる。共重合体(A)の機能は、比較的低Tgかつ高分子量形態のため、各種基材に対して効果的な濡れ性を示し、かつ架橋剤による硬化反応に伴い、応力緩和性を発現するものである。共重合体(B)の機能は、高Tg、かつ低分子量形態のため、緩やかな環境変化に伴う緩やかな基材の伸縮運動に追従するエントロピー弾性を発現するものである。架橋剤(C)は、双方の共重合体と架橋に伴う硬化反応に加え、自己反応に伴うリジットな構成を発現するため、基材の急激な伸縮運動を抑制するエネルギー弾性を発現するものである。これらの架橋に伴った硬化塗膜は、それぞれの特徴を独立に発現した、相互浸入網目構造(IPN:Interpenetrating polymer network)を形成し、ミクロ的には多層構造を形成しているため、(A)、(B)及び(C)の比率を変更することで、各粘弾性的挙動の制御が可能となり、使用環境の変更や、各種基材の適用性等、広範囲に応用可能となる。
【0122】
その他の添加剤としては、本発明の積層シート用接合用樹脂組成物には、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、シランカップリング剤、粘着付与剤、レベリング剤、リン系やフェノール系の酸化防止剤、紫外線安定剤、金属不活性化剤、難燃剤、可塑剤、有機・無機顔料など種々の添加剤を配合することができる。
【0123】
太陽電池用保護シートを構成するフィルムとして金属層(金属箔、金属板等)を用いる場合、本発明の積層シート接合用樹脂組成物の金属接着性を向上させるために、リン酸系化合物、例えば、リン酸、メタリン酸、ピロリン酸、亜リン酸や、それらのエステル等を添加することができる。
【0124】
また、本発明の積層シート接合用樹脂組成物は、太陽電池用保護シート製造用の接合剤として好ましく用いられる他、塗工後に100℃以上の高温にて30分以上熱圧着させる太陽電池積層シート用アンカーコート剤としても用いることができる。その場合、塗工後のタックを無くすために、タルク、珪藻土、炭酸カルシウム、長石類、石英類等の鉱物やシリカやPMMA(2−メチル−2−プロペン酸メチル)ビーズ等のアンチブロッキング剤を添加することが好ましい。
【0125】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、積層シート接合用樹脂組成物用として公知の添加剤を制限なく配合することができる。例えば、ラミネート外観を向上させる目的で、公知のレベリング剤又は消泡剤を積層シート接合用樹脂組成物に配合することもできる。
【0126】
レベリング剤としては、例えば、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、ポリエステル変性ポリジメチルシロキサン、アラルキル変性ポリメチルアルキルシロキサン、ポリエステル変性水酸基含有ポリジメチルシロキサン、ポリエーテルエステル変性水酸基含有ポリジメチルシロキサン、ポリエーテル変性ポリメチルアルキルシロキサン、(2−メチル)プロペン酸アルキルエステル共重合物、レシチン、又はそれらの混合物等公知のものが挙げられる。
【0127】
消泡剤としては、シリコーン樹脂、アルキルエテニルエーテルと(2−メチル)プロペン酸アルキルエステルとの共重合物、又はそれらの混合物等の公知のものが挙げられる。レべリング剤、消泡剤を添加する場合、それぞれ独立に、1種類の化合物を使用してもよいし、2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。
【0128】
