(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5888503
(24)【登録日】2016年2月26日
(45)【発行日】2016年3月22日
(54)【発明の名称】希土類焼結磁石の製造方法
(51)【国際特許分類】
B22F 3/10 20060101AFI20160308BHJP
B22F 3/00 20060101ALI20160308BHJP
C22C 33/02 20060101ALI20160308BHJP
H01F 41/02 20060101ALI20160308BHJP
H01F 1/057 20060101ALI20160308BHJP
H01F 1/08 20060101ALI20160308BHJP
【FI】
B22F3/10 M
B22F3/00 F
C22C33/02 K
H01F41/02 G
H01F1/04 H
H01F1/08 B
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-60628(P2012-60628)
(22)【出願日】2012年3月16日
(65)【公開番号】特開2013-194260(P2013-194260A)
(43)【公開日】2013年9月30日
【審査請求日】2015年1月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079290
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100136375
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 弘実
(72)【発明者】
【氏名】森本 圭一
(72)【発明者】
【氏名】東 修二
(72)【発明者】
【氏名】宮原 邦男
(72)【発明者】
【氏名】三浦 晃嗣
(72)【発明者】
【氏名】坂本 龍一
(72)【発明者】
【氏名】川又 健男
(72)【発明者】
【氏名】高橋 豊
【審査官】
田中 永一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−025842(JP,A)
【文献】
特開2005−183810(JP,A)
【文献】
特開昭57−060180(JP,A)
【文献】
特開昭59−166604(JP,A)
【文献】
実開昭60−135597(JP,U)
【文献】
特開2007−239032(JP,A)
【文献】
特開2007−220824(JP,A)
【文献】
特開平02−137208(JP,A)
【文献】
特開2009−135393(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 3/00 − 3/26
C22C 33/02
H01F 1/057
H01F 1/08
H01F 41/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
底部焼結プレートと、前記底部焼結プレート上に載置されたメッシュと、前記メッシュ上に載置された希土類磁石材料成形体と、前記底部焼結プレート上に配置されたスペーサと、前記スペーサに支持されて前記希土類磁石材料成形体の上方を空間を挟んで覆う上部焼結プレートとを備える積載形態を用いて、前記希土類磁石材料成形体を焼結する工程を有する、希土類焼結磁石の製造方法であって、
前記希土類磁石材料成形体が薄物の平板形状ないし瓦状であり、前記希土類磁石材料成形体の上面と前記上部焼結プレートの下面との距離が3mm以下である、希土類焼結磁石の製造方法。
【請求項2】
前記メッシュによって、前記希土類磁石材料成形体の下面と前記底部焼結プレートの上面との間に空間が設けられている、請求項1に記載の希土類焼結磁石の製造方法。
【請求項3】
前記希土類磁石材料成形体を800℃乃至1200℃の焼結温度で焼結する請求項1又は2に記載の希土類焼結磁石の製造方法。
【請求項4】
50kPa以下の減圧ないし真空雰囲気下で前記希土類磁石材料成形体を焼結する請求項1から3のいずれか一項に記載の希土類焼結磁石の製造方法。
【請求項5】
前記積載形態を複数層積み重ね、ある層の上部焼結プレートを一つ上の層の底部焼結プレートとして兼用する、請求項1から4のいずれか一項に記載の希土類焼結磁石の製造方法。
【請求項6】
前記希土類磁石材料成形体が、R−Fe−B系(RはYを含む希土類元素)希土類磁石材料からなる、請求項1から5のいずれか一項に記載の希土類焼結磁石の製造方法。
