【実施例】
【0034】
以下に本発明の実施例を示して本発明を具体的に説明するが、これらに限定されるものではない。
【0035】
(ポリアミン濃度測定方法)
試料中のポリアミン含量を以下の方法で調べた。植物中のポリアミンは遊離型ポリアミン、化合型ポリアミン、結合型ポリアミンがあり、いずれも解析することができるが(非特許文献1−3)、本発明では遊離型ポリアミンを測定した。
(1)スクリューキャップ付きのマイクロチューブに、サンプル20μl、交換水360μl、内部標準液20μl(0.05nmol/μl 1,7−diaminoheptane)、200μLの飽和炭酸ナトリウム水溶液、200μLのダンシルクロライド/アセトン溶液(10mg/mL)を加えて軽く混和する。チューブの栓をしっかりと閉めたのち、60℃のウォーターバスで1時間加温してダンシル化を行う。
(2)チューブを放冷した後、プロリン水溶液(100mg/mL)を200μL加えて混和する。ウォーターバスで30分間再加温する。
(3)再放冷後、窒素ガスを吹き付けてアセトンを除いた後に、600μLのトルエンを加えて激しく混和する。チューブを遠心して2相に分かれた後に、上層のトルエン層を500μLマイクロチューブに分取する。分取したトルエンに窒素ガスを吹き付けてトルエンを完全除去する。マイクロチューブに120μLのメタノールを加えてダンシル化遊離型ポリアミンを溶解させる。
(4)プトレシン、スペルミジン、スペルミンの遊離型ポリアミン量の定量は蛍光検出器(励起波長:365nm・発光波長:510nm)を接続した高速液体クロマトグラフィーを用いて内部標準法で分析する。HPLCカラムはμBondapak C18(Waters社製:027324、3.9×300mm、粒子径10μm)を使用する。試料中のポリアミン含量は標準液と試料のHPLCチャートから、それぞれ各ポリアミンと内部標準のピーク面積を求めて算出する。
【0036】
(比較例1)
植物を強酸条件下で処理する工程を含むポリアミン組成物の製造方法
(1)1N HCl水溶液1600gにコムギ胚芽400gを加え、水温25℃の条件下で、撹拌機(スリーワンモーター、HEIDON製)を用いて100rpmで4時間攪拌した。
(2)次いで8000rpm、20分の条件で遠心分離を行い、上清を回収した。
(3)1N NaOH水溶液を用いて、該上清のpHを7.0に調整した。
(4)さらに8000rpm、20分の条件で遠心分離を行い、得られた上清を抽出液Aとした。
(5)抽出液Aのポリアミン濃度、NaCl濃度、及び固形分濃度を測定した。なお、NaCl濃度はコンパクト塩分計C−121形(HORIBA社製)を用いて測定し、固形分濃度はデジタル糖度計APAL−1(AS ONE社製)を用いて測定した。
【0037】
比較例1の結果は、ポリアミン濃度が0.0166%であり、固形分濃度は13.8%、NaCl濃度は4.00%、固形分あたりのNaCl濃度は29.0%であった。
表1に比較例1、2及び実施例1〜4の結果を示す。
【0038】
(比較例2)
植物を水のみで処理する工程を含むポリアミン組成物の製造方法
(1)純水1600gにコムギ胚芽400gを加え、水温25℃の条件下で、撹拌機(スリーワンモーター、HEIDON製)を用いて100rpmで4時間攪拌した。
(2)次いで8000rpm、20分の条件で遠心分離を行い、得られた上清を抽出液Bとした。
(3)抽出液Bのポリアミン濃度、NaCl濃度、及び固形分濃度を測定した。なお、NaCl濃度はコンパクト塩分計C−121形(HORIBA社製)を用いて測定し、固形分濃度はデジタル糖度計APAL−1(AS ONE社製)を用いて測定した。
【0039】
比較例2の結果は、ポリアミン濃度が0.0090%であり、比較例1のポリアミン濃度を100としたときの相対ポリアミン濃度は54.2%であった。固形分濃度は8.60%、NaCl濃度は0.00%、固形分あたりのNaCl濃度は0.00%であった。
【0040】
(実施例1)
(1)純水1600gにコムギ胚芽400gを加え、水温25℃の条件下で、撹拌機(スリーワンモーター、HEIDON製)を用いて100rpmで1時間攪拌した。
(2)その後、1N HCl溶液を加えてpH4.0に調整し、さらに3時間攪拌した。
(3)次いで8000rpm、20分の条件で遠心分離を行い、上清を回収した。
(4)1N NaOH水溶液を用いて、該上清のpHを7.0に調整した。
(5)さらに8000rpm、20分の条件で遠心分離を行い、得られた上清を抽出液Cとした。