また、本発明で使用される公知の添加剤として、太陽などの紫外線や熱による積層シート接合用樹脂組成物の経時での劣化黄変をさらに抑制する目的で、公知のリン系やフェノール系の酸化防止剤、紫外線安定剤、金属不活性化剤を、積層シート接合用樹脂組成物に配合することができる。これらは単独で使用してもよいし、2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。本発明で使用されるリン系やフェノール系の酸化防止剤、紫外線安定剤、金属不活性化剤は、共重合体(A)の固形分100重量部に対し0.05〜20重量部の範囲が好ましく、さらに好ましくは0.1〜10重量部である。添加量が0.05重量未満であると、十分な劣化黄変抑制効果が得られない恐れがあり、20重量部よりも多いと、積層シート接合用樹脂組成物の接着力を大きく悪化させてしまう恐れがある。
【0129】
本発明の積層シート接合用樹脂組成物の不揮発分(以下、固形分とも称す)は、10〜50重量%の範囲が好ましい。本発明の積層シート接合用樹脂組成物は上記に例示したような溶剤を用いて固形分の調整を行うことができる。
【0130】
積層シート接合用樹脂組成物で使用される溶剤としては、例えば、エタン酸エチル、エタン酸ブチル、2−エトキシエタノールアセテートなどのエステル系溶媒;2−プロパノン、2−ブタノン、4−メチル−2−ペンタノン、2,4−ペンタジオンなどのケトン系溶媒;メチルベンゼン、1,2−ジメチルベンゼンなどの芳香族系溶媒;メチレンクロリド、エチレンクロリドなどのハロゲン化炭化水素類;ジメチルホルムアミドなどのアミド系溶媒などが挙げられる。用いる溶剤は、1種類の溶剤を使用してもよいし、2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。
【0131】
次に積層シート接合用樹脂組成物を用いてなる積層体について説明する。
本発明に係る積層シート接合用樹脂組成物を用いて、代表的な積層体である多層フィルムを製造するには、一般的に用いられている方法を使用できる。例えば、一方のフィルムの片面に、コンマコーターやドライラミネーターによって積層シート接合用樹脂組成物を塗布し、必要に応じて溶剤を揮散させた後、他方のラミネートさせるフィルムとを貼り合わせ、常温もしくは加温下で硬化反応させて接着させれば良い。フィルムに塗布される積層シート接合用樹脂組成物は、1〜50g/m
2程度であることが好ましい。3層以上の多層構成とする際には、各層のフィルム間を貼り合わせて、接着する際の全て、又は一部に本発明に係る積層シート接合用樹脂組成物を使用できる。
【0132】
本発明の積層シート接合用樹脂組成物は、接合用樹脂組成物をフィルムに塗布し乾燥後、フィルムを積層し、その積層体を20〜60℃で数日間養生することで製造される。養生工程(暗反応工程)を行うことで、共重合体(A)および共重合体(B)と架橋剤(C)との硬化反応を進行させるとともに、積層フィルムとの相互作用を向上させるとともに、各粘弾性的挙動の制御が可能である。
【0133】
次に本発明に使用されるフィルムについて説明する
フィルムとしては、プラスチックフィルム(プラスチックシートを含む)、金属箔等を挙げることができ、積層体に求められる特性から適宜選択される。
【0134】
例えば、後述するポリエステル系フィルムを用いることで絶縁性を、フッ素系フィルムを用いることで耐候性を、ポリオレフィン系フィルムや、金属酸化物、若しくは非金属無機酸化物が蒸着されたプラスチックフィルム、金属箔を用いることで水蒸気バリア性を付与することができる等が挙げられる。
【0135】
プラスチックフィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)などのポリエステル系樹脂フィルム、
ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリエチレンテトラフルオロエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体などのフッ素系樹脂フィルム、
低密度ポリエチレン(LDPE)や直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)等のポリエチレン系樹脂フィルム、ポリプロピレン系樹脂フィルムなどのポリオレフィン系フィルム