【請求項7】
前記積層形態が前記希土類磁石材料成形体上に載置されたメッシュを備える請求項1から6のいずれか一項に記載の希土類焼結磁石の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネオジム等の希土類元素を含有する希土類焼結磁石の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばR−Fe−B系(RはYを含む希土類元素)の希土類焼結磁石を焼結する際には、通常、希土類磁石材料の成形体を焼結ケースの中に配置し、不活性雰囲気或いは真空の焼結炉内にその焼結ケースを配置して焼結処理する。なお、焼結は、固体粉末を成形して融点よりも低い温度で加熱すると固まって焼結体と呼ばれる物体になる現象を言い、焼結前と比較して焼結後では物体の外形寸法は収縮し、物体全体として見た密度は大きくなる。なお、焼結には固相焼結、液相焼結、気相焼結といった種類があるが、ここでは液相焼結について扱う。
【0003】
焼結ケースの材質としては、炭素のゲッター剤としての効果を期待してチタン(Ti)やジルコニウム(Zr)を用いたり(特許文献1)、あるいは酸素のゲッター剤としての効果を期待して熱伝導率に優れるとともに希土類磁石の焼結温度において再結晶化が生じない点からモリブデン(Mo)を用いることが知られている(特許文献2)。また、成形体を焼結ケースの中に複数個配置したり、
図9に示すように平板状の成形体を多段積みして焼結ケース内へ配置することで積載効率を向上させることも行われている。
【0004】
特許文献1は、希土類合金粉末を圧縮成形した成形体をカーボンのゲッター剤となる金属製容器に入れた状態で焼結炉内で焼結させることを特徴とする希土類合金焼結体の製造方法で、変形やクラックの防止のためにカーボンのゲッター剤となる金属がTi,Zr,Ta,Nbであることを開示している。
【0005】
特許文献2は、成形体焼結後の巣の発生を抑えるため、焼結用容器を、容器本体と蓋体との間に、モリブデン(Mo)のゲッター・スペーサにより流路を形成する構成とし、焼結用容器内に収められた成形体の温度上昇により、水素化物が熱分解することでガス化した水素および焼結用容器内の雰囲気が流路を介して焼結用容器外に流れ出るようにしている。また、ゲッター・スペーサを酸化ゲッターとし、酸素が焼結用容器内に侵入した場合にも、このゲッター・スペーサが酸化することで、成形体の酸化を防止するようにしたことが開示されている。
【0006】
特許文献3は、希土類磁石の焼結に使用される焼結ケースであって、開口部を有する本体フレームと、その開口部を開閉するドアとを備えており、希土類磁石を載せた焼結プレートが本体に取り付けられたロッド上を水平方向にスライドして本体内に挿入されることを開示している。
【0007】
特許文献4は、焼結温度が1400℃を超える領域においても、焼結体ターゲット、特にセラミックスターゲットの焼結に際して発生する反りを効果的に抑制し、また発生した反りを矯正することができ、さらに製造歩留りを向上することのできる焼結方法及び焼結体の矯正方法並びに装置として、被焼結体を回転させて遠心力を発生させ、焼結することを特徴とする反り発生を抑制する焼結方法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平5−171217号公報
【特許文献2】特開2005−050915号公報
【特許文献3】特開2000−315611号公報
【特許文献4】特開2003−238258号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
例えば直方形状の成形体を焼結すると、中央が凹状に窪む形に変形する。更に薄物平板成形体では、弓形状に変形する。このため、反り変形を許容しつつ、焼結後の成形体を研磨することで、設計された寸法に加工している。なお、ここで言う薄物平板成形体は、概略5mm以内の厚さを有する成形体とする。焼結での反り変形が大きいと、焼結後の研磨加工量が大きくなり、それを見積もった成形体厚み寸法の設計が必要となり、材料ロスが増大し、コスト高に繋がるといった問題が生じる。薄物平板成形体の場合、特許文献1及び2のようなゲッター剤による反り防止の効果は少なく、特に、積載効率向上のために多段積みした場合の最上段の成形体は変形が特に大きくなる。特許文献4のような手法で反り変形をなくすことが可能だとしても、炉を始めとする装置構成が大きく複雑化する。
【0010】