(6)抽出液Cのポリアミン濃度、NaCl濃度、及び固形分濃度を測定した。なお、NaCl濃度はコンパクト塩分計C−121形(HORIBA社製)を用いて測定し、固形分濃度はデジタル糖度計APAL−1(AS ONE社製)を用いて測定した。
【0041】
実施例1の結果は、ポリアミン濃度が0.0155%であり、比較例1のポリアミン濃度を100としたときの相対ポリアミン濃度は93.5%であった。固形分濃度は8.60%、NaCl濃度は0.26%、固形分あたりのNaCl濃度は3.0%であった。実施例1では、比較例1と比較して、NaCl濃度が極めて低く、ポリアミン濃度は維持しつつ低塩濃度のポリアミン組成物を製造できた。
【0042】
(実施例2)
(1)純水1600gにコムギ胚芽400gを加え、水温25℃の条件下で、撹拌機(スリーワンモーター、HEIDON製)を用いて100rpmで1時間攪拌した。
(2)その後、1N HCl溶液を加えてpH5.0に調整し、さらに3時間攪拌した。
(3)次いで8000rpm、20分の条件で遠心分離を行い、上清を回収した。
(4)1N NaOH水溶液を用いて、該上清のpHを7.0に調整した。
(5)さらに8000rpm、20分の条件で遠心分離を行い、得られた上清を抽出液Dとした。
(6)抽出液Dのポリアミン濃度、NaCl濃度、及び固形分濃度を測定した。なお、NaCl濃度はコンパクト塩分計C−121形(HORIBA社製)を用いて測定し、固形分濃度はデジタル糖度計APAL−1(AS ONE社製)を用いて測定した。
【0043】
実施例2の結果は、ポリアミン濃度が0.0146%であり、比較例1のポリアミン濃度を100としたときの相対ポリアミン濃度は87.7%であった。固形分濃度は8.60%、NaCl濃度は0.15%、固形分あたりのNaCl濃度は1.7%であった。実施例2では、実施例1よりさらにNaCl濃度を抑えることができ、ポリアミン濃度は維持しつつ更に低塩濃度のポリアミン組成物を製造できた。
【0044】
(実施例3)
(1)純水1600gにコムギ胚芽400gを加え、水温25℃の条件下で、撹拌機(スリーワンモーター、HEIDON製)を用いて100rpmで1時間攪拌した。
(2)その後、1N HCl溶液を加えてpH5.5に調整し、さらに3時間攪拌した。
(3)次いで8000rpm、20分の条件で遠心分離を行い、上清を回収した。
(4)1N NaOH水溶液を用いて、該上清のpHを7.0に調整した。
(5)さらに8000rpm、20分の条件で遠心分離を行い、得られた上清を抽出液Eとした。
(6)抽出液Eのポリアミン濃度、NaCl濃度、及び固形分濃度を測定した。なお、NaCl濃度はコンパクト塩分計C−121形(HORIBA社製)を用いて測定し、固形分濃度はデジタル糖度計APAL−1(AS ONE社製)を用いて測定した。
【0045】
実施例3の結果は、ポリアミン濃度が0.0124%であり、比較例1のポリアミン濃度を100としたときの相対ポリアミン濃度は74.9%であった。固形分濃度は8.60%、NaCl濃度は0.06%、固形分あたりのNaCl濃度は0.7%であった。実施例3の結果から分かるように、大幅に塩濃度を低下させることができる一方、ポリアミン濃度の収率低下は最小に抑えられており、極めて効果的であることが示された。
【0046】
(実施例4)
(1)純水1600gにコムギ胚芽400gを加え、水温25℃の条件下で、撹拌機(スリーワンモーター、HEIDON製)を用いて100rpmで1時間攪拌した。
(2)その後、1N HCl溶液を加えてpH6.0に調整し、さらに3時間攪拌した。
(3)次いで8000rpm、20分の条件で遠心分離を行い、上清を回収した。
(4)1N NaOH水溶液を用いて、該上清のpHを7.0に調整した。
(5)さらに8000rpm、20分の条件で遠心分離を行い、得られた上清を抽出液Fとした。
(6)抽出液Fのポリアミン濃度、NaCl濃度、及び固形分濃度を測定した。なお、NaCl濃度はコンパクト塩分計C−121形(HORIBA社製)を用いて測定し、固形分濃度はデジタル糖度計APAL−1(AS ONE社製)を用いて測定した。
【0047】
実施例4の結果は、ポリアミン濃度が0.0109%であり、比較例1のポリアミン濃度を100としたときの相対ポリアミン濃度は65.8%であった。固形分濃度は8.60%、NaCl濃度は0.05%、固形分あたりのNaCl濃度は0.6%であった。実施例4では、NaCl濃度が極めて低いポリアミン組成物を得ることができ、さらにポリアミン濃度は水のみで抽出した場合よりも高濃度を示し、顕著な効果を示した。
【0048】
【表1】