ポリ塩化ビニル系樹脂フィルム、ポリカーボネート系樹脂フィルム、ポリスルホン系樹脂フィルム、ポリ(2−メチル)プロペン酸系樹脂フィルム等が挙げられる。
【0136】
上記のプラスチックフィルムは、表面がコロナ放電、プラズマ処理、フレーム処理等の物理的処理や、フィルム表面を酸やアルカリなどで改質する化学的処理、フィルム表面に微細な凹凸をつけ、基材の表面積を高めたフィルム等、積層シート接合用樹脂組成物に対して、易接着処理されているものを好適に用いることができる。
【0137】
金属酸化物、若しくは非金属無機酸化物が蒸着されたプラスチックフィルムとしては例えば、ケイ素、アルミニウム、マグネシウム、カルシウム、カリウム、スズ、ナトリウム、ホウ素、チタン、鉛、ジルコニウム、イットリウムなどの酸化物が、上記プラスチックフィルムに蒸着されているものが挙げられる。蒸着に使用されるプラスチックフィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)が好適に用いられる。
【0138】
金属箔としては、アルミニウム箔や銅箔が挙げられる。
【0139】
上記積層させるフィルムに関しては、意匠性を向上するまたは、光反射率を向上させ太陽電池の変換効率向上等の目的で、黒や白色等に着色されたものも用いることができる。
【0140】
積層体を多層構成にする際には、本発明に係る積層シート接合用樹脂組成物の優れた接着力を発現させる方法として、例えば、ポリエステル系樹脂フィルムや、フッ素系樹脂フィルムの易接着処理がなされていない面や、ポリプロピレン等のオレフィン基材等の接着させることが極めて困難であるフィルム面から塗工させることで、加熱および溶剤除去工程での基材に対する相互作用を高めることが可能であることから、より好適に使用される。
【0141】
次に、本発明の積層シート用接合用樹脂組成物を用いてなる太陽電池用保護シートを製造する方法、及び太陽電池用保護シートについて説明する。なお、太陽電池用保護シートの製造方法や構成は、背景技術において説明したとおり、耐熱性、耐候性、水蒸気透過性、電気絶縁性等の目的やニーズに応じて、様々な製造方法や構成を採用できる。
【0142】
これらの中でも、太陽電池モジュールとして使用する際の耐候性、水蒸気透過性、電気絶縁性、機械特性、実装作業性などの性能を満たす為に、上記例示したフィルムの中でも、温度に対する耐性を有する、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)などのポリエステル系樹脂フィルム、ポリカーボネート系樹脂フィルムと、太陽電池セルの水の影響による出力低下を防止する為にポリオレフィン系フィルムや、水蒸気バリア性を有する金属酸化物、若しくは非金属無機酸化物が蒸着されたプラスチックフィルムまたはアルミニウム箔などの金属箔と、光劣化による外観不良発生を防止する為に耐候性の良好なポリオレフィン系フィルム、フッ素系樹脂フィルムが積層されてなる太陽電池用保護シートが好ましい。
【0143】
本発明の積層シート用接合用樹脂組成物は、優れた耐候黄変性を有し、かつ高い透明性を有することを特徴とする。本発明の太陽電池用保護シートは、受光面側の保護シートとして用いても光線透過性を悪化させることが無く、優れた発電効率を発揮させることが可能である。そのため、表面保護シートおよび、裏面保護シートとして用いることが可能である。
【実施例】
【0144】
以下、実施例により、本発明を更に具体的に説明する。尚、実施例中、部は固形換算時の重量部を、%は重量%である。
【0145】
製造例1
(合成例A−1)
<共重合体(A)の製造>
重合槽、攪拌機、温度計、還流冷却器、滴下装置、窒素導入管を備えた重合反応装置の重合槽及び滴下装置に、下記単量体、カルボキシル基、アミノ基、およびアミド基からなる群から選択される官能基を有するα,β−不飽和化合物(m−1)、α,β−不飽和化合物(m−3)、重合開始剤、及び溶剤をそれぞれ下記の比率で仕込んだ。
【0146】
[重合槽]
エタン酸エチル 100部
[滴下装置]
2−メチル−2−プロペン酸(m−1−2) 9部