本発明はこうした状況を認識してなされたものであり、その目的は、焼結炉等の装置構成を複雑化しなくても従来と比較して焼結による成形体の反り変形を小さくすることが出来る、希土類焼結磁石の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のある態様は、希土類焼結磁石の製造方法である。この方法は、底部焼結プレートと、前記底部焼結プレート上に載置されたメッシュと、前記メッシュ上に載置された希土類磁石材料成形体と、前記底部焼結プレート上に配置されたスペーサと、前記スペーサに支持されて前記希土類磁石材料成形体の上方を空間を挟んで覆う上部焼結プレートとを備える積載形態を用いて、前記希土類磁石材料成形体を焼結する工程を有
し、前記希土類磁石材料成形体が薄物の平板形状ないし瓦状であり、前記希土類磁石材料成形体の上面と前記上部焼結プレートの下面との距離が3mm以下であることを特徴とする。
【0013】
前記メッシュによって、前記希土類磁石材料成形体の下面と前記底部焼結プレートの上面との間に空間が設けられていてもよい。
【0014】
前記希土類磁石材料成形体を800℃乃至1200℃の焼結温度で焼結してもよい。
【0015】
50kPa以下の減圧ないし真空雰囲気下で前記希土類磁石材料成形体を焼結してもよい。
【0016】
前記積載形態を複数層積み重ね、ある層の上部焼結プレートを一つ上の層の底部焼結プレートとして兼用してもよい。
【0017】
前記希土類磁石材料成形体が、R−Fe−B系(RはYを含む希土類元素)希土類磁石材料からなってもよい。
【0019】
前記積層形態が前記希土類磁石材料成形体上に載置されたメッシュを備えてもよい。
【0020】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法やシステムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、焼結炉等の装置構成を複雑化しなくても従来と比較して焼結による成形体の反り変形を小さくすることができる。このため、焼結後の研削加工量が減少し、材料ロス及びコストを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の実施の形態に係る希土類磁石材料成形体の積載形態1の分解斜視図。
【
図3】比較例に関し、焼結過程における希土類磁石材料成形体5の反り変形の発生原理の模式的説明図。
【
図4】実施の形態における、焼結過程における希土類磁石材料成形体5の反り変形の防止原理の模式的説明図。
【
図5】ひとつの底部焼結プレート2aに複数の希土類磁石材料成形体5を同じ平面内に配置する場合の配置説明図。
【
図6】希土類磁石材料成形体5が瓦状である場合の積載形態1の分解斜視図。
【
図7】希土類磁石材料成形体5の上面にメッシュ6を設ける場合の積載形態1の分解斜視図。
【
図9】従来例に関し、平板状の成形体を多段積みして焼結ケース内へ配置する場合の斜視図(但し蓋は分離して示される)。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態を詳述する。なお、各図面に示される同一または同等の構成要素、部材等には同一の符号を付し、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は発明を限定するものではなく例示であり、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0024】
図1は、本発明の実施の形態に係る希土類磁石材料成形体の積載形態1の分解斜視図である。
図2は、積載形態1の断面図である。この積載形態1を不図示の焼結ケースに収納して希土類磁石材料成形体5を焼結炉内で焼結する。焼結ケースは
図9に示した従来のものと同じでよく、例えば上部が開口した焼結ケース本体と蓋とからなる。
【0025】
積載形態1は、底部焼結プレート2aと、上部焼結プレート2bと、Moメッシュ3(網板)と、後述の上方空間Cbを形成するためのスペーサ4と、希土類磁石材料成形体5とを備える。底部焼結プレート2a及び上部焼結プレート2bは例えばMo板とする。希土類磁石材料成形体5は、例えばR−Fe−B系(RはYを含む希土類元素)の希土類磁石材料からなり、例えば概略5mm以内の厚さの薄物平板形状である。スペーサ4としては、希土類と反応しにくい及び熱膨張が少ない材料、例えばSUS材(ステンレス鋼)やMo、カーボンなどを使用できる。
【0026】