プロペン酸2−エチルヘキシル(m−3−4) 86部
2−メチル-2-プロペン酸メチル(m−3−6) 5部
エタン酸エチル 51.8部
2,2’−アゾビスイソブチロニトリル 1.2部
【0147】
重合槽内の空気を窒素ガスで置換した後、攪拌しながら窒素雰囲気下中、エタン酸エチルの還流温度である78℃下にて、滴下装置から上記混合物の滴下を開始した。2時間かけて滴下を行った後、さらに攪拌しながら6時間熟成後、冷却を行い、共重合体(A−1)を含む樹脂溶液を得た。
この溶液は、無色透明で、不揮発分40.3重量%であり、前記共重合体(A−1)は、後述の測定方法に従い、重量平均分子量82000、分子量分布は2.3であった。尚、計算Tgは、−35.2℃であった。
【0148】
製造例2〜11
(合成例A−2〜11)
表1に記載した原料と仕込み部を用いた以外は合成例1と同様にして合成を行い、共重合体(A−2)〜(A−11)の樹脂溶液を得た。
【0149】
【表1】
【0150】
表1中の略号は以下の通りである。
カルボキシル基、アミド基、カルボニル基及びN−アルコキシル基からなる群から選択される一種以上の官能基を有するα,β−不飽和化合物(m−1):
(m−1−1) プロペン酸、(m−1−2) 2−メチル-2−プロペン酸、(m−1−3) 2−メチレン琥珀酸、(m−1−4) 2−プロペンアミド、(m−1−5) 2−メチル−2−プロペン酸2−(1,3ジオキソブトキシ)エチル、(m−1−6) N−メトキシメチル−2−プロペンアミド、
その他共重合可能なα,β不飽和化合物(m−3)(ただし(m−1)及び(m−2)を除く):
(m−3−1) プロペン酸メチル、(m−3−2) プロペン酸エチル、(m−3−3) プロペン酸n−ブチル、(m−3−4) プロペン酸2−エチルヘキシル、(m−3−5) プロペン酸イソオクチル、(m−3−6) 2−メチル−2−プロペン酸メチル、(m−3−7) 2−メチル−2−プロペン酸エチル、(m−3−8) 2−メチル−2−プロペン酸ブチル、(m−3−9) 2−メチル−2−プロペン酸シクロヘキシル、(m−3−10) 2−プロペン酸ジシクロペンテニル、(m−3−11) 2−プロペンニトリル、(m−3−12) 2−メチル−2−プロペン酸N,N−ジメチルアミノエチル、
(重合開始剤1)2,2‘−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)、(重合開始剤2)tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、(溶剤1)エタン酸エチル
【0151】
製造例12〜20
(合成例B−1〜9)
表2に記載した原料と仕込み部を用いた以外は製造例1と同様にして合成を行い、共重合体(B−1)〜(B−9)の樹脂溶液を得た。
【0152】
【表2】
【0153】
表2中の略号は以下の通りである。尚、表1と同様の略号であるその他共重合可能なα,β−不飽和化合物(m−3)、重合開始剤、溶剤については省略とする。
活性水素基を有するα,β−不飽和化合物(m−2)(ただし(m−1)であるものを除く):
(m−2−1) プロペン酸2−ヒドロキシエチル、(m−2−2) 2−メチル−2−プロペン酸2−ヒドロキシエチル、(m−2−3) プロペン酸4−ヒドロキシブチル、
【0154】
製造例21〜30
表3に記載した原料と仕込み部を用いた以外は製造例1と同様にして合成を行い、共重合体(H−1)〜(H−10)の樹脂溶液を得た。
【0155】
【表3】
【0156】
表3中の略号は表1、表2に記載した通りである。
【0157】
<数平均分子量、重量平均分子量、分子量分布の測定の測定>
各製造例、及び各比較製造例で得られた各共重合体の分子量および分子量分布は、東ソー社製のGPC−8020を用いてGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)により測定した。試料をテトラヒドロフランに溶解して、テトラヒドロフランを展開溶剤として流速を0.6ml/min、カラム温度を40℃の条件にて、測定した。標準物質としての単分散分子量のポリスチレンを使用した検量線を作成し、共重合体(A)および共重合体(B)の分子量をポリスチレン換算の数平均分子量、重量平均分子量を測定し、分子量分布は重量平均分子量/数平均分子量の比より算出した。
【0158】
(実施例1)
合成例1で得られた共重合体(A−1)25重量部に対して、合成例10で得られた共重合体(B−1)75重量部を添加し攪拌した後、架橋剤(C)として、(c−1(1))ポリメチレンポリフェニルイソシアネートのプレポリマー 住化バイエルウレタン製スミジュールE21−1(NCO%:16.0%固形分100%)13.7重量部、エポキシ化合物(c−2):N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン13.2重量部を加えた。不揮発分約30%にするため、酢酸エチルを添加し、よく撹拌して、積層シート接合用樹脂組成物(S−1)を得た。
【0159】
<ポットライフの評価方法>
得られた積層シート接合用樹脂組成物について、25℃における粘度を1時間、4時間、8時間、24時間後まで、B型粘度計(東京計器社製)を用い、20rpm、2分間回転の条件で測定し、可使時間(ポットライフ)を4段階で評価した。
◎:「粘度変化がない。24時間までの粘度上昇率が2倍未満。非常に良好である。」
○:「若干粘度上昇が認められ、8時間までの粘度上昇率が2倍未満。良好である。」
△:「急激な粘度上昇が認められ、4時間未満で粘度上昇率が2倍以上」実用上問題あり。
×:「添加1時間で粘度上昇率が2倍以上」実用上問題あり。
尚、実施例1では8 時間での粘度上昇率は1.3倍、24時間の粘度上昇率は2.4倍であり、良好であった。
【0160】
<積層体の形成方法>
ポリエステルフィルム(東レ社製、ルミラーX−10S、厚み50μm)のコロナ処理された面(以下、コロナ処理された面をコロナ処理+フィルム名で表記する)に、積層シート接合用樹脂組成物を乾燥塗布量:5〜7g/m
2となる量でドライラミネーターによって、積層シート接合用樹脂組成物(S−1)を塗布した。そして、乾燥オーブンにて、溶剤を揮散させた後、コロナ処理ポリエステルフィルムにラミネートした後、50℃−96時間養生させ積層体1を形成させた。
【0161】
同様の方法にて、積層体2[コロナ処理ポリエステルフィルム/積層シート接合用樹脂組成物層/JIS1N30 軟質アルミニウム箔]、積層体3[コロナ処理ポリエステルフィルム/積層シート接合用樹脂組成物層/二酸化ケイ素蒸着PET系フィルム(三菱樹脂社製、商品名: テックバリア)]、積層体4[ポリエステル系フィルム(東レ社製、ルミラーX−10S、厚み50μmの未処理面)/積層シート接合用樹脂組成物層/ETFE(エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体)系フィルム(旭硝子社製:FluonETFE Film、厚み25μm )]、積層体5[コロナ処理ポリエステル系フィルム/積層シート接合用樹脂組成物層/コロナ処理LLDPE系フィルム(フタムラ化学社製LL−XUM N#30)]、積層体6[ETFE(エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体)系フィルム(旭硝子社製:FluonETFE Film、厚み25μm )/積層シート接合用樹脂組成物層/二酸化ケイ素蒸着PET系フィルム(三菱樹脂社製、商品名: テックバリア)]、を形成させ、以下の評価を行った。
【0162】
<塗工性の評価方法>
得られた積層体1の養生後の状態について目視にて観察し、3段階で評価した。
○ : 「平滑な塗工面が得られた。非常に良好である。」
△ : 「塗工面の端部に若干のハジキや発泡が認められるが、良好である。」
× : 「塗工面にハジキ、発泡、白濁、スジ引きが認められ、実用上問題あり。」
なお、実施例1は平滑な塗工面が得られ、非常に良好であった。