Moメッシュ3は、スペーサ4の内側において底部焼結プレート2a上に載置される。希土類磁石材料成形体5はMoメッシュ3上に載置される。Moメッシュ3により、希土類磁石材料成形体5の下方空間Ca(希土類磁石材料成形体5の下面と底部焼結プレート2aとの間の空間)が設けられる。上部焼結プレート2bは、スペーサ4の上部開口を閉じるようにスペーサ4上に配置され、希土類磁石材料成形体5の上方を空間を挟んで覆う。換言すれば、スペーサ4は、希土類磁石材料成形体5の上方空間Cb(希土類磁石材料成形体5の上面と上部焼結プレート2bの下面との間の空間)が確保される高さ寸法である。希土類磁石材料成形体5の上方空間Cbの高さ(希土類磁石材料成形体5の上面と上部焼結プレート2bの下面との間の距離)は例えば0<Cb≦3mmとする。
【0027】
積層形態1を用いた焼結の際には、積載形態1を複数層積み重ね、焼結ケース(不図示)に収納して50kPa〜1×10
-3Paの減圧ないし真空雰囲気下で焼結する。焼結は例えば800℃乃至1200℃の焼結温度にて行う。なお、0<Cbの理由は、希土類磁石材料成形体5と上部焼結プレート2bが接触した状態で積載形態1を複数層積み上げたときに、上層の希土類磁石材料成形体5の重さにより下層の希土類磁石材料成形体5ほど大きな荷重がかかり、層ごとに異なる荷重状態での焼結となることを防ぐためである。積載形態1を複数層積み重ねるとき、ある層の上部焼結プレート2bが一つ上の層の底部焼結プレート2aを兼ねてもよい。
【0028】
図3は、比較例に関し、焼結過程における希土類磁石材料成形体5の反り変形の発生原理の模式的説明図である。ここでは、Rがネオジム(Nd)である場合を例に説明する。この比較例は、上述の上部焼結プレート2b及びMoメッシュ3を設けずに希土類磁石材料成形体5を焼結した場合に相当する。希土類焼結磁石の焼結過程において希土類が800℃以上の温度で液相化し焼結される過程で希土類が気化蒸発する。成形体の組成の一部の希土類が気化蒸発すると、焼結時に成形体内部に疎密差が発生し、それが希土類磁石材料成形体5に反りや変形を発生させる原因となる。即ち密の部分は焼結が促進してその体積が縮小するが、疎の部分は焼結が促進せず体積変化は小さい。ひとつの物質の中で体積縮小部位と変化の少ない部位が共存し、反りや変形の発生に繋がる。
【0029】
図4は、本実施の形態における、焼結過程における希土類磁石材料成形体5の反り変形の防止原理の模式的説明図である。本実施の形態では、底部焼結プレート2aと上部焼結プレート2bで略式に囲んだ内部に希土類磁石材料成形体5を配置しているため、800℃以上で液相化した希土類磁石材料成形体5の組成、特にネオジム(Nd)が表層に染み出て、気化蒸発したネオジム(Nd)が希土類磁石材料成形体5の表面に接する空間に留まる。このため、前記空間がネオジム(Nd)等の気化雰囲気で飽和状態となれば、更なるネオジム(Nd)の気化が無くなる。すなわち、気化するネオジム(Nd)の総量が
図3に示した比較例と比較して少なくなる。また、上部焼結プレート2bと希土類磁石材料成形体5の間に所定の空間(0<Cb≦3mm)を設け、かつ希土類磁石材料成形体5の下方にメッシュ3を設置して希土類材料成形体5と下部焼結プレートの間に下部空間Caが設けたことにより、希土類磁石材料成形体5の上面の気化蒸発は少なくなる一方で下面の気化蒸発は多くなり、上面と下面の双方からほぼ同量のネオジム(Nd)が気化するため、希土類磁石材料成形体5の上部と下部(表と裏)の疎密差が低減される。したがって、上部焼結プレート2b及びMoメッシュ3を設けない場合(
図3)と比較して焼結過程における希土類磁石材料成形体5の反り変形を小さくすることができる。また、反り変形を小さくするために焼結炉等の装置構成を複雑化する必要もない。このように、本実施の形態では、焼結の過程で希土類磁石材料成形体5の周囲にネオジム(Nd)等の気化雰囲気を作り、希土類磁石材料成形体5の組織内に疎密を発生させないようにすることで、希土類磁石材料成形体5の反り変形を抑制して焼結できる。
【0030】
なお、上記の説明ではひとつの底部焼結プレート2aに焼結対象の希土類磁石材料成形体5がひとつである例を示しているが、これに限定されない。ひとつの底部焼結プレート2a上に複数の希土類磁石材料成形体5が同じ平面内に配置されてもよい(
図5参照)。
【実施例1】
【0031】