【0163】
<養生前の剥離強度試験>
養生前の積層体1を200mm×15mmの大きさに切断し、25℃、湿度65%の環境下で6時間静置後、ASTM−D1876−61の試験法に準じ、引張り試験機を用いて、25℃、湿度65%の環境下で、荷重速度100mm/分で180°剥離試験を行い、4段階で評価を行った。
◎:剥離強度が2N/15mm以上 接着性に非常に優れる
○:剥離強度1N/15mm以上、2N/15mm未満 接着性に優れる
△:剥離強度0.1N/15mm以上、1N/15mm未満 実用上問題あり
×:剥離強度が0.1N/15mm未満 巻取り時にズレが発生し実用上問題あり
なお、実施例1は剥離強度が1.5N/15mmであり、接着性に優れていた。
【0164】
<養生後の剥離強度試験>
養生後の前記積層体1〜5をそれぞれ200mm×15mmの大きさに切断し、25℃、湿度65%の環境下で6時間静置後、ASTM−D1876−61の試験法に準じ、引張り試験機を用いて、25℃、湿度65%の環境下で、荷重速度100mm/分で180°剥離試験を行い、4段階で評価を行った。
◎:剥離強度が8N/15mm以上 接着性に非常に優れる
○:剥離強度5N/15mm以上、8N/15mm未満 接着性に優れる
△:剥離強度3N/15mm以上、5N/15mm未満 接着性がやや足りず、実用上問題あり
×:剥離強度が3N/15mm未満 接着性不良実用上問題あり
なお、実施例1は表3に示した通りであるが、接着性に優れるという結果であった。
【0165】
<耐湿熱性試験後の剥離強度試験>
養生後の前記積層体1、4、5をそれぞれ200mm×15mmの大きさに切断し、85℃、湿度85%の環境下で1000時間、3000時間静置した。その後、25℃、湿度65%の環境下で6時間静置後、ASTM−D1876−61の試験法に準じ、引張り試験機を用いて、25℃、湿度65%の環境下で、荷重速度100mm/分で180°剥離試験をおこなった。
◎:剥離強度が8N/15mm以上、または基材破壊 接着性に非常に優れる
○:剥離強度5N/15mm以上、8N/15mm未満 接着性に優れる
△:剥離強度3N/15mm以上、5N/15mm未満 接着性がやや足りず、実用上問題あり。
ただし、湿熱3000時間試験は過剰評価のため、△評価でも実用可能と判断した。
×:剥離強度が3N/15mm未満 接着性不良実用上問題あり
なお、実施例1は表3に示した通りであるが、積層体5においては、剥離強度が5.6N/15mmと接着性に優れており、耐湿熱試験に優れるという結果であった。
【0166】
<耐候黄変性試験>
UV照射による黄変性の評価
フィルム積層体5のLLDPEフィルム側を照射面として、UV照射試験機(岩崎電気社製のアイスーパーU V テスターW13(商品名))にセットし、照度100W/m
2、60℃、50%RHの条件下で72時間の照射を行った。色差計にて照射前後の色差(Δb値)を測定し、黄変度を評価した。評価基準は
以下のとおりである。
◎:Δb値が3未満 耐候黄変性に非常に優れる
○:Δb値が3以上6未満 耐候黄変性に優れる
△:Δb値が6以上10未満 耐候黄変性がやや不足、実用上問題あり
×:Δb値が10以上 明らかな黄変。実用上問題あり
なお、実施例1は表3に示した通りであるが、Δb値が5.1と耐候黄変性に優れていることがわかった
。
【0167】
UV照射試験後の積層体5の外観について、目視にて観察し、3段階で評価した。
○ : 「フィルムと積層シート接合用樹脂組成物間において浮き、剥がれが発生せず、積層体の透明性も維持できている」
△ : 「フィルムと積層シート接合用樹脂組成物間において浮き、剥がれは発生していないが、積層体の透明性が低下している。実用上問題あり」
× : 「フィルムと積層シート接合用樹脂組成物間において浮きが発生している。実用上問題あり」
なお、実施例1は浮きが見られず、透明性も維持できており、良好であった。
【0168】
(実施例2〜19)
表4、5に記載した原料と仕込み量を用いた以外は実施例1と同様にして、積層シート接合用樹脂組成物(S−2)〜(S−19)を得た。実施例1と同様の評価を実施した結果を示す。
【0169】
【表4】
【0170】
【表5】
【0171】
表4、5中の略号は以下の通りである。
架橋剤(C)
ポリイソシアネート(c−1):(c−1(1)) ポリメチレンポリフェニルイソシアネートのプレポリマー 住化バイエルウレタン社製スミジュールE21−1(NCO%:16.0%固形分100%)、(c−1(2)) トリレンジイソシアネートと2−(ヒドロキシメチル)−2−エチルプロパン−1,3−ジオールとのアダクト体 住化バイエルウレタン社製デスモジュールL−75(NCO%:13.0%固形分75%)、
脂肪族のポリイソシアネート(c−1−1):(c−1−1−1) ヘキサメチレンジイソシアネートと2−(ヒドロキシメチル)−2−エチルプロパン−1,3−ジオールとのアダクト体 住化バイエルウレタン社製スミジュールHT(NCO%:13.0%固形分75%)、(c−1−1−2) ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート3量体 住化バイエルウレタン社製スミジュールN3300(NCO%:21.8%固形分100%)
脂環族のポリイソシアネート化合物(c−1−2):(c−1−2−1) イソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート3量体 Perstorp社製 TOLONATERIDT 70 B( NCO%:12.3%固形分70%)
エポキシ化合物(c−2):N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、
ビスアミド架橋剤(c−3):1,1’−(1,3−フェニレンジカルボニル)−ビス−(2−メチルアジリジン)
【0172】
(比較例1)〜(比較例12)
表6に記載した原料と仕込み量を用いた以外は実施例1と同様にして、積層シート接合用樹脂組成物(比較−1)〜(比較−12)を得た。実施例1と同様の評価を実施した結果を示す。尚、比較例4は特許文献4の特許4824544号、比較例11は特許文献7の特開2010−263193号公報、比較例12は特許文献8の特開2012−142349号公報の実施例に相当する。
【0173】
【表6】
【0174】
表6中の略号は表3、4と同様であるが、添加剤については、以下の通りである。
化合物1:2−[4−(オクチル−2−メチルエタノエート)オキシ−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−[ビス(2,4−ジメチルフェニル)]−1,3,5−トリアジン
化合物2:1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン
【0175】
表3に示されるように、実施例の積層シート接合用樹脂組成物は、養生前の剥離強度、及び養生後の剥離強度、耐湿熱性試験後の剥離強度に優れ、長期にわたり接着強度を維持することができることがわかった。これは、樹脂Tgの異なる樹脂をブレンドすることにより、養生前の接着や養生時の基材に対するぬれ性を低ガラス転移点の共重合体(A)により向上させ、塗膜の凝集力を、高ガラス転移点の共重合体(B)によるエントロピー弾性と架橋剤(C)によるエネルギー弾性の発現により発現させ、さらに共重合体(A)及び(B)と架橋剤(C)とを架橋に伴う硬化反応を行うことによりIPN構造の形成により、ぬれと凝集を高め、かつバランスを図ることができたものと推測する。湿熱試験においても、比較例では、養生後の接着力の低下が激しいのに対し、実施例では高い接着力が維持できていることから、塗膜全体でガラス転移温度に分布をつけることで、応力緩和性が高く、耐湿熱性が向上していると考えられ、実施例の積層シート接合用樹脂組成物は、屋外用途向けの長期耐湿熱性に優れていると考えられる。
【0176】