Nd−Fe−B系希土類磁石材料からなる3mm厚の薄物平板形状の希土類磁石材料成形体5(長さ60×幅30mm)を準備し、底部焼結プレート2a(Mo板)上にMoメッシュ3を敷板として配置してその上に希土類磁石材料成形体5を置くことにより下方空間Caを作成した。Moメッシュ3は#24、線形0.35mmのものを使用した。更にスペーサ4を用いて成形体の上方空間Cbが0.2mmになるように上部焼結プレート2b(Mo板)で覆いを作成した。底部焼結プレート2a及び上部焼結プレート2bはMo板を使用した。この積載形態1を複数層積み上げ(ここでは1段あたり18枚で6段、計108枚の成形体)、焼結ケースに収納して焼結し、得られた焼結磁石の反り変形量を測定して評価した。反り変形量は、0.08mm〜0.15mmであった。
【実施例2】
【0032】
上方空間Cbを3mmに変更した他は実施例1と同様に焼結磁石を作製した。反り変形量は、0.08mm〜0.15mmであった。
【実施例3】
【0033】
Nd−Fe−B系希土類磁石材料からなる1mm厚の薄物平板形状の希土類磁石材料成形体5(長さ50×幅10mm)を準備し、成形体の数を1段あたり8枚で2段、計16枚とした他は実施例1と同様にして焼結磁石を作製した(上方空間Cbを0.2mmにするためにスペーサ4の高さは実施例1より低くなる)。反り変形量は、0.05mm未満であった。
【0034】
(比較例1)
上方空間を開放して(上部焼結プレート2b無し)、成形体を同一面内の3枚とした他は実施例1と同様に作製した。このときの成形体の上面と焼結ケースの蓋との距離は約5cmであった。反り変形量は、0.20〜0.40mmであった。
【0035】
(比較例2)
Nd−Fe−B系希土類磁石材料からなる3mm厚の薄物平板形状の希土類磁石材料成形体(長さ60×30mm)を準備し、従来技術の製造法の段積み方式(上部焼結プレート2b及びMoメッシュ3無し)で焼結した。具体的には、焼結プレート上に付着の防止の敷粉を散布して、成形体を1段あたり24枚で4段積みした。その際、成形体同士が接する面にも、付着の防止の敷粉を散布した。焼結プレートはMo板を使用した。この積載形態を焼結ケースに収納(このときの最上段の成形体の上面と焼結ケースの蓋との距離は約2cm)して焼結し、得られた焼結磁石の反り変形量を測定して評価した。反り変形量は、0.15〜0.5mmであった。
【0036】
本発明の実施例1,2は比較例1に対して約60%、比較例2に対して約45〜70%の反り抑制効果をあげることができ、焼結後の研磨加工量を削減することができ、材料ロスが低減し、コストダウンに繋がることとなる。また、実施例3から明らかなように、1mmの薄物の成形体の場合も反り変形量が小さく、同様の効果を得られる。
【0037】
以上、実施の形態を例に本発明を説明したが、実施の形態の各構成要素や各処理プロセスには請求項に記載の範囲で種々の変形例が可能であることは当業者に理解されるところである。以下、変形例について触れる。
【0038】
希土類磁石材料成形体5は、薄物平板形状のみならず、瓦状その他の形状であってもよい。
図6は、希土類磁石材料成形体5が瓦状である場合の積載形態1の分解斜視図である。本図に示す積層形態1は、
図1に示したものと比較して、希土類磁石材料成形体5の湾曲形状に合わせて底部焼結プレート2aの上面及びMoメッシュ3が湾曲し、スペーサ4が底部焼結プレート2aの上面のうち湾曲していない平面部分に載置されている点で相違し、その他の点で一致する。
【0039】
希土類磁石材料成形体5は、Nd−Fe−B系以外のR−Fe−B系、あるいはR−Fe−B系以外の希土類磁石材料であってもよい。
【0040】
Moメッシュ3に替えて、希土類と反応しにくい他の材料、例えばSUS材又はカーボンからなるメッシュを用いてもよい。
【0041】
スペーサ4は一体の形態を成す形状としてもよいし、円柱等の柱形状としてもよい。スペーサ4は底部焼結プレート2a上に直接配置されてもよいし、Moメッシュ3を挟んで底部焼結プレート2a上に配置されてもよい。また、底部焼結プレート2aとスペーサ4とを一体としてもよい。
【0042】
図7及び
図8に示すように、積載形態1において、希土類磁石材料成形体5の上面にMoやSUS材、又はカーボンからなるメッシュ6を設けてもよい。この場合、希土類磁石材料成形体5の上面と下面の希土類等の気化蒸発の条件がより近づき、焼結時の上面と下面からの気化蒸発量の差が更に小さくなり、焼結による希土類磁石材料成形体5の反り変形防止に有利である。
【符号の説明】
【0043】
1 積載形態
2a 底部焼結プレート
2b 上部焼結プレート
3 Moメッシュ
4 スペーサ
5 希土類磁石材料成形体
Ca 下方空間
Cb 上方空間