また、JIS C 8917(結晶系太陽電池モジュールの環境試験方法及び耐久試験方法)には、85℃、湿度85%下で1000時間に耐久すること、という耐湿性試験B−2が定められており、特に過酷な試験方法として知られている。本実施例においては、1000時間を超え、3000時間の長期にわたって、接着強度を維持できることが示され、本発明の積層シート接合用樹脂組成物は、十分な長期耐湿熱性を有していると言える。
【0177】
本発明に係る積層シート接合用樹脂組成物は、建造物など屋外産業用途向け多層積層材(防壁材、外壁材、屋根材、太陽電池パネル材(太陽電池用保護シート)、窓材、屋外フローリング材、証明保護材、自動車部材等)用の積層シート接合用樹脂組成物として強い接着強度を提供することができる。しかも、屋外暴露時に加水分解等による経時的な接着強度の低下を抑え、長期間にわたって強い接着強度を維持できる。
【0178】
比較例1および比較例2は、共重合体(A)に共重合体(B)を添加していない例であり、比較例1では、酸によるイソシアネート基の硬化反応の促進の影響が強く、ポットライフが悪く、塗工できない結果となった。比較例2では、塗工することは可能であったものの、樹脂のTgが低いことが原因で、凝集力が不足し、十分な剥離強度が得られない結果となった。
【0179】
比較例3は、共重合体(B)のみで塗工を試みた例であり、樹脂Tgが高すぎることから貼り合わせ時にフィルムの剥がれが発生し、貼り合わせ不可となった。
上記、比較例1、2、3の結果より、共重合体(A)および共重合体(B)単独での塗工物では、高い接着強度を確保することは困難である。
【0180】
比較例4〜6は、共重合体(A)のガラス転移点が本権利範囲より低い例である。共重合体(A)のガラス転移温度が低すぎると、凝集力の不足が顕著となり、接着強度が得られない。また、比較例4は、特許文献4の実施例であるが、共重合体(B)中に活性水素を含まないことから架橋に伴う硬化反応が進行せず、塗膜の凝集力が低くなってしまうため、接着強度が得られない結果となった。
【0181】
比較例7は、共重合体(A)のガラス転移点が高い例である。共重合体(A)のガラス転移点が高いと貼り合わせ時の濡れ性が不足し、フィルムと塗膜に隙間が生じてしまう。そのため、養生時に塗膜とフィルム間の相互作用を高めることが困難となるため、養生後の接着強度も得られない結果となった。
【0182】
比較例8は、共重合体(B)のガラス転移点が低い例である。共重合体(B)のガラス転移点が低いと貼り合わせ時の接着強度は問題ないものの、養生後の塗膜全体の凝集力が不足し、接着強度が得られないという結果となった。
【0183】
比較例9は、共重合体(B)のガラス転移点が高い例である。共重合体(B)のガラス転移点が高すぎると、共重合体(A)との相溶性が悪化する傾向がみられ、塗面荒れが発生してしまう。その結果、耐候黄変性試験においても酸化が促進され、黄変がおきてしまう。また、塗工後の濡れ性が低くなり、養生前の接着強度が不足するため、養生後の接着強度が得られない結果となった。
上記、比較例4〜9より、共重合体(A)および、共重合体(B)のガラス転移点には最適値が存在していることが推測された。
【0184】
比較例10では、共重合体(A)中のα,β−不飽和化合物(m−1)および共重合体(B)中のα,β−不飽和化合物(m−2)を共重合させず、かつ架橋剤(C)を、添加していない例である。架橋剤(C)を用いていないため、架橋剤(C)との硬化反応による塗膜のエネルギー弾性の向上効果が得られず、接着強度が不足する結果となった。
【0185】
比較例11および比較例12では、共重合体(A)および共重合体(B)を混合せずに単一樹脂で設計した例である。比較例11は、特許文献7、比較例12は特許文献8の実施例である。比較例11では、樹脂のガラス転移点が高すぎることから、貼り合わせ時の濡れ性が不足し、比較例3と同様、接着強度が得られない結果となった。比較例12では、樹脂の設計Tgが低く、接着強度が低めとなり、耐熱性が低いことが原因で湿熱試験時に接着力の低下が発生し実用レベルではない。